高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料
【課題】 ホルボールエステルを含んだ有機物中からホルボールエステルを低コストかつ高い処理能力にて分解除去して、高タンパク質含有有機物を製造する。
【解決手段】 ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる。このとき、ホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌とを混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させることが好ましい。
【解決手段】 ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる。このとき、ホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌とを混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを除去することで、高タンパク質含有有機物及び飼料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物向け飼料または飼料材料の加工生産過程を対象とし、飼料または飼料材料の原料中に含まれている環境汚染物質や毒性物質を取り除く目的でなされる処理方法として、特許文献1および特許文献2に開示されたものが代表例として挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、環境汚染物質または毒性成分を含有する脂肪または油に、揮発性作業流体である脂肪酸エステルや脂肪酸アミド、遊離脂肪酸や炭化水素類を添加した後、脂肪または油と揮発性作業流体とともにストリッピング処理を施すことによって、揮発性作業流体と一緒に環境汚染物質または毒性成分を脂肪または油から分離するものである。なお、ストリッピング処理とは、除去したい特定の物質を含んだ液体中に蒸気やガスを吹き込んだり、若しくは揮発性の高い液体を混合した後揮発させたり、又は液体全体を真空条件にすることにより、特定の物質を蒸気やガス相または揮発性流体相に移動させ、又は特定物質自身を揮発させることで、特定の物質を液体中から除去する処理法である。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、飼料や食料としての穀物中に含有されているフィチン酸を除去することを目的としている。高濃度のフィチン酸を含有する飼料や食物を動物が摂取した場合、栄養上重要な微量金属類の正常な腸管内吸収が妨害されて一連の欠乏障害を起こす恐れがある。このため、前記のようなフィチン酸を含んだ穀物中からフィチン酸を除去することが求められる。この技術では、フィチン酸を含む大豆粕などの穀物に麹菌を接種して製麹することで、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素を利用して穀物中のフィチン酸を分解除去している。
【0005】
【特許文献1】特許第3905538号公報
【特許文献2】特開平8−214822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ストリッピング過程を経た後には環境汚染物質あるいは毒性成分を含んだ揮発性作動流体が残ることになる。この揮発性作動流体から環境汚染物質あるいは毒性成分を分離するのは容易ではないため、一度ストリッピング過程を経た揮発性作動流体を再利用することは難しい。それゆえ、ストリッピング処理する毎に新たな揮発性作動流体を使うことが要求されるとともに、ストリッピング過程を経た揮発性作動流体には環境汚染物質あるいは毒性成分が含まれているため、これを安全に処分することが求められ、処理に関わるランニングコストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、この技術で利用されているストリッピング処理は、実際にストリッピング処理を行うストリッピング槽において、槽内の温度や圧力、揮発性作動流体の供給率などを正確にコントロールしなければ、環境汚染物質や毒性成分の除去率が上がらない。このため、これらを実現させるためには必然的に高価な制御装置や機器が必要となり、設備導入時のイニシャルコストも高くなってしまうという問題もあった。
【0008】
さらに、この技術で利用しているストリッピング処理は、処理対象物中の環境汚染物質や毒性成分と揮発性作動流体とがストリッピング槽内で互いに十分混合・接触しなければ除去率をあげることができない。このため、必然的に処理対象物は脂肪または油などの液状の物質に限られてしまう。したがって、大豆粕やその他植物の絞り粕等の固体状の処理対象物に対しては適用が困難であるという大きな問題を有している。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術は、大豆粕やその他植物の絞り粕等の固体状の処理対象物に対しても適用ができるものの、除去可能なものは処理対象物中に含まれているフィチン酸に限られる。このため、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素で分解できない他の毒性成分が処理対象物中に含まれている場合は適用ができないという問題がある。
【0010】
ここで、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子には油分が30〜40%という高い含有率で含まれているが、この油には発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれているため、食用には向かない。このため、食糧用途との競合を起こさない有望な再生可能エネルギー資源として近年世界中で注目されている。
また、多量の種子を搾油する際には必然的に多量の種子絞り粕が発生するが、この絞り粕のタンパク質含有率は約60%と主な飼料原料である大豆絞り粕のタンパク質含有率(約45%)よりも高く、ヤトロファ種子絞り粕は大豆絞り粕よりも優れる飼料原料として利用できる可能性をもっている。
しかし、このヤトロファ種子絞り粕中にもホルボールエステル類が含まれるため、現実には飼料原料としての利用は困難であり、付加価値の低い肥料としての利用方法か、あるいは利用せずに廃棄するという方法しかないのが現状である。
【0011】
ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から、その毒性成分であるホルボールエステルを除去する目的で特許文献1に開示された技術を適用しようとしても、ヤトロファ種子絞り粕は固形状の有機物であるため、この技術に使われているストリッピング処理ではホルボールエステルを十分に除去することは物理的に困難である。また、特許文献2に開示された技術を適用しようとした場合においても、麹菌ではホルボールエステルの分解能力が低いためにやはり十分に除去することができない。
【0012】
以上述べてきたように、ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から毒性成分であるホルボールエステルを低コストで十分に除去するという目的は、すでに開示されているような技術だけでは達成できず、上記目的を達成可能とする新たな技術の開発が要求されていた。
【0013】
そこで、本発明者らは、鋭意研究し、ホルボールエステルに対して高い分解能力を有しながら入手が容易な微生物を利用することで、ホルボールエステルを含んだ有機物からホルボールエステルを低コストかつ高い処理能力にて分解除去できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、バチルス属菌を用いて、ホルボールエステルを含んだ有機物からホルボールエステルを除去し、家畜の飼料として好適に用いることができる高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の高タンパク質含有有機物の製造方法は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる方法としてある。
【0015】
また、本発明の高タンパク質含有有機物は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させた構成としてある。
【0016】
また、本発明の飼料の製造方法は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌を混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる方法としてある。
【0017】
また、本発明の飼料は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌とを混合して発酵させ、ホルボールエステルを分解して得られた発酵産物を含有する構成としてある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から、ホルボールエステルを高価な揮発性試薬を使ったり処理に困る毒性物質の含んだ廃液を発生させることなく、かつ高価な制御装置や制御機器を導入することなく除去することができる。
また、安価で入手が容易なバチルス属菌を使ってホルボールエステルを含む有機物を比較的条件の緩い条件で発酵させることによって、他の微生物をつかった場合よりも効率良くホルボールエステルを分解除去することができる。
これらにより、処理に関わるイニシャルコスト、ランニングコストを低く抑えながらも優れた効率でホルボールエステルが分解除去することができる高タンパク質含有有機物の製造方法、その高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及びその飼料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図2】ヤトロファの油の生産性を説明する図である。
【図3】ヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図である。
【図4】ヤトロファ種子核搾油絞り粕の、飼料原料としての優位性を説明する図である。
【図5】有機物中のホルボールエステル分解率を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図7】有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図9】本発明の第四実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図11】実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
【図12】実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示すグラフである。
【図13】本発明の飼料による鶏の飼育試験結果を示す図及び平均体重推移を示すグラフである。
【図14】本発明の飼料による鶏の飼料摂取量を示す図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態の構成について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。図2〜図5は、それぞれヤトロファの油の生産性を説明する図、ヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図、有機物中のホルボールエステル分解率を示す図、ヤトロファ種子核搾油絞り粕の、飼料原料としての優位性を説明する図である。
【0022】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法は、図1に示すように、まず処理対象であるホルボールエステルを含む有機物を、バチルス(Bacillus)属菌と共に、かく拌工程において、均一な分布になるまで十分にかく拌する。
次に、かく拌工程により得られた混合物を、温度が管理された発酵室や発酵容器内に移して、所定の期間発酵させる発酵工程を行う。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0023】
ここで、高タンパク質含有有機物とは、タンパク質含有率の高い有機物を意味する。具体的には、タンパク質含有率が40〜65%、又はそれ以上の有機物を高タンパク質含有有機物ということができる。
このようにして得られた高タンパク質含有有機物を、家畜用の飼料に配合して、あるいはそのまま用いて、飼料を得ることができる。家畜用の飼料に配合して用いる場合、配合割合は特に限定されないが、実施例において後述するように、例えば高タンパク質含有有機物を飼料に10重量%添加しても、特に問題なく鶏の育成が可能であることが確認されている。なお、家畜とは、犬、猫、豚、牛、馬、羊、鶏等の人以外のほ乳類及び鳥類であって、人により飼育されるものとして用いている。
【0024】
本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において使用するホルボールエステルを含む有機物としては、例えばトウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いることができる。
【0025】
図2は、世界各地で栽培されている代表的な油糧作物各種について、単位耕地面積あたりの油の年間生産量を比較したものである。同図によれば、パームの油生産量が突出して大きく、次いでヤトロファとなっている。しかし、パームは栽培可能地域が、降水量が豊富で比較的肥沃な熱帯地方に限られており、またパーム油は食糧としての用途が可能である。このため、パームを燃料や工業用途として多量に使用することは、近年世界的なコンセンサスが得にくい状況になってきており、パーム油を再生エネルギー資源として生産拡大してゆくことは困難である。
【0026】
一方、ヤトロファはパームに次ぐ高い油生産量を持ちながら、ヤトロファ油には発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれているため、食用とすることができない。このため、パーム油のように食糧用途との競合を起こすことがない。また、ヤトロファは、パームが栽培可能な多雨の熱帯地域はもちろん、降水量が少なく乾燥していて食糧用の作物が育たない土地でも栽培が可能であるため、有望な再生エネルギー資源として世界中で注目されている。
【0027】
図3は、ヤトロファ栽培耕地の単位面積あたりから生産されるヤトロファ種子量と、その種子を搾油することによって発生する油と搾油絞り粕の発生量を比較したものである。同図に示されるように、ヤトロファを原料とした場合、単位耕地面積あたり年間約1.5トンの油を生産することができるが、同時に油の発生量の2倍以上に相当する、単位耕地面積あたり年間3.5トンもの搾油絞り粕が付随的に発生してしまう。
このように油を生産すると同時に大量に発生する搾油絞り粕には、油と同様の発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれている。したがって、このままでは動物用の飼料原料とすることができず、その用途は、付加価値の低い肥料や、単価の低い固形燃料に限られ、ヤトロファを栽培することによって得られる再生可能な資源全体を有効に活用することが困難であった。
【0028】
このような状況において、本実施形態では、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を搾油した後の絞り粕を使うことで、そのホルボールエステルを分解除去することができ、ホルボールエステルを除去した絞り粕を、動物用飼料原料として価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性を大幅に改善でき、より低コストの油を市場に供給することが可能となる。また、植物としてのヤトロファが生長することによって生産された再生可能なバイオマス資源をより有効に活用することが可能となっている。
【0029】
次に、図4を参照して、ヤトロファの種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を、本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法における処理対象のホルボールエステルを含む有機物として用いる場合の利点について説明する。同図は、ヤトロファ種子核の搾油後絞り粕と、代表的な飼料原料である大豆搾油後絞り粕とについて、飼料原料として重要な組成項目について比較した結果を示したものである。
【0030】
この図から、飼料原料として最重要の組成であるタンパク質含有率は、大豆が約45%程度なのに対して、ヤトロファは60%以上となっていることがわかる。脂質含有率、灰分含有率については、ヤトロファは大豆と大差はなく、繊維分含有率では大豆よりヤトロファの方が少ないことが示されている。これらから、発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが除去できさえすれば、高タンパク質で低繊維分のヤトロファ種子核搾油後絞り粕は、大豆絞り粕よりも優れた飼料原料になりえることがわかる。
【0031】
なお、本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において、バチルス属菌を混合して発酵させることで、ホルボールエステルを分解する対象の有機物は、ヤトロファに限定されるものではない。本実施形態の技術的思想は、ホルボールエステルを含む高タンパク質含有有機物であれば同様に適用でき、そのホルボールエステルをバチルス属菌により分解することで、高タンパク質含有有機物を好適に製造することが可能である。
【0032】
本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において使用するバチルス属菌としては、例えばバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルス(Bacillus subtilis subsp. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、本属における各種バチルス属菌を好適に用いることが可能である。
【0033】
図5は、有機物中のホルボールエステル分解率を各菌について比較測定した結果を示している。実験条件としては、ホルボールエステルを含む有機物の重量の1%の菌体を混合した後、各菌の最適培養温度(バチルス属菌(バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー)と酵母については37℃、麹菌については30℃)で3週間発酵処理した。そして、HPLC解析により、処理前の有機物中に含まれていたホルボールエステル量の何%が分解されたかを各菌間で比較した。その結果、バチルス属菌が最も優れた分解能を持っていることが示されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、入手が容易な微生物であるバチルス属菌を利用するとともに、簡単な工程により、ホルボールエステルを含んだ有機物から、高い分解除去率かつ低コストで発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを除去することが可能となる。
【0035】
すなわち、ホルボールエステルを分解除去する処理過程において、高価な揮発性試薬を使ったり、処理に困る毒性物質の含んだ廃液を発生させたりすることなく、かつ高価な制御装置や制御機器を導入することなく処理を行うことができる。
また、安価で入手が容易なバチルス属菌を使ってホルボールエステルを含む有機物を比較的条件の緩い条件で発酵させることにより、他の微生物をつかった場合よりも効率良くホルボールエステルを分解除去することができる。その結果、処理に関わるイニシャルコスト、ランニングコストを低く抑えながらも高いホルボールエステル除去率を実現することが可能となる。
さらに、バチルス属菌の副次的な働きにより、処理後の有機物中のビタミンやミネラルなどの成分を増加させることができ、特に処理後の有機物を動物飼料原料などに利用する際には、飼料中の栄養素を高めることも可能となる。
【0036】
また、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を搾油した後の絞りかすを使うことで、本実施形態によれば、ヤトロファ栽培による油生産の副産物として油以上に大量に発生する搾油絞り粕中のホルボールエステルを分解除去することができ、得られた搾油絞り粕を動物用飼料原料として価値を高めて市場に出すことが可能となる。
さらに、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕(ヤトロファ種子核搾油絞り粕)を使うことで、飼料原料としての栄養素の濃度を格段に高めることができ、大豆絞り粕よりも優れた飼料原料とすることが可能となる。このため、処理後の搾油絞り粕を、動物用飼料原料としてさらに一層価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性の更なる改善に貢献でき、それにより再生可能エネルギー資源としてのヤトロファ油の市場価格を、より安価なレベルに安定させる効果が期待できる。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。図7は、有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法は、図6に示すように、(A1)混合工程、(A2)高温高圧工程、(A3)かく拌工程、(A4)発酵工程を含むものとすることができる。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態においてもホルボールエステルを含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いることができる。
【0038】
(A1)混合工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、混合割合としては、ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部に対して、水0.5〜3質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を2〜3質量部とすることがより好ましい。
【0039】
(A2)高温高圧工程
次に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。これにより、バチルス属菌による発酵を阻害し得る微生物を死滅させる。これは、オートクレーブにより、一般的な方法で行うことができる。
通常使用される処理対象有機物には様々な種類の微生物が含まれており、この中にはバチルス属菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する微生物も含まれていることがある。そこで、これらの阻害微生物を死滅させるために、高温高圧滅菌が行われる。
【0040】
(A3)かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加して、均一な分布になるまで十分にかく拌する。このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対してバチルス属菌0.004〜0.2質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を、0.04〜0.12質量部とすることがより好ましい。
【0041】
(A4)発酵工程
次に、バチルス属菌を加えた滅菌水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間としては、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0042】
ここで、発酵時間を2〜4週間とした理由について図7を参照して説明する。同図に示される通り、発酵工程開始後1週間の時点では、ホルボールエステルの分解率は、およそ50%であるが、2週間経過後にはおよそ80%以上、3週間経過後はおよそ95%、4週間経過後にはおよそ99%となっている。このように発酵時間を長くすればするほどホルボールエステルの分解率は上がるが、処理時間が長引くと状態を維持するためのコストが嵩むため、分解率とコストとがバランスする発酵時間の選択が求められる。以上のような検討をした結果、発酵時間は2〜4週間とすることが最も効率的であることがわかった。
【0043】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、ホルボールエステルを含んだ有機物中からホルボールエステルを低コストかつ高い処理能力で分解除去することができ、家畜の飼料に好適に用いることができる高タンパク質含有有機物、及びこれを用いた飼料を製造することが可能となる。
また、バチルス属菌による処理対象有機物の発酵時間を最適化することができ、またバチルス属菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する要因を取り除くことができる。このため、最低限の量のバチルス属菌投入で最大限のホルボールエステル分解作用を得ることができ、有機物中のホルボールエステル除去に必要なコストをさらに低く抑えることが可能となる。
【0044】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の構成について、図8を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。本実施形態は、バチルス属菌そのものを使うのではなく、本発明のいずれかの実施形態で得られた高タンパク質含有有機物を発酵用の種菌として使う点で、第二実施形態と異なる。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができる。
すなわち、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A1)混合工程、(A2)高温高圧工程は、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0045】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A3)かく拌工程は、第二実施形態と異なり、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを混合液に添加するのではなく、本実施形態の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物を滅菌水に加え、これを高温高圧工程により得られた滅菌した混合液に添加してかく拌する。このようにすれば、毎回新たにバチルス属菌を準備する必要がなく、高タンパク質含有有機物の製造に必要なコストを低減させることが可能となる。
【0046】
このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対して、高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を添加することが好ましい。高タンパク質含有有機物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、高タンパク質含有有機物の混合割合を、0.2〜0.4質量部とすることがより好ましい。
そして、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A4)発酵工程は、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0047】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、毎回新たにバチルス属菌を準備する必要がない。このため、ホルボールエステルを分解するために必要なバチルス属菌の総量を、第二実施形態の場合よりさらに少なくすることができ、結果として高タンパク質含有有機物や飼料の製造に必要なコストを一層低く抑えることが可能となる。
【0048】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法について、図9を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
本実施形態は、ホルボールエステルを含む有機物にバチルス属菌を混合して予め前培養し、前培養産物を、ホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることで、高タンパク質含有有機物を製造する点で、第二実施形態と異なる。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0049】
<前培養>
(B1)第一混合工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物2質量部に対して、水0.5〜1.5質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を1〜1.5質量部とすることがより好ましい。
【0050】
(B2)第一高温高圧工程
次に、第二実施形態における高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。
【0051】
(B3)第一かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加してかく拌する。このとき、滅菌水0.5質量部に対して、バチルス属菌0.002〜0.1質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を0.02〜0.06質量部とすることがより好ましい。
【0052】
(B4)前培養工程
次に、第一かく拌工程により得られた混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、1〜7日間とすることが好ましい。
【0053】
<本発酵>
(B5)第二混合工程
次に、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物5質量部に対して、水2〜4質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を3〜4質量部とすることがより好ましい。
【0054】
(B6)第二高温高圧工程
次に、第一高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。
【0055】
(B7)第二かく拌工程
次に、前培養により得られた前培養産物を滅菌水に加える。そして、この前培養産物を加えた滅菌水を、第二高温高圧工程により滅菌した混合液に添加してかく拌する。
このとき、滅菌水1質量部に対して、前培養産物1〜4質量部を加えることが好ましい。前培養産物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、前培養産物の混合割合を2〜4質量部とすることがより好ましい。
【0056】
(B8)本発酵工程
次に、バチルス属菌含有水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、前培養によりバチルス属菌を効率的に増殖させ、得られた前培養産物をホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることができるため、発酵作用を促進させることが可能となる。
これにより、有機物中のホルボールエステルをより効率的に分解することが可能となる。
【0058】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法について、図10を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
本実施形態は、ホルボールエステルを含む有機物にバチルス属菌を混合して予め前培養し、前培養産物を、ホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることで、高タンパク質含有有機物を製造するものである。第四実施形態とは、その第一及び第二混合工程を有さず、菌体等や水の配合割合が異なる点で異なっている。その他の点については、第四実施形態と同様のものとすることができる。
【0059】
<前培養>
(C1)第一高温高圧工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物10質量部を高温高圧滅菌する。これにより、バチルス属菌による発酵を阻害し得る微生物を死滅させる。これは、オートクレーブにより、一般的な方法で行うことができる。
【0060】
(C2)第一かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した有機物に添加してかく拌する。このとき、滅菌水5〜10質量部に対して、バチルス属菌0.01〜0.6質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を0.1〜0.6質量部とすることがより好ましい。
【0061】
(C3)前培養工程
次に、第一かく拌工程により得られた混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、1〜7日間とすることが好ましい。
【0062】
<本発酵>
(C4)第二高温高圧工程
次に、第一高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物100質量部を高温高圧滅菌する。
【0063】
(C5)第二かく拌工程
次に、前培養により得られた前培養産物を滅菌水に加える。そして、この前培養産物を加えた滅菌水を、第二高温高圧工程により滅菌した有機物に添加してかく拌する。
このとき、滅菌水50〜100質量部に対して、前培養産物5〜20質量部を加えることが好ましい。前培養産物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、前培養産物の混合割合を10〜20質量部とすることがより好ましい。
【0064】
(C6)本発酵工程
次に、バチルス属菌含有水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0065】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法では、第四実施形態と異なり、水の添加を、ホルボールエステルを含んだ有機物に対してではなく、バチルス属菌に対して行っている。このように、菌を溶かす水の量をできるだけ多くすることで、菌を溶かした水を添加した有機物の中で、菌がより広範囲に均一に分散され、発酵が有機物全体でより均一となる。
このため、有機物全体の発酵効率が高くなることが期待され、有機物中のホルボールエステルを一層効率的に分解することが可能となる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法についての実施例と比較例、並びにこれらにより得られた高タンパク質含有有機物及び飼料の有用性に関する評価について、図11〜図14を参照して説明する。図11、図12は、それぞれ実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図、グラフである。図13は、本発明の飼料による鶏の飼育試験結果を示す図及び平均体重推移を示すグラフである。図14は、本発明の飼料による鶏の飼料摂取量を示す図及びグラフである。
【0067】
(実施例1)
高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程に先立って、以下の工程により、ヤトロファから油を抽出して、ヤトロファ残渣を得た。
まず、ヤトロファの種子24kgを脱皮機にかけてカーネル部と種皮部とに分離し、カーネル部のみを集めた。集められたカーネル部の量は、約14.4kgであった。次に、粉砕機を用いて、カーネル部を直径2mm程度の大きさになるように粉砕した。
【0068】
次に、電動搾油機(品番S100-200、株式会社サン精機製)を用いて、粉砕したカーネル部を搾油して、油を抽出し、搾油機から排出されたカーネル絞り粕(=ヤトロファ残渣)を集めて、自然冷却させた。集められたヤトロファ残渣は、約7.2kgであった。
【0069】
次に、以下の工程により、前培養と本発酵を行って、ホルボールエステルを分解した高タンパク質含有有機物を得た。
まず、ヤトロファ残渣10gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌した。
次に、バチルス属菌として、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans、NBRC12583株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用し、その菌体0.6gを加えた滅菌水10gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌してから37℃で3日間前培養した。
【0070】
なお、かく拌は、バチルス属菌を加えた混合液の入ったビーカーを水平に倒して、回転させることにより行った。ヘラ等を使ってかく拌すると、固体状の有機物が崩れて泥状となり、通気が悪くなるためである。このようなかく拌の方法については、以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0071】
次に、ヤトロファ残渣100gをオートクレーブにより120℃で15分間滅菌し、前培養して得られた培養液(培養産物)10gを加えた滅菌水50gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌した。
そして、8日毎に水を25g追加で添加するとともにかく拌し、50℃で24日間本発酵させ、この発酵産物として、ホルボールエステルが分解された高タンパク質含有有機物である発酵ヤトロファを得た。
最後に、この高タンパク質含有有機物を鶏用試験飼料(WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10重量%添加し、本実施例の飼料を製造した。
【0072】
(実施例2)
実施例1と同条件で、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0073】
(実施例3,4)
バチルス属菌として、バチルス・スミシー(Bacillus smithii、NBRC15311株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0074】
(実施例5,6)
バチルス属菌として、バチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルス(Bacillus subtilis subsp. subtilis、NBRC13719株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0075】
(実施例7,8)
バチルス属菌として、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis、NBRC12200株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0076】
(実施例9)
バチルス属菌として、バチルス・セレウス(Bacillus cereus、NBRC15305株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0077】
(実施例10,11)
バチルス属菌として、バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto、有限会社宮城野納豆製造所(宮城県仙台市宮城野区銀杏町4-29)から入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0078】
(比較例1)
まず、実施例1において得られたヤトロファ残渣10gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌した。
次に、混合液に添加する菌として、ラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・デルブリッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、NBRC3202株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用し、その菌体0.6gを加えた滅菌水10gを、滅菌した混合液に添加して、均一な分布になるまで十分にかく拌してから30℃で3日間前培養した。
【0079】
次に、ヤトロファ残渣100gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌し、前培養して得られた培養液(培養産物)10gを加えた滅菌水50gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌した。
そして、30℃で24日間本発酵させ、この発酵産物として、ホルボールエステルが分解された高タンパク質含有有機物である発酵ヤトロファを得た。
なお、比較例1においては、8日毎の水の追加及びかく拌を行わず、発酵温度は30℃としている。これは、比較例1の菌種では、これらの条件が発酵に適しているためである。
最後に、この高タンパク質含有有機物を鶏用試験飼料(WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10重量%添加し、本比較例の飼料を製造した。
【0080】
(評価)
<1.ホルボールエステルの分解率>
実施例及び比較例における高タンパク質含有有機物のホルボールエステル含有量(PE含有量)を、本発酵の開始日から24日目まで8日毎に測定して、ホルボールエステルの平均分解率を算出した。その結果を図11及び図12に示す。
【0081】
ここで、各実施例及び比較例では、ホルボールエステルを含有する有機物として、いずれもトウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを用いている。また、図11における「菌種」には、有機物中のホルボールエステルを分解するために用いた菌の種名を示している。「菌株」には、実施例10、11では、有限会社宮城野納豆製造所(宮城県仙台市宮城野区銀杏町4-29)から入手したことを示し、他の実施例については、NBRC(NITE Biological Resource Center)から入手したこと、及びその菌株番号を示している。「PE含有量(mg/g)」には、発酵工程における混合物中のホルボールエステルの含有量を、本発酵の開始から8日毎に示している。
【0082】
(1)PE含有量の測定方法
発酵工程における混合物中のホルボールエステルの含有量は、以下のようにして測定した。
まず、測定対象となるサンプル1.5gに、ジクロロメタン(Dichloromethane)を20ml添加して、ホモジナイザーにより2分間粉砕し、遠心機にかけ、残滓を収集した。これに、ジクロロメタン(Dichloromethane)を20ml添加して1分間激しく振動し、遠心機にかけて濾過する工程を5回繰り返し、全ての濾過液を収集して窒素ガス流下で乾燥した。
【0083】
次に、これをテトラヒドロフラン5mlに溶かし、0.2μmのフィルターで濾過して、20μlをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にインジェクションした。HPLCには、WATERS(登録商標)2690(ウォーターズ コーポレーション製)、検出器にはWATERS996(ウォーターズ コーポレーション製)を使用した。HPLCは、以下の条件で行った。
・HPLC column:symmetry C18,3.5μm,100×4.6mm
・溶媒:A 1.75ml o-phosphoric acid(85%) in 1L distilled water、B Acetonitrile(HPLC grade)、C Tetrahydrofuran(HPLC grade)
・流量1ml/分
・工程:(1)A液60%,B液40%(15分)、(2)A液25%,B液75%まで(15分)、(3)B液100%まで(10分)、(4)C液100%(10分)
【0084】
(2)ホルボールエステルの分解率
図11に示される通り、実施例1−11のPE含有量は、本発酵の開始日に2.98mg/gであったものが、8日目、16日目、24日目には、それぞれ平均で、1.17mg/g、0.25mg/g、0.14mg/gとなっている。
したがって、8日目、16日目、24日目のホルボールエステル分解率は、それぞれ60.8%、91.7%、95.4%である。
【0085】
一方、比較例1のPE含有量は、本発酵の開始日に2.98mg/gであったものが、8日目、16日目、24日目には、それぞれ2.06mg/g、1.78mg/g、1.66mg/gとなっている。
したがって、8日目、16日目、24日目のホルボールエステル分解率は、それぞれ30.9%、40.3%、44.3%である。
【0086】
この結果から、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを分解するための菌として、バチルス属菌を用いることで、ホルボールエステルを効率的に分解できることが明らかとなった。
一方、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを分解するための菌として、その他の菌であるラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・デルブリッキを使用した場合には、ホルボールエステルを十分に除去することはできなかった。
【0087】
<2.鶏の飼育試験>
実施例及び比較例により得られた飼料を用いて、鶏の雛の成長試験をPalawan Agribusiness Development Foundation Inc.(フィリピン国)において以下の方法で行った。
孵化後4日目の鶏の雛を1群3羽にして、ゲージA,B,Cに群分けし、それぞれに実施例で得られた飼料を与えて、十分に成長するかを確認するための試験を行った。
【0088】
ゲージAには、実施例3のバチルス・スミシーにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物(処理ミール)を、鶏用試験飼料WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10%添加して得られた飼料を給与した。また、ゲージBには、実施例6のバチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルスにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物を、ゲージCには、実施例11のバチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットーにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物を、ゲージAと同じ鶏用試験飼料に10%添加して得られた飼料を、それぞれ給与した。
【0089】
そして、孵化後14日まで飼育し、開始時、及び7日毎に各鶏の体重を測定した。どのゲージも試験終了時まで飼料を不断給与し、飲水は自由飲水とした。
使用した鶏の雛は、ブロイラー種鶏由来の種卵より孵化したワクチン歴のない9羽の雌雛であり、これを4日間予備飼育したものである。各鶏の体重変化を図13に、飼料摂取量を図14に示す。
【0090】
図13に示される通り、いずれのゲージの鶏も順調に成長していることがわかる。また、図14に示される通り、いずれのゲージにおいても、飼料摂取は適切に行われている。
したがって、本発明の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法により、バチルス属菌を用いて有機物中のホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物は、飼料として好適に用いることができることが明らかとなった。
【0091】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施例ではヤトロファを用いているが、ホルボールエステルを含有するその他の有機物に、本発明を適用することも可能である。また、上記の評価は、鶏の雛について行ったものであるが、本発明により製造された高タンパク質含有有機物を、豚や牛、馬、その他の家畜の飼料として用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、鶏などの家畜の飼料を製造するために、好適に利用することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを除去することで、高タンパク質含有有機物及び飼料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物向け飼料または飼料材料の加工生産過程を対象とし、飼料または飼料材料の原料中に含まれている環境汚染物質や毒性物質を取り除く目的でなされる処理方法として、特許文献1および特許文献2に開示されたものが代表例として挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、環境汚染物質または毒性成分を含有する脂肪または油に、揮発性作業流体である脂肪酸エステルや脂肪酸アミド、遊離脂肪酸や炭化水素類を添加した後、脂肪または油と揮発性作業流体とともにストリッピング処理を施すことによって、揮発性作業流体と一緒に環境汚染物質または毒性成分を脂肪または油から分離するものである。なお、ストリッピング処理とは、除去したい特定の物質を含んだ液体中に蒸気やガスを吹き込んだり、若しくは揮発性の高い液体を混合した後揮発させたり、又は液体全体を真空条件にすることにより、特定の物質を蒸気やガス相または揮発性流体相に移動させ、又は特定物質自身を揮発させることで、特定の物質を液体中から除去する処理法である。
【0004】
特許文献2に記載の技術は、飼料や食料としての穀物中に含有されているフィチン酸を除去することを目的としている。高濃度のフィチン酸を含有する飼料や食物を動物が摂取した場合、栄養上重要な微量金属類の正常な腸管内吸収が妨害されて一連の欠乏障害を起こす恐れがある。このため、前記のようなフィチン酸を含んだ穀物中からフィチン酸を除去することが求められる。この技術では、フィチン酸を含む大豆粕などの穀物に麹菌を接種して製麹することで、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素を利用して穀物中のフィチン酸を分解除去している。
【0005】
【特許文献1】特許第3905538号公報
【特許文献2】特開平8−214822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ストリッピング過程を経た後には環境汚染物質あるいは毒性成分を含んだ揮発性作動流体が残ることになる。この揮発性作動流体から環境汚染物質あるいは毒性成分を分離するのは容易ではないため、一度ストリッピング過程を経た揮発性作動流体を再利用することは難しい。それゆえ、ストリッピング処理する毎に新たな揮発性作動流体を使うことが要求されるとともに、ストリッピング過程を経た揮発性作動流体には環境汚染物質あるいは毒性成分が含まれているため、これを安全に処分することが求められ、処理に関わるランニングコストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、この技術で利用されているストリッピング処理は、実際にストリッピング処理を行うストリッピング槽において、槽内の温度や圧力、揮発性作動流体の供給率などを正確にコントロールしなければ、環境汚染物質や毒性成分の除去率が上がらない。このため、これらを実現させるためには必然的に高価な制御装置や機器が必要となり、設備導入時のイニシャルコストも高くなってしまうという問題もあった。
【0008】
さらに、この技術で利用しているストリッピング処理は、処理対象物中の環境汚染物質や毒性成分と揮発性作動流体とがストリッピング槽内で互いに十分混合・接触しなければ除去率をあげることができない。このため、必然的に処理対象物は脂肪または油などの液状の物質に限られてしまう。したがって、大豆粕やその他植物の絞り粕等の固体状の処理対象物に対しては適用が困難であるという大きな問題を有している。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術は、大豆粕やその他植物の絞り粕等の固体状の処理対象物に対しても適用ができるものの、除去可能なものは処理対象物中に含まれているフィチン酸に限られる。このため、麹菌が増殖する過程で作り出されるフィターゼやフォスファターゼというフィチン酸分解酵素で分解できない他の毒性成分が処理対象物中に含まれている場合は適用ができないという問題がある。
【0010】
ここで、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子には油分が30〜40%という高い含有率で含まれているが、この油には発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれているため、食用には向かない。このため、食糧用途との競合を起こさない有望な再生可能エネルギー資源として近年世界中で注目されている。
また、多量の種子を搾油する際には必然的に多量の種子絞り粕が発生するが、この絞り粕のタンパク質含有率は約60%と主な飼料原料である大豆絞り粕のタンパク質含有率(約45%)よりも高く、ヤトロファ種子絞り粕は大豆絞り粕よりも優れる飼料原料として利用できる可能性をもっている。
しかし、このヤトロファ種子絞り粕中にもホルボールエステル類が含まれるため、現実には飼料原料としての利用は困難であり、付加価値の低い肥料としての利用方法か、あるいは利用せずに廃棄するという方法しかないのが現状である。
【0011】
ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から、その毒性成分であるホルボールエステルを除去する目的で特許文献1に開示された技術を適用しようとしても、ヤトロファ種子絞り粕は固形状の有機物であるため、この技術に使われているストリッピング処理ではホルボールエステルを十分に除去することは物理的に困難である。また、特許文献2に開示された技術を適用しようとした場合においても、麹菌ではホルボールエステルの分解能力が低いためにやはり十分に除去することができない。
【0012】
以上述べてきたように、ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から毒性成分であるホルボールエステルを低コストで十分に除去するという目的は、すでに開示されているような技術だけでは達成できず、上記目的を達成可能とする新たな技術の開発が要求されていた。
【0013】
そこで、本発明者らは、鋭意研究し、ホルボールエステルに対して高い分解能力を有しながら入手が容易な微生物を利用することで、ホルボールエステルを含んだ有機物からホルボールエステルを低コストかつ高い処理能力にて分解除去できることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、バチルス属菌を用いて、ホルボールエステルを含んだ有機物からホルボールエステルを除去し、家畜の飼料として好適に用いることができる高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の高タンパク質含有有機物の製造方法は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる方法としてある。
【0015】
また、本発明の高タンパク質含有有機物は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌とを混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させた構成としてある。
【0016】
また、本発明の飼料の製造方法は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌を混合して発酵させ、有機物におけるホルボールエステルを分解させる方法としてある。
【0017】
また、本発明の飼料は、ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス属菌とを混合して発酵させ、ホルボールエステルを分解して得られた発酵産物を含有する構成としてある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヤトロファ種子絞り粕のような発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを含有する有機物から、ホルボールエステルを高価な揮発性試薬を使ったり処理に困る毒性物質の含んだ廃液を発生させることなく、かつ高価な制御装置や制御機器を導入することなく除去することができる。
また、安価で入手が容易なバチルス属菌を使ってホルボールエステルを含む有機物を比較的条件の緩い条件で発酵させることによって、他の微生物をつかった場合よりも効率良くホルボールエステルを分解除去することができる。
これらにより、処理に関わるイニシャルコスト、ランニングコストを低く抑えながらも優れた効率でホルボールエステルが分解除去することができる高タンパク質含有有機物の製造方法、その高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及びその飼料を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図2】ヤトロファの油の生産性を説明する図である。
【図3】ヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図である。
【図4】ヤトロファ種子核搾油絞り粕の、飼料原料としての優位性を説明する図である。
【図5】有機物中のホルボールエステル分解率を示す図である。
【図6】本発明の第二実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図7】有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図9】本発明の第四実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図10】本発明の第五実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
【図11】実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
【図12】実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示すグラフである。
【図13】本発明の飼料による鶏の飼育試験結果を示す図及び平均体重推移を示すグラフである。
【図14】本発明の飼料による鶏の飼料摂取量を示す図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の高タンパク質含有有機物の製造方法、高タンパク質含有有機物、飼料の製造方法、及び飼料の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態の構成について、図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。図2〜図5は、それぞれヤトロファの油の生産性を説明する図、ヤトロファの搾油絞り粕の発生量を説明する図、有機物中のホルボールエステル分解率を示す図、ヤトロファ種子核搾油絞り粕の、飼料原料としての優位性を説明する図である。
【0022】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法は、図1に示すように、まず処理対象であるホルボールエステルを含む有機物を、バチルス(Bacillus)属菌と共に、かく拌工程において、均一な分布になるまで十分にかく拌する。
次に、かく拌工程により得られた混合物を、温度が管理された発酵室や発酵容器内に移して、所定の期間発酵させる発酵工程を行う。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0023】
ここで、高タンパク質含有有機物とは、タンパク質含有率の高い有機物を意味する。具体的には、タンパク質含有率が40〜65%、又はそれ以上の有機物を高タンパク質含有有機物ということができる。
このようにして得られた高タンパク質含有有機物を、家畜用の飼料に配合して、あるいはそのまま用いて、飼料を得ることができる。家畜用の飼料に配合して用いる場合、配合割合は特に限定されないが、実施例において後述するように、例えば高タンパク質含有有機物を飼料に10重量%添加しても、特に問題なく鶏の育成が可能であることが確認されている。なお、家畜とは、犬、猫、豚、牛、馬、羊、鶏等の人以外のほ乳類及び鳥類であって、人により飼育されるものとして用いている。
【0024】
本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において使用するホルボールエステルを含む有機物としては、例えばトウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いることができる。
【0025】
図2は、世界各地で栽培されている代表的な油糧作物各種について、単位耕地面積あたりの油の年間生産量を比較したものである。同図によれば、パームの油生産量が突出して大きく、次いでヤトロファとなっている。しかし、パームは栽培可能地域が、降水量が豊富で比較的肥沃な熱帯地方に限られており、またパーム油は食糧としての用途が可能である。このため、パームを燃料や工業用途として多量に使用することは、近年世界的なコンセンサスが得にくい状況になってきており、パーム油を再生エネルギー資源として生産拡大してゆくことは困難である。
【0026】
一方、ヤトロファはパームに次ぐ高い油生産量を持ちながら、ヤトロファ油には発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれているため、食用とすることができない。このため、パーム油のように食糧用途との競合を起こすことがない。また、ヤトロファは、パームが栽培可能な多雨の熱帯地域はもちろん、降水量が少なく乾燥していて食糧用の作物が育たない土地でも栽培が可能であるため、有望な再生エネルギー資源として世界中で注目されている。
【0027】
図3は、ヤトロファ栽培耕地の単位面積あたりから生産されるヤトロファ種子量と、その種子を搾油することによって発生する油と搾油絞り粕の発生量を比較したものである。同図に示されるように、ヤトロファを原料とした場合、単位耕地面積あたり年間約1.5トンの油を生産することができるが、同時に油の発生量の2倍以上に相当する、単位耕地面積あたり年間3.5トンもの搾油絞り粕が付随的に発生してしまう。
このように油を生産すると同時に大量に発生する搾油絞り粕には、油と同様の発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが含まれている。したがって、このままでは動物用の飼料原料とすることができず、その用途は、付加価値の低い肥料や、単価の低い固形燃料に限られ、ヤトロファを栽培することによって得られる再生可能な資源全体を有効に活用することが困難であった。
【0028】
このような状況において、本実施形態では、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を搾油した後の絞り粕を使うことで、そのホルボールエステルを分解除去することができ、ホルボールエステルを除去した絞り粕を、動物用飼料原料として価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性を大幅に改善でき、より低コストの油を市場に供給することが可能となる。また、植物としてのヤトロファが生長することによって生産された再生可能なバイオマス資源をより有効に活用することが可能となっている。
【0029】
次に、図4を参照して、ヤトロファの種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を、本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法における処理対象のホルボールエステルを含む有機物として用いる場合の利点について説明する。同図は、ヤトロファ種子核の搾油後絞り粕と、代表的な飼料原料である大豆搾油後絞り粕とについて、飼料原料として重要な組成項目について比較した結果を示したものである。
【0030】
この図から、飼料原料として最重要の組成であるタンパク質含有率は、大豆が約45%程度なのに対して、ヤトロファは60%以上となっていることがわかる。脂質含有率、灰分含有率については、ヤトロファは大豆と大差はなく、繊維分含有率では大豆よりヤトロファの方が少ないことが示されている。これらから、発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルが除去できさえすれば、高タンパク質で低繊維分のヤトロファ種子核搾油後絞り粕は、大豆絞り粕よりも優れた飼料原料になりえることがわかる。
【0031】
なお、本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において、バチルス属菌を混合して発酵させることで、ホルボールエステルを分解する対象の有機物は、ヤトロファに限定されるものではない。本実施形態の技術的思想は、ホルボールエステルを含む高タンパク質含有有機物であれば同様に適用でき、そのホルボールエステルをバチルス属菌により分解することで、高タンパク質含有有機物を好適に製造することが可能である。
【0032】
本実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法において使用するバチルス属菌としては、例えばバチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・スミシー(Bacillus smithii)、バチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルス(Bacillus subtilis subsp. subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto)等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、本属における各種バチルス属菌を好適に用いることが可能である。
【0033】
図5は、有機物中のホルボールエステル分解率を各菌について比較測定した結果を示している。実験条件としては、ホルボールエステルを含む有機物の重量の1%の菌体を混合した後、各菌の最適培養温度(バチルス属菌(バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー)と酵母については37℃、麹菌については30℃)で3週間発酵処理した。そして、HPLC解析により、処理前の有機物中に含まれていたホルボールエステル量の何%が分解されたかを各菌間で比較した。その結果、バチルス属菌が最も優れた分解能を持っていることが示されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、入手が容易な微生物であるバチルス属菌を利用するとともに、簡単な工程により、ホルボールエステルを含んだ有機物から、高い分解除去率かつ低コストで発がんプロモーターとしての報告があるホルボールエステルを除去することが可能となる。
【0035】
すなわち、ホルボールエステルを分解除去する処理過程において、高価な揮発性試薬を使ったり、処理に困る毒性物質の含んだ廃液を発生させたりすることなく、かつ高価な制御装置や制御機器を導入することなく処理を行うことができる。
また、安価で入手が容易なバチルス属菌を使ってホルボールエステルを含む有機物を比較的条件の緩い条件で発酵させることにより、他の微生物をつかった場合よりも効率良くホルボールエステルを分解除去することができる。その結果、処理に関わるイニシャルコスト、ランニングコストを低く抑えながらも高いホルボールエステル除去率を実現することが可能となる。
さらに、バチルス属菌の副次的な働きにより、処理後の有機物中のビタミンやミネラルなどの成分を増加させることができ、特に処理後の有機物を動物飼料原料などに利用する際には、飼料中の栄養素を高めることも可能となる。
【0036】
また、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を搾油した後の絞りかすを使うことで、本実施形態によれば、ヤトロファ栽培による油生産の副産物として油以上に大量に発生する搾油絞り粕中のホルボールエステルを分解除去することができ、得られた搾油絞り粕を動物用飼料原料として価値を高めて市場に出すことが可能となる。
さらに、ホルボールエステルを含んだ有機物として、ヤトロファの種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕(ヤトロファ種子核搾油絞り粕)を使うことで、飼料原料としての栄養素の濃度を格段に高めることができ、大豆絞り粕よりも優れた飼料原料とすることが可能となる。このため、処理後の搾油絞り粕を、動物用飼料原料としてさらに一層価値を高めて市場に出すことが可能となる。その結果、ヤトロファ栽培を事業とする際の事業の収益性の更なる改善に貢献でき、それにより再生可能エネルギー資源としてのヤトロファ油の市場価格を、より安価なレベルに安定させる効果が期待できる。
【0037】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態の構成について、図6及び図7を参照して説明する。図6は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。図7は、有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図である。
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法は、図6に示すように、(A1)混合工程、(A2)高温高圧工程、(A3)かく拌工程、(A4)発酵工程を含むものとすることができる。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態においてもホルボールエステルを含んだ有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いることができる。
【0038】
(A1)混合工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、混合割合としては、ホルボールエステルを含んだ有機物4質量部に対して、水0.5〜3質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を2〜3質量部とすることがより好ましい。
【0039】
(A2)高温高圧工程
次に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。これにより、バチルス属菌による発酵を阻害し得る微生物を死滅させる。これは、オートクレーブにより、一般的な方法で行うことができる。
通常使用される処理対象有機物には様々な種類の微生物が含まれており、この中にはバチルス属菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する微生物も含まれていることがある。そこで、これらの阻害微生物を死滅させるために、高温高圧滅菌が行われる。
【0040】
(A3)かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加して、均一な分布になるまで十分にかく拌する。このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対してバチルス属菌0.004〜0.2質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を、0.04〜0.12質量部とすることがより好ましい。
【0041】
(A4)発酵工程
次に、バチルス属菌を加えた滅菌水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間としては、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0042】
ここで、発酵時間を2〜4週間とした理由について図7を参照して説明する。同図に示される通り、発酵工程開始後1週間の時点では、ホルボールエステルの分解率は、およそ50%であるが、2週間経過後にはおよそ80%以上、3週間経過後はおよそ95%、4週間経過後にはおよそ99%となっている。このように発酵時間を長くすればするほどホルボールエステルの分解率は上がるが、処理時間が長引くと状態を維持するためのコストが嵩むため、分解率とコストとがバランスする発酵時間の選択が求められる。以上のような検討をした結果、発酵時間は2〜4週間とすることが最も効率的であることがわかった。
【0043】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、ホルボールエステルを含んだ有機物中からホルボールエステルを低コストかつ高い処理能力で分解除去することができ、家畜の飼料に好適に用いることができる高タンパク質含有有機物、及びこれを用いた飼料を製造することが可能となる。
また、バチルス属菌による処理対象有機物の発酵時間を最適化することができ、またバチルス属菌によるホルボールエステル分解作用を阻害する要因を取り除くことができる。このため、最低限の量のバチルス属菌投入で最大限のホルボールエステル分解作用を得ることができ、有機物中のホルボールエステル除去に必要なコストをさらに低く抑えることが可能となる。
【0044】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態の構成について、図8を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。本実施形態は、バチルス属菌そのものを使うのではなく、本発明のいずれかの実施形態で得られた高タンパク質含有有機物を発酵用の種菌として使う点で、第二実施形態と異なる。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができる。
すなわち、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A1)混合工程、(A2)高温高圧工程は、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0045】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A3)かく拌工程は、第二実施形態と異なり、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを混合液に添加するのではなく、本実施形態の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物を滅菌水に加え、これを高温高圧工程により得られた滅菌した混合液に添加してかく拌する。このようにすれば、毎回新たにバチルス属菌を準備する必要がなく、高タンパク質含有有機物の製造に必要なコストを低減させることが可能となる。
【0046】
このとき、滅菌水0.5〜1質量部に対して、高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を添加することが好ましい。高タンパク質含有有機物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、高タンパク質含有有機物の混合割合を、0.2〜0.4質量部とすることがより好ましい。
そして、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法における(A4)発酵工程は、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0047】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、毎回新たにバチルス属菌を準備する必要がない。このため、ホルボールエステルを分解するために必要なバチルス属菌の総量を、第二実施形態の場合よりさらに少なくすることができ、結果として高タンパク質含有有機物や飼料の製造に必要なコストを一層低く抑えることが可能となる。
【0048】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法について、図9を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
本実施形態は、ホルボールエステルを含む有機物にバチルス属菌を混合して予め前培養し、前培養産物を、ホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることで、高タンパク質含有有機物を製造する点で、第二実施形態と異なる。その他の点については、第二実施形態と同様のものとすることができる。
【0049】
<前培養>
(B1)第一混合工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物2質量部に対して、水0.5〜1.5質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を1〜1.5質量部とすることがより好ましい。
【0050】
(B2)第一高温高圧工程
次に、第二実施形態における高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。
【0051】
(B3)第一かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した混合液に添加してかく拌する。このとき、滅菌水0.5質量部に対して、バチルス属菌0.002〜0.1質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を0.02〜0.06質量部とすることがより好ましい。
【0052】
(B4)前培養工程
次に、第一かく拌工程により得られた混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、1〜7日間とすることが好ましい。
【0053】
<本発酵>
(B5)第二混合工程
次に、ホルボールエステルを含んだ有機物に、水を混合する。このとき、ホルボールエステルを含んだ有機物5質量部に対して、水2〜4質量部を混合することが好ましい。水の混合割合をこのようにすれば、発酵の効率が高まるためである。また、このような観点から、水の混合割合を3〜4質量部とすることがより好ましい。
【0054】
(B6)第二高温高圧工程
次に、第一高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物と水との混合液を高温高圧滅菌する。
【0055】
(B7)第二かく拌工程
次に、前培養により得られた前培養産物を滅菌水に加える。そして、この前培養産物を加えた滅菌水を、第二高温高圧工程により滅菌した混合液に添加してかく拌する。
このとき、滅菌水1質量部に対して、前培養産物1〜4質量部を加えることが好ましい。前培養産物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、前培養産物の混合割合を2〜4質量部とすることがより好ましい。
【0056】
(B8)本発酵工程
次に、バチルス属菌含有水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法によれば、前培養によりバチルス属菌を効率的に増殖させ、得られた前培養産物をホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることができるため、発酵作用を促進させることが可能となる。
これにより、有機物中のホルボールエステルをより効率的に分解することが可能となる。
【0058】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態の高タンパク質含有有機物の製造方法について、図10を参照して説明する。同図は、本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程を示す図である。
本実施形態は、ホルボールエステルを含む有機物にバチルス属菌を混合して予め前培養し、前培養産物を、ホルボールエステルを含む有機物に添加して本発酵させることで、高タンパク質含有有機物を製造するものである。第四実施形態とは、その第一及び第二混合工程を有さず、菌体等や水の配合割合が異なる点で異なっている。その他の点については、第四実施形態と同様のものとすることができる。
【0059】
<前培養>
(C1)第一高温高圧工程
まず、ホルボールエステルを含んだ有機物10質量部を高温高圧滅菌する。これにより、バチルス属菌による発酵を阻害し得る微生物を死滅させる。これは、オートクレーブにより、一般的な方法で行うことができる。
【0060】
(C2)第一かく拌工程
次に、滅菌水にバチルス属菌を加えたものを、上述の滅菌した有機物に添加してかく拌する。このとき、滅菌水5〜10質量部に対して、バチルス属菌0.01〜0.6質量部を添加することが好ましい。バチルス属菌の混合割合をこのようにすれば、均一な発酵を実現できるためである。また、このような観点から、バチルス属菌の混合割合を0.1〜0.6質量部とすることがより好ましい。
【0061】
(C3)前培養工程
次に、第一かく拌工程により得られた混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、1〜7日間とすることが好ましい。
【0062】
<本発酵>
(C4)第二高温高圧工程
次に、第一高温高圧工程と同様に、ホルボールエステルを含んだ有機物100質量部を高温高圧滅菌する。
【0063】
(C5)第二かく拌工程
次に、前培養により得られた前培養産物を滅菌水に加える。そして、この前培養産物を加えた滅菌水を、第二高温高圧工程により滅菌した有機物に添加してかく拌する。
このとき、滅菌水50〜100質量部に対して、前培養産物5〜20質量部を加えることが好ましい。前培養産物の混合割合をこのようにすれば、低コストで高い発酵効率を実現できるためである。また、このような観点から、前培養産物の混合割合を10〜20質量部とすることがより好ましい。
【0064】
(C6)本発酵工程
次に、バチルス属菌含有水を添加してかく拌した混合液を、密閉条件下で発酵させる。効率的に発酵させる観点から、温度条件は、30〜50℃とすることが好ましく、37〜50℃とすることがより好ましい。また、発酵時間は、第二実施形態において上述した通り、2〜4週間とすることが好ましい。
発酵工程が終了した後、発酵室あるいは発酵容器内から取り出された処理後の混合物は、ホルボールエステルがバチルス属菌の働きによって分解された高タンパク質含有有機物となっている。また、バチルス属菌の副次的な働きによって処理後の混合物中のビタミンやミネラルなどの成分が増加されたものになっている。
【0065】
本実施形態の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法では、第四実施形態と異なり、水の添加を、ホルボールエステルを含んだ有機物に対してではなく、バチルス属菌に対して行っている。このように、菌を溶かす水の量をできるだけ多くすることで、菌を溶かした水を添加した有機物の中で、菌がより広範囲に均一に分散され、発酵が有機物全体でより均一となる。
このため、有機物全体の発酵効率が高くなることが期待され、有機物中のホルボールエステルを一層効率的に分解することが可能となる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法についての実施例と比較例、並びにこれらにより得られた高タンパク質含有有機物及び飼料の有用性に関する評価について、図11〜図14を参照して説明する。図11、図12は、それぞれ実施例及び比較例における有機物中のホルボールエステル含有量の変化を示す図、グラフである。図13は、本発明の飼料による鶏の飼育試験結果を示す図及び平均体重推移を示すグラフである。図14は、本発明の飼料による鶏の飼料摂取量を示す図及びグラフである。
【0067】
(実施例1)
高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法の工程に先立って、以下の工程により、ヤトロファから油を抽出して、ヤトロファ残渣を得た。
まず、ヤトロファの種子24kgを脱皮機にかけてカーネル部と種皮部とに分離し、カーネル部のみを集めた。集められたカーネル部の量は、約14.4kgであった。次に、粉砕機を用いて、カーネル部を直径2mm程度の大きさになるように粉砕した。
【0068】
次に、電動搾油機(品番S100-200、株式会社サン精機製)を用いて、粉砕したカーネル部を搾油して、油を抽出し、搾油機から排出されたカーネル絞り粕(=ヤトロファ残渣)を集めて、自然冷却させた。集められたヤトロファ残渣は、約7.2kgであった。
【0069】
次に、以下の工程により、前培養と本発酵を行って、ホルボールエステルを分解した高タンパク質含有有機物を得た。
まず、ヤトロファ残渣10gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌した。
次に、バチルス属菌として、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans、NBRC12583株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用し、その菌体0.6gを加えた滅菌水10gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌してから37℃で3日間前培養した。
【0070】
なお、かく拌は、バチルス属菌を加えた混合液の入ったビーカーを水平に倒して、回転させることにより行った。ヘラ等を使ってかく拌すると、固体状の有機物が崩れて泥状となり、通気が悪くなるためである。このようなかく拌の方法については、以下の実施例及び比較例においても同様である。
【0071】
次に、ヤトロファ残渣100gをオートクレーブにより120℃で15分間滅菌し、前培養して得られた培養液(培養産物)10gを加えた滅菌水50gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌した。
そして、8日毎に水を25g追加で添加するとともにかく拌し、50℃で24日間本発酵させ、この発酵産物として、ホルボールエステルが分解された高タンパク質含有有機物である発酵ヤトロファを得た。
最後に、この高タンパク質含有有機物を鶏用試験飼料(WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10重量%添加し、本実施例の飼料を製造した。
【0072】
(実施例2)
実施例1と同条件で、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0073】
(実施例3,4)
バチルス属菌として、バチルス・スミシー(Bacillus smithii、NBRC15311株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0074】
(実施例5,6)
バチルス属菌として、バチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルス(Bacillus subtilis subsp. subtilis、NBRC13719株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0075】
(実施例7,8)
バチルス属菌として、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis、NBRC12200株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0076】
(実施例9)
バチルス属菌として、バチルス・セレウス(Bacillus cereus、NBRC15305株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0077】
(実施例10,11)
バチルス属菌として、バチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットー(Bacillus subtilis var. natto、有限会社宮城野納豆製造所(宮城県仙台市宮城野区銀杏町4-29)から入手)を使用した点以外は、実施例1と同様にして、本実施例の高タンパク質含有有機物及び飼料を製造した。
【0078】
(比較例1)
まず、実施例1において得られたヤトロファ残渣10gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌した。
次に、混合液に添加する菌として、ラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・デルブリッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、NBRC3202株、独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物遺伝資源部門により入手)を使用し、その菌体0.6gを加えた滅菌水10gを、滅菌した混合液に添加して、均一な分布になるまで十分にかく拌してから30℃で3日間前培養した。
【0079】
次に、ヤトロファ残渣100gをオートクレーブにより120℃、15分間滅菌し、前培養して得られた培養液(培養産物)10gを加えた滅菌水50gを、滅菌したヤトロファ残渣に添加して、菌の分布が均一になるまで十分にかく拌した。
そして、30℃で24日間本発酵させ、この発酵産物として、ホルボールエステルが分解された高タンパク質含有有機物である発酵ヤトロファを得た。
なお、比較例1においては、8日毎の水の追加及びかく拌を行わず、発酵温度は30℃としている。これは、比較例1の菌種では、これらの条件が発酵に適しているためである。
最後に、この高タンパク質含有有機物を鶏用試験飼料(WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10重量%添加し、本比較例の飼料を製造した。
【0080】
(評価)
<1.ホルボールエステルの分解率>
実施例及び比較例における高タンパク質含有有機物のホルボールエステル含有量(PE含有量)を、本発酵の開始日から24日目まで8日毎に測定して、ホルボールエステルの平均分解率を算出した。その結果を図11及び図12に示す。
【0081】
ここで、各実施例及び比較例では、ホルボールエステルを含有する有機物として、いずれもトウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を脱殻して内部の種子核(kernel)を取り出したものを用いている。また、図11における「菌種」には、有機物中のホルボールエステルを分解するために用いた菌の種名を示している。「菌株」には、実施例10、11では、有限会社宮城野納豆製造所(宮城県仙台市宮城野区銀杏町4-29)から入手したことを示し、他の実施例については、NBRC(NITE Biological Resource Center)から入手したこと、及びその菌株番号を示している。「PE含有量(mg/g)」には、発酵工程における混合物中のホルボールエステルの含有量を、本発酵の開始から8日毎に示している。
【0082】
(1)PE含有量の測定方法
発酵工程における混合物中のホルボールエステルの含有量は、以下のようにして測定した。
まず、測定対象となるサンプル1.5gに、ジクロロメタン(Dichloromethane)を20ml添加して、ホモジナイザーにより2分間粉砕し、遠心機にかけ、残滓を収集した。これに、ジクロロメタン(Dichloromethane)を20ml添加して1分間激しく振動し、遠心機にかけて濾過する工程を5回繰り返し、全ての濾過液を収集して窒素ガス流下で乾燥した。
【0083】
次に、これをテトラヒドロフラン5mlに溶かし、0.2μmのフィルターで濾過して、20μlをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にインジェクションした。HPLCには、WATERS(登録商標)2690(ウォーターズ コーポレーション製)、検出器にはWATERS996(ウォーターズ コーポレーション製)を使用した。HPLCは、以下の条件で行った。
・HPLC column:symmetry C18,3.5μm,100×4.6mm
・溶媒:A 1.75ml o-phosphoric acid(85%) in 1L distilled water、B Acetonitrile(HPLC grade)、C Tetrahydrofuran(HPLC grade)
・流量1ml/分
・工程:(1)A液60%,B液40%(15分)、(2)A液25%,B液75%まで(15分)、(3)B液100%まで(10分)、(4)C液100%(10分)
【0084】
(2)ホルボールエステルの分解率
図11に示される通り、実施例1−11のPE含有量は、本発酵の開始日に2.98mg/gであったものが、8日目、16日目、24日目には、それぞれ平均で、1.17mg/g、0.25mg/g、0.14mg/gとなっている。
したがって、8日目、16日目、24日目のホルボールエステル分解率は、それぞれ60.8%、91.7%、95.4%である。
【0085】
一方、比較例1のPE含有量は、本発酵の開始日に2.98mg/gであったものが、8日目、16日目、24日目には、それぞれ2.06mg/g、1.78mg/g、1.66mg/gとなっている。
したがって、8日目、16日目、24日目のホルボールエステル分解率は、それぞれ30.9%、40.3%、44.3%である。
【0086】
この結果から、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを分解するための菌として、バチルス属菌を用いることで、ホルボールエステルを効率的に分解できることが明らかとなった。
一方、ホルボールエステルを含有する有機物からホルボールエステルを分解するための菌として、その他の菌であるラクトバチルス・デルブリッキ・サブスピーシズ・デルブリッキを使用した場合には、ホルボールエステルを十分に除去することはできなかった。
【0087】
<2.鶏の飼育試験>
実施例及び比較例により得られた飼料を用いて、鶏の雛の成長試験をPalawan Agribusiness Development Foundation Inc.(フィリピン国)において以下の方法で行った。
孵化後4日目の鶏の雛を1群3羽にして、ゲージA,B,Cに群分けし、それぞれに実施例で得られた飼料を与えて、十分に成長するかを確認するための試験を行った。
【0088】
ゲージAには、実施例3のバチルス・スミシーにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物(処理ミール)を、鶏用試験飼料WYNMOORE Chickbooster、Breeders Business Group社(フィリピン国)製)に10%添加して得られた飼料を給与した。また、ゲージBには、実施例6のバチルス・ズブチルス・サブスピーシズ・ズブチルスにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物を、ゲージCには、実施例11のバチルス・ズブチルス・バリエタス・ナットーにより、ホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物を、ゲージAと同じ鶏用試験飼料に10%添加して得られた飼料を、それぞれ給与した。
【0089】
そして、孵化後14日まで飼育し、開始時、及び7日毎に各鶏の体重を測定した。どのゲージも試験終了時まで飼料を不断給与し、飲水は自由飲水とした。
使用した鶏の雛は、ブロイラー種鶏由来の種卵より孵化したワクチン歴のない9羽の雌雛であり、これを4日間予備飼育したものである。各鶏の体重変化を図13に、飼料摂取量を図14に示す。
【0090】
図13に示される通り、いずれのゲージの鶏も順調に成長していることがわかる。また、図14に示される通り、いずれのゲージにおいても、飼料摂取は適切に行われている。
したがって、本発明の高タンパク質含有有機物及び飼料の製造方法により、バチルス属菌を用いて有機物中のホルボールエステルを分解して得られた高タンパク質含有有機物は、飼料として好適に用いることができることが明らかとなった。
【0091】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施例ではヤトロファを用いているが、ホルボールエステルを含有するその他の有機物に、本発明を適用することも可能である。また、上記の評価は、鶏の雛について行ったものであるが、本発明により製造された高タンパク質含有有機物を、豚や牛、馬、その他の家畜の飼料として用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、鶏などの家畜の飼料を製造するために、好適に利用することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項2】
ホルボールエステルを含有する有機物4質量部に対し、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、バチルス属菌0.004〜0.2質量部を滅菌水0.5〜1質量部に加えたものを添加して、30〜50℃で2〜4週間発酵させる
ことを特徴とする請求項1記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項3】
ホルボールエステルを含有する有機物4質量部に対し、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に請求項1又は2記載の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間発酵させる
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項4】
ホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌とを混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする請求項1記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項5】
ホルボールエステルを含有する有機物2質量部と、水0.5〜1.5質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、滅菌水0.5質量部にバチルス属菌0.002〜0.1質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、
ホルボールエステルを含有する有機物5質量部と、水2〜4質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、滅菌水1質量部に前培養により得られた前培養産物1〜4質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる
ことを特徴とする請求項4記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項6】
ホルボールエステルを含有する有機物10質量部を高温高圧滅菌した後、滅菌水5〜10質量部にバチルス属菌0.01〜0.6質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、
ホルボールエステルを含有する有機物100質量部を高温高圧滅菌した後、滅菌水50〜100質量部に前培養により得られた前培養産物5〜20質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる
ことを特徴とする請求項4記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項7】
前記ホルボールエステルを含有する有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項8】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させた
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物。
【請求項9】
前記ホルボールエステルを含有する有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いる
ことを特徴とする請求項8記載の高タンパク質含有有機物。
【請求項10】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌を混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする飼料の製造方法。
【請求項11】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記ホルボールエステルを分解して得られた発酵産物を含有する
ことを特徴とする飼料。
【請求項1】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項2】
ホルボールエステルを含有する有機物4質量部に対し、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、バチルス属菌0.004〜0.2質量部を滅菌水0.5〜1質量部に加えたものを添加して、30〜50℃で2〜4週間発酵させる
ことを特徴とする請求項1記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項3】
ホルボールエステルを含有する有機物4質量部に対し、水0.5〜3質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、水0.5〜1質量部に請求項1又は2記載の製造方法により得られた高タンパク質含有有機物0.02〜1質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間発酵させる
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項4】
ホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌とを混合して前培養し、次いでホルボールエステルを含有する有機物とバチルス属菌を混合し、この混合物に前培養産物を添加して本発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする請求項1記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項5】
ホルボールエステルを含有する有機物2質量部と、水0.5〜1.5質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、滅菌水0.5質量部にバチルス属菌0.002〜0.1質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、
ホルボールエステルを含有する有機物5質量部と、水2〜4質量部を混合し、高温高圧滅菌した後、滅菌水1質量部に前培養により得られた前培養産物1〜4質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる
ことを特徴とする請求項4記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項6】
ホルボールエステルを含有する有機物10質量部を高温高圧滅菌した後、滅菌水5〜10質量部にバチルス属菌0.01〜0.6質量部を加えたものを添加して、30〜50℃で1〜7日間前培養し、
ホルボールエステルを含有する有機物100質量部を高温高圧滅菌した後、滅菌水50〜100質量部に前培養により得られた前培養産物5〜20質量部を加えたものを添加し、30〜50℃で2〜4週間本発酵させる
ことを特徴とする請求項4記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項7】
前記ホルボールエステルを含有する有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いる
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高タンパク質含有有機物の製造方法。
【請求項8】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させた
ことを特徴とする高タンパク質含有有機物。
【請求項9】
前記ホルボールエステルを含有する有機物として、トウダイグサ科のヤトロファ(Jatropha curcas L.)の種子を搾油した後の絞り粕、又は、この種子を脱殻して内部の種子核を取り出したものを搾油した後の絞り粕を用いる
ことを特徴とする請求項8記載の高タンパク質含有有機物。
【請求項10】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌を混合して発酵させ、前記有機物におけるホルボールエステルを分解させる
ことを特徴とする飼料の製造方法。
【請求項11】
ホルボールエステルを含有する有機物と、バチルス(Bacillus)属菌とを混合して発酵させ、前記ホルボールエステルを分解して得られた発酵産物を含有する
ことを特徴とする飼料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−39884(P2012−39884A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181021(P2010−181021)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(307029733)日本植物燃料株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(307029733)日本植物燃料株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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