説明

高分子アクチュエータ

【課題】従来の高分子アクチュエータは、高分子アクチュエータ本体を駆動させた場合、封止部材と、高分子アクチュエータ本体の電極とが密着して、摩擦が生じて高分子アクチュエータ本体の動きが阻害されるという課題があった。
【解決手段】複数の電極層を有する薄板状の高分子アクチュエータ本体と、前記高分子アクチュエータ本体を封入するフィルム状の封止部材を有する封止型の高分子アクチュエータであって、前記封止部材は、前記高分子アクチュエータ本体の駆動方向に空間を有するように構成され、前記封止部材には、前記高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、前記封止部材と前記高分子アクチュエータ本体の両面が密着しないよう、流体が封入されていることを特徴とする高分子アクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子アクチュエータに関するものであり、外気を遮断して用いる封止型の高分子アクチュエータに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来の高分子アクチュエータは、図5に示されるように、高分子アクチュエータ本体115および電極125a、125bの全体を包むように被覆する封止フィルム130を有し、前記電極125a、125bに電圧を印加する導電線142の前記電極125a、125bとの少なくとも接続部位が、前記封止フィルム130と前記高分子アクチュエータ本体115との間に保持されている。前記封止フィルム130と前記電極125a、125bとの間、又は、前記封止フィルム130の内部に金属層144が設けられており、封止部材150は、封止フィルム130および金属層144からなる。前記封止部材150は、外気を遮断する性能をもつ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−035682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の高分子アクチュエータは、前記封止部材150と高分子アクチュエータ本体115の電極125a、125bとが密着して、摩擦が生じて高分子アクチュエータ本体115の動きが阻害されるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の高分子アクチュエータは、複数の電極層を有する薄板状の高分子アクチュエータ本体と、前記高分子アクチュエータ本体を封入するフィルム状の封止部材を有する封止型の高分子アクチュエータであって、前記封止部材は、前記高分子アクチュエータ本体の駆動方向に空間を有するように構成され、前記封止部材には、前記高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、前記封止部材と前記高分子アクチュエータ本体の両面が密着しないよう、流体が封入されていることを特徴とする。このことにより、高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体と封止部材が密着しないため、高分子アクチュエータ本体の動きが阻害されない。
【0006】
また、本発明の高分子アクチュエータは、前記封止部材の前記高分子アクチュエータ本体の一面と対向する面が曲面となるよう、前記封止部材が立体的形状とされていることを特徴とする。このことにより、高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体と封止部材が密着しないため、高分子アクチュエータ本体の動きが、さらに阻害されない。
【0007】
また、本発明の高分子アクチュエータは、前記封止部材の前記高分子アクチュエータ本体の一面と対向する内面に、前記高分子アクチュエータ本体の一面と密着することを妨げる形状が形成されていることを特徴とする。このことによっても、高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体と封止部材が密着しないため、高分子アクチュエータ本体の動きが、さらに阻害されない。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子アクチュエータは、高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体と封止部材が密着しないため、高分子アクチュエータ本体の動きが阻害されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の高分子アクチュエータを説明する図である。
【図2】図1のA−A線の断面を説明する図である。
【図3】第1の実施形態の高分子アクチュエータの変形例を説明する図である。
【図4】第1の実施形態の高分子アクチュエータの別の変形例を説明する図である。
【図5】従来の高分子アクチュエータを説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態の例について図を参照しながら詳細に説明をする。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の高分子アクチュエータを説明する図であり、図2は、図1のA−A線の断面を説明する図である。また図3は、第1の実施形態の高分子アクチュエータの変形例を説明する図であり、図4は、第1の実施形態の高分子アクチュエータの別の変形例を説明する図である。
【0012】
図1、図2を用いて第1の実施形態の高分子アクチュエータを説明する。図1に示すように、本実施形態に係る高分子アクチュエータ1は、樹脂フィルム13と取り出し電極部7を含むフィルム状の封止部材4を有している。樹脂フィルム13は、約4μm厚さのポリエチレンであり、封止部材4の周囲は全周にわたって封止されている。樹脂フィルム13の一部は開口部とされており、この開口部には取り出し電極部7が設けられている。取り出し電極部7は、金属箔または金属薄板からなり、絶縁性の接着層15を介して樹脂フィルム13の開口部を塞ぐように接着されており、全体として高分子アクチュエータ本体5を外部環境から遮断している。
【0013】
図2は、図1のA−A線の断面を説明する図である。図2に示されるように、高分子アクチュエータ1は、薄板状の高分子アクチュエータ本体5と、高分子アクチュエータ本体5を封止する封止部材4を有している。高分子アクチュエータ本体5の上下面すなわち封止部材4の接する2つの面には、カーボンなどの材質を含む2つの電極層3が、それぞれに設けられている。一方、封止部材4の電極層3と接する2つの内面には、それぞれの電極層3に対応する位置に取り出し電極部7が設けられており、取り出し電極部7は、樹脂フィルム13の開口部を封止するように、接着層15により、樹脂フィルム13に接着されており、取り出し電極部7と電極層3は、電気的に接続されている。尚、上下の樹脂フィルム13は、絶縁封止部材12により封止されている。また、封止部材4は、高分子アクチュエータ本体5の駆動方向に空間10を有するように構成され、封止部材4には、高分子アクチュエータ本体5が駆動する際に、封止部材4と高分子アクチュエータ本体5の両面が密着しないよう、流体である乾燥空気が封入されている。高分子アクチュエータ本体5が変形に伴い封止部材4も変形するが、封入された乾燥空気によって封止部材4内部の体積が維持されるため空間10がなくなってしまうことはなく、封止部材4と高分子アクチュエータ本体5の両面が密着することを避けることができる。
【0014】
このような高分子アクチュエータ1の構造にすることによって、外気を遮断しながら、高分子アクチュエータ本体5が駆動する際に、封止部材4と高分子アクチュエータ本体5の両面が密着しないため、高分子アクチュエータ本体5の動きが阻害されないようにすることができる。
【0015】
次に、第1の実施形態の高分子アクチュエータの変形例を説明する。図3は、第1の実施形態の高分子アクチュエータの変形例を説明する図である。図3に示される高分子アクチュエータ本体5、電極層3および空間10を有する封止部材4は、図2で説明したものと同様の構造であるが、図3に示されるように、変形例の高分子アクチュエータ1は、封止部材4の高分子アクチュエータ本体5の一面と対向する面14が曲面となるよう、封止部材4が立体的形状とされている。このことにより、高分子アクチュエータ本体5が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体5と封止部材4が密着しないため、高分子アクチュエータ本体5の動きが、さらに阻害されない。
【0016】
次に、第1の実施形態の高分子アクチュエータの別の変形例を説明する。図4は、第1の実施形態の高分子アクチュエータの別の変形例を説明する図である。図4に示される高分子アクチュエータ本体5、電極層3および空間10を有する封止部材4は、図2で説明したものと同様の構造であるが、図4に示されるように、変形例の高分子アクチュエータ1は、封止部材4の高分子アクチュエータ本体5の一面と対向する内面16に、高分子アクチュエータ本体5の一面と密着することを妨げる形状の突起17が形成されている。このことによっても、高分子アクチュエータ本体5が駆動する際に、高分子アクチュエータ本体5と封止部材4が密着しないため、高分子アクチュエータ本体5の動きが、さらに阻害されない。
【符号の説明】
【0017】
1 高分子アクチュエータ
3 電極層
4 封止部材
5 高分子アクチュエータ本体
7 取り出し電極部
10 空間
12 絶縁封止部材
13 樹脂フィルム
14 対向する面
15 接着層
16 対向する内面
17 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極層を有する薄板状の高分子アクチュエータ本体と、前記高分子アクチュエータ本体を封入するフィルム状の封止部材を有する封止型の高分子アクチュエータであって、前記封止部材は、前記高分子アクチュエータ本体の駆動方向に空間を有するように構成され、前記封止部材には、前記高分子アクチュエータ本体が駆動する際に、前記封止部材と前記高分子アクチュエータ本体の両面が密着しないよう、流体が封入されていることを特徴とする高分子アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の高分子アクチュエータにおいて、前記封止部材の前記高分子アクチュエータ本体の一面と対向する面が曲面となるよう、前記封止部材が立体的形状とされていることを特徴とする高分子アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載の高分子アクチュエータにおいて、前記封止部材の前記高分子アクチュエータ本体の一面と対向する内面に、前記高分子アクチュエータ本体の一面と密着することを妨げる形状が形成されていることを特徴とする高分子アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51813(P2013−51813A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188212(P2011−188212)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)