説明

高分子ケトアルデヒド

高分子組成物を生成する方法およびそれを使用する方法が提供される。この方法は、樹脂材料を調製する工程;この樹脂材料の上でアセチル基を形成させる工程;およびケトアルデヒド基を形成するために、スルホキシドおよび酸と、このアセチル基とを反応させる工程を含む、1段階反応を介してこのアセチル基を酸化する工程を包含する。この高分子組成物は、透析治療の間、生理的溶液から、尿素のような、有効な量の1つ以上の成分を除去し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、一般的に、高分子組成物に関する。より詳細には、本発明は、化学結合特性を有する、高分子ケトアルデヒド組成物を作製および使用する方法に関する。
【0002】
一般的に、材料は公知であり、そして例えば、産業的用途、娯楽的用途、治療的用途、診断的用途などを含む、多数の種々の用途のために、流体から成分を除去するために使用される。例えば、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、およびそれらの組み合わせは、代表的に、イオン交換、凝集、または他の適切な機構を通して、産業的プロセスの流れのような種々の異なる水の流れを精製するために使用される。他の材料は、吸収材料として、一般的に公知である。これらのタイプの材料の生理化学的特性によって、吸着(adsorption)、吸収(absorbtion)、化学吸着、化学結合および/または他の適切な機構を通して、流体から適切なタイプの成分を除去し得る。
【0003】
一般的に、重合材料は、当該分野で公知であり、溶液中の、尿素、クレアチニン、タンパク質、アミノ酸、糖タンパク質、および/または他の代謝性廃棄物のような、窒素含有化合物を除去し得る。これらのタイプの材料は、尿素または他の同様の化合物と化学的に結合する官能基を含む。例えば、米国特許第3,933,753号および同第4,012,317号は、尿素と化学的に結合するために機能し得るフェニルグリオキサールを含むアルケニル芳香族ポリマーを開示する。開示されるように、このグリオキサール官能性ポリマーを作製するためのプロセスは、一般的に、ポリ−p−ビニルアセトフェノンの調製を含む。次に、臭化フェナシルが形成される。この後に、フェニルグリオキサール基を形成するための、このポリ−p−ビニルフェナシルハロゲン化物の酸化を含む、別々の工程が続く。例えば、米国特許第3,933,753号の第7欄および第8欄を参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶液中の尿素などを除去し得る重合材料の別の例は、米国特許第4,897,200号に開示されている。この材料は、ニンヒドリンとして一般に公知である、トリカルボニル官能基を含む。この重合材料(P−ニンヒドリン)の一般式を以下に示す:
【0005】
【化1】

このニンヒドリン含有材料は、例えば、上で議論されているグリオキサール含有材料と比較して、より多くの尿素取り込みを生じ得る。しかし、このニンヒドリン生成物は、この反応を実施するために必要な、多数の反応段階に部分的に寄因して、作製に費用がかかる。
【0006】
それゆえ、生理化学的条件下でさえ有効であり得、そして減少したコストで手軽にかつ容易に作製され得る化学結合特性を有し、そして、治療システムのような既存のシステムに容易に適合し得る、改善された方法から作製される高分子組成物を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、高分子組成物に関する。特に、本発明は、化学結合特性を有する高分子組成物を作製および使用する、改良された方法に関する。本発明の高分子組成物は、増加した取り込みレベルで、任意の適切な流体の1つ以上の適切な成分と化学的に結合し得る、高分子ケトアルデヒドを含む。本明細書で使用される場合、用語「高分子組成物」または他の同様の用語は、例えば、合成ポリマー、天然ポリマーなどを含む、1000amuより重い分子量を有する分子のような、巨大分子を意味する。
【0008】
本発明は、高分子組成物を生成するためのプロセスを提供する。この高分子組成物としては、例えば、芳香族ビニルモノマーのようなエチレン性(ethylenically)不飽和化合物の(共)重合体(polymerisate)から適切な転換形態の経路を通して調製された組成物;例えば、芳香族化合物のフリーデルクラフト反応から得られた、ポリ縮合物;天然高分子材料およびその改変体;熱分解によって調製された、炭素または他の適切な高分子生成物のような高分子材料;シリカ、アルミナ、ゼオライト、ケイ酸アルミニウムナトリウムなどのような、無機材料;またはそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、高分子組成物の調製物は、架橋型ポリスチレンから構成された樹脂材料の形成を生じ得る。この高分子組成物は、比較的大きい内部の表面領域を有し得る。
【0009】
本発明のプロセスは、この高分子組成物のアシル化を含む。これは、アシル化ポリスチレン樹脂のような、アシル化型高分子組成物の形成をもたらす。
【0010】
この高分子組成物の酸化は、アシル化の後に行われ、従ってケトアルデヒド基の形成を生じる。本発明の一実施形態では、この酸化は、1段階の反応において行われる。この段階は、ジメチルスルホキシドなどのような酸化溶媒とこのアシル化組成物とを混合させ、反応混合物を形成する工程を含む。臭化水素酸などを含む、ハロゲン水素酸のような酸は、反応混合物に加えられ、従ってこのアセチル基をケトアルデヒド基に転換する。出願人は、本発明のプロセスが、増加する官能性を有する、高分子ケトアルデヒドを生じると考える。これは、例えば、硫黄、窒素、酸素のような自由電子対を有するヘテロ原子を含むアニオン、分子またはラジカル、(例えば、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、β−2 ミクログロブリン様タンパク質、他の類似の代謝性廃棄物、他の適切な生物学的物質および/または他の適切な成分)に関して、この組成物の結合能力を促進し得る。
【0011】
ある実施形態では、本発明の高分子ケトアルデヒドは、ケトアルデヒドを含む。好ましくは、このケトアルデヒドは、フェニルグリオキサールである。ある実施形態では、このケトアルデヒドは、フェニル基およびα−ケトアルデヒド基を有する。
【0012】
本発明の高分子ケトアルデヒド組成物は、生理学的条件下でさえ、種々の異なる用途において、効率的に利用され得る。例えば、本発明の高分子組成物は、有効な取り込みのレベルにおいて、任意の適切な流体から尿素などを除去するために利用され得る。尿素または任意の求核試薬の除去は、この高分子組成物のケトアルデヒドと、1つもしくは両方の尿素の窒素原子、または任意の適切な求核試薬に付随する1つ以上の窒素原子との間の反応性結合による。
【0013】
これは、持続性流動腹膜透析の間に、再利用(例えば、患者の腹膜腔の中へ、患者の腹膜腔を通して、または患者の腹膜腔の外への再循環)される前に、この透析液が再生される、再生透析治療の間に、適用される場合、特に有益であり得る。この点について、本発明の高分子組成物は、再利用する前に、この透析液から、少なくとも尿素の一部、他の適切な代謝性廃棄物、適切な他の生物学的物質などを除去する、任意の適切な方法において適合され得る。本発明の高分子組成物は、透析治療に関する種々の異なる適用および種々の適切な適用、ならびに透析治療に加えてのさらに他の種々の異なる適用および種々の適切な適用において利用され得ることが、理解されるべきである。
【0014】
本発明の利点は、高分子組成物を作製するために、改良された方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の利点は、本発明の実施形態に従って作製された高分子ケトアルデヒドを利用する、改良された材料、デバイス、装置、およびシステムを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる別の利点は、尿素などと化学的に結合し得る、改良された高分子フェニルグリオキサールを提供することである。
【0017】
本発明のなおさらなる別の利点は、生理学的条件下で、尿素などと化学的に結合し得る、改良された高分子材料を提供することである。
【0018】
本発明のそれ以上のさらなる利点は、透析のような医学治療の間に使用される溶液から、尿素などを除去し得る、改良された高分子組成物を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下の発明の詳細な説明および図面の中に記載されており、そして以下の発明の詳細な説明および図面から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般的に、高分子組成物に関する。より詳細には、本発明は、化学結合特性を有するケトアルデヒドを含む高分子組成物のような、高分子組成物を作製および使用する方法に関する。
【0021】
一般的に、本発明のプロセスは、架橋型ポリスチレン樹脂のような、高分子組成物を調製する工程;高分子組成物のアセチル化の工程;およびこのアセチル化型高分子組成物の酸化を介した、ケトアルデヒド官能基の形成の工程を包含する。一般的に、この酸化段階は、以下に説明されるような1段階の反応における、ハロゲン化アセチル基の形成およびその後に続くその酸化によるケトアルデヒド基(例えば、グリオキサール)の形成を含む。出願人は、本発明のプロセスが、上記で議論されたように、溶液中の種々の異なる成分に関して結合特性を有する、ケトアルデヒド官能性高分子組成物を生成し得ると考える。
【0022】
出願人は、本発明のプロセスが、本発明の高分子組成物のフェニル環上のグリオキサールの数に対応する、高い濃度の活性な化学的結合部位をもたらし得ると考える。これはまた、流体から尿素のような、成分を除去することに関して、本発明の組成物の化学反応性を増加させるさらなる効果を有し得る。
【0023】
上で議論されるように、本発明のプロセス段階は、一般的に、以下:1)樹脂材料の調製;および2)樹脂材料のグリオキサール化、のように説明され得る。このグリオキサール化は、アセチル化およびその後の酸化を包含する。本発明のプロセスが、任意の適切な数およびタイプのさらなるタイプの反応段階を含み得ることが、理解されるべきである。例えば、本発明のプロセスは、このケトアルデヒド基以外の化学基を提供するために、この高分子組成物のアルキル化を含み得る。この付加的な化学基は、この高分子組成物に、上で議論されたように、その結合特性を促進するように影響し得る。グリオキサール化およびこの付加的化学基の付与は、例えば、以下で詳細に説明される類似のプロセス段階間を含む、任意の適切な順序で生じ得ることが、理解されるべきである。
【0024】
(樹脂材料調製)
本発明は、種々の適切な樹脂材料を含み得る。一般的に、この樹脂材料は、多孔性重合体構造または非多孔性重合体構造を含み得る。この孔のサイズは、用途に依存して、微小孔〜巨大孔のサイズまで変化し得る。ある実施形態では、この樹脂材料は、任意の適切なポリマーから作製される、多孔性ビーズ材料から構成される。好ましくは、この樹脂材料は、適切な量の架橋剤(例えば、ジビニルベンゼン)と架橋したスチレンのような、架橋型スチレンから作製される。ある実施形態では、この架橋型樹脂材料は、約25重量%以下のこの架橋剤を含む。任意の適切なタイプの材料が、この樹脂材料として使用され得ることが理解されるべきである。例えば、この樹脂材料は、ゲル材料を含み得る。一般的に、これは、有効に非多孔性である重合材料である。
【0025】
本発明のこの樹脂材料は、任意の適切な方法で作製され得、および/または市販されていてもよい。一般的に、架橋型ポリスチレンのビーズは、懸濁重合のような、公知のプロセスに従って作製され得る。代表的な反応では、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンおよび開始剤が、重合安定剤および/または無機安定剤を有する水相を含む反応器に加えられる。微小孔が所望される場合、アルカンのような沈殿剤が、モノマー相に加えられ得る。必要に応じて、トルエンのような溶媒和剤がまた、加えられ得る。また、直鎖状(モノマー可溶性の)ポリマーが、使用され得る。この反応物は、代表的に、攪拌され、適切な温度まで加熱され、重合反応が実行される。
【0026】
この反応ポリマーは、種々の適切な方法において特徴付けられ得る。ある実施形態では、このポリマーのスチレン含有量は、約0.01重量%〜約99.9重量%まで変化し;そしてジビニルベンゼン含有量(代表的には、ジビニルベンゼンおよび3−エチルスチレンの混合物を含む)は、約0重量%〜約90重量%まで変化する。好ましくは、スチレン含有量は、ジビニルベンゼン含有量より多い。ある実施形態では、ジビニルベンゼン含有量は、約0.1重量%〜約20重量%まで変化する。さらなる他のモノマーまたは他のポリマーは、任意の適切な量で、重合の間に存在し得る。例えば、このポリマーは、約0〜約10モル%以上の範囲の量で、親水性モノマーもしくはその前駆物質または疎水性モノマーを含み得る。用途に依存して、本発明の樹脂材料は、任意の適切な孔のサイズ、表面積および分子量を含み得る。
【0027】
(グリオキサール化)
本明細書で使用される場合、用語「グリオキサール化」または他の同様の用語は、グリオキサール基を生成するために、化学的部分を改変することを意味する。例えば、フェニルグリオキサールを生成するために、フェニル環を改変すること。
【0028】
ある実施形態では、このポリスチレン樹脂のフェニル基は、このグリオキサール基を含むように改変される。これは、任意の適切な反応機構、好ましくは、このフェニル環に結合されたグリオキサール基を形成するための、フリーデルクラフト反応を介したアセチル化およびその後のアセチル基の酸化を介して進められ得る。以下で説明されるように、ある実施形態では、この酸化段階は、1段階の反応で、グリオキサール基を生成し得る。ある実施形態では、これは、アセチルハロゲン化物基の形成、およびその後の任意の適切な酸化剤、例えば、スルホキシド、脂肪族スルホキシド(ジメチルスルホキシドを含む)、およびハロゲン水素酸(臭化水素を含む)のような酸を用いた反応を介する、アセチルハロゲン化物基の酸化を含む。
【0029】
(さらなる処理)
上で議論されたような、本発明のプロセスは、アセチル化および酸化の処理段階に限定されないが、任意の適切な数およびタイプのさらなる処理段階を含み得ることが理解されるべきである。例えば、このグリオキサール基以外の化学基は、上で議論されたようにフェニル環に結合され得る。これらの付加的な他の基としては、例えば、電子求引基、立体基、立体効果および電子求引効果の両方を表し得る化学基、電子供与基、ハロゲン基、アルキル基、ならびに/または上記で記載された同様のものが挙げられ得る。
【0030】
付加的な他の化学基は、任意の適切な方法において、このフェニル環に加えられ得る。例えば、アルキル基は、単独でまたは他の反応段階に加えて、代表的なフリーデルクラフト触媒を用いたアルキル化を介して、このフェニル環に加えられ得る。一般的に、アルキルハロゲン化物は、塩化第二鉄または塩化アルミニウムのような、ルイス酸触媒の存在下で、アルキルベンゼンを生成するためのアルキル化ベンゼンとして公知である。また、例えば、塩酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびルイス酸触媒の存在下でアルケンが使用され得る。
【0031】
本発明の高分子組成物は、任意の適切な方法において、滅菌され得る。ある実施形態では、この高分子組成物は、γ線照射を用いて滅菌され得る。一般的には、この組成物は、滅菌の目的に十分な、γ線照射の適切な量または線量に、曝露される。ある実施形態では、本発明の高分子組成物は、滅菌の間、約5Gky〜約50Gkyのγ線照射に曝露される。γ線による滅菌は、任意の適切な方法において実行され得ることが、理解されるべきである。
【0032】
ある実施形態では、本発明の高分子組成物は、ケトアルデヒドを含み、ここで、このケトアルデヒドは、フェニル基およびα−ケトアルデヒド基を含む。この生成された組成物は、以下でより詳細に説明されるような、化学結合特性を示す。この高分子ケトアルデヒドは、水和型形態および/または非水和型形態を含み得る。本発明の実施形態に従う、高分子フェニルケトアルデヒドを表す一般式は、以下:
【0033】
【化2】

のように、提供される。
【0034】
本発明の高分子ケトアルデヒドは、生理的溶液のような溶液から、任意の適切な数、タイプおよび量の成分を効率的に除去し得る。除去について適切な成分としては、自由電子対を有するヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素および酸素)を含むアニオン、分子またはラジカル(例えば、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、他の同様の代謝性廃棄物、他の適切な生物学的物質など)が挙げられ得る。本発明の高分子組成物は、液相、気相、液体と気体の混合した相、超臨界系などの系に存在する、任意の適切な流体の成分と化学的に結合し得ることが理解されるべきである。
【0035】
この化学結合特性によって、本発明の高分子組成物は、生理的条件および/または非生理学条件下の種々の異なる用途に、うまく適合される。ある実施形態では、本発明の高分子ケトアルデヒドは、尿素、クレアチニン、尿酸、および/または他の同様の尿毒性の毒、生物学的物質、タンパク質様物質および/または血液由来の同様のもの、ならびに/または血液を透析するために使用される溶液のような、代謝性廃棄物を除去するために使用され得る。
【0036】
透析治療に関して、本発明は、腎不全を治療するための、種々の異なる透析治療において使用され得る。用語としての透析治療または同様の用語は、この本文の全体を通じて、患者から、廃棄物、毒、および過剰の水分を除去するための任意の治療形態および全て治療形態を含み、かつ包含することを意味されるように、使用される。血液透析、血液濾過および血液濾過透析のような血液治療としては、持続的腎機能代替療法(CRRT)のために使用される、間歇療法および持続的治療の両方が挙げられる。持続的治療としては、例えば、緩慢持続的限外濾過(slow continuous ultrafiltration)(SCUF)、持続的静脈静脈血液濾過(CVVH)、持続的静脈静脈血液透析(CVVHD)、持続的静脈静脈血液濾過透析(CVVHDF)、持続的動脈静脈血液濾過(CAVH)、持続的動脈静脈血液透析(CAVHD)、持続的動脈静脈血液濾過透析(CAVHDF)、持続的限外濾過周期間歇血液透析(continuous ultrafiltration periodic intermittent hemodialysis)などが挙げられる。本発明はまた、例えば、持続携帯型腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis)、自動腹膜透析(automated peritoneal dialysis)、持続的流量腹膜透析(continuous flow peritoneal dialysis)などを含む、腹膜透析の間、使用され得る。さらに、ある実施形態では、本発明は、慢性腎不全または慢性腎疾患を有する患者に対して透析治療を提供する方法において利用され得るが、本発明は、例えば、緊急救命室の設定における急な透析の必要性に対しても使用され得ることが理解されるべきである。しかし、本発明の組成物は、血液透析の他に、生理的および非生理的な種々の異なる用途について効率的に利用され得る。
【0037】
ある実施形態では、本発明の高分子組成物は、上で議論されたような、高分子フェニルグルオキサールを含む。このタイプの高分子組成物は、フェニル基およびフェニル基に結合されたグリオキサール基を含む。
【0038】
グリオキサール基は、直接的または間接的に、フェニル環に、およびその環上の任意の適切な位置に結合され得ることが理解され得る。直接結合される場合、α−ケトアルデヒドのα−炭素原子は、フェニル環の炭素原子に結合され得る。間接的に結合される場合、α−ケトアルデヒドのα−炭素原子は、スペーサー基(例えば、脂肪族基、脂環式基、芳香族基、置換基もしくは非置換基などが挙げられる)を介してフェニル環に結合される。ある実施形態では、このスペーサー基は、メチル、エチル、デシル、フェニル、ナフチルなどのような、1つまたは他の適切な化学基との組み合わせと結合された、メチレン(CH)などのような1〜30原子を有する脂肪族を含む。
【0039】
本発明の高分子組成物および材料は、ケトアルデヒドの他に、種々の他のさらなる成分を含むことが理解される。例えば、本発明は、例えばカリウムを除去するためのイオン交換、酸性度の程度の制御、流体系における接触性の増加などのような、本発明の所望の用途に依存して、親水性基、イオン交換基などを包含し得る。そのために、強酸基もしくは弱酸基またはそれらの塩、強塩基性基もしくは弱塩基性基またはそれらの塩、および/あるいはヒドロキシル基が存在し得る。そのような材料は、必要に応じて、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、炭酸水素イオン、酢酸イオンなどのような、(土類)アルカリ(性)金属イオンについて、予め交換され得る。
【0040】
以下の実施例は、本発明の実施形態に従う高分子組成物を作製する例示的な方法であり、さらに、本発明の実施形態に従って作製された高分子組成物について実施された実験的試験を説明するが、例示であり、限定ではない。
【実施例】
【0041】
(実験1a)
(ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂(0.5〜80% PS/DVB、5μm〜1mm)からのポリビニルアセトフェノンの調製についての一般的手順)
ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂の一部に、1:20〜1:100(w/v)の割合で、ジクロロエタンまたは他の適切な溶媒を加え、所定の時間にわたって、膨張させた。膨張期間の間、この混合物に塩化アセチルを加え得る。この混合物の膨張の間、膨張を促進させるために、加熱し得る。膨張後、樹脂に、1〜10モル当量の塩化アセチルを加え、その後1〜10モル当量の塩化アルミニウムまたは他の適切なフリーデル−クラフト試薬を加えた。この反応を、6〜24時間またはHClガスの放出が停止するまで、50℃〜65℃で加熱した。この樹脂を、濾過によって単離し、アセトン、水、濃HCl、水およびアセトンでリンスした。次いで、この樹脂を、50℃〜80℃にて、減圧下で乾燥した。
【0042】
(実験1b)
(ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂(0.5〜80% PS/DVB、5μm〜1mm)からのポリビニルアセトフェノンの調製についての一般的手順)
ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂の一部に、1:20〜1:100(w/v)の割合で、ジクロロエタンまたは他の適切な溶媒を加え、所定の時間にわたって、膨張させた。膨張期間の間、この混合物に塩化アセチルを加え得る。この溶媒を、樹脂から除去するが、これは乾燥させない。この樹脂を、ジクロロエタンまたは他の適切な溶媒中で、塩化アルミニウムを用いて調製した、1〜10モル当量の塩化アセチル溶液に加えた。この反応を、6〜24時間またはHClガスの放出が停止するまで、50℃〜65℃で加熱した。この樹脂を、濾過によって単離し、アセトン、水、濃HCl、水およびアセトンでリンスした。次いで、この樹脂を、50℃〜80℃にて、減圧下で乾燥した。
【0043】
(実験2a)
(α−ケトアルデヒド ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂(0.5〜80% PS/DVB、5μm〜1mm)の調製についての一般的手順)
ポリビニルアセトフェノン ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂の一部に、1:1〜1:100(w/v)の割合で、DMSO(ジメチルスルホキシド)溶媒を加え、これを所定の時間にわたって膨張させた。膨張の間、この混合物を、膨張を促進させるために加熱し得る。膨張後、48%HBr(Floyd,M.B.ら、J.Org.Chem.1985,50,5022−5027を参照のこと)を、室温でゆっくり加え、その後に、温度を65℃〜95℃に上げ、そしてDMS(ジメチルスルフィド)を、蒸留によって集めた。DMS蒸留の完了後、この反応物を95℃まで加熱するか、またはさらに2〜8時間、還流した。この樹脂を、濾過によって単離し、水およびアセトンで連続的に洗浄した。次いで、この樹脂を、最低でも1.5時間、80℃にて、減圧下で乾燥した。
【0044】
(実験2b)
(α−ケトアルデヒド ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂(0.5〜80% PS/DVB、5μm〜1mm)の調製についての一般的手順)
12gのポリビニルアセトフェノン ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂に、80mLのDMSOを加えた。次いで、臭化水素酸(20mL)を、室温で、穏やかに攪拌しながら加えた。次いで、この温度を、約8時間、85℃まで上げ、その後、この樹脂をDMSO、DMSO/アセトン混合物、アセトンおよび水の中で洗浄した。この樹脂を、乾燥機で60℃にて乾燥させた。
【0045】
(実験3)
(尿素取り込み実験(Batch))
本発明の実施形態に従って作製されたα−ケトアルデヒドポリマーを、60mg/dL濃度に調製された尿素溶液に加えた。α−ケトアルデヒドポリマーと尿素溶液の比率を、1グラムのα−ケトアルデヒドポリマーと100mLの尿素溶液の比率で保ち続けた。一般的に、約500mgのα−ケトアルデヒドポリマーを、シールしたパイレックス(登録商標)(pyrex)ボトルの中の50mLの尿素溶液に加え、37℃で、8時間混合する。フラスコの内容物を冷却し、次いで、溶液の尿素濃縮物を、以下で述べる実験4によって測定する。
【0046】
(実験4)
(ウレアーゼ法による尿素の測定)
水溶性サンプル由来の尿素濃縮物を、Boehringer Mannheim/Hitachi分析機で、TALKEおよびSCHUBERTの方法(Talke HおよびSchubert GE.,Klin Wschr.1965;43:174を参照のこと)に従って、測定した。
【0047】
(実験5)
(COCHO定量化)
α−ケトアルデヒド基の定量化を、公知の手順によって決定した(例えば、米国特許第4,012,317号;Acta Chem.Scand.,4,892−900(1950);およびJ.Am.Chem.Soc.,94,1434−1436(1942)を参照のこと)。この方法は、過剰の水酸化ナトリウムを用いて、まず全てのα−ケトアルデヒドをマンデル酸基へと転換することによってα−ケトアルデヒド含有量を測定する、間接的な方法である。マンデル酸基のmmoleを、塩酸を用いる、過剰な塩基のpH7への逆滴定によって決定し、使用した塩基の量と滴定した量の間の相違を計算した。
【0048】
100mgの樹脂に、攪拌しながら、3mLのDMSOおよび3mLの0.5N NaOHを加えた。15分後、10mLの蒸留水を加え、その後、この溶液が、pH7で安定するまで、0.1N HClを用いた滴定によって、水酸化ナトリウムを中和した。
【0049】
(実験6)
(ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂(0.5〜80% PS/DVB、5μm〜1mm)のアルキル化についての一般的手順)
ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂の一部に、1:1〜1:100(w/v)の割合で、ジクロロエタンまたは他の適切な溶媒を加えた。この混合物に、溶媒に対して0.1%〜10%のニトロメタン(v/v)を加え、その後に、0.1モル〜10モル当量のハロゲン化アルキルを加えた。この混合物を、所定の時間にわたって、膨張させ、AlCl(樹脂の0.1〜10モルパーセント)を加えた。この混合物を、周囲〜50℃までの範囲の温度で、2〜4時間攪拌した。このアルキル化樹脂を濾過によって単離し、溶媒でリンスした。α−ケトアルデヒドアルキルポリマーを調製するためのアセチル化および酸化を、上で議論した実験1bおよび2のように完了した。樹脂による尿素の取り込みを完了させ、そして上で議論したように実験3および4によって測定した。
【0050】
(実験7)
(α−ケトアルデヒド ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂ビーズ(実験1aによって、3% PS/DVB、5μm〜1mm))
塩化アセチル(10mL)、75mLのジクロロエタン、および10.918gの樹脂ビーズを、合わせて、膨張させた。この樹脂ビーズは、市販されており、5μm〜1mmまでの範囲の粒子の大きさの3重量%のジビニルベンゼンを含む。この溶媒および塩化アセチルを濾過し、この樹脂を100mLのジクロロエタン、12mLの塩化アセチルおよび15.310gのAlClと合わせた。この反応物を、6時間加熱し、そしてこのアセチル化型ポリマーのビーズを、濾過によって単離し、500mLの水および200mLのアセトンで洗浄した。このビーズを風乾させた。6.200グラムのこのアセチル化型ポリマーのビーズを、150mLのDMSOに加え、そして80℃まで加熱し、その後で、48%のHBrを滴下した。この反応物を、3時間加熱し、そしてこの樹脂を濾過によって単離し、200mLの水および200mLのアセトンでリンスした。風乾後、1グラムの樹脂につき47.3mgの尿素の取り込み値を、上で議論した実験3および4に従って得た。
【0051】
(実験8)
(α−ケトアルデヒド ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂ビーズ(実験1aによって、70〜80% PS/DVB))
100gの湿ったポリスチレン樹脂ビーズ(Supelco,Amberlite XAD−4)を、この樹脂ビーズの中のTHFを抽出することによって、乾燥させた。この樹脂ビーズは、市販されており、5μm〜1mmまでの範囲の粒子の大きさで、70重量%〜80重量%のジビニルベンゼンを含む。次いで、樹脂ビーズを、2×150mLのジクロロエタンでリンスした。この樹脂ビーズを、300mLのジクロロエタンおよび50mLの塩化アセチルを用いて膨張させた。この溶液をデカントし、100mLの塩化アセチルを加えた500mLの新しいジクロロエタンを、この樹脂と合わせ、その後147.38gのAlClと合わせた。この反応物を、48時間、42℃まで加熱した。この樹脂を濾過によって単離し、3〜5時間にわたって750mLの濃HClを含む4Lの水でリンスした。この樹脂を2Lの水でリンスした後、1LのDMSOでリンスした。この樹脂ビーズを、500mLのDMSOおよび200mLの48%HBrが入った反応フラスコに移した。この混合物を、加熱して還流し、24時間混合させた。この樹脂ビーズを、濾過によって単離し、2時間にわたって4Lの水でリンスし、3時間、減圧下で80℃にて乾燥させた。乾燥後、1グラムの樹脂につき8.8mgの尿素取り込み値を、実験3および4によって行ったようにして得た。
【0052】
(実験9)
(α−ケトアルデヒド ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマー樹脂ビーズ(実験1bによって、PS/1%DVB))
40mLのジクロロエタンおよび15mLの塩化アセチルを入れた、乾燥させておいた300mL三口フラスコに、このポリマー樹脂ビーズ(2.5g)を3時間にわたって入れることによって、ポリスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマーのビーズの調製を達成した。この膨張させたポリマーを、過剰のジクロロエタンでリンスし、濾過によって単離した。300mLフラスコの別々の乾燥した丸底に、25mLのジクロロメタン、7gのAlCl、および4.5mLの塩化アセチルを加えた。この混合物を溶解させ、その後に予め膨張させた樹脂を加えた。この混合物を、一定に攪拌しながら、14時間、65℃〜75℃で反応させた。この樹脂を濾過によって単離し、以下の手順によってリンスした。最初に300mLのジクロロメタン、400mLのアセトン、300mLの水、90mLの濃HClを加えた300mLの水、600〜800mLの水、そして最後に150mLのアセトン。このアセチル化型ポリマーを、減圧下で乾燥した。このアセチル化型樹脂を、30mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)が入った250mLフラスコに移し、30〜45分間、80〜90℃で浸した。この反応物に、10mLのHBrを滴下し、2時間加熱した。この反応物を、さらに2時間還流させ、冷却し、DMSO、水、アセトンでリンスし、濾過によって単離した。このα−ケトアルデヒド PS/1%DVBポリマービーズを、減圧下で乾燥させた。実験3および4に従って、1グラムのα−ケトアルデヒドポリマーにつき45mgの尿素の尿素取り込みを有した。
【0053】
(実験10)
(ポリアセトフェノンを生成するための1% PS/DVBビーズのアセチル化の拡大)
このポリマー樹脂ビーズを、600mLのジクロロエタン、200mLの塩化アセチル、および45gのポリマーを入れた、乾燥させておいた1Lの三口フラスコに入れることによって、ポリスチレン−ジビニルベンゼン(1% PS/DVB、75〜150メッシュ)コポリマービーズの調製を達成した。3時間後、このポリマー樹脂を、濾過によって単離し、過剰のジクロロエタンで洗浄した。乾燥させた1Lフラスコの丸底に、500mLのジクロロエタン、146gのAlCl、および100mLの塩化アセチルを加えた。この混合物を溶解させ、その後、65〜75℃で、100mLのジクロロエタンを加えた。予め膨張させた樹脂を、この溶液にゆっくり加え、穏やかに攪拌しながら14時間にわたって65〜75℃で反応させた。この樹脂を濾過によって単離し、そしてジクロロエタンでリンスした。この樹脂を、600mLのジクロロエタン、過剰のアセトンおよび23%のHCl溶液を用いて洗浄し、濾過によって単離した。500mLのアセトンを用いた最後の洗浄の前に、この最後の水のリンスが、中性pHであることを確認した。
【0054】
(実験11)
(α−ケトアルデヒド 1% PS/DVBビーズの調製)
乾燥させた2Lの三口丸底フラスコに、240mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)および実験10からの16グラムのアセチル化型樹脂を加えた。この反応混合物を、緩やかに攪拌しながら、80℃〜90℃で、45〜60分間、混合させた。この混合物に、2時間にわたって、ジメチルスルフィドを蒸留しながら、80mLの48%臭化水素酸を加えた。この反応物をさらに2時間還流させた。この反応物を、冷却させ、そしてα−ケトアルデヒド1%PS/DVBビーズを、濾過によって単離し、水およびアセトンで、連続して洗浄した。次いで、最低で1.5時間、減圧下で、80℃にて、この樹脂を乾燥させた。このα−ケトアルデヒド PS/1%DVBポリマービーズを減圧下で乾燥させ、実験3および4に従って、1グラムのα−ケトアルデヒドポリマーにつき39.6mgの尿素の尿素取り込みを有した。
【0055】
(実験12)
(尿素取り込み試験I)
様々な量のDVBを有する、いくつかのポリスチレン樹脂ビーズを、実験3および4に従う尿素取り込み結果を伴う、実験7、8および9に従って調製した。この結果を以下の表1に示す。
【0056】
【表1】

(実験13)
(α−ケトアルデヒド樹脂のγ線照射)
この実験を、尿素取り込みに対する、γ線の効果を決定するために行った。本発明の実施形態に従って作製した樹脂材料を、実験3および4に従って樹脂1グラムにつき、43.8mgの尿素取り込み値を有すると決定した。この同じ樹脂材料を、約40Gky〜約50Gkyのγ線照射に曝露し、樹脂1グラムにつき43.6mgの尿素の尿素取り込み値を、実験3および4に従って得た。
【0057】
(実験14)
(尿素取り込み試験II)
50mLの505.8mg/dLの尿素溶液に、実験10と同様に調製した0.507gのα−ケトアルデヒドポリマーを加えた。この混合物を、パイレックス(登録商標)ボトルの中に入れシールし、24時間攪拌しながら50℃まで加熱した。この尿素濃度を、実験4に従って測定し、そして、このα−ケトアルデヒドポリマーは1グラムのα−ケトアルデヒドポリマーにつき、109mgの尿素の尿素取り込みを有した。
【0058】
(実験15)
(尿素取り込み試験III)
実験9と同じように調製された、このα−ケトアルデヒドポリマーによる尿素取り込みを、米国特許第4,012,317号に記載の実施例11〜15における手順に従って測定した。100mgのポリマーおよび15mLの1g/Lの濃度の尿素水溶液、0.05モル濃度のリン酸一カリウム(pH7)または炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムのpH10の0.05モル/Lの溶液のいずれかと混合させた。シールしたボトルの内容物を、二連で調製し、平均された結果のサンプルを用いて、37℃にて、15時間混合した。尿素取り込みを、実験4に従って測定した。この結果を以下の表2に示す。
【0059】
【表2】

1.実験9に従って調製されたα−ケトアルデヒドポリマー。
2.米国特許第4,012,317号の実施例3に従って調製されたα−ケトアルデヒドポリマー。
【0060】
(実験16)
(尿素取り込み試験IV)
実験9において調製されたα−ケトアルデヒドによる尿素取り込みを、米国特許第4,012,317号の実施例5に記載の手順によって測定した。25mgのα−ケトアルデヒドポリマーを、5mLの1mol/lの濃度の尿素水溶液、ならびに0.05モル濃度のリン酸一カリウム(pH7)または炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムのpH10の0.05mol/Lの5mLの溶液のいずれかを含む、5mLの溶液と合わせた。このシールしたパイレックス(登録商標)ボトルの内容物を、37℃で、15時間混合させ、濾過し、そして水の20mLアリコートを用いて、10回洗浄した。次いで、この樹脂を減圧下で乾燥させた。α−ケトアルデヒドポリマーの中の尿素を、元素分析によって、窒素のパーセントとして測定した。表3の結果は、以下に示すように、米国特許第4,012,317号において調製された、α−ケトアルデヒドポリマーからの結果の比較を提供する。
【0061】
【表3】

1.実験3および4に従って1グラムのポリマーにつき47.3mgの尿素の尿素取り込みを有する、実験9に従って調製されたα−ケトアルデヒドポリマー。
2.米国特許第4,012,317号の実施例3に従って調製されたα−ケトアルデヒドポリマー。
3.米国特許第4,012,317号の実施例6からの尿素取り込みに基づく窒素パーセント値。
【0062】
上記で記載のように、本発明は、本発明の実施形態に従って作製された、高分子ケトアルデヒド組成物を利用し得る材料、デバイス、装置およびシステムを提供する。本発明の高分子組成物は、特に、例えば、透析治療の間使用される溶液から生理学条件下で、尿素などを除去するのに適している。本発明の結合材料は、例えば、フェニル環、α−ケトアルデヒド基、および必要に応じて、α−ケトアルデヒド基に近接するフェニル環と結合された1つ以上の活性化化学基を含むように改変されている、架橋型ポリスチレンから構成される多孔性ビーズ材料を含む任意の適切なタイプの材料を含み得る。ある実施形態では、本発明の尿素結合材料は、透析治療の間の透析流体のような流体から尿素を除去し得る。
【0063】
ある実施形態では、本発明は、溶液中の尿素を除去する、本発明の実施形態に従って作製された尿素結合材料を利用するデバイスを包含する。一般的に、このデバイス10は、図1に示されるように、流体が、入り口16を通ってデバイス10を通過し得、そして必要に応じて、出口18を通り、このデバイスの外に流し出す、内部14を定義する本体12を備える。このデバイス10は、その内部14の中で、本発明の尿素結合材料20を含む。このデバイス10は、例えば、層になった配置のように、任意の適切な方法において、この尿素結合材料を含み得る。この流体がこのデバイスを通って通過する間、この尿素結合材料が、流体から尿素を除去するように作用する。
【0064】
適用される場合、このデバイスは、特に、透析治療の間、透析溶液から尿素を除去するのに適している。ある実施形態では、このデバイスは、持続的流量腹膜透析のような透析治療の間、分析物が、患者の中へ、患者の中を通って、および患者の外へと循環される、患者ループと任意の適切な方法で連結された化学的カートリッジを備える。この点について、この患者へ、患者の中を通って、患者の外への循環より前に、このデバイスを頻繁に通過する場合、このデバイスは、この透析溶液から治療に有効な尿素の量を除去するために使用され得る。これは、透析クリアランスを高め得、そして透析治療の間、有効なクリアランスレベルを維持するために必要な透析流体の量を最小化し得る。ある実施形態では、この尿素結合デバイスは、透析のような医学治療の間に使用される溶液から尿素を除去し得る。有効な尿素取り込みを達成するために、ある実施形態では、このデバイスは、本発明の実施形態に従って作製された、約500g以下の高分子材料を含む。
【0065】
この化学的カートリッジは、治療を促進させるために、尿素結合材料の他に、任意の適切な数、タイプおよび量の材料を含み得る。例えば、この化学的カートリッジは、クレアチニン、β2−ミクログロブリンなどの除去のための炭素層、リン酸塩などを除去するための材料層、および尿素などを除去するための尿素結合材料を包含し得る。
【0066】
上で議論されたように、本発明は、流体から成分を除去し得るシステムを提供する。このシステムは、例えば、治療的用途および診断的用途を含む種々の異なる用途に、適用され得る。ある実施形態では、このシステム22は、上で議論されたように、および図1に示されるように、このデバイス10と結合された、流体が流れ得る流体経路を備える。この流体経路は少なくとも、この流体が、このデバイスに入ることを可能にする、流入流体経路24を含む。必要に応じて、多数の他の適切な流体経路が、この流体がデバイス10を通っておよびデバイス10の外に通過することを可能にする、流出流体経路26のようなデバイスと結合され得る。
【0067】
ここで本明細書に記載された好ましい実施形態への種々の変更および改変は、当業者に明らかであることが、理解されるべきである。そのような変更および改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そしてその意図された利点を縮小させることなく、なされ得る。それゆえ、そのような変更および改変は、添付された特許請求の範囲によって網羅されることが、意図される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の実施形態に従う、高分子組成物を含むデバイスを包含するシステムの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液から有効な量の1つ以上の成分を除去し得る、高分子組成物を生成する方法であって、該方法は、以下:
フェニル基を含む樹脂材料を調製する工程;
該フェニル基上でアセチル基を形成する工程;および
ケトアルデヒド基を形成するために、スルホキシドおよび酸と、該アセチル基とを反応させる工程を含む、1段階の反応を介して、該アセチル基を酸化する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記樹脂材料が、ポリスチレン、架橋型ポリスチレン、ジビニルベンゼンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記樹脂材料が、該樹脂材料の約0.01重量%〜99.9重量%の範囲の量で、スチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アセチル基が、フリーデル−クラフト反応を通して形成された、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フリーデル−クラフト反応が、前記樹脂材料と、ジクロロエタンおよび塩化アセチルとを反応させる工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スルホキシドが、脂肪族スルホキシド、ジメチルスルホキシドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸が、ハロゲン水素酸、臭化水素酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化工程が、前記酸を加えた後、還流条件下で進行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、ここで、前記高分子組成物が、生理的溶液から前記有効な量の1つ以上の成分を除去し得、かつ、該成分は、求核部分、電子豊富な化学基、ルイス塩基、ブレンステッド塩基、ハロゲン化物を含むアニオン、自由電子対を有する1つ以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素)を含む分子またはラジカル、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、代謝性廃棄物、タンパク様物質、生物学的物質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
芳香族α−ケトアルデヒドを含む、高分子組成物を調製する方法であって、該方法は、以下:
フェニル基を含む重合材料を調製する工程;
該重合材料をアセチル化し、それによって、アセチル基を該フェニル基に結合させる工程;ならびに
該アセチル基と、スルホキシドおよびハロゲン水素酸とを反応させる工程を含む1段階の反応を介して該アセチル基を酸化し、それによって、α−ケトアルデヒドを形成する工程;
を包含する、方法。
【請求項11】
前記スルホキシドが、脂肪族スルホキシド、ジメチルスルホキシドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハロゲン水素酸が、臭化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記重合材料が、ポリスチレン、架橋型ポリスチレン、ジビニルベンゼン、多孔性樹脂材料、巨大多孔性樹脂材料、非多孔性樹脂材料、ゲル樹脂材料およびそれらの混合物からなる群より選択される樹脂材料を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子組成物が、有効な量のγ線照射で滅菌される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
結合性材料を生成する方法であって、該方法は以下:
樹脂材料を調製する工程;
アセチル基を形成する工程;ならびに
グリオキサール基を形成するために、スルホキシドおよびハロゲン水素酸と、該アセチル基とを反応させる工程を含む、1段階の反応を介して、該アセチル基を酸化する工程であって、ここで、該結合性材料が、生理的溶液から有効な量の1つ以上の成分を除去し得る工程;
を包含する、方法。
【請求項16】
前記グリオキサール基が、水酸化グリオキサール基、非水酸化グリオキサール基、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記成分が、求核部分、電子豊富な化学基、ルイス塩基、ブレンステッド塩基、ハロゲン化物を含むアニオン、自由電子対を有する1つ以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素)を含む分子またはラジカル、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、代謝性廃棄物、タンパク様物質、生物学的物質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記結合性材料が、血液透析治療の間、1つ以上の前記成分を除去し得る、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スルホキシドが、ジメチルスルホキシドを含み、かつ前記ハロゲン水素酸が、臭化水素を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
溶液から有効な量の1つ以上の成分を除去し得る、高分子組成物であって、該高分子組成物は、アセチル化型高分子組成物と、スルホキシドおよびハロゲン水素酸とを反応させて、それによってα−ケトアルデヒド基を形成する工程を含む、1段階の反応を介した、該アセチル化型高分子組成物の酸化によって形成されたフェニル基に結合された、α−ケトアルデヒド基を含む、高分子組成物。
【請求項21】
前記スルホキシドが、ジメチルスルホキシドを含み、かつ前記ハロゲン水素酸が、臭化水素を含む、請求項20に記載の高分子組成物。
【請求項22】
前記高分子組成物が、生理的溶液から有効な量の成分を除去し得る請求項20に記載の高分子組成物であって、ここで、該成分が、求核部分、電子豊富な化学基、ルイス塩基、ブレンステッド塩基、ハロゲン化物を含むアニオン、自由電子対を有する1つ以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素)を含む分子またはラジカル、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、代謝性廃棄物、タンパク様物質、生物学的物質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、高分子組成物。
【請求項23】
前記高分子組成物が、前記溶液から前記成分を除去するためのデバイスの中で使用される、結合性材料を含む、請求項20に記載の高分子組成物。
【請求項24】
前記デバイスが、透析治療の間、透析液から1つ以上の成分を除去し得る系の一部分である、請求項23に記載の高分子組成物。
【請求項25】
透析治療を提供する方法であって、該方法は以下:
デバイスを通して、生理学的流体を通す工程であって、ここで、該デバイスの少なくとも一部が、高分子組成物を少なくとも含み、該高分子組成物は、アセチル化型高分子組成物と、スルホキシドおよびハロゲン水素酸とを反応させ、それによってα−ケトアルデヒド基を形成する工程を含む、1段階の反応を介した、該アセチル化型高分子組成物の酸化によって形成されたフェニル基に結合された、α−ケトアルデヒド基を含む、工程;ならびに
該生理学的流体から1つ以上の成分を除去する工程;
を包含する、方法。
【請求項26】
前記生理学的流体が、患者から、前記デバイスと接触する流体の中にある該デバイスへと通されている透析液を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記成分が、求核部分、電子豊富な化学基、ルイス塩基、ブレンステッド塩基、ハロゲン化物を含むアニオン、自由電子対を有する1つ以上のヘテロ原子(例えば、硫黄、窒素、酸素)を含む分子またはラジカル、尿素、クレアチニン、尿酸、β−2 ミクログロブリン、代謝性廃棄物、タンパク様物質、生物学的物質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記スルホキシドが、ジメチルスルホキシドを含み、かつ前記ハロゲン水素酸が、臭化水素を含む、請求項25に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−519299(P2006−519299A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508806(P2006−508806)
【出願日】平成16年2月24日(2004.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/005377
【国際公開番号】WO2004/078797
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(505309110)バクスター インターナショナル インコーポレイテッド (9)
【出願人】(504375581)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (26)
【Fターム(参考)】