説明

高分子フィルムの製造装置および高分子フィルムの製造方法

【課題】高分子フィルム特にポリイミドフィルムを製造する際に、乾燥や熱処理をテンター式搬送装置を使用して実施する場合に、クリップで挟むことにより生じるフィルムの厚み斑やフィルム破断のリスクを低減できる高分子フィルムの製造に適した製造装置とその装置を使用して製造する高分子フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】クリップテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置において、高分子フィルム又は高分子前駆体フィルムとクリップが接する把持部が通気性を有する耐熱素材にて構成されている高分子フィルム製造装置とこれを使用する高分子フィルム製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子フィルムの製造装置に関するものであり、特に高分子フィルムを製造する際の最終熱処理時に、前駆体フィルムを高温熱処理して高分子フィルムとなす際におけるテンター式(フィルム搬送)処理部に特徴を有する高分子フィルムの製造装置に関し、またこの装置を使用した高分子フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムを製造するとき、自己支持性のあるポリイミド前駆体のフィルム(以下グリーンフィルムともいう)を高温でイミド化するが、この場合半乾燥状態の前駆体フィルムを搬送しながら熱処理し乾燥および熱処理を行うが、これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムや前駆体フィルムは一般的に乾燥される従って収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送装置が知られている(特許文献1参照)。
また、ポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(特許文献2〜4参照)。
【特許文献1】特公昭39−029211号公報。
【特許文献2】特開平09―188763号公報
【特許文献3】特開平11−254521号公報
【特許文献4】特開平09−077315号公報
【0003】
フィルム搬送装置は、布を染色した後の乾燥工程で布に皺が発生しないように乾燥する用途への使用も古くから良く知られている。布の乾燥の他にも溶剤製膜法での未乾燥なプラスチックフィルムのフィルムを乾燥工程で搬送しながら乾燥する場合にも使用される。フィルム搬送装置を使用することにより乾燥・熱処理時の熱でフィルムがその幅方向に収縮するのを抑制し、乾燥・熱処理後のフィルムに収縮による皺が発生しないようにすることができる。
【0004】
フィルムの収縮はフィルムの幅方向に限らず全方向に生じるが、フィルムの搬送方向は搬送テンションが作用しており収縮に対しての抑制効果がある。このように、未乾燥のフィルムを乾燥・熱処理する際にフィルムのテンター式搬送装置を使用して搬送することにより、乾燥・熱処理されたフィルムに必要な強度及び平面性を確保することができる。
【0005】
フィルムテンター式搬送装置のうち、フィルムの両側端部に沿って多数のクリップを喰い込ませることによりフィルムを幅方向に張設した状態で保持するフィルムのテンター式搬送装置は、平行に配置された一対の移動チェーンに列設支持されたクリップ配設されて構成される。このフィルムのテンター式搬送装置は、前記ピンテンターに比較して、把持部への応力を分散させることができ、ピン裂けに起因するフィルム破断が生じず、またピンからフィルムを外す際の発塵が無いなどメリットを有する。しかしながら、未乾燥のフィルムを把持した場合には、フィルム把持が困難で、把持部から溶断するする形でのフィルム破断が生じやすく、さらにクリップからフィルムを剥がす際にクリップ部分にフィルム成分が残存し、繰り返し使用される間に炭化して把持部分に焦げ付き、把持力の不均質化によるフィルム平面性の低下、炭化物の脱落によるフィルムの汚染等のの課題を抱えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリイミドフィルムを製造する際、乾燥や熱処理をテンター式搬送装置を使用して実施する場合に、クリップ部分での破断を防止し、平面性とクリーン性に優れた高分子フィルムの製造に適した製造装置とその装置を使用して製造する高分子フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイミドフィルムなど高分子フィルムの製造をテンター式搬送装置を用いて乾燥や熱処理をなす場合に、フィルムの両側端部をテンターで把持する部分の素材を選ぶことによりフィルムの破断を防止し、フィルムの平面性、クリーン性を改良できることを見いだし、高分子フィルム製造に適した高分子フィルム製造装置を創出した。
すなわち本発明は、下記の構成からなる。
1.高分子フィルム又は高分子前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置において、該クリップのフィルムと接する把持部が通気性を有する耐熱素材にて構成されていることを特徴とする高分子フィルムの製造装置。
2.高分子フィルム又は高分子前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置を用いて高分子フィルムを製造する際に、クリップのフィルムと接する把持部に通気性のある耐熱素材を用いることを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
3.高分子フィルム、又はその前駆体からなるフィルムが、揮発成分を含有するフィルムである前記2記載の高分子フィルムの製造方法。
4.高分子フィルムが、芳香族ポリアミドフィルム又はポリイミドフィルムである前記2又は3いずれかに記載の高分子フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
従来のクリップテンターにおいては、クリップにて未乾燥のフィルムを把持した場合にはフィルムからの溶剤分の揮発により把持された部分近傍に多数のボイドや表面の荒れが生じる。フィルムの膜厚が十分に厚い場合においては、顕著な問題となることは無かったが、フィルム厚みが40μm未満となるとボイドや表面荒れによるフィルム強度の弱化が生じ、テンター内での風圧、や自重による応力にフィルムが耐えることができなくなり破断を生じる可能性が高くなる。
かかる現象は単にフィルムの破断に留まらず、クリップ把持部分にフィルム成分、ないしその分解物の一部が付着しやすくなる、という副次的な現象を促進する。クリップに付着したこれら有機成分は長期間繰り返し使用される間に炭化し、クリップを汚染する。汚染されたクリップにおいてはフィルムを均質に把持することができなくなり、幅方向の応力バランスが崩れるために、作製されるフィルムの内部に応力の不均質かを生じせしめ、結果として得られるフィルムの平面性が低下し、さらに機械的特性についての面内でのバラツキを生じせしめるものとなる。また、かかる炭化物が脱落した場合には黒色の導電性異物となり、外観を害するだけでなく、電気的な信頼性にも悪影響が生じる。
本発明の高分子フィルム製造装置は、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムにおけるテンター式処理部(搬送装置)において、フィルム両側端部を把持するクリップが通気性のある耐熱素材からなるため、フィルムの把持中にクリップに挟まれたフィルム部分からの、ガス、溶媒などの揮発成分の発散が妨げられない。それにより、フィルム把持部でのボイド発生、表面荒れとフィルム成分のクリップ側への付着を抑制するため、かような問題が解消され、高品位でクリーンなフィルムを効率よく経済的に製造することが可能となり、高分子フィルム製造の生産性にも寄与し、高分子フィルムの製造装置としてまた高分子フィルムの製造方法として工業的に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、高分子フィルムとは、ポリアミドイミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アラミドなど高融点や非溶融性高分子からのフィルムが挙げられる。
本発明の高分子フィルムは、これらの高分子を含む溶液を流延し、乾燥、熱処理してフィルムとなす。これらの高分子を含む溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、メタクレゾールなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる高分子溶液としては、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、溶剤可溶なポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、酢酸セルロースの塩化メチレン溶液、メタノール溶液、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液、メタクレゾール溶液、ポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液、アラミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが挙げられる。
【0010】
本発明の高分子フィルムの製造装置および製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液やポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。以下ポリイミドフィルムについて詳述するがこれらに限定されるものではない。
本発明に好ましく適用し得る、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(グリーンフィルム)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0011】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0017】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0018】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0019】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0020】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0021】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0022】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0023】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムにおける好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物またはハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物またはハロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0028】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0029】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
【0030】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0031】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0032】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
【0033】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0034】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、後述するプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0035】
本発明において高分子フィルム、又はその前駆体からなるフィルムを熱処理する端部固定テンターのクリップ部に用いられる通気性のある耐熱素材の形態、性状については特に限定されないが、好ましくは、熱分解温度が400℃以下の多孔質物体ないし繊維集合体を云う。
本発明における通気性耐熱素材として、多孔性のセラミックスを用いることができる。セラミックスの材質そのものに特段の制限はなく、アルミナ、カルシア、マグネシア、シリカなどの単独または複数からなる素材を用いればよい、多孔質度合いを示す空隙率は体積比で30%以上が好ましく40%以上がなお好ましく50%以上がなおさらに好ましい。多孔質度合いがこの範囲より低いと、ポリマーフィルムからの揮発成分の自由な発散が妨げられる。また90%を超えるとセラミックス自体が脆くなり実用性に乏しくなる。同様に多孔質体としては発泡セメント、石膏、ガラス、金属、その他リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、金属酸塩等の無機の固体を用いることができる。
本発明における通気性耐熱素材として、無機繊維の集合体を用いることができる。本発明において用いられる無機繊維とはカーボンファイバー、アルミナウール、ガラスウール、石綿、各種の硝子繊維等を用いることができる。これらは織布形状でも不織布形状、あるいはフェルトのごとき厚手でもかまわない。
本発明における通気性耐熱素材として金属繊維の集合体を用いることができる。金属種としては耐食性に優れるステンレス系の素材が好ましい。
本発明における通気性耐熱素材として、耐熱高分子繊維の集合体を用いることができる。耐熱高分子繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミドベンゾオキサゾール繊維などを用いることができる。
フィルム端部把持を多数のクリップで挟み込むことによってなす。本発明のテンターは該クリップがフィルムと接する把持部の温度が180℃未満となるように冷却する手段を有することがさらに好ましい。
以下、クリップ冷却手段を詳述する。かかるクリップを固定手段として用いるテンターはクリップテンターと称される。クリップテンターのクリップは多くの場合駆動チェーンに組み合わせれ、無限軌道として設置される。クリップテンターの駆動チェーンは、往復とも処理炉内を通る型式と、復路は処理路の外を通るように配置される型式が知られているが、本発明では、往復とも処理炉内を通る型式に適用されることが好ましい。このような型式の場合には装置全体をコンパクトにすることが可能である。
図3に示すように熱処理などの処理を受ける処理室内では、クリップが配されたクリップブロックが多数フィルム両端部に配されており、これらのクリップがフィルム両端を把持して搬送し、処理室内ではこれらクリップはフィルム両端で互いに並行に走行しているものであり、かつ極めて高温に維持されてフィルムの熱処理がおこなわれるもので、少なくともこの処理室内ではクリップも高温に曝され、フィルム熱処理が終了してターンして元の位置にてまた新たにフィルムを把持する様になっている。
本発明においてクリップおよびクリップブロックの冷却は、処理炉の入り口側における駆動チェーンの復路からクリップニングゾーンまでの間にて行うことが好ましい。
【0036】
従来のテンター式搬送装置では、これらのクリップがフィルム両端を把持して搬送を開始する時点で、一端熱処理温度例えば490℃に加熱され冷却手段、温度制御手段がなく高温にて温度バラツキが維持されており、クリップによるフィルム両端の把持において、フィルム把持の均一性が保たれ難く、クリップにて挟んだ部分近傍にてフィルム厚み斑や亀裂が入りやすく、亀裂の拡大によりフィルム破断が生じ易い。さらに、フィルム全体での歪の増加、フィルム厚み斑の拡大が生じる。そのため本発明ではクリップがフィルム熱処理が終了してターンしてフィルム把持を開始する位置に戻る直前の部位において冷却手段を設けて、クリップがフィルム把持開始時点においては充分に冷却され、かつ温度制御されており、クリップによるフィルム把持の均一性が保たれ、クリップ近傍での破れやフィルム全体での歪の減少、フィルム厚み斑の低減が達成できる。
本発明における冷却手段としては、空冷、水冷いずれでもよく、また空気、水以外の冷媒を用いても良い。冷却効率の点からは液体の冷媒を用いることが好ましく、さらに、テンター自身が一般の有機溶剤の発火点以上に加熱されることを考えると、水冷仕様による冷却手段にすることが最も好ましい。また冷却部付近においては結露を防止するため、雰囲気、並びに冷媒として空気を用いる場合には冷風の露点制御することが好ましい。
さらに本発明においては該クリップ部の温度を測定する手段と、測定結果に応じて冷却度合いを制御する制御系を備えることが好ましい。温度測定手段については熱電対、あるいは放射温度計などの公知の手段を用いることができる。制御系は通常の負帰還制御を用いればよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0038】
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0039】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0040】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(商品名)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0041】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0042】
〔参考例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0043】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0044】
〔参考例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0045】
〔実施例1〜4〕
参考例1〜4で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、150μm、塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ21μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、図1、図2に示すクリップであってフィルムに接する部分の素材として繊維径8μmのナスロン繊維製のフェルト(厚さ約2mm)を使用したクリップを使用し、放射温度計によるクリップ把持部の温度測定手段を備え、さらに図3.に模式的に示すように冷却部を設けたクリップテンターに通し、クリップシート間隔を1140mm、すなわちグリーンフィルム両端の各30mmをクリップにて把持し、第1段が170℃で5分、第2段220℃5分、第3段480℃5分にて加熱を施して、イミド化反応を進行させた。なお、クリップ把持部での温度は160℃プラスマイナス5℃の範囲にて制御された。ここにナスロン繊維とは日本精線株式会社製のステンレススチール繊維である。
フィルムの搬送状態は良好であり、テンター内での「クリップはずれ」は生じなかった。またテンター出口でのクリップ把持部にてもフィルム裂けはほとんど観察されなかった。
得られたフィルムを室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する実施例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に記載する。
【0046】
なお、フィルムの平面性、有効幅は以下のように定義した。
まず得られたフィルムを清浄な表面を有する定盤に広げ、フィルム端部にてウネリにより定盤との間に空間が空いてしまう部分を平面性不良な部分として捉えた。フィルムの端部が定盤表面から持ち上がらずに、フィルム全体が定盤に密着するようになるまで、フィルム両端をカットし、その時のフィルム幅を有効幅と定義した。
【0047】
〔実施例5〜12〕
以下、クリップの素材とその温度を変えて実施例と同様に製膜を行い評価した。結果を表2に示す。なお、使用した素材は以下の通りである。
実施例5〜8:東洋紡績株式会社製ポリベンゾオキサゾール繊維「ザイロン」製のフェルト。
実施例9〜10:多孔質アルミナセラミックス(空隙率54%)
実施例11〜12:カーボンファイバーの網組ベルト
【0048】
〔比較例1〜4〕
参考例1〜4のポリアミド酸溶液を、実施例と同様に支持体上に塗布乾燥し、乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ21μmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、実施例1と同様にクリップテンターにて熱処理を行った。なお比較例においてはクリップの素材は表面エンボス加工されたステンレススチール板であり、かつ冷却は行っていない。製膜中クリップの温度は220℃プラスマイナス10℃程度の幅にて推移した。
以下、実施例と同様にフィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、褐色を呈する比較例1〜4のそれぞれのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性など結果を表1に記載する。
結果のとおり、比較例においてはクリップはずれが生じやすく、またクリップ裂けが大きく、フィルム端の平面性が悪い部分の幅が広く、結果的に有効幅が狭くなっていることが判る。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、高分子フィルム特にポリイミドフィルム、ポリアミドフィルムを製造する際に、乾燥や熱処理をテンター式搬送装置を使用して実施する場合に、クリップを喰い込ませた孔でのフィルムの幅方向に長孔状に破断する問題を抑制できる高分子フィルムの製造に適した通気性のある素材のクリップおよびクリップ把持部の冷却手段を有する製造装置とその装置を使用して製造する高分子フィルムの製造方法であり、フィルムの把持中にクリップに挟まれたフィルム部分からの、ガス、溶媒などの揮発成分の発散が妨げられないことと、フィルムの把持部(クリップ突き刺し部)におけるフィルム把持開始時点で、クリップが充分に冷却されて、クリップを突き刺した孔でのフィルムの幅方向外向きに長孔状に破断が低減され、フィルム全体での歪の低減、フィルム厚み斑の低減が達成し得るものとなり、フィルムは幅方向の品位、フィルム厚の均一性にも優れた高品質なポリイミドフィルムなど高分子フィルムが得られ易く、高分子フィルム製造の生産性にも寄与し、高分子フィルムの製造装置としてまた高分子フィルムの製造方法として工業的に極めて有意義である。
ポリイミドフィルム、セルロース系フィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムなどの流延製膜方法として有効な製造装置と製造方法であり、産業上有意義なものである
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のクリップテンターにおけるクリップ部分の側面概略を示す。
【0053】
【図2】本発明のクリップテンターにおけるクリップ部分の正面概略を示す。
【0054】
【図3】本発明のクリップテンターにおける全体の概略を示す。
【符号の説明】
【0055】
1.クリップ可動部
2.ローラー
3.クリップ把持部
4.回転軸
11.冷却部
12.熱処理ゾーン
13.クリップ駆動チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子フィルム又は高分子前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置において、該クリップのフィルムと接する把持部が通気性を有する耐熱素材にて構成されていることを特徴とする高分子フィルムの製造装置。
【請求項2】
高分子フィルム又は高分子前駆体フィルムをフィルム端部固定式テンターにて熱処理などの処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のクリップで挟み込むことによってなされ、幅方向およびまたは搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有する高分子フィルム製造装置を用いて高分子フィルムを製造する際に、クリップのフィルムと接する把持部に通気性のある耐熱素材を用いることを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
【請求項3】
高分子フィルム、又はその前駆体からなるフィルムが、揮発成分を含有するフィルムである請求項2記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項4】
高分子フィルムが、芳香族ポリアミドフィルム、またはポリイミドフィルムである請求項2〜3いずれかに記載の高分子フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−253518(P2007−253518A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82636(P2006−82636)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】