説明

高分子化合物の変性方法及び変性された高分子化合物を含む膜の製造方法

【課題】適用し得る高分子化合物の範囲が広く、且つ、簡便に光学活性の付与された高分子化合物を得る方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に、円偏光を照射する、高分子化合物の変性方法。


(式中、Rは置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は下記式(2)の2価の基、)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物の変性方法及び変性された高分子化合物を含む膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性な高分子化合物は、単位構造に光学活性部位を導入したり、主鎖を光学活性ならせん構造としたりすることで合成できることが知られている。最近では、光感受性部位であるアゾベンゼンユニットを導入した高分子化合物に、円偏光を照射することで光学活性体を得る方法が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Phys.Chem.Chem.Phys.9,3671−3681(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、円偏光を照射して光学活性体を得る技術に関しては、アゾベンゼンユニットなどの光感受性構造が導入された高分子化合物に適用した例しか無く、適用できる高分子化合物の範囲が限られていた。
【0005】
そこで、本発明は、適用し得る高分子化合物の範囲が広く、且つ、光学活性の付与された高分子化合物を簡便に得る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有する高分子化合物に円偏光を照射することで光学活性が付与された高分子化合物へと変性することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、下記〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に、円偏光を照射する、高分子化合物の変性方法。
【化1】

(式(1)中、
は置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は下記式(2)で表される2価の基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−N(R12)C(=O)N(R13)−で表される基、−C(R14−で表される基、−Si(R15−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基である。R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が複数個存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
は1以上の整数であり、mは0以上の整数である。m及び/又はmが2以上であるとき、m個存在するR及び/又はm個存在するXは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)中、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基からなる群から選ばれる1個又は2個を組み合わせた2価の基、又は直接結合である。Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基(即ち、芳香族ヒドロカルビル基)であり、該1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。)
〔2〕前記式(1)において、mが1であり、mが0である、上記〔1〕に記載の変性方法。
〔3〕前記式(1)において、Rが置換基を有していてもよい2価の芳香族基であるとき、該置換基を有していてもよい2価の芳香族基が、置換基を有していてもよい単環式芳香環、置換基を有していてもよい縮合多環式芳香環若しくは置換基を有していてもよい有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であるか、又は、Rが式(2)で表される2価の基であるとき、Arが置換基を有していてもよい芳香環集合から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている1価の基である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の変性方法。
〔4〕前記式(1)において、Rが式(2)で表される2価の基であるとき、R、R及びRが水素原子であり、Rが−O−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性方法。
〔5〕前記高分子化合物が膜の形状である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の変性方法。
〔6〕下記工程(a)及び(b)を含む、変性された高分子化合物を含む膜の製造方法。
(a)基材上に、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜を形成する工程。
(b)前記膜に円偏光を照射する工程。
【化3】

(式(1)中、
は置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は下記式(2)で表される2価の基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−N(R12)C(=O)N(R13)−で表される基、−C(R14−で表される基、−Si(R15−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基である。R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が複数個存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
は1以上の整数であり、mは0以上の整数である。m及び/又はmが2以上であるとき、m個存在するR及び/又はm個存在するXは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【化4】

(式(2)中、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基からなる群から選ばれる1個又は2個を組み合わせた2価の基、又は、直接結合である。Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基であり、該1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。)
〔7〕前記工程(a)において、前記高分子化合物を含む懸濁液又は溶液を基材に塗布する、上記〔6〕に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の変性方法によれば、適用し得る高分子化合物の範囲が広く、且つ、光学活性の付与された高分子化合物を簡便に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよいことを意味する。別途明確な記載のない限り、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルメルカプト基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基、又は、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルメルカプト基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、又は、炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基が特に好ましい。置換基の数は1個又は複数個であり、置換基が複数個の場合には各置換基は同じでも異なっていてもよい。
【0011】
本明細書において、「繰り返し単位」とは、化合物中に2個以上含有される構成単位を意味する。
【0012】
本明細書において、高分子化合物について言う「変性(する)」とは、高分子化合物が光学活性を呈する状態へと変化すること言う。ここで、本明細書において、高分子化合物について言う「光学活性」とは、高分子化合物が、円二色性スペクトルにおける左右の吸光度に偏りを有することを言う。なお、円二色性スペクトルにおける左右の吸光度に偏りがあるか否かの確認は、後述する実施例の測定条件にて検体の円二色性比を測定することによって行うことができる。
【0013】
<高分子化合物の変性方法>
本発明の高分子化合物の変性方法では、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に、円偏光を照射する。
【0014】
前記式(1)において、Rは、置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は上記式(2)で表される2価の基である。
で表される2価の芳香族基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基(即ち、芳香族ヒドロカルビレン基)及び2価の芳香族複素環基が挙げられる。Rで表される2価の芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,2,4,5−テトラジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、2,3−ジアザフラン環、チアゾール環、イソチアゾール環、2,4−ジアザフラン環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,3−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、及び、2H−1,2,3−トリアゾール環等の単環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基;該単環式芳香環が2個以上縮合した縮合多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基;該単環式芳香環及び該縮合多環式芳香環からなる群より選ばれる2個以上の芳香環を、単結合、エテニレン基又はエチニレン基で連結した芳香環集合から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基;該芳香環集合の、隣り合う2個の芳香環の間に、メチレン基、エチレン基、カルボニル基等の2価の有機基による単結合性の架橋を有する有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基が挙げられる。
これらのうち、Rで表される2価の芳香族基は、単環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基、縮合多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基、又は、有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基が好ましく、高分子化合物の剛直性の観点から、縮合多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基、又は、有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基がより好ましく、有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基が更に好ましい。
【0015】
前記縮合多環式芳香環において、縮合する単環式芳香環の数は、通常、2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。前記芳香環集合において、連結される芳香環の数は、通常、2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。前記有橋多環式芳香環において、橋かけされる芳香環の数は、通常、2〜6個であり、2〜5個が好ましく、2〜4個がより好ましく、2〜3個が更に好ましく、2個が特に好ましい。
【0016】
前記単環式芳香環としては、例えば、以下の環(式500〜式526)が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
前記縮合多環式芳香環としては、例えば、以下の環(式527〜式575)が挙げられる。
【0019】
【化6】

【0020】
前記芳香環集合としては、例えば、以下の環(式576〜式602)が挙げられる。
【0021】
【化7】

【0022】
前記有橋多環式芳香環としては、例えば、以下の環(式603〜式614)が挙げられる。
【0023】
【化8】

【0024】
で表される2価の芳香族基は、式500〜式505、式508〜式514、式527〜式534、式543、式561〜式564、式568、式576〜式584、式587〜式602、式603〜式608及び式611のうちのいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であることが好ましく、式500〜式505、式508〜式514、式527〜式534、式543、式561〜式564、式568、式603〜式608及び式611のうちのいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であることがより好ましく、式500、式527〜式534、式543、式561〜式564、式568及び式603〜式607のうちのいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であることが更に好ましく、式527〜式530及び式603〜式607のうちのいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であることが特に好ましい。
【0025】
で表される2価の芳香族基において、水素原子が除かれる2箇所の位置は、除かれる2個の水素原子をH及びHとするとき、Hと結合している原子とHと結合している原子の間を最短で結ぶ原子の数が多くなるように選択することが好ましい。また、Hと結合している原子とHと結合している原子の間を最短で結ぶ原子の数は、共役長がより拡張するため、偶数であることが好ましい。例えば、前記式500で表されるベンゼン環の場合、パラ位で水素原子が除かれる場合、除かれる水素原子と結合している炭素原子間の原子数は最短で4原子であり、メタ位では3原子、オルト位では2原子となる。このため、前記式500で表されるベンゼン環の場合は、パラ位で水素原子が除かれることが好ましい。また、例えば、前記式603で表されるフルオレン環の場合、2,7−位で水素原子が除かれるときに、最短で結ぶ原子の数が最も多い(8個)ため、2,7−位で水素原子が除かれることが好ましい。
【0026】
更に、水素原子が除かれる2箇所の位置(即ち、HとHの位置)としては、下記の位置も好ましい。
前記式527で表されるナフタレン環の場合は、1−位と4−位の2ヶ所。
前記式528で表されるアントラセン環の場合は、9−位と10−位の2ヶ所。
前記式529で表されるテトラセン環の場合は、2−位と3−位の2ヶ所。
前記式530で表されるピレン環の場合は、1−位と6−位の2ヶ所。
【0027】
で表される2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい。Rで表される2価の芳香族基が有する置換基の数は、0〜4個が好ましく、0〜2個がより好ましく、1〜2個が更に好ましく、2個が特に好ましい。
【0028】
で表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルメルカプト基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、及び(ジヒドロカルビル)アミノカルボニル基が挙げられる。ヒドロカルビル基を「R−(具体例は後述する)」で表される基とすると、ヒドロカルビルオキシ基とは「RO−」で表される基であり、ヒドロカルビルメルカプト基とは「RS−」で表される基であり、ヒドロカルビルカルボニル基とは「RC(=O)−」で表される基であり、ヒドロカルビルオキシカルボニル基とは「ROC(=O)−」で表される基であり、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基とは「RC(=O)O−」で表される基であり、ジヒドロカルビルアミノ基は「R2N−」で表される基であり、(ジヒドロカルビル)アミノカルボニル基は「R2N−C(=O)−」で表される基である。2個のRが存在する場合、それらは互いに同じでも異なっていてもよく、好ましくは互いに同じである。また、2個のRが存在する場合、互いに結合して、環構造を形成していてもよい。
【0029】
で表される2価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ジヒドロカルビルアミノ基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルオキシカルボニル基、又はヒドロカルビルカルボニルオキシ基であり、より好ましくはヒドロキシ基、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、又はヒドロカルビルカルボニルオキシ基であり、更に好ましくはヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、又はヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。
【0030】
前記Rで表されるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等の、炭素原子数1〜50の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2,3,3−トリメチルプロピル基、2,2,3−トリメチルプロピル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1,2−ジメチルペンチル基、1,3−ジメチルペンチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1,2−ジメチルヘキシル基、1,3−ジメチルヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、3,4−ジメチルヘキシル基、3,5−ジメチルヘキシル基、4,5−ジメチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2,5−ジメチルヘプチル基、1−エチルヘプチル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−プロピルヘキシル基、1−イソブチル−3−メチルブチル基及び3,7−ジメチルオクチル基等の、炭素原子数3〜50の分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基等のシクロアルキル基、ノルボニル基及びアダマンチル基等の、炭素原子数3〜50の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基及び2−ドデセニル基等の、炭素原子数2〜50のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基及び2−ブチニル基等の炭素原子数2〜50のアルキニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基及び4−フェニルフェニル基等の、炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基及び6−フェニル−1−ヘキシル基等の、炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。中でも、Rで表されるヒドロカルビル基としては、炭素原子数1〜50の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜50の分岐状アルキル基、炭素原子数6〜50のアリール基、又は、炭素原子数7〜50のアラルキル基が好ましく、炭素原子数1〜30の直鎖状アルキル基、炭素原子数3〜30の分岐状アルキル基、又は、炭素原子数6〜30のアリール基が好ましく、炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル、炭素原子数3〜12の分岐状アルキル基、又は、炭素原子数6〜18のアリール基が更に好ましく、炭素原子数1〜12の直鎖状アルキル基、又は、フェニル基が特に好ましい。
【0031】
前記式(1)において、Xは−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−N(R12)C(=O)N(R13)−で表される基、−C(R14−で表される基、−Si(R15−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基である。このうち、−O−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−C(R14−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基が好ましく、−O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−C(R14−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基がより好ましく、−C(R14−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基が更に好ましく、2価のアミン残基が特に好ましい。
【0032】
で表される2価のアミン残基としては、例えば、下記式(3)で表される2価の芳香族アミン残基が挙げられる。
【0033】
【化9】

式(3)中、Ar、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基であり、Ar、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1価の芳香族基である。m及びmは、それぞれ独立に、0又は1である。
【0034】
Ar、Ar、Ar及びArで表される、置換基を有していてもよい2価の芳香族基の例は、Rで表される置換基を有していてもよい2価の芳香族基と同じであり、好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基である。Ar、Ar及びArで表される、置換基を有していてもよい1価の芳香族基の例は、Rで表される置換基を有していてもよい2価の芳香族基において、除かれている2個の水素原子のうち1個の水素原子を結合させてなる1価の基であり、好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0035】
が0の場合、Ar中の炭素原子とAr中の炭素原子とが直接結合してもよく、−O−で表される基、−S−で表される基等の2価の基を介して結合していてもよい。
が0の場合、Ar中の炭素原子とAr中の炭素原子とが直接結合してもよく、−O−で表される基、−S−で表される基等の2価の基を介して結合していてもよい。
とmが共に0の場合、Ar中の炭素原子とAr中の炭素原子とが直接結合してもよく、−O−で表される基、−S−で表される基等の2価の基を介して結合していてもよい。
【0036】
式(3)で表される2価の芳香族アミン残基としては、下記式615〜式627のいずれかで表される芳香族アミンから環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子が2個除かれている基が例示される。
【0037】
【化10】

【0038】
式(3)で表される2価のアミン残基は、式615〜式627で表される芳香族アミンのうち、好ましくは式615〜式621及び式627のいずれかで表される芳香族アミンから環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子が2個除かれている基であり、より好ましくは式615、式617、式618、式620及び式627のいずれかで表される芳香族アミンから環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子が2個除かれている基であり、更に好ましくは式615及び式617のいずれかで表される芳香族アミンから環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子が2個除かれている基である。
【0039】
上記式615〜式627で表される芳香族アミンから除かれる2個の水素原子の位置は、除かれる2個の水素原子の両方が、それぞれ、アミンの窒素原子に対して、アミンの該窒素原子に結合する6員環アリール基のパラ位となるように選択するか、又は、除かれる2個の水素原子の両方が、それぞれ、アミンの窒素原子に対して、アミンの該窒素原子に結合する6員環アリール基のメタ位となるように選択することが好ましく、除かれる2個の水素原子の両方が、それぞれ、アミンの窒素原子に対して、アミンの該窒素原子に結合する6員環アリール基のパラ位となるように選択することがより好ましい。
前記パラ位又は前記メタ位に相当する位置が3つ以上存在するアミンに関しては、水素原子が除かれる2箇所の位置は、除かれる2個の水素原子をH及びHとするとき、Hと結合している原子とHと結合している原子の間を最短で結ぶ原子の数が多くなるように選択することが好ましい。また、水素原子が除かれる前記6員環アリール基は、フェニル基であることが好ましい。
【0040】
前記式(1)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が複数個存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0041】
前記R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16におけるヒドロカルビル基としては、例えば、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状飽和ヒドロカルビル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられ、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、アリール基又はアラルキル基が好ましく、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基又はアリール基がより好ましい。
該ヒドロカルビル基の炭素原子数は、通常、1〜50であり、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜18であり、更に好ましくは1〜8であり、特に好ましくは4〜8である。直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状飽和ヒドロカルビル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びアラルキル基の例は、前記Rのそれらと同じである。
【0042】
前記式(1)において、R10、R11、R12及びR13は、水素原子であることが好ましい。
【0043】
前記式(1)において、R14、R15及びR16は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0044】
前記式(1)において、mは1以上の整数であり、mは0以上の整数である。mは好ましくは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5の整数であり、更に好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。mは好ましくは0〜10の整数であり、より好ましくは0〜5の整数であり、更に好ましくは0又は1であり、特に好ましくは0である。mとmの組み合わせは、mが1であり、mが0であることが好ましい。
【0045】
前記式(1)において、RがR種類、XがX種類存在する場合、m/Rと、m/Xとの比は、最小の整数比になるように決定される。ただし、mが0である場合、m/R=1である。例えば、mとmの比が4:7、R=3、X=5である場合、m/R:m/Xは最小の整数比になるように決定されるので、20:21であり、m=60、m=105となる。
は1以上の数であるが、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
は1以上の数であるが、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0046】
前記式(2)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R、R及びRで表されるヒドロカルビル基は、R10で上述したヒドロカルビル基と同様である。
【0047】
、R及びRで表されるヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜4であり、特に好ましくは1である。
【0048】
、R及びRで表されるヒドロカルビル基は、好ましくは、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、より好ましくは、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは、直鎖状アルキル基である。
【0049】
前記式(2)において、R、R及びRは、水素原子であることが好ましい。
【0050】
前記式(2)において、Rは−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、及び、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基からなる群から選ばれる1個又は2個を組み合わせた2価の基、又は、直接結合である。Rは、好ましくは、−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基、又は、直接結合であり、より好ましくは、−O−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合であり、更に好ましくは、−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合である。
【0051】
で表されるヒドロカルビレン基の例は、R10で上述したヒドロカルビル基から水素原子が1個除かれている2価の基である。
【0052】
で表されるヒドロカルビレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜4である。
【0053】
で表されるヒドロカルビレン基は、好ましくは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基であり、より好ましくは、直鎖状アルキレン基又はアリーレン基であり、更に好ましくは直鎖状アルキレン基である。
【0054】
は水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基であることが好ましい。Rで表されるヒドロカルビル基の例は、R10で上述したヒドロカルビル基と同じである。
【0055】
で表されるヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1〜18であり、より好ましくは1〜12であり、更に好ましくは4〜12であり、特に好ましくは6〜8である。
【0056】
で表されるヒドロカルビル基は、好ましくは、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、より好ましくは、直鎖状アルキル基又はアリール基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0057】
前記式(2)において、Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基であり、該1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。Arにおける1価の芳香族炭化水素基の例は、Rで表される2価の芳香族基において、除かれている2個の水素原子のうちの1個の水素原子を結合させてなる1価の基のうち、sp炭素原子を7個以上含む1価の芳香族炭化水素基である。
【0058】
Arで表される1価の芳香族炭化水素基は、好ましくは前記式527〜式530、式576〜式579、式585〜式587及び式603〜式607のいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている基であり、より好ましくは式576〜式579及び式585〜式587のいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている基であり、更に好ましくは式576〜式579のいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている基であり、特に好ましくは式576又は式577で表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている基である。
【0059】
Arで表される1価の芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよい。Arで表される1価の芳香族炭化水素基が有する置換基の数は、好ましくは0〜5個であり、より好ましくは0〜4個であり、更に好ましくは0〜3個であり、特に好ましくは0〜2個である。
【0060】
Arで表される1価の芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルオキシ基、及び、炭素原子数1〜30のヒドロカルビルメルカプト基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、又は、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、又は、炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基であり、更に好ましくは炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基であり、特に好ましくは炭素原子数1〜8の直鎖状アルキル基、又は、炭素原子数1〜8の分岐状アルキル基であり、とりわけ好ましくは炭素原子数1〜6の分岐状アルキル基である。
【0061】
Arで表される1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。このsp炭素原子数に置換基のsp炭素原子数は含まれない。分子の配向性を保持しやすいので、Arにおける1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を、好ましくは8個以上、更に好ましくは10個以上、特に好ましくは12個以上含む。
Ar全体に含まれるsp炭素原子は、高分子化合物の分子配列がsp炭素原子同士のスタッキングにより固定されることになるので、Ar全体の20重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましく、50重量%以上が更に好ましく、60重量%以上が特に好ましい。
【0062】
は置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は上記式(2)で表される2価の基である。Rが置換基を有していてもよい2価の芳香族基であるとき、該置換基を有していてもよい2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい単環式芳香環、置換基を有していてもよい縮合多環式芳香環又は置換基を有していてもよい有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であることが好ましい。Rが前記式(2)で表される2価の基であるとき、Arは置換基を有していてもよい芳香環集合から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている1価の基であることが好ましく、中でも、置換基を有していてもよい前記式576〜式579、及び式585〜式587のいずれかで表される環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている基であることが好ましい。
【0063】
が前記式(2)で表される2価の基であるとき、R、R及びRが水素原子であり、Rが−O−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合であることが好ましく、R、R及びRが水素原子であり、Rが−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合であることがより好ましい。
【0064】
前記式(1)で表される繰り返し単位としては、例えば、以下の繰り返し単位(式100〜式128)が挙げられる。以下の繰り返し単位において、t−Buはtert−ブチル基を表し、n−Hexはn−ヘキシル基を表し、n−Octはn−オクチル基を表す。
【0065】
【化11】

【0066】
【化12】

【0067】
前記式(1)で表される繰り返し単位は、式100〜式128のうち、好ましくは式100〜式113、式118〜式121及び式125〜式128から選ばれる繰り返し単位であり、より好ましくは式100、式103〜式105、式107、式111、式112、式118〜式121及び式125〜式128から選ばれる繰り返し単位であり、更に好ましくは式103、式104、式111、式112、式118、式119、式121及び式126〜式128から選ばれる繰り返し単位である。
【0068】
本発明に用いる高分子化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位から選ばれる1又は2以上の化学構造の繰り返し単位を少なくとも部分的に含有していればよい。光学活性の導入度合いをコントロールし易く、かつ、光学活性の高い高分子化合物が得られるので、本発明に用いる高分子化合物は、分子全体の重量に対し、式(1)で表される繰り返し単位を好ましくは1重量%以上含有し、より好ましくは5重量%以上含有し、更に好ましくは25重量%以上含有し、特に好ましくは80重量%以上含有し、とりわけ好ましくは100重量%含有する。
【0069】
本発明に用いる高分子化合物は、ホモポリマーでもコポリマーでもよいが、ホモポリマーであることが好ましい。ここで本発明に用いる高分子化合物がホモポリマーであるとは、高分子化合物が、その分子中に前記式(1)で表される繰り返し単位から選ばれる特定の化学構造の繰り返し単位のみを含有することを意味する。本発明に用いる高分子化合物がコポリマーであるとは、高分子化合物が、その分子中に前記式(1)で表される繰り返し単位から選ばれる2以上の化学構造の繰り返し単位を含有すること、並びに、高分子化合物が、その分子中に前記式(1)で表される繰り返し単位から選ばれる1又は2以上の化学構造の繰り返し単位と、前記式(1)で表される繰り返し単位以外の、1又は2以上の繰り返し単位とを含有することを意味する。
【0070】
本発明に用いる高分子化合物がコポリマーである場合は、例えば、トリアリールアミン骨格を有する2価の基、トリアジン骨格を有する2価の基、不斉炭素原子を有する環状ヒドロカルビル基を有する2価の基を繰り返し単位として更に含有していてもよく、トリアリールアミン骨格を有する2価の基、又は、トリアジン骨格を有する2価の基を繰り返し単位として更に含有していることが好ましい。
【0071】
本発明に用いる高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、5×10〜1×10である。成膜性及び溶媒への溶解性を高めて良好な成型加工性を確保することができるので、本発明の高分子化合物のMnは、好ましくは1×10〜1×10であり、より好ましくは2×10〜1×10であり、更に好ましくは3×10〜5×10であり、特に好ましくは4×10〜1×10であり、とりわけ好ましくは1×10〜1×10である。また、本発明に用いる高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1×10〜1×10であり、好ましくは2×10〜1×10であり、より好ましくは5×10〜1×10であり、更に好ましくは1×10〜5×10であり、特に好ましくは5×10〜5×10である。
【0072】
本発明に用いる高分子化合物は、円偏光の照射前から光学活性を呈する高分子化合物であってもよい。円偏光の照射前から光学活性を呈する高分子化合物を用いる場合、本発明の変性方法によって、更に強い光学活性を呈する高分子化合物を得ることができる。
【0073】
本発明に用いる高分子化合物は、従来公知の高分子化合物の合成法によって合成することができる。
【0074】
本発明に用いる高分子化合物は、例えば、下記実施例の方法により製造される。また、実施例とは別に、以下の方法によっても製造される。例えば、窒素雰囲気下、金属マグネシウムにテトラヒドロフラン及び1,2−ジブロモエタンを加えた懸濁液に、2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンのTHF溶液を加え、加熱しながら撹拌する。その後、得られた反応液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロニッケル(II)を加え、更に加熱しながら撹拌する。次いで、得られた反応液に希塩酸とクロロホルムを加えて抽出し、水で洗浄する。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮して、THFに溶かし、得られた溶液をメタノールに滴下し再沈殿させることによって合成できる。
【0075】
上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物はまた、以下の方法によっても製造される。例えば、スチレン誘導体及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)のクロロホルム溶液を混合し、加熱しながら撹拌する。得られた反応液から溶媒を留去し、クロロホルムに溶かし、得られた溶液をメタノールに滴下し再沈殿させることによって合成できる。
【0076】
本発明の高分子化合物の変性方法において、高分子化合物に円偏光を照射するにあたり、高分子化合物は、粉体、膜、成型体、溶液、分散液等のいずれの形状・状態であってもよいが、粉体、膜、成型体又は分散液の形状・状態であることが好ましく、膜又は分散液の形状・状態であることがより好ましい。工程負荷が軽く、分子配向の制御が容易であるため、高分子化合物は膜の形状であることが更に好ましい。
【0077】
上記膜の厚さは、通常、1nm〜500μmであり、好ましくは2nm〜100μmであり、より好ましくは3nm〜20μmであり、更に好ましくは5nm〜1μmであり、特に好ましくは10nm〜200nmである。薄膜はピンホールや凹凸の形状を含んでいてもよい。
【0078】
上記膜の製造方法としては、例えば、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と他の成分とを任意の割合で溶媒中に懸濁又は溶解させて得られる懸濁液又は溶液を基材に塗布する工程を含む方法、及び、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と他の成分とを任意の割合で基材に蒸着する工程を含む方法が挙げられ、好ましくは、前者の方法である。
【0079】
前記塗布する工程に使用する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、シクロヘキサン、トリフルオロ酢酸及びこれらの混合物が挙げられ、好ましくは、トルエン、キシレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸又はこれらの混合物である。
【0080】
前記塗布する工程において、塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法及びオフセット印刷法が挙げられ、スピンコート法、キャスティング法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法又はオフセット印刷法が好ましい。
【0081】
本発明の変性方法においては、上記高分子化合物を単独で用いてもよく、また、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記高分子化合物とそれ以外の成分とを組み合わせて組成物として用いてもよい。組成物として用いる場合、より優れた良好な変性効果が得られるので、上記高分子化合物の含有量は、組成物全体の重量100重量%に対し、1重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることが更に好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。また、その上限は、通常、99重量%である。
【0082】
前記組成物を形成するのに用いてもよい、上記高分子化合物以外の成分(以下、単に「他の成分」ともいう。)としては、例えば、低分子有機材料、高分子有機材料、有機無機複合材料、無機材料及びそれらの混合物が挙げられ、用途に応じて任意に選択し得る。
例えば、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、発光素子の材料として用いる場合、上記他の成分としては、以下が例示される。
【0083】
(陽極材料)
陽極材料としては、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;前記導電性金属酸化物と前記金属との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール及びその誘導体等の有機導電性材料;並びに、それらの組み合わせが挙げられ、好ましくは、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、又は、ポリピロール及びその誘導体である。これらは、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、発光素子の陽極に用いる際に有用である。
【0084】
(陰極材料)
陰極材料としては、例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)及びそのフッ化物並びに酸化物;アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba等)及びそのフッ化物並びに酸化物;金、銀、鉛、アルミニウム等の金属;ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等の合金及び混合金属;インジウム、イッテルビウム等の希土類金属;及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらは、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、発光素子の陰極に用いる際に有用である。
【0085】
(正孔注入及び正孔輸送性材料)
正孔注入及び正孔輸送性材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、及びこれらの誘導体の残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられ、好ましくは、カルバゾール誘導体、アリールアミン誘導体、又は、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体である。これらは、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、発光素子の発光層、正孔注入及び正孔輸送層に用いる際に有用である。
【0086】
(電子注入及び電子輸送性材料)
電子注入及び電子輸送性材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンやペリレン等の芳香環のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)が挙げられ、好ましくは、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体である。これらは、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、発光素子の発光層、電子注入及び電子輸送層に用いる際に有用である。
【0087】
(電解質材料)
電解質材料としては、例えば、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)及び支持塩を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、又は該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体等)が挙げられる。これらは、本発明の変性方法により得られる、変性された高分子化合物を、電気二重層を形成する発光素子(例えば、電気化学発光素子)の発光層に用いる際に有用である。
【0088】
(発光性材料)
発光性材料としては、例えば、白金族元素を用いた金属錯体(フェニルピリジン誘導体が配位したイリジウム錯体等)、希土類元素を用いた金属錯体(フェナントロリン誘導体が配位したユーロピウム錯体等)、8−キノリノール誘導体が配位したアルミニウム錯体、ナフタセン誘導体、ジシアノエチレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、フェニレンビニレン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタレン誘導体が挙げられ、好ましくは、イリジウム錯体又はフルオレン誘導体である。これらは、本発明の変性方法により得られる、光学活性な高分子化合物を、発光素子の発光材料として用いる際に併用してもよい。
【0089】
また、他の成分として、成膜性を向上させる樹脂を用いることができる。成膜性を向上させる樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂が挙げられ、好ましくは、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリウレタンである。
【0090】
これらの他にも、蛋白質、酸化防止剤、屈折率調整剤、粘度調整剤、断熱剤、光吸収剤等を用いることができる。
【0091】
本発明の高分子化合物の変性方法において、円偏光の照射は、円偏光性を示す一般的な光源を用いて行うことができる。このような光源の例としては、Arレーザー、YAGレーザー等を使用した装置が挙げられる。
【0092】
円偏光の強度は、1〜1000mW/cmが好ましく、2〜500mW/cmがより好ましく、3〜250mW/cmが更に好ましく、5〜100mW/cmが特に好ましい。
【0093】
円偏光の照射時間は、0.1秒〜72時間が好ましく、1秒〜24時間がより好ましく、10秒〜12時間が更に好ましく、1分〜6時間が特に好ましく、5分〜2時間がとりわけ好ましい。
円偏光の照射環境は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下でも空気中でもよいが、簡便であるので、空気中が好ましい。
円偏光は室温で照射することが好ましいが、円偏光の照射によって検体が熱を帯びてもよい。
本発明で照射する円偏光は、楕円偏光を使用し得る。
【0094】
本発明の変性方法によって得られた光学活性な高分子化合物は、電子素子(例えば、発光素子(例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子であり、好ましくは円偏光発光する有機エレクトロルミネッセンス素子)、太陽電池、有機トランジスタ)材料、光学分割や不斉反応のための不斉場を提供する材料、偏光材料や屈折材料、医薬品などに用いることができる。
【0095】
<変性された高分子化合物を含む膜の製造方法>
本発明の、変性された高分子化合物を含む膜の製造方法は、下記工程(a)及び(b)を含む。
(a)基材上に、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜を形成する工程。
(b)前記膜に円偏光を照射する工程。
【0096】
[工程(a)]
工程(a)は、基材上に、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜を形成する工程である。なお、本発明の製造方法に用いられる、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物は、上記<高分子化合物の変性方法>で説明したものと同じである。
【0097】
基材としては、例えば、石英、ガラス、透明若しくは半透明の樹脂等を用いてもよい。
また、製造された膜を、発光素子の正孔注入及び正孔輸送層として用いる場合には、定法にて製造された陽極上に高分子化合物を含む膜を形成してもよい。この場合、陽極が「基材」として機能する。同様に、製造された膜を、発光素子の発光層として用いる場合には、定法にて製造された正孔注入及び正孔輸送層上に高分子化合物を含む膜を形成してもよい。この場合、正孔注入及び正孔輸送層が「基材」として機能する。すなわち、基材は、高分子化合物をその表面に受容することができ且つ高分子化合物を物理的に支持できる限り、膜の用途に応じて任意に選択してもよい。
【0098】
工程(a)において、基材上に、高分子化合物を含む膜を形成する方法としては、例えば、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と他の成分とを任意の割合で溶媒中に懸濁又は溶解させて得られる懸濁液又は溶液を基材に塗布する方法(以下、単に塗布法ともいう)、及び、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と他の成分とを任意の割合で基材に蒸着する方法(以下、単に蒸着法ともいう)が挙げられる。これらのうち、工程を簡便化できるため、前者の塗布法により塗布成膜することが好ましい。
【0099】
前記塗布法に使用する溶媒の例及び好ましい例、並びに塗布方法の具体的態様は、上記<高分子化合物の変性方法>で説明したものと同じである。
【0100】
前記塗布法においては、通常、懸濁液又は溶液を塗布した後に、該懸濁液又は溶液に含まれる溶媒を乾燥させる。溶媒を乾燥させる方法としては、例えば、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、加熱減圧乾燥、及び、窒素ガスを吹き付けて行う乾燥が挙げられ、風乾又は加熱乾燥が好ましく、加熱乾燥がより好ましい。また、溶媒を乾燥させる際の雰囲気は特に限定されないが、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0101】
工程(a)において、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物と併用される上記他の成分の例や好ましい例は、上記<高分子化合物の変性方法>で説明したものと同じであり、得られる膜の用途に応じて選択し得る。例えば、本発明の製造方法により得られる膜を発光素子の陽極に利用する場合、上記他の成分として、上記<高分子化合物の変性方法>で説明した陽極材料を用いてもよい。本発明の製造方法により得られる膜を発光素子の正孔注入及び正孔輸送層に利用する場合、上記他の成分として、上記<高分子化合物の変性方法>で説明した正孔注入及び正孔輸送性材料を用いてもよい。同様に、本発明の製造方法により得られる膜を発光素子の発光層に利用する場合、上記他の成分として、上記<高分子化合物の変性方法>で説明した正孔注入及び正孔輸送性材料、電子注入及び電子輸送性材料、電解質材料、発光性材料を用いてもよい。
【0102】
工程(a)において形成される膜中の、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の含有量は、膜の用途に応じて決定し得るが、より優れた変性効果が得られるので、膜全体の重量に対し、1重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、50重量%以上であることが更に好ましく、90重量%以上であることが特に好ましく、100重量%(不可避的な不純物を除く)であることがとりわけ好ましい。
【0103】
工程(a)において形成される膜の厚さは、膜の用途に応じて決定し得るが、通常、1nm〜500μmであり、好ましくは2nm〜100μmであり、より好ましくは3nm〜20μmであり、更に好ましくは5nm〜1μmであり、特に好ましくは10nm〜200nmである。
【0104】
[工程(b)]
工程(b)は、工程(a)で形成した、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜に、円偏光を照射する工程である。
【0105】
工程(b)において、上記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜に円偏光を照射することによって、膜中の高分子化合物を、光学活性を呈するように変性することができる。
【0106】
円偏光の光源、並びに円偏光の強度及び照射時間は、上記<高分子化合物の変性方法>で説明した通りである。ここで、得られる膜が所期の光学活性を呈するように、工程(b)において照射する円偏光の強度及び円偏光の照射時間を調整し得る。
【0107】
本発明の製造方法で得られる、変性された高分子化合物を含む膜は、上述した光学活性な高分子化合物と同様の用途に用いることができる。
【実施例】
【0108】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0109】
<合成例1>(前記式119で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成)
(1)2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)トルエンの合成
【化13】

【0110】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温にて、金属マグネシウム(3.72g、153mmol)とテトラヒドロフラン(以下、「THF」と言う。)(20mL)との混合物に、ジブロモエタン(1.37g、7.30mmol)をゆっくり加えた。発泡が収まった後、得られた反応液に、1−ブロモ−4−tert−ブチルベンゼン(31.1g、146mmol)のTHF(100mL)溶液を加え、60℃で1時間還流した。得られた反応液を、塩化亜鉛(II)(19.9g、146mmol)のTHF(60mL)溶液に加え、更に、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(16.9g、146mmol)を加えて室温で30分間撹拌した。
その後、そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(2.32g、2.01mmol)を加え、更に、2,5−ジブロモトルエン(9.12g、36.5mmol)のTHF(60mL)溶液を20分間以上かけてゆっくり加え、60℃で13時間撹拌した。得られた反応液を室温に戻し、氷冷した10重量%塩酸(350mL)に加えて濾過し、濾物をクロロホルムで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過し、溶媒を留去し、濾物をメタノールで洗浄し、2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)トルエンを得た(9.31g、収率73.0%)。
【0111】
(2)2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジルブロミドの合成
【化14】

【0112】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、N−ブロモスクシンイミド(10.8g、60.6mmol)と2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(1.99g、12.1mmol)との混合物に、上記(1)で得られた2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)トルエン(20.0g、56.1mmol)の四塩化炭素(120mL)溶液を加え、80℃で4時間還流した。得られた反応液を室温に戻し、濾過し、溶媒を留去し、濾物をメタノールで洗浄し、2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジルブロミドを得た(20.6g、収率84.4%)。
【0113】
(3)[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジル]トリフェニルホスホニウムブロミドの合成
【化15】

【0114】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、上記(2)で得られた2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジルブロミド(2.50g、5.75mmol)とトリフェニルホスフィン(1.82g、6.94mmol)との混合物に、ベンゼン(16mL)を加えて、70℃で12時間撹拌した。得られた反応液を室温に戻し、濾過し、溶媒を留去し、濾物をヘキサンで洗浄し、[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジル]トリフェニルホスホニウムブロミドを得た(3.13g、収率78.1%)。
【0115】
(4)[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)スチレンの合成
【化16】

【0116】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、上記(3)で得られた[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)ベンジル]トリフェニルホスホニウムブロミド(3.13g、4.49mmol)と水(6mL)とを混合し、30重量%ホルマリン溶液(20mL)を加えて撹拌した。次いで、そこに、水酸化ナトリウム(1.44g、35.9mmol)の水(6mL)溶液を20分間かけて滴下し、室温で3時間撹拌した。得られた反応液をジクロロメタンで抽出し、得られた有機層を、溶媒留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)スチレン(1.56g、収率94.4%)を得た。
【0117】
(5)ポリ[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)スチレン]の合成
【化17】

【0118】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、上記(4)で得られた[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)スチレン(500mg、1.36mmol)と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(3.6mg、0.022mmol)のクロロホルム(1.5mL)溶液とを混合し、70℃で36時間撹拌した。得られた反応液を室温に戻し、溶媒を留去した後、クロロホルム(20mL)に溶かした。得られた溶液をメタノール(500mL)に滴下して再沈殿し、デカンテーションで溶媒を除いた。再沈殿を5回行い、目的とするポリ[2,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)スチレン](前記式119で表される繰り返し単位を有する高分子化合物;以下、「高分子化合物1」と言う。)を得た(25.7mg、収率5.14%)。
【0119】
高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により測定した。SECのうち移動相が有機溶媒である場合を「GPC」と言う。
【0120】
測定試料(高分子化合物1)を約0.1重量%の濃度でテトラヒドロフランに溶解させ、GPC(Hitachi L7100)に10μL注入した。GPCの移動相はTHFを用い、1.0mL/分の流量で流した。カラムは、TOSOH TSK gel G3000HHR及びTOSOH TSK gel G6000HHRを用いた。検出器にはUV−VIS検出器(Hitachi L−7420 UV)及びRI検出器(Hitachi L−7490 RI)を用いた。
【0121】
その結果、高分子化合物1は、Mn=6.73×10、Mw=1.47×10であった。
【0122】
<合成例2>(前記式118で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成)
(1)N−4−ビフェニルアニリンの合成
【化18】

【0123】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、4−ブロモビフェニル(10.0g、42.9mmol)と、ナトリウムtert−ブトキシド(5.15g、53.6mmol)との混合物を、THF(340mL)に溶解させた後、[1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(630mg、0.860mmol)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.450g、0.810mmol)、アニリン(3.90mL、42.9mmol)を加え、100℃で40時間撹拌した。得られた反応液に0.1M塩酸(100mL)を加え、次いでクロロホルムを加えて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)による精製を行い、N−4−ビフェニルアニリン(10.1g、収率96.0%)を得た。
【0124】
(2)N−4−ビフェニルN−フェニルアクリルアミドの合成
【化19】

【0125】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、上記(2)で得られたN−4−ビフェニルアニリン(3.00g、12.2mmol)のベンゼン(180mL)溶液に、N,N−ジメチルアニリン(2.16mL)、塩化アクリロイル(1.20mL、14.7mmol)を加え、23℃で20時間撹拌した。得られた反応液に蒸留水、0.1M塩酸(100mL)を加え、次いでトルエンを加えて抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過、濃縮し、塩化メチレン―ジエチルエーテル溶液で再結晶を行い、濾過した。得られた濾物をヘキサンで洗浄し、N−4−ビフェニルN−フェニルアクリルアミド(2.06g、収率56.4%)を得た。
【0126】
(3)ポリ(N−4−ビフェニルN−フェニルアクリルアミド)の合成
【化20】

【0127】
tert−ブチルリチウムのn−ペンタン溶液(1.77M、1.0mL)に、トルエン(19mL)を加え、8.9×10−2Mの溶液を調製した。この調製溶液(470μL)を、反応容器内において、−78℃にて、上記(2)で得られたN−4−ビフェニルN−フェニルアクリルアミド(250mg、0.835mmol)のトルエン(6.25mL)溶液に滴下し混合し、−78℃に保ったまま14時間撹拌した。得られた反応液に少量のエタノールを加え、これをエタノール(150mL)中に滴下して再沈殿を行い、遠心分離により沈殿物を分取し、目的とするポリ(N−4−ビフェニルN−フェニルアクリルアミド)(前記式118で表される繰り返し単位を有する高分子化合物;以下、「高分子化合物2」と言う。)を収率76%で得た。
【0128】
高分子化合物2のGPC測定を行ったところ、Mn=1.09×10、Mw=6.7×10であった。
【0129】
<合成例3>(前記式127で表される繰り返し単位を有する高分子化合物の合成)
ポリ(2,3−ジアセトキシナフタレン−1,4−ジイル)の合成
【化21】

【0130】
反応容器内において、空気雰囲気下、2,3−ジヒドロキシナフタレン(0.200g、1.25mmol)と塩化第一銅(6.19mg、0.0625mmol)の混合物にピリジン(9.63mg、0.125mmol)とTHF(0.4mL)を加え、60℃で48時間撹拌した。得られた反応液にジクロロメタン(2mL)、ピリジン(9.63mg、0.125mmol)、塩化アセチル(0.491g、6.25mmol)を加え、室温に戻し、12時間撹拌した。得られた反応液にメタノールを加え、沈殿を遠心分離により分取し、目的とするポリ(2,3−ジアセトキシナフタレン−1,4−ジイル)(前記式127で表される繰り返し単位を有する高分子化合物;以下、「高分子化合物3」と言う。)を収率62%で得た。
【0131】
<膜の作製例1>
上記合成例1で得られた高分子化合物1の1.0×10−4M(モノマー換算)クロロホルム溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した(膜の厚さ40nm)。
【0132】
<膜の作製例2>
上記合成例2で得られた高分子化合物2(5mg)をクロロホルム/トリフルオロ酢酸=10/1(v/v)の混合溶媒(2mL)に溶解させた溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した(膜の厚さ30nm)。
【0133】
<膜の作製例3>
ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)(前記式111で表される繰り返し単位を有する高分子化合物;Aldrich社製、Mn=5.7×10、Mw=2.11×10)3.0mgをTHF(1mL)に溶解させた溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した(膜の厚さ25nm)。
【0134】
<膜の作製例4>
上記合成例3で得られた高分子化合物3(5mg)をTHF(1mL)に溶解させた溶液を、石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した(膜の厚さ350nm)。
【0135】
<膜の作製例5>
ポリ(2,5−ジ−n−オクチルオキシ−1,4−フェニレン)(前記式100で表される繰り返し単位を有する高分子化合物;American Dye Source社製、Mn=1.9×10、Mw=3.99×10)3.0mgをTHF(1mL)に溶解させた溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した。
【0136】
<膜の作製例6>
上述のポリ(2,5−ジ−n−オクチルオキシ−1,4−フェニレン)3.0mgをクロロホルム1mLに溶解させた溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した。
【0137】
<膜の作製例7>
上述のポリ(2,5−ジ−n−オクチルオキシ−1,4−フェニレン)3.0mgをトルエン1mLに溶解させた溶液を、キャスティング法により石英基板上に塗布し、自然乾燥させて膜を作製した。
【0138】
−円偏光の照射−
円偏光の光源としては、後述する実施例1及び2では、New Wave Research社製、型番Tempest 20Hz、YAGレーザー(波長266nm、出力8mW/cm)を用い、1/4λ素子を含む円偏光フィルムを通して検体に照射した。後述する実施例3〜10では、ウシオ社製、Modulex Deep UV SX−UID500MAMQQの光源を用い、グランテーラー偏光プリズムとフレネルロム波長板を通して検体に照射した。いずれの検体も、検体表面に対し垂直方向にて円偏光を照射した。
【0139】
−円二色性比の測定−
円二色性比の測定は、日本分光社製、JASCO J−820を用いて行った。
【0140】
<実施例1>
膜の作製例1で得た膜に対し、右円偏光を120分間照射した(膜検体1−1)。別途、膜の作製例1で得た膜に対し、左円偏光を120分間照射した(膜検体1−2)。
膜検体1−1の円二色性比を測定したところ、268nmの波長において5.0mdegの負のシグナルを示した。
膜検体1−2の円二色性比を測定したところ、268nmの波長において5.0mdegの正のシグナルを示した。
膜の作製例1で得た膜における、268nmでの吸光度はおよそ0.5であった。また、268nmにおける合成例1で得られた高分子化合物1のTHF中におけるユニット当たりのモル吸光係数は4.2×10L・cm−1・mol−1であった。
【0141】
<実施例2>
膜の作製例2で得た膜に対し、右円偏光を10分間照射した(膜検体2−1)。別途、膜の作製例2で得た膜に対し、左円偏光を10分間照射した(膜検体2−2)。
280nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体2−1は負の円二色性シグナルを示し、膜検体2−2は正の円二色性シグナルを示し、それぞれのシグナル強度の差は1.9mdegであった。
更に、310nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体2−1は正の円二色性シグナルを示し、膜検体2−2は負の円二色性シグナルを示し、それぞれのシグナル強度の差は1.7mdegであった。
膜の作製例2で得た膜における、280nm、310nmでの吸光度はそれぞれおよそ0.3、0.2であった。また、合成例2で得られた高分子化合物2のTHF中におけるユニット当たりのモル吸光係数は、280nm、310nmでそれぞれおよそ1.9×10L・cm−1・mol−1、1.2×10L・cm−1・mol−1であった。
【0142】
<実施例3>
膜の作製例3で得た膜に対し、右円偏光を1.5時間照射した(膜検体3−1)。別途、膜の作製例3で得た膜に対し、左円偏光を1.5時間照射した(膜検体3−2)。
390nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体3−1は負の円二色性シグナルを示し、膜検体3−2は、正の円二色性シグナルを示し、それぞれのシグナル強度の差は20mdegであった。
膜の作製例3で得た膜における、390nmでの吸光度は0.35であった。また、390nmにおけるポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)のTHF中におけるユニット当たりのモル吸光係数は4.0×10L・cm−1・mol−1であった。
【0143】
<実施例4>
膜の作製例3で得た膜に対し、左円偏光を6分間照射した(膜検体4−1)。膜検体4−1は400nm付近に強い正の円二色性シグナルを示した。
次いで、膜検体4−1に右円偏光を9.5分間照射した(膜検体4−2)。膜検体4−2に関しては、円二色性シグナルはほとんど消失した。
更に膜検体4−2に右円偏光を25分間照射した(膜検体4−3)。膜検体4−3に関しては、膜検体4−1の円二色性スペクトルとほぼ対称な形の負の吸収が観測された。
【0144】
<実施例5>
前記式111で表される繰り返し単位を有する高分子化合物であるポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)1.00mgをメチルシクロヘキサン(8mL)に懸濁させ、右円偏光を10分間照射したところ、右円偏光の照射前と比較して円二色性スペクトルに変化が観測された。
【0145】
<実施例6>
膜の作製例4で得た膜に対し、左円偏光を45分間照射した(膜検体6−1)。左円偏光の照射前後で290nmの波長において円二色性比を測定したところ、照射前は正の円二色性シグナルの強度が0.5mdegであったところ、照射後の膜検体6−1は正の円二色性シグナルの強度が2.5mdegまで向上した。
膜の作製例4で得た膜における、290nmでの吸光度はおよそ0.9であった。また、合成例3で得られた高分子化合物3のTHF中におけるユニット当たりのモル吸光係数は、290nmでおよそ4.0×10L・cm−1・mol−1であった。
【0146】
<実施例7>
膜の作製例5で得た膜に対し、右円偏光を1.5時間照射した(膜検体7−1)。別途、膜の作製例5で得た膜に対し、左円偏光を1.5時間照射した(膜検体7−2)。
360nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体7−1は0.7mdegの負のシグナルを示し、膜検体7−2は0.6mdegの正のシグナルを示した。
膜の作製例5で得た膜における、360nmでの吸光度は0.35であった。また、360nmにおけるポリ(2,5−ジ−n−オクチルオキシ−1,4−フェニレン)のクロロホルム中におけるユニット当たりのモル吸光係数は3.0×10L・cm−1・mol−1であった。
【0147】
<実施例8>
膜の作製例6で得た膜に対し、右円偏光を100分間照射した(膜検体8−1)。別途、膜の作製例6で得た膜に対し、左円偏光を100分間照射した(膜検体8−2)。
360nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体8−1は1.0mdegの負のシグナルを示し、膜検体8−2は1.0mdegの正のシグナルを示した。
膜の作製例6で得た膜における、360nmでの吸光度は0.65であった。
【0148】
<実施例9>
膜の作製例7で得た膜に対し、右円偏光を100分間照射した(膜検体9−1)。別途、膜の作製例7で得た膜に対し、左円偏光を210分間照射した(膜検体9−2)。
360nmの波長において円二色性比を測定したところ、膜検体9−1は1.8mdegの負のシグナルを示し、膜検体9−2は2.3mdegの正のシグナルを示した。
膜の作製例6で得た膜における、360nmでの吸光度は0.55であった。
【0149】
<実施例10>
膜の作製例7で得た膜に対し、左円偏光を10分間照射した(膜検体10−1)。膜検体10−1は360nmの波長において0.85mdegの正のシグナルを示した。
次いで、膜検体10−1に右円偏光を30分間照射した(膜検体10−2)。膜検体10−2に関しては、360nmにおける円二色性シグナルはほとんど消失した。
更に膜検体10−2に右円偏光を40分間照射した(膜検体10−3)。膜検体10−3は360nmの波長において0.85mdegの負のシグナルを示した。
【0150】
以上の結果から分かるように、本発明の変性方法によれば、アゾベンゼン等の光感受性部位を導入しなくとも、円偏光を照射することで光学活性な高分子化合物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物に、円偏光を照射する、高分子化合物の変性方法。
【化1】

(式(1)中、
は置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は下記式(2)で表される2価の基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−N(R12)C(=O)N(R13)−で表される基、−C(R14−で表される基、−Si(R15−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基である。R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が複数個存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
は1以上の整数であり、mは0以上の整数である。m及び/又はmが2以上であるとき、m個存在するR及び/又はm個存在するXは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)中、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、及び、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基からなる群から選ばれる1個又は2個を組み合わせた2価の基、又は、直接結合である。Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基であり、該1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。)
【請求項2】
前記式(1)において、mが1であり、mが0である、請求項1に記載の変性方法。
【請求項3】
前記式(1)において、Rが置換基を有していてもよい2価の芳香族基であるとき、該置換基を有していてもよい2価の芳香族基が、置換基を有していてもよい単環式芳香環、置換基を有していてもよい縮合多環式芳香環若しくは置換基を有していてもよい有橋多環式芳香環から環を構成する原子に直接結合する水素原子が2個除かれている2価の基であるか、又は、Rが式(2)で表される2価の基であるとき、Arが置換基を有していてもよい芳香環集合から環を構成する原子に直接結合する水素原子が1個除かれている1価の基である、請求項1又は2に記載の変性方法。
【請求項4】
前記式(1)において、Rが式(2)で表される2価の基であるとき、R、R及びRが水素原子であり、Rが−O−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、又は、直接結合である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性方法。
【請求項5】
前記高分子化合物が膜の形状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性方法。
【請求項6】
下記工程(a)及び(b)を含む、変性された高分子化合物を含む膜の製造方法。
(a)基材上に、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む膜を形成する工程。
(b)前記膜に円偏光を照射する工程。
【化3】

(式(1)中、
は置換基を有していてもよい2価の芳香族基又は下記式(2)で表される2価の基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R10)−で表される基、−OC(=O)O−で表される基、−OC(=O)N(R11)−で表される基、−N(R12)C(=O)N(R13)−で表される基、−C(R14−で表される基、−Si(R15−で表される基、−C(R16)=C(R16)−で表される基、又は、2価のアミン残基である。R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15及びR16が複数個存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
は1以上の整数であり、mは0以上の整数である。m及び/又はmが2以上であるとき、m個存在するR及び/又はm個存在するXは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【化4】

(式(2)中、
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
は−O−で表される基、−S−で表される基、−C(=O)O−で表される基、−C(=O)N(R)−で表される基、及び置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基からなる群から選ばれる1個又は2個を組み合わせた2価の基、又は直接結合である。Rは水素原子又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
Arは置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基であり、該1価の芳香族炭化水素基はsp炭素原子を7個以上含む。)
【請求項7】
前記工程(a)において、前記高分子化合物を含む懸濁液又は溶液を基材に塗布する、請求項6に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−64101(P2013−64101A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−101228(P2012−101228)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】