説明

高信頼性低損失の中空コアファイバ共振器

【課題】光ファイバジャイロシステムにおいて中空コア光ファイバコイルを接続するための光結合デバイス(20)を提供すること。
【解決手段】例示的な光ファイバジャイロシステムは、再循環器(100)または光集積回路チップ(130)と、第1および第2の端部を有する中空コア光ファイバのファイバコイル(83、22)と、中空コア光ファイバの端部を再循環器または光集積回路チップからある既定の距離で密閉空洞内に保持する結合デバイス(20)とを含む。結合デバイスは、ファイバ端部を適正な位置に強固に保持するためのハウジング(24、26)を含む。このハウジングは、ファイバ端部を受け入れる空洞を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジャイロは、回転軸まわりの回転速度または角速度の変化を測定するために使用されてきた。基本的な従来の光ファイバジャイロ(FOG)は、光源と、ビーム発生デバイスと、このビーム発生デバイスに結合されて、ある領域を取り巻く光ファイバのコイルとを含む。ビーム発生デバイスは光ビームをコイル中に送出し、この光ビームは、光ファイバのコアに沿って時計回り(CW)方向および反時計回り(CCW)方向に伝搬する。多くのFOGは、ファイバの固体ガラスコアに沿って光を伝えるガラスベースの光ファイバを利用する。2つの対向伝搬(例えばCWとCCW)ビームは、回転する閉光路を回って伝搬している間に路長が異なることがあり、この2つの路長の差は回転速度に比例する。
【0002】
共振器光ファイバジャイロ(RFOG)では、対向伝搬光ビームは望ましくは単色(例えば単一周波数)であり、多くの巻数の光ファイバコイルを通り、コイルを通過した光の方向を変えてコイル中に再び戻す(すなわち光を循環させる)ファイバカプラなどのデバイスを用いたコイルを何回も通過して循環する。ビーム発生デバイスは、共振コイルの共振周波数を観測できるように、対向伝搬光ビームのそれぞれの周波数を変調および/またはシフトする。コイルを通るCWおよびCCWの経路それぞれでの共振周波数は強め合う干渉条件に基づいており、そのため、それぞれ異なる回数コイルを横断したすべての光波が、コイル内のどの点でも強め合う干渉をするようになる。この強め合う干渉のために、往復の共振器光路長が波長の整数に等しいときの波長λを有する光波は「共振する」と呼ばれる。コイルが回転すると、時計回りの伝搬と反時計回りの伝搬ではそれぞれ異なる光路長が生じ、それによって共振器のそれぞれの共振周波数間でシフトが生じ、この周波数差は、回転による閉光路の共振周波数シフトと一致するようにCWビームとCCWビームの周波数の差を調整することによって測定できるようなものであり、回転速度を示す。
【0003】
共振コイルの共振周波数を観測できるように対向伝搬光ビームのそれぞれの周波数を変調およびシフトするために、周波数シフタおよび位相変調器がビーム発生デバイス(例えばレーザ光源)と併せて使用されてきた。周波数シフタおよび位相変調器は、特に小規模の応用例の場合、または共振器ジャイロの実施の場合に、経済的に実施するのが困難なことがある。別法として、周波数シフタおよび位相変調器を使用せずに、可変波長レーザを使用して対向伝搬光ビームを導入し共振検出することもできる。しかし、共振検出のために2つ以上の可変波長レーザを使用する場合には、このようなレーザ間の相対的な周波数ノイズは一般に、共振器ジャイロによって検出される回転速度の精度を低下させる角度ランダムウォーク(ARW)の最も大きな原因になる。
【0004】
RFOGでは、光ファイバのガラス材料が、CW経路およびCCW経路の共振周波数をシフトさせ、したがって間違った回転の表示または不正確な回転速度の測定値をもたらす効果を引き起こすことがある。回転速度の測定精度を低下させるガラス媒体由来の異常は、非線形カー効果、誘導ブリユアン散乱(SBS)、偏光誤差、およびレイリー後方散乱誤差により発生することがある。これらの誤差機構はまた、環境の影響を受けやすく、例えば望ましくない温度感受性を生じさせる。対向伝搬光ビームをコイル内で何回も循環させるには反射鏡を使用することができるが、こうすると一般に信号対雑音比が低下する。
【0005】
非線形カー効果は、RFOG内の高い単色光パワーが光ファイバ中のガラスの屈折率を変えるときに発生する。CWビームとCCWビームの強度の不一致により、観測される周波数シフトのバイアスが数度/時の程度で誘起することがある。SBSは、ファイバ共振器の高いフィネスと関連する高い強度がレージングすなわちガラスファイバ内の誘導放出を引き起こすときに発生し、これは一般に、共振周波数の測定において不安定性を大きく助長する。偏光で誘起する誤差は、1本の光ファイバから隣接する光ファイバへ、または同じファイバ内で、光を第2の偏光モードに偶然に結合するファイバカプラにより生じることがある。第2の偏光モードは共振して、回転を測定するために使用される偏光モードの共振線形に非対称性を生じさせることがある。CWビームとCCWビームで第2の偏光モードの周波数は同じでも、その振幅が異なることがあり、それによってCWビームおよびCCWビームの共振周波数の観測結果が、回転の影響を超えて異なることになる。CWビームおよびCCWビームの共振周波数ごとの共振中心の決定が回転速度測定に直接影響を及ぼすので、偏光で誘起する誤差は、RFOGの精度を厳しく制限することがある。レイリー後方散乱誤差は、共振器ジャイロのドリフト速度の源になることがある。ファイバ中のガラスによる、またはファイバの不完全性による後方散乱光が循環光ビームに干渉し、大きなドリフト速度誤差を引き起こす可能性がある。
【0006】
RFOGに中空コアファイバを使用することは、RFOGの従来のファイバ中のガラス内光伝搬による前述の誤差を軽減するために大きな関心の対象になっている。この場合、光は、その大部分が自由空間(例えば真空または空気)中を進むように、中空コアがある光ファイバの中心へと光バンドギャップ効果によって案内され、それにより、ガラスコアファイバ中の光伝搬に由来する回転等価誤差項が大幅に低減する。しかし、本発明が対処する欠点の1つは、ファイバ端部が、長期にわたるとファイバの光損失をもたらし光学特性に影響を及ぼすことがある気体および微粒子による汚染に対して開放されていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光ファイバジャイロシステムにおいて中空コア光ファイバ共振器を接続するための光結合デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な光ファイバジャイロシステムは、再循環器または光集積回路チップと、第1および第2の端部を有する中空コア光ファイバを備えた共振器と、中空コア光ファイバの端部を再循環器または光集積回路チップからある既定の距離で密閉空洞内に保持する結合デバイスとを含む。結合デバイスは、ファイバ端部を適正な位置に強固に保持するためのハウジングを含む。このハウジングは、ファイバ端部を受け入れる空洞を含む。
【0009】
本発明の一態様では、ハウジングはスリーブを含み、結合デバイスは、このスリーブに接続されたガラスプレートを含む。ファイバ端部は、ガラスプレートから100ミクロンよりも大きい距離のスリーブ内の位置に固定される。
【0010】
本発明の別の態様では、ガラスプレートは、反射防止コーティングで部分的にコーティングされる。
本発明のさらに別の態様では、ガラスプレートからの後方散乱が光ファイバに再び入らないように、ガラスプレートの面垂線の平面が光ファイバの長軸に対してある角度に向けられる。
【0011】
本発明のさらに別の態様では、ハウジングは、ガラスプレートに接続されたスリーブの端部と反対側のスリーブの端部に接着されたフェルールを含む。このフェルールは、ファイバコイルを確実に固定して受け入れる。フェルールおよびスリーブはガラスで形成される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態および代替実施形態を添付の図面を参照して以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1−1は、本発明により形成された結合デバイスによって受け入れられた光ファイバコイルの端部の斜視図である。 図1−2は、図1に示されたデバイスの断面図である。
【図2】図1に示されたデバイスの分解組立図である。
【図3】本発明の一実施形態により形成された共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態により形成された干渉型光ファイバジャイロスコープ(IFOG)の構成要素を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1−1、1−2および2は、干渉型光ファイバジャイロスコープ(IFOG)または共振器光ファイバジャイロスコープ(RFOG)に含まれる光学構成要素、あるいは他の、中空コアファイバを使用することに益し、したがって開放端中空コアファイバ22で生じる影響を低減することで利益を得られるはずのどんなデバイスにも含まれる光学構成要素に、中空コアファイバ22の端部を取り付けるための結合デバイス20を様々に示す。
【0015】
デバイス20は、ガラスフェルール24、スリーブ26、およびガラスプレート28を含む。ガラスフェルール24はまた、ガラスキャピラリデバイスであってもよい。ガラスフェルール24は、スリーブ26の第1の端部に取り付けられる。スリーブ26の第2の端部は、ガラスプレート28の一方の側面に取り付けられる。スリーブ26もフェルール24も、くりぬいて作られた空洞を含む。スリーブ26の内部の空洞は、中空コアファイバ22の直径よりもかなり大きい。スリーブ26およびフェルール24は成形され、あるいはガラスから機械加工される。フェルール24、スリーブ26、およびガラスプレート28は、標準的なガラスエポキシまたはハンダなど、いくつかの異なる種類のよく知られた手段のいずれかで取り付けられる。
【0016】
中空コアファイバ22の端部は、中空コアファイバ22の露出端部がガラスプレート28の表面からスリーブ26内部の所定の距離の範囲内に来る位置まで、フェルール24から受け入れられる。一実施形態では、スリーブ26内の中空コアファイバ22の開放端とガラスプレート28の表面との間の距離は、1mmの1/10から2mmの1/10の間であるが、それがどのように使用されるかに応じてそれより大きくも小さくもすることができる。フェルール24のくりぬいて作られた空洞は、接着剤または封止剤が吸い上がらないようにして中空コアファイバ22を中に接着または封止できるように緩和される。したがって、スリーブ26内部の空間は、スリーブ26の第2の端部がガラスプレート28で封止されると密封空洞になる。
【0017】
一実施形態では、中空コアファイバ22の長軸は、ガラスプレートからファイバに入る後方散乱の影響を低減させるために、ガラスプレート28の面の面垂線に対してある角度に向けられる。ファイバの先端はまた、ファイバの端面に対する垂線がファイバの長軸ともはや平行にならないように切断して、ファイバの端部からそれ自体に戻る後方散乱(ファイバを出て行く光による)、または自由空間からガラスプレートの方へ戻るファイバ先端での背面反射入射光をさらに防止することができる。ガラスプレート28は、損失を低くするために片側または両側に反射防止コーティングを有し、それによって後方散乱の影響をさらに低減させる。
【0018】
図3は、本発明の例示的一実施形態による共振器光ファイバジャイロ(RFOG)70の概略図である。一実施形態では、RFOG 70は、光ビームをそれぞれ合成する第1および第2の調整可能光源72、74(例えば可変波長レーザ)と、光ビームをファイバコイル83中に導入する再循環器100を含む共振器75と、共振器75から第1および第2の戻りビームを受け取る第1および第2の光検出器76、78とを含む。共振器75は、ファイバコイル83、結合デバイス20、および再循環器100を有する閉光路である。再循環器100は、非ゼロ透過である高反射率鏡を含むことができる。第1の調整可能光源(例えばレーザ)72によって生成された光ビームは周波数fに調整され、第2の調整可能光源(例えばレーザ)74によって生成された光ビームは周波数f0+Δfに調整される。この2つのレーザ周波数間の相対的な周波数ドリフトおよびジッタは、周波数シフトの、したがって回転速度の測定の精度および安定性に及ぼす影響を最小にするレベルまで、または影響を及ぼさないレベルまで十分に最小化されることが好ましい。これは、電子サーボを用いるレーザ周波数安定化技法によって達成され、この電子サーボは、それらのビート周波数を回転速度に比例する調整可能で安定したオフセットにロックする。調整可能光源(例えばレーザ)72、74のそれぞれは、対応する生成光ビームを正弦周波数変調することができる。さらに、RFOG 70は、調整可能光源(例えばレーザ)72、74からの光ビームの伝搬を共振器75に向け、かつ共振器75からの光を光検出器76、78に向けるための追加の鏡80、82、およびビームスプリッタ86、88を含むことができる。
【0019】
共振器75は、再循環器100に結合された第1および第2の端部を有する中空コア光ファイバコイル84を含む。光ファイバコイル84は、ある領域を取り囲む多くの巻数を有する。再循環器100は、光ビーム(例えばCWおよびCCWの入力光ビーム)を中空コア中に導入し、その光ビームの一部を光ファイバコイル84に通して循環させる。再循環器100は、光ファイバコイル84の一方の端部から出てくる光をファイバコイル84の他方の端部に再導入し、それによって光をファイバコイル84に何回も通して伝搬させる。結合デバイス20(図1、2)は、ファイバコイル84の端部を再循環器100に接続する。結合デバイス20のガラスプレート28は、再循環器に隣接して配置され、あるいは周知の取付け手段、例えばエポキシ、ハンダを用いて再循環器100に取り付けられる。
【0020】
図4は、干渉型光ファイバジャイロ(IFOG)120を示し、これは、中空コア光ファイバコイルを有する光ファイバコイル140と光集積回路チップ130を結合するための結合デバイス20(図1、2)を含む。光源134および光検出器150は、光カプラを介して光集積回路チップ130に光学的に接続される。プロセッサ152は、光検出器150から受け取った信号に基づいて、光集積回路チップ130内の変調器に変調信号および制御信号を送出する。
【0021】
独占的な所有権すなわち独占権が主張される本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲で定義される。
【符号の説明】
【0022】
20 結合デバイス
22 中空コア光ファイバ
24 ハウジング、ガラスフェルール
26 ハウジング、スリーブ
28 ガラスプレート
70 共振器光ファイバジャイロ(RFOG)
72 調整可能光源
74 調整可能光源
75 共振器
76 光検出器
78 光検出器
80 鏡
82 鏡
83 光ファイバコイル
84 中空コア光ファイバコイル
86 ビームスプリッタ
88 ビームスプリッタ
100 再循環器
120 干渉型光ファイバジャイロ(IFOG)
130 光集積回路チップ
134 光源
140 光ファイバコイル
150 光検出器
152 プロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再循環器(100)または光集積回路チップ(130)の少なくとも1つと、
第1および第2の端部を有する中空コア光ファイバを含む光ファイバコイル(83)と、
前記中空コア光ファイバの前記端部の少なくとも一方を前記少なくとも1つの再循環器または光集積回路チップからある既定の距離で密閉空洞内に保持するように構成された、少なくとも1つの結合デバイス(20)とを備えた光ファイバジャイロスコープであって、
前記少なくとも1つの結合デバイスが、前記ファイバ端部を適正な位置に強固に保持するための少なくとも1つのハウジングを含み、
前記少なくとも1つのハウジングが、前記ファイバ端部を受け入れるように構成された空洞、およびスリーブを含み、前記少なくとも1つの結合デバイスが、前記スリーブに接続されたガラスプレートを含み、前記ファイバ端部が、前記ガラスプレートから100ミクロンよりも大きい距離の前記スリーブ内の位置に固定されている、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
前記ガラスプレートが反射防止コーティングで部分的にコーティングされ、前記ガラスプレートの面に対する垂線が、光の後方散乱を低減させるために、前記光ファイバの長軸から実質的にある角度に向けられ、前記少なくとも1つのハウジングがさらに、前記ガラスプレートに接続された前記スリーブの端部と反対側の前記スリーブの端部に接着されたフェルールを含み、前記フェルールが、前記光ファイバを確実に固定して受け入れるように構成され、前記フェルールおよびスリーブがガラスで形成される、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
中空コア光ファイバ(22)の端部を強固に保持するための少なくとも1つのハウジング(24、26)と、
前記少なくとも1つのハウジングに接続されたガラスプレート(28)とを備える光結合デバイスであって、
前記中空コア光ファイバの端部が、前記ガラスプレートからある既定の距離で前記ハウジングの密閉空洞内に保持され、
前記少なくとも1つのハウジングがスリーブを含み、前記ファイバ端部が、前記ガラスプレートから100ミクロンよりも大きい距離の前記スリーブ内の位置に固定され、
前記ガラスプレートの前記面に対する前記垂線が、前記ガラスプレートから前記ファイバに入る後方散乱光の影響を実質的に低減させるために、前記光ファイバの長軸からある角度に向けられ、
前記少なくとも1つのハウジングがさらに、前記ガラスプレートに接続された前記スリーブの端部と反対側の前記スリーブの端部に接着されたフェルールを含み、前記フェルールが、前記光ファイバを確実に固定して受け入れるように構成されている、光結合デバイス。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−288246(P2009−288246A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−128973(P2009−128973)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】