説明

高分子アクチュエータ装置及び光学絞り装置

【課題】 耐久性や応答性等を考慮した、より適切な動作が実現可能な高分子アクチュエータ装置を提案する。
【解決手段】 高分子アクチュエータ100は、イオン交換樹脂等からなる基材101の表面に、対向電極102、103を含んで構成される。駆動電圧源202からの出力は、電極パッド201を介して電極102、103に印加される。ここで、左側の電極102に負電圧、右側の電極103に正電圧を印加すると、印加電圧により発生する電界により、基材101内の陽イオンや極性分子は陰極側へ移動し、陰極側が陽極側に比べて膨潤し、基材101の先端は図中右側へ変形する。一方、右側の電極103に負電圧、左側の電極102に正電圧を印加すると、前述とは逆に作用し、基材101の先端は図中左側へ変形する。高分子アクチュエータ100は、かかる特性を利用して駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエータ装置及び該高分子アクチュエータ装置を利用した光学絞り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機器、産業用ロボット及びマイクロマシン等の分野において、多種多様な動作原理を応用したアクチュエータが研究開発されている。中でも、イオン流体の様な極性分子を含んだ状態のイオン交換樹脂の表面に電極を形成し、電圧の印加により屈曲変形させる高分子アクチュエータは、その柔軟な駆動様態から人工筋肉と称され、今後様々な分野での応用が期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1には様々な高分子アクチュエータの構成例が開示されている。また、上記特許文献1には、高分子アクチュエータを用いたアプリケーションとして、いくつかの事例が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−282992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高分子アクチュエータは、耐久性や応答性等の観点からその駆動方法やアプリケーションの機構に注意を払わなければならない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐久性や応答性等を考慮した、より適切な動作が実現可能な高分子アクチュエータ装置を提供することを目的とする。また、かかる高分子アクチュエータ装置を利用した光学絞り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る高分子アクチュエータ装置は、高分子材料からなる基材と、基材表面に形成された対向電極とからなる高分子アクチュエータと、高分子アクチュエータに電圧を印加し、高分子アクチュエータの変形に応じて第1の有効状態及び第2の有効状態となる被駆動部とを備える高分子アクチュエータ装置であって、被駆動部が第1の有効状態と第2の有効状態との間を遷移する遷移期間に、被駆動部を変位させるのに必要な駆動電圧を印加することを特徴とする。
【0008】
なお、遷移期間以外では、高分子アクチュエータに電圧は印加されていないことを特徴とすることができる。
【0009】
また、遷移期間以外では、被駆動部が変位開始するために必要な準備電圧を高分子アクチュエータに印加することができる。
【0010】
また、遷移期間内において、高分子アクチュエータが所定の形状に変形した後、第2の有効状態まで電圧を印加し続けることができる。
【0011】
また、被駆動部は、被駆動部と高分子アクチュエータとを連結する連結部材を有し、被駆動部が連結部材を介して第1の有効状態と第2の有効状態とに相互に遷移されることができる。
【0012】
更に、本発明において、連結部材は高分子アクチュエータに結合され、第1の接触部及び第2の接触部を有し、被駆動部を第1の有効状態へ遷移する際、被駆動部に設けられた当接部と第1の接触部が当接し、また被駆動部を第2の有効状態へ遷移する際、当接部と第2の接触部が当接することで、被駆動部を第1の有効状態と第2の有効状態とに相互に遷移させることができる。
【0013】
また、連結部材は被駆動部に結合され、第1の接触部及び第2の接触部を有し、且つ高分子アクチュエータに結合または設けられた当接部を有し、被駆動部を第1の有効状態へ遷移する際、当接部と第1の接触部が当接し、また被駆動部を第2の有効状態へ遷移する際、当接部と第2の接触部が当接することで、被駆動部を第1の有効状態と第2の有効状態とに相互に遷移させることができる。
【0014】
なお、本発明に係る高分子アクチュエータ装置において、更に、被駆動部の状態を保持する保持手段を備え、高分子アクチュエータの変形に応じて被駆動部が第1の有効状態または第2の有効状態へと遷移された際に、被駆動部の当該状態を保持することを特徴とすることができる。
【0015】
また、本発明に係る光学絞り装置は、開口を有する基板と、基板に形成された開口よりも小さな開口を有する羽根と、高分子材料からなる基材と、基材表面に形成された対向電極とからなる基板上に設けられた高分子アクチュエータとを有し、高分子アクチュエータに電圧を印加し、高分子アクチュエータの変形に応じて、開口を有する羽根が駆動され、基板に形成された開口に重なる第1の有効状態と、基板に形成された開口から退避する第2の有効状態に相互に遷移し開口径を変化させる光学絞り装置であって、第1の有効状態と第2の有効状態との間を遷移する遷移期間に、高分子アクチュエータを駆動するのに必要な駆動電圧を印加することを特徴とすることができる。
【0016】
更に、開口を有する羽根の状態を保持する保持手段を備え、高分子アクチュエータの変形に応じて開口を有する羽根が第1の有効状態または第2の有効状態へと遷移された際に、被駆動部の当該状態を保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、耐久性や応答性等を考慮した、より適切な動作が実現可能な高分子アクチュエータ装置を提供することができる。また、かかる高分子アクチュエータ装置を利用した光学絞り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる高分子アクチュエータ装置及びこれを備える光学絞り装置(絞り機構)の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これら実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図7を用いて実施例1について説明する。図1を用いて本発明に係る高分子アクチュエータ装置(以下、適宜「高分子アクチュエータ」とも言う)の駆動形態を説明する。
【0020】
図1は、高分子アクチュエータ100と駆動電圧源202の電気的接続を模式的に示した図である。図1に示す様に、高分子アクチュエータ100は、電界によって移動可能なイオンや極性分子を含有する、イオン交換樹脂等からなる基材101の表面に、無電界メッキ法等で形成された対向電極102及び103よりなる。また、駆動電圧源202からの出力は、電極パッド201を介して対向電極102、103に印加される。
【0021】
図2の(a)及び(b)は、対向電極102、103に正・負の電圧を印加した場合の変形状態を示す図である。図2(a)に示す様に、図中、高分子アクチュエータ100の左側に形成された電極102に負電圧、右側に形成された電極103に正電圧を印加すると、印加電圧により発生する電界により、基材101内の陽イオンや極性分子は陰極側へ移動し、陰極側が陽極側に比べて膨潤し、基材101の先端は図中右側へ変形する。
【0022】
一方、図2の(b)に示す様に、図中、高分子アクチュエータ100の右側に形成された電極103に負電圧、左側に形成された電極102に正電圧を印加すると、印加電圧により発生する電界により、基材101内の陽イオンや極性分子は陰極側へ移動し、基材101の先端は図中左側へ変形する。この様に高分子アクチュエータ100は、印加する電圧により生じる基材101の変形を利用したアクチュエータである。
【0023】
また、高分子アクチュエータ100に印加する正・負の電圧は、変形の方向を決めるパラメータであり、説明では、正の電圧、もしくは、負の電圧を印加した場合についてのみ記載しているが、電圧の正・負の関係を記載とは逆に印加した場合も同様の効果が得られる。
【0024】
次に図3を用いて、本発明に係る高分子アクチュエータ装置100の駆動形態を説明する。本実施例では、高分子アクチュエータ装置100を、開放状態と絞り込み状態の2つの状態を持つ差込型2値絞り装置に適用した例について説明をする。
【0025】
図3は、高分子アクチュエータと絞り機構からなる絞り装置の構成を示し、図4は絞り羽根を拡大して示した図である。
【0026】
図3に示す絞り機構300は、第1の開口部306が形成された基板301と、第2の開口部305、回転軸303、駆動軸304及び切り欠き部307が形成された絞り羽根302と、固定部401、弾性部402及び嵌合部403からなるラッチ機構400と、を含んで構成される。
【0027】
また、高分子アクチュエータ100は、円弧状に成形されており、一端が基板301に固定され、他端は中空楕円形状の連結機構501に結合されている。
【0028】
尚、本実施例では、絞り羽根302と連結機構501が被駆動部であり、連結機構501と駆動軸304が連結部材であり、ラッチ機構400と切り欠き部307が保持手段となる。
【0029】
以下、絞り機構300の動作を説明する。
絞り羽根302は、駆動軸304に駆動力を作用させることで、回転軸303を回転中心として回転動作をする。図3に示す状態では、絞り羽根302は基板301に形成された第1の開口部306を隠す状態になっているので、最終的な開口径は絞り羽根302に形成された第2の開口部305となり、この状態が絞りを絞り込んだ状態である。
【0030】
一方、後述する様に、駆動軸304に駆動力を作用させ、絞り羽根302が基板301に形成された第1の開口部306から退避する位置に回転させた場合、最終的な開口径は基板301に形成された第1の開口部306となり、この状態が絞りを開放させた状態である。
【0031】
また、ラッチ機構400は、固定部401が基板301に結合されており、嵌合部403と絞り羽根302の切り欠き部307を嵌合する事で、絞り羽根302の状態を保持する事が出来る。また、固定部401と嵌合部403は弾性部402で連結されている為、ある程度の駆動力を絞り羽根302に与える事で、嵌合部403と絞り羽根302の切り欠き部307の嵌合がはずれ、絞り羽根302を駆動する事が出来る。
【0032】
また、高分子アクチュエータ100は、先述の様に駆動電圧を印加する事で、円弧の弦長が増減する様に変形する。
【0033】
図3、図5に示す様に、高分子アクチュエータ100の先端には連結機構501が結合されており、駆動軸304と連結されている為、高分子アクチュエータ100を変形させる事で、絞り羽根302を駆動させる事が可能となる。
【0034】
以下、図3、図5乃至図7を用いて、本発明に係る絞り装置の駆動形態の詳細を説明する。図3は先述の様に絞り込みの状態であり、これを第1の有効状態とする。この第1の有効状態は、光学的には撮影が可能な状態である。また、第1の有効状態では高分子アクチュエータ100には電圧が印加されておらず、基材本来の形状(中立形状)である。また、第1の有効状態では、図中、連結機構501の左端に、駆動軸304が配置されており、何ら駆動力は作用していない状態が望ましい。
【0035】
図5は高分子アクチュエータ100に電圧を印加し、弦長が伸張する様に変形させた状態である。高分子アクチュエータ100に電圧を印加し弦長を伸張させる事で、連結機構501が駆動軸304に作用し、絞り羽根302が基板301に形成された第1の開口部306から退避する位置に回転する。この状態を第1の遷移状態とする。実際の第1の遷移状態とは、第1の有効状態において、高分子アクチュエータ100に電圧を印加し、絞り羽根302を回転させ始めた時から始まり、絞り羽根302が基板301に形成された第1の開口部306から退避する位置に回転するまでの期間であり、図5における状態は第1の遷移状態の最終形態を示した図である。この第1の遷移状態は、光学的には撮影が不可能な状態である。
【0036】
図6は開放の状態であり、これを第2の有効状態とする。この第2の有効状態は、光学的には撮影が可能な状態である。また、第2の有効状態では高分子アクチュエータ100には電圧が印加されておらず、基材101本来の形状(中立形状)である。また、第2の有効状態では、図中、連結機構501の右端に、駆動軸304が配置されており、何ら駆動力は作用していない状態が望ましい。
【0037】
図7は高分子アクチュエータ100に電圧を印加し、弦長を短くする様に変形させた状態である。高分子アクチュエータ100に電圧を印加し弦長を短くさせる事で、連結機構501が駆動軸304に作用し、絞り羽根302が基板301に形成された第1の開口部306を隠す位置に回転する。この状態を第2の遷移状態とする。実際の第2の遷移状態とは、第2の有効状態において、高分子アクチュエータ100に電圧を印加し、絞り羽根302を回転させ始めた時から始まり、絞り羽根302が基板301に形成された第1の開口部306を隠す位置に回転するまでの期間であり、図7における状態は第2の遷移状態の最終形態を示した図である。この第2の遷移状態は、光学的には撮影が不可能な状態である。
【0038】
次に、本発明に係る高分子アクチュエータ装置の各構成要素について詳しく説明する。
初めに高分子アクチュエータ100の円弧形状について説明する。
【0039】
図3及び図6に示す様に、高分子アクチュエータ100の中立形状及び基板301に固定させる位置は、第1及び第2の有効状態において、中空楕円形状の連結機構501の長辺方向を軸に考えた場合、駆動軸304の各々の有効状態における位置が連結機構501の中央位置に対して対称な位置になる事が望ましい。この様に高分子アクチュエータ100の円弧形状及び設置位置を設定する事で、絞り羽根302を絞り込む時と開放する時で応答時間を等しくする事が可能になる。
【0040】
次に、連結機構501の形状について説明する。連結機構501は中空楕円形状をしており、この内壁において駆動軸304と接触し、高分子アクチュエータ100の変形に伴う駆動力を絞り羽根302に伝達する。この楕円の長辺方向の長さは、駆動軸304の移動量と等しく(厳密には駆動軸304の変位量に軸の直径を加算した長さ)設定する事が望ましい。この様に連結機構501の形状を設定する事で、有効状態において、駆動軸304は連結機構501の内壁に接触しているが、力は作用していない状態となる。
【0041】
この様に、駆動軸304を連結機構501の内壁に接触させる事で、高分子アクチュエータ100を変形させてから連結機構501が駆動軸304に接触するまでの無駄な時間を無くす事が出来るので、応答時間を短縮する事が可能となる。
【0042】
また、駆動軸304が連結機構501に力を作用させない状態にする事で、絞り羽根302には不必要な力が作用せずに、ラッチ機構400による絞り羽根302の拘束力を低く設定する事が出来る。その為、高分子アクチュエータ100の駆動力を低下させる事が可能となり、また絞り羽根302をラッチ機構400から開放する為に要する時間が短縮され遷移状態に必要となる時間を短縮する事が可能となる。
【0043】
次に、ラッチ機構400について説明する。本実施例では、ラッチ機構400として、弾性力により絞り羽根302を拘束させる機構を用いて説明したが、その他にも電磁力を用いて絞り羽根302を固定する方法や、回転軸303の摩擦を適当に設定する事で絞り羽根302を固定する方法等、様々な形態が考えられる。
【0044】
先述の様に、第1の有効状態、第1の遷移状態、第2の有効状態、第2の遷移状態を繰り返す事で、絞り装置の開放及び絞り込み動作が可能となる。また、時間の観点からすると、通常は、第1の有効状態と第2の有効状態が大半の時間を占め、第1の遷移状態と第2の遷移状態は非常に短い時間である。その為、高分子アクチュエータ100に電圧を印加している時間が非常に短くなり、特性劣化が生じる要因が低減され、耐久性を向上させる事が可能となる。
【0045】
次に、図8乃至図10を用いて、絞り羽根302の位置と有効状態及び遷移状態と高分子アクチュエータ100への印加電圧の関係を説明する。
【0046】
図8は上述した様な最も基本となる使用形態である。図8の(a)及び(b)に示す様に、絞り羽根302が絞り込み位置にあり、高分子アクチュエータ100に電圧が印加されていない間は、第1の有効状態となる。次に高分子アクチュエータ100に電圧を印加する事で絞り羽根302を絞り込み位置から開放位置へ移動させる間は、第1の遷移状態となる。次に絞り羽根302が開放位置に達し、高分子アクチュエータ100に電圧が印加されていない間は、第2の有効状態となる。
【0047】
図9は絞り羽根302が絞り込み位置もしくは開放位置に達した後、確実にその状態を確定する為の猶予期間を設けた場合の使用形態である。
【0048】
図9の(a)及び(b)に示す様に、絞り羽根302が絞り込み位置にあり、高分子アクチュエータ100に電圧が印加されていない間は、第1の有効状態となる。次に高分子アクチュエータ100に電圧を印加する事で絞り羽根302を絞り込み位置から開放位置へ移動させ、更にその状態を確定させる為に設けた猶予期間の間は、第1の遷移状態となる。次に絞り羽根が開放位置にあり、高分子アクチュエータに電圧が印加されていない間は、第2の有効状態となる。
【0049】
猶予期間が必要になる理由を説明する。絞り羽根302が確実に絞り込み位置もしくは開放位置にあり、ラッチ機構400により拘束されているかを調べる為には何らかの検出装置が必要となる。この様な検出装置を設ける為には、相応の設置領域や駆動電源の供給、検出信号の処理が必要となる。そこで、検出装置を持たず、絞り羽根302の状態を時間管理する場合は、この様な猶予期間を設ける事がのぞましい。
【0050】
図10は絞り羽根302を駆動する際、ラッチ機構400から開放される間の遅延を解消する為に、あらかじめ高分子アクチュエータ100に準備電圧を印加する準備期間を設けた場合の使用形態である。
【0051】
図10の(a)及び(b)に示す様に、絞り羽根302が絞り込み位置にあり、高分子アクチュエータ100に電圧が印加されていない間と、高分子アクチュエータ100に準備電圧を印加し、絞り羽根302をラッチ機構400から開放するまでの間は、第1の有効状態となる。ここで、「準備電圧」とは、被駆動部が変位開始するために必要な電圧を言う。次に高分子アクチュエータ100に電圧を印加し変形させる事で絞り羽根302を絞り込み位置から開放位置へ移動させる間は、第1の遷移状態となる。次に絞り羽根302が開放位置にあり、高分子アクチュエータ100に電圧が印加されていない間は、第2の有効状態となる。
【0052】
準備電圧が必要になる理由を説明する。高分子アクチュエータ100の発生力は、電圧を印加後、次第に上昇する特性を持つ。その為、高分子アクチュエータ100の駆動力が、絞り羽根302をラッチ機構400から開放する力に達するまである程度の時間が必要となり、この時間は遅延時間となる。そこで、遅延時間を考慮し、前もって高分子アクチュエータ100に絞り羽根302がラッチ機構400から開放される力を発生させる事で、遅延時間を解消させる事が出来る。この様な方法は、定期的に第1の状態と第2の状態を繰り返す場合や、予め第1の状態から第2の状態に遷移させる時間が判明している場合に効果がある。
【0053】
以上の説明は、高分子アクチュエータ装置として開放状態と絞り込み状態の2つの状態を持つ差込型2値絞り装置を例に説明をしたが、遠点用と近点用の2つの状態を持つフォーカスレンズや、ONとOFFの2つの状態を持つスイッチ等、様々なアプリケーションに応用する事が出来る。
【実施例2】
【0054】
次に、図11を用いて実施例2について説明する。実施例1と同じ部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図11は高分子アクチュエータ100の先端に結合された連結機構501が、コの字形状からなる点において、実施例1と異なる。実施例1での説明同様、連結機構501のコの字形状の長辺方向の長さは、駆動軸304の移動量と等しく設定する事が望ましい。
【実施例3】
【0055】
次に、図12を用いて実施例3について説明する。実施例1と同じ部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図12は絞り羽根302に駆動軸304が2つ設けられており、この2つの駆動軸304aと304bで高分子アクチュエータ100の先端を挟み込んでいる点において、第1及び実施例2と異なる。
【0056】
本実施例では、連結機構501を別段設けていないが、先述の様に駆動軸304を2箇所に設け、その間に高分子アクチュエータ100の先端を配置する事で先述の連結機構501と同様な作用を持たせる事が可能となる。
【実施例4】
【0057】
次に、図13を用いて実施例4について説明する。実施例1と同じ部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図13は高分子アクチュエータ100の先端に結合された連結機構501を中空円形状とする事で、連結機構501に駆動軸304の駆動方向に対するクリアランスが殆ど取られていない点において、実施例1〜3と異なる。
【0058】
本実施例では、絞り羽根302が第1の有効状態及び第2の有効状態にある間、高分子アクチュエータ100には電圧を印加しない点では、先述の実施例と変わりは無い。
【0059】
この様な構成を取る事で、絞り羽根302はラッチ機構400によりその状態を保持される為、高分子アクチュエータ100もその形状に保持される事になる。そして、絞り羽根302の状態を遷移させる場合は、高分子アクチュエータ100により、絞り羽根302がラッチ機構400から開放される力以上の駆動力を与える事で、絞り機構300を駆動する事が可能となる。
【0060】
この様に、本実施例は、高分子アクチュエータ100の駆動力がラッチ機構400の保持力よりも比較的大きく、高分子アクチュエータ100の形状を外力により変形させる力がラッチ機構400の保持力よりも比較的小さい場合に実施可能となる。本実施の形態をとる事で、絞り装置の駆動に伴う、連結機構501の占有領域を縮小する事が可能となり、絞り装置を小型化する事が可能となる。
【0061】
また、絞り羽根302を駆動させるのに必要な高分子アクチュエータ100の変形量も実質上、先述の実施例と比較して半分にする事が可能となる。
【0062】
尚、本実施例では、連結機構501として中空円形状を用いて説明したが、同様の駆動形態となれば、実施例2で示したコの字形状や、実施例3で示した駆動軸304を2つ設ける等、別の形態をとる事が可能である。
【0063】
以上説明したように、本発明では、高分子アクチュエータに対して必要なときにのみ電圧が印加されている。このため、不要なときに高分子アクチュエータに電圧が印加され続ける状態を防止できる。この結果、高分子アクチュエータの耐久性を向上できる。また、高分子アクチュエータは、電圧を印加し続けると、応答性が低下する場合がある。本発明では、高分子アクチュエータに必要なときにのみ電圧が印加されている。このため、高分子アクチュエータの応答性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る高分子アクチュエータ装置は、耐久性や応答性等を考慮した、より適切な動作が実現可能な高分子アクチュエータ装置として有用であり、例えば、光学絞り装置等のアクチュエータとしての利用等に適している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1に係る高分子アクチュエータと駆動電圧源の電気的接続を模式的に示した図である。
【図2】同上実施例に係る対向電極に正・負の電圧を印加した場合の変形状態を示した図である。
【図3】同上実施例に係る高分子アクチュエータと絞り機構からなる絞り装置の構成(第1の有効状態)を示した図である。
【図4】同上実施例に係る絞り羽根を拡大して示した図である。
【図5】同上実施例に係る高分子アクチュエータに電圧を印加し、弦長が伸張する様に変形させた状態(第1の遷移状態)を示した図である。
【図6】同上実施例に係る高分子アクチュエータに電圧が印加されない開放の状態(第2の有効状態)を示した図である。
【図7】同上実施例に係る高分子アクチュエータに電圧を印加し、弦長を短くする様に変形させた状態(第2の遷移状態)を示した図である。
【図8】同上実施例における、絞り羽根の位置と、有効状態及び遷移状態と、高分子アクチュエータへの印加電圧と、の関係(最も基本となる使用形態)を説明した図である。
【図9】同上実施例における、絞り羽根が絞り込み位置もしくは開放位置に達した後、確実にその状態を確定する為の猶予期間を設けた場合の使用形態について説明した図である。
【図10】同上実施例における、絞り羽根を駆動する際、ラッチ機構から開放される間の遅延を解消する為に、あらかじめ高分子アクチュエータに準備電圧を印加する準備期間を設けた場合の使用形態について説明した図である。
【図11】本発明の実施例2について説明した図である。
【図12】本発明の実施例3について説明した図である。
【図13】本発明の実施例4について説明した図である。
【符号の説明】
【0066】
100 高分子アクチュエータ
101 基材
102、103 対向電極
201 電極パッド
202 駆動電圧源
300 絞り機構
301 基板
302 絞り羽根
303 回転軸
304 駆動軸
305 第2の開口部
306 第1の開口部
307 切り欠き部
400 ラッチ機構
401 固定部
402 弾性部
403 嵌合部
501 連結機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなる基材と、
前記基材表面に形成された対向電極とからなる高分子アクチュエータと、
前記高分子アクチュエータに電圧を印加し、前記高分子アクチュエータの変形に応じて第1の有効状態及び第2の有効状態となる被駆動部とを備える高分子アクチュエータ装置であって、
前記被駆動部が前記第1の有効状態と前記第2の有効状態との間を遷移する遷移期間に、前記被駆動部を変位させるのに必要な駆動電圧を印加することを特徴とする高分子アクチュエータ装置。
【請求項2】
前記遷移期間以外では、前記高分子アクチュエータに電圧は印加されていないことを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項3】
前記遷移期間以外では、前記被駆動部が変位開始するために必要な準備電圧を前記高分子アクチュエータに印加することを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項4】
前記遷移期間内において、前記高分子アクチュエータが所定の形状に変形した後、前記第2の有効状態まで電圧を印加し続けることを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項5】
前記被駆動部は、前記被駆動部と前記高分子アクチュエータとを連結する連結部材を有し、前記被駆動部が前記連結部材を介して前記第1の有効状態と前記第2の有効状態とに相互に遷移されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項6】
前記連結部材は前記高分子アクチュエータに結合され、
第1の接触部及び第2の接触部を有し、
前記被駆動部を第1の有効状態へ遷移する際、前記被駆動部に設けられた当接部と前記第1の接触部が当接し、
また前記被駆動部を第2の有効状態へ遷移する際、前記当接部と前記第2の接触部が当接することで、
前記被駆動部を第1の有効状態と第2の有効状態とに相互に遷移させることを特徴とする請求項5に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項7】
前記連結部材は前記被駆動部に結合され、
第1の接触部及び第2の接触部を有し、
且つ前記高分子アクチュエータに結合または設けられた当接部を有し、
前記被駆動部を第1の有効状態へ遷移する際、前記当接部と前記第1の接触部が当接し、
また前記被駆動部を第2の有効状態へ遷移する際、前記当接部と前記第2の接触部が当接することで、
前記被駆動部を第1の有効状態と第2の有効状態とに相互に遷移させることを特徴とする請求項5に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項8】
請求項1に記載の高分子アクチュエータ装置において、
更に、前記被駆動部の状態を保持する保持手段を備え、
前記高分子アクチュエータの変形に応じて前記被駆動部が第1の有効状態または第2の有効状態へと遷移された際に、前記被駆動部の当該状態を保持することを特徴とする請求項6または7に記載の高分子アクチュエータ装置。
【請求項9】
開口を有する基板と
前記基板に形成された開口よりも小さな開口を有する羽根と、
高分子材料からなる基材と、
前記基材表面に形成された対向電極とからなる基板上に設けられた高分子アクチュエータとを有し、
前記高分子アクチュエータに電圧を印加し、前記高分子アクチュエータの変形に応じて、前記開口を有する羽根が駆動され、前記基板に形成された開口に重なる第1の有効状態と、前記基板に形成された開口から退避する第2の有効状態に相互に遷移し開口径を変化させる光学絞り装置であって、
前記第1の有効状態と前記第2の有効状態との間を遷移する遷移期間に、前記高分子アクチュエータを駆動するのに必要な駆動電圧を印加することを特徴とする光学絞り装置。
【請求項10】
更に、前記開口を有する羽根の状態を保持する保持手段を備え、
前記高分子アクチュエータの変形に応じて前記開口を有する羽根が第1の有効状態または第2の有効状態へと遷移された際に、前記被駆動部の当該状態を保持することを特徴とする請求項9に記載の光学絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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