説明

高分子分散剤及び非水性分散系

顔料、非水性分散媒及び式(I):
【化1】


[式中:
R1は、直線状高分子部分、星形高分子部分、樹枝状高分子部分、分枝高分子部分及び超分枝高分子部分より成る群から選ばれる第1の高分子部分を示し;そしてR2は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はそれらのコポリマーより成る群から選ばれる第2の高分子部分を示す]
に従う少なくとも1個のオキサリルアミド構造単位を含む高分子分散剤を含む非水性顔料分散系。高分子分散剤を用いる非水性顔料分散系の調製方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的分野
本発明は、特別な高分子分散剤及び特別な高分子分散剤を用いて作られる安定な顔料分散系及びインキジェットインキに関する。
【背景技術】
【0002】
背景の技術
分散剤は、分散媒中の顔料粒子の分散系の形成及び安定化を助長するための物質である。分散剤は一般に、アニオン性、カチオン性又は非イオン性構造を有する界面活性材料である。分散剤の存在は、必要な分散エネルギーを実質的に低下させる。分散された顔料粒子は、互いの引力の故に、分散操作後に再凝集する傾向を有し得る。分散剤の使用は、この顔料粒子の再凝集傾向に対抗する。
【0003】
分散剤は、インキジェットインキのために用いられる場合、特に高い必要条件を満たさなければならない。不十分な分散は、液体系における粘度の上昇、輝度の喪失及び/又は色相の変化として現れる。さらに、通常、直径がわずか数マイクロメーターであるプリントヘッドのノズルを介して顔料粒子が妨げられずに通過することを保証するために、顔料粒子の特に優れた分散が必要である。さらに、プリンターのスタンドバイ期間中、顔料粒子の凝集及びそれに伴うプリンターノズルの閉塞は避けられなければならない。
【0004】
高分子分散剤は、典型的に、分子の一部分においていわゆるアンカー基を含有し、それは分散されるべき顔料上に吸着する。高分子分散剤は、分子の空間的に離れた部分に分散媒と適合性の高分子鎖を有し、かくして分散媒中で顔料粒子を安定化する。典型的な高分子分散剤は、グラフトコポリマー及びブロックコポリマー分散剤を含む。
【0005】
水性インキジェットインキにおいて、高分子分散剤は一般に、顔料表面に関して高い親和性を示す疎水性アンカー基及び水性分散媒中で顔料を安定化するための親水性高分子鎖を含有する。
【0006】
サブミクロン粒子を有する優れた熱的に安定な分散系の調製は、溶剤に基づく、油に基づく及び放射線硬化性のインキジェットインキのような非水性インキジェットインキの場合に、より困難である。顔料は、それらが無極性表面を有する場合、分散が特に困難である。
【0007】
これらの問題は、アンカー基が顔料誘導体である非常に特別な高分子分散剤の設計に導いた。例えば特許文献1(AGFA GRAPHICS)は、着色顔料及び着色顔料の分子量の90%より小さい分子量を有する高分子分散剤を含む顔料分散系を開示しており、高分子分散剤は、その高分子主鎖に共有結合した連結基を介して少なくとも1個の側鎖発色基を有する。
【0008】
無極性表面を有する顔料を非水性分散媒中に分散するための他の方法は、分散相乗剤として知られる化合物の添加により、表面をより極性の表面に変えることである。分散相乗剤は、顔料の表面上における高分子分散剤の吸着を助長する化合物である。多くの場合に、相乗剤は1個もしくはそれより多いスルホン酸基、カルボン酸基又はそのアンモニウム塩により置換された顔料構造を有していなければならないと示唆されている。これらの分散相乗剤の例は、例えば特許文献2(AGFA GRAPHICS)、特許文献3(AGFA GRAPHICS)及び特許文献4(AGFA GRAPHICS)中に示されて
いる。
【0009】
しかしながら、両方法は、有意により高い顔料分散系のコストに導く。分散相乗剤又はアンカー基が顔料誘導体である高分子分散剤を必要としない安定な顔料分散系を調製するのが望ましい。一貫した画質のために、インキジェットインキは、消費者へのインキの輸送、高められた温度における噴射及び使用中のインキジェットインキ分散媒における変化、例えば溶媒の蒸発ならびに保湿剤、浸透剤及び他の添加剤の濃度の向上の間に、高温(約60℃)で扱うことができる分散安定性を必要とする。
【0010】
特許文献5(TEXACO)は、ジアミン、トリアミン及びそれらの混合物より成る群から選ばれ、約190〜約3,000の平均分子量を有するポリオキシプロピレンポリアミンをシュウ酸と反応させて液体プレポリマーを生成させ、該プレポリマーをさらにジアミンと反応させることにより生成するポリオキシアミドを含んでなる熱可塑性接着剤組成物を開示している。特許文献5(TEXACO)は、顔料分散系について何も記載していない。
【0011】
特許文献6(TEXACO)は、ガソリン清浄剤添加物としてのポリエーテルヒドロキシエチルアミノエチルオキサラミドを開示している。特許文献6(TEXACO)も、顔料分散系について何も記載していない。
【0012】
特許文献7(BASF)は、結合剤として中−〜長−油アルキド樹脂(medium−
to long−oil alkyd resins)及びUV−吸収剤として低分子量シュウ酸ジアミド誘導体を含有する木材用のコーティング組成物を開示している。
【0013】
従って、高い分散の質及び安定性を示す低コストの非水性顔料分散系、特に顔料添加インキジェットインキを製造することが、非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/006635号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/060254号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1790697 A号明細書
【特許文献4】欧州特許第1790698 A号明細書
【特許文献5】米国特許第4119615号明細書
【特許文献6】米国特許第5286267号明細書
【特許文献7】ドイツ特許第3608153号明細書
【発明の概要】
【0015】
発明の開示
発明の概略
上記の問題を克服するために、驚くべきことに請求項1により定義される通り、非水性顔料分散系において高分子分散剤を用いることによって高い分散の質及び安定性の非水性顔料分散系、特に非水性インキジェットインキが得られることが見出された。顔料の安定化は、分散相乗剤の添加による高価な表面改質なしで行われた。さらに、多数の基質上への接着における予期せぬ向上も観察された。
【0016】
高分子分散剤の製造方法を「グリーンケミストリー(green chemistry)」と呼ぶことができ、それは、用いられるジアルキルオキサレートが、高分子分散剤の製造に頻繁に用いられる例えばイソシアナート−誘導体より毒性が低いからである。さらに、BykTM 高分子分散剤の製造に用いられる多官能基性NCO化学及び縮合によりSolsperseTM 高分子分散剤を製造するための鎖分断機構の反応の制御と比較して、より優れた反応の制御が可能である。さらに、SolsperseTM 化学と対照的に、オキサレート又はオキサリルアミドを含む縮合化学のために、重金属触媒は必要でない。
【0017】
本発明のさらなる目的は、非水性顔料分散系を用いて、特に非水性インキジェットインキを用いて、高い画質の画像を作ることである。
【0018】
本発明の他の特徴、要素、段階、特性及び利点は、本明細書下記で、以下の本発明の好ましい態様の詳細な記述からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本発明の好ましい態様において用いられる「着色剤」という用語は、染料及び顔料を意味する。
【0020】
本発明の好ましい態様において用いられる「染料」という用語は、それが適用される媒体中で、且つ関係する周囲条件下で10mg/Lかもしくはそれより高い溶解度を有する着色剤を意味する。
【0021】
「顔料」という用語は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるDIN 55943において、関係する周囲条件下で適用媒体中に実質的に不溶性である、従ってその中で10mg/Lより低い溶解度を有する着色剤として定義されている。
【0022】
「C.I.」という用語は、本出願の開示において、カラーインデックスに関する略語として用いられる。
【0023】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に関して可能なすべての変形、すなわち3個の炭素原子の場合:n−プロピル及びイソプロピル;4個の炭素原子の場合:n−ブチル、イソブチル及び第3級−ブチル;5個の炭素原子の場合:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピル及び2−メチル−ブチルなどを意味する。
【0024】
「P(EO−co−PO)」という用語は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーに関する略語として用いられる。
【0025】
高分子分散剤
本発明に従う非水性顔料分散系中で用いられる高分子分散剤は、式(I):
【0026】
【化1】

【0027】
[式中:
R1は、直線状高分子部分、星形高分子部分、樹枝状高分子部分、分枝高分子部分及び超分枝高分子部分より成る群から選ばれる第1の高分子部分を示し;そして
R2は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はそれらのコポリマーより成る群から選ばれる第2の高分子部分を示す]
に従う少なくとも1個のオキサリルアミド構造単位を含む。
【0028】
R2は、好ましくは高分子分散剤に基づいて6〜21モル%の量における、好ましくはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマーである。
【0029】
高分子分散剤の好ましい態様において、第1の高分子部分R1は分枝高分子部分又は超分枝高分子部分である。超分枝高分子部分は、好ましくはポリアルキレンイミン、より好ましくはポリエチレンイミンである。ポリエチレンイミンは、好ましくは20,000g/モルより小さい分子量Mwを有する。
【0030】
第1の高分子部分R1の好ましい例は、直線状ポリエチレンイミン(表1中のR1−Aを参照されたい)、超分枝ポリエチレンイミン(表1中のR1−Bを参照されたい)及びポリアリルアミン(表1中のR1−Cを参照されたい)を含む。
【0031】
【表1】

【0032】
高分子分散剤の好ましい態様において、第2の高分子部分R2はポリエステル及びポリエーテルより成る群から選ばれる。最も好ましくは、第2の高分子部分はポリエーテルである。
【0033】
高分子分散剤の好ましい態様において、第1の高分子部分は、式(II):
【0034】
【化2】

【0035】
[式中:
R3は、少なくとも1個の窒素を含有する5もしくは6員芳香族複素環(heteroaromatic ring)を含む官能基を示す]
に従う少なくとも1個の構造単位によりさらに置換されている。
【0036】
式(II)中の好ましい官能基R3は、表3中のアンカー基、アンカー−1〜アンカー−3を含む。
【0037】
高分子分散剤の好ましい態様において、R3は、場合により置換されていることができるベンズイミダゾール、場合により置換されていることができるイミダゾール及び場合により置換されていることができるピリジンより成る群から選ばれる少なくとも1個の5もしくは6員窒素含有芳香族複素環を含む。より好ましい態様において、少なくとも1個の5もしくは6員窒素含有芳香族複素環はイミダゾール又はピリジン、最も好ましくはピリジンである。
【0038】
5もしくは6員窒素含有芳香族複素環は、好ましくは高分子分散剤の12モル%より少ない、より好ましくは8モル%より少ない量で存在する。
【0039】
好ましい態様において、高分子分散剤は式(III):
【0040】
【化3】

【0041】
[式中:
R4は、ポリエーテル及びポリエステルより成る群から選ばれる高分子鎖を示し;
R5は分枝高分子コア又は超分枝高分子コアを示し;
kは0〜600、より好ましくは0〜300の整数を示し;そして
pは1〜900、より好ましくは6〜700の整数を示す]
により示される。
【0042】
式(III)中の超分枝高分子コアR5の好ましい例は、超分枝ポリエチレンイミン(表1中のR1−Bを参照されたい)である。
【0043】
式(III)中の高分子鎖R4の形成に用いることができる好ましいグラフトを表2に挙げる。
【0044】
【表2】

【0045】
好ましい態様において、高分子分散剤は式(IV):
【0046】
【化4】

【0047】
[式中:
R6は、分枝高分子コア又は超分枝高分子コアを示し;
R7は、ポリエーテル及びポリエステルより成る群から選ばれる高分子鎖を示し;
R8は、少なくとも1個の窒素原子を含有する5もしくは6員芳香族複素環を含む官能基を示し;
nは1〜900;より好ましくは6〜700の整数を示し、
mは0〜720;より好ましくは0〜400の整数を示し;そして
oは0〜600、より好ましくは0〜300の整数を示す]
により示される。
【0048】
式(IV)中の超分枝高分子コアR6の好ましい例は、超分枝ポリエチレンイミン(表1中のR1−Bを参照されたい)である。
【0049】
式(IV)中の高分子鎖R7の形成のために用いることができる好ましいグラフトは、表2に挙げられている。
【0050】
式(IV)中の好ましい官能基R8は、表3中のアンカー基、アンカー−1〜アンカー−5を含む。
【0051】
【表3】

【0052】
好ましい高分子分散剤は、30,000より小さい分子量Mを有し、ピリジンアンカー基を含有する。
【0053】
非常に好ましい高分子分散剤を式(V)により図式化することができ、式中、超分枝コアは超分枝ポリエチレンイミンである:
【0054】
【化5】

【0055】
グラフト基及びアンカー基は、それぞれ表2及び表3中に挙げられたものから、それぞれ独立して選ばれることができる。
【0056】
高分子分散剤は、好ましくは顔料の重量に基づいて2〜600重量%、より好ましくは5〜200重量%の量で用いられる。
【0057】
高分子分散剤の製造方法は:
a)シュウ酸ジアルキルエステルを、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はそれらのコポリマーより成る群から選ばれるポリマーと反応させることによりオキサリルアミドポリマーを形成し;そして
b)オキサリルアミドポリマーを、直線状高分子部分、星形高分子部分、樹枝状高分子部分、分枝高分子部分及び超分枝高分子部分より成る群から選ばれるポリマーと反応させる段階を含む。
【0058】
好ましい態様において、方法はさらに
c)シュウ酸ジアルキルエステルを5もしくは6員窒素含有芳香族複素環を含有する部分と反応させることにより、式(II)に従う構造単位を形成し;そして
d)段階b)において、又は段階b)の後に、式(II)に従う構造単位を、直線状高分子部分、星形高分子部分、樹枝状高分子部分、分枝高分子部分及び超分枝高分子部分より成る群から選ばれるポリマーと反応させる
段階を含む。
【0059】
非水性顔料分散系
本発明に従う非水性顔料分散系は、少なくとも1種の顔料及び上記の高分子分散剤を非水性分散媒中に含む。
【0060】
好ましい態様において、非水性顔料分散系は、UV線又はe−ビーム(e−beam)により硬化可能である。
【0061】
好ましい態様において、非水性顔料分散系は、インキジェットインキ、より好ましくはUV線又はe−ビームにより硬化可能なインキジェットインキである。
【0062】
本発明に従う非水性顔料分散系は、基質上における顔料分散系の均一な広がりを制御するために、少なくとも1種の界面活性剤をさらに含有することもできる。非水性顔料添加インキジェットインキの場合、基質上におけるインキ液滴のドットサイズを制御するために界面活性剤は重要である。
【0063】
好ましい態様において、非水性顔料分散系は、インキの蒸発速度を遅くすることができる保湿剤の能力の故に、ノズルの目詰まりを防ぐための少なくとも1種の保湿剤を含有する非水性インキジェットインキである。
【0064】
インキジェットインキの粘度は、100s−1のせん断速度及び10〜70℃の噴射温度において、好ましくは30mPa.sより低く、より好ましくは15mPa.sより低く、最も好ましくは2〜10mPa.sである。
【0065】
非水性インキジェットインキは、好ましくは非水性CMYKインキジェットインキセットの一部を形成する。画像の色域をさらに拡大するために、非水性CMYK−インキジッェトインキセットを、レッド、グリーン、ブルー及び/又はオレンジのような余分のインキで増量することもできる。カラーインキ及び/又はブラックインキの両方の全濃度(full density)及び軽濃度(light density)インキの組み合わせによってCMYKインキセットを増量し、粒状性を低下させることにより画質を向上させることもできる。
【0066】
顔料
顔料は、ブラック、ホワイト、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、オレンジ、バイオレット、ブルー、グリーン、ブラウン、それらの混合物などであることができる。着色顔料は、HERBST,Willy,et al.著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.第3版,Wiley−VCH,2004年,ISBN 3527305769により開示されているものから選ばれることができる。
【0067】
適した顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA GRAPHCS)の[0128]節から[0138]節中に開示されている。
【0068】
混晶を用いることもできる。混晶は固溶体とも呼ばれる。例えばある条件下で、種々のキナクリドンは互いと混ざって固溶体を形成し、それは化合物の物理的混合物及び化合物自身の両方と全く異なる。固溶体において、成分の分子は、必ずではないが通常、成分の1つの結晶格子である同じ結晶格子中に入る。得られる結晶性固体のx線回折パターンはその固体に特徴的であり、同じ割合における同じ成分の物理的混合物のパターンと明確に区別され得る。そのような物理的混合物では、成分のそれぞれのx線パターンを区別することができ、これらの線の多くの消失は固溶体の形成の基準の1つである。商業的に入手可能な例は、Ciba Specialty ChemicalsからのCinquasiaTM Magenta RT−355−Dである。
【0069】
顔料分散系中で、顔料の混合物を用いることもできる。いくつかのインキジェット用途のために、純黒(neutral black)インキジェットインキが好ましく、それは例えばインキ中にブラック顔料及びシアン顔料を混合することにより得られ得る。インキジェット用途には、例えば包装インキジェット印刷又は編織布(textile)インキジェット印刷のために、1個もしくはそれより多いスポットカラー(spot colours)も必要である。インキジェットポスター印刷及び販売時点展示のために、シルバー及びゴールドは多くの場合に望ましい色である。
【0070】
非有機顔料を顔料分散系中で用いることができる。特に好ましい顔料は、C.I.Pigment Metal 1,2及び3である。無機顔料の代表的な例には、赤色酸化鉄(III)、カドミウムレッド、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、アンバー、チタンブラック及び合成アイアンブラックが含まれる。
【0071】
インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット−印刷装置を介する、特に噴出ノズルにおけるインキの自由な流れを許すのに十分に小さくなければならない。最大の色濃度のため、及び沈降を遅くするためにも、小さい粒子を用いるのが望ましい。
【0072】
数平均顔料粒度は、好ましくは0.050〜1μm、より好ましくは0.070〜0.300μmそして特に好ましくは0.080〜0.200μmである。最も好ましくは、数平均顔料粒度は、0.150μmより大きくない。0.050μmより小さい平均粒度は、耐光堅牢度の低下のために、しかし主に、非常に小さい顔料粒子又はその個々の顔料分子が食品包装用途においてまだ抽出され得るためにも、あまり望ましくない。顔料粒子の平均粒度は、動的光散乱法の原理に基づいてBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを用いて決定される。酢酸エチルを用いて0.002重量%の顔料濃度にインキを希釈する。BI90plusの測定設定は:23℃、90°の角、635nmの波長及び図=補正関数(graphics=correction function)において5回の実験である。
【0073】
しかしながら、ホワイト顔料分散系の場合、ホワイト顔料の数平均粒径は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは150〜400nm、そして最も好ましくは200〜350nmである。平均直径が50nmより小さい場合、十分な隠蔽力を得ることができず、平均直径が500nmを超えると、インキの保存可能性及び噴出適切性が下がる傾向がある。数平均粒径の決定は、顔料添加インキジェットインキの希釈された試料についての、4mW HeNeレーザーを用いる633nmの波長における光子相関分光法により、最も良く行なわれる。用いられた適した粒度分析計は、Goffin−Meyvisから入手可能なMalvernTM nano−Sであった。例えば1.5mLの酢酸エチルを含有するキュベットに1滴のインキを加え、均一な試料が得られるまで混合することにより、試料を調製することができる。測定される粒度は、20秒の6回の実験から成る3回の連続的測定の平均値である。
【0074】
適したホワイト顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA
GRAPHICS)の[0116]中の表2により示されている。ホワイト顔料は、好ましくは1.60より大きい屈折率を有する顔料である。ホワイト顔料を単独で、又は組み合わせて用いることができる。好ましくは、1.60より大きい屈折率を有する顔料として二酸化チタンを用いる。適した二酸化チタン顔料は、、国際公開第2008/074548号パンフレット(AGFA GRAPHICS)の[0117]及び[0118]中に開示されているものである。
【0075】
顔料は、それぞれ顔料分散系の合計重量に基づいて0.01〜15重量%の範囲内、より好ましくは0.05〜10重量%の範囲内、そして最も好ましくは0.1〜5重量%の範囲内で存在する。ホワイト顔料分散系の場合、ホワイト顔料は、好ましくは顔料分散系の3重量%〜30重量%、そしてより好ましくは5重量%〜25重量%の量で存在する。3重量%より少ない量は、十分な被覆力を達成することができず、通常非常に劣った保存安定性及び噴出性を示す。
【0076】
非水性分散媒
本発明に従う顔料分散系において用いられる分散媒は、非水性液である。分散媒は、有機溶剤から成ることができる。
【0077】
適した有機溶剤には、アルコール、芳香族炭化化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ、高級脂肪酸エステルが含まれる。適したアルコールにはメタノール、エタノール、プロパノール及び1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールが含まれる。適した芳香族炭化水素にはトルエン及びキシレンが含まれる。適したケトンにはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオン及びヘキサフルオロアセトンが含まれる。グリコール、グリコールエーテル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドも用いることができる。
【0078】
有機溶剤の適した例は、欧州特許第1857510 A号明細書(AGFA GRAPHICS)の[0133]〜[0146]に開示されている。
【0079】
顔料分散系が硬化性顔料分散系又はインキジェットインキである場合、有機溶剤を好ましくは1種もしくはそれより多いモノマー及び/又はオリゴマーにより置き換えて、液体分散媒を得る。いくつかの場合には、分散剤の溶解を向上させるために、少量の有機溶剤を加えるのが有利であり得る。有機溶剤の含有率は、顔料添加インキジェットインキの合計重量に基づいて20重量%より低く、より好ましくは5重量%より低くなければならず、最も好ましくは、硬化性顔料分散系は有機溶剤を含まない。
【0080】
油に基づく顔料分散系及びインキジェットインキの場合、分散媒は、芳香油、パラフィン系石油、抽出されたパラフィン系石油、ナフテン系石油、抽出されたナフテン系石油、水素処理された軽油又は重油、植物油及びそれらの誘導体及び混合物を含むいずれかの適した油であることができる。パラフィン系石油は、ノルマルパラフィン型(オクタン及び高級アルカン)、イソパラフィン(イソオクタン及び高級イソ−アルカン)及びシクロパラフィン(シクロオクタン及び高級シクロ−アルカン)ならびにパラフィン油の混合物であることができる。
【0081】
油の適した例は、欧州特許第1857510 A号明細書(AGFA GRAPHICS)の[0151]〜[0164]に開示されている。
【0082】
モノマー及びオリゴマー
特に食品包装用途のための放射線硬化性顔料分散系及びインキ中で用いられるモノマー及びオリゴマーは、好ましくは全くもしくはほとんど不純物を有していない、さらに特定的に毒性又は発がん性不純物を有していない精製された化合物である。不純物は通常、重合可能化合物の合成の間に得られる誘導化合物である。しかしながら、純粋な重合可能化合物にいくつかの化合物、例えば重合抑制剤又は安定剤を無害な量で故意に加えることができることもある。
【0083】
フリーラジカル重合できるいずれのモノマー又はオリゴマーも重合可能化合物として用
いることができる。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを用いることもできる。モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは、種々の程度の官能価を有することができ、一価、二価、三価及びもっと高い官能価のモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を用いることができる。モノマーとオリゴマーの間の比率を変えることにより、放射線硬化性組成物及びインキの粘度を調整することができる。
【0084】
特に好ましいモノマー及びオリゴマーは、特定の参照文献としてその記載事項が本明細書の内容となる欧州特許第1911814 A号明細書(AGFA GRAPHICS)中で[0106]〜[0115]に挙げられているものである。
【0085】
好ましい種類のモノマー及びオリゴマーは、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第6310115号明細書(AGFA)中に記載されているもののようなビニルエーテルアクリレートである。特に好ましい化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートであり、最も好ましくは、化合物は2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0086】
光開始剤
顔料分散系又はインキが放射線硬化性である場合、好ましくは1種もしくはそれより多い光開始剤が顔料分散系又はインキ中に存在する。
【0087】
光開始剤は、好ましくはフリーラジカル開始剤である。フリーラジカル光開始剤は、化学線に暴露された時にフリーラジカルの生成によりモノマー及びオリゴマーの重合を開始させる化学化合物である。
【0088】
2つの型のフリーラジカル光開始剤を区別することができ、本発明の顔料分散系又はインキ中で用いることができる。ノリッシュI型開始剤は、励起の後に開裂してすぐに開始ラジカルを与える開始剤である。ノリッシュII型開始剤は、化学線により活性化され、第2の化合物からの水素引き抜きによりフリーラジカルを生成する光開始剤であり、第2の化合物が実際の開始フリーラジカルとなる。この第2の化合物は重合相乗剤又は共開始剤と呼ばれる。I型及びII型光開始剤の両方を、単独で、又は組み合わせて本発明において用いることができる。
【0089】
適した光開始剤は、CRIVELLO,J.V.,et al.Volume III:Photoinitiators for Free Radical Cationic.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley & Sons Ltd,1998.p.287−294に開示されている。
【0090】
光開始剤の特定の例は以下の化合物又はそれらの組み合わせを含むことができるが、それらに限られない:ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン又は5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、ジフェニルヨードニウムフルオリド及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート。
【0091】
適した市販の光開始剤には、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacureTM 184、IrgacureTM 500、IrgacureTM 907、IrgacureTM 369、IrgacureTM 1700、IrgacureTM 651、IrgacureTM 819、IrgacureTM 1000、IrgacureTM 1300、IrgacureTM 1870、DarocurTM 1173、DarocurTM 2959、DarocurTM 4265及びDarocurTM ITX、BASD AGから入手可能なLucerinTM TPO、LAMBERTIから入手可能なEsacureTM KT046、EsacureTM KIP150、EsacureTM KT37及びEsacureTM
EDB、SPECTRA GROUP Ltdから入手可能なH−NuTM 470及びH−NuTM 470Xが含まれる。
【0092】
適したカチオン性光開始剤には、重合を開始させるのに十分な紫外光及び/又は可視光に暴露されると非プロトン酸又はBronstead酸を生成する化合物が含まれる。用いられる光開始剤は、単一の化合物、2種もしくはそれより多い活性化合物の混合物又は2種もしくはそれより多種の化合物の組み合わせ、すなわち共開始剤であることができる。適したカチオン性光開始剤の制限ではない例は、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩などである。
【0093】
しかしながら特に食品包装用途の場合安全性の理由で、光開始剤は、好ましくはいわゆる拡散が妨げられた光開始剤(diffusion hindered photoinitiator)である。拡散が妨げられた光開始剤は、硬化性液又はインキの硬化した層において、ベンゾフェノンのような一官能基性光開始剤よりずっと低い移動性を示す光開始剤である。光開始剤の移動性を低くするために、いくつかの方法を用いることができる。1つの方法は、光開始剤の分子量を増加させ、拡散速度を低下させることであり、例えば二官能基性光開始剤又は高分子光開始剤である。他の方法は、それが重合する網目の中に組み込まれるように、その反応性を増すことであり、例えば多官能基性光開始剤及び重合可能光開始剤である。拡散が妨げられた光開始剤は、好ましくは非高分子二官能もしくは多官能基性光開始剤、オリゴマー又は高分子光開始剤及び重合可能光開始剤より成る群から選ばれる。非高分子二官能もしくは多官能基性光開始剤は、300〜900ダルトンの分子量を有すると考えられる。その範囲内の分子量を有する非−重合可能一官能基性光開始剤は、拡散が妨げられた光開始剤ではない。最も好ましくは、拡散が妨げられた光開始剤は重合可能開始剤である。
【0094】
適した拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、α−ハロケトン、α−ハロスルホン及びフェニルグリオキサレートより成る群から選ばれるノリッシュI型光開始剤に由来する1個もしくはそれより多い光開始官能基を含有することができる。
【0095】
適した拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2−ジケトン及びアントラキノンより成る群から選ばれるノリッシュII型開始剤に由来する1個もしくはそれより多い光開始官能基を含有することができる。
【0096】
適した拡散が妨げられた光開始剤は、欧州特許第2053101 A号明細書中で二官能基性及び多官能基性光開始剤に関して[0074]及び[0075]節において、高分子光開始剤に関して[0077]〜[0080]節において、ならびに重合可能光開始剤に関して[0081]〜[0083]節において開示されているものでもある。
【0097】
光開始剤の好ましい量は、硬化性顔料分散系又はインキの合計重量の0〜50重量%、より好ましくは0.1〜20重量%、そして最も好ましくは0.3〜15重量%である。
【0098】
さらに感光性を向上させるために、硬化性顔料分散系又はインキはさらに共開始剤を含有することができる。共開始剤の適した例は4つのグループに分類され得る:
(1)メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びN−メチルモルホリンのような第3級脂肪族アミン;
(2)アミルパラジメチルアミノベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート及び2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートのような芳香族アミン;ならびに
(3)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)又はN−モルホリノアルキル−(メタ)アクリレート(例えばN−モルホリノエチル−アクリレート)のような(メタ)アクリレート化アミン。
好ましい共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0099】
本発明に従う硬化性顔料分散系又はインキ中に1種もしくはそれより多い共開始剤が含まれる場合、好ましくは安全性の理由で、特に食物包装用途のために、これらの共開始剤は拡散が妨げられている。
【0100】
拡散が妨げられた共開始剤は、好ましくは非高分子二価もしくは多官能基性共開始剤、オリゴマー性もしくは高分子共開始剤及び重合可能共開始剤より成る群から選ばれる。より好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤は、高分子共開始剤及び重合可能共開始剤より成る群から選ばれる。最も好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤は、重合可能共開始剤である。
【0101】
好ましい拡散が妨げられた共開始剤は、樹枝状高分子構造、より好ましくは超分枝高分子構造を有する高分子共開始剤である。好ましい超分枝高分子共開始剤は、特定の参照文献としてその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第2006014848号明細書(AGFA)において開示されているものである。
【0102】
より好ましい拡散が妨げられた共開始剤は、1種もしくはそれより多い重合可能共開始剤である。好ましい態様において、重合可能共開始剤は、少なくとも1個の(メタ)アクリレート基、最も好ましくは少なくとも1個のアクリレート基を含む。
【0103】
好ましい拡散が妨げられた共開始剤は、欧州特許第2053101 A号明細書(AGFA)中で[0088]及び[0097]節において開示されている重合可能共開始剤である。
【0104】
硬化性顔料分散系又はインキは、好ましくはインキの合計重量の0.1〜50重量%の量で、より好ましくは0.5〜25重量%の量で、最も好ましくは1〜10重量%の量で重合可能共開始剤を含む。
【0105】
重合抑制剤
硬化性顔料分散系は、重合抑制剤を含有することができる。適した重合抑制剤には、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、蛍りん光体(phosphor)型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーにおいて通常用いられるヒドロキノンモノメチルエーテルが含まれ、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロールも使用することができる。
【0106】
適した市販の抑制剤は、例えばSumitomo Chemical Co.Ltd.により製造されるSumilizerTM GA−80、SumilizerTM GM及びSumilizerTM GS;Rahn AGからのGenoradTM 16、GenoradTM 18及びGenoradTM 20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastabTM UV10及びIrgastabTM UV22、TinuvinTM 460及びCGS20;Kromachem LtdからのFloorstabTM UV領域(UV−1、UV−2、UV−5及びUV−8)、Cytec Surface SpecialtiesからのAdditolTM
S領域(S100、S110、S120及びS130)である。
【0107】
これらの重合抑制剤の過剰の添加は、インキの硬化への感度を下げるので、重合を妨げることができる量を、配合前に決定するのが好ましい。重合抑制剤の量は、好ましくは合計顔料分散系又はインキの2重量%より少ない。
【0108】
結合剤
有機溶剤又は油に基づく非水性顔料分散系は、好ましくは結合剤樹脂を含む。結合剤は粘度調整剤として働き、高分子樹脂基質、例えばビニル基質とも呼ばれるポリ塩化ビニル基質に対する定着性(fixability)も与える。
【0109】
結合剤樹脂の適した例には、アクリル樹脂、改質アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリルコポリマー、アクリレート樹脂、アルデヒド樹脂、ロジン、ロジンエステル、改質ロジン及び改質ロジン樹脂、アセチルポリマー、アセタール樹脂、例えばポリビニルブチラール、ケトン樹脂、フェノール樹脂及び改質フェノール樹脂、マレイン酸樹脂及び改質マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー樹脂、セルロース型樹脂、例えばニトロセルロース、セルロースアセトプロピオネート及びセルロースアセテートブチレートならびにビニルトルエン−α−メチルスチレンコポリマー樹脂が含まれる。これらの結合剤を単独で、又はそれらの混合物において用いることができる。結合剤は、好ましくはフィルム−形成性熱可塑性樹脂である。
【0110】
顔料分散系又はインキ中の結合剤樹脂の量は、好ましくは顔料分散系又はインキの合計重量に基づいて0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは2〜10重量%の範囲内である。
【0111】
界面活性剤
顔料分散系又はびインキは、少なくとも1種の界面活性剤を含有することができる。界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性イオン性であることができ、通常、インキジェットインキの合計重量に基づいて20重量%より少ない合計量で、そして特に顔料分散系又はインキの合計重量に基づいて10重量%より少ない合計量で加えられる。
【0112】
適した界面活性剤には、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホネート塩、スルホスクシネートエステル塩及びホスフェートエステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物ならびにアセチレングリコール及びそのエチレンオキシド付加物(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びAIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能なSURFYNOLTM 104、104H、440、46
5及びTG)が含まれる。
【0113】
非水性インキジェットインキのために、好ましい界面活性剤はフルオロ界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)及びシリコーン界面活性剤から得らればれる。シリコーンは、典型的にシロキサンであり、アルコキシル化されている、ポリエーテル改質されている、ポリエーテル改質ヒドロキシ官能基性である、アミン改質されている、エポキシ改質されている、ならびに他の改質又はそれらの組み合わせがなされていることができる。好ましいシロキサンは高分子性、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0114】
硬化性インキジェットインキにおいて、フッ素化又はシリコーン化合物を界面活性剤として用いることができるが、好ましくは架橋可能な界面活性剤が用いられる。界面活性効果を有する重合可能なモノマーには、シリコーン改質アクリレート、シリコーン改質メタクリレート、アクリル化シロキサン、ポリエーテル改質アクリル改質シロキサン、フッ素化アクリレート及びフッ素化メタクリレートが含まれる。界面活性効果を有する重合可能なモノマーは、一価、二価、三価もしくはもっと高い官能基性の(メタ)アクリレート又はそれらの混合物であることができる。
【0115】
保湿剤/浸透剤
適した保湿剤には、トリアセチン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセロール、ウレア、チオウレア、エチレンウレア、アルキルウレア、アルキルチオウレア、ジアルキルウレア及びジアルキルチオウレア、エタンジオール、プロパンジオール、プロパントリオール、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールを含むジオール;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールを含むグリコールならびにそれらの混合物及び誘導体が含まれる。好ましい保湿剤は、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセロール及び1,2−ヘキサンジオールである。保湿剤は、好ましくは調製物の0.1〜40重量%、より好ましくは調製物の0.1〜10重量%、そして最も好ましくは約4.0〜6.0重量%の量でインキジェットインキ調製物に加えられる。
【0116】
顔料分散系及びインキの調製
分散剤の存在下に、分散媒中で顔料を沈降させるか又は磨砕することにより、顔料分散系を調製することができる。
【0117】
混合装置には圧力混練機、開放混練機、遊星型ミキサー、溶解機及びDalton Universal Mixerが含まれ得る。適した磨砕及び分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速分散機、ダブルローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナー及びトリプルローラーである。超音波エネルギーを用いて分散系を調製することもできる。
【0118】
磨砕媒体として、ガラス、セラミックス、金属及びプラスチックのような多種の型の材料を用いることができる。好ましい態様において、磨砕(grinding)媒体は粒子、好ましくは実質的に球形の粒子、例えば本質的に高分子樹脂から成るビーズ又はイットリウム安定化ジルコニウムビーズを含んでなることができる。
【0119】
混合、磨砕及び分散のプロセスにおいて、それぞれのプロセスは、熱の蓄積を防ぐために冷却しながら且つ放射線硬化性顔料分散系のために可能な限り化学線が実質的に排除された光の条件下で行なわれる。
【0120】
顔料分散系は1種より多い顔料を含有することができ、各顔料に関して別々の分散系を用いて顔料分散系又はインキを調製することができるか、あるいはまた、いくつかの顔料
を混合し、分散系の調製において共磨砕することができる。
【0121】
分散プロセスを連続、バッチ又は半バッチ様式で行なうことができる。
【0122】
ミルグリンド(mill grind)の成分の好ましい量及び比は、特定の材料及び意図される用途に依存して広く変わるであろう。磨砕混合物の内容物は、ミルグリンド及び磨砕媒体を含んでなる。ミルグリンドは、顔料、高分子分散剤及び液体担体を含んでなる。インキジェットインキの場合、顔料は通常、磨砕媒体を除いて1〜50重量%でミルグリンド中に存在する。顔料対高分子分散剤の重量比は20:1〜1:2である。
【0123】
磨砕時間は広く変り得、顔料、選ばれる機械的手段及び滞留条件、初期の及び所望の最終的な粒度などに依存する。本発明において、100nmより小さい平均粒度を有する顔料分散系を調製することができる。
【0124】
磨砕が完了した後、通常の分離法、例えば濾過、メッシュスクリーンを介する篩別などを用いて、磨砕された粒子状生成物(乾燥もしくは液体分散系形態における)から磨砕媒体を分離する。多くの場合、例えばビーズミル用のミル中に篩が組み込まれる。磨砕された顔料濃厚液を、好ましくは濾過により磨砕媒体から分離する。
【0125】
一般に、インキジェットインキを濃厚ミルグリンドの形態で調製するのが望ましく、それを続いてシンキジェット印刷系における使用のために適した濃度に希釈する。この方法は、装置からの比較的多量の顔料添加インキの調製を可能にする。希釈により、インキジェットインキを特定の用途のための所望の粘度、表面張力、色、色相、飽和濃度(saturation density)及び印刷領域被覆力に調整する。
【0126】
分光分離係数(spectral separation factor)
分光分離係数SSFは、顔料添加インキジェットインキの特性化のための優れた尺度であることが見出され、それは、吸光に関連する性質(例えば最大吸光度の波長λmax、吸収スペクトルの形及びλmaxにおける吸光度の値)ならびに分散の質及び安定性に関連する性質をそれが考慮しているからである。
【0127】
比較的高い波長における吸光度の測定は、吸収スペクトルの形についての指標を与える。溶液中の固体粒子により引き起こされる光散乱の現象に基づいて、分散の質を評価することができる。透過において測定する場合、実際の顔料の吸光度のピークより高い波長における吸光度の増加として、顔料インキにおける光散乱を検出することができる。例えば80℃における1週間の熱処理の前及び後のSSFを比較することにより、分散の安定性を評価することができる。
【0128】
インキの分光分離係数SSFは、記録されたインキ溶液又は基質上に噴射された画像のスペクトルのデータを用い、最大吸光度を、より高い参照波長λrefにおける吸光度と比較することにより、計算される。分光分離係数は、最大吸光度Amax対参照波長における吸光度Arefの比として計算される。
【0129】
【数1】

【0130】
SSFは、大きな色域を有するインキジェットインキセットを設計するための優れた道
具である。多くの場合、種々のインキが互いと十分に適合していないインキジェットインキセットが現在商品化されている。例えばすべてのインキの合わされた吸収が可視スペクトル全体に及ぶ完全な吸収を与えない、例えば着色剤の吸収スペクトルの間に「ギャップ」が存在する。他の問題は、1つのインキが他のインキの領域内で吸収性であり得ることである。得られるこれらのインキジェットインキセットの色域は、低いか又は並み程度である。
【実施例】
【0131】
材料
以下の実施例において用いられるすべての材料は、他にことわらなければ、ALDRICH CHEMICAL Co.(Belgium)及びACROS(Belgium)のような標準的な供給源から容易に入手可能である。
【0132】
NovopermTM Yellow H2Gは、CLARIANTからのC.I.Pigment Yellow 120である。
【0133】
HostapermTM Red E5B02は、CLARIANTからのC.I.Pigment Violet 19である。
【0134】
PV19/PR202は、ChromophtalTM Jet Magenta 3BC2に関して用いられる略語であり、それはCIBA SPECIALTY CHEMICALSからのC.I.Pigment Violet 19及びC.I.Pigment Red 202の混晶である。
【0135】
SunfastTM blue 15:3は、SUN CHEMICAL CORPORATIONからのC.I.Pigment Blue 15:3である。
【0136】
SOLSPERSETM 35100は、LUBRIZOLから入手可能な酢酸ブチル中のポリエステルがグラフトされたポリエチレンイミンコア超分散剤40%溶液である。
【0137】
SOLSPERSETM 35000は、同じ高分子分散剤SOLSPERSETM 35100のバッチを、しかし溶媒を加えずに送達するようにとの製造者LUBRIZOLへの特別の要望を介して得られる。
【0138】
SOLSPERSETM 32000は、LUBRIZOLからのポリエステルがグラフトされた固体ポリエチレンイミンコア超分散剤である。
【0139】
DB162 solは、BYK CHEMIE GMBHから入手可能な高分子分散剤DisperbykTM 162に関して用いられる略語である。
【0140】
DB162 dryは、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、キシレン及び酢酸n−ブチルの溶媒混合物が除去されているBYK CHEMIE GMBHから入手可能な高分子分散剤DisperbykTM 162に関して用いられる略語である。
EFKATM 7476は、CIBAから入手可能な酢酸ブチル及びsec−ブタノール中の40%アクリル性高分子分散剤溶液である。
【0141】
EFKATM 7476 DRYは、酢酸ブチル及びsec−ブタノールの溶媒混合物が除去されているCIBAから入手可能な高分子分散剤EFKATM 7476に関して用いられる略語である。
【0142】
分散相乗剤S1は、式:
【0143】
【化6】

【0144】
により示されるキナクリドン誘導体である。分散相乗剤S1の合成は、国際公開第2007/060254号パンフレット(AGFA GRAPHICS)において、「キナクリドン誘導体QAD−3の合成」という見出しの下に記載されている。
【0145】
S2は、LUBRIZOLからの分散相乗剤SolsperseTM 5000に関して用いられる略語である。
【0146】
DEGDEEは、ジエチレングリコールジエチルエーテルである。
【0147】
SavinylTM blue GLSは、CLARIANT BENELUX NVからのフタロシアニン 1:1 銅染料(C.I.Solvent Blue 44)である。
【0148】
GenoradTM 16は、RAHN AGからの重合抑制剤である。
【0149】
ITXは、CIBA SPECIALTY CHEMICALSからのDarocurTM ITX、2−及び4−イソプロピルチオキサントンの異性体混合物に関して用いられる略語である。
【0150】
TPOは、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから商品名DarocurTM TPOの下に入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシドに関して用いられる略語である。
【0151】
BYKTM UV 3510は、BYK CHEMIE GMBHから入手可能なポリエーテル改質ポリジメチルシロキサン湿潤剤である。
【0152】
GENOCURETM EPDは、RAHN AGからの4−ジメチルアミノ安息香酸エチルである。
【0153】
DPGDAは、SARTOMERからのジプロピレングリコールジアクリレートである。
【0154】
PP1は、ANTALIS,Belgiumから入手可能であり、PRIPLAK,Franceにより製造されるPriplakTM Clssicが用いられたポリプロピレン基質である。
【0155】
PP2は、EPACAR,Belgiumから入手可能なBuplex 3mmが用いられたポリプロピレン基質である。
【0156】
PP3は、ANTALIS,Belgiumから入手可能なBiprint(厚さ3.5mm,600g/m)が用いられたポリプロピレン基質である。
【0157】
PVC1は、METAMARK,United Kingdomから入手可能なMD5−100が用いられたポリ塩化ビニル基質である。
【0158】
PVC2は、ANTALIS,Belgiumから入手可能であり、MOLCO,Belgiumにより製造されるPenstickTM 5155 WHが用いられたポリ塩化ビニル基質である。
【0159】
PCは、ANTALIS,Belgiumから入手可能であり、BARLO,Germanyにより製造されるBARLOTM TL 30%が用いられたポリカーボネート基質である。
【0160】
PMMAは、ANTALIS,Belgiumから入手可能であり、BARLO,Germanyにより製造されるBARLOTM XTが用いられたポリメチルメタクリレート基質である。
【0161】
PSは、ANTALIS,Belgiumから入手可能であり、IROPLASTICS,Austriaにより製造されるIROSTYRENETM MATが用いられたポリスチレン基質である。
【0162】
測定法
1.SSFの測定
インキの分光分離係数SSFは、記録されたインキ溶液のスペクトルのデータを用い、最大吸光度を参照波長における吸光度と比較することにより、計算された。参照波長は、用いられる顔料に依存する:
・カラーインキが400〜500nmに最大吸光度Amaxを有する場合、吸光度Arefは600nmの参照波長において決定されねばならず、
・カラーインキが500〜600nmに最大吸光度Amaxを有する場合、吸光度Arefは650nmの参照波長において決定されねばならず、
・カラーインキが600〜700nmに最大吸光度Amaxを有する場合、吸光度Arefは830nmの参照波長において決定されねばならない。
【0163】
吸光度は、Shimadzu UV−2101 PCダブルビーム−分光光度計を用い、透過において決定された。表4に従う顔料濃度を有するように、酢酸エチルを用いてインキを希釈した。
【0164】
【表4】

【0165】
表5の設定を用いるダブルビーム−分光光度計を用い、希釈されたインキのUV−VIS−NIR吸収スペクトルの分光光度測定を透過−モードで行った。10mmの路長を有する石英セルを用い、ブランクとして酢酸エチルを選んだ。
【0166】
【表5】

【0167】
狭い吸収スペクトル及び高い最大吸光度を示す有効な顔料添加インキジェットインキは、少なくとも30のSSFに関する値を有する。
【0168】
2.顔料分散安定性
80℃における1週間の熱処理の前及び後のSSFを比較することにより、分散安定性を評価した。優れた分散安定性を示す顔料添加インキジェットインキは、熱処理後にまだ30より大きいSSF及び個々のインキジェットに関する35%より低いSSFにおける損失又はインキジェットインキセットに関する20%より低いSSFにおける平均損失を有する。
【0169】
3.接着
ISO TasaTM テープ(T1079358)4104/04 PVCテープ(接着力=10N/25mm)と組み合わせて、カット(cuts)間の1mmの間隔及び600gの重量を有するElcometerTM 1542クロスハッチカッター(cross hatch cutter)を用いることにより、ISO2409:1992(E).Paints.International standard.1992−08−15に従うクロス−カットテスト(cross−cut test)によって接着を評価した。
【0170】
表6に記載される分類に従って評価を行った。
【0171】
【表6】

【実施例1】
【0172】
この実施例は、本発明に従う高分子分散剤の合成方法を例示する。
【0173】
オキサリルアミド−メチル4−ピリジンの合成
【0174】
【化7】

【0175】
2.2gのシュウ酸ジメチルエステル(0.018モル)を、磁気撹拌機、温度計及び窒素流入口が備えられた3つ口フラスコ中で12.6mLの酢酸メチル中に溶解した。ドライアイス/エタノール浴を用いて混合物を−20℃に冷却した。次いで25.1mLの酢酸メチル中に溶解された2gの4−アミノメチルピリジン(0.018モル)を−20℃において2時間かけて滴下した。一定の撹拌下に、ロートを用いて過剰のシュウ酸ジメチルエステル(1.1g,0.009モル)を反応混合物に加えた。MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート及びCHCl/MeOH 90/10をそれぞれ固定相及び移動相として用いることにより、薄層クロマトグラフィー(TLC)を介して反応の完了を決定した。粗反応混合物中に存在する沈殿した固体をブフナーロート上における濾過により除去し、減圧下における蒸発により溶媒を除去した。生成物を真空炉中で40℃において終夜乾燥した。2.93gの白−黄色がかった粉末を回収した(収率=81%)。ガスクロマトグラフィーにより、93.1%の純度が測定された。
【0176】
オキサリルアミド−プロピルイミダゾールの合成
【0177】
【化8】

【0178】
6.2gのシュウ酸ジエチルエステル(0.042モル)及び11mLの酢酸メチルを、磁気撹拌機、温度計及び窒素流入口が備えられた3つ口フラスコ中に導入した。氷/水浴を用いて混合物を+10℃に冷却した。次いで22.5mLの酢酸エチル中に溶解された5gの1−(3−アミノプロピル)イミダゾール(0.040モル)を+15℃で2時間かけて滴下した。薄層クロマトグラフィー:MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート(固定相)及びCHCl/MeOH/NHOH 88/10/2(移動相)により反応の完了を決定した。粗反応混合物中に存在する沈殿した固体をブフナーロート上における濾過により除去し、減圧下における蒸発により溶媒を除去した。生成物を真空炉中で23℃において終夜乾燥した。7.25gのオレンジ色の固体を回収した(収率=80%)。質量スペクトル測定と連結された液体クロマトグラフィー(LC−MS)により、98.5%の純度を測定した。
【0179】
オキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマーの合成
【0180】
【化9】

【0181】
50g(0.025モル)のJeffamineTM XTJ−5076(Huntsmanにより供給)、2.91gのトリエチルアミン(0.029モル)、触媒量の4−ジメチルアミノピリジン及び157.5mLの酢酸エチルを、磁気撹拌機、温度計及び窒素流入口が備えられた3つ口フラスコ中に導入した。氷/水浴を用いて混合物を0℃に冷却した。次いで0℃において2時間かけて4.2gのエチルオキサリルクロリド(0.029モル)を滴下した。反応混合物を23℃でさらに1時間撹拌した。MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート及びCHCl/MeOH/NHOH 92/7.1をそれぞれ固定相及び移動相として用いることにより、薄層クロマトグラフィーを介して反応の完了を決定した。粗反応混合物中に存在する沈殿した固体をブフナーロート上における濾過により除去し、濾液を250mLの水及び250mLのブラインで洗浄した。減圧下における蒸発により、酢酸エチルを除去した。生成物を真空炉中で23℃において終夜乾燥した。51.4gの黄色がかった油を回収した(収率=98%)。H NMR分光分析により構造を確かめた。
【0182】
高分子分散剤POL−1の合成
2gのEpomin SP−200(Nippon Shokubaiにより供給されるポリエチレンイミン,Mw=10,000)を、一定の撹拌下に50℃において125
mLのエタノール中に溶解した。12gのオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマーを反応混合物に一度に加え、窒素流下に温度を約105℃に50時間上げた。減圧下で溶媒を蒸発させ、固体を真空炉中で35℃において乾燥した。
【0183】
高分子分散剤POL−4の合成
3.04gのEpominTM SP−200(Nippon Shokubaiにより供給されるポリエチレンイミン,Mw=10,000)を、一定の撹拌下に50℃において125mLのエタノール中に溶解した。10gのオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマー及び0.89gのオキサリルアミド−プロピル−イミダゾールを反応混合物に一度に加え、窒素流下に温度を約105℃に50時間上げた。減圧下で溶媒を蒸発させ、固体を真空炉中で35℃において乾燥した。薄層クロマトグラフィー:MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート(固定相)及びCHCl/MeOH 90/10(移動相)により、反応の完了を決定した。
【0184】
高分子分散剤POL−10の合成
10g(0.005モル)のJeffamineTM XTJ−507(Huntsmanにより供給,Mw=2100)及び0.73gのシュウ酸ジエチルエステル(0.005モル)を、Dean−Stark装置が備えられた3つ口フラスコ中で、窒素流下において撹拌した。反応混合物を105℃に加熱し、2時間かけてエタノールを完全に蒸留した。薄層クロマトグラフィーは、MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート及びCHCl/MeOH/NHOH 92/7/1をそれぞれ固定相及び移動相として用いることにより、反応の完了を示した。仕上げを行わず、製造されたオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマー(黄色がかった油)を直接第2段階に用いた。
【0185】
1.74gのEpominTM SP−200(Nippon Shokubaiにより供給されるポリエチレンイミン,Mw=10,000)を、一定の撹拌下に50℃において100mLのエタノール中に溶解した。25mLのエタノール中で希釈された10.5gのオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマーを反応混合物に一度に加え、窒素流下に温度を約105℃(還流)に3時間上げた。減圧下で溶媒を蒸発させ、固体を真空炉中で35℃において乾燥した。
【0186】
高分子分散剤POL−11の合成
22.5g(0.011モル)のJeffamineTM XTJ−507(Huntsmanにより供給,Mw=2100)及び0.41g(0.004モル)のN−4−アミノ−メチルピリジンを、窒素流入口及びDean−Stark装置が備えられた3つ口フラスコ中で撹拌した。氷/水浴を用いて反応混合物を5℃に冷却した。2.3g(0.016モル)のシュウ酸ジエチルエステルを1時間かけて滴下した。反応混合物を23℃で1時間及び95℃で2時間撹拌し、3.5時間かけてエタノールを完全に蒸留した。薄層クロマトグラフィーは、MerckTM TLC Silica Gel 60 F254プレート及びCHCl/MeOH/NHOH 92/7/1をそれぞれ固定相及び移動相として用いることにより、反応の完了を示した。仕上げを行わず、オキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマー及びオキサリルアミド−メチル−ピリジンの油性の混合物を直接第2段階に用いた。
【0187】
3.0gのEpominTM SP−200(Nippon Shokubaiにより供給されるポリエチレンイミン,Mw=10,000)を、一定の撹拌下に50℃において100mLのエタノール中に溶解した。40mLのエタノール中で希釈された12.6gのオキサリルアミド−P(EO−co−PO)/オキサリルアミド−メチル−ピリジンを反応混合物に加え、温度を約105℃(還流)に3時間上げた。濾過の後(1μm)、減圧下で溶媒を蒸発させ、固体を真空炉中で35℃において乾燥した。
【0188】
高分子分散剤POL−12の合成
40g(0.02モル)のJeffamineTM XTJ−507(Huntsmanにより供給,Mw=2100)及び2.92gのシュウ酸ジエチルエステル(0.02モル)を、Dean−Stark装置が備えられた3つ口フラスコ中で、窒素流下において撹拌した。反応混合物を95℃に加熱し、3.5時間かけてエタノールを完全に蒸留した。薄層クロマトグラフィーは、MerckTM TLC Silica Gel 60
254プレート及びCHCl/MeOH/NHOH 92/7/1をそれぞれ固定相及び移動相として用いることにより、反応の完了を示した。仕上げを行わず、製造されたオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマー(黄色がかった油)を直接第2段階に用いた。
【0189】
3.0gのEpominTM SP−200(Nippon Shokubaiにより供給されるポリエチレンイミン,Mw=10,000)を、一定の撹拌下に50℃において100mLのエタノール中に溶解した。40mLのエタノール中で希釈された9.9gのオキサリルアミド−P(EO−co−PO)コポリマー及び0.84gのオキサリルアミド−メチル−ピリジンを反応混合物に一度に加え、窒素流下に温度を約105℃(還流)に3.5時間上げた。減圧下で溶媒を蒸発させ、固体を真空炉中で35℃において乾燥した。
【0190】
総括高分子分散剤
合成された高分子分散剤の組成を表7に示す。表7中のPEI−feedは、高分子分散剤の製造において用いられたEpominTM SP200の量を重量比及びモル%として表わすことにより示す。graft−feedは、高分子分散剤の製造において用いられたプロピレンオキシド及びエチレンオキシドのオキサリルアミドコポリマー(PPO29−EO−オキサリルアミド)の量を重量比及びモル%として表わすことにより示す。anchor−feedは、高分子分散剤の製造において用いられたイミダゾール−プロピル−オキサリルアミド(=IPO)又はピリジン−メチル−オキサリルアミド(=PMO)の量を重量比及びモル%として表わすことにより示す。
【0191】
高分子分散剤POL−2及びPOL−3の合成は、試薬の量を表7に示されている通りに調整することにより、高分子分散剤POL−1の合成に関して記載した方法に従う。
【0192】
高分子分散剤POL−5及びPOL−6の合成は、試薬の量を表7に示されている通りに調整することにより、高分子分散剤POL−4の合成に関して記載した方法に従う。
【0193】
高分子分散剤POL−7、高分子分散剤POL−8及びPOL−9の合成は、イミダゾール−プロピル−オキサリルアミドをピリジン−メチル−オキサリルアミドに置き換えることにより、且つ試薬の量を表7に示されている通りに調整することにより、高分子分散剤POL−4の合成に関して記載した方法に従う。
【0194】
高分子分散剤POL−13の合成は、ピリジン−メチル−オキサリルアミドをイミダゾール−プロピル−オキサリルアミドに置き換えることにより、且つ試薬の量を表7に示されている通りに調整することにより、高分子分散剤POL−12の合成に関して記載した方法に従う。
【0195】
【表7】

【0196】
コポリマーの分子量(M、M、M/M)は、溶離剤としてジメチルアセトアミド/0.21%LiCl及び直線状ポリスチレン標準に対してキャリブレーションされた3混合−Bカラム(3 mixed−B columns)を用いることにより、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析された。分析結果を表8に示す。
【0197】
【表8】

【実施例2】
【0198】
この実施例は、本発明に従う高分子分散系のCMY−インキジェットインキセットの調製のための分散安定性における利点を例示する。
【0199】
インキジェットインキセットの調製
比較インキジェットインキセットCOMP−1〜COMP−3及び本発明のインキジェ
ットインキセットINV−1〜INV−9のすべてを、表10の顔料及び表11に従う高分子分散剤を用いて同じ方法で調製し、表9に記載される組成を得た。
【0200】
【表9】

【0201】
【表10】

【0202】
【表11】

【0203】
溶解機を用いて顔料、高分子分散剤及び有機溶剤DEGDEEを混合し、続いてこの混合物を、直径が0.4mmのイットリウム−安定化酸化ジルコニウム−ビーズ(TOSOH Co.からの「高耐摩耗性ジルコニア磨砕媒体」)を用いるローラーミル法で処理することにより、顔料分散系を調製した。60mLのポリエチレンフラスコを、磨砕ビーズ及び20mLの混合物でその体積の半分まで満たした。フラスコをリット(lit)で閉め、ローラーミル上に3日間置いた。速度を150rpmに設定した。磨砕後、濾布を用いて分散系をビーズから分離した。
【0204】
評価及び結果
各インキの分光分離係数(SSF)を、調製の直後ならびに80℃における1週間の熱
処理後に決定した。平均%Lossは、インキセットの3つのインキジェットインキに関する、80℃における1週間の熱処理後のSSFにおける平均パーセンテージ損失である。比較インキジェットインキセットCOMP−1〜COMP−3及び本発明のインキジェットインキセットINV−1〜INV−9に関する結果を、表12に示す。「FLOC」は、インキの凝集が観察されたことを意味する。「GEL」は、インキのゼリー状化が観察されたことを意味する。
【0205】
【表12】

【0206】
表12から、市販の分散剤は比較インキジェットインキセットCOMP−1〜COMP−3のいくつかのインキに関して十分に機能するが、本発明の高分子分散剤のみがインキジェットインキセットのすべてのインキにおいて十分に働くことが明白となるはずである。そのような「万能(universal)」高分子分散剤の利点は、最適の分散の質及び安定性を得るために、異なるカラーインキジェットインキに関して異なる高分子分散剤を使用する必要がないことである。インキセットの異なるカラーインキジェットインキにおいて異なる高分子分散剤を使用することは、粘度ならびに他のインキ成分及びインキ受容体との相互作用における高分子分散剤の生来の差の故に、噴射性能における追加の問題を生じ得る。
【実施例3】
【0207】
この実施例は、本発明に従う高分子分散剤を含有するUV−硬化性インキジェットインキの実質的に非−吸収性インキ受容体への接着における利点を例示する。
【0208】
インキジェットインキの調製
比較UV硬化性インキジェットインキCOMP−4〜COMP−5及び本発明のUV硬化性インキジェットインキINV−10〜INV−20のすべてを、表14に従う高分子分散剤を用いて同じ方法で調製し、表13に記載される組成を得た。
【0209】
【表13】

【0210】
【表14】

【0211】
高分子分散剤、染料、光開始系、安定剤、湿潤剤及びUV−硬化性モノマーDPGDAを23℃において24時間混合することにより、UV硬化性インキジェットインキを調製した。
【0212】
評価及び結果
表13に従って調製されたUV硬化性インキジェットインキを、大気圧条件下でバーコーター及び10mmワイアバー(wired bar)の使用によってそれらをインキ受容体PP1、PP2、PP3、PVC1、PVC2、PMMA及びPS上にコーティングすることにより、評価した。コンベアベルト上のUVランプ(240W/cm,100%照射出力)下に20m/分の速度で試料を輸送するFusion F600s Ultra−Violet Lamp(D−バルブ,I=200−400nm)が備えられたFusion DRSE−120コンベアの使用により、各コーティングされたインキ層を硬化した。各コーティングを暗室内に24時間保ってから、接着の質をテストした。結果を表15に示す。
【0213】
【表15】

【0214】
表15から、高分子分散剤を含有するインキジェットインキは、一般的に種々のインキ受容体上への接着において、市販の分散剤より性能が優れていることがわかる。これは、高分子分散剤が30,000より小さい分子量Mを有し、且つピリジンアンカー基が用いられているか、又はヘテロ芳香族アンカー基が全く用いられていない場合に特に真である。イミダゾールアンカー基の使用は、接着の質において限られた向上しか示さない。
【実施例4】
【0215】
いくつかの顔料、特にいくつかのキナクリドン顔料は、分散相乗剤を用いて初めて十分に分散され得る。この実施例は、本発明に従う高分子分散剤を用いると、分散相乗剤の不在下でもそのようなキナクリドン顔料の優れた分散安定性を得ることができることを例示する。
【0216】
インキジェットインキの調製
比較インキジェットインキCOMP−8及びCOMP−9ならびに本発明のインキジェットインキINV−21〜INV−29のすべてを同じ方法で調製し、表16及び表17に記載される組成を得た。
【0217】
溶解機を用いて顔料、高分子分散剤及び有機溶剤DEGDEEを混合し、続いてこの混合物を、直径が0.4mmのイットリウム−安定化酸化ジルコニウム−ビーズ(TOSOH Co.からの「高耐摩耗性ジルコニア磨砕媒体」)を用いるローラーミル法で処理することにより、インキジェットインキを調製した。60mLのポリエチレンフラスコを、磨砕ビーズ及び20mLの混合物でその体積の半分まで満たした。フラスコをリットで閉め、ローラーミル上に3日間置いた。速度を150rpmに設定した。磨砕後、濾布を用いて分散系をビーズから分離した。
【0218】
【表16】

【0219】
【表17】

【0220】
評価及び結果
各インキの分光分離係数(SSF)を、調製の直後ならびに80℃における1週間の熱処理後に決定した。%Lossは、80℃における1週間の熱処理後のSSFにおけるパーセンテージ損失である。比較インキジェットインキCOMP−8及びCOMP−9ならびに本発明のインキジェットインキINV−21〜INV−29に関する結果を、表18に示す。
【0221】
【表18】

【0222】
表18は、分散相乗剤を含有する比較インキジェットインキCOMP−9におけるC.I.Pigment Violet 19及びC.I.Pigment Red 202の混晶ならびに市販の分散剤の組み合わせの場合に優れた分散安定性を得ることができるが、比較インキジェットインキCOMP−8により示される通り、分散相乗剤が不在の場合には優れた分散安定性が得られないことを示す。すべての本発明のインキジェットインキINV−21〜INV−29は、高価な分散相乗剤の不在下でも優れた分散安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、非水性分散媒及び式(I):
【化1】

[式中:
R1は、直線状高分子部分、星形高分子部分、樹枝状高分子部分、分枝高分子部分及び超分枝高分子部分より成る群から選ばれる第1の高分子部分を示し;そして
R2は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はそれらのコポリマーより成る群から選ばれる第2の高分子部分を示す]
に従う少なくとも1個のオキサリルアミド構造単位を含む高分子分散剤を含む非水性顔料分散系。
【請求項2】
第1の高分子部分が式(II):
【化2】

[式中:
R3は、少なくとも1個の窒素を含有する5もしくは6員芳香族複素環を含む官能基を示す]
に従う少なくとも1個の構造単位によりさらに置換されている請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項3】
第1の高分子部分が分枝高分子部分又は超分枝高分子部分である請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項4】
高分子分散剤がポリエチレンイミン誘導体である請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項5】
第2の高分子部分がポリエステル及びポリエーテルより成る群から選ばれる請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項6】
R3が、場合により置換されていることができるベンズイミダゾール、場合により置換されていることができるイミダゾール及び場合により置換されていることができるピリジンより成る群から選ばれる少なくとも1個の5もしくは6員窒素含有芳香族複素環を含む請求項2に従う非水性顔料分散系。
【請求項7】
少なくとも1個の5もしくは6員窒素含有芳香族複素環がピリジンである請求項6に従う非水性顔料分散系。
【請求項8】
高分子分散剤が式(III):
【化3】

[式中:
R4は、ポリエーテル及びポリエステルより成る群から選ばれる高分子鎖を示し;
R5は分枝高分子コア又は超分枝高分子コアを示し;
kは0〜600の整数を示し;そして
pは1〜900の整数を示す]
により示される請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項9】
高分子分散剤が式(IV):
【化4】

[式中:
R6は、分枝高分子コア又は超分枝高分子コアを示し;
R7は、ポリエーテル及びポリエステルより成る群から選ばれる高分子鎖を示し;
R8は、少なくとも1個の窒素原子を含有する5もしくは6員芳香族複素環を含む官能基を示し;
nは1〜900の整数を示し、
mは0〜720の整数を示し;そして
oは0〜600の整数を示す]
により示される請求項1に従う非水性顔料分散系。
【請求項10】
顔料がキナクリドン顔料である請求項1〜9のいずれか1つに従う非水性顔料分散系。
【請求項11】
顔料分散系がUV線又はe−ビームにより硬化可能である1請求項1〜10のいずれか1つに従う非水性顔料分散系。
【請求項12】
顔料分散系がインキジェットインキである請求項11に従う非水性顔料分散系。
【請求項13】
請求項12に従う少なくとも1つのインキジェットインキを含む非水性インキジェットインキセット。
【請求項14】
a)請求項1〜9のいずれか1つに記載の高分子分散剤を準備し;
b)顔料を準備し;そして
c)分散剤の存在下に分散媒中で顔料を磨砕する
段階を含む非水性顔料分散系の調製方法。
【請求項15】
表面への非水性顔料分散系の接着を向上させるための請求項1〜9のいずれか1つに記載の高分子分散剤の使用。

【公表番号】特表2012−530163(P2012−530163A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515421(P2012−515421)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057770
【国際公開番号】WO2010/145950
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(507253473)アグフア・グラフイクス・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (21)
【Fターム(参考)】