説明

高光学純度のヘテロ環化合物

以下の式(I)の高光学純度のヘテロ環化合物:
【化1】


ここでJはC、N、O、O及びSから選択される;ZはH又はアミノ官能基を保護するための基であり、R3はH又は有機残基を意味し、mは0、1又は2であり、及びnは0、1又は2であり、並びに該ヘテロ環はCH2−COOR3以外の少なくとも一つの置換基で好ましく置換される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、高光学純度のヘテロ環化合物に関する。
いくつかのβ−アミノ酸及びこれらの誘導体が、薬剤として使用できるペプチドの製造において有用である。該β−アミノ酸の具体的な例は、少なくとも一つの窒素を含有するヘテロ環を含む。
活性成分の探索において、薬理的な活性、特にペプチド、ペプチド類似体又はペプチド模倣薬(peptideomimetic)に寄与し、ペプチド又はペプチド類似体の製造方法において使用できる利用可能なアミノ酸群を有することが望ましい。
米国特許3,891,616号は、2−ピロリジン酢酸を含むいくつかの生物学的に活性なペプチドを記載する。この酸のN−Boc誘導体は、ジアゾメタンを用いて天然L−プロリンを処理することにより調製される。
本発明は、潜在的に薬剤として使用できるペプチドの製造において有用な、利用可能な化合物を製造することを目的とする。
【0002】
従って、本発明は、以下の式(I)の高光学純度のヘテロ環化合物に関する:
【化1】

ここで、JはC、N、O及びSから選択され;ZはH又はアミノ官能基を保護するための基であり;RはH又は有機残基を意味し、mは0、1又は2であり、及びnは0、1又は2であり、該ヘテロ環は好ましくは、CH2−COOR以外の少なくとも一つの置換基で好ましく置換される。
高光学純度化合物の表現は、1つの鏡像異性体から主になるキラル化合物を意味するものとして理解される。光学純度(ee)は以下のように定義される:x1>x2の場合ee(%)=100(x1−x2)/(x1+x2);x1及びx2は混合物における鏡像異性体1又は2のそれぞれの含量を表す。
【0003】
表現“有機残基”は、特に、ヘテロ原子、例えば特にホウ素、ケイ素、窒素、酸素及び硫黄原子を含んでも良い直鎖又は分枝したアルキル又はアルキレン基、シクロアルキル基、ヘテロ環及び芳香族系を意味するものと理解される。該有機残基は、二重結合又は三重結合及び官能基を含んでも良い。
該有機残基は、少なくとも一つの炭素原子を含む。多くの場合、有機残基は、少なくとも2つの炭素原子を含む。好ましくは、有機残基は、少なくとも3つの炭素原子を含む。より好ましい様式においては、有機残基は、少なくとも5つの炭素原子を含む。
該有機残基は、一般的に最大で100個の炭素原子を含む。多くの場合、有機残基は最大で50個の炭素原子を含む。好ましくは、有機残基は最大で40個の炭素原子を含む。より特に好ましい様式においては、有機残基は最大で30個の炭素原子を含む。
【0004】
表現“アルキル基”は、1から20個の炭素原子、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含む直鎖又は分枝したアルキル置換基を特に意味すると理解される。該置換基の具体的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert.−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル及びベンジルである。
表現“シクロアルキル基”は、特に、3から10個の炭素原子、好ましくは5、6又は7個の炭素原子の少なくとも一つの飽和した炭素環を含む置換基を意味すると理解される。該置換基の具体的な例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。
表現“アルキレン基”又は“シクロアルキレン基”は、特に、上で定義したようなアルキル基又はシクロアルキル基から誘導された二価の基を意味すると理解される。
【0005】
該有機残基が、1又は任意で1より多い二重結合を含む場合、該有機残基は多くの場合、2から20個の炭素原子、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含む、アルケニル基又はシクロアルケニル基から選択される。該基の具体的な例は、ビニル、1−アリル、2−アリル、n−ブタ−2−エニル、イソブテニル、1,3−ブタジエニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル及びスチリルである。
該有機残基が、1又は任意で1より多い三重結合を含む場合、該有機残基は多くの場合、2から20個の炭素原子、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を含むアルキニル基から選択される。該基の具体的な例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、n−ブタ−2−イニル及び2−フェニルエチニルである。
該有機残基が、1又は任意で1より多い芳香族系を含む場合、該有機残基は多くの場合、6から24個の炭素原子、好ましくは6から12個の炭素原子を含むアリール基である。該基の具体的な例は、フェニル,1−トリル、2−トリル、3−トリル、キシリル、1−ナフチル及び2−ナフチルである。
【0006】
表現“ヘテロ環”は、特に、少なくとも一つがヘテロ原子である、3、4、5、6、7又は8個の原子で形成される飽和又は不飽和の環の少なくとも一つを含む環系を意味するものと理解される。該ヘテロ原子は多くの場合、B、N、O、Si、P及びSから選択される。より頻繁には、ヘテロ原子はN、O及びSから選択される。
該ヘテロ環の具体的な例は、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、ペルヒドロキノリン、ペルヒドロイソキノリン、イソオキサゾリジン、ピラゾリン、イミダゾリン、チアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラン、テトラヒドロピラン及びジオキサンである。
【0007】
上で定義したような有機残基は、官能基で置換されてもよいし、置換されていなくても良い。表現“官能基”は、特に、1のヘテロ原子を含み、又は1のヘテロ原子からなる置換基を意味するものと理解される。該ヘテロ原子は、多くの場合、B、N、O、Al、Si、P、S、Sn、As及びSe及びハロゲンから選択される。より頻繁には、ヘテロ原子は、N、O、S及びP、特にN、O及びSから選択される。
該官能基は、一般的には1、2、3、4、5又は6個の原子を含む。
官能基としては、例えば以下のものが言及できる:ハロゲン、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、アシル基、任意でエステル化されたカルボキシル基、カルボキシアミド基、ウレア基、ウレタン基及び上記のカルボニル基を含む基のチオール化された誘導体、ホスフィン、ホスホネート及びホスフェート基、スルホキシド基、スルホン基、スルホネート基。
【0008】
本発明に従う化合物において、一般式(I)の化合物における置換基Zは、多くの場合アミノ官能基を保護するための基である。これら化合物は、これらがペプチド合成用の中間体であるものとして使用してもよい。
【0009】
Zで表されるアミノ官能基の保護のための基の制限されない例として、特に以下のものが挙げられる:置換され又は置換されていないアルキル又はアラルキルタイプの基、例えばベンジル、ジフェニルメチル、ジ(メトキシフェニル)メチル又はトリフェニルメチル(トリチル)基、置換され又は置換されていないアシルタイプの基、例えばホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル又はフタロイル基、置換され又は置換されていないアラルキルオキシカルボニルタイプの基、例えばベンジルオキシカルボニル、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2−(p−ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、2−(3,5−ジメトキシフェニル)−イソプロピルオキシカルボニル、p−フェニルアゾベンジルオキシカルボニル、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニル又は9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、置換され又は置換されていないアルキルオキシカルボニルタイプの基、例えばtert−ブチルオキシカルボニル、tert−アミルオキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2−メチルスルホニルエチルオキシカルボニル又は2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニルタイプの基、例えばシクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル又はイソボロニルオキシカルボニル基、1のヘテロ原子を含む基、例えばベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニル(トシル)、メシチレンスルホニル、メトキシトリメチルフェニルスルホニル、o−ニトロフェニルスルフェニル又はトリメチルシラン基。
【0010】
これらの基Zのうち、カルボニル基を含む基が好ましい。アシル、アラルキルオキシカルボニル及びアルキルオキシカルボニル基が、より特に好ましい。
好ましくは、該保護基は立体的に大きい。該表現“立体的に大きい”は、特に、少なくとも3個の炭素原子、特には、少なくとも一つが二級、三級又は四級の炭素原子である少なくとも4個の炭素原子を含む置換基を意味するものと理解される。多くの場合、立体的に大きい基は、最大で100個の炭素原子を含み、又は50個の炭素原子さえ含む。アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル又はアラルコキシカルボニル基から選択される保護基が好ましい。tert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基が、最も特に好ましい。
本発明に従う化合物において、JはN、O及びSから有利に選択される。好ましくは、JはO及びSから選択される。
本発明に従う化合物において、n及びmの以下の組み合わせが可能である:m=0及びn=0;m=1及びn=0;m=2及びn=0;m=1及びn=1;m=1及びn=2;m=2及びn=1;m=2及びn=2。特別な態様において、mは1又は2であり、及びnは0又は1である。
【0011】
第一の特定の態様において、m及びnの値は、上記のいずれの組み合せにも対応し、及びJはNである。
第二の特定の態様において、好ましくは、m及びnの値は、上記のいずれの組み合わせにも対応し、及びJはOである。
第三の特定の態様において、好ましくは、m及びnの値は、上記の組み合わせのいずれか一つに対応し、及びJはSである。
【0012】
式(I)の化合物において必須に存在するステレオジエン中心の絶対配置(窒素に関してα−)は、(R)又は(S)であり、それぞれの鏡像異性体は入手可能であり、本発明の方法を用いて、潜在的に生物活性な成分、又は合成のための中間体、特にペプチドの中間体として使用可能である。いくつかのステレオジエン中心が、本発明に従う化合物中に存在する場合、同じ観察結果が、それぞれのジアステレオアイソマーにあてはまる。
【0013】
本発明に従う化合物の具体的な例は、以下の式の一つに対応する:
【化2】

【化3】

式(XIII)の化合物が好ましい。
【0014】
好ましい態様において、本発明に従う化合物は、以下の式(XXXII)に対応するヘテロ環を含む:
【化4】

前記ヘテロ環は、少なくとも一つの置換基Xで置換される。この置換基Xは、多くの場合、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アリル基又はハロゲン化された基から選択される。
メトキシ又はエトキシ基が、アルコキシ基として好ましい。
メチル又はエチル基、特にメチル基が、アルキル基として好ましい。
フッ素化した基が、ハロゲン化した基として好ましい。フッ素化した基は、−F及び−CF3から好ましく選択される。
他の好ましい態様において、Xはカルボニル基である。
【0015】
置換されたヘテロ環を含んだ本発明に従う化合物の具体的な例は、以下の式に対応する:
【化5】

【化6】

【化7】

同じ意味を有する該置換基R、X及びZは、上記の意味である。
【0016】
高光学純度の化合物が式(XXXIII)に対応する場合、該置換基Xは、多くの場合2−、5−又は6−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXIV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−又は5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−又は5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXVI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXVII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXVIII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−、6−又は7−位、好ましくは6−又は7−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XXXIX)に対応する場合、該置換基Xは、多くの場合2−、5−、6−又は7−位、好ましくは6−又は7−位の位置である。
【0017】
高光学純度の化合物が式(XL)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XLI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合3−又は4−位に対応する。
高光学純度の化合物が式(XLII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XLIV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−又は6−位、好ましくは2−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XLV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−又は6−位であり、好ましくは5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XLVI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−又は6−位、好ましくは5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(XLVII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−、又は6−位、好ましくは5−位の位置である。
【0018】
高光学純度の化合物が式(XLVIII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−又は6−位、好ましくは5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(IL)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−又は5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(L)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−又は5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LIII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LIV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−、6−又は7−位、好ましくは5−又は6−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LV)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−位の位置である。
【0019】
高光学純度の化合物が式(LVI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合3−又は4−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LVII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LVIII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合4−又は5−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LIX)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合3−、4−又は5−位、好ましくは3−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LX)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合2−、5−又は6−位、好ましくは2−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LXI)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合3−、4−又は5−位、好ましくは3−又は4−位の位置である。
高光学純度の化合物が式(LXII)に対応する場合、該置換基Xは多くの場合3−、4−、5−又は6−位、好ましくは4−又は5−位の位置である。
【0020】
高光学純度の化合物は、多くの場合単一の置換基Xを有する。該化合物はいくつかの置換基、例えば2つの置換基が付加的な環を形成する環状の化合物におけるものを有しても良い。必要に応じて、脂環式、芳香族又はヘテロ環であっても良いこの付加的な環は、特に置換基Xの定義に従った、1以上の置換基で同様に置換されても良い。
式(XXXIII)から(LXII)の化合物の第一の態様において、上記のように、置換基Xはヘテロ環のヘテロ原子に関してα−位に好ましくは位置しないヒドロキシル基である。この態様において、基Zは好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。本態様の他の好ましい側面において、基ZはHである。
式(XXXIII)から(LXII)の化合物の第二の態様において、上記のように、置換基Xはフッ素(−F)基である。この態様において、基Zは好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。この態様の他の好ましい側面において、基ZはHである。
【0021】
式(XXXIII)から(LXII)の化合物の第三の態様において、上記のように、
置換基Xはメチル基である。この態様において、基Zは好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。この態様の他の好ましい側面において、基ZはHである。
式(XXXIII)から(LXII)の化合物の第四の態様において、上記のように、置換基Xはトリフルオロメチル基である。この態様において、基Zは好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)基である。この態様の他の好ましい側面において、基ZはHである。
本発明に従う化合物において、及び特に上記式(XXXIII)から(LXII)の化合物の態様において、Rは好ましくはHである。
【0022】
本発明は、製造の過程において本発明に従う化合物を用いて得ることができるペプチド又はペプチド類似体にも関する。本発明は、本発明に従う化合物を用いた、ペプチド又はペプチド類似体の製造方法にも関する。
本発明に従う化合物のペプチドカップリングは、自体公知の技術に従って行っても良い。
本発明は、本発明に従う高光学純度の化合物の製造方法にも関しており、該方法は以下に従って、
(a)該化合物のエステル誘導体の鏡像異性体の混合物が、シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼの存在下で加水分解され;又は
(b)活性化したカルボキシル基と反応できる少なくとも一つの官能基を含む誘導体の形態にある、該化合物の鏡像異性体の混合物が以下の方法で処理され、該方法において、
i.鏡像異性体の混合物及び高光学純度のアミノ酸に基づいた試薬を含む反応媒体であって、該試薬におけるアミノ酸の少なくとも一つのアミノ基が保護基を用いて保護され、かつアミノ酸の少なくとも一つのカルボキシル基が活性化されている反応媒体を適切な条件下に置いて、活性化したカルボキシル基と反応できる該官能基と、活性化したカルボキシル基とを反応させてカルボニル結合を形成し;
ii.得られたジアステレオアイソマーの混合物に分離操作を行ってジアステレオアイソマーから主としてなる少なくとも一つの画分を得;
iii.前記画分の少なくとも一部を、保護基が実質的に安定な条件下でカルボニル結合を開裂する工程を行い;
iv.該高光学純度の化合物及び任意で少なくとも一つのアミノ基が保護基を用いて保護されたアミノ酸の高光学純度の誘導体を回収する。
【0023】
本発明に従う化合物の製造方法の特徴(a)は、該方法に従って、及び特にその内容が本出願に参照により取り込まれる、本出願人の名義における特許出願FR03.04219及びPCT/EP2004/003688において述べた条件下で好ましく行っても良い。
本発明に従う化合物の製造方法の特徴(b)は、該方法に従って、及び特にその内容が本出願に参照により取り込まれる、本出願人の名義における特許出願FR03.10582及びPCT/EP2004/052094において述べた条件下で好ましく行っても良い。
【0024】
本発明に従う化合物のラセミ誘導体は、窒素に関してα−位で置換されていない対応したヘテロ環を用いて出発して得ても良く、例えば以下を含む反応順序による:
(a)前記ヘテロ環のn−アシル化誘導体の電気化学的なメトキシル化;
(b)Nα−メトキシル化された誘導体のアリル化、例えば触媒、例えばTiCl4の存在下におけるアリルトリメチルシランのアリル化;
(c)酸化的な開裂、例えばアリル結合のオゾン分解。
【0025】
以下の例は、本発明を説明することを意図するが、しかしながら本発明を制限することはない。
(例1 4−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボメトキシメチル−チオモルホリンの分解)
【化8】

ラセミ性4−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボメトキシメチル−チオモルホリンが、0℃のTHF中で、N−Boc−2−アミノエタンチオールとメチル−4−ブロモクロトネート及びジイソプロピルエチルアミンを反応させることにより得た。該溶液を室温で24時間攪拌した。THFを蒸発させ、及び該残渣をジクロロメタンに溶解した。該有機相を5%NaCl溶液を用いて洗浄し、トリフルオロ酢酸を、N−Bocが脱保護するまで添加した。ジクロロメタンを蒸発させ、該残った物質を、事前の精製を伴うことなくトルエン中で希釈した。トリエチルアミンを添加し、次いで該溶液を加熱した。反応後、トルエンを蒸発させ、該残渣をジオキサン/水混合物に溶解し、次いでLiOHの存在下においてBoc2Oを用いて保護した。
【0026】
300mgのシュードモナスセパシアPSアマノリパーゼ(Pseudomonas cepasia PS Amano lipase)を、10mlの水、2mlの緩衝液pH7(10-1M)及び2mlのTHF中の、551mgのβ−アミノエステル(2.0mmol)の溶液に対して添加した。該温度を20℃で維持し、pHを0.1N水酸化ナトリウム溶液の添加により7で維持した。8.5mlの0.1N水酸化ナトリウムの添加の後、3日間攪拌し、該溶液を濾過した。次いで、濾液を濃縮し、次いで該水性相を10mlのエーテルで3回抽出した。該有機相を合わせ、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発後、220mgのエステルが得られた(収率40%、ee>99%)。該水性相をpH3まで酸性化し、次いで10mlのエーテルで3回抽出した。該有機相を合わせ、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発後、220mgの4−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボキシメチルチオモルホリンが得られた(収率=42%;ee>98%)。
【0027】
(3R)−4−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボキシメチルチオモルホリン
【化9】

1119NO4
M.W.: 261.34


1H NMR(500MHz):
δppm(CD3OD): 1.48(s,9H);2.44(d,J=13Hz,1H); 2.55(d,J=13.7Hz,1H);2.67(td,J=3.3 and 13.3 and 12.6Hz,1H);2.86(m,2H);2.99(dd,J=3.8 and 13.9Hz,1H);3.15(m,1H);4.23(d,J=13.1Hz, 1H);4.88(m,1H)。
【0028】
(3S)−4−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボメトキシメチルチオモルホリン
【化10】

1221NO4
M.W.:275.36


1H NMR(500MHz):
δppm(CD3OD):1.47(s,9H);2.44(d,J=13.2Hz,1H); 2.53(d,J=13.8Hz,1H);2.67(td,J=3.3 and 13.3 and 12.5Hz,1H);2.92(m,2H);2.98(dd,J=3.8 and 13.9Hz,1H);3.15(m,1H);3.68(s,3H);4.22(d, J=12.8Hz,1H);4.88(m,1H)。
【0029】
(例2 L−N−メチル−Phe−(3S)−3−カルボメトキシメチルチオモルホリンの合成)
L−N−メチル−Phe−(3S)−3−カルボメトキシメチルチオモルホリンが、L−N−メチル−Phe−OHと、カルボン酸官能基に対する活性化剤としてのイソブチルクロロホルミエートの存在下においてトリフルオロ酢酸を用いたN−Boc誘導体の脱保護により得ることができる(3S)−3−カルボメトキシメチルチオモルホリンとのカップリングにより得られる。
【0030】
(例3−N−BOC−β−ホモピログルタミン酸の合成)
【化11】

ラセミ化合物であるN−boc−β−ホモピログルタミン酸が、ピログルタミン酸から出発して以下の方法によりピログルタミン酸に基づいて合計で50%の収率において得られた:メタノール中での電気化学的な反応、次いで四塩化チタンによって触媒されたアリルトリメチルシランを用いたアリル化、tert.ブトキシカルボン酸無水物を用いた保護及びRuCl3/NaIO4を用いた酸化。
該ラセミ化合物の酸は、メタノール及び塩化メチレンの混合物中における、ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いてエステル化し、対応するラセミ化合物のメチルエステルを得た。
例1と同じ方法に従い、GCによって決定された95%e.eを有するエステル、及びGCによって決定された96%e.eを有する酸(LXXa)が得られた。
該エステルを鹸化して、酸(LXXb)を得ることができる。
【0031】
(例4−ピペラジン誘導体の合成)
【化12】

ラセミ化合物であるピペラジン誘導体が、0℃のトルエン中でメチル−4−ブロモクロトネート及びトリエチルアミンを添加することにより、ジベンジルエチレンジアミンから出発して得られた。該溶液を室温で48時間攪拌した。蒸発後、該媒体を10%HClを用いて加水分解し、酢酸エチルで抽出した。該水性相をK2CO3を用いてpH7になるまで塩基性化し、次いで酢酸エチルで抽出した。該有機相を油を得るまで蒸発させ、次いでメタノール−HCl 1Nの混合物中で、カーボン上のパラジウムによって触媒された水素化により、対応する生成物が、セライトでの濾過及び蒸発後に得られた。2−クロロベンジルオキシサクシンイミドを用いた選択的な保護が、0℃でK2CO3(2M)を用いてpHを調整し、pH8.5を達成した。次いで、該水性相を、KHSO45%を用いてpH2.5になるまで酸性化し、次いで酢酸エチルで抽出した。該有機相を蒸発させ、黄色の油を得た。
遊離アミンの官能基が、水/ジオキサン中でNa2CO3の存在下で、(2S)−1−トシルピログルタミルクロライドと結合した。約8時間後、該反応をストップした。該媒体を酢酸エチルで抽出し、次いで有機相を蒸発させて固形物を得た。鹸化の後、ジアステレオマーの混合物をHPLCにより分離し、トシル化された誘導体(R)(LXXIa)−及び(S)(LXXIb)をそれぞれ得た。
【0032】
(例5−酸化したピペラジン誘導体の合成)
【化13】

ラセミ化合物である酸化したピペラジンの誘導体が、メタノール中にジメチルマレエートを添加し、該混合物を24時間攪拌し、次いで該媒体を蒸発させて黄色い油を得ることにより、モノベンジルエチレンジアミンから出発して得られた。該遊離アミン官能基を、水/ジオキサン中でNa2CO3の存在下で、(2S)−1−トシルピログルタミルクロライドと結合した。約8時間後、該反応を停止した。該媒体を酢酸エチルで抽出し、次いで有機相を蒸発させて固形物を得た。鹸化の後、該ジアステレオマーの混合物が、HPLCにより分離される。
遊離アミンの官能基が、例4において述べた同じ方法に従ってpTos−Glp−Clと共に結合し、及び同じ鏡像異性体の分離及び収率が得られ、トシル化された誘導体(R)(LXXIIa)−及び(S)(LXXIIb)を得た。
【0033】
(例6−例3−5の化合物に基づいたペプチドの合成)
トリエチルアミンの存在下においてトリメチルシリルシアニドとフェニルアラニンを反応させることにより得ることができる過シリル化されたPhe−OHが、カルボン酸官能基の活性化のため、イソブチルクロロホルミエートの存在下において、例3−5の化合物と共に反応する。
該ジペプチド類は、
(LXXa)−Phe
(LXXb)−Phe
(LXXIa)−Phe
(LXXIb)−Phe
(LXXIIa)−Phe
(LXXIIb)−Phe
が良好な収率において得られる。
【0034】
同じ方法において、例3から5の化合物は、過シリル化したグリシンと反応できる。該対応するジペプチド類、
(LXXa)−Gly
(LXXb)−Gly
(LXXIa)−Gly
(LXXIb)−Gly
(LXXIIa)−Gly
(LXXIIb)−Gly
が良好な収率で得られる。
【0035】
(例7−ペプチド模倣薬(peptidomimetic)の合成)
例6において述べた方法に従って得ることができるLXXIIa−PheのN−ベンジル−基が、水素添加分解により脱保護される。該脱保護されたペプチドは、過シリル化され、N−アセチル−Alaと結合して、対応するペプチド模倣薬(peptidomimetic)を与える。
















【0036】
(例8)
【化14】

Z=BOC及びR=メチルである例8において示される化合物のラセミ化合物であるエステルは、酸化的なオゾン分解が、RuCl3/NaIO4酸化の代わりに使用される違いを有した、例3において述べる方法に従って、対応するN−保護された置換されていないヘテロ環から出発して得ることができる。該ラセミ化合物であるエステルは、例1において述べたようにリパーゼを用いて分離できる。
【0037】
(例9:例8の化合物に基づいたペプチドの合成)
例8において得られた高光学純度のエステルを、例2の技術に従ってN−Boc−Pheと結合して、対応するジペプチド類を良好な収率で得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)の高光学純度のヘテロ環化合物
【化1】

ここで、JはC、N、O及びSから選択され;ZはH又はアミノ官能基を保護するための基であり、R3はH又は有機残基を意味し、mは0、1又は2であり、及びnは0、1又は2であり、並びに該ヘテロ環はCH2−COOR3以外の少なくとも一つの置換基で好ましく置換される。
【請求項2】
JがO及びSから選択される、請求項1に記載する化合物。
【請求項3】
mが1又は2であり、及びnが0又は1である、請求項1又は2に記載する化合物。
【請求項4】
以下の式の一に対応する、請求項1に記載する化合物:
【化2】

【化3】

【請求項5】
以下の式に対応する、請求項4に記載する化合物:
【化4】

(XIII)
【請求項6】
以下の式の一に対応する、請求項1に記載する化合物:
【化5】

【化6】

ここで、Xは置換基を意味する。
【請求項7】
該ヘテロ環が、ヒドロキシル基、アルキル基、アリル基又はハロゲン化された基から選択される少なくとも一つの置換基で置換される、請求項1から6のいずれか1項に記載する化合物。
【請求項8】
該ハロゲン化された基が、フッ素化された基、好ましくは−F及び−CF3から選択される、請求項7に記載する化合物。
【請求項9】
以下の式の一に対応する、請求項1に記載する化合物:
【化7】

【請求項10】
置換基Zがアミノ官能基を保護するための基であり、特にアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル又はアラルコキシカルボニル基である、請求項1から9のいずれか1項に記載する化合物。
【請求項11】
置換基Zが、tert−ブトキシカルボニル(BOC)基である、請求項10に記載する化合物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載する高光学純度の化合物の製造方法であって、
(a)該化合物のエステル誘導体の鏡像異性体の混合物が、シュードモナスセパシア(Pseudomonas cepacia)リパーゼの存在下で加水分解され、又は
(b)活性化したカルボキシル基と反応できる少なくとも一つの官能基を含む誘導体の形態にある、該化合物の鏡像異性体の混合物が以下の方法で処理され、該方法において、
i.鏡像異性体の混合物及び高光学純度のアミノ酸に基づいた試薬を含む反応媒体であって、該試薬におけるアミノ酸の少なくとも一つのアミノ基が保護基を用いて保護され、かつアミノ酸の少なくとも一つのカルボキシル基が活性化されている反応媒体を適切な条件下に置いて、活性化したカルボキシル基と反応できる該官能基と、活性化したカルボキシル基とを反応させてカルボニル結合を形成し;
ii.得られたジアステレオアイソマーの混合物に分離操作を行って、ジアステレオアイソマーから主としてなる少なくとも一つの画分を得;
iii.前記画分の少なくとも一部を、保護基が実質的に安定な条件下でカルボニル結合を開裂する工程を行い;
iv.該高光学純度の化合物及び任意で少なくとも一つのアミノ基が保護基を用いて保護されたアミノ酸の高光学純度の誘導体を回収する、製造方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか1項に記載する化合物を用い、ペプチド又はペプチド類似体を製造する方法によって得ることができるペプチド又はペプチド類似体。

【公表番号】特表2008−515850(P2008−515850A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535152(P2007−535152)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054982
【国際公開番号】WO2006/037775
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】