説明

高分子ゲル及びその製造方法

【課題】 網目構造を有する高分子ゲルを構成する2種のポリマーの性質を併せ持つ高分子ゲル、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の高分子ゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成していることを特徴とする。また、本発明の高分子ゲルの製造方法は、前記第1のポリマーと、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとを反応させて第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ゲル及びその製造方法に関し、特に2種以上の高分子それぞれが有する性質を併せ持つ高分子ゲル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子ゲルは、高分子が架橋されることで三次元的な網目構造を形成し、その内部に自重の数百、数千倍の溶媒を保持することができる材料であり、特に液体が水であるものをハイドロゲルという。
このようなハイドロゲルは、上述したように保水性に優れているという特性を有することから注目を集めている有用な素材であり、従来から医療・医薬、食品、土木、バイオエンジニアリングなどの分野で、例えば、高吸水性樹脂、紙おむつや生理用品、ソフトコンタクトレンズ、屋内緑化用含水シート等に利用されている。また、薬物の徐放性も有し、ドラッグデリバリーシステムや創傷被覆材等の医療材料にも応用されている。また、衝撃吸収材料、制振・防音材料等への利用もされており、その用途は多岐に渡る。
【0003】
しかしながら、ハイドロゲルは一般的に強度が低く、小さい応力で構造が破壊してしまうという問題があり、機械的強度を向上させることが課題であった。ハイドロゲルの機械的強度を向上させる方法として、本発明者らは、成形型内で第一のモノマー成分を重合して第一の網目構造を有するゲルを成形し、次いでこのゲルを第二のモノマー成分を含有する溶液に浸漬させてゲル内に該溶液を拡散させた後、ゲルを取り出し、該ゲル中の第二のモノマー成分を重合させることにより、架橋網目構造を有するポリマー同士、又は架橋網目構造を有するポリマーと直鎖ポリマーとが互いに絡み合った構造(相互侵入網目構造又はセミ相互侵入網目構造)を有するハイドロゲルを製造する方法を開示している(特許文献1)。また、本発明者らは、物理架橋ゲル中に第一のモノマーを導入し、該第一のモノマーを重合し架橋することによって第一の網目構造を形成した後、第二のモノマーを導入し、第二のモノマーを重合し架橋することによって第二の網目構造を形成する、高分子ゲルの製造方法を開示している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/093337号パンフレット
【特許文献2】特開2009−298971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法で得られる高分子ゲルは、中間段階で得られる第一の網目構造を有するゲルの強度が著しく弱く、所望の形状に保持することが困難であるため、大きいものや複雑な形状のものは成形が困難であった。また、第一の網目構造を有するゲルの強度が弱く、取り扱いが困難であるという問題もあった。
特許文献2に開示されている方法で得られる高分子ゲルは強度が良好であり、成形形状の自由度が高く、連続生産が可能であるが、この方法により得られる高分子ゲルは、2種のポリマーを用いて得られるものであり、用いられるポリマーのうちのいずれか1種により、ゲル全体の性質が決まってしまい、用いられる2種のポリマーの両方の性質を併せ持つものではなく、得ようとする性質を併せ持つゲルを得ることが困難であった。
従って、本発明は、網目構造を有する高分子ゲルを構成する2種のポリマーの性質を併せ持つ高分子ゲル、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の第1のポリマーと第2のポリマーとを用い、架橋によって網目構造を形成することにより、上記課題を解決し得るという知見を得た。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成していることを特徴とする高分子ゲルを提供するものである。
前記第1のポリマーと第2のポリマーとは、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋されたものであるものが挙げられる。
また、前記第1のポリマーがイソシアネート基と反応性を有するポリマーであり、前記第2のポリマーが(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーであることが好ましい。
また、本発明は、イソシアネート基と反応性を有するポリマーと、(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーとが、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋されていることを特徴とする高分子ゲルを提供する。
イソシアネート基と反応性を有するポリマーとしてはセルロース誘導体、部分的にけん化されたポリ酢酸ビニルが挙げられる。
(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択される1種以上の第2のモノマーを重合してなるポリマーが挙げられる。
【0007】
また、本発明は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、前記第1のポリマーと、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとを反応させて第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法を提供する。
また、本発明は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーを、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、高分子反応基を有する第2のポリマーを得、前記高分子反応基を有する第2のポリマーと、第1のポリマーとを反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法を提供する。
また、本発明は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと、第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーと、第1のポリマーと、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーとを反応させ、第1のモノマーと第2のモノマーとを共重合させると共に、第1のモノマー中の高分子反応基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと高分子反応させて第1のポリマーにアクリル基又はビニル基を導入し、アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーの存在下に、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法を提供する。
また、本発明は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、イソシアネート基を有する第2のポリマーを得、次いで、前記イソシアネート基を有する第2のポリマーを、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと反応させて、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法を提供する。
また、本発明は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーとを反応させ、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と第2のモノマーとを共重合させると共に、前記(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体中のイソシアネート基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子ゲルは機械的強度が向上したものであり、2種以上のポリマーの特性を併せ持つものである。また、本発明の高分子ゲルの製造方法によれば、機械的強度が向上し、2種以上のポリマーの特性を併せ持つ高分子ゲルを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例で得られた高分子ゲルの最大ひずみを示すグラフである。
【図3】架橋点濃度と最大ひずみとの関係を示すグラフである。
【図4】含水率の測定結果を示すグラフである。
【図5】引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を示すグラフである。
【図6】引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を示すグラフである。
【図7】引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を示すグラフである。
【図8】引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、まず本発明の高分子ゲルについて説明する。
本発明の高分子ゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成している。本発明の高分子ゲルにおける網目構造について説明する。
従来、三次元的な網目構造を有するゲルとしては相互侵入網目構造(Interpenetrated Network=IPN)を有するゲルが知られている。相互侵入網目構造は、第1のモノマー成分を重合させて第1の網目構造を有するゲルを成形し、次いで、このゲルを第2のモノマー成分を含有する溶液に浸漬させてゲル内に該溶液を拡散させた後にゲルを取り出し、このゲルの第2のモノマー成分を重合させることにより、架橋網目構造を有するポリマー同士、又は架橋網目構造を有するポリマーと直鎖ポリマーとが互いに絡み合った構造(相互侵入網目構造(フルIPN)又はセミ相互侵入網目構造(セミIPN))を有しているゲルである。
また、第1のモノマーからなるポリマー鎖と第2のモノマーからなるポリマー鎖の架橋構造(Internetwork Cross−linking(INC))が存在している相互架橋網目構造も知られている。(Macromolecules 2009, 42, 2184-2189 True Chemical Structure of Double Network Hydrogels)
【0012】
本発明の高分子ゲルは、従来知られていなかった網目構造を有するものである。すなわち、本発明の高分子ゲルは、第1のポリマー同士の架橋、第2のポリマー同士の架橋は存在せず、第1のポリマーと第2のポリマーとの間の架橋が形成され、それによって網目構造が形成されている。本明細書においては、この網目構造を相互架橋網目構造(Intercrosslinked Network:ICN)とも呼ぶ。このような網目構造を有する高分子ゲルは従来は知られていなかったものであり、本発明者らによって初めて見いだされたものである。本発明の高分子ゲルは、第1のポリマー同士の架橋、第2のポリマー同士の架橋が存在しないので、第1のポリマー及び第2のポリマーの両者の性質が全体の性質に影響を与えるため、2種のポリマーの性質を併せ持つ高分子ゲルである。
【0013】
本発明の高分子ゲルについて説明する。本発明の高分子ゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成している。
本発明の高分子ゲルを構成する第1のポリマー及び第2のポリマーについて説明する。本発明の高分子ゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成して架橋されてなる。従って、第1のポリマーと第2のポリマーとを架橋する化合物との組み合わせが重要である。本明細書において、互いに異種のポリマーとの間の架橋」とは、同種同士のポリマー同士は架橋せず、異種のポリマーとの架橋が形成されていることを意味する。すなわち、本発明において、第1のポリマーと第2のポリマーとは、任意の化合物(以下、第1のモノマーとも言う)、例えば、後述するような、化合物によって架橋されている。
【0014】
本発明の高分子ゲルの具体例としては、例えば、第1のポリマーと第2のポリマーとが、第1のモノマーにより架橋されてなる。第1のモノマーとしては、第1のポリマーとの反応性を有すると共に重合反応基を有する化合物が挙げられる。第1のポリマーとの反応性を有するとは、第1のポリマーと架橋し得る官能基を有することを意味し、例えば、第1のポリマーとしてセルロース誘導体を用いる場合には、イソシアネート基を有する化合物が該当する。また、重合反応基とは、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等が挙げられる。従って、第1のモノマーとしては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、イソシアネート基を有するビニル誘導体が挙げられる。すなわち、本発明の高分子ゲルは、第1のポリマーと第2のポリマーとが、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋されたものが挙げられる。この場合、第1のポリマーとしては、イソシアネート基と反応性を有するポリマーが用いられ、前記第2のポリマーを構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なモノマーが用いられる。
【0015】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体について説明する。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体としては下記一般式(1)〜(3)で表わされる化合物が挙げられる。
−O−R−NCO (1)
(式中、Rはアクリル基、メタアクリル基又はビニル基であり、Rはアルキレン基である)
−O−R−O−R−NCO (2)
(式中、Rはアクリル基、メタアクリル基又はビニル基であり、R及びRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれアルキレン基である)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Rはアクリル基、メタアクリル基又はビニル基であり、R5はアルキル基である)
上記一般式(1)で表わされる化合物としては、下記式(4)及び(5)で表わされる化合物が挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
また、上記一派式(2)で表わされる化合物としては、下記式(6)で表わされる化合物が挙げられる。
【0021】
【化4】

【0022】
また、上記一般式(3)で表わされる化合物としては、下記式(7)で表わされる化合物が挙げられる。
【0023】
【化5】

【0024】
上記式(4)、(5)、(6)、(7)で表わされる化合物としては、市販されているものを用いることもでき、例えば、昭和電工株式会社製、カレンズMOI(登録商標)、カレンズAOI(登録商標)、カレンズMOI−EG(登録商標)、カレンズBEI(登録商標)等が挙げられる。また、熱処理により脱ブロック化され、活性なイソシアネート基を再生する化合物を用いることもでき、このような化合物としては、例えば、下記式(8)及び(9)で表わす化合物が挙げられる。
【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
上記式(8)、(9)で表わされる化合物としては、市販されているものを用いることもでき、例えば、昭和電工株式会社製、カレンズMOI−BP(登録商標)、カレンズMOI−BM(登録商標)等が挙げられる。
【0028】
次に、第1のポリマーについて説明する。第1のポリマーは、後述する第2のポリマーと、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成するものである。具体例としては、上述した、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋し得るものであるので、イソシアネート基と反応性を有するポリマーを用いることができる。
イソシアネート基と反応性を有するポリマーとしては、イソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されているポリマーが好ましい。このような官能基の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基等が挙げられる。すなわち、前記第1のポリマーとしては、水酸基を有するポリマー、カルボキシル基を有するポリマー、アミノ基を有するポリマー、アミド基を有するポリマー、メルカプト基を有するポリマー等が挙げられる。
【0029】
水酸基を有するポリマーとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体;側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体;ポリビニルアルコール、デキストラン、アルキルセルロース、アガロース、プルラン、イヌリン、キトサン、ポリ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
カルボキシル基を有するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸を共重合成分とする共重合体等が挙げられる。
【0031】
アミノ基を有するポリマーとしては、例えば、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリ3−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、キトサン、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化 イオウ共重合物、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合物等が挙げられる。
【0032】
アミド基を有するポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム 共重合物、ビニルピロリドン/ビニルイミダゾール共重合物、ビニルピロリドン/アクリル酸共重合物、ビニルピロリドン/メタクリル酸共重合物、ビニルピロ リドン/3−メチル−1−ビニルイミダゾリウム塩共重合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリ ドン、N−ビニルカプロラクタム、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド等が挙げられる。
【0033】
メルカプト基を有するポリマーとしては、例えば、HS−(A−Sx m −ASH (1)
(式中、Aは、イソシアネート基と反応する置換基であり、xは1〜5の整数であり、mは1〜50の整数である。)で示されるポリサルファイドポリマーが挙げられる。式中における、イソシアネート基と反応する置換基としては、例えばヒドロキシル基が挙げられる。
【0034】
次に、第2のポリマーについて説明する。第2のポリマーは、上述した第1のポリマーと、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成するものである、具体例としては、上述したイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋し得るものであり、(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーを用いることができる。
(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択されるモノマーを重合してなるポリマーが挙げられる。その他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、 ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−スチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカボネート等のアリル化合物、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の不飽和ニ塩基酸およびその誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを重合してなるポリマーも本発明における第2のポリマーとなり得る。
【0035】
本発明の高分子ゲルを構成する、第1のポリマー、第2のポリマー及び第1のモノマーの含有割合に特に制限はないが、得ようとする高分子ゲルの特性により、第1のポリマーと第2のポリマーとの比率を調整することができ、その比率は、構成モノマー単位のモル比で1:10000〜10000:1程度である(0.01mol%〜99.99mol%)。第1のポリマーの特性を強くしようとする時には、第1のポリマーの比率を大きくし、第2のポリマーの特性を強くしようとする時には、第2のポリマーの比率を大きくすればよい。
また、第1のモノマーは、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり、0.2〜1.0モル程度用いることが好ましい。第1のモノマーの使用量が、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル未満であると、網目構造が形成されなくなる場合があり、一方、1.0モルを超えて配合させても、第1のモノマーが過剰となり、網目構造の形成がこれ以上進まないので、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり1.0モル未満でよい。第1のモノマーの使用量が、上記範囲よりも少ない場合、例えば、第1のモノマーが第1のポリマーの両末端のみに結合し、それと共に第2のポリマーと結合して架橋し、ラダー型のゲルを形成してしまう場合がある。従って、ある程度の量の第1のモノマーを使用しないと、網目構造が形成されないこととなってしまう。従って、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル以上とすることが好ましい。
【0036】
本発明の高分子ゲルは、その形状には特に制限はなく、適宜設計することにより、各種のゲル状成型品を得ることができる。具体例としては、各種衝撃吸収・制振材料、人工関節等の生体材料、各種電子部品、OA器機の伸縮部又は駆動部、各種中間膜、船底塗料、配管の汚れ付着防止剤等の工業材料;関節、軟骨、血管等の生体組織の代替材料;細胞培養シート、ソフトコンタクトレンズ、屋内緑化用含水シート、ドラッグデリバリーシステムや創傷被覆材等の医療材料等が挙げられる。
【0037】
なお、本発明の高分子ゲルには、必要に応じて、公知の着色剤、可塑剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤等の添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤を高分子ゲルに含有させる方法としては、例えば、高分子量の添加剤であれば製造時に溶液に添加することができ、低分子量の添加剤であれば、最終的に得られた高分子ゲルに自由拡散によって含有させることができる。
本発明の高分子ゲルは、後述する、本発明の高分子ゲルの製造方法により製造することができる。
【0038】
次に、本発明の高分子ゲルの製造方法について説明する。
第1の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法は、
第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、
前記第1のポリマーと、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとを反応させて第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することからなる。
【0039】
第1の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法においては、まず、第1のポリマーと、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとを反応させて第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得る。ここで、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとは、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する化合物であれば特に制限なく用いることができるが、例えば、前述したようなイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、イソシアネート基を有するビニル誘導体を用いることができる。この場合、第1のポリマーとしては、イソシアネート基と反応する官能基を有するポリマーが用いられ、このようなポリマーとしては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基等の官能基を有するポリマーが挙げられる。これらの例は前述した通りである。
第1のポリマーと第1のモノマーとを反応させ、第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得る工程については、従来より公知の方法が用いられる。すなわち、第1のポリマーと第1のモノマーとを、例えば、DMF、DMSO、DMAC、NMP等の溶媒に溶解又は懸濁し、室温〜80℃程度の温度で数分〜数時間程度、撹拌して実施することができる。また反応は水やアルコールの添加によって任意の度合いで停止させることができる。
【0040】
本発明の高分子ゲルの製造方法においては、その使用用途によって、適宜形状を設計し、ゲル状成型品とすることができる。
第1のモノマーは、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり、0.2〜1.0モル程度用いることが好ましい。第1のモノマーの使用量が、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル未満であると、網目構造が形成されなくなる場合があり、一方、1.0モルを超えて配合させても、第1のモノマーが過剰となり、網目構造の形成がこれ以上進まないので、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり1.0モル以下でよい。一般に、第1のモノマーの使用量が少ない場合は、架橋密度が低くなるために弾性率が低く、延性が高い高分子ゲルができる。一方、第1のモノマーの使用量を多くすると、架橋密度が高くなるために弾性率が高く、脆性のあるゲルができる。第1のモノマーの使用量が、上記範囲よりも少ない場合、例えば、第1のモノマーが第1のポリマーの両末端のみに結合し、それと共に第2のポリマーと結合して架橋し、ラダー型のゲルを形成してしまう場合がある。従って、ある程度の量の第1のモノマーを使用しないと、網目構造が形成されないこととなってしまう。従って、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル以上とすることが好ましい。
【0041】
次いで、得られた重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する。なお、第1のモノマーとして、前述したようなイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、イソシアネート基を有するビニル誘導体を用いる場合、第2のモノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択されるモノマーが挙げられる。その他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、 ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−スチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカボネート等のアリル化合物、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の不飽和ニ塩基酸およびその誘導体等を用いることができる。本発明においては、N,N−ジメチルアクリルアミドを用いることが好ましい。N,N−ジメチルアクリルアミドは、第1のポリマーと第1のモノマーとを反応させる工程において溶媒として用いることができる。
【0042】
重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーが重合して第2のポリマーが形成されると同時に、重合性反応基を有する第1のポリマーが、第2のモノマーと共重合するので、得られる生成物は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成されることとなる。重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、第2のモノマーを共重合する反応の条件は、室温〜80℃程度の温度で数分〜数時間程度、撹拌して実施することができる。反応の際には、光ラジカル開始剤を反応系に加え、紫外線を照射して共重合を開始させることが好ましい。このような光ラジカル開始剤としては、例えば、α−ケトグルタル酸、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2−メチル−1−[4−(メチル)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4,4−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミ ダゾ−ル等が挙げられる。また、熱ラジカル開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物や、過硫酸カリウム、過硫酸ソーダ、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイ ル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド等の有機過酸化物、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
【0043】
重合反応基を有する第1のポリマーと、第2のモノマーとの使用割合は、得ようとする高分子ゲルの特性により、第1のモノマーと、第2のモノマーからなる第2のポリマーとの比率を調整することができ、その比率は、構成モノマー単位のモル比で1:10000〜10000:1程度である。(0.01mol%〜99.99mol%)第1のポリマーの特性を強くしようとする時には、第1のポリマーの比率を大きくし、第2のポリマーの特性を強くしようとする時には、第2のポリマーの比率を大きくすればよい。
本発明の高分子ゲルの製造方法においては、架橋剤を用いていないので、第1のポリマー同士の架橋、第2のポリマー同士の架橋は形成されず、第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋を形成し、網目構造が形成される。
【0044】
次に、第2の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法について説明する。第2の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、
第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーを、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、高分子反応基を有する第2のポリマーを得、前記高分子反応基を有する第2のポリマーと、第1のポリマーとを反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する。
【0045】
本発明の第2の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法においては、まず、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーを、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、高分子反応基を有する第2のポリマーを得る。ここで、第1のモノマー、第2のモノマーについては第1の実施態様において説明した通りである。反応条件、使用割合等も第1の実施態様と同様である。この第2の実施態様においても、N,N−ジメチルアクリルアミドは溶媒としても用い得るので好ましい。
次いで、得られた、高分子反応基を有する第2のポリマーと、第1のポリマーとを反応させる。ここで用いられる第1のポリマーについても、第1の実施態様において説明したものと同様のものが用いられ、反応条件等も同様である。
第2の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法においては、第1のモノマーとして、上述したイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体が用いられる。上述のイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体の中で、式(8)及び(9)で表わされる化合物を用いることが好ましい。式(8)及び(9)で表わされる化合物は、イソシアネート基に保護基が結合しており、そのままでは第1のポリマーとの反応が起こらず、反応系を高温(例えば70℃以上)にすることにより、保護基がはずれて、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体が形成され、この化合物のイソシアネート基が第1のポリマーと反応するので、全ての反応成分を混合し、室温〜30℃程度の温度で、まず第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーを、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ(例えば、上述したような光ラジカル開始剤の存在下に紫外線を照射して)、次いで、70〜90℃程度の温度に反応系を上昇させ、第1のポリマーと反応させることにより、反応の途中に試薬を追加する工程を省略できるという利点がある。第2の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法により製造された高分子ゲルは、特にフィルム状のゲルの作成に優れている。
【0046】
次に、第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法について説明する。第5の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法は、第2のモノマーからなる第2のポリマーと、第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーと、第1のポリマーと、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーとを反応させ、第1のモノマーと第2のモノマーとを共重合させると共に、第1のモノマー中の高分子反応基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する。
すなわち、第5の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法は、第1のポリマー、第1のモノマー及び第2のモノマーを全て同時に混合して反応を行う。用いられる原料や反応条件等については、他の実施態様における高分子ゲルの製造方法と同様である。
【0047】
上述した、第1〜第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法において用いられる、第1のモノマーとしては、第1のポリマーとの反応性を有すると共に重合反応基を有する化合物が挙げられる。第1のポリマーとの反応性を有するとは、第1のポリマーと架橋し得る官能基を有することを意味し、例えば、第1のポリマーとしてセルロース誘導体を用いる場合には、イソシアネート基を有する化合物が該当する。また、重合反応基とは、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等が挙げられる。従って、第1のモノマーとしては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、イソシアネート基を有するビニル誘導体が挙げられ、具体例は上述した通りである。
【0048】
次に、第1〜第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法において用いられる第1のポリマーについて説明する。第1のポリマーは、後述する第2のポリマーと、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成するものである。具体例としては、上述した、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋し得るものであるので、イソシアネート基と反応性を有するポリマーを用いることができる。
イソシアネート基と反応性を有するポリマーとしては、イソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されているポリマーが好ましい。このような官能基の例としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基等が挙げられる。すなわち、前記第1のポリマーとしては、水酸基を有するポリマー、カルボキシル基を有するポリマー、アミノ基を有するポリマー、アミド基を有するポリマー、メルカプト基を有するポリマー等が挙げられる。このようなポリマーとしては上述した通りである。
【0049】
次に、第1〜第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法において用いられる第2のポリマーについて説明する。第2のポリマーは、上述した第1のポリマーと、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成するものである、具体例としては、上述したイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋し得るものであり、(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーを用いることができ、具体例は上述した通りである。
(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択されるモノマーを重合してなるポリマーが挙げられる。その他、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、 ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、α−スチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、トリメリット酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカボネート等のアリル化合物、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の不飽和ニ塩基酸およびその誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを重合してなるポリマーも本発明における第2のポリマーとなり得る。
【0050】
第1〜第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法において用いられる第1のポリマー、第2のポリマー及び第1のモノマーの含有割合に特に制限はないが、得ようとする高分子ゲルの特性により、第1のポリマーと第2のポリマーとの比率を調整することができ、その比率は、構成モノマー単位のモル比で1:10000〜10000:1程度である(0.01mol%〜99.99mol%)。第1のポリマーの特性を強くしようとする時には、第1のポリマーの比率を大きくし、第2のポリマーの特性を強くしようとする時には、第2のポリマーの比率を大きくすればよい。
また、第1のモノマーは、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり、0.2〜1.0モル程度用いることが好ましい。第1のモノマーの使用量が、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル未満であると、網目構造が形成されなくなる場合があり、一方、1.0モルを超えて配合させても、第1のモノマーが過剰となり、網目構造の形成がこれ以上進まないので、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり1.0モル未満でよい。第1のモノマーの使用量が、上記範囲よりも少ない場合、例えば、第1のモノマーが第1のポリマーの両末端のみに結合し、それと共に第2のポリマーと結合して架橋し、ラダー型のゲルを形成してしまう場合がある。従って、ある程度の量の第1のモノマーを使用しないと、網目構造が形成されないこととなってしまう。従って、第1のモノマーの使用量は、第1のポリマーの構成モノマー単位あたり0.2モル以上とすることが好ましい。
【0051】
なお、第1〜第3の実施態様における本発明の高分子ゲルの製造方法においては、必要に応じて、公知の着色剤、可塑剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤等の添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤を高分子ゲルに含有させる方法としては、例えば、高分子量の添加剤であれば製造時に溶液に添加することができ、低分子量の添加剤であれば、最終的に得られた高分子ゲルに自由拡散によって含有させることができる。
【0052】
上記から明らかなように、本発明は、以下の高分子ゲルの製造方法を提供する。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと高分子反応させて第1のポリマーにアクリル基又はビニル基を導入し、アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーの存在下に、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、イソシアネート基を有する第2のポリマーを得、次いで、前記イソシアネート基を有する第2のポリマーを、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと反応させて、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーとを反応させ、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と第2のモノマーとを共重合させると共に、前記(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体中のイソシアネート基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法。
【0053】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
以下の実施例では、以下の方法で高分子ゲルの評価を行った。
(1)引張試験
調製したゲルを大量の純粋中に24時間以上浸して膨潤させたものを試料として用いた。試験片をダンベル状型抜き機(JIS K6251 引張8号)で作製し、厚さが3mm、評点間距離が16mmの試料を作製した。試験には、卓上型材料試験機STA−1150(オリエンテック社製)を用い、クロスヘッド速度100mm/分で測定した。
【0054】
(2)架橋点濃度
架橋点濃度は以下の式より求めた。
架橋点濃度(モル/L)=架橋点の個数(モル)/膨潤後の体積(L)
なお、架橋点の個数、膨潤後の体積は以下のようにして求めた。
架橋点の個数は以下の式より求めた。
架橋点の個数(モル)=添加したカレンズMOI−EGの質量(g)/カレンズMOI−EGの分子量(g/モル)×HPCに対するカレンズMOI−EGの導入率(モル%)
HPCに対するカレンズMOI−EGの導入率(モル%)は、HPCを構成するピラノース環1個に対するカレンズMOI−EGの分子の個数の比率を表す。
膨潤後の体積は以下の式で求めた。
膨潤後の体積(L)=膨潤後の体積(mm)/10−6
膨潤後の体積(mm)=長さ(mm)×幅(mm)×厚さ(mm)
長さ、幅、厚さは、膨潤させた後のゲルのサイズである。
【0055】
(3)含水率
高分子ゲルの一部をサンプルとして採取し、乾燥法を用いて含水率を測定した。乾燥法は固体試料を水の蒸散温度以上に加熱して一定時間保ち、試料から水を蒸発、乾燥させ、加熱乾燥前後の試料質量の減少量を水分として求める方法である。含水率は重量パーセント(wt%)で表記する。
Moisture Analyzers MS−70(AND(エー・アンド・ディ)社製)を用いて測定した。
【0056】
実施例1
N,N−ジメチルアクリルアミド7.93gに、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、HPC、水中20g/L・25℃における粘度:2.0〜2.9mPa・s)0.102gを加え、HPCが溶解するまで撹拌した。次いで、カレンズMOI−EG(前記一般式(6)で表わされる化合物)を、HPCの構成単位モノマーであるピラノース環1モルに対し、0.3モル量を加え、60℃の温度で1時間撹拌した。次いで、純水2.16mLを加え、カレンズMOI−EGの未反応のイソシアネート基を水分子と反応させ、ゲル化の際に誤った反応が起こらないようにした。次いで、光ラジカル開始剤であるα−ケトグルタル酸0.012gを加え、攪拌した後、二枚のガラス板に1mmのシリコーンスペーサーを挟んだ鋳型に溶液を流し込み、紫外光(波長:352nm)を約9時間照射して高分子ゲルを調製した。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0057】
実施例2
セルロース誘導体として、水中20g/L・25℃における粘度が1000〜5000mPa・sのものを用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0058】
実施例3
カレンズMOI−EGの使用量を、HPCの構成単位モノマーであるピラノース環1モルに対し、1.0モルとした以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0059】
実施例4
セルロース誘導体として、水中20g/L・25℃における粘度が1000〜5000mPa・sのものを用い、カレンズMOI−EGの使用量を、HPCの構成単位モノマーであるピラノース環1モルに対し、1.0モルとした以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0060】
実施例5
セルロース誘導体として、水中20g/L・25℃における粘度が1000〜5000mPa・sのものを用い、カレンズMOI−EGの使用量を、HPCの構成単位モノマーであるピラノース環1モルに対し、0.1モルとした以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
実施例1〜5で得られた高分子ゲルにおいて原料として用いられたHPCは増粘剤として用いられているものであり、LCST型(下限臨界溶液温度)の温度依存性を有し、通常は32℃以上の温度になると水に不溶となる物質である。一方、N,N−ジメチルアクリルアミドは水への溶解度が高く、水温が上昇した場合でもよく溶解するものである。実施例1〜5で得られた高分子ゲルは、いずれも、HPCを添加したことにより、架橋密度を同程度にしても、N,N−ジメチルアクリルアミドのみからなるポリマーに比べ、高延性の高分子ゲルとなる。また、N,N−ジメチルアクリルアミドを加えたことにより、水中で高温にした場合でも透明度を保ったゲルとなる。
【0061】
比較例1
架橋剤である、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを、N,N−ジメチルアクリルアミドに対して0.05モル%加えた以外は、実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0062】
比較例2
架橋剤である、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを、N,N−ジメチルアクリルアミドに対して0.05モル%加えた以外は、実施例2と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0063】
比較例3
架橋剤である、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを、N,N−ジメチルアクリルアミドに対して0.05モル%加えた以外は、実施例3と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0064】
比較例4
架橋剤である、N,N’−メチレンビスアクリルアミドを、N,N−ジメチルアクリルアミドに対して0.05モル%加えた以外は、実施例4と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
比較例1〜4においては、架橋剤を加えており、これにより、セルロース誘導体分子同士が架橋し、またN,N−ジメチルアクリルアミドが共重合して生成するポリマー同士が架橋しており、網目構造が形成されていない。
【0065】
引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を図1に示す。
実施例5の高分子ゲルが、最もよく伸び、10.63(1063%)の最大ひずみを示した。また、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミドを加えた場合と加えない場合とでは、加えない場合(すなわち、本発明の高分子ゲル)の方が最大ひずみが大きいことがわかった(比較例1に対して実施例1、比較例2に対して実施例2、比較例3に対して実施例3、比較例4に対して実施例4)。また、実施例1〜4で得られた高分子ゲルにおいても引張試験が可能であったので、カレンズMOI−EGを添加することにより、架橋剤N,N’−メチレンビスアクリルアミドを加えずにゲルを調製できることがわかった。
また、実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた高分子ゲルの最大ひずみを図2に示す。カレンズMOI−EGの配合量の少ない方が、得られた高分子ゲルの粘性が高くなることがわかった。
【0066】
図3に、架橋点濃度と最大ひずみとの関係を示すグラフを示す。図3から明らかなように、粘性の高いHPCの方が最大ひずみが大きくなることがわかる。更に、HPCの方の主鎖に沿った架橋点の個数はHPCの主鎖の長さに比例しており、そのため、粘性の高いHPCの方を用いた場合、架橋点が増えるため、ゲルの延性が向上すると考えられる。
【0067】
含水率の測定結果を図4に示す。図4から明らかなように、実施例5で得られた高分子ゲルが、最も高い含水率を示すことがわかった。また、架橋剤であるN,N’−メチレンビスアクリルアミドを加えた場合と加えない場合とでは、加えない場合(すなわち、本発明の高分子ゲル)の方が含水率が高いことがわかった(比較例1に対して実施例1、比較例2に対して実施例2、比較例3に対して実施例3、比較例4に対して実施例4)。また、カレンズMOI−EGの配合量が少なく、HPCの粘性が高い方が含水率が高くなることがわかった。これは、架橋の濃度と最大ひずみとの関係と類似した傾向である。含水率の高くなる条件では、架橋点の個数が少なくなり、そのためゲルの網目の間隔が大きくなり、水を蓄えられる体積が増加し、そのために含水率が高くなったと考えられる。
上述したことより、本発明の高分子ゲルは、ポリジメチルアクリルアミドの有する、高含水率と、セルロースが有する高粘性とを併せ持ったものである。
【0068】
実施例6
セルロース誘導体として、メチルセルロース15(水中20g/L、平均分子量50,000、平均重合度:260、和光純薬工業(株)製)を用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子ゲルを得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0069】
実施例7
セルロース誘導体として、酢酸セルロース(水中20g/L)を用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子元留を得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0070】
実施例8
セルロース誘導体として、三酢酸セルロース(水中20g/L)を用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、高分子元留を得た。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を図5(実施例6)、図6(実施例7)及び図7(実施例8)に示す。実施例6〜8で得られた高分子ゲルは、よく伸長するものであり、実施例6、実施例7及び実施例8で得られた高分子ゲルについて、それぞれ9.12、17.26及び14.58の最大ひずみを示した。これらの実施例においても、架橋剤を加えずにゲルを調製できることがわかった。また、最大応力は、実施例6、実施例7及び実施例8で得られた高分子ゲルについて、それぞれ11.39kPa、17.21kPa及び13.00kPaであった。含水率は、実施例6、実施例7及び実施例8で得られた高分子ゲルについて、それぞれ97.29重量%、98.56重量%及び97.99重量%であった。
上述したことから明らかなように、実施例6〜8で得られた高分子ゲルは、実施例1〜5で得られたものと同様の性質を有するものであった。すなわち、高粘性及び高含水率のいずれの性質をも併せ持つものであった。
【0071】
実施例9
N,N−ジメチルアクリルアミド14.7711gに、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、HPC、水中20g/L・25℃における粘度:1000〜5000mPa・s)0.1892gを加え、HPCが溶解するまで撹拌した。次いで、カレンズMOI−BM(前記一般式(8)で表わされる化合物)を、HPCの構成単位モノマーであるピラノース環1モルに対し、0.1モル量(0.0179g)、及びA−KGA(N,N−ジメチルアクリルアミド1モルに対して0.001当量、0.0218g)を加え、紫外光(波長:352nm)を約9時間照射し、N,N−ジメチルアクリルアミドとカレンズMOI−BMとの共重合体を得た。ここで、カレンズMOI−BMのイソシアネート基には保護基が結合しているので、セルロース誘導体は共重合体と結合していない。
次いで、DMSO 100gを加え、5日間撹拌し、粘性液体を得た。得られた粘性液体を100℃で24時間加熱し、高分子ゲルを調製した。得られた高分子ゲルについて上述した評価を行った。
【0072】
引張試験の結果(応力−ひずみ曲線、S−S曲線)を図8に示す。実施例9で得られた高分子ゲルは、よく伸長するものであった。実施例9においても、架橋剤を加えずにゲルを調製できることがわかった。また、最大応力は、42.38kPa、最大ひずみは4.90mmであり、含水率は、96.02重量%であった。
上述したことから明らかなように、実施例9で得られた高分子ゲルは、実施例1〜5で得られたものと同様の性質を有するものであった。すなわち、高粘性及び高含水率のいずれの性質をも併せ持つものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマーと第2のポリマーとが、互いに異種のポリマーとの間の架橋によって網目構造を形成していることを特徴とする高分子ゲル。
【請求項2】
前記第1のポリマーと第2のポリマーとが、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋されたものである、請求項1記載の高分子ゲル。
【請求項3】
前記第1のポリマーがイソシアネート基と反応性を有するポリマーであり、前記第2のポリマーが(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーである、請求項2記載の高分子ゲル。
【請求項4】
イソシアネート基と反応性を有するポリマーと、(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーとが、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体により架橋されていることを特徴とする高分子ゲル。
【請求項5】
イソシアネート基と反応性を有するポリマーがセルロース誘導体である、請求項3又は4記載の高分子ゲル。
【請求項6】
(メタ)アクリル基又はビニル基と共重合可能なポリマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択される1種以上の第2のモノマーを重合してなるポリマーである、請求項3〜5のいずれか1項記載の高分子ゲル。
【請求項7】
第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、
前記第1のポリマーと、第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーとを反応させて第1のポリマーに重合反応基を導入して重合反応基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記重合反応基を有する第1のポリマーの存在下に、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法。
【請求項8】
第2のモノマーからなる第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、
第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーを、前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、高分子反応基を有する第2のポリマーを得、前記高分子反応基を有する第2のポリマーと、第1のポリマーとを反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法。
【請求項9】
第2のモノマーからなる第2のポリマーと、第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法であって、
第1のポリマーと反応する高分子反応基と重合反応基とを有する第1のモノマーと、
第1のポリマーと、
前記重合反応基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーとを反応させ、
第1のモノマーと第2のモノマーとを共重合させると共に、第1のモノマー中の高分子反応基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、前記方法。
【請求項10】
前記重合反応基が、(メタ)アクリル基又はビニル基である、請求項7〜9のいずれか1項記載の高分子ゲルの製造方法。
【請求項11】
前記高分子反応基がイソシアネート基である、請求項7〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記第1のモノマーが、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体であり、前記第1のポリマーがイソシアネート基と反応性を有するポリマーである、請求項7〜9のいずれか1項記載の高分子ゲルの製造方法。
【請求項13】
前記イソシアネート基と反応性を有するポリマーがセルロース誘導体である、請求項12記載の高分子ゲルの製造方法。
【請求項14】
前記第2のモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択される、請求項11〜13のいずれか1項記載の高分子ゲルの製造方法。
【請求項15】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと高分子反応させて第1のポリマーにアクリル基又はビニル基を導入し、アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーを得、次いで、前記アクリル基又はビニル基を有する第1のポリマーの存在下に、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーを共重合することによって、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法。
【請求項16】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体を、アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと共重合させ、イソシアネート基を有する第2のポリマーを得、次いで、前記イソシアネート基を有する第2のポリマーを、イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーと反応させて、第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成することを特徴とする高分子ゲルの製造方法。
【請求項17】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と、
アクリル基又はビニル基と共重合可能な官能基を有する第2のモノマーと、
イソシアネート基と反応性を有する第1のポリマーとを反応させ、
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体と第2のモノマーとを共重合させると共に、前記(メタ)アクリル酸誘導体又はビニル誘導体中のイソシアネート基を第1のポリマーと反応させて、前記第2のモノマーからなる第2のポリマーと前記第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造を形成する、第2のポリマーと第1のポリマーとの間に相互架橋網目構造が形成された高分子ゲルの製造方法。
【請求項18】
前記第1のポリマーがセルロース誘導体である、請求項13〜17のいずれか1項記載の高分子ゲルの製造方法。
【請求項19】
前記第2のモノマーが、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びビニル化合物モノマーからなる群から選択される、請求項13〜18のいずれか1項記載の高分子ゲルの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214727(P2012−214727A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66641(P2012−66641)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月15日 日本機械学会東北支部発行の「日本機械学会東北支部 第46期総会・講演会 講演論文集 No.2011−1」に発表
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】