説明

高マンノースタンパク質および高マンノースタンパク質の製造方法

【課題】高マンノースタンパク質を精製する方法を提供する。
【解決手段】サンプルからhmGCBを精製する方法であって、
採取したhmGCB生成物を提供し、さらに
hmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付し、それによって精製したhmGCBを得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高マンノースタンパク質および高マンノースタンパク質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴーシェ病は、リソソーム酵素、グルコセレブロシダーゼ(GCB)の欠損により特徴づけられる、常染色体性劣性遺伝リソソーム貯蔵障害である。GCBは白血球および赤血球の膜中でスフィンゴ糖脂質が分解した後生成される糖脂質、グルコセレブロシドを加水分解する。この酵素の欠損により、ゴーシェ病の患者の肝臓、脾臓および骨髄に存在する食細胞のリソソーム中にグルコセレブロシドが多量に蓄積する。これらの分子の蓄積により脾腫、肝腫、骨障害、血小板減少および貧血を始めとする一連の臨床的な症状が発現する(非特許文献1)。
【0003】
この病気の患者の治療には、骨痛の緩和のための鎮痛薬の投与、血液および血小板の輸血ならびに場合によっては脾摘除術が行われる。骨侵食を起こしている患者に対しては時には関節置換も必要となる。
【0004】
GCBによる酵素補充療法は、ゴーシェ病の治療として用いられてきた。ゴーシェ病の患者の現在の治療法では、GCB発現構成体でトランスフェクションしたヒト胎盤またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から得られた、炭水化物リモデルGCB、それぞれアルグルセラーゼまたはイミグルセラーゼとして知られる、が投与される。この処置は極めて高価なものであるが、1つには網内系細胞起源の細胞上のマンノース受容体を酵素の標的とするために、複合グリカンのトリマンノシルコアを露出させるためGCBから糖を除去するコストが高いためである。ヒト胎盤組織(アルグルセラーゼの場合)が払底していること、複雑な精製プロトコル、比較的多量の炭水化物リモデルGCBが必要であることなどがこの治療のコスト高の原因である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Beutler et al. Gaucher disease; In: The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease (McGraw-Hill, Inc, New York, 1995) pp.2625-2639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高マンノースタンパク質の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は1つにはタンパク質、たとえばリソソーム貯蔵酵素、の前駆体オリゴ糖鎖の5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去を防止することによって、高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)などの高マンノースタンパク質が得られることを発見したことに基づくものである。これらの高マンノースタンパク質はマンノース受容体を発現する細胞をこのタンパク質の標的とするために使用することができる。このような細胞にはマクロファージ、クッパー細胞および組織球をはじめとする網内系細胞起源の細胞が含まれる。これらの高マンノースタンパク質は例えばさまざまなリソソーム蓄積症を治療するために、リソソームを標的にした受容体依存性エンドサイトーシスによるデリバリを行うのに用いることができる。
【0008】
特にhmGCBはマンノース受容体を効率的に標的とすることがわかっている。マンノース受容体はマクロファージおよびその他の細胞例えば樹状細胞、心筋細胞、およびグリア細胞に存在し、受容体依存性エンドサイトーシスの手段となる。ゴーシェ病患者にGCBが存在しないと、マクロファージ、クッパー細胞および組織球をはじめとする網内系細胞起源の細胞に主としてグルコセレブロシドの蓄積が生じる。これらの細胞はその表面にマンノース受容体を発現するため、hmGCBを用いて受容体依存性エンドサイトーシスによるリソソームへの矯正酵素のデリバリを効果的に行い、それによってゴーシェ病を治療することができる。驚くべきことに、マクロファージによるhmGCBの取り込みは細胞から分泌されるGCB取り込み量に比較し大きいことがわかった。
【0009】
したがって、本発明の1つの態様においては高マンノースグルコセレブロシド(hmGCB)調製物を生成する方法を特徴とする。この方法は、
GCBを発現することのできる細胞を提供し、
GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアから遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する条件の下で前駆体オリゴ糖を有するGCBを生成させ、それによってhmGCB調製物を生成することを含む。
【0010】
好ましい実施態様において、前記GCBはヒトGCBである。好ましい実施態様において前記細胞はヒト細胞である。
【0011】
好ましい実施態様において、前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去が防止されている。前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去が防止されていることが好ましい。
【0012】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、前記細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖の前記5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基、例えば前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去を防止する物質と接触させることを含むことができる。前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去を防止することが好ましい。
【0013】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、前記細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する物質と接触させることを含むことができ、ここでこの物質はマンノシダーゼ阻害剤である。マンノシダーゼ阻害剤はクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤または両方である。クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシン、デオキシマンノジリマイシン、または類似の阻害剤の1つまたはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシンである。有用なクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシ−1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール(6−デオキシ−DIM)および6−デオキシ−6−フルオロ−−1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール(6−デオキシ−6−フルオロ−DIM)の1つあるいはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニンである。
【0014】
好ましい実施態様において、マンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在する。
【0015】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤とクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤に接触させることを含む。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はそれぞれ約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤の合計濃度は約0.025から40.0μg/ml、0.05から20μg/ml、0.05から10μg/mlの間であり、好ましくは約0.1から4.0μg/mlの間である。
【0016】
好ましい実施態様において前記細胞は少なくとも1つのゴルジプロセシングマンノシダーゼに対し突然変異、たとえばノックアウトを有する。この突然変異は遺伝子の発現を減少する、タンパク質または活性レベルを減少する、またはマンノシダーゼの分布またはその他翻訳後修飾、例えば糖鎖の処理、を変えるものであってよい。この突然変異はゴルジプロセシングマンノシダーゼ活性のレベルを減少するもの、例えば遺伝子発現レベルを引き下げるもの、ヌルミューテーション、欠失、フレームシフトまたは挿入であってよい。好ましい実施態様においてこの突然変異は例えばマンノシダーゼ遺伝子のノックアウトである。突然変異は(タンパク質の)構造(および活性)に影響を与えることができ、例えば感温突然変異や短縮であってよい。好ましい実施態様において、前記細胞はクラス1プロセシングマンノシダーゼ、クラス2プロセシングマンノシダーゼ、クラス1プロセシングマンノシダーゼとクラス2プロセシングマンノシダーゼに対して突然変異、例えばノックアウトを有する。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、またはそれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様において、クラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0017】
好ましい実施態様において、細胞はクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子およびクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子を含む。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、およびこれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様においてクラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0018】
好ましい実施態様において、前記細胞は例えばmRNAなどの細胞マンノシダーゼ核酸配列に結合し、またはそれを不活性化し、タンパク質の発現を抑制することのできる、アンチセンス分子またはリボザイムなどの核酸配列を含む。好ましい実施態様において、この核酸配列はクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子の両方である。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、およびこれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様においてクラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0019】
好ましい実施態様において前記細胞はマンノシダーゼと結合し阻害する分子、例えば外来性分子を含む。この分子は例えば一本鎖抗体、細胞間タンパク質または競合あるいは非競合阻害剤であってもよい。
【0020】
好ましい実施態様において、hmGCB分子は少なくとも4個のマンノース残基を有する糖鎖を含む。例えばhmGCB分子は5個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は6個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は7個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は8個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。好ましくは、hmGCB分子は5個、8個または9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。
【0021】
好ましい実施態様において、生成されるhmGCB(1つまたはそれ以上のhmGCB分子またはその調製物全体のいずれか)は、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比が、GlcNAc残基2に対して、マンノース残基が3より大きく、好ましくはマンノース対GlcNAcの比が4:2,5:2,6:2,7:2,8:2,9:2であり、より好ましくはマンノース対GlcNAcの比が5:2,8:2または9:2である。
【0022】
好ましい実施態様において、5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去は、hmGCB分子の1、2、3または4本の糖鎖において防止されている。
【0023】
好ましい実施態様において、調製物中の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の、またはすべてのhmGCB分子が少なくとも1本の、好ましくは、2本、3本、または4本の糖鎖を持ち、その糖鎖において5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている。
【0024】
好ましい実施態様において、hmGCB調製物は比較的不均質な調製物である。好ましくは、hmGCB調製物中の糖鎖の80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%が5糖コアに加えて同数のマンノース残基を有する。例えば5糖コアに加えて同数のマンノース残基を有する糖鎖の異なる数のマンノース残基を有する糖鎖に対する割合は、約60%:40%、50%:50%、40%:60%、30%:70%、25%:75%、20%:80%、15%:85%、10%:90%、および5%以下:95%以上であってよい。
【0025】
好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの活性は阻害されており、hmGCB調製物中の糖鎖の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%および100%が5個以上、例えば5個、6個、7個、8個、および/または9個のマンノース残基を有する。好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIIの活性は抑制されており、5個以上のマンノース残基を有する糖鎖の4個以下のマンノース残基をもつ糖鎖に対する比は約60%:40%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、99%:1%、または100%:0%である。
【0026】
好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIIの活性は阻害されており、hmGCB調製物中の糖鎖の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%が5個以上、例えば5個、6個、7個、8個、および/または9個のマンノース残基を有する。好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIIの活性は抑制されており、5個以上のマンノース残基を有する糖鎖の4個以下のマンノース残基をもつ糖鎖に対する比は約60%:40%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、99%:1%、または100%:0%である。
【0027】
好ましい実施態様において、前記細胞はGCBコード化領域を含む外来性核酸配列を含む。好ましい実施態様において、細胞はこの外来性GCBコード化領域の発現を調節する作用を有する調節配列、内在性または外来性の調節配列をさらに含む。
【0028】
好ましい実施態様において、前記細胞は内在性GCBコード化配列の発現を調節する外来性調節配列を含み、例えばこの調節配列は内在性GCBコード化配列の発現を調節するように前記細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0029】
好ましい実施態様において、この調節配列はプロモーター、エンハンサー、上流活性化配列(UAS)、骨格結合領域または転写因子結合部位の1つ以上を含む。好ましい実施態様において、この調節配列には、メタロチオネイン−I遺伝子、例えばマウスメタロチオネインーI遺伝子、からの調節配列、SV−40遺伝子からの調節配列、サイトメガロウイルス遺伝子からの調節配列、コラーゲン遺伝子からの調節配列、アクチン遺伝子からの調節配列、免疫グロブリン遺伝子からの調節配列、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子からの調節配列、またはEF−lα遺伝子からの調節配列が含まれる。
【0030】
好ましい実施態様において、前記細胞は真核細胞である。好ましい実施態様においてこの細胞は真菌、植物または動物、たとえば脊椎動物を起源とするものである。好ましい実施態様において、この細胞はほ乳類の細胞、例えばほ乳類の初代または2次細胞、たとえば線維芽細胞、造血幹細胞、筋原細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の固形成分を含む細胞、筋肉細胞およびこれら体細胞の前駆体、および形質転換または不死化細胞系である。好ましくはこの細胞はヒトの細胞である。本発明の方法で有用な不死化ヒト細胞系の例をあげると、これに限定するわけではないが、Bowesの黒色腫細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL9607)、Daudi細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL213)、ヒーラ細胞およびヒーラ細胞の誘導体(ATCC受け入れ番号No.CCL2、CCL2.1およびCCL2.2)、ヒーラ−60細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL240)、HT−1080細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL121)、Jurkat細胞(ATCC受け入れ番号No.TIB152)、KBカルチノーマ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL17)、K−562白血病細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL243)、MCF−7乳ガン細胞(ATCC受け入れ番号No.BTH22)、MOLT−4細胞(ATCC受け入れ番号No.1582)、Namalwa細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL1432)、ラージ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL86)、RPMI8226細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL155)、U−937細胞(ATCC受け入れ番号No.1593)、WI−28VA13サブライン2R4細胞(ATCC受け入れ番号No.CLL155)、CCRF−CEM細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL119)および2780AD卵巣カルチノーマ細胞(Van Der Blick et al.,Cancer Res. 48:5927−5932,1988)、およびヒト細胞と別の種の細胞とを融合して得た異種ハイブリドーマ細胞があげられる。もうひとつの実施態様において、不死化細胞系はヒト細胞株以外の細胞株、たとえばCHO細胞株やコス細胞株であってもよい。また別の実施態様において、細胞はクローン細胞株またはクローン細胞系からのものであってもよい。
【0031】
好ましい実施態様において、hmGCB発現可能な細胞数が提供され、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはすべての細胞が特定数のマンノース残基を有する、少なくとも1本の、好ましくは2本、3本、または4本の糖鎖を有するhmGCB分子を生成する。
【0032】
好ましい実施態様において、この細胞は少なくとも1つのマンノシダーゼ阻害剤を含む培地中で培養される。好ましい実施態様において、本発明の方法はさらにこの細胞が培養されている培地からhmGCBを得ることを含む。
【0033】
もう1つの態様において、本発明はhmGCBの調製物を製造する方法を特徴とする。この方法は
GCBを発現することのできる細胞を提供し、
GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去が防止されるように、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する条件の下で、前駆体オリゴ糖を有するGCBを生成させ、それによってhmGCB調製物を製造する、ことを含む。
【0034】
好ましい実施態様において、このGCBはヒトGCBである。好ましい実施態様においてこの細胞はヒト細胞である。
【0035】
好ましい実施態様において、前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去が防止されている。前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去が防止されていることが好ましい。
【0036】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する物質およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する物質に接触させ、それによってGCBの前駆体オリゴ糖の前記5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止することを含むことができる。好ましい実施態様においては、5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去が防止される。
【0037】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する物質およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する物質に接触させることを含み、ここでこの物質はクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤とクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤である。好ましい実施態様において、このクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシン、デオキシマンノジリマイシン、または類似の阻害剤の1つまたはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシンである。好ましい実施態様において、クラス2のプロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシ−DIM、および6−デオキシ−6−フルオロ−DIMの1つあるいはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニンである。
【0038】
好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はそれぞれ約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤の合計濃度は約0.025から40.0μg/ml、0.05から20μg/ml、0.05から1μg/ml、好ましくは約0.1から4.0μg/mlの間である。
【0039】
好ましい実施態様において細胞はクラス1マンノシダーゼとクラス2マンノシダーゼに対し突然変異、たとえばノックアウトを有する。この突然変異は遺伝子の発現を減少する、タンパク質または活性レベルを減少する、またはマンノシダーゼの分布またはその他翻訳後修飾、例えば糖鎖の処理、を変えるものであってよい。この突然変異はクラス1プロセシングマンノシダーゼおよび/またはクラス2プロセシングマンノシダーゼの活性レベルを減少するもの、例えば遺伝子の発現、ヌルミューテーション、欠失、フレームシフトまたは挿入であってよい。好ましい実施態様においてこの突然変異はマンノシダーゼ遺伝子のノックアウトである。この突然変異は(タンパク質の)構造(および活性)に影響を与えることができ、例えば感温突然変異であってよい。好ましい実施態様においてクラス1プロセシングマンノシダーゼは、ゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、またはそれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様において、クラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0040】
好ましい実施態様において、前記細胞はクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子を含む。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、およびこれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様においてクラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0041】
好ましい実施態様において、細胞はマンノシダーゼに結合しそれを不活性化する、外来性分子などの分子を含む。この分子は例えば一本鎖抗体、細胞間タンパク質または競合性あるいは非競合性阻害剤であってもよい。
【0042】
好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性とクラス2マンノシダーゼ活性は異なる作用機序で阻害されてもよい。例えば、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性は、細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼを阻害する物質、例えばクラス1マンノシダーゼ阻害剤と接触させて阻害し、クラス2プロセシングマンノシダーゼは、クラス2マンノシダーゼのノックアウトである細胞および/またはクラス2マンノシダーゼアンチセンス分子を含む細胞により阻害することができる。もう1つの好ましい実施例において、クラス2プロセシングマンノシダーゼ活性は、細胞を、クラス2プロセシングマンノシダーゼを阻害する基質、例えばクラス2マンノシダーゼ阻害剤、と接触させることによって阻害し、クラス1プロセシングマンノシダーゼは、クラス1マンノシダーゼのノックアウトである細胞および/またはクラス1マンノシダーゼアンチセンス分子を含む細胞を用いて阻害することができる。
【0043】
好ましい実施態様において、hmGCB分子は少なくとも4個のマンノース残基を有する糖鎖を含む。例えばhmGCB分子は5個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は6個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は7個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は8個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。好ましくは、hmGCB分子は5個、8個または9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。
【0044】
好ましい実施態様において、生成されるhmGCB(1つまたはそれ以上のhmGCB分子または調製物全体のいずれか)は、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比が、GlcNAc残基2に対しマンノース残基が3より大きく、好ましくはマンノース対GlcNAcの比が4:2,5:2,6:2,7:2,8:2,9:2であり、より好ましくはマンノース対GlcNAcの比が5:2,8:2または9:2である。
【0045】
好ましい実施態様において、5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が、hmGCB分子の1,2、3または4本の糖鎖において防止されている。
【0046】
好ましい実施態様において、調製物の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の、またはすべてのhmGCB分子が少なくとも1本の、好ましくは、2本、3本、または4本の糖鎖を持ち、その糖鎖において5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている。
【0047】
好ましい実施態様において、hmGCB調製物は比較的不均質な調製物である。好ましくは、5糖コアに加えて同数のマンノース残基を有する糖鎖はhmGCB調製物中の80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%未満である。例えば5糖コアに加え同数のマンノース残基を有する糖鎖の異なる数のマンノース残基を有する糖鎖に対する比は、約60%:40%、50%:50%、40%:60%、30%:70%、25%:75%、20%:80%、15%:85%、10%:90%、および5%以下:95%以上であってよい。
【0048】
好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ、例えばゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの活性、およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ、例えばゴルジマンノシダーゼIIの活性は阻害されており、hmGCB調製物中の糖鎖の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%および100%が5個以上、例えば5個、6個、7個、8個、および/または9個のマンノース残基を有する。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ、例えばゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの活性、およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ、例えばゴルジマンノシダーゼIIの活性は抑制されており、5個以上のマンノース残基を有する糖鎖の4個以下のマンノース残基をもつ糖鎖に対する比は約60%:40%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、99%:1%、または100%:0%である。
【0049】
好ましい実施態様において、細胞はGCBコード化領域を含む外来性核酸配列を含む。好ましい実施態様において、細胞はこの外来性GCBコード化領域の発現を調節する作用を有する調節配列、内在性または外来性の調節配列をさらに含む。
【0050】
好ましい実施態様において、細胞は内在性GCBコード化配列の発現を調節する作用を有する外来性調節配列を含む、例えばこの調節配列は内在性GCBコード化配列の発現を調節するように細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0051】
好ましい実施態様において、この調節配列はプロモーター、エンハンサー、上流活性化配列(UAS)、骨格結合領域または転写因子結合部位の1つ以上を含む。好ましい実施態様において、この調節配列には、メタロチオネイン−I遺伝子、例えばマウスメタロチオネインーI遺伝子、からの調節配列、SV−40遺伝子からの調節配列、サイトメガロウイルス遺伝子からの調節配列、コラーゲン遺伝子からの調節配列、アクチン遺伝子からの調節配列、免疫グロブリン遺伝子からの調節配列、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子からの調節配列、またはEF−lα遺伝子からの調節配列が含まれる。
【0052】
好ましい実施態様において、前記細胞は真核細胞である。好ましい実施態様においてこの細胞は真菌、植物または動物、たとえば脊椎動物を起源とするものである。好ましい実施態様において、この細胞はほ乳類の細胞、例えばほ乳類の初代または2次細胞、たとえば線維芽細胞、造血幹細胞、筋原細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の固形成分を含む細胞、筋肉細胞およびこれら体細胞の前駆体、および形質転換または不死化細胞系である。好ましくはこの細胞はヒトの細胞である。本発明の方法で有用な不死化ヒト細胞株の例をあげると、これに限定するわけではないが、Bowesの黒色腫細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL9607)、Daudi細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL213)、ヒーラ細胞およびヒーラ細胞の誘導体(ATCC受け入れ番号No.CCL2、CCL2.1およびCCL2.2)、ヒーラ−60細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL240)、HT−1080細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL121)、Jurkat細胞(ATCC受け入れ番号No.TIB152)、KBカルチノーマ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL17)、K−562白血病細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL243)、MCF−7乳ガン細胞(ATCC受け入れ番号No.BTH22)、MOLT−4細胞(ATCC受け入れ番号No.1582)、Namalwa細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL1432)、ラージ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL86)、RPMI8226細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL155)、U−937細胞(ATCC受け入れ番号No.1593)、WI−28VA13サブライン2R4細胞(ATCC受け入れ番号No.CLL155)、CCRF−CEM細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL119)および2780AD卵巣カルチノーマ細胞(Van Der Blick et al.,Cancer Res. 48:5927−5932,1988)、およびヒト細胞と別の種の細胞とを融合して得た異種ハイブリドーマ細胞があげられる。もうひとつの実施態様において、この不死化細胞系はヒト細胞株以外の細胞株、たとえばCHO細胞株やコス細胞株であってもよい。また別の実施態様において、この細胞はクローン細胞株またはクローン細胞系からのものであってもよい。
【0053】
好ましい実施態様において、hmGCB発現可能な細胞数が提供され、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはすべての細胞が特定数のマンノース残基を有する少なくとも1本の、好ましくは2本、3本、または4本の糖鎖を有するhmGCB分子を生成する。
【0054】
好ましい実施態様において、この細胞は少なくとも1つのクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤と少なくとも1つのクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤を含む培地中で培養される。好ましい実施態様において、本発明の方法はさらにこの細胞が培養されている培地からhmGCBを得ることを含む。
【0055】
もう1つの態様において、本発明はhmGCBの調製物を製造する方法を特徴とする。この方法は
内在性GCBコード化領域の発現を調節する外来性調節配列を含む核酸配列を導入した細胞を提供し、
GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去が防止される条件の下で、前駆体オリゴ糖を有するGCBを生成させ、それによってhmGCB調製物を製造する、ことを含む。
【0056】
好ましい実施態様において、このGCBはヒトGCBである。
【0057】
好ましい実施態様において、前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去が防止されている。前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去が防止されていることが好ましい。
【0058】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖の前記5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基、例えば前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去を防止する物質と接触させることを含む。5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去を防止することが好ましい。
【0059】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖の前記5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する物質と接触させることを含み、ここでこの物質はマンノシダーゼ阻害剤である。このマンノシダーゼ阻害剤はクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤、クラス2マンノシダーゼ阻害剤、あるいはその両方であってよい。クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシン、デオキシマンノジリマイシン、または類似の阻害剤の1つまたはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシンである。有用なクラス2のプロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシ−DIM、および6−デオキシ−6−フルオロ−DIMの1つあるいはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニンである。
【0060】
好ましい実施態様において、マンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05からμg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在する。
【0061】
好ましい実施態様において、本発明の方法はさらに、細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤と接触させることを含む。好ましい実施態様において、このクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はそれぞれ約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤およびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤の合計濃度は約0.025から40.0μg/ml、0.05から20μg/ml、0.05から10μg/ml、好ましくは約0.1から4.0μg/mlの間である。
【0062】
好ましい実施態様において細胞は少なくとも1つのマンノシダーゼに対し突然変異、たとえばノックアウトを有する。この突然変異は遺伝子の発現を減少する、タンパク質または活性レベルを減少する、またはマンノシダーゼの分布またはその他翻訳後修飾、例えば糖鎖の処理、を変えるものであってよい。この突然変異はゴルジプロセシングマンノシダーゼ活性のレベルを減少するもの、例えば遺伝子の発現、ヌルミューテーション、欠失、フレームシフトまたは挿入であってよい。好ましい実施態様においてこの突然変異は例えばマンノシダーゼ遺伝子のノックアウトである。この突然変異は(タンパク質の)構造(および活性)に影響を与えることができ、例えば感温突然変異または切断であってよい。好ましい実施態様において細胞は、クラス1プロセシングマンノシダーゼ、クラス2プロセシングマンノシダーゼに対して例えばノックアウトなどの突然変異を有し、クラス1プロセシングマンノシダーゼとクラス2プロセシングマンノシダーゼに対して例えばノックアウトなどの突然変異体を有する。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼは、ゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、またはそれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様において、クラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0063】
好ましい実施態様において、前記細胞は例えばmRNAなどの細胞マンノシダーゼ核酸配列に結合し、またはそれを不活性化し、タンパク質の発現を抑制することのできる、アンチセンス分子またはリボザイムなどの核酸配列を含む。好ましい実施態様において、この核酸配列はクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子の両方である。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、およびこれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様においてクラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0064】
好ましい実施態様において、細胞はマンノシダーゼに結合しそれを阻害する、外来性分子などの分子を含む。この分子は例えば一本鎖抗体、細胞間タンパク質または競合性あるいは非競合性阻害剤であってもよい。
【0065】
好ましい実施態様において、hmGCB分子は少なくとも4個のマンノース残基を有する糖鎖を含む。例えばhmGCB分子は5個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は6個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は7個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は8個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を持ち、hmGCB分子は9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。好ましくは、hmGCB分子は5個、8個または9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有する。
【0066】
好ましい実施態様において、生成されるhmGCB(1つまたはそれ以上のhmGCB分子または調製物全体のいずれか)は、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比が、GlcNAc残基2に対しマンノース残基が3より大きく、好ましくはマンノース対GlcNAcの比が4:2、5:2、6:2、7:2、8:2,9:2であり、より好ましくはマンノース対GlcNAcの比が5:2、8:2または9:2である。
【0067】
好ましい実施態様において、5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が、hmGCB分子の1、2、3または4本の糖鎖において防止されている。
【0068】
好ましい実施態様において、調製物の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の、またはすべてのhmGCB分子が少なくとも1本の、好ましくは、2本、3本、または4本の糖鎖を持ち、その糖鎖において5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている。
【0069】
好ましい実施態様において、hmGCB調製物は比較的不均質な調製物である。好ましくは、5糖コアに加えて同数のマンノース残基を有する糖鎖はhmGCB調製物中80%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%または1%未満である。例えば5糖コアに加え、同数のマンノース残基を有する糖鎖の異なる数のマンノース残基を有する糖鎖に対する比は、約60%:40%、50%:50%、40%:60%、30%:70%、25%:75%、20%:80%、15%:85%、10%:90%、および5%以下:95%以上であってよい。
【0070】
好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの活性は阻害されており、hmGCB調製物中の糖鎖の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%が5個以上、例えば5個、6個、7個、8個、および/または9個のマンノース残基を有する。好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIの活性は抑制されており、5個以上のマンノース残基を有する糖鎖の4個以下のマンノース残基をもつ糖鎖に対する比は約60%:40%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、99%:1%、または100%:0%である。
【0071】
好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIIの活性は阻害されており、hmGCB調製物中の糖鎖の少なくとも約60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%が5個以上、例えば5個、6個、7個、8個、および/または9個のマンノース残基を有する。好ましい実施態様において、ゴルジマンノシダーゼIIの活性は抑制されており、5個以上のマンノース残基を有する糖鎖の4個以下のマンノース残基をもつ糖鎖に対する比は約60%:40%、70%:30%、75%:25%、80%:20%、85%:15%、90%:10%、95%:5%、99%:1%、または100%:0%である。
【0072】
好ましい実施態様において、この調節配列はプロモーター、エンハンサー、上流活性化配列(UAS)、骨格結合領域または転写因子結合部位の1つ以上を含む。好ましい実施態様において、この調節配列には、メタロチオネイン−I遺伝子、例えばマウスメタロチオネインーI遺伝子、からの調節配列、SV−40遺伝子からの調節配列、サイトメガロウイルス遺伝子からの調節配列、コラーゲン遺伝子からの調節配列、アクチン遺伝子からの調節配列、免疫グロブリン遺伝子からの調節配列、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子からの調節配列、またはEF−lα遺伝子からの調節配列が含まれる。
【0073】
好ましい実施態様において、この細胞は真核細胞である。好ましい実施態様においてこの細胞は真菌、植物または動物、たとえば脊椎動物を起源とするものである。好ましい実施態様において、この細胞はほ乳類の細胞、例えばほ乳類の初代または2次細胞、たとえば線維芽細胞、造血幹細胞、筋原細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の固形成分を含む細胞、筋肉細胞およびこれら体細胞の前駆体、および形質転換または不死化細胞系である。好ましくはこの細胞はヒトの細胞である。本発明の方法で有用な不死化ヒト細胞株の例をあげると、これに限定するわけではないが、Bowesの黒色腫細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL9607)、Daudi細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL213)、ヒーラ細胞およびヒーラ細胞の誘導体(ATCC受け入れ番号No.CCL2、CCL2.1およびCCL2.2)、ヒーラ−60細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL240)、HT−1080細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL121)、Jurkat細胞(ATCC受け入れ番号No.TIB152)、KBカルチノーマ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL17)、K−562白血病細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL243)、MCF−7乳ガン細胞(ATCC受け入れ番号No.BTH22)、MOLT−4細胞(ATCC受け入れ番号No.1582)、Namalwa細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL1432)、ラージ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL86)、RPMI8226細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL155)、U−937細胞(ATCC受け入れ番号No.1593)、WI−28VA13サブライン2R4細胞(ATCC受け入れ番号No.CLL155)、CCRF−CEM細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL119)および2780AD卵巣カルチノーマ細胞(Van Der Blick et al.,Cancer Res. 48:5927−5932,1988)、およびヒト細胞と別の種の細胞とを融合して得た異種ハイブリドーマ細胞があげられる。もうひとつの実施態様において、この不死化細胞系はヒト細胞株以外の細胞株、たとえばCHO細胞株やコス細胞株であってもよい。また別の実施態様において、この細胞はクローン細胞株またはクローン細胞系からのものであってもよい。
【0074】
好ましい実施態様において、hmGCB発現可能な細胞数が提供され、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはすべての細胞が特定の数のマンノース残基を有する少なくとも1本の、好ましくは2本、3本、または4本の糖鎖を有するhmGCB分子を生成する。
【0075】
好ましい実施態様において、この細胞は少なくとも1つのマンノシダーゼ阻害剤を含む培地中で培養される。好ましい実施態様において、本発明の方法はさらにこの細胞が培養されている培地からhmGCBを得ることを含む。
【0076】
もう1つの態様において、本発明はここで記載した方法のいずれかによって生成されたhmGCB分子、例えばここで記載したhmGCB分子、例えばここに記載のいずれかの方法によって生成されたヒトhmGCB、を特徴とする。好ましくは、このhmGCB分子は前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖、好ましくは2本、3本または4本の糖鎖を含む。
【0077】
もう1つの態様において本発明は前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個のマンノース残基を有する1本の糖鎖、好ましくは2本、3本または4本の糖鎖を含むhmGCB分子の一部を含むhmGCB調製物を特徴とする。好ましくはこのhmGCB調製物はここに記載の方法のいずれかにより生成される。
【0078】
好ましい実施態様において、hmGCBはヒトhmGCBである。
【0079】
好ましい実施態様において、hmGCB分子は5個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖、6個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖、7個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖、8個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖、9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有することができる。
【0080】
好ましい実施態様において、生成されるhmGCB(1つまたはそれ以上のhmGCB分子または調製物全体のいずれか)は、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比が、GlcNAc残基2に対しマンノース残基が3より大きく、好ましくはマンノース対GlcNAcの比が4:2,5:2,6:2,7:2,8:2,9:2であり、より好ましくはマンノース対GlcNAcの比が5:2,8:2または9:2である少なくとも1本の糖鎖を有する。
【0081】
好ましい実施態様において、調製物の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の、またはすべてのhmGCB分子が少なくとも1本の、好ましくは、2本、3本、または4本の糖鎖を持ち、その糖鎖において5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている。
【0082】
もう1つの態様において、本発明は少なくとも1つのマンノシダーゼ活性が阻害されており、内在性GCBコード化領域の発現を調節するように導入された外来性調節配列を含む細胞を特徴とし、ここでこの細胞はGCBを生成するにあたり、GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去が防止されている。
【0083】
好ましい実施態様において、この細胞はhmGCB調製物、例えばヒトhmGCB調製物を生成し、ここで、前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基、5糖コアに遠位のα1,3マンノース残基、および/または前記5糖コアに遠位のα1,6マンノース残基の除去が防止されている。5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基の除去が防止されていることが好ましい。
【0084】
好ましい実施態様においては、細胞を、マンノシダーゼを阻害する物質と接触させることにより、細胞中の少なくとも1つのマンノシダーゼ活性が阻害されている。好ましい実施態様において、この物質はマンノシダーゼ阻害剤である。このマンノシダーゼ阻害剤はクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤、クラス2マンノシダーゼ阻害剤、あるいはその両方であってよい。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシン、デオキシマンノジリマイシン、の1つまたはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はキフネンシンである。好ましい実施態様において、クラス2のプロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシ−DIM、および6−デオキシ−6−フルオロ−DIMの1つあるいはそれ以上であってよい。好ましくは、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤はスワインソニンである。
【0085】
好ましい実施態様において、細胞は少なくとも1つのゴルジプロセシングマンノシダーゼに対し突然変異、たとえばノックアウトを有する。この突然変異は遺伝子の発現を減少する、タンパク質または活性レベルを減少する、またはマンノシダーゼの分布またはその他翻訳後修飾、例えば糖鎖の処理、を変えるものであってよい。この突然変異はゴルジプロセシングマンノシダーゼ活性のレベルを減少するもの、例えば遺伝子の発現、ヌルミューテーション、欠失、フレームシフトまたは挿入であってよい。好ましい実施態様においてこの突然変異はマンノシダーゼ遺伝子のノックアウトである。この突然変異は(タンパク質の)構造(および活性)に影響を与えることができ、例えば感温突然変異であってよい。好ましい実施態様において細胞は、クラス1プロセシングマンノシダーゼ、クラス2プロセシングマンノシダーゼ、およびクラス1プロセシングマンノシダーゼとクラス2プロセシングマンノシダーゼに対して例えばノックアウトなどの突然変異を有する。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼは、ゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、またはそれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様において、クラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0086】
好ましい実施態様において、細胞はmRNAなどの細胞マンノシダーゼ核酸に結合しまたはそれを不活性化し、タンパク質の発現を抑制することのできる、アンチセンス分子またはリボザイムなどの核酸配列を含む。好ましい実施態様において、この核酸配列はクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子の両方である。好ましい実施態様において、クラス1プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼIC、およびこれらを組み合わせたものである。好ましい実施態様においてクラス2プロセシングマンノシダーゼはゴルジマンノシダーゼIIである。
【0087】
好ましい実施態様において、細胞はマンノシダーゼに結合しそれを不活性化する、外来性分子などの分子を含む。この分子は例えば一本鎖抗体、細胞間タンパク質または競合性あるいは非競合性阻害剤であってもよい。
【0088】
好ましい実施態様において、細胞により生成されるhmGCB分子は、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比が、GlcNAc残基2に対しマンノース残基が3より大きく、好ましくはマンノース対GlcNAcの比が4:2,5:2,6:2,7:2,8:2,9:2であり、より好ましくはマンノース対GlcNAcの比が5:2,8:2または9:2である。
【0089】
好ましい実施態様において、この細胞ではhmGCB分子の1,2、3または4本の糖鎖において5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が不可能である。
【0090】
好ましい実施態様において、この細胞から生産された少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%の、またはすべてのhmGCB分子が少なくとも1本の、好ましくは、2本、3本、または4本の糖鎖を持ち、その糖鎖において5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている。
【0091】
好ましい実施態様において、この調節配列にはプロモーター、エンハンサー、上流活性化配列(UAS)、骨格結合領域または転写因子結合部位の1つ以上が含まれる。好ましい実施態様において、この調節配列には、メタロチオネイン−I遺伝子、例えばマウスメタロチオネインーI遺伝子、からの調節配列、SV−40遺伝子からの調節配列、サイトメガロウイルス遺伝子からの調節配列、コラーゲン遺伝子からの調節配列、アクチン遺伝子からの調節配列、免疫グロブリン遺伝子からの調節配列、HMG−CoAレダクターゼ遺伝子からの調節配列、またはEF−lα遺伝子からの調節配列が含まれる。
【0092】
好ましい実施態様において、この細胞は真核細胞である。好ましい実施態様においてこの細胞は真菌、植物または動物、たとえば脊椎動物を起源とするものである。好ましい実施態様において、この細胞はほ乳類の細胞、例えばほ乳類の初代または2次細胞、たとえば線維芽細胞、造血幹細胞、筋原細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の固形成分を含む細胞、筋肉細胞およびこれら体細胞の前駆体、および形質転換または不死化細胞系である。好ましくはこの細胞はヒトの細胞である。本発明の方法で有用な不死化ヒト細胞株の例をあげると、これに限定するわけではないが、Bowesの黒色腫細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL9607)、Daudi細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL213)、ヒーラ細胞およびヒーラ細胞の誘導体(ATCC受け入れ番号No.CCL2、CCL2.1およびCCL2.2)、ヒーラ−60細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL240)、HT−1080細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL121)、Jurkat細胞(ATCC受け入れ番号No.TIB152)、KBカルチノーマ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL17)、K−562白血病細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL243)、MCF−7乳ガン細胞(ATCC受け入れ番号No.BTH22)、MOLT−4細胞(ATCC受け入れ番号No.1582)、Namalwa細胞(ATCC受け入れ番号No.CRL1432)、ラージ細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL86)、RPMI8226細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL155)、U−937細胞(ATCC受け入れ番号No.1593)、WI−28VA13サブライン2R4細胞(ATCC受け入れ番号No.CLL155)、CCRF−CEM細胞(ATCC受け入れ番号No.CCL119)および2780AD卵巣カルチノーマ細胞(Van Der Blick et al.,Cancer Res. 48:5927−5932,1988)、およびヒト細胞と別の種の細胞とを融合して得た異種ハイブリドーマ細胞があげられる。もうひとつの実施態様において、この不死化細胞系はヒト細胞株以外の細胞株、たとえばCHO細胞株やコス細胞株であってもよい。また別の実施態様において、この細胞はクローン細胞株またはクローン細胞系からのものであってもよい。
【0093】
もう1つの態様において本発明はゴーシェ病の治療に適した量の、前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖、好ましくは2本、3本または4本の糖鎖を含むhmGCB分子、例えばヒトhmGCBを含む薬剤組成物を特徴とする。
【0094】
好ましい実施態様において、この医薬組成物はさらに医薬上許容される担体または希釈剤を含む。
【0095】
もう1つの態様において本発明はゴーシェ病の患者を治療する方法を特徴とする。この方法はゴーシェ病の患者に前駆体オリゴ糖の少なくとも4つのマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖、好ましくは、2個、3個または4個の糖鎖を有する、hmGCB調製物、例えばヒトhmGCB調製物、をゴーシェ病の治療に適した量、投与することを含む。
【0096】
もう1つの態様において、本発明は、hmGCBを試料から精製する方法を特徴とする。この方法は採取したhmGCB生成物を提供すること、このhmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付し、それによって精製されたhmGCBを得ることを含む。
【0097】
好ましい実施態様において、MEP Hypercel(登録商標)がHCICに対して用いられる。もう1つの好ましい実施態様において、MacroPrep Methyl(登録商標)がHICに用いられる。
【0098】
もう1つの好ましい実施態様において、本発明はさらにhmGCB生成物をイオン交換クロマトグラフィーに付すことを含む。イオン交換クロマトグラフィーに先立ち、hmGCB生成物をHCICおよび/またはHICに付してもよく、またHCICおよび/またはHICに先立ちhmGCB生成物をイオン交換クロマトグラフィーに付してもよい。好ましくは、hmGCB生成物は1回以上のイオン交換クロマトグラフィーステップに付される。このイオン交換クロマトグラフィーは陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーまたは両方であってよい。
【0099】
好ましい実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、Q Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)、およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。好ましい実施態様において、陽イオンクロマトグラフィーは、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0100】
好ましい実施態様において、本発明はさらにhmGCB生成物をサイズ排除クロマトグラフィーに付すことを含む。好ましくは、このサイズ排除クロマトグラフィーはSuperdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0101】
もう1つの態様において、本発明はhmGCBを精製する方法を特徴とする。この方法は採取したhmGCB生成物を提供すること、このhmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付すこと、このhmGCB生成物を陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーのうちの1つ以上に付し、それによって精製されたhmGCBを得ることを含む。
【0102】
好ましい実施態様において、MEP Hypercel(登録商標)がHCICに対して用いられる。もう1つの好ましい実施態様において、MacroPrep Methyl(登録商標)がHICに用いられる。
【0103】
好ましい実施態様において、本発明は陰イオン交換クロマトグラフィーを用いることを含む。好ましくは、陰イオン交換クロマトグラフィーは、Q Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)、およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0104】
好ましい実施態様において、本発明は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いることを含む。好ましくは、陽イオンクロマトグラフィーは、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0105】
好ましい実施態様において、本発明はサイズ排除クロマトグラフィーを用いることを含む。好ましくは、このサイズ排除クロマトグラフィーはSuperdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0106】
好ましい実施態様において、hmGCB生成物は(順不同で)、陰イオン交換クロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーに付される。好ましくは、hmGCBはこれら3つすべてのクロマトグラフィーステップに、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーそしてサイズ排除クロマトグラフィーの順序で付される。
【0107】
もう1つの態様において、本発明はhmGCBの精製方法を特徴とする。この方法は採取したhmGCB生成物を提供すること、このhmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付すこと、このHCICおよび/またはHIC精製hmGCB生成物を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すこと、陰イオン交換クロマトグラフィー精製hmGCB生成物を陽イオン交換クロマトグラフィーに付すこと、そして陽イオン交換クロマトグラフィー精製hmGCB生成物をサイズ排除クロマトグラフィーに付し、それによって精製されたhmGCBを得ることを含む。
【0108】
好ましい実施態様において、MEP Hypercel(登録商標)がHCICに対して用いられる。もう1つの好ましい実施態様において、MacroPrep Methyl(登録商標)がHICに用いられる。
【0109】
好ましい実施態様において、陰イオン交換クロマトグラフィーは、Q Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)、およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0110】
好ましい実施態様において、陽イオン交換クロマトグラフィーは、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0111】
好ましい実施態様において、サイズ排除クロマトグラフィーはSuperdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われる。
【0112】
「高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)」とは、ここでは前駆体オリゴ糖からの4個以上のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖を有するグルコセレブロシダーゼを言う。このhmGCBは前駆体オリゴ糖鎖からのマンノース残基を5個、6個、7個、8個または9個有することが好ましい。最も好ましくはこのhmGCBは前駆体オリゴ糖鎖からのマンノース残基を5個、8個または9個有する。
【0113】
「hmGCB調製物」とは2つ以上のhmGCB分子を指す。
【0114】
「初代細胞」には脊椎動物組織源(プレーテイング、すなわち皿またはフラスコなどの組織培養基板に固定される前の)から単離された細胞の懸濁液中に存在する細胞、組織から得られた外植片中に存在する細胞、先の2種類の細胞を初めて培養したもの、そしてこれらの培養細胞から得られた細胞懸濁液が含まれる。2次細胞または細胞株とはその後培養されているすべての段階の細胞をさす。すなわち、最初に培養された初代細胞が培養基質から除去され、再度培養(継代培養)されると、これはその後の継代中のすべての細胞を含め、ここでは2次細胞と呼ばれる。2次細胞は1回以上継代されている2次細胞からなる細胞株である。細胞株は1)1回以上継代され、2)培養により有限数の平均個体数倍加を示し、3)接触阻害、足場依存性の増殖性を示し(足場依存性は懸濁培養液で増殖する細胞に対しては適用されない)、そして4)不死化されていない、2次細胞からなる。「クローン細胞株」は単一の創始細胞から誘導される細胞株と定義される。「異種細胞株」とは2つ以上の創始細胞から誘導される細胞株と定義される。
【0115】
「不死化細胞」とはその決定的な特徴として、ここでは培養中見かけ上無限の寿命を示す細胞系(「株」という名称は初代および2次細胞に使用されるのでここでは「系」とする)を指す。
【0116】
「トランスフェクション細胞」とは、外来性合成核酸配列、例えばタンパク質をコード化する配列、が導入されている細胞を指す。細胞中に入ると、この合成核酸配列は受容細胞染色体DNA内に取り込まれ、エピソームとして存在することができる。この合成核酸配列を細胞内に導入するには標準的なトランスフェクション法を用いることができ、例えばリポソームにより仲介されるトランスフェクション、ポリブレン、DEAEデキストラン−仲介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、あるいはマイクロインジェクションなどである。「トランスフェクション」にはDNAまたはRNAのウイルスによる細胞へのデリバリは含まれない。
【0117】
「感染細胞」または「導入細胞」とは、外来性合成核酸配列、例えばタンパク質のコード化を行う配列、がウイルスによって導入されたことを指す。遺伝子の移入に有用であると知られているウイルスはアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルス、レンチウイルスおよびカナリア痘ウイルスなどのワクシニアウイルスである。
【0118】
本発明の他の特徴と利点は下記の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】N−結合グリカンが小胞体、中間区画ならびにゴルジ装置中でトリミングを起こす時のトリミングを示す図である。酵素には下記の通り番号をつけた。(1)α−グルコシダーゼI、(2)α−グルコシダーゼII、(3)ERマンノシダーゼI、(4)ERマンノシダーゼII、(5)ERグルコシルトランスフェラーゼ、(6)エンドマンノシダーゼ、(7)ゴルジマンノシダーゼIA,IBおよびIC、(8)GlcNAcトランスフェラーゼI、(9)ゴルジマンノシダーゼII。▲はグルコース、□はGlcNAc、●はマンノースである。酵素(3)および(7)はキフネンシン阻害され、酵素(9)はスワインソニンで阻害される。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本発明は1つにはグルコセレブロシダーゼ(GCB)の前駆体オリゴ糖鎖の5糖コアから遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去を妨げることによって、マンノース受容体を効率よく標的とする高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を得ることができることを発見したことに基づくものである。前駆体オリゴ糖鎖の5糖コアからのマンノース残基の除去は、1つまたはそれ以上のマンノース酵素、例えば1つまたはそれ以上のクラス1プロセシングマンノシダーゼ、および/またはクラス2のマンノシダーゼ、の活性を阻害または減少させることによって阻止することができる。1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去を妨げるまたは阻害することにより、前駆体オリゴ糖鎖からの4個以上のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖を有するhmGCBが得られる。
【0121】
ゴーシェ病はGCBの欠損により引き起こされる。GCBはスフィンゴ糖脂質グルコセレブロシドの分解に必要である。GCBの欠損により、主として食作用細胞、例えばマクロファージ中にグルコセレブロシドが蓄積し、ひいては肝臓、脾臓および骨髄に蓄積する。
【0122】
マクロファージはマンノース受容体を有する。これらの受容体はこれらの細胞による受容体依存性エンドサイトーシスにおいて役割を果たす。hmGCBはマクロファージ上のマンノース受容体を効率よく標的とし、GCBのこれらの細胞中への取り込み(hmGCBの形での)を向上させる。GCB(hmGCBの形での)をグルコセレブロシドが蓄積している細胞へと向かわせることにより、hmGCBはマクロファージ中のグルコセレブロシドを加水分解するために使用され、それによってこの糖脂質のその後のゴーシェ病の患者の肝臓、脾臓および骨髄中での蓄積が減少する。
【0123】
グルコセレブロシダーゼ
このグルコセレブロシダーゼコード化遺伝子に関してはさまざまな種からの核酸配列情報が入手可能である(Horowitz et al. (1989) Genomics 4(1):87−96;Beutler et al. (1992) Genomics 12(4):795−800)。
【0124】
成熟したヒトGCBには5つの潜在性N−結合グリコシル化部位がAsn−19、Asn−59、Asn−146、Asn−270、およびAsn−462に存在する。ヒトの組織から得たGCBの場合、グリコシル化はこの5つの部位のうち4つで生じる(Erickson et al.(1985)J. Biol. Chem. 260:14319−14324)。部位指向突然変異誘発を用いた研究により、Asn−462の部位は決して用いられないことがわかった。(Berg−Fussman et.al(1993) J. Biol. Chem. 268:14861−14866)。ヒト胎盤GCBからリリースされたグリカン鎖の約20%は、7個以下のマンノース残基を含む高マンノース型のものであることが示されたが、大半のグリカン鎖はシアリル化ビアンテナまたはトリアンテナ構造との複合型であった(Takasaki et al.(1984)J.Biol. Chem.259:10112−10117)。
【0125】
GCB N−グリコシル化において最初に起こることは、小胞体の内腔中でオリゴ糖−PP−ドリコールから発生期のペプチドへのGlcManGlcNAcの同時翻訳的移入である。ドナーオリゴ糖上に3つのグルコース残基が存在することにより、オリゴ糖トランスフェラーゼによるアクセプターアスパラギンへの効率的な移入が行われる。N−グリコシル化に続き、ER グルコシダーゼIおよびIIによる折り畳みプロセス中にグルコース残基は速やかにGCBから除去される。2つの異なるERマンノシダーゼはそれぞれManGlcNAcから1個のマンノース残基を加水分解し、2つの異なるManGlcNAc異性体(図1参照)を形成する。アクセス可能なグリカンは、ゴルジ中でさらに処理され、ゴルジマンノシダーゼIにより最大4個のα1,2−結合マンノース残基が除去されて、ManGlcNAcになる。基質特異性と組織発現がわずかに異なるがManGlcNAcグリカンから4個のマンノース残基をトリミングし、ManGlcNAcとすることのできる、関連するゴルジマンノシダーゼIイソ型(IA,IBおよびIC)をコード化する、少なくとも3個の異なるヒト遺伝子がある(Tremblay et al.(July 27、2000)J.Biol.Chem.[印刷前に電子的に発表された]。これらは染色体6q22,1p13,および1p35−36上に位置し、そのcDNA配列はGenBankからX74837、AF027156、およびAF261655としてそれぞれ入手することができる。
【0126】
グリカンが複合グリカンとなる生合成経路の最終ステージではGlcNAcトランスフェラーゼの作用により、ManGlcNAcからGlcNAcManGlcNAcへの最初の変換が必要であり、その後ゴルジマンノシダーゼIIがさらに2つのマンノース残基の除去を触媒し、GlcNAcManGlcNAcを生じる。これは複合型の鎖を形成するためのトランスゴルジおよびトランスゴルジネットワーク中に位置するグリコシルトランスフェラーゼによるグリカン伸長の基質である。
【0127】
初期のN−グリコシル化ステップ中でGCBへと移入された高マンノース鎖がゴルジ中で複合型の鎖に処理されなければ、高マンノース鎖を有するGCB(hmGCB)が網内皮細胞上のマンノース受容体を効率的に標的とするであろう。
【0128】
細胞
トランスフェクションまたは感染すべき初代および2次細胞はさまざまな組織から得ることができ、培養物中で維持し増殖することのできる細胞型を含んでいる。例えばトランスフェクションまたは感染すべき初代および2次細胞には線維芽細胞、角化細胞、上皮細胞(例えばほ乳類の上皮細胞、腸上皮細胞)、内皮細胞、グリア細胞、神経細胞、血液の固形成分を含む細胞(例えばリンパ球、骨髄細胞)、筋肉細胞およびこれら体細胞の前駆体、および形質転換または不死化細胞系である。初代細胞はトランスフェクションまたは感染した初代または2次細胞が投与された(例えば自己細胞)個体から得ることが好ましい。しかし、初代細胞は同一種の(すなわち同種細胞)のドナー(受容体を除く)から得ることもでき、また別の種(すなわち異種細胞)(例えばマウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、トリ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、サル、ヒヒ)のドナーから得てもよい。
【0129】
脊椎動物、とりわけほ乳類を起源とする、初代あるいは2次細胞は、外来性DNA配列、例えば治療タンパク質をコード化する外来性DNA配列、でトランスフェクションまたは感染させ、コード化された治療タンパク質を長期にわたり、生体内外で安定的に再現性よく生産させることができる。さらにこのトランスフェクションした、または感染した初代および2次細胞は生理的関連レベルで生体内でコード化生成物を発現することができ、移植後細胞を回収し、再培養により増殖させその移植前の性質を呈示させることができる。細胞は修飾により細胞表面組織適合性複合体や外来の炭水化物部分を減少させ、免疫抗原性を減少させ、例えば万能ドナー細胞とすることができる。
【0130】
別法として、脊椎動物、とりわけほ乳類起源の初代あるいは2次細胞は、調節配列を含む外来性DNA配列によりトランスフェクションまたは感染させることができる。このような調節配列の例としては、プロモーター、エンハンサー、UAS、骨格結合領域または転写因子結合部位の1つまたはそれ以上が含まれる。標的事象により、標的となった内在性遺伝子がその管理下に置かれ(例えばプロモーターまたはエンハンサーのどちらか一方、あるいはその両方をこの内在性遺伝子または調節領域の上流に挿入することにより)DNA配列の調節配列の挿入が行われる。また標的事象が同時に遺伝子の組織と特異的調節配列の削除などにより、内在性調節配列を削除することもオプションとして可能である。この標的事象により既存の調節配列の置換が行える、例えば組織特異的エンハンサーは内在性要素よりもより広範囲なまたは異なる細胞型に特異性を有する、あるいは相当する非トランスフェクションまたは非感染細胞とは異なる調節または誘導のパターンを示すエンハンサーに置き換えることができる。このように、内在性調節配列が削除され、新規の配列が加えられる。別法として、例えば内在性調節要素内で外来性配列を標的とすることになどにより、内在性調節配列を除去あるいは置換せずに、標的事象によって破壊、または無能にすることもできる。同種組み換えによる調節配列の導入により、通常は発現しない治療的タンパクを発現する初代または2次細胞が得られる。さらに、調節配列の標的導入は治療的タンパク質を製造あるいは含むが通常よりその量が少なく(生理的に正常な下限よりも少量)あるいは欠損形であるような細胞に対して用いることができ、また治療的タンパク質を生理的に正常なレベルで作り出すが、その含量あるいは生成を増加、強化する必要のある細胞に対しても使用することができる。内在性コード化配列の活性化法は米国特許第5,641,670号、第5,733,761号および第5,968,502号に記載されており、その内容はここに参照として援用している。
【0131】
トランスフェクションまたは感染させた初代あるいは2次細胞はまた選択可能な表現型を付与し、その同定と分離を容易にする、選択可能なマーカーをコード化するDNA配列を含むこともできる。DNA配列を安定に発現するトランスフェクションされた初代または2次細胞の製造方法、このようなトランスフェクション細胞の異種細胞株やクローン細胞株、そしてクローンおよび異種細胞株の製造方法は知られており、例えば米国特許第5,641,670号、米国特許第5,733,761号および米国特許第5,968,502号に記載されており、その内容はここに参照として援用している。
【0132】
トランスフェクションした初代または2次細胞はエレクトロポレーションにより製造することができる。エレクトロポレーションは適当な電圧と静電容量(および相当する時間定数)で行われ、DNA構成体が初代あるいは2次細胞へと導入される。エレクトロポレーションは幅広い範囲の電圧(例えば50から2000ボルト)と、相当する静電容量で実行することができる。約0.1から500μgの全DNAが一般に用いられる。
【0133】
別法として、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、修正リン酸カルシウム沈殿法およびポリブレン沈殿法、リポソーム融合法、および受容体依存性遺伝子デリバリ法もまた細胞のトランスフェクションに用いることができる。
【0134】
グルコセレブロシダーゼのプロセシング
マンノース残基の除去を防止するためのプロセシングがなされていない細胞中のオリゴ糖アセンブリは通常下記に解説するように進行する。
【0135】
GCBのオリゴ糖鎖はN−グリコシド結合によりポリペプチド主鎖へと結合する。N−結合グリカンはアミド結合を持ち、これにより、オリゴ糖の還元性末端N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基のアノマー炭素(C−1)とポリペプチドのアスパラギン(Asn)残基の窒素とが結合する。
【0136】
N−結合オリゴ糖アセンブリの開始はGCBタンパク質のAsn残基上では直接始まらずむしろ脂肪に結合した14糖前駆体オリゴ糖のプリアセンブリが関与し、これがmRNAからの翻訳中に、または翻訳後直ちにER中のタンパク質に移入される。「前駆体オリゴ糖」とはここでは糖鎖の生合成において、初期のステップに関与するオリゴ糖鎖を指す。「前駆体オリゴ糖」は、少なくとも糖ManGlcNAcを含むオリゴ糖構造であってよく、例えば前駆体オリゴ糖は図1に示す構造、GlcManGlcNAcを有する。この前駆体オリゴ糖は、ピロリン酸塩架橋を通じてポリイソプレノイド担体脂質、ドリコールに結合している間に合成される。このアセンブリは少なくとも6つの明らかな膜結合グリコシルトランスフェラーゼを含む。これらの酵素のいくつかはヌクレオチド糖から単糖を移入し、その他のものはドリコール結合単糖を糖供与体として利用する。脂質結合前駆体のアセンブリが完了した後、もう1つの膜結合酵素がそれを立体化学的にアクセス可能なAsn残基へと転移させる。これは配列−Asn−X−Ser−/Thr−の一部として生じる。
【0137】
新たに合成されたGCBのグリコシル化Asn残基は一時的に、ここで「未処理糖鎖」と呼ぶ、GlcManGlcNAcを有する。
【0138】
N−結合オリゴ糖のプロセシングは多数の膜結合酵素が順番に作用することによって完成するが、これは前駆体オリゴ糖GlcManGlcNAcのタンパク質への転移後、直ちに開始される。「プロセシング」、「トリミング」および「修飾」という用語はここでは同義に用いている。
【0139】
N−結合オリゴ糖のプロセシングは3つの段階に分けることができる;3つのグルコース残基の除去、さまざまな数のマンノース残基の除去、そして様々な糖残基の得られた処理コアへの添加である。
【0140】
最初の処理段階でのグルコース残基の除去は3つのグルコース残基のすべてを除去してN−結合ManGlcNAcを生成するものである。この構造はここではManα1−2Manα1−2Manα1−3[Manα1−2Manα1−3(Manα1−2Manα1−6)Manα1−6]Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc(図1,構造9’を参照のこと)と示す。処理は通常マンノース残基の除去を行う第2ステージへと続いて行われる。
【0141】
このManGlcAc部分の4つのマンノース残基は、α1,2結合で結合している。これらの最大4つのα1,2結合マンノース残基はマンノシダーゼIA,IBおよびICにより除去されN−結合Man5−8GlcNAcを生成する。
【0142】
タンパク質結合ManGlcAcがついでUDP−GlcNAcからβ1,2−結合GlcNAc残基をコアα1、3−結合マンノース残基へと転移し、GlcNAcMAnClcNAcを形成するGlcNAcトランスフェラーゼのための基質として作用する。マンノシダーゼIIにより2個のマンノース残基が除去され、「5糖コア」である、ManGlcNAcをその中に含むタンパク質結合オリゴ糖が生成されて、この処理工程のトリミング段階が完成する。GlcNAcManGlcNAcという構造はついでβ1,2−結合GlcNAc残基をα1,6−結合マンノース残基へと転移することができるGlcNAcトランスフェラーゼIIの基質となる。
【0143】
トリミング段階の後、単糖が一連の膜結合ゴルジグリコシルトランスフェラーゼ(これらはそれぞれアクセプターオリゴ糖、ドナー糖および糖の間に形成される結合の種類に対して極めて特異的である)によって順番に加えられ、オリゴ糖鎖が成長する。これらには明確なGlcNAcトランスフェラーゼ(β1,2;β1,4またはβ1,6結合を形成する)、ガラクトシルトランスフェラーゼ(β1,4;β1,3;およびα1,3結合を形成する)、シアリルトランスフェラーゼ(1つはα2,3を、もう1つはα2,6結合を形成する)、フコシルトランスフェラーゼ(α1,2、α1,3、α1,4またはα1,6結合を形成する)が含まれているほか、さまざまな通常にはない結合を行うその他の酵素も多数含まれる。これらグリコシルトランスフェラーゼの協働作用により「複合」オリゴ糖とまとめて名付けられる多岐にわたる構造が得られる。これらには不変のコア5糖、ManGlcNAc、に結合している2個、3個または4個の外向きの枝(「アンテナ」)が含まれていてもよい。これらの構造体はその外向きの枝の数に応じて、ビアンテナ(枝2本)、トリアンテナ(枝3本)またはテトラアンテナ(枝4本)と呼ぶ。これらの複合グリカンの大きさは様々である。
【0144】
高マンノースグルコセレブレシダーゼのプロセシング
hmGCBはGCBの細胞糖質の修飾(すなわちプロセシング)を低下または阻止することより製造される。GCBの前駆体オリゴ糖鎖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する条件のもとでGCBの製造を行うことにより糖質の修飾が阻止できる。例えば、前駆体オリゴ糖からのマンノース残基の除去中の1つまたはそれ以上の「トリミング」段階を阻止することができる。
【0145】
細胞マンノシダーゼは大きく2つのクラスに分けられる。クラス1プロセシング酵素にはERマンノシダーゼI、ゴルジマンノシダーゼIA,IBおよびICが含まれ、これはα1,2−結合マンノース残基を加水分解し、活性にCa2+イオンを必要とする。クラス2プロセシング酵素にはERマンノシダーゼII、ゴルジマンノシダーゼII、細胞質ゾルαマンノシダーゼ、およびリゾソーマルα‐マンノシダーゼが含まれ、これはより広範な基質に対し特異性を持ち、活性にCa2+を必要としない。
【0146】
前駆体オリゴ糖からのマンノース残基のトリミングには少なくとも下記のマンノシダーゼ酵素が関与する。すなわちゴルジマンノシダーゼIA,IBおよびICとゴルジマンノシダーゼIIである。細胞中でのN結合オリゴ糖アセンブリの間に1つまたはそれ以上のこれらのマンノシダーゼを阻害することにより、少なくとも5糖コアに加えて1つまたはそれ以上のマンノース残基を有する糖鎖を少なくとも1本有するGCBを生成することができる。例えばERマンノシダーゼIとゴルジマンノシダーゼIの両方を阻害すると、少なくとも1本の糖鎖(好ましくはすべての鎖)が、前駆体オリゴ糖からの少なくとも8つのマンノース残基を有するようなhmGCBを生成することができる。ゴルジマンノシダーゼIIの阻害により、少なくとも1本の糖鎖(好ましくはすべての鎖)が、前駆体オリゴ糖からの少なくとも5つのマンノース残基を有するようなhmGCBを生成することができる。
【0147】
マンノシダーゼによるトリミングは、例えばこの細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖からの1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去を防止する物質と接触させることによって、また少なくとも1つのマンノシダーゼを生成しない、あるいは欠乏レベルで生成するような細胞中で、または突然変異および/または不活性マンノシダーゼを生産する細胞中でGCBを生成することによって阻害することができる。例えばこの細胞は少なくとも1つのマンノシダーゼに対するノックアウトであってもよく、少なくとも1つのアンチセンスマンノシダーゼ分子を発現するものであっても、または少なくとも1つのマンノシダーゼに対して優性陰性であってもよい。
【0148】
マンノース残基の除去を防止する物質
GCBの前駆体オリゴ糖から1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去を防止する物質を、hmGCB調製物を製造するのに用いることができる。例えばGCBを発現する細胞を、GCBの前駆体オリゴ糖の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基および/またはGCBの前駆体オリゴ糖のα1,3マンノース残基および/またはGCBの前駆体オリゴ糖のα1,6マンノース残基の除去を防止する物質と接触させることができる。好ましくはこの物質はマンノシダーゼ阻害剤であり、例えばクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤またはクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤である。
【0149】
細胞マンノシダーゼはタンパク質配列の相同性から大きく2つのクラスに分けることができる(Moremen et al.(1994)Glycobiology 4:113−125)。これら2つのクラスは機構的に異なっている。クラス1酵素はERマンノシダーゼIおよびゴルジマンノシダーゼIイソ型を含み、約63−73kDAの質量を持ち、α1,2−結合マンノース残基を加水分解し、活性にCa2+を必要とする。クラス1プロセシングマンノシダーゼは、例えば基質模擬体、例えばマンノースのピラノース類似体、で処理することによりブロックすることができる。例えばクラス1プロセシングマンノシダーゼは1つまたはそれ以上の下記の酵素阻害剤により処理することでブロックすることができる。すなわちキフネンシン、デオキシマンノジリマイシンまたはそれらを組み合わせたものである。クラス2の酵素はERマンノシダーゼI、ゴルジマンノシダーゼII、cystolicα−マンノシダーゼ、およびリソソームα−マンノシダーゼ、を含み、約107−136kDAと、より大きな質量を持ち、活性にCa2+を必要とせずより広範囲の基質に特異性を有する。クラス2のプロセシングマンノシダーゼは例えばマンノシルカチオンのフラノース遷移状態類似体で処理することによってブロックできる(Daniels et al.(1994) GlycoBiol.4:551−566)。例えばクラス2のプロセシングマンノシダーゼは下記の1つまたはそれ以上の阻害剤を用いて処理することによりブロックできる。すなわちスワインソニン、6−デオキシ−DIM、6−デオキシ−6−フルオロ−DIM、マンノスタチンAまたはそれらを組み合わせたものである。
【0150】
キフネンシンは小胞体マンノシダーゼIおよび/またはゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの阻害剤として使用でき、デオキシマンノジリマイシンは小胞体マンノシダーゼI、小胞体マンノシダーゼIIおよび/またはゴルジマンノシダーゼIAおよび/またはIBおよび/またはICの阻害剤として使用でき、スワインソニンはゴルジマンノシダーゼIIの阻害剤として使用でき、マンノスタチンAはゴルジマンノシダーゼIIの阻害剤として使用することができる。
【0151】
マンノシダーゼ阻害剤を使用することにより、オリゴ糖アセンブリ中のマンノース残基トリミングのある段階移行、GCBの糖鎖のプロセシングが阻害できる。例えば細胞をキフネンシンと接触させることによって前駆体オリゴ糖のどれか1個、2個、3個、または4個の残基のトリミングを阻害することができる。
【0152】
α−マンノシダーゼの処理は下記の酵素阻害剤うちの1つまたはそれ以上を用いて細胞を処理することによってブロックできる。
【0153】
・キフネンシン、小胞体IおよびゴルジマンノシダーゼI酵素の阻害剤(Weng and Spiro(1993)J.Biol.Chem 268:25656−25663;Elbein et al.(1990)J.Biol.Chem265:15599−15605)
・スワインソニン、ゴルジマンノシダーゼII酵素の阻害剤(Tulsiani et al. (1982) J.Biol.Chem 257:7936−7939)
・デオキシマンノジリマイシン、小胞体マンノシダーゼIおよびII、およびゴルジマンノシダーゼIの阻害剤(Weng and Spiro (1993) J.Biol. Chem 268:25656−25663;Tremblay and Herscovics(2000) J. Biol.Chem.Jul27;[出版前に電子的に公開]
・DIM(1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール)、ゴルジマンノシダーゼIIの阻害剤(Palamarzyk et al.(1985)Arch. Biochem. Biophys. 243:35−45)
・6−デオキシ−DIMおよび6−デオキシ−6−フルオロ−DIM、ゴルジマンノシダーゼIIの阻害剤(Winchester et al.(1993)Biochem J. 290:743−749)
・マンノスタチンA、ゴルジマンノシダーゼIIの阻害剤(Tropea et al. (1990) Biochemistry 29:10062−10069)
さまざまなマンノシダーゼ阻害剤を特定の細胞型への貫通性、ならびにマンノシダーゼ阻害剤の阻害能に応じて選択することができる。例えば、スワインソニンは急速に時間および濃度に依存したやり方で培養線維芽細胞により内部移行される。スワインソニンはまたクラス2マンノシダーゼ、たとえばゴルジマンノシダーゼの潜在的な阻害剤である。このようにスワインソニンはhmGCBを培養線維芽細胞中で生産するのに使用でき、例えば前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4から5個のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖を有するhmGCBを生産するのに使用することができる。さらに、キフネンシンは簡単に培養繊維芽細胞により取り込まれ、クラス1マンノシダーゼ、例えば小胞体マンノシダーゼIおよびゴルジマンノシダーゼIの潜在的阻害剤である。このように、キフネンシンは培養繊維芽細胞中でhmGCBを生産するのに使用でき、例えば、前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個、5個、6個、7個、8個または9個のマンノース残基を有する、少なくとも1本の糖鎖を有するhmGCBを製造するのに使用することができる。
【0154】
好ましくは、マンノシダーゼ阻害剤は0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在する。例えばクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤は約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、クラス1およびクラス2のプロセシングマンノシダーゼ阻害剤はそれぞれ約0.025から20.0μg/ml、0.05から10μg/ml、0.05から5μg/ml、好ましくは約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在し、あるいはクラス1プロセシングおよびクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤の合計濃度は約0.025から40.0μg/ml、0.05から20μg/ml、0.05から10μg/ml、好ましくは約0.1から5.0μg/mlの間である。
【0155】
細胞は例えば、少なくとも1つのマンノシダーゼ阻害剤を含む培地で培養することによってマンノシダーゼ阻害剤と接触させることができる。
【0156】
マンノシダーゼ突然変異細胞
マンノシダーゼノックアウト細胞
マンノシダーゼ遺伝子発現の永久的または調節された不活性化はマンノシダーゼ部位を標的とするトランスフェクションプラスミドDNA構成体または合成オリゴヌクレオチドによって行うことができる。プラスミド構成体またはオリゴヌクレオチドはいくつかの形に設計することができる。これらは1)選択可能なマーカー遺伝子または他の配列をマンノシダーゼ遺伝子のエクソン中に挿入する、2)非コード化配列の調節領域中に外来性配列を挿入する、3)調節および/またはコード化配列の削除または置換、および4)部位特異性変異誘発によりタンパク質コード化配列を変化させる、ことを含む。
【0157】
選択可能なマーカー遺伝子をコード化配列中に挿入する場合、内在性マンノシダーゼエクソンと、例えば選択可能なマーカー遺伝子を含むように処理されたマンノシダーゼエクソンとのフレーム内融合を生じさせることができる。この方法では、成功した標的化に続き、内在性マンノシダーゼ遺伝子が融合mRNA(マンノシダーゼ配列プラス選択できるマーカー配列)を発現する。さらに融合mRNAは機能性マンノシダーゼ翻訳生成物を製造することができないであろう。
【0158】
DNA配列を調節領域に挿入する場合、マンノシダーゼ遺伝子の転写は内在性のプロモーター領域、または5‘非翻訳領域(5’UTR)中の翻訳に必要であるその他の領域を破壊することによって沈黙化することができる。このような領域には例えば翻訳制御領域およびイントロンのスプライスドナーがあげられる。第二に、新しい調節配列はマンノシダーゼ遺伝子の上流に挿入することができ、それによりマンノシダーゼ遺伝子は細胞外因子の制御下に置かれる。このように、反応を抑制し、最適なhmGCB生産に必要なマンノシダーゼ遺伝子発現を失わせることが可能であろう。さらに選択可能なマーカーおよびプロモーターを含む配列は内在性配列の発現を破壊するのに使用することができる。最後に内在性マンノシダーゼ遺伝子のすべてまたは一部をターゲット基質の適当な設計により削除することもまた可能である。
【0159】
ヒトゴルジマンノシダーゼIA,IBまたはIC遺伝子の少なくとも1つの染色体コピーのノックアウトを含む細胞を生成するために、遺伝子の少なくとも5‘部分(調節配列、5’UTR、コード化配列を含む)を含むゲノムDNAを分離する。例えば、GenBank配列、受け入れ番号No.NM005907(ヒト)は、ゴルジマンノシダーゼIAのプローブを製造するのに用いることができ、受け入れ番号No.AAF97058は、複製連鎖反応(PCR)を用いて、ゴルジマンノシダーゼIBまたはICのプローブを生成するのに用いることができる。PCR用のオリゴヌクレオチドはGenBank配列に基づいて指定することができる。得られるプローブは交雑により、単一のコピーゴルジマンノシダーゼIA,IBまたはIC遺伝子にすることができる。このプローブはついで市販されている組み換えファージライブラリをスクリーンするのに用いることができ(例えばヒトゲノムDNAから得られたライブラリ)、マンノシダーゼI構造遺伝子のすべてまたは一部を含むクローンを単離する。ひとたびマンノシダーゼ調節および/またはコード化配列を含む組み換えクローンが分離されると、マンノシダーゼ遺伝子発現を不活性化するように設計された特定のターゲットプラスミドを構成することができる。マンノシダーゼ活性の不活性化は外来性DNAを調節またはコード化配列へと挿入し、翻訳読みとり枠を破壊することから得られる。酵素の不活性化はまたmRNA転写、またはmRNAプロセシングの破壊、または内在性マンノシダーゼ調節またはコード化配列の削除の結果得ることもできる。
【0160】
その他のクラス1およびクラス2プロセシングマンノシダーゼの核酸配列もまた、例えばGenBankで得ることができる。ゴルジマンノシダーゼIA,IBあるいはICについて上記に解説した方法を用いて、その他のクラス1および/またはクラス2プロセシングマンノシダーゼのためのノックアウト細胞を製造することもできる。
【0161】
マンノシダーゼノックアウト細胞は例えば遺伝子治療に用いることができる。ノックアウト細胞を、細胞が生体内でhmGCBを生成するように例えばゴーシェ病の患者に投与することができる。
【0162】
アンチセンスマンノシダーゼ核酸配列
マンノシダーゼをコード化するヌクレオチドコードに対しアンチセンスである核酸分子、例えばクラス1プロセシングまたはクラス2プロセシングマンノシダーゼをマンノシダーゼの発現を阻害する、不活性化剤として用いることができる。例えばゴルジマンノシダーゼIA、ゴルジマンノシダーゼIB、ゴルジマンノシダーゼICおよび/またはゴルジマンノシダーゼII発現はアンチセンス核酸分子によって阻害される。「アンチセンス」核酸にはマンノシダーゼをコード化する「センス」核酸に対し相補的である、例えば二本鎖cDNA分子のコード化鎖に相補的な、またはmRNA配列に相補的な核酸配列が含まれる。したがってアンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合を形成することができる。アンチセンス核酸は全マンノシダーゼコード化鎖に対して相補的であっても、またはその一部のみに相補的であってもよい。例えばマンノシダーゼをコード化するヌクレオチド配列のコード化鎖の「コード化領域」に対してアンチセンスである核酸分子を使用することができる。
【0163】
さまざまなマンノシダーゼをコード化するコード化鎖配列は、例えばBause(1993)Eur.J.Biochem.217(2):535−540;Gonzales et al.(1999)J.Biol.Chem.274(30):21375−21386;Misago et al.(1995)Proc.Natl Acad.Sci.USA92(25):11766−11770;Tremblay et al.(1998)Glycobiology 8(6):585−595、Tremblay et al.(2000)J.Biol.Chem.Jul l27:[印刷に先立ち電子的に発表]、に開示されており、ワトソンとクリックの塩基対の規則に従ってアンチセンス核酸配列を設計することができる。アンチセンス核酸分子はマンノシダーゼmRNAの全コード化領域に相補的である配列を含むことができるが、より好ましくはマンノシダーゼmRNAのコード化または非コード化領域の部分のみに相補的であるオリゴヌクレオチドである。例えばこのアンチセンスオリゴヌクレオチドはマンノシダーゼmRNAの翻訳開始部位を取り巻く領域に対し相補的な配列を含むことができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5,10,15,20,25,30、35、40、45,50またはそれ以上のヌクレオチドの長さでよい。アンチセンス核酸は当業者に知られた手順を用いて化学合成および酵素連結反応を用いて構成することができる。例えばアンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)は天然に産出するヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を高めるべく設計され、様々に修飾された、あるいはアンチセンスとセンス核酸間の二重鎖の物理的安定性を高めるべく設計され、様々に修飾されたヌクレオチド、例えばホスホロチオエート誘導体とアクリジン置換ヌクレオチド、を用いて化学的に合成することができる。アンチセンス核酸を生成するのに使用することのできる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5‘−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、yブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンがあげられる。別法として、アンチセンス核酸はアンチセンス配位(すなわち挿入核酸から転写されたRNAがここで問題となっている標的核酸に対しアンチセンス配位を有する)にて核酸がサブクローンされている発現ベクトルを用いて生物学的に製造することもできる。
【0164】
hmGCBの精製
「精製された」hmGCBとはここではGCBを発現する細胞から生成した際実質的に細胞物質を除去したhmGCBものを指す。「実質的に細胞物質を除去した」という表現には、hmGCBを生成する細胞の細胞成分からこのタンパク質が分離されているhmGCBの調製物が含まれる。1つの実施態様において、「実質的に細胞物質を除去した」とは約30%(乾燥重量)未満の非GCBタンパク質(これを「タンパク質不純物」または「汚染タンパク質」とよぶ)、より好ましくは約20%未満の非GCBタンパク質、さらにより好ましくは約10%未満の非GCBタンパク質、最も好ましくは、約5%未満の非GCBタンパク質を含むhmGCB調製物を指す。hmGCBが培地から得られる(すなわち採取される)場合、これは培地の成分を実質的に含まないことが好ましく、すなわち培地の成分が、タンパク質調製物の乾燥重量の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満であることが好ましい。
【0165】
様々な方法を用いてhmGCBを培地から採取することができる。「採取されたhmGCB」とはここでは培地から得られるhmGCB、または細胞から得られるhmGCBを指す。例えば、精製手順に先立ち採取されたhmGCBを準備するためには下記のいずれかの方法を使用することができる。これらの方法としては、1)新鮮な採取物を濾過する;2)新鮮な採取物を濾過し、例えば約−20℃から−80℃で濾過した生成物を処理する準備ができるまで凍結し(準備のできた時にこれを融解し、場合によっては濾過する);3)新鮮な採取物を濾過し、濾過した生成物を濃縮(例えば8倍から10倍)し、それから場合によっては再び濾過する;4)新鮮な採取物を濾過し、濾過した生成物を濃縮し(例えば約8倍から10倍)、場合によっては再び濾過し、ついで約−20℃から−80℃で濾過した生成物を処理する準備ができるまで凍結し(準備のできた時にこれを融解し、場合によっては濾過する)がある。これらの方法のバリエーションも用いることができる。例えば採取した生成物または採取した生成物を濃縮したものを凍結する際、異なる採取物を融解後プールし濾過してもよい。さらに採取したあるいは濃縮した採取物について、採取物を低温、例えば約2℃から8℃で短期間、例えば約1日から3日、好ましくは1日、精製に先立ちプールしておくこともできる。低温に保った採取物は、精製に先立ちプールしてもよい。
【0166】
採取物の濃縮を行う際は、分子量5000から50,000のカットオフ、好ましくは分子量10、000から30,000のカットオフ、で限外濾過を行うことができる。フィルターによる清澄化には通常1.2μm/0.5μmプレフィルターを用い、ついで0.2μmの最終フィルターを用いる。
【0167】
hmGCBは下記の精製技法によって精製される。例えば疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)を用いてhmGCB調製物を精製することができる。別法として、疎水性干渉クロマトグラフィー(HIC)を用いてhmGCBを精製することもできる。HCICおよびHICについては共に下記に記載する。
【0168】
HCICまたはHICはそれだけで用いてもよくまた1つまたはそれ以上のイオン交換ステップと組み合わせて使用してもよい。HCICまたはHICステップ(HCICまたはHICステップの前であっても後であって)と組み合わせて用いることのできるイオン交換ステップには陰イオン交換および/または陽イオン交換クロマトグラフィーがある。タンパク質の精製に使用する一般に知られている市販の陰イオン交換担体は第四アンモニウム官能基を有する。本プロセスにおいて用いるのに好ましい基材はアガロースまたはセルロースベースの基材、例えば微結晶性セルロースまたは架橋アガロースである。また特に好ましいものとしてジエチルアミノエチル、トリエチルアミノメチルまたはトリメチルアミノメチル官能基を有する基材があげられる。時に好ましい陰イオン交換基材は、トリメチルアミノメチル架橋アガロースであり、これは例えばQ−Sepharose Fast Flow(商標、Pharmacia製)として市販されている。タンパク質の精製に使用することができる、一般に知られている市販の陽イオン交換基材は、カルボン酸やスルホン酸などの酸性官能基を有する。陽イオン機能を有する基材にはさまざまな形のセルロースおよびポリスチレンベースの基材が含まれる。例えば当該分野で知られている弱陽イオン交換体にはこれに限るわけではないが、Carboxymethyl−Sepharose(登録商標)およびCarboxymethyl−Cellulose(登録商標)がある。強陽イオン交換体として知られているのは、これに限るわけではないが、スルホン化ポリスチレン(AG50W(登録商標)Bio−Rex70(登録商標))、スルホン化セルロース(Sp−Sephadex)(登録商標)およびスルホン化Sepharose(S−Sepharose)(登録商標)がある。特に好ましい陽イオン交換基材はS−Sepharose Fast Flow(商標,Pharmacia製)である。
【0169】
これらの基材を用いるクロマトグラフィーステップは、カラムクロマトグラフィーか、別法としてはバッチ吸着技法で行うことがもっとも好ましく、25℃から40℃の温度で随意に行うことができる。好ましくは、塩を洗浄用バッファーまたは溶出バッファーに加えてバッファーのイオン力を増加する。このためには従来使用されている塩のいずれを用いてもよく、当業者は容易に決定することができるが、最も頻繁に、また都合良く用いられている塩としてはNaClがあげられる。
【0170】
従来のゲル濾過ステップをHCICまたはHICクロマトグラフィープロセスステップと組み合わせて使用することができる。これらの基材の代表的な例としてはアクリルアミドで架橋したポリデキストランがあげられる。たとえばアリルデキストランとN,N‘−メチレンビスアクリルアミドとを共有結合で架橋することによって調製した複合親水性ゲル、や架橋セルロースまたはアガロースゲルがあげられる。市販されている架橋デキストラン−アクリルアミドとしてはSephacryl(登録商標)がPharmaciaから発売されている。市販されている架橋デキストラン−アガロース樹脂としてはSuperdex(登録商標)がPharmaciaから市販されている。好ましいSuperdex(登録商標)ゲルはSuperdex 200(登録商標)である。架橋セルロースゲルの例としては、市販されている架橋多孔性セルロースゲル、例えばGLC300(登録商標)またはGLC1000(登録商標)がAmicon Inc.から市販されている。TosoHaasから発売されているTSK−Gel SW(登録商標)などのシリカベースの樹脂もまた使用できる。TSK−Gel PW(登録商標)、TSK Alpha Series(登録商標)、Toyopearl HW packings(エチレングリコールとメチルアクリレートポリマーの共重合体)などのポリマーベースの樹脂もまたTosoHaasから発売されている。
【0171】
好ましくは、HCICまたはHICは1つまたはそれ以上のこれらのイオン交換ステップと組み合わせることができる。HCICまたはHICとさまざまなイオン交換またはゲル濾過ステップの組み合わせが用いられる場合、これらはどのような順序で行うこともできる。例えば下記に記載するように、MEP Hypercel(登録商標)クロマトグラフィーを用いたHCIC、MacroPrep Methyl(登録商標)クロマトグラフィーを用いたHIC、それからQ Sepharose Fast Flow(登録商標)、SP Sepharose Fast Flow (登録商標)および最後にSuperdex 200(登録商標)を含む4ステップの手順を行うことができる。これらの手順のうちのいくつかは下記に詳細に示す。
【0172】
MEPハイパーセルクロマトグラフィー
MEP(メルカプトエチルピリジン)Hypercel(登録商標)(BioSepra、Life Technologies社)をHCICに使用することができる。これはNEPが結合した多孔性(80−100ミクロン)の再生セルロースビーズからなる樹脂である。この官能基(MEP)は疎水性の尾とイオン化可能な頭基を持ち、中性のpHでは帯電しておらず、生理的イオン強度で疎水的相互作用に基づきある種のタンパク質リガンドと結合することができる。溶出はpHを4ないし5に減少させることによって行うが、この時MEPはプラスに帯電しており、タンパク質は電気的反発力によりカラムから溶出する。例えば、調製した採取物または採取物の濃縮物を直接、180mMの塩化ナトリウムと2mMのDTTを含む、pH6.8の25mMリン酸ナトリウムで平衡させたMEPカラムへ注ぐ。オプションとして、その後280nm(A280)での吸光度が安定化するまでカラムを25mMカプリル酸ナトリウムを含む平衡バッファーで洗浄することもできる。hmGCBはカラムから50mMの酢酸ナトリウム、2mMのDTT、pH4.7,で溶出することができ、280nmでモニターされるピークを採取する。
【0173】
MacroPrep Methylクロマトグラフィー
MEP Hypercel(登録商標)の別法としてMacroPrep Methyl(登録商標)があり、これは疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂である。この樹脂はメチル官能基が結合した多孔性の共重合グリコールメタクリレートおよびジエチレングリコールジメタクリレートビーズ組成物からなる。例えばMacroPrep Methyl(登録商標)(BioRad)クロマトグラフィーは下記のように行うことができる。採取物、または採取して濃縮したもののpHを5.6に調節し、最終濃度が0.70Mとなるように硫酸アンモニウムを加える。用意した採取物を0.70Mの硫酸アンモニウム、10mMのMES、pH5.6で平衡させたMacroPrep Methyl(登録商標)カラムに入れる。装填後、カラムをA280がベースラインにもどるまで平衡させたバッファーで洗浄する。hmGCBは10mMのMES、pH5.6で溶出することができる。溶出したhmGCBは限外濾過に付しおよび/またはQ Spharoseクロマトグラフィー、SP Sepharoseクロマトグラフィーおよび/またはSuperdex 200クロマトグラフィーなどのイオン交換ステップに付す準備として、ダイアフィルトレーションに付す。
【0174】
Q Sepharoseクロマトグラフィー
Q Sepharose Fast Flow(登録商標)(Amersham Pharmacia)は比較的強い陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂である。官能性置換基は第四アミン基であり、これは2から12の使用pH範囲中ではプラスの電荷を有する。この使用pHで正味負の電荷を有するタンパク質は比較的低イオン強度でこの樹脂に結合しやすく、より高いイオン強度またはより低いpHにおいて溶出できる。hmGCBはおよそpH6において低イオン強度のQ Sepharoseには結合しないが、不純物は結合するのでサンプルを精製することができる。例えば下記のプロトコルを用いてサンプル中のhmGCBをQ Sepharose Fast Flow(登録商標)クロマトグラフィーにより精製することができる。適当な条件の下でhmGCBをこのカラムに流すと、生成物は流出/洗浄画分中に存在する。リン酸ナトリウム(250mM、pH6)を上記に記載したように調製したMEP溶出プールに最終濃度が25mMとなるように加え、このプールのpHを、水酸化ナトリウム(および必要であればHClにより)pH6に調節する。水で希釈する、または25mMのリン酸ナトリウム、2mM DTT、pH約6を用いた限外濾過またはダイアフィルトレーションによって導電性を2.5±0.1mS/cmに調節する。この材料はついで濾過し、25mMのリン酸ナトリウム、2mMのDTT、pH6.0中で平衡させたQ Sepharose Fast Flow(登録商標)のカラムに付す。装填後、カラムを平衡バッファーでA280がベースラインに達するまで洗浄する。流出/洗浄画分はついでもう1つのカラム、例えばSP Sepharose Fast Flow(登録商標)カラムで処理し、その後すぐに、例えば24時間以内、に凍結し、その後の処理を行うまで約−20℃から−80℃の間の温度で保存する。
【0175】
例えば、Macro−Prep High Q Support(登録商標)(BioRad)などの他の強陰イオン交換樹脂もまたQ Sepharoseの代わりに使用できる。DEAE Sepharose Fast Flow (登録商標)(Pharmacia)またはMacro−Prep DEAE(登録商標)(BioRad)などの弱陰イオン交換樹脂もまた使用することができる。カラムはバッファー、例えば25mMリン酸ナトリウム、pH6、で平衡させる。サンプルのpHをpH6に調節し、希釈またはダイアフィルトレーションにより伝導度を比較的低イオン強度へと調節する。これにより不純物がカラムに結合しhmGCBは流出する。サンプルを加え、カラムを平衡バッファーで洗浄する。不純物は依然としてカラムに結合しており、塩、例えば塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの添加、またはより低いpHのバッファーの添加、または塩を加えpHを下げる両者を行うことによって溶出できる。
【0176】
hmGCBは装填中に装填液中の塩濃度を減少させることによって、またはカラムをより高いpHで操作することによって、または塩を減少させてpHを引き上げることの組み合わせによって、陰イオン交換カラムに結合することができる。
【0177】
SP Sepharoseクロマトグラフィー
SP Sepharose Fast Flow (登録商標)(Amersham Pharmacia)は比較的強い陽イオン交換クロマトグラフィーである。官能性置換基は電荷を有するスルホン酸基であり、これは2から12の使用pH範囲で負に帯電している。使用pHにおいて正味の正の電荷を有するタンパク質は比較的低いイオン強度においてこの樹脂に結合しやすく、より高いイオン強度またはより高いpHにおいて溶出することができる。hmGCBは約pH6で中くらいのイオン強度(例えば6.5mS/cm)においてSP Sepharoseと結合し、より高いイオン強度(例えば10.7mS/cm)において溶出することができる。不純物タンパク質はhmGCB溶出条件の下でSP Sepharoseに結合したままであるので、サンプル中のhmGCBを精製することができる。例えば下記のプロトコルを用いてhmGCBをSP Sepharose Fast Flow(登録商標)クロマトグラフィーにより精製することができる。塩化ナトリウム(2.0M原液)をSepharose(登録商標)に加え6.3mS/の伝導度となるまで流出/洗浄を行う。pHをチェックし必要であればpH6.0に再度調節する。その後伝導度が6.5mS/cmとなるまで塩化ナトリウム原液の添加を続ける。この物質は濾過し、25mMリン酸ナトリウム、44mM塩化ナトリウム、pH6.0で平衡させたSP Sepharose Fast Flow(登録商標)のカラムに加える。装填後、ベースラインに達するまでカラムを平衡バッファーで洗浄し、25mMリン酸ナトリウム、84mM塩化ナトリウム、pH6.0で溶出する。hmGCBは溶出画分に存在する。
【0178】
もう1つの陽イオン交換樹脂、例えばSource 30S(登録商標)(Pharmacia)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)(Pharmacia)、Macro−Prep CM Support(登録商標)(BioRad)またはMacro−Prep High S Suppport(登録商標)(BioRad)、もまたSP Sepharoseの代わりに用いることができる。hmGCBは約pH6で低から中イオン強度、例えば4から7mS/cmでカラムに結合することができる。バッファー例えば10mMクエン酸ナトリウム、pH6.0、10mM MES、pH6.0、25mMリン酸ナトリウム、pH6.0またはその他pH6.0で適切なバッファー能力を有するバッファーを、カラムを平衡するために使用できる。サンプルのイオン強度は希釈またはダイアフィルトレーションでカラムへの結合ができるレベルに調節する。サンプルをカラムに流し、装填後カラムを洗浄して未結合物質を除去する。塩、たとえば塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを、hmGCBをカラムから溶出するのに使用することができる。別法として、より高いpHのバッファーにより、またはより高い塩濃度とより高いpHを有するバッファーによりhmGCBをカラムから溶出することができる。
【0179】
hmGCBはまた装填中に平衡バッファー中の塩の濃度およびサンプル装填液中の塩の濃度を増加させることによって、カラムをより高いpHで操作することによって、あるいは塩の濃度とpHとを高めることによって陽イオン交換カラムから流出させることができる。
【0180】
Superdex 200クロマトグラフィー
Superdex 200 prep grade(登録商標)(Amersham Pharmacia)はhmGCBのサイズ排除クロマトグラフィーに用いることができる。ここで分子はサイズ、分子量、ストークス半径または流体力学的容積により分離される。Superdex 200はアガロースに共有結合的に架橋したデキストランからなり、球形タンパク質の場合、10,000から60,000の分子量分画範囲を有する。例えば、下記のプロトコルを用いてSuperdex 200(登録商標)クロマトグラフィーによりhmGCBを精製することができる。SP溶出液プールを分子量10,000カットオフ膜により限外濾過により濃縮する。濃縮したプールを濾過し、ついで50mMクエン酸ナトリウム、pH6.0により平衡させたSuperdex 200 prep grade(登録商標)カラムに付す。初期の画分のA280のカラム溶出液を集め、例えば8から16%のSDSポリアクリルアミドゲルを流して画分のプーリングを決定する。銀に着色したゲルによる目視によってプーリングを決定してもよい。
【0181】
Sephacryl S−200 HR(登録商標)、Bio−Gel A 1.5m(登録商標)またはTosoHaas TSK Gel樹脂などの他のサイズ排除クロマトグラフィー樹脂を、hmGCBを精製するのに使用することもできる。hmGCBのサイズ排除クロマトグラフィー樹脂に使用するバッファーとしては50mMクエン酸ナトリウム、pH6.0がある。0.15Mの塩化ナトリウムを含む25mMリン酸ナトリウム、pH6.0などの他のバッファーもまた使用することができる。バッファーのpHはpH5とpH7の間であり、カラムとのイオン的相互作用を最小にするべく十分なイオン強度を持たなくてはならない。
【0182】
所望の精製物を得るために、上記に解説した精製プロトコルにおいてpH、バッファーおよび/または塩の濃度のバリエーションが通常の技法により可能である。
【0183】
マクロファージの取り込みとhmGCBの細胞標的化を測定するためのアッセイ
マクロファージによるhmGCBの取り込み効率は例えばマクロファージ中のタンパク質レベルおよび/または酵素活性を測定することによって求めることができる。例えば下記の実施例およびDimentet al.(1987)J.Leukocyte Biol. 42:485−490に記載されているように、マクロファージ細胞株を用いたインビトロ分析を行ってhmGCBの絶対摂取率並びにマンノース受容体特異的摂取率を決定することができる。
【0184】
さらに、例えばFriedman et al.(1999)Blood 93:2807−2816中に記載されているように、肝細胞によるhmGCBおよびGCBの摂取率のインビボでの比較を行うことができる。簡単に述べるとマウスモデルにhmGCBまたはGCBを注射し、その後速やかに屠殺する。この動物の肝臓を用いて肝細胞、例えば実質細胞、クッパー細胞、内皮細胞、および肝実質細胞、の懸濁液を調製する。この細胞はついで分離し、その形態により分類し、さまざまな肝細胞タイプにおけるタンパク質レベルおよび/またはhmGCBおよびGCBの酵素活性を測定する。別法として、免疫組織化学的検出を用いて処置した動物の組織中の特定の細胞または細胞株へhmGCBを限局化することもできる。
【0185】
医薬組成物
高マンノースグルコセレブロシド(hmGCB)は例えばヒトなどの患者に投与するのに適した医薬組成物中に含有させることができる。この組成物はゴーシェ病の患者を治療するのに十分な用量のhmGCBを含むことができる。ここで言う「医薬上許容される担体」とは、いかなるそしてあらゆる溶媒、賦形剤、分散媒体、コーティング、殺菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸着遅延剤などを始めとする、医薬投与に適合したものを含む。薬剤的に活性な物質のために、このような媒体および剤を用いることは当該分野において公知である。この活性化合物と従来の媒体または剤とが不適合である場合を除き、このような媒体を本発明の組成物中に使用することができる。補助活性化合物もまたこの組成物中に含むことができる。
【0186】
本発明の医薬組成物は、その意図されている投与経路に適するように製剤化される。投与経路としては非経口、すなわち静脈内、皮内および皮下投与があげられる。好ましい投与経路は静脈内である。非経口投与用の溶液または懸濁液には下記の成分が含有されている;注射用の水などの減菌希釈剤、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの殺菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などのバッファーおよび塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透張力調整剤である。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口製剤はアンプル、使い捨て注射器、またはガラスまたはプラスチック製の多数回用量バイアルに封入されている。
【0187】
注射用に適した医薬組成物には減菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および減菌注射溶液または分散剤をその場で調剤するための減菌粉末、例えば、凍結乾燥製剤がある。静脈内投与に適した担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(ニュージャージー州、パーシッパニーにあるBASF製)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。これらすべてにおいて、組成物は滅菌されており、簡単に注射できる程度の流動性がなければならない。さらに製造条件および貯蔵条件のもとで安定であり、細菌やカビなどの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)など、および適当なこれらの混合物を含む溶媒または分散媒体であってよい。分散体の場合は必要な粒子径の維持のために、例えばレシチンなどのコーティングを用いることにより、また界面活性剤を用いることにより、適当な流動性が維持されている。微生物の作用は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどのさまざまな抗菌剤および抗真菌剤の使用により防ぐことができる。多くの場合、この組成物のなかに例えば砂糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、および塩化ナトリウムなどの等張化剤を加えることが好ましい。例えば、アルミニウムモノステアレート、ヒト血清アルブミンおよびゼラチンなどの吸着遅延剤を含有させることによって注射用組成物の安定性をさらに持続させることができる。
【0188】
減菌注射液は必要量のhmGCBを適当な溶媒中に必要に応じて、上記にリストアップした成分の1つまたはそれ以上の組み合せたものと一緒に加え、除菌濾過して調製することができる。一般に分散物は活性化合物を塩基性の分散媒ならびに上記のリストから選ばれる必要な他の成分を含む減菌賦形剤に混合して調製する。減菌注射液調製用の粉末の場合は、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥(たとえばlyophilization)、であり、これにより活性成分と先に減菌濾過したその溶液からのその他の所望の成分との粉末が得られる。
【0189】
1つの実施態様において、活性化合物はインプラントおよびマイクロカプセルデリバリシステムを始めとする制御放出製剤などの体からの急速な排泄からこの化合物を守る担体と共に調製されている。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製する方法は当業者には明らかであろう。これらの物質はまたAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals inc.から市販されている。リポゾーム懸濁液(ウイルス抗原へのモノクローナル抗体で感染させた細胞を標的とするリポゾームを含む)もまた医薬上許容される担体として使用することができる。これらは例えば米国特許第4,522,811号に記載のもののような、当業者に知られている方法に従って調製することができる。
【0190】
ゴーシェ病の治療
hmGCBは、例えばここに記載されたhmGCB分子または調製物のいずれでもよいが、ゴーシェ病の患者の治療に使用することができる。別法として、ここに記載したマンノシダーゼノックアウト細胞のいずれもゴーシェ病の患者に導入し、hmGCBをこの患者に供給することができる。様々な投与経路と様々な部位を使用することができる。個体中に移植するとこのノックアウト細胞はhmGCBを生産することができる。
【0191】
好ましくは、使用されているノックアウト細胞は一般に患者特異的に遺伝子工学によって作られた細胞であろう。しかし、同種または異なる種の他の個体から細胞を得ることもまた可能である。このような細胞の使用には免疫抑制剤の投与、組織適合抗原の変更またはバリアー装置の使用などが移植細胞の拒絶を防ぐために必要かもしれない。
【0192】
ゴーシェ病は、リソソーム酵素、グルコセレブロシダーゼ(GCB)の欠損により特徴づけられる、常染色体性劣性遺伝リソソーム貯蔵障害である。GCBはスフィンゴ糖脂質が白血球および赤血球の膜中で分解した後、生成されている糖脂質、グルコセレブロシドを加水分解する。GCBの加水分解が不十分であると、マクロファージ(ゴーシェ細胞)中にグルコセレブロシドが蓄積し、貧血、血小板減少、器官肥大症、および骨に関わる主要な問題を引き起こす。
【0193】
ゴーシェ病には、ゴーシェ病タイプ1、タイプ2、およびタイプ3を始めとするいくつかのタイプがあるが、これはGCB遺伝子中の様々な突然変異から生じる。「治療的に有効量」のhmGCB、すなわちゴーシェ病を治療するのに十分な用量のhmGCB、をゴーシェ病の患者に与えることができる。「治療する」とはここではゴーシェ病の1つまたはそれ以上の症状を軽減するまたは抑制することを指す。ゴーシェ病タイプIの症状には骨痛、骨損傷、オステオペニア、骨壊死、無血管性骨壊死、および特発性骨折などの骨の合併症;貧血;肝脾腫大症;脾結節および肝機能不全;血小板減少症;および/または発育遅延および思春期発達遅延があげられる。ゴーシェ病タイプIIの症状にはゴーシェ病タイプIの症状に加えて、項強直、感情鈍麻、カタトニー、斜視、深部反射亢進、および喉頭痙攣があげられる。ゴーシェ病タイプIIIの症状はゴーシェ病タイプIIに類似のものであるが、症状はより穏やかで、また発症時期も遅い。
【0194】
治療的に有効量のhmGCBは個人個人に応じて決定することができるが、病気の重篤度との関連での投与時期、患者のサイズ、使用薬剤の種類、使用デリバリシステムの種類をある程度考慮し、また薬剤投与計画が1回投与なのか、多数回投与なのか、また制御放出投与であるのかにも基づいて決定する。ゴーシェ病を治療するのに十分なhmGCBの用量はヒト組織から得た、またはヒト胎児から得たGCBまたはインビトロで細胞によって生産されたGCBの用量より少ないことが好ましく、さらにコアマンノース残基を露出するようにトリミングされていることが好ましい。
【0195】
その他のリソソーム蓄積症の治療
一般に、ここに解説する本発明はその表面にマンノース受容体を発現する細胞を標的とするタンパク質を製造するのに使用することができる。したがってここに記載する本発明は治療用タンパク質がマンノース受容体発現細胞を標的とすることが望ましい、いかなる疾患の治療に用いることもできる。例えばここに解説する本発明は、またその他のリソソーム蓄積酵素および、細胞、例えば細網内皮細胞由来の細胞が未消化の物質を蓄積するようなその他のリソソーム蓄積症に用いることもできる。細網内皮細胞にはマクロファージ、肝臓中のクッパー細胞、脾臓中の組織球が含まれる。このようなリソソーム蓄積症としては、これに限定するわけではないが、ファーバー病およびNeimann−Pick病があげられる。
【0196】
ファーバー病は酸性セラミダーゼの欠乏により特徴づけられる常染色体性劣性遺伝リソソーム蓄積病である。セラミダーゼはセラミドの分解を担う酵素である。もしセラミド分解が不十分であると、セラミドは蓄積し肉芽腫形成および組織球応答を引き起こす(Moser、H.W.Ceramidase deficiency:Faber lipogramulomatosis;The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease(C.R.Scriver、A.L.Beaudet、W.S.Sly and D. Valle、Eds.)、7版、pp.2589−2599,MacGrow−Hill Inc.,New York(1995))。
【0197】
ファーバー病には、ファーバータイプ1、タイプ2、タイプ3、タイプ4、そしてタイプ5を始めとする、関わっている主たる組織の部位とその症状の重篤さにおいて異なるいくつかの型がある。高マンノース酸性セラミダーゼはファーバー病の患者に、この病気の少なくとも1つの症状をやわらげ、軽減するために投与することができる。ファーバー病タイプ1の症状としては関節の腫張(特に指節間、中手骨、くるぶし、手根、膝関節および肘関節である)、侵された関節に関して触知可能な結節、および過圧点、失声に発展することもある嗄叫声、摂食および呼吸困難、乏しい体重増加、そして間欠熱があげられる。これらの症状は通常生後2週間から4ヶ月の間に生じる。ファーバータイプ2およびタイプ3の症状にはリウマトイド結節、関節変形、そして喉頭病変があげられる。これらの患者はファーバータイプ1の患者よりも長命である。ファーバー病タイプ5の症状には、1歳から2歳半の頃に始まる精神運動衰退が含まれる。
【0198】
Neimann−Pick病のタイプAおよびタイプBは、酸性スフィンゴミエリナーゼの欠乏により特徴づけられる常染色体性劣性遺伝リソソーマル蓄積障害である。酸性スフィンゴミエリナーゼはスフィンゴミエリンの分解を担う酵素である。もしスフィンゴミエリナーゼが欠乏すると、スフィンゴミエリンおよびその他の脂質が単球−マクロファージ系に蓄積する(Schuman、E.H.and Desnick、R.J.Neimann−Pick Disease Type A and B:acid sphingomyelinase deficiencies:The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease(C.R.Scriver,A.L.Beaudet,W.S.Sly and D. Valle、Eds.)、7版、pp.2589−2599、Mcgraw−Hill Inc.,New York(1995))。
【0199】
Neimann−Pick病にはタイプAおよびタイプBを始めとするいくつかの型がある。高マンノース酸性スフィンゴミエリナーゼは、例えばこの病気の治療のため、すなわち少なくとも1つの症状を軽減、緩和するため、Neimann−Pick病の患者に投与することができる。Neimann−Pick病タイプAの症状としては脾臓および肝臓の腫脹、リンパ節症、小赤血球性貧血、血小板数減少、低血圧症、筋無力症、精神運動遅滞があげられる。Neimann−PickタイプBの症状としては脾臓および/または肝臓の腫脹、肝脾腫大症、pulmonary compromiseがあげられる。
【0200】
このように高マンノース酸性セラミダーゼまたは高マンノース酸性スフィンゴミエリナーゼなどの高マンノースリソソーム貯蔵障害酵素はこれらのタンパク質がマンノース受容体発現細胞を標的とするためにここに記載の方法により製造することができる。
【実施例】
【0201】
Gene−Activated(登録商標)GGB(GA−GCB)を発現するHT−1080細胞による実験において、この細胞は0.1から2μg/mLの範囲の濃度のキフネンシンまたはスワインソニンで処理した。
【0202】
キフネンシンまたはスワインソニンのGA−GCB糖形に及ぼす効果
GA−GCBを産生するHT−1080細胞を、2枚の6−ウェルプレートにおいて、キフネンシンまたはスワインソニンを濃度0(薬剤なし)、0.1、0.25、0.5、1および2μg/mL、に調節したProduction Medium中で培養した。培地を回収し、細胞を再び24時間毎に3日間培養した。3日目のサンプルを等電点電気泳動(IEF)分析に付した。キフネンシンとスワインソニンのGA−GCBの分子電荷に及ぼす影響をIEF分析により示す。この薬物はどちらも見かけの等電点(pI)において濃度依存の増加が観察された、キフネンシンでは、試験した最高濃度(2μg/mL)で、pIにおいてスワインソニンより大きなシフトが見られた。
【0203】
キフネンシンまたはスワインソニンのGA−GCB生産に及ぼす影響
10本のローラーボトル(表面積はそれぞれ1700cm)中のGrowth Medium(10%子ウシ血清を入れたDMEM)にGA−GCB産生HT−1080細胞を接種した。2週間増殖した後、培地を吸引し、200mLの新鮮なProduction Medium(DMEM/F12、子ウシ血清0%)を3セットのローラーボトルに加えた。2セット(4本)のローラーボトルを1μg/mLのキフネンシンまたはスワインソニンのいずれかで処理した。3番目のグループ(2本)のローラーボトルには薬品の処理を行わなかった。約24時間の後、各ローラーボトルから培地を回収し、プールし、サンプルをGA−GCB酵素活性分析のために取り出した。この手順を7日間繰り返した。7日間の連日の回収を通じてすべてのローラーボトルで安定なGA−GCBの産生が観察された(表1)。しかし酵素の絶対値は薬品処理グループに応じて変化し、7日間の回収に渡り下記の平均GA−GCB産生レベルが観察された:38.3±3.5mg/L(コントロール、薬品処理なし)、24.5±4.0mg/L(スワインソニン、1μg/mL)、および21.3±2.8mg/l(キフネンシン、1μg/mL)。両薬品はしたがって安定な産生ではあるが、産生レベルの低下をもたらし、この低下はキフネンシンで最も大きかった(コントロールに比較し44%の減少)。
【表1】

【0204】
マクロファージ内へのGA−GCBの取り込みに及ぼすキフネンシンまたはスワインソニンの影響
HT−1080細胞中で産生されたGA−GCBをインビトロ分析で用いてマウスマクロファージ細胞系中での取り込み効率を測定した。この実験の特定の目的はマウスのJ774E細胞中のGA−GCBの絶対的およびマンノース受容体特異的な摂取量を求めることであった。分析の1日前に50,000細胞/cmのJ774E細胞を、Growth Mediumを入れた12ウェルプレートに蒔いた。分析用に、50nMビタミンD3(1,2−5、ジヒドロキシビタミンD3)を含む0.5mLのProduction Medium (DMEM/F12)(仔ウシ血清0%)を細胞に添加した。2μg/mLのマンナン(マンノース受容体の競合体)を含む、または含まないテストウェルに非精製GA−GCB(表1の採取物4)を最終濃度が10μg/mLとなるように加えた。3つの異なる形のGA−GCBを用いた:キフネンシン(1μg/mL)で処理した細胞由来のGA−GCB、スワインソニン(1μg/mLで処理した細胞由来のGA−GCB、そして未処理細胞由来のGA−GCB(1μg/mL)である。対照ウェルにはGA−GCBを加えなかった。ウェルを37℃で4時間培養し、緩衝食塩水で十分に洗浄し、掻き取ってGA−GCB酵素反応緩衝液に入れ、2回の凍結融解サイクルを経て遠心分離で清澄化した。上清の酵素活性と全タンパクを定量した。GA−GCBのマウスJ744E細胞中へのインターナリゼーションは、細胞溶解物の1mgあたりの単位数で表2に示す。これらの結果からキフネンシン処理細胞由来のGA−GCBの摂取量はバックグラウンドの14倍であり、マンナンにより73%阻害可能であり、スワインソニン処理細胞由来のGA−GCBの摂取量はバックグラウンドの7倍であり、マンナンにより67%阻害可能であることがわかった。さらに未処理細胞由来のGA−GCBの摂取量はバックグラウンドの約3倍であり、マンナンにより53%阻害可能であることがわかった。このように、キフネンシンまたはスワインソニンのどちらかによる、細胞間マンノシダーゼの阻害はマンノース受容体を経て効率よく細胞中に移送されうるGA−GCBが生じ、キフネンシンの取り込みはスワインソニンの約2倍であった。GA−GCBのマンノース受容体を通じた細胞標的化における向上は、したがってキフネンシンまたはスワインソニンの存在下でGA−GCBの生産を行うことにより最適化できる。
【表2】

【0205】
hmGCBの生成および特性付け
hmGCBは2μg/mlの濃度でのキフネンシンの存在下で培養したヒトの線維芽細胞の培地から精製した。hmGCB上に存在する4つのN−結合グリカンをペプチドN−グリコシダーゼFにより解放し、Sep−pak C18カートリッジを用いて精製した。5%酢酸画分中に溶出するオリゴ糖を水酸化ナトリウムとヨードメチルを用いてパーメチル化し、メタノール:水(80:20)中に溶解し、パーメチル化グリカン混合物の一部をマトリックス補助レーザー脱着イオン化飛行時間形質量分析法(MALDI−TOF−MS)により分析した。サンプルを2,5−ジヒドロキシ安息香酸をマトリックスとして用いたDelayed Extractionと結合したVoyager STR Biospectrometry Research Stationレーザー脱着質量分析計で分析した。擬似分子イオンのパターンがm/z1500−2500の範囲に見られ、ManGlcNAcからManGlcNAcに渡る高マンノースグリカンが存在することが示された。
【表3】

【0206】
最も大量に存在する高マンノースグリカンはManGlcNAcとMan8GlcNAcであり、ManGlcNAc、ManGlcNAcおよびManGlcAcとなるにつれ存在量が減ってくる。2つのシアル酸残基を有するフコシル化ビアンテナ性複合体グリカンがわずかに観察された。それぞれのピーク高さを測定することによって、グリカンの比較存在量の近似値を得た。表3を参照されたい。高マンノースグリカンの平均鎖長のより正確な評価は無傷の糖タンパク質をMALDI−TOF−MSで分析することにより得られた。グリカン鎖が均一であるため、鋭いピークがm/zが62,483.1のところに得られた。アミノ酸配列から計算されている成熟ペプチドの質量は55,577.6であり、先の4つのN−結合グリカン鎖がこのhmGCB全質量に6905.5だけ貢献していることが示されている。この数値から平均グリカン長は8.15マンノース残基であることが計算できる。
【0207】
ここに引用するすべての特許ならびに参照文献はその全体をここに援用する。
【0208】
その他の実施態様は、特許請求の範囲内のものである。
【0209】
以下、本発明のさらに別の実施態様を項分け記載する。
【0210】
(実施態様1) グルコセレブロシダーゼ(GCB)を発現することのできる細胞を提供し、
GCBの前駆体オリゴ糖の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する条件の下で前駆体オリゴ糖を有するGCBの生産を行い、hmGCB調製物を製造することを含む、高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を生成する方法。
【0211】
(実施態様2) 前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0212】
(実施態様3) 前記5糖コアに遠位の1つのα1,3マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0213】
(実施態様4) 前記5糖コアに遠位の1つのα1,6マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0214】
(実施態様5) 前記方法がGCBの前記前駆体の5糖コアに遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する物質と前記細胞とを接触させることを含むことを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0215】
(実施態様6) 前記物質がマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様5記載の方法。
【0216】
(実施態様7) 前記マンノシダーゼ阻害剤がクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様6記載の方法。
【0217】
(実施態様8) 前記マンノシダーゼ阻害剤がクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様6記載の方法。
【0218】
(実施態様9) 前記クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、キフネンシン、デオキシマンノジリマイシンおよびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様7記載の方法。
【0219】
(実施態様10) 前記クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤がキフネンシンであることを特徴とする実施態様7記載の方法。
【0220】
(実施態様11) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、スワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシDIM、6−デオキシ−6−フルオロ−DIM、およびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様8記載の方法。
【0221】
(実施態様12) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤がスワインソニンであることを特徴とする実施態様8記載の方法。
【0222】
(実施態様13) 前記マンノシダーゼ阻害剤が約0.05から20.0μg/mlの濃度で存在することを特徴とする実施態様6記載の方法。
【0223】
(実施態様14) 前記マンノシダーゼ阻害剤が約0.1から2.0μg/mlの濃度で存在することを特徴とする実施態様13記載の方法。
【0224】
(実施態様15) 前記細胞を、クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤と接触させることをさらに含むことを特徴とする実施態様7記載の方法。
【0225】
(実施態様16) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、スワインソニン、マンノスタチンおよびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様15記載の方法。
【0226】
(実施態様17) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、スワインソニンであることを特徴とする実施態様15記載の方法。
【0227】
(実施態様18) 前記細胞が少なくとも1つのマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0228】
(実施態様19) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様18記載の方法。
【0229】
(実施態様20) 前記細胞がクラス2プロセシングマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様18記載の方法。
【0230】
(実施態様21) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼおよびクラス2プロセシングマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様18記載の方法。
【0231】
(実施態様22) 前記細胞がアンチセンスマンノシダーゼ分子を含むことを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0232】
(実施態様23) 前記アンチセンス分子が、クラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子、クラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子およびクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子の両方、とからなる群から選択されることを特徴とする実施態様22記載の方法。
【0233】
(実施態様24) 前記hmGCBが少なくとも4個のマンノース残基を有する糖鎖を1本含むことを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0234】
(実施態様25) 前記hmGCBが5個のマンノース残基を有する糖鎖を少なくとも1本含むことを特徴とする実施態様24記載の方法。
【0235】
(実施態様26) 前記hmGCBが8個のマンノース残基を有する糖鎖を少なくとも1本含むことを特徴とする実施態様24記載の方法。
【0236】
(実施態様27) 前記hmGCBが9個のマンノース残基を有する糖鎖を少なくとも1本含むことを特徴とする実施態様24記載の方法。
【0237】
(実施態様28) 生成された前記hmGCBにおいてマンノース残基のGlcNAc残基に対する比がGlcNAc残基2に対しマンノース残基が3以上であることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0238】
(実施態様29) 前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去がhmGCBの少なくとも2本の糖鎖上で防止されていることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0239】
(実施態様30) 前記調製物のhmGCBの少なくとも60%が、前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている1本以上の糖鎖を有することを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0240】
(実施態様31) 前記細胞が、GCBコード化領域を含む外来性核酸配列を含むことを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0241】
(実施態様32) 前記細胞が、GCBコード化領域の発現を調節するように作用する外来性調節配列をさらに含むことを特徴とする実施態様31記載の方法。
【0242】
(実施態様33) 前記細胞が、内在性GCBコード化配列の発現を調節するように作用する外来性調節配列を含むことを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0243】
(実施態様34) 前記細胞が初代細胞であることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0244】
(実施態様35) 前記細胞が2次細胞であることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0245】
(実施態様36) 前記細胞がほ乳類の細胞であることを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0246】
(実施態様37) 前記細胞がヒトの細胞であることを特徴とする実施態様36記載の方法。
【0247】
(実施態様38) 前記細胞が線維芽細胞または筋原細胞であることを特徴とする実施態様37記載の方法。
【0248】
(実施態様39) 前記細胞が不死化細胞であることを特徴とする実施態様37記載の方法。
【0249】
(実施態様40) 前記細胞がHT−1080細胞であることを特徴とする実施態様39記載の方法。
【0250】
(実施態様41) GCB発現可能な細胞集団が提供され、これら細胞の少なくとも10%が特定数のマンノース残基を有する4本の糖鎖を有するGCBを生産することを特徴とする実施態様1記載の方法。
【0251】
(実施態様42) 前記細胞が少なくとも1つのマンノシダーゼ阻害剤を含む培地中で培養されていることを特徴とする実施態様5記載の方法。
【0252】
(実施態様43) 前記マンノシダーゼ阻害剤がクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様42記載の方法。
【0253】
(実施態様44) 前記クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤がキフネンシン、デオキシマンノジリマイシンおよびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様43記載の方法。
【0254】
(実施態様45) 前記マンノシダーゼ阻害剤がクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様42記載の方法。
【0255】
(実施態様46) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、スワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシ−DIM、6−デオキシ−6−フルオロ−DIM、およびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様45記載の方法。
【0256】
(実施態様47) 前記培地がさらにクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤を含むことを特徴とする実施態様43記載の方法。
【0257】
(実施態様48) 前記hmGCBが前記細胞が培養されている培地から得られることを特徴とする実施態様42記載の方法。
【0258】
(実施態様49) 高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を生成する方法であって、
グルコセレブロシダーゼ(GCB)を発現することのできる細胞を提供することと、
GCBの前記前駆体オリゴ糖の5糖コアから遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去が防がれるように、クラス1プロセシングマンノシダーゼ活性とクラス2プロセシングマンノシダーゼ活性を阻害する条件の下で前駆体オリゴ糖を有するGCBの生産を行い、それによってhmGCB調製物を製造することと、
を含む高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を生成する方法。
【0259】
(実施態様50) 前記細胞を、クラス1プロセシングマンノシダーゼを阻害する物質およびクラス2プロセシングマンノシダーゼを阻害する物質と接触させることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0260】
(実施態様51) 前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のα1,2マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0261】
(実施態様52) 前記5糖コアに遠位の1つのα1,3マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0262】
(実施態様53) 前記5糖コアに遠位の1つのα1,6マンノース残基を除去することが防止されていることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0263】
(実施態様54) 前記物質がクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0264】
(実施態様55) 前記物質がクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤であることを特徴とする実施態様49記載の方法
(実施態様56) 前記クラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、キフネンシン、デオキシマンノジリマイシンおよびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様54記載の方法。
【0265】
(実施態様57) 前記クラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤が、スワインソニン、マンノスタチン、6−デオキシDIM、6−デオキシ−6−フルオロ−DIM、およびその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする実施態様55記載の方法。
【0266】
(実施態様58) 前記マンノシダーゼ阻害剤が約0.05から20.0μg/mlの濃度で存在することを特徴とする実施態様56または57記載の方法。
【0267】
(実施態様59) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0268】
(実施態様60) 前記細胞がクラス2プロセシングマンノシダーゼのノックアウトであることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0269】
(実施態様61) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼおよびクラス2プロセシングマンノシダーゼ両方のノックアウトであることを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0270】
(実施態様62) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子を含むことを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0271】
(実施態様63) 前記細胞がクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子を含むことを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0272】
(実施態様64) 前記細胞がクラス1プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とクラス2プロセシングマンノシダーゼアンチセンス分子とを含むことを特徴とする実施態様63記載の方法。
【0273】
(実施態様65) 前記細胞がGCBコード化領域を含む外来性核酸配列を含むことを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0274】
(実施態様66) 前記細胞がGCBコード化領域の発現を調節するように作用する外来性調節配列をさらに含むことを特徴とする実施態様65記載の方法。
【0275】
(実施態様67) 前記細胞が内在性GCBコード化配列の発現を調節するように作用する外来性調節配列を含むことを特徴とする実施態様49記載の方法。
【0276】
(実施態様68) 前記細胞が少なくとも1つのクラス1プロセシングマンノシダーゼ阻害剤および少なくとも1つのクラス2プロセシングマンノシダーゼ阻害剤を含む培地中で培養されていることを特徴とする実施態様50記載の方法。
【0277】
(実施態様69) 前記細胞が培養されている培地から前記hmGCBを得ることをさらに含むことを特徴とする実施態様68記載の方法。
【0278】
(実施態様70) 高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を生成する方法であって、
外来性調節配列を含む核酸配列を、この調節配列が内在性GCBコード化領域の発現を調節するように導入した細胞を提供することと、
GCBの前記前駆体オリゴ糖の5糖コアから遠位の少なくとも1つのマンノース残基の除去を防止する条件下で前駆体オリゴ糖を有するGCBの生産を行い、それによってhmGCB調製物を製造することと、
を含む高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)を生成する方法。
【0279】
(実施態様71) 前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を含む高マンノースグルコセレブロシダーゼ(hmGCB)調製物。
【0280】
(実施態様72) 前記hmGCBが5個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0281】
(実施態様73) 前記hmGCBが8個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0282】
(実施態様74) hmGCBが9個のマンノース残基を有する少なくとも1本の糖鎖を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0283】
(実施態様75) 生成された前記hmGCBが、マンノース残基のGlcNAc残基に対する比がGlcNAc残基2に対しマンノース残基が3以上である、少なくとも1本の糖鎖を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0284】
(実施態様76) hmGCBの少なくとも2本の糖鎖が前駆体オリゴ糖鎖の少なくとも4個のマンノース残基を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0285】
(実施態様77) 前記調製物のhmGCBの少なくとも85%が前記5糖コアに遠位の1つまたはそれ以上のマンノース残基の除去が防止されている4本の糖鎖を有することを特徴とする実施態様71記載のhmGCB調製物。
【0286】
(実施態様78) 実施態様71記載のhmGCB調製物をゴーシェ病の治療に適した量含む、医薬組成物。
【0287】
(実施態様79) 調製物的に許容されている担体または希釈剤をさらに含むことを特徴とする実施態様78記載の組成物。
【0288】
(実施態様80) 実施態様78記載の組成物を前記患者に投与し、それによってゴーシェ病を治療することを含む、ゴーシェ病の患者を治療する方法。
【0289】
(実施態様81) サンプルからhmGCBを精製する方法であって、
採取したhmGCB生成物を提供することと、
hmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付し、それによって精製したhmGCBを得ること、
とを含む、サンプルからhmGCBを精製する方法。
【0290】
(実施態様82) MEP Hypercel(登録商標)がHCICに用いられることを特徴とする実施態様81記載の方法。
【0291】
(実施態様83) MacroPrep Methyl(登録商標)がHICに用いられることを特徴とする実施態様81記載の方法。
【0292】
(実施態様84) 前記hmGCB生成物をイオン交換クロマトグラフィーに付すことをさらに含むことを特徴とする実施態様81記載の方法。
【0293】
(実施態様85) イオン交換クロマトグラフィーに先立ち、前記hmGCB生成物がHCICまたはHICに付されることを特徴とする実施態様84記載の方法。
【0294】
(実施態様86) HCICまたはHICに先立ちhmGCB生成物がイオン交換クロマトグラフィーに付されることを特徴とする実施態様84記載の方法。
【0295】
(実施態様87) 前記hmGCB生成物が1つまたはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィーステップに付されることを特徴とする実施態様84記載の方法。
【0296】
(実施態様88) 前記イオン交換クロマトグラフィーが陰イオン交換クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択されることを特徴とする実施態様84記載の方法。
【0297】
(実施態様89) 陰イオン交換クロマトグラフィーがQ Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様88記載の方法。
【0298】
(実施態様90) 陽イオン交換クロマトグラフィーがSP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様88記載の方法。
【0299】
(実施態様91) 前記hmGCB生成物をサイズ排除クロマトグラフィーに付すことをさらに含むことを特徴とする実施態様84記載の方法。
【0300】
(実施態様92) 前記サイズ排除クロマトグラフィーがSuperdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様91記載の方法。
【0301】
(実施態様93) hmGCBの精製方法であって、
採取したhmGCB生成物を提供することと、
該hmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付すことと、
該hmGCB生成物を陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーの1つまたはそれ以上に付し、それによって精製されたhmGCBを得ることと、
を含むhmGCBの精製方法。
【0302】
(実施態様94) MEP Hypercel(登録商標)をHCICに用いることを特徴とする実施態様93記載の方法。
【0303】
(実施態様95) MacroPrep Methyl(登録商標)をHICに用いることを特徴とする実施態様93記載の方法。
【0304】
(実施態様96) 陰イオン交換クロマトグラフィーがQ Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様93記載の方法。
【0305】
(実施態様97) 陽イオン交換クロマトグラフィーが、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様93記載の方法。
【0306】
(実施態様98) 前記サイズ排除クロマトグラフィーが、Superdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様93記載の方法。
【0307】
(実施態様99) hmGCBの精製方法であって、
採取したhmGCB生成物を提供することと、
該hmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付すことと、
該HCICまたはHIC精製hmGCB生成物を陰イオン交換クロマトグラフィーに付すことと、
該陰イオン交換クロマトグラフィー精製hmGCB生成物を陽イオン交換クロマトグラフィーに付すことと、
該陽イオン交換クロマトグラフィー精製hmGCB生成物をサイズ排除クロマトグラフィーに付し、それによって精製されたhmGCBを得ることと、
を含むhmGCBの精製方法。
【0308】
(実施態様100) MEP Hypercel(登録商標)をHCICに用いることを特徴とする実施態様99記載の方法。
【0309】
(実施態様101) MacroPrep Methyl(登録商標)をHICに用いることを特徴とする実施態様99記載の方法。
【0310】
(実施態様102) 陰イオン交換クロマトグラフィーが、Q Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様99記載の方法。
【0311】
(実施態様103) 陽イオン交換クロマトグラフィーが、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様99記載の方法。
【0312】
(実施態様104) 前記サイズ排除クロマトグラフィーが、Superdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする実施態様99記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルからhmGCBを精製する方法であって、
採取したhmGCB生成物を提供し、さらに
hmGCB生成物を疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に付し、それによって精製したhmGCBを得ることを含む、サンプルからhmGCBを精製する方法。
【請求項2】
前記hmGCB生成物をイオン交換クロマトグラフィーに付すことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
イオン交換クロマトグラフィーに先立ち、前記hmGCB生成物がHCICまたはHICに付されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
HCICまたはHICに先立ちhmGCB生成物がイオン交換クロマトグラフィーに付されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記hmGCB生成物が1つまたはそれ以上のイオン交換クロマトグラフィーステップに付されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換クロマトグラフィーが、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択されることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記hmGCB生成物をサイズ排除クロマトグラフィーに付すことをさらに含むことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記hmGCB生成物を、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィーの内の1つ以上に付すことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記HCICまたはHICに付されて精製されたhmGCB生成物を、陰イオン交換クロマトグラフィーに付し、陰イオン交換された精製hmGCBを陽イオン交換クロマトグラフィーに付し、陽イオン交換された精製hmGCBをサイズ排除クロマトグラフィーに付すことをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
MEP Hypercel(登録商標)がHCICに用いられることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
MacroPrep Methyl(登録商標)がHICに用いられることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、Q Sepharose Fast Flow(登録商標)、MacroPrep High Q Support(登録商標)、DEAE Sepharose Fast Flow(登録商標)およびMacro−Prep DEAE(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする請求項6、8または9記載の方法。
【請求項13】
陽イオン交換クロマトグラフィーが、SP Sepharose Fast Flow(登録商標)、Source 30S(登録商標)、CM Sepharose Fast Flow(登録商標)、Macro−Prep CM Support(登録商標)およびMacro−Prep High S Support(登録商標)のうちの1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする請求項6、8または9記載の方法。
【請求項14】
前記サイズ排除クロマトグラフィーが、Superdex 200(登録商標)、Sephacryl S−200 HR(登録商標)およびBio−Gel A 1.5m(登録商標)の1つまたはそれ以上を用いて行われることを特徴とする請求項7、8または9記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236246(P2011−236246A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173242(P2011−173242)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2002−520848(P2002−520848)の分割
【原出願日】平成13年8月17日(2001.8.17)
【出願人】(501358172)シャイア ヒューマン ジェネティック セラピーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】