説明

高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置

【課題】スムーズに点灯可能な、複数本(例えば、2本)の発光管を直列接続した高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】この高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置は、一次入力電圧(24)を入力し、二次電圧を出力する安定器(26)と、複数本の電気的に直列接続された発光管(12a,12b)を外球(16)内部に有し、前記安定器からの二次電圧を入力して点灯するランプ(10)とを備え、前記安定器からの二次電圧は、少なくとも、その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである。例えば、高ワットタイプの700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)となり、最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)となる三角波交流電圧を使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置に関する。更に具体的には、本発明は、複数本(例えば、2本)の発光管を直列に接続した高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプが、スポーツ施設、競技場の照明等に、ランプを水平に設置した形式(水平点灯)で使用されることが多い。このような高ワットタイプのランプに使用されている大きなサイズの発光管は、アーク長が長くなるため、アークが中心軸線から外れて湾曲して浮上し、セラミック容器を加熱しクラックの原因となるおそれがあった。
【0003】
また、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプは、セラミック放電容器に封止する導電性材料の太さを太くしなければならないが、導電性材料が太いと、点灯中の温度により膨張したときに、セラミック放電容器と導電性材料との熱膨張率の差から、クラックが発生するおそれがある。
【0004】
更に、比較的大きなサイズの発光管は、セラミック容器の製造が比較的困難であり、製造コストが高価になるという欠点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−227361号公報「高圧放電ランプ」(公開日:1986年10月9日) 特許文献1には、外球内部に、直列接続された2本の酸化アルミニウム製の発光管を備えた高圧ナトリウム蒸気放電灯に関する記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に倣って、例えば、700W用発光管を、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して置き換えるアイデアが生まれた。これにより、アーク浮上の問題、高価な製造コストの問題等は解決される。
【0007】
しかし、2本のセラミック製発光管を電気的に直列接続したセラミックメタルハライドランプを試作して従来の安定器を用いて点灯したところ、グロー放電からアーク放電に移行せずに、グロー放電のままランプが温度上昇し、消灯してしまうという問題があることが判明した。
【0008】
従って、本発明は、スムーズに点灯可能な、複数本(例えば、2本)の発光管を直列接続した高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置は、一次入力電圧を入力し、二次電圧を出力する安定器と、電気的に直列接続された複数本の発光管を外球内部に有し、前記安定器からの二次電圧を入力して点灯するランプとを備え、前記安定器からの二次出力電圧は、少なくとも、その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである。
【0010】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、前記安定器からの二次出力電圧は、少なくとも、その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>30.5を満たすものであってよい。
【0011】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、更に、前記安定器からの二次出力電圧は、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、(b)最大値が、各発光管のアーク放電移行電圧の総和以上であってよい。
【0012】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、更に、前記安定器からの二次出力電圧は、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上であり、且つ各発光管のアーク放電移行電圧の総和未満であり、(b)最大値が、各発光管のアーク放電移行電圧の総和以上であり、且つ各発光管の絶縁破壊電圧の総和未満であってよい。
【0013】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、高ワットタイプの700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、前記三角波交流電圧は、最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)となり、実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)となってよい。
【0014】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、高ワットタイプの700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、前記三角波は、最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)であり、実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)≦500Vであってよい。
【0015】
更に、上記セラミックメタルハライドランプ照明装置では、前記安定器からの二次出力電圧は、三角波交流電圧であってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スムーズに点灯可能な、複数本(例えば、2本)の発光管を直列接続した高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、HIDランプ内の放電現象を簡単に説明する図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの中心軸線に沿った要部断面図である。
【図3】図3は、図2に示すランプに使用される発光管の中心軸線に沿った要部断面図である。
【図4】図4は、図3の発光管の特性を示す図表である。
【図5】図5は、セラミックメタルハライドランプ照明装置の回路の概略図である。
【図6】図6は、安定器二次電圧として検討した各種電圧波形を示す図である。ここで、(A)は矩形波の電圧波形、(B)は正弦波の電圧波形、(C)は三角波の電圧波形である。
【図7】図7は、図6に示す各電圧波形をパラメータとした、安定器二次電圧の実効値−最大値の特性であり、ここに示した記号丸「○」はアーク放電に移行可、記号バツ「×」はアーク放電に移行不可の実験データを示している。
【図8】図8は、安定器二次電圧の波形の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中、同じ要素に対しては同じ符号を付与して、重複した説明を省略する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であって、本発明の技術的範囲を何等限定するものではないことを承知されたい。
【0019】
[HIDランプ内の放電現象]
本発明の理解を容易にするため、最初に、HIDランプ(高輝度放電ランプ)の発光管内で発生する放電現象を簡単に説明する。HIDランプは、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の総称であり、メタルハライドランプの内でセラミックス製発光管を備えたランプをセラミックメタルハライドランプと称している。
【0020】
HIDランプに使用される発光管の電極間に印加された交流電圧を徐々に高くすると、或る限界を超えると電極間に強い光が観察される放電現象が生じる。図1は、発光管内の放電現象を簡単に説明する図であり、縦軸に発光管端子電圧Vをとり、これに対応する放電電流Aを横軸にとって、放電の電流−電圧特性を説明する。なお、縦軸の発光管端子電圧Vに具体的な数値が記載されてないのは、発光管の定格電力、サイズ、電極間距離、封入ガスの種類及び圧力等により、その数値が異なるからである。
【0021】
発光管端子電圧を徐々に高くすると、点(o)〜(a)の領域は、放電開始前で光は全く発しない暗放電領域である。
【0022】
点(a)を超えることを絶縁破壊という。安定器(図5参照)からランプに対して、ベース電圧(例えば、200〜300V)に対して瞬時的に非常に高圧なパルス電圧(例えば、3.7〜4.5kV)を重畳して印加し、絶縁破壊を行っている。なお、この高圧パルス電圧は、絶縁破壊後に直ちに終了する。
【0023】
点(b)〜(c)の領域は、電圧が比較的高く電流が比較的小さなグロー放電領域であり、陰極電極からの2次電子放出のみを放電電流としている。
【0024】
点(e)以降の領域は、電圧が比較的低く電流が比較的大きなアーク放電領域である。アーク放電維持電圧は、グロー放電維持電圧に比較して、低い電圧である。アーク放電領域では、陰極電極の冷電子放出又は熱電子放出を放電電流としている。HIDランプは、発光管内の金属電子高圧蒸気中のアーク放電を利用したランプである。
【0025】
グロー放電からアーク放電に移行するためには、ピーク点(d)(以下、本出願書類では「アーク放電移行電圧」という。)を超える電極間電圧が必要である。従って、上述したグロー放電からアーク放電に移行しなかった問題は、アーク放電移行電圧を超える電圧が電極間に印加されなかったことによる。
【0026】
なお、この問題は、特許文献1に開示する高圧ナトリウム蒸気放電灯では生じない。これは、セラミックメタルハライドランプに比較して、高圧水銀ランプ及び高圧ナトリウムランプでは、電極にエミッタが塗布されているためグロー放電電圧が比較的低く、これに伴いアーク放電移行電圧が比較的低いためであった。更に、高圧水銀ランプ及び高圧ナトリウムランプに使用されている発光管は石英製発光管である。石英製発光管は、セラミック製発光管に比較して、発光管内に封入された金属ハロゲン化物と反応し易い欠点を有する反面、熱衝撃に対して強固である長所を有するためであった。
【0027】
[第1実施形態]
(高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ)
第1実施形態に係る高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプは、2本の汎用発光管を使用した例である。
【0028】
図2は、本実施形態に係る高ワットタイプ(例えば、700〜1,000W)のセラミックメタルハライドランプ10の中心軸線に沿った要部断面図である。メタルハライドランプ10は、口金14を形成した外管16内に、支柱18に支持された2本の発光管12−1,12−2が、電気的に直列接続されている。支柱18は、ステム20に固定されている。外管16内は、真空に保持されている。なお、図2には示されていないが、外球16の内部には、安定器(図5参照)から出力される交流電圧に対して、絶縁破壊を行うための高圧パルス電圧を瞬時的に発生して重畳する始動回路(イグナイタ)が備えられている。
【0029】
図3は、図2に示すランプに使用される発光管12−1,12−2の中心軸線に沿った要部断面図である。発光管12−1,12−2は、断面で見てほぼ楕円形状に形成された発光部12aと、その両端に夫々接合された細管部12b,12cとが一体成型されている。発光部12aはセラミックスから形成され、中央部から細管接合部に向けて徐々に内径が小さくなっている。各細管部12b,12cには、電極22a、22bが夫々挿入されている。両電極間の間隙が、アーク長Lに相当する。
【0030】
上述したように、発光管は、高ワットタイプ(例えば、700W発光管,1,000W発光管)になるとサイズが大きくなるため、アーク長が長くなり、アークの浮上が起こり、セラミック容器を加熱しクラックの原因となる。また、大きなサイズのセラミック容器は、製造が比較的困難であり、製造コストが高価になるという欠点がある。これに対して、現在、比較的大量に使用され、従って市場に於いて比較的廉価に入手可能な発光管として、360W発光管があり、次に、270W発光管、440W発光管等がある。図2のランプでは、このような汎用発光管を使用している。
【0031】
図4は、図3の発光管の特性を示す図表である。ここには、汎用360W用発光管として4種類のデータ「360W−1〜4」が示されている。夫々のアーク長Lは、16〜22mmの範囲にある。これ以降説明するデータは、発光管「360W−4」を使用して行った実験データである。
【0032】
なお、比較のため、高ワットタイプの700W発光管として4種類のデータ「700W−1〜4」も添付する。これらのアーク長Lは、39mmと比較的長い。アーク長Lが長いため、水平点灯した場合、発光管内のガスの対流によりアークが浮上し大きく湾曲する。
【0033】
図5は、セラミックメタルハライドランプ照明装置10の回路の概略図である。電源24は、商用交流電源200V(特別な場合、100V)である。安定器26は、トランスとチョークコイルを使用して、所定の安定器二次電圧を出力する。
【0034】
本発明者等は、2本の直列接続の発光管を、グロー放電からアーク放電にスムーズに移行させるために、次の条件を満たすことが必要であるとの結論に達した。図1を参照すると、(a)2本の発光管12−1,12−2の両端に印加される端子間電圧が、定常値として、各発光管のグロー放電維持電圧(点b〜c参照)の総和以上あり、(b)瞬時値として、各発光管のアーク放電移行電圧(点d参照)の総和以上あること、である。
【0035】
なお、2本の発光管12−1,12−2の電気的特性が全く同じであれば、安定器26の二次出力電圧は、各発光管12−1,12−2の夫々の端子間電圧は1/2ずつ印加される。現実問題としては、各発光管の電気的特性にはバラツキがある。しかし、端子間電圧が、定常値として、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あれば、グロー放電は維持される。同様に、瞬時値として、各発光管のアーク放電移行電圧の総和以上あれば、必ず、一方の発光管はアーク放電に移行し、アーク放電に移行した発光管は負性抵抗を示し、これに印加される端子電圧は急激に低下する結果、更に大きな電圧が他方の発光管に印加することになり、他方の発光管もアーク放電に移行する。
【0036】
このため、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、(b)最大値が、各発光管をアーク放電移行電圧の総和以上ある、安定器の二次出力電圧の検討を行った。
【0037】
その結果、安定器の二次出力電圧の波形を変えることにより、この条件を満たすこととしたのである。即ち、通常の安定器の二次出力電圧の波形は、正弦波である。これを、例えば三角波に代えることにより、上記条件を満たしたのである。なお、説明のため、従来の正弦波に加えて、矩形波の例も交えて、三角波の利点を説明する。
【0038】
図6は、安定器の二次出力電圧として検討した各種電圧波形を示す図である。ここで、(A)は矩形波の電圧波形、(B)は正弦波の電圧波形、(C)は三角波の電圧波形である。三角波の場合、その波形には変形がある。波形が、正三角形の場合は、波形の高さhと底辺aの比は、h/a=30.5である。オシロ波形で時間軸を合わせた場合、正三角形に比べて、高さhが比較的高い二等辺三角形の場合、h/a>30.5となる。正三角形に比べて、高さhが比較的低い二等辺三角形の場合、h/a<30.5となる。本出願書類では、用語「三角波」は、正三角形波及びこのような変形の三角波を含むことを承知されたい。
【0039】
矩形波電圧に関しては、実効値と最大値の関係は、Vmax(矩形波)=Veff(矩形波)となる。正弦波電圧に関しては、実効値と最大値の関係は、Vmax(正弦波)=20.5Veff(正弦波)=1.414・Veff(正弦波)となる。これに対して、今回の実験で使用した三角波電圧に関しては、実効値と最大値の関係は、Vmax(三角波)=1.941・Veff(三角波)であった。
【0040】
同じ実効値Veff(例えば、280V)の場合、矩形波の最大値は、実効値と同じであり、Vmax(矩形波)=Veff(矩形波)=280Vとなる。正弦波の最大値は、実効値の1.414倍であり、Vmax(正弦波)=1.414・Veff(正弦波)=396Vとなる。これに対して、三角波の最大値は、実効値の1.941倍であり、Vmax(三角波)=1.914・Veff(三角波)=543Vとなり、同じ実効値でも最大値が高くなり、比較的高いアーク放電移行電圧を容易に確保できる。
【0041】
この結果より、従来使用されていた正弦波の最大値/実効値の比率(Vmax(正弦波)/Veff(正弦波)=20.5)より大きな比率の波形が必要であることが判明した。これが、三番目の条件、(c) その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである。このような波形として、典型的には、二次出力電圧の最大値と実効値の比率(Vmax/Veff)が大きな三角波がある。
【0042】
更に、小形で低出力の安定器とするためには、図1から分かるように、二次出力電圧の最大値Vmaxは、絶縁破壊電圧(図1の点a)より低くてよい(即ち、Vmax<各発光管の絶縁破壊電圧の総和)。また、二次出力電圧の実効値Veffは、アーク放電移行電圧(図1の点d)より低くてよい(即ち、Veff<各発光管のアーク放電移行電圧の総和)。
【0043】
図7は、図6に示す各電圧波形をパラメータとした、安定器二次電圧の実効値−最大値の特性である。ここに、2本の「360W用発光管−4」を使用して、アーク移行の可否の実験結果を表示してある。記号丸「○」はアーク放電に移行可、記号バツ「×」はアーク放電に移行不可の実験データを示している。
【0044】
図7に示すように、三角波の二次出力電圧では、Veff(三角波)=260V,280V,300V,320,…で、アーク放電移行可が確認された。これに対して、正弦波では、Veff(正弦波)≧300Vでアーク放電移行可となった。矩形波も同様に、Veff(矩形波)≧300Vでアーク放電移行可となった。二次出力電圧が三角波の場合、他の波形と比較して、同じ実効値でも高い最大値が得られ、アーク放電移行が実現できる。これは、比較的小型で、そのため廉価な安定器を使用できることを意味する。
【0045】
なお、日本国内の法規制「電気設備技術基準」によれば、使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の要求絶縁抵抗は、300V以下とこれを超えるものとでは異なっている。要求絶縁抵抗が高くなると、安定器のコストが高くなり、好ましくない。従って、日本国内に於いては、700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)≦300Vとしてもよい。但し、これは法規制に関する制限事項であり、発明の技術的内容に関する制限事項ではない。
【0046】
以上、安定器の二次出力電圧の波形が三角波であるとして説明した。しかし、波形は三角波に限定されないことを承知されたい。安定器二次電圧に要求される条件は、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、(b)最大値が、各発光管をアーク放電移行電圧の総和以上であり、(c) その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである。図8は、安定器二次電圧の波形の他の例である。例えば、図8に示すような2種類の矩形波を重畳した二次出力電圧であっても、上記条件を満たすことができる。
【0047】
[第2実施形態]
第2実施形態は、図示していないが、発光管を3本以上電気的に直列接続した例である。例えば、1,000Wの高ワットタイプのランプの発光管を、3本の汎用360W発光管で置き換えることができる。安定器の二次電圧は、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、(b)最大値が、各発光管をアーク放電移行電圧の総和以上であり、(c) その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである。
【0048】
この場合、汎用の発光管を利用できるメリットがある。反面、ディメリットとして、例えば、3本の360W用発光管のグロー放電維持電圧の総和及びアーク放電移行電圧の総和は、1,000W用発光管のグロー放電維持電圧及びアーク放電移行電圧より夫々大きくなるため、それに応じた二次出力電圧が可能な安定器を用意しなければならない。
【0049】
[第3実施形態]
第3実施形態は、図示していないが、異なる種類の複数本の発光管を電気的に直列接続した例である。例えば、現在、汎用発光管として、270W発光管、360W発光管、440W発光管等が入手可能である。例えば、(270W発光管+360W発光管+440W発光管)を直列接続して、1,000Wの高ワットタイプのランプを実現してもよい。この場合のメリット及びディメリットは、第2実施形態で説明したのと同様である。
【0050】
[実施形態の利点・効果]
以上により、本実施形態の利点・効果として、次のことが判明した。
【0051】
(1) 高ワットタイプのメタルハライドランプの発光管を、複数個の汎用発光管で置き換えることができる。
【0052】
(2)この場合、複数個の汎用発光管は、2個又は3個以上でよい。
【0053】
(3) この場合、複数個の汎用発光管は、異なる出力の発光管(例えば、270W発光管、360W発光管、440W発光管等)を組み合わせてもよい。
【0054】
(4)この場合、安定器二次電圧が、(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、(b)最大値が、各発光管をアーク放電移行電圧の総和以上であり、(c) その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものであれば、ランプのスムーズな点灯が出来る。
【0055】
(5) 安定器二次電圧として、三角波電圧が好ましい。グロー放電を維持するに必要最小の電圧と、アーク放電移行電圧を容易に確保できるからである。
【0056】
(6) 高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプとして、700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、実験で用いた三角波交流電圧は、実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)となる。最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)となる。
【0057】
[その他]
以上、本発明に係る高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプの実施形態について説明したが、これらは例示であり、本発明の範囲を何等制限するものではない。本実施形態に対して当業者が容易に成し得る追加・削除・変更・改良等は本発明の範囲内である。本発明の技術的範囲は、添附の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0058】
10:セラミックメタルハライドランプ、 12,12−1,12−2:発光管、 12a:発光部、 12b,12c:細管部、 16:外球、 18:支柱、 20:ステム、22a,22b:電極、 24:商用交流電源、 26:安定器、
a:絶縁破壊電圧、 b〜c:グロー放電領域、 d:アーク放電移行電圧、 e〜:アーク放電領域、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次入力電圧を入力し、二次電圧を出力する安定器と、
電気的に直列接続された複数本の発光管を外球内部に有し、前記安定器からの二次電圧を入力して点灯するランプとを備え、
前記安定器からの二次出力電圧は、少なくとも、その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>20.5を満たすものである、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、
前記安定器からの二次出力電圧は、少なくとも、その波形が、最大値/実効値の比率(Vmax/Veff)>30.5を満たすものである、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、更に、
前記安定器からの二次出力電圧は、
(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上あり、
(b)最大値が、各発光管のアーク放電移行電圧の総和以上である、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、更に、
前記安定器からの二次出力電圧は、
(a)実効値が、各発光管のグロー放電維持電圧の総和以上であり、且つ各発光管のアーク放電移行電圧の総和未満であり、
(b)最大値が、各発光管のアーク放電移行電圧の総和以上であり、且つ各発光管の絶縁破壊電圧の総和未満である、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、
高ワットタイプの700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、
前記三角波交流電圧は、最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)となり、
実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)となる、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、
高ワットタイプの700W用発光管の代わりに、2本の汎用タイプの360W用発光管を電気的に直列接続して用いる場合、
前記三角波は、最大値で表示すると、500V≦Vmax(三角波)であり、
実効値で表示すると、260V≦Veff(三角波)≦500Vである、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックメタルハライドランプ照明装置において、
前記安定器からの二次出力電圧は、三角波交流電圧である、高ワットタイプのセラミックメタルハライドランプ照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62198(P2013−62198A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201204(P2011−201204)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】