説明

高一様性のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料

本発明は、第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層と、前記第1の表面の上のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層とを有するダイヤモンド材料において、前記導電性層中のホウ素の分布が、前記基体層中のホウ素の分布に比べてより一様である、ダイヤモンド材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高一様性を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料と、該ダイヤモンド材料の電極としての使用方法と、該ダイヤモンド材料の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ホウ素ドープト多結晶ダイヤモンド材料の電気化学的用途としての、とりわけ、電気化学的電池における電極としての使用方法は、十分に立証されてきた。例えば、国際公開2006/013430号パンフレットは、2つの層を有するホウ素ドープト多結晶ダイヤモンド材料であって、その上層がより低いホウ素濃度を有し、不動態化層(passivation layer)として作用するダイヤモンド材料を開示する。そのような多結晶ホウ素ドープト電極に関しては、ある用途において、とりわけ定量的測度の検知又は用途において、多くの課題が存在している。第1の課題は、成長したままの形態では、各々の結晶粒子が、電気化学プロセスで異なる挙動を示す異なる結晶方位を有する表面を提供することである。
【0003】
第2の課題は、多結晶質表面が、例えば、機械的なラップ仕上げ及び研磨加工によって加工処理される場合であっても、その表面は、個々の結晶粒子の面に由来する異なる成長分域(growth sectors)を提供することである。成長分域の無作為抽出(random selection)が提供されることは、合成の間、ホウ素が一様には取り込まれず、局所導電率と局所電気化学的挙動とを部分的に変える、ホウ素濃度の大きな局所的変動を引き起こすことを意味する。更に、ホウ素を電気的に補償し得る、窒素等の他の不純物もまた、異なる成長分域において異なるやり方で取り込まれ、ホウ素の非一様性の影響を潜在的に激化させる。不純物を含有しない点欠陥でさえも、異なる成長分域で濃度が変動し、更に、異なる成長分域を横切るあらゆる調製済み表面の電気化学的挙動を局所的に変える可能性を有する。
【0004】
そのような機械的に作製された平面に関連する最終的な課題は、該平面が表面損傷を含むということであり、このことによって、高度に厳しいある用途における材料の電気化学的挙動が部分的に変わることもある。
今日まで、この課題は、単結晶のダイヤモンド材料を用いることによって克服されると信じられてきた。例えば、米国特許第2005/0109262号明細書は、CVDによるホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドを有する電気化学的合成用電極を教示する。
しかし、本発明者らは、そのような単結晶電極は概して、ホウ素の一様性という点で多結晶質電極に比べて改善されるかもしれないが、上記の課題の多くは、単結晶CVDダイヤモンド電極においても対応していることを見つけた。
【0005】
従来、単結晶ダイヤモンドは、高圧高温(HPHT)プロセスによって製造された基体の表面で成長する。その基体は、その中を通って進行する転位であって、ダイヤモンド成長が生じる表面を破壊する転位を有する。化学蒸着(CVD)法によって、ホウ素ドープトダイヤモンドが基体表面に成長するとき、該基体表面を破壊する転位は、CVD層の中に伝播し、次いで、該CVD層との界面で特定の形を取る更なる転位を引き起こすことがあり、次いで、しばしば、成長したCVD層の厚い部分を通って更に増大することがある。結果として、CVDによるダイヤモンド層は、通常、かなりの濃度の転位と、転位束又は転位プルーム(dislocation bundles or plumes)を含有する。
国際公開2003/052174号パンフレットは、ダイヤモンド成長が生じる基体を注意深く調製することによって、とりわけ、基体の成長表面の異方性エッチングを行うことによって、低欠陥密度と高一様性とを有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの厚い層を合成することができることを教示する。しかし、このアプローチは、緩慢であり、かつ、高コストである。なぜなら、利用可能な成長条件の範囲が、ピット(pit)の形成を回避する必要性によって制限されるからである。あまり制御されていない条件の下では、ダイヤモンドが比較的大きい厚さに成長するとき、ピットは、転位束の上部及び周辺の、成長したままの表面の上にしばしば存在する。それらピットは、成長している層の厚さが大きくなるにつれて、サイズが大きくなり、非一様なホウ素取り込みの領域の拡大と、ホウ素濃度を有する表面の割合の拡大とを引き起こし、従って、該表面の残部と異なる導電性を生じさせる。
【0006】
本発明者らは、典型的には正方形又は八角形である、(001)成長表面上に形成するピットは、異なる成長分域を構成する{111}表面及び{110}表面の一方、又は{111}表面と{110}表面との混合を含む。基体上に単結晶ダイヤモンドが成長する間のホウ素の取り込みは、異なる成長分域の間で異なる。主要成長分域におけるホウ素の取り込みに関する研究に基づくと、予想されるものは、そのような{110}表面、及びとりわけ{111}表面が、{100}成長分域に比べて、より高いホウ素レベルを取り込むということであるが、そのようなピットの内部では、ホウ素の取り込みは、一般に、これらの成長分域において、より低いということが意外にも見出されている。その差異についての説明は知られていないが、特定のいかなる理論にも拘束されることを望まなければ、2つの可能な理由は、ピット内部の表面段差の形態が悪影響を受けること、又は、ピット内部の密閉空間において、原料ガス中のホウ素が枯渇するためである。
【0007】
局所表面の導電率の変動を引き起こすピットが存在することは、CVDによる厚いホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドが成長し、次いで、多数にスライスされて一連のより薄いプレートが作られる場合の特殊な課題である。なぜなら、ホウ素濃度の空間的非一様性の程度は、諸プレート間で変動し、厚い層が成長したプレートに当初隣接する領域では最も小さく、また、当初最も遠く離れていた領域では最も大きいからである。厚い層の厚さを通しての平均ホウ素濃度のあらゆる変動は、もう1つのよくある問題であり、やはり弊害をもたらす。
【0008】
上述のように、それらピットが存在することは、単結晶ダイヤモンド材料の成長したままの表面において、ホウ素濃度の大きな局所的変動が存在することを意味する。国際公開2003/052174号パンフレットに記述されるやり方で、本材料を、合成の前に、異方性エッチングによって加工処理することは、CVD成長が始まる前に、該加工処理によって基体表面の中に更なるピッティング(pitting)が導かれるので、問題を悪化させる。このことによって、電気化学的分析用途で用いるのにあまり適切でない材料が作られることがある。
【0009】
あらゆる電気化学センサーには、2つの重要な構成要素が存在する。第1は、加工処理又は分析を受ける流体(以下、「電解液」と称する)に提供される表面である。第2の重要な構成要素は、デバイスに対する電気接点である。好ましくは、そのような接点は、接点が、しばしば攻撃的である電解液と接触する領域から十分離れるような具合に、電極構造体の裏面に作られる。
電極は、ある機械的完全性を必要とし、加えて、理想的には、電気化学的に活性な表面に対して一様な電位を提供するであろうから、電極の全厚さは、かなり厚いもの(例えば、1mmを超える横方向寸法を有する電極のためには、典型的には100μm超、より典型的には300μm超)である必要がある。電気接点は、a)ダイヤモンド層の全厚さを導電性にすること、b)電気接点を提供する非ダイヤモンド基体の上に導電性のダイヤモンド薄層を接続すること、c)ダイヤモンドバッキング層であってもよい非導電性バッキング層の中を通してドリルで穴を開けて、正面の導電性層の背面との接触を作るのを可能にすること、のいずれかによって作られ得る。解決策(a)は、上述の課題で悩まされるが、解決策(b)及び(c)は、複雑であり、バルクで作るのに高コストとなり、使用中、しばしば壊れ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2006/013430号パンフレット
【特許文献2】国際公開2003/052174号パンフレット
【特許文献3】米国特許第2005/0109262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、上述の欠点を有さないダイヤモンド材料であって、とりわけ、電気化学的分析用途で用いるのに適したダイヤモンド材料、及び、電気接点を、ダイヤモンド材料の性能に悪影響を及ぼすことなく、容易に取り付けることのできるダイヤモンド材料を得る必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の態様において、第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層と、前記第1の表面の上のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層とを有するダイヤモンド材料であって、前記導電性層中のホウ素の分布が、前記基体層中のホウ素の分布に比べてより一様である、ダイヤモンド材料を提供する。
本発明は、第2の態様において、第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層と、前記第1の表面の上のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層とを有するダイヤモンド材料であって、前記導電性層の導電率が、前記基体層の導電率に比べてより一様である、ダイヤモンド材料を提供する。
【0013】
用語「基体層(substrate layer)」は、以下、本発明のダイヤモンド材料の第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層を称するために用いられる。
用語「一様導電性層(uniformly conductive layer)」は、以下、本発明のダイヤモンド材料のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層を称するために用いられる。
ダイヤモンド材料の外面のホウ素濃度が高一様性であること、及び/又は、導電性が一様であることの結果として、本発明の材料は、電極であって、それの一様導電性層の露出面が該電極の主要作用面を形成する電極としてとりわけ有用である。
【0014】
本発明は、第3の態様において、本発明のダイヤモンド材料を有する電極を提供する。
好都合なことに、本発明の電極は、二層構造であって、各々の層がホウ素ドープトダイヤモンドを含有する二層構造を有するので、該電極は、従来のダイヤモンド電極に関連する課題を欠点として持っていない。より具体的には、本発明の電極が二層構造である結果として、デバイス全体の特性を決定するのは、一様導電性層の露出面の特性のみである。なぜなら、使用中、電極の主要作用表面となるのは、この表面であるからである。従って、本発明者らは、電極の作用表面を横切るホウ素の一様な濃度が存在するという条件で、意外にも、ホウ素濃度は材料全体にわたって一様である必要はないということを見出だした。このことは、電極を形成するダイヤモンド材料のバルクが、迅速且つ費用効果の良いやり方で、あまり厳しくない条件の下で、合成され、厚い層を成長させることができるという結果になるということを意味する。
【0015】
本明細書で用いられる用語「主要作用面(major working surface)」とは、使用時に電解液と直接接触する、電極の表面をいう。検出電極では、一般に電極構造の1つの表面のみが電解液と接触する。加工処理用電極の場合、相対する主要作用表面が、使用時にアノードとカソードとを形成する二極配置を用いることができる。そのような配置において、一方の表面又は両方の表面は、一様にドープされたホウ素の追加層を有することができる。例えば、長方形である板状電極の場合、主要作用表面は、図1(a)に例示されるような長方形面である。平円形アノードの場合、主要作用表面は、図1(b)に例示されるような長方形面となる、電極の2つの円盤である。
【0016】
好ましくは、電極の主要作用表面は、約0.3mmより大きい、好ましくは約1mmより大きい、好ましくは約4mmより大きい、好ましくは約10mmより大きい、好ましくは約25mmより大きい、好ましくは約50mmより大きい、好ましくは約100mmより大きい、好ましくは約200mmより大きい、好ましくは約400mmより大きい表面積を有する。
ホウ素の分布は、電極の主要作用表面の少なくとも約40%に渡って、好ましくは少なくとも約50%に渡って、好ましくは少なくとも約60%に渡って、好ましくは少なくとも約75%に渡って、好ましくは少なくとも約85%に渡って、好ましくは少なくとも約90%に渡って、好ましくは少なくとも約95%に渡って、好ましくは少なくとも約98%に渡って一様であることが好ましい。
本発明による電極は、その表面全域で導電率の変動が小さくても問題を生じることのある分析用途及び検定用途としてとりわけ有用である。
このように、本発明は、更なる態様において、上記に規定される電極を、電気化学分析用途及び検出用途で使用する方法を提供する。
【0017】
本発明は、更なる態様において、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド電極の製造方法であって、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面を、1μm以下の、好ましくは0.1μm以下の、好ましくは0.05μm以下の、好ましくは0.02μm以下の、好ましくは0.01μm以下の表面粗さRに加工処理する工程と、
前記のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料の基体層の表面にホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料の第2の層を成長させる工程と、を含む、製造方法を更に提供する。
代替的に、基体層の表面は、材料の深さが該表面上の最深ピットの深さよりも大きい全表面から除去されるような具合に、加工処理され得る。基体層の表面の最深ピットの近似深さは、従来型光学顕微鏡法を用いて決定され得る。ピットが存在することは、全倍率が約20倍〜約100倍の間の従来型反射光顕微鏡法を用いて決定され得る。このように、いつ、材料の十分な深さが表面から除去されるかを決定することは、容易なことである。
【0018】
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面を、約1μm以下、好ましくは約0.1μm以下、好ましくは約0.05μm以下、好ましくは約0.02μm以下、好ましくは約0.01μm以下の表面粗さRに加工処理することによって、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の中の転位束の周辺に成長する間に形成されるあらゆるピットは、除去されてしまうか、又は大部分が除去されて、その結果、加工処理済み表面は、一様に導電性になるであろう第2の層を堆積するために用いられる成長環境に単一の成長分域を提供する。更に具体的には、加工処理済み表面は、該表面上のあらゆる更なる成長が単一の成長分域になるようなものである。このような具合に、以前から存在していたピットは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド層の、その後に成長した層に伝播することはない。このことは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層の、成長したままの表面は、ホウ素濃度が高一様性であり、しかも、導電性が遥かに一様であることを意味する。本方法は全体的に見て、単純であり、且つ、コスト効率が良い。
【0019】
本発明のダイヤモンド材料の基体層の中の平均ホウ素濃度は、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料2つの層の間の導電性を維持するのに十分あることが望ましいが、該基体層内部におけるホウ素の分散が一様であることは、極めて重要である。基体層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは、約1×1017原子/cm以上、好ましくは約1×1018原子/cm以上、好ましくは約1×1019原子/cm以上、好ましくは約3×1019原子/cm以上、好ましくは約1×1020原子/cm以上である。基体層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは、約1×1022原子/cm以下、好ましくは約8×1021原子/cm以下、好ましくは約1×1021原子/cm以下、好ましくは約5×1020原子/cm以下である。ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の中のホウ素の平均濃度は、好ましくは、約1×1017原子/cm〜約1×1022原子/cmの範囲にある。好ましくは、基体層中のホウ素の平均濃度は、約1×1018原子/cm〜約1×1021原子/cmの範囲にある。好ましくは、基体層中のホウ素の平均濃度は、約1×1019原子/cm〜約5×1021原子/cmの範囲にある。好ましくは、基体層中のホウ素の平均濃度は、一様導電性層の中のホウ素の平均濃度よりも高いか、又は、一様導電性層の厚さは、ホウ素濃度が基体中で変動する特性寸法(例えば、平均ピット寸法)よりも大きいか、又は、好ましくはこれら両方の状態が続く。
【0020】
本発明のダイヤモンド材料の2つの層の導電率は、室温(300K)で抵抗率を測定し、次いで、換算:
導電率(J)=1/抵抗率(ρ)
を行うことによって決定され得る。
材料の抵抗率は、表面抵抗を測定し、次いで、得られた値をバルク抵抗率値に換算することによって計算され得る。
【0021】
例えば、4点プローブを用いる場合、表面抵抗は、規定の距離だけ離れた2つの電極を当該表面に接触させることによって測定され得る。次いで、それら2つの電極の間に電圧が印加される。一定電流を駆動するのに必要な電圧を測定し、そうすることによって、オームの法則、具体的には、
R=V/I
(式中、Vは、2つの測定点の間の電圧差であり、Iは、2つの測定点の間を流れる強制電流である)を用いて、表面抵抗を決定することが可能となる。
【0022】
この測定値を測定するのに適した装置の例は、TTiBS407精密ミリ/マイクロオームメータ(Precision Milli/Micro Ohm meter)のような適切な計器と組み合わされたジァンデル円筒形携帯型4点プローブ(Jandel Cylindrical hand held Four point Probe)である。測定された表面抵抗を用い、関係:
ρ=Rπt/ln2
(式中、tは、μm単位のダイヤモンド材料の厚さであり、Rは、mΩ単位の、上記に規定されるとおりに決定された抵抗である)を用いて、該材料の抵抗率を計算することができる。
【0023】
一般に、抵抗率値は、ダイヤモンド材料の厚さに類似する測定点の間隔に対しても、測定値の幾つが、理論が半無限板を前提とする試料の端部に接近させているという事実に対しても補正されない。
本明細書で用いられる用語「導電率」とは、300Kでの材料の導電率をいう。
【0024】
基体層の導電率は、好ましくは約1×10−4Ω−1cm−1以上、好ましくは約2×10−4Ω−1cm−1以上、好ましくは約5×10−4Ω−1cm−1以上、約1×10−3Ω−1cm−1以上、好ましくは約5×10−3Ω−1cm−1以上、好ましくは約1×10−2Ω−1cm−1以上、好ましくは約5×10−2Ω−1cm−1以上、好ましくは約1×10−1Ω−1cm−1以上である。
基体層の導電率は、好ましくは約5×10Ω−1cm−1以下、好ましくは約2×10Ω−1cm−1以下、好ましくは約1×10Ω−1cm−1以下、好ましくは約5×10Ω−1cm−1以下、好ましくは約2×10Ω−1cm−1以下、好ましくは約1×10Ω−1cm−1以下である。
基体層の導電率は、好ましくは約1×10−4Ω−1cm−1〜約1×10Ω−1cm−1、好ましくは約5×10−4Ω−1cm−1〜約2×10Ω−1cm−1、好ましくは約2×10−4Ω−1cm−1〜約5×10Ω−1cm−1、好ましくは約1×10−3Ω−1cm−1〜約1×10Ω−1cm−1、好ましくは約5×10−3Ω−1cm−1〜約2×10Ω−1cm−1、好ましくは約1×10−2Ω−1cm−1〜約5×10Ω−1cm−1の範囲にある。
【0025】
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の中に存在するホウ素の平均濃度は、当該技術分野で従来用いられたいかなる方法によっても決定され得る。適切な方法の一例は、二次イオン質量分析法(SIMS)である。SIMSは、薄層(典型的には、数nm〜数μmの範囲にある薄層)の元素分析を行うために用いることのできる非常に高い感度の手法である。とりわけ、SIMSは、ホウ素に対して非常に高い感度を有しており、ダイヤモンドでは、約1013cm−3もの低いホウ素レベルを測定することが可能であり、測定値は、典型的には、約±5%より良好に再現可能である。この方法において、そのような表面は、小領域(例えば、約30μm×約30μmの面積)を横切って、一次イオンビーム(典型的には、約5keVのエネルギーに増進されたOイオンビーム)をラスターすること(rastering)によってスパッターされ、また、イオンとして該表面を去る、スパッターされた材料の部分は、質量分析法によって分析される。[特定の種]対[標準濃度]の計数率を比較することによって、また、スパッター・ホール(sputter hole)の深さを測定することによって、深さ対濃度のプロフィルを作り出すことができる。一組の値は、任意の領域で取られ、次いで、平均化されることがある。典型的には、表面上に格子として配列された一連の点で、多数の測定が行われる。例えば、2mm×2mmのプレート上で、200μm毎の直線で囲まれた配列で、合計約100個の測定値を与えながら、二次イオン質量分析法(SIMS)による測定が行われる。それら測定値の相加平均が決定され、結果の広がりを用いて、一様性の定量的測定を提供することができる。
【0026】
当業者はよく理解するであろうが、単一地点での測定値を記録することは不可能であり、常に、その地点に関連する領域が存在するのである。従って、本明細書で用いられる用語「地点(point)」とは、特定の測定が行われる領域の各々のほぼ中心をいう。各々の測定が行われる領域は、好ましくは約100μm×約100μm、より好ましくは約75μm×約75μm、より好ましくは約50μm×約50μm、より好ましくは約30μm×約30μmである。一様導電性層の導電率は、好ましく約1×10−4Ω−1cm−1以上、好ましく約5×10−4Ω−1cm−1以上、好ましく約2×10−4Ω−1cm−1以上、好ましく約1×10−3Ω−1cm−1以上、好ましく約5×10−3Ω−1cm−1以上、好ましく約1×10−2Ω−1cm−1以上、好ましくは約5×10−2Ω−1cm−1、もっと好ましく約1×10−1Ω−1cm−1である。
【0027】
一様導電性層の導電率は、好ましく約5×10Ω−1cm−1以下、好ましく約2×10Ω−1cm−1以下、好ましく約1×10Ω−1cm−1以下、好ましく約5×10Ω−1cm−1以下、好ましく約2×10Ω−1cm−1以下、好ましく約1×10Ω−1cm−1以下である。一様導電性層の導電率は、好ましく約1×10−4Ω−1cm−1〜約1×10Ω−1cm−1、好ましく約5×10−4Ω−1cm−1〜約2×10Ω−1cm−1、好ましく約2×10−4Ω−1cm−1〜約5×10Ω−1cm−1、好ましく約1×10−3Ω−1cm−1〜約1×10Ω−1cm−1、好ましく約5×10−3Ω−1cm−1〜約2×10Ω−1cm−1、好ましく約1×10−2Ω−1cm−1〜約5×10Ω−1cm−1の範囲にある。
【0028】
一様導電性層の作用表面での導電率の一様性は、原子間力顕微鏡(AFM)を「導電率モード」で用いることによって、測定され得る。この方法を用いることによって、該表面の導電率の空間分解マップ(導電率マップ)を、前記の課題に関連する段階評価で得ることができる。上記の方法(二次イオン質量分析法及び原子間力顕微鏡)はいずれも、電極の調製された切断面に適用して、例えば、一様導電性層の厚さとそれの平均ホウ素濃度とを、第1の層と直接比較して特徴付ける。フォトルミネッセンス又はカソードルミネッセンスを用いて[例えば、ダイヤモンドビュー(DiamondView)(登録商標)器具を用いて]、2層構造の空間的配列の一般的特徴付けを達成させることもできる。
【0029】
基体層の主要な機能は、一様導電性層(電極の主要作用表面を形成する外面)のための基体を提供することである。このことは、例えば、一様導電性層を損傷することなく、従って、性能を損なうことなく、基体層に対する接触を取り付けることができることを意味する。この点について、基体層は、好ましくは、約50μm以上、好ましくは約75μm以上、好ましくは約100μm以上、好ましくは約150μm以上、好ましくは約200μm以上の厚さを有する。基体層は、好ましくは、約1000μm以下、好ましくは約700μm以下、好ましくは約500μm以下、好ましくは約400μm以下の厚さを有する。
【0030】
基体層は、天然の単結晶IIb型ダイヤモンド、高圧高温(HPHT)合成による単結晶IIb型ダイヤモンド、又はCVDによる単結晶ホウ素ドープトダイヤモンドである場合がある。好ましくは、基体層は、CVDによる単結晶ホウ素ドープトダイヤモンドである。好ましくは、基体層は、[001]方向の約10°以内、好ましくは約5°以内に存在する主要面を有する。基体層が、単結晶ホウ素ドープトダイヤモンドである場合、当業者に知られているいずれかの種類の単結晶ダイヤモンドプレートの上に(好ましくは、HPHT合成による単結晶Ib型ダイヤモンド、又はCVDによる単結晶ダイヤモンドの上に)成長するのは、基体層である場合がある。好ましくは、そのプレートは、[001]方向の約10°以内、好ましくは約5°以内に存在する主要面を有する。
【0031】
本発明のダイヤモンド材料の場合、基体層は、一様導電性層と接触している。基体層が、合成による単結晶ダイヤモンドである場合、該基体層の内部接触表面は、前述のように加工処理された基体層の表面である。好ましくは、基体層の内部接触表面は、加工処理されたままであり、好ましくは機械的に加工処理されたままであり、及び/又は、エッチングされたままである。基体と一様導電性層との間の界面の位置は、SIMSによって測定された、又は、ダイヤモンドビュー(登録商標)器具を用いて映し出された、ホウ素分布の一様性の急激な変化によって識別し得る。
【0032】
本発明の材料の一様導電性層は、本発明の材料が電極として用いられる場合、該電極の主要作用表面を形成する。一様導電性層は、好ましくは、約100μm以下、好ましくは約80μm以下、好ましくは約60μm以下、好ましくは約40μm以下の厚さを有する。一様導電性層は、好ましくは、約0.2μm以上、0.5μm以上、好ましくは約1μm以上、好ましくは約3μm以上、好ましくは約5μm以上、好ましくは約10μm以上の厚さを有する。一様導電性層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは約1017原子/cm〜約1×1022原子/cmの範囲にある。好ましくは、一様導電性層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは約1018原子/cm〜約8×1021原子/cmの範囲にある。好ましくは、一様導電性層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは約1019原子/cm〜約5×1021原子/cmの範囲にある。好ましくは、一様導電性層中のホウ素の平均濃度は、好ましくは約1019原子/cm〜約3×1021原子/cmの範囲にある。ホウ素の平均濃度が確実に指定範囲にあるようにすることによって、一様導電性層の導電率は、該導電性層を電極として(とりわけ、検知用途の電極として)用いることが適切となる。
【0033】
一様導電性層は、通常、基体層が一様導電性層を合成するための基体を提供する場合、基体層の加工処理済み表面の上で直接成長する。一様導電性層の外面は、通常、任意的に更なる加工処理工程にかけられることがある、成長したままの表面である。本発明のダイヤモンド材料が電極として用いられる場合、一様導電性層の外面は、該電極の主要作用面となる。
一様導電性層中のホウ素の分布は、基体層中のホウ素の分布に比べてより一様である。
【0034】
好ましくは、一様導電性層中のホウ素の分布の一様性は、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、測定されたホウ素濃度の平均で割られた、測定されたホウ素濃度の標準偏差が、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、基体層のホウ素濃度の平均で割られた標準偏差の約1/2、好ましくは約1/3、より好ましくは約1/4、より好ましくは約1/5、より好ましくは約1/6であるようなものである。
好ましい具体例において、一様導電性層中のホウ素の分布の一様性は、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、測定されたホウ素濃度の平均で割られた、測定されたホウ素濃度の標準偏差が、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、基体層のホウ素濃度の平均で割られた標準偏差の約80%未満、好ましくは約60%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満であるようなものである。
【0035】
基体層におけるホウ素分布の一様性は、好ましくは、該基体層の合成に起因するピットを除去するために該基体層が加工処理された後で、該基体層の頂部に一様導電性層が堆積される前に測定される。一様導電性層におけるホウ素分布の一様性は、あらゆる後堆積プロセス(post−deposition processing)の前又は後に測定され得る。いずれかの後堆積プロセスが行われるならば、一様導電性層におけるホウ素分布の一様性は、いずれかの後堆積プロセスの後で測定される。一様層を注意深く除去することによって(例えば、機械的手段により除去することによって)、基体層の一様性を特徴付けることも可能である。
【0036】
ホウ素濃度の一様性は、次のようにして測定される。基体層中の及び一様導電性層中のホウ素濃度の一様性を測定するためには、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いる。典型的には、SIMSによる多数の測定は、表面上の格子として配列された一連の地点で行われる。例えば、2mm×2mmプレート上で、約200μm毎に直線で囲まれた配列で、SIMSによる測定を行うことができ、合計約100個の測定値が提供される。それら測定値の相加平均を決定し、次いで、結果の広がりを用いて、一様性の定量的尺度を提供することができる。ホウ素濃度の一様性の有意義な尺度を得るために、測定は、20個以上の地点で、好ましくは30個以上の地点で、好ましくは50個以上の地点で行うことが望ましい。地点間の距離は、約500μm以下、好ましくは約350μm以下、好ましくは約250μm以下であることが望ましい。
【0037】
本発明のダイヤモンド材料が、とりわけ電気化学的検知用途に適するのを確実にするために、一様導電性層は、それの外面においてホウ素の高一様性を有する。より具体的には、一様導電性層の外面上の20個以上、好ましくは30個以上、好ましくは50個以上の地点の格子の上で測定されたホウ素濃度の値の、好ましくは約75%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約85%以上、好ましくは約90%以上が、測定された濃度値の平均の±30%以内、好ましくは±25%以内、好ましくは±20%以内、好ましくは±15%以内、好ましくは±10%以内にある。
代替的に、及び/又は、追加的に、一様導電性層の導電率は、基体層の導電率に比べてより一様である。
【0038】
好ましくは、一様導電性層の導電率の一様性は、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、測定された導電率の標準偏差で割られた、測定された導電率の標準偏差が、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、基体層の導電率の平均によって割られた標準偏差の約1/2、好ましくは約1/3、より好ましくは約1/4、より好ましくは約1/5、より好ましくは約1/6であるようなものである。
【0039】
好ましい具体例において、一様な導電性層の導電率の一様性は、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、測定された導電率の平均で割られた、測定された導電率の標準偏差が、20個以上の測定値について、好ましくは30個以上の測定値について、好ましくは40個以上の測定値について、基体層の導電率の平均によって割られた標準偏差の約80%未満、好ましくは約60%未満、好ましくは約40%未満、好ましくは約30%未満であるようなものである。
基体層の導電率の一様性は、好ましくは、該基体層の合成に起因するピットを除去するために該基体層が加工処理された後であるが、一様導電性層が該基体層の頂部に堆積される前に測定される。一様導電性層における導電率の一様性は、あらゆる後堆積プロセスの前又は後に測定され得る。全ての後堆積プロセスが行われるならば、一様導電性層における導電率の一様性は、全ての後堆積プロセスの後に測定されることが好ましい。該一様層を注意深く除去することによって(例えば、機械的手段により除去することによって)、基体層の一様性を特徴付けることも可能である。
【0040】
本発明のダイヤモンド材料は、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第3の層を更に有することができる。その場合、第3の層は、基体層の底部外面と接触している。第3の層は、該第3の層が、一様導電性層に関連して上記に規定される特徴を満たすという条件で、組成が、一様導電性層と同一であるか、又は相違してもよい。そのような材料から作られた電極は、2つの主要作用表面を有することができ、従って、化学反応のために提供される表面積は最大となり、且つ、該電極を双極電極として用いることがとりわけ適切となる。好都合なことに、本発明のダイヤモンド材料は、応答の空間的一様性(special uniformity)が改善された電極を形成するために用いられる。
本発明の電極は、多くの異なる形状で用いられ得る。
【0041】
本発明の電極は、電気化学プロセスをモニタリングするか、又は測定するための電極として用いられ得る。本電極は、電気化学的電池において、対電極としての基準電極(例えば、甘汞電極又は基準水素電極)と一緒に用いられ得る。本発明の電極と基準電極との間に一定の電位を加えることができ、(反応速度に比例する)電流が、時間の関数として測定される。代替的に、本発明の電極と基準電極との間の電位は、1つのサイクル(例えば、+5Vから−5Vまで、次いで元の+5Vに戻る)の周りに向けられ、次いで、結果として得られる電流又は電流密度は、当該技術分野においてサイクリック・ボルタンメトリー(cyclic voltammetry)として知られている方法によって測定される。他の例において、本発明の2つの電極は、液体に浸漬され、主要作用表面が、互いに平行であり、且つ隣接するような具合に処理される。通常、そのような配列において、主要作用表面は、特定の用途に応じて、1mmから200mmの範囲の距離だけ離される。0.5V〜20Vの間の電位差が、典型的には、それら電極の間に、外部回路によって加えられる。
【0042】
代替的に、電極が、2つの主要作用表面を有する場合、本発明の複数個の電極は、互いに平行に且つ隣接して配列されて、電極スタック(electrode stack)を形成することができる。電極のスタックは、3〜200個の電極を有することができる。スタックにおいて隣接する電極の主要作用表面の間の隔離距離は、典型的には、1mm〜200mmの範囲にある。スタックにおける最初の電極と最後の電極との間に電位差が加えられる。この場合、それら電極の間の空間が、効果的に、直列に置かれて、特定容量を処理する時間が長くなるような具合に、電解されるべき液体が反応器全体を通過するまで、該液体が、第1の電極と第2の電極との間を、次いで、第2の電極と第3の電極との間を、などと曲がりくねったように流れるように、それら電極のスタックを配列することができる。代替的に、それら電極間の空間を、並列の状態で効果的に用いて、処理される液体の容量を増やすことができる。
【0043】
いずれにせよ、第1の電極と第2の電極との間の流れ、及び、第2の電極と第3の電極との間の流れ、その他の流れは、電流に「短絡」を与えない。なぜなら、液体を通る電流路のインピーダンスは、それら電極を通るインピーダンスに比べて実質手により大きくなるように設計されるからである。
本発明の電極は、アノード、カソード、又は双極電極として用いられ得る。好ましくは、本発明の電極は、アノードとして用いられる。代替的に、一様導電性層の領域のみを、電解液(例えば、微小電極アレイの電解液)にさらすことができる。
【0044】
本発明は、本明細書に規定される電極を有する電気化学的電池にも関し、更に、本明細書に規定される電極の検知用途における使用方法にも関する。
本発明の電極は、単純且つコスト効率の良い方法によって製造され得る。この件について、本発明は、電極の製造方法において、(a)ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面を、約1μm以下の表面粗さRに加工処理する工程と、(b)前記基体層の表面にホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層を成長させて、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド電極を作る工程とを含む、製造方法を更に提供する。
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層は、好ましくは、約100μm未満、好ましくは約50μm未満、好ましくは約25μm未満の厚さを有する。
【0045】
基体層は、天然IIbダイヤモンド、高圧高温(HPHT)合成によるIIbダイヤモンド、又はCVDによるホウ素ドープトダイヤモンドであってもよい。好ましくは、基体層は、CVDによるホウ素ドープトダイヤモンドである。
本発明の方法の第1の工程において、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面は、約1μm以下、好ましくは約0.1μm以下、好ましくは約0.05μm以下、好ましくは約0.02μm以下、好ましくは約0.01μm以下の表面粗さRに加工処理される。基体層が合成ダイヤモンドである場合、工程(a)で加工処理される基体層の表面は、通常、該基体層の成長したままの表面である。この工程では、当該技術分野において従来用いられているいかなる技術を使用してもよい。好ましくは、基体層の表面は、機械的に(例えば、スカイフ盤研磨、研磨加工又はラップ仕上げによって)加工処理される。
【0046】
好ましくは、基体層の表面は、約12μm未満、好ましくは約0.1μm未満、好ましくは約0.05μm未満、好ましくは約0.02μm未満、好ましくは約0.01μm未満の表面粗さRに加工処理される。好都合なことに、工程(a)が機械加工処理を含む場合、工程(a)での加工処理の後、及び、工程(b)での成長の前、基体層の表面は、等方性エッチング工程にかけられる。エッチングは、工程(a)の機械加工処理のグリットサイズに基づき、工程(a)の機械的に加工処理済み表面から材料の最小厚さを除去して、機械加工処理それ自体によって生じた損傷が実質的にない表面を提供することを意味する。
【0047】
表面粗さの測定値R及びRは、ダイヤモンドの同一領域で取られる。「同一領域」とは、当該技術分野では知られているように、それら測定値の一般妥当性を検証する必要がある場合、複数個の測定値と統計的解析とを用いて、適度に実用的である程度に接近している相当面積(equivalent area)を意味する。とりわけ、等方性エッチング工程が含まれる場合、等方性エッチングされた基体層の表面は、[(エッチング後の)粗さ]/[(エッチング前の)初期の表面粗さR]が、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.4未満、より好ましくは1.2未満、より好ましくは1.1未満となるような具合に、RとRとを有している。
加えて、エッチング済み表面は、工程(a)の初期に調製された表面と比べてより滑らかであり、とりわけ、好ましくはエッチング済み表面(R)のRは、好ましくは約10nm未満、好ましくは約5nm未満、好ましくは約2nm未満、好ましくは約1nm未満、好ましくは約0.5nm未満、好ましくは約0.3nm未満である。
【0048】
等方性エッチング工程が含まれる場合、好ましくは、除去される材料の厚さは、約0.2μm以上、より好ましくは約0.5μm以上、より好ましくは約1.0μm以上、より好ましくは約2μm以上、より好ましくは約5μm以上、より好ましくは約10μm以上を超える。
【0049】
最後の機械的加工処理のグリットサイズに基づいて、本発明の方法の工程(a)において形成された基体層の、機械的に加工処理済み表面から、エッチングによって材料の最小厚さを除去して、機械的加工処理の損傷を有さない、又は実質的に有さない表面を提供するためには、表面の損傷をかなり減少させるのに十分な深さを除去する必要がある。従って、表面損傷層と同程度の厚さをエッチングすることによって除去する必要がある。典型的には、表面損傷層は、約0.2μm〜約20μmの範囲の(又は、非常に攻撃的な宝石細工技術を用いれば、より厚い)厚さを有する。従って、除去される材料の厚さが、少なくとも約0.2μm、より好ましくは少なくとも約0.5μm、より好ましくは少なくとも約1.0μm、より好ましくは少なくとも約2μm、より好ましくは少なくとも約5μm、より好ましくは少なくとも約10μmである場合、好ましくは、エッチングによって、表面からある厚さの材料が除去される。表面損傷層は、典型的には、工程(a)の機械的加工処理の最終段階を行うために用いられる最大のダイヤモンドグリット粒子の大きさとほぼ同じ厚さを有する。例えば、1〜2μmの大きさのダイヤモンドグリットで表面のスカイフ盤研磨加工された表面は、典型的には、約2μmの厚さの表面損傷層を有するであろう。従って、エッチングの後に残存する、機械的加工処理による損傷の量を最小限に抑えるために、除去される材料の量は、典型的には、最大グリット粒子の大きさの少なくとも0.2倍、より好ましくは最大グリット粒子の大きさの少なくとも0.5倍、より好ましくは最大グリット粒子の大きさの少なくとも0.8倍、より好ましくは最大グリット粒子の大きさの少なくとも1.0倍、より好ましくは最大グリット粒子の大きさの少なくとも1.5倍、より好ましくは最大グリット粒子の大きさの少なくとも2倍である。
【0050】
エッチングの後、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面は、好ましくは、10nm未満、より好ましくは5nm未満、より好ましくは2nm未満、より好ましくは1nm未満、より好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.3nm未満の、エッチング後の表面粗さRを有する。
表面が、エッチングによって形成される場合、エッチングは、ダイヤモンド層の表面全体を横切って、又は、表面の中に、フォトリソグラフィー等の既知技術を用いてエッチングされた構造的特徴のような表面のある割合を横切って伸びる場合があり、表面のこの部分は、次いで、表面それ自体を形成する。
工程(b)において、工程(a)で加工処理された基体層の表面に、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料の第2の層が成長される。好都合なことに、基体層の表面は、工程(a)で加工処理されたのであるから、結果として得られた第2の層は、それの成長したままの表面にホウ素濃度の高一様性を有し、第2の層は、検知用途としてとりわけ有用となる。
好ましくは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層は、CVDによるホウ素ドープトダイヤモンドである。その場合、ホウ素ドープトCVDの基体層は、実質的に結晶欠陥のない表面を有するダイヤモンド基体を提供し、ホウ素源を有する原料ガスを提供し、該原料ガスを解離し、次いで、実質的に結晶欠陥のない表面の基体の上にホモエピタキシャルダイヤモンド成長を可能にすることによって作られることが好ましい。
【0051】
成長しているダイヤモンドの形態を制御するために、原料ガスは、窒素を、約0.5ppm〜約10000ppm、好ましくは約1ppm〜約1000ppm、好ましくは約3ppm〜約200ppmの範囲の量で更に含有することができる。ホウ素源は、Bであってもよい。とは言え、他のガス状、液体/蒸気又は固体の源を用いてもよい。
【0052】
合成プロセスで用いられるガス混合物は、当該技術分野で知られているいかなるガスをも含有することができ、解離してラジカル又は他の反応性種を作る炭素含有材料を含有する。ガス混合物は、通常、原子形態の水素又はハロゲンを作るのに適したガスをも含有する。基体は、通常、合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、又はCVDによるダイヤモンドである。好ましくは、基体は、低複屈折型Ia若しくはIIb天然ダイヤモンド、Ib若しくはIIa高圧/高温合成ダイヤモンド、又は、CVDによる合成単結晶ダイヤモンドである。
基体の欠陥密度は、最適化されたプラズマエッチング又は化学エッチングを用いてそれら欠陥を露呈した後、光学的評価によって最も容易に特徴付けられる。ホモエピタキシャル成長が生じる基体の表面は、約5×10/mm未満、好ましくは約10/mm未満の欠陥に関連する表面エッチングフィーチャー(surface etch features)の密度を有することが好ましい。
【0053】
基体の表面損傷を最小限に抑える1つの特定の方法は、ホモエピタキシャルダイヤモンド成長が生じる表面上でのその場プラズマエッチング(in situ plasma etch)を含むことである。原理的に、このエッチングは、その場(in situ)である必要もないし、成長プロセスの直前である必要もないが、最大の利点は、本エッチングがその場であるとき、達成される。なぜなら、それによって、更なる物理的損傷又は化学的汚染のあらゆる危険性が回避されるからである。その場エッチングはまた、通常、成長プロセスもまたプラズマベースである場合、最も好都合である。プラズマエッチングは、堆積プロセス又はダイヤモンド成長プロセスと類似の条件を用いることができるが、いかなる炭素含有原料ガスも存在しない場合、一般に僅かにより低い温度でエッチング速度のより良い制御が提供される。例えば、より良い制御は、(i)任意的に少量のAr及び必要とされる少量のOと共に主として水素を用いる酸素エッチング。典型的な酸素エッチング条件は、50〜450×10Paの圧力、1〜4容積%の酸素含量、0〜30容積%のアルゴン含量及び残量が水素であるエッチングガス、基体温度は約600℃〜約1100℃(より典型的には、約800℃)であり、典型的な時間は3〜60分である;(ii)(i)に類似するが、酸素は存在しない水素エッチング;又は(iii)アルゴン、水素及び酸素のみに基づかないエッチングのための代替的方法(例えば、ハロゲン、他の不活性ガス若しくは窒素を利用する方法を用いることができる)、の1つ以上から成る。
典型的には、本エッチングは、酸素エッチングを行い、次いで、水素エッチングを行い、次いで、炭素源ガスを導入することによって、直ちに合成に移ることから成る。
エッチング時間/温度は、感光処理によるあらゆる残留表面損傷を除去することができるように、且つ、あらゆる表面汚染物が除去されるように、但し、高度に粗くされた表面を形成することなく、且つ、表面を横切って、深いピットを生じさせる拡張欠陥(extended defect)(例えば、転位)に沿って広範囲にわたってエッチングすることなく、選定される。エッチングは攻撃的であるので、室の設計及び室の構成要素のための材料の選定が、該室のいかなる材料も、プラズマによってガス相にも基体表面にも移動しないようなものであることが、この段階のためには、とりわけ重要である。酸素エッチングの後の水素エッチングは、結晶欠陥にとってそれほど特定的ではなく、(そのような欠陥を積極的に攻撃する)酸素エッチングによって引き起こされる角のある形・輪郭に丸みをつけ、次いで、その後の成長のためにより滑らかで、より良好な表面を提供する。
【0054】
CVDによるダイヤモンド成長が生じるダイヤモンド基体の1つ又は複数の表面は、好ましくは、{100}表面、{110}表面、{113}表面又は{111}表面である。プロセスの制約によって、実際の試料表面の配向は、5°以下、場合によっては、10°以下だけ、これらの配向と異なることがある。とは言え、そのことは再現性に悪影響及ぼすので、これはあまり望ましくはない。
原料ガスの解離は、好ましくは、反応器内でマイクロ波エネルギーを用いて実施される。それの諸実施例は、当該技術分野では知られている。しかし、反応器からのあらゆる不純物の移動は、最小限に抑えられる。ダイヤモンド成長が生じる基体表面、それの取り付け台、基体の運搬体を除くあらゆる表面から、プラズマを確実に離して配置するために、マイクロ波システムを用いることができる。好ましい取り付け台の材料の例は、タングステン、ケイ素及び炭化ケイ素である。好ましい反応器室の材料の例は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、金、及び白金である。
【0055】
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層は、基体層が基体である場合、CVD技術によって、基体層の加工処理済み表面上に成長することが好ましい。CVDによって合成するための詳細は、上述される通りであるが、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面が、異方性エッチング工程にかけられないという重要な例外がある。エッチングが多少なりとも行われれば、それは等方性エッチングである。単結晶ダイヤモンド(好ましくは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド)の1つ以上の更なる層は、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層の表面に成長させることができる。
【0056】
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層(もし存在すれば、及び/又は第3の層、及び/又はそれに続く層)の表面は、(i)未処理の表面;(ii)等方性エッチングが行われた表面;(iii)機械的に加工処理され、次いで、等方性エッチングが行われた表面;(iv)機械的に加工処理済み表面であって、最終工程がスカイフ盤研磨加工(とりわけ、低表面損傷を得るように最適化されたスカイフ盤研磨加工プロセスを用いるもの)である表面;又は、(v)機械的に加工処理済み表面である場合がある。好ましくは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層(及び/又はそれに続く1つ若しくは複数の層)の表面は、(i)未処理の表面;(ii)等方性エッチングが行われた表面;(iii)機械的に加工処理され、次いで、等方性エッチングが行われた表面である。より好ましくは、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層(及び/又はそれに続く1つ若しくは複数の層)の表面は、(i)未処理の表面である。本明細書で用いる用語「約x」は、値xそれ自体を包含するように意図される。
【0057】
以下、請求される保護の範囲を決して限定するようには意図されていない次の諸図面及び実施例に言及することによって、本発明を記述する。
【0058】
図1(a)及び図1(b)は、長方形の電極及び円盤形状の電極を示す。
図2は、本発明の方法の具体例を例示する。
図1(a)は、電気化学的電池で用いることのできる長方形の固体ダイヤモンド電極2を示す。電極2は、第1の主要作用表面4と、第2の主要作用表面6とを有する。
図1(b)は、電気化学的電池で用いることのできる、円盤形状の固体ダイヤモンド電極2を示す。電極12は、第1の主要作用表面14と、第2の主要作用表面16とを有する。
【0059】
図2は、本発明の方法の具体例の概略図である。ホモエピタキシャルCVDによるダイヤモンドを得るための基体として用いるのに適した、成長表面28を有する単結晶ダイヤモンド基体20を調製する。基体20は、成長表面28にほぼ垂直に整列している転位束24を恐らく含むであろう。成長プロセス30を用いて、基体20の表面28に、Bドープト層32を成長させる。成長したままのBドープト層36の表面は、それら転位が、Bドープト層32が成長する間に伝播するにつれて形成される、減少したホウ素の吸い上げパイプ(uptake)44の容積によって生じるピット40を有する。Bドープト層32は、基体20から切り離され、次いで、例えば、ダイヤモンドスカイフ(diamond scaif)を用いて機械的に加工処理されて46、表面(48及び49)を形成する。研磨加工済み表面48上に、薄いBドープト層54を成長させて、電極を完成させる。代替的に、ドープト層54の表面は、等方性エッチング又は機械的加工処理のような更なる加工処理にかけられる。
【実施例】
【0060】
高温/高圧合成によるタイプIbダイヤモンドを、高圧プレスで成長させ、次いで、内層面の欠陥を最小限に抑えるために、レーザーソーイング(laser sawing)、ラップ仕上げ及び研磨加工を用いて、基体として調製し、プラズマエッチングに暴露する方法を用いて、その方法の加工処理によって導入されている欠陥レベルを決定した。このような方法で、基体中に存在する欠陥は、最小限に抑えられた。側面の寸法が約7.65mm×8.25mmであり、厚さが約540μmであり、全ての面が{100}の5°以内である研磨加工済みプレートを作製した。この段階での該プレートの表面粗さRは、1nm未満であった。高温ダイヤモンドろう付けを用いて、タングステン基体上に本基体を取り付けた。
【0061】
取り付けられた基体を、2.45GHzマイクロ波によるプラズマダイヤモンド合成装置の中に導入し、次いで、エッチング・成長のサイクルを開始した。エッチング・成長のサイクルには、次の諸工程が含まれた。
1)約270×10Paの圧力及び約753℃の基体温度で、約10分間、O/Ar/Hの15/75/600sccm(標準立方センチメートル/秒)を用いて、その場酸素プラズマエッチング(in situ oxygen plasma etch)を行った。
2)これは、約758℃の温度で約10分間、ガス流からOが除去される水素エッチングに割り込みされることなく進んだ。
3)これは、約30sccmのCH流れと一緒に、炭素源ガス(この場合、CH)及びドーパントガスを添加することによって、成長プロセスに進んだ。制御を簡単にするためにHに入っている名目上100ppmのBの目盛り付き源を用いて、本プロセスに、BをBとして添加した。Bを添加は、Bについて[B]/[全ガス]{式中、[B]はBのモル数を表し、[全ガス]は存在する全てのガスのモル数を表す}として計算されたppmとして表現される。ガス相のB濃度は、B1.4ppmであった。この段階での基体温度は、成長サイクルの全体にわたって約780℃であった。
4)成長サイクルは、層の厚さが約1mm厚に到達するまで続けられた。
【0062】
成長期間が完了した時、反応器から基体を取り外し、次いで、基体からCVDによるBドープトダイヤモンド層を除去した。本プロセスのこの段階で、CVDによるBドープト層の(001)成長表面は、該表面中に正方形及び八角形のピットを有することを見出すことができた。それピットの相対位置(geometry)は、それら表面が{111}表面及び{110}表面であることを示す。それピットの深さは、非常に変化に富んでいるが、それピットの大部分は、深さが約10〜20μmであった。CVDによるBドープトダイヤモンド層の成長表面の二次イオン質量分析法(SIMS)による測定によって、それらピットから離れた平均B濃度は、約6.2×1018cm−3であることが分かった。それらピット中のB濃度は、実質的により低く、約5×1017cm−3〜約2×1018cm−3の間である。
【0063】
この場合は、B濃度は、ピット中ではより低いが、特定の成長条件によると、逆は真実である場合がある、即ち、B濃度は、ピット中ではより高い。
CVDによるBドープト層は、次いで、機械的手段(スカイフによる研磨加工)によって、約735μmの厚さのプレートに加工処理され、次いで、約5mm×5mmの外側寸法にレーザー切断された。約50倍の倍率の双眼顕微鏡を用いて決定されるとき、目に見えるピットが表面に全く存在しないように、成長表面から十分な材料を除去した。成長表面のRは、より良好であった。即ち、約1nmより小さかった。この段階で、ダイヤモンドビュー(登録商標)器具を用いて成長表面を画像化することによって、ピットは除去されてしまったが、それらピットの位置におけるホウ素濃度は、該表面上の他の場所と比べて、依然として、実質的により低かった。
【0064】
次いで、上記3)に記述される条件と同一の条件を用いて、735μmの厚さのプレートの加工処理された成長表面に、更にBドーピングされた層を成長させる。この第2の成長プロセスは、約2μm成長した後、終了する。転位の柱状噴流(plumes)の頂部におけるピットは、この薄層の表面では成長しないであろうから、この少量の追加的成長は、表面がこれ以上の加工処理を必要としないことを意味する。
ダイヤモンドビュー(登録商標)を用いた、層の試験によって、より高いホウ素濃度の領域は存在しないことが示される。二次イオン質量分析法(SIMS)による測定によって、ホウ素濃度が約5×1018cm−3であること、及び、それらピットの部位の上にある領域において、この値から有意に外れるものはないことが示される。従って、第2の成長層(即ち、導電性層)におけるホウ素の分布は、第1の成長層(即ち、基体層)におけるホウ素の分布に比べてより一様である。
【0065】
本方法で調製された電極は、空間分解サイクリック・ボルタンメトリープローブ(spatially resolved cyclic voltammetry probe)を用いることによって、空間的に一様な電気化学的応答を有することが分かる。この場合、ホウ素がより一様に分布する結果として、導電性層の導電率は、基体層の導電率に比べて、より一様である。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層と、前記第1の表面の上にホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層を有するダイヤモンド材料において、
前記導電性層中のホウ素の分布が、前記基体層中のホウ素の分布に比べてより一様である、ダイヤモンド材料。
【請求項2】
第1の表面を有するホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層と、前記第1の表面の上にホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの導電性層を有するダイヤモンド材料において、前記導電性層の導電率が、前記基体層の導電率に比べてより一様である、ダイヤモンド材料。
【請求項3】
前記基体層は、天然IIbダイヤモンド、高圧高温(HPHT)合成によるIIbダイヤモンド、又はCVDによるホウ素ドープトダイヤモンドである、請求項1又は2に記載のダイヤモンド材料。
【請求項4】
前記基体層は、CVDによるダイヤモンドである、請求項3に記載のダイヤモンド材料。
【請求項5】
前記導電性層は、CVDによるダイヤモンドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項6】
前記基体層は、50μm以上の厚さを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項7】
前記導電性層は、100μm以下の厚さを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項8】
前記基体層中のホウ素の平均濃度は、1018〜5×1021原子/cmの範囲である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項9】
前記導電性層中のホウ素の平均濃度は、1017〜5×1021原子/cmの範囲である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項10】
前記基体層は、1×10−4Ω−1cm−1の導電率を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項11】
前記導電性層は、1×10−4Ω−1cm−1の導電率を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料。
【請求項12】
前記導電性層の露出面は、電極の主要作用面を形成する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のダイヤモンド材料を有する電極。
【請求項13】
請求項12に記載の電極を有する電気化学的電池。
【請求項14】
検出用途における、請求項12に記載の電極の使用方法。
【請求項15】
ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド電極の製造方法において、
(a)ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面を、1μm以下の表面粗さRに加工処理する工程と、
(b)前記のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料の基体層の表面にホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド材料の第2の層を成長させて、ホウ素ドープト単結晶ダイヤモンド電極を作る工程と、
を含む、上記製造方法。
【請求項16】
前記のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの第2の層は、100μm以下の厚さを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)の後で工程(b)の前に、前記のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面の等方性エッチングを行う、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)と工程(b)との間で、前記のホウ素ドープト単結晶ダイヤモンドの基体層の表面の異方性エッチングを行わない、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項19】
前記のホウ素ドープトダイヤモンド材料の基体層は、少なくとも50μmの厚さを有する、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記のホウ素ドープトダイヤモンドの基体層は、天然IIbダイヤモンド、高圧高温(HPHT)合成によるIIbダイヤモンド、又はCVDによるホウ素ドープトダイヤモンドである、請求項15〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記のホウ素ドープトダイヤモンドの基体層は、CVDによるホウ素ドープトダイヤモンドである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記の単結晶ダイヤモンドの基体層は、結晶欠陥を実質的に含有しない表面を有するダイヤモンド基体を提供する工程と、ホウ素の源を含有する原料ガスを提供する工程と、前記原料ガスを解離する工程と、結晶欠陥を実質的に含有しない前記基体表面にホモエピタキシャル成長を行う工程とによって作られる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記の単結晶ダイヤモンドの第2の層は、ホウ素の源を含有する原料ガスを提供する工程と、前記原料ガスを解離する工程と、結晶欠陥を実質的に含有しない前記基体表面にホモエピタキシャル成長を行う工程とによって作られる、請求項15〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記原料ガスは、窒素を更に含有する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ダイヤモンド成長が起こる前記基体表面の上の欠陥に関連する表面エッチングフィーチャーの密度が、5×10/mm未満である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記原料ガスは、窒素を0.5ppm〜10000ppmの範囲の量で含有する、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ホウ素源は、Bである、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ダイヤモンド成長は、{100}表面、{110}表面、{113}表面又は{111}表面で起こる、請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記のホウ素ドープトダイヤモンドの基体層中の平均ホウ素濃度は、1018〜5×1021原子/cmの範囲である、請求項15〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記のホウ素ドープトダイヤモンド材料の第2の層の中の平均ホウ素濃度は、1017〜5×1020原子/cmの範囲である、請求項15〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記基体層中の平均ホウ素濃度は、前記第2の層の中の平均ホウ素濃度よりも大きい、請求項15〜30のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516600(P2010−516600A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546058(P2009−546058)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050214
【国際公開番号】WO2008/090510
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(503458043)エレメント シックス リミテッド (45)
【Fターム(参考)】