説明

高分子ゲル積層体及びその製造方法

【課題】 水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有する高分子ゲルからなる層と、布帛からなる層との積層構造を有する高分子ゲル積層体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の高分子ゲル積層体は、水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有する高分子ゲルと不織布、織布、ネットまたはそれらの加工品等の布帛からなる層とが良好に一体化されているため伸びや曲げが生じた場合においても、両層が剥離したり破損したりすることがない。また、高分子ゲルの優れた柔軟性や表面の湿潤/乾燥特性を有すると共に、一体化された不織布による強い破断耐性や、伸張、膨潤等の異方性を発現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子ゲルからなる層と布帛層との積層構造を有する高分子ゲル積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子のゲルは有機高分子の三次元架橋物が水または有機溶媒を含んで膨潤したものであり、膨潤性やゴム状弾性を有するソフトマテリアルとして、医療・医薬、食品、土木、バイオエンジニアリング、スポーツ関連などの分野で広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このような各種分野において有用な、優れた特性を有する高分子ゲルとして、水溶性有機高分子と層状粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有する高分子ゲルが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
当該高分子ゲルは、優れた力学物性(強度、弾性率、伸張性)や表面特性(表面が湿潤状態または乾燥状態)を有するものであるが、例えば生体適合性材料などの用途においては、当該高分子ゲルの優れたしなやかさを保持しつつ、高い破断強度が求められる場合がある。特にシート状の部材として応用する際には、高分子ゲルのしなやかさは保持しつつ、一方向の伸張性や膨潤性を抑制するための、伸張性や膨潤性の異方性が求められる場合なども存在する。このような場合には、上記高分子ゲルの優れた物性を保持しつつも、更なる特性の改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開2002−53629号公報
【非特許文献1】「ゲルハンドブック」p226〜727、長田義仁、梶原莞爾編:エヌ・ティー・エヌ株式会社、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた表面特性や柔軟性を保持しつつ、高い引っ張り強度を有する高分子ゲル積層体、さらには、これら特性と共に伸張性や膨潤性に異方性を有する高分子ゲル積層体、及び高分子ゲル積層体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有する高分子ゲルからなる層と、不織布、織布、ネットまたはそれらの加工品等の布帛からなる層とが積層された高分子ゲル積層体である。該高分子ゲル積層体は、高分子ゲルと不織布とが良好に一体化されているため伸びや曲げが生じた場合においても、両層が剥離したり破損したりすることがない。また、高分子ゲルの優れた柔軟性や表面特性(湿潤/乾燥特性)を有すると共に、一体化された不織布による強い破断耐性や、伸張、膨潤等の異方性を発現できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子ゲル積層体は、優れた力学物性(広範囲な弾性率、強度、伸張性)、広範囲な膨潤度及び膨潤異方性、異なる表面状態(湿潤/乾燥)、また優れた生体適合性を有し、一般的な有機架橋ゲルにおけるような脆さは無く、且つ膨潤安定性や力学安定性などに優れ、水雰囲気化でも安定して用いることができる。また、高分子ゲル積層体同士または他素材との縫合性にも優れた特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の高分子ゲル積層体は、水溶性有機モノマーから得られる重合体(以下、水溶性有機モノマー重合体という)と層状に剥離した粘土鉱物とが分子レベルで複合化(橋架け)した三次元網目構造を有する高分子ゲルからなる層と、布帛からなる層との積層構造を有するものである。
【0010】
[高分子ゲル]
本発明における高分子ゲルからなる層の高分子ゲルを形成する水溶性有機モノマー重合体は、水溶性有機モノマーから得られるものであり、水膨潤性粘土鉱物と何等かの相互作用により実質的に三次元網目を形成したものである。
【0011】
水溶性有機モノマーは、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性粘土鉱物と相互作用を有するものが好ましく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが挙げられ、なかでもアミド基やエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーが好ましい。なお、本発明で言う水には、水単独以外に、水と混和する有機溶媒をとの混合溶媒で水を主成分とするものが含まれる。
【0012】
アミド基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリルアミド類、または、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、メタクリルアミド等のメタクリルアミド類が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数が1〜4のものが特に好ましく選択される。またエステル基を有する重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーの具体例としては、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどがあげられる。
【0013】
かかる水溶性有機モノマー重合体としては、例えば、ポリ(N−メチルアクリルアミド)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(アクリロイルモルフォリン)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(N−メチルメタクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルピロリディン)、ポリ(N−アクリロイルピペリディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルホモピペラディン)、ポリ(N−アクリロイルメチルピペラディン)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メトキシエチルアクリレート)、ポリ(エトキシエチルアクリレート)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(エトキシエチルメタクリレート)が例示される。また水溶性有機モノマー重合体としては、以上のような単一の重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーからの重合体の他、これらから選ばれる複数の異なる重合性不飽和基含有水溶性有機モノマーを重合して得られる共重合体を用いることも有効である。また上記水溶性有機モノマーとそれ以外の有機溶媒可溶性重合性不飽和基含有有機モノマーとの共重合体も、得られた重合体が水溶性や親水性を示すものであれば使用することができる。
【0014】
本発明における水溶性有機モノマー重合体は、水溶性または水を吸湿する性質を有する親水性(両親媒性を含む)を有するものであり、その内、熱、pHや光に応答する等といった機能性や、生体吸収性を含む生体適合性や生分解性などの特性を有しているものが、用途に応じてより好ましく用いられる。例えば、水溶液中でのポリマー物性(例えば親水性と疎水性)が下限臨界共溶温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)前後のわずかな温度変化により大きく変化する特性を有する水溶性有機モノマー重合体などであり、具体的にはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)やポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)などが挙げられる。また生体適合性に優れたものとしては、ポリ(メトキシエチルアクリレート)やポリ(メタクリルアミド)などがあげられる。
【0015】
本発明の高分子ゲルシートに用いる粘土鉱物は、水に膨潤性を有するものであり、好ましくは水によって層間が膨潤する性質を有するものが用いられる。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、特に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みの層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
【0016】
本発明の高分子ゲル積層体に用いる溶媒は、水であるが、目的とする高分子ゲルシートが調製できる限り、水と混和する有機溶媒も用いられる。また、塩などを含む水溶液も使用可能である。なお、高分子ゲル積層体調製後に水と混和する有機溶剤に全体を置換することも可能である。水と混和する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合溶媒が挙げられる。更に、グリセリンなどの低揮発性媒体で置換した物も用いられる。
【0017】
本発明において、高分子ゲル積層体を構成する水溶性有機モノマー重合体と水膨潤性粘土鉱物の配合比率は、用いる水溶性有機モノマーや水膨潤性粘土鉱物の種類によっても異なり、必ずしも限定されるものではないが、高分子ゲル合成や不織布またはネットとの複合が容易であることや均一性に優れることなどから、水溶性有機モノマー重合体に対する水膨潤性粘土鉱物の質量比が0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.03〜2.0、特に好ましくは0.1〜1.0である。かかる質量比がかかる範囲であれば得られる高分子ゲルの特性が十分となり、高分子ゲル積層体の製造が容易で、また得られる高分子ゲル積層体の剛性が高くなる。
【0018】
本発明において使用する高分子ゲルは、1kPa以上の引っ張り弾性率、20kPa以上の引っ張り強度、および50%以上の破断伸びといった優れた物性を実現できる柔軟且つ強靭な材料であり、好ましくは、引っ張り弾性率が5kPa以上、引っ張り強度が50kPa以上、破断伸びが50%以上、さらに好ましくは引っ張り弾性率が10kPa以上、引っ張り強度が80kPa以上、破断伸びが100%以上の物性を有する。特に好ましくは引っ張り弾性率が10kPa以上、引っ張り強度が80kPa以上、破断伸びが300%以上である。また、これら物性に特に上限は制限されないが、様々な変形が想定されるような用途においては、十分な柔らかさを有する、100kPa以下の引っ張り弾性率のものが特に好適である。
【0019】
本発明において使用する高分子ゲルは、他の力学的変形に対しても良好な機械特性を示し、例えば大きな圧縮、引っ張り又は曲げ変形に対しても優れた強靱性を有する。具体的には、元の高分子ゲルに比べて厚み方向で1/3以下の厚みに圧縮変形されても、その形状が破壊されない高分子ゲルや、又は長さ中心点で100度以上の角度に曲げ変形されても、その形状が破壊されない高分子ゲルとすることもできる。
【0020】
[布帛]
本発明の高分子ゲル積層体に用いる布帛とは繊維状の物質をシート状にしたもので、織布や不織布、ネット及びそれらの加工品などが挙げられる。織布としては、繊維状の物質を平織、綾織、朱子織等の方法で交互に組み合わせたものが挙げられる。不織布としては、乾式法や湿式法により繊維を集積し、接着剤の使用、又は水流絡合等により繊維を結合させたものが挙げられる。ネットとしては、各種の網状のものを適宜使用できる。これらの加工品としては、例えば、織布や不織布等に故意に孔を開けたもの、あるいはポリマーや金属等のシートに穴を開けて成形したものが挙げられる。この場合の孔は、通常1mm以上の網目の大きさを持ち、シートを貫通しているものが好ましい。また、蛇腹のような折りの入ったもの、ハニカム形態、三次元織物、パンチングメタルのような穴加工のなされたものなどが挙げられる。
【0021】
本発明において複合化される布帛は、一層または多層のいずれもが有効に用いられる。
【0022】
本発明の布帛として用いられる不織布等の材質としては、特に限定されないが、綿、パルプ、及び羊毛等の天然繊維、またナイロン、ポリエステル、及びポリ乳酸等の合成繊維、さらにはガラス繊維や炭素繊維等が用いられる。特に生体適合性や生分解及び生体吸収性を有するものは好ましく用いられる。また、本発明の布帛は親水性、疎水性のものが選択して用いられ、更には親水性及び疎水性を併せ持つもの(例:上面が疎水性、下面が親水性)も好ましく用いられる。
【0023】
本発明の布帛として用いられる不織布等は、高分子ゲル積層体を構成する高分子ゲルとともに変形出来る柔軟性を持つことが好ましい。特に、不織布等が伸縮性を持つことが望ましく、特に、該不織布等が高分子ゲルと同等の破断伸びを有することにより、構成する高分子ゲルの柔軟且つ強靱であるという優れた物性を有効に生かすことが出来ることにより好ましい。
【0024】
[高分子ゲル積層体]
本発明の高分子ゲル積層体は、上記高分子ゲルからなる層と、布帛からなる層が積層されたものである。その積層形態は任意であり、高分子ゲルからなる層の片表面または両表面を布帛からなる層と積層したもの、布帛からなる層の両面を高分子ゲルからなる層と積層したもの、これらをさらに積層したものなどのいずれであってもよい。
【0025】
また、積層する際に、高分子ゲルからなる層と布帛からなる層との一部のみが接着するように積層したり、複数の点で接着するように積層したりするなど、場所により接着状態が異なるようにすることができる。例えば、疎水性不織布の一部に親水化処理を行い、高分子ゲルとの親和性を高くした不織布から構成される高分子ゲル積層体は、該不織布の親水化処理を行った部分のみが高分子ゲルと接着しており、該不織布の疎水性部分とは高分子ゲルからなる層と接触しているのみであり、このようにして得られる高分子ゲル積層体においては、該不織布は高分子ゲルとは異なった変形等を行うことが可能となる。このような状態の高分子ゲル積層体では、柔軟性や取り扱い性が向上することが可能となる。
【0026】
また、高分子ゲルに対する布帛の質量比は、高分子ゲル積層体が形成出来ればよく、特に限定されない。また、高分子ゲル積層体に含まれる溶媒の量も、組成または目的に応じて変化され、一概には規定されないが、好ましくは高分子ゲル積層体中の固形分に対して質量比が0〜100である。特に布帛との複合化により弾性率や強度の向上を目指す場合は、水または溶媒の量はかかる質量比が0〜30が好ましく、更に好ましくは0〜10である。なお、かかる水の量は、不織布等の布帛との複合体形成による平衡膨潤率の低下によるほか、高分子ゲル積層体調製後に、水の一部または全部を乾燥により除去する方法によっても制御される。
【0027】
本発明の高分子ゲル積層体の厚みは、特に限定は受けないが、構成する布帛の効果を現せること、高分子ゲル積層体の製造が容易に行えることなどから、0.1mm〜100cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、1mm〜10cmの範囲である。
【0028】
また、本発明の高分子ゲル積層体には、布帛として用いられる不織布等の他、機能性を有する素材(例えば、生体吸収性または生体適合性を有する高分子)をゲル中に均一に、または不織布やネットに予め含ませておくことも有効である。生体吸収性または生体適合性を有する高分子としては、例えばコラーゲン、ゼラチン、フィブリノーゲン、血清アルブミン、グルテンなどのタンパク質やペプチド、デオキシリボ核酸やリボ核酸などの核酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン酸、デンプン、デキストラン、プルランなどの多糖類、ポリリンゴ酸やポリ−β−ヒドロキシ酪酸などのエステル、ポリ乳酸などが用いられる。
【0029】
而して、本発明の高分子ゲル積層体は、優れた力学物性、膨潤安定性、また生体適合性を有する。力学物性においては、有機架橋ゲルにおけるような脆さは無く、且つ広く制御された弾性率、強度、伸張性を有する他、力学安定性などに優れる。また、膨潤性については、過度の膨潤をせず、水中でも安定した膨潤度を保つ特徴を有する。更に、生体適合性においても優れた特徴を有する。
【0030】
従って、かかる高分子ゲル積層体は、種々の特徴を有することにより、各種の用途へ適用できるが、特に振動吸収材料、吸着材料、細胞培養基材、バイオリアクター用材料、創傷被覆体、体内埋め込みインプラント材(柔軟フィルム及び硬質成型物)などに有用である。
【0031】
特に、本発明の高分子ゲル積層体は、その優れた引っ張り強度と破断伸びにより、縫製用部材として好適に用いられる。その縫合方法としては、特に限定はされないが、縫合糸と縫合針を用いて、手動により該ゲルシートに縫合糸を通す方法や、ミシン等縫合機械を用いて、自動で該ゲルシートに縫合糸を通す方法が挙げられる。
【0032】
本発明における高分子ゲル積層体を縫合する相手としては、縫合が可能である材料であれば特に限定されないが、例えば、他の高分子ゲル積層体、不織布等の布帛類、及びポリウレタン等のフィルムなどからなる人工物、また、皮膚や腱、及び筋肉等の生体組織などが挙げられる。
【0033】
[製造方法]
本発明において、不織布等の布帛からなる層を高分子ゲルからなる層と積層する方法は、特に限定されないが、例えば、高分子ゲル積層体の不織布やネットの孔の内部に高分子ゲルを含有させ、物理的に不織布やネットと高分子ゲルとが付着しており、分離しないようにする方法や、不織布等の表面を修飾して、高分子ゲルと化学的に結合させる方法などが挙げられる。
【0034】
かかる布帛は高分子ゲルとの接着性を上げるまたは低下させるために、表面処理をしておくことは有効である。例えば、疎水性不織布表面をイオン性化合物との反応や、オゾン、プラズマ、電子線などでの照射処理などの公知の方法により親水化処理を行い、高分子ゲルとの親和性を高くすることにより、高分子ゲルとの接着性を上げる方法、あるいは、不織布等の表面にウレタン樹脂等をコーティングすることにより、高分子ゲルとの接着性程度を変化させる方法などが挙げられる。
【0035】
本発明の高分子ゲル積層体の製造方法としては、具体的には、水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物と水を含む均一溶液を調製した後、溶液の内部または表面に不織布またはネットを含有または接触させ、次いで、水溶性有機モノマーを重合させることで高分子ゲル積層体を調製する。ここで、層状に剥離した水膨潤性粘土鉱物が架橋剤の働きをすることにより水膨潤性粘土鉱物を含む水溶性有機モノマー重合体の三次元網目が形成される。同時に、高分子ゲル内部または表面に密着した形で、不織布またはネットが共存されて高分子ゲル積層体が得られる。更に、得られた高分子ゲル積層体の表面に、前記均一反応溶液を塗布した後、反応させたり、放射線照射、乾燥、切断、切削などにより、目的に応じた物性および表面状態を有する高分子ゲル積層体を得ることができる。
【0036】
なお、有機架橋剤で架橋して得られる高分子ゲルを用いた場合は、全体としての力学物性、取り扱い性が極めて悪く、必要な伸張や圧縮に耐えられない。また、前記の加工や縫合が困難である。
【0037】
また、本発明の高分子ゲル積層体には、得られた高分子ゲル積層体を慣用の方法で乾燥し、溶媒の一部もしくは全部を除去した高分子ゲル積層体の乾燥物を得ることも含まれる。高分子ゲル積層体の乾燥物は、水または水と混和する有機溶媒などの溶媒を再び含ませることにより、可逆的に高分子ゲル積層体を再生することができる。
【0038】
以下に本発明の高分子ゲル積層体の製造方法をより詳細に述べる。まず、水溶性有機モノマーの重合反応は例えば、過酸化物の存在、加熱または紫外線照射など慣用の方法を用いたラジカル重合により行わせることができる。ラジカル重合開始剤および触媒としては、慣用のラジカル重合開始剤および触媒のうちから適宜選択して用いることができる。好ましくは水に分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが用いられる。特に好ましくは層状に剥離した粘土鉱物と強い相互作用を有するカチオン系ラジカル重合開始剤である。具体的には、重合開始剤として水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム、水溶性のアゾ化合物、例えば、和光純薬工業株式会社製のVA−044、V−50、V−501などが好ましく用いられる。その他、ポリエチレンオキシド鎖を有する水溶性のラジカル開始剤なども用いられる。
【0039】
また触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやβ−ジメチルアミノプロピオニトリルなどが好ましく用いられる。重合温度は、用いる水溶性有機高分子、重合触媒および開始剤の種類などに合わせて0℃〜100℃の範囲に設定する。重合時間も触媒、開始剤、重合温度、重合溶液量(厚み)などの重合条件によって異なり、一概に規定できないが、一般に数十秒〜十数時間の間で行う。
【0040】
本発明の高分子ゲル積層体の製造では、予め製造したゲルと布帛と新たなゲル反応液を用いて、内部及び/または表面に布帛を一層または多層に複合したゲルシートを製造することが出来る。
【0041】
本発明の高分子ゲル積層体の製造においては、力学物性が高く取り扱い性に優れているため、重合容器の形状を変化させたり、重合後のゲルを切削加工することなどで種々の大きさや形状をもった高分子ゲル積層体を調製できる。例えば、繊維状、棒状、平板状、円柱状、らせん状、球状など任意の形状を有する高分子ゲル複合材が調製可能である。また上記の重合反応において更に慣用の界面活性剤を共存させる等の方法で、得られる高分子ゲル複合材を微粒子形態で製造することも可能である。
【実施例】
【0042】
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
(製造例)
粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(Rockwood Ltd.製「ラポナイトXLG」)を、有機モノマーはN,N−ジメチルアクリルアミド(興人株式会社製:以下、DMAAと略記。)を既知の方法により精製してから使用した。重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学株式会社製:以下、KPSと略記。)を、重合促進剤は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬工業株式会社製:以下、TEMEDと略記。)を使用した。超純水は、全て窒素バブリング等により、含有酸素を除去してから使用した。
【0044】
平底ガラス容器に、超純水57.06g、2.4gのラポナイトXLG、DMAA5.94gを加え、無色透明溶液を得た。さらにKPSとTEMEDを加えた。この溶液を厚み2mm、長さ100mm、幅100mmの圧入容器に酸素に触れないようにして移した後、密栓をし、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。なお、これらの操作は、酸素を遮断した状態で行った。重合開始から20時間後に、圧入容器内にほぼ無色透明で均一な厚さ2mmのシート状のゲル(A)が得られた。
【0045】
得られたゲルおよびその乾燥物に対する熱重量分析(セイコー電子工業株式会社製TG−DTA220:室温〜600℃)、フーリエ変換赤外線吸収スペクトル測定(日本分光株式会社製フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−550)、乾燥重量測定により、モノマー(DMAA)の99.5%以上が重合し、初期反応溶液とほぼ同じ割合の粘土鉱物(ラポナイトXLG)を含む高分子ゲルであることが確認された。広角X線回折(理学機器製:X線回折装置RINTULTIMA)および透過型電子顕微鏡観察(日本電子株式会社製JEM−200CX:加速電圧100KV)により、ゲル内部で粘土鉱物が層状剥離して分子状に分散していることが確認された。また、高分子ゲルの乾燥物を20℃の水に浸漬することにより、水を吸収し乾燥前と同じ形状の弾性のあるゲルに戻ることが確認され、得られた高分子ゲルにおいてポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)とクレイを主成分とする三次元網目構造が形成されていることが確認された。
【0046】
このようにして得られたシート状高分子ゲル(A)を1cm×5cmの大きさに切断し、チャック部での滑りの無いようにして引っ張り試験装置(株式会社島津製作所製、卓上型万能試験機AGS−H)に装着し、評点間距離30mm、引っ張り速度100mm/分にて引っ張り試験を行った。その結果、引っ張り強度が85kPa、破断伸びが1520%、弾性率が5.2kPaであり、いずれも柔らかさと強靱さを有していることが確認された。
【0047】
このシート状ゲル(A)を2cm×2cmの大きさに切断し、シート状ゲル(A’)とした。次に、100ml容器に20℃の蒸留水を入れ、ゆっくりと撹拌しながらその中にシート状ゲル(A’)を丁寧に入れた。その後、蒸留水の温度を20℃に保ちながら、シート状ゲル(A’)を時々取り出して、重量測定を行った。測定開始から10日後に、重量はほぼ一定になり、平衡膨潤に達した。この時の、該シート状ゲルに含まれる有機モノマーの重合体と粘土鉱物との合計質量に対する水の質量比は、250であった。
【0048】
(実施例1)
製造例と同様の方法で,ラポナイトXLGとDMAA、KPS、及びTEMEDを含む反応溶液を作成した。この溶液を厚み2mm、長さ100mm、幅100mmの圧入容器に酸素に触れないようにして移した後、あらかじめ親水化処理を行った不織布(商品名:FE−610、目付30g/m、日本バイリーン株式会社製)を圧入容器の厚さ方向の中間に位置するように挿入し、密栓をして、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
重合開始から20時間後に、圧入容器内に、ほぼ無色透明で均一な高分子ゲルの内部に親水化処理をされた不織布を内部に含む厚さ2mmの高分子ゲル積層体(1)が得られた。
【0049】
このようにして得られた高分子ゲル積層体(1)を用いて、製造例と同様の方法で引っ張り試験を行ったところ、最大引っ張り強度が5.3MPa、破断伸びが高分子ゲル積層体(1)全体で1450%となり、強靱であるが、短い延伸では全体が破断しない特徴を示した。
【0050】
高分子ゲル積層体(1)を2cm×2cmの大きさに切断し、高分子ゲル積層体(1’)とした。次に、100ml容器に20℃の蒸留水を入れ、ゆっくりと撹拌しながらその中に高分子ゲル積層体(1’)を丁寧に入れた。その後、蒸留水の温度を20℃に保ちながら、高分子ゲル積層体(1’)を時々取り出して、重量測定を行った。測定開始から10日後に、重量はほぼ一定になり、平衡膨潤に達した。この時の、該シート状ゲルに含まれる有機モノマーの重合体と粘土鉱物との合計質量に対する水の質量比は、245であり、製造例で得られた不織布を含まないゲルシート(A’)と同等の性能であった。
【0051】
(実施例2)
製造例と同様の方法で,ラポナイトXLGとDMAA、KPS、及びTEMEDを含む反応溶液を作成した。この溶液を厚み2mm、長さ100mm、幅100mmの圧入容器に酸素に触れないようにして移した後、あらかじめ親水化処理を行った不織布FE−610を圧入容器の厚さ方向の上面に位置するように挿入し、密栓をして、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
重合開始から20時間後に、圧入容器内に、ほぼ無色透明で均一な高分子ゲルの内部に親水化処理をされた不織布が上面に接着した厚さ2mmの高分子ゲル積層体(2)が得られた。
【0052】
このようにして得られた高分子ゲル積層体(2)を用いて、製造例と同様の方法で引っ張り試験を行ったところ、最大引っ張り強度が5.5MPa、破断伸びがゲルシート(2)全体で1480%となり、強靱であるが、短い延伸では全体が破断しない特徴を示した。
【0053】
この高分子ゲル積層体(2)を2cm×2cmの大きさに切断し、高分子ゲル積層体(2’)とした。次に、100ml容器に20℃の蒸留水を入れ、ゆっくりと撹拌しながらその中に高分子ゲル積層体(2’)を丁寧に入れた。その後、蒸留水の温度を20℃に保ちながら、高分子ゲル積層体(2’)を時々取り出して、重量測定を行った。測定開始から10日後に、重量はほぼ一定になり、平衡膨潤に達した。この時の、該高分子ゲル積層体に含まれる有機モノマーの重合体と粘土鉱物との合計質量に対する水の質量比は、156であり、製造例で得られた不織布を含まないゲルシート(A’)よりもやや膨潤を抑制するという性質を示した。
【0054】
次に、高分子ゲル積層体(2)の水分乾燥時間の測定を行った。3cm×3cmに切断した高分子ゲル積層体(2)の不織布層を上向きにして、ポリプロピレン製トレイにのせ、25℃雰囲気下で静置して、重量変化を観察したところ、測定前のシート状ゲル(2)の高分子ゲル層の含水率が88%であったのに対して、測定開始から24時間後の含水率は75%、測定開始80時間後でも含水率50%であり、十分な柔軟性を保つ含水率を維持していた。
【0055】
(実施例3)
製造例と同様の方法で,ラポナイトXLGとDMAA、KPS、及びTEMEDを含む反応溶液を作成した。次に、片面のみにあらかじめ親水化処理を行った不織布FE−610を厚み2mm、長さ100mm、幅100mmの圧入容器の底部に親水化処理面が露出するように向けて、隙間が出来ないように敷いた。そこに先ほど作成した反応溶液を酸素に触れないようにして移した後、あらかじめ親水化処理を行った別の不織布FE−610を圧入容器の厚さ方向の上面に位置するように挿入し、密栓をして、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
重合開始から20時間後に、圧入容器内に、ほぼ無色透明で均一な高分子ゲルの内部に親水化処理をされた不織布が上下面両方に接着した厚さ2mmの高分子ゲル積層体(3)が得られた。このとき、下面に敷いた不織布の圧入容器と接触した部分に、反応溶液が不織布の端部から少量流れ込み、高分子ゲルを形成していたが、不織布内に侵入することはなく、ゲルシート(3)と容易に分離が可能であった。
【0056】
このようにして得られた高分子ゲル積層体(3)を用いて、製造例と同様の方法で引っ張り試験を行ったところ、最大引っ張り強度が8.6MPa、破断伸びが高分子ゲル積層体(3)全体で1350%となり、強靱であるが、短い延伸では全体が破断しない特徴を示した。
【0057】
この高分子ゲル積層体(3)を2cm×2cmの大きさに切断し、シート状ゲル(3’)とした。次に、100ml容器に20℃の蒸留水を入れ、ゆっくりと撹拌しながらその中に高分子ゲル積層体(3’)を丁寧に入れた。その後、蒸留水の温度を20℃に保ちながら、高分子ゲル積層体(3’)を時々取り出して、重量測定を行った。測定開始から10日後に、重量はほぼ一定になり、平衡膨潤に達した。この時の、該シート状ゲルに含まれる有機モノマーの重合体と粘土鉱物との合計質量に対する水の質量比は、88であり、製造例で得られた不織布を含まないゲルシート(A’)とは異なる膨潤抑制の性質を示した。
【0058】
次に、高分子ゲル積層体(3)の水分乾燥時間の測定を行った。3cm×3cmに切断したシート状ゲル(3)をポリプロピレン製トレイにのせ、25℃雰囲気下で静置して、重量変化を観察したところ、測定前の高分子ゲル積層体(3)の高分子ゲル層の含水率が88%であったのに対して、測定開始から24時間後の含水率は82%、測定開始120時間後でも含水率50%であり、十分な柔軟性を保つ含水率を維持していた。
【0059】
(実施例4)
製造例と同様の方法で,ラポナイトXLGとDMAA、KPS、及びTEMEDを含む反応溶液を製造例の50倍量作成した。次に、長さ150mmであり、幅100mmである、あらかじめ親水化処理を行った不織布FE−610に対して、長さ方向で10mmごとに山折りと谷折りを交互に付け、蛇腹状にした。その後、反応溶液を厚み10cm、長さ100mm、幅100mmの圧入容器に酸素に触れないようにして移した後、先ほど作成した蛇腹状の不織布を、蛇腹を折り畳まないようにして長さ方向に隙間なく塞がるようにして、圧入容器の内部に挿入し、密栓をして、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。
【0060】
重合開始から20時間後に、圧入容器内に、ほぼ無色透明で均一な高分子ゲルの内部に親水化処理をされた不織布が蛇腹状に充填された厚さ10cmの高分子ゲル積層体(4)が得られた。
【0061】
このようにして得られた高分子ゲル積層体(4)を用いて、製造例と同様の方法で引っ張り試験を行ったところ、最大引っ張り強度が5.7MPa、最大引っ張り強度を示したときの伸びが200%なり、高分子ゲル積層体(4)を構成する高分子ゲルの柔軟性を生かして、延伸が高倍率になるまで、強靱さを保つことが出来るという特徴を示した。
この高分子ゲル積層体(4)を2cm×2cmの大きさに切断し、高分子ゲル積層体(4’)とした。次に、1000ml容器に20℃の蒸留水を入れ、ゆっくりと撹拌しながらその中に高分子ゲル積層体(4’)を丁寧に入れた。その後、蒸留水の温度を20℃に保ちながら、高分子ゲル積層体(4’)を時々取り出して、重量測定を行った。測定開始から10日後に、重量はほぼ一定になり、平衡膨潤に達した。この時の、該シート状ゲルに含まれる有機モノマーの重合体と粘土鉱物との合計質量に対する水の質量比は、110であり、製造例で得られた不織布を含まないゲルシート(A’)とは異なる膨潤抑制の性質を示した。
【0062】
(実施例5)
実施例2と同様の方法で高分子ゲル積層体(2)を2枚調製し、その高分子ゲル積層体それぞれの端部の側面1辺部分を接触するようにして、高分子ゲル積層体(2)を並べた。そのゲルシート同士の接触部分を、手術用縫合糸(商品名:モノクリル、ジョンソンエンドジョンソン株式会社製)を用いて縫合針による手動で縫合した。縫合した後に、縫合糸の末端部分は固く結束させ、容易に高分子ゲル積層体(2)から引き抜くことが出来ないようにした。
【0063】
このようにして得られた2枚が縫合された高分子ゲル積層体(2)の1枚ずつを左右の手に持ち、縫合部分に負荷がかかるようにして延伸したところ、縫合部分は、破壊することなくシートとしての形状を維持していた。
【0064】
(実施例6)
使用するラポナイトXLGの量を4.8gとすること以外は、製造例と同様の方法で、不織布を含まない高分子ゲル積層体(5)を作成した。この得られた高分子ゲル積層体(5)を2枚用いて、実施例5と同様の方法で縫合糸による縫合を行った。
このようにして得られた2枚が縫合された高分子ゲル積層体(5)の1枚ずつを左右の手に持ち、縫合部分に負荷がかかるようにして延伸したところ、縫合部分は、破壊することなくシートとしての形状を維持していた。
【0065】
(比較例)
実施例1において、ラポナイトXLGの代わりに、N,N−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬株式会社製)を0.42g加えること以外は同様の方法で、ゲル積層シート(H1)を作成した。
【0066】
得られたゲル積層シート(H1)を用いて、製造例と同様の方法で引っ張り試験を行ったところ、元の30%延伸後にゲル積層シートの高分子ゲル部分が破壊してしまい、そのときの破壊強度が0.6MPaとなり、不織布との複合化による強靱性の向上は見られなかった。
【0067】
またこのゲル積層シート(H1)を用いて、実施例6と同様の方法で、縫合を行ったところ、縫合糸をゲル積層シートに挿入したところから、直ちに破壊してしまい、縫合を行うことは出来なかった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有する高分子ゲルからなる層と、布帛からなる層との積層構造を有することを特徴とする高分子ゲル積層体。
【請求項2】
前記布帛が、不織布、織布、又はネットのいずれかである請求項1に記載の高分子ゲル積層体。
【請求項3】
前記布帛が伸縮性を有する請求項1又は2に記載の高分子ゲル積層体。
【請求項4】
前記高分子ゲルが、含水率90%の条件において、5kPa以上の引っ張り弾性率、50kPa以上の引っ張り強度、及び100%以上の破断伸びを有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高分子ゲル積層体。
【請求項5】
前記水溶性モノマーが、N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体、又はN,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の高分子ゲル積層体。
【請求項6】
前記水膨潤性粘土鉱物が、水膨潤性のヘクトライト、水膨潤性のモンモリロナイト、水膨潤性のサポナイト、又は水膨潤性の合成雲母からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子ゲル積層体。
【請求項7】
前記高分子ゲルが、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを重合させてなるものである請求項1〜6のいずれかに記載の高分子ゲル積層体。
【請求項8】
厚さが、0.1mm〜100cmの範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の高分子ゲル積層体。
【請求項9】
水溶性有機モノマーと水膨潤性粘土鉱物とから構成される高分子ゲルの反応溶液と布帛を接触させ、次いで水溶性有機モノマーを重合することによって高分子ゲル積層体を得ることを特徴とする、高分子ゲル積層体の製造方法。

【公開番号】特開2007−126572(P2007−126572A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320802(P2005−320802)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】