説明

高分子化合物及びそれを用いた有機光電変換素子

【課題】イオン化ポテンシャルが深く、開放端電圧(Voc)が大きい高分子化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される繰り返し単位を有する単独重合体及び共重合体高分子化合物。


(1)〔式(1)中Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基をあらわす。Ar、Arは、同一であっても、相異なっていてもよい。Xは炭素原子、珪素原子、またはゲルマニウム原子を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物並びにそれを用いた有機光電変換素子及び有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、例えば有機太陽電池や光センサー等の有機光電変換素子に用いられる。有機半導体材料のなかでもとくに高分子化合物を用いれば、安価な塗布法で薄膜を作製することができ、素子の製造コストを削減することが可能である。
【0003】
有機光電変換素子の諸特性を向上させるために、当該素子を構成する有機半導体材料について種々の高分子化合物が検討されている。例えば特許文献1には、繰り返し単位(A)及び繰り返し単位(B)からなる高分子化合物を含む有機層を有する有機薄膜太陽電池が記載されている。

繰り返し単位(A) 繰り返し単位(B)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009−506519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記高分子化合物を用いた有機薄膜太陽電池は、イオン化ポテンシャルが浅く、開放端電圧(Voc)が十分でないという課題がある。
【0006】
そこで、本発明はイオン化ポテンシャルが深く、開放端電圧(Voc)が大きい高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は第一に、式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。

(1)
〔式(1)中Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基をあらわす。Ar、Arは、同一であっても、相異なっていてもよい。Xは炭素原子、珪素原子、またはゲルマニウム原子を表す。〕
【0008】
本発明は第二に、式(1)で表される繰り返し単位に加え、式(2)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。

(2)
〔式(2)中、Rは水素原子またはフッ素原子を表す。複数個あるRは、同一であっても、相異なっていてもよい。Qは酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表す。〕
【0009】
本発明は第三に、一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と前記高分子化合物とを含む有機光電変換素子を提供する。
【0010】
本発明は第四に、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に前記高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高分子化合物は、開放端電圧(Voc)が大きいため、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。

(1)
〔式(1)中Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基をあらわす。Ar、Arは、同一であっても、相異なっていてもよい。Xは炭素原子、珪素原子、またはゲルマニウム原子を表す。〕
【0014】
式(1)中、Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基を示す。
【0015】
Ar、Arにおいて、Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基とは、置換基を有していてもよい炭素数6〜60の芳香族炭化水素化合物における芳香環上の1つの水素原子を除いた基を示す。芳香族炭化水素化合物は、単環であっても縮合環であってもよい。これらの中でも、より優れた溶解性が得られ、かつ、製造が容易であるので、5つ以下の環が縮合した縮合環、又は単環が好ましく、2つの環が縮合した縮合環、又は単環がより好ましく、単環がさらに好ましい。
【0016】
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、ピレン、ペリレンが挙げられる。なかでも、ベンゼン又はナフタレンが好ましく、ベンゼンがより好ましい。
【0017】
芳香族炭化水素基は、置換基を更に有していてもよく、その場合は、置換基を含めた全体を芳香族炭化水素基とする。ただし、この場合、上述した好適な芳香族炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まない。
【0018】
Ar、Arの置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、などがあげられる。
【0019】
ハロゲン原子としては、例えば臭素、塩素、フッ素が挙げられ、これらの中でもフッ素が好ましい。
【0020】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0021】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0022】
アリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団である。アリール基には、ベンゼン環を含む基、芳香族性を有する縮合環を含む基、2個以上のベンゼン環又は芳香族性を有する縮合環が直接結合した構造を有する基、2個以上のベンゼン環又は芳香族性を有する縮合環がビニレン等の基を介して結合した基などが含まれる。アリール基の炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜30であることがより好ましい。アリール基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。芳香族炭化水素が有していてもよい置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の具体例は、Ar、Arの置換基として挙げた上記アルキル基及びアルコキシ基の具体例と同じである。
【0023】
ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。ヘテロアリール基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。芳香族複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の具体例は、Ar、Arの置換基として上記アルキル基及びアルコキシ基の具体例と同じである。
【0024】
Ar、Arの置換基が、アルキル基又はアルコキシ基である場合、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点からは、アルキル基又はアルコキシ基の炭素数は1〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましい。
【0025】
Ar、Arの置換基中の水素は、フッ素で置換されていてもよい。
【0026】
Xは炭素原子、珪素原子、またはゲルマニウム原子を表し、これらの中でも炭素原子が好ましい。
【0027】
式(1)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記繰り返し単位が挙げられる。

【0028】
本発明の高分子化合物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位の量は、該高分子化合物を含む機能層を有する有機光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、該高分子化合物が含有する繰り返し単位の合計量に対して、10〜90モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましい。
【0029】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位に加え、式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。

(2)
式(2)中、Rは水素原子またはフッ素原子を表す。複数個あるRは、同一であっても、相異なっていてもよい。Qは酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表す。
【0030】
式(2)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記繰り返し単位が挙げられる。

【0031】
光電変換効率の観点からは、式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位とが直接結合した繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0032】
本発明の高分子化合物が式(1)で表される繰り返し単位に加えて、式(2)で表される繰り返し単位を含む場合、当該高分子化合物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し単位の合計量は、該高分子化合物を含む機能層を有する有機光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、該高分子化合物が含有する繰り返し単位の合計量に対して、20〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
【0033】
また本発明の高分子化合物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位の数と、式(2)で表される繰り返し単位の数との比は、例えば1:9〜9:1であり、3:7〜7:3が好ましい。
【0034】
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは103〜108であり、より好ましくは103〜107であり、さらに好ましくは103〜106である。
【0035】
本発明の高分子化合物は、共役系高分子化合物であることが好ましい。ここで、共役系高分子化合物とは、高分子化合物の主鎖を構成する原子が実質的に共役している化合物を意味する。
【0036】
本発明の高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位、式(2)で表される繰り返し単位、以外の繰り返し単位を有していてもよい。該繰り返し単位としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、フランジイル基、ピロールジイル基、ピリジンジイル基等が挙げられる。
【0037】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の高分子化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、用いる重合反応に適した官能基を有するモノマーを合成した後に、必要に応じて該モノマーを有機溶媒に溶解し、アルカリ、触媒、配位子等を用いた公知のアリールカップリング反応を用いて重合することにより合成することができる。前記モノマーの合成は、例えば、特開2006−182920号公報、特開2006−335933号公報に示された方法を参考にして行うことができる。
【0038】
アリールカップリング反応による重合は、例えば、Stilleカップリング反応による重合、Suzukiカップリング反応による重合、Yamamotoカップリング反応による重合、Kumada−Tamaoカップリング反応による重合が挙げられる。
【0039】
Stilleカップリング反応による重合は、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライドなどのパラジウム錯体を触媒として用い、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子を添加し、有機スズ残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するモノマー、又は、トリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。Stilleカップリング反応による重合の詳細は、例えば、アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemie International Edition),2005年,第44巻,p.4442−4489に記載されている。
【0040】
Suzukiカップリング反応による重合は、無機塩基又は有機塩基の存在下、パラジウム錯体又はニッケル錯体を触媒として用い、必要に応じて配位子を添加し、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するモノマー、又は、トリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。
【0041】
無機塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムが挙げられる。パラジウム錯体としては、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライドが挙げられる。ニッケル錯体としては、例えば、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルが挙げられる。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィンが挙げられる。
【0042】
Suzukiカップリング反応による重合の詳細は、例えば、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス:パート エー:ポリマー ケミストリー(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry),2001年,第39巻,p.1533−1556に記載されている。
【0043】
Yamamotoカップリング反応による重合は、触媒と還元剤とを用い、ハロゲン原子を有するモノマー同士、トリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士又はハロゲン原子を有するモノマーとスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。
【0044】
触媒としては、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒、[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケルゼロ価錯体以外のニッケル錯体と、必要に応じ、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子からなる触媒が挙げられる。還元剤としては、例えば、亜鉛、マグネシウムが挙げられる。Yamamotoカップリング反応による重合は、脱水した溶媒を反応に用いてもよく、不活性雰囲気下で反応を行ってもよく、脱水剤を反応系中に添加して行ってもよい。
【0045】
Yamamotoカップリングによる重合の詳細は、例えば、マクロモルキュルズ(Macromolecules),1992年,第25巻,p.1214−1223に記載されている。
【0046】
Kumada−Tamaoカップリング反応による重合は、[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケル触媒を用い、ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを反応させる重合するである。反応は、脱水した溶媒を反応に用いてもよく、不活性雰囲気下で反応を行ってもよく、脱水剤を反応系中に添加して行ってもよい。
【0047】
前記アリールカップリング反応による重合では、通常、溶媒が用いられる。該溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択すればよい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が挙げられる。Stilleカップリング反応に用いる溶媒はテトラヒドロフラン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が好ましい。Stilleカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。Suzukiカップリング反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が好ましい。Suzukiカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。Yamamotoカップリング反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。Yamamotoカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0048】
前記アリールカップリング反応による重合の中でも、反応性の観点からは、Stilleカップリング反応により重合する方法、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Yamamotoカップリング反応により重合する方法が好ましく、Stilleカップリング反応により重合する方法、Suzukiカップリング反応による重合する方法、ニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応による重合する方法がより好ましい。
【0049】
前記アリールカップリング反応の反応温度の下限は、反応性の観点からは、好ましくは−100℃であり、より好ましくは−20℃であり、特に好ましくは0℃である。反応温度の上限は、モノマー及び高分子化合物の安定性の観点からは、好ましくは200℃であり、より好ましくは150℃であり、特に好ましくは120℃である。
【0050】
前記アリールカップリング反応による重合において、反応終了後の反応溶液からの本発明の高分子化合物を取り出す方法としては、公知の方法が挙げられる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加え、析出した沈殿をろ過し、ろ物を乾燥することにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。得られた高分子化合物の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等により精製することができる。
【0051】
本発明の高分子化合物を有機光電変換素子の製造に用いる場合、高分子化合物の末端に重合活性基が残っていると、有機光電変換素子の耐久性等の特性が低下することがあるため、高分子化合物の末端を安定な基で保護することが好ましい。
【0052】
末端を保護する安定な基としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、1価の複素環基等が挙げられる。アリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
1価の複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。また、高分子化合物の末端に残っている重合活性基を、安定な基に代えて、水素原子で置換してもよい。ホール輸送性を高める観点からは、末端を保護する安定な基がアリールアミノ基などの電子供与性を付与する基であることが好ましい。高分子化合物が共役高分子化合物である場合、高分子化合物の主鎖の共役構造と末端を保護する安定な基の共役構造とが連続するような共役結合を有している基も末端を保護する安定な基として好ましく用いることができる。該基としては、例えば、アリール基、芳香族性を有する1価の複素環基が挙げられる。
【0053】
Suzukiカップリングを用いて本発明の高分子化合物を製造する場合、例えば、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物とを重合して該高分子化合物を製造することができる。

(3)
(式(3)中、R、Qは、それぞれ前述と同じ意味を表す。Zは、ホウ酸、ホウ酸エステル残基を表す。2個あるZは、同一でも相異なっていてもよい。)

(4)
(式(4)中、X、Ar、Arはそれぞれ前述と同じ意味を表す。)
【0054】
式(3)中、Zで表されるホウ酸エステル残基は、ホウ酸エステルから水素原子を1個
除いた基を表し、その具体例としては、下記式で表される基が挙げられる。

(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0055】
式(3)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0056】

【0057】
本発明の式(4)で表される化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、Tetrahedron、2008年、64巻、9033頁のスキーム7に示された方法や、WO2008109701号公報の(0082)段落に示された方法を参考にして行うことができる。
【0058】
式(4)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0059】
<有機光電変換素子>
また、本発明の高分子化合物は、大きな解放端電圧を得ることができる。
【0060】
本発明の有機光電変換素子は、一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と本発明の高分子化合物を含有する。電子受容性化合物としては、フラーレンまたはフラーレン誘導体が好ましい。有機光電変換素子の具体例としては、
1.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、本発明の高分子化合物とを含有する有機光電変換素子;
2.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、本発明の高分子化合物とを含有する有機光電変換素子であって、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子;
が挙げられる。前記一対の電極は、通常、少なくとも一方が透明又は半透明であり、以下、その場合を一例として説明する。
【0061】
前記1.の有機光電変換素子では、電子受容性化合物及び前記高分子化合物を含有する機能層における該電子受容性化合物の量が、前記高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。また、前記2.の有機光電変換素子では、フラーレン誘導体及び前記高分子化合物を含有する機能層における該フラーレン誘導体の量が、該高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。光電変換効率を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の量が、該高分子化合物100重量部に対して、20〜400重量部であることが好ましく、40〜250重量部であることがより好ましく、80〜120重量部であることがさらに好ましい。短絡電流密度を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の量が、該高分子化合物100重量部に対して、20〜250重量部であることが好ましく、40〜120重量部であることがより好ましい。
【0062】
有機光電変換素子が高い光電変換効率を有するためには、前記電子受容性化合物及び本発明の高分子化合物が所望の入射光のスペクトルを効率よく吸収することができる吸収域を有するものであること、ヘテロ接合界面が励起子を効率よく分離するためにヘテロ接合界面を多く含むこと、ヘテロ接合界面が生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有することが重要である。
【0063】
このような観点から、有機光電変換素子としては、前記1.、前記2.の有機光電変換素子が好ましく、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2.の有機光電変換素子がより好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の機能層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層、バッファ層等が挙げられる。
【0064】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。該基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0065】
一対の電極の材料には、金属、導電性高分子等を用いることができる。一対の電極のうち一方の電極の材料は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらの金属のうちの2つ以上の金属の合金、又はそれらの金属のうちの1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1つ以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
【0066】
前記の透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESA、金、白金、銀、銅が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0067】
前記付加的な層としての電荷輸送層、即ち、ホール輸送層又は電子輸送層に用いられる材料として、それぞれ後述の電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。
【0068】
付加的な層としてのバッファ層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等の無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0069】
<有機薄膜>
本発明の有機光電変換素子における前記機能層としては、例えば、本発明の高分子化合物と電子受容性化合物とを含有する有機薄膜を用いることができる。
【0070】
前記有機薄膜は、膜厚が、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0071】
前記有機薄膜は、前記高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、前記有機薄膜のホール輸送性を高めるため、前記有機薄膜中に電子供与性化合物として、低分子化合物及び/又は前記高分子化合物以外の高分子化合物を混合して用いることもできる。
【0072】
本発明の高分子化合物以外に有機薄膜が含んでいてもよい電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0073】
前記電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、カーボンナノチューブ、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等のフェナントロリン誘導体が挙げられ、とりわけフラーレン及びその誘導体が好ましい。
【0074】
なお、前記電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0075】
フラーレン及びその誘導体としては、C60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。
フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0076】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、式(III)で表される化合物、式(IV)で表される化合物が挙げられる。

(I) (II) (III) (IV)
(式(I)〜(IV)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0077】
及びRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、Ar、Arの置換基として挙げた上記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0078】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(V)で表される基が挙げられる。

【0079】
(V)
(式(V)中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0080】
で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、Ar、Arの置換基として挙げた上記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0081】
60の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。





【0082】
70の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0083】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、本発明の高分子化合物を含む溶液からの成膜による方法で製造してもよいし、真空蒸着法により有機薄膜を形成してもよい。溶液からの成膜により有機薄膜を製造する方法としては、例えば、一方の電極上に該溶液を塗布し、その後、溶媒を蒸発させて有機薄膜を製造する方法が挙げられる。
【0084】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の高分子化合物を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が挙げられる。本発明の高分子化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0085】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0086】
<素子の用途>
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0087】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0088】
<有機トランジスタ>
本発明の有機薄膜トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に、式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む高分子化合物、または式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する。
【0089】
本発明の高分子化合物は電荷移動度が高いため、本発明の高分子化合物を含む有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が高くなる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量はサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により求めた。
【0092】
カラム: TOSOH TSKgel SuperHM-H(2本)+ TSKgel SuperH2000(4.6mm I.d. × 15cm);検出器:RI (SHIMADZU RID-10A);移動相:テトラヒドロフラン(THF)
【0093】
参考例1
(4,4’−ジヘキサデシルベンゾフェノンの合成)
フラスコに、1−ヘキセンを19.6g(87.4mmol)、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンのテトラヒドロフラン溶液(0.5mol/L、175mL)を入れて16時間撹拌した。この溶液に、4,4’−ジブロモベンゾフェノンを9.90g(29.1mmol)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムを0.480g(0.582mmol)を加えた。さらにこの溶液に、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を47mL滴下し、5時間還流させた。反応液をエバポレーターで濃縮し、トルエンと水を加えてトルエンで抽出した。トルエン溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた固体をヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、ヘキサン溶液を回収した。その後、ヘキサン溶液をエバポレーターで蒸発させて4,4’−ジヘキサデシルベンゾフェノンを得た。得量は11.2gであり、収率は61%であった。
【0094】
参考例2
(3−ブロモ−2,2’−ビチオフェンの合成)
フラスコに、2,3−ジブロモチオフェンを19.3g(79.7mmol)、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムを0.501g(0.613mmol)、ジエチルエーテル100mLを入れた。この溶液に、2−チエニルマグネシウムブロマイドのジエチルエーテル溶液(1.2mol/L、50mL)を滴下し、6時間還流させた。反応液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた固体をヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、ヘキサン溶液を回収した。その後、ヘキサン溶液をエバポレーターで蒸発させて3−ブロモ−2,2’−ビチオフェンを得た。得量は11.9gであり、収率は79%であった。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.42(m,1H),7.34(m,1H),7.19(m,1H),7.08(m,1H),7.01(m,1H)
【0095】
参考例3
(化合物1の合成)
フラスコに、3−ブロモ−2,2’−ビチオフェンを11.0g(44.9mmol)、ジエチルエーテル100mLを入れ、−78℃に冷却した。この溶液に、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(2.6mol/L、17.3mL)を滴下し、1時間撹拌した。この溶液に、4,4’−ジヘキサデシルベンゾフェノンを28.3g(44.9mmol)を加えた。反応液を徐々に室温まで昇温し、室温で3時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。ジエチルエーテル溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた固体をヘキサンとクロロホルムの混合溶液(容量比4/1)を展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、ヘキサンとクロロホルムの混合溶液を回収した。その後、ヘキサンとクロロホルムの混合溶液をエバポレーターで蒸発させて化合物1を得た。得量は29.1gであり、収率は81%であった。なお化合物1、後述の化合物2、後述の化合物3の構造は、後述の高分子化合物1の合成の項における反応式中においてそれぞれ示す。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.09−7.23(m,10H),6.84(m,1H),6.63(m,1H),6.40(m,1H),2.60(t,4H),1.00−1.70(m,56H),0.88(t,6H)
【0096】
参考例4
(化合物2の合成)
フラスコに、化合物1を29.1g(36.5mmol)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテレートを3mL、クロロホルム400mLを入れ、5時間還流した。反応液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた固体をヘキサンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、ヘキサン溶液を回収した。その後、ヘキサンをエバポレーターで蒸発させて化合物2を得た。得量は2.88gであり、収率は10%であった。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ7.00−7.21(m,12H),2.53(t,4H),1.55(t,4H),1.10−1.40(m,52H),0.88(t,6H)
【0097】
参考例5
(化合物3の合成)
フラスコに、化合物2を2.88g(3.70mmol)、N−ブロモスクシンイミドを1.38g(7.76mmol)、クロロホルム100mLを入れ、2時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。クロロホルム溶液をエバポレーターで蒸発させた。得られた固体をヘキサンとクロロホルムの混合溶液(容量比9/1)を展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行い、ヘキサンとクロロホルムの混合溶液を回収した。その後、ヘキサンとクロロホルムの混合溶液をエバポレーターで蒸発させて化合物3を得た。得量は2.00gであり、収率は58%であった。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ6.90−7.10(m,10H),2.54(t,4H),1.57(t,4H),1.10−1.40(m,52H),0.88(t,6H)
【0098】
実施例1
高分子化合物1の合成
フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、化合物3を0.300g(0.320mmol)、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾ−2,1,3−チアジアゾールを0.124g(0.320mmol)、トルエンを50mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを5.9mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを7.4mg入れて撹拌した。この溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を1.6mL滴下し、5時間還流させた。反応液に、フェニルボロン酸を7.8mg加えて、1時間還流させた。次に、反応液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を0.1g加えて、3時間還流させた。その後、反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、トルエン溶液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をクロロベンゼンに溶解させ、クロロベンゼンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行った。精製後のクロロベンゼン溶液をメタノールに滴下し、析出物をろ過し、下記反応式において4で表される高分子化合物1を得た。得量は250mgであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は1.5×10であり、重量平均分子量は2.9×10であった。


【0099】
参考例6
高分子化合物2の合成

フラスコ内の気体を窒素で置換したフラスコに、2,6−ジブロモ−4,4−ジヘキサデシルシクロペンタ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンを3.8g(4.9mmol)、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを1.9g(4.9mmol)、テトラヒドロフランを170mL、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを89mg、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートを0.11g入れて撹拌した。この溶液に、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液を24mL滴下し、3時間還流させた。反応液に、フェニルボロン酸を0.11g加えて、1時間還流させた。次に、反応液にN,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物を0.1g加えて、3時間還流させた。その後、反応液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。トルエン溶液を酢酸水溶液及び水で洗浄した後、トルエン溶液をアセトンに滴下し、析出物を得た。析出物をクロロホルムに溶解させ、クロロホルムを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムで精製を行った。精製後のクロロホルム溶液をメタノールに滴下し、析出物をろ過し、高分子化合物2を得た。得量は3.4gであり、ポリスチレン換算の数平均分子量は6.4×10であり、重量平均分子量は2.9×10であった。
【0100】
実施例2
(有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
電子受容性化合物であるフラーレン誘導体C70PCBM(Phenyl C71-butyric acid methyl ester、アメリカンダイソース社製、商品名:ADS71BFA(ロット番号11A004E)と、電子供与性化合物である高分子化合物1とを、2:1の重量比で混合し、混合物の濃度が2.25重量%となるよう、o−ジクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、孔径0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液1を調製した。
【0101】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を作成した。次に、前記塗布溶液1を、スピンコートによりITO膜上に塗布し、有機薄膜太陽電池の機能層を得た。機能層の膜厚は100nmであった。その後、真空蒸着機によりカルシウムを膜厚4nmで蒸着し、次いで、アルミニウムを膜厚100nmで蒸着することにより、有機薄膜太陽電池を作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。こうして得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。Voc(開放端電圧)は0.56Vであった。
【0102】
比較例1
(有機薄膜太陽電池の作製及び評価)
高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いた以外は、実施例2と同様にして有機薄膜太陽電池を作成し、評価した。Voc(開放端電圧)は0.53Vであった。
【0103】
実施例3
(有機薄膜のイオン化ポテンシャルの測定)
高分子化合物1を0.75重量%でo−ジクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、孔径0.5μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、大気下120℃の条件で5分間ベークし、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。得られた薄膜を用いて大気中光電子分光装置(理研計器製AC-2)を用いてイオン化ポテンシャルを測定した。得られたイオン化ポテンシャルは、4.90eVであった。
【0104】
比較例2
(有機薄膜のイオン化ポテンシャルの測定)
高分子化合物1の代わりに高分子化合物2を用いた以外は実施例3と同様にして有機薄膜のイオン化ポテンシャルを測定した。得られたイオン化ポテンシャルは、4.78eVであった。
【0105】
このように、式(1)で表される繰り返し単位を用いた高分子化合物1は、式(1)で表される繰り返し単位を用いない高分子化合物2に比べて、薄膜のイオン化ポテンシャルが深く、高い開放端電圧を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物。

(1)
〔式(1)中Ar、Arは、置換基を有してもよい炭素数6〜60のアリール基をあらわす。Ar、Arは、同一であっても、相異なっていてもよい。Xは炭素原子、珪素原子、またはゲルマニウム原子を表す。〕
【請求項2】
式(1)で表される繰り返し単位に加え、さらに、式(2)で表される繰り返し単位を有する請求項1に記載の高分子化合物。

(2)
〔式(2)中、Rは水素原子またはフッ素原子を表す。複数個あるRは、同一であっても、相異なっていてもよい。Qは酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表す。〕
【請求項3】
一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と請求項1又は2に記載の高分子化合物とを含む有機光電変換素子。
【請求項4】
前記機能層中に含まれる電子受容性化合物の量が、前記高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部である請求項3に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である請求項3又は4に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に請求項1又は2に記載の高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタ。

【公開番号】特開2013−104003(P2013−104003A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249376(P2011−249376)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】