説明

高分子フィルムの製造装置および高分子フィルムの製造方法

【課題】 高分子フィルム特にポリイミドフィルムを製造する際に、乾燥や熱処理をピンテンター式搬送装置を使用して実施する場合に、ピンに差し込んだフィルムがピンからはずれたり、ピンシートに融着する等の問題を抑制できる高分子フィルムの製造に適した製造装置とその装置を使用して製造する高分子フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 フィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された(植え込まれた)多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置であって、ピンシートへのピンの植え込み角度が、ピンシートの垂直方向に対し、フィルムの幅方向の外側に向かって0.5〜15度の傾斜を持つことを特徴とする高分子フィルムの製造装置とこの装置を使用する高分子フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子フィルムの製造装置と製造方法に関するものであり、特に高分子フィルムを製造する際の最終熱処理時に、前駆体フィルムを高温熱処理して高分子フィルムとなす際におけるテンター式(フィルム搬送)処理部に特徴を有する高分子フィルムの製造装置に関し、またこの装置を使用した高分子フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムのポリイミドフィルムを製造するとき、前駆体フィルム(グリーンフィルム)を高温でイミド化するが、前駆体フィルムを搬送しながら熱処理し乾燥および熱処理を行いイミド化する。
これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムや前駆体フィルムは一般的に乾燥される従って収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送(製造)装置が知られている(特許文献1参照)。
また、ポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭39─029211号公報。
【特許文献2】特開平09―188763号公報
【0003】
フィルム搬送装置は、布を染色した後の乾燥工程で布に皺が発生しないように乾燥する用途への使用も古くから良く知られている。布の乾燥の他にも溶剤製膜法での未乾燥なプラスチックフィルムのフィルムを乾燥工程で搬送しながら乾燥する場合にも使用される。 フィルム搬送装置を使用することにより乾燥・熱処理時の熱でフィルムがその幅方向に収縮するのを抑制し、乾燥・熱処理後のフィルムに収縮による皺が発生しないようにすることができる。
フィルムの収縮はフィルムの幅方向に限らず全方向に生じるが、フィルムの搬送方向は搬送テンションが作用しており収縮に対しての抑制効果がある。このように、未乾燥のフィルムを乾燥・熱処理する際にフィルムのテンター式搬送装置を使用して搬送することにより、乾燥・熱処理されたフィルムに必要な強度および平面性を確保することができる。
【0004】
フィルムテンター式搬送装置のうち、フィルムの両側端部に沿って多数のピンを喰い込ませることによりフィルムを幅方向に張設した状態で保持するフィルムのテンター式搬送装置は、平行に配置された一対の移動チェンに列設支持されたピンシート上に多数のピンが配設されて構成される。このフィルムのテンター式搬送装置は、前記クリップ等のフィルム搬送装置に比べ構造が簡単であることあるいは乾燥室内での搬送コンベアの経路を反転させる構造にできる等のことから、装置コスト、装置のコンパクト化の点で優れている一方、フィルムにピンを喰い込ませる際にフィルムの微小片が発塵するために、なるべくピン本数を少なくする必要がある。また、フィルムの収縮力が大きくなると、フィルム面にピンを喰い込ませた孔がフィルムの幅方向に長孔状に破断するなどの課題を抱えている。
【0005】
これらの改良のために、フィルムのピンによる把持部において引き裂き強度大きいフィルムを別途補強用として重ねて使用する方式も提案されている(特許文献3参照)。
さらに、ウェブなどを搬送する際、ウェブの両側端部に置けるピンの配列を最内側のピン密度を大きくし、外側のピンの配列密度をより小さくしたテンター式搬送装置も提案されている(特許文献4参照)。これら改良提案においても、ピンの搬送方向における配列特にピンシートへのピンの植え込み角度に配慮されたものはなく、フィルムの収縮によるピンを喰い込ませた孔におけるフィルムの使用風力によるフィルムのばたつきやピンからの抜けや幅方向に長孔状に破断が生じ易いフィルムの製造においては課題を有していた。
従来のフィルムのテンター式搬送装置は、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向に長孔状に破断する問題、皺の発生などの品質不良が発生し易く、生産ロスの原因となると共に生産効率の低下を招き、使用者にとって十分満足できるものではなかった。
【特許文献3】特開平11−254521号公報
【特許文献4】特開平09−077315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子部品の基材として好適である平面性および均質性に優れ、しかも高温処理しても反りやカールの少ない耐熱性に優れた高分子フィルムであるポリイミドフィルムを基材フィルムとして使用した接着シート、この接着シートに金属箔を積層した金属積層シート、およびこの金属積層シートを回路加工したプリント配線板などを提供するための高分子フィルム特にポリイミドフィルムの製造に適した、フィルムのピンで突き刺した部分がピンシートに接触し、ピンシートからの熱を直接的に受けるため、テンター内において、フィルムの中央部と端部の温度差が大きくなり、強度バランスが崩れるために破断しやすくなる。
またピンテンターにおいて、特に熱風処理を行う場合においてはフィルムが風にあおられてしばしばピンから外れ、テンター内での把持が目論み通りフィルムの導入部から出口まで完全に遂行されないというトラブルが生じることがある。
またさらに、ピンシートにフィルムが直接接触するため、場合によってはフィルムがピンシートに融着し、熱処理後にフィルムをピンから外す際に把持部が裂けやすくなり、エッジかけや破断に繋がることを解決した製造装置と製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
1.高分子フィルム、又はその前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された(植え込まれた)多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置であって、ピンシートへのピンの植え込み角度が、ピンシートの垂直方向に対し、フィルムの幅方向の外側に向かって0.5度〜15度の傾斜を持つことを特徴とする高分子フィルムの製造装置。
2.フィルムに該ピンを突き刺すに際し、ピンの突き刺し深さがピン先端からピン根元までの中間部分となるように制御する機構が設けられた1.記載の高分子フィルム製造装置。
3.1.又は2.に記載の高分子フィルム製造装置を用いて高分子フィルムを製造することを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
4.テンター式処理部内の風速が0.1〜3.0m/秒の範囲である3.に記載の高分子フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高分子フィルム製造装置は、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムにおけるテンター式処理部(搬送装置)において、ピンシートへのピンの植え込み角度が、ピンシートの垂直方向に対し、フィルムの幅方向の外側に向かって0.5〜15度の傾斜を持ち、さらにピンの突き刺し深さがピン先端からピン根元までの中間部分となるように制御する機構が設けられたそうちであり、そのためフィルム搬送中のピン抜けが防止できさらにピンシートへの融着が抑止でき、結果的にテンター中でのフィルムの均質性低下やフィルム破断等のトラブルを未然に防ぐことが可能となる。またフィルムがピンシートから浮き上がった状態で保持されるため、ピンシートへの融着が無く、熱処理後のフィルム取り外しが容易となる。
またピンシート自体の汚染も生じないため装置の維持管理の面からも有効である。前記理由での高品位なフィルムを得ることができないなどの課題の解消にも効果があり、高品質なポリイミドフィルムなど高分子フィルムが得られ易く、高分子フィルム製造の生産性にも寄与し、高分子フィルムの製造装置としてまた高分子フィルムの製造方法として工業的に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、高分子又はその前駆体からなるフィルムとは、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリイミド前駆体、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アラミドなど高融点や非溶融性高分子からのフィルムが挙げられる。
本発明の高分子フィルムは、これらの高分子を含む溶液を流延し、乾燥、熱処理してフィルムとなす。これらの高分子を含む溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、メタクレゾールなどが挙げられる。
【0010】
本発明において好ましく用いられる高分子溶液としては、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、溶剤可溶なポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、酢酸セルロースの塩化メチレン溶液、メタノール溶液、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液、メタクレゾール溶液、ポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液、アラミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが挙げられる。
【0011】
本発明の高分子フィルムの製造装置および製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液やポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。以下ポリイミドフィルムについて詳述するがこれらに限定されるものではない。
本発明に好ましく適用し得る、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(以下グリーンフィルムともいう)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0012】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0018】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0019】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0020】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0021】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0022】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0023】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0024】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5 ,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムに置ける好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物又はハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物又はハ
ロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0029】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0030】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
【0031】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0032】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0033】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
【0034】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0035】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルムともいう)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、プリント配線基板用ベース基板などに用いることを考慮すると、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明においてポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0036】
本発明において、高分子又はその前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持部は、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置においては、ピンシートへのピンの植え込み角度が、ピンシートの垂直方向に対し、フィルムの幅方向の外側に向かって0.5〜15度、好ましくは1〜10度さらに好ましくは2〜7度程度の傾斜を持たせることが必須である。このように角度を付けることによりフィルムが熱風等にあおられてピンからはずれる可能性を大幅に減ずることが期待できる。角度がこの範囲より小さいと十分な効果が得られず、また角度がこの範囲より大きいと、ピンからフィルムを外す際にフィルムが引き裂かれて破断などに至る原因となる。
【0037】
本発明においてテンター式処理部が熱処理炉の場合は、熱処理炉内の風速が0.1m/秒から3.0m/秒である場合に好適である。本発明では、熱処理炉内の風速は3m/秒以下であることが好ましく、さらに2m/分であることが好ましい。また本発明における風速の下限は0.1m/秒であり好ましくは0.3m/秒程度である。またさらに本発明では把持されたフィルムの両面から均等に風圧を加えるように送風されることが好ましい。風速が所定の範囲を超えた場合や、両面からの風圧に偏りがある場合には、フィルムがピンから外れたり、あるいはフィルムがピンに必要以上に押し込まれてピンシートに接触し、ピンシートから必要以上にフィルムが加熱されてフィルムの破断などが生じる場合がある。一方風速の下限未満においてはフィルム表面の雰囲気の更新が不足することにより、本来の熱処理炉における乾燥や化学反応の進行が妨げられる場合がある。
【0038】
本発明の高分子フィルムの製造装置は、高分子、又はその前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置において、突き刺し深さを制御する機構が設けられた高分子フィルムの製造装置である。
突き刺し深さを制御する方法としては、ピンシートに突起を設け、フィルムの押し込み深さが突起に突き当たることにより規制される構造において、突起高さを調整することによって成される構成を例示することが出来る。
かかる突起は、例えば、ピンシートにリベットなどを植え付けることによって設置することができ、突起高さはピン高さの2%程度〜70%程度の高さまでを選ぶことができ、好ましくはピン高さの10%〜40%程度の高さにすることができる。突起高さが足りない場合、フィルムがピンシートに接触する箇所が生じる場合があり、フィルムとピンシートの融着などが生じる場合がある。また突起が高すぎると差込深さが十分でなくフィルムがピンから外れる場合がある。
フィルムのピン刺しは、押し込み具によりフィルムをピンに押し込むことによって行えばよいが、その際に押し込み深さを、ピンの中間部分までに規制することによりフィルムの刺し込深さを調整する方法も好ましく用いることができる。
ピンの突き刺し深さがピン先端からピン根元までの中間部分(ピン先端から根元までの25〜75%)となるように制御する機構を配すると好適である。
【0039】
本発明の高分子フィルム、又はその前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持部は多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンでフィルム両側端部を突き刺すことフィルムを把持し、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置にて、突き刺し深さを制御する機構が設けられた高分子フィルムの製造装置において、該ピンがフィルム両側端部を突き刺す時点で、融点又は軟化点が150℃以上で引張弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシを備えた部材でフィルム端部をピンに突き刺す手段を使用することも好ましい実施態様である。融点又は軟化点が150℃以上で引張弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシを備えた部材としては特に限定されないが、ブラシが円筒平面周上に設けられたブラシロールが好ましく使用できる。
融点又は軟化点が150℃以上で引張弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシは、この物性を有することでフィルムの突き刺しが均一に行われかつ長時間の使用によってもその機能の劣化が極めて少ないものであり、この物性を有さないものを使用した場合には前記の2点を同時に満足することができないものである。
融点又は軟化点が150℃以上で弾性率4GPa以上の素材からなる毛材からなるブラシとしてはこの物性を備えたものであれば特に限定されるものではなく、例えば高い引張弾性率の高分子繊維、カーボンファイバー、ガラスファイバー、などが挙げられるが、より好ましくは高分子繊維などの高分子素材であり、芳香族ポリアミド、例えばコーネックス(登録商標)(帝人株式会社製)などが挙げられる。
先に述べたように、かかるブラシロールの毛先がピンシート面からある程度離れた位置になるようにブラシロールの接置位置を調整することによりフィルムの刺し込み深さを調整することが可能である。
【0040】
本発明においては、好ましい態様として、フィルム熱処理が終了して、ピン又はピンシートがターンしてフィルム把持を開始する位置に戻る直前の部位において冷却手段を設けて、ピンがフィルム把持開始時点においては充分に冷却され、ピンによるフィルム両端の突き刺しにおいて、フィルム把持の均一性が保たれ、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向又は搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが抑制され、フィルム全体での歪の減少、フィルム厚み斑の低減が達成できるようにした冷却手段を備えた製造装置であり、この装置を使用する製造方法である。冷却手段としては、空冷、水冷いずれでもよく、また空気、水以外の冷媒を用いても良い。冷却効率の点からは液体の冷媒を用いることが好ましく、さらに、テンター自身が一般の有機溶剤の発火点以上に加熱されることを考えると、水冷仕様による冷却手段にすることが最も好ましい。
この冷却手段を設けることで、ピンおよびピンシートがフィルム両端を把持して搬送を開始する時点で、一端熱処理温度例えば450℃などの高温に加熱され冷却手段がないときにピンなどが高温に維持されており、この高温のピンによるフィルム両端の突き刺しにおいて、フィルム把持の均一性が保たれ難く、ピンを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向又は搬送方向にも孔が拡大することや破断が生じることが容易くなり、フィルム全体での歪の増加、フィルム厚み斑の拡大が生じるなどの問題をある程度解消することができる。
さらに本発明において、好ましい態様としては、ピンテンターのピン配置において、フィルム搬送時のフィルム幅方向における最内側に配列された個々のピンが互いに、フィルム搬送方向で個々のピンシート内においても、他のピンシート間においても、全て等間隔で配されていることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン(登録商標)1254D)を用いて測定した。
3.ポリイミドフィルムの表面粗さの測定
表面粗さ計 ハンディサーフ(登録商標)E−35A(株式会社東京精密製)にて測定した。
【0042】
4.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(登録商標)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および破断伸度を測定した。
5.ポリイミドフィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、・、・、・、と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0043】
6.ポリイミドフィルムの融点、ガラス転移温度
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 600℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
7.ポリイミドフィルムの熱分解温度
測定対象のポリイミドフィルムを充分に乾燥したものを試料として、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が5%減る温度を熱分解温度とみなした。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0044】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(株式会社日本触媒製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0045】
〔参考例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(登録商標)DMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0046】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(登録商標)KE−P10(株式会社日本触媒製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0047】
〔参考例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(登録商標)KE−P10(株式会社日本触媒製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0048】
〔実施例1〜7、比較例1〜5〕
参考例1で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、150μm、塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ21μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを実施例1〜7は図1と図2に示す、フィルム搬送の横方向に傾斜角3〜13度となるように炭素鋼製のピン(高さ10mm)が植え込まれたピンシートと、太さ0.5mmのコーネックス(登録商標)製の毛材を有する日本ユニット株式会社製のユニットブラシを巻き加工して得られたブラシロールをフィルム押し込み具として有するピンテンターを用い、グリーンフィルムをピンに射し込んで把持しテンターにて熱処理を行った。比較例1〜5は、ピン角度が0度又は20〜30度であるピンシートのピンテンターを使用して、グリーンフィルムをピンに射し込んで把持しテンターにて熱処理を行った。ピンは、共にピンシートが並んだ際にピン間隔が一定となるように配置されており、ピンシート間隔は1140mmである。
前記コーネックス(登録商標)製ブラシロールはその毛先がピンシート表面から距離を取れるようにマイクロメータを用いて高さ調整することができるように設置されており、本実施例ではピンシートから3mmの位置になるように調整された。フィルムはほぼその位置にまで押し込まれ、ピンシートからは浮き上がった状態で把持が行われた。
テンターの熱処理設定は以下の通りである。第1段が200℃で5分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として450℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。またテンター内の最大風速は0.5m/秒であった。
テンターの第1段目の中間地点までは両端のピンの幅を2%縮め初期幅の98%とした。第1段目の後半ではピン幅をやや広げ初期幅の99%とし、昇温区間にて102%まで広げ、第2段目の中間点までさらにピン幅を広げて103%とし、以後は一定幅にて処理した。その後、5分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する複数の実施例1、比較例1の各ポリイミドフィルムを得た。
実施例1においては、いずれも処理中にピンハズレは生じず、またピンシートとフィルムの間隙もピン刺し初期の状態がほぼ保たれ走行状態も良好であったが、比較例1においては、いずれも処理中にピンハズレが生じたり、走行状態においてばたつきなどの問題が発生した。
実施例2〜7、比較例2〜5においては、熱処理炉内の風速を変えて、フィルムの走向状態をチェックした。結果を表1、2に示す。
表中の風速の測定は「アネモマスター(登録商標)24−6111」(日本カノマックス株式会社製)を用いて風吹出し口の直下において該風速計の検出部を置いて測定したものである。(なお、風速の測定は常温において送風系、駆動系を運転状態にして測定した値を充当したものである、これは風速検出部の耐熱性から高温での使用に問題があるためであり、送風系の制御をこの常温測定時の制御に相応して制御し、実風速を前記常温測定時の送風系制御値からの値を充当したものである。
【0049】
〔実施例8〜11〕
参考例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ステンレススチール製のエンドレスベルトに、ダイコータを用いてコーティングし(塗工幅1240mm)、110℃にて40分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ21μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを図1と図3に示すピンテンターを用いた以外は実施例3と同様に熱処理を行い、それぞれのグリーンフィルムからポリイミドフィルムを得た。 なお熱処理炉内の最大風速は1.5m/秒とした。
熱処理中の搬送状態、得られたポリイミドフィルムの特性などの測定結果を表3に記載する。
なお、フィルムの平面性、有効幅は以下のように定義した。
まず得られたフィルムを清浄な表面を有する定盤に広げ、フィルム端部にてウネリにより定盤との間に空間が空いてしまう部分を平面性不良な部分として捉えた。フィルムの端部が定盤表面から持ち上がらずに、フィルム全体が定盤に密着するようになるまで、フィルム両端をカットし、その時のフィルム幅を有効幅と定義した。
【0050】
〔比較例6〜9〕
参考例1〜4のポリアミド酸溶液を、実施例と同様に支持体上に塗布乾燥し、乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ21μmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、図1に示すテンターを使用し、鏡面加工したピンシート表面に針状のピンを植え込んだ構成のピンテンターにて両端を把持し、他は実施例8と同様の条件にて熱処理し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する比較例6〜9のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。熱処理中の搬送状態、得られたポリイミドフィルムの特性など結果を表3に記載する。なお表面加工されたピンシート表面のRaは0.13μmであった
結果のとおり、比較例においてはフィルム端の平面性が悪い部分の幅が広く、結果的に有効幅が狭くなっている。またフィルム厚みの左右の差も大きく、フィルムの均一性が良くないことが示唆される。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0054】
以上述べてきたように、本発明においては、ピンシートにフィルムが焦げ付くことがなく、安定した搬送性が得られ、またフィルムをピンシートから剥がす際にもスムースな剥離状態が得られ、さらにフィルムの安定なる搬送が可能であるが故にフィルムの裂けや破断が生じにくく、有効幅が広く無駄の少ないフィルム製膜が可能であり、さらに得られたフィルムは幅方向の品位、フィルム厚の均一性にも優れたものとなり、当該製造方法、製造装置は、ポリイミドフィルム、セルロース系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムなどの流延製膜方法として産業上有意義な物である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】テンター式フィルム処理機におけるピン刺し部の概略を示す模式図である。
【0056】
【図2】本発明のテンター式フィルム処理機における傾斜ピンシートの一例の概略を示す模式図である。
【0057】
【図3】本発明のテンター式フィルム処理機におけるピン差込深さを制御する機構を設けたピンシートの一例の概略を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子又はその前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにて搬送しながら処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された(植え込まれた)多数のピンで構成され、該ピンがフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置であって、ピンシートへのピンの植え込み角度が、ピンシートの垂直方向に対し、フィルムの幅方向の外側に向かって0.5〜15度の傾斜を持つことを特徴とする高分子フィルムの製造装置。
【請求項2】
フィルムに該ピンを突き刺すに際し、ピンの突き刺し深さがピン先端からピン根元までの中間部分となるように制御する機構が設けられた請求項1記載の高分子フィルムの製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高分子フィルムの製造装置を用いて高分子フィルムを製造することを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
【請求項4】
テンター式処理部内の風速が0.1〜3.0m/秒の範囲である請求項3記載の高分子フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−346929(P2006−346929A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173730(P2005−173730)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】