説明

高ダイナミックレンジを有する直交高周波電圧/電流センサ

【課題】RF電流を測定する高周波(RF)センサを提供する。
【解決手段】高周波(RF)センサはプリント基板12を含み、プリント基板12は開口18を規定する内周を有しており、開口18を通って導線が延びている。開口18の上には、センサパッド30が配置されており、これらセンサパッド同士が接続されて、2つのセンサループを形成している。このループは、導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する。さらに、RFセンサに複数の円状導電性リングを設けて、導線の電圧を示す信号を生成させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年4月10日出願のUS仮出願番号第61/043,934号の利益を主張するものである。当該出願の開示内容を、本願に引用して援用する。
【0002】
[分野]
本発明は、高周波センサに関するものであり、より詳細には、直交高周波電圧/電流センサに関する。
【0003】
[背景]
プローブとしても知られる高周波(RF)電流センサは、RF導線を流れる電流の流れの大きさを示す信号を生成するものである。この電流プローブは、電圧プローブと組み合わせて、RF電圧/電流(VI)プローブを形成することが可能である。このRF電圧/電流(VI)プローブは、RFグランドまたはシールド導電体といった基準電位に対するRF電圧を示す第2の信号を生成する。
【0004】
RF電流プローブやVIプローブは、RF制御回路において用いられ、フィードバック情報を提供する。前記フィードバック情報は、測定中のRF電力を供給する高周波増幅器を制御するために用いられる。前記RF電力は、半導体製造プロセス、金属被膜プロセス、またはマイクロマシン加工プロセス用のプラズマを生成する等のアプリケーションに用いられる。
【0005】
[概要]
本発明のRF電流を測定する高周波(RF)センサは、基板を含み、前記基板は、第1の外面層と、第2の外面層と、第1の内面層と、第2の内面層と、上記基板を貫通する開口を規定する内周とを含む。上記高周波(RF)センサは、複数の第1のビアホールに複数の第1のトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)にてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有する第1のループと、複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有する第2のループとをさらに含む。これら複数の第1のセンサパッドおよび第2のセンサパッドは、基板の内周上に配置されている。RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび第2のループは、前記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する。
【0006】
本発明のRF電流を測定する高周波(RF)センサは、基板を含み、前記基板は、第1の接地平面と、第2の接地平面と、前記基板を貫通する開口を規定する内周とを有する。上記高周波(RF)センサは、複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有する第1のループと、複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有する第2のループとをさらに含む。これら複数の第1のセンサパッドおよび第2のセンサパッドは、基板の内周に沿って延びていると共に、基板の内周を横断して均一に離間されている。RF電流を運ぶための電線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび第2のループは、前記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する。
【0007】
本発明のさらなる適用範囲は、以下に記載する詳細な説明から明らかであろう。詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、説明する目的だけを意図するものであって、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではないことは、理解されよう。
【0008】
[図面の説明]
本発明は、詳細な説明および添付の図面からより良く理解されよう。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサを示す平面図である。
【0010】
図2は、本発明の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサにおける電流センサのトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)を示す等角図である。
【0011】
図3(a)〜(c)は、図2の電流センサのトレースを示す平面図である。
【0012】
図4は、本発明の他の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサにおける電流センサのトレースを示す平面図である。
【0013】
図5(a)は、従来技術の電流センサを示す概略的な図である。
【0014】
図5(b)〜(c)および図6は、本発明のさらに他の実施形態に係る電流センサを示す概略的な図である。
【0015】
図7は、図6の電流センサにおける、A点とB点との間の電圧と、導線の電圧との容量結合の関係を示す回路の回路図である。
【0016】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサを示す概略的な図である。
【0017】
図9(a)〜(b)は、本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサの円状導電性リングを示す平面図である。
【0018】
[詳細な説明]
以下の説明は、単に本質を説明するものであり、決して、本発明、そのアプリケーション、または用途を制限することを意図するものではない。明瞭にするために、同一の参照番号を図面において用いて、類似の部材を特定している。ここで用いるように「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という表現は、非排他的且つ論理的な「または」を用いて、論理的な(A、またはB、またはC)を意味するものと解釈されたい。一つの方法における複数のステップは、異なる順番で実施してもよく、こうすることによっても本発明の原理は変わらないことを理解されたい。
【0019】
ここで用いるように、「モジュール」という表現は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、(共有、専用、集合)プロセッサ、および、1つまたは複数のソフトウェアプログラム若しくはファームウェアプログラムを実行するメモリ、組み合わせ論理回路、および/または、記載する機能を提供する他の好適な構成要素に関する。
【0020】
ここで、図1を参照する。この図には、直交高周波(RF)電圧/電流(VI)プローブ10が示されている。VIプローブ10は、少なくとも4つの導電層を有するプリント基板(PCB)12を備えている。第1の外面層14aおよび第2の外面層14bは、互いに平行であり、PCB12の絶縁基板によって離間された関係で維持されている。第1の層14aおよび第2の層14bを、集合的に接地平面(ground plane)14と呼ぶ。接地平面14は、多数のビアホール16によって互いに電気的に接続されている。ビアホール16は、開口18の円周の周りにおいて放射状に設けられているとすることができる。ビアホール16は、PCB12の内層から電気的に絶縁されている。これについて、以下に説明する。接地平面14およびビアホール16は、測定するRF電流が流れる同軸ケーブル(図示しない)の外層に接続されている。前記同軸ケーブルの中心導体は、開口18内において軸方向かつ同心円状に配置されている導線20に接続されている。VIプローブ10は、また、複数の取り付け穴13を含み、これら取り付け穴13は、VIプローブ10を、制御するRF発電機(図示しない)に結合させることを容易にしている。
【0021】
複数の第2のビアホール22は、接地平面14から電気的に絶縁されていると共に、PCB12の内層上に位置する電流ループバックトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)同士を接続させている。複数の第3のビアホール24も接地平面14から電気的に絶縁されており、これら第3のビアホール24は、電圧センサ磁界キャンセル構造の一部を形成している。ビアホール22・24および、これらに関連するPCB12の内層上のトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)について、以下に、より詳細に説明する。
【0022】
PCB12は、総称的に28にて示されるトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)およびパッドを含んでいる。前記トレースおよびパッドは、電子回路部品を取り付けるためのものであり、これによって、電子回路部品は、接地平面14とPCB12の各内層に設けられた種々のトレースとに接続される。前記電子回路部品の例には、電子回路に電力を供給するための、および/または、前記電子回路から電気信号を得るための、コネクタ、増幅器、変圧器、および/または、導線20のRF電圧および/またはRF電流を示す信号を緩衝および/または調節するフィルター等が含まれる。
【0023】
ここで、図2〜3を参照する。図2〜3は、種々のPCB12を示している。見やすいように、接地平面14、ビアホール16、およびビアホール24は省略した。第1の内層32は、絶縁基板36上に形成されたトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)44a・44bを含む。第2の内層34は、基板36の反対側の面に、より多くのトレース44a・44bを含む。トレース44a・44bを、集合的にトレース44と呼ぶ。トレース44はパターニングされており、トレース44同士は、ビアホール22によって接続され、巻いた一対の電気ループまたは巻線を形成している。基板36が、1つまたは複数のさらなる導電層を含んでもよいことは明らかであろう。前記さらなる導電層については図示していない。前記さらなる導電層は、例えば、以下に説明する電圧センサを構成することが可能である。
【0024】
第1の内層32および第2の内層34はそれぞれ、1つの接地平面14の下層に配置されると共に、これらから絶縁されている。ビアホール22は、第1の内層および第2の内層上の関連するトレース44同士の間を延びると共に、これらトレース44同士を接続している。これについては以下に説明する。関連するトレース44同士は、開口18の壁に沿って形成された各電流センサパッド30によって、互いに接続されている。電流センサパッド30は、基板36内の開口18の端部にめっきされており、レーザ、機械磨耗、または他の製造技術によって成形されていることが可能である。
【0025】
絶縁基板36は、電流センサパッド30の長さLを規定している。RF電流が導線20を通って流れる間に、導線20の周りに磁界が発生する。前記磁界は、ビオサバールの法則によって定義でき、次のようになる。
【0026】
【数1】

【0027】
ここで、radiusは、導線20と電流センサパッド30との間の距離であり、ACcurrent は、導線20を通って流れる電流である。μは磁気定数であり、4π×10−7H/mである。前記磁界は、電流センサパッド30を横切っている。
【0028】
ファラデーの法則から、誘導電圧は、電流センサパッド30の長さLと、磁界の変化速度と、電流センサパッド30、トレース44およびビアホール22によって形成されるループの高さ(height)との関数である。例えば、基板36の厚さを増大させることによって長さLを増大させると、RF同軸ケーブル(図示しない)とVIプローブ10との間の結合が増大する。
【0029】
Lを増大するに伴って、ビアホール22の直径を増大させる必要がある。これは、PCB36の製造中に穴あけドリルが破損する恐れを低減するためである。ビアホール22の直径が増大すると、上記センサの寸法も増大し、および/または、開口18の円周にそって取り付けられた電流センサパッド30若しくはループ(後述する)の数も低減する。また、ビアホール22の直径が増大すると、これに比例して、導線20に対する容量結合が増大する。このため、導線20によって形成される電界が、所望の電流信号に混入し、VIプローブ10のダイナミックレンジを低減する可能性がある。したがって、電流センサパッド30の幅は、電界混入およびダイナミックレンジの問題を緩和可能な程度に狭くすることが可能である。VIプローブ10を作成するために必要なビアホール22の寸法および数は、端部にてめっきされた電流センサパッド30によって減少され、このビアホール22の寸法および数の減少によって、電流信号への電界混入は低減される。前記電流信号とは、導線20を通って流れる電流を示し、トレース44から引き出されるものである。
【0030】
トレース44を、図3(a)〜3(c)にさらに詳細に示す。トレース44aとトレース44bとが接続されることにより、巻いたワイヤのループが形成されている。図3(a)のトレース44a・44bは、電流センサパッド30を、ループバックビアホール22に接続している。図3(c)に示すように、ループバックビアホール22は、センサの裏面において、別のトレース44aまたはトレース44bに接続されており、次の電流センサパッド30に接続されている。理解を容易にするために、図3には、2つのループを、トレース44a・44bとして示した。点線は、ボードの裏のトレースである。図3の六角形40は、これら両ループに共通のグランド点であり、1つのRF経路グランドビアホール16として構成されている。この共通グランドシステムを用いることによって、グランドループを低減することが可能である。
【0031】
開口18の内周に沿って、電流センサパッド30を交互に均一に離間して配置することによって、電流ループは、例えば、VIプローブ10を組み立てる/取り外す場合の動き、または、動作中のVIプローブ10の温度変化による動きといった、導線20の動きを自動補正(autocorrecting)する特徴を提供する。この構成の自動補正の特徴は、導線20から電流センサパッド30までの合計距離を一定に維持することによって機能する。例えば、導線20が右に移動した場合、右の電流センサパッド30から導線20までの距離は低減されるが、左の電流センサパッド30から導線20までの距離は同じだけ増大することにより、合計距離と電流信号レベルとは同一に保持される。
【0032】
図4は、本発明の他の実施形態に係るPCB12の図を示すものである。見やすいように、接地平面14およびビアホール16は省略した。第1の内層32は、絶縁基板36上に形成されたトレース44a・44bを含む。第2の内層34は、基板36の反対側に、より多くのトレース44a・44bを含む。トレース44a・44bを、集合的にトレース44と呼ぶ。トレース44は、パターニングされており、トレース44同士は、ビアホール22によって接続され、巻いた一対の電気ループまたは巻線を形成している。基板36が、1つまたは複数のさらなる導電層を含んでもよいことは明らかであろう。前記さらなる導電層については図示していない。前記さらなる導電層は、例えば、以下に説明する電圧センサを構成することが可能である。図4に示すPCB12では、ビアホール24は、電流センサパッド30に電気的に接続されており、後述する方法で、電圧センサを構成している(例えば図8を参照)。
【0033】
図5(a)には、従来技術の電流センサが概略的に示されている。アンペアの法則から、紙面(the page)を流れるRF電流によって、磁界が、導線20の周りを時計回りの方向に発生する。前記磁界は、ピックアップループ60上に電流を誘導して、変圧器50を通して電流信号を流す。ループ60によってピックアップされた任意の電界は、グランドに短絡される。図5(a)の回路は、センサループ60同士が端と端をつないで(直列接続されて)配置された電流センサとして機能するので、ループ60間には結合は生じない。
【0034】
図5(b)には、本発明の実施形態に係る電流センサが概略的に示されている。図5(b)の回路では、これらのループ60は、共通の1つのグランドを利用している。アンペアの法則から、紙面(the page)を流れるRF電流によって、磁界が、導線20の周りを時計回りの方向に発生する。前記磁界は、ピックアップループ60上に電流を誘導して、変圧器50を通して電流信号を流す。ループ60によってピックアップされた任意の電界は、グランドに短絡される。図5(b)の回路は、隣り合った(または互いに平行な)2つのループ60を含み、ループ60間に結合は生じない。
【0035】
図5(c)には、本発明の他の実施形態に係る電流センサが概略的に示されている。図5(c)の回路では、ループ60は、共通のグランドには接続されていない。アンペアの法則から、紙面(the page)を流れるRF電流によって、磁界が、導線20の周りを時計周りの方向に生成される。抵抗55が含まれていてもよく、これら各抵抗は、2つの電流ピックアップループ60のうちのいずれか一方に直列に接続されている。複数の抵抗55を用いて、センサインピーダンスを、VIプローブ10と共に利用され得る任意の付属処理装置に整合させることが可能である。これによって結果的に、反射信号が低くなると共にノイズが少なくなり、前記処理装置に伝達されるセンサ信号電力が最大になる。磁界によって、電流がピックアップループ60上に誘導され、変圧器50および抵抗55を通って流れる。ループ60によってピックアップされた電界は、図5(a)および図5(b)の場合のようには、グランドに短絡されない。しかしながら、変圧器50上のA点とB点とにおける電界は同一であるため、前記電界による変圧器50を通る電流の流れは生じない。このため、電界は、変圧器50の二次側または出力側57において、有効にキャンセルされる。さらに、変圧器50のA点およびB点は、比較的同一の電位にあり、前記電位は、導線20の電位と、磁界によってループ60上に生成された電流信号の混入による追加成分とをあわせたものに相当する。
【0036】
図5(b)、図5(c)に示したように、2つの電流ループ60を隣合わせて配置することによって、前記ループ60は、同一の磁界および電界に曝される。このため電界はより良好にキャンセルされ、電流センサのダイナミックレンジは増大する。電流センサピックアップ線(例えば、電流センサパッド30)の長さは、センサ10の周波数応答および周波数結合に関連する。電流センサピックアップ線を長くすればするほど、VIプローブ10の絶縁破壊電圧を低減させたり、他の悪影響を与えたりすることなく、センサ10の信号結合、および、低周波数応答が改善されるであろう。
【0037】
変圧器50は、該して、一次巻線と二次巻線との巻数比(「N」)を有している。抵抗55は、出力インピーダンスの実数部を補償する。出力インピーダンスの虚数部は、実数の伝送線センサ部または整合回路/フィルター回路を提供することによって、補償することが可能である。様々な実施形態では、抵抗55の値は、次の公式によって決まる。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、Zoutputは、分析ユニットに伝えられる所望の出力インピーダンスであり、Nは、変圧器の巻数比である。
【0040】
ここで、図6を参照する。この図には、本発明のさらに他の実施形態に係る電流センサが概略的に示されている。図6の回路は、図5(c)の回路を変更し、グランドを除去すると共に、ループ60同士を(例えば端と端とをつないで)接続させて連続的な1つのループ60を形成したものである。これは例えば、(図3(a)〜図3(c)に示した)トレース44aとトレース44bとを、六角形40の位置にある1つのビアホールで接続させることによって行うことが可能である。この構成では、電流センサ上にぶつかった電界はグランドに短絡されず、従ってこの電界電位によって電流が生じ、直列の複数の抵抗55を通って流れる。この電界からの電流は、1つの電流ループには役立つが、他の電流ループ内の電流を低減させる。このため一部の電界信号は、変圧器50を流れてしまう。この電界混入によって、電流センサのダイナミックレンジは低減され得る。RFグランドから電流センサグランドを除去すると、電流センサグランドは、PCBボード12を通って流れるRF電流によっては悪影響を受けず、電流センサは、導線20の電流だけを測定する。
【0041】
アンペアの法則から、紙面(the page)を流れるRF電流によって、磁界が、導線20の周りを時計回りの方向に生成される。抵抗55を用いて、センサインピーダンスを、VIプローブ10と共に利用され得る任意の付属処理装置に整合させることが可能である。これによって、反射信号が低くなると共にノイズが少なくなり、前記処理装置へのセンサ信号動力伝達が最大になる。磁界によって、電流がピックアップループ60上に誘導され、変圧器50および抵抗55を通って流れる。上述のように、ループ60によってピックアップされた電界は、図5(a)および図5(b)のようには、グランドに短絡されない。しかしながら、変圧器50上のA点とB点とにおける電界は同一であるため、前記電界による変圧器50を通る電流の流れは生じない。従って電界は、変圧器50の二次側または出力側57において、有効にキャンセルされる。さらに、変圧器50のA点およびB点は、比較的同一の電位にある。
【0042】
上述のように、A点およびB点の電圧電位は、容量結合のため、導線20内の電位に比例する。A点およびB点の電圧電位は、導線20の電位と、磁界によってループ60上に生成された電流信号からの混入による追加成分とを加えたものと考えることができる。
【0043】
図7は回路図であり、この回路は、A点とB点との間の電圧と、図6の導線20の電圧との容量結合の関係を表すものである。図7では、抵抗Rは、例えば、アナログ−デジタル−コンバータまたはアナログ−デジタル−レシーバにおける、入力インピーダンスの測定値である。Iは、導線20の周りの磁界変化によって生成される電流を示すものである。Cは、導線20と複数の電流ループ60との間の分布結合容量を示すものである。Vは、導線20のRF電圧である。
【0044】
図7の構成を利用すると、導線20のRF電圧電位を、ガウスの法則によって定義することができる。接点方程式を用いて、A点およびB点における電圧(各VおよびV)を求めると、次のようになる。
【0045】
【数3】

【0046】
各ノードのキルヒホッフの電流法則の方程式は次のようになる。
【0047】
【数4】

【0048】
同類項を集めるならば、
【0049】
【数5】

【0050】
およびVの解は、以下の通りである。
【0051】
【数6】

【0052】
信号およびV信号を加算したもの(Vsum=V+V)は、変圧器50のセンタータップによって(あるいは、アナログ−デジタル−コンバータ/デジタル信号処理(「ADC/DSP」)システムによって)求められる。
【0053】
【数7】

【0054】
解は、導線20、V、および減衰項の電界である。変圧器50(二次巻線)またはADC/DSPシステムによって、VからVを減算する(Vdiff=V−V)と、次のようになる。
【0055】
【数8】

【0056】
解は、導線20、I、および減衰項を通って流れる電流である。これらの方程式から、導線20の電圧(V)および電流(I)を求めることができる。
【0057】
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサを概略的に示す図である。アンペアの法則から、紙面(the page)を流れるRF電流によって、磁界が、導線20の周りを時計回りの方向に生成される。前記磁界によって、ピックアップループ60上に電流が誘導され、変圧器50を通って流れる。図6に示した回路と同様に、電圧/電流センサ上にぶつかった電界は、グランドに短絡されない。従って、電界電位により電流が生じ、直列の抵抗55を通って流れる。この電界からの電流は、1つの電流ループには役立つが、他の電流ループ内の電流を低減させる。このため、一部の電界信号は変圧器50を流れてしまう。この電界混入によって、電流センサのダイナミックレンジは低減され得る。RFグランドから電流センサグランドを除去することによって、電流センサグランドは、PCBボード12を通って流れるRF電流によっては影響されなくなり、電流センサは、導線20の電流だけを測定する。導線20の電流を示す電気信号は、変圧器50の二次側57から得られる。導線20の電圧を示す電気信号は、変圧器50のセンタータップ59を利用することによって得られる。これらの電気信号から、例えば上述の方程式に基づいて、導線20の電圧および電流を求めることが可能である。
【0058】
ここで、図9(a)および9(b)を参照する。これらの図には、PCB12の様々な図が示されている。見やすいように、接地平面14、ビアホール16、およびビアホール22は省略した。第3の内層33は、絶縁基板36上に形成された円状導電性リング102aを含む。第4の内層35は、基板36の反対側に、別の円状導電性リング102bを含む。円状導電性リング102a・102bを、集合的に円状導電性リング102と呼ぶ。円状導電性リング102は、パターニングされており、ビアホール24によって互いに接続されている。各円状導電性リング102は、導線20の縦軸に直交する平面を規定している。さらに、トレース104は、各円状導電性リング102を、開口18の壁に沿って形成された電圧センサパッド100に結合させている。いくつかの実施形態では、電圧センサパッド100は、上述の電流センサパッド30と同じであってよい。電圧センサパッド100は、基板36内の開口18の端部にめっきされており、レーザ、機械磨耗、または他の製造技術によって成形されていてよい。六角形40を、導線20の電圧を求めるための基準グランドとして用いることが可能である。
【0059】
上述の説明から、本発明の広範囲に及ぶ教示を様々な形態で実施可能であることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は特定の実施例を含むが、本発明の真の範囲は制限されることはない。これは、図面、明細書、および、以下の特許請求の範囲を参照することによって、他の変形例が当業者には明らかとなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサを示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサにおける電流センサのトレース(trace:トレース配線、プリントパターン)を示す等角図である。
【図3(a)】図2の電流センサのトレースを示す平面図である。
【図3(b)】図2の電流センサのトレースを示す平面図である。
【図3(c)】図2の電流センサのトレースを示す平面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る、直交高周波(RF)電流/電圧センサにおける電流センサのトレースを示す平面図である。
【図5(a)】従来技術の電流センサを示す概略的な図である。
【図5(b)】本発明のさらに他の実施形態に係る電流センサを示す概略的な図である。
【図5(c)】本発明のさらに他の実施形態に係る電流センサを示す概略的な図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係る電流センサを示す概略的な図である。
【図7】図6の電流センサにおける、A点とB点との間の電圧と、導線の電圧との容量結合の関係を示す回路の回路図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサを示す概略的な図である。
【図9(a)】本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサの円状導電性リングを示す平面図である。
【図9(b)】本発明のさらに他の実施形態に係る電圧/電流センサの円状導電性リングを示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外面層と第2の外面層と第1の内面層と第2の内面層と貫通する開口を規定する内周とを有する基板と、
複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周上に配置されている第1のループと、
複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周上に配置されている第2のループとを含み、
RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。
【請求項2】
第1の円状導電性リングと第2の円状導電性リングとをさらに含み、上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングはそれぞれ、複数の第3のトレースによって複数の第3のセンサパッドに結合されており、
上記第1の円状導電性リングは、複数の第3のビアホールにて、上記第2の円状導電性リングにさらに結合されており、
上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングは、上記導線のRF電圧を示す第2の電気信号を生成する、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項3】
上記複数の第3のセンサパッドは、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドのうちの少なくとも1つのセンサパッドを含む、請求項2に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項4】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッド、上記複数の第2のセンサパッド、および上記複数の第3のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項2に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項5】
上記基板は、第3の内面層および第4の内面層を含み、
上記第3の内面層上には、上記第1の円状導電性リングが形成されると共に、
上記第4の内面層上には、上記第2の円状導電性リングが形成されており、
上記第3の内面層と上記第4の内面層との間には、複数の第3のビアホールが延びている、請求項2に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項6】
上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記内周を横断して均一に離間されている、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項7】
上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記導線から上記複数の第1のセンサパッドまでの距離と、上記導線から上記複数の第2のセンサパッドまでの距離との合計が一定に維持されるように、上記内周に沿って配置されている、請求項6に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項8】
上記第1のループおよび上記第2のループは、1つの共通のグランドを共有している、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項9】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項10】
上記第1の外面層および上記第2の外面層は、接地平面である、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項11】
上記複数の第1のトレースおよび上記複数の第2のトレースは、上記第1の内面層および上記第2の内面層の上に形成されており、上記第1の内面層と上記第2の内面層との間を、上記複数の第1のビアホールおよび上記複数の第2のビアホールが延びている、請求項1に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項12】
貫通する開口を規定する内周を有する基板と、
複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは、上記内周に沿って延びると共に、上記内周を横断して均一に離間されている第1のループと、
複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは、上記内周に沿って延びると共に、上記内周を横断して均一に離間されている第2のループとを含み、
RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。
【請求項13】
第1の円状導電性リングおよび第2の円状導電性リングをさらに含み、上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングはそれぞれ、複数の第3のトレースによって複数の第3のセンサパッドに結合されており、
上記第1の円状導電性リングは、複数の第3のビアホールによって上記第2の円状導電性リングにさらに結合され、
上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングは、上記導線のRF電圧を示す第2の電気信号を生成する、請求項12に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項14】
上記複数の第3のセンサパッドは、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドのうちの少なくとも1つのセンサパッドを含む、請求項13に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項15】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッド、上記複数の第2のセンサパッド、および上記複数の第3のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項13に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項16】
上記第1の円状導電性リングは、上記導線の縦軸に直交する平面を規定する、請求項13に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項17】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項12に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項18】
上記複数の第1のトレースおよび上記複数の第2のトレースは、上記基板の第1の内面層および第2の内面層の上に形成され、上記第1の内面層と上記第2の内面層との間を、上記複数の第1のビアホールおよび上記複数の第2のビアホールが延びている、請求項12に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項19】
上記第1のループおよび上記第2のループは、1つの共通のグランドを共有している、請求項12に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項20】
上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記導線から上記複数の第1のセンサパッドまでの距離と上記導線から上記複数の第2のセンサパッドまでの距離との合計が一定に維持されるように、上記内周に沿って配置されている、請求項12に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項21】
貫通する開口を規定する内周を有する基板と、
複数の第1のビアホールに複数の第1のトレースにてそれぞれ結合された複数の第1のセンサパッドを有し、上記複数の第1のセンサパッドは上記内周に沿って延びている第1のループと、
複数の第2のビアホールに複数の第2のトレースにてそれぞれ結合された複数の第2のセンサパッドを有し、上記複数の第2のセンサパッドは上記内周に沿って延びている第2のループとを含み、
RF電流を運ぶための導線が、上記開口を通って延びており、上記第1のループおよび上記第2のループは、上記導線を流れるRF電流の流れを示す電気信号を生成する、RF電流を測定する高周波(RF)センサ。
【請求項22】
第1の円状導電性リングおよび第2の円状導電性リングをさらに含み、上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングはそれぞれ、複数の第3のトレースによって複数の第3のセンサパッドに結合されており、
上記第1の円状導電性リングは、複数の第3のビアホールによって上記第2の円状導電性リングにさらに結合され、
上記第1の円状導電性リングおよび上記第2の円状導電性リングは、上記導線のRF電圧を示す第2の電気信号を生成する、請求項21に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項23】
上記複数の第3のセンサパッドは、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドのうちの少なくとも1つのセンサパッドを含む、請求項22に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項24】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッド、上記複数の第2のセンサパッド、および上記複数の第3のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項22に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項25】
上記第1の円状導電性リングは、上記導線の縦軸に直交する平面を規定する、請求項22に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項26】
上記基板は基板長さを有し、上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記基板長さに沿って延びている、請求項21に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項27】
上記複数の第1のトレースおよび上記複数の第2のトレースは、上記基板の第1の内面層および第2の内面層の上に形成され、上記第1の内面層と上記第2の内面層との間を、上記複数の第1のビアホールおよび上記複数の第2のビアホールが延びている、請求項21に記載の高周波(RF)センサ。
【請求項28】
上記複数の第1のセンサパッドおよび上記複数の第2のセンサパッドは、上記導線から上記複数の第1のセンサパッドまでの距離と上記導線から上記複数の第2のセンサパッドまでの距離との合計が一定に維持されるように、上記内周に沿って配置されている、請求項21に記載の高周波(RF)センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【公開番号】特開2009−282017(P2009−282017A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−96288(P2009−96288)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】