説明

高分子化合物、該高分子化合物を含有するフォトレジスト組成物、およびレジストパターン形成方法

【課題】優れた解像性を有し、矩形性が良好な微細パターンを形成できるとともに、酸発生剤から発生する酸が弱い場合も良好なレジスト特性が得られ、感度も良好なフォトレジスト組成物を構成できる高分子化合物、該高分子化合物を用いたフォトレジスト組成物、および該フォトレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性基(i)として、アルコール性水酸基、カルボキシル基、およびフェノール性水酸基から選択されるいずれか一つの置換基が、下記一般式(1)
【化1】


(式中、Rは炭素数20以下の脂肪族環式基であり、nは0または1〜5の整数を表す。)で示される酸解離性溶解抑止基(ii)で保護されていることを特徴とする高分子化合物を用い、本発明のフォトレジスト組成物およびレジストパターン形成方法を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物、該高分子化合物の調製に好適な低分子化合物、少なくとも該高分子化合物を含有してなるフォトレジスト組成物、およびレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路パターンの微細化は、光リソグラフィーおよびその周辺技術の進歩により達成されてきたといっても過言ではない。この光リソグラフィーは、周知のように、大きく分けて2つの技術に支えられている。一つは、ステッパーやスキャナーと呼ばれる縮小投影露光装置の露光波長や開口数であり、他の一つは、前記縮小投影露光装置によってマスクパターンが転写されることになるフォトレジスト組成物の転写解像性を主体としたレジスト特性である。これらが光リソグラフィーによる半導体集積回路パターンの加工精度を向上させてきた。
【0003】
縮小投影露光装置に用いられる光源は、回路パターンの高解像度化の要請を受けて、ますます短波長化されている。一般に、レジスト解像性約0.5μmでは水銀ランプの主要スペクトルが436nmのg線が、約0.5〜0.30μmでは同じく水銀ランプの主要スペクトルが365nmのi線が用いられ、約0.30〜0.15μmでは248nmのKrFエキシマレーザー光が用いられ、約0.15μm以下では193nmのArFエキシマレーザー光が用いられており、さらなる微細化のために157nmのF2エキシマレーザー光や126nmのAr2エキシマレーザー光、EUV(極端紫外線 波長13nm)の使用が検討されている。
【0004】
一方、フォトレジスト組成物について見てみると、現在では、有機または無機反射防止膜との組み合わせや照明系の工夫もあり、KrFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいて、KrF用フォトレジストの延命化がなされ、λ/2以下の約110nmを視野に入れたフォトレジスト組成物の開発が行われている。また、ArFエキシマレーザー光を用いたリソグラフィーにおいて、将来の約90nmノード以下の微細パターンの量産に向けて、ArF用フォトレジスト組成物の提供が望まれている。そして、前記F2エキシマレーザーを用いたリソグラフィーは、将来の65nm以下の微細パターンの加工技術を担うものとして注目されており、このF2エキシマレーザーを用いたリソグラフィーによる微細加工にも十分に適用可能なフォトレジスト組成物の開発が進められている。
【0005】
このような微細パターンを得るには、従来のアルカリ可溶性ノボラック樹脂とキノンジアジド基含有化合物を基本成分としたポジ型フォトレジストでは困難なことから、より短波長の遠紫外線(200〜300nm)、KrF、ArF、F2などのエキシマレーザー、電子線及びX線を利用したレジストの開発が要望されている。かかるレジストとして高解像性が達成される上に、放射線の照射により発生した酸の触媒反応、連鎖反応が利用でき量子収率が1以上で、しかも高感度が達成できる化学増幅型レジストが注目され、盛んに開発が行われている。
【0006】
ポジ型の化学増幅型レジストにおいては、主に酸解離性溶解抑止基を有する樹脂が用いられている。
上記化学増幅型レジストに用いられる酸解離性溶解抑止基としては、例えば、下記非特許文献1〜3に示されるように、フッ素化されたアルコールへの酸解離性溶解抑止基としてアセタール基、tert−ブチル基のような3級アルキル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基などが知られている。
【0007】
また、従来ArFレジスト組成物の樹脂成分中の酸解離性溶解抑止基を有する構成単位としては、下記特許文献1に示されるように、(メタ)アクリル酸の3級エステル化合物、例えば2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等から誘導される構成単位が一般的に用いられている。
【非特許文献1】T.Hagiwara,S.Irie,T.Itani,Y.Kawaguchi,O.Yokokoji,S.Kodama著,J.Photopolym.Sci.Technol.第16巻,557頁,2003年.
【非特許文献2】F.Houlihan,A.Romano,D.Rentkiewicz,R.Sakamuri,R.R.Dammel,W.Conley,G.Rich,D.Miller,L.Rhodes,J.McDaniels,C.Chang著,J.Photopolym.Sci.Technol.第16巻,581頁,2003年.
【非特許文献3】Y. Kawaguchi,J.Irie,S.Kodama,S.Okada,Y.Takebe,I.Kaneko,O.Yokokoji,S.Ishikawa,S.Irie,T,Hagiwara,T.Itani著,Proc.SPIE,第5039巻,43頁,2003年.
【特許文献1】特開平10−161313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1〜3に示された化学増幅型レジストに用いられている酸解離性溶解抑止基においては、未露光部でのアルカリ溶解抑止性が不十分(レジストパターンが膜減る)であり、解像性の向上および矩形性が良い微細パターンの形成という点において問題がある。仮に酸解離性溶解抑止基の導入率を増やして未露光部でのアルカリ溶解抑止性を向上させようとしても、ディフェクトのリスクが高まり問題となっている。
【0009】
また、前記特許文献1に示されるように、酸解離性溶解抑止基を形成する化合物として、例えば(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する化合物が広く知られている。しかしながら、それらを用いたレジスト組成物において、使用できる酸発生剤の種類に限りがある。すなわち、発生する酸の強度が強い酸発生剤、例えばフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオン部に有するオニウム塩等を適用しないと、該酸解離性溶解抑止基は脱離しない為、化学増幅型のポジ型レジストとして機能しないという問題ある。また、発生する酸の強度が弱い酸発生剤を使用すると感度が不十分であるという問題があり、改善が望まれている。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、優れた解像性を有し、矩形性が良好な微細パターンを形成できるとともに、酸発生剤から発生する酸が弱い場合も良好なレジスト特性が得られ、感度も良好なフォトレジスト組成物を構成できる高分子化合物を提供することを目的とする。またかかる高分子化合物を調製するのに好適な化合物、および該高分子化合物を含有してなるフォトレジスト組成物、ならびに該フォトレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、フォトレジスト組成物用高分子化合物におけるアルカリ可溶性基の保護基として様々な酸解離性溶解抑止基を導入して、それら高分子化合物のレジスト特性について鋭意研究を進めたところ、特定の脂肪族環式基を有する酸解離性溶解抑止基を用いた場合にレジストパターンの形状が良好で、解像性が向上した微細パターンを形成できることを初めて見いだし、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。また、前記特定の脂環式基を有する酸解離性溶解抑止基を用いると、従来の(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する化合物等を用いて酸解離性溶解抑止基を形成した場合と比べて、酸発生剤の選択性が広がって、かつ高感度なレジスト組成物を得ることができることも見出した。
【0012】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明の高分子化合物は、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化し得る高分子化合物であって、アルカリ可溶性基(i)を有し、このアルカリ可溶性基(i)の水素原子が、下記一般式(1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1は炭素数20以下の脂肪族環式基を表す。nは0または1〜5の整数を表す。)で示される酸解離性溶解抑止基(ii)で置換されていることを特徴とする。このアルカリ可溶性基(i)は、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基から選ばれる1種以上であることが好ましく、アルコール性水酸基の場合、該アルコール性水酸基に結合している炭素原子に隣接する炭素原子に、少なくとも一つのフッ素原子が結合していることがさらに好ましい。
上記一般式中、R1は、炭素数20以下の脂肪族環式基であり、アダマンタン骨格を有することが好ましい。さらに、R1は、1種以上の親水性基を有する脂肪族環式基であることが好ましく、この親水性基としては、カルボニル基、エステル基、アルコール性水酸基、エーテル、イミノ基、およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の新規化合物は、下記一般式(2)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rとnは前記と同じである。R2は水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。)で示されることを特徴とし、この化合物(2)から誘導される構成単位(a1)を含有する高分子化合物も本発明の高分子化合物に含まれる。
【0018】
本発明のフォトレジスト組成物は、少なくとも、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材樹脂成分(A)(以下、(A)成分と記すことがある)と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分と記すことがある)とを含有してなり、この基材樹脂成分(A)が、本発明の高分子化合物であることを特徴とする。
【0019】
本発明のレジストパターン形成方法は、このようなフォトレジスト組成物を用いて基板上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記フォトレジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レジストパターン形状(矩形性)が良好で、高解像性の微細パターンを提供することができる。また、酸発生剤より発生する酸が弱いものでも酸解離性溶解抑止基を解離させることができ、良好な感度も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本特許請求の範囲及び明細書における「構成単位」とは、高分子化合物を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
本特許請求の範囲及び明細書において、特に断りがない限り、アルキル基、アルコキシ基、アルキレン基は直鎖または分岐のいずれでもよい。
本発明の高分子化合物は、それらの分子中のアルカリ可溶性基(i)の水素原子が、下記一般式(3)
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R1は炭素数20以下の脂肪族環式基を表す。nは0または1〜5の整数を表す。)で示される酸解離性溶解抑止基(ii)で置換されていることを特徴とする。
本発明の高分子化合物を化学増幅型ポジ型レジストの系に用いると、該高分子化合物が上記一般式(1)(または一般式(3))で示される、脂肪族環式基を有する酸解離性溶解抑止基を有することにより、露光前ではアルカリ現像への溶解抑止作用を示し、露光及びPEB(露光後加熱)プロセス後では脱保護によるアルカリ溶解性を発現し、露光前と露光後でのアルカリ溶解性が大きく変化するため、解像性に優れた微細パターンを得ることができる。また、本発明の高分子化合物を用いると、レジストパターンのエッチング耐性が向上する。とくに酸解離性溶解抑止基(ii)に親水性基がさらに導入された場合にはレジストパターンの基板への密着性が向上し、アルカリ現像液への親和性向上により現像欠陥が低減する。またマスクリニアリティも良好となる。
【0024】
<酸解離性溶解抑止基(ii)>
アルカリ可溶性基(i)の詳細は後述する。アルカリ可溶性基(i)は水素原子を有しており、酸解離性溶解抑止基(ii)はこの水素原子を置換している。すなわち、アルカリ可溶性基(i)が、アルコール性水酸基、カルボキシル基、およびフェノール性水酸基である場合、酸解離性溶解抑止基(ii)は該アルカリ可溶性基(i)の水素原子を除いた酸素原子に結合している。
【0025】
前記酸解離性溶解抑止基(ii)は、上記一般式(1)で表される。式中、R1は炭素数20以下の脂肪族環式基であり、炭素数5〜12の脂肪族環式基が好ましい。該脂肪族環式基は置換基を有していてもよい。nの値は好ましくは0又は1である。
本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族」とは、芳香性に対する相対的な概念であって、芳香性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香性を持たない単環式基または多環式基(脂環式基)であることを意味する。このとき「脂肪族環式基」は炭素、及び水素からなる基であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
このような脂肪族環式基としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、アダマンタン、ノルボルナン、ノルボルネン、メチルノルボルナン、エチルノルボルナン、メチルノルボルネン、エチルノルボルネン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどから誘導される1価の基を挙げることができる。この様な脂肪族環式基は、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でもシクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、メチルノルボルニル基、エチルノルボルニル基、メチルノルボルネニル基、エチルノルボルネニル基、テトラシクロドデカニル基が工業上好ましく、アダマンチル基がさらに好ましい。
【0026】
前記酸解離性溶解抑止基(ii)は、上記一般式(1)中、R1としては、少なくとも1種以上の親水性基を有する脂肪族環式基であるとさらに好ましく、この親水性基としては、カルボニル基(好ましくはケトン性カルボニル基)、エステル基(−COOR)、アルコール性水酸基、エーテル(−OR)、イミノ基、アミノ基であることが好ましく、カルボニル基であることが入手が容易であることから最も好ましい。
【0027】
前記酸解離性溶解抑止基(ii)としては、例えば、下記化学式(4)〜(15)で表される基を挙げることができる。
【0028】
【化4】

【0029】
<アルカリ可溶性基(i)>
本発明の高分子化合物におけるアルカリ可溶性基(i)は、前述の非特許文献においても例示されているように、また、これまで提案されているKrFレジスト、ArFレジスト、F2レジストから公知である。そのようなアルカリ可溶性基とは、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基等が挙げられ、特に限定されない。
本発明においては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。中でもアルコール性水酸基が、透明性が高く、また適度なアルカリ可溶性を有するため、好適である。アルコール性水酸基の場合には、なかでも、アルコール性水酸基に結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、少なくとも一つのフッ素原子を有することを特徴とするアルコール性水酸基であることがさらに好ましい。
【0030】
前記アルコール性水酸基は、単にヒドロキシ基であってもよいし、アルコール性水酸基含有アルキルオキシ基、アルコール性水酸基含有アルキルオキシアルキル基またはアルコール性水酸基含有アルキル基等がであってもよい。該アルキルオキシ基、該アルキルオキシアルキル基または該アルキル基としては、低級アルキルオキシ基、低級アルキルオキシ低級アルキル基、低級アルキル基が挙げられる。ここでいう「低級」とは炭素数4以下を示す。
【0031】
前記低級アルキルオキシ基としては、具体的には、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基等が挙げられる。低級アルキルオキシ低級アルキル基としては、具体的には、メチルオキシメチル基、エチルオキシメチル基、プロピルオキシメチル基、ブチルオキシメチル基等が挙げられる。低級アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0032】
また、前記アルコール性水酸基含有アルキルオキシ基、アルコール性水酸基含有アルキルオキシアルキル基またはアルコール性水酸基含有アルキル基における該アルキルオキシ基、該アルキルオキシアルキル基または該アルキル基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。好ましくは、前記アルコール性水酸基含有アルキルオキシ基またはアルコール性水酸基含有アルキルオキシアルキル基におけるそれらのアルキルオキシ部の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたもの、前記アルコール性水酸基含有アルキル基では、そのアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたもの、すなわち、アルコール性水酸基含有フルオロアルキルオキシ基、アルコール性水酸基含有フルオロアルキルオキシアルキル基またはアルコール性水酸基含有フルオロアルキル基が挙げられる。
【0033】
前記アルコール性水酸基含有フルオロアルキルオキシ基としては、(HO)C(CF32CH2O−基、2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシ−エチルオキシ基、(HO)C(CF32CH2CH2O−基、3−ビス(トリフルオロメチル)−3−ヒドロキシプロピルオキシ基等が挙げられ、アルコール性水酸基含有フルオロアルキルオキシアルキル基としては、(HO)C(CF32CH2O−CH2−基、(HO)C(CF32CH2CH2O−CH2−基等が挙げられ、アルコール性水酸基含有フルオロアルキル基としては、(HO)C(CF32CH2−基、2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシ−エチル基、(HO)C(CF32CH2CH2−基、3−ビス(トリフルオロメチル)−3−ヒドロキシプロピル基、等が挙げられる。
【0034】
前記フェノール性水酸基としては、例えば、ノボラック樹脂やポリ−(α−メチル)ヒドロキシスチレンなどに含まれるフェノール性水酸基が挙げられる。これらの中で、安価で容易に入手できることから、ポリ−(α−メチル)ヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基が好ましい。
【0035】
前記カルボキシル基としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸から誘導される構成単位におけるカルボキシル基が挙げられる。このエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。これらの中で、安価で容易に入手できることから、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0036】
<本発明の化合物および構成単位(a1)>
本発明の新規化合物(本発明の高分子化合物に対して「低分子化合物」と称することもある)は、下記一般式(16)
【0037】
【化5】

【0038】
(式中、R2は水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又はフッ素化低級アルキル基を表し、R1は炭素数20以下の脂肪族環式基であり、nは0または1〜5の整数を表す。)で示されることを特徴とし、この化合物から誘導される構成単位(a1)を、少なくともその単量体単位として含有する高分子化合物も本発明の高分子化合物に含まれる。
該構成単位(a1)は、本発明の新規化合物から誘導される構成単位であって、前記アルカリ可溶性基(i)が、置換基(R)を有していてもよいアクリル酸から誘導されるカルボキシル基からなり、該カルボキシル基の水素原子が酸解離性溶解抑止基(ii)で置換されている構成単位に該当する。
【0039】
上記一般式(16)中、R2は水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4の低級アルキル基又は炭素数1〜4のフッ素化低級アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。これらの中で、安価で容易に入手できることから、水素原子、メチル基であることが最も好ましい。nは0または1〜5の整数であり、0または1が好ましい。
【0040】
前記一般式(16)で表される化合物の中で好ましいものとして、下記一般式(17)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、R2は前記と同じであり、Xは2原子の水素原子または1原子の酸素原子を表す。n’は0又は1を表す。)
すなわち、Xが2原子の水素原子のときはメチレン鎖(−CH−)を意味している。
【0043】
前記一般式(17)で表される化合物の中で、より好ましいものとして、下記一般式(18)〜(20)で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化7】

【0045】
(R2は前記と同じ)
【0046】
【化8】

【0047】
(R2は前記と同じ)
【0048】
【化9】

【0049】
(R2は前記と同じ)
【0050】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算質量平均分子量(Mw)は、特に限定するものではないが、フォトレジスト組成物用として用いるうえで5000〜80000が好ましく、さらに好ましくは8000〜50000とされる。また、分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0程度であり、好ましくは2.5以下である。Mnは数平均分子量である。
【0051】
本発明の高分子化合物における、酸解離性溶解抑止基(ii)を導入する前の前駆体は、アルカリ可溶性基(i)を有する1種または2種以上の構成単位から構成することができる。以下、説明の便宜上、酸解離性溶解抑止基(ii)を導入する前のものを「前駆体」、導入後のものを「高分子化合物」として区別することがある。
該アルカリ可溶性基を有する構成単位として、好ましくは前記アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基を有する単量体単位から選ばれる少なくとも1種または2種以上の構成単位が用いられる。これら以外にも、従来公知のフォトレジスト組成物用高分子に用いられる構成単位を含むこともできる。
【0052】
このアルカリ可溶性基を有する構成単位としては、例えば、下記化学式(21)から(29)で示されるような、アルコール性水酸基に結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、少なくとも一つのフッ素原子を有するアルコール性水酸基を有する構成単位、(30)〜(31)で示されるような、フェノール性水酸基を有する構成単位、および(32)〜(35)又は(45)のRが水素原子の場合で示されるような、カルボキシル基を有する構成単位などを挙げることができる。
なお、化学式(22)で表される構成単位は、化学式(23)で示されるように、四フッ化エチレンから誘導される構成単位と併用することも好ましい。
【0053】
【化10】

【0054】
【化11】

【0055】
【化12】

【0056】
高分子化合物は、公知の方法、前記非特許文献に記載の方法によって合成できる。
前駆体におけるアルカリ可溶性基(i)の水素原子を置換して酸解離性溶解抑止基(ii)を導入する方法は、例えば、塩素、臭素などのハロゲン原子を含有したアルコール化合物を用いてハロゲン化メチルエーテル化合物を合成し、これを前駆体のアルカリ可溶性基と反応させて、酸解離性溶解抑止基(ii)を導入することができる。
例えば、クロロメチルエーテル化合物を出発物質とし、前駆体のアルコール水酸基、カルボキシル基、およびフェノール性水酸基から選択されるいずれか一つのアルカリ可溶性基(i)と反応させることにより、該アルカリ可溶性基(i)を式(1)で表される酸解離性溶解抑止基で保護することができる。
【0057】
前記クロロメチルエーテル化合物は、下記反応式に示すような公知の方法により合成することができる。すなわち、アルコール化合物にパラホルムアルデヒドを加え、該アルコール化合物に対し、2.0〜3.0当量の塩化水素ガスを吹き込み、塩酸酸性下、40〜100℃にて反応する。反応終了後、生成物を減圧蒸留することにより、目的のクロロメチルエーテル化合物を得ることができる。下記反応式において、Rは目的とする化合物における「−(CH−R」で表される基に対応する。
【0058】
【化13】

【0059】
前記クロロメチルエーテル化合物としては、例えば、下記化学式(36)で表される4−オキソ−2−アダマンチルクロロメチルエーテル、下記化学式(37)で表される2−アダマンチルクロロメチルエーテル、下記化学式(38)で表される1−アダマンチルメチルクロロメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0060】
【化14】

【0061】
アルカリ可溶性基(i)としてフェノール性水酸基を有する前駆体は、例えば、ポリ−(α−メチル)ヒドロキシスチレン樹脂に前記ハロゲン化メチルエーテル化合物を反応させて得ることができる。
【0062】
アルカリ可溶性基(i)としてカルボキシル基を有する前駆体は、例えば、前記ハロゲン化メチルエーテル化合物をアクリル酸又はメタクリル酸などの不飽和カルボン酸と反応させて得た不飽和カルボン酸エステルを重合することにより得ることができる。
【0063】
前記ハロゲン化メチルエーテル化合物、またはそれ以外の脂肪族環式基を有する化合物を、例えば、上記の化学式(21)から(35)で示されるようなアルカリ可溶性基(i)を有する構成単位または該構成単位を誘導する化合物と反応させることにより、酸解離性溶解抑止基(ii)を導入することができる。そして必要であれば、さらに重合させることによって本発明の高分子化合物を得ることができる。
【0064】
また、本発明の新規化合物(低分子化合物)は、置換基(R)を有していてもよいアクリル酸と前記ハロゲン化メチルエーテル化合物を反応させることにより製造することができる。置換基(R)の導入は任意の手順で行うことができる。
【0065】
<フォトレジスト組成物>
本発明にかかるフォトレジスト組成物は、少なくとも、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含有し、この基材樹脂成分(A)が、前述の本発明にかかる高分子化合物であることを特徴とする。
【0066】
本発明のフォトレジスト組成物は、上記特徴を備えるものであれば、ポジ型であってもネガ型であってもよい。好ましくはポジ型である。
ネガ型の場合、(A)成分としてアルカリ可溶性樹脂が用いられると共に架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光により(B)成分から酸が発生すると、かかる酸が作用し、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤との間で架橋が起こり、アルカリ可溶性樹脂がアルカリ不溶性へと変化する。前記架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基又はアルコキシメチル基を有するメラミン、尿素又はグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤が用いられる。
ポジ型の場合、(A)成分は、いわゆる酸解離性溶解抑止基を有するアルカリ不溶性のものであり、露光により前記(B)成分から発生した酸が作用すると、酸解離性溶解抑止基が解離し、これによって(A)成分全体がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化する。そのため、レジストパターンの形成においてマスクパターンを介して露光すると、または露光に加えて露光後加熱(PEB)を行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することによりポジ型のレジストパターンが形成できる。ポジ型の場合、(A)成分としては、本願発明の高分子化合物が好ましく用いられる。
【0067】
前記基材樹脂成分(A)において、アルカリ可溶性基(i)としてフェノール性水酸基を有する高分子化合物を前駆体とする場合、該(A)成分を構成する全構成単位に対して、アルカリ可溶性基(i)を有する構成単位の割合は好ましくは50〜95モル%、更に好ましくは55〜90モル%である。一方、酸解離性溶解抑止基(ii)で保護されている構成単位の割合は、好ましくは3〜50モル%であり、さらに好ましくは7〜30モル%である。
【0068】
前記基材樹脂成分(A)において、アルカリ可溶性基(i)としてアルコール性水酸基を有する高分子化合物を前駆体とする場合、該(A)成分を構成する全構成単位に対して、アルカリ可溶性基(i)を有する構成単位の割合は好ましくは50〜95モル%、更に好ましくは55〜90モル%である。一方、酸解離性溶解抑止基(ii)で保護されている構成単位の割合は、好ましくは3〜50モル%であり、さらに好ましくは5〜35モル%である。
【0069】
<構成単位(a1)>
前記基材樹脂成分(A)において、アルカリ可溶性基(i)としてカルボキシル基を有する高分子化合物を前駆体とする場合、酸解離性溶解抑止基(ii)で保護されている構成単位として前記一般式(2)で表される化合物から誘導される構成単位(a1)を用いることが好ましい。
この場合、該構成単位(a1)と、従来、化学増幅型フォトレジスト組成物に用いられている公知の他の構成単位とを共重合させ、基材樹脂成分(A)として用いることができる。該他の構成単位として、例えば、以下の(a2)〜(a6)に示すような構成単位が挙げられる。かかる他の構成単位としては、例えば(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成するものが広く知られている。
構成単位(a1)としては、下記一般式(39)から選択される少なくとも1種の化合物から誘導される構成単位を用いることができる。これらは、アセタール基(−R−O−R’;アルコキシアルキル基)を有しているため、例えば、後述する構成単位(a2)と比べて酸の作用により解離しやすい傾向にある。従って、酸発生剤より発生する酸が弱いもの(後述するジアゾメタン系酸発生剤やオキシムスルホネート系酸発生剤やアニオン部にカンファースルホン酸を有するオニウム塩等)でも十分に酸解離性溶解抑止基を解離させることができる。
【0070】
【化15】

【0071】
(式中、R’は前記化学式(4)〜(15)で示される基を表し、Rは前記に同じ)
【0072】
その中でも、下記化学式(40)〜(42)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0073】
【化16】

【0074】
(R2は前記に同じ)
【0075】
【化17】

【0076】
(R2は前記に同じ)
【0077】
【化18】

【0078】
(R2は前記に同じ)
【0079】
上記(40)〜(42)で表される構成単位(a1)を酸解離性溶解抑止基を有する構成単位として用いることでラインエッジラフネスが低減するため好ましい。また、弱い酸でも解離させることができる為、様々な酸発生剤を使用することができるため好ましい。また、露光余裕度が向上するため好ましい。また、露光面積余裕度も向上するため好ましい。露光面積余裕度とは、マスクの被覆率やセル内座標(露光装置のセル内の周辺部 または中心部のいずれに位置するか)の異なりによって、レジスト形状や寸法が変化してしまう問題である。
本発明のアセタールタイプの保護基は、脱保護エネルギーが非常に低く、露光エネルギーのみで脱保護反応が進行することより、酸の拡散や失活の影響を受け難い為、露光面積余裕度が向上すると考えられる。
また、後述する構成単位(a2)のような(メタ)アクリル酸の3級エステル化合物に比べ熱分解点が高いため、熱安定性が向上するため好ましい。従って、保存安定性も向上する。更には、後述する構成単位(a2)と比べ、Tg(ガラス転移点)が低くかつ露光時に保護基が解離する為((a2)単位はPEB時に保護基が解離する)、低温でPEBを行うことができる。すなわち酸発生剤の拡散を容易にコントロールすることができ、レジストパターン形状の制御が容易である為好ましい。またPEBマージンも良好となるため好ましい。また、SiON基板のような無機基板上でも、良好な解像性及びレジストパターン形状を有することから好ましい。
【0080】
本発明のフォトレジスト組成物中の酸解離性溶解抑止基として、後述する(a2)を含んでいても良いが、前記(a1)単位が(A)成分中の酸解離性溶解抑止基として50質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、100質量%であることが最も好ましい。
【0081】
<構成単位(a2)>
構成単位(a2)としては、単環式基又は多環式基含有酸解離性溶解抑止基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される単位であり、構成単位(a1)以外の酸解離性溶解抑止基を有する構成単位を挙げることができる。これらは本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
前記単環式基としては、シクロアルカンから1個の水素原子を除いた基、例えばシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂肪族単環式基が挙げられる。多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどとして、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基、すなわち脂肪族多環式基が挙げられる。ここで、これらの単環式基又は多環式基は、ArFレジストにおいて多く提案されたもので、本発明においてもこれらの単環式基又は多環式基を任意に選択し使用することができるが、中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデカニル基等の脂肪族多環式基を用いるのが、工業上入手し易いなどの点で好ましい。具体的には、下記一般式(43)、(44)または(45)から選択される少なくとも1種の構成単位が、解像性、耐ドライエッチング性に優れている等の点で好ましい。
【0082】
【化19】

【0083】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基、R4は低級アルキル基である)
【0084】
【化20】

【0085】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基、R5およびR6はそれぞれ独立して低級アルキル基である)
【0086】
【化21】

【0087】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基、R7は第3級アルキル基である)
【0088】
一般式(43)で表される構成単位は、(メタ)アクリル酸のエステル部の酸素原子(−O−)に隣接する炭素原子が、アダマンチル基のような環骨格上の第3級アルキル基となる場合である。
3としては、水素原子またはメチル基、さらには炭素数2〜5程度の低級アルキル基、具体的にはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
また、R4としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。ここで、R4を炭素数2以上のアルキル基とすれば、メチル基の場合に比べて酸解離性が高くなる傾向にあり、好ましい。ただし、工業的にはメチル基、エチル基とするのが最も好ましい。
【0089】
一般式(44)で表される構成単位は、(メタ)アクリル酸のエステル部の酸素原子(−O−)に隣接する炭素原子が第3級アルキル基であり、該アルキル基中にさらにアダマンチル基のような環骨格が存在する場合である。R3は、前記一般式(43)の場合と同じ定義であり、R5およびR6はそれぞれ独立した低級アルキル基、すなわち前記した炭素数1〜5程度の直鎖状または分岐状アルキル基である。このような基は、2−メチル−2−アダマンチル基より酸解離性が高くなる傾向がある。なお、前記のR5およびR6については、共にメチル基とするのが工業的に好ましい。
【0090】
一般式(45)で表される構成単位は、(メタ)アクリル酸エステル部ではなく、別のエステル部の酸素原子(−O−)に隣接する炭素原子が第3級アルキル基であり、該エステル部と(メタ)アクリル酸エステル部とをテトラシクロドデカニル基のような環骨格で連結する場合である。一般式(45)で表される単位において、R3は前記一般式(43)の場合と同じ定義であり、Rはtert−ブチル基やtert−アミル基のような第3級アルキル基である。なお、Rについては、tert−ブチル基とするのが工業的に好ましい。
また、このような一般式(43)〜(45)で表される構成単位の中では、特に一般式(43)で表される構成単位で、かつR4がメチル基またはエチル基であるものが、解像性に優れる等の点で好ましい。
【0091】
<構成単位(a3)>
構成単位(a3)は、ラクトン含有単環または多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。ラクトン官能基は、本発明の組成物から形成されるフォトレジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
なお、ここでのラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a3)としては、このようなラクトン官能基と環基とを共に持てば、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられ、また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン基を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。特に、以下のような構造式(46)、または構造式(47)を有するラクトン含有トリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が、工業上入手し易いなどの点で有利である。
【0092】
【化22】

【0093】
【化23】

【0094】
また、構成単位(a3)として具体的には、ラクトン含有モノシクロアルキル基またはトリシクロアルキル基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が挙げられ、より具体的には、下記一般式(48)〜(50)で表される構成単位が挙げられる。
【0095】
【化24】

【0096】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0097】
【化25】

(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0098】
【化26】

【0099】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0100】
3としては、水素原子またはメチル基、さらには炭素数2〜5程度の低級アルキル基、具体的にはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0101】
また、このような一般式(48)〜(50)で表される構成単位の中では、近接効果の抑制・低減についての効果が優れる等の点では、α炭素にエステル結合を有する一般式(50)で表される(メタ)アクリル酸のγ−ブチロラクトンエステル、すなわちγ−ブチロラクトンの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、一般式(48)、(49)で表される(メタ)アクリル酸のノルボルナンラクトンエステル、すなわちノルボルナンラクトンの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位は、得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性がさらに良好であるため、好ましい。特に、一般式(49)で表される構成単位はその効果が極めて高く、好ましい。
【0102】
前記(a3)単位は、1種でも良いし、相互に異なる2種以上を組み合わせて用いることも可能である。樹脂骨格中に相互に異なる2種以上のラクトン骨格を導入することによりフォトレジスト膜の基板への密着性やアルカリ現像液親和性及びエッチング耐性が更に向上するため好ましい。前記好ましいラクトンの組合せとして、単環式のラクトンと多環式のラクトンを組み合わせて用いることが好ましく、一般式(50)で示されるγ−ブチロラクトンの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位と一般式(48)又は(49)で表されるノルボルナンラクトンの(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とを組み合わせて用いることがエッチング耐性や基板密着性が向上するため最も好ましい。
【0103】
<構成単位(a4)>
構成単位(a4)は、極性基含有多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位であり、極性基を有することにより、樹脂成分(A)全体の現像液との親水性を高め、露光部のアルカリ溶解性を向上し、これにより解像性の向上に寄与するものである。ここで、多環式基としては、前記の構成単位(a1)の場合と同様の多環式基を用いることができる。該極性基としては、シアノ基、カルボキシル基、水酸基などが挙げられ、水酸基であることが好ましい。
このような構成単位(a4)としては、極性基含有多環式基であれば特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、水酸基含有アダマンチル基、特に下記一般式(51)で表される構成単位が、耐ドライエッチング性を上昇させる効果と、パターン断面を矩形状にする効果とを有する点で好ましい。
【0104】
【化27】

【0105】
(式中、R3は前記と同じであり、hは1〜3の整数である。)
【0106】
これらの中でも、hが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0107】
<構成単位(a5)>
構成単位(a5)は、前記構成単位(a1)(a2)、(a3)、(a4)以外の多環式基含有非酸解離性溶解抑止基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
多環式基含有非酸解離性溶解抑止基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位とは、露光前後の(A)成分全体の疎水性を高めてアルカリ溶解性を抑制する機能を有する構成単位である。すなわち、露光前の(A)成分全体のアルカリ溶解性を低減させるとともに、露光後に、(B)成分から発生する酸の作用により解離することなく、前記構成単位(a1)又は(a2)の酸解離性溶解抑止基の解離により(A)成分全体がアルカリ可溶性へと変化した際の(A)成分全体のアルカリ溶解性を、アルカリ不溶とならない範囲で低減する溶解抑制性を有する基を含む構成単位である。
【0108】
前記構成単位(a5)は、前記構成単位(a1)、構成単位(a2)、構成単位(a3)、および構成単位(a4)とは重複しない。すなわち、構成単位(a1)及び(a2)における酸解離性溶解抑止基、構成単位(a3)におけるラクトン基、構成単位(a4)における極性基といった基をいずれも保持しない。
構成単位(a5)の多環式基としては、前記構成単位(a2)の場合と同様の多環式基を用いることができる。
【0109】
このような構成単位(a5)としては、ArFポジ型レジスト材料として従来から知られている多数のものが使用可能であるが、特にトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種より誘導される構成単位が、工業上入手し易いなどの点で好ましい。例示したこれらの構成単位を、以下に一般式(52)〜(54)として示す。これらの中でも、一般式(52)で表される構成単位は、得られるレジストパターンの形状、例えば矩形性が特に良好であるため、好ましい。
【0110】
【化28】

【0111】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0112】
【化29】

【0113】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0114】
【化30】

【0115】
(式中、R3は水素原子または低級アルキル基である)
【0116】
3としては、水素原子またはメチル基、さらにはC2〜C5程度の低級アルキル基、具体的にはエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0117】
<構成単位(a6)>
構成単位(a6)は、前記(a1)〜(a5)単位とは重複しないものであり、 下記一般式(55)で表され、置換基を有していてもよいアクリル酸エステルに結合した環式基X’と、該環式基X’に結合しているフッ素化有機基とから構成されている化合物から誘導される構成単位である。このフッ素化有機基は、有機基の水素原子の少なくとも一部がフッ素により置換されて形成され、かつ、アルコール性水酸基を有することを特徴とする。前記(a6)単位を有することでアルカリ溶解性向上が期待される。このことにより溶解コントラストの増加により解像性が向上する為好ましい。
【0118】
【化31】

【0119】
は前記に同じである。X’は2価または3価の環式基を、Yは2価の炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキルオキシ基を示す。p及びqはそれぞれ独立に1から5の整数を、sは1または2の整数を示す。
【0120】
前記一般式中、X’で表される2価または3価の環式基としては、環式基であれば特に限定されず、例えば脂肪族や芳香族の環式基を挙げることができる。この中でも、KrF露光用のフォトレジスト組成物では芳香族環式基を使用することができる。また、特にArF露光用のフォトレジスト組成物では、フォトレジスト膜の透明性が向上する点から、脂肪族環式基を用いることが好ましい。
X’が2価のときs=1である。X’が3価のときs=2である。つまりX’が3価のときX’には2つのフッ素化有機基が結合している。
【0121】
前記芳香族環式基としては、特に限定なく、様々な単環式または多環式の2価または3価の芳香族環式基を用いることができる。例えば芳香族炭化水素から2個または3個の水素原子を除いた基が挙げられ、かかる芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン等を挙げることができる。
【0122】
前記脂肪族環式基としては、特に限定なく、様々な単環式または多環式の2価または3価の脂肪族環式基を用いることができる。例えば脂肪族環式炭化水素から2個または3個の水素原子を除いた基が挙げられ、かかる脂肪族環式炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの単環式の脂肪族環式炭化水素、および多環式の脂肪族環式炭化水素を挙げることができる。これらの炭化水素から2つ又は3つの水素原子を除き、脂肪族環式基として用いる。
この中でも、多環式脂肪族炭化水素がより好ましく、例えば、アダマンタン、ノルボルナン、ノルボルネン、メチルノルボルナン、エチルノルボルナン、メチルノルボルネン、エチルノルボルネン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどを挙げることができる。この様な多環式炭化水素は、ArFレジストにおいて、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの中でもアダマンタン、ノルボルナン、ノルボルネン、メチルノルボルナン、エチルノルボルナン、メチルノルボルネン、エチルノルボルネン、テトラシクロドデカンが工業上好ましく、ノルボルナンが最も好ましい。
Yは2価の炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキルオキシ基であり、特に限定されないがメチレン基が好ましい。p、q、sはそれぞれ1であることが好ましい。
【0123】
その中でも、下記一般式(56)で表される化合物が最も好ましい。
【0124】
【化32】

【0125】
(Rは前記に同じ。)
【0126】
<他の構成単位>
また、本発明のポジ型フォトレジスト組成物においては、(A)成分として、前記の各構成単位(a1)〜(a6)を形成するモノマーに、従来化学増幅型のポジ型レジストとして公知の耐ドライエッチング性向上基や酸非解離性の溶解抑止基を有するアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのアルカリ可溶性とするためのエチレン性二重結合を有するカルボン酸、アクリル樹脂の製造に用いられる公知のモノマーなどを、必要に応じて適宜組み合わせ、共重合させて用いることもできる。
【0127】
前記アクリル酸誘導体としては、例えばアクリル酸ナフチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸3−オキソシクロヘキシル、アクリル酸とテルピネオールとのエステル、アクリル酸と3−ブロモアセトンとのエステルなどのカルボキシル基の水酸基を耐ドライエッチング性向上基や酸非解離性置換基で保護したアクリル酸エステルなどが挙げられる。また、メタクリル酸誘導体としては、これらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸の誘導体を挙げることができる。
【0128】
また、エチレン性二重結合を有するカルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
アクリル樹脂の製造に用いられる公知のモノマーの例としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸アルキルエステルおよび対応するメタクリル酸アルキルエステルなどを挙げることができる。
【0129】
<(a1)を含有する高分子化合物>
本発明のポジ型レジスト組成物に用いる基材樹脂成分(A)として好ましい高分子化合物は構成単位(a1)と構成単位(a3)とを含む共重合体が解像性やレジストパターン形状が良好になる点から好ましい。特には構成単位(a1)と構成単位(a3)と構成単位(a4)とを含む共重合体が更に好ましい。また、基材樹脂成分中に、相互に異なる構成単位(a3)を2つ有する共重合体も好ましい。
【0130】
本発明の高分子化合物を2元系((a1)/(a3)の共重合体)で用いる場合、構成単位(a1)は、(A)成分の全構成単位の合計に対して、20〜80モル%、好ましくは30〜60モル%、構成単位(a3)は、20〜80モル%、好ましくは30〜60モル%であると好ましい。
本発明の高分子化合物を2元系((a1)/(a6)の共重合体)で用いる場合、構成単位(a1)は、(A)成分の全構成単位の合計に対して、20〜80モル%、好ましくは30〜60モル%、構成単位(a3)は、20〜80モル%、好ましくは30〜60モル%であると好ましい。本発明の高分子化合物を3元系((a1)/(a3)/(a4)の共重合体)で用いる場合、構成単位(a1)は、(A)成分の全構成単位の合計に対して、20〜60モル%、好ましくは30〜50モル%、構成単位(a3)は、20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%、構成単位(a4)は、10〜50モル%、好ましくは20〜40モル%であると解像性やドライエッチング耐性に優れ好ましい。
【0131】
本発明の高分子化合物を4元系((a1)/(a3)/(a4)/(a5)の共重合体)で用いる場合、(A)成分中における各構成単位の割合については、構成単位(a1)が25〜50モル%、好ましくは30〜40モル%の範囲であり、構成単位(a3)が25〜50モル%、好ましくは30〜40モル%の範囲であり、構成単位(a4)が10〜30モル%、好ましくは10〜20モル%の範囲であり、構成単位(a5)が3〜25モル%、好ましくは5〜20モル%の範囲であるのが好適とされる。このような範囲とすれば、得られるポジ型レジスト組成物から形成される孤立パターンの焦点深度幅を大きく向上させ、かつ近接効果も十分に抑制してこれを大きく低減することができる。なお、前記の範囲を大きく逸脱すると、解像性が低下するといった不具合が生じるおそれがある。
【0132】
前記、(a1)/(a3)の共重合体、(a1)/(a6)の共重合体、(a1)/(a3)/(a4)の共重合体及び(a1)/(a3)/(a4)/(a5)の共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に構成単位(a2)や他の構成単位を共重合させて用いてもよい。
【0133】
かかる(a1)を含有する高分子化合物は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
本発明のフォトレジスト組成物における基材樹脂成分(A)の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚に応じて調整すればよい。例えば、後述の好ましい固形分濃度となるように調整される。
【0134】
<(B)成分>
本発明のフォトレジスト組成物に用いる酸発生剤成分(B)としては、公知の放射線の照射により酸を発生する化合物中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0135】
前記オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。これらのなかでもフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩が好ましい。
【0136】
前記オニウム塩系酸発生剤の中でも、酸の強度が弱い、アニオン部にカンファースルホン酸イオンを有するオニウム塩も用いることができる。具体的には下記化学式(57)で表される化合物等を例示できる。
【0137】
【化33】

【0138】
前記オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリル等が挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0139】
前記ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0140】
【化34】

【0141】
前記(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜15質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0142】
<(D)成分>
前記フォトレジスト組成物には、必要に応じ、さらに含窒素有機化合物(D)を含有することができる。化学増幅型レジスト組成物に含窒素化合物を酸拡散防止剤などとして少量配合することはすでに公知である。本発明においても、このような公知の含窒素有機化合物を添加することができる。そのような含窒素有機化合物としては、アミンやアンモニウム塩が挙げられる。
【0143】
前記アミンとしては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミンなどの脂肪族第二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、N−エチル−N−メチルブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデカニルアミン、トリドデシルアミン、トリテトラデカニルアミンなどの脂肪族第三級アミン(トリアルキルアミン、なお、上記における窒素に結合する3つのアルキル基は、同一でも異なってもよい。)、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブタノールアミンなどの第三級アルカノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N−エチル−N−メチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N−メチルジフェニルアミン、N−エチルジフェニルアミン、トリフェニルアミンなどの芳香族第三級アミンなどを挙げることができる。
【0144】
前記アンモニウム塩としては、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン等の第4級アルキルアンモニウムイオンと乳酸のような水酸基を有する有機カルボン酸のイオンとの塩を挙げることができる。
これらの中でも、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどの低級の第3級アルカノールアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリデカニルアミン、トリドデシルアミン、トリテトラデカニルアミンなど炭素数6以上15以下のトリアルキルアミンが微細なレジストパターンのトップ部分の膜減りの低減効果に優れることから、好ましい。
【0145】
前記含窒有機素化合物(D)は、基材樹脂成分(A)100質量部に対して通常0.01〜5質量部の範囲で用いられる。この範囲より少ないと、露光により発生した酸の拡散抑止作用によるパターンの形状改善効果が得られないし、多すぎると、酸の拡散を過剰に抑止して、いわゆる露光感度が劣化させるので、好ましくない。
【0146】
<酸成分>
また、本発明においては、前記含窒有機素化合物(D)の添加による感度劣化防止等の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸またはリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。
【0147】
前記有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
【0148】
前記リンのオキソ酸もしくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。該有機カルボン酸またはリンのオキソ酸若しくはその誘導体成分は、樹脂成分(A)100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0149】
<有機溶剤(E)>
本発明のフォトレジスト組成物は、前記基材樹脂成分(A)、前記酸発生剤(B)、および含窒素有機化合物(D)、さらに必要に応じて添加される任意成分を有機溶剤(E)に溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のもの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
【0150】
前記有機溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤との配合比は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
【0151】
より具体的には、極性溶剤として乳酸エチル(EL)を配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは3:7〜7:3であると好ましい。また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。(E)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜圧に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはフォトレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内とされる。
【0152】
<その他の成分>
また、本発明のフォトレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えば、公知の溶解抑制剤、フォトレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを添加含有させることができる。
【0153】
また、本発明の酸解離性溶解抑止基(ii)を用いて保護された、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、またはカルボキシル基を有する化合物は、溶解抑制剤としても用いることができる。好ましくは、化学式(21)〜(35)の各構成単位に対応するモノマー成分におけるアルカリ可溶性基(i)、特にはアルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基を、本発明にかかる酸解離性溶解抑止基(ii)を用いて、保護した化合物は、溶解抑制剤として用いることができる。このような化合物を酸解離性溶解抑制剤(C)として基材樹脂成分(A)と共に含有させたフォトレジスト組成物は、露光前ではアルカリ現像への溶解抑止作用を発現し、露光プロセス後では脱保護によるアルカリ溶解性を発現する。これにより、レジストパターンのパターン膜べりが防止でき、高解像性の微細パターンを提供することができる。
【0154】
特に本発明の化合物は、分子内に脂肪族環式基を有する酸解離性溶解抑止基を有し、酸の作用によりアルカリ溶解性が大きく変化する。したがって、該化合物から誘導される構成単位を有する本発明の高分子化合物によれば、化学増幅型フォトレジストの系において矩形性、解像性、および感度が良好で、かつ酸発生剤より発生する酸が弱いものでも十分に酸解離性溶解抑止基が解離されて良好なフォトレジスト性能が発現するフォトレジスト組成物を実現することができる。
【0155】
併せて、本発明のフォトレジスト組成物においては、エッチング耐性が向上し、とくに親水性基がさらに導入された場合にはレジストパターンの基板への密着性が向上し、アルカリ現像液への親和性向上により現像欠陥が低減するという効果を得ることができる。
本発明のフォトレジスト組成物はリソグラフィーによる半導体集積回路のパターニング等に好適に用いることができる。特に、波長300nm以下の光源、中でもKrF、ArF、F2エキシマレーザーを用いた微細パターニングにおいて優れた解像特性を達成できる。その中でも、ArFエキシマレーザーであることが最も好ましい。更には電子線に対しても有効である。
【0156】
本発明のレジストパターン形成方法は、このようなフォトレジスト組成物を用いて基板上にフォトレジスト膜を形成する工程、前記フォトレジスト膜を露光する工程、前記フォトレジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0157】
本発明のフォトレジスト組成物は、通常のリソグラフィープロセスによりレジストパターンを形成する。そのような方法とは、まず、基板上にフォトレジスト組成物を回転塗布などにより塗布して、乾燥させフォトレジスト膜を形成する。次いで、マスクパターンを介して選択的に露光し、露光後加熱(PEB)する。最後にアルカリ水溶液にて現像し、レジストパターンが形成できる。なお、さらにポストベーク処理を必要に応じて行ってもよい。光源としては、限定されるものではないが、200nm以下の遠紫外光、具体的にはArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極端紫外光)など、電子線、軟X線、X線などを使用することができる。特には、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、およびF2エキシマレーザーが好ましい。特に本発明の新規化合物を用いた高分子化合物(共重合体)を用いる場合には、ArFエキシマレーザーであることが好ましい。更には電子線に対しても有効である。
【0158】
レジストパターン形成の際の条件、すなわち、レジスト塗布の回転数、プレベーク温度、露光条件、露光後加熱(PEB)条件、アルカリ現像条件も、これまで慣用的に行なわれている条件でよい。具体的には、回転数は1200〜3500rpm程度、より具体的には約2000rpm程度であり、プレベーク(PB)温度は70〜130℃の範囲であり、これによって、レジスト膜厚80〜300nmを形成する。露光は、マスクを介して露光すればよい。選択的露光におけるマスクとしては、通常のバイナリ−マスクを用いる。このようなマスクとしては、位相シフトマスクを用いてもよい。露光後加熱(PEB)温度は90〜140℃の範囲であり、アルカリ現像条件は、1〜5質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)現像液により、23℃にて、15〜90秒間現像し、その後、水リンスを行う。
【実施例】
【0159】
[合成例1]4−オキソ−2−アダマンチルクロロメチルエーテル(化学式(58)で表される化合物。以下、単に化合物名の後に(58)等と式番号のみを記載することがある。)の合成
4−オキソ−2−ヒドロキシアダマンタンにパラホルムアルデヒドを加え、4−オキソ−2−ヒドロキシアダマンタンに対し2.5当量の塩化水素ガスを吹き込み、50℃にて12時間反応させた。反応終了後、生成物を減圧蒸留し、下記化学式(58)でしめされる4−オキソ−2−アダマンチルクロロメチルエーテル(化合物1)を得た。
【0160】
[合成例2]2−アダマンチルクロロメチルエーテル(59)の合成
2−ヒドロキシアダマンタンにパラホルムアルデヒドを加え、2−ヒドロキシアダマンタンに対し2.5当量の塩化水素ガスを吹き込み、50℃にて12時間反応させた。反応終了後、生成物を減圧蒸留し、下記化学式(59)でしめされる2−アダマンチルクロロメチルエーテル(化合物2)を得た。
【0161】
[合成例3]1−アダマンチルメチルクロロメチルエーテル(60)の合成
アダマンタン−1−メタノールにパラホルムアルデヒドを加え、アダマンタン−1−メタノールに対し2.5当量の塩化水素ガスを吹き込み、50℃にて12時間反応させた。反応終了後、生成物を減圧蒸留し、下記化学式(60)でしめされる1−アダマンチルメチルクロロメチルエーテル(化合物3)を得た。
【0162】
【化35】

【0163】
[合成例4]2−アダマンチルオキシメチル メタクリレート(61)の合成
6.9gのメタクリル酸を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン8.0gを加えた。室温で攪拌した後、15gの化合物2(59)を溶解させたテトラヒドロフラン100mLを滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を溶媒留去し、酢酸エチルに200mLに溶解させた後、純粋(100mL×3)で洗浄し、溶媒留去した。氷冷下放置後、得白色固体を得た。この化合物を化合物4とし、化学式(61)で表す。赤外吸収スペクトル(IR)、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果を示す。IR(cm-1):2907、2854( C-H伸縮)、1725( C=O伸縮)、1638( C=C伸縮)1H−NMR(CDCl3、内部標準:テトラメチルシラン)ppm:1.45〜2.1(m、17H)、3.75(s、1H)、5.45(s、2H)、5.6(s、1H)、6.12(s、1H)
【0164】
【化36】

【0165】
[合成例5]4−オキソ−2−アダマンチルオキシメチル メタクリレート(62)の合成
2.2gのメタクリル酸を50mLのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン2.5gを加えた。室温で攪拌した後、4.3gの化合物1(58)を溶解させたテトラヒドロフラン50mLを滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を溶媒留去し、酢酸エチルに100mLに溶解させた後、純粋(50mL×3)で洗浄し、溶媒留去した。氷冷下放置後、白色固体を得た。この化合物を化合物5とし、化学式(62)で表す。赤外吸収スペクトル(IR)、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果を示す。IR(cm-1):2926、2861(C-H伸縮))、1725(C=O伸縮)、1636(C=C伸縮)1H−NMR(CDCl3、内部標準:テトラメチルシラン)ppm:1.62〜3.85(m、15H)、4.2(s、1H)、5.4(s、2H)、5.65(s、1H)、6.15(s、1H)
【0166】
【化37】

【0167】
[合成例6]1−アダマンチルメチルオキシメチルメタクリレート(63)の合成
5.5gのメタクリル酸を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、トリエチルアミン6.5gを加えた。室温で攪拌した後、12.9gの化合物3(60)を溶解させたテトラヒドロフラン100mLを滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を溶媒留去し、酢酸エチルに100mLに溶解させた後、純粋(100mL×3)で洗浄し、溶媒留去し、無色油状物を得た。この化合物を化合物6とし、化学式(63)で表す。赤外吸収スペクトル、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果を示す。IR(cm-1):2904、2850(C-H伸縮))、1727(C=O伸縮)、1638(C=C伸縮)1H−NMR(CDCl3、内部標準:テトラメチルシラン)ppm:1.46〜1.96(m、18H)、3.22(s、2H)、5.34(s、2H)、5.6(s、1H)、6.15(s、1H)
【0168】
【化38】

【0169】
<構成単位(a1)を有する樹脂1から樹脂5の合成>
[合成例7] 樹脂1(化学式(64)で表される高分子化合物。以下、単に樹脂番号の後に(64)等と式番号のみを記載することがある。)の合成
8.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル5.4gを50mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.52gを加えた。24時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂1とし、化学式(64)で表す。樹脂1の分子量(Mw)は21100であった。また、カーボン13(質量数13のカーボンの意、以下同様。)核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)を測定した結果、式中の組成比(モル%、以下同様。)はm:n=0.49:0.51であった。
【0170】
【化39】

【0171】
[合成例8] 樹脂2(65)の合成
1.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル0.68g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリル酸エステル0.47gを20mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.08gを加えた。24時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂2とし、化学式(65)で表す。この樹脂2の分子量(Mw)は11500であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n:l=0.34:0.42:0.24であった。
【0172】
【化40】

【0173】
[合成例9] 樹脂3(66)の合成
1.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル0.68g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリル酸エステル0.44gを20mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.08gを加えた。24時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂3とし、化学式(66)で表す。この樹脂3の分子量(Mw)は10800であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はm:n:l=0.29:0.45:0.26であった。
【0174】
【化41】

【0175】
[合成例10] 樹脂4(67)の合成
1.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル0.68g、ノルボルナンラクトンメタクリル酸エステル(一般式(49)のR3がメチル基である構成単位に対応するモノマー)0.47gを20mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.08gを加えた。24時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂4とし、化学式(67)で表す。この樹脂4の分子量(Mw)は12000であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はm:n:l=0.37:0.42:0.21であった。
【0176】
【化42】

【0177】
[合成例11] 樹脂5(68)の合成
1.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル0.68g、ノルボルナンラクトンメタクリル酸エステル(一般式(48)のR3がメチル基である構成単位に対応するモノマー)0.44gを20mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.08gを加えた。24時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂5とし、化学式(68)で表す。この樹脂5の分子量(Mw)は12900であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はm:n:l=0.36:0.42:0.22であった。
【0178】
【化43】

【0179】
<アルカリ可溶性基がアルコール性水酸基である樹脂7から樹脂9の合成>
付加重合により合成した樹脂6を用い、前記化合物1〜3をそれぞれ導入した樹脂7から樹脂9が得られた。樹脂6から樹脂9は、それぞれ下記化学式(69)から(72)で表される。これらの樹脂の物性値を表1に示した。
【0180】
【化44】

【0181】
[樹脂6(69)の合成]
公知の金属触媒を用い、付加重合反応を用いて、化学式(69)で表される樹脂6を合成した。式中のxは100である。
【0182】
[合成例12]樹脂7(70)の合成
5.0gの樹脂6を70mLのテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム0.15gを加えた。室温で溶液系が均一になるまで攪拌した後、0.8gの化合物1を滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を1Lの水に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥後、テトラヒドロフランに溶解させ1Lのメタノール:純水(80:20)の混合物に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂7とする。
【0183】
[合成例13]樹脂8(71)の合成
5.0gの樹脂6を70mLのテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム0.15gを加えた。室温で溶液系が均一になるまで攪拌した後、0.7gの化合物2を滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を1Lの水に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥後、テトラヒドロフランに溶解させ1Lのメタノール:純水(80:20)の混合物に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂8とする。
【0184】
[合成例14]樹脂9(72)の合成
5.0gの樹脂6を70mLのテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム0.15gを加えた。室温で溶液系が均一になるまで攪拌した後、0.8gの化合物3を滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を1Lの水に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥後、テトラヒドロフランに溶解させ1Lのメタノール:純水(80:20)の混合物に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂9とする。
【0185】
【表1】

【0186】
<アルカリ可溶性基がフェノール性水酸基である樹脂10(74)の合成>
[合成例15]樹脂10(74)の合成
24.0gの下記化学式(73)で示されるポリ−4−ヒドロキシスチレン樹脂(73)を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム2.4gを加えた。室温で溶液系が均一になるまで攪拌した後、12gの化合物2を滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を1Lの水に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥後、テトラヒドロフランに溶解させ3Lのn−ヘプタンルに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い、白色な粉体樹脂10を得た。
樹脂10の分子量(Mw)は12400、分散度(Mw/Mn)は1.28であった。また、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した結果、化学式(74)における組成比はm:n=0.87:0.13であった。
【0187】
【化45】

【0188】
【化46】

【0189】
<構成単位(a1)を有する樹脂11から樹脂14の合成>
[合成例16]樹脂11(75)の合成
3.0gの化合物4とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル2.0gを45mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.20gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂11とし、化学式(75)で表す。この樹脂11の分子量(Mw)は12300、分散度(Mw/Mn)は1.96であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n:l=0.47:0.53であった。また、熱分解点は257.1℃、Tgは147.9℃であった。尚、本合成例及び比較合成例において、熱分解点は熱分析装置DSC6200(Seiko Instrument社製)にて10℃/minの昇温条件で測定を行った。また、Tg(ガラス転移点)は熱分析装置TG/DTA6200(Seiko Instrument社製)にて10℃/minの昇温条件で測定を行った。
【0190】
【化47】

【0191】
[合成例17]樹脂12(77)の合成
3.0gの化合物4と下記化学式(76)で表される化合物7を4.0gとを60mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.20gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂12とし、化学式(77)で表す。この樹脂12の分子量(Mw)は9800、分散度(Mw/Mn)は1.61であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n=0.57:0.43であった。また、熱分解点は234.5℃、Tgは114.1℃であった。
【0192】
【化48】

【0193】
【化49】

【0194】
[合成例18]樹脂13(78)の合成
6.0gの化合物6とγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル3.9gを90mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.37gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂13とし、化学式(78)で表す。この樹脂13の分子量(Mw)は12800、分散度(Mw/Mn)は1.87であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n=0.43:0.57であった。また、熱分解点は240.0℃、Tgは142.2℃であった。
【0195】
【化50】

【0196】
[合成例19]樹脂14(79)の合成
6.0gの化合物6と7.6gの化合物7とを120mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.37gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂14とし、化学式(79)で表す。この樹脂14の分子量(Mw)は11600、分散度(Mw/Mn)は1.60であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n=0.56:0.44であった。また、熱分解点は233.6℃、Tgは109.4℃であった。
【0197】
【化51】

【0198】
<比較例としての比較樹脂1〜4の合成>
[比較合成例1]比較樹脂1(80)の合成
9.9gの2-メチル-2-アダマンチルメタクリレートと6.0gのγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステルを140mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.63gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を比較樹脂1とし、化学式(80)で表す。この比較樹脂1の分子量(Mw)は8700、分散度(Mw/Mn)は1.83であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n=0.41:0.59であった。また、熱分解点は222.5℃、Tgは158.9℃であった。
【0199】
【化52】

【0200】
[比較合成例2]比較樹脂2(81)の合成
10.6gの2-メチル-2-アダマンチルメタクリレートと15.0gの化合物7を230mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.74gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を2Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を比較樹脂2とし、化学式(81)で表す。この比較樹脂2の分子量(Mw)は8780、分散度(Mw/Mn)は1.42であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、式中の組成比はm:n=0.64:0.36であった。また、熱分解点は215.7℃、Tgは133.3℃であった。
【0201】
【化53】

【0202】
[比較合成例3]比較樹脂3(83)の合成
下記化学式(82)で表される比較樹脂3’(Promerus社製)を15g(質量平均分子量=7640、分散度=1.93)を100mLのテトラヒドロフランに溶解し、水素化ナトリウム0.88gを加えた。室温で溶液系が均一になるまで攪拌した後、1.76gのクロロメチルメチルエーテル(東京化成工業株式会社製)を滴下した。室温で12時間攪拌した後、析出した塩を濾別した。得られた濾液を1Lの水に滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥後、テトラヒドロフランに溶解させ、1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。収量5.0g。この樹脂を比較樹脂3とし、化学式(83)で表す。この比較樹脂3における質量平均分子量(Mw)は14000、分散度(Mw/Mn)は2.14であり、水酸基の保護率は40.7%であった。
【0203】
【化54】

【0204】
【化55】

【0205】
[比較合成例4]比較樹脂4(83)の合成
比較合成例3において保護率を変えた。すなわち、クロメチルメチルエーテルの量を調節したこと以外は同様な方法を用いて反応を行った。得られた樹脂の質量平均分子量(Mw)は13900、分散度(Mw/Mn)は2.23であり、水酸基の保護率は20.8%であった。これを比較樹脂4とする。化学式(83)で表される。
【0206】
[実施例1〜3]ポジ型フォトレジストの露光解像性の確認
樹脂7から9を用いて、ポジ型フォトレジストの解像性をArF露光にて確認した。ポジ型フォトレジスト用組成物は、以下に示す酸発生剤、含窒素有機化合物、および溶剤を用いて、樹脂7から9についてそれぞれ調製した。
樹脂7〜9 100質量部
酸発生剤:TPS−PFBS 2.0質量部
含窒素有機化合物:トリイソプロパノールアミン 0.2質量部
溶剤:PGMEA 1250質量部
【0207】
「TPS−PFBS」はトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートを表す。「PGMEA」はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを表す。
【0208】
ポジ型フォトレジストの露光解像性を下記の表2に示す条件で確認した。
【0209】
【表2】

「現像条件:NMD−3 2.38%(東京応化工業製)の30秒」とは、NMD−3 2.38%(製品名、東京応化工業製)を用い、現像時間30秒の条件で現像したことを示す。
【0210】
以上の露光解像性評価を下記の表3に示した。本発明の高分子化合物の具体例である樹脂7から9をそれぞれ含有するポジ型フォトレジスト用組成物(実施例1から3)により、120nmのラインアンドスペースパターンが1:1で得られ、パターン形状は矩形性を示すことが明らかとなった。このときの露光量は14から15mJ/cmであり、良好な感度が得られた。
【0211】
【表3】

【0212】
[実施例4]
樹脂1を用いて、ポジ型フォトレジスト性能をArFエキシマレーザーの露光量を変化させた際のレジスト膜厚の変化から確認した。ポジ型フォトレジスト用組成物は、以下に示す酸発生剤、含窒素有機化合物、および溶剤を用いて調製した。レジスト膜厚は200nmに調製した。得られた露光量変化に対するレジスト膜厚変化を表す感度曲線を図1に示した。
樹脂1 100質量部
酸発生剤:TPS−PFBS 2.0質量部
含窒素有機化合物:トリイソプロパノールアミン 0.2質量部
溶剤:PGMEA 1250質量部
【0213】
図1のArF露光による感度曲線から明らかなように、ポジ型フォトレジストの性能を確認することができた。また、感度は良好であった。
【0214】
[実施例5〜8]
樹脂2から5を用いて、ポジ型フォトレジストの解像性をArF露光にて確認した。ポジ型フォトレジスト用組成物は、以下に示す酸発生剤、含窒素有機化合物、および溶剤を用いて、樹脂2から5についてそれぞれ調製した。
樹脂2〜5 100質量部
酸発生剤:TPS−PFBS 3.0質量部
含窒素有機化合物:トリイソプロパノールアミン 0.35質量部
溶剤:PGMEA 1250質量部
GBL 125質量部
【0215】
「GBL」はγ−ブチロラクトンを表す。
ポジ型フォトレジストの露光解像性を下記の表4に示す条件で確認した。
【0216】
【表4】

【0217】
以上の露光解像性評価を下記の表5に示した。本発明の高分子化合物の具体例である樹脂2から5をそれぞれ含有するポジ型フォトレジスト用組成物(実施例5から8)により、120nmのラインアンドスペースパターンが1:1で得られ、パターン形状は矩形性を示すことが明らかとなった。その時の露光量(感度)を表5に示す。
【0218】
【表5】

【0219】
[実施例9〜19、比較例1〜8]
下記表6に示す組成のポジ型レジスト組成物を調製した後、表7の条件でレジストパターンを形成して評価した。その結果を表8に示した。
【0220】
【表6】

【0221】
表6中の略語を示す。
PAG1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
PAG2:下記化学式(84)で表されるビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン
【0222】
【化56】

【0223】
PAG3:下記化学式(85)で表されるトリフェニルスルホニウムのカンファースルホン酸
【0224】
【化57】

【0225】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
EL:乳酸エチル
【0226】
【表7】

【0227】
比較例7及び8の条件は、表2の条件で、レジスト膜圧を200nmに変更して行った。
【0228】
【表8】

【0229】
PAG2を用いた場合、比較例2,5では解像しなかったのに対して、実施例10,13,18はラインアンドスペースのレジストパターンが得られた。
PAG3を用いた場合、比較例3は解像せず、比較例6では170nmのラインアンドスペースパターンが得られたが、これらに比べて実施例11,14,19は、解像性、感度ともに向上した。
ライン幅120nm、ピッチ240nmのラインアンドスペースパターンを形成し、実施例9、実施例12、実施例15、比較例1、比較例4についてそれぞれLER(ラインエッジラフネス:ラインエッジラフネスとは、ライン側壁の不均一な凹凸のことである。)を示す尺度である3σを求めた。なお、本実施例において、3σは、側長SEM(日立製作所社製,商品名「S−9220」)により測定し、この3σが小さいほどラフネスが小さく、均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。その結果、実施例9では6.4nm、実施例12では5.4nm、実施例15では6.9nm、比較例1では9.0nm、比較例4では6.9nmであった。このことからも、本発明の構成単位(a1)を用いることでLERが低減されることがわかった。
PAG1を用いた場合は、解像性は略同等であったが、実施例において感度の向上が認められた。
【0230】
[実施例20〜21、比較例9]
下記表9に示す組成のレジスト組成物を調整し、下記表10に示す実装条件でレジストパターンを形成した後、評価した結果を表11にまとめた。
【0231】
【表9】

【0232】
【表10】

【0233】
【表11】

【0234】
表11中、感度、LERについては以下の通りである。
感度:実施例20〜21については100nmのラインアンドスペースパターンのサイズが1:1となるときの感度を測定した。比較例9については160nmのラインアンドスペースパターンのサイズが1:1となるときの感度を測定した。
LER:実施例20〜21については、100nmのラインアンドスペースパターンのサイズが1:1のLERを測定した。比較例9については、160nmのラインアンドスペースパターンのサイズが1:1となるときのLERを測定した。
【0235】
上記の結果より、露光光源として電子線を用いても、本願発明のレジスト組成物は解像性、感度、LERにおいて優れた結果となった。
【0236】
[合成例20〜25]
合成例8と同様な方法で、下記に示す構造式が共通で、組成比等が異なる樹脂15〜20を合成した。その結果を表12に示した。
【0237】
【化58】

【0238】
[合成例26]
38.8gの(4−オキソ−2−アダマンチルオキシ)メチルメタクリレート(合成例5の化合物5に相当)と25.0g のγ-ブチロラクトンメタクリレートを640mLのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル2.41g を加えた。6時間還流した後、反応溶液を2Lのメタノールに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂21とし、その構造式を下記に示す。樹脂21の分子量(Mw)は12400、分散度(Mw/Mn)は2.01であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、組成比はm:n=0.48:0.52であった。その結果を表12に示した。
【0239】
【化59】

【0240】
[比較合成例5]
18.7gの2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、13.6gのγ−ブチロラクトンメタクリレート、及び9.5gの3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートを200mlのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル1.64gを加えた。6時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を比較樹脂5とし、その構造式を下記に示す。比較樹脂5の質量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は2.0であった。であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、下記構造式に示す各構成単位の組成比はm:n:l=0.4:0.4:0.2であった。
【0241】
【化60】

【0242】
[比較合成例6]
比較合成例1と同様な方法で比較樹脂6を合成した。比較樹脂6の質量平均分子量(Mw)は9200、分散度(Mw/Mn)は1.96であった。であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、下記構造式に示す各構成単位の組成比はm:n=0.44:0.56であった。
【0243】
【化61】

【0244】
【表12】

【0245】
[実施例22〜27、比較例10]
下記表13に示す組成のポジ型レジスト組成物を調整した。
次いで、8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(ブリューワーサイエンス社製、商品名ARC−29)を塗布し、225℃で60秒間焼成して反射防止膜を形成して基板とした。
該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて均一に塗布し、表14に示す条件でプレベーク(PAB)して、乾燥させることにより、レジスト層を形成した。ついで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S302(Nikon社製、NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)を用い、マスクを介して選択的に露光した。
そして、表14に示す条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、140nmのラインアンドスペース(1:1)のレジストパターン(以下、L/Sパターンという)を形成した。
【0246】
【表13】

【0247】
【表14】

【0248】
下記の評価を行い、その結果を表15に示した。
【0249】
[露光余裕度]
140nmL/Sパターンを正確に1:1で解像する露光量(感度)(EOP)と、140nmの±10%のL/Sパターンを解像する露光量変動幅(感度の変動幅)から得られた露光余裕度を下記式より算出した。
露光余裕度=〔E(126nm)−E(154nm)〕×100/EOP
EOP:140nmのL/Sを正確に1:1で得る際の感度(mJ/cm
E(154nm):154nmのL/Sを得る際の感度(mJ/cm
E(126nm):126nmのL/Sを得る際の感度(mJ/cm
【0250】
【表15】

【0251】
[実施例28、比較例11]
表13に示す組成のポジ型レジスト組成物を調整した。
次いで、8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(ブリューワーサイエンス社製、商品名ARC−29)を塗布し、225℃で60秒間焼成して反射防止膜を形成して基板とした。
該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて均一に塗布し、表14の条件でプレベークして、乾燥させることにより、レジスト層を形成した。ついで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S302(Nikon社製、NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)を用い、マスクを介して選択的に露光した。
そして、表14の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、130nmのラインアンドスペース(1:1)のレジストパターン(以下、L/Sパターンという)を形成した。
【0252】
下記の評価を行い、その結果を表16に示した。
【0253】
[LER]
1:1の130nmのL/Sパターンについて、LERを示す尺度である3σを求めた。なお、3σは、側長SEM(日立製作所社製,商品名「S−9220」)により、試料のレジストパターンの幅を32箇所測定し、その結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)である。この3σは、その値が小さいほどラフネスが小さく、均一幅のレジストパターンが得られたことを意味する。
【0254】
【表16】

【0255】
実施例22〜27と比較例10との結果を比較すると、本願発明の構成単位を有していることで、露光余裕度に優れていることがわかった。
また、実施例28と比較例11との結果を比較すると、LERに非常に優れていることがわかった。
【0256】
[合成例27]
21.0gの(4−オキソ−2−アダマンチルオキシ)メチルメタクリレート(合成例5の化合物5に相当)、13.6gのγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル(GBLMA)、及び9.5gの3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートを200mlのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル1.64gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂22とし、その構造式を下記に示す。
樹脂22の質量平均分子量(Mw)は10200、分散度(Mw/Mn)は1.72であった。
また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、下記構造式に示す各構成単位の組成比はm:n:l=0.4:0.4:0.2(モル%)であった。
【0257】
【化62】

【0258】
[合成例28]
15.7gの(4−オキソ−2−アダマンチルオキシ)メチルメタクリレート(合成例5の化合物5に相当)、17.0gのγ−ブチロラクトンメタクリル酸エステル(GBLMA)、及び9.5gの3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレートを200mlのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル1.64gを加えた。12時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂23とし、その構造式を下記に示す。
樹脂23の質量平均分子量(Mw)は9800、分散度(Mw/Mn)は1.60であった。
また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、前記[化62]に示す各構成単位の組成比はm:n:l=0.3:0.5:0.2(モル%)であった。
【0259】
[実施例29]
下記に示す組成でポジ型レジスト組成物を調整した。
(A)樹脂:樹脂22 100質量部
(B)酸発生剤:TPS−PFBS 3.5質量部
(D)含窒素有機化合物:トリエタノールアミン 0.35質量部
有機溶剤:PGMEA:EL=6:4 750質量部
【0260】
次いで、8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(ブリューワーサイエンス社製、商品名ARC−29)を塗布し、205℃で60秒間焼成して膜厚38nmの反射防止膜を形成した。
該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物をスピンナーを用いて均一に塗布し、95℃で90秒間でプレベークして、乾燥させることにより、膜厚225nmのレジスト層を形成した。ついで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S302A(Nikon社製、NA(開口数)=0.60,2/3輪帯照明)を用い、バイナリーマスクを介して選択的に露光した。
そして、105℃で90秒間PEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、140nmのラインアンドスペース(1:1)のレジストパターンを形成した。その際の感度は23mJ/cmであり、露光余裕度は15.4%であった。
【0261】
実施例29と比較例10とを比べると露光余裕度に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0262】
以上のように、本発明にかかる高分子化合物および低分子化合物は、矩形性の高い微細なレジストパターンの形成に有用であり、特に、KrF、ArFおよびF2露光用の微細パターン形成に適している。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】ArF露光による感度曲線を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ溶解性が変化し得る高分子化合物であって、
アルカリ可溶性基(i)を有し、このアルカリ可溶性基(i)の水素原子が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数20以下の脂肪族環式基であり、nは0または1〜5の整数を表す。)
で示される酸解離性溶解抑止基(ii)で置換されていることを特徴とする高分子化合物。
【請求項2】
前記アルカリ可溶性基(i)が、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、およびカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
前記アルコール性水酸基に結合している炭素原子に隣接する炭素原子に、少なくとも一つのフッ素原子が結合していることを特徴とする請求項2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)中、前記脂肪族環式基がアダマンタン骨格を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)中、R1が1種以上の親水性基を有する脂肪族環式基であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
前記親水性基が、カルボニル基、エステル基、アルコール性水酸基、エーテル、イミノ基、およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の高分子化合物。
【請求項7】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R1とnは前記と同じである。R2は水素原子、フッ素原子又は炭素数20以下の低級アルキル基又は炭素数20以下のフッ素化低級アルキル基を表す。)
で示される化合物。
【請求項8】
下記一般式(3)
【化3】

(式中、R2は前記と同じである。Xは2原子の水素原子または1原子の酸素原子を表す。n’は0又は1を表す。)
で示される請求項7記載の化合物。
【請求項9】
少なくとも請求項7または8に記載の化合物から誘導される構成単位(a1)を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子化合物。
【請求項10】
前記構成単位(a1)と、ラクトン含有単環または多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)とを含む請求項9記載の高分子化合物。
【請求項11】
前記(a3)単位として、相互に異なる2種類以上のラクトン含有単環または多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含むことを特徴とする請求項10記載の高分子化合物。
【請求項12】
前記構成単位(a1)と、ラクトン含有単環または多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)と、極性基含有多環式基を含む(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4)とを含む請求項10又は11記載の高分子化合物。
【請求項13】
前記構成単位(a1)と、下記一般式(4)
【化4】

(式中、Rは前記と同じである。X’は2価または3価の環式基を、Yは2価の炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキルオキシ基を示す。p及びqはそれぞれ独立に1から5の整数を、sは1または2の整数を示す。)
で示される構成単位(a6)とを含む請求項9記載の高分子化合物。
【請求項14】
酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生する酸発生剤(B)とを含有してなるフォトレジスト組成物において、
前記基材樹脂成分(A)が、請求項1〜6または9〜13のいずれか1項に記載の高分子化合物であることを特徴とするフォトレジスト組成物。
【請求項15】
含窒素有機化合物(D)を含有することを特徴とする請求項14記載のフォトレジスト組成物。
【請求項16】
請求項14または15に記載のフォトレジスト組成物を用いて基板上にフォトレジスト膜を形成する工程、
前記フォトレジスト膜を露光する工程、
前記フォトレジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−96965(P2006−96965A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316960(P2004−316960)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】