説明

高分子化合物、これを含む薄膜及びインク組成物

【課題】高い電荷の移動度が得られる高分子化合物を提供すること。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。


[Ar及びArは、芳香族炭化水素環、複素環、又は芳香族炭化水素環と複素環との縮合環である。R、R、R及びRは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、これを含む薄膜及びインク組成物、この薄膜を備える有機トランジスタ、並びにこの有機トランジスタを備える面状光源及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタは、低コストであり、また柔軟で折り曲げ可能である等の特性を有するため、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ等の用途に好適であり、近年、注目されている。
【0003】
有機トランジスタは、有機物により構成される電荷(ホール及び電子を意味し、以下、同様である。)輸送性を有する層を備えているが、この有機物としては、主として有機半導体材料が用いられる。このような有機半導体材料として、溶媒に溶解させた状態で塗布法により層(即ち、有機半導体層であり、一般的に活性層とも呼ばれる。)を形成できる高分子化合物が検討されており、例えば、チオフェン骨格のみを有する高分子化合物が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Organic Electronics 6(2005)p.142〜146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機トランジスタの特性は、有機半導体層における電荷の移動度に主に依存し、この電荷の移動度が高いほど有機トランジスタの電界効果移動度が向上し、特性の優れたものとなる。近年では、有機トランジスタの用途も多様化しており、従来にも増して高い電荷の移動度が得られることが求められている。しかしながら、上述したような従来の高分子化合物を用いた場合は、近年求められているような高い移動度を十分に得ることは困難な傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高い電荷の移動度が得られる高分子化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、この高分子化合物を含む薄膜及びインク組成物、この薄膜を備える有機トランジスタ、並びにこの有機トランジスタを備える面状光源及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を提供する。
【化1】


[式中、Ar及びArは、それぞれ同一又は異なり、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素環、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環と置換基を有していてもよい複素環との縮合環である。R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0008】
上記本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位を有していることで、有機半導体層として適用した場合に高い電荷の移動度を発揮することができる。その要因は必ずしも明らかではないものの、芳香族性を有する環が複数縮環しており、しかもこの縮環した構造の対称性が高く、高分子化合物の主鎖同士が重なり易い(パッキングし易い)ことから、高い共役性が得られることによると考えられる。また、本発明の高分子化合物は、上記の特定の繰り返し単位を有することから、溶媒への溶解性が高い傾向にあり、溶液の状態として塗布法により有機半導体層を形成することも比較的容易である。
【0009】
上記本発明の高分子化合物は、式(1)のAr及びArの少なくとも一方が、5員の複素環であることが好ましい。これにより、本発明の高分子化合物を有機半導体層に使用した場合に、高い電荷の移動度を発揮することができる。特に、繰り返し単位の両端、すなわち、繰り返し単位間の炭素−炭素結合に関与する部分が複素環であると、更に高い電荷の移動度が得られる傾向にある。
【0010】
式(1)で表される繰り返し単位は、式(2)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位及び式(4)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位であると好適である。式(1)で表される繰り返し単位としてこれらの繰り返し単位を有することで、更に高い電荷の移動度が得られるようになる。
【化2】


[式(2)におけるX21及びX22、式(3)におけるX31及びX32、並びに式(4)におけるX41及びX42は、それぞれ同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、式(2)におけるR23、R24、R25、R26、R27及びR28、式(3)におけるR33、R34、R35、R36、R37及びR38、式(4)におけるR43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0011】
式(2)〜(4)で表される繰り返し単位においては、X21及びX22、X31及びX32、並びに式(4)におけるX41及びX42が、硫黄原子、セレン原子又は酸素原子であると好ましく、硫黄原子又は酸素原子であるとより好ましく、硫黄原子であると特に好ましい。このような構造を有する高分子化合物によれば、より高い電荷の移動度を得ることができる。
【0012】
また、式(2)におけるR23とR26との組み合わせ、R24とR27との組み合わせ、及びR25とR28との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであり、式(3)におけるR33とR36との組み合わせ、R34とR37との組み合わせ、及びR35とR38との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであり、並びに式(4)におけるR44とR47との組み合わせ、及びR45とR48との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであると好ましい。このように、特定の基同士を同じ基とすることによって、高分子化合物はより対称性の高い繰り返し単位を有し、パッキングし易くなるため、一層高い電荷の移動度が得られるようになる。
【0013】
より好適な構造としては、式(2)におけるR23、R24、R25、R26、R27及びR28、上記式(3)におけるR33、R34、R35、R36、R37及びR38、並びに上記式(4)におけるR43、R44、R45、R46、R47及びR48が、水素原子である構造が挙げられる。これによって、一層高い電荷の移動度が得られるようになる。
【0014】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位に加えて、式(5)で表される繰り返し単位を更に有していると好ましい。このような繰り返し単位を更に有することで、さらに優れた電荷の移動度を得ることが可能となる。
【化3】


[式中、Yは、アリーレン基、2価の複素環基、金属錯体構造を有する2価の基又はエチニレン基を示し、これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。なお、Yが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0015】
式(5)で表される繰り返し単位におけるYは、炭素数4〜12の5員の2価の複素環基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は、多環の2価の複素基であると好ましい。こうすることで、一層優れた電荷の移動度が得られるようになる。
【0016】
また、優れた電荷の移動度が得られるので、式(5)で表される繰り返し単位におけるYは、式(6)で表される基であっても好ましい。
【化4】


[式中、Tは、置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、nは、2〜8の整数を示す。複数存在するTは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0017】
さらに、同様に優れた電荷の移動度が得られるので、式(5)で表される繰り返し単位におけるYは、式(7)で表される基であっても好適である。
【化5】


[式中、Ar及びArは、それぞれ同一又は異なり、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素環、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環と置換基を有していてもよい複素環との縮合環である。R71及びR72は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0018】
式(5)で表される繰り返し単位は、少なくとも1種の電子受容性を有する芳香族基(以下、「電子受容性基」と言う。)を含むと好適である。このような電子受容性基と、式(1)中に含まれる電子供与性基とを組み合わせて含むことで、高分子化合物は、一層優れた電荷の移動度が得られ易いものとなる。
【0019】
また、この場合、式(1)で表される繰り返し単位が有している最高被占軌道のエネルギーレベルの値のうちの最も低い値と、上記の電子受容性基が有している最低空分子軌道のエネルギーレベルの値のうちの最も高い値との差が、4.4eV以下であると、特に優れた電荷の移動度が得られる傾向にある。
【0020】
本発明はまた、上記本発明の高分子化合物を含む薄膜を提供する。また、本発明は、かかる薄膜からなる有機半導体層を備える有機トランジスタを提供する。本発明の薄膜は、上記本発明の高分子化合物を含むことから、高い電荷の移動度を発揮することができる。
したがって、このような薄膜からなる有機半導体層を備える本発明の有機トランジスタは、有機半導体層の電荷の移動度が高いため、高い電界効果移動度が得られるものとなる。
【0021】
また、本発明は、本発明の高分子化合物と、溶媒とを含有するインク組成物を提供する。このようなインク組成物は、高分子化合物が均一に溶媒に分散又は溶解したものとなるため、塗布法により有機半導体層等を形成するのに有効である。
【0022】
さらに、本発明は、上記本発明の有機トランジスタを備える面状光源、及び、上記本発明の有機トランジスタを備える表示装置を提供する。これらの面状光源及び表示装置は、優れた電界効果移動度が得られる本発明の有機トランジスタを備えることから、優れた特性を発揮することができる。
【0023】
また、本発明は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に設けられる有機半導体層とを有し、有機半導体層が、電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含み、電子供与性化合物及び電子受容性化合物の少なくとも一方が、上記本発明の高分子化合物である光電変換素子、並びに、かかる光電変換素子を含む太陽電池モジュール及びイメージセンサーを提供する。これらも、有機半導体層が高い電荷の移動度を有することから、優れた特性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0024】
上述した特定の構造を有する本発明の高分子化合物は、有機半導体層に用いた場合に、高い電荷の移動度を得ることができるほか、このような有機半導体層の形成が容易なものでもある。そして、本発明によれば、かかる高分子化合物を含み、薄膜の形成に有利なインク組成物、及びこのようなインク組成物によって好適に得られ、高い電荷の移動度を有する薄膜を提供することができる。
【0025】
また、本発明は、本発明の高分子化合物を含む薄膜からなる有機半導体層を備えており、優れた電界効果移動度を得ることができる有機トランジスタや、この有機トランジスタを備え、高い特性を有する面状光源及び表示装置を提供することができる。このような本発明の有機トランジスタは、具体的には、液晶ディスプレイや電子ペーパーの駆動回路、照明用としての曲面状や平面状の光源のスイッチ回路、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の駆動回路にも有用である。
【0026】
さらに、本発明の高分子化合物は、光電変換素子の有機半導体層の材料としても使用でき、そのような有機半導体層を備える光電変換素子は、太陽電池モジュールやイメージセンサーとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図2】第2実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図3】第3実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図4】第4実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図5】第5実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図6】第6実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図7】第7実施形態に係る有機トランジスタの模式断面図である。
【図8】実施形態に係る面状光源の模式断面図である。
【図9】実施例で作製した有機トランジスタの模式断面図である。
【図10】実施形態に係る光電変換素子の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0029】
まず、本明細書において、「繰り返し単位」とは、高分子化合物の骨格を形成しているモノマー単位を意味し、高分子化合物中に少なくとも1個存在する構造単位である。また、「n価の複素環基」(nは1又は2である)とは、複素環式化合物(特には、芳香族性をもつ複素環式化合物)からn個の水素原子を除いてなり、その部分が他の原子との結合を形成している基を意味する。そして、「複素環式化合物」とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子、硼素原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。
【0030】
[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、上記の式(1)で表される繰り返し単位を有するものである。
【0031】
この高分子化合物において、式(1)のAr及びArの少なくとも一方は、複素環、特に5員の複素環であることが好ましい。特に、式(1)で表される繰り返し単位の両端部分、すなわち、式(1)で表される繰り返し単位の、他の繰り返し単位との炭素−炭素結合に関与する部分に、5員の複素環を有していると、高い電荷の移動度が得られる。
【0032】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位として、上記の式(2)、(3)及び(4)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を有すると好ましい。この場合、高分子化合物は、繰り返し単位として式(2)〜(4)のうちの1種類だけを有する単独重合体(即ち、ホモポリマー)であってもよく、繰り返し単位として、式(2)〜(4)のうちの複数種類、或いは式(2)〜(4)のうちの1種類とそれら以外の種類を組み合わせて有する共重合体であってもよい。
【0033】
これらの式(2)〜(4)が有している好適な基や原子は以下の通りである。
【0034】
まず、式(2)におけるX21及びX22、式(3)におけるX31及びX32、並びに式(4)におけるX41及びX42は、それぞれ同一又は異なり、カルコゲン原子である。
【0035】
カルコゲン原子とは、周期表第16族に属する元素であり、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子及びポロニウム原子が挙げられる。高い電荷の移動度が得られるので、カルコゲン原子としては、硫黄原子、セレン原子及び酸素原子が好ましく、環境への負荷を考慮すると、硫黄原子及び酸素原子がより好ましく、硫黄原子が特に好ましい。
【0036】
式(2)におけるR23、R24、R25、R26、R27及びR28(以下、「R23〜R28」のように表記する。)、式(3)におけるR33〜R38、並びに式(4)におけるR43〜R48は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。
【0037】
上述した基のうち、アルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜36であり、より好ましくは6〜30であり、更に好ましくは8〜24である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサドデシル基、オクタドデシル基トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0038】
なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサドデシル基、オクタドデシル基が好ましい。
【0039】
アルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜36であり、より好ましくは6〜30である。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0040】
なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基が好ましい。
【0041】
アルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が好ましくは1〜36であり、より好ましくは6〜30である。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、テトラデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基、オクタデシルチオ基、トリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0042】
なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ウンデシルチオ基、ドデシルチオ基、テトラデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基、オクタデシルチオ基が好ましい。
【0043】
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環や縮合環の2個以上が直接又はビニレン基等を介して結合したものを含む。アリール基は、炭素数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜48であり、更に好ましくは6〜20であり、特に好ましくは6〜10である。なお、この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0044】
アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニレニル基、2−ビフェニレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基、6−クリセニル基、1−コロネニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−(アントラン−9−イル)フェニル基、[1,1’]ビナフタレン−4−イル基、10−フェニルアントラセン−9−イル基、[9,9’]ビアントラセン−10−イル基が挙げられる。これらの基における水素原子は、さらにアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アシル基、N,N−ジアルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、塩素原子、フッ素原子等で置換されていてもよい。
【0045】
アリールオキシ基は、炭素数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは7〜48である。アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、C〜C18アルコキシフェノキシ基(「C〜C18アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数1〜18であることを示し、以下、同様である)、C〜C18アルキルフェノキシ基(「C〜C18アルキル」は、アルキル部分の炭素数1〜18であることを示し、以下、同様である)、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、C〜C18アルコキシフェノキシ基、C〜C18アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0046】
〜C18アルコキシフェノキシ基としては、具体的には、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基、プロピルオキシフェノキシ基、イソプロピルオキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、イソブトキシフェノキシ基、tert−ブトキシフェノキシ基、ペンチルオキシフェノキシ基、ヘキシルオキシフェノキシ基、シクロヘキシルオキシフェノキシ基、ヘプチルオキシフェノキシ基、オクチルオキシフェノキシ基、2−エチルヘキシルオキシフェノキシ基、ノニルオキシフェノキシ基、デシルオキシフェノキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシフェノキシ基、ウンデシルオキシフェノキシ基、ドデシルオキシフェノキシ基、テトラデシルオキシフェノキシ基、ヘキサデシルオキシフェノキシ基、オクタデシルオキシフェノキシ基が例示される。
【0047】
また、C〜C18アルキルフェノキシ基としては、具体的には、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、1,3,5−トリメチルフェノキシ基、メチルエチルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、ブチルフェノキシ基、イソブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、ペンチルフェノキシ基、イソアミルフェノキシ基、ヘキシルフェノキシ基、ヘプチルフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、ノニルフェノキシ基、デシルフェノキシ基、ウンデシルフェノキシ基、ドデシルフェノキシ基、テトラデシルフェノキシ基、ヘキサデシルフェノキシ基、オクタデシルフェノキシ基が例示される。
【0048】
アリールチオ基は、炭素数が好ましくは3〜60である。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C〜C18アルコキシフェニルチオ基、C〜C18アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、C〜C18アルコキシフェニルチオ基、C〜C18アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0049】
アリールアルキル基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは7〜48である。アリールアルキル基の例としては、フェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキル基、1−ナフチル−C〜C18アルキル基、2−ナフチル−C〜C18アルキル基が挙げられる。なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキル基が好ましい。
【0050】
アリールアルコキシ基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは炭素数7〜48である。アリールアルコキシ基の例としては、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基等のフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C18アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C18アルコキシ基が挙げられる。なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルコキシ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルコキシ基が好ましい。
【0051】
アリールアルキルチオ基は、炭素数が好ましくは7〜60であり、より好ましくは炭素数7〜48である。アリールアルキルチオ基の例としては、フェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C18アルキルチオ基、2−ナフチル−C〜C18アルキルチオ基が挙げられる。なかでも、高分子化合物の有機溶媒への溶解性と耐熱性とのバランスが良好になるので、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルチオ基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルチオ基が好ましい。
【0052】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。置換シリル基の炭素数は、好ましくは1〜60であり、より好ましくは炭素数3〜48である。なお、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
【0053】
置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピリシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルシリルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチルジメチルシリル基、ウンデシルジメチルシリル基、ドデシルジメチルシリル基、テトラデシルジメチルシリル基、ヘキサデシルジメチルシリル基、オクタデシルジメチルシリル基、フェニル−C〜C18アルキルシリル基、C〜C18アルコキシフェニル−C〜C18アルキルシリル基、C〜C18アルキルフェニル−C〜C18アルキルシリル基、1−ナフチル−C〜C18アルキルシリル基、2−ナフチル−C〜C18アルキルシリル基、フェニル−C〜C18アルキルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が例示される。
【0054】
置換のカルボキシル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられ、炭素数は好ましくは2〜60であり、より好ましくは炭素数2〜48である。置換のカルボキシル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ウンデシルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、テトラデシルオキシカルボニル基、ヘキサデシルオキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基が挙げられる。なお、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基は、置換基を有していてもよい。また置換のカルボキシル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0055】
1価の複素環基は、炭素数が好ましくは4〜60であり、より好ましくは4〜20である。なお、1価の複素環基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。1価の複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基が例示される。なかでも、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピリミジル基、トリアジニル基が好ましく、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基がより好ましい。1価の複素環基は、アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0056】
高分子化合物の主鎖のパッキングを良くして、より高い電荷の移動度が得られるので、式(1)〜(4)における縮環構造が有している置換基は、各繰り返し単位が、任意の1つの軸に対して線対称であるか、又は重心に対して点対称の構造となるように置換していると好適である。
【0057】
このような観点からは、式(2)におけるR23とR26との組み合わせ、R24とR27との組み合わせ、及びR25とR28との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであり、式(3)におけるR33とR36との組み合わせ、R34とR37との組み合わせ、及びR35とR38との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであり、式(4)におけるR44とR47との組み合わせ、及びR45とR48との組み合わせが、それぞれ互いに同じ基同士の組み合わせであると好ましい。ここで、「互いに同じ基同士の組み合わせ」とは、例えばアルキル基同士、アルコキシ基同士のように、同じ種類の基であることを表す。同じ基同士の組み合わせは、さらに、鎖長や分岐等、置換基の構造が同一であると、高分子化合物のパッキングが良くなるため、好ましい。
【0058】
さらに、高分子化合物の主鎖のパッキングがさらに向上することにより、主鎖内の平面性が向上するので、式(2)におけるR23〜R28、式(3)におけるR33〜R38、式(4)におけるR43〜R48は、いずれも水素原子であると好ましい。
【0059】
これらの観点から、式(2)、(3)及び(4)で表される繰り返し単位は、それぞれ、式(2a)、(3a)及び(4a)で表される繰り返し単位であると好適である。なお、式(1a)、(2a)及び(4a)中のX21、X22、X31、X32、X41及びX42は、上記式(2)、(3)及び(4)中の同一符号で示される基と同義である。
【化6】

【0060】
高分子化合物が共重合体である場合、式(1)で表される繰り返し単位(好ましくは式(2)〜(4)のうちの少なくとも1種の繰り返し単位)と組み合わされる好適な繰り返し単位としては、式(5)で表される繰り返し単位が挙げられる。このような繰り返し単位を更に有することで、より高い電荷の移動度が得られ易くなる傾向にある。
【化7】

【0061】
式(5)中、Yは、アリーレン基、2価の複素環基、金属錯体構造を有する2価の基、又はエチニレン基(−C≡C−で表される基)を表し、これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0062】
また、Yは、好ましくは、式(5)で表される繰り返し単位(複数存在する場合には、複数のYからなる構成連鎖)が、式(1)で表される繰り返し単位とともに共重合体を形成する際に、高分子化合物の主鎖となる骨格において、炭素同士の結合や炭素とヘテロ原子との結合により、多重結合と単結合とが交互に繰り返して連なったπ共役系が形成されるように選択される基である。このようなπ共役系としては、例えば、下記の例示式(E1)中の点線内で示される構造等が挙げられる。
【化8】

【0063】
Yで表される基のうち、アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いてなる原子団であり、独立したベンゼン環や縮合環を持つものを含む。アリーレン基は、炭素数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜48であり、更に好ましくは6〜30であり、特に好ましくは6〜18である。
【0064】
アリーレン基としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等の非置換若しくは置換のフェニレン基;1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基等の非置換若しくは置換のナフタレンジイル基;1,4−アントラセンジイル基、1,5−アントラセンジイル基、2,6−アントラセンジイル基、9,10−アントラセンジイル基等の非置換若しくは置換のアントラセンジイル基;2,7−フェナントレンジイル基等の非置換若しくは置換のフェナントレンジイル基;1,7−ナフタセンジイル基、2,8−ナフタセンジイル基、5,12−ナフタセンジイル基等の非置換若しくは置換のナフタセンジイル基;2,7−フルオレンジイル基、3,6−フルオレンジイル基等の非置換若しくは置換のフルオレンジイル基;1,6−ピレンジイル基、1,8−ピレンジイル基、2,7−ピレンジイル基、4,9−ピレンジイル基等の非置換若しくは置換のピレンジイル基;3,9−ペリレンジイル基、3,10−ペリレンジイル基等の非置換若しくは置換のペリレンジイル基が挙げられる。
【0065】
アリーレン基としては、上述したなかでも、非置換若しくは置換のフェニレン基、非置換若しくは置換のフルオレンジイル基が好ましく、非置換若しくは置換のフルオレンジイル基が更に好ましく、置換のフルオレンジイル基が特に好ましい。アリーレン基が好適なものであるほど、高い電荷の移動度が得られるようになる。
【0066】
このようなアリーレン基としては、例えば、式(9a)〜(9f)で表される基が挙げられる。
【0067】
【化9】

【0068】
式(9a)〜(9f)中、R93、R94及びR96は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、ハロゲン原子又は1価の基であり、R95は、ハロゲン原子又は1価の基である。また、uは、0以上の整数である。1価の基としては、式(2)におけるR23〜R28として例示したうちの1価の基と同様のものが挙げられる。なお、上記式で表される構造中、複数のR93、R94又はR95が含まれる場合、同じ符号で示される基同士は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R93、R94、R95及びR96のうちの2種、或いは、同じ符号で表される基同士が、同じ炭素原子又は隣接する炭素原子に結合している場合は、この関係にある基同士は一部で結合して環を形成していてもよい。この場合に形成される環は、単環でも縮合環でもよく、炭化水素環でも複素環でもよい。また、これらの環は、置換基を有していてもよい。形成される環としては、単環の炭化水素環や、ヘテロ原子として酸素原子又は硫黄原子を含む単環の複素環が好ましい。
【0069】
2価の複素環基は、炭素数が、通常、4〜60であり、好ましくは4〜48であり、より好ましくは4〜30であり、更に好ましくは4〜22であり、特に好ましくは4〜12であり、とりわけ好ましくは4である。この炭素数には、置換基の炭素数は含まない。
【0070】
2価の複素環基の例としては、2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換若しくは置換のフランジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換若しくは置換のピリジンジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等の非置換若しくは置換のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等の非置換若しくは置換のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等の非置換若しくは置換のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等の非置換若しくは置換のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等の非置換若しくは置換のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等の非置換若しくは置換のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等の非置換若しくは置換のジベンゾシロールジイル基が挙げられる。
【0071】
なかでも、2価の複素環基としては、好ましくは2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等の非置換若しくは置換のフランジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等の非置換若しくは置換のピリジンジイル基;2,6−キノリンジイル基等の非置換若しくは置換のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基であり、さらに好ましくは2,5−チオフェンジイル基等の非置換若しくは置換のチオフェンジイル基である。
【0072】
このような2価の複素環基としては、例えば、式(11a)〜(11p)で表される基が挙げられる。
【0073】
【化10】

【0074】
【化11】

【0075】
式(11a)〜(11p)中、R115、R116、R117、R118及びvは、それぞれ、上記式(9a)〜(9f)におけるR93、R94、R95、R96及びuと同義である。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、ケイ素原子等のヘテロ原子である。
【0076】
また、金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子と中心金属とを有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いてなる残りの原子団から構成される基である。金属錯体としては、低分子の蛍光材料、燐光材料として公知の金属錯体、三重項発光錯体等が挙げられる。金属錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウムが挙げられる。
【0077】
有機配位子の炭素数は、好ましくは4〜60である。有機配位子の例としては、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾール及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾール及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体等が挙げられる。
【0078】
このような金属錯体構造を有する2価の基としては、例えば、式(100)〜(106)で表される基が挙げられる。
【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
式(100)〜(106)中のRは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基又はシアノ基を表す。また、これらの基が有している炭素原子は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子と置き換えられていてもよく、さらに水素原子はフッ素原子に置換されていてもよい。さらに、複数存在するRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
なかでも、式(5)で表される繰り返し単位におけるYは、式(6)で表される基であると特に好ましい。このような繰り返し単位を有することで、高分子化合物は、より高い電荷の移動度を発揮し得るものとなる。
【化14】


[式中、Tは置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、nは2〜8の整数を表す。複数存在するTは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0083】
式(6)で表される繰り返し単位は、式(6a)で表される繰り返し単位であるとさらに好ましい。このような繰り返し単位を有することで、高分子化合物は、さらに高い電荷の移動度を発揮し得るものとなる。
【化15】


[式中、R61、R62、R63及びR64は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0084】
式(6a)中、R61〜R64で表される基は、上述したR23〜R28で表される基と同様であるが、アルキル基であることが好ましい。
【0085】
また、高分子化合物の溶解性が向上するので、式(5)におけるYは、式(7)で表される基であっても好ましい。
【化16】


[式中、Ar及びArは、それぞれ同一又は異なり、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素環、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環と置換基を有していてもよい複素環との縮合環である。R71及びR72は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0086】
式(7)で表される基は、式(7a)で表される基であるとさらに好ましい。
【化17】


[式中、R73及びR74は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【0087】
式(7)、(7a)中、R71〜R74で表される基は、上述したR23〜R28で表される基と同様である。また、Ar及びArは、置換基を有していてもよいベンゼン環であることが好ましい。
【0088】
高分子化合物は、式(5)で表される繰り返し単位として、式中のYで表される基がそれぞれ異なるものを複数種類有していてもよい。例えば、高い電荷の移動度を得るとともに、優れた溶解性が得られるので、式(5)で表される繰り返し単位として、非置換又は置換のビチオフェンジイル基(式(6)で表される基)と、式(7)で表される基とを組み合わせて有していてもよい。
【0089】
以上説明したように、本発明の高分子化合物は、式(1)(好ましくは式(2)〜(4))で表される繰り返し単位を有する。そして、共重合体においては、式(1)で表される繰り返し単位と組み合わせる繰り返し単位として、好適な場合、式(5)で表される繰り返し単位を有している。
【0090】
なお、電荷の移動度が向上するので、式(5)で表される繰り返し単位としては、少なくとも1種の電子受容性基を含むことが好ましく、Yの少なくとも1種が電子受容性基であることがより好ましい。ここで、所定の基における電子受容性は、最低空分子軌道(LUMO)で見積もられ、このLUMOのエネルギーレベルの値は、量子化学計算Gaussianにより算出される。本明細書においては、計算方法として密度汎関数法を用い、密度汎関数としてB3LYP、基底関数として3−21G、使用プログラムをGaussian09 Rev.A02として算出したLUMOが−1.4eV以下である場合を、電子受容性という。
【0091】
また、高分子化合物においては、式(1)で表される繰り返し単位の量子化学計算Gaussianにより算出される最高被占分子軌道(HOMO)のエネルギーレベルの値と、式(5)における電子受容性基のLUMOのエネルギーレベルの値の差が、4.4eV以下であると好ましい。なお、高分子化合物に式(1)で表される繰り返し単位や電子受容性基がそれぞれ複数種類含まれる場合は、上記で算出したHOMOのエネルギーレベルの値のうちの最も低い値と、LUMOのエネルギーレベルの値のうちの最も高い値との差が4.4eV以下となるようにすることが好ましい。
【0092】
このような電子受容性基としては、例えば、式(12a)〜(12j)で表される基が挙げられる。式(12a)〜(12j)中、R123、R124及びR126は、上記の式(9a)〜(9f)におけるR93、R94、R96とそれぞれ同義である。
【化18】

【0093】
移動度が向上するので、特に、式(5)で表される繰り返し単位におけるYの少なくとも1つが、式(8)で表される電子受容性基であると好ましい。
【化19】

【0094】
式(8)中、X81は、カルコゲン原子、−N(R83)−又は−CR84=CR85−を表す。R81及びR82は、それぞれ同一又は異なり、水素原子又は置換基を表す。R81及びR82が置換基である場合、炭素数1〜30の基が好ましい。このような置換基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、フェニル、ナフチル等のアリール基等が挙げられる。
【0095】
また、R81及びR82は、それぞれ互いに連結して環状構造を形成してもよい。R81及びR82が連結して環状構造を構成した式(8)で表される繰り返し単位の例としては、以下のものが挙げられる。
【化20】

【0096】
式中、R86及びR87は、それぞれ同一又は異なり、水素原子又は置換基を表す。R86及びR87で表される置換基としては、前述のR81及びR82で表される置換基と同様の基が挙げられる。また、X81は、好ましくは硫黄原子である。
【0097】
式(8)で表される繰り返し単位としては、式(8a)で表される繰り返し単位が特に好ましい。この場合、かかる繰り返し単位における上記の量子化学計算Gaussianにより算出されるLUMOのエネルギーレベルの値は、−2.32eVとなる。
【化21】

【0098】
以下、好適な高分子化合物の例を構造式で示す。式(130)〜(175)中のnは、繰り返し単位数(重合度)を示しており、4〜3000であると好ましく、6〜850であるとより好ましい。また、後述する高分子化合物P1、P2、P3、P9において、n=4〜3000(好ましくは6〜850)であるものも好適な高分子化合物である。
【0099】
【化22】

【0100】
【化23】

【0101】
【化24】

【0102】
【化25】

【0103】
【化26】

【0104】
【化27】

【0105】
【化28】

【0106】
【化29】

【0107】
【化30】

【0108】
高分子化合物が共重合体である場合、良好な電荷注入性や溶解性が得られるので、全繰り返し単位の合計モル数に対し、式(1)(好ましくは式(2)〜(4))で表される繰り返し単位の合計モル数は、20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましく、40〜60%であることがさらに好ましい。
【0109】
また、高分子化合物においては、良好な主鎖の配向性が得られるので、式(1)(好ましくは式(2)〜(4))で表される繰り返し単位の合計のモル数に対して、これら以外の繰り返し単位の合計モル数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.05%以下であることが特に好ましい。主鎖の配向性が良好であると、高いパッキングが可能となることから、より優れた電荷の移動度が得られる。
【0110】
さらに、高分子化合物が共重合体である場合、どのような共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。ただし、良好な電荷注入性、電荷の移動特性、主鎖のパッキング及び溶解性が得られるので、高分子化合物の構造中、式(1)(好ましくは式(2)〜(4))で示される繰り返し単位と、式(5)で示される繰り返し単位とが交互に結合した構造を含むことが好ましい。
【0111】
なかでも、上記特性が更に良好に得られるので、高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位(好ましくは、式(2)〜(4)で表される繰り返し単位のうちのいずれか1種)と、式(5)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造であると好ましく、式(2)及び(3)で表される繰り返し単位のいずれかと、式(5)で表される繰り返し単位とが交互に結合した構造であるとより好ましい。
【0112】
そして、このように「交互に結合した構造」による優れた効果を十分に得るためには、この「交互に結合した構造」を構成している繰り返し単位の合計が、高分子化合物の全ての繰り返し単位に対して、モル基準で90%以上であると好ましく、99%以上であるとより好ましく、99.5%以上であるとさらに好ましく、99.9%以上であると特に好ましい。
【0113】
また、高分子化合物は、複数の繰り返し単位を有する化合物であって、そのうちの少なくとも1つが、式(1)(好ましくは式(2)〜(4)のいずれか)で表される繰り返し単位であるものである。この高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、1×10〜1×10であると好ましく、1×10〜1×10であるとより好ましい。また、この高分子化合物は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1×10〜1×10であると好ましい。特に良好な成膜性が得られ、かつ、素子の作製に用いた場合に高い移動度が得られるので、この重量平均分子量は、1×10〜5×10であるとより好ましく、1×10〜5×10であるとさらに好ましく、1×10〜5×10であると一層好ましい。
【0114】
また、高分子化合物の末端基に、後述するような高分子化合物の製造に用いた重合活性基がそのまま残っていると、高分子化合物を有機トランジスタに用いた場合に電荷の移動度や素子寿命が低下する可能性がある。そのため、末端基は安定な基であると好ましい。
このような末端基としては、主鎖と共役結合しているものが好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は複素環基と結合している構造が挙げられる。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載の置換基等が末端基として例示できる。
【0115】
このような高分子化合物は、そのままでも発光材料、ホール輸送材料又は電子輸送材料等として有用であるが、使用する際には、その他の高分子量の化合物と併用してもよく、例えば、後述するような組成物として用いてもよい。
【0116】
[高分子化合物の製造方法]
次に、上述した高分子化合物の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0117】
高分子化合物は、例えば、式(21)で表される化合物のような、式(1)で表される繰り返し単位に対応する原料化合物を縮合重合させることにより製造することができる。式(1)で表される繰り返し単位が、式(2)、(3)又は(4)で表される繰り返し単位である場合は、それらにそれぞれ対応する原料化合物、式(22)で表される化合物、式(23)で表される化合物、式(24)で表される化合物等を用いることができる。また、高分子化合物を共重合体とする場合は、これらの化合物を、組み合わせるべき繰り返し単位に対応する原料化合物と組み合わせて縮合重合させればよい。例えば、式(5)で表される繰り返し単位を導入する場合は、式(25)で表される原料化合物を併用することが好ましい。
【0118】
【化31】

【0119】
これらの式中、Ar、Ar、R、R、R、R、X21、X22、X31、X32、X41、X42、R23〜R28、R33〜R38、R43〜R48及びnは、上記と同じである。
【0120】
また、Z、Z、Z21、Z22、Z31、Z32、Z41、Z42、Z51及びZ52は、それぞれ同一又は異なる重合活性基である。かかる重合活性基としては、ハロゲン原子、式(a−1)で表されるスルホネート基、メトキシ基、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基(−B(OH)で表される基)、式(a−2)で表される基、式(a−3)で表される基、及び、式(a−4)で表される基が挙げられる。これらの基が分子中に複数存在している場合、同じ符号で示される基同士は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【化32】

【0121】
式(a−1)〜(a−4)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基、Xは、ハロゲン原子を示す。式(1−4)中に複数あるRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Rで表されるアルキル基及びアリール基としては、上述した式(2)におけるR23〜R28等として例示したのと同様のものが挙げられる。また、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0122】
重合活性基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。式(a−1)で表されるスルホネート基としては、例えば、メタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、フェニルスルホネート基、4−メチルフェニルスルホネート基が挙げられる。
【0123】
ホウ酸エステル残基としては、例えば、式(a−5)、(a−6)、(a−7)、(a−8)、(a−9)又は(a−10)で表される基が挙げられる。
【化33】

【0124】
さらに、式(a−4)で表される基としては、例えば、トリメチルスタナニル基、トリエチルスタナニル基、トリブチルスタナニル基が挙げられる。
【0125】
式(21)〜(25)中、重合活性基としては、これらの式で表される原料化合物の合成が簡便であり、かつ、取り扱い易いので、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基、ホウ酸残基であることが好ましい。また、式(21)〜(25)で表される原料化合物としては、あらかじめ合成して単離したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。
【0126】
原料化合物を縮合重合させる方法としては、原料化合物を、必要に応じて適切な触媒や適切な塩基を用いて反応させる方法が挙げられる。触媒としては、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート等のパラジウム錯体、ニッケル[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル、[ビス(1,4−シクロオクダジエン)]ニッケル等のニッケル錯体等の遷移金属錯体が挙げられる。また、必要に応じて、これらの遷移金属錯体に、さらにトリフェニルホスフィン、トリ(tert−ブチルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、ビピリジル等の配位子を組み合わせて触媒とすることもできる。触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。また、触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
触媒を用いる場合、原料化合物のモル数の合計に対して、0.00001〜3モル当量が好ましく、0.00005〜0.5モル当量がより好ましく、0.0001〜0.2モル当量がさらに好ましい。
【0128】
縮合反応を促進する塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。塩基を用いる場合、その量は、原料化合物のモル数の合計に対して、0.5〜20モル当量であると好ましく、1〜10モル当量であるとより好ましい。
【0129】
縮合重合は、溶媒の非存在下で行っても、溶媒の存在下で行ってもよいが、有機溶媒の存在下で行うことが好ましい。
【0130】
有機溶媒としては、原料化合物の種類や反応によって異なるが、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドが使用できる。副反応を抑制することができるので、有機溶媒は、脱酸素処理が施されたものを用いることが望ましい。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
有機溶媒を使用する場合、その使用量は、原料化合物の合計濃度が、0.1〜90重量%となる量であると好ましく、1〜50重量%となる量であるとより好ましく、2〜30重量%となる量であると更に好ましい。
【0132】
また、縮合重合の反応温度は、好ましくは−100℃〜200℃であり、より好ましくは−80℃〜150℃であり、さらに好ましくは0℃〜120℃である。好適な反応時間は、反応温度等の条件によるが、1時間以上であり、より好ましくは2〜500時間である。さらに、縮合重合は、脱水条件下で行うことが望ましい場合がある。例えば、式(21)〜(25)中の重合活性基が式(a−2)で表される基である場合には、脱水条件下で行うことが好ましい。
【0133】
縮合重合としては、例えば、Suzuki反応により重合する方法(ケミカル レビュー(Chem.Rev.),第95巻,2457頁(1995年))、Grignard反応により重合する方法(共立出版、高分子機能材料シリーズ第2巻、高分子の合成と反応(2)、432〜433頁)、山本重合法により重合する方法(プログレッシブ ポリマー サイエンス(Prog.Polym.Sci.),第17巻,1153〜1205頁,1992年)が挙げられる。
【0134】
縮合重合後、公知の後処理を行うことができる。例えば、メタノール等の低級アルコールに縮合重合で得られた反応溶液を加えて析出させた沈殿を濾過し、乾燥する方法が挙げられる。このような後処理によって本発明の高分子化合物が得られるが、高分子化合物の純度が低い場合には、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製すればよい。
【0135】
高分子化合物の製造において、式(21)で表される原料化合物(好ましくは、式(22)〜(24)で表される原料化合物のいずれか)と式(25)で表される原料化合物とを共重合する場合、高分子化合物は、前者の原料化合物からなる繰り返し単位と後者の原料化合物からなる繰り返し単位を交互に有することが好ましいことから、以下のような反応を行うことが好適である。
【0136】
すなわち、式(21)(好ましくは式(22)〜(24))中の重合活性基がハロゲン原子である化合物と、式(25)中の重合活性基がホウ酸残基又はホウ酸エステル残基である化合物との組み合わせ、或いは、式(21)(好ましくは式(22)〜(24))中の重合活性基がホウ酸残基又はホウ酸エステル残基である化合物と、式(25)中の重合活性基がハロゲン原子である化合物との組み合わせを、Suzuki重合を用いて重合させる方法が好ましい。
【0137】
[組成物]
上述した本発明の高分子化合物は、他の成分を組み合わせて含む組成物として、発光材料や電荷輸送材料として用いることもできる。このような組成物としては、例えば、高分子化合物と、ホール輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群より選ばれる少なくとも1種類の材料とを含有するものが挙げられる。好適なホール輸送材料及び電子輸送材料としては、後述する薄膜の説明で例示するものを適用できる。
【0138】
高分子化合物と、ホール輸送材料、電子輸送材料及び発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料との含有比率は、組成物の用途に応じて決めればよいが、発光材料の用途の場合、組成物全体100重量部に対して、高分子化合物が20〜99重量部であると好ましく、40〜95重量部であるとより好ましい。
【0139】
高分子化合物を含有する組成物の、GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、1×10〜1×10であると好ましく、5×10〜1×10であるとより好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1×10〜1×10であると好ましく、良好な成膜性が得られ、かつ、素子の作製に用いた場合に高い効率が得られるので、1×10〜5×10であるとより好ましい。ここで、高分子化合物を含有する組成物の平均分子量とは、この組成物をGPCで分析して求めた値をいう。
【0140】
また、本実施形態の組成物は、後述するように、有機溶媒等の溶媒を含有させた溶液(以下、「インク組成物」という。)とすることもできる。以下、インク組成物の好適な形態について説明する。
【0141】
(インク組成物)
本発明の高分子化合物を含有するインク組成物は、高分子化合物と溶媒とを含有するものである。また、インク組成物は、上述したような高分子化合物を含有する組成物と溶媒とを含有するものであってもよい。このインク組成物は、主に溶液の状態であり、印刷法等により薄膜を形成するのに有用である。インク組成物に含まれる高分子化合物及び溶媒以外の成分としては、ホール輸送材料、電子輸送材料、発光材料、安定剤、増粘剤(粘度を高めるための高分子量の化合物や貧溶媒)、粘度を下げるための低分子量の化合物、界面活性剤(表面張力を下げるためのもの)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0142】
インク組成物は、本発明の高分子化合物の1種類のみを含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、素子の作製に用いたときに特性が損なわれない範囲で、本発明の高分子化合物以外の高分子量の化合物を含んでいてもよい。
【0143】
インク組成物における本発明の高分子化合物の割合は、インク組成物の全量100重量部に対して、1〜99.9重量部であると好ましく、60〜99.5重量部であるとより好ましく、80〜99.0重量部であると更に好ましい。このような割合で高分子化合物を含むことで、塗布法を良好に行うことができるとともに、高分子化合物の優れた特性を良好に発揮し得る薄膜等を形成し易くなる。
【0144】
インク組成物の粘度は、用いる印刷法の種類によって調整すればよいが、例えば、インクジェットプリント法等のインク組成物が吐出装置を経由する方法に適用する場合、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0145】
インク組成物に用いる溶媒は、インク組成物中の固形成分を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0146】
これらのなかでも、高分子化合物等の溶解性、粘度特性、成膜時の均一性が良好になるので、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、テトラリン、アニソール、エトキシベンゼン、シクロヘキサン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、デカリン、安息香酸メチル、シクロヘキサノン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノンが好適である。
【0147】
溶媒としては、成膜性や素子特性が良好になるので、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましく、2〜3種類を組み合わせて用いることがより好ましく、2種類を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0148】
2種類の溶媒を組み合わせる場合、そのうちの1種類の溶媒は25℃において固体状態のものでもよい。良好な成膜性が得られるので、少なくとも1種類の溶媒は、その沸点が180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。また、良好な粘度が得られるので、2種類の溶媒のいずれも、60℃において1重量%以上の芳香族重合体を溶解するものであることが好ましく、特に、2種類の溶媒のうちの1種類の溶媒は、25℃において1重量%以上の芳香族重合体を溶解するものであることが好ましい。
【0149】
さらに、2種類以上の溶媒を組み合わせる場合は、良好な粘度及び成膜性が得られるので、組み合わせた溶媒のうち、沸点が最も高い溶媒が、全溶媒の重量の40〜90重量%であることが好ましく、50〜90重量%であることがより好ましく、65〜85重量%であることが更に好ましい。
【0150】
インク組成物に増粘剤として高分子量の化合物を含有させる場合、この化合物は、本発明の高分子化合物と同じ溶媒に可溶であり、素子を形成した場合の発光や電荷輸送を阻害しないものであることが好ましい。このような増粘剤としては、例えば、高分子量のポリスチレン、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの高分子量の化合物は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が50万以上であることが好ましく、100万以上であることがより好ましい。
【0151】
また、増粘剤としては、インク組成物の成分中の固形分に対する貧溶媒を用いることもできる。このような貧溶媒を少量添加することで、粘度を適度に高めることができる。この目的で貧溶媒を添加する場合は、インク組成物中の固形分が析出しない範囲で、溶媒の種類と添加量を選択すればよい。インク組成物の保存時の安定性も考慮すると、貧溶媒の量は、インク組成物全体100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることが更に好ましい。
【0152】
酸化防止剤は、インク組成物の保存安定性を向上させるためのものである。酸化防止剤としては、本発明の高分子化合物と同じ溶媒に可溶性であり、素子を形成した場合の発光や電荷輸送を阻害しないものであればよく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が例示される。
【0153】
さらに、インク組成物には、水、金属やその塩が、重量基準で1〜1000ppmの範囲で含まれていてもよい。金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、クロム、マンガン、コバルト、白金、イリジウムが挙げられる。その他、インク組成物には、ケイ素、リン、フッ素、塩素、臭素等が、重量基準で1〜1000ppmの範囲で含まれていてもよい。
【0154】
[薄膜]
本発明の高分子化合物を含有する薄膜は、例えば、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜として適用できる。
【0155】
薄膜が発光性薄膜である場合、高い輝度や発光電圧が得られるので、発光の量子収率が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
【0156】
薄膜が導電性薄膜である場合、表面抵抗が1kΩ/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。
導電性薄膜は、ルイス酸、イオン性化合物等がドープされることにより、より高い電気伝導度が得られるようになる。
【0157】
薄膜が有機半導体薄膜である場合、電子移動度又はホール移動度のいずれか大きい方が、10−5cm/Vs以上であることが好ましく、10−3cm/Vs以上であることがより好ましく、10−1cm/Vs以上であることがさらに好ましい。このような有機半導体薄膜を用いて、後述するような有機トランジスタを形成できる。
【0158】
有機半導体薄膜の場合、その厚さは、1nm〜100μmであると好ましく、2nm〜1000nmであるとより好ましく、3nm〜500nmであると更に好ましく、5nm〜200nmであると特に好ましい。
【0159】
有機半導体薄膜は、本発明の高分子化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、2種類以上を組み合わせて含むものであってもよい。有機半導体薄膜の電子輸送性又はホール輸送性を高めるために、高分子化合物以外の電子輸送性又はホール輸送性を有する低分子化合物又は高分子化合物を混合することもできる。
【0160】
ホール輸送材料としては、公知のものが使用でき、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリアリールジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリアリーレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が例示される。
【0161】
また、電子輸送材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が例示される。
【0162】
また、本実施形態の薄膜は、用途によって、当該薄膜で吸収した光により電荷を発生させるために電荷発生材料を含んでいてもよい。電荷発生材料としては、公知のものが使用でき、アゾ化合物及びその誘導体、ジアゾ化合物及びその誘導体、無金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、金属フタロシアニン化合物及びその誘導体、ペリレン化合物及びその誘導体、多環キノン系化合物及びその誘導体、スクアリリウム化合物及びその誘導体、アズレニウム化合物及びその誘導体、チアピリリウム化合物及びその誘導体、C60等のフラーレン類及びその誘導体が例示される。
【0163】
さらに、本実施形態の薄膜は、その他、種々の機能を発現させるために必要な材料を含んでいてもよい。このような材料としては、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、安定性を増すための安定化剤、UV光を吸収するためのUV吸収剤が例示される。
【0164】
また、薄膜は、機械的特性が向上するので、本発明の高分子化合物以外の高分子化合物を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0165】
このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンが例示される。
【0166】
本実施形態の薄膜の製造方法としては、上記本発明の高分子化合物をそのまま用いるか、上述した組成物(例えば、インク組成物)を用いて成膜する方法が挙げられる。例えば、高分子化合物に、必要に応じて電子輸送材料、ホール輸送材料、高分子バインダー等を加えた溶液を用いた成膜による方法である。また、高分子化合物がオリゴマーの状態である場合等は、真空蒸着法により薄膜を形成することもできる。
【0167】
薄膜の形成方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、キャピラリ−コート法、ノズルコート法、ディスペンサー印刷法等が挙げられ、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法、ディスペンサー印刷法が好ましく、フレキソ印刷法、インクジェット法、ディスペンサー印刷法がより好ましい。
【0168】
溶液(例えば、インク組成物)等を用いて成膜する場合、用いる溶媒としては、本発明の高分子化合物のほか、混合する成分(電子輸送材料、ホール輸送材料、高分子バインダー等)を溶解させるものを用いることが好ましい。
【0169】
溶媒としては、上述したインク組成物に用いるものを適用でき、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が例示される。本発明の高分子化合物は、その構造や分子量にもよるが、これらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができることが多い。
【0170】
溶液を用いて薄膜を作製する場合は、この溶液に含まれる本発明の高分子化合物のガラス転移温度が高い傾向にあるため、成膜の過程において100℃以上の温度でベークすることが可能であり、130℃の温度でベークしても素子の作製に用いたときに特性の低下が起こることが少ないため、薄膜の形成が容易である。さらに、高分子化合物の種類によっては、160℃以上の温度でベークすることもできることがある。
【0171】
本発明の高分子化合物を含有する有機半導体薄膜を製造する場合、その製造工程には、高分子化合物を配向させる工程が含まれていてもよい。この工程により高分子化合物を配向させた有機半導体薄膜は、主鎖分子又は側鎖分子が一方向に並ぶので、電荷の移動度が更に高いものとなる。
【0172】
高分子化合物を配向させる方法としては、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。なかでもラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)や引き上げ塗布法が、配向手法として簡便かつ有用で利用しやすく、ラビング法、シェアリング法が好ましい。
【0173】
[有機薄膜素子]
本発明の高分子化合物を含有する薄膜(例えば、有機半導体薄膜)は、電荷の輸送性を有することから、電極から注入された電子若しくはホール、又は光吸収により発生した電荷を輸送制御することができ、有機トランジスタ、太陽電池モジュール、光センサー等種々の有機薄膜素子に用いることができる。なお、本発明の薄膜をこれらの有機薄膜素子に用いる場合は、上述したような配向処理により配向させて用いることが、より高い電子輸送性又はホール輸送性が得られることから好ましい。以下、有機薄膜素子の好適な例について説明する。
【0174】
(有機トランジスタ)
まず、本発明の高分子化合物を含有する有機半導体層を備える有機トランジスタの好適な実施形態について説明する。
【0175】
有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となり上記高分子化合物を含有する有機半導体層、電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を備えるものであり、電界効果型、静電誘導型が例示される。
【0176】
電界効果型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極及びドレイン電極が、有機半導体層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。
【0177】
静電誘導型有機トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
【0178】
図1は第1実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図1に示す有機トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0179】
図2は第2実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図2に示す有機トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2及びドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0180】
図3は第3実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図3に示す有機トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0181】
図4は第4実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図4に示す有機トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下方に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0182】
図5は第5実施形態に係る有機トランジスタ(静電誘導型有機トランジスタ)の模式断面図である。図5に示す有機トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0183】
図6は第6実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図6に示す有機トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下方に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下方に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0184】
図7は第7実施形態に係る有機トランジスタ(電界効果型有機トランジスタ)の模式断面図である。図7に示す有機トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下方に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下方に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下方に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔をもって有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0185】
上述した第1〜第7実施形態に係る有機トランジスタにおいては、有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aは、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2及び/又は有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0186】
上述した有機トランジスタのうち、電界効果型有機トランジスタは、公知の方法、例えば、特開平5−110069号公報に記載の方法により製造することができる。また、静電誘導型有機トランジスタは、公知の方法、例えば、特開2004−006476号公報に記載の方法により製造することができる。
【0187】
基板1は、有機トランジスタとしての特性を阻害しなければよく、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0188】
有機半導体層2は、上述した本発明の高分子化合物を含む薄膜(例えば、有機半導体薄膜)から構成される。この有機半導体層2は、この高分子化合物のみから構成されていてもよく、高分子化合物以外の材料を含んで構成されていてもよい。また、本発明の高分子化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0189】
有機半導体層2は、電子輸送性又はホール輸送性を高めるために、本発明の高分子化合物以外に、電子輸送材料及び/又はホール輸送材料をさらに含有していてもよい。ホール輸送材料及び電子輸送材料としては、上述した薄膜に含有させ得るものを適用できる。また、有機半導体層2は、高い機械的特性を得るために、高分子バインダーを含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、上述した薄膜に含有させ得るものを適用できる。
【0190】
有機半導体層2の厚さは、好ましくは1nm〜100μmであり、より好ましくは2nm〜1000nmであり、さらに好ましくは3nm〜500nmであり、特に好ましくは5nm〜200nmである。
【0191】
有機半導体層2は、上述したような薄膜の形成方法を適用して形成することができる。すなわち、有機トランジスタの製造において、有機半導体層2を形成すべき面(例えば、基板1や絶縁層3)上に、上述した薄膜形成方法により薄膜(有機半導体薄膜)を成膜し、これにより有機半導体層2を形成する。また、有機半導体層2を形成する場合は、薄膜に含まれる高分子化合物を配向させる工程を行うと、電荷の移動度が向上するため好ましい。
【0192】
有機半導体層2に接する絶縁層3としては、電気の絶縁性が高い材料であればよく、公知のものを用いることができる。絶縁層3の構成材料としては、例えば、SiOx、SiNx、Ta、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、有機ガラス、フォトレジストが挙げられる。低電圧化できるので、絶縁層3には誘電率の高い材料を用いることが好ましい。
【0193】
絶縁層3の上に有機半導体層2を形成する場合は、絶縁層3と有機半導体層2の界面特性を改善するため、シランカップリング剤等の表面処理剤で絶縁層3表面を処理して表面改質した後に有機半導体層2を形成することも可能である。
【0194】
電界効果型有機トランジスタの場合、電荷は、一般に絶縁層3と有機半導体層2の界面付近を通過する。したがって、この界面の状態がトランジスタの移動度に大きな影響を与える。そこで、この界面状態を改良して特性を向上させる方法として、シランカップリング剤による界面の制御が知られている(例えば、表面科学,Vol.28.No.5,pp242−248,2007)。
【0195】
シランカップリング剤としては、アルキルクロロシラン類(オクチルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルトリクロロシラン(ODTS)、フェニルエチルトリクロロシラン等)、アルキルアルコキシシラン類、フッ素化アルキルクロロシラン類、フッ素化アルキルアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリルアミン化合物が挙げられる。また、表面処理剤で処理する前には、絶縁層3の表面をオゾンUV、Oプラズマで処理をしておくことも可能である。
【0196】
このような処理によって、絶縁層3として用いられるシリコン酸化膜等の表面エネルギーを制御することができる。また、表面処理により、有機半導体層2を構成している高分子化合物の絶縁層3上での配向性が向上し、これによって高い電荷の移動度が得られる。
【0197】
ゲート電極4としては、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や、錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、ゲート電極4としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いることも可能である。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性質とともに、基板としての性質も併せて有する。このような基板としての性質をも有するゲート電極4を用いる場合には、基板1とゲート電極4とが接している有機トランジスタにおいて、基板1を省略してもよい。例えば、上述した第3、4、7実施形態の有機トランジスタにおいて、ゲート電極4が基板1を兼ねる構成とすることができる。
【0198】
ソース電極5及びドレイン電極6は、低抵抗の材料から構成され、例えば、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム又はモリブデンから構成される。これらの中でも、電荷注入性が向上するので、金、白金が好ましく、それに加えてプロセス容易性が優れるので、金がさらに好ましい。これらの材料は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0199】
以上、本発明の有機トランジスタとして幾つかの例を説明したが、有機トランジスタは上記の実施形態に限定されない。例えば、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間には、上述した本発明の高分子化合物とは異なる化合物からなる層が介在していてもよい。これにより、ソース電極5及びドレイン電極6と、有機半導体層2との間の接触抵抗が低減され、有機トランジスタのキャリア移動度をさらに高めることができる場合がある。
【0200】
このような層としては、上述したような電子又はホール輸送性を有する低分子化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属やこれらの金属と有機化合物との錯体等;ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物等からなる層が挙げられる。
【0201】
また、上述したような有機トランジスタを作製した後には、素子を保護するため、有機トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。これにより、有機トランジスタが大気から遮断され、有機トランジスタの特性の低下を抑制することができる。また、有機トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成する場合、保護膜によって、その形成工程における有機トランジスタへの影響も低減することができる。
【0202】
保護膜を形成する方法としては、有機トランジスタを、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため、有機トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程は、大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中で)行うことが好ましい。
【0203】
(面状光源及び表示装置)
次に、上述した実施形態の有機トランジスタを用いた面状光源及び表示装置について説明する。
【0204】
面状光源及び表示装置は、駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの少なくとも2つの有機トランジスタを備えるものである。本実施形態の面状光源及び表示装置は、このうちの少なくとも1つの有機トランジスタとして、上述した本発明の有機トランジスタを用いたものである。
【0205】
図8は、好適な実施形態に係る面状光源の模式断面図である。図8に示す面状光源200においては、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5及びドレイン電極6と、ソース電極5及びドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2全体を覆うように有機半導体層2上に形成された保護膜11とにより、有機トランジスタTが構成されている。
【0206】
また、面状光源200においては、有機トランジスタT上に、層間絶縁膜12を介して、下部電極(陽極)13、発光素子14及び上部電極(陰極)15が順次積層されており、層間絶縁膜12に設けられたビアホールを通じて下部電極13とドレイン電極6とが電気的に接続されている。また、下部電極13及び発光素子14の周囲にはバンク部16が設けられている。さらに、上部電極15上方には基板18が配置され、上部電極15と基板18との間は封止部材17により封止されている。
【0207】
図8に示した面状光源200において、有機トランジスタTは、駆動トランジスタとして機能する。また、図8に示した面状光源200においては、スイッチングトランジスタは省略されている。
【0208】
本実施形態に係る面状光源200においては、有機トランジスタTに上述した本発明の有機トランジスタが用いられる。それ以外の構成部材については、公知の面状光源における構成部材を用いることができる。なお、上部電極15、封止部材17及び基板18としては、透明なものが用いられる。
【0209】
また、図8に示した面状光源200は、発光素子14に白色発光材料を用いることで面状光源として機能するが、発光素子14に赤色発光材料、青色発光材料及び緑色発光材料を用い、それぞれの発光素子の駆動を制御することで、カラー表示装置とすることができる。
【0210】
面状光源及び表示装置において、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、発光素子を構成する発光層の非発光とすべき部分を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。
【0211】
さらに、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動することもできる。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0212】
(光電変換素子)
本発明の高分子化合物は、光電変換素子用の有機半導体層としても有用である。光電変換素子の基本的形態としては、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、電子供与性化合物(p型の有機半導体)と電子受容性化合物(n型の有機半導体等)との有機組成物から形成されるバルクへテロ型有機半導体層もしくはp/n積層型有機半導体層を有する形態が挙げられる。上述した本発明の高分子化合物は、電子供与性化合物及び電子受容性化合物のうちの少なくとも一方として、これらの有機半導体層中に含まれる。
【0213】
このような構成を有する光電変換素子においては、透明又は半透明の電極から入射した光エネルギーが、電子受容性化合物及び/又は電子供与性化合物で吸収され、電子と正孔がクーロン結合してなる励起子を生成する。これにより生成した励起子が移動して、電子受容性化合物と電子供与性化合物が隣接しているヘテロ接合界面に達すると、界面でのそれぞれのHOMOのエネルギーレベルの値、及び、LUMOのエネルギーレベルの値の違いにより電子と正孔が分離し、独立に動くことができる電荷が発生する。そして、発生したそれぞれの電荷が、それぞれの電極へ移動することにより、外部へ電気エネルギー(電流)として取り出すことができる。上述した本発明の高分子化合物を含む有機半導体層を有する光電変換素子は、高分子化合物の移動度が高いことから、優れた光電変換効率が得られるようになる。
【0214】
図10は、好適な実施形態に係る光電変換素子を示す模式断面図である。図10に示す光電変換素子300は、基板1と、基板1上に形成された陽極7aと、陽極7a上に形成された有機薄膜からなる有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された陰極7bと、を備えるものである。有機半導体層2は、電子供与性化合物と電子受容性化合物とを含み、これらの少なくとも一方が、上述した本発明の高分子化合物である。
【0215】
以下、光電変換素子300を構成する、陽極7a、有機半導体層2及びそれを構成する電子供与性化合物及び電子受容性化合物、陰極7b、及び必要に応じて形成される他の構成要素について詳しく説明する。
【0216】
<基板>
光電変換素子は、通常、基板上に各層が形成された構成を有する。この基板1は、電極を形成でき、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板1の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板1の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0217】
<電極(陽極及び陰極)>
電極(陽極7a及び陰極7b)のうち、少なくとも一方は、透明又は半透明の電極材料により構成される。透明又は半透明の電極材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド(IZO)、NESA等の導電性材料を用いて作製された膜や、金、白金、銀、銅等が用いられる。なかでも、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。
【0218】
電極(陽極7a及び陰極7b)のいずれか一方が透明又は半透明である場合、他方は透明でなくてもよい。そのような電極の材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができる。電極材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又は、1種以上の前記金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。
【0219】
これらの電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。透明又は半透明の電極は、陽極であっても陰極であってもよい。
【0220】
<有機半導体層>
光電変換素子に含まれる有機半導体層は、電子供与性化合物若しくは電子受容性化合物の少なくとも一方として、上述した本発明の高分子化合物を含む。なお、電子供与性化合物及び電子受容性化合物は、これらの化合物のHOMOのエネルギーレベルの値、又は、LUMOのエネルギーレベルの値から相対的に決定されるものである。
【0221】
電子供与性化合物としては、本発明の高分子化合物や、それ以外の低分子化合物や高分子化合物を適用できる。本発明の高分子化合物以外の電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、チオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。電子供与性化合物としては、特に、上述した本発明の高分子化合物が好適である。
【0222】
本発明の高分子化合物以外の電子供与性化合物としては、置換基を有していてもよいポリチオフェン(ポリチオフェン及びその誘導体を含む)、チオフェンの2〜5量体を含む構造又はチオフェンの誘導体の2〜5量体を含む構造を有する高分子化合物、及びチオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物が好ましい。なかでも、ポリチオフェン及びその誘導体がより好ましい。ここで、ポリチオフェン誘導体とは、置換基を有するチオフェンジイル基を有する高分子化合物をいうこととする。
【0223】
ポリチオフェン及びその誘導体は、ホモポリマーであることが好ましい。この場合、ホモポリマーとは、チオフェンジイル基及び置換基を有するチオフェンジイル基からなる群から選ばれる基のみが複数個結合してなるポリマーを意味する。チオフェンジイル基としては、チオフェン−2,5−ジイル基が好ましく、置換基を有するチオフェンジイル基としては、アルキルチオフェン−2、5−ジイル基が好ましい。
【0224】
ホモポリマーであるポリチオフェン及びその誘導体の具体例としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−ドデシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン−2,5−ジイル)が挙げられる。ホモポリマーであるポリチオフェン及びその誘導体の中では、炭素数6〜30のアルキル基が置換したチオフェンジイル基からなるポリチオフェンホモポリマーが好ましい。
【0225】
また、チオフェンを部分骨格として持つ高分子化合物としては、例えば、式(11)で表される高分子化合物が挙げられる。式(11)中、nは繰り返しの数を表す。
【化34】

【0226】
式(11)中、R111及びR112は、それぞれ同一又は異なり、水素原子又は置換基を表す。また、複数存在するR111及びR112は、それぞれ同一でも異なってもよい。R111及びR112で表される置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0227】
特に、式(11)で表される高分子化合物としては、R111がアルキル基であり、R112が水素原子である高分子化合物が好ましい。このような高分子化合物は、式(11−1)で表される。
【化35】

【0228】
一方、電子受容性化合物としては、上述した本発明の高分子化合物のほかに、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、バソクプロイン等のフェナントレン誘導体、酸化チタン等の金属酸化物、カーボンナノチューブが挙げられる。
【0229】
電子受容性化合物としては、好ましくは、本発明の高分子化合物のほか、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられる。なかでも、より好ましくは、フラーレン、フラーレン誘導体、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物であり、さらに好ましくは、ベンゾチアジアゾール構造を含む化合物、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、キノキサリン構造を含む化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物であり、特に好ましくは、繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物、繰り返し単位にキノキサリン構造を含む高分子化合物である。
【0230】
繰り返し単位にベンゾチアジアゾール構造を含む高分子化合物の例としては、上記の電子供与性化合物として例示した式(11)で表される高分子化合物が挙げられ、式(11−1)で表される高分子化合物が好適である。すなわち、電子供与性化合物として適用する化合物との組み合わせによっては、式(11)で表される高分子化合物を、電子受容性化合物として適用することもできる。
【0231】
また、電子受容性化合物として好適なn型半導体としては、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。ここで、フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物をいう。フラーレンの例としては、C60フラーレン、C70フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C84フラーレンが挙げられ、フラーレン誘導体としては、それらのフラーレンの誘導体が挙げられる。
【0232】
60フラーレンの誘導体の具体例としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化36】

【0233】
70フラーレンの誘導体の具体例としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。
【化37】

【0234】
また、その他のフラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チエニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0235】
有機半導体層2において、電子受容性化合物の含有割合は、電子供与性化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。また、有機半導体層2の厚さは、1nm〜100μmが好ましく、2nm〜1000nmがより好ましく、5nm〜500nmがさらに好ましく、20nm〜200nmが特に好ましい。
【0236】
有機半導体層2に含有される電子供与性化合物と電子受容性化合物との組み合わせとしては、本発明の高分子化合物とフラーレン誘導体との組み合わせや、本発明の高分子化合物同士の組み合わせが好適である。後者の場合、電子供与性化合物及び電子受容性化合物である各高分子化合物は、それぞれ、電子供与性化合物に好適なHOMO及び電子受容性化合物に好適なLUMOが得られる組み合わせとする。
【0237】
なお、有機半導体層2は、種々の機能を発現させるために、必要に応じて上記以外の成分を含有させてもよい。上記以外の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、吸収した光により電荷を発生させる機能を増感するためのため増感剤、紫外線からの安定性を増すための光安定剤が挙げられる。
【0238】
有機半導体層2を構成する電子供与性化合物及び電子受容性化合物以外の成分は、電子供与性化合物及び電子受容性化合物の合計量100重量部に対し、それぞれ5重量部以下、特に、0.01〜3重量部の割合で配合することが、各成分による効果を確実に得ながら、高い電荷の移動度が得られるので有効である。
【0239】
また、有機半導体層2は、機械的特性を高めるため、電子供与性化合物及び電子受容性化合物以外の高分子化合物を高分子バインダーとして含んでいてもよい。高分子バインダーとしては、電子輸送性又はホール輸送性を阻害しないもの、及び、可視光に対する吸収が強くないものが好ましく用いられる。
【0240】
高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0241】
上述した構成を有する有機半導体層2は、例えば、バルクへテロ型の場合、電子供与性化合物、電子受容性化合物、及び必要に応じて配合される他の成分とを含む溶液を用いた成膜を行うことによって形成することができる。例えば、この溶液を陽極7a又は陰極7b上に塗布することで、有機半導体層2を形成することができる。
【0242】
溶液を用いた成膜における溶媒は、上述の電子供与性化合物及び電子受容性化合物を溶解させるものであればよく、複数の溶媒を混合してもよい。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。有機半導体層2を構成する材料は、例えば、上記の溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0243】
有機半導体層2の成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。なかでも、スピンコート法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0244】
<その他の層>
光電変換素子300は、上述した基板1、電極(陽極7a及び7b)及び有機半導体層2のほかに、光電変換効率を向上させるために、有機半導体層2以外の付加的な中間層(バッファ層、電荷輸送層等)を使用してもよい。このような中間層は、例えば、陽極7aと有機半導体層2との間、或いは、陰極7bと有機半導体層2との間に形成することができる。
【0245】
中間層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等が挙げられる。また、中間層には、酸化チタン等の無機半導体の微粒子、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))とPSS(ポリ(4−スチレンスルホネート))との混合物(PEDOT:PSS)等を用いてもよい。
【0246】
(光電変換素子を用いたデバイス)
上述したような光電変換素子300は、透明又は半透明の電極(陽極7a又は陰極7b)の側から太陽光等の光を照射することにより、これらの電極間に光起電力を発生させ、有機薄膜太陽電池素子として動作させることができる。このような有機薄膜太陽電池素子を複数集積することにより、太陽電池モジュールを構成することもできる。
【0247】
また、光電変換素子300は、電極(陽極7a及び陰極7b)間に電圧を印加した状態、あるいは電圧の無印加の状態で、透明又は半透明の電極から光を入射させることにより、光電流が流れることから、有機光センサーとして動作させることもできる。このような有機光センサーを複数集積することにより、有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0248】
<太陽電池モジュール>
本発明の光電変換素子を用いた有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。すなわち、太陽電池モジュールとしては、金属、セラミック等の支持基板の上にセル(例えば、上記実施形態の光電変換素子)が構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造を有するものが挙げられる。また、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成することで、透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。
【0249】
太陽電池モジュールとしては、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の光電変換素子を適用した有機薄膜太陽電池も、使用目的や使用場所、使用環境等に応じて、これらのモジュール構造を選択できる。
【0250】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセル(光電変換素子)が配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、さらに外縁部に集電電極が配置された構成を有することで、発生した電力を外部に取り出す構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じてエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ない場所等、表面を硬い素材で覆う必要のない状況において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成するか、又は充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与して、片側の支持基板をなくすことも可能である。
【0251】
このような太陽電池モジュールでは、支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールしてもよい。また、セルそのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0252】
例えば、ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより太陽電池の本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【実施例】
【0253】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0254】
[数平均分子量及び重量平均分子量]
以下の実施例において、高分子化合物(重合体)の分子量は、島津製作所製GPC(商品名:LC−10Avp)(以下、「LC−10Avp」と言う。)又はGPCラボラトリー製GPC(商品名:PL−GPC2000)(以下、「PL−GPC2000」と言う。)により、ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0255】
LC−10Avpにて測定する場合は、重合体を約0.5重量%の濃度となるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、GPCに50μL注入した。GPCの移動相は、テトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本と、TSKgel SuperH2000(東ソー製)1本とを直列に繋げた。検出器には、示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0256】
一方、PL−GPC2000にて測定する場合は、重合体を約1重量%の濃度となるようにo−ジクロロベンゼンに溶解させた。GPCの移動相はo−ジクロロベンゼンを用い、測定温度140℃で、1mL/分の流速で流した。カラムは、PLGEL 10μm MIXED−B(PLラボラトリー製)を3本直列で繋げた。
【0257】
[中間体化合物の合成]
(合成例1)
窒素雰囲気下、ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(0.50g,2.08mmol)をテトラヒドロフラン(50ml)に溶解させ、−78℃に冷却した後、n−BuLiの1.59Mテトラヒドロフラン溶液(4ml,6.36mmol)を滴下した。この溶液を室温まで昇温して30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、塩化トリメチルスズ(1.66g,8.34mmol)を加えた。この溶液を室温まで昇温して12時間撹拌した。
【0258】
得られた反応溶液に水(50ml)を加え、塩化メチレン(30ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30ml×3)で洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体をアセトンで再結晶することで、下記式(31)で表される化合物(化合物(31))(0.88g)を白色結晶として得た。この反応は、下記反応式で示される通りである。
【化38】

【0259】
(合成例2)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、2−ブロモ−3−ドデシルチオフェン(188mg,0.5mmol)、及び上記化合物(31)(114mg,0.2mmol)を加え、3時間還流しながら撹拌した。なお、「dba」とは、ジベンジリデンアセトンを表す(以下同様)。
【0260】
得られた反応溶液に水(50ml)を加え、塩化メチレン(30ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30ml×3)で洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、下記式(32)で表される化合物(化合物(32))(148mg)を黄色固体として得た。この反応は、下記反応式で示される通りである。
【化39】

【0261】
続いて、得られた化合物(32)(141mg,0.19mmol)をテトラヒドロフラン(7ml)に溶解させ、これにN−ブロモスクシンイミド(NBS)(68mg,0.38mmol)を加えた。この溶液を40℃で6時間撹拌した後、水とジクロロメタンを加え、有機層を飽和食塩水(100ml×3)で洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体を、ヘキサンを移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製することで、下記式(33)で表される化合物(化合物(33))(186mg)を黄色固体として得た。この反応は、下記反応式で示される通りである。
【化40】

【0262】
(合成例3)
窒素雰囲気下、ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェン(0.50g,2.08mmol)をテトラヒドロフラン(50ml)に溶解させ、−78℃に冷却した後、n−BuLiの1.59Mテトラヒドロフラン溶液(4ml,6.36mmol)を滴下した。この溶液を室温まで昇温して30分間撹拌した後、−78℃に冷却し、1,2−ジブロモテトラクロロエタン(6.51g,20mmol)を加えた。この溶液を室温まで昇温して12時間撹拌した。
【0263】
得られた反応溶液に1N塩酸(50ml)を加え、塩化メチレン(30ml×3)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30ml×3)で洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体をアセトンで再結晶することで、下記式(34)で表される化合物(化合物(34))を褐色結晶(0.58g)として得た。この反応は、下記反応式で示される通りである。
【化41】

【0264】
[実施例1]
(高分子化合物P1の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジドデシル−2,2’−ビチオフェン(132mg,0.2mmol)、及び合成例1で得られた化合物(31)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流しながら撹拌した。
【0265】
得られた反応溶液を、メタノール(200ml)と塩酸(5ml)との混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール及びヘキサンで順に加熱洗浄した後、クロロホルムで抽出した。得られたクロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P1で表される高分子化合物(高分子化合物P1)(106mg)を赤色固体として得た。高分子化合物P1のポリスチレン換算の数平均分子量は7.1×10、重量平均分子量は1.3×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化42】

【0266】
(高分子化合物P1の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P1を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板を十分に洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、基板表面をシラン処理した。
【0267】
次に、高分子化合物P1をオルトジクロロベンゼンに溶解させて3g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を用い、上記の表面処理した基板上に、スピンコート法により約30nmの高分子化合物P1を含む薄膜(有機半導体層35)を形成した。この薄膜を窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した。そして、得られた薄膜上に、真空蒸着によりチャネル長50μm、チャネル幅1.5mmのソース電極33及びドレイン電極34を作製して、有機トランジスタを得た。
【0268】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを40〜−80V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−80Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−80Vにおいてドレイン電流0.011mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.2×10−2cm/Vsと算出された。
【0269】
[実施例2]
(高分子化合物P2の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヘキサデシル−2,2’−ビチオフェン(155mg,0.2mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流しながら撹拌した。
【0270】
得られた反応溶液を、メタノール(200ml)と塩酸(5ml)との混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサン及びクロロホルムで順に加熱洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。得られたクロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P2で表される高分子化合物(高分子化合物P2)(83mg)を赤色固体として得た。高分子化合物P2のポリスチレン換算の数平均分子量は2.9×10、重量平均分子量は4.6×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化43】

【0271】
(高分子化合物P2の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P2を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板を十分に洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、基板表面をシラン処理した。
【0272】
次に、高分子化合物P2をオルトジクロロベンゼンに溶解させて3g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を用い、上記の表面処理した基板上に、スピンコート法により約30nmの高分子化合物P2を含む薄膜(有機半導体層35)を形成した。この薄膜を窒素雰囲気下、150℃で30分加熱した。そして、得られた薄膜上に、真空蒸着によりチャネル長50μm、チャネル幅1.5mmのソース電極33及びドレイン電極34を作製して、有機トランジスタを得た。
【0273】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを40〜−80V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−80Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−80Vにおいてドレイン電流0.5mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は5.4×10−1cm/Vsと算出された。
【0274】
[実施例3]
(高分子化合物P3の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジエチルヘキシル−2,2’−ビチオフェン(112mg,0.2mmol)、及び合成例1で得られた化合物(31)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流しながら撹拌した。
【0275】
得られた反応溶液を、メタノール(200ml)と塩酸(5ml)との混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール及びヘキサンで順に加熱洗浄した後、クロロホルムで抽出した。得られたクロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P3で表される高分子化合物(高分子化合物P3)(106mg)を赤色固体として得た。高分子化合物P3のポリスチレン換算の数平均分子量は3.7×10、重量平均分子量は5.1×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化44】

【0276】
(高分子化合物P3の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P3を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板を十分に洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、基板表面をシラン処理した。
【0277】
次に、高分子化合物P3をクロロホルムに溶解させて1g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を用い、上記の表面処理した基板上に、ドロップキャスト法により約30nmの高分子化合物P3を含む薄膜(有機半導体層35)を形成した。そして、得られた薄膜上に、真空蒸着によりチャネル長50μm、チャネル幅1.5mmのソース電極33及びドレイン電極34を作製して、有機トランジスタを得た。
【0278】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを40〜−80V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−80Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−80Vにおいてドレイン電流0.05μAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は5.0×10−5cm/Vsと算出された。
【0279】
[実施例4]
(高分子化合物P4の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(8ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(2mg,0.002mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(3mg,0.008mmol,8mol%)、5,5’−ビス(トリメチルスタニル)−4,4’−ジドデシルヘキシル−2,2’−ビチオフェン(100mg,0.12mmol)、及び合成例2で得られた化合物(33)(102mg,0.11mmol)を加え、3日間還流しながら撹拌した。
【0280】
得られた反応溶液を、メタノール(200ml)と塩酸(5ml)との混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール及びヘキサンで順に加熱洗浄した後、クロロホルムで抽出した。得られたクロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P4で表される高分子化合物(高分子化合物P4)(97mg)を赤色固体として得た。高分子化合物P4のポリスチレン換算の数平均分子量は6.7×10、重量平均分子量は9.5×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化45】

【0281】
(高分子化合物P4の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P4を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板を十分に洗浄した後、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)を用いて、基板表面をシラン処理した。
【0282】
次に、高分子化合物P4をクロロホルムに溶解させて3g/Lの溶液を調製し、メンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を用い、上記の表面処理した基板上に、スピンコート法により約30nmの高分子化合物P4を含む薄膜(有機半導体層35)を形成した。この薄膜を窒素雰囲気下にて、150℃で30分加熱した。そして、得られた薄膜上に、真空蒸着によりチャネル長50μm、チャネル幅1.5mmのソース電極33及びドレイン電極34を作製して、有機トランジスタを得た。
【0283】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流0.01mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.2×10−2cm/Vsと算出された。
【0284】
[比較例1]
(高分子化合物P5の合成)
フラスコに、4,4’−ジドデシル−5,5’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,5−ジオキサボロラン−2−イル)−2,2’−ビチオフェン(341mg,0.452mmol)、2,7−ジブロモ−4,5−ジヘプチルベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェン(246mg,0.452mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(8.3mg,0.009mmol)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(10.5mg,0.036mmol)、及びテトラヒドロフラン(12mL)を入れ、フラスコ中の溶液を60℃に加熱した。
【0285】
この溶液に、炭酸カリウム水溶液(2mol/L、0.7mL)を加え、3時間還流しながら撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(9mg)及びTHF(3mL)を加え、4.5時間還流しながら撹拌した。それから、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.25g)及び水(6mL)を加え、12時間還流しながら撹拌した。
【0286】
この反応後の溶液にトルエンを加えた後、温水、酢酸水溶液、温水の順で洗浄した。得られたトルエン溶液を、シリカゲルカラムとアルミナカラムに通液させた。そして、トルエン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P5で表される高分子化合物(高分子化合物P5)(302mg)を得た。なお、式P5中、nは繰り返し単位数を表す。高分子化合物P5のポリスチレン換算の数平均分子量は8.5×10、重量平均分子量は4.3×10であった。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化46】

【0287】
(高分子化合物P5の評価)
高分子化合物P5を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板をアセトンで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを20分間照射した。その後、β−フェニチルトリクロロシラン(β−PTS)を用いて、スピンコート法により基板表面をシラン処理した。
【0288】
次に高分子化合物P5を溶媒であるトルエンに溶解させて合計の濃度が0.5重量%である溶液を調製し、これをメンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を、上記の表面処理した基板上にスピンコート法により塗布し、約60nmの高分子化合物P5の薄膜(有機半導体層35)を形成した。そして、得られた薄膜上に、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33及びドレイン電極34(薄膜側から、順番にMoO、金の積層構造を有する電極)を作製して、有機トランジスタを得た。
【0289】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを10〜−50V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−50Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−50Vにおいてドレイン電流0.002μAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.0×10−5cm/Vsであり、高分子化合物P1〜P4を用いて作製した有機トランジスタと比較して低いことが確認された。
【0290】
[実施例5]
(高分子化合物P6の合成)
四つ口フラスコを用いて、合成例3で得られた化合物(34)(119.4mg、0.300mmol)、下記式(35)で表される化合物(化合物(35))(159.4mg、0.270mmol)、トルエン(10mL)及びメチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)(60.6mg、0.15mmol)を加え、室温(25℃)で30分間、アルゴンバブリングを行った。
【0291】
こうして得られた溶液を90℃に昇温した後、酢酸パラジウム(0.67mg、1mol%)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(3.70mg、3.5mol%)を加えた。その後、100℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液(16.7重量%、1.90g、3.00mmol)を30分かけて滴下した。4時間後、フェニルホウ酸(3.66mg、0.03mmol)、酢酸パラジウム(0.67mg、1mol%)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(3.70mg、3.5mol%)を加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
【0292】
その後、反応後の溶液に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(1g)及び純水(10mL)を加え、1時間還流しながら攪拌を行った。得られた反応液中の水層を除去した後、有機層を水10mlで2回、酢酸水溶液(3重量%)10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、メタノールに注いで高分子化合物を析出させた。
【0293】
得られた高分子化合物をろ過し、乾燥した後、この高分子化合物をトルエン(15mL)に再溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。そして、得られた溶液をメタノールに注いで高分子化合物を析出させ、ろ過した後、乾燥して、下記式P6で表される高分子化合物(高分子化合物P6)を87mg得た。高分子化合物P6のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が5.5×10、重量平均分子量(Mw)は1.0×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化47】

【0294】
(高分子化合物P6の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P6を用いて図9に示す有機トランジスタを作製し、そのトランジスタ特性を測定した。すなわち、まず、ゲート電極となる高濃度にドーピングされたn−型シリコン基板31の表面を熱酸化し、200nmのシリコン酸化膜32を形成した。この基板をアセトンで10分間超音波洗浄した後、オゾンUVを20分間照射した。その後、β−フェニチルトリクロロシラン(β−PTS)を用いて、スピンコート法により基板表面をシラン処理した。
【0295】
次に、高分子化合物P6を溶媒であるクロロホルムに溶解させて、合計の濃度が0.5重量%である溶液を調製し、これをメンブランフィルターでろ過した。得られた溶液を用い、上記の表面処理した基板上に、スピンコート法により塗布して約60nmの高分子化合物P6の薄膜(有機半導体層35)を形成した。そして、得られた薄膜上に、メタルマスクを用いた真空蒸着法により、チャネル長20μm、チャネル幅2mmのソース電極33及びドレイン電極34(薄膜側から、順番にMoO、金の積層構造を有する電極)を作製して、有機トランジスタを得た。
【0296】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを10〜−50V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−50Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−50Vにおいてドレイン電流0.54μAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.5×10−3cm/Vsと算出された。
【0297】
[比較例2]
(高分子化合物P7の合成)
四つ口フラスコを用いて、下記式(36)で表される化合物(化合物(36))(97.2mg、0.300mmol)、化合物(35)(159.4mg、0.270mmol)、トルエン(10mL)及びメチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)(60.6mg、0.15mmol)を加え、室温(25℃)で30分間、アルゴンバブリングを行った。
【0298】
この溶液を90℃に昇温した後、酢酸パラジウム(0.67mg、1mol%)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(3.70mg、3.5mol%)を加えた。
その後、100℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウム水溶液(16.7重量%、1.90g、3.00mmol)を30分かけて滴下した。4時間後、フェニルホウ酸(3.66mg、0.03mmol)、酢酸パラジウム(0.67mg、1mol%)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(3.70mg、3.5mol%)を加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
【0299】
その後、反応後の溶液に、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(1g)及び純水(10mL)を加え、1時間還流しながら攪拌を行った。得られた反応液中の水層を除去後、有機層を水10mlで2回、酢酸水溶液(3重量%)10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、メタノールに注いで高分子化合物を析出させた。
【0300】
得られた高分子化合物をろ過し、乾燥した後、この高分子化合物をトルエン(15mL)に再溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。そして、得られた溶液をメタノールに注いで高分子化合物を析出させ、ろ過した後、乾燥して、下記式P7で表される高分子化合物(高分子化合物P7)を69mg得た。高分子化合物P7のポリスチレン換算の数平均分子量は1.2×10、重量平均分子量は2.5×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化48】

【0301】
(高分子化合物P7の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P7を、高分子化合物P6に代えて用いた以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0302】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを10〜−50V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−50Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−50Vにおいてドレイン電流値は0.42μAであり、実施例5と比較して低かった。また、この結果から、電界効果移動度は1.3×10−3cm/Vsと算出され、実施例5と比較して低かった。
【0303】
[実施例6]
(高分子化合物P8の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(6mg,0.016mmol,8mol%)、下記式(37)で表される化合物(化合物(37))(100mg,0.12mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(113mg,0.2mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサン、クロロホルムで加熱洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。クロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P8で表される高分子化合物(高分子化合物P8)(38mg)を黒褐色の固体として得た。高分子化合物P8のポリスチレン換算の数平均分子量は1.7×10、重量平均分子量は2.1×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化49】

【0304】
(高分子化合物P8の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P8を、高分子化合物P6に代えて用いた以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0305】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流−0.011mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.8×10−2cm/Vsと算出された。
【0306】
(高分子化合物P8の評価:有機薄膜太陽電池)
スパッタ法により115nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、高分子化合物P8及びフラーレン誘導体であるC60PCBM(フロンティアカーボン社製)を含むオルトジクロロベンゼン溶液(高分子化合物P8/C60PCBMの重量比=1/2)を用い、スピンコートにより塗布して有機半導体層を作製した(厚さ約100nm)。その後、真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ0.8nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着して、有機薄膜太陽電池を作製した。この有機薄膜太陽電池の形状は、直径2mmの円であった。
【0307】
得られた有機薄膜太陽電池に対し、ソーラシミュレーター(朝日分光社製、商品名HAL302:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して、光電変換効率、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(ff)を求めた。その結果、Jsc(短絡電流密度)=5.36mA/cm、Voc(開放電圧)=0.61V、ff(フィルファクター)=0.38、光電変換効率(η)=1.4%が得られた。
【0308】
[実施例7]
(高分子化合物P9の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。このクロロベンゼンに、Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジオクチルデシル−2,2’−ビチオフェン(166mg,0.2mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサンで加熱洗浄した後、加熱したクロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P9で表される高分子化合物(高分子化合物P9)(149mg)を赤色固体として得た。高分子化合物P9のポリスチレン換算の数平均分子量は1.35×10、重量平均分子量は2.6×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化50】

【0309】
(高分子化合物P9の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P9を、高分子化合物P6に代えて用いた以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0310】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流0.17mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.2×10−1cm/Vsと算出された。
【0311】
(高分子化合物P9の評価:有機薄膜太陽電池)
高分子化合物P8/C60PCBMの重量比=1/2に代えて、高分子化合物P9/C60PCBM=1/6(重量比)とした以外は、実施例6と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行ったところ、Jsc(短絡電流密度)=1.82mA/cm、Voc(開放電圧)=0.62V、ff(フィルファクター)=0.51、光電変換効率(η)=0.56%という結果が得られた。
【0312】
[比較例3]
(高分子化合物P10の合成)
四つ口フラスコに、下記式(38)で表される化合物(化合物(38))(642.0mg、1.000mmol)、下記式(39)で表される化合物(化合物(39))(336.4mg、0.950mmol)、及びテトラヒドロフラン(25mL)を入れ、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(9.15mg、0.01mmol)、[トリ(tert−ブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレート(11.60mg、0.04mmol)を加えた。80℃で攪拌しながら、27.6重量%の炭酸カリウム水溶液(1.50g、3.00mmol)を30分かけて滴下した。15分後、フェニルホウ酸(36.6mg、0.30mmol)を加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
【0313】
その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(2g)及び純水(20mL)を加え、1時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水20mlで2回、3重量%の酢酸水溶液20mLで2回、さらに水20mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。このポリマーをろ過した後、乾燥して、下記式P10で表される高分子化合物(高分子化合物P10)を460mg得た。GPCで測定した高分子化合物P10のポリスチレン換算の数平均分子量は1.2×10、重量平均分子量は3.2×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化51】

【0314】
(高分子化合物P10の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P10を、高分子化合物P6に代えて用いた以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0315】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを10〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流値は0.54μAであり、実施例6と比較して低かった。また、この結果から、電界効果移動度は2.0×10−4cm/Vsと算出された。
【0316】
(高分子化合物P10の評価:有機薄膜太陽電池)
高分子化合物P8/C60PCBMの重量比=1/2に代えて、高分子化合物P10/C60PCBM=1/3(重量比)とした以外は、実施例6と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行った。その結果、Jsc(短絡電流密度)=1.62mA/cm、Voc(開放電圧)=0.04V、ff(フィルファクター)=0.25、光電変換効率(η)=0.02%であり、実施例6及び7と比較して低い特性となることが確認された。
【0317】
[実施例8]
(高分子化合物P11の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を30分間脱気した。Pd(dba)・CHCl(3.7mg,0.0036mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(4.4mg,0.0144mmol,8mol%)、化合物(40)(102mg,0.18mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(102mg,0.18mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサンで加熱洗浄した後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P11で表される高分子化合物(高分子化合物P11)(199mg)を黒褐色の固体として得た。高分子化合物P11のポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×10、重量平均分子量は2.6×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化52】

【0318】
(高分子化合物P11の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P11を、高分子化合物P6に代えて用いたこと以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0319】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流−0.018mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.9×10−2cm/Vsと算出された。
【0320】
(高分子化合物P11の評価:有機薄膜太陽電池)
高分子化合物P8/C60PCBMの重量比=1/2に代えて、高分子化合物P11/C60PCBM=1/0.8(重量比)とした以外は、実施例6と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行った。その結果、Jsc(短絡電流密度)=8.01mA/cm、Voc(開放電圧)=0.75V、ff(フィルファクター)=0.63、光電変換効率(η)=3.74%であった。
【0321】
[実施例9]
(高分子化合物P12の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を加え30分間脱気した。Pd(dba)・CHCl(4mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(5mg,0.016mmol,8mol%)、下記式(41)で表される化合物(化合物(41))(226mg,0.2mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(113mg,0.2mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサンで加熱洗浄した後、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P12で表される高分子化合物(高分子化合物P12)(230mg)を黒色の固体として得た。高分子化合物P12のポリスチレン換算の数平均分子量は1.9×10、重量平均分子量は5.0×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化53】

【0322】
(高分子化合物P12の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P12を、高分子化合物P6に代えて用いたこと以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0323】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−50V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流0.022mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は5.0×10−2cm/Vsと算出された。
【0324】
(高分子化合物P12の評価:有機薄膜太陽電池)
高分子化合物P8/C60PCBMの重量比=1/2に代えて、高分子化合物P12/C60PCBM=1/1(重量比)とした以外は、実施例6と同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、その評価を行った。その結果、Jsc(短絡電流密度)=4.08mA/cm、Voc(開放電圧)=0.72V、ff(フィルファクター)=0.48、光電変換効率(η)=1.30%であった。
【0325】
[実施例10]
(高分子化合物P13の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を加え30分間脱気した。Pd(dba)・CHCl(4.1mg,0.0038mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(4.8mg,0.0152mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジイコシル−2,2’−ビチオフェン(170mg,0.19mmol)、合成例1で得られた化合物(31)(109mg,0.19mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサン、クロロホルムで加熱洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。クロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P13で表される高分子化合物(高分子化合物P13)(150mg)を黒褐色の固体として得た。高分子化合物P13のポリスチレン換算の数平均分子量は3.3×10、重量平均分子量は7.3×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化54】

【0326】
(高分子化合物P13の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P13を、高分子化合物P6に代えて用いたこと以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0327】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを40〜−80V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−80Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−80V、Vsd=−80Vにおいてドレイン電流0.24mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は3.2×10−1cm/Vsと算出された。
【0328】
[中間体化合物の合成]
(合成例4)
ナフト[2,1−b:6,5−b’]ジチオフェンを、ナフト[1,2−b:5,6−b’]ジチオフェンに代えて用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(42)で表される化合物(化合物(42))を合成した。
【化55】

【0329】
[実施例11]
(高分子化合物P14の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を加え30分間脱気した。Pd(dba)・CHCl(4.1mg,0.0038mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(4.8mg,0.0152mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジヘキサデシル−2,2’−ビチオフェン(149mg,0.2mmol)、合成例4で得られた化合物(42)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサン、クロロホルムで加熱洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。クロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P14で表される高分子化合物(高分子化合物P14)(90mg)を黒褐色の固体として得た。高分子化合物P14のポリスチレン換算の数平均分子量は3.0×10、重量平均分子量は6.3×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化56】

【0330】
(高分子化合物P14の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P14を、高分子化合物P6に代えて用いたこと以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0331】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流0.03mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は9.0×10−2cm/Vsと算出された。
【0332】
[実施例12]
(高分子化合物P15の合成)
窒素雰囲気下、クロロベンゼン(20ml)を加え30分間脱気した。Pd(dba)・CHCl(4.1mg,0.004mmol,2mol%)、P(o−tolyl)(4.8mg,0.016mmol,8mol%)、5,5’−ジブロモ−4,4’−ジイコシル−2,2’−ビチオフェン(177mg,0.2mmol)、合成例4で得られた化合物(42)(114mg,0.2mmol)を加え、3日間還流、撹拌した。反応溶液をメタノール(200ml)と塩酸(5ml)の混合溶液に注ぎ、3時間撹拌した。析出した沈殿物を濾取し、メタノール、ヘキサン、クロロホルムで加熱洗浄した後、クロロベンゼンで抽出した。クロロベンゼン溶液を濃縮し、この溶液をメタノールに流し込み、析出した沈殿物を濾取して、下記式P15で表される高分子化合物(高分子化合物P15)(102mg)を黒褐色の固体として得た。高分子化合物P15のポリスチレン換算の数平均分子量は2.6×10、重量平均分子量は10.5×10であった。この反応は、下記反応式で示される通りである。なお、式中、nは繰り返し単位数を示す。
【化57】

【0333】
(高分子化合物P15の評価:有機トランジスタ)
高分子化合物P6に代えて、高分子化合物P15を用いたこと以外は、実施例5と同様にして有機トランジスタを作製した。
【0334】
この有機トランジスタに対し、ゲート電圧Vgを20〜−60V、ソース・ドレイン間電圧Vsdを0〜−60Vに変化させて、トランジスタ特性を測定した。その結果、伝達特性としてVg=−60V、Vsd=−60Vにおいてドレイン電流0.08mAが得られた。また、この結果から電界効果移動度は1.5×10−1cm/Vsと算出された。
【符号の説明】
【0335】
1…基板、2…有機半導体層、2a…有機半導体層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、7a…陽極、7b…陰極、11…保護膜、12…層間絶縁膜、13…下部電極(陽極)、14…発光素子、15…上部電極(陰極)、16…バンク部、17…封止部材、18…基板、31…n−型シリコン基板、32…シリコン酸化膜、33…ソース電極、34…ドレイン電極、35…有機半導体層、100…第1実施形態に係る有機トランジスタ、110…第2実施形態に係る有機トランジスタ、120…第3実施形態に係る有機トランジスタ、130…第4実施形態に係る有機トランジスタ、140…第5実施形態に係る有機トランジスタ、150…第6実施形態に係る有機トランジスタ、160…第7実施形態に係る有機トランジスタ、200…実施形態に係る面状光源、300…光電変換素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位を有する、高分子化合物。
【化1】


[式中、Ar及びArは、それぞれ同一又は異なり、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素環、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環と置換基を有していてもよい複素環との縮合環である。R、R、R及びRは、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【請求項2】
前記Ar及び前記Arの少なくとも一方が、複素5員環である、請求項1記載の高分子化合物。
【請求項3】
式(1)で表される繰り返し単位が、式(2)で表される繰り返し単位、式(3)で表される繰り返し単位及び式(4)で表される繰り返し単位で表される群より選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位である、請求項1又は2記載の高分子化合物。
【化2】


[式(2)におけるX21及びX22、式(3)におけるX31及びX32、並びに式(4)におけるX41及びX42は、それぞれ同一又は異なり、カルコゲン原子を示し、式(2)におけるR23、R24、R25、R26、R27及びR28、式(3)におけるR33、R34、R35、R36、R37及びR38、式(4)におけるR43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【請求項4】
式(2)における前記X21及び前記X22、式(3)における前記X31及び前記X32、並びに式(4)における前記X41及び前記X42が、硫黄原子、セレン原子又は酸素原子である、請求項3記載の高分子化合物。
【請求項5】
式(5)で表される繰り返し単位を更に有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【化3】


[式中、Yは、アリーレン基、2価の複素環基、金属錯体構造を有する2価の基又はエチニレン基を示し、これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。]
【請求項6】
前記Yが、炭素数4〜12の5員の2価の複素環基、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基、又は、多環の2価の複素基である、請求項5記載の高分子化合物。
【請求項7】
前記Yが、式(6)で表される基である、請求項5記載の高分子化合物。
【化4】


[式中、Tは、置換基を有していてもよい2価の複素環基を示し、nは、2〜8の整数を示す。複数存在するTは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項8】
前記Yが、式(7)で表される基である、請求項5記載の高分子化合物。
【化5】


[式中、Ar及びArは、それぞれ同一又は異なり、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい複素環、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環と置換基を有していてもよい複素環との縮合環である。R71及びR72は、それぞれ同一又は異なり、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換シリル基、非置換若しくは置換のカルボキシル基、置換基を有してもよい1価の複素環基、シアノ基又はフッ素原子を示す。]
【請求項9】
式(5)で表される繰り返し単位が、少なくとも1種の電子受容性を有する芳香族基を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項10】
式(1)で表される繰り返し単位が有している最高被占軌道のエネルギーレベルの値と、前記電子受容性を有する芳香族基が有している最低空分子軌道のエネルギーレベルの値との差が、4.4eV以下である、請求項9記載の高分子化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物を含む薄膜。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物と、溶媒と、を含有するインク組成物。
【請求項13】
請求項11記載の薄膜からなる有機半導体層を備える、有機トランジスタ。
【請求項14】
請求項13記載の有機トランジスタを備える、面状光源。
【請求項15】
請求項13記載の有機トランジスタを備える、表示装置。
【請求項16】
陽極と、陰極と、該陽極と該陰極との間に設けられる有機半導体層とを有し、
前記有機半導体層が、電子供与性化合物及び電子受容性化合物を含み、該電子供与性化合物及び該電子受容性化合物の少なくとも一方が、請求項1〜10のいずれかに記載の高分子化合物である、光電変換素子。
【請求項17】
請求項16記載の光電変換素子を含む太陽電池モジュール。
【請求項18】
請求項16記載の光電変換素子を含むイメージセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−131938(P2012−131938A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286602(P2010−286602)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】