説明

高スループット四重極イオントラップ

線形イオントラップを動作させるための方法及び装置を提供する。従来の3分割した線形イオントラップと比較して、機能においてさらなる汎用性が見込まれる線形イオントラップの構成を提供する。線形イオントラップは複数のセグメントを備え、動作中、これらのセグメントが、最初のイオン集団を少なくとも空間的に第1及び第2のイオン集団に分割する。個々のセグメントは効果的に独立しており、第1のイオン集団に相当するイオンを第2のイオン集団に相当するイオンとは無関係に操作することができ、これらのイオンは、同じ条件下のイオン源により発生したものである。その後、イオンをイオントラップから放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する本発明の実施形態は、一般に、線形イオントラップを動作させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線形イオントラップには、多くの質量分析の分野において多くの用途が見出される。これらの用途では、通常、タンデム質量分析(MS/MS)技術の容易化、高い質量電荷(m/z)比の計測、広い動的範囲、精度、高品質なデータ及びスループットが要求される。このことは、特に生物学又は生化学の用途についても当てはまる。例えばプロテオミクスの分野では、分析機器には、小分子及び巨大分子の両方を同定し、分子構造を特定することが求められると共に、質の高い結果をもたらす一方でこれらを迅速に行うことが求められる。これらの機器には、単一の試料から広い動的範囲に及ぶ何千ものペプチドを同定することが求められる。タンデム質量分析に基づくペプチドの同定、又はペプチドのMS/MS開裂も同様に求められる。また、この特定の技術分野では、通常、莫大な量のデータに最短時間で対応するための高度な自動化が求められる。従って、これらの理由から、このような要求に応える線形イオントラップを可能にする新しい装置及び方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,420,425号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により、従来の3分割した線形イオントラップと比較して、機能においてさらなる汎用性を提供するための装置及び方法を開示する。第1及び第2のセグメントを含む少なくとも空間的に2つのセグメントに分割可能な線形イオントラップを提供する。個々のセグメントは効果的に独立しており、これらのセグメントに蓄積されたイオンを別々に操作するという利点を有し、これらのイオンは、同じ条件下のイオン源により発生したものである。その後、イオンをイオントラップから放出することができる。
【0005】
2又はそれ以上のセグメントで同時にイオンの操作を行うことができる。操作は、開裂、分離、又はイオンの挙動に影響を与える他の任意の処理の形をとることができる。
【0006】
線形イオントラップは複数の電極を有することができ、個々の電極はセクションに分けられる。個々のセクションは3分割された電極アセンブリを備える。
【0007】
この構成により、イオン源からの充填を1回しか必要とせずにタンデム(MS/MS)実験を迅速に実施できるようになるため、この構成は好都合である。さらに、例えば、前駆イオンを次第に狭い範囲のm/z値に分離することにより、トラップ領域のイオン容量を空間電荷制限内で最適化できるようになる。
【0008】
本発明の1つの態様では、最初の(initial)イオン集団が線形イオントラップに入る前に、例えば質量電荷比により、このイオン集団を空間的に分割することができる。この場合、最初の集団を分割することにより、線形イオントラップは、最初の集団の空間的分割を線形イオントラップ内で維持するように動作する。
【0009】
本発明の性質及び目的をより確実に理解するために、添付図面と共に以下の詳細な説明を参照されたい。同様の参照番号は、図面のうちのいくつかの図にわたって対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】線形イオントラップを含む質量分析器の構成を示す図である。
【図2】2次元線形イオントラップの基本設計を示す斜視図である。
【図3】本発明の態様による線形イオントラップを含む質量分析器の構成を示す図である。
【図4a】本発明によるセグメントを設けるように線形イオントラップを構成できる方法を示す概略図である。
【図4b】本発明によるセグメントを設けるように線形イオントラップを構成できる方法を示す概略図である。
【図4c】本発明によるセグメントを設けるように線形イオントラップを構成できる方法を示す概略図である。
【図5】本発明の態様による方法を示すフロー図である。
【図6a】分割処理によりイオン集団のセグメント化を実現できる1つの方法を示す図である。
【図6b】分割処理によりイオン集団のセグメント化を実現できる1つの方法を示す図である。
【図6c】分割処理によりイオン集団のセグメント化を実現できる1つの方法を示す図である。
【図6d】分割処理によりイオン集団のセグメント化を実現できる1つの方法を示す図である。
【図7】分割処理によりイオン集団のセグメント化を実現できる別の方法を示す図である。
【図8】本発明のさらに別の態様によるセグメント化した線形イオントラップを示す概略図である。
【図9】本発明の別の態様による方法を示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、典型的な線形イオントラップ質量分析器の構成100を示す図である。構成100は、チャンバ120内にエレクトロスプレーイオン源などの適当なイオン源110を含む。チャンバ120内で生成されたイオンは、加熱したキャピラリ140を通って第2のチャンバ130へ導かれ、レンズ配列体150により第3のチャンバ160内へ導かれる。第3のチャンバ160に入るイオンは、四重極イオンガイド170に誘導され、真空チャンバ190内に収容された2次元(線形)四重極イオントラップ180の方へ導かれる。イオン源110により生じるイオンは、直接的に又は間接的にイオントラップ180へ進む。
【0012】
四重極イオントラップは、実質的に四重極の電場を使用してイオンを捕捉する。純粋な四重極電場では、イオンの動きは、マシュー方程式と呼ばれる2次微分方程式の解により数学的に説明される。2次元及び3次元の両方の四重極イオントラップを含む全ての高周波(RF)かつ直流(DC)の四重極装置に適用される一般的なケースへと解を展開することができる。2次元四重極トラップは米国特許第5,420,425号に記載されており、該特許全体が引用により組み入れられる。
【0013】
図2は、線形又は2次元(2D)四重極イオントラップ200の四重極電極/ロッドの構造を示す図である。四重極構造は、座標系のz方向に沿って中心軸を有する長い内部容積を定めるロッドを含む2組の対向する電極を含む。対向する電極のXの組は、座標系のx軸に沿って配列されたロッド215及び220を含み、対向する電極のYの組は、座標系のy軸に沿って配列されたロッド205及び210を含む。図示のように、ロッド205、210、215、220の各々は、メインすなわち中心セクション230及び前後のセクション235、240に切断される。
【0014】
イオンは、コントローラ290の制御下でX及びY電極/ロッドの組に印加されるRF四重極トラップ電位により径方向に閉じ込められる。Xの組にある1つの位相が印加される一方、Yの組に逆の位相が印加された状態で、これらのロッドに高周波(RF)電圧が印加される。これにより、x方向及びy方向にRF四重極閉じ込め電場が確立され、これらの方向にイオンが捕捉されることになる。
【0015】
イオンを軸方向(z方向)に拘束するために、前後のセグメント235、240のDC電圧とは異なるDC電圧を中心セグメント230内の電極に印加するか、或いは電圧を変化させるようにコントローラ290を構成することができる。このようにして、四重極電場の径方向の閉じ込めに加えて、z方向にDC「電位井戸」が形成され、3次元全てにおいてイオンの閉じ込めが行われるようになる。
【0016】
ロッド205、210、215、220のうちの1つの中心セクション230の少なくとも1つに開口部245が定められる。中心軸に対して直交する方向に追加のAC双極電場を印加するか、或いは電場を変化させることにより、コントローラ290は、捕捉されたイオンがこれらのイオンの質量電荷比に基づいて、この開口部245を通じて上記の方向に選択的に放出されるのをさらに容易にできるようになる。この例では、開口部及び印加された双極電場は、Xロッドの組の上に存在する。他の適当な方法を使用してイオンを放出することもでき、例えば、ロッドの間からイオンを放出することもできる。
【0017】
閉じ込めたイオンの質量スペクトルを得る1つの方法として、捕捉パラメータを変更して、増加する質量電荷比の値を有する捕捉されたイオンが不安定になるようにする方法がある。イオンの運動エネルギーは、イオンが不安定になる形で励起されるのが効果的である。これらの不安定なイオンは、トラップ構造の境界を超える軌道を作り上げ、電極構造の1つの開口部又は一連の開口部を通って四重極電場を離れる。
【0018】
連続して放出されるイオンは、通常、ダイノード195に衝突し、ここから生じる2次粒子が、後続する検出器装置の素子に向けて放出される。検出器装置の配列及び種類は異なるものであってもよく、例えば、イオントラップの全長に沿って延びる検出器装置であってもよい。本明細書全体を通じて、ダイノードは検出器装置の一部であると考えられ、他の素子は、電子マルチプライヤ、前置増幅器、及びその他のこのような装置などの素子である。
【0019】
当分野ではよく知られているが、質量分析システムに異なる配列を使用することができる。例えば、イオンを径方向ではなく軸方向に放出するように分析装置を構成することができる。利用可能な軸方向を使用して、線形イオントラップを、フーリエ変換RF四重極分析器、飛行時間分析器、3次元イオントラップ、Orbitrap(登録商標)、又はその他の種類の質量分析器などの別の質量分析器にハイブリッド構成で結合することができる。
【0020】
図3は、本発明の態様による線形イオントラップ380を含む質量分析器の構成300を示す図である。この構成は、線形イオントラップ380及びダイノード395を除き、図1で示し、説明した構成の特徴全てを示していることがわかる。この構成では、線形イオントラップ380は複数のセグメントを含み、個々の分離したセグメントに隣接して配置された複数のダイノード395が存在する。この特定の構成では、多セグメント化した線形イオントラップの両側にダイノード395が配置され、イオントラップから放出されるほぼ全てのイオンを検出することができる。ダイノードの個数及びこれらの配置は例示したものに限定されず、図1のものと同様に、ダイノードを線形イオントラップの片側のみに配置したり、1個おきのセグメントに隣接して配置したり、或いは例えば軸方向に配置されたダイノードを含んだりすることができる。この点において、図3は、必ずしもイオントラップからイオンが放出される(通常、排出される及び/又は抽出される)方向を表すものではなく、この方向が軸方向及び/又は径方向のいずれであるにせよ、イオンが放出されるという事実を表すものであるにすぎない。放出の軌道は、とりわけ採用する構成に依存することになる。
【0021】
動作中、図3の線形イオントラップの構成により、多セグメント化した線形イオントラップ380からのイオンの同時放出が実現され、放出されたイオンは複数のダイノード395により検出される。イオンが、多分割した線形イオントラップ380の全てのセグメントから同時には放出されず、少なくとも2つのセグメントのグループが任意の時点でイオンを放出する場合、2回目の及びその他の後続する放出の結果を、1回目の放出の結果と合計することにより、単一の質量スペクトルを生成することができる。
【0022】
多セグメント化した四重極イオントラップを使用することにより、図1に示すと共に米国特許第5,420,425号で詳細に説明されるような従来の3分割した線形イオントラップの機能と比較して、機能においてさらなる汎用性が見込まれる。線形イオントラップを複数の半独立セグメントに空間的に分割することにより、これらのセグメントに蓄積されたイオンを独立して操作することが容易になる構造が実現されると共に、別個のセグメント内でイオンを同時に処理できるようになる。また、これにより、同時期に同じ条件下で同じイオン源から生じる所定のイオン集団を同時に操作し、検出し、或いは別様に処理し、又は分析できるようになる。後続する検出、処理、又は分析の前に、個々のイオン集団を独立して操作することもできる。
【0023】
質量スペクトルデータの品質の改善を実現できる1つの用途として、拡張質量範囲の走査の最適化が挙げられる。質量スペクトルデータの品質の改善を実現できる別の用途として、所定の走査速度に対する走査時間の短縮を試みる場合が挙げられる。これらの用途のうちのいくつかについて、後程さらに詳細に説明することにする。
【0024】
本発明による線形イオントラップの2つの実施構成を図4a、図4b、及び図4cに示す。線形イオントラップ380は、複数の(少なくとも2つの)実質的に分離したトラップ容積すなわちセグメント410を備えるように構成可能であり、これらのセグメント410の各々、又はセグメントの組み合わせは、電気的及び/又は磁気的分離機構が作動した際には互いに電気的に分離され、セグメントが「組み立てられる」か、或いは電気的分離手段が停止した際には、協働して連続装置として働くことができる。線形イオントラップ380は、図4aに示す最初のイオン集団420に作用し、或いはこれらを物理的に細分化できるようにして、図4b及び図4cに示すように、所定のイオン集団を、多セグメント化したイオントラップのうちの1又はそれ以上のセグメント410内に空間的に局在化できるようにする。
【0025】
線形イオントラップ380を空間的に分割する電位壁を作り出すことにより、線形イオントラップの複数のセグメントを設けることができる。本発明の1つの態様では、4つのロッド電極を含む四重極ロッド組立体などの、対応する多極ロッドアセンブリ430を作動させることにより、セグメントを生成し、或いは作動させることができる。複数のロッドアセンブリの各々は、多セグメント化した線形イオントラップの軸の周囲に、セグメントすなわちトラップ容積を少なくとも部分的に(すなわちその少なくとも1つの端部を)定める。これらの多極ロッドアセンブリは、単一のセクション又は連続したロッドを備えるか、或いは多分割したロッドを含むことができる。このトラップ容積内で、RF電位とDC電位との組み合わせを多極ロッドアセンブリに印加することにより、セクションの1又はそれ以上においてイオンを径方向及び軸方向に閉じ込めることができる。
【0026】
図4bに示すように、本発明の1つの実施形態では、線形イオントラップ380のセグメントが、3分割した多極ロッドアセンブリ440及び450で構成される。第1の3分割した多極ロッドアセンブリ440は、動作中、主にアセンブリ440の中心セクションに閉じ込められたトラップ容積410aを生成することができる。第2の3分割した多極ロッドアセンブリ450は、動作中、主にアセンブリ450の中心セクションに閉じ込められたトラップ容積410bを生成することができる。
【0027】
図4cに示すように、本発明の別の態様では、線形イオントラップ380のセグメントは、ここでも3分割した多極ロッドアセンブリ460、470、及び480で構成される。しかしながら、今回は、第1の3分割した多極ロッドアセンブリ460の3番目のセクションは、第2の3分割した多極ロッドアセンブリ470の1番目のセクションとしても機能する。同様に、第2の3分割した多極ロッドアセンブリ470の3番目のセクションは、第3の3分割した多極ロッドアセンブリ480の1番目のセクションとしても機能する。3分割した多極ロッドアセンブリは効果的に重なり合い、動作中、図4bに示す構成よりも多くのトラップ容積410c、410d、及び410eを生成することができる。
【0028】
個々の多極ロッドアセンブリには各々、独自のRF電圧、DC電圧、及び補助励起電圧が供給される。一般に、端部セクションは、イオントラップに出入りするイオンへのフリンジ電界の影響を最小限に抑えるように構成される。イオンがトラップ内に捕捉されると、RF電圧、DC電圧、及び/又は補助電圧の成分の印加を利用して、捕捉されたイオンに影響を与え、捕捉されたイオンが所定の態様でイオントラップの全長に沿って分布するようにすることができる。その後、RF電圧、DC電圧、及び/又は補助電圧の成分をさらに修正してイオンに影響を与え、イオントラップ内の1つのセグメントから別のセグメントへイオンを移動させたり、セグメントからイオンを除去したり、或いは隣接するセグメント間におけるイオンの結合を最小限に抑えたりすることができる。
【0029】
一般に、制御ユニットが、多セグメント化したイオントラップのセグメントに、対応するRF電圧の組を印加してRF多極電位を発生させ、線形イオントラップの軸周辺のトラップ容積内でイオンを径方向に閉じ込める。この制御ユニットはまた、イオントラップのセグメントに様々なDCオフセットを印加して、イオントラップのトラップ容積に軸方向に沿うセグメントのいずれか、又は組み合わせの中にイオンを捕捉する。
【0030】
必要であれば、多極ロッドアセンブリのうちの1又はそれ以上のロッドにスロット又は開口部を設けて、イオンが複数の検出器装置へ向けて通過できるようにすることができる。
【0031】
一対のロッドが関連するセグメントの両端に補助AC電圧を印加し、その特定のセグメント内のイオンが共振してイオントラップを離れるようにすることにより、イオントラップからのイオンの放出を実現することができる。このようなAC電圧を印加することにより、他のセグメント内のイオンが影響を受ける可能性があるため、これに対する補償が必要となる場合がある。この影響は、印加したAC電圧が、上記特定のセグメント内のイオンに影響を与えるだけでなく、そのフリンジング効果により、隣接するセグメント内のイオンも結合されるという事実によるものである。
【0032】
本発明の1つの態様による線形イオントラップを動作させる方法を、一連のステップにより図5及び図6に示す。この方法のステップは、最初のイオン集団(420)を多セグメント化した線形イオントラップ内に捕捉するステップ(ステップ510)と、最初のイオン集団(420)を、第1の集団及び第2の集団を含む少なくとも2つのイオン集団に空間的に分割するステップ(ステップ520)と、第1及び第2のイオン集団に相当するイオンを多セグメント化した線形イオントラップから放出するステップ(ステップ530)とを含むことができる。第1及び第2のイオン集団に相当するイオンは、それぞれ第1及び第2のイオン集団から得られるイオン、又はこれらのイオン集団から導出されるイオンを含む。次に、第1の集団に相当するイオンの少なくとも一部を第1の検出器装置で検出することができ、第2のイオン集団に相当するイオンの少なくとも一部を第2の検出器装置で検出することができる。場合によっては、第1及び第2の検出器装置がいくつかの素子を共有することができる。或いは、これらの素子は別個のものであってもよい。
【0033】
必要であれば、ステップ525で示すように、多セグメント化した線形イオントラップのセグメントのうちのいずれか、又は組み合わせの中のイオンが抽出され、検出器装置へ移動する前に、これらのイオンを任意で操作することができる。第1のイオン集団に相当するイオンを第2のイオン集団に相当するイオンとは無関係に、及び必要であれば同時に操作することができる。操作は、開裂、分離、或いはイオンが通常反応する他の任意のこのような動作又は影響の形をとることができる。
【0034】
図6は、多セグメント化した線形イオントラップ380の個々のセグメントが、3分割した多極電極構造610、615、620により実現される構成を示す図である。図示のように、多セグメント化した線形イオントラップ380からのイオンの放出は、軸方向625に対してほぼ直交する方向に行われる。或いは、軸方向625にほぼ平行な方向と直交する方向との組み合わせでイオンの抽出を行うことができる。
【0035】
イオン集団を空間的に仕切ることができる1つの方法として、質量電荷比(m/z)又はm/z範囲による方法がある。例えば、多セグメント化した線形イオントラップ380の第3のセグメント620は、質量範囲Mrange1内のイオンを捕捉するように構成されてもよく、この範囲は質量m1よりも小さい質量を含む。多セグメント化した線形イオントラップ380の第2のセグメント615は、質量範囲Mrange2内のイオンを捕捉するように構成されてもよく、この範囲は質量m1とm2との間の質量に対応する。第1のセグメント610は、m2とm3との間の質量範囲Mrange3内のイオンを捕捉するように構成されてもよく、この場合m3>m2>m1となる。
【0036】
上記を実現できるいくつかの方法が存在し、そのうちの1つは、軸方向に異なる軸励起AC電圧を印加することによるものである。これにより、基本的にイオンは、セグメントが対応するm/zの範囲に影響を与える励起が印加されていないセグメントに達するまでトラップに沿って移動することが可能となり、このセグメントに達すると、イオンは衝突してエネルギーを失い、このセグメントに留まるようになる。
【0037】
例えば、最初のイオン集団605は、Mrange1+Mrange2+Mrange3を含む。これらのイオンは、読み手から見て図の左手側で多セグメント化したイオントラップに入る。第1のセグメント610は、入ってくるイオン(好ましくは連続した流れ)を捕獲すると同時に、例えば、m/z範囲(150〜200Th)及びm/z(200〜2000)である第2の質量範囲Mrange2及び第3の質量範囲Mrange1の範囲内のイオンを励起して、第1のセグメント610と第2のセグメント615とを区分する電位壁を乗り越えるようにする。DC電場及び任意でRF電場を組み合わせることにより、電位壁を形成することができる。電位壁にAC電場を加えることにより励起を与えて、特定の質量電荷比を上回るイオンの軸方向の共振振動が励起されるようにすることができる。第1のセグメント610内の第1のイオン集団に相当するイオンは、セグメント610とセグメント615とを分ける電位壁を乗り越え、第2のセグメント615(Mrange3)に到達するのに十分なエネルギーが得られるまで、軸方向にエネルギーを得ることになる。第1のセグメント610の入口開口部を通じてイオンを失うことを避けるために、開口部に追加のDC電位を印加してイオンを反射し、セグメント610内に戻すことができる。
【0038】
前述したように、図6は、多分割した四重極ロッドアセンブリ610、615、620により、多セグメント化した線形イオントラップ380の個々のセグメントが設けられる構成を示しており、これにより、多セグメント化した線形イオントラップ380のx電極の最初の3つのセクションに励起電圧を印加して、セクション630、635、640にV210の電位を供給することができる。励起電圧の大きさは、Mrange3の質量範囲の外に存在する質量電荷比を有するイオンを、多セグメント化した線形イオントラップ380に沿って前方かつ軸方向に励起するのに十分な大きさであり、この結果、質量範囲Mrange2及びMrange1内のイオンは625の方向に前方に伝播するようになる。第1のイオン集団に相当する質量範囲Mrange3内のイオンは捕捉され、第1の多分割した四重極ロッドアセンブリ610の3番目のセクション640よりも先には伝播しない。図6に示すように、隣接するセクション間で極性が−V210、+V210、−V210の形で交互に入れ替わるように、最初の3つのセクション630、635、640に印加される励起電圧を印加することができる。このため、質量範囲Mrange3内のイオンは、中央セクションであるセクション2の635内に効果的に捕捉されることになる。このように、質量範囲Mrange3内のイオンは、隣接する4番目のセクション645内のイオンからはそれほど影響を受けず、イオン源に戻る可能性も低い。上述の方法を利用して、質量範囲Mrange3に属さない全てのイオンをセグメント610から移動させることができるだけでなく、これに加え、質量範囲Mrange3内のイオンがセグメント610、615、及び620の間に分布することを放置せずに、この質量範囲の全てのイオンをセグメント610内に集めることができる。小さな正のDC電圧をイオントラップの全長に沿って軸方向に印加して、アセンブリの最も左の先端、例えばセクション630にある最低のDC電位を有する点へ質量と無関係にイオンを引き寄せることができる。これにより、セグメント610、615、620のいずれにも存在する可能性のある質量範囲Mrange3のイオンがセグメント610内に移動するようになる。同様に、上記は他のm/z範囲のイオンにも当てはまるが、軸のAC電場によりもたらされる励起の大きさは、(Mrange1及びMrange2に対応する)イオンをセグメント610から押し出し、Mrange1に対応するイオンをセグメント610、615から押し出すのに十分な軸エネルギーを供給するように選択される。DC電圧という点では、他の質量範囲のイオンにも同じ考えが当てはまり、DCが作り出す電場は、アセンブリの左側にイオンを集める傾向にあるが、軸のACが作り出す電場は、イオンが、共振するAC電場のないセグメントに行き着き、その領域内に落ち着き滞留するまで、イオンを質量とは無関係に逆方向に励起する。上述のDCが作り出す電場により動きが妨害されるため、これらのイオンが、共振するAC電圧が印加されていない領域内へとさらに拡散することはない。
【0039】
同様に、3つのセクションの第2の組(第2の多分割した四重極ロッドアセンブリ615)に印加される励起電圧は、質量範囲Mrange1内のイオンが、イオン源から625の方向に離れて、多セグメント化したイオントラップ380のもう一方の端部に伝播するように印加される。第2のイオン集団に相当する質量範囲Mrange2内のイオンは捕捉され、第2の多分割した四重極ロッドアセンブリ615の3番目のセクション655よりも先には伝播しない。これらのイオンは、セクション655に存在するAC電場と共振せず、ガスと衝突して自らのエネルギーをさらに失うことにより、このセグメント615内に蓄えられるようになる。印加される電圧V10は、範囲Mrange2内のイオンが、電位壁を横切って多セグメント化した線形イオントラップ380の後続するセグメント620内に入れるようになるほど十分なものではない。この場合も、第2の多分割した四重極ロッドアセンブリ615に印加される励起電圧は、隣接するセクション645、650、655の間で極性が+V10、−V10、+V10のように交互に入れ替わる状態で印加される。このため、質量範囲Mrange2内のイオンは、これらの3つのセクションの中央にある、左から5番目のセクション650に捕捉される。このように、第2のイオン集団に相当する質量範囲Mrange2内のイオンは、隣接する4番目及び6番目のセクション645、655内のイオンからはそれほど影響を受けない。
【0040】
図示の多セグメント化した線形イオントラップ380の構成の第3の多分割した四重極ロッドアセンブリ620についても同様の説明を行うことができる。第3のイオン集団に相当するイオンを伴う質量範囲Mrange1内のイオンは、上述した方法と同様の方法で8番目のセクション内に捕捉される。
【0041】
或いは、セグメント間の境界にあるロッドの間に共振する双極電場又は四重極電場を印加することにより、イオンを特定のセグメントから放出又は抽出してもよい。径方向の動きと軸方向の動きとを組み合わせることにより、イオンが誘導されて軸方向に移動するようになるが、印加されたAC電圧と共振状態にあるイオンのみが移動する。正のDC勾配による同じ概念を適用して、m/z比に基づく分割が開始されるセグメント内のイオンの集合を促すこともできる。
【0042】
説明した構成を利用して、イオン集団が空間的に位置決めされ、上記の方法でセグメント化されると、放出を行うことにより、第2のセグメントから走査される質量範囲とは異なる質量範囲を第1のセグメントから走査できるようになるだけでなく、1つ又は2つの別個の検出器装置を必要として、ほぼ同時に走査を行うこともできる。これには、多セグメント化した線形イオントラップの第1及び第2のセグメントに別個のAC信号をそれぞれ異なるように印加することが必要となる。
【0043】
質量分析データの品質改善を実現できる用途の1つは、例えば6000Thまで拡張した質量範囲の走査中にある。150〜4000Thの質量範囲の走査が望まれる場合の実験について考えられたい。従来技術により現在決められているような通常の質量範囲(150〜2000Th)に使用されるものと同じRF発生器を、この拡張した4000Thまでの質量範囲に使用する場合、放出qパラメータを、およそ1/2倍だけ減じなければならない。同じ走査速度(イオントラップからイオンが放出される速度であり、分析の速さ)を使用する場合、データの品質は、通常150〜2000Thの標準の質量範囲と比較して低くなる。分析の速さを著しく低下させなければ、これらのデータの質量分解能、質量精度、及び感度はさらに悪くなる。これは、m/zが2000Thを下回るイオンより通常少なくとも3倍程低速で走査される高い質量範囲のイオンに特に当てはまる。
【0044】
本発明の態様によれば、関心対象であるいくぶん低い値のm/zを有するイオンが所定のq値に置かれる。その後、RF振幅がおよそ最大電圧まで線形に走査されることにより、q値を放出qまで動かすことによっておよそ最大m/zまでイオンが放出される。このように、第1のqパラメータを有するイオンの動きを表す(a、q)安定線図内で、イオンの動きが安定した領域からイオンの動きが不安定な領域へイオンを移行させることにより、第1のイオン集団に相当するイオンを放出することができ、第2のqパラメータを表す(a、q)安定線図内で、イオンの動きが安定した領域からイオンの動きが不安定な領域へイオンを移行させることにより、第2のイオン集団に相当するイオンを放出することができ、第1のqパラメータと第2のqパラメータとは互いに異なる。
【0045】
多セグメント化した線形イオントラップの、高い質量範囲のイオンが滞留するセグメントに第2の共振放出信号を印加することにより、RF振幅が大きくなった時に高いq値で放出することができる低い質量範囲のイオンと同時にこのq値で放出されるイオンに、ある程度低いqパラメータ値を利用することができる。例えば、第1のセグメントが2000〜4000Thのm/zを走査できる一方で、第2のセグメントは、150〜2000Thのm/zを走査することができる。前述の態様は4つの検出器を使用する。また、走査時間の短縮が存在し、範囲200〜2000Th内のイオンが0.88の標準速度で走査されるのに対し、2000〜4000Thという高い質量範囲内のイオンはq=0.44で走査されるが、この低いqで走査されるイオンの範囲は、全体の範囲の200〜4000Thよりも小さいため、この低いq値での走査をより短い時間で実現することができ、走査時間を全体的に短縮できるようになる。或いは、同じ走査時間で、改善された質量分解能及び質量精度を実現することができる。
【0046】
このようにして、イオンは、自身のm/z比に従って多セグメント化した線形イオントラップ全体に分散され、その後3分割した多極電極アセンブリの適当なセクション内に捕捉される。多セグメント化したRFイオントラップをこのシナリオで使用することにより、質量スペクトルデータの品質を改善することができ、拡張範囲全体にわたってデータを最適化することにより、この改善を実現することができる。問題となる特定の離れた質量範囲に対して適当な、調整した方法でイオンを励起することにより、線形イオントラップの感度、走査速度、又は分解能力を必ずしも犠牲にすることなく、時間の活用を最適化することができる。
【0047】
従来のアプローチでは、3分割した線形イオントラップは、許容される空間電荷制限である約2000に達するのに、100fmol/uLの範囲の化合物で0.01〜0.1ms(10fmol/uL毎にサブms時間)の間充填されたであろうし、線形イオントラップは、必要な150〜4000Thの質量範囲に対応するのに、(0.4ms/Thの走査速度で)1.5sの間走査されたであろう。本発明では、注入時間が不要なため、この例での走査時間と比較すると、約50%の時間で同じデータを取得することができる。
【0048】
図6は、(図4bの多極ロッドアセンブリと同様の)複数の3分割した多極ロッドアセンブリを利用して、線形イオントラップのセグメント化を実現する方法を示しており、図では、所要の結果を確実にするために、個々の多極ロッドアセンブリの個々のセクションが、特定の位相で印加された励起電圧を有する。図7は、例えば、図示のように2分割した多極構造体を利用してセグメント化を行い、セクションとセクションの間にトラップ容積部を形成して上記を達成できる別の方法が存在することを示す図である。
【0049】
本発明の別の態様では、多セグメント化したイオントラップ内にイオンが入る前に、自身のm/z比に従ってイオンを分散させることができ、多セグメント化したイオントラップ内にイオンが入ると、多セグメント化した線形イオントラップ内のセグメントを作動させることにより、この分散を維持することができる。この特定のシナリオでは、すでに分散したイオンが、比較的低い圧力で無電場領域を通って移動するか、或いはイオン固有のイオン移動度に基づいて、イオン移動用の光学系の加圧セクション内で分離する場合、異なるm/z比のイオンがこの領域を横切って、多セグメント化した線形イオントラップにそれぞれ異なる時間に到達することになる。従って、低いm/z値のイオンは、高いm/z値のイオンより前にイオントラップに到達することになり、このため分散の維持が可能になる。
【0050】
様々な他の機構を採用して、線形イオントラップの軸次元に沿って分離した電位壁を作り出すことができる。これらは、例えば図8に示すように、セグメント又は多極ロッドアセンブリを、軸825から異なる距離に位置決めすることを含む。基本的に、1つのセグメントのr0値(多セグメント化した線形イオントラップの長手方向軸825からの距離)は、隣接するセグメントのr0値とは異なる値を有する。図3を参照すると、複数のセグメントの各々のr0値は同じであるのに対し、図8では、各々が異なる、すなわちr1、r2、r3、r4、r5、及びr6となっていることがわかるであろう。
【0051】
この場合、最初のイオン集団が多セグメント化した線形イオントラップ内に捕捉される。次に、この最初のイオン集団が、公知の方法及び/又は上述した方法によりm/z範囲(m、m、m、m、m、m)で空間的に分割されて、いくつかのイオン集団が生み出される。上記の均一なr0による例と比較して、この分割を行うためのDC電場及びAC電場を作り出すのに必要な電圧を適当に調整する必要がある。走査イベント中、多セグメント化した線形イオントラップの個々のセグメントに同じRF電場が印加されると、質量範囲(m、m、m、m、m、m)全体にわたるイオンが、同じqパラメータ又はqパラメータに近いパラメータを有する隣接する(異なるr0値のr1、r2、r3、r4、r5、及びr6の)セグメントから放出されることになる。これは、qパラメータ、質量、RF電位、周波数、及びr0の間の関係に起因するものである。このように、イオン集団を完全に放出するのに必要な時間の最適化を実現することができるが、質量分解能、質量精度、及び感度という点で妥協がなされることになる。
【0052】
特定のriを有する個々のセグメントを少なくとも3つのセクションに細分化し、軸方向のAC電場とDC電場との組み合わせを作り出して、前回同様に均一なr0を有するセグメント間でイオンを分割することによる同じアプローチを行うことができる。この分割を行うためのDC電場及びAC電場に対する電圧もまた、変化するriを考慮に入れて同様に調整する必要がある。
【0053】
例えば、ロッドの組の間にDC励起電圧を印加したり、或いはただ単にイオンにパルス振動を加えて検出器装置へ放出したりするといった別の方法も存在し、この方法により、イオントラップからイオンを放出することができる。これらの手順の詳細については本明細書では説明しないが、当業者には周知である。
【0054】
本発明のさらに別の態様では、図9に示すように、線形イオントラップを動作させる代替方法について説明する。この方法のステップは、最初のイオン集団を多セグメント化した線形イオントラップ内に捕捉するステップ(ステップ910)と、最初のイオン集団を、第1の集団及び第2の集団を含む少なくとも2つのイオン集団に空間的に分割するステップ(ステップ920)と、第1のイオン集団を第2のイオン集団と無関係に操作するステップ(ステップ930)とを含むことができる。その後、第1及び第2のイオン集団に相当するイオンの少なくとも一部を検出器装置で検出することができる。検出器装置は、第1及び第2のイオン集団に対して別個の検出器を含むことができる。本発明の別の態様では、第1及び第2のイオン集団に相当するイオンの操作をほぼ同時に行ことができる。本発明のさらに別の態様では、イオン集団を後続する質量分析装置へ転送することができる。
【0055】
この方法は、イオンを開裂させる必要があるタンデム質量分析(MS/MS)実験を行う際に特に有用である。最も関心対象である同定を可能にする完全なMS走査を実行した後、これらのイオンのみが次の注入イベント中にトラップ内に蓄積される。或いは、最初の注入イベントから得られるわずかなイオンのみが完全なMS走査に使用される。適当なAC及びDC電位を使用して、イオンの残りを他のセグメント内に蓄積することができる。この最後のアプローチは、注入時間が長い場合に特に有益である。また、最初のイオン集団を、第1のイオン集団、第2のイオン集団、及び任意にこれ以上の集団に空間的に分割し、全てのイオン集団が同じイオン源から同じ条件下で生じたようにすることができる。次に、例えば、個々の集団内の異なるm/zのイオンを分離させることにより、個々のイオン集団を互いに独立して操作することができ、その後、この2つのm/zに開裂が行われる。開裂が行われると、個々のセグメントの中身を別個の検出器装置へ転送し、基本的に1つの線形イオントラップを利用して2つの開裂実験を同時に容易に行うことができるようになる。これらのイベントのうちの全て又はいくつかをほぼ同時に行うことができる。これにより、プロテオミクス業界において時間と高額な消耗品とが節約される。
【0056】
デジタル電子回路、又はハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、或いはこれらを組み合わせて本発明の方法を実施することができる。入力データに対して動作を行い、出力を生成することによって本発明の機能を実行するためのコンピュータプログラムを実行する1又はそれ以上のプログラム可能なプロセッサにより、本発明における方法ステップを実施することができる。
【0057】
様々な態様に基づいて説明した様々な特徴を組み合わせて、本発明のさらなる態様を形成することができる。
【0058】
別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、一般に本発明が属する技術分野の当業者に理解される意味を有するものである。開示した材料、方法、及び実施例は、例示的なものにすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本明細書で説明した内容の同等物と同様の方法及び材料を使用して本発明を実施できることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0059】
380 多セグメント化した線形イオントラップ
395 ダイノード
605 最初のイオン集団
610、615、620 四重極ロッドアセンブリ
625 軸方向
630、635、640、645、650、655 セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形イオントラップを動作させる方法であって、
a.最初のイオン集団を前記イオントラップ内に捕捉するステップと、
b.前記最初のイオン集団を、少なくとも第1及び第2のイオン集団を含む少なくとも2つのイオン集団に空間的に分割するステップと、
c.イオンを線形イオントラップから放出する前に、第1のイオン集団に相当するイオンの少なくとも一部を、第2のイオン集団に相当するイオンの少なくとも一部とは無関係に操作するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のイオン集団に相当する前記イオンの少なくとも一部は、前記第2のイオン集団に相当する前記イオンの少なくとも一部と同時に操作される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記操作ステップはイオンを開裂させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記操作ステップは、所望の質量電荷比の範囲を有するイオンを分離するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のイオン集団は、前記第2のイオン集団の質量電荷比の範囲とは異なる質量電荷比を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記最初のイオン集団は、広い範囲の質量電荷比の値を有し、前記第1のイオン集団は、前記最初のイオン集団の質量電荷比の値の範囲よりも狭い範囲の質量電荷比の値を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記広い範囲とは、200Thと4000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記狭い範囲とは、200Thと2000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記狭い範囲とは、2000Thと4000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項10】
各々がセクションに分けられた複数の電極を有する線形イオントラップと、
前記複数の電極のセクションに電圧を印加して、第1及び第2のイオン集団をそれぞれ閉じ込める少なくとも第1及び第2のセグメントを前記線形イオントラップ内に確立するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記複数の電極のセクションに電圧を印加し、或いは該セクションに印加された電圧を変化させて、イオンを前記線形イオントラップから放出する前に、前記第1のイオン集団に相当する前記イオンの少なくとも一部を、前記第2のイオン集団に相当するイオンとは無関係に操作するようにさらに構成されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記複数の電極のセクションに電圧を印加し、或いは該電圧を調節して、前記第1のイオン集団に相当する前記イオンを、前記第2のイオン集団に相当する前記イオンと同時に操作するようにさらに構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記操作はイオンの開裂を含む、
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記操作は、所望の質量電荷比の範囲を有するイオンを分離する工程を含む、
ことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記第1及び第2のイオン集団は異なる質量範囲のイオンを含む、
ことを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記複数の電極の各々は3つのセクションを有する、
ことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
個々のセクションは3分割した電極構造を備える、
ことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
線形イオントラップを動作させる方法であって、
a.少なくとも第1及び第2の2つのイオン集団が設けられた、空間的に分割したイオン集団を捕捉するステップと、
b.前記空間的な分割を前記線形イオントラップ内で維持するステップと、
c.イオンを線形イオントラップから放出する前に、前記第1のイオン集団に相当する前記イオンの少なくとも一部を、前記第2のイオン集団に相当する前記イオンの少なくとも一部とは無関係に操作するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
第1及び第2のイオン集団における前記イオンの少なくとも一部は同時に操作される、
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記操作ステップはイオンを開裂させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記操作ステップは、所望の質量電荷比の範囲を有するイオンを分離するステップを含む、
ことを特徴とする請求項17から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のイオン集団は、前記第2のイオン集団の質量電荷比の範囲とは異なる質量電荷比の範囲を有する、
ことを特徴とする請求項17から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記最初のイオン集団は、広い範囲の質量電荷比の値を有し、前記第1のイオン集団に相当するイオンは、前記最初のイオン集団の質量電荷比の値の範囲よりも狭い範囲の質量電荷比の値を有する、
ことを特徴とする請求項17から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記広い範囲とは、150Thと4000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記狭い範囲とは、150Thと2000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記狭い範囲とは、2000Thと4000Thとの間のことである、
ことを特徴とする請求項22又は請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−544119(P2009−544119A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519578(P2009−519578)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/072392
【国際公開番号】WO2008/008634
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)
【Fターム(参考)】