説明

高フィラー含量を有するエポキシ組成物の均質な調剤方法

本発明は、直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して少なくとも55容量%のフィラー含量を有する、直ぐに使用できるエポキシ組成物の製造方法であって、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む液体Aを供給すること、少なくとも1種の硬化剤を含む液体Bを供給すること、及び少なくとも1種のフィラーを含む固体成分Cを供給することを含み、液体A若しくはBの一方を混合容器に充填する第1の工程と、前記混合容器内において前記液体の頂部に固体成分Cを載置する第2の工程と、前記固体成分Cの頂部に液体A又はBの残された方法載置する第3の工程と、これらの成分を混合して、直ぐに使用できるエポキシ組成物を得る第4の工程とを、有する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの個別に組み合わされた成分から、均質な、高フィラー含有のエポキシ組成物を製造する方法、これら3つの成分を含むパーツのキット、並びに、本発明の方法によって得られる直ぐに使用できるエポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ接着剤は、種々の基材を効果的に結合させるために用いることができる点、及び、室温又は高温のいずれでも硬化するように処方することができる点で、汎用性がある。エポキシ樹脂は、一般的に脆いと特徴付けられるが、引張り強度を失うことなく、より可撓性に処方することができる。一般的産業市場において、エポキシ接着剤は、家具、機器などに使用されている。更に、建築又は道路建設などの構造的接着用途は、エポキシ接着剤の性能特性に依存している。自動車市場において、エポキシ接着剤は、サブコンポーネント(エンジン及び非エンジン)のアセンブリに用いられる。エポキシは、ミサイルのアセンブリ、航空宇宙用途のコンポジット修理などにも用いることができる。エポキシ接着剤は、用途の要求に応じて、1成分型又は2成分型であり得る。2成分型エポキシの場合、自動的な静的又は動的調剤(dispensing)装置は、適用の直前に接着剤を混合するために、通常は使用される。
【0003】
常套のエポキシ樹脂組成物の大部分は、主材と硬化剤とを含む2成分組成物である。フィラーは、製造中においていずれかの段階でエポキシ組成物にしばしば混合されて、特性が用途の要求を満たすようにされる。一般に、フィラー含量は低く、組成物に対して約50容量%の含量を越えることはない。より高いフィラー含量を有する、均質な直ぐに使用できるエポキシ組成物を、常套の2成分技術によって得ることは、フィラーが凝集又は沈殿する傾向があるという、製造プロセス中の問題点があるため、困難である。更に、常套の自動的な静的又は動的調剤装置によって、高充填エポキシ生成物の均質な混合及び調剤を確実に行うことも困難である。フィラーは、静的又は動的混合要素の混合領域に蓄積したり、凝集したり、及び閉塞したりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、高フィラー含量のエポキシ組成物を製造する方法であって、その製造方法中に、凝集及び沈殿などの上述の問題点を示すことのない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明の方法によれば、高フィラー含量を有する、均質な直ぐに使用できるエポキシ組成物を容易に得ることができる。従って、本発明は、
直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して少なくとも55容量%のフィラー含量を有する、直ぐに使用できるエポキシ組成物の製造方法であって、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む液体Aを供給すること、少なくとも1種の硬化剤を含む液体Bを供給すること、及び少なくとも1種のフィラーを含む固体成分Cを供給することを含み、液体A若しくはBの一方を混合容器に充填する第1の工程と、前記混合容器内において前記液体の頂部に固体成分Cを載置する第2の工程と、前記固体成分Cの頂部に液体A又はBの残された方を載置する第3の工程と、これらの成分を混合して、直ぐに使用できるエポキシ組成物を得る第4の工程とを、有する方法を提供する。
【0006】
「直ぐに使用できるエポキシ組成物」という用語は、一般に、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む第1の成分、少なくとも硬化剤を含む第2の成分、及び、少なくとも1種のフィラーを含む第3の成分を混合することによって得られる反応混合物を意味しており、ここで硬化剤はいずれかの種類の活性化エネルギーを加える必要なしに、20℃の条件でエポキシ樹脂と反応することができるように選ばれる。
【0007】
本発明において用いる「固体」及び「液体」という用語は、20℃の温度及び周囲圧力(1013mbar)での成分の物理的状態を説明している。
【0008】
本発明において用いる「頂部に載置する」という用語は、混合容器の中で、各相どうしが、明らかな相の境界によって互いの頂部に層をなす(又は積層する)ことを意味する。相の境界で中間的な混合がほとんど生じないことが好ましい。直ぐに使用できるエポキシ組成物全体の少なくとも55容量%を構成する中間の固体成分Cによって、相境界線における中間的な混合は、最大でも、底部側の層と頂部側の層との間で実質的な接触が生じない程度で起こる(液体Aと液体Bとは接触しない)のである。充填プロセスの間(混合工程4を開始する前)、液体Aの5重量%以下、好ましくは3重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下が液体Bと混合され、並びに/又は、液体Bの5重量%以下、好ましくは3重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下が液体Aと混合されることが好ましいとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法は、55容量%を越える高フィラー含量を、常套のエポキシ組成物の脱気した混合物の中に均質に組み入れて、既存の問題点を解決する。常套の2成分系では、貯蔵中並びに調剤プロセス中において、フィラーの沈殿が通常は観察される。更に、これらの混合前物質(pre-mixtures)を正確に計量することによって、液体A及びB並びに成分Cの混合比を自由に選択したり、一貫して制御したりすることができる。本発明の方法によれば、直ぐに使用できるエポキシ組成物の製造方法における問題点が解決され、それを簡素化することが支援され、時間及びコストが削減され、並びに、均質な生成物の生産収率が高められる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
より好ましくは、組成物は、直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して、少なくとも60容量%、最も好ましくは少なくとも65容量%のフィラー含量を示す。好ましくは、エポキシ組成物は、非常に低い体積収縮用途、ポッティングなどの用途の要求に応じて、直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して70容量%未満のフィラー含量を示す。
【0011】
更に、混合前における相分離に関して、並びに、得られる直ぐに使用できるエポキシ組成物の均質性に関して、最良の効果が達成され得るのは、液体A及び/若しくは液体Bが、(20rpmの回転速度で、ブルックフィールド粘度計、タイプRV−T、スピンドル6を用いて、22℃で測定して)1000〜20000mPas、好ましくは2000〜15000mPas、より好ましくは3000〜10000mPasの粘度を示す場合であるということが見出された。特に好ましい態様において、液体A及び液体Bの両者が上述した範囲内の粘度を示す。
【0012】
好ましくは、本発明の方法は、液体A及び/若しくは液体Bが混合容器内に載置される前に脱気されていることを特徴とする。更に好ましくは、製造方法の間での混合操作は、20℃〜60℃の温度にて減圧下で行われる。温度は60℃を越えるべきではなく、それはエポキシ混合物が硬化し始めるためである。混合物の温度は、フィラーの摩擦のために、混合過程の間中、上昇し得る。従って、混合条件を、方法の間中冷却手段によって制御して、混合物の温度が60℃を越えないことを確保することが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様において、混合容器は自転機能を有する混合ユニットを備えている。「自転機能(rotation function)」という用語は、混合容器の入口開口部の面に対して垂直な軸まわりで、その混合容器が回転することを意味する。更に、混合容器が追加的な公転機能(revolution function)を備えていることが好ましい。「公転機能」という用語は、混合容器の回転軸が、鉛直線に対して、15度以上、好ましくは30度以上の角度で配向されており、公転軸としての鉛直線まわりでの系全体の公転動作が重ね合わされることを意味する。装置の自転速度及び公転速度は、エポキシ組成物が充填される容器の重量及び寸法に依存する。当業者は、これらのパラメータを調節する知識を有している。
【0014】
好ましくは、混合プロセスは、自転機能及び公転機能の両者を有する装置、例えば、シンキー社(Thinky Co. Ltd.)及びEME Co. Ltd.などの会社から入手できる装置(UFO−5など)を用いて行われる。
【0015】
液体Aと液体Bとが相互に接触すると、直ぐに使用できるエポキシ組成物の硬化プロセス(curing and hardening process)が直ぐに始まるので、得られる混合物が、混合容器から迅速に調剤され及び塗布されることが好ましい。(混合時間の終了時から混合容器が空になるまでを測定した)調剤時間が15分未満、より好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満である場合が特に好ましいとすることができる。
【0016】
方法を単に半自動で実施し得ることは本発明の更なる利点である。そのような半自動化された方法では、種々の材料(液体A、液体B、固体フィラーの相)を調剤可能な混合容器の中へ自動的に計量することができる。本発明の方法で使用する固体成分Cは、少なくとも1種のフィラーを含む。「フィラー」という用語は、組成物の体積及び/若しくは重量を増加させるが、組成物の技術的特性にも影響を及ぼす添加物を一般に意味する。
【0017】
フィラーは、得られる接着剤に要求される技術的特性の影響によって選ばれる。良好な磁気的特性を示すフィラーを組み込むことを好ましいとすることができる。
得られる組成物は、例えば、自動車のDC―ACトランスの用途に用いることができる。更に、磁性フィラーに加えて又はその代わりに、例えば、自動車のインバータ用のキャスティング材料などの用途に、良好な熱伝導性を示すフィラーを組み込むことが好ましいとすることができる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、成分Cはフェライトから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含む。
【0019】
本発明の好ましいフェライトは、一般式:
【0020】
[化1]
IIFeIII 又は MIIO*Fe
【0021】
[式中、Mは、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Cu、Zn、Y、Sn、Cd、Sr、Ti、Cr、Mo及びVからなる群から選ばれる。]
で示されるフェライトからなる群から選ばれる。
【0022】
本発明に従って使用する金属混合酸化物(metal mixed oxides)は、スピネル型の二重酸化物(double oxides)であることが好ましい。
【0023】
[化2]
式:MIIFeIII
【0024】
[式中、MIIは少なくとも2種の異なる二価金属を含む金属成分である。]
で示されるフェライトを使用することが好ましい。二価金属の1種は、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Cu、Zn、Y、Sn、Cd、Sr、Ti、Cr、Mo及びVから選ばれ、特にMn、Co及びNiから選ばれる。他の少なくとも1種は、Zn及びCdから選ばれることが好ましい。
【0025】
特に好ましい1つの態様では、金属混合酸化物は、一般式:
【0026】
[化3]
(M1―x―yFe)IIFeIII
【0027】
[式中、M及びMは、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Cu、Zn、Y、Cd及びVから、特にMn、Co、Ni、Zn及びCdから、独立して選ばれ、
xは0.05〜0.95の数値であり、yは0〜0.95の数値であり、xとyとの合計は最大で1である。]
で示されるフェライト、並びにそれらの混合物から選ばれる。
【0028】
本発明の他の好ましい態様では、固体成分Cは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミニウム、銅、グラファイト、ニッケル若しくは銀又はそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種のフィラーを含む。
【0029】
フィラーは、接着剤に課される要求に従って選ぶことができる。本発明の1つの態様では、フィラー成分として、少なくとも1種のフェライトを、少なくとも1種の金属粉末、特にアルミニウム粉末と組み合わせることが好ましいとすることができる。得られる、高フィラー含量の接着剤は、良好な磁気的特性と高い熱伝導性とが組み合わせられている。この態様では、フェライトの金属粉末に対する重量比が、100:1〜20:1の範囲であることが好ましく、80:1〜30:1の範囲であることがより好ましい。本発明の一般的な方法では、異なるフィラーは混合容器に添加する前に混合されることが好ましい。この特定の態様では、しかしながら、異なるフィラー成分が個別に混合容器に加えられることが更に好ましく、金属粉末がフェライトよりも最初に混合容器に加えられることが更に好ましいことがある。
【0030】
本発明の好ましい態様では、固体成分Cは0.5〜1000μmの範囲の平均粒子寸法を有する粒子からなる。好ましい態様では、フィラーは、3〜500μm、より好ましくは5〜300μmの平均粒子寸法を有する。寸法がこれらの数値を示すフィラー粒子を選択することが、混合容器の中で異なる相の層間での混合のおそれを低減して、混合前における液体Aと液体Bとの良好な分離の要因となる。
【0031】
「平均粒子寸法」という用語は、透過型電子顕微鏡によるn個の個々の測定値を加え、総和をnで除して得られる、フィラー粒子の空間における最長の値の平均的寸法を意味する。平均粒子寸法は、存在するすべてのフィラーについて測定され、そのことは異なるフィラー成分の混合物について計算されることを意味する。
【0032】
使用するフィラーの量は、用途の要求に依存する。
【0033】
本発明の方法で使用する液体Aは、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。
【0034】
エポキシ樹脂としては、種々の既知の樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、対応する水素化されたエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノール−ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール−ノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ウレタンプレポリマーの末端エポキシ化によって得られるウレタン変性エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエン−又はNBR−含有ゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、及びその他の難燃性エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0035】
使用することができる更なる樹脂は、例えば、ジシクロペンタジエンと種々のフェノール型との反応によって得られるジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化生成物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールのエポキシ化生成物、芳香族エポキシ樹脂、例えば、ナフタレン(nahphatline)骨格とのエポキシ樹脂、及びフッ素エポキシ樹脂型、脂肪族エポキシ樹脂、例えば、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル及び1,6−ヘキサンジオール−ジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂型、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及びビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、及び、トリグリシジルイソシアヌレートなどの1つのヘテロ環を有するエポキシ樹脂型である。
【0036】
同様に好ましいものは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから、フェノールとホルムアルデヒド(ノボラック樹脂)及びエピクロルヒドリン、グリシジルエステルとから、並びに、エピクロルヒドリンとp−アミノフェノールとから得られるエポキシ樹脂である。
【0037】
更なるポリフェノールであって、エピクロルヒドリン(若しくはエピブロモヒドリン)と反応して好適なエポキシ樹脂−プレポリマーとなるものは、レゾルシン、1,2−ジヒドロキシベンゾール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、及び1,5−ヒドロキシナフタリンである。
【0038】
更に好適なエポキシ樹脂−プレポリマーは、ポリアルコール若しくはジアミンのポリグリシジルエーテルである。そのようなポリグリシジルエーテルは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又はトリメチロールプロパンなどの多価アルコールから得られる。
【0039】
更に、好ましいエポキシ樹脂であって、市販されており、本発明に使用することができるものは、オクタデシレンオキシド(octadecylenoxide)、エピクロルヒドリン(epichlorhydrine)、スチロールオキシド(styroloxide)、ビニルシクロヘキセンオキシド(vinylcyclohexenoxide)、グリシドール(glycidole)、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールA(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社(Hexion Specialty Chemicals Inc.)から、商標「エポン(Epon) 828」、「エポン 825」、「エポン 1004」及び「エポン 1010」として入手できるもの、ダウケミカル社(Dow Chemical Co)から、商標「DER-331」、「DER-332」、「DER-334」、「DER-732」及び「DER736」として入手できるもの)のジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4ーエポキシ−6−メチル−シクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシ−シクロペンチル)エーテル、脂肪族、ポリプロピレングリコール−変性エポキシ、ジペンテンジオキシド、エポキシ化ポリブタジエン(例えばSartomerからのKrasol製品)、エポキシ官能性を有するシリコン樹脂、難燃剤エポキシ樹脂(例えば、ダウケミカル社からの「DER-580」)、フェノールホルムアルデヒド−ノボラックの1,4−ブタンジオール−ジグリシジルエーテル(例えば、ダウケミカル社からの「DEN-431」及び「DEN-438」)、及びレゾルシンジグリシジルエーテル(例えば、コッパース社(Koppers Company Inc.)からの「コポキサイト(Kopoxite)」)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ―3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、1,2−エポキシヘキサデカン、アルキルグリシジルエーテル、例えば、C8−C10−アルキル−グリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア(HELOXY Modifier) 7」)、C12−C14−アルキル−グリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの 「ヘロキシモディファイア 8」)、ブチルグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 61」)、クレジルグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 62」)、p−tert−ブチルフェニル−グリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 65」)、多官能グリシジルエーテル、例えば1,4−ブタンジールのジグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 67」)、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 68」)、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 107」)、トリメチロールエタン−トリグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 44」)、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 48」)、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 84」、ポリグリコールジエポキシド(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「ヘロキシモディファイア 32」、ビスフェノールF−エポキシド(例えば、ヘンチマン社(Huntsman Int. LLC)からの「EPN-1138」若しくは「GY-281」、9,9−ビス−4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニルフルオレノン(例えば、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からの「エポン 1079」)である。
【0040】
更に好ましい、市販されている製品であって、本発明に使用することができるものは、アラルダイト(Araldite)(登録商標)6010、アラルダイト(登録商標)GY-281(登録商標)、アラルダイト(登録商標)ECN-1273、アラルダイト(登録商標)ECN-1280、アラルダイト(登録商標)MY-720、ヘンチマン社からのRD-2;ダウケミカル社からのDEN(登録商標)432、DEN(登録商標)438、DEN(登録商標)485、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からのエポン(登録商標)812、826、830、834、836、871、872、1001、1031など、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からのHPT(登録商標)1071、HPT(登録商標)1079、ヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からのEpi-Rez(登録商標)5132、住友化学株式会社(Sumitomo Chemical)からのESCN-001、ダウケミカル社からのカトレックス(Quatrex) 5010、日本化薬(Nippon Kayaku)からのRE 305S、大日本インキ化学工業(DaiNipon Ink Chemistry)からのエピクロン(Epiclon) TM N673、又はヘキシオンスペシャルティケミカルズ社からのエピコート(Epicote)(登録商標)152である。
【0041】
本発明の好ましい態様において、1種を越える型のエポキシ樹脂を含む直ぐに使用できるエポキシ組成物について、驚くほど良好な技術的特性が得られた。
【0042】
従って、好ましくは、液体Aは、異なる分子量及び/若しくは異なる官能性の少なくとも2種の型のエポキシ樹脂を含む。
【0043】
本発明の方法に用いられる液体Bは少なくとも1種の硬化剤を含む。硬化剤は、いずれかの型の活性化エネルギーを加えることなく、反応性エポキシ樹脂と反応する化合物から選ばれることが好ましい。
【0044】
好適な硬化剤は、中でも、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミノアミド、イミダゾール、エポキシ変性アミン、マンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、ケチミン、酸無水物であってよい。これらの硬化剤は、それぞれ独立して又は2種若しくはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0045】
本発明の方法のもう1つの態様では、液体A及び/若しくは液体Bが少なくとも1つの更なる添加物質を含むことが好ましい。更なる添加物質は、増粘剤、色素、可塑剤及び強化剤などから選ぶことができる。
【0046】
可塑剤は、中でも、フタル酸エステル、非芳香族二塩基酸エステル及びリン酸エステルであってよい。比較的高分子量の型の可塑剤として、中でも、二塩基酸と、二価アルコール、ポリプロピレングリコール及びその誘導体とのポリエステル、及びポリスチレンを挙げることができる。これらの可塑剤は、それぞれ独立して又は2種若しくはそれ以上の組合せで使用することができる。
【0047】
好適な強化剤は、コールタール、ビチューメン、紡織繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、鉱物シリケート、マイカ、粉末状水晶、アルミナ水和物、ベントナイト、ウォラストナイト、カオリン、シリカ、エーロゲル及び/若しくはエラストマーから選ぶことができる。
【0048】
本発明の更なる要旨は販売用パケットに関し、それは、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む個別に組み合わされた液体A、少なくとも1種の硬化剤を含む個別に組み合わされた液体B、及び少なくとも1種のフィラーを含む個別に組み合わされた固体成分Cを含むパーツのキットである。
【0049】
本発明のこの要旨では、固体成分Cが0.5〜1000μmの平均粒子寸法を有する粒子からなることが好ましいとすることができる。
【0050】
更に、パーツのキットは、本発明の方法に使用して、直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して少なくとも55容量%のフィラー含量を有する、直ぐに使用できるエポキシ組成物を形成することに適することが好ましいとすることができる。
【0051】
本発明のこの要旨の好ましい態様の詳細に関して、本発明の方法に関して上述した詳細な事項は、変更すべきところは変更して適用することができるということが明らかである。
【0052】
異なるパーツを大量にパックすることができ、及び本発明が必要な使用の際に必要な割合で計量することができることが、本発明のキットの1つの利点である。
【0053】
本発明の更にもう1つの目的は、本発明の方法によって調製された、直ぐに使用できるエポキシ組成物である。
【0054】
本発明のこの目的の好ましい態様の詳細に関して、本発明の方法に関して上述した詳細な事項は、変更すべきところは変更して適用することができるということが明らかである。
【0055】
本発明について、以下の実施例により更に説明する。
【実施例】
【0056】
(実施例)
以下の組成物を調製した。
【0057】
相A

【0058】
相B

【0059】
相C

【0060】
体積比の計算:
液体A’の密度:1.15g/ml アルミニウムの密度:2.70g/ml
液体B’の密度:1.00g/ml フェライトの密度:7.75g/ml
【0061】

A’+B’+Cの混合物について合計100g基準
【0062】
比較例:
比較例のエポキシ樹脂組成物を、
a)静的ミキサを用いる2成分カートリッジ・システム、及び
b)動的ミキサを用いる2成分個別の調剤・タンク
を用いて調剤した。
【0063】
代替物a)
高フィラー含量を有する比較例の液体A及びBをカートリッジに充填すると、バブルが容易にトラップされ、貯蔵中にフィラーの沈殿が生じた。しかしながら、カートリッジ内の液体を撹拌したり減圧したりして、材料のバブルを除去することは困難である。
【0064】
調剤及び混合のために材料は良好な流動特性を有することが必要であるので、材料をカートリッジ及び/若しくは混合装置内で約60℃に加熱する必要があった。加熱は沈殿を促進して、不均質な混合物が調剤される原因となる。高フィラー含量のため、混合物は静的ミキサに対して高い抵抗を有し、カートリッジシステムから混合物を調剤するためには高い圧力が必要とされる。2成分のカートリッジシステムを用いることの更なる問題点は、液体Aの液体Bに対する拘束された割合である。
【0065】
代替物b)
調剤タンクを約60℃に加熱すること、及び、システムの他のパーツを高温に保つことは、適用のための良好な流動性を確保するために必要である。しかしながら、加熱はフィラーの沈殿を促進する。材料を撹拌することによってバブルはトラップされ、そして、まだある程度の沈殿があり、これが不均質な混合物が調剤される原因となった。液体AとBとの割合は容易に制御することができず、そしてそれによって一貫性を欠くに至ることになる。
【0066】
本発明の方法
本発明の液体A’及びB’は、フィラーなしで、脱気されており、液体B’を最初に、自転及び公転機能の両者を有するデバイスを備えた、調剤可能な容器の中に、充填した。液体B’は、その後、フェライトフィラー及び/若しくは他のフィラー(相C)で覆われた。その後、液体A’を注意深く加えた。液体A’と液体B’とが相互に接触しないことが確保された。層をなした成分は、それから約2〜5分間混合及び脱気された。このプロセスの間で、混合物は、フィラーの摩擦によって幾分熱くなった。従って、混合条件は制御する必要があった(温度は60℃を越えないように制御されたが、それはエポキシ混合物がその温度で硬化し始めるためである)。得られる混合物は、硬化が進むため、それから迅速に適用された。
【0067】
一旦混合されると、(液体A’及びB’を一緒に混合するときに生じる遅くなった硬化と、更なる熱的硬化とに起因する)増大した粘度のために、沈殿はほぼ防止された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直ぐに使用できるエポキシ組成物全体に対して少なくとも55容量%のフィラー含量を有する、直ぐに使用できるエポキシ組成物の製造方法であって、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む液体Aを供給すること、少なくとも1種の硬化剤を含む液体Bを供給すること、及び少なくとも1種のフィラーを含む固体成分Cを供給することを含み、液体A若しくはBの一方を混合容器に充填する第1の工程と、前記混合容器内において前記液体の頂部に固体成分Cを載置する第2の工程と、前記固体成分Cの頂部に液体A又はBの残された方を載置する第3の工程と、これらの成分を混合して、直ぐに使用できるエポキシ組成物を得る第4の工程とを、有する方法。
【請求項2】
液体A及び/若しくは液体Bが混合容器内に載置される前に脱気されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合操作を減圧下で及び/若しくは20℃〜60℃の温度にて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
フィラーは、一般式:
[化1]
IIFeIII 又は MIIO*Fe
[式中、Mは、Mn、Co、Ni、Mg、Ca、Cu、Zn、Y、Sn、Cd、Sr、Ti、Cr、Mo及びVからなる群から選ばれる。]
で示されるフェライトからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
成分Cが、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、アルミニウム、銅、グラファイト、ニッケル及び/若しくは銀から選ばれる少なくとも1種のフィラーを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
固体成分Cが、0.5〜1000μmの平均粒子寸法を有する粒子からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
液体Aが少なくとも2種の異なる型のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2種の異なる型のエポキシ樹脂は、異なる分子量及び/若しくは異なる官能性及び/若しくは異なるエポキシ当量を示すことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
液体Aは、増粘剤、色素、可塑剤及び強化剤から選ばれる少なくとも1つの更なる添加物質を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
液体Bは、増粘剤、色素、可塑剤及び強化剤から選ばれる少なくとも1つの更なる添加物質を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法によって製造された、直ぐに使用できるエポキシ組成物。
【請求項12】
少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む個別に組み合わされた液体A、少なくとも1種の硬化剤を含む個別に組み合わされた液体B、及び、少なくとも1種のフィラーを含む個別に組み合わされた固体成分Cを含むパーツのキット。
【請求項13】
固体成分Cが、0.5〜1000μmの平均粒子寸法を有する粒子からなることを特徴とする請求項12に記載のパーツのキット。

【公表番号】特表2013−507505(P2013−507505A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533615(P2012−533615)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065306
【国際公開番号】WO2011/045331
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】