説明

高分子化合物及びそれを用いた光電変換素子

【課題】開放端電圧が高い有機光電変換素子を製造しうる高分子化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物。


(1)
〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Wは、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。Wは、Wとは異なる基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及びそれを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため、大気中に放出されるCO2の削減が求められている。例えば、家屋の屋根にpn接合型のシリコン系太陽電池などを用いるソーラーシステムへの切り替えが提唱されているが、上記シリコン系太陽電池に用いられる単結晶、多結晶及びアモルファスシリコンは、その製造過程において高温、高真空条件が必要であるという問題がある。
【0003】
一方、光電変換素子の一態様である有機薄膜太陽電池は、シリコン系太陽電池の製造プロセスに用いられる高温、高真空プロセスが省略でき、塗布プロセスのみで安価に製造できる可能性があり、近年注目されてきている。有機薄膜太陽電池に用いる高分子化合物としては、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなる高分子化合物が記載されている(特許文献1)。
【0004】

繰り返し単位(A) 繰り返し単位(B)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−506519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記高分子化合物を含む有機層を有する光電変換素子は、光電変換効率が必ずしも十分ではない。
【0007】
本発明は、光電変換素子に含まれる有機層に用いた場合に、光電変換素子の光電変換効率が高くなる高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は第一に、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を提供する。

(1)
〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Wは、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。Wは、Wとは異なる基を表す。〕
【0009】
本発明は第二に、式(3)で表される化合物を提供する。

(3)
〔式中、X3a1及びX3a2は、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Y3a1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。W3a1は、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。W3a2は、W3a1とは異なる基を表す。Q3a1及びQ3a2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ジヒドロキシボリル基又は1価の有機基を表す。〕
【0010】
本発明は第三に、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有し、該活性層に前記高分子化合物又は前記化合物を含有する光電変換素子を提供する。
【0011】
本発明は第四に、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、活性層とを有し、該活性層に前記高分子化合物又は前記化合物を含有する有機薄膜トランジスタを提供する。
【0012】
本発明は第五に、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に発光層を有し、該発光層に前記高分子化合物又は前記化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高分子化合物を含む有機層を有する光電変換素子は、光電変換効率が大きいため、本発明は極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構成単位を有することを特徴とする。

(1)
〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Wは、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。Wは、Wとは異なる基を表す。〕
【0016】
、R及びRで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基、カルボキシ基及びシアノ基が挙げられる。
【0017】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0018】
ここで、アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、通常1〜30である。アルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0019】
アルコキシ基のアルキル部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。アルコキシ基は、置換基を有していてもよい。アルコキシ基の炭素数は、通常1〜20であり、置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基及び2−メトキシエチルオキシ基が挙げられる。
【0020】
アルキルチオ基のアルキル部分は、直鎖状でも分岐状でもよく、環状であってもよい。
アルキルチオ基は、置換基を有していてもよい。アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜20であり、置換基としては、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有していてもよいアルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基及びトリフルオロメチルチオ基が挙げられる。
【0021】
アリール基とは、芳香族炭化水素から芳香環上の水素原子1個を除いた基を意味し、その炭素数は通常6〜60である。アリール基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12アルコキシは、炭素数1〜12のアルコキシであることを示す。C1〜C12アルコキシは、好ましくはC1〜C8アルコキシであり、より好ましくはC1〜C6アルコキシである。C1〜C8アルコキシは、炭素数1〜8のアルコキシであることを示し、C1〜C6アルコキシは、炭素数1〜6のアルコキシであることを示す。C1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ及びC1〜C6アルコキシの具体例としては、上記アルコキシ基で説明し例示したものが挙げられる。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(C1〜C12アルキルは、炭素数1〜12のアルキルであることを示す。C1〜C12アルキルは、好ましくはC1〜C8アルキルであり、より好ましくはC1〜C6アルキルである。C1〜C8アルキルは、炭素数1〜8のアルキルであることを示し、C1〜C6アルキルは、炭素数1〜6のアルキルであることを示す。C1〜C12アルキル、C1〜C8アルキル及びC1〜C6アルキルの具体例としては、上記アルキル基で説明し例示したものが挙げられる。以下も同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基及びペンタフルオロフェニル基が挙げられる。C1〜C12アルコキシフェニル基の中で、好ましい態様はC1〜C8アルコキシフェニル基であり、より好ましい態様はC1〜C6アルコキシフェニル基である。C1〜C8アルコキシ及びC1〜C6アルコキシの具体例としては、上記アルコキシ基に関して例示したアルコキシの中の、C1〜C8及びC1〜C6のものが挙げられる。
【0022】
アリールオキシ基は、その炭素数が通常6〜60であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基及びペンタフルオロフェノキシ基が挙げられる。
【0023】
アリールチオ基は、その炭素数が通常6〜60であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよいアリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニルチオ基、C1〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0024】
アリールアルキル基は、その炭素数が通常7〜60であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキル基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキル基が挙げられる。
【0025】
アリールアルコキシ基は、その炭素数が通常7〜60であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0026】
アリールアルキルチオ基は、その炭素数が通常7〜60であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基の具体例としては、フェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルチオ基が挙げられる。
【0027】
アシル基とは、カルボン酸中の水酸基を除いた基を意味し、その炭素数は通常2〜20である。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基等の炭素数2〜20のハロゲンで置換されていてもよいアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ペンタフルオロベンゾイル基等のハロゲンで置換されていてもよいフェニルカルボニル基が挙げられる。
【0028】
アシルオキシ基とは、カルボン酸中の水素原子を除いた基を意味し、その炭素数は通常2〜20である。アシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基及びペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0029】
アミド基とは、アミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味し、その炭素数は通常2〜20である。アミド基の具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。
【0030】
イミド基とは、イミド(−CO−NH−CO−)から窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味し、具体例としては、スクシンイミド基、フタルイミド基が挙げられる。
【0031】
置換アミノ基とは、アミノ基の水素原子の1個又は2個が置換されたものであり、置換基は、例えば、アルキル基及び置換されていてもよいアリール基である。アルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例は、Rで表されるアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例と同じである。置換アミノ基の炭素数は通常1〜40である。置換アミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基、フェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C1〜C12アルキルアミノ基が挙げられる。
【0032】
置換シリル基とは、シリル基の水素原子の1個、2個又は3個が置換されたもの、一般に、シリル基の3水素原子全てが置換されたものであり、置換基は、例えば、アルキル基及び置換されていてもよいアリール基である。アルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例は、Rで表されるアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の具体例と同じである。置換シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基及びジメチルフェニルシリル基が挙げられる。
【0033】
置換シリルオキシ基とは、上記の置換シリル基に酸素原子が結合した基である。置換シリルオキシ基の具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリプロピルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基及びジメチルフェニルシリルオキシ基が挙げられる。
【0034】
置換シリルチオ基とは、上記の置換シリル基に硫黄原子が結合した基である。置換シリルチオ基の具体例としては、トリメチルシリルチオ基、トリエチルシリルチオ基、トリプロピルシリルチオ基、トリイソプロピルシリルチオ基、tert−ブチルジメチルシリルチオ基、トリフェニルシリルチオ基、トリ−p−キシリルシリルチオ基、トリベンジルシリルチオ基、ジフェニルメチルシリルチオ基、tert−ブチルジフェニルシリルチオ基及びジメチルフェニルシリルチオ基が挙げられる。
【0035】
置換シリルアミノ基とは、アミノ基の水素原子の1個又は2個が置換シリル基で置換されたものであり、該置換シリル基は上記の通りである。置換シリルアミノ基の具体例としては、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリプロピルシリルアミノ基、トリイソプロピルシリルアミノ基、tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、トリ−p−キシリルシリルアミノ基、トリベンジルシリルアミノ基、ジフェニルメチルシリルアミノ基、tert−ブチルジフェニルシリルアミノ基、ジメチルフェニルシリルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、ビス(トリエチルシリル)アミノ基、ビス(トリプロピルシリル)アミノ基、ビス(トリイソプロピルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチルジメチルシリル)アミノ基、ビス(トリフェニルシリル)アミノ基、ビス(トリ−p−キシリルシリル)アミノ基、ビス(トリベンジルシリル)アミノ基、ビス(ジフェニルメチルシリル)アミノ基、ビス(tert−ブチルジフェニルシリル)アミノ基及びビス(ジメチルフェニルシリル)アミノ基が挙げられる。
【0036】
複素環基としては、置換基を有していてもよいフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、プラゾリジン、フラザン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、チオピラン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、モルホリン、トリアジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、クロマン、イソクロマン、ベンゾピラン、キノリン、イソキノリン、キノリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、キナゾリジン、シンノリン、フタラジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、キサンテン、フェナントリジン、アクリジン、β-カルボリン、ペリミジン、フェナントロリン、チアントレン、フェノキサチイン、フェノキサジン、フェノチアジン、フェナジン等の複素環化合物から水素原子を1個除いた基が挙げられる。芳香族複素環基が好ましい。
【0037】
複素環オキシ基としては、上記の複素環基に酸素原子が結合した式(11)で表される基が挙げられる。複素環チオ基としては、上記の複素環基に硫黄原子が結合した式(12)で表される基が挙げられる。

(11) (12)
〔式(11)及び式(12)中、Arは複素環基を表す。〕
【0038】
複素環オキシ基は、その炭素数が通常4〜60である。複素環オキシ基の具体例としては、チエニルオキシ基、C1〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、C1〜C12アルキルピリジルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、ピラゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、チアゾールオキシ基及びチアジアゾールオキシ基が挙げられる。
複素環チオ基は、その炭素数が通常4〜60である。複素環チオ基の具体例としては、チエニルメルカプト基、C1〜C12アルキルチエニルメルカプト基、ピロリルメルカプト基、フリルメルカプト基、ピリジルメルカプト基、C1〜C12アルキルピリジルメルカプト基、イミダゾリルメルカプト基、ピラゾリルメルカプト基、トリアゾリルメルカプト基、オキサゾリルメルカプト基、チアゾールメルカプト基及びチアジアゾールメルカプト基が挙げられる。
【0039】
アリールアルケニル基は、通常、その炭素数が8〜20であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。アリールアルケニル基の具体例としては、スチリル基が挙げられる。
【0040】
アリールアルキニル基は、通常、その炭素数が8〜20であり、アリール部分が置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子及びアルコキシ基(例えば、炭素数1〜20)が挙げられる。アリールアルキニル基の具体例としては、フェニルアセチレニル基が挙げられる。
【0041】
は、硫黄原子、酸素原子及びセレン原子が好ましく、硫黄原子及び酸素原子がより好ましく、硫黄原子が特に好ましい。
【0042】
は、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。
【0043】
フッ素原子を有する1価の有機基としては、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルチオ基、フルオロアリール基、フルオロアリールオキシ基及びフルオロアリールチオ基が挙げられる。
【0044】
フルオロアルキル基は、通常、炭素数1〜30のアルキル基の1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、該アルキル基の具体例はR、R及びRで表されるアルキル基の具体例と同じである。フルオロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、ペンタフルオロメチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基及びトリデカフルオロヘキシル基が挙げられる。
【0045】
フルオロアルコキシ基は、通常、炭素数1〜20のアルコキシル基の1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、該アルコキシ基の具体例はR、R及びRで表されるアルコキシ基の具体例と同じである。フルオロアルコキシ基の具体例としては、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロエトキシ基、ペンタフルオロメトキシ基、ヘプタフルオロプロポオキシ基、ノナフルオロブトキシ基及びトリデカフルオロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0046】
フルオロアルキルチオ基は、通常、炭素数1〜20のアルキルチオ基の1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、該アルキルチオ基の具体例はR、R及びRで表されるアルキルチオ基の具体例と同じである。フルオロアルキルチオ基の具体例としては、フルオロメチルチオ基、ジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ジフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロメチルチオ基、ヘプタフルオロプロピルチオ基、ノナフルオロブチルチオ基及びトリデカフルオロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0047】
フルオロアリール基は、通常、フェニル基又はナフチル基の1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものであり、フルオロアリール基の具体例としては、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、フルオロビフェニル基、ノナフルオロビフェニル基、フルオロナフチル基及びヘプタフルオロナフチル基が挙げられる。
【0048】
フルオロアリールオキシ基とは、上記のフルオロアリール基に酸素原子が結合した基である。フルオロアリールオキシ基の具体例としては、フルオロフェノキシ基、ジフルオロフェノキシ基、トリフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、フルオロビフェニルオキシ基、ノナフルオロビフェニルオキシ基、フルオロナフチルオキシ基及びヘプタフルオロナフチルオキシ基が挙げられる。
【0049】
フルオロアリールチオ基とは、上記のフルオロアリール基に硫黄原子が結合した基である。フルオロアリールチオ基の具体例としては、フルオロフェニルチオ基、ジフルオロフェニルチオ基、トリフルオロフェニルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、フルオロビフェニルチオ基、ノナフルオロビフェニルチオ基、フルオロナフチルチオ基及びヘプタフルオロナフチルチオ基が挙げられる。
【0050】
は、フッ素原子が好ましい。
【0051】
は、Wとは異なる基を表す。Wとしては、フッ素原子とは異なる原子からなる1価の有機基が挙げられる。フッ素原子とは異なる原子からなる1価の有機基としては、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基及びカルボキシ基が好ましい。
該置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基及び置換されていてもよいアリールアルキニル基の具体例は、前記のR〜Rで表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミド基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基及び置換されていてもよいアリールアルキニル基の具体例として記載した基のうちフッ素原子を含まない基が挙げられる。
【0052】
は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基が好ましく、アルキル基及びアルコキシ基がより好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。
【0053】
及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。X及びXの少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、X及びXがともに窒素原子であることがより好ましい。
【0054】
式(1)で表される構成単位としては、例えば、式(1001)〜式(1225)で表される構成単位が挙げられる。
【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】
式(1001)〜式(1225)中、R、R及びRは前述と同じ意味を表す。式(1001)〜式(1225)で表される構成単位の中でも、本発明の高分子化合物を含む光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、式(1001)〜式(1075)で表される構成単位が好ましく、式(1001)〜式(1030)で表される構成単位がより好ましく、式(1001)で表される構成単位及び式(1016)で表される構成単位が特に好ましい。
【0080】
本発明の高分子化合物は、さらに、式(2)で表される構成単位を有していてもよい。

(2)
〔式中、Arは、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。〕
【0081】
ここで、アリーレン基とは、置換されていてもよい芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、アリーレン基に含まれる芳香環を構成する炭素数は通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。芳香族炭化水素としては、ベンゼン環をもつもの、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接結合したもの又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。芳香族炭化水素が有していてもよい置換基としては、前述のR、R及びRで表される置換基と同じ基が挙げられる。
【0082】
2価の複素環基とは、置換されていてもよい複素環式化合物から水素原子2個を除いた原子団であり、2価の複素環基に含まれる芳香環を構成する炭素数は通常2〜60であり、好ましくは3〜20である。複素環式化合物とは、環構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素、ケイ素などのヘテロ原子を環内に含むものをいう。複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、前述のR、R及びRで表される置換基と同じ基が挙げられる。2価の複素環基としては、2価の芳香族複素環基が好ましい。
【0083】
式(2)で表される構成単位は、本発明の高分子化合物中において、2つ以上連続して存在していてもよいし、式(2)で表される構成単位の両隣りに式(1)で表される構成単位が存在していてもよい。式(2)で表される構成単位が2つ以上連続して存在する場合、連続して存在する式(2)で表される構成単位は同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0084】
式(2)で表される構成単位としては、例えば、式(D−1)で表される構成単位、式(D−2)で表される構成単位及び式234で表される構成単位が挙げられる。

〔式(D−1)及び式(D−2)中、d環は、置換基を有していてもよい芳香環を表す。mは、1以上の整数を表す。Zは、式(z−1)〜式(z−8)で表される基を表さす。d環が複数個ある場合、それらは同一でもあっても相異なってもよい。Zが複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。

(式(z−1)〜式(z−8)中、Rは、水素原子又は置換基を表す。Rが複数個ある場合、それらは同一でも相異なってもよい。Rが互いに結合し、環状構造を形成していてもよい。)〕

〔式中、Rは、水素原子又は置換基を表す。2個あるRは同一でも相異なってもよい。〕
【0085】
芳香環としては、芳香族炭素環及び芳香族複素環が挙げられる。
芳香族炭素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環が挙げられる。
芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、シロール環、ボロール環、ホスホール環、イミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、インドール環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環及びベンゾオキサゾール環が挙げられる。
【0086】
mは、1以上の整数を表す。mは、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0087】
Rで表される置換基の例としては、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、複素環基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。
【0088】
Rで表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基及び複素環基の定義及び具体例は、前述のR、R及びRで表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基及び複素環基の定義及び具体例と同じである。
【0089】
アルコキシカルボニル基は、カルボキシ基中の水素原子をアルキル基で置換した基である。アルコキシカルボニル基の炭素数は、通常2〜20である。アルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0090】
Rは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基が好ましく、炭素数が9〜18のアルキル基、炭素数が9〜18のアルコキシ基、炭素数が9〜18のアリール基及び炭素数が9〜18のアリールオキシ基がより好ましく、炭素数が9〜18のアルキル基が特に好ましい。
【0091】
芳香族炭素環及び芳香族複素環は置換基を有していてもよい。芳香族炭素環及び芳香族複素環が置換基を2つ以上有する場合、該置換基は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。芳香族炭素環及び芳香族複素環が有していてもよい置換基としては、前述のR、R及びRで表される置換基と同じ基が挙げられる。
【0092】
式(D−2)で表される構成単位としては、例えば、式(D−3)で表される構成単位、式(D−4)で表される構成単位及び式(D−5)で表される構成単位が挙げられる。

〔式(D−3)〜(D−5)中、e環は、置換基を有していてもよい単環の芳香環を表す。nは、1以上の整数を表す。pは、0〜5の整数を表す。e環が複数個ある場合、それらは、同一であっても相異なってもよい。〕
【0093】
単環の芳香環としては、ベンゼン環及び単環の芳香族複素環が挙げられる。単環の芳香環が有していてもよい置換基としては、d環に含まれる芳香族炭素環又は芳香族複素環が有していてもよい置換基と同じ基が挙げられる。
【0094】
nは、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
pは、0〜4が好ましく、0〜3がより好ましく、0〜2が特に好ましい。
【0095】
本発明の高分子化合物を光電変換素子に用いる場合、光電変換効率を高める観点からは、式(2)で表される構成単位の中でも、式(D−1)で表される構成単位及び式(D−5)で表される構成単位が好ましく、式(D−1)で表される構成単位がより好ましい。
【0096】
本発明の高分子化合物を有機薄膜トランジスタに用いる場合、ホール移動度を高める観点からは、式(2)で表される構成単位の中でも、式(D−1)で表される構成単位及び式(D−4)で表される構成単位が好ましく、式(D−1)で表される構成単位がより好ましい。
【0097】
式(D−1)で表される構成単位としては、例えば、式1〜式152で表される構成単位が挙げられる。
【0098】

【0099】

【0100】

【0101】

【0102】

【0103】

【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】

【0114】
式1〜式152中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0115】
式(D−3)で表される構成単位としては、例えば、式201〜式233で表される構成単位が挙げられる。
【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】
式201〜式233中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0121】
式(D−4)で表される構成単位としては、例えば、式235〜式238で表される構成単位が挙げられる。

【0122】
式235〜式238中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0123】
式(D−5)で表される構成単位としては、例えば、式301〜式323で表される構成単位が挙げられる。
【0124】

【0125】

【0126】
式301〜式323中、Rは前述と同じ意味を表す。
【0127】
本発明の高分子化合物を光電変換素子に用いる場合、光電変換効率を高める観点からは、式(2)で表される構成単位は、式1、式5、式7、式8、式12、式14、式15、式25、式35、式39、式41、式49、式50、式54、式60、式62、式63、式67、式73、式75、式76、式80、式86、式101、式106、式112、式114、式119、式125、式127、式132、式138、式140、式145、式151、式215、式218、式229、式230、式234、式309、式310、式311、式312、式313、式314、式318、式321、式322及び式323で表される構成単位が好ましく、式1、式8、式15、式25、式35、式49、式62、式75、式101、式114、式127、式140、式215、式234、式309、式310、式311、式314、式321、式322及び式323で表される構成単位がより好ましく、式75、式309、式314、式322及び式323で表される構成単位がさらに好ましく、式75で表される構成単位が特に好ましい。
【0128】
本発明の高分子化合物を有機薄膜トランジスタに用いる場合、ホール移動度を高める観点からは、式(2)で表される構成単位は、式1、式8、式25、式35、式49、式54、式62、式67、式75、式80、式101、式114、式201、式202、式203、式204、式205、式206、式207、式208、式209、式210、式215、式216、式217、式218、式219、式220、式221、式222、式229、式230、式231、式232、式233、式235、式236、式237、式238、式309、式310、式311、式312、式313、式314、式318、式319、式322及び式323で表される構成単位が好ましく、式25、式75、式80、式114、式203、式204、式207、式208、式215、式216、式217、式218、式219、式220、式232、式233、式235、式236、式309、式314及び式322で表される構成単位がより好ましく、式75、式114、式204、式208、式215、式216、式217、式232、式236、式309及び式314で表される構成単位がさらに好ましく、式75で表される構成単位が特に好ましい。
【0129】
本発明の高分子化合物は、2種類以上の式(D−1)〜式(D−5)で表される構成単位が結合した基を有していてもよい。該基としては、例えば、式401〜式414で表される基が挙げられる。
【0130】

【0131】

【0132】

【0133】
式401〜式414中、Rは前述と同じ意味を表す。a及びbは、それぞれ独立に、1〜5の整数を表す。a及びbは、1〜3であり、1が特に好ましい。
【0134】
本発明の高分子化合物を光電変換素子に用いる場合、光電変換効率を高める観点からは、式401〜式414で表される基の中でも、式401、式402、式409、式410、式411、式412、式413及び式414で表される基が好ましく、式401、式409、式413及び式414で表される基がより好ましく、式401及び式409で表される基が特に好ましい。
【0135】
Arは、光吸収末端波長を長波長化する観点からは、2価の複素環基が好ましく、チオフェン環を含む2価の複素環基がより好ましい。
【0136】
本発明の高分子化合物が、式(2)で表される構成単位を有する場合、本発明の高分子化合物中の式(1)で表される構造単位の数と式(2)で表される構造単位の数の割合は、本発明の高分子化合物の溶媒への溶解性を高める観点からは、下式で表されるSの数値が、0.10〜0.80であることが好ましく、0.15〜0.60であることがさらに好ましく、0.20〜0.50であることが特に好ましい。

S=(式(1)で表される構成単位の数)/{(式(1)で表される構成単位の数))+(式(2)で表される構成単位の数)}
【0137】
本発明における高分子化合物とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと呼称することもある)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量が2000以上の化合物を指す。本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は、2000〜1000000が好ましく、2500〜1000000がより好ましく、3000〜100000が特に好ましい。
【0138】
本発明の高分子化合物中の式(1)で表される構成単位の含有量は、化合物中に少なくとも1つ含まれていればよい。好ましくは高分子化合物中、高分子鎖一本あたり平均2個以上、さらに好ましくは高分子鎖一本あたり平均3個以上含まれる。
【0139】
また、本発明の高分子化合物は、素子に用いられる場合、デバイス作製の容易性から、溶媒への溶解度が高いことが望ましい。具体的には、本発明の高分子化合物が、該高分子化合物を0.01重量%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することが好ましく、0.1重量%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することがより好ましく、0.4重量%以上含む溶液を作製し得る溶解性を有することがさらに好ましい。
【0140】
本発明の高分子化合物は、π共役高分子化合物であることが好ましい。π共役高分子化合物とは、主鎖中、多重結合が単結合を間に1個挟んで存在する高分子化合物を指す。
【0141】
本発明の高分子化合物の製造方法としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物の合成の容易さからは、Suzukiカップリング反応を用いる方法及びStilleカップリング反応を用いる方法が好ましい。
【0142】
Suzukiカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(100):
100−E1−Q200 (100)
〔式中、E1は、式(2)で表される構成単位を表す。Q100及びQ200は、それぞれ独立に、ジヒドロキシボリル基[−B(OH)]又はホウ酸エステル残基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物と、式(200):
1−E2−T2 (200)
〔式中、E2は、式(1)で表される構成単位を表す。T1及びT2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子又はスルホン酸残基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒及び塩基の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。Eとして好ましくは式1〜式152、式201〜式233、式235〜式238及び式301〜式323で表される構成単位である。
この場合、反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計に対して、過剰であることが好ましい。反応に用いる式(200)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計を1モルとすると、式(100)で表わされる1種類以上の化合物のモル数の合計が0.6〜0.99モルであることが好ましく、0.7〜0.95モルであることがさらに好ましい。
【0143】
ホウ酸エステル残基とは、ホウ酸ジエステルから水酸基を除去した基を意味し、ジアルキルエステル残基、ジアリールエステル残基、ジ(アリールアルキル)エステル残基などが挙げられる。ホウ酸エステル残基の具体例としては、下記式:

(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
で表される基が例示される。
【0144】
式(200)における、T及びTで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。高分子化合物の合成の容易さからは、臭素原子、ヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。
【0145】
式(200)における、T及びTで表されるスルホン酸残基とは、スルホン酸(−SOH)から酸性水素を除いた原子団を意味し、具体例としては、アルキルスルホネート基(例えば、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基)、アリールスルホネート基(例えば、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基)、アリールアルキルスルホネート基(例えば、ベンジルスルホネート基)及びトリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。
【0146】
具体的には、Suzukiカップリング反応を行う方法としては、任意の溶媒中において、触媒としてパラジウム触媒を用い、塩基の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
【0147】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられ、具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられ、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
パラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モルであり、好ましくは0.0003モル〜0.1モルである。
【0148】
Suzukiカップリング反応に使用するパラジウム触媒としてパラジウムアセテート類を用いる場合は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン等のリン化合物を配位子として添加することができる。この場合、配位子の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0149】
Suzukiカップリング反応に使用する塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化バリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンが挙げられる。無機塩としては、例えば、フッ化セシウムが挙げられる。
塩基の添加量は、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.5モル〜100モル、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0150】
Suzukiカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランが例示される。本発明の高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。また、塩基は、水溶液として加え、2相系で反応させてもよい。塩基として無機塩を用いる場合は、無機塩の溶解性の観点から、通常、水溶液として加えて反応させる。
なお、塩基を水溶液として加え、2相系で反応させる場合は、必要に応じて、第4級アンモニウム塩などの相間移動触媒を加えてもよい。
【0151】
Suzukiカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度であり、高分子化合物の高分子量化の観点からは、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。反応時間は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度である。1時間〜30時間程度が効率的で好ましい。
【0152】
Suzukiカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd(0)触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(100)で表される化合物、式(200)で表される化合物、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、この溶液に、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより脱気した塩基、例えば、炭酸ナトリウム水溶液を滴下した後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0153】
Stilleカップリング反応を用いる方法としては、例えば、式(300):
300−E−Q400 (300)
〔式中、Eは、式(2)で表される構成単位を表す。Q300及びQ400は、それぞれ独立に、置換スタンニル基を表す。〕
で表される1種類以上の化合物と、前記式(200)で表される1種類以上の化合物とを、パラジウム触媒の存在下で反応させる工程を有する製造方法が挙げられる。Eとして好ましくは式1〜式152、式201〜式233、式235〜式238及び式301〜式323で表される基である。
【0154】
置換スタンニル基としては、-SnR100で表される基等が挙げられる。ここでR100は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられる。
該アルキル基の炭素数は通常1〜30であり、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2一メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。置換スタンニル基として好ましくは-SnMe、-SnEt、-SnBu、-SnPhであり、さらに好ましくは-SnMe、-SnEt、-SnBuである。上記好ましい例において、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基を表す。
【0155】
具体的には、触媒として、例えば、パラジウム触媒下で任意の溶媒中で反応する方法が挙げられる。
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒としては、例えば、Pd(0)触媒、Pd(II)触媒が挙げられる。具体的には、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、パラジウムアセテート類、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウムアセテート、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが挙げられ、反応(重合)操作の容易さ、反応(重合)速度の観点からは、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムが好ましい。
Stilleカップリング反応に使用するパラジウム触媒の添加量は、特に限定されず、触媒としての有効量であればよいが、式(100)で表される化合物1モルに対して、通常、0.0001モル〜0.5モル、好ましくは0.0003モル〜0.2モルである。
【0156】
また、Stilleカップリング反応において、必要に応じて配位子や助触媒を用いることもできる。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2−フリル)ホスフィン等のリン化合物やトリフェニルアルシン、トリフェノキシアルシン等の砒素化合物が挙げられる。助触媒としてはヨウ化銅、臭化銅、塩化銅、2−テノイル酸銅(I)などが挙げられる。
配位子又は助触媒を用いる場合、配位子又は助触媒の添加量は、パラジウム触媒1モルに対して、通常、0.5モル〜100モルであり、好ましくは0.9モル〜20モル、さらに好ましくは1モル〜10モルである。
【0157】
Stilleカップリング反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、トルエン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。本発明に用いられる高分子化合物の溶解性の観点からは、トルエン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0158】
Stilleカップリング反応を行う温度は、前記溶媒にもよるが、通常、50〜160℃程度であり、高分子化合物の高分子量化の観点から、60〜120℃が好ましい。また、溶媒の沸点近くまで昇温し、還流させてもよい。
前記反応を行う時間(反応時間)は、目的の重合度に達したときを終点としてもよいが、通常、0.1時間〜200時間程度である。1時間〜30時間程度が効率的で好ましい。
【0159】
Stilleカップリング反応は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性雰囲気下、Pd触媒が失活しない反応系で行う。例えば、アルゴンガスや窒素ガス等で、十分脱気された系で行う。具体的には、重合容器(反応系)内を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、この重合容器に、式(300)で表される化合物、式(200)で表される化合物、パラジウム触媒を仕込み、さらに、重合容器を窒素ガスで十分置換し、脱気した後、あらかじめ窒素ガスでバブリングすることにより、脱気した溶媒、例えば、トルエンを加えた後、必要に応じて配位子や助触媒を加え、その後、加熱、昇温し、例えば、還流温度で8時間、不活性雰囲気を保持しながら重合する。
【0160】
本発明の高分子化合物の末端基は、Q100〜Q400、T、Tで表されるような重合活性基が残っていると、素子の作製に用いたときに得られる素子の特性や寿命が低下する可能性があるため、安定な基で保護されていてもよい。該安定な基は、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基が好ましい。また、該安定な基は、ビニレン基を介してアリール基又は複素環基と結合している構造を有していてもよい。該安定な基としては、置換基を有さないフェニル基、ナフチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
【0161】
本発明の高分子化合物に含まれる金属元素の量は、少ないほうが、光電変換効率やホール移動度が高まるため好ましい。中でも、本発明の高分子化合物に含まれる遷移金属元素の量が少ないことが好ましい。遷移金属元素としては、パラジウム、鉄、スズ、ニッケル、銅が挙げられる。中でも、パラジウム、鉄、スズの量が少ないことが好ましい。本発明の高分子化合物に含まれる不純物の量は元素分析で測定されるが、パラジウム、鉄、スズの合計量が、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下であり、さらにより好ましくは100ppm以下であり、特に好ましくは30ppm以下である。
元素分析の方法としては、原子吸光分析、発光分光分析、プラズマ発光分析、蛍光X線分析、プラズマ質量分析、グロー放電質量分析、イオンクロマトグラフ分析などが挙げられる。
【0162】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構成単位を有することを特徴とするが、該高分子化合物は、例えば、式(3)で表される化合物を原料の一つとして用いることにより合成することが出来る。

(3)
〔式中、X3a1及びX3a2は、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Y3a1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。W3a1は、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。W3a2は、W3a1とは異なる基を表す。Q3a1及びQ3a2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ジヒドロキシボリル基又は1価の有機基を表す。〕
【0163】
式(3)中、X3a1及びX3a2の少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、X3a1及びX3a2の両方が窒素原子であることがよりに好ましい。
【0164】
式(3)中、Y3a1は、硫黄原子、酸素原子、−N(R)−及び−CR=CR−が好ましく、硫黄原子、酸素原子及び−CR=CR−がより好ましく、硫黄原子及び酸素原子がさらに好ましい。
【0165】
3a1及びQ3a2で表される1価の有機基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基、置換されていてもよいアリールアルキニル基、ホウ酸エステル残基及び置換スタンニル基が挙げられる。
【0166】
該置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基及び置換されていてもよいアリールアルキニル基の定義及び具体例は、前述のR、R及びRで表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルチオ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、置換されていてもよいアリールチオ基、置換されていてもよいアリールアルキル基、置換されていてもよいアリールアルコキシ基、置換されていてもよいアリールアルキルチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、酸イミド基、アミノ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基、置換されていてもよいアリールアルケニル基及び置換されていてもよいアリールアルキニル基の定義及び具体例と同じである。該ホウ酸エステル残基の定義及び具体例としては、前述のQ100及びQ200で表されるホウ酸エステル残基の定義及び具体例と同じである。該置換スタンニル基の定義及び具体例としては、前述のQ300及びQ400で表される置換スタンニル基の定義及び具体例と同じである。
【0167】
3a1及びQ3a2は、臭素原子、ジヒドロキシボリル基、ホウ酸エステル残基、置換スタンニル基及び置換シリル基が好ましく、臭素原子、ジヒドロキシボリル基、ホウ酸エステル残基及び置換スタンニル基がより好ましく、ジヒドロキシボリル基、ホウ酸エステル残基及び置換スタンニル基が特に好ましい。
【0168】
3a1で表されるフッ素原子を有する1価の有機基の具体例は、Wで表されるフッ素原子を有する1価の有機基の具体例と同じである。
3a2はW3a1とは異なる基を表す。はW3a1とは異なる基としては、例えば、フッ素原子とは異なる原子のみからなる1価の有機基、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。フッ素原子とは異なる原子のみからなる1価の有機基の具体例は、Wで表されるフッ素原子とは異なる原子のみからなる1価の有機基の具体例と同じである。
【0169】
式(3)で表される化合物としては、例えば、式501〜式680で表される化合物が挙げられる。
【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】
式501〜式680中、R、R及びRは前述と同じ意味を表す。Meはメチル基を表し、Buはブチル基を表す。
【0183】

式501〜式680で表される化合物の中でも、重合した高分子化合物を含む光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、式501〜式580で表される化合物が好ましく、式501〜式515、式531〜式545、式550、式552及び式553で表される化合物がより好ましく、式505で表される化合物及び式550で表される化合物が特に好ましい。
【0184】
式(3)で表される化合物の一態様である式(3−1)

(3−1)
(式中、Y3a1は前述と同じ意味を表す。R3aは、置換されていてもよいアルキル基を表す。)
で表される化合物は、式(3−2)

(3−2)
(式中、Y3a1は前述と同じ意味を表す。)
で表される化合物をアルコキシ化することで製造することが可能である。
【0185】
3aで表される置換されていてもよいアルキル基の具体例は、前述のR、R及びRで表される置換されていてもよいアルキル基の具体例と同じである。
【0186】
アルコキシ化には公知の方法を用いることができるが、例えば、無溶媒で、又は溶媒中でアルコキシドと式(3−2)で表される化合物とを反応させる方法が挙げられる。
溶媒を用いる場合、該溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジメトキシメタン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶媒などが挙げられる。
アルコキシドとしては公知のものが使用でき、市販品を用いることも可能であるし、対応するアルコールから合成したものを使用することも可能である。
【0187】
アルコールからアルコキシドを合成する方法としては、アルコールと、アルカリ金属又は水素化アルカリ金属とを反応させる方法が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム及びセシウムが挙げられる。水素化アルカリ金属としては、例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化セシウム及び水素化リチウムが挙げられる。アルコールとアルカリ金属又は水素化アルカリ金属との反応において、溶媒を用いてもよい。該溶媒としてはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ジメトキシメタン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素溶媒などを挙げることができる。
【0188】
式(3−2)で表される化合物は、例えば、国際公開第2011/052709号に記載された方法に従って合成することができる。
【0189】
本発明の高分子化合物は、光吸収末端波長が長波長であることが好ましい。光吸収末端波長は以下の方法で求めることができる。
測定には、紫外、可視、近赤外の波長領域で動作する分光光度計(例えば、日本分光製、紫外可視近赤外分光光度計JASCO−V670)を用いる。JASCO−V670を用いる場合、測定可能な波長範囲が200〜1500nmであるため、該波長範囲で測定を行う。まず、測定に用いる基板の吸収スペクトルを測定する。基板としては、石英基板、ガラス基板等を用いる。次いで、その基板の上に高分子化合物を含む溶液若しくは高分子化合物を含む溶融体から高分子化合物を含む薄膜を形成する。溶液からの製膜では、製膜後乾燥を行う。その後、薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルを得る。薄膜と基板との積層体の吸収スペクトルと基板の吸収スペクトルとの差を、薄膜の吸収スペクトルとして得る。
該薄膜の吸収スペクトルは、縦軸が高分子化合物の吸光度を、横軸が波長を示す。最も大きい吸収ピークの吸光度が0.5〜2程度になるよう、薄膜の膜厚を調整することが望ましい。吸収ピークの中で一番長波長の吸収ピークの吸光度を100%とし、その50%の吸光度を含む横軸(波長軸)に平行な直線と該吸収ピークとの交点であって、該吸収ピークのピーク波長よりも長波長である交点を第1の点とする。その25%の吸光度を含む波長軸に平行な直線と該吸収ピークとの交点であって、該吸収ピークのピーク波長よりも長波長である交点を第2の点とする。第1の点と第2の点とを結ぶ直線と基準線の交点を光吸収末端波長と定義する。ここで、基準線とは、最も長波長の吸収ピークにおいて、該吸収ピークの吸光度を100%とし、その10%の吸光度を含む波長軸に平行な直線と該吸収ピークの交点であって、該吸収ピークのピーク波長よりも長波長である交点の波長を基準として、基準となる波長より100nm長波長である吸収スペクトル上の第3の点と、基準となる波長より150nm長波長である吸収スペクトル上と第4の点を結んだ直線をいう。
【0190】
本発明の高分子化合物は、高い電子及び/又はホール輸送性を発揮し得ることから、該高分子化合物を含む有機薄膜を素子に用いた場合、電極から注入された電子やホール、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。これらの特性を活かして光電変換素子、有機薄膜トランジスタ、有機エレクトロルミネッセンス素子等の種々の素子に好適に用いることができる。以下、これらの素子について個々に説明する。
【0191】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、第1の電極と第2の電極との間に、本発明の高分子化合物を含む1層以上の活性層を有する。
本発明の光電変換素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極と、p型の有機半導体とn型の有機半導体との有機組成物から形成される活性層を有する光電変換素子が好ましい。本発明の高分子化合物は、p型の有機半導体として用いることが好ましい。
【0192】
本発明の光電変換素子の他の態様は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の電極間に、本発明の高分子化合物を含む第1の活性層と、該第1の活性層に隣接して、フラーレン誘導体等の電子受容性化合物を含む第2の活性層を含む光電変換素子である。
【0193】
本発明の光電変換素子は、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を含有する活性層にかえて、式(3)で表される化合物を含有する活性層を有していてもよい。
【0194】
本発明の光電変換素子は、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を含有する活性層を有することが好ましい。
【0195】
本発明の光電変換素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム及びシリコンが挙げられる。基板が不透明な場合には、基板の反対側の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0196】
前記の透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESAや、金、白金、銀及び銅が挙げられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド及び酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法及びメッキ法が挙げられる。
電極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機化合物から形成した透明導電膜を用いてもよい。
【0197】
一方の電極は透明でなくてもよく、該電極の材料としては、金属、導電性高分子が挙げられる。電極の材料の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、それらの金属うち2つ以上の金属の合金、それらの金属のうち1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン及び錫からなる群から選ばれる1種以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金及びカルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0198】
光電変換効率を向上させるための手段として、活性層以外の付加的な中間層を使用してもよい。中間層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、酸化チタン等の酸化物、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。
【0199】
<活性層>
前記活性層は、本発明の高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、前記活性層のホール輸送性を高めるため、前記活性層中に電子供与性化合物及び/又は電子受容性化合物として、本発明の高分子化合物以外の化合物を混合して用いることもできる。なお、前記電子供与性化合物及び前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0200】
前記電子供与性化合物としては、本発明の高分子化合物のほか、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0201】
前記電子受容性化合物としては、本発明の高分子化合物のほか、例えば、炭素材料、酸化チタン等の金属酸化物、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン)等のフェナントロリン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体が挙げられ、好ましくは、酸化チタン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フラーレン誘導体であり、特に好ましくはフラーレン、フラーレン誘導体である。
フラーレン、フラーレン誘導体としてはC60、C70、C76、C78、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体は、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0202】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、式(III)で表される化合物、式(IV)で表される化合物が挙げられる。

(I) (II) (III) (IV)

(式(I)〜(IV)中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0203】
及びRで表される置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の定義及び具体例は、R、R及びRで表される置換されていてもよいアルキル基及び置換されていてもよいアリール基の定義及び具体例と同じである。
【0204】
で表されるヘテロアリール基は、例えば、チオフェンジイル基、ピリジンジイル基、フランジイル基及びピロールジイル基が挙げられる。
【0205】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(V)で表される基が挙げられる。

(V)
(式中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。)
【0206】
で表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基及び置換されていてもよいヘテロアリール基の定義及び具体例は、Rで表される置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基及び置換されていてもよいヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0207】
60の誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。

【0208】
70の誘導体の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。

【0209】
また、フラーレン誘導体の例としては、[6,6]フェニル−C61酪酸メチルエステル(C60PCBM、[6,6]-Phenyl C61 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(C70PCBM、[6,6]-Phenyl C71 butyric acid methyl ester)、[6,6]フェニル−C85酪酸メチルエステル(C84PCBM、[6,6]-Phenyl C85 butyric acid methyl ester)、[6,6]チェニル−C61酪酸メチルエステル([6,6]-Thienyl C61 butyric acid methyl ester)が挙げられる。
【0210】
活性層中に本発明の高分子化合物とフラーレン誘導体とを含む場合、フラーレン誘導体の量は、本発明の高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部が好ましく、20〜500重量部がより好ましい。
【0211】
活性層の厚さは、1nm〜100μmが好ましく、2nm〜1000nmがより好ましく、5nm〜500nmがさらに好ましく、20nm〜200nmが特に好ましい。
【0212】
前記活性層の製造方法は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、高分子化合物と溶媒とを含む溶液からの成膜や、真空蒸着法による成膜方法が挙げられる。
【0213】
<光電変換素子の製造方法>
光電変換素子の好ましい製造方法は、第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有する素子の製造方法であって、該第1の電極上に本発明の高分子化合物と溶媒とを含む溶液(インク)を塗布法により塗布して活性層を形成する工程、該活性層上に第2の電極を形成する工程を有する素子の製造方法である。
【0214】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の高分子化合物を溶解させるものであればよい。該溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒が挙げられる。本発明の高分子化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0215】
溶液を用いて成膜する場合、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェットコート法及びスピンコート法が好ましい。
成膜性の観点からは、25℃における溶媒の表面張力が15mN/mより大きいことが好ましく、15mN/mより大きく100mN/mよりも小さいことがより好ましく、25mN/mより大きく60mN/mよりも小さいことがさらに好ましい。
【0216】
<光電変換素子の用途>
本発明の光電変換素子は、太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0217】
また、電極間に電圧を印加した状態、あるいは無印加の状態で光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0218】
<太陽電池モジュール>
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の高分子化合物を用いて製造される有機薄膜太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0219】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、発生した電力を外部に取り出される構造となっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルム 又は充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、又は上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。
支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材料で密封シールする。また、セルそのものや支持基板、充填材料及び封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状の支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0220】
<有機薄膜トランジスタ>
本発明の高分子化合物は、有機薄膜トランジスタにも用いることができる。有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極及びドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる活性層(有機半導体層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、活性層中に本発明の高分子化合物が含まれる。有機薄膜トランジスタとしては、電界効果型有機薄膜トランジスタ及び静電誘導型等有機薄膜トランジスタが挙げられる。
【0221】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる活性層(有機半導体層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極及びドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。電界効果型有機薄膜トランジスタにおいては、活性層が、本発明の高分子化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0222】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極及びドレイン電極、これらの間の電流経路となる活性層(有機半導体層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極及び活性層中に設けられたゲート電極が、活性層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。静電誘導型有機薄膜トランジスタにおいても、活性層が、本発明の高分子化合物を含む有機薄膜によって構成される。
【0223】
本発明の有機薄膜トランジスタは、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を含有する活性層にかえて、式(3)で表される化合物を含有する活性層を有していてもよい。
【0224】
本発明の有機薄膜トランジスタは、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を含有する活性層を有することが好ましい。
【0225】
有機薄膜トランジスタは、例えば電気泳動ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画素の制御や、画面輝度の均一性や画面書き換え速度を制御のために用いられる画素駆動素子等として用いることができる。
【0226】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の高分子化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に用いることもできる。有機EL素子は、第1の電極と第2の電極との間に発光層を有する。有機EL素子は、発光層の他にも、正孔輸送層、電子輸送層を含んでいてもよい。該発光層中に本発明の高分子化合物が含まれる。発光層中には、本発明の高分子化合物の他にも、電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する)を含んでいてもよい。有機EL素子としては、陽極と発光層と陰極とを有する素子、さらに陰極と発光層の間に、該発光層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層を有する陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子、さらに陽極と発光層の間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを有する素子、陽極と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子等が挙げられる。第1の電極と第2の電極の少なくとも一方は、透明又は半透明であることが好ましい。
【0227】
本発明の有機EL素子は、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物にかえて、式(3)で表される化合物を発光層中に含有していてもよい。
【0228】
本発明の有機EL素子は、式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を発光層中に含有することが好ましい。
【実施例】
【0229】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0230】
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0231】
(数平均分子量及び重量平均分子量の測定)
数平均分子量及び重量平均分子量については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(島津製作所製、商品名:LC−10Avp)によりポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。測定する高分子化合物は、約0.5重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに30μL注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを用い、0.6mL/分の流速で流した。カラムは、TSKgel SuperHM−H(東ソー製)2本とTSKgel SuperH2000(東ソー製)1本を直列に繋げた。検出器には示差屈折率検出器(島津製作所製、商品名:RID−10A)を用いた。
【0232】
参考例1
(化合物1の合成)

化合物1

500mlフラスコに、4,5−ジフルオロ−1,2−ジアミノベンゼン(東京化成工業製)を10.2g(70.8mmol)、ピリジンを150mL入れて均一な溶液とした。フラスコを0℃に保ったまま、フラスコ内に塩化チオニルを16.0g(134mmol)滴下した。滴下後、フラスコを25℃に温めて、6時間反応を行った。その後、反応液に水250mlを加え、さらにクロロホルムを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液をエバポレーターで濃縮し、析出した固体を再結晶で精製した。再結晶の溶媒には、メタノールを用いた。精製後、化合物1を10.5g(61.0mmol)得た。
【0233】
H NMR(CDCl、ppm):7.75(t、2H)
19F NMR(CDCl、ppm):−128.3(s、2F)
【0234】
参考例2
(化合物2の合成)

化合物1 化合物2

100mLフラスコに、化合物1を2.00g(11.6mmol)、鉄粉を0.20g(3.58mmol)入れ、フラスコを90℃に加熱した。該フラスコに、臭素31g(194mmol)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応液を90℃で38時間攪拌した。その後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、クロロホルム100mLを入れて希釈した。得られた溶液を、5重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液300mLに注ぎ込み、1時間攪拌した。得られた混合液の有機層を分液ロートで分離し、水層をクロロホルムで3回抽出した。得られた抽出液を有機層に混合し、混合した溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥後の溶液を濾過し、濾液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られた黄色の固体を、55℃に熱したメタノール90mLに溶解させ、その後、25℃まで冷却した。析出した結晶を濾過して集め、室温(25℃)で減圧乾燥して化合物2を1.50g得た。
【0235】
19F NMR(CDCl、ppm):−118.9(s、2F)
【0236】
実施例1
(化合物3の合成)

化合物2 化合物3

100mLフラスコに、ヘキサノールを310mg(3.0mmol)、テロラヒドロフランを30mL入れ、均一な溶液とした。フラスコを25℃に保ったまま、60重量%の水素化ナトリウムを鉱物油中に分散させた分散液を120mg(3.0mmol)添加した。添加後、30分攪拌し、攪拌後、化合物2を1.00g(3.0mmol)加えた。25℃で20分間攪拌後、フラスコを40℃に加熱し、2時間15分間攪拌した。攪拌後、塩化アンモニウム水溶液を100mL加えて反応を停止させ、酢酸エチル50mLで2回抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。有機層を濾過後、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、化合物3を301mg得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィの溶出溶媒には、ヘキサンと酢酸エチルとを、酢酸エチルに対するヘキサンの体積比が40となるように混合した混合液を用いた。
【0237】
H NMR(CDCl、ppm):4.24(t、2H)、1.90(m、2H)、1.39(m、4H)、1.26(t、2H)、0.93(m、3H)
19F NMR(CDCl、ppm):−116.0(s、1F)
【0238】
実施例2
(高分子化合物Aの合成)

化合物4 化合物3

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、国際公開第2011/052709号に記載された方法で合成した化合物4を255mg(0.243mmol)、化合物3を100mg(0.243mmol)、トルエンを19ml入れて均一な溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.33mg(0.0036mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを6.6mg(0.022mmol)加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルトリメチルスズ10mgを加えて3時間反応させ、その後フェニルブロミドを50mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーを濾過して集め、得られたポリマーを、円筒濾紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒濾紙内に残ったポリマーを、トルエン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.2gと水4mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3重量%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン9mLに溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーを濾過後、乾燥させ、精製された重合体を129mg得た。以下、この重合体を高分子化合物Aと呼称する。GPCで測定した高分子化合物Aのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量が47300であり、数平均分子量が14300であった。
【0239】
実施例3
(インク及び有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
スパッタ法によりITO膜を150nmの厚みで付けたガラス基板を、オゾンUV装置を用いて表面処理を行った。次に、高分子化合物A及びフェニルC61−酪酸メチルエステル(フラーレンC60PCBM)(フロンティアカーボン社製)を、高分子化合物Aに対するフラーレンC60PCBMの重量比が3となるよう、オルトジクロロベンゼンに溶解させ、インク1を製造した。インク1中、高分子化合物Aの重量とフラーレンC60PCBMの重量との合計は、インク1の重量に対して2.0重量%であった。該インク1をスピンコートによりガラス基板のITO膜上に塗布して、高分子化合物Aを含む有機膜を作製した。該有機膜の膜厚は、約100nmであった。有機膜の光吸収末端波長を測定したところ、880nmであった。その後、有機膜上に、真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ2nmで蒸着し、次いでアルミニウムを厚さ100nmで蒸着し、有機薄膜太陽電池を作製した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)は7.24mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.673Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.595であり、光電変換効率(η)は2.90%であった。
【0240】
実施例4
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
実施例3において、フラーレンC60PCBMの代わりに[6,6]フェニル−C71酪酸メチルエステル(フラーレンC70PCBM)(フロンティアカーボン社製)を用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。有機膜の光吸収末端波長は880nmであった。Jsc(短絡電流密度)は11.67mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.638Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.534であり、光電変換効率(η)は3.97%であった。
【0241】
実施例5
(高分子化合物Bの合成)


化合物5 化合物3

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、国際公開第2011/052709号に記載された方法で合成した化合物5を270mg(0.243mmol)、化合物3を100mg(0.243mmol)、トルエンを20ml入れて均一な溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.33mg(0.0036mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを6.6mg(0.022mmol)加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルトリメチルスズを10mg加え、3時間反応させた。その後、フェニルブロミドを50mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーを濾過して集め、得られたポリマーを、円筒濾紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒濾紙内に残ったポリマーを、トルエン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.2gと水4mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3重量%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン9mLに溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーを濾過後、乾燥させ、精製された重合体を129mg得た。以下、この重合体を高分子化合物Bと呼称する。GPCで測定した高分子化合物Bのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量が51700であり、数平均分子量が16400であった。
【0242】
実施例6
(有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
実施例3において、高分子化合物Aの代わりに高分子化合物Bを用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。有機膜の光吸収末端波長は880nmであった。Jsc(短絡電流密度)は6.56mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.667Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.565であり、光電変換効率(η)は2.47%であった。
【0243】
実施例7
(有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
実施例6において、フラーレンC60PCBMの代わりにフラーレンC70PCBMを用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。有機膜の光吸収末端波長は880nmであった。Jsc(短絡電流密度)は10.2mA/cmであり、Voc(開放端電圧)は0.655Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.531であり、光電変換効率(η)は3.55%であった。
【0244】
参考例3
(化合物7の合成)


化合物6 化合物7

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物6を1.78g(10.0mmol)、2−エチルヘキシルブロミドを5.83g(25.0mmol)、ヨウ化カリウムを41.5mg(0.25mmol)、水酸化カリウムを1.68g(30.0mmol)入れ、ジメチルスルホキシド35mLに溶解させ、室温(25℃)で24時間攪拌した。反応後、反応液に水100mLを加え、ヘキサンで生成物を抽出し、展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製を行い、化合物7を2.61g得た。
【0245】
参考例4
(化合物8の合成)

化合物7 化合物8

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物7を1.31g(3.25mmol)、N,N−ジメチルホルムアミドを25mL加え、フラスコを0℃に冷却して、N−ブロモスクシンイミドを1.21g加え、12時間攪拌した。反応液中に水100mLを入れて反応を停止し、エーテルで生成物を抽出した。展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製を行い、化合物8を1.70g得た。
【0246】
参考例5
(高分子化合物Cの合成)

化合物9 化合物8
フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物8を561mg(1.00mmol)、化合物9(シグマアルドリッチ社製)を388.1mg(1.00mmol)、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、シグマアルドリッチ社製)を202mg加え、トルエン20mlに溶解させ、得られたトルエン溶液をアルゴンで30分バブリングした。その後、反応液に酢酸パラジウムを2.25mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを12.3mg、16.7重量%の炭酸ナトリウム水溶液を6.5mL加え、100℃で5時間攪拌を行った。その後、反応液にフェニルホウ酸50mgを加え、さらに70℃で2時間反応させた。その後、反応液にジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水20mLを加え、2時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水20mlで2回洗浄し、次いで、3重量%の酢酸水溶液20mLで2回洗浄し、さらに水20mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、精製された重合体を280mg得た。以下、この重合体を高分子化合物Cと呼称する。GPCで測定した高分子化合物Cのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量が30000であり、数平均分子量が14000であった。
【0247】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
実施例3において、高分子化合物Aの代わりに高分子化合物Cを用いた以外は同様にして有機薄膜太陽電池を作製し、光電変換効率、短絡電流密度、開放端電圧及びフィルファクターを求めた。有機膜の光吸収末端波長は870nmであった。結果を表1に示す。
【0248】
【表1】

【0249】
参考例6
(化合物11の合成)


化合物10 化合物11

200mLフラスコ内に、化合物10(CHEMSTEP社製)を2.00g、ヨウ素を5.00g、三酸化硫黄を30重量%含む発煙硫酸を20mL入れて均一な溶液とした。フラスコを60℃のオイルバスに浸し、12時間加熱下で得られた溶液を攪拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、1kgの砕いた氷中に徐々に注いだ。得られた懸濁液にクロロホルムを100mL加え、分液ロートでクロロホルム層を分離した。得られたクロロホルム層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。得られた濾液をエバポレーターで濃縮して溶媒を留去し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムを備えたクロマトグラフィで精製し、化合物11を1.23g得た。クロマトグラフィの展開溶媒には、ヘキサンと酢酸エチルとを、ヘキサンの容積に対する酢酸エチルの容積比が4となるよう混合した混合溶媒を用いた。
【0250】
19F NMR in CDCl(ppm):−112.0
【0251】
実施例8
(化合物12の合成)

化合物11 化合物12

100mLフラスコに、ヘキサノールを102mg(1.0mmol)、テトラヒドロフランを10mL入れた。フラスコを25℃に保ったまま、60重量%の水素化ナトリウムの鉱物油中に分散させた分散液を40mg(1.0mmol)添加した。添加後、30分攪拌し、その後、化合物11を407.9mg(1.0mmol)加えた。その後、25℃で6時間攪拌した。攪拌後、塩化アンモニウム水溶液を100mL加えて反応を停止し、酢酸エチル50mLで2回抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。有機層を濾過後、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、化合物12を200mg得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶出溶媒には、ヘキサンと酢酸エチルとを酢酸エチルの体積に対するヘキサンの体積比が50となるように混合した液を用いた。
【0252】
H NMR(CDCl、ppm):4.29(t、2H)、1.92(m、2H)、1.41(m、4H)、1.25(t、2H)、0.92(m、3H)
19F NMR(CDCl、ppm):−115.5(s、1F)
【0253】
実施例9
(高分子化合物Dの合成)


化合物4 化合物12

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物4を258mg(0.245mmol)、化合物12を120mg(0.245mmol)、トルエンを20ml入れて均一な溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.36mg(0.0037mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを6.7mg(0.022mmol)加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルトリメチルスズ10mgを加えて3時間反応させ、その後フェニルブロミドを50mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーを濾過して集め、得られたポリマーを、円筒濾紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒濾紙内に残ったポリマーを、トルエン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.2gと水4mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3重量%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーを濾過後、乾燥させ、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン9mLに溶解させ、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーを濾過後、乾燥させ、精製された重合体56mgを得た。以下、この重合体を高分子化合物Dと呼称する。GPCで測定した高分子化合物Dのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量が12900であり、数平均分子量が9300であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物。

(1)
〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Yは、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Wは、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。Wは、Wとは異なる基を表す。〕
【請求項2】
π共役高分子化合物である請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
がフッ素原子である請求項1又は2に記載の高分子化合物。
【請求項4】
がアルコキシ基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項5】
及びXの少なくとも一方が、窒素原子である請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
及びXが、窒素原子である請求項5に記載の高分子化合物。
【請求項7】
が、硫黄原子又は酸素原子である請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項8】
さらに、式(2)で表される構成単位を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物。

(2)
〔式中、Arは、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。〕
【請求項9】
Arが、2価の複素環基である請求項8に記載の高分子化合物。
【請求項10】
2価の複素環基がチオフェン環を含む基である請求項9に記載の高分子化合物。
【請求項11】
式(3)で表される化合物。

(3)
〔式中、X3a1及びX3a2は、それぞれ独立に、窒素原子又は=CH−を表す。Y3a1は、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R)−又は−CR=CR−を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。W3a1は、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子を有する1価の有機基又はフッ素原子を表す。W3a2は、W3a1とは異なる基を表す。Q3a1及びQ3a2は、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ジヒドロキシボリル基又は1価の有機基を表す。〕
【請求項12】
3a1及びQ3a2が、ジヒドロキシボリル基、ホウ酸エステル残基又は置換スタンニル基である請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に活性層を有し、該活性層に請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物又は請求項11若しくは12に記載の化合物を含有する光電変換素子。
【請求項14】
ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、活性層とを有し、該活性層に請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物又は請求項11若しくは12に記載の化合物を含有する有機薄膜トランジスタ。
【請求項15】
第1の電極と第2の電極とを有し、該第1の電極と該第2の電極との間に発光層を有し、該発光層に請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子化合物又は請求項11若しくは12に記載の化合物を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2013−95813(P2013−95813A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238429(P2011−238429)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギ産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 有機薄膜太陽電池モジユールの創製に関する研究開発(高分子系有機薄膜太陽電池モジュールの研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】