説明

高分子化合物、および該高分子化合物を含有する電荷制御剤、該電荷制御剤を含有するトナー

【課題】帯電特性が良好で、かつ、樹脂や重合性単量体への相溶性、分散性が良好な新規高分子化合物を提供する。
【解決手段】一般式(1);−CH2−CR(A)−[式(1)中、R1は水素原子、アルキル基を表す。Aは式(2)に示される構造との結合部位を表す。]で表される単量体単位と、ホウ素原子、ケイ素原子、2価以上の金属原子の中から選ばれる配位元素および配位子から構成されるユニットを部分構造として含む高分子化合物。


[式(2)中、R2乃至R5は水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、但し少なくとも一つが式(1)中のAと結合を形成する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サリチル酸ユニットを有する新規な高分子化合物に関する。また、本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法などを利用した記録方法に用いられる電荷制御剤、及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真、静電印刷などによる画像形成方法では、帯電したトナーが、感光体ドラム上の電位差に応じた静電気力によってドラム上の静電潜像を現像するように構成されているため、トナーの帯電性の制御が必要不可欠である。そこで、一般的にトナーには帯電性を制御するために帯電性を付与する電荷制御剤が添加される。
【0003】
従来、負帯電性トナーには負帯電性電荷制御剤として、モノアゾ染料の金属錯体、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ベンジル酸などの金属錯体などが使用されている(特許文献1)。
【0004】
最近では安全性や環境への配慮、より安定した帯電性の要求から、電荷制御機能を有する樹脂をトナー材料として用いるという提案も行なわれている。例えば特許文献2には、サリチル酸ユニットを有する樹脂を含有するトナーが提案されている。
【0005】
また、特許文献3では、サリチル酸ユニットを高分子鎖に対してグラフト状および/またはブロック状に結合し、さらに亜鉛などの金属塩によりサリチル酸ユニット同士を架橋した高分子錯体を電荷制御剤として使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4004080号公報
【特許文献2】特許第2694572号公報
【特許文献3】特開平6−83113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来用いられているこれらの電荷制御剤は、結着樹脂との相溶性、分散性に課題があった。特に、懸濁重合法などで製造される重合トナーでは、結着樹脂を構成する重合性単量体への相溶性、分散性が課題となり、電荷制御剤が本来有する帯電特性を十分に得ることが困難であった。
【0008】
従って、本発明の目的は帯電特性が良好で、かつ、樹脂や重合性単量体への相溶性、分散性が良好な新規高分子化合物を提供し、トナー用電荷制御剤として適用することで良好な画像が得られるトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の発明によって達成される。
【0010】
すなわち、本発明は少なくとも下記一般式(1)で表される単量体単位とホウ素原子、ケイ素原子、および2価以上の金属原子から選ばれる配位元素、および配位子から構成されるユニットを部分構造として含む高分子化合物により達成される。
【0011】
【化1】

[一般式(1)中、R1は水素原子、アルキル基を表す。Aは一般式(2)に示される構造との結合部位を表す。]
【0012】
【化2】

[一般式(2)中、R2乃至R5は水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、但し少なくとも一つが一般式(1)中のAと結合を形成する。]
【0013】
また、本発明は、上記のユニットを含む高分子化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする電荷制御剤により達成される。
【0014】
さらに、本発明は少なくとも上記電荷制御剤、結着樹脂、着色剤およびワックス成分を含有することを特徴とするトナーによって達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明により帯電特性が良好で、かつ、樹脂や重合性単量体への相溶性、分散性が良好な新規高分子化合物を提供することが可能となる。また、上記高分子化合物を含有し、トナーの帯電特性を適切に制御することができる電荷制御剤を提供することが可能となる。さらに、上記電荷制御剤をトナーに用いることにより、良好な画像が得られるトナーを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のトナーの摩擦帯電量を測定するための装置の構成を示す図。
【図2】主鎖ポリマーaの1H NMRスペクトル図。
【図3】本発明の高分子化合物Aの1H NMRスペクトル図。
【図4】本発明の高分子化合物Aの13C NMRスペクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討した。この結果、一般式(1)で表される単量体単位とホウ素原子、ケイ素原子および2価以上の金属原子から選ばれる配位元素、および任意の配位子から構成されるユニットを部分構造として含む高分子化合物が良好な帯電特性を示しかつ、樹脂や重合性単量体への相溶性、分散性が良好であることを見出した。以下、本ユニットについて詳述する。
【0018】
【化3】

[一般式(1)中、R1は水素原子、アルキル基を表す。Aは一般式(2)に示される構造との結合部位を表す。]
【0019】
【化4】

[一般式(2)中、R2乃至R5は水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、但し少なくとも一つが一般式(1)中のAと結合を形成する。]
【0020】
上記一般式(1)中の、R1におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)中のR1はそれぞれ独立して上記に列挙した置換基、および水素原子から、任意に選択できるが、モノマーの重合性の観点から水素原子、メチル基である場合が好ましい。
【0022】
上記一般式(2)中のR2乃至R5におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)中のR2乃至R5はそれぞれ独立に、上記に列挙した置換基を表すが、これらはさらに置換されていてもよく、高分子化合物の分散性や相溶性、配位元素との配位を著しく阻害するものでなければ特に制限されない。この場合置換しても良い置換基としてはメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基などのアミノ基、アセチル基などのアシル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0024】
また、上記一般式(2)中のR2乃至R5の少なくとも一つは一般式(1)に示される単量体単位との結合部位を表す。結合位置は特に限定されることはなく、R2乃至R5のいずれに結合していても構わない。また、一般式(1)に示される単量体単位と2個以上の結合を有していても良い。
【0025】
上記一般式(2)中のR2乃至R5はそれぞれ独立して上記に列挙した置換基、水素原子、一般式(1)に示される単量体単位との結合部位から、任意に選択できるが、一つが一般式(1)に示される単量体単位との結合部位、残りが水素原子である場合が製造の点で優位である。
【0026】
本発明の高分子化合物は、配位元素と配位子より構成される。配位する元素は、ホウ素、ケイ素または、2価以上の金属元素であり、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、アルカリ土類金属、遷移金属である場合が製造の点で好ましく、中でも帯電特性の観点から、ホウ素原子、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム、クロム、鉄である場合がより好ましい。これらの配位元素は本高分子化合物の相溶性、分散性を確保するために、他のユニットとの架橋成分の形成を抑えるために、一つ以上の配位子または対イオンとの結合を有している。
【0027】
本発明の高分子化合物を構成する配位子は、一般式(1)に示される単量体単位と金属を介し配位するものであれば特に制限は受けない。また、配位形態は配位元素によって決定される。配位子としては例えば、ハロゲン原子、トリエチルアミン、アセトニトリル、トリフェニルホスフィン、テトラヒドロフランなどの単座配位子、アセチルアセトン、サリチル酸、ベンジル酸、エチレンジアミンなどの二座配位子、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン四酢酸などの多座配位子が挙げられる。本発明の配位子は、上記した様な公知の配位子を単独で、もしくは複数選択し使用することができるが、好ましくは1種の配位子を使用した場合である。配位子として好ましいのは、酸素原子を一つ以上有する低分子の有機配位子の場合が製造の点で好ましく、中でもアセチルアセトン誘導体、サリチル酸誘導体、ナフトエ酸誘導体、ベンジル酸誘導体などの二座配位子がより好ましい。上記アセチルアセトン誘導体としては、例えば、アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、ジピバロイルメタン、2−アセチルシクロペンタノン、1,3−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、トリフルオロアセチルアセトンなどが好適に使用できる。上記サリチル酸誘導体としては、例えば、サリチル酸、3−メチルサリチル酸、4−メチルサリチル酸、5−メチルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、4−クロロサリチル酸、5−クロロサリチル酸、3,5−ジクロロサリチル酸、3−メトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸などが好適に使用できる。上記ヒドロキシナフトエ酸誘導体としては、例えば、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−7−メトキシ−2−ナフトエ酸などが好適に使用できる。上記ベンジル酸誘導体としては、例えば、ベンジル酸、9−ヒドロキシフルオレン−9−カルボン酸などが好適に使用できる。
【0028】
本発明の高分子化合物は一般式(1)に表されるユニットと、一般式(3)に表されるユニットを一種類以上含む共重合体であっても良い。
【0029】
【化5】

[一般式(3)中、R6は水素原子、アルキル基を表す。R7はフェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基を表す。]
【0030】
上記一般式(3)中のR6におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。上記一般式(3)中のR6は上記に列挙した置換基、および水素原子から任意に選択できるが、モノマーの重合性の観点から水素原子、メチル基である場合が好ましい。
【0031】
上記一般式(3)中のR7におけるカルボン酸エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n−ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec−ブチルエステル基、tert−ブチルエステル基、ドデシルエステル基、2−エチルヘキシルエステル基、ステアリルエステル基、フェニルエステル基、2−ヒドロキシエチルエステル基などのエステル基が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、N−メチルアミド基、N,N−ジメチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N−イソプロピルアミド基、N−tert−ブチルアミド基、N−フェニルアミド基などのアミド基が挙げられる。
【0032】
上記一般式(3)中のR7はそれぞれ独立に、上記に列挙した置換基を表すが、これらはさらに置換されていてもよく、モノマーの重合性、一般式(1)に示される単量体単位と配位元素との配位を著しく阻害するものでなければ特に制限されない。この場合置換しても良い置換基としてはメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基などのアミノ基、アセチル基などのアシル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
【0033】
上記一般式(3)中のR7は上記に列挙した置換基、フェニル基、およびカルボキシル基から任意に選択できるが、高分子化合物の樹脂および重合性単量体への分散性、相溶性の点でフェニル基、カルボン酸エステル基である場合が好ましい。
【0034】
一般式(1)に示される単量体単位は、共重合体を構成する全単量体単位に対して0.01mol%乃至30mol%含有することが好ましく、より好ましくは0.01mol%乃至10mol%含有する場合である。一般式(1)に示される単量体単位が0.01mol%未満の場合は十分な帯電量が得られない。一方、30mol%より多く含む場合は高い帯電量は得られるものの、本高分子化合物の樹脂および重合性単量体への分散性、相溶性が低下するため、環境変化に伴う帯電量の変化が大きくなる場合がある。
【0035】
本発明の高分子化合物の分子量は重量平均分子量(Mw)で3000乃至100000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5000乃至50000の範囲の場合である。Mwが3000未満の場合はトナーに含有した場合、トナーからの脱落が起こりやすく、キャリアや、現像部材、感光体ドラムなどの汚染が生じることがある。一方、Mwが100000を超える場合は樹脂および重合性単量体への分散性、相溶性が低下してしまう。
【0036】
本高分子化合物は次に示す方法で製造することが可能である。
【0037】
すなわち、(A)一般式(1)に表されるユニットのモノマーであるビニルサリチル酸などと、一般式(3)に表されるユニットのモノマーであるスチレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどを公知の方法により重合させ主鎖ポリマーを製造後、配位元素および配位子と結合させ本高分子化合物を製造する方法、(B)ビニルサリチル酸などに配位金属および配位子とを結合後、これと一般式(3)に表されるユニットのモノマー成分を重合させて本高分子化合物を製造する方法がある。
【0038】
本発明においては上記モノマーの製造とハンドリングの観点から(A)に示す方法で本高分子化合物を製造するのが好ましい。以下、(A)に示す方法について詳細を説明する。
【0039】
一般式(1)に表されるユニットのモノマーであるビニルサリチル酸誘導体は以下に示す文献の方法により製造することができる。
(i)D.Bailey、外2名、「Jornal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition」、(米国)、John Wiley&Sons、1976年、第14巻、p.2725−2747。
(ii)M.Iwasaki、外3名、「Jornal of Polymer Science Polymer Chemistry Edition」、(米国)、John Wiley&Sons、1980年、第18巻、p.2755−2771。
(iii)D.Tirrell、外1名、「Makromolekulare Chemie」、(スイス国)、Huethig&Wepf Verlag、1980年、第181巻、p.2097−2109。
(iv)T.S.Lee、外2名、「Bioorganic&Medicinal Chemistry」、(英国)、Elsevier Science、2007年、第15巻、p.5207−5218。
【0040】
本発明の主鎖ポリマーの重合方法としては、ラジカル重合、イオン重合が挙げられ、また、分子量分布制御や構造制御を目的とするリビング重合を用いることもできる。工業的にはラジカル重合を用いることが好ましい。
【0041】
本発明に用いられるラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光などの光の照射、光重合開始剤と光の照射との併用、加熱などにより行うことができる。
【0042】
本発明に用いられるラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであれば良く、熱、光、放射線、酸化還元反応などの作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物、過酸化水素−鉄(II)塩系、BPO−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系などのレドックス開始剤などが挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ケタール系などが挙げられる。本発明に用いられるこれらラジカル重合開始剤は、2種以上を併用しても良い。
【0043】
本発明の主鎖ポリマーの重合温度は、用いる開始剤の種類により好ましい温度範囲は異なり、特に制限されるものではないが、−30乃至150℃の温度で重合することが一般的であり、より好ましい温度範囲は40乃至120℃である。
【0044】
この際使用される重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対し0.1乃至20質量部で、目標とする分子量分布の主鎖ポリマーが得られるように使用量を調節するのが好ましい。
【0045】
また、その重合法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合などいずれの方法を用いることも可能であり、特に限定するものではない。
【0046】
得られた主鎖ポリマーは必要に応じて精製処理を行うことができる。精製方法としては特に制限はなく、再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの方法を使用することができる。
【0047】
本発明の主鎖ポリマーに対して配位元素および配位子を結合させる工程は、(a)配位元素と配位子との結合を形成後、主鎖ポリマーとの結合を形成させる方法、(b)主鎖ポリマーと配位元素との結合を形成後、配位子との結合を形成させる方法、(c)主鎖ポリマー、配位元素および配位子との結合を一挙に形成させる方法が適用可能であるが、配位元素を介して主鎖ポリマー同士が架橋成分を形成するのを抑えるため、(a)に示す方法がより好ましい。
【0048】
上記反応は通常、溶媒中で行なわれる。使用できる溶媒は特に限定されないが、主鎖ポリマー、配位元素、配位子を均一に溶解し、かつ、上記反応を阻害しないトルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピペリドン(NMP)などの極性溶媒などが使用できる。
【0049】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、通常は−20℃乃至上記溶媒の沸点程度の温度が好ましい。
【0050】
上記反応では配位元素を導入するために様々な配位元素を含む化合物を使用することができる。例えば、配位元素がアルミニウムである場合、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウムのような無機塩、酢酸アルミニウム、tert−ブトキシアルミニウムのような有機塩、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウムのような有機金属化合物を使用することができる。これらの化合物は主鎖ポリマーおよび配位子との反応性、使用する溶媒への溶解性に応じて選択することが好ましい。
【0051】
上記配位元素を導入するための化合物の使用量は、主鎖ポリマー中の一般式(1)のユニットに対して等モル以上使用するのが好ましく、より好ましくは等モル乃至1.5モル倍程度である。
【0052】
配位子の使用量は配位元素が主鎖ポリマー同士の架橋成分を形成しないように配位元素が配位飽和となるような量を使用する必要がある。具体的な使用量は配位元素の種類や、主鎖ポリマー中の一般式(1)のユニットの量により異なるが、通常、配位元素に対して等モル乃至5モル倍程度である。配位子の使用量が多すぎると本高分子化合物中に遊離の配位子が多数存在し、トナーに使用した場合、トナーから遊離の配位子の脱落が起こりやすく、キャリアや、現像部材、感光体ドラムなどへの汚染が生じることがある。一方、配位子の使用量が少ない場合は、主鎖ポリマー同士の架橋成分が形成され、本高分子化合物の相溶性、分散性が低下してしまう。
【0053】
得られた本発明の高分子化合物は必要に応じて精製処理を行うことができる。精製方法としては特に制限はなく、再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの方法を使用することができる。
【0054】
製造した高分子化合物の構造は各種機器分析を用いて同定することができる。使用できる分析機器としては1H、13C 核磁気共鳴装置(NMR)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−OES)などを使用することができる。
【0055】
以下に本高分子化合物を電荷制御剤として用いる場合を詳細に説明する。
【0056】
本発明の高分子化合物は、樹脂や重合性単量体に対する相溶性、分散性が良好であるため、トナー用の電荷制御剤として用いることができる。さらに、一般式(3)に表されるユニットの種類を適当に選択することにより、幅広い相溶性、分散性の制御が可能となる。
【0057】
また、本発明の高分子化合物は無色あるいは淡色であるため、黒色のトナーおよびカラートナーいずれについても適応することができる。
【0058】
次に本発明のトナーについて以下に述べる。
【0059】
本発明のトナーは前述の高分子化合物、結着樹脂、着色剤およびワックス成分を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーである。この高分子化合物を用いることにより従来は得られなかった帯電特性、すなわち高い帯電量と迅速な帯電の立ち上りを実現することができる。
【0060】
以下に本発明のトナーについて詳細を説明する。
【0061】
本発明のトナーは前述の高分子化合物の添加量によって、現像システムに応じた最適のトナー摩擦帯電量の制御が可能となる。本発明のトナーにおける前述の高分子化合物の添加量は、結着樹脂の総量100質量部に対し、通常0.01乃至50質量部、好ましくは0.03乃至30質量部、さらに好ましくは0.05乃至10質量部である場合が好ましい摩擦帯特性を得ることができる。
【0062】
本発明のトナーに用いることができる結着樹脂としては公知のものが使用可能であり、スチレン−アクリル樹脂などのビニル系樹脂やポリエステル樹脂、あるいはそれらを結合させたハイブリッド樹脂などが使用可能である。
【0063】
また、重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミドなどのアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミドなどのメタクリレート系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセンなどのオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独または、一般的にはJ. Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、p.209−277に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方、75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において、画像の透明性が低下する。
【0064】
さらに、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、結着樹脂の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
【0065】
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、および上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0066】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレートおよびそのメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0067】
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部、より好ましくは0.1乃至5質量部用いる場合である。
【0068】
本発明のトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、以下に挙げられる磁性材料が好ましく用いられる。すなわち、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0069】
上記磁性材料としては、例えば、四三酸化鉄(Fe34)、γ−三二酸化鉄(γ−Fe23)、酸化鉄亜鉛(ZnFe24)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe512)、酸化鉄カドミウム(CdFe24)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe512)、酸化鉄銅(CuFe24)、酸化鉄鉛(PbFe1219)、酸化鉄ニッケル(NiFe24)、酸化鉄ネオジウム(NdFe23)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe24)、酸化鉄マンガン(MnFe24)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)などが挙げられる。上述した磁性材料を単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用する。本発明の目的に特に好適な磁性材料は四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0070】
これらの磁性体は平均粒径が0.1乃至2μm(好ましくは0.1乃至0.3μm)で、795.8kA/m印加での磁気特性が保磁力は1.6乃至12kA/m、飽和磁化は5乃至200Am2/kg(好ましくは50乃至100Am2/kg)、残留磁化は2乃至20Am2/kgである場合がトナーの現像性の点で好ましい。
【0071】
これら磁性材料の添加量は結着樹脂100質量部に対して、磁性体10乃至200質量部、好ましくは20乃至150質量部使用する場合である。
【0072】
一方、非磁性トナーとして用いる場合の着色剤としては、従来より知られている種々の染料や顔料など、公知の着色剤が用いることができる。
【0073】
例えばマゼンタ用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Vat Red 1、2、10、13、15、23、29、35などが挙げられる。
【0074】
シアン用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Blue 2、3、15:1、15:3、16、17、C.I.Vat Blue 6、C.I.Acid Blue 45、またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料などが挙げられる。
【0075】
イエロー用着色剤としては、例えばC.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、155、180、C.I.Vat Yellow 1、3、20などが挙げられる。
【0076】
黒色着色剤としては、例えばカーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、および上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
【0077】
これらの着色剤の使用量は、着色剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対して総量で0.1乃至60質量部、好ましくは0.5乃至50質量部が適当である。
【0078】
本発明において使用し得るワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックスおよびそれらの誘導体などが挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、あるいはそれらの化合物の酸アミドやエステル、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックスなどが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0079】
ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部であることが好ましく、さらには3.0乃至10.0質量部であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が難しくなり、15.0質量部を超えるとトナー中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー表面に多く存在することとなり、所望の帯電特性を阻害する可能性があり好ましくない。
【0080】
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体が外部添加されていても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したものなどの微粉体が使用できる。
【0081】
本発明において、トナーの重量平均粒径(D4)は3.0乃至15.0μm、好ましくは4.0乃至12.0μmが良い。D4が3.0μm未満の場合には、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。D4が15.0μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像はガサついた画像になってしまい好ましくない。
【0082】
また、トナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1の比(以下、重量平均粒径D4/個数平均粒径D1またはD4/D1ともいう)は1.35以下、好ましく1.30以下が良い。D4/D1が1.35を超える場合は、カブリや転写性が低下してしまうとともに、高解像度が得られにくくなる。
【0083】
なお、本発明のトナーの重量平均粒径D4と個数平均粒径D1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間などをコントロールすることによって調整することができる。
【0084】
本発明のトナー粒子は、どのような手法を用いて製造されても構わないが、懸濁重合法、乳化重合凝集法、懸濁造粒法など、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。一般的な粉砕法のトナーの場合、ワックス成分を大量にトナー粒子に添加することは、現像性の面で非常に技術的難易度が高い。水系媒体中でトナー粒子を造粒することで、ワックス成分を大量に使用しても、トナー表面へのワックス成分の露出を抑制することができる。中でも懸濁重合法がワックス成分のトナー中への内包化による長期現像安定性、および、溶剤を使用しないといった製造コスト面から最も好ましい製造方法の一つである。さらに、トナーの粒子形状を精密に制御することにより、各トナー粒子に同一含有量の着色剤が内包化されるため、着色剤による帯電特性の影響も均一なものになり、これによって、現像性と転写性とがバランス良く改善される。
【0085】
懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、本発明の高分子化合物、重合性単量体、着色剤、ワックス成分、および重合開始剤などを混合して重合性単量体組成物を調製し、重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒後、水系媒体中で重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させて得られる。この際に、上記重合性単量体組成物は、着色剤を第1の重合性単量体(あるいは一部の重合性単量体)に分散させた分散液を、少なくとも第2の重合性単量体(あるいは残りの重合性単量体)と混合して調製されたものであることが好ましい。すなわち、着色剤を第1の重合性単量体に十分に分散させた状態にした後に、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、着色剤がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できるものとなる。
【0086】
以下に本発明で用いられる測定方法について示す。
【0087】
(1)分子量分布測定
本発明の高分子化合物の分子量分布はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すように行った。
【0088】
サンプル濃度が1.0質量%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターでろ過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
装置:高速GPC HLC8220GPC(東ソー社製)
カラム:Asahipak GF−510HQ、310HQの2連(昭和電工社製)
溶離液:DMF(20mmol/l 臭化リチウム含有)
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.10ml
【0089】
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用した。
【0090】
(2)酸価測定
発明における高分子化合物の酸価は以下の方法により求められる。
【0091】
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料の粉砕品0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をW(g)とする。
2)300mlのビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う(例えば、平沼産業社製自動滴定測定装置COM−2500などが利用できる。)。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。ここでfはKOH溶液のファクターである。
酸価(mgKOH/g)={(S−B)×f×5.61}/W
【0092】
(3)組成分析
製造した高分子化合物の構造決定は以下の装置を用いて行った。
【0093】
1H NMR、13C NMR
ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR AVANCE−600(600MHz)を用いて、内部標準物質としてのテトラメチルシランを含む重水素化クロロホルム中、25℃で測定を行なった。化学シフト値は内部標準物質であるテトラメチルシランを0としたppmシフト値(δ値)として示した。
【0094】
13C NMRはクロム(III)アセチルアセトナートを緩和試薬として用いた逆ゲートデカップリング法により測定を行った。
【0095】
誘導結合プラズマ発光分析(ICP−OES)
配位元素の含有量はSPECTRO社製CIROS CCDを用いて、市販のICP用標準サンプルを用いて作成した検量線から算出した。
【0096】
(4)トナーの重量平均粒径D4、および個数平均粒径D1の測定
コールターマルチサイザー(ベックマン・コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)およびパーソナルコンピューターを接続した。電解液は塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を用いるが、例えばISOTON R−II(ベックマン・コールター社製)が使用できる。具体的な測定手順は、コールター社発行のコールターマルチサイザーのカタログ(2002年2月版)や、測定装置の操作マニュアルに記載されているが、以下の通りである。
【0097】
上記電解水溶液100乃至150mlに測定試料を2乃至20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、上記コールターマルチサイザーの100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上64.0μm以下のトナー粒子の体積、個数を測定する。得られたデータを16のチャンネルに振り分け、重量平均粒径D4、個数平均粒径D1および、D4/D1を求めた。
【0098】
(5)トナーの帯電量の測定
摩擦帯電量の測定は、それぞれの二成分現像剤20gを50ccのポリ容器に入れ、常温常湿環境(23℃/60%)で一昼夜放置後、1分間に200回の振とう速度で一定時間振とうさせ、図1の装置を用いて測定した。
【0099】
底に500メッシュの導電性スクリーン3を取り付けた金属製の測定容器2に摩擦帯電量を測定しようとする現像剤約0.3gを入れ金属製のフタ4をする。このときの測定容器2全体の質量をW1(g)とする。次に、吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を−2.0kPa(ゲージ圧)とする。この状態で2分間吸引し、トナーを吸引除去する。このときの電位計9の電位をV(ボルト)とする。ここで8はコンデンサーであり容量をC(μF)とする。吸引後の測定容器全体の質量をW2(g)とする。このトナーの摩擦帯電量(μC/g)は下記式に基づいて算出される。
【0100】
摩擦帯電量(μC/g)=(C×V)/(W1−W2)
帯電量の評価は下記基準によって判断した。
A:非常に良好(摩擦帯電量が−20.0μC/g以下)
B:良好(摩擦帯電量が−10.0μC/g乃至−19.9μC/g)
C:実用可(摩擦帯電量が−5.0μC/g乃至−9.9μC/g)
D:実用不可(摩擦帯電量が−4.9μC/g以上)
【0101】
摩擦帯電量が−10.0μC/g以下であれば帯電特性が良好であると判断した。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を挙げて本説明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例で記載する「部」はすべて質量部を示す。
【0103】
(主鎖ポリマーaの製造)
冷却管、撹拌機、温度計および、窒素導入管を取り付けた反応器に
・スチレン 100.0部
・5−ビニルサリチル酸 9.9部
・tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート 7.2部
(パーブチルI−75、日油社製)
・トルエン 200.0部
を仕込み、30分間窒素バブリングを行った。反応混合物を窒素雰囲気下、120℃で6時間加熱し、重合反応を完結させた。反応液を室温まで冷却後、溶媒を減圧留去した。得られた固体をアセトン−メタノールで2回再沈殿し、50℃、0.1kPa以下で減圧乾燥させることにより主鎖ポリマーaを得た。上記分析法を用いた分析結果を以下に示す。なお、NMR分析における「St」はスチレンユニットに帰属されるシグナルであり、「SA」は5−ビニルサリチル酸ユニットに帰属されるシグナルであることを示す。また、図2に本主鎖ポリマーaの1H NMRスペクトル図を示した。
分子量:重量平均分子量(Mw) 15500
1H NMR:δ[ppm] 1.0−2.5(St、SA)、6.2−7.4(St、SA)、10.25(SA)
13C NMR:δ[ppm] 40.3(St、SA)、41.5−46.5(St、SA)、111.2(SA)、117.3(SA)、125.0−130.0(St、SA)、135.9(SA)、145.0−146.0(St)、160.2(SA)、173.9(SA)
酸価:27.1mgKOH/g
【0104】
上記の結果より、得られた主鎖ポリマーaは5−ビニルサリチル酸ユニットを全単量体単位中に5mol%含有していることを確認した。
【0105】
(主鎖ポリマーbの製造)
5−ビニルサリチル酸を21.0部用いる以外、上記主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーbを製造した。
【0106】
(主鎖ポリマーcの製造)
5−ビニルサリチル酸の代わりに6−ビニルサリチル酸を用いること以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーcを製造した。
【0107】
(主鎖ポリマーdの製造)
5−ビニルサリチル酸の代わりに4−ビニルサリチル酸を用いること以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーdを製造した。
【0108】
(主鎖ポリマーeの製造)
5−ビニルサリチル酸の代わりに5−イソプロペニルサリチル酸10.7部を用いること以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーeを製造した。
【0109】
(主鎖ポリマーfの製造)
5−ビニルサリチル酸の代わりに3−tert−ブチル−5−ビニルサリチル酸13.2部を用いること以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーfを製造した。
【0110】
(主鎖ポリマーgの製造)
5−ビニルサリチル酸の代わりに4−クロロ−5−ビニルサリチル酸11.9部を用いること以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーgを製造した。
【0111】
(主鎖ポリマーhの製造)
仕込み組成を以下に示す組成とする以外、主鎖ポリマーaの製造と同様にして主鎖ポリマーhを製造した。
・スチレン 100.0部
・5−ビニルサリチル酸 9.9部
・アクリル酸 3.6部
・tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート 7.2部
(パーブチルI−75、日油社製)
・トルエン 200.0部
【0112】
(主鎖ポリマーiの製造)
アクリル酸の代わりにアクリル酸n−ブチル6.4部を用いること以外、主鎖ポリマーhの製造と同様にして主鎖ポリマーiを製造した。
【0113】
(主鎖ポリマーjの製造)
アクリル酸の代わりにメタクリル酸n−ブチル7.1部を用いること以外、主鎖ポリマーhの製造と同様にして主鎖ポリマーjを製造した。
【0114】
(主鎖ポリマーkの製造)
アクリル酸の代わりにN,N−ジエチルアクリルアミド6.4部を用いること以外、主鎖ポリマーhの製造と同様にして主鎖ポリマーkを製造した。
【0115】
上記のように製造した主鎖ポリマーa乃至kの1H、13C NMR分析から算出された組成比、酸価、および重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
(高分子化合物Aの製造)
冷却管、撹拌機、温度計および、窒素導入管を取り付けた反応器に
・3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸 7.5部
・トルエン(脱水) 20.0部
を仕込み、窒素置換し、0℃に冷却後、トリメチルアルミニウムの17.8%トルエン溶液6.2部をゆっくりと加えた。反応液を1時間室温で撹拌後、主鎖ポリマーaの25%トルエン溶液130.0部をゆっくりと加えた。反応液を3時間加熱還流後、室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した。残渣を50℃、0.1kPa以下で減圧乾燥させることにより高分子化合物Aを得た。分析結果を以下に示す。なお、NMR分析における「St」はスチレンユニットに帰属されるシグナルであり、「SA」はサリチル酸ユニットに帰属されるシグナルであり、「L」は配位子である3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸に帰属されるシグナルであることを示す。また、図3および4に本高分子化合物Aの1Hおよび13C NMRスペクトル図をそれぞれ示した。
【0118】
分子量:重量平均分子量(Mw) 18300
1H NMR:δ[ppm] 0.6−2.4(St、SA、L)、6.2−7.4(St、SA、L)、7.59(L)、7.79(L)
13C NMR:δ[ppm] 29.4(L)、31.4(L)、34.2(L)、35.1(L)、40.3(St、SA)、41.5−46.5(St、SA)、110.7(L)、113.9(SA)、117.2(SA)、124.5(L)、125.0−130.0(St、SA)、130.7(SA)、131.5(L)、136.3(SA)、137.3(L)、140.7(SA、L)、145.0−146.0(St)、159.8(L)、160.2(SA)、174.0(SA)、175.1(L)
【0119】
ICP−OES:アルミニウム含有量 4.8mol%(共重合体を構成する全単量体単位に対する比)
図2と図3の比較より、主鎖ポリマーaのサリチル酸ユニットの水酸基に帰属される10.3ppm付近のピークが消失していることから、高分子化合物Aが生成していることを確認した。また、上記分析結果より、得られた高分子化合物Aは全単量体単位に対してサリチル酸ユニットが5mol%、アルミニウムが4.8mol%、配位子である3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が10.2mol%の比で含まれていることを確認した。
【0120】
(高分子化合物Bの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の代わりにアセチルアセトン3.0部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Bを製造した。
【0121】
(高分子化合物Cの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の代わりに3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸5.7部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Cを製造した。
【0122】
(高分子化合物Dの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の代わりにベンジル酸6.9部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Dを製造した。
【0123】
(高分子化合物Eの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を3.8部、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液の代わりにジエチル亜鉛の15%トルエン溶液12.5部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Eを製造した。
【0124】
(高分子化合物Fの製造)
トリメチルアルミニウムのトルエン溶液の代わりにボラン−テトラヒドロフラン錯体の9.6%テトラヒドロフラン溶液13.6部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Fを製造した。
【0125】
(高分子化合物Gの製造)
冷却管、撹拌機、温度計および、窒素導入管を取り付けた反応器に
・マグネシウム(II)アセチルアセトナート 3.4部
・主鎖ポリマーa 32.5部
・トルエン(脱水) 97.5部
を仕込み、窒素置換し、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、トルエンを減圧留去した。残渣を50℃、0.1kPa以下で減圧乾燥させることにより高分子化合物Gを得た。
【0126】
(高分子化合物Hの製造)
マグネシウム(II)アセチルアセトナートの代わりにジルコニウム(IV)アセチルアセトナート7.4部を用いること以外、高分子化合物Gの製造と同様にして高分子化合物Hを製造した。
【0127】
(高分子化合物Iの製造)
マグネシウム(II)アセチルアセトナートの代わりにクロム(III)アセチルアセトナート5.3部を用いること以外、高分子化合物Gの製造と同様にして高分子化合物Iを製造した。
【0128】
(高分子化合物Jの製造)
マグネシウム(II)アセチルアセトナートの代わりに鉄(III)アセチルアセトナート5.4部を用いること以外、高分子化合物Gの製造と同様にして高分子化合物Jを製造した。
【0129】
(高分子化合物Kの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を15.2部、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液を12.3部、主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーbの25%トルエン溶液133.7部用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Kを製造した。
【0130】
(高分子化合物Lの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーcを用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Lを製造した。
【0131】
(高分子化合物Mの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーdを用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Mを製造した。
【0132】
(高分子化合物Nの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーeの25%トルエン溶液130.9部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Nを製造した。
【0133】
(高分子化合物Oの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーfの25%トルエン溶液133.4部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Oを製造した。
【0134】
(高分子化合物Pの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーgの25%トルエン溶液132.1部を用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Pを製造した。
【0135】
(高分子化合物Qの製造)
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を15.2部、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液を12.3部、主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーhの25%トルエン溶液128.1部用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Qを製造した。
【0136】
(高分子化合物Rの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーiを131.5部用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Rを製造した。
【0137】
(高分子化合物Sの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーjを132.3部用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Sを製造した。
【0138】
(高分子化合物Tの製造)
主鎖ポリマーaの代わりに主鎖ポリマーkを131.4部用いること以外、高分子化合物Aの製造と同様にして高分子化合物Tを製造した。
【0139】
上記のように製造した高分子化合物A乃至Tの1H、13C NMR分析、ICP−OESから算出された組成比、および重量平均分子量(Mw)を表2に示す。なお表2中、サリチル酸ユニットとは上記一般式(1)に表されるユニットであり、R1乃至R5は一般式(1)中のものと対応している。表中の「結合部位」とは一般式(1)中のAとの結合部位を示している。また、サリチル酸ユニットのユニット含有率、配位元素および配位子の含有率は共重合体を構成する全単量体単位に対するモル比として示した。
【0140】
【表2】

【0141】
(実施例1:トナー1の製造)
[重合性単量体組成物調製工程]
下記組成を混合後、ボールミルで3時間分散させた。
・スチレン 82.0部
・アクリル酸2−エチルヘキシル 18.0部
・ジビニルベンゼン 0.1部
・C.I.Pigment Blue 15:3 5.5部
・ポリエステル樹脂 5.0部
[プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物(ガラス転移点 65℃、重量平均分子量(Mw)10000、数平均分子量(Mn)6000)]
・高分子化合物A 1.0部
得られた分散液を300rpmで撹拌しながら60℃に加熱後、エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度 70℃、数平均分子量(Mn)704)12.0部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3.0部を加え、溶解し、重合性単量体組成物とした。
【0142】
[分散安定剤調製工程]
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)を取り付けた2l用四つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−リン酸ナトリウム水溶液450部を添加し、12000rpmで撹拌しながら、60℃に加熱した。ここに1.0mol/l−塩化カルシウム水溶液68.0部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤としてリン酸カルシウムを含む水系分散媒体を調製した。
【0143】
[造粒・重合工程]
上記水系分散媒体中に重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を交換し、内温を60℃で重合を5時間継続させた後、内温を80℃に昇温し、さらに3時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
【0144】
[洗浄・乾燥工程]
上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5に調整した。分散液を2時間撹拌後、ろ過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これをイオン交換水1.0l中に投入して撹拌し、再び分散液とした後、ろ過器で固液分離した。この操作を3回行なった後、最終的に固液分離した重合体微粒子を、30℃の乾燥機で十分に乾燥してトナー粒子を得た。
【0145】
[外添工程]
得られたトナー粒子100.0部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体(数平均一次粒子径7nm)1.0部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径45nm)0.15部、ルチル型酸化チタン微粉体(数平均一次粒子径200nm)0.5部をヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製)で5分間乾式混合して、トナー1とした。
【0146】
(実施例2乃至20:トナー2乃至20の製造)
高分子化合物Aの代わりに高分子化合物B乃至Tを用いる以外、実施例1と同様にしてトナー2乃至20を製造した。
【0147】
(実施例21:トナー21の製造)
C.I.Pigment Blue 15:3の代わりにC.I.Pigment Red 122を5.0部用いる以外、実施例1と同様にしてトナー21を製造した。
【0148】
(実施例22:トナー22の製造)
C.I.Pigment Blue 15:3の代わりにC.I.Pigment Yellow 93を5.0部用いる以外、実施例1と同様にしてトナー22を製造した。
【0149】
(実施例23:トナー23の製造)
C.I.Pigment Blue 15:3の代わりにカーボンブラック(DBP吸油量110ml/100g)を5.0部用いる以外、実施例1と同様にしてトナー23を製造した。
【0150】
(比較例1:トナー24の製造)
高分子化合物Aを用いないこと以外、実施例1と同様にして比較用のトナー24を製造した。
【0151】
(比較例2:トナー25の製造)
高分子化合物Aの代わりにサリチル酸アルミニウム錯体を用いること以外、実施例1と同様にして比較用のトナー25を製造した。
【0152】
(比較例3:トナー26の製造)
高分子化合物Aを用いないこと以外、実施例21と同様にして比較用のトナー26を製造した。
【0153】
(比較例4:トナー27の製造)
高分子化合物Aの代わりにサリチル酸アルミニウム錯体を用いること以外、実施例21と同様にして比較用のトナー27を製造した。
【0154】
(比較例5:トナー28の製造)
高分子化合物Aを用いないこと以外、実施例22と同様にして比較用のトナー28を製造した。
【0155】
(比較例6:トナー29の製造)
高分子化合物Aの代わりにサリチル酸アルミニウム錯体を用いること以外、実施例22と同様にして比較用のトナー29を製造した。
【0156】
(比較例7:トナー30の製造)
高分子化合物Aを用いないこと以外、実施例23と同様にして比較用のトナー30を製造した。
【0157】
(比較例8:トナー31の製造)
高分子化合物Aの代わりにサリチル酸アルミニウム錯体を用いること以外、実施例23と同様にして比較用のトナー31を製造した。
【0158】
上記のように製造したトナーの粒度分布、および帯電性評価の結果を表3に示す。
【0159】
【表3】

【0160】
表3より、本発明の高分子化合物を用いた実施例1〜23のトナーでは比較例1〜8のトナーに比べ高い帯電量と、迅速な帯電の立ち上がりが得られることがわかった。
【符号の説明】
【0161】
1 吸引機、2 測定容器、3 導電性スクリーン、4 フタ、5 真空計、6 風量調節弁、7 吸引口、8 コンデンサー、9 電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一般式(1)で表される単量体単位と、ホウ素原子、ケイ素原子、2価以上の金属原子の中から選ばれる配位元素および配位子から構成されるユニットを部分構造として含む高分子化合物。
【化1】

[一般式(1)中、R1は水素原子、アルキル基を表す。Aは一般式(2)に示される構造との結合部位を表す。]
【化2】

[一般式(2)中、R2乃至R5は水素原子、炭素数1から4のアルキル基、ハロゲン原子を表し、少なくとも一つが一般式(1)中のAと結合を形成する。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される単量体単位と、一般式(3)で表される単量体単位のうち少なくとも一種類の単量体単位との共重合体からなる請求項1に記載の高分子化合物。
【化3】

[一般式(3)中、R6は水素原子、アルキル基を表す。R7はフェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基を表す。]
【請求項3】
前記高分子化合物において、配位元素がホウ素、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウム、クロム、鉄である請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記高分子化合物において、配位子が酸素原子を一つ以上有する有機配位子である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記高分子化合物において、一般式(3)で表されるユニットがスチレン誘導体単位および/またはアクリル酸エステル誘導体単位である請求項2乃至4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記高分子化合物において、配位元素がアルミニウム、鉄である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
前記高分子化合物において、配位子がアセチルアセトン誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドロキシナフトエ酸誘導体、ベンジル酸誘導体である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
前記高分子化合物において、重量平均分子量が3000乃至100000である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に表される高分子化合物の少なくとも一種を含有することを特徴とする電荷制御剤。
【請求項10】
少なくとも、結着樹脂、着色剤およびワックス成分を含有するトナー粒子を有するトナーであって、請求項9に記載の電荷制御剤を少なくとも一種含有することを特徴とするトナー。
【請求項11】
前記トナー粒子が水系媒体中で製造されたものであることを特徴とする請求項10に記載のトナー。
【請求項12】
前記トナー粒子が、少なくとも重合性単量体、着色剤、およびワックス成分を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散し、重合性単量体組成物の粒子を造粒後、該粒子中の重合性単量体を重合させて得られることを特徴とする請求項10又は11に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−62381(P2012−62381A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206507(P2010−206507)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】