説明

高レベルの特定アルコキシル化トリグリセリドを含む改善された官能特性を示し加工し易い固形セッケン

【課題】等価組成物に比べて改善された官能特性(例えば、摩擦抵抗及び粘着性の減少;及び、つるつる感の向上)を有している固形組成物を提供する。
【解決手段】(a)55ー83重量%のセッケン、(b)0−10重量%のノンソープ非アルコキシル化トリグリセリド、(c)7ー15重量%のアルコキシル化ヒマシ油、アルコキシル化トウモロコシ油、アルコキシル化パーム核油及びアルコキシル化タロウから選択され、11−24のHLBを有しているアルコキシル化トリグリセリド及び(d)10重量%からバランスまでの水を含む、固形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベル(例えば、7−15%、好ましくは8−14%)のアルコキシル化トリグリセリドを含んでおりセッケンを主要な基材とする(例えば約50−85重量%のセッケンを含有する)固形製品に関する。このようなレベルで使用されたアルコキシル化トリグリセリドは優れた官能特性を与える(例えば、湿潤化及びスキンケアに伴うしっとりした皮膚感触、少ない“摩擦抵抗”感、クリーム質の泡)。更に、アルコキシル化トリグリセリドは適格から優良までの範囲の硬度及び降伏応力を有しているので、“容易に”加工することができる。この点で、アルコキシル化トリグリセリドは単純セッケン基材に複数のスキンケア効果を与える簡単で廉価な方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、鉱油、シリコーン油、皮膚緩和エステル及びトリグリセリドのような皮膚緩和油は比較的低いレベル、即ち5.0%未満のレベルで固形セッケンに添加されていた。上記よりも高いレベルの皮膚緩和油は加工性及び使用特性に問題を生じる(例えば、泡立ちがよくない)ので、このような高レベルは使用されてこなかった。しかしながら、低レベルで使用すると、明らかな官能効果は殆ど感じられない。
【0003】
双方ともがFerraraに許諾された米国特許第3,814,698号及び第3,941,712号では、はるかに高いレベルの“バスオイル”を含む組成物が混練段階でなく固形製品ケン化段階(成分が液体の場合)で添加される。
【0004】
これらの2つのFerrara特許において、バスオイルという用語は広義に、油、エステル、ワックス及び長鎖アルコールのような材料を包含すると定義される。別の材料よりも加工性が優れていると記載された材料は存在せず、また、アルコキシル化トリグリセリドが特定的に開示されてはいないことも確かである。更に、上記に指摘したように材料はケン化段階で添加されるが、これは、該発明が加工に関する発明であって組成の違いに関する発明でないことを明らかに示している。
【0005】
Chambersの米国特許第6,242,398号は、セッケン、有効物質及び水を開示している。アルコキシル化トリグリセリドについても、非アルコキシル化に比べてどの程度優れているか(特に、優れた官能特性、例えば、はるかに小さい摩擦抵抗)についても詳細に開示されてはいない。更に、皮膚緩和剤は最終組成物に直接的に混合/混練されるのでなく、担体に加えられる。
【0006】
出願人による2つの同時係属出願、即ち、(1)“Soap Bar Comprising About 6% and Greater Triglycerides Which Structure Well and Have Desirable User Properties”;及び(2)“Process for Making Soap Bar Comprising About 6% and Greater Triglycerides”という標題の出願において出願人らは、仕上げ段階で固形製品に13重量%以下のトリグリセリドが添加されることを開示している。
【0007】
これらの出願はアルコキシル化トリグリセリドについて全く言及していない。更に、出願人らは、固形製品中のアルコキシル化トリグリセリドは未改質トリグリセリドよりも良好に構造化し、より高いレベル(例えば15重量%まで)で添加することができ、官能効果を向上させることを知見した(例えば、硬水媒体中の濡れた皮膚のつるつるした感触が強化される)。
【0008】
Van Gunstの米国特許第6,255,265号は、セッケン、皮膚緩和剤及び水を開示する別の参考例である。アルコキシル化トリグリセリドは開示されていないし、また、皮膚緩和剤のうちでトリグリセリドが優れた加工性及び起泡性を維持することも認識されていない。アルコキシル化トリグリセリドが非アルコキシル化トリグリセリドよりも卓越した官能効果を有していることが全く認識されていないことは確かである。また、Van Gunstの組成物には高レベルの有機電解質が必要であるが、本願ではこのような電解質はあまり必要でない。
【0009】
最後に、アルコキシル化トリグリセリドは例えば、双方ともがKaoに許諾された欧州特許EP1,045,021及びEP0,586,323に開示されている。これらの2つの出願においてはアルコキシル化トリグリセリドが液体組成物中に限って使用されている。また、出願人が知る限り、セッケン基材の固形製品中にアルコキシル化トリグリセリドを特許請求の範囲に記載のレベルで使用することは知られていない。
【0010】
不意打ちでもあり意外でもあったが、出願人らは、特定クラスの皮膚緩和剤、即ち、アルコキシル化トリグリセリドは、セッケンを主要基材とする固形製品に添加することができ、かつ、(特許請求の範囲に記載のレベルで使用したときに)優れた官能効果を与えることを知見した。更に、アルコキシル化トリグリセリドは、特に10よりも大きい親水親油バランス(HLB)値を有するとき、好ましくは11−24のHLB値を有するときに未改質トリグリセリドよりも良好に構造化する(降伏応力の増加によって測定される)。従って本発明は、加工容易な単純固形セッケンに優れたスキンケア効果を与える簡単で廉価な方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,814,698号
【特許文献2】米国特許第3,941,712号
【特許文献3】米国特許第6,242,398号
【特許文献4】米国特許第6,255,265号
【特許文献5】欧州特許第1,045,021号
【特許文献6】欧州特許第0,586,323号
【発明の概要】
【0012】
より詳細には、本発明の第一の目的は、
(a)50−90重量%のセッケンと、
(b)0−10重量%のノンソープ非アルコキシル化トリグリセリドと、
(c)7−15重量%のアルコキシル化トリグリセリドと、
(d)10%のバランス水と、
を含み、アルコキシル化トリグリセリドを含有しない等価の固形製品に比較して泡が少なくとも約60%であること、及び、アルコキシル化トリグリセリドを含有しない等価の固形製品に比較して固形製品の“摩擦抵抗”感が減少している(官能検査訓練を受けた熟練の官能パネリストによって測定されたとき)ことを特徴とする固形組成物を提供することである。
【0013】
添付の図1は、非アルコキシル化トリグリセリド含有(10%)の固形製品に比べたアルコキシル化トリグリセリド含有(例えば10重量%のアルコキシル化トリグリセリド含有)の固形製品の特性比較を示す。中心点からの距離が遠いほど、特性が(プラスまたはマイナスにかかわりなく)顕著に認められる。図からわかるように、アルコキシル化トリグリセリドを含む固形製品は非アルコキシル化トリグリセリド含有の固形製品よりも粘着性が著しく小さく、摩擦抵抗が少なく、つるつるしている(この場合にはプラスの特性)。また、これらの固形製品はいずれも滑らかで、クリーム質であり、泡立ちもよい。
【0014】
本発明は、比較的大量のアルコキシル化トリグリセリド油を含む組成物に関する。油は、必ずしもではないが一般的には、ケン化段階後の一点、即ち、結晶化後の仕上げ段階で、添加と同時に加工が妨害されることはなく(降伏応力、スループット、団結性、などの測定値から判断する)添加され、また、良好な泡立ちも維持される。更にこのような使用量は、アルコキシル化トリグリセリド非含有の固形製品に比べても、また、非アルコキシル化トリグリセリド含有の固形製品に比べたときであっても、別の望ましい消費者特性を提供する。
【0015】
本発明の固形組成物は約50−90重量%、好ましくは50−85重量%、より好ましくは55−83重量%のセッケンを含有し得る。
【0016】
本文中で“セッケン”という用語は、その普遍的な意味で使用されている、即ち、脂肪族、アルカン−またはアルケンモノカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカノールアンモニウム塩を意味する。本発明の目的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアンモニウムのカチオンまたはそれらの組合せが適当である。一般的に本発明の組成物にはナトリウムセッケンが使用されるが、セッケンの約1%−約25%がカリウムセッケンまたはマグネシウムセッケンでもよい。本発明に有用なセッケンは、約8−22個の炭素原子好ましくは約8−約18個の炭素原子を有している天然または合成の脂肪族(アルカンまたはアルケン)酸の公知のアルカリ金属塩である。これらは、約8−約22個の炭素原子を有しているアクリル系炭化水素のアルカリ金属カルボキシレートであると説明することもできる。
【0017】
ココヤシ油の脂肪酸分布を有しているセッケンが広い分子量範囲の下限を与える。落花生油またはナタネ油またはそれらの水素化誘導体の脂肪酸分布を有しているセッケンが広い分子量範囲の上限を与える。
【0018】
ココヤシ油またはタロウまたはそれらの混合物の脂肪酸分布を有しているセッケンを使用するのが好ましい。その理由はこれらがより容易に入手できる油脂に属しているからである。ココヤシ油セッケン中で少なくとも12個の炭素原子を有している脂肪酸の割合は約85%である。この割合は、主鎖の鎖長がC16以上であるようなココヤシ油と脂肪との混合物、例えば、タロウ、パームヤシ油または非熱帯性堅果油脂との混合物を使用するときよりも高い値である。本発明の組成物に使用するための好ましいセッケンは約12−18個の炭素原子を有している脂肪酸を少なくとも約85%含有している。
【0019】
セッケンに使用するココヤシ油の全部または一部を別の“高芳香性(high−lauric)”油に代えてもよい。即ち、全脂肪酸の50%以上がラウリン酸、ミリスチン酸及びそれらの混合物から成る油脂に代えてもよい。これらの油の一般的な代表はココヤシ油のクラスの熱帯産堅果油である。例えば、パーム核油、ババスーヤシ油、ウリクリ(ouricuri)油、ホシダネヤシ油、コフネヤシ実油、ムルムル(muru−muru)油、ジャボティ(jaboty)核油、カカン(khakan)核油、ディカ(dika)実油及びウクフバ(ucuhuba)脂がある。
【0020】
好ましいセッケンは約30%−約40%のココヤシ油と約60%−約70%のタロウとの混合物である。混合物はまた、タロウをもっと多い量で含むこともでき、例えば15%−20%のココヤシ油と80%−85%のタロウとを含有してもよい。
【0021】
セッケンは商業的合格規準に適合する不飽和を含有し得る。一般的には過度の不飽和を避ける。
【0022】
セッケンは、古典的なケトル煮沸法で製造されてもよくまたは近代的な連続的セッケン製造法で製造されてもよい。後者の方法では、当業者に公知の手順を使用し、タロウまたはココヤシ油のような天然油脂またはそれらと等価の材料をアルカリ金属水酸化物によってケン化する。あるいは、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)またはステアリン酸(C18)のような脂肪酸をアルカリ金属の水酸化物または炭酸塩で中和することによってセッケンを製造してもよい。
【0023】
固形組成物は場合によっては0−10重量%の任意成分を含み得る。任意成分はアルコキシル化トリグリセリド、セッケンまたは水以外の成分である。合成界面活性剤を使用する場合、このような界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性/双イオン性及びカチオン性の界面活性剤から成るグループから選択され得る。
【0024】
アニオン性界面活性剤は、脂肪族スルホネート(例えば、C−C22アルカンスルホネートもしくはジスルホネート;または芳香族スルホネート)、アルキルスルフェート、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルホスクシネート、アルキルまたはアシルタウレート、アルキルまたはアシルサルコシネート、または、Massaroらの米国特許第5,916,856号に記載されたアニオン性界面活性剤のいずれかでよい。該米国特許は参照によって本出願に含まれるものとする。
【0025】
同様に両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤もまた、Massaroらの米国特許第5,916,856号に記載された界面活性剤のいずれかでよい。該米国特許は参照によって本出願に含まれるものとする。
【0026】
使用し得る別の成分としては、加工助剤(例えば、充填剤)またはコンディショニング剤(例えば、PEG、遊離脂肪酸またはグリセリン)がある。
【0027】
使用し得るその他の添加剤としては、1種または複数の保存剤、香料、色素、乳白剤、蛍光増白剤、殺菌剤がある。
【0028】
固形製品は更に、10重量%からバランス量まで、好ましくは10−18重量%の水を含み得る。
【0029】
最後に、組成物は約7−15重量%、好ましくは8−14重量%のアルコキシル化トリグリセリド油を含む。
【0030】
本発明のトリグリセリドは、以下の式:
【0031】
【化1】

を有しているグリセロールのトリエステルでよい。
【0032】
式中のRは、HまたはCHを表し、BはHまたは
【0033】
【化2】

を表し、ここにRは6−22個の炭素原子を有しているアルキル基、アルケニル基またはヒドロキシアルケニル基であり、a、b及びcの各々が1−80の値でよく、a、b及びcの和が2−200の範囲である。
【0034】
更に、本発明のトリグリセリドは、アルコキシル化トリグリセリド1分子あたりのアルキルオキシド基の数が統計的分布を有している上述のようなグリセロールのモノ−、ジ−及びトリエステルの混合物でもよい。
【0035】
アルコキシル化トリグリセリドの非限定例は、種々のアルコキシル化ヒマシ油(例えば、PEG80ヒマシ油、PEG30ヒマシ油);アルコキシル化トウモロコシ油(例えば、PEG−60トウモロコシ油)、アルコキシル化パーム核油(例えば、PEG−45 PKO)、及び、アルコキシル化タロウである。
【0036】
一般的に、化合物の名称に付随する数値は化合物形成反応中に消費されたアルキレンオキシドの平均モル数に関係する。
【0037】
理論によって制約されることは望まないが、アルコキシル化の程度と固形製品の軟度との間にも相関関係が存在すると考えられる。即ち、アルコキシル化の程度が低いほど、固形製品が軟質になると考えられ、硬度(固形製品の硬さ)はアルコキシル化の程度に伴って増加すると考えられる。
【0038】
このような観点から好ましいアルコキシル化トリグリセリドは10よりも大きい親水−親油バランス(HLB)、好ましくは11−24、より好ましくは12−20のHLBを有するであろう。
【0039】
アルコキシル化トリグリセリドは、アルコキシル化した植物または果実の油、例えば、アルコキシル化したダイズ油、綿実油、アプリコット油、パームヤシ油、アボガド油、など、または、アルコキシル化タロウでよい。
【0040】
本発明の油は好ましくはセッケン製造の最終段階で添加されるが、結晶化よりも前に添加することも可能である。
【0041】
化粧セッケンの製造に使用される慣用のセッケン製造方法は文献に詳細に記載されている。方法を以下に簡潔に説明する。慣用の“湿式”セッケン製造方法では、脂肪即ちタロウとココヤシ油とのブレンドをアルカリ(典型的にはNaOH)の存在下でケン化してアルカリセッケンである脂肪酸とグリセロールとを得る。グリセロールをブラインで抽出すると、約70%のセッケンと30%の水相とを含有する脂肪酸セッケンの希釈溶液が得られる。このセッケン溶液を典型的には熱交換器で約130℃に加熱することによって乾燥し、更に含水量が約12%になるまで真空下で乾燥し、混練によって仕上げる。
【0042】
油を上述のように添加することもできるが、同じく上述の本発明の油は一般的には結晶化後の最終段階で添加される(例えば、混合及び、場合によっては、混練によって添加する)。
【0043】
本発明の第二の実施態様においては、本発明が、上記の量のセッケンとノンソープ非アルコキシル化トリグリセリド成分と水とから成り、同じく上記のように加工容易性であり降伏応力及び泡量が最小限に抑えられていることを特徴とする固形製品の製造方法を包含する。該方法では、7−15%、好ましくは8−14%のアルコキシル化トリグリセリド油を(一般には、結晶化後の最終段階で)非アルコキシル化トリグリセリド成分から成る固形製品に添加する。
【0044】
結晶化後の添加を使用する場合には、結晶化したセッケン基材を形成するために少なくとも十分な成分(例えば、セッケン及び構造化剤)が添加されているならば別の微量成分(例えば香料)も結晶化後に添加できることに注目されたい。
【0045】
処理実施例及び比較実施例を除いて、または、異なる明白な指定がある場合を除いて、材料の量もしくは比、または、条件もしくは反応、材料の物理的特性、及び/または、使用に関して本文中で示されたすべての数値は“約”という用語で修飾されていると理解されたい。
【0046】
明細書中で使用された“含む”という用語は、記述された特徴、整数、段階、成分の存在を包含するが、1つまたは複数の特徴、整数、段階、成分またはそれらのグループの存在または付加を排除しないことを理解されたい。
【0047】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0048】
異なる指示がない限り、パーセンテージはすべて重量パーセンテージを意味する。
【0049】
(実施例)
プロトコル
降伏応力の測定
大抵はビレットの形状のセッケンサンプルの一端でおもり付き“チーズワイヤ”を直角に切り込ませる。ワイヤはセッケン内に次第に深く侵入して平衡位置に達する。平衡位置では、ワイヤに付けたおもりが作用させる下向きの力が、ワイヤの上方のセッケンの粘性摩擦抵抗による上向きの力と釣り合う。セッケンの降伏応力は、切り込みの長さとワイヤ直径とおもりの重量とから計算できる。セッケンの温度を測定することも重要である。比較のために、測定温度で得られた降伏応力を数学的に正規変換して、40℃という規定温度での降伏応力の値を得る。
【0050】
降伏応力試験を行うために、玉軸受けを介して自由に回動できる釣合せアームにステンレススチールワイヤ片を取り付ける。セッケンビレットを、V字形のくぼみをもつ金属製または木製のブロックに支持する。ワイヤはステンレスでなければならない。また、ワイヤの直径は必ずワイヤを緊張させた後で測定しなければならない。
【0051】
チーズワイヤの直ぐ上におもり(W g)を付加することによって、セッケン内部に切り進むワイヤに一定の力が作用する。切り込みの深さが増すにつれて力の作用面積が拡大し、従って作用する応力は減少する。応力がセッケンの抵抗力に正確に均衡すると、ワイヤの移動が停止する。この点の応力はセッケンの降伏応力に等しい。この点に到達するまでに要した時間は30秒以内であることが知見された。従って、確実に降伏応力に到達させるために一般には1分という標準時間を選択する。この時間後に、おもりを取り外し、切り込みの長さを測定する。
【0052】
降伏応力は半実験式を使用して計算する:
【0053】
【数1】

【0054】
式中のl及びdはそれぞれ、切り込みの長さ及びワイヤの直径を表す(いずれもcm単位)。
【0055】
実際のサンプル温度が40℃よりも高温であるならば、降伏応力を40℃という値に補正するために以下の等式を使用できる。
【0056】
【数2】

【0057】
降伏応力の測定値には製品温度が著しい影響を与える。このため、適正に実施するためでは、混練時点で降伏応力/温度を測定し、また、吸蔵性ポリテンラップ及び調理用アルミホイルに入れて40℃に平衡させた固形製品を使用する。
【0058】
泡量試験
化粧セッケンによって発生する泡の量は消費者による商品の採択に影響を与える重要なパラメーターである。ここに記載する泡量試験は、標準条件下で発生する泡を測定し、これによって種々のセッケン配合物を客観的に比較できるようにする。
【0059】
熟練の技術者が標準化方法を使用して泡を発生させる。泡を集めて、その量を測定する。泡発生中にこれらの技術者が泡のクリーム質特性を主観的に評価する。
【0060】
使用した典型的な装置を以下に示す:
洗面器 − 試験者あたり1個
容量10−15リットル
セッケン水きり皿 − サンプルあたり1個
外科医用ゴム手袋 − 英国標準BS4005または等価の製品
技術者全員に合うサイズ範囲
長い円筒状ガラスビーカー − 容量500−1000ml
または広口メスシリンダー 10ml間隔の目盛り付き
温度計 − 水銀型は使用不可
ガラス棒 − 目盛り付きガラスビーカーを撹拌できる十分な長さ。
【0061】
典型的な手順を以下に説明する:
i.タブレットの前処理:規定型の手袋を裏返しに着用し、普通のセッケンで十分に洗う。試験シーケンスを開始する前に全部の被験タブレットを10分以上かけて完全に洗浄する。このためには、被験タブレットを流水下で180°転がす動作を約20回繰り返すのが最良である;
ii.既知の硬度及び規定温度(典型的には20−40℃)の水5リットルを洗面器に入れる。各固形セッケンの試験が済む度毎に水を交換する;
iii.タブレットを取り上げ、水に浸し、水を切る。両手の間でタブレットを180°転がす動作を15回繰り返す。タブレットをセッケン皿に戻す;
iv.手袋に残っているセッケンを泡立たせる:
段階1:片手(どちらの手でもよい)の指先を他方の手の掌に10回こすりつける;
段階2:右手を左手でまたは左手を右手でつかみ、指先に泡を集める。手を逆にして繰り返す。この動作を片手あたり5回ずつ繰り返す。
【0062】
段階1と段階2とを繰り返す;
泡を目盛り付きビーカーに入れる;
v.第iii項以後の泡立ち手順全部を繰り返す。2回以上繰り返し、全部の泡をビーカーに集める;
vi.集めた泡を静かに撹拌して大きい気泡を逃がす。量を読み取って記録する。
【0063】
対応のある比較(paired comparison)及び最小有意差(LSD)の値を使用して泡量結果を評価し得る。典型的には、各固形製品について6つの結果を平均し、各固形製品の平均結果間で対応のある比較を行う。泡量の差がLSDよりも大きいときは、製品が“有意に異なる量の泡”を発生したということができる。このLSD値は、同じ温度で行った独立の50の標準対照サンプル(即ち、1バッチあたり10サンプルを含む5つの異なるバッチ)の泡評価値から得られる。
【0064】
以下の順序で計算する:
i.分散を計算する
【0065】
【数3】

ii.tテーブルをルックアップする(n=50,p=0.05)
iii.以下の等式から最小有意差を計算する
【0066】
【数4】

【0067】
専門家の官能パネルプロトコルは以下の通りである:
専門家官能パネルプロトコル
最初に固形製品を手に取る(水に濡らさない乾燥固形製品)。
評価:固形製品の粘着性、滑らかさ及び硬度。
水道の水を出す。
両手と前腕とを濡らす(5秒数える)。固形製品を両手で挟んで流水下に維持する(5秒数える)。流水から離す(両手の水を切る)。セッケンを両手の間で転がす動作を15回繰り返す。
評価:泡立ち速度、つるつる感及び粗粒感。
固形製品をおいて、両手を観察する。
評価:泡量及び泡の大きさ。
前腕を水に浸す(手に水がかからないようにして手首から肘までを濡らす)。
濡れた前腕を手首から肘関節まで上下に10回こすって泡を擦り込む(往復を合計10回数える)。
評価:クリーム性。
評価:泡立ち易さ及び泡の緻密さ。
泡立ち試験に使用した手をすすぐ(5秒間)。
次に、すすいだ手を使用し、この手で前腕を流水下で下方に5回しごくことによって前腕をすすぎ、すすぎ落ち適性を評価する。
濡れた皮膚を流水から離す。
下方に2回しごくことによって泡の残量及び摩擦抵抗を評価する。
【0068】
(固形製品の使用)
前腕を濡らす(5秒)。
固形製品を濡らす(3秒)。
固形製品で前腕を5回こする(前腕内側)。
固形製品を濡らす(3秒)。
固形製品で前腕を5回こする(前腕外側)。
評価:固形製品の硬度、固形製品の重量、粗粒度、油性抵抗度(内側及び外側)、泡立ち速度(内側及び外側)、泡の緻密さ(内側及び外側)。
【0069】
ブラインド手順
水道の水を出す。
両手と固形製品を濡らす(10秒)。
水から離して固形製品を転がす動作を15回繰り返す。
評価:泡立ち速度、つるつる感、滑らかさ、泡の量、泡の緻密さ。
両手を10回こする。
指先をこする。
評価:クリーム性。
特性は熟練のパネリストが0−36の段階で評価する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】アルコキシル化トリグリセリド(例えば10重量%のアルコキシル化トリグリセリド)含有固形製品を非アルコキシル化トリグリセリド含有(10%)固形製品に比較した特性比較図である。
【実施例】
【0071】
(実施例1−7及び比較例A−B)
(1)油非含有の脂肪酸セッケン基材(比較例A)及び(2)非アルコキシル化油含有の脂肪酸セッケン基材(比較例B)の双方に対するアルコキシル化トリグリセリドの利点を証明するために、出願人らは以下の表を作成した。
【0072】
【表1】

【0073】
最初に、化合物の名称に付記した数値は化合物形成反応中に消費されたエチレンオキシドの平均モル数を表すことに注目されたい。更に、消費されたモル数と油の鎖長との組合せがいわゆる親水−親油バランス(例えば、親水性基と疎水性基との比の概略値)を決定するので、化合物のアルコキシル化の程度が高いほど、また、炭化水素の鎖長が短いほど、化合物のHLBが高い値になる。
【0074】
好ましい実施態様で、HLBは10よりも大きい値、好ましくは11−24、より好ましくは12−20の範囲の値でなければならない。前述したように、HLBが高いほど、より高い硬度(降伏応力によって測定)をもち、加工性のより優れた固形製品が得られる。
【0075】
実施例2(10%PEG−30ヒマシ油)と実施例3(15%PEG−30ヒマシ油)とを比較すると、約15%が加工性の上限値であることが判明する。
【0076】
(実施例8)
非アルコキシル化油に比べたアルコキシル化油の官能的な利点を証明するために、出願人らは図1に示したような官能評価図を作成した。
【0077】
図1は、比較実施例B(10%の非アルコキシル化SFOを含有するセッケン基材−従来技術の好ましい実施態様)、実施例2及び実施例6に対する専門家の官能パネル評価の結果を示す。エトキシル化トリグリセリドを添加すると、非エトキシル化の類似製品に比べて硬度が著しく向上し滑らかさが有意に向上した固形製品が得られる。また、本発明の固形製品は粘着性が低下している。この試験は、新規な固形製品では濡れた皮膚の摩擦抵抗感が有意に減少しており、つるつるする感触が向上していることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)55−83重量%のセッケンと、
(b)0−10重量%のノンソープ非アルコキシル化トリグリセリドと、
(c)7−15重量%の、アルコキシル化ヒマシ油、アルコキシル化トウモロコシ油、アルコキシル化パーム核油及びアルコキシル化タロウから選択され、11−24のHLBを有しているアルコキシル化トリグリセリドと、
(d)10重量%からバランスまでの水と、
を含む固形組成物であって、アルコキシル化トリグリセリドを含有しない他は前記固形組成物と同じ固形組成物に比較して固形製品の摩擦抵抗感及び粘着性が減少していることを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
結晶化後の仕上げ段階でアルコキシル化トリグリセリドを直接的に添加することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルコキシル化トリグリセリド非含有の固形製品に比較して泡の量が少なくとも60重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−263676(P2009−263676A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153176(P2009−153176)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【分割の表示】特願2003−534524(P2003−534524)の分割
【原出願日】平成14年9月12日(2002.9.12)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】