説明

高分子フィルムおよび高分子電解質膜、並びに、それらの製造方法

【課題】
固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池に使用する高分子電解質膜として、高いプロトン伝導性と優れたメタノール遮断性を両立させることが困難である問題を鑑みて、高いプロトン伝導性と優れたメタノール遮断性に優れる高分子電解質膜を提供することである。
【解決手段】 溶媒溶解性の異なる少なくとも2種以上の高分子化合物からなり、該高分子化合物の少なくとも1種は芳香族系高分子化合物である高分子フィルムから、該芳香族系高分子化合物にスルホン酸基を導入することによって高分子電解質膜とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルムおよび高分子電解質膜、並びに、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基を有する高分子化合物からなる高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池、湿度センサー、ガスセンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の材料として使用される。これら電気化学素子の中でも、固体高分子形燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。プロトン伝導性を有する高分子電解質膜を使用する固体高分子形燃料電池は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体、家庭用コージェネレーションシステム、および民生用小型携帯機器などへの適用が検討されている。直接液体形燃料電池、その中でも、メタノールを直接燃料に使用する直接メタノール形燃料電池は、単純な構造と燃料供給やメンテナンスの容易さ、さらには高エネルギー密度などの特徴を有し、リチウムイオン二次電池代替として、携帯電話やノート型パソコンなどの民生用小型携帯機器への応用が期待されている。
【0003】
一般的に固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池に使用される高分子電解質膜には、高いプロトン伝導性が要求される。これらの高分子電解質膜として、ナフィオン(Nafion,デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜が、高いプロトン伝導度を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れていることなどから、広く検討されている。しかしながら、このようなパーフルオロカーボンスルホン酸膜は、製造が困難で、非常に高価であるという欠点がある。さらに、民生用小型携帯機器に搭載される燃料電池の燃料として有望視されているメタノールなどの水素含有液体などの透過(クロスオーバーともいう)が大きく、いわゆる化学ショート反応が起こる。これにより、カソード電位、燃料効率、セル特性などの低下が生じ、直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として用いるのが困難である。また、未発電時にもクロスオーバーによる燃料の消失が懸念される。
【0004】
このような背景から、製造が容易で、より安価な高分子電解質膜として、芳香族系高分子化合物のスルホン化物などからなる高分子電解質膜が種々提案されている。その代表的なものとして、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(たとえば、特許文献1を参照のこと)、スルホン化ポリエーテルスルホン(たとえば、特許文献2を参照のこと)、スルホン化ポリスルホン(たとえば、特許文献3を参照のこと)、スルホン化ポリイミド(たとえば、特許文献4を参照のこと)などの耐熱性芳香族系高分子化合物のスルホン化物などが提案されている。また、安価で、機械的、化学的に安定とされるSEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)のスルホン化体からなるプロトン伝導性高分子膜(特許文献5を参照のこと)が提案されている。これらのスルホン化炭化水素系高分子膜は製造が容易であり、かつ低コスト化が可能であるとされている。しかしながら、高いプロトン伝導度が要求される固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として使用するには、プロトン伝導性が不充分である。また、それを改善するために、スルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、機械的特性の低下(強度低下、伸び低下)が観測されたり、水溶性になったり、膜の吸水率が上昇して著しく膨潤したりするなどハンドリング性が著しく損なわれる。
【0005】
化学的・熱的安定性を有する炭化水素系高分子化合物のスルホン化物として、さらに、ポリフェニレンサルファイドをベースとした高分子電解質膜が提案されている。しかしながら、ポリフェニレンサルファイドは実質的に溶媒不溶性であり、他の溶媒溶解性の高分子電解質膜と比較して、製膜性等の加工性が劣る。例えば、特許文献6には、ポリフェニレンサルファイドを発煙硫酸と反応させてスルホン化ポリフェニレンサルファイドを調製し、カチオン交換物質として使用する方法が開示されている。しかし、この物質は溶媒不溶性の架橋性ポリマーであることから、さらに加工して使用するのは困難である。また、特許文献7には、非プロトン性極性溶媒に可溶なスルホン化ポリフェニレンサルファイドが提案されている。これはポリフェニレンサルファイドを変性することにより、非プロトン性極性溶媒への溶解性を付与し、容易にフィルムに加工できるポリマーの調製方法が開示されている。しかし、ここに開示されている方法は、ポリフェニレンサルファイドの変性(スルホン化)、沈殿・乾燥による変性物の回収、非プロトン性極性溶媒溶液調製、製膜・溶媒除去、など種々の工程を経るものである。
【0006】
さらに、特許文献8には、スルホン化ポリフェニレンサルファイドなどのスルホン化芳香族系高分子膜の製造方法が開示されている。このスルホン化芳香族系高分子膜の製造方法において、スルホン化剤としてクロロスルホン酸、溶媒としてジクロロメタンを使用することが記載されている。しかし、この製造方法で得られたスルホン化芳香族系高分子膜も、高いプロトン伝導度を得るためにスルホン酸基などのプロトン伝導性置換基の導入量を増やすと、メタノールの透過が大きくなることが容易に想定される。このように、直接メタノール形燃料電池の電解質膜には、プロトン伝導度を低下させずにメタノール透過を抑制することが要求されているが、プロトン伝導度とメタノール遮断性がトレードオフの関係にあり、これらの特性を両立させることは困難である。
【特許文献1】特開平6−93114号公報
【特許文献2】特開平10―45913号公報
【特許文献3】特開平9−245818号公報
【特許文献4】特表2000−510511号公報
【特許文献5】特表平10−503788号公報
【特許文献6】米国特許第4,110,265号公報
【特許文献7】特表平11−510198号公報
【特許文献8】国際公開第02/062896号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のように、固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池の中でも特に直接メタノール形燃料電池、に用いる高分子電解質膜として、高いプロトン伝導性と優れたメタノール遮断性を両立させることが困難である問題を鑑みてなされたものであり、プロトン伝導性、さらにメタノール遮断性に優れる高分子電解質膜を提供することである。また、これらの高分子電解質膜を得るのに有用な高分子フィルムを提供することである。さらに、これらの高分子電解質膜や高分子フィルムを得るための簡便な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の高分子フィルムは、固体高分子形燃料電池、直接メタノール形燃料電池に代表される直接液体形燃料電池、に用いる高分子電解質膜の材料であって、溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物からなり、該高分子化合物の少なくとも1種は芳香族系高分子化合物であることが、溶媒洗浄などによりスルホン化剤の拡散経路を容易に形成できることや、プロトン伝導性を付与するためのスルホン酸基の導入が容易であり好ましい。
【0009】
さらに、前記芳香族系高分子化合物は、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが、化学的・熱的安定性に優れる高分子電解質膜が得られことや、スルホン酸基が導入しやすく、優れた特性を発現しうる高分子電解質膜を得られることから好ましい。
【0010】
また、前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物が、ポリフェニレンサルファイドと、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種との組合せからなることが、ポリフェニレンサルファイドが実質的に溶媒不溶性であり、組み合わせる高分子化合物と溶媒溶解性の差がつけやすく好ましい。
【0011】
さらに、前記ポリフェニレンサルファイドは、30〜90重量%含まれることが、溶媒洗浄した際に高分子フィルムにピンホールができにくく、機械的特性の特性の低下も抑制できるため、好ましい。
【0012】
また、前記高分子フィルムの表面は、1μm2以上の孔部が9〜250,000個/mm2存在することが、スルホン化剤の拡散経路となってフィルム内部までスルホン酸基を導入しやすいため、好ましい。さらに、これらは前記高分子フィルムを溶媒で洗浄することによって得ることが、高分子化合物の分散状態や洗浄状態によって孔部の形成状態を調節できるため、好ましい。
【0013】
さらに、前記溶媒は、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、からなる群から選択される少なくとも1種であることが、フィルム中の易溶解成分に対する洗浄効果や工業的入手の容易さの点から好ましい。
【0014】
本発明の高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池、に用いるものであって、前記高分子フィルム中に存在する芳香族系高分子化合物にスルホン酸基が結合していることを特徴とするものであることが、優れたプロトン伝導度が発現しやすく、好ましい。
【0015】
さらに、前記高分子フィルムを有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる方法により得られるものであることが、スルホン化によるフィルム劣化の抑制や、スルホン酸基の導入形態を制御できるため、好ましい。
【0016】
また、前記高分子電解質膜のイオン交換容量は、0.5〜2.5ミリ当量/gであることが、所望のプロトン伝導度やメタノール遮断性を得るためには好ましい。
【0017】
さらに、前記高分子電解質膜の23℃におけるプロトン伝導度は、10-3S/cm以上であることが、燃料電池に使用した場合に優れた発電特性を得られるため、好ましい。
【0018】
また、前記高分子電解質膜の25℃における64重量%メタノール水溶液に対するメタノール透過係数は、2,000μmol/(cm・日)以下であることが、直接メタノール形燃料電池に使用した場合にメタノールのクロスオーバーによる発電特性の低下が生じにくく、好ましい。
【0019】
本発明の高分子フィルムの製造方法は、前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物を、溶融押出法により混合・製膜する工程を含むことが、使用する高分子化合物の溶媒溶解性に関係なく、フィルムを得られるため、好ましい。
【0020】
さらに、本発明の高分子フィルムの製造方法は、前記高分子フィルムを溶媒で洗浄する工程を含むことが、フィルム表面にスルホン化剤の拡散経路となりうる孔部を容易に形成できるため、好ましい。
【0021】
本発明の高分子電解質膜の製造方法は、前記方法で得られる高分子フィルムを、有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる工程を含むことが、種々の高分子化合物種に適用できるため、好ましい。また、前記有機溶媒は、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であること、前記スルホン化剤は、クロロスルホン酸であることが、スルホン酸基の導入のし易さや優れた特性を発現しうる高分子電解質膜を得られるため、好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プロトン伝導性、さらにメタノール遮断性に優れる高分子電解質膜を調製可能な高分子フィルムを得ることができる。さらに、これらの高分子フィルムを使用して調製した高分子電解質膜は、プロトン伝導性とメタノール遮断性のバランスに優れる。また、これらの特性を有する高分子電解質膜や高分子フィルムを簡便な方法で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の高分子フィルムは、固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池、に用いる高分子電解質膜の材料であって、溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物からなり、該高分子化合物の少なくとも1種は芳香族系高分子化合物であることが好ましい。固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池は、それぞれ燃料に、水素、各種アルコールやシクロヘキサン、デカリンなどの含水素液体、メタノールが使用される。それらに使用される高分子電解質膜には、アノード触媒反応によって燃料から生成したプロトンをカソード側に移送する能力であるプロトン伝導性と、使用する燃料や酸化剤のクロスオーバーを抑制するための遮断性が強く求められる。
【0024】
前記高分子フィルムは、溶媒溶解性の異なる少なくとも2種以上の高分子化合物からなるため、これらの高分子化合物の選択、組合せ、混合時の加工条件、製膜時の加工条件、必要に応じて添加される相容化剤、などによって、任意の混合状態の高分子フィルムを得ることができる。さらに、これらの高分子化物は、溶媒溶解性が異なるため、適切な溶媒の選択、洗浄条件の設定によって、高分子フィルム表面近傍の易溶解成分を選択的に、除去することができる。これによって、プロトン伝導性を付与するためにスルホン酸基の導入する際のスルホン化剤の拡散経路が形成でき、フィルム内部までスルホン酸基を導入させ易くなるため、好ましい。
【0025】
また、これらの高分子化合物の少なくとも1種は、芳香族系高分子化合物であるため、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルシリルクロロサルフェートなどの公知のスルホン化剤を使用して、高分子フィルムを作製してから、スルホン酸基を導入することができるため、好ましい。
【0026】
本発明の高分子フィルムに使用可能な高分子化合物としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライドやそれらの誘導体などが列挙でき、少なくとも1種の芳香族系高分子化合物と溶媒溶解性の異なるものを任意に組み合わせて使用することができる。
【0027】
前記芳香族系高分子化合物としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが、スルホン酸基の導入制御、化学的・熱的安定性、工業的入手の容易さ、得られる高分子電解膜の特性、などを考慮すると好ましい。
【0028】
前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物は、その内の1種がポリフェニレンサルファイドであって、もう1種が、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種、との組合せからなることが好ましい。ポリフェニレンサルファイドは常温・常圧で実質的に溶媒不溶性である。それに対して、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体は、それらの構造や分子量によって異なるが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエンなどの芳香族炭化水素などに溶解する性質を有する。従って、これらの組合せからなる高分子フィルムは、溶媒溶解性の差が付けやすく、これらを所定の溶媒で洗浄することによって、高分子フィルム表面近傍のポリフェニレンサルファイド以外の成分を溶媒で溶解させて除去することが可能となり、好ましい。このとき、高分子フィルム中のポリフェニレンサルファイドは、30〜90重量%含まれることが好ましい。この範囲よりもポリフェニレンサルファイドの含有量が少ない場合には、溶媒洗浄した後の高分子フィルムの自己支持性が低下するなどフィルム物性が低下したり、このフィルムから得られる高分子電解質膜にピンホールが生じるなど高分子電解質膜の特性が低下する恐れがある。また、この範囲よりもポリフェニレンサルファイドの含有量が多い場合には、易溶解成分が少なくなり、溶媒で洗浄しても所望の物性がでるレベルまで易溶解成分を除去できなかったり、得られる高分子電解質膜が所望の特性を発現しない恐れがある。
【0029】
また本発明の高分子フィルムは、フィルム表面に1μm2以上の孔部が9〜250,000個/mm2存在することが、スルホン酸基を導入する際のスルホン化剤の拡散経路となり、フィルム内部までスルホン酸基を導入しやすくなるため、好ましい。このとき、孔部の面積がこれよりも小さい場合には、スルホン化剤の拡散経路してあまり有効に機能しない恐れがある。また、孔部がこの範囲よりも少ない場合には、拡散経路の効果が不充分となる恐れがある。また、この範囲よりも多いと、機械的特性の低下など高分子フィルムや高分子電解質膜の物性低下が生じる恐れがある。
【0030】
前記フィルム表面の孔部は、溶媒溶解性の異なる2種以上の高分子化合物からなる本発明の高分子フィルムを、溶媒で洗浄することによって、フィルム表面の易溶解性分を除去することによって形成することが、好ましい。できる孔部の大きさや数は、高分子化合物の分散状態、高分子化合物種やその組合せ、使用する溶媒種、洗浄条件(濃度、温度、時間など)によって制御することが可能である。フィルム表面に形成された孔部は、フィルム表面を各種顕微鏡観察などにより、孔の形状、大きさ、存在数などを把握することができる。使用する溶媒は、フィルムに存在する高分子化合物種に応じて適宜設定する必要がある。高分子フィルム中の成分の少なくとも1種が溶解し、少なくとも1種が溶解しないあるいは溶解しがたい溶媒を選択すればよい。具体的には、存在する高分子化合物種によって異なるが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、からなる群から選択される少なくとも1種を、フィルム中に存在する高分子化合物種に応じて選択することが、溶媒洗浄効果、工業的入手の容易さ、などの点で好ましい。
【0031】
本発明の高分子電解質膜は、上述した高分子フィルム中に存在する芳香族系高分子化合物にスルホン酸基が結合しているものであることが好ましい。非芳香族系高分子化合物へのスルホン酸基の導入は、一般的にモノマー段階からスルホン酸基あるいはその前駆体を導入して高分子量化する必要がある。これに対し、芳香族系高分子化合物へのスルホン酸基の導入は、高分子化合物を得た後に、公知のスルホン化剤を使用して実施でき、優れたプロトン伝導性を発現することが可能な高分子電解質膜を得ることができる。
【0032】
前記高分子電解質膜は、本発明の高分子フィルムを有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる方法により得ることが好ましい。有機溶媒を介さずにスルホン化剤と接触させると、高分子フィルムが劣化したり、フィルム表面のスルホン化のみが過度に進行したり、高分子電解質膜の特性を阻害する恐れのある副反応を生じたりする恐れがある。
【0033】
本発明の高分子電解質膜のイオン交換容量は、0.5〜2.5ミリ当量/gであることが好ましい。イオン交換容量がこの範囲よりも小さいと、高分子電解質膜のプロトン伝導性が不充分となる傾向を生じ、また、この範囲よりも大きいと高分子電解質膜のメタノール遮断性が低下する傾向を生じたり、メタノールや水に溶解する恐れがある。
【0034】
本発明の高分子電解質膜の23℃におけるプロトン伝導度は、10-3S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導度がこの範囲よりも低いと、燃料電池に使用した際に充分な発電特性を得られない恐れがある。
【0035】
本発明の高分子電解膜の25℃における64重量%メタノール水溶液に対するメタノール透過係数は、2,000μmol/(cm・日)以下であることが好ましい。メタノール透過係数がこの範囲よりも高いと、直接メタノール形燃料電池に使用した際に、メタノールのクロスオーバーにより発電特性が著しく低下する恐れがある。
【0036】
本発明の高分子フィルムの製造方法は、上述した高分子フィルムの製造方法であって、前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物を、溶融押出法により混合・製膜する工程を含むことが好ましい。この方法によれば、キャスト法などのように高分子化合物の溶媒溶解性に制約されることなく、また、除去したキャスト溶媒の廃棄または再利用設備などの付帯設備も必要とならない。さらに、高分子化合物の混合と製膜を連続して実施することができ、生産性に優れ好ましい。また、前記高分子化合物が熱可塑性の場合、ある程度に任意の組合せが選択可能である。
【0037】
さらに、本発明の高分子フィルムの製造方法は、高分子フィルムを溶媒で洗浄する工程を含むことが好ましい。これによって、高分子フィルム表面の易溶解成分が除去でき、スルホン化剤の拡散経路が形成できるため、フィルム内部までスルホン酸基を導入し易くなり、優れた特性を有する高分子電解質膜を得ることができる。
【0038】
なお本発明において高分子化合物の溶媒溶解性の差異は、下記の方法で検出できる。すなわち、溶媒に対して高分子化合物を添加して、撹拌・溶解後、所定時間後、溶け残りの物質の重量を測定することで、差異を判断できる。例えば、3L程度の体積の容器を2個(容器1および容器2)用意し、それぞれ、溶媒をWg入れる。その後、一方の容器1に高分子化合物1をw0g入れる。また、もう一方の容器2に高分子化合物2をw0g(高分子化合物1の場合と同一重量)入れる。同一温度(T℃)で撹拌・溶解させて、所定時間後容器1・容器2の中で溶け残っている物質の有無を目視で観察する。一方に溶け残りが有り、一方に溶け残りが無い場合には、溶媒溶解性の差異を目視でも明確に判断できる。
【0039】
ただし、両者ともに溶け残りが有る場合には、その溶け残りを濾過・濾別して、完全に溶媒を除去した後の高分子化合物1・高分子化合物2の重量を、それぞれ、w1g・w2gとして、その値を比較する必要が有る。実験誤差範囲を超えてw1とw2が有意に異なる場合に高分子化合物1と高分子化合物2は、当該溶媒に対して溶媒溶解性が異なると判断できる。溶媒溶解性に差異が出ない場合(全て溶解して、w1=w2=0gの場合)、異なる溶媒について、同様のことを行い、差異を見出す。
具体的には例えば、溶媒700gに対して、乾燥重量300gの高分子化合物を添加し、25℃の条件下で撹拌・溶解させて、6時間後に溶け残っている高分子化合物の重量で、溶媒溶解性を判断できる。
【0040】
なお、溶媒溶解性が極端に異なる高分子化合物同士は、上記の実験を行うまでもなく、公知の文献(非特許文献1)に記載されている、高分子化合物の溶解度パラメータの値・範囲を比較することで、事前にスクリーニング可能であり、溶媒溶解性の差異が有ると判断できる。
【非特許文献1】プラスチック データ ハンドブック 1980年 (株)工業調査会
【0041】
本発明の高分子電解質膜の製造方法は、上述した高分子電解質膜の製造方法であって、前述の製造方法で得られた高分子フィルムを、有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる工程を含むことが好ましい。この方法によって、高分子フィルム中の芳香族系高分子化合物にスルホン酸基を導入することができる。前記有機溶媒は、高分子フィルムを劣化させず、スルホン化反応を阻害しないものであれば使用可能であるが、スルホン酸の導入のし易さ、得られる高分子電解質膜の特性、などを考慮すると、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記スルホン化剤は、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルシリルクロロサルフェートなど芳香族系化合物の公知のスルホン化剤が使用可能であるが、スルホン酸基の導入のし易さ、得られる高分子電解質膜の特性を考慮すると、クロロスルホン酸であることが好ましい。
【0042】
本発明の高分子電解質膜の製造方法において、スルホン化剤の使用量としては、芳香族系高分子化合物の芳香族単位に対して、0.5〜30当量、さらには0.5〜15当量であるのが好ましい。スルホン化剤の使用量が、0.5当量よりも少ない場合には、スルホン酸基の導入量が少なくなり、得られる高分子電解質膜のプロトン伝導性が不充分となる傾向がある。一方、30当量を超える場合には、芳香族系高分子化合物を含むフィルムが化学的に劣化し、正常な高分子電解質膜が得られなかったり、得られる高分子電解質膜の機械的強度が低下し、ハンドリングが困難となったり、スルホン酸基の導入量が多くなりすぎて、メタノール遮断性が低下するなど、かえって高分子電解質膜の実用的な特性が損なわれる傾向がある。
【0043】
溶媒中のスルホン化剤の濃度は、スルホン酸基の目標とする導入量や反応条件(温度・時間)を勘案して適宜設定すればよい。具体的には、0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましい範囲は、0.2〜5重量%である。0.1重量%より低いとスルホン化剤と芳香族系高分子化合物の芳香族単位とが接触しにくくなり、所望のスルホン酸基が導入できなかったり、導入するのに時間がかかりすぎたりする傾向がある。一方、10重量%をこえるとスルホン酸基の導入が不均一となったり、得られた高分子電解質膜の機械的特性が損なわれる傾向がある。
【0044】
また、接触させる際の反応温度、反応時間についてはとくに限定はないが、反応温度については0℃以上溶媒及びスルホン化剤の沸点以下、さらには10〜30℃、反応時間については0.5時間以上、さらには2〜100時間の範囲で設定するのが好ましい。反応温度が、0℃より低い場合は、設備上冷却等の措置が必要になるとともに、反応に必要以上の時間がかかる傾向がある。また、溶媒及びスルホン化剤の沸点をこえる場合は、溶媒やスルホン化剤の揮発防止に係る付帯設備が必要になったり、反応が過度に進行したり、副反応を生じたりして、高分子電解質膜の特性を低下させる傾向がある。また、反応時間が、0.5時間より短い場合は、スルホン化剤と芳香族系高分子化合物中の芳香族単位との接触が不充分となり、所望のスルホン酸基が導入しにくくなる傾向があり、反応時間が100時間をこえる場合は、生産性が著しく低下する傾向を示すとともに、高分子電解質膜の大きな特性向上は期待できなくなる傾向がある。実際には、使用するスルホン化剤や溶媒などの反応系、目標とする生産量などを考慮して、所望の特性を有する高分子電解質膜を効率的に製造することができるように設定すればよい。
【0045】
また、本発明の高分子電解質膜の製造方法は、連続的に実施してもよい。すなわち、本発明の高分子フィルムを連続的にスルホン化剤との反応槽に供給し、さらに必要に応じて、洗浄工程や乾燥工程を連続的に実施してもよい。この方法によって、高分子電解質膜の製造の生産性が向上する。
【0046】
また、高分子フィルムを反応槽内でスルホン化剤と接触させることによって、フィルム(膜)形状のままスルホン酸基を導入することができる。したがって、従来の均一反応系でスルホン化高分子を合成した後、膜形状に加工する方法と比較して、反応物の回収・精製・乾燥などの工程、溶媒へのスルホン化高分子の溶解や支持体への塗布、溶媒除去などの工程が省略できるため好ましい。さらに、フィルムを連続供給するため、その生産性は著しく向上する。
【0047】
また、反応槽に浸漬したフィルムに付着および/または包含されたスルホン化剤を除去・洗浄することを連続的に実施することにより、スルホン化剤による周辺機器の腐食の防止やフィルムのハンドリング性が改善する。除去・洗浄の条件は、使用するスルホン化剤や芳香族系高分子化合物の種類を考慮して適宜設定すればよいが、水洗により、残存したスルホン化剤を不活性化したり、アルカリを使用して中和処理してもよい。
【0048】
さらに、得られた高分子電解質膜を連続して乾燥することによって、実際に使用可能な形態で回収することができる。乾燥条件は、使用する芳香族系高分子化合物の種類や得られる高分子電解質膜の特性を考慮して適宜設定すればよい。スルホン酸基が強い親水性を示すため、洗浄過程において、含水して著しく膨潤している恐れがある。そのため、乾燥時に収縮し、皺や脹れなどの凹凸が生じる恐れがある。したがって、乾燥時には高分子電解質膜の面方向に適度なテンションをかけて乾燥することが好ましい。また、急激な乾燥を抑制するため、湿度の調節下で徐々に乾燥してもよい。
【0049】
前記のように本発明の製造方法により製造される高分子電解質膜を製造する際に、その高分子電解質膜中に、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤、表面活性剤などの添加剤を適量含有させてもよい。
【0050】
また、前記方法で製造した高分子電解質膜の特性をさらに向上させるために、電子線、γ線、イオンビーム等の放射線を照射してもよい。
【0051】
つぎに、本発明の高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。図1は、本発明に係る固体高分子形燃料電池あるいは直接メタノール形燃料電池に代表される直接液体形燃料電池の単位セルの要部断面図である。これは、本発明の高分子電解質膜1と、その両側にそれぞれ触媒層4と拡散層6を含む燃料極8、触媒層5と拡散層7を含む酸化剤極9が配置される。高分子電解質膜1と燃料極8と酸化剤極9は、必要に応じて結着剤層2,3を介して接合され、膜−電極接合体10が構成される。さらにその外側に液体燃料の流路13を有するセパレーター11、酸化剤流路14を有するセパレーター12が配置され、本発明の固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池に使用可能な単位セル15が得られる。
【0052】
高分子電解質膜1としては、本発明の高分子電解質膜が使用される。結着剤層2,3は、同一または異なっていてもよく、必要に応じて形成されてもよく、また、形成されなくてもよい。一般的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子化合物や、スルホン酸基を含有するポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミドなど溶媒溶解性の公知の高分子電解質が使用される。これらは、高分子電解質膜1と触媒層4,5を接合(接着)するために使用される。これらの材料に対しては、その異種材料に対する接合性に加え、高分子電解質膜1と同様に、プロトン伝導性や化学的安定性などが要求される。
【0053】
触媒層4,5は、同一または異なっていてもよく、片側には使用する燃料(水素、各種アルコール、シクロヘキサン、デカリンなどの含水素液体、メタノールなど)の酸化能を有する触媒が使用される。もう一方には、使用する酸化剤(酸素や空気など)の還元能を有する触媒が使用される。具体的には、カーボンブラック,活性炭,カーボンナノホーン,カーボンナノチューブなどの高表面積の導電性材料に、白金などの貴金属触媒が担持されたものが使用される。特に燃料極側には、メタノール酸化時の副生成物である一酸化炭素、アルデヒド類、カルボン酸類などによる触媒被毒を抑制するため、白金の代わりに、白金とルテニウムなどからなる複合あるいは合金触媒などが使用される。
【0054】
拡散層6,7は、同一または異なっていてもよく、カーボンペーパーやカーボンクロスなどの多孔質の導電性材料が使用される。これらは供給される水分や電気化学反応によって生成した水で気孔が塞がれるのを抑制するため、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系化合物で撥水処理を施してもよい。一般的には、これらの拡散層6,7上に、前記触媒層4,5がナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子化合物や、スルホン酸基を含有するポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミドなど溶媒溶解性の公知の高分子電解質をバインダーとして形成され、燃料極8,酸化剤極9が調製され使用される。前記燃料極8,酸化剤極9としては、市販の触媒担持ガス拡散電極(米国E−TEK社製、など)を用いてもよい。
【0055】
本発明の高分子電解質膜を使用した膜−電極接合体10の製造方法は、公知あるいは任意の方法が選択可能である。一例をあげると、触媒担持ガス拡散電極8,9の触媒層4,5上に、必要に応じて結着剤2,3の構成材料の有機溶媒溶液を塗布した後、必要に応じて溶媒を除去し、高分子電解質膜1の両面に配置する。その後、ホットプレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して、一般的には120〜250℃程度のプレス温度でホットプレスし、膜−電極接合体10を調製することができる。また必要に応じて、結着剤2,3を使用せずに、膜−電極接合体10を調製しても構わない。
【0056】
本発明の高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成し、使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
【0057】
さらに、本発明の高分子電解質膜を使用した直接メタノール形燃料電池に代表される直接液体形燃料電池について、一例として、図面を引用して説明する。
【0058】
図2は、本発明の高分子電解質膜1を含む直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。膜−電極接合体10は、燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)を充填および供給する機能を有する燃料(メタノールあるいはメタノール水溶液)タンク16の両側に必要数が平面状に配置される。さらにその外側には、酸化剤流路14が形成された支持体17が配置され、これらに狭持されることによって、直接メタノール形燃料電池のセル、スタックが構成される。
【0059】
前記の例以外にも、本発明の高分子電解質膜は、特開2001−313046号公報、特開2001−313047号公報、特開2001−93551号公報、特開2001−93558号公報、特開2001−93561号公報、特開2001−102069号公報、特開2001−102070号公報、特開2001−283888号公報、特開2000−268835号公報、特開2000−268836号公報、特開2001−283892号公報などで公知になっている直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として、使用可能である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0061】
(比較例1)
高分子電解質膜として、デュポン社製ナフィオン(登録商標)115を使用して、下記方法に従って、イオン交換容量、プロトン伝導度、メタノール透過係数を測定した。
【0062】
結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

<イオン交換容量の測定方法>
高分子電解質膜(約10mm×40mm)を25℃での塩化ナトリウム飽和水溶液20mLに浸漬し、ウォーターバス中で60℃、3時間イオン交換反応させた。25℃まで冷却し、次いで膜をイオン交換水で充分に洗浄し、塩化ナトリウム飽和水溶液および洗浄水をすべて回収した。この回収した溶液に、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加え、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定し、イオン交換容量を算出した。
【0064】
<プロトン伝導度の測定方法>
イオン交換水中に保管した高分子電解質膜(約10mm×40mm)を取り出し、膜表面の水をろ紙で拭き取った。2極非密閉系のテフロン(登録商標)製のセルに膜を設置し、さらに白金電極を電極間距離30mmとなるように、膜表面(同一側)に設置した。23℃での膜抵抗を、交流インピーダンス法(周波数:42Hz〜5MHz、印可電圧:0.2V、日置電機製LCRメーター 3531Z HITESTER)により測定し、プロトン伝導度を算出した。
【0065】
<メタノール遮断性の測定方法>
25℃の環境下で、ビードレックス社製膜透過実験装置(KH−5PS)を使用して、高分子電解質膜でイオン交換水と64重量%のメタノール水溶液を隔離した。所定時間(2時間)経過後にイオン交換水側に透過したメタノールを含む溶液を採取し、ガスクロマトグラフ(島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−2010)で透過したメタノール量を定量した。この定量結果から、メタノール透過速度を求め、メタノール透過係数を算出した。メタノール透過係数は、以下の数式1にしたがって算出した。
【0066】
【数1】

(比較例2)
芳香族系高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業(株)製LD10p11)を使用して、下記方法に従って高分子フィルムを作製した。さらに、得られた高分子フィルムを使用して、下記方法に従って高分子電解質膜を調製した。
【0067】
<高分子フィルムの作製>
ポリフェニレンサルファイドのペレットを溶融押出法(スクリュー温度:290℃、Tダイ温度:290℃)にて、約50μmの厚みの高分子フィルムを得た。
【0068】
<高分子電解質膜の調製>
ガラス容器に、1−クロロブタン99g、クロロスルホン酸0.46gを秤量し、クロロスルホン酸溶液を調製した。上記高分子フィルム0.2299gを秤量し、上記クロロスルホン酸溶液に浸漬し、室温で20時間、放置した。室温で20時間放置後に、フィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
【0069】
洗浄後のフィルムを、23℃に調温した恒温恒湿器内で、相対湿度98%、80%、60%および50%の湿度調節下で、それぞれ30分間放置してフィルムを乾燥し、スルホン酸基が導入されたポリフェニレンサルファイドからなる高分子電解質膜を得た。
【0070】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。
【0071】
結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
1−クロロブタン101g、クロロスルホン酸2.03g、高分子フィルム0.2349gとした以外は、比較例2と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0073】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。
【0074】
結果を表1に示す。
【0075】
(実施例1)
溶媒溶解性の異なる高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業製LD10p11、ジクロロメタンに不溶)と、ポリフェニレンエーテル(三菱エンジニアリングプラスチック製PX100H、ジクロロメタンに可溶)とを、使用して、下記方法に従って高分子フィルムを作製した。さらに、得られた高分子フィルムを使用して、下記方法に従って高分子電解質膜を調製した。
【0076】
<高分子フィルムの作製>
ポリフェニレンサルファイド100重量部に対して、ポリフェニレンエーテル20重量部となるように、二軸押出機による溶融混練(スクリュー温度:290℃、ダイス温度:290℃)を行い、これらの高分子化合物が混ざった樹脂ペレット(ポリフェニレンサルファイドが83重量%含まれる)を得た。
【0077】
このペレットを使用して、比較例2と同様の方法で高分子フィルムを作製した。
【0078】
<高分子電解質膜の調製>
1−クロロブタン57g、クロロスルホン酸0.29g、高分子フィルム0.1332gとした以外は、比較例2と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0079】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。
【0080】
結果を表1に示す。
【0081】
(実施例2)
実施例1で得られた高分子フィルムをジクロロメタンに浸漬し、25℃、20時間保持し、充分に水洗した後、120℃、5時間減圧乾燥して、溶媒洗浄した高分子フィルムを作製した(重量減少率:1.0%)。
【0082】
得られた高分子フィルムを使用して、1−クロロブタン57g、クロロスルホン酸0.28g、高分子フィルム0.1313gとした以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0083】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
ポリフェニレンエーテルの代わりに、変性ポリフェニレンエーテル(日本ジーイープラスチック製ノリルEFN4230−111、ジクロロメタンに可溶)を使用した以外は、実施例1と同様にして、高分子フィルムを作製した。
【0085】
得られた(ポリフェニレンサルファイドが83重量%含まれる)高分子フィルムを使用して、1−クロロブタン85g、クロロスルホン酸0.43g、高分子フィルム0.1975gとした以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0086】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例3で得られた高分子フィルムをジクロロメタンに浸漬し、25℃、20時間保持し、充分に水洗した後、120℃、5時間減圧乾燥して、溶媒洗浄した高分子フィルムを作製した(重量減少率:1.7%)。
【0088】
得られた高分子フィルムを使用して、1−クロロブタン101g、クロロスルホン酸0.63g、高分子フィルム0.2348gとした以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0089】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例5)
1−クロロブタン101g、クロロスルホン酸0.88g、高分子フィルム0.2339gとした以外は、実施例4と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0091】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例4)
ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業(株)製LD10p11)の代わりに、ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業(株)製ML320p)を使用した以外は、比較例2と同様にして、高分子フィルムを作製した。得られた高分子フィルムを使用して、1−クロロブタン59g、クロロスルホン酸0.59g、高分子フィルム0.1372gとした以外は、比較例2と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0093】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例5)
1−クロロブタン59g、クロロスルホン酸1.18g、高分子フィルム0.1372gとした以外は、比較例4と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0095】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0096】
(実施例6)
溶媒溶解性の異なる高分子化合物として、ポリフェニレンサルファイド(大日本インキ化学工業製ML320p、ジクロロメタンに不溶)、ポリフェニレンエーテル(三菱エンジニアリングプラスチック製PX100F、ジクロロメタンに可溶)を使用して、下記方法に従って高分子フィルムを作製した。
【0097】
<高分子フィルムの作製>
ポリフェニレンサルファイド80重量部に対して、ポリフェニレンエーテル20重量部となるように、ペレットをドライブレンドしてから、二軸押出機に投入し、溶融混練(スクリュー温度:290℃)しながら、Tダイ法(ダイス温度:290℃)による製膜を行い、高分子フィルム(ポリフェニレンサルファイドが80重量%含まれる)を作製した。
【0098】
得られた高分子フィルム表面のSEM観察を実施した。結果を図3に示す。
【0099】
さらに、得られた高分子フィルムを使用して、下記方法に従って高分子電解質膜を調製した。
【0100】
<高分子電解質膜の調製>
1−クロロブタン109g、クロロスルホン酸0.82g、高分子フィルム0.2530gとした以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を調製した。
【0101】
得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例7)
実施例6で得られた高分子フィルムをジクロロメタンに浸漬し、25℃、20時間保持し、充分に水洗した後、120℃、5時間減圧乾燥して、溶媒洗浄した高分子フィルムを作製した(重量減少率:1.0%)。
【0103】
得られた高分子フィルム表面のSEM観察を実施した。結果を図4に示す。
【0104】
1−クロロブタン120g、クロロスルホン酸1.05g、高分子フィルム0.2772gとした以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質膜を調製した。 得られた高分子電解質膜の特性を比較例1と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0105】
比較例1と実施例1〜7の比較から、本発明の高分子フィルムから得られた本発明の高分子電解質膜は、固体高分子形燃料電池用高分子電解質膜として有用とされるナフィオン(登録商標)のプロトン伝導度と同オーダー以上のプロトン伝導度を発現し、固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として、優れた特性を有することが明らかとなり、本発明の有用性が示された。
【0106】
比較例1〜5の高分子電解質膜と比較して、実施例1〜7の本発明の高分子フィルムから得られた本発明の高分子電解質膜は、メタノール透過係数が低く、メタノール遮断性が優れることが示され、直接メタノール形燃料電池に代表される直接液体形燃料電池の高分子電解質膜として、優れた特性を有することが明らかとなり、本発明の有用性が示された。
【0107】
実施例6と実施例7で作製された高分子フィルム表面のSEM写真の比較から、溶媒洗浄していない本発明実施例6の高分子フィルムにはフィルム表面に孔部が存在していないのに対し、溶媒洗浄した本発明の実施例7の高分子フィルムには凹状の孔部がフィルム表面に形成されていることが明らかとなった。また、写真に写っている孔の個数からの単純計算により、このフィルムの1μm2以上の孔部は約11,000個/mm2であった。
【0108】
さらに、これらの高分子フィルムから調製した高分子電解質膜のプロトン伝導度とメタノール透過係数の比較から、フィルム表面に孔部が形成された高分子フィルムから調製した高分子電解質膜は、孔部が存在しないフィルムから調整した電解質膜に比べて、プロトン伝導度の向上およびメタノール透過係数の低下(メタノール遮断性の向上)傾向を示し、本発明の有用性が示された。
【0109】
また、実施例1と実施例2の比較、実施例3と実施例4〜5のそれぞれの比較から、実施例6と実施例7の比較結果と同様に、溶媒洗浄することによって、メタノール透過係数を低く維持したまま、高いプロトン伝導度を発現しうることが示された。従って、溶媒洗浄した高分子フィルムから得られる本発明の高分子電解質膜は、直接メタノール形燃料電池に代表される直接液体形燃料電池の高分子電解質膜として優れた特性を有することが明らかとなり、本発明の有用性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の高分子電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池の単位セルの一例の要部断面図である。
【図2】本発明の高分子電解質膜を使用した直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池の一例の要部断面図である。
【図3】実施例6で使用した高分子フィルム表面のSEM写真
【図4】実施例7で使用した高分子フィルム表面のSEM写真
【符号の説明】
【0111】
1 高分子電解質膜
2 燃料極側の結着剤層
3 酸化剤極側の結着剤層
4 燃料極側の触媒層
5 酸化剤極側の触媒層
6 燃料極側の拡散層
7 酸化剤極側の拡散層
8 燃料極
9 酸化剤極
10 膜−電極接合体
11 燃料極側のセパレーター
12 酸化剤極側のセパレーター
13 燃料流路
14 酸化剤流路
15 単位セル
16 タンク
17 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池、に用いる高分子電解質膜の材料であって、溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物からなり、該高分子化合物の少なくとも1種は芳香族系高分子化合物である、高分子フィルム。
【請求項2】
前記芳香族系高分子化合物が、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1記載の高分子フィルム。
【請求項3】
前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物が、ポリフェニレンサルファイドと、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリイミド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種との組合せからなる、請求項1または2に記載の高分子フィルム。
【請求項4】
前記ポリフェニレンサルファイドが30〜90重量%含まれることを特徴とする、請求項3記載の高分子フィルム。
【請求項5】
前記高分子フィルムの表面に、1μm2以上の孔部が9〜250,000個/mm2存在することを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載の高分子フィルム。
【請求項6】
請求項1〜4記載の高分子フィルムを溶媒で洗浄することによって得られる請求項5に記載の高分子フィルム。
【請求項7】
前記溶媒が、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、トルエン、からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の高分子フィルム。
【請求項8】
固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池、に用いる高分子電解質膜であって、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子フィルム中に存在する芳香族系高分子化合物にスルホン酸基が結合していることを特徴とする、高分子電解質膜。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の高分子フィルムを有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる方法により得られる、請求項8記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
イオン交換容量が0.5〜2.5ミリ当量/gであることを特徴とする、請求項8または9のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項11】
23℃におけるプロトン伝導度が、10-3S/cm以上である請求項8〜10のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
25℃における64重量%メタノール水溶液に対するメタノール透過係数が、2,000μmol/(cm・日)以下である請求項8〜11のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の高分子フィルムの製造方法であって、前記溶媒溶解性の異なる少なくとも2種の高分子化合物を、溶融押出法により混合・製膜する工程を含む高分子フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記高分子フィルムを溶媒で洗浄する工程を含む、請求項13記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項8〜12のいずれに記載の高分子電解質膜の製造方法であって、請求項13または14のいずれかに記載の方法で得られる高分子フィルムを、有機溶媒中でスルホン化剤と接触させる工程を含む高分子電解質膜の製造方法。
【請求項16】
前記有機溶媒が、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1−クロロ−2−メチルプロパン、1−ブロモブタン、2−ブロモブタン、1−ブロモ−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項15記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項17】
前記スルホン化剤が、クロロスルホン酸である請求項15記載の高分子電解質膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54076(P2006−54076A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233334(P2004−233334)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池システム技術開発事業 固体高分子形燃料電池要素技術開発等事業 低コスト高性能電解質膜の研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】