説明

高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子

【課題】 電界に応じて、大きな光散乱率、反射率や光の吸収量等の変化量を得ることができ、且つ安定な繰り返し特性を持ち、簡易な構成で透過型表示素子にも応用可能な高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子を提供する。
【解決手段】 液体と、電界に応じて前記液体を吸収・放出することで体積変化する帯電性高分子ゲルと、を有する高分子ゲル組成物であって、前記液体が非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする高分子ゲル組成物、及び該高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする光学素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光ガラス、調光素子、表示素子などの光学素子に広く利用可能な高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子に関し、詳しくは、電界により可逆的に色変化や光散乱し、幅広い波長領域において透過光量や反射光量を調節でき、多彩な色調を呈示することができ、多彩なパターンを表示できる等の様々な特性を有する高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会の進展にともないカラー表示システム、大面積表示システムへのニーズが増大している。これらを実現する技術としてCRT、液晶、EL、LED、プラズマなどの表示技術が開発されてきた。また、これらの自発光システムのほかに、低消費電力で人間の目に違和感の少ない反射型表示システムの開発が検討されている。反射型表示システムとしては、反射型液晶技術などが有力なものとなっている。
【0003】
一方、安価な大面積カラー表示システム、あるいは安価な大面積表示システムへのニーズは大きいが、それを実現する有望な技術が確立されていないのが現状である。候補材料としては、電気泳動、ツイストボール等が知られている。さらに刺激応答性高分子ゲルを用いた通電表示技術が知られている。以下にその例を挙げる。
【0004】
高分子ゲルを用いた通電表示技術として、通電による高分子ゲルの膨潤・収縮によって光散乱状態を変え、透明・白濁で調光および表示を行なう素子が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
染料を共有結合した着色高分子ゲルの通電による膨潤・収縮を利用した光学素子や、通電による高分子ゲルの膨潤・収縮によって光の吸収断面積の増減をおこし、光学濃度を変化させる表示素子が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
着色基板等と着色した高分子ゲルを組み合わせた光学素子、詳しくは、着色高分子ゲルの電気刺激による屈伸、膨潤・収縮等により、着色基板等を着色高分子ゲルで覆う割合を変えることで光学濃度を増減させる光学素子技術が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
通電で膨潤・収縮する高分子ゲルと、顔料を液体中に分散した着色液体とを組み合わせた組成物からなる光学素子が提案されている。該光学素子は、通電による高分子ゲルの形状変化によって着色液体を移動させ、そのときに起こる着色液体の光の吸収量変化を利用したものである(例えば、特許文献5参照。)。
しかし、これら光学素子は、通電によって高分子ゲルを保持するための溶媒が電気分解し気泡が発生するために通電毎に表示品質や調光特性が損なわれてしまうという問題点があった。
【0007】
電極として導電性高分子等を適用することで、通電で引き起こされる液体の電気分解を防止し、電気分解による気泡を発生させない技術も提案されている(例えば、特許文献6及び7参照。)。しかし、電極に形成された導電性高分子等の固有な色によって十分な表示コントラストや、反射率、光の吸収量の変化量がとれないという課題がある。また、前記特許文献6で提案されている光学素子は、導電性高分子は素子として、通電耐久性に優れないという課題が残されている。更には、導電性高分子等の固有の色および素子構成から透過型の表示素子に応用することは困難である。一方、前記特許文献7で提案されている光学素子は、導電性高分子等を用いていることから、十分な表示コントラストや、反射率、光の吸収量の変化量がとれない、通電安定性に劣るという問題点がある。また、電極構成が複雑であることから、素子の製造コスト高を招いてしまう。
【0008】
このような、通電による調光・表示素子技術は、溶媒(膨潤液)中のイオン濃度の変化に応じて、高分子ゲルの体積変化を生じさせる技術が一般的であり、上述のように、電気分解し気泡が発生するために通電毎に表示品質や調光特性が損なわれてしまうという問題点や透過型の表示素子に応用することが困難であったり、電極構成が複雑であることから、素子の製造コスト高を招いたりしており、改善が望まれているのが現状である。
【0009】
更に、液体と、電界に応じて前記液体を吸収・放出することで体積変化する帯電性高分子ゲルと、を有する高分子ゲル組成物を用いた光学素子が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。この光学素子は、液体として絶縁性液体を用いることで、電極反応に由来する分解反応を抑制したものであり、吸液量の高いゲルを用い、繰り返し色変化を行なった場合においても、消色時の色濃度をより低く抑え、色変化をより顕著にすることが望まれている。
【特許文献1】特開平4−134325号公報
【特許文献2】特開平5−188354号公報
【特許文献3】特開平4−274480号公報
【特許文献4】特開平9−160081号公報
【特許文献5】特開昭61−149926号公報
【特許文献6】特公平7−95172号公報
【特許文献7】特開平11−236559号公報
【特許文献8】特開2003−147221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、電界に応じて、大きな光散乱率、反射率や光の吸収量等の変化量を得ることができ、且つ安定な繰り返し特性を持ち、簡易な構成で透過型表示素子にも応用可能な高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、帯電性高分子ゲルを膨潤させる液体中に非イオン性界面活性剤を添加することにより、前記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
<1> 液体と、電界に応じて前記液体を吸収・放出することで体積変化する帯電性高分子ゲルと、を有する高分子ゲル組成物であって、前記液体が非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする高分子ゲル組成物である。
【0012】
<2> 前記非イオン性界面活性剤が前記液体の0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする<1>に記載の高分子ゲル組成物である。
<3> 前記帯電性高分子ゲルがイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の高分子ゲル組成物である。
【0013】
<4> 前記帯電性高分子ゲルが帯電剤を含有するイオン性高分子ゲルであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の高分子ゲル組成物である。
<5> 前記帯電性高分子ゲルが帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲルであることを特徴とする<1>又は<2>に記載の高分子ゲル組成物である。
【0014】
<6> 前記帯電性高分子ゲルが調光用材料を含有することを特徴とする<1>〜<5>の何れか1つに記載の高分子ゲル組成物である。
<7> 前記帯電剤が調光用材料であることを特徴とする<4>又は<5>に記載の高分子ゲル組成物である。
【0015】
<8> 前記液体の体積抵抗率が103Ωcm以上であることを特徴とする<1>〜<7>の何れか1つに記載の高分子ゲル組成物。
<9> <1>〜<8>の何れか1つに記載の高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする光学素子である。
【0016】
<10> 更に、前記高分子ゲル組成物に電界を付与する電界付与手段を備えることを特徴とする<9>に記載の光学素子である。
<11> 前記電界付与手段が高分子ゲル組成物に電界を付与する電極であり、前記高分子ゲル組成物が前記電極上に固定化されていることを特徴とする<10>に記載の光学素子である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電界に応じて、大きな光散乱率、反射率や光の吸収量等の変化量を得ることができ、且つ安定な繰り返し特性を持ち、簡易な構成で透過型表示素子にも応用可能な高分子ゲル組成物、及びそれを用いる光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の高分子ゲル組成物は、液体と、電界に応じて前記液体を吸収・放出することで体積変化する帯電性高分子ゲルと、を有する高分子ゲル組成物であって、前記液体が非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。本発明の高分子ゲル組成物は、帯電性高分子ゲルと液体とを有する構成で、電界に応じて可逆的な大きな体積変化を生じさせることができる。また、帯電性高分子ゲル中に顔料や染料等の調光用材料を分散させて用いた場合にも、膨潤・収縮時の吸収断面積の変化により光学特性を大きく変化させることが可能であり、調光、表示素子等の光学素子に応用可能である。なお、この体積変化は、帯電性高分子ゲルと電界との相互作用により引き起こされるものと考えられる。
【0019】
また、本発明の高分子ゲル組成物は、帯電性高分子ゲルと液体とを有する構成で、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に調光性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を有する。また、導電性高分子等を利用する必要がないために、光散乱率、反射率や光の吸収量等を大きく変化させることができる。さらには、単純な素子構成で、透過型あるいは積層型のカラー表示素子、調光素子などの光学素子に応用可能なものとなる。
【0020】
前記帯電性高分子ゲルについて説明する。
本発明において、帯電性高分子ゲルとは、イオン性高分子ゲル、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル及び帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲルと定義する。ここで、イオン性高分子ゲルとは高分子鎖にイオン解離基を持つ高分子ゲルをいい、非イオン性高分子ゲルとは高分子鎖にイオン解離基を持たない高分子ゲルをいう。
以下、各高分子ゲルの好適な具体例を列挙する。なお、これら具体例の表記において、「(メタ)アクリレート」等の記述は、「アクリレート」および「メタクリレート」等のいずれをも含む表現である。
【0021】
〈1〉イオン性高分子ゲル
前記イオン性高分子ゲルの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸の架橋物やその塩;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその塩;ポリマレイン酸の架橋物やその塩;マレイン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその塩;ポリビニルスルホン酸の架橋物やビニルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物;ポリビニルベンゼンスルホン酸の架橋物やその塩;ビニルベンゼンスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその塩;ポリアクリルアミドアルキルスルホン酸の架橋物やその塩;アクリルアミドアルキルスルホン酸と(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドの架橋物やその塩酸塩;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等との共重合体の架橋物やその4級化物や塩;ポリジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドとポリビニルアルコールとの複合体の架橋物やその4級化物や塩;ポリビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との複合体の架橋物やその塩;カルボキシアルキルセルロース塩の架橋物;ポリ(メタ)アクリロニトリルの架橋物の部分加水分解物やその塩などが挙げられる。
これらのイオン性高分子ゲルは、架橋剤の添加、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
【0022】
〈2〉帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル
前記帯電剤を含有させたイオン性高分子ゲルとしては、前記〈1〉において、イオン性高分子ゲルの具体例として記載したものと同様なイオン性高分子ゲルが挙げられる。一方、前記イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電剤としては、各種両親媒性(高)分子、ニグロシン系化合物、アルコキシ化アミン類、第四級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンおよびタングステンの単体および化合物、モリブデンキレート顔料、疎水性シリカ、ホウ素類、ハロゲン化合物、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸の金属錯塩、塩素化ポリオレフィン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン、オイルブラック、ナフテン酸金属塩、脂肪酸金属塩、樹脂酸石けんなどが挙げられる。
前記イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電剤の添加量は、2〜70質量%の範囲が好ましい。また、帯電剤が後で述べる調光用材料であっても構わない。
【0023】
〈3〉帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル
前記帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲルとしては、下記に列挙するモノマー群から選択される1種以上のモノマーからなる単独重合体の架橋体や2種以上のモノマーからなる共重合体の架橋体が好適に挙げられる。
―モノマー群―
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルアミン、アリルアミン、スチレン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、スチレン、スチレン誘導体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、イソプレン、ブタジエン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート。
【0024】
前記非イオン性高分子ゲルとしては、前記モノマー群からなる(共)重合体の架橋体の他にも、ポリエステル系高分子の架橋体、ポリビニルアセタール誘導体の架橋体、ポリウレタン系高分子の架橋体、ポリウレア系高分子の架橋体、ポリエーテル系高分子の架橋体、ポリアミド系高分子の架橋体、ポリカーボネート系高分子の架橋体などが好ましく使用できる。
前記非イオン性高分子ゲルは、架橋剤の添加、あるいは高分子に電子線、γ線などの放射線を照射する、加熱する、さらには過酸化物を添加することによって三次元架橋することで作製することができる。
【0025】
一方、前記非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電剤としては、前記〈2〉において、イオン性高分子ゲルに含有させる帯電剤と同様のものが挙げられる。
また、前記非イオン性高分子ゲル中に含有させる帯電剤の添加量は、2〜70質量%の範囲が好ましい。また、帯電剤が後で述べる調光用材料であっても構わない。このとき非イオン性高分子ゲル中に含有させる調光用材料の好ましい濃度は、2〜70質量%の範囲であり、特に好ましくは5〜50質量%の範囲である。
更に、前記非イオン性高分子ゲルの電界に対する応答性を向上させるために、調光用材料以外の帯電剤を、別途非イオン性高分子ゲル中に含有させても構わない。
【0026】
本発明における帯電性高分子ゲルの電界の付与による体積変化量は特に限定されないが、高いほど好ましく、膨潤時および収縮時の体積比が5以上、特に10以上のものが好ましい。
また、本発明における帯電性高分子ゲルの体積変化は、一方的であるものでも可逆的であるものでもよいが、調光素子や表示素子などに利用する場合は、可逆的なものであることが好ましい。
【0027】
さらに、前記帯電性高分子ゲルの形態は特に限定されないが、刺激応答特性を考慮すると、粒子の形態として使用することが特に好ましい。その粒子の形態も特に限定されないが、球体、楕円体、多面体、多孔質体、繊維状、星状、針状、中空状などのものを使用することができる。
【0028】
本発明における帯電性高分子ゲルは、乾燥状態での平均粒径が0.01μm〜5mmの範囲、特に、0.01μm〜1mmの範囲の粒子であることが好ましい。前記乾燥状態での平均粒子径が0.01μm未満となると、光学的な特性を得ることができなくなる場合や、凝集等を起こしやすくなる場合があり、かつ、使用する場合にその扱いが困難となる場合がある。一方、前記乾燥状態での平均粒子径が5mmを超えると、応答速度が遅くなる場合がある。
【0029】
これらの帯電性高分子ゲルは、物理的粉砕法等で粒子化する方法、架橋前の高分子を化学的粉砕法等によって粒子化した後に架橋して高分子ゲル粒子を得る方法、あるいは乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法などの粒子化重合法などの一般的な粒子化方法によって粒子化することができる。また、架橋前の高分子をノズル口金等によって押し出して繊維化し、これを架橋した後に粉砕する方法、あるいは前記繊維を粉砕して粒子化した後に架橋する方法によって帯電性高分子ゲルを粒子化することも可能である。
【0030】
既述の帯電性高分子ゲルはそれ自身でも体積変化にともない光散乱性が変化するという調光能を示すが、より大きな調光特性や色変化を発現するために調光用材料を高分子ゲルに添加することが好ましい。
添加する調光用材料としては、染料、顔料や光散乱材などが挙げられる。また、前記調光用材料は帯電性高分子ゲルに物理的あるいは化学的に固定化されることが好ましい。
前記染料としては、例えば、黒色のニグロシン系染料や赤、緑、青、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー染料であるアゾ染料、アントラキノン系染料、インジゴ系染料、フタロシアニン系染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられ、特に光吸収係数が高いものが好ましい。具体的には、C.I.ダイレクトイエロー−1、8、11、12、24、26、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、157;C.I.アシッドイエロー−1、3、7、11、17、19、23、25、29、38、44、79、127、144、245;C.I.ベイシックイエロー−1、2、11、34;C.I.フードイエロー−4;C.I.リアクティブイエロー−37;C.I.ソルベントイエロー−6、9、17、31、35、100、102、103、105;C.I.ダイレクトレッド−1、2、4、9、11、13、17、20、23、24、28、31、33、37、39、44、46、62、63、75、79、80、81、83、84、89、95、99、113、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230、231;C.I.アシッドレッド−1、6、8、9、13、14、18、26、27、35、37、42、52、82、85、87、89、92、97、106、111、114、115、118、134、158、186、249、254、289;C.I.ベイシックレッド−1、2、9、12、14、17、18、37;C.I.フードレッド−14;C.I.リアクティブレッド−23、180;C.I.ソルベントレッド−5、16、17、18、19、22、23、143、145、146、149、150、151、157、158;C.I.ダイレクトブルー−1、2、6、15、22、25、41、71、76、78、86、87、90、98、163、165、199、202;C.I.アシッドブルー−1、7、9、22、23、25、29、40、41、43、45、78、80、82、92、93、127、249;C.I.ベイシックブルー−1、3、5、7、9、22、24、25、26、28、29;C.I.フードブルー−2;、C.I.ソルベントブルー22、63、78、83〜86、191、194、195、104;C.I.ダイレクトブラック−2、7、19、22、24、32、38、51、56、63、71、74、75、77、108、154、168、171;C.I.アシッドブラック−1、2、7、24、26、29、31、44、48、50、52、94;C.I.ベイシックブラック−2、8;C.I.フードブラック−1、2;C.I.リアクティブブラック−31;C.I.フードバイオレット−2;C.I.ソルベントバイオレット−31、33、37;C.I.ソルベントグリーン−24、25;C.I.ソルベントブラウン−3、9等が挙げられる。これらの染料は、単独で使用してもよく、さもなければ所望とする色を得るために混合して使用してもよい。
【0031】
また、染料を前記帯電性高分子ゲルに固定化するために、不飽和二重結合基などの重合可能な基を有した構造の染料や、前記帯電性高分子ゲルと反応可能ないわゆる反応性染料などが好ましく使用される。
一方、前記帯電性高分子ゲル中に含有させる染料の好ましい濃度は、3〜50質量%の範囲であり、特に好ましくは5〜30質量%の範囲である。このように染料濃度は少なくとも高分子ゲルの乾燥あるいは収縮状態において飽和吸収濃度以上であることが望ましい。ここで、飽和吸収濃度以上とは、特定の光路長のもとにおける染料濃度と光学濃度(あるいは光吸収量)の関係が一次直線の関係から大きく乖離するような高い染料濃度の領域を示す。
【0032】
前記顔料及び光散乱材の好適な例としては、黒色顔料であるブロンズ粉、チタンブラック、各種カーボンブラック(チャネルブラック、ファーネスブラック等);白色顔料である酸化チタン、シリカなどの金属酸化物;炭酸カルシウムや金属紛などの光散乱材;やカラー顔料であるフタロシアニン系のシアン顔料、ベンジジン系のイエロー顔料、ローダミン系のマゼンタ顔料の他、アントラキノン系、アゾ系、アゾ金属錯体、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、インジゴ系、イソインドリノン系、キナクリドン系、アリルアミド系などの各種顔料や光散乱材を挙げることができる。
【0033】
例えば、前記イエロー系顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントイエロー−12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168等が好適に用いられる。
【0034】
また、前記マゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、レーキ顔料、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。より詳細には、C.I.ピグメントレッド−2、3、5、6、7、23、48;2、48;3、48;4、57;1、81;1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が特に好ましい。
【0035】
前記シアン系顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15;3、15:4、60、62、66等が特に好適に利用できる。
【0036】
また、使用する顔料や光散乱材の粒径は、1次粒子の平均粒径で0.001μm〜1μmのものが好ましく、特に0.01μm〜0.5μmのものが好ましい。これは粒径が0.01μm未満であると、顔料や光散乱材が帯電性高分子ゲルから流出してしまう場合があり、また、0.5μmを超えると、発色特性が悪くなる場合があるためである。
【0037】
前記したように顔料や光散乱材は帯電性高分子ゲル中に含有され、帯電性高分子ゲルから流出しないことが望まれる。顔料や光散乱材を帯電性高分子ゲルから流出させない方法としては、帯電性高分子ゲルの架橋密度を最適化して顔料や光散乱材を高分子網目中に物理的に閉じ込める方法、高分子ゲルとの電気的、イオン的、その他物理的な相互作用が高い顔料や光散乱材を用いる方法、表面を化学修飾した顔料や光散乱材を用いる方法等が好ましく挙げられる。例えば、表面を化学修飾した顔料や光散乱材としては、表面にビニル基などの不飽和基や不対電子(ラジカル)などの高分子ゲルと化学結合する基を導入したものや、高分子材料をグラフト結合したものなどが挙げられる。
【0038】
また、帯電性高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材の量は、染料と同様に少なくとも液体を含まない状態の高分子ゲル中において飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)の濃度であるが好ましい。
帯電性高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材の量を飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)にするためには、顔料や光散乱材の光吸収係数や光散乱係数にも依存するが、一般的には帯電性高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材の量が、3〜95質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは5質量%〜80質量%の範囲である。帯電性高分子ゲル中に含有される顔料や光散乱材の量が3質量%未満であると、飽和吸収濃度以上(あるいは飽和光散乱濃度以上)とはならず高分子ゲルの体積変化にともなう調光特性が得られない場合がある。一方、95質量%を超えると、帯電性高分子ゲルの応答速度や体積変化量が低下してしまう場合がある。
【0039】
このような調光用材料を含む帯電性高分子ゲルは、架橋前の高分子に調光用材料を均一に分散、混合した後に架橋する方法や、重合時に高分子前駆体モノマー組成物に調光用材料を添加して重合する方法によって製造することができる。重合時において顔料や光散乱材を添加する場合には前記したように重合性基や不対電子(ラジカル)をもつ顔料や光散乱材を使用し、高分子ゲルに化学結合することも好ましく実施される。
また、前記調光用材料は帯電性高分子ゲル中に極力均一に分散されていることが好ましい。特に、高分子への分散に際して、機械的混練法、攪拌法やあるいは分散剤などを利用して均一に分散させることが望ましい。
【0040】
これらの調光用材料として、分子内に酸基、水酸基、アミノ基、チオール基、ハロゲン、ニトロ基、カルボニル基などの極性基を有し、高分子ゲル内において調光用材料濃度が高い場合に凝集体を形成しやすい特性のものも好ましく使用することができる。このような調光用材料の例としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基を有するフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等を挙げることができる。さらに、高分子ゲルに共有結合するための付加反応性基や重合性基を有する調光用材料や、帯電性高分子ゲルとイオン結合などの相互作用する基を有する調光用材料などの各種の化学修飾した調光用材料を用いることも好ましい。
【0041】
(液体)
本発明の高分子ゲル組成物に使用される液体としては、水あるいは有機溶媒を使用することができる。具体的には、水、アルコール、ケトン、エステル、アミド、カーボネート、ニトリル、エーテル等の極性基を有する芳香族系有機溶剤、脂肪族系有機溶剤やそれらの混合物が使用できる。なお、液体には、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができる。さらに、種々の顔料、白色顔料、染料などの色素を添加することもできる。
【0042】
前記液体として具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミドなどのアミド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類、アセトニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシシランなどのエーテル類、ジメチルスロフォキシドなどや、それらの混合物が好適に使用できる。
【0043】
前記液体は、特に、その体積抵抗値が103Ωcm以上であることが好ましく、より好ましくは107〜109Ωcmである。このような体積抵抗値とすることで、より効果的に、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に調光特性が損なわれることがなく、優れた繰り返し安定性を付与することができる。このような観点からも、液体として体積抵抗値が103Ωcm以上である液体を用いることが特に好適である。なお、液体には、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加することができるが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが好ましい。
【0044】
前記液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、ジククロロエチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、イソプロパノール、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用できる。また、前記に示した体積抵抗率の範囲となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も好適に使用することができる。
【0045】
本発明において、前記帯電性高分子ゲルと液体との混合比は、質量比で1/2000〜1/1(高分子ゲル/液体)の範囲とすることが好ましく、1/1000〜1/2の範囲とすることがより好ましい。前記帯電性高分子ゲルと液体との混合比が1/2000を超えると、組成物の機械的強度などの物性が低下する場合があり、1/1未満になると、刺激応答による体積変化の応答速度が低下する場合がある
【0046】
本発明の高分子ゲル組成物において、液体と帯電性高分子ゲル(調光用材料を含む帯電性高分子ゲル)との屈折率の差が0.01以下であるものを用いると、粒子界面での光散乱性が低減し、色純度を向上できることから好ましい。このような屈折差が低いもの同士を組み合わせて用いることで、着色された帯電性高分子ゲル粒子を用いた場合に、発色時においても入射される光が散乱されず、透過することから、透過型の光学素子に好ましく利用することができる。
【0047】
本発明における液体は、非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。
前記液体に非イオン性界面活性剤を含有させることにより、電界に応じて、大きな光散乱率や反射率及び光の吸収量等の変化量を得ることができ、且つ安定な繰り返し特性を持つことができるという効果が得られる。これは非イオン性界面活性剤が帯電性高分子ゲルの網目上に吸着し、ゲル表面の粘着性を低下させるためと推測される。
また、前記非イオン性界面活性剤を用いることにより、電極内での電極反応による分解反応が起こらない。
尚、本発明において、非イオン性界面活性剤とは、イオン解離基を持たない界面活性剤を意味する。
【0048】
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類;ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類;モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類;モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類;モノパルミチン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、モノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビタン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類;モノラウリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、テトラステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、ヘキサステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビット脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類;ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類;ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロックポリマー;ポリジメチルシロキサン等を挙げることができる。
【0049】
前記非イオン性界面活性剤としては、上述の具体例の中でも、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類;モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類が特に好ましい。
【0050】
前記非イオン性界面活性剤の添加量は、前記液体に対し、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましい。前記非イオン性界面活性剤の添加量が0.001質量%未満であると、帯電性高分子ゲルの粒子の張り付き防止効果が得られなくなる場合があり、また20質量%を超えると、液体中の粘度が高くなり、高分子ゲルの体積変化速度が低下してしまう場合がある。
【0051】
また、好ましい前記液体と前記非イオン性界面活性剤の組み合わせとしては、プロピレンカーボネートとモノステアリン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとモノステアリン酸ソルビタン、DMFとモノステアリン酸ソルビタン、DMSOとモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、エチレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、エチレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、プロピレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、プロピレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、γ―ブチロラクトンとモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、DMFとモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、DMSOとモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、プロピレンカーボネートとモノオレイン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノオレイン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノオレイン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノオレイン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとモノオレイン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとモノオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、DMFとモノオレイン酸ソルビタン、DMSOとモノオレイン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノオレイン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノオレイン酸ソルビタンが挙げられ、
【0052】
この中でもプロピレンカーボネートとモノステアリン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、エチレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとモノステアリン酸ソルビタン、DMFとモノステアリン酸ソルビタン、DMSOとモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、γ―ブチロラクトンとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタン、プロピレンカーボネートとモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、エチレンカーボネートとDMFの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、エチレンカーボネートとDMSOの混合溶媒とモノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物がより好ましい。
【0053】
本発明の高分子ゲル組成物は、帯電性高分子ゲル及び液体を、高分子(所謂、マトリックス樹脂)中に分散したり、あるいは高分子膜でマイクロカプセル化したりして、固体化することで利用形態を拡大することもできる。これらの技術は特開平11−228850号公報と同様にして実施できる。マイクロカプセル化は、高分子材料の不溶化を利用したいわゆるコアセルベーション法、分散粒子の界面で重合を行いカプセル膜を形成するいわゆる界面重合マイクロカプセル化法、in situマイクロカプセル化重合法、液中乾燥法、液中硬化被覆マイクロカプセル化法、気体中に液滴を噴霧することでその表面にカプセル膜を形成するスプレードライングマイクロカプセル化法などを用いて実施することができる。これら技術の詳細は「近藤 保著、新版マイクロカプセル その製法・性質・応用 三共出版」などの成書に記述されている。カプセル化によって他の樹脂中に分散する等によってその用途範囲を拡大することが可能となる。
【0054】
次に、本発明の高分子ゲル組成物を用いた光学素子(本発明の光学素子)について説明する。
本発明の光学素子は、高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする。
本発明の光学素子は、用いる高分子ゲル組成物が固体化されている場合、そのままで調光、表示用等の光学素子として使用することができる。更に、強度、耐久性や機能の向上のために、他の基材上に本発明の高分子ゲル組成物を層状に形成すること、あるいは一対の基材間に本発明の高分子ゲル組成物を層状に挟持することで光学素子とすることもできる。
【0055】
本発明の光学素子には、表示素子、記録素子、光変調素子などの用途に用いる場合、電界付与手段を備えるが、電界に応じて応答する光シャッターや、センサーなどの用途に用いる場合、電界付与手段を備えなくてもよい。一般的な電界付与手段としては、一対の電極などを利用することができ、これら電極をパターン化、セグメント化させて任意の部位を調光させることも好ましく実施される。また、これらのパターンに対応して特定の特性の帯電性高分子ゲルを配置することも好ましく実施される。
【0056】
本発明の光学素子において、帯電性高分子ゲルは、電極との相互作用により可逆的に膨潤・収縮が行えるように電極上に固定化されていることが好ましい。また、その固定化は、電極が複数ある場合にはすべての電極上に施されていても構わない。
このような帯電性高分子ゲルの電極上への固定化は、種々の二官能性化合物や接着剤を利用することや、あるいは物理的な手段で行うことができる。具体的には、例えば、反応性シランカップリング材により電極(基板)をあらかじめ処理することで官能基を導入し、これと帯電性高分子ゲルの官能基とを反応させることにより共有結合させることが可能である。その他にも、種々の多官能性化合物や接着剤により固定する方法や基板上を立体的に加工して、帯電性高分子ゲルを物理的に固定化することも可能である。
なお、帯電性高分子ゲルの電極上への固定化においては電極(基板)と密着させすぎると、応答特性が低下する場合があるため、空間を空けるために基板等の表面を立体的に加工し、その凸部に結合させる手段や長鎖化合物を介することで、帯電性高分子ゲルを結合させる手段も好ましく施される。
【0057】
本発明の光学素子において、高分子ゲル組成物の配置(封入)位置、即ち調光層は密閉されてなる構成であることが好ましい。調光層が密閉されてなることで、調光層(高分子ゲル組成物)が外気と触れなくなり、劣化を防止することができる。このような構成は、例えば、電極間に挟持した調光層を樹脂封止させる、セル状にした電極間に調光層を配置する等して行うことができる。
更に、本発明の光学素子には、様々な層を形成してもかまわない。例えば、光学素子の保護を目的とした保護層、防汚染層、紫外線吸収層、帯電防止層、光反射層、誘電層、カラーフィルター等の着色層等が挙げられる。
【0058】
以下、本発明の光学素子を図を参照しつつ説明する。なお、同様の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与し、その説明を省略する。図1は、本発明の光学素子の一例を示す概略構成図である。図1に示す光学素子は、少なくとも一方が透明な一対(電極基板1及び2)の電極基板間(セル)内部に、帯電性高分子ゲル粒子5と液体4とを封入されている構成である。さらに、一対の電極基板間を一定の間隔を持たせるためにスペーサー3が設けられている。このとき帯電性高分子ゲル5は、電極基板1の表面に固定されている。なお、矢印は目視方向を示す。
【0059】
電極基板1及び2は、通常、通電部材を基板部材上に形成することによって作製される。基板部材としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコーン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフイルムや板状基板、ガラス基板、金属基板、セラミック基板等の無機基板などが好ましく用いられる。また、透過型の光学素子として用いる場合には、少なくとも50%以上の光透過率を有する基板部材が好ましく用いられる。
【0060】
通電部材としては、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層が形成されたものが好ましく用いられる。少なくとも50%以上の光透過率を有する透明電極が好ましく用いられる。また、反射型光学素子用途の場合、目視方向から見て遠い方の電極基板2上に設けられる通電部材としては、酸化錫−酸化インジウム(ITO)、酸化錫、酸化亜鉛などに代表される金属酸化物層の他に、導電性高分子や、カーボン、銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、プラチナなどに代表される金属層を用いることができる。
【0061】
電極基板1及び2の厚みや大きさは所望の光学素子(表示素子)によって様々なものが利用でき、特に限定はないが、厚みの好ましい範囲は10μmから20nmである。電極基板1及び2ともに透明電極とした場合には透過型の表示素子としても利用することができる。図1には一対の基板間に封入された構成を一例として示したが、図2に示すように、図1のような構成が複数積層されたものでも構わない。色の異なる顔料(調光用材料)を含有した帯電性高分子ゲル(帯電性高分子ゲル5a、5b、5c)を封入した層を積層することにより、積層型カラー表示素子に利用することが可能である。
【0062】
また、光学素子(表示素子)の用途に応じて、電極基板1及び2には、配線、薄膜トランジスタ、金属・絶縁層・金属構造を持つダイオード、バリアブルコンデンサ、強誘電体等の駆動用スイッチング素子を形成しても構わない。一般に表示用途として画像表示する場合は、パターン化された電極を持つ構成において、所望のパターンに通電し、パターン上の帯電性高分子ゲルを体積変化させることにより実現できる。さらにカラー表示を行う場合も、複数の異なる色の帯電性高分子ゲルを各パターン上に固定化し、種々のパターンに選択的に通電することによって実現可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
<実施例1>
(イオン性高分子ゲル粒子Aの製造)
モノマーとして、トリエチルアミン0.25gで中和したアクリル酸0.18g、及びAM−90G(メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、新中村化学工業(株)製)1.74gを水4.79gに溶解し窒素置換した。更に、過硫酸アンモニウム3.1mg、続いてテトラメチルエチレンジアミンの50%水溶液0.5gを添加し、重合を行った。重合後、生成した高分子ゲルをホモジナイザーで粉砕し蒸留水で洗浄した。その後、凍結乾燥法により高分子ゲル中の水分を除去した。乾燥状態の高分子ゲル1gに、蒸留後、モレキュラーシーブを加えて保存しておいたプロピレンカーボネート1000g、非イオン性の界面活性剤としてSO−15R(ソルビタン酸エステル:ニッコーケミカル(株)製)1gを加えて、膨潤させたイオン性高分子ゲル粒子Aを製造した。
【0064】
(光学素子Aの作製)
大きさ50mm×50mmの酸化錫付き電極基板上に、上記で調製したイオン性高分子ゲル粒子Aを以下の方法で固定化した。
電極上にイオン性高分子ゲル粒子Aを固定するための結合剤層をシランカップリング剤(3−Glycidoxypropyltrimethoxysilane)溶液を電極表面に塗布加熱反応させた後に洗浄することで形成した。
次に、先に製造したイオン性高分子ゲル粒子AとDMF(ジメチルホルムアミド)からなる溶液を調製し、これと電極面とを接触させて加熱することによってガラス面の反応性シランカップリング部とゲル粒子を化学反応させて固定化した。さらに、大きさ50mm×50mmの酸化錫付き電極基板を対向基板とし、この表面に500μmの樹脂スペーサを電極面に内向させて配置し、一部の溶液注入開口部を除き外周部を熱接着剤で封止した。セル内部にイオン性高分子ゲル粒子Aの膨潤液体(液体)として、プロピレンカーボネート10gに非イオン性の界面活性剤であるSO−15R 0.01gを添加した液体を注入後、開口部を封止し、高分子ゲル組成物が封入された光学素子Aを作製した。尚、膨潤液体の体積抵抗率は108Ω・cmであった。
【0065】
―評価―
得られた光学素子Aは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、イオン性高分子ゲル粒子Aの体積が変化することが分かった。イオン性高分子ゲル粒子Aを固定化した電極がカソードとなるときにはイオン性高分子ゲル粒子Aは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じてイオン性高分子ゲル粒子Aは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、イオン性高分子ゲル粒子Aの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。
【0066】
<実施例2>
(帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bの製造)
ポリアクリル酸0.72g(平均分子量800000、日本触媒(株)製)を水15.8gに溶解し、トリエチルアミン1.02gを加えて中和した。ここへ、帯電剤及び調光用材料であるCB顔料(大成化工製、CB顔料)の15.0質量%の水分散液2.0g、及びエチレングリコールグリシジルエーテル0.17g(ナガセ化成工業(株)製)を攪拌混合した水溶液を調整した。次に、ソルビトール系界面活性剤(SO−15R:ニッコーケミカル(株)製)3.9gをシクロヘキサン300mlに溶解した溶液を反応容器に加え、これに、先に調製した水溶液を添加し、回転式攪拌羽根を用いて1200rpmで30分攪拌して懸濁させた。60℃に加熱して3時間、ゲル化反応を行った。終了後、蒸留水で洗浄した。その後、凍結乾燥法により高分子ゲル中の水分を除去した。更に、乾燥状態の高分子ゲル1gに、蒸留後、モレキュラーシーブを加えて保存しておいたジメチルホルムアミド(DMF)300g、エチレンカーボネート300g、界面活性剤ソルゲン30(ソルビタン酸エステル:大一工業製薬(株)製)0.1gを加えて、膨潤させた帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bを製造した。
【0067】
(光学素子Bの作製)
イオン性高分子ゲル粒子Aの代わりに、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bを用い、セル内部に注入する膨潤液体(液体)を、ジメチルホルムアミド(DMF)3g、エチレンカーボネート7gに、界面活性剤ソルゲン30を0.001g添加した液体に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光学素子Bを作製した。尚、膨潤液体の体積抵抗率は108Ω・cmであった。
【0068】
―評価―
得られた光学素子Bは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bの体積が変化することが分かった。帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bを固定化した電極がカソードとなるときには帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じて帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Bの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。
【0069】
<実施例3>
(帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子C、及び光学素子Cの作製)
主モノマーとして、AM−230G(メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート、新中村化学工業(株)製)1.0gに、蒸留水2.0g、過硫酸アンモニウム0.01g、顔料(帯電剤)として1次粒子径0.1μmの青色顔料(大日本インキ化学社製:マイクロカプセル化顔料、MC Blue 182−E)0.80gを添加し、攪拌混合した水溶液Aを調整した。上記作業は窒素下にて行った。ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.0gをシクロヘキサン200mlに溶解した溶液を窒素置換された容器に加え、これに先に調整した水溶液を添加し、回転式攪拌装置を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応系の温度を20℃に調節し、さらに溶液を攪拌しながらこれにテトラメチルエチレンジアミンの50%水溶液を添加し、重合を行った。重合後、生成した着色高分子ゲルを回収し、純水で洗浄を行った。
その後、凍結乾燥法により着色高分子ゲル中の水分を除去した。乾燥状態の着色した高分子ゲル粒子1gに、蒸留後、モレキュラーシーブを加えて保存しておいたプロピレンカーボネート1000g、界面活性剤SO−15R(ソルビタン酸エステル:ニッコーケミカル(株)製)0.1gを加えて、膨潤させた帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子C(着色高分子ゲル粒子)を製造した。
イオン性高分子ゲル粒子Aの代わりに、帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cを用いたこと以外実施例1と同様にして、光学素子Cを作製した。
【0070】
−評価−
得られた光学素子Cは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cの体積が変化することが分かった。体積変化で8倍の変化量だった。帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cが接する電極がカソードとなるときには帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じて帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲル粒子Cの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。
【0071】
<実施例4>
(光学素子Dの製造)
実施例1において、膨潤液体の界面活性剤を、SO−15RからノニオンOT−221(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート:日本油脂(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、光学素子Dを作製した。
−評価−
得られた光学素子Dは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、イオン性高分子ゲル粒子Aの体積が変化することが分かった。体積変化で8倍の変化量だった。イオン性高分子ゲル粒子Aが接する電極がカソードとなるときには着色高分子ゲル粒子は、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じてイオン性高分子ゲル粒子Aは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、イオン性高分子ゲル粒子Aの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。尚、膨潤液体の体積抵抗率は108Ω・cmであった。
【0072】
<実施例5>
(帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Eの製造)
ポリアクリル酸0.72gをメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(VEMA、ダイセル化学工業(株)製)2.34gに変更した以外は、実施例2と同様にして帯電剤を含有するイオン性高分子ゲルEを得た。
【0073】
(光学素子Eの製造)
光学素子Eは、イオン性高分子ゲル粒子Aの代わりに、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Eを用い、セル内部に注入する膨潤液体(液体)を、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート=95/5の混合溶媒1000gに、界面活性剤としてSO−15R(ソルビタン酸エステル:ニッコーケミカル(株)製)を1g添加した液体に変更した以外は、実施例1の光学素子Aと同様にして作製した。尚、膨潤液体の体積抵抗率は107Ω・cmであった。
【0074】
―評価―
得られた調光素子Eは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、着色高分子ゲル粒子の体積が変化することが分かった。帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Eを固定化した電極がカソードとなるときには帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Eは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じて着色高分子ゲル粒子は膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Eの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。
【0075】
<実施例6>
(帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fの製造)
主モノマーとして、N−イソプロピルアクリルアミド7g、アクリル酸のトリエチルアミン塩3g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.1gを用い、これに蒸留水20g、過硫酸アンモニウム0.1g、顔料(帯電剤)として1次粒子0.1μmの青色顔料(大日本インキ化学社製:マイクロカプセル化顔料、MC Blue 182−E)8.0gを添加し、攪拌混合した水溶液Fを調整した。上記作業は窒素下にて行った。更に、ソルビトール系界面活性剤(第一工業製薬製:ソルゲン50)1.0gをシクロヘキサン200mlに溶解した溶液を窒素置換された容器に加え、これに先に調整した水溶液Fを添加し、回転式攪拌装置を用いて高速攪拌して乳化させた。乳化後、反応系の温度を20℃に調節し、さらに溶液を攪拌しながらこれにテトラメチルエチレンジアミンの50%水溶液を添加し、重合を行った。重合後、生成した着色高分子ゲルを回収し、純水で洗浄を行った。その後、凍結乾燥法により着色高分子ゲル中の水分を除去した。乾燥状態の着色高分子ゲルに、蒸留後、モレキュラーシーブを加えて保存しておいたジメチルホルムアミド(DMF)1000g、界面活性剤としてSO−15R(ソルビタン酸エステル:ニッコーケミカル(株)製)1gを加えて、膨潤させた帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fを製造した。
【0076】
(光学素子Fの製造)
光学素子Fは、イオン性高分子ゲル粒子Aの代わりに、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fにを用い、セル内部に注入する膨潤液体(液体)を、ジメチルホルムアミド(DMF)10 g、界面活性剤としてSO−15R(ソルビタン酸エステル:ニッコーケミカル(株)製)0.011gからなる液体に変更した以外は、実施例1の光学素子Aと同様にして作製した。尚、膨潤液体の体積抵抗率は108Ω・cmであった。
【0077】
―評価―
得られた光学素子Fは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fの体積が変化することが分かった。帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fを固定化した電極がカソードとなるときには帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じて帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、帯電剤を含有するイオン性高分子ゲル粒子Fの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。
【0078】
<実施例7>
(光学素子Gの製造)
実施例6において、膨潤液体を、DMFとエチレンカーボネートとを、DMF:エチレンカーボネート=30:70の比率で混合した液体に変更した以外は、実施例6と同様にして、光学素子Gを作製した。
【0079】
−評価−
得られた光学素子Gは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、イオン性高分子ゲル粒子Fの体積が変化することが分かった。体積変化で8倍の変化量だった。イオン性高分子ゲル粒子Fが接する電極がカソードとなるときには着色高分子ゲル粒子は、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じてイオン性高分子ゲル粒子Fは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを100万回実施したが、イオン性高分子ゲル粒子Fの電極基板への張り付きは確認されず極めて安定であることも確認できた。尚、膨潤液体の体積抵抗率は108Ω・cmであった。
【0080】
<比較例1>
(光学素子Hの製造)
実施例1において、膨潤液体の調製で用いた界面活性剤SO−15Rを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、光学素子Hを作製した。
【0081】
―評価―
得られた光学素子Hは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、イオン性高分子ゲル粒子Aの体積が変化することが分かった。イオン性高分子ゲル粒子Aを固定化した電極がカソードとなるときにはイオン性高分子ゲル粒子Aは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じてイオン性高分子ゲル粒子Aは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを10万回実施したところ、イオン性高分子ゲル粒子Aの電極基板への張り付きは見られず極めて安定であることも確認できた。しかしながら20万回を越えると、イオン性高分子ゲル粒子Aが電極基板上や近接のゲルに接着し、調光性能が低下した。
【0082】
<比較例2>
(光学素子Iの製造)
実施例1において、膨潤液体の調製で用いた界面活性剤SO−15Rを、イオン性界面活性剤のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様にして、光学素子Iを作製した。
【0083】
―評価―
得られた光学素子Iは、対向させた電極間に35Vの直流電圧を印加することで、イオン性高分子ゲル粒子Aの体積が変化することが分かった。イオン性高分子ゲル粒子Aを固定化した電極がカソードとなるときにはイオン性高分子ゲル粒子Aは、膨潤し、逆にアノードとなるときには収縮した。これにより、電界に応じてイオン性高分子ゲル粒子Aは膨潤・収縮することがわかった。反射率から求めたコントラスト比は30以上あり、視認性に優れていた。一方、35V印加電圧の極性の反転による繰り返しを1000回実施したところ、電極内に気泡が発生し調光性能が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の光学素子の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の光学素子の他の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0085】
1、2 電極基板
3 スペーサー
4 液体
5 帯電性高分子ゲル粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と、電界に応じて前記液体を吸収・放出することで体積変化する帯電性高分子ゲルと、を有する高分子ゲル組成物であって、
前記液体が非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする高分子ゲル組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が前記液体の0.01〜10質量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項3】
前記帯電性高分子ゲルがイオン性高分子ゲルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項4】
前記帯電性高分子ゲルが帯電剤を含有するイオン性高分子ゲルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項5】
前記帯電性高分子ゲルが帯電剤を含有する非イオン性高分子ゲルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項6】
前記帯電性高分子ゲルが調光用材料を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項7】
前記帯電剤が調光用材料であることを特徴とする請求項4又は5に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項8】
前記液体の体積抵抗率が103Ωcm以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の高分子ゲル組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の高分子ゲル組成物を少なくとも備えることを特徴とする光学素子。
【請求項10】
更に、前記高分子ゲル組成物に電界を付与する電界付与手段を備えることを特徴とする請求項9に記載の光学素子。
【請求項11】
前記電界付与手段が高分子ゲル組成物に電界を付与する電極であり、前記高分子ゲル組成物が前記電極上に固定化されていることを特徴とする請求項10に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−16492(P2006−16492A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195743(P2004−195743)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】