説明

高分子化合物及びそれを用いた有機光電変換素子

【課題】長波長の光の吸光度が高い高分子化合物を提供する。
【解決手段】式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む高分子化合物。


〔式(A)及び式(B)中、Rは、同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル含有基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。Qは水素原子またはフッ素原子を表す。複数個あるQは、同一でも相異なっていてもよい。複数個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物並びにそれを用いた有機光電変換素子及び有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機太陽電池、光センサー等の有機光電変換素子への適用が期待されている。中でも、有機半導体材料として高分子化合物を用いれば、安価な塗布法で機能層を作製することができる。有機光電変換素子の諸特性を向上させるために、様々な高分子化合物である有機半導体材料を有機光電変換素子に用いることが検討されている。有機半導体材料として、例えば、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジボロン酸エステルと5,5’’’’−ジブロモ−3’’,4’’−ジヘキシル−α−ペンタチオフェンとを重合した高分子化合物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−529596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記高分子化合物は、長波長の光の吸収が十分でないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は長波長の光の吸光度が大きい高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む高分子化合物を提供する。

〔式(A)及び式(B)中、R、Qは、互いに同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基又は式(2)で表される基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるR、Qは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。

(2)
(式(2)中、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)〕
【0007】
本発明は第二に、式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。

(1)

(2)
(式(2)中、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)〕
【0008】
本発明は第三に、一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と前記高分子化合物とを含む有機光電変換素子を提供する。
【0009】
本発明は第四に、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に前記高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高分子化合物は、長波長の光の吸光度が大きいため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】高分子化合物1の吸収スペクトルを示す図である。
【図2】高分子化合物2の吸収スペクトルを示す図である。
【図3】高分子化合物3の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
<高分子化合物>
本発明の高分子化合物は、式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む。

〔式(A)及び式(B)中、R、Qは、互いに同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基又は式(2)で表される基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるR、Qは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。

(2)
(式(2)中、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)〕
【0014】
R、Qで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−オクタデシル基が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0015】
R、Qで表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で水素原子が置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0016】
R、Qで表されるアリール基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団である。アリール基には、ベンゼン環を含む基、芳香族性を有する縮合環を含む基、2個以上のベンゼン環又は芳香族性を有する縮合環が直接結合した構造を有する基、2個以上のベンゼン環又は芳香族性を有する縮合環がビニレン等の基を介して結合した基などが含まれる。アリール基の炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜30であることがより好ましい。アリール基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。芳香族炭化水素が有していてもよい置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の具体例は、Rで表されるアルキル基及びアルコキシ基の具体例と同じである。
【0017】
R、Qで表されるアルケニル基は、炭素数が通常2〜20程度であり、その具体例としてはビニル基、1−プロピレニル基、2−プロピレニル基、3−プロピレニル基、ブテニル基、ペンテニル基、へキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、シクロヘキセニル基が挙げられる。また、アルケニル基には1,3−ブタジエニル基などのアルカジエニル基も含まれる。アルケニル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0018】
R、Qで表されるヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい芳香族複素環式化合物から、水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基としては、例えば、チェニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。ヘテロアリール基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。芳香族複素環式化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の具体例は、Rで表されるアルキル基及びアルコキシ基の具体例と同じである。
【0019】
式(2)で表される基において、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。R’で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義及び具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義及び具体例と同じである。式(2)で表される基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
【0020】
R、Qが、アルキル基又はアルコキシ基である場合、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点からは、アルキル基又はアルコキシ基の炭素数が1〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましく、3〜12であることがさらに好ましい。
【0021】
式(A)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記繰り返し単位が挙げられる。

【0022】
式(B)で表される繰り返し単位としては、例えば、下記繰り返し単位が挙げられる。

【0023】
本発明の高分子化合物に含まれる式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位の合計量は、該高分子化合物を含む機能層を有する有機光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、該高分子化合物が含有する繰り返し単位の合計量に対して、20〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
また本発明の高分子化合物に含まれる式(A)で表される繰り返し単位の数と、式(B)で表される繰り返し単位の数との比は、1:9〜9:1であり、3:7〜7:3が好ましい。
【0024】
本発明の高分子化合物の他の態様は、式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物である。

(1)
〔式(1)中、Q及びRは、前述と同じ意味を表す。〕
【0025】
式(1)で表される繰り返し単位としては、例えば、以下の繰り返し単位が挙げられる。

【0026】

【0027】
本発明の高分子化合物に含まれる式(1)で表される繰り返し単位の量は、該高分子化合物を含む機能層を有する有機光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、該高分子化合物が含有する繰り返し単位の合計量に対して、20〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
【0028】
本発明の高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは103〜108であり、より好ましくは103〜107であり、さらに好ましくは103〜106である。
【0029】
本発明の高分子化合物は、共役系高分子化合物であることが好ましい。ここで、共役系高分子化合物とは、高分子化合物の主鎖を構成する原子が実質的に共役している化合物を意味する。
【0030】
本発明の高分子化合物は、式(A)で表される繰り返し単位、式(B)で表される繰り返し単位、式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。該繰り返し単位としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、フランジイル基、ピロールジイル基、ピリジンジイル基等が挙げられる。
【0031】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の高分子化合物は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、用いる重合反応に適した官能基を有するモノマーを合成した後に、必要に応じて該モノマーを有機溶媒に溶解し、アルカリ、触媒、配位子等を用いた公知のアリールカップリング反応を用いて重合することにより合成することができる。前記モノマーの合成は、例えば、特開2006−182920号公報、特開2006−335933号公報に示された方法を参考にして行うことができる。
【0032】
アリールカップリング反応による重合は、例えば、Stilleカップリング反応による重合、Suzukiカップリング反応による重合、Yamamotoカップリング反応による重合、Kumada−Tamaoカップリング反応による重合が挙げられる。
【0033】
Stilleカップリング反応による重合は、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライドなどのパラジウム錯体を触媒として用い、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子を添加し、有機スズ残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するモノマー、又は、トリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。Stilleカップリング反応による重合の詳細は、例えば、アンゲヴァンテ ケミー インターナショナル エディション(Angewandte Chemie International Edition),2005年,第44巻,p.4442−4489に記載されている。
【0034】
Suzukiカップリング反応による重合は、無機塩基又は有機塩基の存在下、パラジウム錯体又はニッケル錯体を触媒として用い、必要に応じて配位子を添加し、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するモノマー、又は、トリフルオロメタンスルホネート基、p-トルエンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。
無機塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムが挙げられる。パラジウム錯体としては、例えば、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライドが挙げられる。ニッケル錯体としては、例えば、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルが挙げられる。配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィンが挙げられる。
Suzukiカップリング反応による重合の詳細は、例えば、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス:パート エー:ポリマー ケミストリー(Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry),2001年,第39巻,p.1533−1556に記載されている。
【0035】
Yamamotoカップリング反応による重合は、触媒と還元剤とを用い、ハロゲン原子を有するモノマー同士、トリフルオロメタンスルホネート基等のスルホネート基を有するモノマー同士又はハロゲン原子を有するモノマーとスルホネート基を有するモノマーとを反応させる重合である。
触媒としては、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のニッケルゼロ価錯体とビピリジル等の配位子からなる触媒、[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケルゼロ価錯体以外のニッケル錯体と、必要に応じ、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子からなる触媒が挙げられる。還元剤としては、例えば、亜鉛、マグネシウムが挙げられる。Yamamotoカップリング反応による重合は、脱水した溶媒を反応に用いてもよく、不活性雰囲気下で反応を行ってもよく、脱水剤を反応系中に添加して行ってもよい。
Yamamotoカップリングによる重合の詳細は、例えば、マクロモルキュルズ(Macromolecules),1992年,第25巻,p.1214−1223に記載されている。
【0036】
Kumada−Tamaoカップリング反応による重合は、[ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケルジクロライド、[ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケルジクロライド等のニッケル触媒を用い、ハロゲン化マグネシウム基を有する化合物とハロゲン原子を有する化合物とを反応させる重合するである。反応は、脱水した溶媒を反応に用いてもよく、不活性雰囲気下で反応を行ってもよく、脱水剤を反応系中に添加して行ってもよい。
【0037】
前記アリールカップリング反応による重合では、通常、溶媒が用いられる。該溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択すればよい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が挙げられる。Stilleカップリング反応に用いる溶媒はテトラヒドロフラン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が好ましい。Stilleカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。Suzukiカップリング反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する溶媒が好ましい。Suzukiカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。Yamamotoカップリング反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒が好ましい。Yamamotoカップリング反応に用いる溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0038】
前記アリールカップリング反応による重合の中でも、反応性の観点からは、Stilleカップリング反応により重合する方法、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Yamamotoカップリング反応により重合する方法が好ましく、Stilleカップリング反応により重合する方法、Suzukiカップリング反応による重合する方法、ニッケルゼロ価錯体を用いたYamamotoカップリング反応による重合する方法がより好ましい。
【0039】
前記アリールカップリング反応の反応温度の下限は、反応性の観点からは、好ましくは−100℃であり、より好ましくは−20℃であり、特に好ましくは0℃である。反応温度の上限は、モノマー及び高分子化合物の安定性の観点からは、好ましくは200℃であり、より好ましくは150℃であり、特に好ましくは120℃である。
【0040】
前記アリールカップリング反応による重合において、反応終了後の反応溶液からの本発明の高分子化合物を取り出す方法としては、公知の方法が挙げられる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加え、析出した沈殿をろ過し、ろ物を乾燥することにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。得られた高分子化合物の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等により精製することができる。
【0041】
本発明の高分子化合物を有機光電変換素子の製造に用いる場合、高分子化合物の末端に重合活性基が残っていると、有機光電変換素子の耐久性等の特性が低下することがあるため、高分子化合物の末端を安定な基で保護することが好ましい。
【0042】
末端を保護する安定な基としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、1価の複素環基等が挙げられる。アリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。1価の複素環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。また、高分子化合物の末端に残っている重合活性基を、安定な基に代えて、水素原子で置換してもよい。ホール輸送性を高める観点からは、末端を保護する安定な基がアリールアミノ基などの電子供与性を付与する基であることが好ましい。高分子化合物が共役高分子化合物である場合、高分子化合物の主鎖の共役構造と末端を保護する安定な基の共役構造とが連続するような共役結合を有している基も末端を保護する安定な基として好ましく用いることができる。該基としては、例えば、アリール基、芳香族性を有する1価の複素環基が挙げられる。
【0043】
Stilleカップリングを用いて本発明の高分子化合物を製造する場合、例えば、式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物とを重合して該高分子化合物を製造することができる。

(3)
(式(3)中、Qは、前述と同じ意味を表す。2個あるQは、同一でも相異なっていてもよい。Zは、臭素原子、ヨウ素原子又は塩素原子を表す。2個あるZは、同一でも相異なっていてもよい。)

(4)
(式(4)中、Rは前述と同じ意味を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Zは有機スズ残基を表す。)
【0044】
式(3)において、重合時の反応性を高める観点からは、Zが臭素原子、塩素原子であることが好ましく、臭素原子であることがさらに好ましい。式(3)で表される化合物は、例えば、マクロモルキュルズ、2009年、第42巻、第17号、p.6564〜6571(Macromolecules, 42(17), 6564 (2009))に記載の方法を用いて合成することができる。
【0045】
式(3)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。

【0046】
式(4)において、式(4)で表される化合物の合成のしやすさの観点からは、Zが−SnMe、−SnEt又は−SnBuであることが好ましい。ここで、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表す。
【0047】
式(4)で表される化合物は、例えば、式(5)で表される化合物と有機リチウム化合物とを反応させて中間体を製造した後に、該中間体とトリアルキルスズハライドとを反応させることによって製造することができる。

(式(5)中、Rは前述と同じ意味を表す。)
【0048】
有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドが挙げられる。有機リチウム化合物の中でも、n−ブチルリチウムが好ましい。トリアルキルスズハライドとしては、例えば、トリメチルスズクロリド、トリエチルクロリド、トリブチルクロリドが挙げられる。
式(5)で表される化合物と有機リチウム化合物から中間体を製造する反応及び該中間体とトリアルキルスズハライドから式(4)で表される化合物を製造する反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては十分に脱水したテトラヒドロフラン、十分に脱水した1,4−ジオキサン、十分に脱水したジエチルエーテルが好ましく用いられる。
有機リチウム化合物と式(5)で表される化合物とを反応させる際の温度は、通常、−100〜50℃であり、好ましくは−80〜0℃である。有機リチウム化合物と式(5)で表される化合物とを反応させる時間は、通常、1分〜10時間であり、好ましくは30分〜5時間である。反応させる有機リチウム化合物の量は、式(5)で表される化合物に対して、通常、2〜5当量であり、好ましくは2〜3当量である。
前記中間体とトリアルキルスズハライドとを反応させる時の温度は、通常、−100〜100℃であり、好ましくは−80℃〜50℃である。前記中間体とトリアルキルスズハライドを反応させる時間は、通常、1分〜30時間であり、好ましくは1〜10時間である。反応させるトリアルキルスズハライドの量は、式(5)で表される化合物に対して、通常、2〜6当量であり、好ましくは2〜3当量である。
【0049】
反応後は、通常の後処理を行い、式(4)で表される化合物を得ることができる。例えば、水を加えて反応を停止させた後に、生成物を有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する後処理が挙げられる。生成物の単離及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶などの方法により行うことができる。
【0050】
式(5)で表される化合物は、例えば、式(6)で表される化合物を酸の存在下で、反応させることにより製造することができる。

(式(6)中、Rは前述と同じ意味を表す)
【0051】
式(6)で表される化合物から式(5)で表される化合物を製造する反応に用いられる酸は、ルイス(Lewis)酸であってもブレンステッド(Bronsted)酸であってもよく、塩酸、臭素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸、フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化スズ(IV)、塩化鉄(II)、四塩化チタン、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びこれらの化合物の混合物が例示される。
【0052】
式(6)で表される化合物から式(5)で表される化合物を製造する反応は、溶媒の存在下で実施することが好ましい。該反応の反応温度は、−80℃以上溶媒の沸点以下の温度が好ましい。
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサンなどのハロゲン化飽和炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化不飽和炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。該溶媒を単一で用いても、混合して用いてもよい。
【0053】
反応後は、通常の後処理を行い、式(5)で表される化合物を得ることができる。例えば、水を加えて反応を停止させた後に、生成物を有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する後処理が挙げられる。生成物の単離及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶などの方法により行うことができる。
【0054】
式(6)で表される化合物は、例えば、式(7)で表される化合物とグリニャール(Grignard)試薬又は有機リチウム(Li)化合物とを反応させることにより製造することができる。

【0055】
上記反応に用いられるGrignard試薬としては、メチルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムクロライド、プロピルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムブロマイド、ヘキシルマグネシウムブロマイド、オクチルマグネシウムブロマイド、デシルマグネシウムブロマイド、アリルマグネシウムクロライド、アリルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、ナフチルマグネシウムブロマイド、トリルマグネシウムブロマイドなどが挙げられる。
【0056】
有機Li化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ナフチルリチウム、ベンジルリチウム、トリルリチウムなどが挙げられる。
【0057】
式(7)で表される化合物とグリニャール(Grignard)試薬又は有機リチウム(Li)化合物から式(6)で表される化合物を製造する反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。また、該反応は、溶媒の存在下で実施することが好ましい。該反応の反応温度は、−80℃以上溶媒の沸点以下の温度が好ましい。
【0058】
反応に用いられる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの不飽和炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。該溶媒を単一で用いても、混合して用いてもよい。
【0059】
反応後は、通常の後処理を行い、式(6)で表される化合物を得ることができる。例えば、水を加えて反応を停止させた後に、生成物を有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する後処理が挙げられる。生成物の単離及び精製は、クロマトグラフィーによる分取や再結晶などの方法により行うことができる。
【0060】
式(7)で表される化合物は、例えば、式(8)で表される化合物と過酸化物とを反応させることにより製造することができる。

【0061】
過酸化物としては、過ホウ酸ナトリウム、m−クロロ過安息香酸、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。好ましくは過ホウ酸ナトリウム、m−クロロ過安息香酸であり、特に好ましくは過ホウ酸ナトリウムである。
【0062】
式(8)で表される化合物と過酸化物から式(7)で表される化合物を製造する反応は、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸溶媒の存在下で実施することが好ましい。
式(8)で表される化合物の溶解性を上げるためには、カルボン酸溶媒に、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエンからなる群から選ばれる1種以上の溶媒を混合した混合溶媒で反応を行うことが好ましい。該反応の反応温度は、0℃以上50℃以下の温度が好ましい。
【0063】
反応後は、通常の後処理を行い、式(7)で表される化合物を得ることができる。例えば、水を加えて反応を停止させた後に、生成物を有機溶媒で抽出し、溶媒を留去する後処理が挙げられる。生成物の単離及び精製はクロマトグラフィーによる分取や再結晶などの方法により行うことができる。
【0064】
式(4)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0065】

(式中、Buはn−ブチル基を表す。)
【0066】
<有機光電変換素子>
本発明の高分子化合物は、600nmの光等の長波長の光の吸光度が高く、太陽光を効率的に吸収するため、本発明の高分子化合物を用いて製造した有機光電変換素子は短絡電流密度が大きくなる。また、本発明の高分子化合物は、イオン化ポテンシャルが大きく、大きな解放端電圧を得ることができる。
【0067】
本発明の有機光電変換素子は、一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と本発明の高分子化合物を含有する。電子受容性化合物としては、フラーレン、フラーレン誘導体が好ましい。有機光電変換素子の具体例としては、
1.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、本発明の高分子化合物とを含有する有機光電変換素子;
2.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、本発明の高分子化合物とを含有する有機光電変換素子であって、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子;
が挙げられる。前記一対の電極は、通常、少なくとも一方が透明又は半透明であり、以下、その場合を一例として説明する。
【0068】
前記1.の有機光電変換素子では、電子受容性化合物及び前記高分子化合物を含有する機能層における該電子受容性化合物の量が、前記高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。また、前記2.の有機光電変換素子では、フラーレン誘導体及び前記高分子化合物を含有する機能層における該フラーレン誘導体の量が、該重合体100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。光電変換効率を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の量が、該重合体100重量部に対して、20〜400重量部であることが好ましく、40〜250重量部であることがより好ましく、80〜120重量部であることがさらに好ましい。短絡電流密度を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の量が、該重合体100重量部に対して、20〜250重量部であることが好ましく、40〜120重量部であることがより好ましい。
【0069】
有機光電変換素子が高い光電変換効率を有するためには、前記電子受容性化合物及び式(1)で表される高分子化合物が所望の入射光のスペクトルを効率よく吸収することができる吸収域を有するものであること、ヘテロ接合界面が励起子を効率よく分離するためにヘテロ接合界面を多く含むこと、ヘテロ接合界面が生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有することが重要である。
【0070】
このような観点から、有機光電変換素子としては、前記1.、前記2.の有機光電変換素子が好ましく、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2.の有機光電変換素子がより好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の機能層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層、バッファ層等が挙げられる。
【0071】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。該基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0072】
一対の電極の材料には、金属、導電性高分子等を用いることができる。一対の電極のうち一方の電極の材料は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらの金属のうちの2つ以上の金属の合金、又はそれらの金属のうちの1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1つ以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
前記の透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESA、金、白金、銀、銅が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0073】
前記付加的な層としての電荷輸送層、即ち、ホール輸送層又は電子輸送層に用いられる材料として、それぞれ後述の電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。
付加的な層としてのバッファ層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等の無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0074】
<有機薄膜>
本発明の有機光電変換素子における前記機能層としては、例えば、本発明の高分子化合物と電子受容性化合物とを含有する有機薄膜を用いることができる。
【0075】
前記有機薄膜は、膜厚が、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0076】
前記有機薄膜は、前記高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、前記有機薄膜のホール輸送性を高めるため、前記有機薄膜中に電子供与性化合物として、低分子化合物及び/又は前記高分子化合物以外の高分子化合物を混合して用いることもできる。
【0077】
式(1)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物以外に有機薄膜が含んでいてもよい電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0078】
前記電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、カーボンナノチューブ、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等のフェナントロリン誘導体が挙げられ、とりわけフラーレン及びその誘導体が好ましい。
【0079】
なお、前記電子供与性化合物、前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0080】
フラーレン及びその誘導体としては、C60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0081】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、式(III)で表される化合物、式(IV)で表される化合物が挙げられる。

(I) (II) (III) (IV)
(式(I)〜(IV)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0082】
及びRで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0083】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(V)で表される基が挙げられる。

(V)
(式(V)中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0084】
で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0085】
60の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0086】

【0087】

【0088】
70の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0089】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、本発明の高分子化合物を含む溶液からの成膜による方法で製造してもよいし、真空蒸着法により有機薄膜を形成してもよい。溶液からの成膜により有機薄膜を製造する方法としては、例えば、一方の電極上に該溶液を塗布し、その後、溶媒を蒸発させて有機薄膜を製造する方法が挙げられる。
【0090】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、本発明の高分子化合物を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の不飽和炭化水素系溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類系溶媒が挙げられる。本発明の高分子化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0091】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0092】
<素子の用途>
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0093】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【0094】
<有機トランジスタ>
本発明の有機薄膜トランジスタは、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む高分子化合物を含有する。
本発明の高分子化合物は電荷移動度が高いため、本発明の高分子化合物を含む有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が高くなる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量はサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により求めた。
カラム: TOSOH TSKgel SuperHM-H(2本)+ TSKgel SuperH2000(4.6mm I.d. × 15cm);検出器:RI (SHIMADZU RID-10A);移動相:テトラヒドロフラン(THF)
【0097】
参考例1
(化合物1の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した1000mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェンを13.0g(80.0mmol)、ジエチルエーテルを80mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ったまま、2.6Mのn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液を31mL(80.6mmol)滴下した。−78℃で2時間反応させた後、8.96gの3−チオフェンアルデヒド(80.0mmol)を20mLのジエチルエーテルに溶解させた溶液を反応液に滴下した。滴下後、反応液を−78℃で30分攪拌し、さらに室温(25℃)で30分攪拌した。反応液を再度−78℃に冷却し、2.6Mのn−BuLiのヘキサン溶液62mL(161mmol)を15分かけて滴下した。滴下後、反応液を−25℃で2時間攪拌し、さらに室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、反応液を−25℃に冷却し、60gのヨウ素(236mmol)を1000mLのジエチルエーテルに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、反応液を室温(25℃)で2時間攪拌し、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。反応液にジエチルエーテルを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した後、硫酸マグネシウムで反応生成物を含む有機層を乾燥し、有機層をろ過後、ろ液を濃縮して35gの粗生成物を得た。クロロホルムを用いて粗生成物を再結晶させることにより精製し、化合物1を28g得た。
【0098】
参考例2
(化合物2の合成)

300mLの4つ口フラスコに、参考例1で合成したビスヨードチエニルメタノール(化合物1)を10g(22.3mmol)、塩化メチレンを150mL加えて均一な溶液とした。該溶液にクロロクロム酸ピリジニウムを7.50g(34.8mmol)加え、室温(25℃)で10時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を除去後、ろ液を濃縮し、化合物2を10.0g(22.4mmol)得た。
【0099】
参考例3
(化合物3の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した300mLフラスコに、参考例2で合成した化合物2を10.0g(22.3mmol)、銅粉末を6.0g(94.5mmol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼称することもある)を120mL加えて、120℃で4時間攪拌した。反応後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、反応液をシリカゲルカラムに通して不溶成分を除去した。その後、反応液に水500mLを加え、さらにクロロホルムを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、有機層をろ過し、ろ液を濃縮して粗製物を得た。粗製物を展開液がクロロホルムであるシリカゲルカラムで精製し、化合物3を3.26g得た。
【0100】
参考例4
(化合物4の合成)

メカニカルスターラーを備え、フラスコ内の気体をアルゴンで置換した300mL4つ口フラスコに、参考例3で合成した化合物3を3.85g(20.0mmol)、クロロホルムを50mL、トリフルオロ酢酸を50mL入れて均一な溶液とした。該溶液に過ホウ酸ナトリウム1水和物を5.99g(60mmol)加え、室温(25℃)で45分間攪拌した。その後、反応液に水200mLを加え、さらにクロロホルムを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層をシリカゲルカラムに通し、エバポレーターでろ液の溶媒を留去した。メタノールを用いて残渣を再結晶させ、化合物4を534mg得た。
【0101】
H NMR in CDCl(ppm):7.64(d、1H)、7.43(d、1H)、7.27(d、1H)、7.10(d、1H)
【0102】
参考例5
(化合物5の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した100mL四つ口フラスコに、化合物4を1.00g(4.80mmol)と脱水THFを30ml入れて均一な溶液とした。フラスコを−20℃に保ちながら、反応液に1Mの3,7−ジメチルオクチルマグネシウムブロミドのエーテル溶液を12.7mL加えた。その後、30分かけて温度を−5℃まで上げ、そのままの温度で反応液を30分攪拌した。その後、10分かけて温度を0℃に上げ、そのままの温度で反応液を1.5時間攪拌した。その後、反応液に水を加えて反応を停止し、さらに酢酸エチルを加え、反応生成物を含む有機層を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、酢酸エチル溶液をシリカゲルカラムに通し、ろ液の溶媒を留去し、化合物5を1.50g得た。
【0103】
H NMR in CDCl(ppm):8.42(b、1H)、7.25(d、1H)、7.20(d、1H)、6.99(d、1H)、6.76(d、1H)、2.73(b、1H)、1.90(m、4H)、1.58‐1.02(b、20H)、0.92(s、6H)、0.88(s、12H)
【0104】
参考例6
(化合物6の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物5を1.50g、トルエンを30mL入れて均一な溶液とした。該溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム1水和物を100mg入れて100℃で1.5時間攪拌を行った。反応液を室温(25℃)まで冷却後、水50mLを加え、さらにトルエンを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。トルエン溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、溶媒を留去した。得られた粗生成物を、展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで生成し、化合物6を1.33g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0105】
H NMR in CDCl(ppm):6.98(d、1H)、6.93(d、1H)、6.68(d、1H)、6.59(d、1H)、1.89(m、4H)、1.58‐1.00(b、20H)、0.87(s、6H)、0.86(s、12H)
【0106】
参考例7
(化合物7の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物6を2.16g(4.55 mmol)、脱水THFを100mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ち、該溶液に2.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液4.37mL(11.4mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、反応液を−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、フラスコを−78℃に冷却し、反応液にトリブチルスズクロリドを4.07g(12.5mmol)加えた。添加後、反応液を−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で3時間攪拌した。その後、反応液に水200mlを加えて反応を停止し、酢酸エチルを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、有機層をろ過後、ろ液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られたオイル状の物質を展開溶媒がヘキサンであるシリカゲルカラムで精製した。シリカゲルカラムのシリカゲルには、あらかじめ5wt%のトリエチルアミンを含むヘキサンに5分間浸し、その後、ヘキサンで濯いだシリカゲルを用いた。精製後、化合物7を3.52g(3.34mmol)得た。
【0107】
実施例1
(高分子化合物1の合成)

7 8
フラスコ内の気体をアルゴンで置換した100mLフラスコに、化合物7を300mg(0.285mmol)、Synlett. 9, 1450-1452 (1999)に記載の方法で合成した化合物8を85mg(0.274mmol)、トルエン20mlを入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを3.77mg(0.0041mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィン7.5mg(0.025mmol)を加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを79mg加え、さらに4時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール200mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、o−ジクロロベンゼン20mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水40mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン20mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体72mgを得た。以下、この重合体を高分子化合物1と呼称する。GPCで測定した高分子化合物1の分子量(ポリスチレン換算)はMw=15000、Mn=4900であった。
【0108】
実施例2
(高分子化合物2の合成)

7 9
フラスコ内の気体をアルゴンで置換した100mLフラスコに、化合物7を160mg(0.152mmol)、特開2006−248944に記載の方法で合成した化合物9を50mg(0.145mmol)、トルエン12mlを入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを1.99mg(0.0022mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィン4.0mg(0.013mmol)を加え、100℃で8時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを55mg加え、さらに4時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール100mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノールおよびアセトンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、o−ジクロロベンゼン10mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.5gと水20mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン10mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムを通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体88mgを得た。以下、この重合体を高分子化合物2と呼称する。GPCで測定した高分子化合物2の分子量(ポリスチレン換算)はMw=20000、Mn=6300であった。
【0109】
参考例8
(高分子化合物3の合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した2L四つ口フラスコに、化合物(E)を7.928g(16.72mmol)、化合物(F)を13.00g(17.60mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、density 0.884g/ml、25℃)を4.979g、及びトルエンを405ml入れ、撹拌しながら反応系内を30分間アルゴンバブリングした。フラスコ内にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を0.02g加え、105℃に昇温し、撹拌しながら2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液42.2mlを滴下した。滴下終了後5時間反応させ、その後、フェニルボロン酸2.6gとトルエン1.8mlとを加え、105℃で16時間撹拌した。その後、反応液にトルエン700ml及び7.5wt%のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液200mlを加え、85℃で3時間撹拌した。反応液の水層を除去後、有機層を60℃のイオン交換水300mlで2回、60℃の3wt%酢酸300mlで1回、さらに60℃のイオン交換水300mlで3回洗浄した。有機層をセライト、アルミナ及びシリカを充填したカラムに通し、ろ液を回収した。その後、熱トルエン800mlでカラムを洗浄し、洗浄後のトルエン溶液をろ液に加えた。得られた溶液を700mlまで濃縮した後、濃縮した溶液を2Lのメタノールに加え、重合体を再沈殿させた。重合体をろ過して回収し、500mlのメタノール、500mlのアセトン、500mlのメタノールで重合体を洗浄した。重合体を50℃で一晩真空乾燥することにより、ペンタチエニル−フルオレンコポリマー(高分子化合物3)12.21gを得た。高分子化合物3のポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×105であった。
【0110】
測定例1
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物1を1重量%の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させ、塗布溶液を作製した。得られた塗布溶液をガラス基板上に、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、大気下120℃の条件で5分間ベークし、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。有機薄膜の吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−670)で測定した。測定したスペクトルを図1に示す。600nm、700nm、800nm及び900nmにおける吸光度を表1に示す。
【0111】
測定例2
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物2を1重量%の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させ、塗布溶液を作製した。得られた塗布溶液をガラス基板上に、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、大気下120℃の条件で5分間ベークし、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。有機薄膜の吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−670)で測定した。測定したスペクトルを図1に示す。600nm、700nm、800nm及び900nmにおける吸光度を表1に示す。
【0112】
比較例1
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物3を0.5重量%の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させ、塗布溶液を作製した。得られた塗布溶液をガラス基板上に、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、大気下120℃の条件で5分間ベークし、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。有機薄膜の吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−670)で測定した。測定したスペクトルを図1に示す。600nm、700nm、800nm及び900nmにおける吸光度を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
実施例3
(有機薄膜のイオン化ポテンシャルの測定)
測定例1で作成した有機薄膜で、大気中光電子分光装置(理研計器製AC-2)を用いてイオン化ポテンシャルを測定した。得られたイオン化ポテンシャルは、5.4eVであった。
【0115】
実施例4
(有機薄膜のイオン化ポテンシャルの測定)
測定例1で作成した有機薄膜で、大気中光電子分光装置(理研計器製AC-2)を用いてイオン化ポテンシャルを測定した。得られたイオン化ポテンシャルは、5.6eVであった。
【0116】
比較例2
(有機薄膜のイオン化ポテンシャルの測定)
比較例1で作成した有機薄膜で、大気中光電子分光装置(理研計器製AC-2)を用いてイオン化ポテンシャルを測定した。得られたイオン化ポテンシャルは、5.2eVであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)で表される繰り返し単位と式(B)で表される繰り返し単位とを含む高分子化合物。

〔式(A)及び式(B)中、R、Qは、互いに同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基又は式(2)で表される基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるR、Qは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。

(2)
(式(2)中、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)〕
【請求項2】
式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。

(1)
〔式(1)中、R、Qは、互いに同一又は相異なり、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基又は式(2)で表される基を表す。これらの基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。複数個あるR、Qは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。

(2)
(式(2)中、m1は、0〜6の整数を表し、m2は、0〜6の整数を表す。R’は、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)〕
【請求項3】
一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と請求項1又は2に記載の高分子化合物とを含む有機光電変換素子。
【請求項4】
前記機能層中に含まれる電子受容性化合物の量が、前記高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部である請求項3に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である請求項3又は4に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体層と、ゲート電極とを備え、前記有機半導体層に請求項1又は2に記載の高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32477(P2013−32477A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245191(P2011−245191)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】