説明

高分子固体状支持体を用いたヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法

本発明は、高分子固体状支持体を用いて商業的規模で多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体を経済的で、かつ効果的に製造する方法に関するものである。本発明の製造方法によれば、高分子固体状支持体と多様な保護基を含有しているアミノ酸誘導体を使用して、温和な条件で単純な製造工程及び精製工程を通じて多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体を高純度で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子固体状支持体を用いたヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法に関し、より詳しくは、本発明は高分子固体状支持体を用いて多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体を経済的で、かつ効果的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の化学式1に表れたような多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体、またはその薬剤学的に許容される塩は、意識障害及び記憶障害などの中枢神経系の障害治療に優れる効果を有する。具体的に、これらは甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを刺激して、脳下垂体前葉で甲状腺刺激ホルモンの放出作用を誘導して、中枢神経障害を治療する薬物として使われている。

【0003】
上記の式において、
*はキラル炭素を意味し、

または

である。
【0004】
上記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法に対する多様な先行製造技術が開発されており、これら製造技術は下記の反応式1に提示されたように、2種の代表的な製造経路を通じて目的物を製造している。
【反応式1】
【0005】

【0006】
[製造経路2]
上記の式において、
*は、キラル炭素を意味し、
Rは、上記の化学式1に定義されたことと同一であり、
は、水素または保護基を表し、
は、水素、アルキル基、またはアリル基を表す。
【0007】
まず、製造経路1に対する詳細な説明は、下記の通りである。
【0008】
上記の製造技術は、化学式2で表示されるカルボキシル酸を含む化合物と化学式3で表示されるヒスチジンエステル誘導体とのカップリング反応を通じて化学式4の化合物を収得し、収得した化合物と化学式5のプロリンアミドとのカップリング反応及び脱保護化反応を遂行して化学式1の化合物を収得することを特徴とする。
【0009】
製造経路1に対する具体的な例として、米国特許第3,746,697号は、下記の反応式2で提示されたように、アミノ基とアミド基が保護化された化学式2のグルタミン酸誘導体と化学式3(ここで、P=水素、R=メチル基)のヒスチジンエステルとのカップリング反応を通じて化学式4の化合物を製造し、加水分解後、化学式5のプロリンアミドとカップリング反応させて、化学式6の化合物を製造している。収得された化合物を酸条件下で脱保護化反応及び環化反応を同時に遂行して、目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式2】
【0010】

【0011】
製造経路1に対する更に他の例として、ヨーロッパ特許第0168042号では、下記の反応式3で提示されたように、化学式2のオロト酸誘導体と化学式3(ここで、P=トシレート、R=ベンジル基)のヒスチジンエステルとのカップリング反応を通じて化学式4の化合物を製造した後、エステル基を水素化反応を通じて加水分解した後、化学式5のプロリンアミドとカップリング反応を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式3】
【0012】

【0013】
上記に提示された公知技術は、出発物質である化学式2の化合物から段階的にカップリング反応、脱保護化反応など、順次的な製造工程を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造する工程であって、下記に列挙されたような短所を有してある。
1)各製造段階別のカップリング工程には長時間の時間が要求されるので、商業的量産時、高い製造コストの原因となる。
2)各段階別に生成される中間体に対する各々の精製工程が遂行されなければならないので、商業的量産時、製造工程が非常に複雑である。
3)各々の中間体の精製工程時、使われたカップリング化剤(coupling agent)及びカルボキシル酸の活性化剤等、多様な不純物により精製が困難であるので、管クロマトグラフィーのように、量産適用に困難な精製工程が要求される。
4)ヒスチジル基に含まれているイミダゾール環の特徴により、DCC(dicyclocarbodiimide)を使用する製造工程中、ラセミ化反応により光学純度の低下が引起こされる短所がある[In Peptides:Chemistry, Structure and Biology, 1975, Ed. by R. Walter & J. Meienhofer, 359~370, Helvetica Chimica Acta, 1974, 57, 831~836]。
【0014】
更に他の製造経路として、製造経路2は化学式2で表示されるカルボキシル酸を含む化合物と化学式7で表示されるヒスチジン−プロリンアミド誘導体とのカップリング反応を通じて目的とする化学式1の化合物を収得する製造技術を特徴とする。
【0015】
上記製造経路2の具体的な例として、ヨーロッパ特許第0168042号とJ. Med. Chem. 1990, 33, 2130-2137では、反応式4に提示されたように、化学式2のオロト酸誘導体と中間体化学式7(ここで、P=水素)の化合物、またはその塩とのカップリング反応を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式4】
【0016】

【0017】
製造経路2の更に他の例として、米国特許第3,996,700号は、反応式5に提示されたように、化学式2のグルタミン酸と中間体化学式7(ここで、P=ベンジル基)の化合物、またはその塩とのカップリング反応を通じて目的とする化学式6のベンジル基が保護化されたヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造した後、水素化反応を通じた脱保護化反応を遂行して目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式5】
【0018】

【0019】
また、米国特許第4,564,609号、及び米国特許第4,436,567号は、反応式6に提示されたように、化学式2の2−アゼチジノン−4−カルボキシル酸と中間体化学式7(ここで、P=水素)の化合物、またはその塩とのカップリング反応を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式6】
【0020】

【0021】
また、米国特許第4,045,556号は、反応式7に提示されたように、化学式2のL−5−ヨウ素−6−メチル−チオモルホリン−2−カルボキシル酸と中間体化学式7(ここで、P=水素)の化合物、またはその塩とのカップリング反応を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造している。
【反応式7】
【0022】

【0023】
上記の製造工程の場合、製造経路1に比べて簡単な製造経路を通じて目的とする化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造できるという長所がある。
【0024】
一方、上記製造経路の場合、中間体7に対する製造工程の複雑性と精製工程の困難性、及び低い収率によって高い製造コスト及び量産に困難性がある。
【0025】
上記の製造経路2に使われる中間体7に対する製造技術は、下記に列挙され通りである。
【0026】
まず、Bulletin of the Chemical Society of Japan, 1971, 44, 1689~1691と、J. Am.Chem. Soc., 1954, 76, 1326では、下記の反応式8に表れたように、化学式3(ここで、P=水素、R=メチル基)のヒスチジンエステルをカルボベンジルオキシ保護化させた後、ヒドラジド化反応及びアジド化反応を遂行した後、化学式5のプロリンアミドと反応させて目的とする中間体7−HBr塩を製造する技術を報告している。
【反応式8】
【0027】

【0028】
上記製造技術の場合、精製工程無しで合成工程が遂行できる長所があるが、アジド基を含有している化合物の不安定性により、溶液状態で化学式5と反応を遂行していることで、反応中、相当量の不純物が生成され、これは最終目的物の純度に影響を及ぼすようになるので、精製工程の困難性を引き起こしている。
【0029】
また、ヒスチジンのアミン基に保護化されている保護基の脱保護化反応で、商業的量産時、有毒ガスが多量発生するブロム酸などを使用しなければならないという短所がある。
【0030】
上記中間体7に対する更に他の製造技術として、J. Med. Chem., 1973, 16, 1137〜1140、米国特許第3,737,422号、及び米国特許公開第2007/0161640号では、下記の反応式9に表れたように、窒素基がt-Boc(t-butyloxycarbonyl)で保護化されているヒスチジンと化学式5のプロリンアミドとのカップリングを遂行した後、脱保護化させることによって、目的とする化学式7−トリフルオロアセト酸塩を製造する技術が報告されている。
【反応式9】
【0031】

【0032】
上記製造工程の場合、使用する原料が商業的量産への使用が容易であるという長所があるが、ヒスチジン誘導体とプロリンアミドとのカップリング工程遂行において、非常に長時間の反応時間が要求され、カップリング工程後、収得される中間産物の精製が非常に困難であるので、商業的量産への適用が困難な管クロマトグラフィーを使用して精製しなければならないという短所がある。
【0033】
前述したように、中枢神経障害治療剤に使われている多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体に対する多様な製造方法が報告されたが、商業的量産時、製造工程の複雑性、長時間の製造工程、及び精製工程の困難性を有しているので、これを克服するためには、経済的で、かつ効果的な製造方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明者らは前述したように、多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体の商業的量産において引き起こされる技術的問題を克服するために、新規の製造方法を研究開発するようになり、商業的に入手可能なアミノ酸誘導体から高分子固体状支持体を使用して、単純な製造及び精製工程を通じて高純度の多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体を製造できることを見出し、本発明を完成するようになった。
【0035】
したがって、本発明の目的は、多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体の商業的量産に適合し、経済的で、かつ効果的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、下記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法に関するものであって、本発明の製造方法は、
1)表面にアミン基を有する高分子固体状支持体を下記の化学式9の窒素基が保護化されたプロリンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式10のカップリングされた産物を得る第1ステップと、
2)得られた化合物から窒素保護基を脱保護化し、続けて下記の化学式11の窒素基が保護化されたヒスチジンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式12のカップリング産物を得る第2ステップと、
3)得られた化合物から保護基Pを脱保護化し、続けて脱保護化された化合物を下記の化学式2の化合物、またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式13のカップリング産物を得る第3ステップと、
4)得られた化合物から保護基Pを脱保護化し、高分子固体状支持体を分離する第4ステップと、を含む。





*はキラル炭素を意味し、

または

であり、
はプロリンの窒素を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下で脱保護化される保護基であり、
はヒスチジンのイミダゾール基の内の窒素を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下では安定し、酸条件下で脱保護化される保護基であって、その例には、トリフェニルメチル基(Tr)、ベンジルオキシメチル基(Bom)、t−ブチルオキシカルボニル基(t−Boc)、アダマンチル−1−オキシカルボニル基(Adoc)、ジフェニルメチル基(Dpm)、4−トルエンスルホニル基(Tos)、4−メトキシベンゼンスルホニル基(Mbs)、t−ブトキシメチル基(Bum)などであり、
はヒスチジンのアミン基を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下で脱保護化される保護基であり、

は、高分子固体状支持体を意味する。
【0037】
本発明の望ましい一具現例によれば、上記第2ステップ及び第3ステップの脱保護化反応が塩基の存在下で遂行されることを特徴とする、上記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法が提供される。
【0038】
本発明の他の望ましい具現例によれば、上記第4ステップの脱保護化と高分子固体状支持体の分離が全て酸の存在下で同時に遂行されることを特徴とする、上記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法が提供される。
【0039】
本発明の更に他の望ましい具現例によれば、上記第1ステップ乃至第4ステップが1つの反応基内で遂行されることを特徴とする、上記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法が提供される。
【0040】
本発明に従うヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法は、高分子固体状支持体を補助出発物質に使用する。上記高分子固体状支持体は、下記の化学式8に表したように、表面にアミン基または保護基を含有しているアミン基を有する樹脂である。上記高分子固体状支持体は、窒素保護基により高分子固体状支持体の表面に存在するアミン基が保護化されている場合、脱保護化過程を経て下記の化学式9のプロリン化合物またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物と反応する。

【0041】
上記の式において、P2は水素またはアミン基の窒素を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下で脱保護化される保護基である。
【0042】
上記Pの望ましい例には、フルオレニル−9−メトキシカルボニル基(Fmoc)、2−シアノ−t−ブトキシカルボニル基(Cyoc)、2−(4−トルエンスルホニル)エトキシカルボニル基(Tsoc)、2−(4−ニトロフェニルスルホニル)エトキシカルボニル基(Noc)、メタンスルホニルエトキシカルボニル基(Msc)などが挙げられる。脱保護化反応に使われる塩基には、通常の有機塩基としてピペリジン、トリエチルアミン、ピリジンなどのアルキルまたはアリルアミン、イミダゾール、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−エン(DBU)、アミノエタノール、モルホリン、液化アンモニアなどが使用可能であり、この時に使われる有機溶媒には、脂肪族または芳香族の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、アルコール類などが挙げられる。
【0043】
上記樹脂には、通常の固体状ペプチド合成法に使われる樹脂が使われることができ、100−200または200−400メッシュのビードサイズを有するポリスチレンが望ましい。
【0044】
以下、本発明に従う製造方法の一具体的な具現例をステップ別に詳細に説明する。
【0045】
第1ステップ
化学式8の表面にアミン基を有する高分子固体状支持体と化学式9のプロリンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とのカップリング反応により下記の化学式10'の化合物が得られる。仮に、高分子固体状支持体としてアミン基が保護化された高分子固体状支持体が使われる場合、保護基の脱保護化が先に進行された後、化学式9のプロリンまたはカルボキシル酸が活性化された化合物とのカップリングが遂行される。下記の反応式10は塩基により脱保護化される保護基により保護化された高分子固体状支持体と窒素基が保護化された化学式9のプロリンとのカップリング反応を表したものである。
【反応式10】
【0046】

【0047】
上記の式において、
*は、キラル炭素を意味し、
は、プロリンの窒素を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下で脱保護化される保護基であり、
は、上記で定義された通りである。
【0048】
脱保護化過程を説明すれば、出発物質である化学式8の高分子固体状支持体に1.0〜20当量(望ましくは、5.0〜10当量)の有機塩基(望ましくは、ピペリジン)を溶かした有機溶媒(望ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド)を投入し、20℃~50℃(望ましくは、20℃〜25℃)で攪拌し、濾過する。上記の過程を1乃至2回反復遂行した後、使われた有機溶媒で洗浄濾過して固体物質を収得する。
【0049】
化学式10'の化合物を製造するためのカップリングに使われるカルボキシル酸とアミンのカップリング化剤は広く公知されており、多様なカップリング化剤が本発明で採用できる。
【0050】
具体的に、下記の化学式14の化合物と、ニトロ基またはハロゲン基が置換されたフェニルカーボネート、8−キノリルカーボネート、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、7−アザ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ノルボネン−2,3−ジカルボキシミド、またはエチル−1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキシレートの混合組成が挙げられる。望ましい例として、DCC(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、またはDIC(N,N−ジイソプロピルカルボジイミド)とHOBTの混合物が挙げられる。

【0051】
上記の式において、
R"及びR?は、C〜C10アルキルグループを表す。
【0052】
必要の場合、上記の化学式9のプロリンに代えて、化学式9のプロリンでカルボキシル酸が活性化された形態が化学式9のプロリンと対等に使用できる。そのような例には、下記の化学式15の化合物が挙げられる。

【0053】
上記の式において、
は、上記で定義された通りであり、
Aはアジド基、−OC(=O)−Im(ここで、Imはイミダゾール基を表す)、−OC(=O)−OR'基(ここで、R'は芳香族炭化水素基、または脂肪族炭化水素基を意味し、より具体的に、C〜C10の芳香族炭化水素基;C〜C10アルキル基;ハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、セレノエーテル基、キトン基、またはエステル基により置換されたC〜C10の芳香族炭化水素基;またはハロゲン原子、ニトロ基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、セレノエーテル基、キトン基、またはエステル基により置換されたC〜C10アルキル基を表す)、OC(=N−R")−NHR?基(ここで、R"及びR?はC〜C10アルキル基を表す)、または−O−Het基(ここで、Hetはニトロ基またはハロゲン基が置換されたベンゼン基、8−キノリル基、N−ヒドロキシスクシニミジル基、1−ヒドロキシベンゾトリアゾーリル基、7−アザ−1−ヒドロキシベンゾトリアゾーリル基、N−ノルボネン−2,3−ジカルボックスイミドオキシ基、またはエチル−1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキシレート基を表す)を表す。
【0054】
上記の化学式9のプロリンでカルボキシル酸が活性化された形態の他の例には、下記の化学式16の化合物が挙げられる。

【0055】
上記の式において、
は、上記で定義された通りである。
【0056】
上記カップリング反応が終結されれば濾過し、溶媒で洗浄濾過して固体の目的とする化合物10'を収得することができる。
【0057】
第2ステップ
第1ステップで収得した化合物10'はP3に対する脱保護化反応後、化学式11の窒素基が保護化されたヒスチジン、またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリング反応して、下記の化学式12'の化合物を提供する。上記の工程は、下記の反応式11に図示されている。
【反応式11】
【0058】

【0059】
上記の式において、
*は、キラルセンターを意味し、
は、ヒスチジンのイミダゾール基の内の窒素を保護する保護基であって、望ましくは、塩基条件下では安定し、酸条件下で脱保護化される保護基であって、その例には、トリフェニルメチル基(Tr)、ベンジルオキシメチル基(Bom)、t−ブチルオキシカルボニル基(t−Boc)、アダマンチル−1−オキシカルボニル基(Adoc)、ジフェニルメチル基(Dpm)、4−トルエンスルホニル基(Tos)、4−メトキシベンゼンスルホニル基(Mbs)、t−ブトキシメチル基(Bum)などであり、
は、ヒスチジンのアミン基を保護する保護基であって、望ましくは塩基条件下で脱保護化される保護基であり、
は、上記で定義された通りである。
【0060】
第2ステップでは、高分子固体状支持体の保護基Pの脱保護化と同一な方式であって、化学式10'の化合物に存在する保護基Pの脱保護化反応を遂行する。収得された固体物質を化学式11のヒスチジン、またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングを遂行する。カルボキシル酸とアミンのカップリング化剤は広く公知されており、多様なカップリング化剤が本発明で採用できる。具体的に、上記高分子固体状支持体と化学式9のプロリンのカップリング反応に使われたカップリング化剤が同一に使用できる。上記カップリング反応は、反応温度15℃〜60℃(望ましくは、20℃〜25℃)で反応時間1〜20時間(望ましくは、3〜5時間)内に容易に達成される。
【0061】
化学式11のヒスチジンでカルボキシル酸が活性化された化合物の例には、下記の化学式17の化合物が挙げられる。

【0062】
上記の式において
*、P、P、及びAは、上記で定義された通りである。
【0063】
上記カップリング反応が終結されれば濾過し、使用した溶媒で洗浄濾過して固体の目的とする化合物12'を収得することができる。
【0064】
第3ステップ
第3ステップでは、下記の反応式12に表れたように、化学式12'のPに対する脱保護化反応後、化学式2のカルボキシル酸誘導体とのカップリング反応を通じて、化学式13'の化合物を収得する。
【反応式12】
【0065】

【0066】
上記の式において、
*、P、P、及びRは、上記で定義された通りである。
【0067】
第3ステップでは、化学式12'の化合物に対し、上記Pの脱保護化過程と同一な方式によりPの脱保護化反応を遂行する。収得された固体物質を化学式2の化合物またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて目的とする化学式13'の化合物を収得する。カルボキシル酸とアミンのカップリング化剤は広く公知されており、多様なカップリング化剤が本発明で採用できる。具体的に、上記高分子固体状支持体と化学式9のプロリンのカップリング反応に使われたカップリング化剤が同一に使用できる。上記カップリング反応は、反応温度15℃~60℃(望ましくは、20℃〜25℃)で反応時間1〜20時間(望ましくは、3〜5時間)内に容易に達成される。
【0068】
化学式2の化合物でカルボキシル酸が活性化された化合物の例には、下記の化学式18の化合物が挙げられる。

【0069】
上記の式において、R及びAは上記で定義された通りである。
【0070】
上記カップリング反応が終結されれば濾過し、使用した溶媒で洗浄濾過して固体の目的とする化合物13'を収得することができる。
【0071】
第4ステップ
第3ステップで収得した化学式13'の化合物から保護基Pを脱保護化し、高分子固体状支持体を分離するステップを順次に、または同一な条件で同時に遂行することによって、目的とする化学式1'の化合物が得られる。望ましくは、化学式13'の化合物から保護基Pを脱保護化し、高分子固体状支持体を分離するステップを酸条件下で同時に遂行する。
【0072】
化学式13'の化合物から酸条件下でPを脱保護化し、高分子固体状支持体を分離するステップを下記の反応式13に表した。
【反応式13】
【0073】

【0074】
上記の式において、
*、P、及びRは、上記で定義された通りである。
【0075】
具体的に、第3ステップで収得した固体物質に10〜50当量の酸と1〜10当量のシラン化合物、及び水、有機溶媒、または水と有機溶媒との混合液を投入した後、15℃~50℃(望ましくは、20℃〜25℃)で1〜20時間(望ましくは、7〜8時間)の間攪拌してくれる。
【0076】
上記反応に使用可能な酸の例には、トリフルオロアセト酸、塩酸、硫酸、窒酸、酢酸、C〜C10のアルキルスルホン酸、R−基を含むベンゼンスルホン酸(ここで、Rは水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケン基、C〜Cアルキン基、C〜Cアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオル基、ニトロ基、アミン基、アミド基、カルボニル基、カルボキシル基などを表す)が挙げられる。そのうち、トリフルオロアセト酸が最も望ましい。
【0077】
上記反応に使用可能なシラン化合物の例には、RSiHの構造を有する化合物(ここで、RはC〜Cアルキル基、C〜Cアルケン基、C〜Cアルキン基、またはC〜Cアルコキシ基を表す)が挙げられる。
【0078】
上記反応に使用可能な有機溶媒の例には、脂肪族または芳香族の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0079】
反応が終結された後に濾過し、使用した有機溶媒で洗浄濾過した後、濾過液を減圧蒸留して目的物を収得する。
【発明の効果】
【0080】
本発明に従う製造方法は、商業的に入手可能な高分子固体状支持体と多様な保護基を含有しているアミノ酸誘導体を使用して、温和な条件で遂行することができ、カップリング反応及び脱保護化反応など、全製造工程が非常に単純で、1つの反応基内で遂行できる。また、各アミノ酸の保護基に対する脱保護化反応及びカップリング反応が非常に短い時間内に定量的に遂行され、各製造ステップで生成される副産物が単純な濾過洗浄過程を通じて除去される長所がある。併せて、高分子固体状支持体の除去反応後、目的物が高純度で収得されるので、多様なヒスチジル−プロリンアミド誘導体の商業的量産に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施形態により本発明をより具体的に説明する。これら実施形態は、唯本発明の説明のためのものであり、本発明の範囲がこれら実施形態に限定されないということは当業者にとって自明である。
【0082】
実施形態1:タルチレリン(Taltirelin)の製造(化学式1a、R=1−メチル−L−ジヒドロオロチル)
1−1.脱保護化された化学式10'の化合物製造(P=H)
200g(0.13mol)の高分子固体状支持体(RINK AMIDE AM RESIN、Licenced from Sanofi-Aventis Deutschland GmbH)に500mLの20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(v/v)を投入し、30分間攪拌した後、真空濾過した後、また500mLの20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(v/v)を投入し、30分間攪拌した後、真空濾過した。収得された固体物質を500mLのN,N−ジメチルホルムアミドで洗浄し、また真空濾過した。
【0083】
上記固体物質に85gのN−Fmoc−プロリン(0.25mol)、34gのHOBT(0.25mol)、39gのN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(0.25mol)が1000mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶けている混合溶液を投入し、3時間の間攪拌した。真空濾過後、500mLのN,N−ジメチルホルムアミドで2回洗浄し、また500mLの20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(v/v)を投入して攪拌した後、真空濾過した。収得された固体物質をまた500mLのN,N−ジメチルホルムアミドで2回洗浄して脱保護化された化学式10'の化合物を固体に収得した。
【0084】
1−2.脱保護化された化学式12'の化合物製造(P=Tr、P=H)
上記脱保護化された化学式10'の化合物に155gのFmoc−His(Tr)−OH(0.25mol)、34gのHOBT(0.25mol)、39gのN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(0.25mol)が1000mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶けている混合溶液を投入し、3時間の間攪拌した。真空濾過後、500mLのN,N−ジメチルホルムアミドで2回洗浄した。収得された固体物質に500mLの20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(v/v)を投入して攪拌した後、真空濾過し、また500mLのN,N−ジメチルホルムアミドで2回洗浄して脱保護化された化学式12'の化合物を固体に収得した。
【0085】
1−3.化学式13'の化合物の製造(P=Tr)
上記脱保護化された化学式12'の化合物に44gの1−メチル−L−4,5−ジヒドロオロチン酸(0.25mol)、34gのHOBT(0.25mol)、39gのN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(0.25mol)が1000mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶けている混合溶液を投入し、5時間の間攪拌した。真空濾過後、500mLのN,N−ジメチルホルムアミド、500mLのイソプロフィルアルコール、及び500mLのジクロロメタンで洗浄して化学式13'の化合物を固体に収得した。
【0086】
1−4.化学式1aの化合物の製造
上記の化学式13'の化合物にトリフルオロアセト酸、トリイソプロピルシラン、及び水混合溶液(950:25:25=v:v:v)を投入した後、3時間の間攪拌し、真空濾過した後、500mLのジクロロメタンで洗浄した後、濾過した。
【0087】
濾過液を集めた後、真空濃縮して固体物質を収得し、これを水で再結晶して52gの白色表題化合物を4水化物形態に収得した。
[a]D-17.3゜(c=0.5、H2O) [参考文献:ヨーロッパ特許第168042号、[a]D-17.3゜(c=0.5、H2O)]
1H NMR(300Mz、D2O)δ8.55(s, 1H)、7.27(s, 1H)、4.94(t, 1H)、4.01~4.43(m, 2H)、3.01(s, 3H)、2.58~3.88(m, 6H)、1.69~2.36(m, 4H)ppm.
【0088】
実施形態2:プロチレリン(Protirelin)の製造(化学式1b、R=L−ピログルタミル)
上記の実施形態1の1−2ステップで製造された脱保護化された化学式12'の化合物に32.3gのL−ピログルタミン酸(0.26mol)、34gのHOBT(0.25mol)、39gのN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(0.25mol)が1000mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶けている混合溶液を投入し、4時間の間攪拌した。真空濾過後、500mLのN,N−ジメチルホルムアミド、500mLのイソプロピルアルコール、及び500mLのジクロロメタンで洗浄して化学式13'の化合物を固体に収得した。収得された固体物質にトリフルオロアセト酸、トリイソプロピルシラン、及び水混合溶液(950:25:25=v:v:v)を投入した後、2時間の間攪拌し、真空濾過した後、500mLのジクロロメタンで洗浄した後、濾過した。
【0089】
濾過液を集めた後、真空濃縮して39gの表題化合物を収得した。
【0090】
上記の目的物は、参考文献[米国特許第3,746,697号]により製造された基準物質と共にTLC分析法を使用して確認した。
TLC移動相条件=クロロホルム:メタノール:アセト酸(38%)=60:40:20
TLC固定相=シリカゲルG
Rf値:0.52
【0091】
実施形態3:アゼトレリン(Azetrelin)の製造(化学式1c、R=2−アゼチジノン−4−カルボニル)
上記実施形態1の1−2ステップで製造された脱保護化された化学式12'の化合物に28.8gの(S)−2−アゼチジノン−4−カルボキシル酸(0.25mol)、34gのHOBT(0.25mol)、39gのN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(0.25mol)が1000mLのN,N−ジメチルホルムアミドに溶けている混合溶液を投入し、4時間の間攪拌した。真空濾過後、500mLのN,N−ジメチルホルムアミド、500mLのイソプロピルアルコール、及び500mLのジクロロメタンで洗浄して化学式13'の化合物を収得した。収得された固体物質にトリフルオロアセト酸、トリイソプロピルシラン、及び水混合溶液(950:25:25=v:v:v)を投入した後、2時間の間攪拌し、真空濾過した後、500mLのジクロロメタンで洗浄した後、濾過した。濾過液を集めた後、真空濃縮して33gの表題化合物を収得した。
[a]D-100.3゜(c=1.0, H2O)[参考文献:米国特許第4,610,821号、[a]D-100.4゜(c=1.0, H2O)]
1H NMR(300Mz, CD3OD)δ7.60(s, 1H)、6.70(s, 1H)、4.42(m, 1H)、4.11(m, 1H)、3.35~3.96(m, 2H)、2.80(m, 1H)、1.70~2.20(m, 4H)ppm.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)表面にアミン基を有する高分子固体状支持体を下記の化学式9の窒素基が保護化されたプロリンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式10のカップリングされた産物を得る第1ステップと、
2)得られた化合物から窒素保護基を脱保護化し、続けて下記の化学式11の窒素基が保護化されたヒスチジンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式12のカップリング産物を得る第2ステップと、
3)得られた化合物から保護基Pを脱保護化し、続けて脱保護化された化合物を下記の化学式2の化合物、またはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせて下記の化学式13のカップリング産物を得る第3ステップと、
4)得られた化合物から保護基Pを脱保護化し、高分子固体状支持体を分離する第4ステップと、を含む、下記の化学式1のヒスチジル−プロリンアミド誘導体の製造方法。



前記の式において、
*は、キラル炭素を意味し、

は、プロリンの窒素を保護する保護基であり、
は、ヒスチジンのイミダゾール基の内の窒素を保護する保護基であり、
は、ヒスチジンのアミン基を保護する保護基であり、

または

であり、

は、高分子固体状支持体を意味する。
【請求項2】
前記Pは、塩基条件下で脱保護化される保護基であり、
は、塩基条件下では安定し、酸条件下で脱保護化される保護基であり、
は、塩基条件下で脱保護化される保護基であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
高分子固体状支持体の表面に存在するアミン基が保護化されており、保護基が塩基条件下で脱保護化される保護基であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
高分子固体状支持体の表面に存在するアミン基の保護基を脱保護化した後、化学式9の窒素基が保護化されたプロリンまたはこれのカルボキシル酸が活性化された化合物とカップリングさせることを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2ステップ及び第3ステップの脱保護化反応が塩基の存在下で遂行されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第4ステップの脱保護化と高分子固体状支持体の分離が全て酸の存在下で同時に遂行されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1ステップ乃至第4ステップが1つの反応基内で遂行されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。

【公表番号】特表2012−533536(P2012−533536A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520538(P2012−520538)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004542
【国際公開番号】WO2011/008005
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(510301529)ウェル イー アンド シー カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】WELL E&C CO., LTD.
【Fターム(参考)】