説明

高分子凝集剤

【課題】 難脱水性の有機性汚泥等の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 下記の(Iv1)および(Iv2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリビングラジカル重合開始剤(Iv)の存在下で水溶性不飽和モノマー(a)を含有するモノマーを重合させた水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤。
(Iv1)下記一般式(1)で表される有機テルル化合物
(Iv2)ルテニウム、パラジウム、銅、鉄、モリブデン、ロジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる遷移金属の錯体、有機ヨード化物および有機塩素化物からなる群から選ばれる有機ハロゲン化物、並びに、アミンおよびホスフィンからなる群から選ばれるルイス塩基の混合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、有機性汚泥の脱水性能に優れる高分子凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水もしくはし尿(以下、下水汚泥と略記)又は工場廃水(以下、廃水と略記)等の有機性汚泥の脱水に対しては、ポリメタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリアミジン等のカチオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性高分子凝集剤が広く使用されている。
また、廃水等の無機性汚泥または廃水の脱水に対しては、ポリアクリルアミド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムコポリマー等のアニオン性高分子凝集剤が広く使用されている。
これらの高分子凝集剤の製造方法としては、水溶液重合法、薄膜重合法、逆相懸濁重合法、沈殿重合法および乳化重合法等が知られている。
これらの高分子凝集剤の中で、近年、特に有機性汚泥の脱水に関して、発生する汚泥量の増加および汚泥性状の難脱水性化への対応の観点から脱水処理速度向上のニーズが高まってきており、より強いフロック強度を形成する高分子凝集剤が望まれている。また、脱水ケーキを焼却処分する際の焼却処分費用の高騰、脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況から、脱水ケーキ含水率の低減を実現することができる高分子凝集剤が望まれている。
最近では、これらの高性能化を目的とした高分子凝集剤として、例えば、重合時または重合後にポリマー中のカルボン酸基と化学結合する架橋剤を加え反応させることで部分架橋を形成させた両性高分子凝集剤(例えば、特許文献1参照)、重合時にアゾ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物又は光開裂基を有するポリアルキレンオキサイド化合物を添加して製造したもの(例えば、特許文献2参照)、重合時にニトロキシラジカルを添加して製造したもの(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3305688号公報
【特許文献2】特開2002−97236号公報
【特許文献3】特開2001−139606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、現状用いられている高分子凝集剤は、まだ前記の課題を十分に解決できるレベルには到達しておらず、また上記開示されている高分子凝集剤はフロック強度や脱水ケーキ含水率の観点から、多少は改良されているもののまだ不十分であった。
本発明の目的は、難脱水性の有機性汚泥の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記の(Iv1)および(Iv2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリビングラジカル重合開始剤(Iv)の存在下で水溶性不飽和モノマー(a)を含有するモノマーを重合させた水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤である。
(Iv1)下記一般式(1)で表される有機テルル化合物
(Iv2)ルテニウム、パラジウム、銅、鉄、モリブデン、ロジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる遷移金属の錯体、有機ヨード化物および有機塩素化物からなる群から選ばれる有機ハロゲン化物、並びに、アルミニウムおよびチタンからなる群から選ばれるルイス塩基の混合物

432C―Te―R1 (1)

[式中、R1は炭素数1〜8の、アルキル基、アリール基、置換アリール基または芳香族ヘテロ環基;R2およびR3はHまたは炭素数1〜8のアルキル基;R4は炭素数2〜10の、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基またはシアノ基を表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤は下記の効果を奏する。
(1)有機性汚泥の脱水処理等において強固な粗大フロックを形成する。
(2)形成されたフロックは破壊、再分散されにくいため凝集処理の安定性や処理速度を著しく高めることができる。
(3)脱水工程後のケーキ含水率が低く廃棄物量および焼却処理コストを低減できる。
【0007】
[水溶性ポリマー(A)]
本発明における水溶性ポリマー(A)は、下記一般式[1]または[2]で表されるカチオン性モノマー(a1)を50〜100モル%含有する水溶性不飽和モノマー(a)を構成単位とする。(a)としては、(a1)の他に必要によりさらに、1個の不飽和基を有する、ノニオン性モノマー(a2)および/またはアニオン性モノマー(a3)を含有させることができる。
なお、ここおよび以下において水溶性不飽和モノマーもしくは水溶性ポリマーとは、水に対する溶解度が1g/水100g(20℃)以上であるものを意味し、後述する水不溶性不飽和モノマーとは、水に対する溶解度が1g/水100g(20℃)未満であるものを意味する。

CH2=C(R5)CO−Q−X−NR67 [1]
CH2=C(R5)CO−Q−X−N+678・Z- [2]
【0008】
式[1]、[2]中、R5はHまたはメチル基、R6、R7は炭素数(以下Cと略記)1〜3[凝集性能(高フロック強度、フロックの粗大化、脱水ケーキの低含水率化等。以下同じ。)の観点から好ましくは1〜2]のアルキル基を表す。R8はH、C1〜7の、アルキルまたはベンジル基を表す。R5〜R8は相互に同じでも異なっていてもよい。
-はハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン等の陰イオンを表す。
【0009】
(a1)〜(a3)としては下記のものが挙げられる。
(a1)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11) 窒素原子含有(メタ)アクリレート[ここにおいて(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタアクリレートを表す。以下同じ。]
C5〜30、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a12) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a13) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン等];
(a14) アミンイミド基を有する化合物
C5〜30、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド。
【0010】
(a2)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21)(メタ)アクリレート
C4以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述する条件におけるゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]5,000以下、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−およびポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a22)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a23) 前記(a1)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート。
【0011】
なお、本発明におけるGPC法によるMnの測定条件は次のとおりであり、後述する重量平均分子量(以下Mwと略記)も同様に測定できる。
<GPC測定条件>
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL 2本 + TSKgel Multipore
HXL−M[いずれも東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
溶離液 :テトラヒドロフラン
溶液注入量:100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)、
東ソー(株)製
【0012】
(a3)アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸;
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0013】
(a)のうち水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点から好ましいのは、カチオン性モノマーのうちの(a12)、(a13)、ノニオン性モノマーのうちの(a21)、(a22)、アニオン性モノマーのうちの(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(前記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0014】
水溶性不飽和モノマー(a)中のカチオン性モノマー(a1)の含有量(モル%)は、凝集性能の観点から好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100%である。
【0015】
水溶性ポリマー(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で水溶性不飽和モノマー(a)の他に必要により水不溶性モノマー(x)および架橋性モノマー(y)を併用することができる。
水不溶性モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0016】
(x2) [モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールは以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0017】
(x3) C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4) 不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5) ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0018】
また、架橋性モノマー(y)としては、2個またはそれ以上の不飽和基を有する、以下の(y1)〜(y5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン)塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(y1) ビスポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30、例えばN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド;
(y2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール[ポリ(2〜4)](メタ)アクリレート;
【0019】
(y3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール(以下、それぞれEG、PG、1,6−HDと略記)等]、ポリオキシアルキレン[Mn2,000〜3,000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、PPG(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下、それぞれTME、TMP、GR、PE、SOと略記)、デンプン〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル等;
【0020】
(y4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(y5) エポキシ基含有モノマー
C8以上かつMn6,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル。
【0021】
水溶性ポリマー(A)を構成するモノマー(a)、(x)および(y)の合計モル数に基づく各モノマーの含有量は、(a)は、凝集性能の観点から好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%;(x)は、通常40モル%以下、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは0.1〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜10モル%;また、(y)は、(y)の重合性または反応性にも依存するものの、通常5モル%以下、凝集性能発現および高分子凝集剤の水への溶解性の観点から好ましくは0.001〜1モル%、さらに好ましくは0.01〜0.5モル%である。
【0022】
(A)は、公知の水溶液重合(例えば、特開昭55−133413号公報に記載の断熱重合、薄膜重合、噴霧重合等)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号に記載のもの)等]で、ラジカル重合開始剤を用いて製造することができる。
該重合法のうち、有機溶媒等を使用する必要がないこと等工業上の観点から好ましいのは水溶液重合法である。なお、以下においてリビングラジカル重合開始剤(Iv)、または、(Iv)およびその他のラジカル重合開始剤(Iz)を用いる方法をラジカル重合法ということがある。
【0023】
[リビングラジカル重合開始剤(Iv)]
本発明におけるリビングラジカル重合開始剤(Iv)は、以下の(Iv1)および(Iv2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリビングラジカル重合開始剤である。
【0024】
[一般式(1)で表される有機テルル化合物(Iv1)]
本発明における(Iv1)は下記一般式(1)で表される有機テルル化合物である。

432C―Te―R1 (1)

式中、R1は、C1〜20の、アルキル基、アリール基、置換アリール基または芳香族ヘテロ環基を表す。R1のCが20を超えると、(Iv1)の水への溶解性が悪くなり、リビングラジカル重合性が低下して、得られる水溶性ポリマーの凝集性能が悪化する。
2およびR3は、HまたはC1〜8のアルキル基を示す。R2およびR3のCが8を超えると水への溶解性が悪くなり、リビングラジカル重合性が低下して、得られる水溶性ポリマーの凝集性能が悪化する。
4はC1〜20の、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基またはシアノ基を表す。R4のCが20を超えると重合率が低下する。
【0025】
1におけるアルキル基としては、C1〜8、例えばメチル基、エチル基、n−およびi−プロピル基、シクロプロピル基、n−、sec−およびter−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の直鎖、分岐鎖および環状のアルキル基が挙げられる。 これらのうち(A)の高分子量化の観点から好ましいのはC1〜4の直鎖および分岐鎖状のアルキル基、さらに好ましいのはメチル基、エチル基およびn−ブチル基である。
アリール基としては、C6〜10、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらのうち(A)の高分子量化の観点から好ましいのはフェニル基である。
【0026】
置換アリール基としては、C7〜20、例えば置換基を有するフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。該置換アリール基の置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORaで示されるカルボニル含有基(RaはC1〜8の、アルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。これらの置換基の数は、(A)の高分子量化の観点から1〜2が好ましく、2の場合は同様の観点からパラ位かオルト位が好ましい。
上記置換アリール基のうち高分子量化の観点から好ましいのはトリフルオロメチル置換フェニル基である。
また、芳香族ヘテロ環基としては、C4〜10、例えばピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基が挙げられる。
【0027】
2およびR3で示されるC1〜8のアルキル基としては、上記R1で示したアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0028】
4で示される各基のうち、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基としては上記R1で示した基と同様のものが挙げられる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
アミド基としては、カルボン酸アミド(アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、ベンズアミド、2−フルアミド等)、チオアミド(チオアセトアミド、ヘキサンジチオアミド、チオベンズアミド、メタンチオスルホンアミド等)、セレノアミド(セレノアセトアミド、ヘキサンジセレノアミド、セレノベンズアミド、メタンセレノスルホンアミド等)、N−置換アミド(N−メチルアセトアミド、ベンズアニリド、シクロヘキサンカルボキサニリド、2,4’−ジクロロアセトアニリド等)等を挙げることができる。
【0029】
オキシカルボニル基としては、−COORb(RbはH、C1〜8のアルキル基もしくはアリール基)で示される基、例えば、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−、sec−およびter−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基が挙げられる。これらのうち、(A)の高分子量化の観点から好ましいのはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基である。
【0030】
上記R4で示される基のうちリビングラジカル重合性の観点から好ましいのは、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル基、シアノ基、さらに好ましいのはフェニル基、ハロゲン原子置換(とくに1〜5個置換)フェニル基、トリフルオロメチル置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基である。
【0031】
前記一般式(1)で表される有機テルル化合物(Iv1)として好ましいのは、R1が、C1〜4のアルキル基またはフェニル基、R2およびR3が、HまたはC1〜4のアルキル基、R4が、C6〜20の(置換)アリール基またはオキシカルボニル基であるもの、さらに好ましいのは、R1が、C1〜4のアルキル基またはフェニル基、R2およびR3が、HまたはC1〜4のアルキル基、R4が、C6〜20の(置換)フェニル基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基であるものである。
(Iv1)の具体例としては、(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート、エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネートを例示することができる。
【0032】
[(Iv2)鉄、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、銅、ロジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる遷移金属の錯体、有機ヨード化物および有機塩素化物からなる群から選ばれる有機ハロゲン化物、並びに、アルミニウムおよびチタンからなる群から選ばれるルイス塩基の混合物]
(Iv2)における遷移金属の錯体を構成する金属は、周期律表第6〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)である、ルテニウム、パラジウム、銅、鉄、モリブデン、ロジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる遷移金属であり、これらのうち好ましいのは鉄、モリブデンである。
【0033】
遷移金属が鉄である錯体の具体例としては、アイロン(II)[以下において(II)はイオン価数2を表す。]アセテート、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨードアイロン、アイロン(II)アセチルアセトナート、アイロン(II)フタロシアニン、1,1’−ジアセチルフェロセン、1,1’−ジメチルフェロセン、ジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマー、ジシクロペンタジエニルアイロン、トリカルボニル(シクロオクタテトラエン)アイロン等が挙げられ、水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点からジカルボニルシクロペンタジエニルアイロンダイマーが好ましい。
【0034】
遷移金属がモリブデンである錯体の具体例としては、モリブデンヘキサカルボニル、モリブデン(II)アセテートダイマー、[1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]テトラカルボニルモリブデン、[1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン]テトラカルボニルモリブデン、(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)テトラカルボニルモリブデン、(プロピルシクロペンタジエニル)モリブデントリカルボニルダイマー、cis−テトラカルボニルビス(ピペリジン)モリブデン、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルハライド、シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー、ジカルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)モリブデンダイマー、メチルシクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー、トリアミンモリブデントリカルボニル、トリカルボニル(シクロヘプタトリエン)モリブデン等が挙げられ、水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点からシクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマーが好ましい。
【0035】
遷移金属が、鉄、モリブデン以外の、ルテニウム、パラジウム、銅、ロジウムまたはニッケルである場合の好ましい配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、ベンゼン、シクロペンタジエン、ビピリジン、サリシリデン、トリフェニルホスファイト、ジフェニルホスフィノエタン、フェナントロリン、ハロゲン、水素および一酸化炭素等が挙げられる。
【0036】
従って、遷移金属が例えばルテニウムである錯体の具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ジクロロベンゼンルテニウム(II)、ジクロロ−p−シメンルテニウム(II)、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム(II)、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(1,10−フェナントロリン)ルテニウム(II)、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)等が挙げられる。
【0037】
(Iv2)を構成する前記有機ハロゲン化物は、有機ヨード化物および有機塩素化物からなる群から選ばれる有機ハロゲン化物である。
有機ヨード化物としては、ヨウ化水素とアルケン〔ビニルエステル(酢酸ビニル等)、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等]等〕との付加反応による生成物、ヨードメタン、ヨードエタン、ヨードプロパン、ヨードブタン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、ヨードホルム、クロロヨードメタン、ヨードアセトニトリル、ヨード酢酸、ヨード酢酸エチル、1,6−ジヨードヘキサン、ヨードアセトアミド等が挙げられる。
これらのうち、水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点から好ましいのはヨウ化水素とアルケンとの付加反応による生成物およびヨード酢酸エチルである。
【0038】
(Iv2)を構成するルイス塩基は上記の遷移金属錯体を活性化する活性化剤として機能する。
該ルイス塩基としては、トリアルキルアミン[C3〜20、例えばトリエチルアミン、トリ(n−およびi−プロピル)アミン、トリ(i−、sec−およびter−ブチル)アミン、トリ(n−ペンチル)アミン、ジ(n−ブチル)エチルアミン、ジ(i−プロピル)エチルアミン];トリ(シクロ)アルキルもしくはトリアリールホスフィン[C3〜20、例えばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n−およびi−プロピル)ホスフィン、トリ(i−およびter−ブチル)ホスフィン、トリ(n−ペンチル)ホスフィン、ジ(n−ブチル)エチルホスフィン、ジ(i−プロピル)エチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリメシチルホスフィン]等が挙げられる。これらのうちリビングラジカル重合性の観点から好ましいのはトリエチルアミンである。これらは単独使用または2種以上を併用できる。
【0039】
(Iv2)中の有機ハロゲン化物1モルに対するその他の成分の割合(モル比)は、遷移金属錯体は重合速度および分子量分布を狭くする観点から好ましくは0.05〜3、さらに好ましくは0.1〜1;ルイス塩基は同様の観点から好ましくは0.05〜5、さらに好ましくは0.1〜3である。
【0040】
(Iv2)は、通常、使用直前に遷移金属錯体、有機ハロゲン化物およびルイス塩基を混合して調製されるが、必要により、各成分を重合させるモノマー中にそれぞれ別々に添加して混合し重合開始剤として機能するようにさせてもよい。
【0041】
本発明におけるリビングラジカル重合開始剤(Iv)は、前記(Iv1)および(Iv2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリビングラジカル重合開始剤であり、(Iv)は(Iv1)のみ、(Iv2)のみ、および(Iv1)/(Iv2)併用のいずれであってもよいが、高分子量化の観点から好ましいのは(Iv1)のみまたは(Iv2)のみである。
(Iv1)/(Iv2)併用の場合の重量比は、高分子量化の観点から好ましくは5/95〜99/1、さらに好ましくは30/70〜70/30である。
【0042】
(A)を構成するモノマーの全重量に基づく(Iv)の含有量は、高分子量化および凝集性能の観点から好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.1%、最も好ましくは0.02〜0.05%である。
【0043】
本発明における(Iv)は、必要により本発明の効果を阻害しない範囲で(Iv)以外の通常のラジカル重合開始剤(Iz)を併用することができる。
(Iz)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、ter−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。
上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕が挙げられる。また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち、(Iv)を失活させない観点からアゾ化合物が好ましい。
(Iz)は、通常重合系の水相に含有させるが、前記重合方法によっては水相(もしくは分散相)および/または油相(もしくは連続相)のいずれに存在させてもよい。
【0044】
(A)を構成するモノマーの全重量に基づく(Iz)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、好ましくは0.001〜1%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.1%、最も好ましくは0.02〜0.05%である。
【0045】
本発明における重合に際しては、連鎖移動剤(f)を使用することができる。
(f)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョン ウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymerHandbook fourth edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
【0046】
該(f)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
【0047】
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環含有チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香環含有チオール(C6〜12、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール、チオナフトール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20、例えばα−トルエンチオール)が挙げられる。
【0048】
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール、トリエチレングリコールジチオール)、脂環式ジチオール(C5〜20、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20、例えばキシレンジチオール)が挙げられる。
【0049】
また、上記(f)のうち、高分子凝集剤の水不溶解分低減の観点から水溶性の高いものが好ましく、水/n−デカン分配係数が、好ましくは10/90〜100/0、さらに好ましくは20/80〜100/0、とくに好ましくは50/50〜100/0である。ここにおける水/n−デカン分配係数は、日本工業規格(JIS)に規定されている水/1−オクタノール分配係数(JIS Z7260−107)と同様の測定方法で、1−オクタノールを、n−デカンに代えることで測定することができる。
【0050】
(f)の使用量は(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、高分子凝集剤の水不溶解分低減の観点から、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.001%、とくに好ましくは0.01%、最も好ましくは0.05%、高分子量化の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
【0051】
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法の場合は、例えば次の方法で製造することができる。
すなわち、疎水性分散媒(b)および分散剤(c)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。
一方、水溶性不飽和モノマー(a)、リビングラジカル重合開始剤(Iv)、および必要により連鎖移動剤(f)、水不溶性不飽和モノマー(x)および/または架橋性モノマー(y)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に投入し、懸濁させながら重合させる。
モノマー水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a)、(Iv)および必要により加える(x)および/または(y)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。モノマー水溶液等を不活性ガスで置換する方法としては、モノマー水溶液等に不活性ガスをバブリング供給する方法、滴下ライン中でスタティックミキサー等により不活性ガスをブレンドする方法等が挙げられ、重合の均一性の観点からスタティックミキサーで不活性ガスをブレンドする方法が好ましい。
なお、ここにおいて「疎水性分散媒」とは、水に対する溶解度(g/水100g、20℃)が1g未満である分散媒を意味する。
【0052】
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法や逆相乳化重合で用いられる疎水性分散媒(b)としては、以下の炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
(1)炭化水素
脂肪族(C5〜12、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環含有(C5〜12、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香環含有炭化水素(C6〜12、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等]等;
(2)ケトン
脂肪族(C3〜10、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環含有(C5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等]等;
(3)エーテル
脂肪族(C4〜8、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状(C4〜18、例えばテトラヒドロピリン)および芳香環含有エーテル(C7〜12、例えばアニソール)等]等;
(4)エステル
脂肪族(C3〜10、例えば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル)、脂環含有(C7〜12、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)および芳香環含有エステル(C8〜13、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等]等。
【0053】
これらのうち、(A)の製造時の取り扱い性、および重合時の温度制御の観点から好ましいのは脂肪族および脂環含有炭化水素、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサンおよびメチルシクロヘキサンである。
【0054】
疎水性分散媒(b)の使用量は、逆相懸濁重合では、分散系の粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、分散系の安定性の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%;逆相乳化重合では、エマルションの粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、エマルションの安定性の観点から好ましい上限は80%、さらに好ましくは70%、とくに好ましくは60%である。
【0055】
また、逆相懸濁重合法で用いられる分散剤(c)としては、分散粒子の粒子径、および分散粒子を脱水、乾燥した後の乾燥粒子の後述の安息角、すなわち粉体流動性を制御することを目的とする、種々の油溶性物質が挙げられる。
(c)のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は、逆相懸濁粒子の分散安定性、粒径および後述の(A)の乾燥粒子の安息角制御の観点から好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜7、とくに好ましくは3〜5である。
ここにおいてHLBとは、親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる[「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「新・界面活性剤入門」、197−198頁、1992年三洋化成工業(株)刊、等参照]。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
【0056】
(c)には、Mwが5,000未満(さらに好ましくは100〜3,000、とくに好ましくは100〜1,000)の低分子分散剤(c1)、およびMwが5,000以上(さらに好ましくは7,000〜1,000,000、とくに好ましくは10,000〜100,000)の高分子分散剤(c2)が含まれる。該(c2)は60〜100℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0057】
(c1)には、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールの脂肪酸(C10〜30)エステル〔ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120、例えばグリセリンモノステアレート)、PEG脂肪酸エステル[Mw100〜4,500、例えばPEG(Mw100〜4,500)のモノ−およびジステアレート]等〕、アルキル(C1〜30)アリルエーテル等が含まれる。
【0058】
上記(c1)のうち、(A)の製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の重合粒子の安息角の観点から好ましいのは、多価アルコールの脂肪酸エステル、さらに好ましいのはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルである。
【0059】
(c2)には、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体[例えば1−オレフィン(C11〜100)/(無水)マレイン酸共重合体、およびそのアミン反応物]、長鎖アルキル基(C12〜50)含有(メタ)アクリレート(共)重合体、変性(アミノ、カルボキシ、エポキシ、ヒドロキシ、メルカプト、脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド変性等)オルガノポリシロキサン、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
上記(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体には、エチレンおよび/または無水マレイン酸変性エチレンと酢酸ビニルの共重合体、およびエチレン・酢酸ビニル共重合物を無水マレイン酸で変性したもの等が含まれる。
【0060】
該エチレン・酢酸ビニル共重合体を無水マレイン酸で変性したものとしては、無水マレイン酸をエチレン・酢酸ビニル共重合体に付加したものが挙げられ、無水マレイン酸とエチレン・酢酸ビニル共重合体の重量比は、逆相懸濁粒子の分散安定性および反応物の分子量調整の観点から好ましくは2/98〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80である。
(無水マレイン酸変性)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体における共重合比(重量比)は、疎水性分散媒(b)への溶解性および逆相懸濁粒子の分散安定性の観点から好ましくは50/50〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10である。
【0061】
上記(c2)のうち、(A)の製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体、変性オルガノポリシロキサン、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0062】
分散剤(c)は、(A)の粉体流動性および重合時の疎水性分散媒(b)への溶解性の観点から、好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは65〜95℃、特に好ましくは67〜92℃、最も好ましく70〜90℃のTgを有する分散剤[例えば前記(c2)]を含有することが好ましい。該TgはJIS K7121−1987プラスチックの転移温度測定方法に準じ、示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて測定されるものである。
【0063】
また、(c)の融点は、(A)の粉体流動性および重合時の疎水性分散媒(b)への溶解性の観点から好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃、とくに好ましくは40〜70℃である。該融点はJIS K0064−1992,3.2融点試験方法に準じ、融点測定装置を用いて測定されるものである。
【0064】
分散剤(c)の使用に当たっては、逆相懸濁粒子の分散安定性および乾燥粒子の安息角、粒度分布の観点から(c1)と(c2)を併用することが好ましく、併用する際の重量比[(c1)/(c2)]は、同様の観点から好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜5/95である。
(c1)と(c2)を併用する場合、乾燥粒子の粒度分布の観点から好ましい組合せは、多価アルコールの脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せ、さらに好ましいのはPEG脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せである。
【0065】
(c)の使用量は、疎水性分散媒(b)の重量に基づいて、逆相懸濁粒子の安定性、重合時の装置への重合粒子付着防止、重合後の乾燥粒子の安息角および粒子径制御の観点から好ましくは0.01〜20%、さらに好ましくは0.03〜10%、とくに好ましくは0.05〜5%である。
【0066】
リビングラジカル重合法におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常1%、工業上の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは15%、最も好ましくは20%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、とくに好ましくは65%、最も好ましくは60%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、前記と同様の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、前記と同様の観点から好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは80%、より好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
【0067】
モノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、高分子量化の観点から、好ましい下限は1.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは2.5、加水分解防止の観点から好ましい上限は9、さらに好ましくは8、とくに好ましくは7.5である。
pH調整のために用いられるpH調整剤としては特に限定はなく、モノマー水溶液がアルカリ性の場合は無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、無機固体酸性物質(酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安、スルファミン酸等)および有機酸(C2〜20、例えばシュウ酸、こはく酸、リンゴ酸)が挙げられ、モノマー水溶液が酸性の場合は無機アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)および有機アルカリ性物質(グアニジン等)が挙げられる。
なお、ここにおけるpHは、モノマー水溶液の原液をpHメーター[例えば、商品名「LAB pHメータ−M−12」、(株)堀場製作所製]を用いて室温(20℃)で測定される値である。
【0068】
重合温度は、水溶液重合では、下限は通常−10℃、水溶性(共)重合体(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは0℃、さらに好ましくは5℃、とくに好ましくは10℃、最も好ましくは15℃、上限は通常130℃(加圧下)、上記と同様の観点から好ましくは100℃、さらに好ましくは95℃、とくに好ましくは90℃、最も好ましくは85℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、ガラス製の断熱容器等内で断熱重合させてもよい。
【0069】
光重合における重合温度は、下限は通常0℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは5℃、さらに好ましくは10℃、とくに好ましくは15℃、最も好ましくは20℃、上限は通常100℃、上記と同様の観点から好ましくは95℃、さらに好ましくは90℃、とくに好ましくは80℃、最も好ましくは70℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、比較的低温(例えば15〜35℃)で重合を開始させ、一定時間(例えば1〜3時間)重合後に昇温(例えば55〜80℃)してもよい。
【0070】
逆相懸濁重合における重合温度は、下限は通常10℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは20℃、さらに好ましくは30℃、とくに好ましくは40℃、最も好ましくは50℃、上限は通常95℃、上記と同様の観点から好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃、最も好ましくは60℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つよう、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。重合温度を一定に保つために、予め所定重合温度に温度調整した分散媒の撹拌下でモノマーを連続または間欠的に滴下してもよい。その際の滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
【0071】
逆相乳化重合における重合温度は、下限は通常0℃、(A)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは5℃、さらに好ましくは10℃、とくに好ましくは15℃、最も好ましくは20℃、上限は通常95℃、上記と同様の観点から好ましくは90℃、さらに好ましくは80℃、とくに好ましくは70℃、最も好ましくは55℃である。
また、重合中は所定重合温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、比較的低温(例えば15〜35℃)で重合を開始させ、一定時間(例えば1〜3時間)重合後に昇温して、例えば55〜80℃にしてもよい。
【0072】
重合時の圧力[kPa(絶対圧力)、以下数値のみを示す。]は、特に限定されないが、通常大気圧または減圧下で行う。分子量分布制御の観点から、好ましくは重合温度で疎水性分散媒(b)が沸騰する圧力にすることが好ましい。
圧力の好ましい下限は5、さらに好ましくは10、とくに好ましくは15、好ましい上限は500、さらに好ましくは300、とくに好ましくは150である。
【0073】
重合は重合による発熱がなくなった時点で反応終点が確認できるが、重合時間は通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、残存モノマー低減および工業上の観点から、好ましくは2〜12時間である。
逆相懸濁重合の場合において、モノマーを滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合させることが好ましい。
上記のモノマー濃度、モノマー水溶液pH、重合温度、重合時の圧力および重合時間は、モノマー組成、重合法および開始剤種類等によって適宜調整することができる。
【0074】
本発明における水溶性ポリマー(A)は、さらに変性反応させてもよい。ポリマー変性方法としては、例えば、水溶性不飽和モノマー(a)として加水分解性官能基を分子内に有する(メタ)アクリルアミドを使用した場合、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、(a)のアミド基を部分的に加水分解してカルボキシル基を導入する方法(特開昭56−16505号公報等参照);ホルムアルデヒド、ジアルキルアミン(C1〜12)およびハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)化アルキル(C1〜12)(メチルクロライド、エチルクロライド等)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法;アクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミドなどの加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(特開平5−192513号公報等参照);および重合後に前記の架橋性モノマー(y)を添加して架橋反応させる方法(特許3305688号公報等参照)等が挙げられる。
【0075】
重合して得られる含水ゲル[水溶性ポリマー(A)と水とからなる]は、必要に応じて細断され、さらに脱水、乾燥することによって粉末状の本発明の高分子凝集剤を得ることができる。
【0076】
(A)の固有粘度(以下ηということがある)(1N−NaNO3水溶液中30℃での測定値、単位はdl/g。以下同じ。)は通常1〜40、凝集性能および凝集速度の観点から好ましくは2〜38、さらに好ましくは4〜35、最も好ましくは5〜30である。
【0077】
また、(A)の0.4重量%水溶液の曳糸長(mm)は、後述するノニオン性およびアニオン性高分子凝集剤では、凝集に必要な高分子量化および脱水ケーキの含水率低減の観点から好ましくは20〜200、さらに好ましくは40〜150、カチオン性および両性高分子凝集剤体では、同様の観点から好ましくは5〜100、さらに好ましくは6〜80である。
該曳糸長は、分子量(または固有粘度。以下同じ。)や分子量分布と相関があり、分子量が大である程、また分子量分布が広い程大きな値となる。また、同程度の分子量では、曳糸長が短いほど分子量分布がシャープであるとされる。
【0078】
ここで、曳糸長L(mm)は曳糸性測定器[協和界面科学(株)製]を用いて以下の手順で測定することができる。
水溶性ポリマー粒子0.80g(固形分換算)を300mlのガラス製ビーカーにとり、該ポリマーとイオン交換水の重量の合計が200.0gとなるようにイオン交換水をすばやく加え、ガラス棒などを用いて該重合体が膨潤して均一分散するまで(約1分)撹拌する。この時、該重合体がままこにならないように注意する。その後、透明樹脂フィルムでふたをして室温(約20℃)で約20時間静置した後、板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)1枚付き撹拌棒を取り付けたジャーテスターにセットし、120rpmで1時間撹拌して測定試料の0.4重量%水溶液を調製する。該測定試料を25±2℃に温度調整した後、曳糸性測定器の、吊り下げ糸の下端に取り付けられたガラス製回転楕円体(以下ガラス球という)(短径7mm、長径11mm。長径方向に吊り下げる。)をガラス球の長径上端が測定試料の液面直下に位置するように浸漬し、15秒間保持した後、16mm/秒の速度でガラス球を引き上げ、ポリマー水溶液の糸が切れるまでの、液面からガラス球下端までの距離を測定する。測定試料におけるガラス球の浸漬位置を変更して、測定を10回繰り返し、平均値を算出し、曳糸長(mm)の値とする。
【0079】
通常、曳糸長は、分子量(もしくは固有粘度、以下同じ。)または分子量分布と相関があり、分子量が大である程、もしくは分子量分布が広い程大きな値となる。また、異なる水溶性ポリマー同士を比較する際は、いずれも水不溶解分量が0.1重量%よりも小さく、しかも同程度の分子量(固有粘度の差が±5%以内)である場合は、曳糸長が短い方が分子量分布がシャープであり凝集性能に優れると判断することができる。
このような曳糸長、分子量(固有粘度)および凝集性能の関係において、本発明は(A)の曳糸長L(mm)と固有粘度η(dl/g)の比(L/η)を特定の範囲とすることで、優れた凝集性能が発揮されることを初めて見出したものである。すなわち、該(L/η)は凝集に必要な高分子量化および脱水ケーキの含水率低減の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.5〜7、とくに好ましくは2〜5である。
該比(L/η)は、リビングラジカル重合開始剤(Iv)の、(A)を構成するモノマーの全重量に基づく使用量を減らすことでより大とし、また、(Iv)の該使用量を増やすことでより小とし上記の範囲とすることができる。
【0080】
[高分子凝集剤]
本発明の高分子凝集剤は、前記水溶性ポリマー(A)を含有してなる。
一般的に、下水汚泥においては、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、脱水用高分子凝集剤としてはカチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
廃水においては、溶解性有機物等を処理するためにまず無機凝集剤を添加することが多く、その場合、懸濁粒子表面は無機凝集剤で覆われることとなりプラス荷電を有していることから、凝集沈殿処理用高分子凝集剤としては、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
石油の3次回収用としては、比較的大きな分子量を有するものが使用され、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用としては、カチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
【0081】
ここで、カチオン性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す高分子凝集剤であり、また両性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す高分子凝集剤である。これらの高分子凝集剤の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価方法については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性凝集剤中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性凝集剤中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値、アニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0082】
本発明の高分子凝集剤がカチオン性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0である。
また本発明の高分子凝集剤が両性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中のカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、より好ましくは0.5、さらに好ましくは1.0、とくに好ましくは1.5、最も好ましくは2.0、凝集性能の観点から好ましい上限は7.0、より好ましくは6.0、さらに好ましくは5.5、とくに好ましくは5.2、最も好ましくは5.0であり;アニオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は−13.0、より好ましくは−10.0、さらに好ましくは−8.0、とくに好ましくは−5.0、最も好ましくは−3.0、凝集性能の観点から好ましい上限は−0.05、より好ましくは−0.1、さらに好ましくは−0.3、とくに好ましくは−0.5、最も好ましくは−1.0である。
【0083】
コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、以降の測定は室温(約20℃)下で行う。
(1)測定試料(高分子凝集剤の50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlの三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(長さ40mm、直径5mmの円筒状マグネット、回転数1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解させ、0.2重量%の高分子凝集剤溶液を調製する。500mlのビーカーに該調製溶液10mlをとり、全体の重量(溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、高分子凝集剤の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレ(直径100mm、深さ10mm)に秤量(W1)して、循風乾燥機中、105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。

固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
【0084】
(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点とする。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、上記(2)と同様にして滴定する。
【0085】
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外は(2)および(3)と同様の操作を行う。
(5)計算方法
コロイド当量値(meq/g)=(1/2)×(試料の滴定量−空試験の滴定量)
×(N/400PVSKの力価)
【0086】
本発明の高分子凝集剤は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤併用することができる。
【0087】
本発明の高分子凝集剤を下水汚泥、廃水等(以下、下水汚泥等と略記)に添加する方法としては、特に限定はなく、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法が挙げられる。
本発明の高分子凝集剤の使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の含有量、高分子凝集剤の分子量等により異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、処理費用の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
【0088】
本発明の高分子凝集剤の使用方法としては、十分な凝集性能の観点から水溶液にした後に下水汚泥等に添加するのが好ましいが、高分子凝集剤を固体の状態で直接下水汚泥等に添加することもできる。高分子凝集剤を水溶液として用いる場合の濃度は、取り扱い上および溶解速度の観点から好ましくは0.05〜1重量%である。
高分子凝集剤の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の高分子凝集剤を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。粉末状の高分子凝集剤を水に溶解させる際に、所定量の高分子凝集剤を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
【0089】
本発明の高分子凝集剤を石油の3次回収用として使用する際には、通常水溶液として使用される。該ポリマー水溶液の濃度(重量%)は、通常0.001〜3%、増粘効果および送液可能な粘度の観点から好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0090】
本発明の高分子凝集剤を下水汚泥等に適用する際、下水汚泥等が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用するのが好ましい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤に予めこれらを添加した混合物で下水汚泥等を処理するか、下水汚泥等に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、本発明の高分子凝集剤を添加して処理するかいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0091】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、凝結性能の観点か
ら好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、凝結性能の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
【0092】
本発明の高分子凝集剤の添加の際には、下水汚泥等のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を下水汚泥等に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【0093】
また、本発明の高分子凝集剤を下水汚泥等に添加して形成されたフロックの脱水方法(固液分離法)としては、遠心脱水、フィルタープレス脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、スクリュープレス脱水およびベルトプレス脱水である。
【実施例】
【0094】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0095】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)水溶性不飽和モノマー(a)
(a1−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩
(DAMQ)の80%水溶液
(a1−2):N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩
(DAAQ)の70%水溶液
(a2−1):アクリルアミド(AAM)の50%水溶液
(a3−1):アクリル酸
(2)連鎖移動剤(f)
(f−1):1−チオグリセロール
(f−2):メルカプト酢酸
(f−3):システアミン塩酸塩
(3)リビングラジカル重合開始剤(Iv)
(Iv1−1)エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート
(Iv2−1)シクロペンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー/
ヨード酢酸エチル/トリエチルアミン=0.5/1/0.5 (モル比)
の混合物
(4)ラジカル重合開始剤(Iz)
(Iz−1):アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液
【0096】
高分子凝集剤の固形分含量、重量平均粒径は前記の方法で評価し、その他の項目は下記の方法で評価した。
なお、下水汚泥等中のTS、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
【0097】
(1)水溶解性
板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して備えた撹拌棒をジャーテスター[型番「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に取り付けた撹拌装置を用いる。ここにイオン交換水499gを入れた500mlビーカーをセットし、水温25℃にて200rpmで撹拌する。シャーレに秤り取った高分子凝集剤1g(固形分)の全量を撹拌下のイオン交換水に一気に投入し、投入から60分後の溶解状態を目視で観察して下記の基準で水溶解性を評価した。
<評価基準>
◎ ままこの発生、溶け残りともになし
○ ままこの発生がなく、溶け残りごくわずか
△ ままこの発生があり、溶け残りやや多い
× ままこの発生、溶け残りともに多い
【0098】
(2)フロック粒径(mm)
300mlのビーカーに汚泥200mlを入れ、上記(1)と同じ撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を300rpmとし、徐々に汚泥を撹拌しながら、所定の濃度の高分子凝集剤の水溶液を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察する。続いて回転数を650rpmに変え、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を再度目視にて観察する。
【0099】
(3)フロック強度
上記(2)における回転数300rpmおよび650rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部細分化)
△ やや弱い (部分的に細分化)
× 弱い (全体的に細分化)
【0100】
(4)10秒後ろ液量、60秒後ろ液量(ml)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、および300mlが計測できるメスシリンダーを用いてろ過装置をセットする。上記(2)のフロック粒径試験後の汚泥をヌッチェろ過面上に一気に全量投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から10秒後および60秒後までに通過したろ液量を測定する。
【0101】
(5)ろ布剥離性
ろ過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(1kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテルで剥離させる場合の脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価する。
<評価基準>
◎:非常に剥がれやすい(ろ布に付着物なし)
○:剥がれやすい (ろ布に付着物わずかにあり)
△:多少剥がれにくい (ろ布に付着物あり、わずかにろ布内部にまで付着物あり)
×:剥がれにくい (ろ布内部にまで付着物多い)
【0102】
(6)脱水ケーキ含水率(重量%)
上記(5)のろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出する。

脱水ケーキ含水率(重量%)=[(W3)−(W4)]×100/(W3)
【0103】
実施例1 [高分子凝集剤(P−1)の製造]
撹拌機を備えた3Lの反応容器に(a−2)、(a−3)およびイオン交換水を表1に基づいて加え、系内が均一溶液になるまで混合、撹拌した。撹拌下、モノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら硫酸を用いて3.3に調整した。
次に、0℃の恒温水槽中で溶液温度を5℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度約5ppm)。その後、ラジカル重合開始剤(d−1)、(d−3)、(d−4)、(d−5)および連鎖移動剤(f−1)を表1に基づいて加えた原料混合液について、溶液温度5℃で重合を開始させ、重合により発生する熱により溶液温度が上昇し、約3時間後に85℃に達した。70℃に達した時点で90℃の恒温槽内に反応容器を入れて80〜90℃で10時間保温し重合を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。
その後、得られた含水ゲルを取り出し、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後ジューサーミキサーで粉砕して、粉末状の水溶性樹脂粒子(P−1)99部を得た(収率92%、固形分含量96%)。評価結果を表1に示す。
【0104】
実施例2〜6、比較例1〜3[高分子凝集剤(P−2)〜(P−6)、(R−1)〜(R−3)の製造]
実施例1において、原料混合液を表1に基づいて混合した原料混合液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、高分子凝集剤(P−2)〜(P−6)、(R−1)〜(R−3)を得た。評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例7〜12、比較例4〜6[高分子凝集剤の性能評価]
得られた高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量0.2%の水溶液とした。消化処理したA市処理場から採取した消化汚泥[pH7.4、TS2.9%、SS2.7%、有機分65%、アルカリ度4,543mg−CaCO3/L]200部を500mLのビーカーに採り、上記高分子凝集剤の各水溶液20部を添加(この時の固形分添加量1.6%/TS)し、性能を評価した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2から、実施例7〜12では、比較例4〜6に比べて、大粒径のフロックが形成され、低撹拌下(300rpm)で一旦形成されたフロックが高撹拌下(650rpm)でも壊れにくい(フロック強度が強い)こと、10秒後ろ液量が多いことから初期ろ過速度が速いこと、および脱水性(脱水ケーキ含水率)において優れた効果を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集性能を示すことから、下水汚泥等の脱水用高分子凝集剤、製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用高分子凝集剤の他、産業廃水の凝集沈殿処理用、石油の3次回収用等の高分子凝集剤として幅広く好適に用いられ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(Iv1)および(Iv2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のリビングラジカル重合開始剤(Iv)の存在下で水溶性不飽和モノマー(a)を含有するモノマーを重合させた水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤。
(Iv1)下記一般式(1)で表される有機テルル化合物
(Iv2)ルテニウム、パラジウム、銅、鉄、モリブデン、ロジウムおよびニッケルからなる群から選ばれる遷移金属の錯体、有機ヨード化物および有機塩素化物からなる群から選ばれる有機ハロゲン化物、並びに、アミンおよびホスフィンからなる群から選ばれるルイス塩基の混合物

432C―Te―R1 (1)

[式中、R1は炭素数1〜20の、アルキル基、アリール基、置換アリール基または芳香族ヘテロ環基;R2およびR3はHまたは炭素数1〜8のアルキル基;R4は炭素数1〜20の、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基またはシアノ基を表す。]
【請求項2】
(A)を構成するモノマーの全重量に基づく(Iv)の含有量が、0.001〜1%である請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
(A)の曳糸長L(mm)と固有粘度η(dl/g)の比(L/η)が1〜8である請求項1または2記載の高分子凝集剤。
【請求項4】
さらに、重合開始剤としてアゾ化合物(Iz)を併用してなる請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項5】
(Iv)と(Iz)の重量比が、5/95〜99/1である請求項4記載の高分子凝集剤。
【請求項6】
下水汚泥の脱水用または廃水の凝集沈殿処理用である請求項1〜5のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項7】
高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う工程からなる汚泥または廃水の処理方法において、請求項1〜6のいずれか記載の高分子凝集剤を用いることを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2012−206038(P2012−206038A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74607(P2011−74607)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】