説明

高分子フィルムの製造方法及び高分子フィルムの製造装置

【課題】高分子フィルム特にポリイミドフィルムを製造する際に、乾燥や熱処理をテンター式搬送装置を使用して実施する場合に、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、治具を設けた高分子フィルムの製造装置と高分子フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】テンター式処理部(搬送装置)において、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロール治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設けた高分子フィルム製造装置とこの装置を使用する高分子フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子フィルムの製造方法及び製造装置に関するものであり、特に高分子フィルムを製造する際の最終熱処理時に、前駆体フィルムや不完全乾燥フィルムを高温熱処理して高分子フィルムとなす際におけるテンター式(フィルム搬送)処理部に特徴を有する高分子フィルムの製造方法及び高分子フィルム製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムを製造するとき、溶媒の一部が残っている前駆体フィルム(グリーンフィルムともいう)を高温でイミド化する。この場合該前駆体フィルムを搬送しながら加熱して乾燥及び熱処理を行うが、これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムは一般的に乾燥されるに従って収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送装置が知られている(特許文献1参照)。
また、ポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭39─029211号公報。
【特許文献2】特開平09−188763号公報
【0003】
フィルム搬送装置は、布を染色した後の乾燥工程で布に皺が発生しないように乾燥する用途への使用も古くから良く知られている。布の乾燥の他にも溶剤製膜法での未乾燥なプラスチックフィルムのフィルムを乾燥工程で搬送しながら乾燥する場合にも使用される。 フィルム搬送装置を使用することにより乾燥・熱処理時の熱でフィルムがその幅方向に収縮するのを抑制し、乾燥・熱処理後のフィルムに収縮による皺が発生しないようにすることができる。
フィルムの収縮はフィルムの幅方向に限らず全方向に生じるが、フィルムの搬送方向は搬送テンションが作用しており収縮に対しての抑制効果がある。このように、未乾燥のフィルムを乾燥・熱処理する際にフィルムのテンター式搬送装置を使用して搬送することにより、乾燥・熱処理されたフィルムに必要な強度及び平面性を確保することができる。
【0004】
フィルムテンター式搬送装置のうち、フィルムの両側端部に沿って多数のピンを喰い込ませることによりフィルムを幅方向に張設した状態で保持するフィルムのテンター式搬送装置は、平行に配置された一対の移動チェンに列設支持されたピンシート上に多数のピンが配設されて構成される。このフィルムのテンター式搬送装置は、前記クリップ等のフィルム搬送装置に比べ構造が簡単であることあるいは乾燥室内での搬送コンベアの経路を反転させる構造にできる等のことから、装置コスト、装置のコンパクト化の点で優れている一方、フィルムにピンを喰い込ませる際にフィルムの微小片が発塵するために、なるべくピン本数を少なくする必要がある。また、フィルムの収縮力が大きくなると、フィルム面にピンを喰い込ませた孔がフィルムの幅方向に長孔状に破断するなどの課題を抱えている。
【0005】
これらの改良のために、フィルムのピンによる把持部において引き裂き強度大きいフィルムを別途補強用として重ねて使用する方式も提案されている(特許文献3参照)。
さらに、ウェブなどを搬送する際、ウェブの両側端部に置けるピンの配列を最内側のピン密度を大きくし、外側のピンの配列密度をより小さくしたテンター式搬送装置も提案されている(特許文献4参照)。これら改良提案においても、ピンの搬送方向における配列特にピンシート間のピン配列に配慮されたものはなく、フィルムの収縮によるピンを喰い込ませた孔におけるフィルムの幅方向に長孔状に破断が生じ易いフィルムの製造においては課題を有していた。
従来のフィルムのテンター式搬送装置は、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、皺の発生などの品質不良が発生し易く、生産ロスの原因となると共に生産効率の低下を招き、使用者にとって十分満足できるものではなかった。
【0006】
【特許文献3】特開平11−254521号公報
【特許文献4】特開平09−077315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子部品の基材として好適である平面性及び均質性に優れ、しかも高温処理しても反りやカールの少ない耐熱性に優れた高分子フィルムであるポリイミドフィルムを基材フィルムとして使用した接着シート、この接着シートに金属箔を積層した金属積層シート、及びこの金属積層シートを回路加工したプリント配線板を提供するため、高分子フィルム特にポリイミドフィルムの製造に適した、製造時に把持され搬送され、処理されるフィルム部の折れ、重なりなどを防止するための治具を使用することで、フィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、カールの発生、皺や歪みなどの発生による品質不良が発生し易い課題を解消するための高分子フィルムの製造方法と高分子フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
1.高分子又は高分子の前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、押さえブラシロールでフィルムを押し込むことでフィルム両側端部をピンに突き刺して、幅方向及び又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送する高分子フィルム製造方法であり、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロールである治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設け、ピンシートに把持されるフィルム部の折れ、重なりなどを防止することを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
2.ピンシートが幅方向において外側に設置されたピン台座よりも高い部位を有するものである1.の高分子フィルムの製造方法。
3.治具を、ピンシートに把持される位置より200mm以下の前方に設置する前記1又は2に記載の高分子フィルムの製造方法。
4.フィルム下方からの支え治具がロール形状である前記1〜3いずれかに記載の高分子フィルムの製造方法。
5.高分子又は高分子の前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンが押さえブラシロールでフィルムを押し込むことでフィルム両側端部を突き刺して、幅方向及び又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送する高分子フィルムの製造装置であって、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロー治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設けたことを特徴とする高分子フィルムの製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子フィルム製造装置は、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムにおけるテンター式処理部(搬送装置)において、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロール治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設けたことで、フィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、カールの発生、皺や歪みなどの発生による品質不良が発生し易い課題を解消することができ、結果的に製造された高分子フィルムにおけるカールなどの品質上の課題が解消でき、かつテンター中でのフィルム破断等のトラブルを未然に防ぐことが可能となる。またフィルムがピンの台座から浮き上がった状態で保持されるため、ピンシートのピン台座部での融着が無く、熱処理後のフィルム取り外しが容易となる。またピンシート自体の汚染も生じないため装置の維持管理の面からも有効である。前記のフィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、カールの発生、皺や歪みなどの発生による品質不良が発生し易い課題の解消にも効果があり、高品質なポリイミドフィルムなど高分子フィルムが得られ易く、高分子フィルム製造の生産性にも寄与し、高分子フィルムの製造装置としてまた高分子フィルムの製造方法として工業的に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、高分子フィルムとは、ポリアミドイミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アラミドなど高融点や非溶融性高分子からのフィルムが挙げられる。
本発明の高分子フィルムは、これらの高分子を含む溶液を流延し、乾燥、熱処理してフィルムとなす。これらの高分子を含む溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、メタクレゾールなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる高分子溶液としては、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、溶剤可溶なポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、酢酸セルロースの塩化メチレン溶液、メタノール溶液、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液、メタクレゾール溶液、ポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液、アラミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが挙げられる。
【0011】
本発明の高分子フィルムの製造装置及び製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液やポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。
以下ポリイミドフィルムについて詳述するがこれらに限定されるものではない。
本発明に好ましく適用し得る、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(グリーンフィルム)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0012】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族
ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙
げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で特に好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0018】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0019】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル及び3,4′−ジアミノジフェニルエーテル及びそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン及びそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0020】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0021】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0022】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0023】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0024】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムに置ける好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸及びその無水物又はハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳
香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸及びその無水物又はハ
ロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0029】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマー及び生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0030】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌及び/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
【0031】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0032】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0033】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒及び脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒及び脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
【0034】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0035】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンシート、フィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0036】
本発明の、高分子フィルム、又は高分子の前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンが押さえブラシロールによりフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向及び又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造方法において、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具と、フィルム上方からの押さえロールである治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設け、ピンシートに把持されるフィルム部の折れ、重なりなどを防止することを必須とするものであり、好ましい態様としてこの治具を、ピンシートに把持される位置より200mm以下の前方に設置する、フィルム下方からの支え治具がロール形状である製造方法であり、またピンシートが幅方向において外側に設置されたピン台座よりも高い部位を有するものである製造方法である。
ピンシートの幅方向に対し外側に設置したピン台座より高い部位の形状は特に限定されず、ピンの植え込まれている面であるピン台座より位置的に高くそのことによってフィルムがピン台座に接触しない機能を有すればよく、例えばピンシートの幅方向の外側(ピンの植え込まれていない幅方向での外側位置)のみが高くその位置でのみフィルムに接触するようにした台であるものでもよく、またピン台座が幅方向に外側に向かって傾斜したピンシートであってもよく、例えば台の場合、台の形状や大きさは、好ましくは、(1)該台の高さがピン先端より3mm以上8mm以下の範囲で低く、より好ましくは、4mm以上6mm以下の範囲で低く設置されており、該台の高さがピン先端より3mm未満の低さであると、フィルム両端部を突き刺したピンの深さが浅く、その後の熱処理工程中でフィルムがピンから外れる頻度が高くなり好ましくなく、また、該台の高さがピン先端より8mmより低いと、熱処理後にフィルムをピンシートから外すときに大きな抵抗となり、最悪フィルム両端部を引き裂くことにつながり好ましくない。また、(2)該台の高さがピンの設置されている台座より0.5mm以上5mm以下の範囲で高く、より好ましくは、2mm以上3mm以下の範囲で高く設置されており、ピンシートへのフィルム把持時に、押さえブラシロールによるフィルムのピン挿入深さが安定的に決定され、ピンシートからフィルム把持部への直接的な伝熱抑制効果が発現し、その結果フィルム中央部と把持部との温度差が小さくなり、フィルム搬送中の破断強度差が小さくなり、結果的にテンター中、及びテンターでの熱処理後ピンシートからフィルムを剥離する際のフィルム破断等のトラブルを低減することが出来る。一方、該台の高さがピンの設置されている台座より1mm未満の高さであると、ピンシートからフィルム把持部への直接的な伝熱抑制効果が低減され、その結果フィルム中央部と把持部との温度差が大きくなり、フィルム搬送中の破断強度差が大きくなり、結果的にテンター中でのフィルム破断等のトラブルにつながり好ましくなく、また、該台の高さがピンの設置されている台座より5mmより高いと、熱処理工程におけるピンシート自体の汚染を促進するために好ましくない。また、(3)該台の周囲を面取りしていることが好ましく、面取り加工をしないと、該台周囲に接触したフィルムに裂けが生じ好ましくない。また、(4)ピンが設置されている台座に空洞を設けることは、ピンシートからフィルム把持部への直接的な伝熱抑制効果が発生し、その結果フィルム中央部と把持部との温度差が小さくなり、フィルム搬送中の破断強度差が小さくなり、結果的にテンター中でのフィルム破断等のトラブル防止につながり好ましい。
【0037】
ピンシートの幅方向に対し外側に台が設置された高分子フィルムの製造装置において、該ピンがフィルム両側端部を突き刺す時点で、融点又は軟化点が150℃以上で弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシを備えた部材でフィルム端部をピンに突き刺す手段を使用することも好ましい実施態様である。
また、この押さえブラシロールにおける、幅方向に対して外側に設置されるピン台座よりも高い部位と接触する押さえブラシロールの部材が、幅方向に対して内側部分の部材よりも剛性が高いもの、具体的には押さえブラシロールの幅方向に対して外側に設置する部材が、金属素線のブラシ形状部材であるものや金属製の円筒状部材であるものがより好ましい態様である。
融点又は軟化点が150℃以上で引張弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシを備えた部材としては特に限定されないが、ブラシが円筒平面周上に設けられたブラシロールが好ましく使用できる。
融点又は軟化点が150℃以上で引張弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシは、この物性を有することでフィルムの突き刺しが均一に行われかつ長時間の使用によってもその機能の劣化が極めて少ないものであり、この物性を有さないものを使用した場合には前記の2点を同時に満足することができないものである。
融点又は軟化点が150℃以上で弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシとしてはこの物性を備えたものであれば特に限定されるものではなく、例えば高弾性率の高分子繊維、カーボンファイバー、ガラスファイバー、などが挙げられるが、より好ましくは高分子繊維などの高分子素材であり、芳香族ポリアミド、例えばコーネックス(帝人製)などが挙げられる。
【0038】
先に述べたように本発明におけるピンテンターの把持部は、例えば図1に一例を示すように個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、この個々のピンシートが多数配されてフィルムを搬送するものである。
本発明においては、好ましい態様として、フィルム熱処理が終了して、ピン又はピンシートがターンしてフィルム把持を開始する位置に戻る直前の部位において冷却手段を設けて、ピンがフィルム把持開始時点においては充分に冷却され、ピンによるフィルム両端の突き刺しにおいて、フィルム把持の均一性が保たれ、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向又は搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが抑制され、フィルム全体での歪の減少、フィルム厚さ斑の低減が達成できるようにした冷却手段を備えた製造装置であり、この装置を使用する製造方法である。冷却手段としては、空冷、水冷いずれでもよく、また空気、水以外の冷媒を用いても良い。冷却効率の点からは液体の冷媒を用いることが好ましく、さらに、テンター自身が一般の有機溶剤の発火点以上に加熱されることを考えると、水冷仕様による冷却手段にすることが最も好ましい。
この冷却手段を設けることで、ピン及びピンシートがフィルム両端を把持して搬送を開始する時点で、一端熱処理温度例えば450℃などの高温に加熱され冷却手段がないときにピンなどが高温に維持されており、この高温のピンによるフィルム両端の突き刺しにおいて、フィルム把持の均一性が保たれ難く、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向又は搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが容易くなり、フィルム全体での歪の増加、フィルム厚さ斑の拡大が生じるなどの問題をある程度解消することができる。
さらに本発明において、好ましい態様としては、ピンテンターのピン配置において、フィルム搬送時のフィルム幅方向における最内側に配列された個々のピンが互いに、フィルム搬送方向で個々のピンシート内においても、他のピンシート間においても、全て等間隔で配されていることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0040】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(商品名)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0041】
4.フィルムの線膨張係数(CTE)
下記条件で伸縮率を測定し、30〜300℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。MD方向、TD方向の意味は上記と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0042】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0043】
〔参考例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0044】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0045】
〔参考例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0046】
〔実施例1〜4〕
参考例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、180μm、塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ25μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
【0047】
得られたこれらのグリーンフィルムを、表1に示す様にピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具の条件でピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。ピンは、ピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるように配置されており、ピン台座からのピン高さは8mm、ピンシート間隔は1140mmであり、ピンシートの長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは35mmで、ピンシートの幅方向外側に設定した該台の長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは15mmであり、該台の周囲は面取り加工を施した。また、ブラシロールは幅方向に2種類の素材を用いた2層構造を用い、内側にはコーネックス製で素線径φ0.3mmを配置し、外側には素線径φ0.5mmの金属素線を配置した。
テンターの熱処理設定は以下の通りである。第1段が180℃で5分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する実施例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。熱処理中の搬送状態、得られたポリイミドフィルムの特性などの測定結果を表1に記載する。
なお、フィルムの平面性、有効幅は、以下のように定義した。
まず得られたフィルムを清浄な表面を有する定盤に広げ、フィルム端部にてウネリにより定盤との間に空間が空いてしまう部分を平面性不良な部分として捉えた。フィルムの端部が定盤表面から持ち上がらずに、フィルム全体が定盤に密着するようになるまで、フィルム両端をカットし、その時のフィルム幅を有効幅と定義した。
また、ピン裂けは、フィルムの先頭から10m程度の部分にて、ピン部での幅方向のフィルム裂け幅を物差しにて測定した。
また、ピンシートからの剥離性は、熱処理が終了してフィルムが引き離しロールによりピンシートより剥離するときの状態を目視評価し,スムースな引き離しは良好とし、ピンにフィルムが引っ掛りが生じる場合をやや不良とし、引っ掛りによりフィルムに流れ方向の裂けが生じる場合は不良とした。
【0048】
〔比較例1〜4〕
参考例1〜4のポリアミド酸溶液を、実施例と同様に支持体上に塗布乾燥し、乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ25μmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、表1に示す様にピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具の条件でピンテンターにて両端を把持し、他は実施例と同様の条件にて熱処理し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する比較例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。熱処理中の搬送状態、得られたポリイミドフィルムの特性など結果を表1に記載する。なお、ピンシートの長手方向の長さは95mm、幅方向の長さは40mmで、ピン台座からのピン高さは8mmである。
結果のとおり、比較例においてはフィルム端の平面性が悪い部分の幅が広く、結果的に有効幅が狭くなっている。またピン裂けが大きく、生産安定性に欠けることが示唆される。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
以上述べてきたように、本発明においてはフィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロール治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設けたことで、フィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、カールの発生、皺や歪みなどの発生による品質不良が発生し易い課題を解消することができ、結果的に製造された高分子フィルムにおけるカールなどの品質上の課題が解消でき、かつテンター中でのフィルム破断等のトラブルを未然に防ぐことが可能となる。またピンシートにフィルムが焦げ付くことがなく、安定した搬送性が得られ、またフィルムをピンシートから剥がす際にもスムースな剥離状態が得られ、さらにフィルムの安定なる搬送が可能であるが故にフィルムの裂けや破断が生じにくく、有効幅が広く無駄の少ないフィルム製膜が可能であり、さらに得られたフィルムは幅方向の品位、フィルム厚の均一性にも優れたものとなり、当該製造方法、製造装置は、ポリイミドフィルム、ポリベンザゾールフィルム、セルロース系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムなどの流延製膜方法として産業上有意義なものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のテンター式フィルム処理機におけるフィルムと接するピンの幅方向外側に台を設けたピンシートの概略を示す。(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図2】従来のテンター式フィルム処理機におけるフィルムと接するピンシートの概略を示す。(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図3】本発明のテンター式フィルム処理機におけるフィルムのピン差し部の概略を示す。
【図4】従来のテンター式フィルム処理機におけるフィルムのピン差し部の概略を示す。
【符号の説明】
【0052】
1:ブラシロール
2:ピン
3:ピン台座
4:台
5:支え治具
6:押さえロール
7:フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子又は高分子の前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、押さえブラシロールでフィルムを押し込むことでフィルム両側端部をピンに突き刺して、幅方向及び又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送する高分子フィルム製造方法であり、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具と、フィルム上方からの押さえロールである治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設け、ピンシートに把持されるフィルム部の折れ、重なりなどを防止することを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
【請求項2】
ピンシートが幅方向において外側に設置されたピン台座よりも高い部位を有するものである請求項1記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項3】
治具を、ピンシートに把持される位置より200mm以下の前方に設置する請求項1〜2に記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項4】
フィルム下方からの支え治具がロール形状である請求項1〜3いずれかに記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項5】
高分子又は高分子の前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンが押さえブラシロールでフィルムを押し込むことでフィルム両側端部を突き刺して、幅方向及び又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送する高分子フィルムの製造装置であって、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具とフィルム上方からの押さえロー治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設けたことを特徴とする高分子フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156090(P2008−156090A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349110(P2006−349110)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】