説明

高分子化合物とその製造方法

【課題】基板との密着性が高い塗膜を得ることができる高分子化合物を提供すること。
【解決手段】式(1):


[式(1)中、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す;mは1〜20の整数を表し、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい]
で表される単量体(a)に由来する構造単位、及び
カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)に由来する構造単位
を含む高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性を有する高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性を有する高分子化合物は、粘着剤、接着剤、塗料、さらには表示装置の製造に用いられる硬化性樹脂組成物の成分として利用されている。このような高分子化合物としては、例えば、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートと2,3−ジヒドロフランとの共重合体が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4418850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の用途に硬化性を有する高分子化合物を利用する場合には、高分子化合物のみからなる塗膜においても、基板との高い密着性を示すことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1]式(1):
【化1】

[式(1)中、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す;mは1〜20の整数を表し、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい]
で表される単量体(a)に由来する構造単位、及び
カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)に由来する構造単位
を含む高分子化合物。
[2]カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)が、式(2):
【化2】

[式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。]で表される単量体である前記[1]記載の高分子化合物。
[3]酸価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である前記[1]又は[2]記載の高分子化合物。
[4]前記[2]又は[3]記載の高分子化合物の製造方法であって、
工程1)式(1)で表される単量体(a)と、式(3):
【化3】

[式(3)中、Rは上記と同じ意味を表し、R及びRは、炭素数1〜4のアルキル基を表す]で表される単量体(b’)とを共重合させる工程;
工程2)工程1で生成させた共重合体に、アルカリ水溶液を加えて攪拌する工程;及び
工程3)工程2で得られた攪拌後の液に、酸を加えて加熱する工程
を含む方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子化合物によれば、基板との密着性が高い塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の高分子化合物は、式(1):
【化4】

[式(1)中、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す;mは1〜20の整数を表すし、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい]で表される単量体(a)(以下、「単量体(a)」という場合がある)に由来する構造単位、及びカルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)(以下、「単量体(b)」という場合がある)に由来する構造単位を含む。
【0008】
本発明の高分子化合物を構成する単量体(a)を表す式(1)において、Rで表される炭素数2〜8の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基等のアルカンジイル基;シクロヘキサンジイル基等のシクロアルカンジイル基;及び下記式で表される基(*は結合手を表す)等が挙げられる。中でも、Rとしては、特にエチレン基が好ましい。
【0009】
【化5】

【0010】
式(1)において、mは1〜20の整数を表し、好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数である。mが2以上の整数である場合、式(1)中の複数のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0011】
式(1)で表される単量体(a)としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニルオキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニルオキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニルオキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニルオキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(4−ビニルオキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−ビニルオキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(2−ビニルオキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(4−ビニルオキシメチルフェニル)メチル、(メタ)アクリル酸(3−ビニルオキシメチルフェニル)メチル、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニルオキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニルオキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニルオキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニルオキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニルオキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニルオキシエトキシ)エトキシ}エチルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)がより好ましい。
なお本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0012】
カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)とは、カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する重合性化合物をいう。本発明の高分子化合物は、単量体(b)に由来する構造単位を含むことにより、基板上に本発明の高分子化合物を塗布し、硬化させた膜は、基板との高い密着性及び高い硬度を示す傾向がある。
【0013】
単量体(b)としては、例えば、フタル酸2−ビニルオキシエチルモノエステル、イソフタル酸2−ビニルオキシエチルモノエステル、テレフタル酸2−ビニルオキシエチルモノエステル、コハク酸2−ビニルオキシエチルモノエステル等が挙げられる。
【0014】
単量体(b)としては、特に、下記式(2)で表される単量体が好ましい。
【0015】
【化6】

[式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。]
【0016】
式(2)において、Rで表される炭素数1〜8のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基が挙げられる。中でも、Rとしては、特にエチレン基が好ましい。
【0017】
本発明の高分子化合物が、単量体(a)及び(b)に由来する構造単位のみを含む場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、高分子化合物を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
(a)に由来する構造単位:1〜99モル%(より好ましくは25〜95モル%)
(b)に由来する構造単位:1〜99モル%(より好ましくは5〜75モル%)
高分子化合物の構造単位の比率が、上記の範囲にあると、基板上に本発明の高分子化合物を塗布し、硬化させた膜は、基板との高い密着性及び高い硬度を示す傾向がある。
【0018】
本発明の高分子化合物は、前記の単量体(a)及び(b)に加えて、さらに、単量体(a)及び単量体(b)とは異なる単量体(c)(以下、「単量体(c)」という場合がある)に由来する構造単位を含むことが好ましい。単量体(c)は、単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能な化合物であって、単量体(a)及び単量体(b)とは異なる化合物である。
【0019】
単量体(c)としては、具体的には、例えば、
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチル等のビニルエーテル化合物;
スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレン、イソプロペニルスチレン等のスチレン化合物;
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;及び
2,3−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロピラン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、単量体(c)としては、環状エーテル化合物が好ましい。単量体(c)として、環状エーテル化合物を共重合成分として含むことにより、重合反応が促進しやすい傾向がある。
【0020】
本発明の高分子化合物が、単量体(a)、(b)及び(c)に由来する構造単位を含む場合、各単量体に由来する構造単位の比率が、高分子化合物を構成する構造単位の合計モル数に対して、以下の範囲にあることが好ましい。
(a)に由来する構造単位:1〜98モル%(より好ましくは10〜94モル%、さらに好ましくは25〜94%)
(b)に由来する構造単位:1〜98モル%(より好ましくは5〜89モル%、さらに好ましくは5〜50モル%)
(c)に由来する構造単位:1〜98モル%(より好ましくは1〜85モル%、さらに好ましくは1〜25モル%)
高分子化合物の構造単位の比率が、上記の範囲にあると、基板上に本発明の高分子化合物を塗布し、硬化させた膜は、基板との高い密着性及び高い硬度を示す傾向がある。
【0021】
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,500〜100,000、より好ましくは2,000〜50,000である。高分子化合物の重量平均分子量が前記の範囲にあると、塗布性に優れる傾向がある。
【0022】
本発明の高分子化合物の分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3である。高分子化合物の分子量分布が前記の範囲にあると、塗布性に優れる傾向がある。
【0023】
本発明の高分子化合物の酸価は、好ましくは20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であり、より好ましくは40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である。ここで酸価は、高分子化合物1gを中和するために必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。高分子化合物の酸価が前記の範囲にあると、得られる塗膜は基板との高い密着性に優れる傾向がある。
【0024】
本発明の高分子化合物は、各単量体を共重合成分として、一般的に用いられる公知の方法で重合することにより調製することができる。その場合、単量体(b)が有するカルボキシ基を、保護基で保護して重合させることが好ましい。保護基としては、重合条件で脱離しない公知の保護基を用いることができる。
例えば、単量体(b)に由来する構造単位が前記式(2)で表される高分子化合物の場合は、式(1)で表される単量体(a)と、式(3):
【化7】

[式(3)中、Rは上記と同じ意味を表し、R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表す]で表される単量体(b’)を共重合成分として、調製することができる。
【0025】
式(3)におけるRは、目的とする高分子化合物に含まれる単量体(b)に由来する構造単位におけるRと同一である。
【0026】
式(3)において、R及びRで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。R及びRで表されるアルキル基は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0027】
単量体(b’)としては、具体的には、例えば、ビニルオキシメチルマロン酸ジエチル、(2−ビニルオキシエチル)マロン酸ジエチル、(2−ビニルオキシプロピル)マロン酸ジエチル、(2−ビニルオキシブチル)マロン酸ジエチル、(2−ビニルオキシメチル)マロン酸ジメチル、(2−ビニルオキシエチル)マロン酸ジメチル、(2−ビニルオキシプロピル)マロン酸ジメチル、(2−ビニルオキシブチル)マロン酸ジメチル、(2−ビニルオキシメチル)マロン酸ジプロピル、(2−ビニルオキシエチル)マロン酸ジプロピル、(2−ビニルオキシプロピル)マロン酸ジプロピル、(2−ビニルオキシブチル)マロン酸ジプロピル、(2−ビニルオキシメチル)マロン酸ジブチル、(2−ビニルオキシエチル)マロン酸ジブチル、(2−ビニルオキシプロピル)マロン酸ジブチル、(2−ビニルオキシブチル)マロン酸ジブチル等が挙げられ、中でも、式(b−1)で表されるビニルエーテル化合物が好ましい。
【0028】
【化8】

【0029】
単量体(b’)は、例えば、下記の式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物とから、「Polymer Journal」、第19巻、第5号(1987年)、第515〜516頁に記載された方法及び当該文献に記載された引用文献を参考にして製造することができる。
【化9】

[式(4)中、Rは上記と同じ意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。R及びRは、それぞれ上記と同じ意味を表す。]
【0030】
式(4)において、Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子などが挙げられる。
【0031】
具体的には、単量体(b’)は、単量体(b’)を構成する所定量の式(4)で表される化合物と塩基触媒(例えば、ナトリウムエトキシド等)及び溶剤を反応容器中に仕込み、窒素置換による酸素不存在下で、所定量の式(5)で表される化合物を混合し、攪拌、加熱することにより得られる。なお、反応後の溶液をそのまま使用してもよいし、濃縮あるいは希釈した溶液を使用してもよい。
【0032】
以下、本発明の高分子化合物の製造方法について詳細に説明する。
【0033】
工程1)
本発明の製造方法は、式(1)で表される単量体(a)と前記式(3)で表される単量体(b’)(以下、「単量体(b’)」という場合がある)とを共重合させる工程1)を含む。なお、本発明の高分子化合物が、単量体(a)および(b)に由来する構造単位の他に単量体(c)に由来する構造単位を含む場合には、工程1)において、単量体(a)と単量体(b’)および(c)とを共重合させればよい。
【0034】
本発明の製造方法の工程1)における単量体(a)と単量体(b’)との共重合、または単量体(a)と単量体(b’)と単量体(c)との共重合は、重合溶媒および重合触媒の存在下で行うことができる。
【0035】
重合溶媒としては、非プロトン性の溶媒を用いることが好ましい。具体的にはトルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の飽和環状炭化水素;クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等を使用することができる。中でも、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、飽和環状炭化水素類、エステル類等の非極性溶媒が好ましく、エステル類がより好ましい。これらの溶媒中で共重合を行うことにより、高分子量の共重合体が得られる傾向がある。
【0036】
工程1)における重合溶媒の使用量は、重合に用いる単量体の合計量100質量部に対して、好ましくは100〜1000質量部、より好ましくは120〜500質量部である。
【0037】
重合触媒としては、具体的には、フッ化水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のブレンステッド酸類;三フッ化ホウ素及びその錯体類、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、塩化第二鉄等のルイス酸類;ジエチル塩化アルミニウム、エチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛等の有機金属化合物類;リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、リンモリブドニオブ酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングストバナジン酸、ゲルマニウムタングステン酸、ホウタングステン酸、ホウモリブデン酸、ホウモリブドタングステン酸、ホウモリブドバナジン酸、ホウモリブドタングストバナジン酸、及び前記リンタングステン酸の部分中和金属塩等のヘテロポリ酸類;並びにこれらの塩、及び錯体等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、重合触媒としては、ルイス酸類、ヘテロポリ酸類が好ましく、ヘテロポリ酸類がより好ましく、リンタングステン酸がさらに好ましい。さらにヘテロポリ酸類としては、Mo、W、Vのうち少なくとも一種の酸化物と、他の元素(例えばP、Si、As、Ge、B、Ti、Ce等)のオキシ酸とが縮合して生じるオキシ酸又はその塩が好ましい。特に、オキシ酸に対する酸化物の原子比が2.5〜12であるものが好ましく、12のものがより好ましい。
【0039】
また、この重合触媒とともに共触媒を用いてもよく、共触媒を併用することにより反応が促進する場合がある。共触媒として、具体的には、水;メタノール、エタノール、フェノール等の水酸基含有化合物等が挙げられる。
【0040】
工程1)において用いる重合触媒の使用量は、適宜調整すればよいが、カチオン重合可能な単量体総量に対して、好ましくは0.0001〜3質量%、より好ましくは0.001〜0.5質量%、さらに好ましくは0.001〜0.01質量%である。
【0041】
工程1)において、反応系中の水分、アルコール等のプロトン性化合物の量は、共重合反応液総量に対して、3000ppm以下が好ましく、2000ppm以下がより好ましい。さらに好ましくは1000ppm以下である。反応系中の水分、アルコール等のプロトン性化合物の量が前記の範囲にあると、高分子量の共重合体が得られやすく、更に副生成物が抑制される傾向があり、好ましい。
【0042】
工程1)における反応条件は、特に制限されるものではなく、単量体(a)と(b’)、または単量体(a)、(b’)及び(c)の共重合反応が十分に行われるように、反応させようとする単量体、触媒の種類や量などによって適宜調整することができるが、好ましい反応条件としては、例えば以下の条件が挙げられる。
【0043】
重合反応は、−10〜100℃の温度範囲で行うことが好ましく、10〜60℃の温度範囲で行うことがより好ましい。重合温度を調整することにより、得られる共重合体の分子量分布が狭くなり好ましいため、共重合を行う間、反応容器内の液温度が前記の温度範囲で略一定になるように、加熱又は冷却することにより調整することが好ましい。工程1)において、重合温度が−10℃未満である場合には、反応容器内の溶液が固化したり、粘度が高くなったりすることにより、取扱いが困難になる場合がある。一方、重合温度が100℃を超える場合、得られる共重合体の分子量が低くなる場合がある。
【0044】
反応圧力は、特に制限されるものではなく、減圧、常圧及び加圧のいずれであってもよいが、常圧であることが好ましい。
また、反応時間は、特に制限されるものでなく、用いる試薬、反応温度等によっても異なるが、通常、1〜24時間が好ましい。
【0045】
単量体(a)と(b’)、または単量体(a)、(b’)及び(c)の重合方法は、特に制限されるものではなく、バッチ式、半バッチ式、連続式で行うことが可能であるが、バッチ式で行うことが好ましい。共重合をバッチ式で行う場合、単量体及び触媒を一括して反応装置に投入してもよく、一部又は全部を分割、滴下等の方法で投入してもよい。好ましくは、単量体の一部、又は全部を滴下して重合反応を行なう。また、重合触媒についても滴下することが好ましい。単量体及び重合触媒を滴下して重合反応を行なうことで、反応初期の発熱が抑制され、反応温度を一定に保持することが可能となり、さらに低分子量重合体の生成が抑制され、分子量分布の狭い化合物が得られる傾向がある。
【0046】
さらに、工程1)においては、単量体(a)が有する(メタ)アクリロイル基が未反応の状態でカチオン重合を行なう必要があるため、好ましくは窒素/空気ミックスガス、特に好ましくは酸素濃度3〜10容量%に制御された窒素/酸素ミックスガスを、気相部又は液相部に吹き込みながら重合することが好ましい。(メタ)アクリロイル基の反応を抑制するために、ラジカル重合禁止剤を使用したり、遮光性の反応器中で重合を行ったりしてもよい。
【0047】
ラジカル重合禁止剤としては、従来公知の化合物を適宜選択することができる。ヒンダードフェノール型禁止剤を用いることが好ましく、少なくともフェノール性水酸基を持つフェニル基を有し、該フェノール性水酸基が結合している炭素原子に隣接する炭素原子の一方に水素原子が結合し、他方にアルキル基が結合する構造を有する化合物を、ラジカル重合禁止剤として用いることがより好ましい。
【0048】
ラジカル重合禁止剤の具体例としては、例えば、2−t−ブチルハイドロキノン、2−t−アミルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、4.4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−アミルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピノニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフェートジエチルエステル、ジ(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、2,2’−オキサミドビス[エチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。中でも、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、トリス(3−t−アミル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネ−ト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−エチル−4−ヒドロキシ−5−t−アミルフェニル)ブタン、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−アミルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましい。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
工程1)におけるラジカル重合禁止剤の使用量としては、単量体総量に対して、1〜10,000質量ppmが好ましく、5〜8000質量ppmがより好ましく、10〜6000質量ppmがさらに好ましく、20〜4000質量ppmが特に好ましい。ラジカル重合禁止剤の使用量が1質量ppm未満であると、重合防止性能を充分には向上できない虞があり、10,000質量ppmを超えると、本発明の高分子化合物から得られる塗膜の硬化性が低下する虞がある。
【0050】
工程1)における重合反応は、重合終了後、必要に応じて、水、アルコール等のプロトン性化合物;アンモニア及びアミン等の有機塩基;又はNaOH、KOH等の無機塩基を加えることにより停止させることができる。
【0051】
工程2)
本発明の製造方法は、工程1)で生成させた共重合体に、アルカリ性化合物の水溶液を加えて攪拌することにより、共重合体の単量体(b’)に由来する構造単位が有するエステル部分を加水分解する工程2)を含む。
【0052】
工程2)で用いるアルカリ性化合物は、無機アルカリ性化合物、有機アルカリ性化合物のいずれであってもよい。有機アルカリ性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等のような有機第三塩基が挙げられ、無機アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のような無機塩基が挙げられる。
これらの無機及び有機アルカリ性化合物の水溶液中の濃度は、好ましくは0.1〜3mol/Lであり、より好ましくは0.5〜1mol/Lである。
【0053】
工程2)におけるアルカリ性化合物の使用量は、工程1)で用いた単量体の合計量に対して、1〜1,000当量であることが好ましい。
【0054】
工程2)における攪拌条件は、特に制限されるものではなく、工程1)で生成させた共重合体のアルカリ水溶液による加水分解処理が十分に行われるように、攪拌、反応させようとする共重合体、その物性(粘度など)や量などによって適宜調整することができる。
【0055】
例えば、攪拌温度は、0〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。また、溶媒を還流させて攪拌することが好ましい。
攪拌時間は、特に制限されるものでなく、用いる試薬、反応温度等によっても異なるが、通常、10分〜24時間が好ましい。
【0056】
工程3)
本発明の製造方法は、工程2)で得られた攪拌後の液に、酸を加えて加熱することにより、脱炭酸反応を行う工程3)を含む。
【0057】
工程3)で用いる酸としては、塩酸、硫酸、有機スルホン酸等が挙げられる。これらの酸の使用量は、工程1)で得られた共重合体に対して、1〜10,000当量であることが好ましい。
【0058】
工程3)における加熱、攪拌条件は、特に限定されるものではなく、工程2)を経て得られた共重合体における脱炭酸反応が十分に行われるように、適宜調整することができる。
【0059】
例えば、酸は、工程2)により得られた攪拌後の液にそのまま投入してもよいし、攪拌後の液を冷却した後に投入してもよい。酸を投入した後の混合溶液を、好ましくは50〜200℃の温度、より好ましくは50〜150℃の温度に加熱し、好ましくは10分〜24時間攪拌を行う。この際、溶媒を還流させて攪拌することが好ましい。
【0060】
工程3)で得られた液に、有機溶媒を加えて分液を行い、有機溶媒層を取得することにより、単量体(b)が前記式(2)で表される本発明の高分子化合物の溶液を得ることができる。
【0061】
この工程において用いる有機溶媒としては、本発明の高分子化合物を溶解し、水と装用しない溶媒であれば特に制限されることなく用いることができる。具体的には、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ヘキサン、クロロホルム等が挙げられる。
【0062】
分液方法としては、通常用いられる分液方法を使用することができる。具体的には、例えば、分液ロートを用いて上層と下層とを分ける方法、ポンプを用いて非水溶性有機溶媒層を除去する方法等が挙げられる。分液ロートを用いて分液を行う場合において、水分が多い場合は、飽和食塩水を用いて更に分液することもできる。
【0063】
分液を行った後、得られた有機溶媒層に含まれる水分が多い場合には、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムなどで乾燥処理を行ってもよい。乾燥時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは1分〜1時間程度である。
乾燥処理後、乾燥剤を除去し、得られたろ液から溶媒を除去することにより、目的化合物である本発明の高分子化合物が得られる。溶剤を除去する方法としては、減圧蒸留等が挙げられる。
さらに、得られた本発明の高分子化合物について、有機溶媒による洗浄や再沈等の精製等を行ってもよい。
【0064】
本発明の高分子化合物は、基材との密着性、特にプラスチックフィルムとの密着性に優れるため、例えば、粘着剤、接着剤、柔軟剤、塗料、合成ゴム改質剤等に有用である。さらに、表示装置に具備されるカラーフィルタ、フォトスペーサ、オーバーコート等の製造に用いられる硬化性樹脂組成物の成分としても有用である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明の高分子化合物について、より詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0066】
合成例1
<ビニルエーテル化合物(b−1)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、エタノール237部、ナトリウムエトキシド13部、マロン酸ジエチル80部を導入し、フラスコ内雰囲気を空気から窒素に置換した後、室温で攪拌後、2−クロロエチルビニルエーテル105部を添加し、エタノールがおだやかに還流する温度で5時間加熱を行った。冷却後、エバポレーターで反応液を濃縮し、酢酸エチル179部とセライトとを加えて混合し、ろ過によりろ液を取得した。該ろ液を分液ロートに移し、5%塩酸水300部、水300部、飽和食塩水300部を加えて分液を行い、有機層を取得した。該有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことによりビニルエーテル化合物(b−1)を21.1部(収率;30.5%)得た。得られた化合物の構造をNMR(JMM−ECA−500;日本電子(株)製)により確認した。
【0067】
分析データ:1H-NMR:1.28(6H,d)、2.26(2H,q)、3.56(1H,d)、3.75(2H,d)、3.98―4.25(6H,m)、6.44(1H,dd)
【0068】
【化10】

【0069】
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、酢酸エチル80部を加え、25℃まで昇温した。昇温後、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA(日本触媒製))27.9部、ビニルエーテル化合物(b−1)9.2部及び2,3−ジヒドロフラン0.7部の混合物、並びに酢酸エチル7部とリンタングステン酸0.003部との混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し、25℃で1時間重合を行った。重合終了後、トリエチルアミンを加え、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、共重合体(a−2−1)を得た。
【0070】
【化11】

【0071】
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、共重合体(a−2−1)30部、水酸化カリウム20部、水20部を仕込み、1.5時間、98℃で加熱還流を行った。冷却後、10モル/L濃硫酸45部を加え、更に1時間、98℃で加熱還流を行った。その後酢酸エチル207部を加えて分液を行い、有機層を取得し、該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、高分子化合物(a−3−1)を得た。得られた高分子化合物(a−3−1)の数平均分子量は(Mn)5800であり、重量平均分子量(Mw)は9800であり、固形分酸価は66mgKOH/gであった。
【0072】
【化12】

【0073】
実施例2
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、酢酸エチル80部を加え、25℃まで昇温した。昇温後、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA(日本触媒製))18.6部、ビニルエーテル化合物(b−1)9.2部、2,3−ジヒドロフラン0.7部及びシクロヘキシルビニルエーテル6.3部の混合物、並びに酢酸エチル7部とリンタングステン酸0.003部との混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し、25℃で1時間重合を行った。重合終了後、トリエチルアミンを加え、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、共重合体(a−2−2)を得た。
【0074】
【化13】

【0075】
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、共重合体(a−2−2)30部、水酸化カリウム20部、水20部を仕込み、1.5時間、97℃で加熱還流を行った。冷却後、10モル/L濃硫酸45部を加え、更に1時間、97℃で加熱還流を行った。その後酢酸エチル200部を加えて分液を行い、有機層を取得し、該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、高分子化合物(a−3−2)を得た。得られた高分子化合物(a−3−2)の数平均分子量は(Mn)は6300であり。重量平均分子量(Mw)は10200であり、固形分酸価は73mgKOH/gであった。
【0076】
【化14】

【0077】
実施例3
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、酢酸エチル80部を加え、25℃まで昇温した。昇温後、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA(日本触媒製))18.6部、ビニルエーテル化合物(b−1)9.2部、2,3−ジヒドロフラン0.7部及びn−ブチルビニルエーテル5.0部の混合物、並びに酢酸エチル7部とリンタングステン酸0.003部との混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し、25℃で1時間重合を行った。重合終了後、トリエチルアミンを加え、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、共重合体(a−2−3)を得た。
【0078】
【化15】

【0079】
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコに、共重合体(a−2−3)30部、水酸化カリウム20部、水20部を仕込み、1.5時間、98℃で加熱還流を行った。冷却後、10モル/L濃硫酸45部を加え、更に1時間、98℃で加熱還流を行った。その後酢酸エチル200部を加えて分液を行い、有機層を取得し、該有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレーターで濃縮を行うことにより、高分子化合物(a−3−3)を得た。得られた高分子化合物(a−3−3)の数平均分子量は(Mn)は5600であり。重量平均分子量(Mw)は9500であり、固形分酸価は76mgKOH/gであった。
【0080】
【化16】

【0081】
実施例4
実施例1において2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA(日本触媒製))の代わりにメタクリル酸2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチル(VEEM(日本触媒製))を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子化合物(a−3−4)を得た。得られた高分子化合物(a−3−4)の数平均分子量は(Mn)は5200であり、重量平均分子量(Mw)は8800であり、固形分酸価は62mgKOH/gであった。
【0082】
【化17】

【0083】
実施例5
実施例1における重合温度を0℃にした以外は実施例1と同様の方法で、高分子化合物(a−3−5)を得た。得られた高分子化合物(a−3−5)の数平均分子量は(Mn)は10500であり、重量平均分子量(Mw)は17500であり、固形分酸価は65mgKOH/gであった。
【0084】
【化18】

【0085】
比較例1
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコに酢酸エチル80部を加え、40℃まで昇温した。昇温後、2−(2−ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート(VEEA)128部及び2,3−ジヒドロフラン72部の混合物、並びに酢酸エチル13部とリンタングステン酸0.013部との混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し、40℃で1時間重合を行った。重合終了後、トリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、重合体(a−p)を得た。得られた重合体(a−p)の数平均分子量(Mn)は9840、分子量分布(Mw/Mn)は1.97であった。
【0086】
【化19】

【0087】
実施例1〜5で得られた高分子化合物及び比較例1で得られた重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、以下の条件で行なった。
装置 :HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
カラム :TSK−GELG4000HXL+TSK−GELG2000HXL(直列接続)
カラム温度 :40℃
溶剤 :THF
流速 :1.0mL/min
注入量 :50μL
検出器 :RI
測定試料濃度 :0.6質量%(溶剤;THF)
校正用標準物質:TSK STANDARD POLYSTYRENE F−40、F−4、F−1、A−2500、A−500(東ソー(株)製)
【0088】
<塗膜の作製>
実施例1〜5で得られた高分子化合物及び比較例1で得られた重合体を、固形分20%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにそれぞれ溶解し、溶液を調製した。PETフィルム(東レ製ルミラー75−T60)に、バーコーターを用いて、前記溶液を塗工し、塗膜を得た。
【0089】
<クロスカット試験>
得られた塗膜について、JIS K5600−5−6に準じたテープ剥離試験(クロスカット試験)を行い、PETフィルムとの密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0090】
<鉛筆硬度>
得られた塗膜について、JIS−K5400に準じた鉛筆硬度の測定を、鉛筆引っかき硬度試験機(株式会社安田精機製作所製)を用いて行った。なお、荷重は1,000gとした。
【0091】
【表1】

【0092】
実施例において、本発明の高分子化合物のみからなる塗膜は、プラスチックフィルムとの密着性に優れることが示された。このことから、本発明の高分子化合物は、特に、プラスチックフィルム上に塗膜やパターンを形成するための組成物に含有される高分子化合物として、有用であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の高分子化合物によれば、基板との密着性が高い塗膜を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式(1)中、Rは炭素数2〜8の2価の炭化水素基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す;mは1〜20の整数を表し、mが2以上の整数である場合、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい]
で表される単量体(a)に由来する構造単位、及び
カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)に由来する構造単位
を含む高分子化合物。
【請求項2】
カルボキシ基とビニルオキシ基とを有する単量体(b)が、式(2):
【化2】

[式(2)中、Rは炭素数1〜8のアルカンジイル基を表す。]で表される単量体である請求項1記載の高分子化合物。
【請求項3】
酸価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下である請求項1又は2記載の高分子化合物。
【請求項4】
請求項2又は3記載の高分子化合物の製造方法であって、
工程1)式(1)で表される単量体(a)と、式(3):
【化3】

[式(3)中、Rは上記と同じ意味を表し、R及びRは、炭素数1〜4のアルキル基を表す]で表される単量体(b’)とを共重合させる工程;
工程2)工程1で生成させた共重合体に、アルカリ水溶液を加えて攪拌する工程;及び
工程3)工程2で得られた攪拌後の液に、酸を加えて加熱する工程
を含む方法。

【公開番号】特開2012−140477(P2012−140477A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291883(P2010−291883)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】