説明

高分子固体電解質、接着剤、及び電極作製用結着剤

【課題】実用レベルの高いイオン伝導度を有する高分子固体電解質、並びにこの高分子固体電解質を備える高分子固体電解質電池を提供する。
【解決手段】本発明の高分子固体電解質は、3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマー、および電解質塩を含有することを特徴とする。式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3以上の分岐鎖を有するコア部と、該コア部の分岐鎖に結合してなり、重合性不飽和結合から誘導される繰り返し単位を含むアーム部とを有する多分岐ポリマー、及びその製造方法に関する。また、ポリアルキレンオキシド基を有する重合性不飽和結合から誘導される繰り返し単位を含むアーム部とを有する多分岐ポリマーと、電解質塩とを含有してなる高分子固体電解質、並びにこの高分子固体電解質を備える高分子固体電解質電池に関する。
本願は、2004年8月13日に出願された特願2004−235855号、2005年1月31日に出願された特願2005−024232号、および2004年12月21日に出願された特願2004−368908号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心核を構成するコア部と、該コア部に結合してなる多数のアーム鎖を有する構造の多分岐ポリマーが知られている。
このような多分岐ポリマーの製造方法としては、
(a)両親媒性等性質の異なるAB型、ABA型ブロックポリマーを溶媒中でミセル化させ、これをそのままで、あるいは内部コアを何らかの方法で架橋させる方法(特許文献1)、
(b)コア化合物を使用して、リビング重合法等の高分子重合法によりアーム部を形成する方法(非特許文献1)、
(c)多分岐鎖を多く持つデンドリマーを利用する方法(特許文献2)、等が知られている。
【0003】
しかしながら、(a)のブロックポリマーを利用する方法では、臨界ミセル濃度においてミセルを形成させる必要がある上、ポリマーの組成によってはミセル自体を形成させることが困難な場合があり、ミセルを形成させたとしても内部架橋させることが困難な場合もある。(b)のコア化合物から重合法によりアームを形成する方法は、重合における高度な技術と重合設備が要求される。また、(c)のデンドリマーを利用する方法は、用いるデンドリマーは多分岐性に優れた化合物であるが、(b)の方法と同様に高度な合成技術が要求される。
【0004】
その他の多分岐ポリマーとして、ベンゼンあるいはポルフィリンをコアとし、ポリエチレンオキサイドをアームとしたスターポリマーも知られている(非特許文献2、3)。しかし、これらのベンゼンあるいはポルフィリンからなるコアはすべて平面性の剛直な構造であり、スターポリマーの鎖部分の運動性が束縛されるという欠点がある。
【0005】
また、1,1−ジフェニルエチレンとsec−ブチルリチウムを反応させて得られるジフェニルヘキシルリチウムを重合開始剤として、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートを重合させ、次いで、ジクミルアルコール ジメタクリレート、又は2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール ジメタクリレートを反応させることにより、スター型構造のポリマーが得られることが報告されている(非特許文献4)。
【0006】
しかしながら、上記の方法を含め従来の製造方法により得られる多分岐ポリマーの分子量分布は1.5以上であり、ポリマー鎖長の揃ったアームを有する多分岐ポリマーを形成することが困難であった。
従って、分子構造が制御され、狭分散な多分岐ポリマーを、簡便かつ効率良く製造する技術の開発が要望されている。
【0007】
従来、高分子固体電解質として、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(X成分)とスチレン(Y成分)とを、リビングアニオン重合法により共重合させて得られるX−Y−X型トリブロック共重合体をマトリックス基材とする高分子固体電解質が提案されている(非特許文献5)。この文献に記載されたマトリックス基材においては、前記X成分はリチウムイオンの拡散輸送空間としてのPEOドメインを形成する成分である。従って、イオン伝導性を高めるためには、マトリックス基材中のX成分の含有量を多く
することが好ましい。
【0008】
しかし、X成分であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートのホモポリマーは高分子量体となっても室温で液状物であるため、X−Y−X型共重合体を固体電解質のマトリックス基材とするためには、X成分の含有量には制限がある。また、このことはリチウムイオンの拡散輸送空間としてのPEOドメインの形状及びサイズに制限があることを意味する。実際、前記マトリックス基材の40℃でのイオン伝導性は10−6S/cmと満足のいくものではなかった。
【0009】
また特許文献4には、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテルとピラジン等の含窒素複素環化合物との水素結合を利用した、柔軟性を有する高分子固体電解質も提案されている。
【0010】
しかし、この文献に記載された高分子固体電解質は、ポリマー末端に水素結合部位を有するポリマーとの水素結合を利用するものであり、ポリマー主鎖中のくり返し単位中の水素結合性官能基との水素結合を利用するものではない。また、ポリ(エチレングリコール)ビス(カルボキシメチル)エーテル単体に比べて、イオン伝導度が低くなるために実用化には至っていない。
【0011】
さらに特許文献4には、ポリマー主鎖中の繰り返し単位中に、水素結合性官能基を有するイオン導電性ポリマー又は水素結合性官能基を有するイオン導電性環状化合物に、水素結合部位を有する低分子化合物と水素結合を形成した化合物を含有させると、ポリマーの連鎖構造の制御とイオン伝導度が向上することが開示されている。そこでは、低分子化合物として、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基を有する化合物が開示されている。
【0012】
しかしながら、この文献に記載された高分子固体電解質は、イオン導電性と形状安定性の両方ともが実用的に満足する特性を有するものではなかった。
従って、優れた熱的特性及び物理的特性とイオン導電性を兼ね備えた高分子固体電解質の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−19515号公報
【特許文献2】特開平6−219966号公報
【特許文献3】特開2000−100244号公報
【特許文献4】WO02/40594号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Macromol.Chem.,189,2885−2889(1998)
【非特許文献2】Macromolecules,32,484−4793(1999)
【非特許文献3】Angew.Chem.Int.Ed.,(21),3215−3218(1999)
【非特許文献4】J.Polymer Science,PartA,3083(2003)
【非特許文献5】Macromol.Chem.,190,1069(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、狭分散で、分子量が制御された多分岐ポリマー、及びこの多分岐ポリマーの製造方法を提供することを課題とする。また、該多分岐ポリマーと電解質塩とを含有してなり、実用レベルの高いイオン伝導度を有する高分子固体電解質、並びにこの高分子固体電解質を備える高分子固体電解質電池を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(以下、「TEP」ということがある)又はペンタエリスリトールに、2−ブロモイソブチリルブロマイドを反応させてコア部を合成し、これらのコア部に形成される複数の重合活性点を開始点として、重合性不飽和結合を有する化合物をリビングラジカル重合させてポリマー鎖(アーム部)を形成することにより、狭分散で、分子量が制御された多分岐ポリマーが効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(6)の高分子固体電解質、接着剤及び電極作製用結着剤が提供される。
(1)3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマー、および電解質塩を含有することを特徴とする高分子固体電解質。
(2)3以上の分岐鎖を有するコア部と、(1)の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有し、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【0020】
【化2】

【0021】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする高分子固体電解質。
(3)3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有することを特徴とする接着剤。
(4)3以上の分岐鎖を有するコア部と、(3)記載の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有し、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【0024】
【化4】

【0025】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする接着剤。
(5)3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【0026】
【化5】

【0027】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーであることを特徴とする電極作製用結着剤。
(6)3以上の分岐鎖を有するコア部と、(5)記載の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有し、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【0028】
【化6】

【0029】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする電極作製用結着剤。
【0030】
本発明の第2によれば、下記(7)〜(17)の多分岐ポリマーが提供される。
(7)式(I)
【0031】
【化7】

【0032】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれかの整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(Xn1−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、nが2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする多分岐ポリマー。
(8)前記Rが、式(Ia)
【0033】
【化8】

(式中、Xは、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
は0又は1以上の整数を表し、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよい。)
で表される基であることを特徴とする(7)の多分岐ポリマー。
(9)式(II)
【0034】
【化9】

【0035】
(式中、Zは、(CH2又はp−フェニレン基を表し、
qは0〜3の整数を表し、
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
、n、n及びnは、それぞれ独立して0〜3の整数を表し、
、X、X及びXは、それぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
、Y、Y及びYは、それぞれ独立して、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
〜pは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表す。
、Q、Q及びQは、それぞれ独立して、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表す。)
で表される構造を有することを特徴とする(7)又は(8)の多分岐ポリマー。
(10)式(III)
【0036】
【化10】

【0037】
(式中、Cは炭素原子を表し、
及びXはそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
は活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
14は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
、nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、
及びnがそれぞれ2以上のとき、X同士及びX同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
は3又は4を表し、式:−(Xn7−Y−Qで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
は、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表す。)
で表される構造を有することを特徴とする(7)又は(8)の多分岐ポリマー。
(11)前記活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基が、式(IV)
【0038】
【化11】

【0039】
(式中、Tは2価の電子吸引性基を表し、
20は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
21は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。)、又は式(V)
【0040】
【化12】

【0041】
(式中、
22は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
23は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。)
で表される構造を有する基であることを特徴とする(7)〜(10)いずれかの多分岐ポリマー。
(12)前記式(IV)中のTが、式(t11)又は(t21)
【0042】
【化13】

【0043】
〔式中、Z11は、酸素原子、硫黄原子、又はNr71(r71は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基若しくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される基であることを特徴とする(11)の多分岐ポリマー。
【0044】
(13)前記重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体及びビニル基含有ヘテロアリール化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種から誘導される繰り返し単位であることを特徴とする(7)〜(12)いずれかの多分岐ポリマー。
(14)前記重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体から誘導される繰り返し単位(a)と、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位(c)とを有し、前記繰り返し単位(a)と繰り返し単位(c)とのモル比が、95/5〜70/30の範囲であることを特徴とする(13)の多分岐ポリマー。
(15)前記繰り返し単位(a)が、式(a1)
【0045】
【化14】

【0046】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(14)の多分岐ポリマー。
(16)前記重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位が、式(b1)
【0047】
【化15】

【0048】
(式中、R600は、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、Eは、水素原子、脂環式炭化水素骨格を有する有機基、又はラクトン環を有する有機基を表す。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする(13)の多分岐ポリマー。
(17)重量平均分子量が10,000〜2,000,000の高分子であることを特徴とする(7)〜(16)いずれかの多分岐ポリマー。
【0049】
本発明の第3によれば、下記(18)〜(26)の多分岐ポリマーの製造方法が提供される。
(18)式(VII)
【0050】
【化16】

【0051】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
a1は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
10は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれかの整数を表し、
20は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
10は0又は1以上の整数を表す。
10が2以上のとき、式:−(Xa1n10−Wで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
10が2以上のとき、Xa1同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m20−m10)が2以上のとき、Ra1同士は同一でも相異なっていてもよい。
a1は重合反応に関与しない有機基を表す。
Wは、式(VIII)
【0052】
【化17】

【0053】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、
210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
はハロゲン原子を表す。)、又は式(IX)
【0054】
【化18】

【0055】
(式中、R212は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
213は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
はハロゲン原子を表す。)
で表される官能基を表す。〕
で表される化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物とを、リビングラジカル重合条件下で重合させることを特徴とする多分岐ポリマーの製造方法。
(19)前記Ra1が、式(VIIa)
【0056】
【化19】

【0057】
(式中、Xb1は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
20は0又は1以上の整数を表し、
20が2以上のとき、Xb1同士は同一でも相異なっていてもよい。)
で表される基であることを特徴とする(18)の多分岐ポリマーの製造方法。
(20)前記式(VIII)中のT11が、式(t111)又は(t211)
【0058】
【化20】

【0059】
〔式中、Z111は、酸素原子、硫黄原子、又はNr711(r711は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基若しくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。〕で表される基であることを特徴とする(18)又は(19)の多分岐ポリマーの製造方法。
(21)前記式(VII)で表される化合物が、式(X)
【0060】
【化21】

【0061】
〔式中、Zは、(CHq1又はp−フェニレン基を表し、
q1は0〜3の整数を表し、
60〜R63はそれぞれ独立して、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
13、n14、n15およびn16は、それぞれ独立して0〜3の整数を表し、
21〜X24はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
〜Wは、それぞれ独立して、式(VIII)
【0062】
【化22】

【0063】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)、又は式(IX)
【0064】
【化23】

【0065】
(式中、R212は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R213は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)で表される官能基を表す。p20〜p23は、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表す。〕で表される化合物であることを特徴とする(18)〜(20)いずれかの多分岐ポリマーの製造方法。
(22)前記式(VII)で表される化合物が、式(XI)
【0066】
【化24】

【0067】
〔式中、Cは炭素原子を表し、X25及びX26はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、Wは、式(VIII)
【0068】
【化25】

【0069】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)、又は式(IX)
【0070】
【化26】

【0071】
(式中、R212は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R213は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)で表される官能基を表す。
140は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
17、n18は、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、n17及びn18がそれぞれ2以上のとき、X25、X26はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
30は3又は4を表し、式:−(X25n17−Wで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。〕
で表される構造を有することを特徴とする(18)〜(20)いずれかの多分岐ポリマーの製造方法。
【0072】
(23)前記重合性不飽和結合を有する化合物として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体及びビニル基含有ヘテロアリール化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種からから選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする(18)〜(22)いずれかの多分岐ポリマーの製造方法。
(24)前記重合性不飽和結合を有する化合物として、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体、及びスチレン又はスチレン誘導体を用い、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体と、スチレン又はスチレン誘導体とを重合させる割合が、〔(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体〕/〔スチレン又はスチレン誘導体〕のモル比で、95/5〜70/30の範囲であることを特徴とする(23)の多分岐ポリマーの製造方法。
(25)前記(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体として、式(a11)
【0073】
【化27】

【0074】
(式中、R1000、R2000及びR3000は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R1000とR3000は結合して環を形成してもよく、R40a、R40bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R5000は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、Sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R40b)−CH(R40a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される化合物を用いることを特徴とする(23)又は(24)の多分岐ポリマーの製造方法。
(26)前記(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体として、式(b11)
【0075】
【化28】

【0076】
(式中、R6000は、水素原子又はC1〜C6アルキル基を表し、E10は、水素原子、脂環式炭化水素骨格を有する有機基、又はラクトン環を有する有機基を表す。)で表される化合物を用いることを特徴とする(23)又は(24)の多分岐ポリマーの製造方法。
【0077】
また、本発明によれば、下記(27)〜(41)の高分子固体電解質及び高分子固体電解質を備えることを特徴とする高分子固体電解質電池も提供される。
(27)式(XI)
【0078】
【化29】

【0079】
〔式中、Cは炭素原子を表し、X25及びX26はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、Wは、式(VIII)
【0080】
【化30】

【0081】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)
Qは、式(a1)
【0082】
【化31】

【0083】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜1
0炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。)で表される構造を有する多分岐ポリマー、および電解質塩を含有することを特徴とする高分子固体電解質。
(28)前記式(I)で表される多分岐ポリマーが、前記式(II−1)
【0084】
【化32】

【0085】
〔式中、Zは、(CH又はp−フェニレン基を表し、
qは0〜3の整数を表し、
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C6アルキ
ル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
、n、n及びnは、それぞれ独立して0〜3の整数を表し、
、X、X及びXは、それぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
、Y、Y及びYは、それぞれ独立して、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
〜pは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表す。
、Q、Q及びQは、それぞれ独立して、式(a1)
【0086】
【化33】

【0087】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。〕
で表される構造を有する多分岐ポリマーであることを特徴とする(27)に記載の高分子固体電解質。
(29)前記式(I)で表される多分岐ポリマーが、式(III−1)
【0088】
【化34】

【0089】
〔式中、X及びXはそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
は活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
14は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
、nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、
及びnがそれぞれ2以上のとき、X同士及びX同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
は3又は4を表し、式:−(Xn7−Y−Qで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
は、式(a1)
【0090】
【化35】

【0091】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜1
0炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。〕
で表される構造を有する多分岐ポリマーであることを特徴とする(27)に記載の高分子固体電解質。
(30)前記活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基が、式(IV)
【0092】
【化36】

【0093】
(式中、Tは2価の電子吸引性基を表し、
20は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
21は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。)、又は式(V)
【0094】
【化37】

【0095】
(式中、R22は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、
23は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。)
で表される構造を有する基であることを特徴とする(27)〜(29)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(31)前記式(IV)中のTが、式(t11)又は(t21)
【0096】
【化38】

【0097】
〔式中、Z11は、酸素原子、硫黄原子、又はNr71(r71は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基若しくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される基であることを特徴とする(30)に記載の高分子固体電解質。
(32)前記Qが、前記繰返し単位(a)と、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位(b)とを有し、前記繰返し単位(a)と繰り返し単位(b)とのモル比が、95/5〜70/30の範囲であることを特徴とする(27)〜(31)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(33)前記多分岐ポリマーが、数平均子量が10,000〜2,000,000の範囲である高分子であることを特徴とする(1)、(2)、(27)〜(32)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(34)前記多分岐ポリマーが、式(XII)
【0098】
【化39】

【0099】
〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
a1、Xb1は、それぞれ独立して、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、
10は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか整数を表し、
20は、前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
10は、n20はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、
10、n20がそれぞれ2以上のとき、Xa1同士、Xb1同士は、それぞれ同一でも
相異なっていてもよい。
また、m10、(m20−m10)がそれぞれ2以上のとき、式:−(Xa1n10
Wで表される基同士、式:−(Xb1n20−Rで表される基同士は、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。
Wは、前記式(VII)、又は前記式(VIII)で表される化合物と、前記式(a11)で表される化合物とを、リビングラジカル重合条件下で重合させて得られたものであることを特徴とする(27)〜(33)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(35)前記式(VIII)中のT11が、式(t111)又は(t211)
【0100】
【化40】

〔式中、Z111は、酸素原子、硫黄原子、又はNr711(r711は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基若しくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。〕で表される基であることを特徴とする(34)に記載の高分子固体電解質。
(36)前記(VI)で表される化合物が、前記式(IX)で表される化合物であることを特徴とする(34)又は(35)に記載の高分子固体電解質。
(37)前記式(VI)で表される化合物が、前記式(X)で表される化合物であることを特徴とする(34)又は(35)に記載の高分子固体電解質。
(38)ミクロ相分離構造を有するものであることを特徴とする(1)、(2)、(27)〜(37)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(39)前記電解質塩が、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、遷移金属塩、及びプロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)、(2)、(27)〜(38)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(40)前記電解質塩が、リチウム塩であることを特徴とする(1)、(2)、(27)〜(39)のいずれかに記載の高分子固体電解質。
(41)(1)、(2)、(27)〜(39)のいずれかに記載の高分子固体電解質を備えることを特徴とする高分子固体電解質電池。
【0101】
また、本発明によれば、下記(42)〜(49)の接着剤及びそれらを用いた電池、電極作製用結着剤、およびそれらを用いた電極も提供される。
【0102】
(42)式(XI)
【0103】
【化41】

【0104】
〔式中、Cは炭素原子を表し、X25及びX26はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、Wは、式(VIII)
【0105】
【化42】

【0106】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、G1はハロゲン原子を表す。)
Qは、式(a1)
【0107】
【化43】

【0108】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。)で表される構造を有する多分岐ポリマーであることを特徴とする接着剤。
(43)前記多分岐ポリマーが、(7)〜(15)、(17)のいずれかに記載の多分岐ポリマーであることを特徴とする接着剤。
(44)(3)、(4)、(42)、(43)のいずれかに記載の接着剤が用いられていることを特徴とする電池。
(45)式(XI)
【0109】
【化44】

【0110】
〔式中、Cは炭素原子を表し、X25及びX26はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、Wは、式(VIII)
【0111】
【化45】

【0112】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)
Qは、式(a1)
【0113】
【化46】

【0114】
(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜1
0炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。)で表される構造を有する多分岐ポリマーであることを特徴とする電極作製用結着剤。
(46)前記多分岐ポリマーが、(7)〜(15)、(17)のいずれかに記載の多分岐ポリマーであることを特徴とする電極作製用結着剤。
(47)導電性を有することを特徴とする(5)、(6)、(45)、(46)のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
(48)活物質に対する結着能を有することを特徴とする(5)、(6)、(45)〜(47)のいずれかに記載の電極作製用結着剤。
(49)(5)、(6)、(45)〜(48)のいずれかに記載の電極作製用結着剤を含む電極材を含有する電極。
【発明の効果】
【0115】
本発明の多分岐ポリマーは、狭分散で分子量が制御された多分岐のポリマーであり、熱的特性、機械的強度及びイオン導電性に優れた高分子固体電解質の製造原料、接着剤材料、電極の結着剤材料として有用である。また、本発明の多分岐ポリマーは、レジスト材料;電池、キャパシター、センサー、コンデンサー、EC素子、光電変換素子等の電気化学用材料;包接材料;電化製品、産業機器等の機能性材料;等として好適である。
【0116】
本発明の多分岐ポリマーの製造方法によれば、狭分散で、分子量が制御された多分岐のポリマーを簡便かつ効率よく製造することができる。本発明の製造方法は、本発明の多分岐ポリマーの製造方法として好適である。
【0117】
本発明の高分子固体電解質は、本発明の多分岐ポリマーと電解質塩を含有するものであり、実用レベルの高いイオン伝導度を有する。
本発明の高分子固体電解質電池は、本発明の高分子固体電解質電池を備えるものであり、実用レベルの熱的特性、物理的特性及びイオン伝導度を有する。
また、接着剤、電極の結着剤材の電池形成用材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の多分岐ポリマーを含む電解質膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図2】本発明の多分岐ポリマーを含む電解質膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図3】本発明の多分岐ポリマーを含む電解質膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図4】本発明の多分岐ポリマーを含む電解質膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】レジスト評価試験にて測定した露光量(mJ/cm)と溶解速度(nm/sec)の関係を示す図である。
【図6】本発明の接着剤の導電率の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下、本発明を詳細に説明する。
1)多分岐ポリマー
本発明の多分岐ポリマーは、前記式(I)で表される構造を有することを特徴とする。
前記式(I)中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表す。
Aの具体例としては、
(i)4個の分岐鎖を有する炭素原子、4個の分岐鎖を有する炭素原子と、(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基又はこれら2種以上の組み合わせ)との組み合わせ、等の炭素原子を中心とする有機基;
(ii)3個の分岐鎖を有する炭素原子、3個の分岐鎖を有する炭素原子と、(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基又はこれら2種以上の組み合わせ)との組み合わせ、等の炭素原子を中心とする有機基;
(iii)3個の分岐鎖を有する窒素原子、3個の分岐鎖を有する窒素原子と、(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基又はこれら2種以上の組み合わせ)との組み合わせ、等の窒素原子を中心とする有機基;
(iv)3個以上の分岐鎖を有するフェニル基、3個以上の分岐鎖を有するフェニル基と、(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基又はこれら2種以上の組み合わせ)との組み合わせ、等のベンゼン環を中心とする有機基;等が挙げられる。
【0120】
また、前記(アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基又はこれら2種以上の組み合わせ)は、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−NH−、−NHC(=O)−、−NHC(=S)−、−OC(=O)NH−の1種又は2種以上の基を、任意の位置にさらに有していてもよい。
【0121】
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
周期表第14〜16族の原子としては、炭素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、ゲルマニウム原子、砒素原子、セレン原子、スズ原子、アンチモン原子、テルル原子、鉛原子等が挙げられ、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。
【0122】
周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基の具体例としては、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−NH−、−Nr−(式中、rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のC1〜C6アルキル基等を表す。)、−NH−C(=O)−、−NH−C(=S)−、−O−C(=O)−NH−、式:−O−C(=O)−Cr(CHO−)で表される基(rは水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等のC1〜C6アルキル基;等を表す。以下、同様である。)、等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易で、狭分散で多分岐のスターポリマーが得られること等から、−O−、−C(=O)−O−、−NH−が好ましい。
【0123】
また、前記Xの周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基は、
(イ)3価以上の多価アルコール化合物に、2,2−ジメチロールプロピオン酸(Bis−MPA)等の2個以上の水酸機を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させ、得られた反応生成物の水酸基に、同様の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させることを、1〜200回繰り返すことにより得られるデンドリマー型の高分子から得られる基(末端部に−O−基を有するデンドリマー型の高分子基)、
(ロ)アンモニアに、(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、次いで、エチレンジアミンを反応させ、得られる反応生成物に(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、さらにエチレンジアミンを反応させることを1〜100回繰り返して得られる網目状構造の高分子から得られる基(末端部に−NH−基を有する網目状構造の高分子基)、又は、
(ハ)易動性水素を持つハロゲン化フェニル誘導体をモノマーとして、遷移金属触媒により脱ハロゲン化水素して選択的に重縮合することにより得られる、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンビニレン、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンエチニレン化合物から得られる基(末端部に−O−基を有する高分子基)、であってもよい。
【0124】
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表す。
ここで、「活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基」とは、ハロゲン原子が結合したとするならば、そのハロゲン原子は活性ハロゲン原子となるような構造を有する反応性を有する原子団をいう。
【0125】
本発明の多分岐ポリマーにおいては、前記Yの活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基が、下記の式(IV)又は式(V)のいずれかであるのが好ましい。
【0126】
【化47】

【0127】
【化48】

【0128】
式(IV)中、Tは2価の電子吸引性基を表し、R20は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表し、R21は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。
【0129】
前記式(V)中、R22は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表し、R23は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。
・は、ハロゲン原子の置換位置を示す。
【0130】
前記式(IV)中のTとしては、式(t11)又は(t21)で表される基であることがより好ましく、式(t11)で表される基であることがさらに好ましい。
【0131】
【化49】

【0132】
上記式(t11)中、Z11は、酸素原子、硫黄原子、又はNr71(r71は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基もしくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。
【0133】
は、重合反応に関与しない有機基を表し、具体的には、重合反応性のない有機基や重合反応性はあるが重合反応していない基等が挙げられ、前記Rが、下記式(Ia)で表される基であるのが好ましい。
【0134】
【化50】

【0135】
式(Ia)中、Xは、前記Xと同様の、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
【0136】
Rは、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等の置換されていてもよいアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC1〜C6アルコキシル基;を表す。
【0137】
は0又は1以上の整数を表し、nが2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよい。
【0138】
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれかの整数を表し、mは前記Aの有する分岐鎖の数を表し、nは0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(Xn1−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、n1が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
【0139】
本発明の多分岐ポリマーにおいて、前記式(I)からQを除いた部分をコア部とすると、該コア部の具体例としては、以下の(XIII)〜(XXI)に示すものが挙げられる。以下に示すものはあくまで例示であって、本発明の多分岐ポリマーのコア部は以下に示すものに限られるものではない。
【0140】
【化51】

【0141】
【化52】

【0142】
【化53】

【0143】
【化54】

【0144】
上記式(XIII)〜(XXI)中、X30〜X51は、それぞれ独立して、前記Xと同様の、周期表第14〜16族の原子を含む連結基を表し、d1〜d4はそれぞれ独立して任意の自然数を表す。また、R50は、水素原子;又はメチル基、エチル基等のアルキル基;を表す。
【0145】
前記式(I)中、Qは、重合性不飽和結合から誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
【0146】
前記重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位としては、3分岐以上の構造を有するコア部に形成される複数の重合活性点から重合を開始して、ポリマー鎖(アーム部)を形成するものであれば特に制約はない。
【0147】
例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体、ビニル基含有ヘテロアリール化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、アリル化合物;ビニルエーテル化合物、ビニルエステル化合物、イタコン酸ジアルキル化合物、その他の単量体;これらの化合物の2種以上の組み合わせ等から誘導される繰り返し単位が挙げられる。
【0148】
なかでも、より狭分散で多分岐のスターポリマーが得られることから、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体及びビニル基含有ヘテロアリール化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種から誘導される繰り返し単位であるのが好ましい。ここで、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルのいずれかを意味する。
【0149】
(メタ)アクリル酸誘導体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、クロルエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチル−3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、5−エトキシペンチル(メタ)アクリレート、1−メトキシエチル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−1−メトキシエチル(メタ)アクリレート、1−(イソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル化合物;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル化合物;フルフリル(メタ)アクリ
レート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ピリジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル化合物;
【0150】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物;メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール
モノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、ポリアルキレン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物;式(a11)で表される化合物;前記式(b11)で表される化合物;等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかを意味する。
【0151】
また、本発明においては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体として、上記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体が、C1〜10炭化水素基、ヒドロキシル基、炭化水素オキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、エステル基、エポキシ基等の官能基を有する有機基により置換された化合物を用いることもできる。
かかる有機基の具体例を下記に示す。下記式中、uは1〜3のいずれかの整数を表す。
【0152】
【化55】

【0153】
スチレン誘導体としては、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ビニル安息香酸、ビニルアニリン、下記式(c)
【0154】
【化56】

【0155】
(式中、Rは水素原子又はC1〜C4アルキル基を表し、Rはハロゲン原子又はC1〜C12炭化水素基を表し、Rは水素原子又は保護基を表す。k1は0〜4の整数であり、k1が2以上のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。k2は1又は2であり、k2が2のとき、Rは同一又は相異なっていてもよい。但し、k1+k2は1〜5の整数である)で表されるアルケニルフェノール誘導体が挙げられる。
【0156】
前記Rの保護基としては、フェノール性水酸基の保護基として使用されうることが当該技術分野において知られた基であれば特に限定されない。
当該保護基には、例えば、アセチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基、テトラヒドロピラニル基、4−メトキシテトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、トリフェニルメチル基、トリメチルシリル基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、又は下式に示すような基を例示することができる。
【0157】
【化57】

【0158】
式中、kは0又は1を表す。さらに、下式
【0159】
【化58】

【0160】
(式中、RはC1〜C20の無置換又はアルコキシ置換のアルキル基、C5〜C10のシクロアルキル基、又はC6〜C20の無置換又はアルコキシ置換のアリール基を表し、Rは、水素原子又はC1〜C3のアルキル基を表し、Rは水素原子、C1〜C6のアルキル基、又はC1〜C6のアルコキシル基 を表す。)で表される基を例示することができる。
このような置換基として具体的には、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−メチル−1−メトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基等を例示することができる。
【0161】
ビニル基含有ヘテロアリール化合物としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン、2−ビニルチオフェン、4−ビニルチオフェン等が挙げられる。また、その他として、ビニルナフタレン、9−ビニルアントラセン等のその他のビニルアリール化合物を用いることもできる。
【0162】
(メタ)アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基等がある。)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えばメチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等がある)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素数1〜10のもの、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、シクロヘキシル基等がある)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としてはエチル基、プロピル基、ブチル基等がある)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0163】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル化合物;アリルオキシエタノール等のアリルアルコール化合物等が挙げられる。
【0164】
ビニルエーテル化合物としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0165】
ビニルエステル化合物としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0166】
イタコン酸ジアルキル化合物としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フマール酸のジアルキルエステル類、フマール酸のモノアルキルエステル類、ジブチルフマレート等が挙げられる。
【0167】
クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル等のその他の単量体;等が挙げられる。
これらの単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0168】
また、前記Qは、上述した(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン、スチレン誘導体及びビニル基含有ヘテロアリール化合物以外に、他の重合性単量体から誘導される繰り返し単位部分を有していてもよい。
【0169】
かかる他の重合性単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2、3−ジメチル−1、3−ブタジエン、1、3−ペンタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1、3−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン、4、5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3−ブチル−1、3−オクタジエン、クロロプレン等の共役ジエン類;N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のα,β−不飽和カルボン酸イミド類;(メタ)アクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル類;等が挙げられる。
【0170】
また、本発明の多分岐ポリマーにおいては、アーム部を形成する重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を形成する単量体と共重合可能な二重結合を有し、かつ、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に有する繰り返し単位を構成単位として含ませることができる。
【0171】
そのような繰り返し単位として、以下の化合物を例示することができる。但し、そのような繰り返し単位に誘導されると考えられる単量体で例示する。
【0172】
【化59】

【0173】
【化60】

【0174】
【化61】

【0175】
これらの単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の多分岐ポリマーのアーム部を構成する重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位からなる重合鎖は、ホモポリマーからなるものであっても、2元以上の共重合体からなるものであってもよい。また、重合鎖を構成する共重合体の種類は特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、徐々に成分比が変化するグラジエント共重合体、各ブロック鎖を構成する繰り返し単位間の成分比が徐々に変化するテーパーブロック共重合体等のいかなる種類の共重合体であってもよい。
【0176】
これらの中でも、本発明の多分岐ポリマーにおいては、前記Qの重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位が、下記の式(a1)又は(b1)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0177】
また、前記Qの重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位が、下記の式(a1)で表される繰り返し単位である場合には、下記の式(a1)で表される繰り返し単位(a)と、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位(c)とを有し、前記繰り返し単位(a)と繰り返し単位(c)とのモル比が、95/5〜70/30の範囲であることがより好ましい。
【0178】
【化62】

【0179】
【化63】

【0180】
前記式(a1)中、R100〜R300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表す。
100〜R300の炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基;等が挙げられる。
【0181】
また、R100とR300は結合して環を形成してもよい。環としては、シクロプロパン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の3〜8員の炭素環が挙げられる。
【0182】
前記R100〜R300の炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルフィニル基等のアルキルスルフィニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;アミノ基、ジメチルアミノ基等の置換基を有していてもよいアミノ基;アニリノ基;等が挙げられる。また前記R100〜R300の炭化水素基は、同一又は相異なる複数の置換基を有していてもよい。
【0183】
4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
sは2〜100いずれかの整数を表し、好ましくは5〜100いずれかの整数、より好ましくは10〜100いずれかの整数である。各繰り返し単位におけるsの値は、同一であっても相異なっていてもよい。
また、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
【0184】
500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表す。
500の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0185】
500の炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。またR500の炭化水素基は、前記R100〜R300の炭化水素基と同様の置換基を有していてもよい。
【0186】
前記式(a1)で表される繰り返し単位の重合度は、sの値にもよるが、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。
【0187】
前記(a)で表される繰り返し単位は、例えば、日本油脂(株)から、「ブレンマーPMEシリーズ」として市販されているものから誘導することができる。
【0188】
前記式(b1)中、R600は、水素原子;又はメチル基、エチル基等のC1〜C6アルキル基を表す。
【0189】
は、水素原子又は有機基を表す。ここで有機基とは、少なくとも1つの炭素原子を有する基を意味する。有機基の好ましい具体例としては、脂環式炭化水素骨格を有する有機基、ラクトン環を有する有機基が挙げられる。
【0190】
脂環式炭化水素骨格を有する有機基としては、式(d):−α−βで表される基を具体的に例示することができる。式(d)中、αは、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CO−、アルキレン基又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。
また、βは、下記式(e−1)〜(e−6)のいずれかを表す。
【0191】
【化64】

【0192】
式(e−1)〜(e−6)中、R711は、水素原子又はC1〜C5アルキル基を表す。
、Jは、それぞれ独立して、炭素原子とともに、脂環式炭化水素基を形成するのに必要な原子団を表す。
712〜R716は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C4アルキル基又は脂環式炭化水素基を表す。ただし、R712〜R714のうち少なくとも1つ、及びR715又はR716のいずれかは脂環式炭化水素基である。
717〜R721は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C4アルキル基、又は脂環式炭化水素基を表す。ただし、R717〜R721のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基であり、R719又はR721のいずれかはC1〜C4アルキル基又は脂環式炭化水素基である。
722〜R725は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖又は分枝鎖を有していてもよいC1〜C4アルキル基又は脂環式炭化水素基を表す。ただし、R722〜R725のうち少なくとも1つは脂環式炭化水素基である。
上記脂環式炭化水素基としては、下記式に示す骨格を具体的に例示することができる。
【0193】
【化65】

【0194】
これらの中でも、下記式(f)で表される2−置換アダマンチル基を好ましく例示することができる。
【0195】
【化66】

【0196】
式(f)中、R730は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
731〜R733は、それぞれ独立して、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、C1〜C6アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基、C2〜C7アルケニル基、アルコキシル基 、アルコキシカルボニル基及びアシル基からなる群から選ばれる一種の基を表す。
v、w、xは、それぞれ独立して、0〜3のいずれかの整数を表す。
v、x又はwが2以上のとき、R731同士、R732同士、及びR733同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
また、前記αの好ましい具体例としては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
【0197】
【化67】

【0198】
上記式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC1〜C6アルキル基、ハロゲン原子、水酸基又はC1〜C6アルコキシル基 を表す。
【0199】
前記R〜RのC1〜C6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
また、置換基を有していてもよいC1〜C6アルキル基の置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、C1〜C6アルコキシル基 を挙げることができる。
C1〜C6アルコキシル基 としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
r1、r2は、それぞれ独立して1〜10のいずれかの整数を表す。
【0200】
前記式(b1)で表される化合物のうち、Eが脂環式炭化水素骨格を有する有機基である化合物として下記式に示すものを例示することができる。
【0201】
【化68】

【0202】
【化69】

【0203】
【化70】

【0204】
【化71】

【0205】
前記式(b1)で表される化合物のうち、Eがラクトン環を有する有機基である化合物としては、具体的には、ブチロラクトンアクリレート、ブチロラクトンメタクリレート、メバロニックラクトンメタクリレート、パントラクトンメタクリレート等を例示することができる。これらのなかでも、前記Eが式(g):−α−γで表される有機基である化合物が好ましい。
【0206】
式中、αは、前記と同じ意味を表し、γは、下記式(h−1)〜(h−5)のいずれかを表す。
【0207】
【化72】

【0208】
〔上記式(h−1)〜(h−5)中、Dは、酸素原子、硫黄原子又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
801は、置換基を有していてもよいC1〜C6アルキル基、C3〜C8シクロアルキル基又はC2〜C7アルケニル基を表す。
y1は、0〜5のいずれかの整数を表し、y1が2以上のとき、R801同士は、それぞれ同一であっても相異なっていてもよく、また相互に結合して環を形成してもよい。〕
前記式(b1)で表される化合物のうち、Eがラクトン環を有する有機基である化合物の具体例としては、下記式に示すものが挙げられる。
【0209】
【化73】

【0210】
【化74】

【0211】
【化75】

【0212】
【化76】

【0213】
本発明の多分岐ポリマーとしては、前記式(II)又は式(III)で表されるものが好ましい。
前記式(II)中、Zは、(CH2又はp−フェニレン基を表し、qは0〜3の整数を表す。
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシル基を表す。これらの具体例としては、前記Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
、n、n及びnは、それぞれ独立して0〜3のいずれかの整数を表す。
、X、X及びXは、それぞれ独立して、前記Xと同様の周期表第14〜16族の原子を含む連結基を表す。
【0214】
〜pは、それぞれ独立して0又は1を表す。
製造原料が入手容易であることや、狭分散で、分子量が制御された多分岐のポリマーを容易に得ることができること等から、p〜pは、それぞれ1であるのが好ましい。
【0215】
〜Yは、それぞれ独立して、活性ハロゲン原子を有することができる構造を有する官能基を表す。Y〜Yの具体例としては、前記Yの具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
〜Qはそれぞれ独立して、前記Qの重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位と同様の、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表す。
【0216】
前記式(III)中、X及びXはそれぞれ独立して、前記Xと同様の周期表第14〜16族の原子を含む連結基を表す。
は、活性ハロゲン原子を有することができる構造を有する官能基を表す。Yの具体例としては、前記Yの具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
14は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシル基を表す。これらの具体例としては、前記Rと同様のものが挙げられる。
は、前記Qの重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位と同様の、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表す。
【0217】
、nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、
及びnがそれぞれ2以上のとき、X同士及びX同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
は3又は4を表し、式:−(Xn7−Y−Qで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
これらの中でも、本発明の多分岐ポリマーのコア部としては、下記の式(XXII)
【0218】
【化77】

【0219】
で表される構造を有するもの、下記(XXIII)、
【0220】
【化78】

【0221】
で表される構造を有するもの、又は、トリメチロールプロパンに、2,2−ジメチロールプロピオン酸(Bis−MPA)を反応させ、得られた反応生成物の水酸基に、同様の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又は酸ハライド)を反応させることを、1〜200回繰り返し反応させることにより得られるデンドリマー型の高分子化合物(商品名;Boltorn H30、Perstorp社製)の末端酸素原子に、式:−C(CH−C(=O)−*(*で酸素原子と結合する)で表される基が結合した構造を有するもの、のいずれかが特に好ましい。
【0222】
本発明に用いる多分岐ポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖の重量平均分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーMALLS法(GPC−MALLS法)により測定したポリスチレン換算値で、5,000〜1,000,000の範囲であるのが好ましい。
【0223】
本発明の多分岐ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,000,000の範囲であり、本発明の多分岐ポリマーは分子量が制御されたポリマーである。
【0224】
2)多分岐ポリマーの製造方法
本発明の多分岐ポリマーの製造方法は、前記式(VII)で表される化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物とを、リビングラジカル重合条件下で重合させることを特徴とする。本発明の多分岐ポリマーの製造方法は、本発明の多分岐ポリマーの製造方法として特に有用である。
【0225】
前記式(VII)中、Aは前記Aと同様の3以上の分岐鎖を有する有機基を表す。
a1は、前記Xと同様の周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
【0226】
10は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれかの整数を表し、
20は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
10は0又は1以上の整数を表す。
10が2以上のとき、Xa1同士は同一でも相異なっていてもよく、m10が2以上のとき、式:−(Xa1n10−Wで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、(m20−m10)が2以上のとき、Ra1同士は同一でも相異なっていてもよい。
【0227】
a1は、前記Rと同様の重合反応に関与しない有機基を表す。
本発明の製造方法においては、前記Ra1が下記式(VIIa)で表される基であるのが好ましい。
【0228】
【化79】

【0229】
式(VIIa)中、Xb1は、前記Xと同様の周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
は、前記Rと同様の、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表す。
20は0又は1以上の整数を表し、n20が2以上のとき、Xb1同士は同一でも相異なっていてもよい。
Wは、下記に示す式(VIII)又は式(IX)で表される官能基を表す。
【0230】
【化80】

【0231】
【化81】

【0232】
上記式(VIII)中、T11は2価の電子吸引性基を表す。
210は、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等のC1〜C6アルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のC7〜C12アラルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;又はホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;を表す。
【0233】
211は、水素原子;メチル基、エチル基等のC1〜C6アルキル基;ベンゾイル基、フェネチル基等のC7〜C12アラルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のエステル基;又はホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基;を表す。
は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表す。
【0234】
前記式(IX)中、 R212は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。これらの具体例としては、前記R22の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
213は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基又はアシル基を表す。これらの具体例としては、前記R23の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
は前記Gと同様のハロゲン原子を表す。
【0235】
本発明の多分岐ポリマーの製造方法においては、前記式(VIII)中のT11が、下記に示す式(t111)又は(t211)で表される基であることが好ましく、式(t111)で表される基であることがより好ましい。
【0236】
【化82】

【0237】
上記式中、Z111は、酸素原子、硫黄原子、又はNr711(r711は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、アルキルカルボニル基、置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基若しくは置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基を表す。)で表される基を表す。
【0238】
前記式Nr711中、r711は、水素原子;メチル基、エチル基等のC1〜C6アルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;アセチル基等のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基等の置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基;メチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;又はフェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基等の置換基を有していてもよいフェニルスルホニル基;を表す。
【0239】
本発明の多分岐ポリマーの製造方法においては、前記(VII)で表される化合物が、前記式(X)又は式(XI)で表される化合物であることが好ましい。
【0240】
前記式(X)中、Zは、(CHq1又はp−フェニレン基を表す。
q1は、0〜3の整数を表す。
60〜R63は、それぞれ独立して、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、これらの具体例としては、前記Rの、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0241】
13〜n16は、それぞれ独立して0〜3の整数を表す。
21〜X24は、それぞれ独立して、前記Xa1と同様の、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
〜Wは、それぞれ独立して、前記式(VIII)又は(IX)で表される官能基を表す。
【0242】
20〜p23は、それぞれ独立して0又は1を表す。製造原料が入手容易であることや、狭分散で、分子量が制御された多分岐のポリマーを容易に得ることができること等から、p20〜p23は、それぞれ1であるのが好ましい。
【0243】
前記式(XI)中、X25、X26はそれぞれ独立して、前記Xa1と同様の、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表す。
は、前記式(VIII)又は(IX)で表される官能基を表す。
17、n18は、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、n17及びn18がそれぞれ2以上のとき、X25、X26はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
【0244】
30は3又は4を表し、式:−(X25n17−Wで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
140は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基を表し、R140の、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基の具体例としては、前記Rの、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ハロゲン原子又はC1〜C6アルコキシル基の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0245】
前記式(VII)で表される化合物は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、前記式(VII)中、Ra1が前記式(VIIa)で表される基である化合物(VII−1)は、下記に示す方法により得ることができる。
【0246】
【化83】

【0247】
(式中、A、Xa1、Xb1、n10、n20、m10、m20、R及びWは前記と同じ意味を表し、Lは、ハロゲン原子等の脱離基を表す。)
【0248】
すなわち、式(XXIV)で表される構造を有するコア部を形成する化合物(以下、「コア部形成化合物」ということがある)と、式:W−Lで表される反応性化合物(以下、「反応性化合物」ということがある)とを反応させることによって得ることができる。
【0249】
前記コア部形成化合物としては、(α)連結基Xa1、Xb1が−O−である化合物、(β)連結基Xa1、Xb1が−C(=O)−O−である化合物、(γ)連結基Xa1、Xb1が−NH−である化合物、等が挙げられる。
【0250】
前記(α)の具体例としては、テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、テトラキス(ヒドロキシフェニル)キシレン類、3価のアルコール化合物、4価のアルコール化合物等が挙げられる。
【0251】
テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類としては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン類;
【0252】
1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のテトラキス(ヒドロキシフェニル)プロパン類;
【0253】
1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン等のテトラキス(ヒドロキシフェニル)ブタン類;
【0254】
1,1,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン等のテトラキス(ヒドロキシフェニル)ペンタン類;等が挙げられる。
【0255】
テトラキス(ヒドロキシフェニル)キシレン類としては、α,α,α’,α’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−フルオロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン等のテトラキス(ヒドロキシフェニル)キシレン類;等が挙げられる。
【0256】
3価のアルコール化合物としては、トリ(ヒドロキシメチル)メタン(ペンタエリスリトール)、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)エタン、1,1,1−トリ(ヒドロキシメチル)プロパン(トリメチロールプロパン)、グリセリン等が挙げられる。
また、4価のアルコールとしては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0257】
(β)の具体例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−5−メチル−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−カルボキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−カルボキシフェニル)エタン等のテトラキス(カルボキシフェニル)エタン類;等が挙げられる。
【0258】
(γ)の具体例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジクロロ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジブロモ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフルオロ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメトキシ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジフェニル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−ブロモ−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−t−ブチル−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フェニル−5−メチル−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−ブロモ−4−アミノフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−5−フェニル−4−アミノフェニル)エタン等のテトラキス(アミノフェニル)エタン類;アンモニア;等が挙げられる。
【0259】
また本発明においては、(イ)3価以上の多価アルコール化合物に、2,2−ジメチロールプロピオン酸(Bis−MPA)等の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させ、得られた反応生成物の水酸基に、同様の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又はヒドロキシカルボン酸ハライド)を反応させることを、1〜200回繰り返し反応させることにより得られるデンドリマー型の高分子(商品名:BORTON(Perstorp社の登録商標)H20,H2003,H2004,H30,H40,H311,H20,P100,P1000,U3000、W3000等)や、(ロ)アンモニアに、(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、次いで、エチレンジアミンを反応させ、得られる反応生成物に(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリル酸ハライド若しくは(メタ)アクリル酸)を反応させ、さらにエチレンジアミンを反応させることを1〜100回繰り返して得られる網目状構造の高分子、(ハ)易動性水素を持つハロゲン化フェニル誘導体をモノマーとして、遷移金属触媒により脱ハロゲン化水素して選択的に重縮合することにより得られる、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンビニレン、頭−尾結合の星型全共役ポリフェニレンエチニレン化合物等も、コア部形成化合物として用いることができる。
【0260】
前記反応性化合物としては、分子内に、前記式(VIII)又は式(IX)で表される官能基(W)を有し、かつ、前記コア部形成化合物の−(Xa1−H)と反応して、該化合物の連結基Xa1部分で(Xa1−W)結合を形成するものであれば、特に制限されない。
【0261】
前記反応性化合物の具体例としては、クロロアセチルクロライド、ブロモアセチルブロマイド、ジクロロアセチルクロライド、2−クロロプロピオニルクロライド、2−ブロモプロピオニルブロマイド、2−クロロイソブチリルクロライド、2−ブロモイソブチリルブロマイド、2−クロロブチリルクロライド、α−ブロモフェニル酢酸ブロマイド、2−ブロモ−3−フェニルプロピオン酸ブロマイド等のα−ハロゲノ脂肪族カルボン酸ハライド;
【0262】
これらのα−ハロゲノ脂肪族カルボン酸ハライドのカルボニル基(C=O)が、C=S、又はC=Nr711(r711は前記と同じ意味を表す。)である化合物;
【0263】
4−クロロメチル安息香酸クロライド、3−クロロメチル安息香酸クロライド、4−クロロメチル安息香酸ブロマイド、4−ブロモメチル安息香酸クロライド、4−ブロモメチル安息香酸ブロマイド、4−ヨードメチル安息香酸クロライド、4−ヨードメチル安息香酸ブロマイド、2−クロロ−4−クロロメチル安息香酸クロライド、2−クロロ−4−クロロメチル安息香酸ブロマイド、2−クロロ−4−ブロモメチル−安息香酸クロライド、4−(1’−クロロエチル)安息香酸クロライド、4−(1’−ブロモエチル)安息香酸クロライド、4−(1’−クロロイソプロピル)安息香酸クロライド、4−(1’−ブロモイソプロピル)安息香酸クロライド、4−クロロメチル−1−ナフタレンカルボン酸クロライド等のハロアルキル置換芳香族カルボン酸ハライド;
【0264】
これらのハロアルキル置換芳香族カルボン酸ハライドのカルボニル基(C=O)が、C=S、又はC=Nr711(r711は前記と同じ意味を表す。)である化合物;
【0265】
クロロメチルスルホニルクロライド、ブロモメチルスルホニルクロライド、ジクロロメチルスルホニルクロライド、1−クロロエチルスルホニルクロライド、1−ブロモエチルスルホニルクロライド、1−クロロイソプロピルスルホニルクロライド、1−ブロモイソプロピルスルホニルクロライド等のハロアルキルスルホニルハライド;
【0266】
ビス(クロロメチル)スルホン、(1−クロロエチル)(クロロメチル)スルホン、(1−クロロイソプロピル)(クロロメチル)スルホン等のビスハロアルキルスルホン;
【0267】
4−クロロメチルフェニルスルホニルクロライド、3−クロロメチルフェニルスルホニルクロライド、4−クロロメチルフェニルスルホニルブロマイド、4−ブロモメチルフェニルスルホニルクロライド、4−ヨードメチルフェニルスルホニルクロライド、2−クロロ−4−クロロメチルフェニルスルホニルクロライド、2−クロロ−4−ブロモメチル−フェニルスルホニルクロライド、4−(1’−クロロエチル)フェニルスルホニルクロライド、4−(1’−ブロモエチル)フェニルスルホニルクロライド、4−(1’−クロロイソプロピル)フェニルスルホニルクロライド、4−(1’−ブロモイソプロピル)フェニルスルホニルクロライド、4−クロロメチル−1−ナフタレンスルホニルクロライド等のハロアルキル置換アリールスルホニルハライド;
【0268】
4−クロロメチルスルホニルベンジルクロリド、4−クロロメチルスルホニルベンジルブロミド、4−ブロモメチルスルホニルベンジルクロリド、4−ヨードメチルスルホニルベンジルクロリド、4−クロロメチルスルホニル−α−メチルベンジルクロリド等のハロアルキルハロアラルキルスルホン;
1,3−ジクロロアセトン、1,3−ジブロモアセトン等のケトン類;が挙げられる。
【0269】
また本発明においては、パラキシリレンジクロライド、パラキシリレンジブロマイド等も反応性化合物として用いることができる。
【0270】
これらの中でも、入手容易性、取り扱い性及び本発明の多分岐ポリマーを収率よく製造できること等の理由から、α−ハロゲノ脂肪族カルボン酸ハライド又はハロアルキル置換芳香族カルボン酸ハライドが好ましく、α−ハロゲノ脂肪族カルボン酸ハライドがより好ましい。
【0271】
前記コア部形成化合物と反応性化合物との反応は、公知の方法により行うことができる。すなわち、前記コア部形成化合物及び前記反応性化合物の種類に応じて、適宜な反応条件を選択して行うことができる。
【0272】
より具体的には、例えば、コア部形成化合物として、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)を用い、反応性化合物として、2−ブロモイソブチリルブロマイドを用いる場合には、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)を、トリエチルアミン等の塩基の存在下、溶媒中で2−ブロモイソブチリルブロマイドと反応させることにより、1,1,2,2−テトラキス〔4−(2−ブロモイソブチリルオキシフェニル)〕エタンを得ることができる。また、同様に、ペンタエリスリトールと2−ブロモイソブチリルブロマイドとを、トリエチルアミン等の塩基の存在下、溶媒中で反応させることにより、テトラキス(2−ブロモイソブチリルオキシメチル)メタンを得ることができる。
【0273】
前記式(VII)で表される化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物とを重合させることにより、本発明の多分岐ポリマーを製造することができる。
重合方法としては、前記式(VII)で表される化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物、所望により共重合可能な他の単量体及び反応溶媒を含むモノマー液を、一括であるいは反応途中で反応容器に仕込み、窒素やアルゴン等不活性ガス雰囲気下で必要に応じ加熱、市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイド等)を用いて重合を行うラジカル重合法;前記式(VII)で表される化合物と、重合性不飽和結合を有する化合物、所望により共重合可能な他の単量体及び反応溶媒を含むモノマー液を、一括であるいは反応途中で反応容器に仕込み、窒素やアルゴン等不活性ガス雰囲気で、攪拌しながら、アニオン重合開始剤を滴下して重合を行うアニオン重合法;及びリビングラジカル重合法等が挙げられ、狭分散で、分子量が制御された多分岐ポリマーが効率よく得られる点で、リビングラジカル重合法が好ましい。
【0274】
前記式(VII)で表される化合物と、前記重合性不飽和結合を有する化合物とをリビングラジカル重合条件下で重合させる方法としては、
(A)ハロゲン原子G、Gを分子内に複数個有する前記式(VII)で表される化合物を重合開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として重合反応を行うリビングラジカル重合法や、(B)安定ラジカル系開始剤を用いるリビングラジカル重合法、等が挙げられる。なかでも、より効率よく目的とする多分岐ポリマーを得ることができる観点から、(A)のリビングラジカル重合法が好ましい。
【0275】
(A)のリビングラジカル重合法に用いる遷移金属錯体を構成する中心金属としては、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、銅等の周期律表第7〜11族元素(日本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993年)記載の周期律表による)が好ましく挙げられる。なかでもルテニウムが好ましい。
【0276】
これらの金属に配位して錯体を形成する配位子としては、特に限定されないが、例えば、リン系配位子、ハロゲン原子、一酸化炭素、水素原子、炭化水素系配位子、含酸素系配位子、他のカルコゲナイド、含窒素系配位子等が挙げられる。遷移金属錯体は、これらの配位子の二種以上を有していてもよい。
【0277】
遷移金属錯体の好ましい具体例としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロインデニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム;ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨウ化鉄(II)、カルボニルシクロペンタジエニルヨウ化ニッケル(II);(1−エトキシカルボニル−1−メチルエチル)メチルテルル、(1−シアノ−1−メチルエチル)メチルテルル、α−メチルベンジルメチルテルル、ベンジルメチルテルル、メチルベンゾイルテルル等のテルル錯体等が挙げられる。これらの遷移金属錯体は1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用できる。
【0278】
リビングラジカル重合においては、さらに、前記遷移金属錯体に作用することによりラジカル重合を促進させる活性化剤を併用することもできる。かかる活性化剤としては、ルイス酸及び/又はアミン類を使用することができる。
【0279】
ルイス酸の種類は特に制限されず、例えば、アルミニウム系ルイス酸、スカンジウム系ルイス酸、チタン系ルイス酸、ジルコニウム系ルイス酸、スズ系ルイス酸等を使用することができる。アミン類としては、2級アミン、3級アミン、含窒素芳香族複素環化合物等、含窒素化合物であれば、特に制限されないが、2級アミン、3級アミンが好ましい。
これらのルイス酸及びアミン類は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。ルイス酸及び/又はアミン類の使用量は、遷移金属錯体1モルに対し、通常0.1〜20モル、好ましくは0.2〜10モルである。
【0280】
(A)のリビングラジカル重合法による多分岐ポリマーの製造方法においては、前記式(VII)で表される化合物が、重合開始剤として働く。すなわち、前記式(VII)で表される化合物が有するWで表される官能基中の活性ハロゲン原子の結合箇所が、遷移金属錯体の作用でラジカル種となることにより、重合活性点となり、そこへ、リビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物が重合する。
【0281】
リビングラジカル重合法によりアーム部を形成する方法としては、
(1)一種のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を用いて、単独重合体からなるアーム部を形成する方法、
(2)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系に同時に添加して、ランダム共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(3)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物を反応系へ逐次的に添加して、ブロック共重合体からなるアーム部を形成する方法、
(4)複数のリビングラジカル重合性不飽和結合を有する化合物の組成比を経時的に変化させて、グラジエント共重合体からなるアーム部を形成する方法、
等が挙げられる。
【0282】
なかでも、より狭分散の多分岐ポリマーを得ることができることから、(3)のブロック単位で結合したブロック共重合体からなるアーム部を形成する方法が好ましい。この方法によれば、分子内に官能基を有する化合物を重合する場合においても、リビングアニオン重合法のように官能基を保護する必要がなく有利である。
【0283】
重合方法は特に制限されず、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、又は乳化重合法等が採用できるが、溶液重合が好ましい。
【0284】
溶液重合法を採用する場合は、前記式(VII)で表される化合物、重合性不飽和結合を有する化合物、遷移金属錯体、所望によりルイス酸及び/又はアミン類を有機溶媒中で混合し、加温しながら撹拌することにより目的とする多分岐ポリマーを得ることができる。
【0285】
用いる有機溶媒としては特に制限されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。
これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、断続的にブロック重合を行う場合、各重合反応ごとに異なる溶媒を用いても構わない。
【0286】
(B)のリビングラジカル重合法に用いる安定ラジカル系開始剤としては、安定フリーラジカル化合物とラジカル重合開始剤との混合物、又は各種アルコキシアミン類が挙げられる。
【0287】
安定ラジカル系開始剤としては、安定フリーラジカル化合物とラジカル重合開始剤との混合物、又は、各種アルコキシアミン類が挙げられる。
【0288】
安定フリーラジカル化合物は、室温又は重合条件下で単独で安定な遊離基として存在し、また重合反応中には生長末端ラジカルと反応して再解離可能な結合を生成することができる化合物である。例えば、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペルジニルオキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、4,4’−ジメチル−1,3−オキサゾリン−3−イルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロジニルオキシ、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2−ジ(4−t−オクチルフェニル)−1−ピクリルヒドラジル等のニトロキシドラジカルやヒドラジニルラジカルを1個から複数個生成する化合物が例示される。
【0289】
ラジカル重合開始剤としては、分解してフリーラジカルを生成する化合物であれば、特に制限されず、例えば、アゾ化合物類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等の有機過酸化物が挙げられる。また、ジメチルアニリンやナフテン酸コバルト等有機過酸化物と組み合わせて用いられる公知の重合促進剤を併用してもよい。
【0290】
これらのラジカル重合開始剤は、前述の安定フリーラジカル化合物1モルに対して通常0.05〜5モル、好ましくは0.2〜2モルの範囲で用いられる。
【0291】
アルコキシアミン類としては、ラジカル重合ハンドブック、107頁(1999年)エヌティエス社、J.Am.Chem.Soc.,121,3904(1999)等の文献に記載されている化合物を例示することができ、特に、下記に示す化合物を好ましく例示することができる。
【0292】
【化84】

【0293】
上記(A)及び(B)のいずれの重合法においても、重合温度は、通常、室温から200℃、好ましくは40〜150℃である。
また、重合時間は反応規模にもよるが、通常、0.5〜100時間である。重合は、通常、真空、又は窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、常圧又は加圧下において行われる。
【0294】
反応系の温度を下げることにより重合反応を停止させることができる。
反応終了後は、カラム精製、減圧精製、濾過等の通常の分離精製方法により、目的とする多分岐ポリマーを単離することができる。
なお、重合反応過程の追跡及び反応終了の確認は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、膜浸透圧法、NMR等により行うことができる。
【0295】
本発明の製造方法により得られる多分岐ポリマーは、分子量が制御され、狭分散で、かつ多分岐のポリマーである。
【0296】
3)高分子固体電解質
本発明の高分子固体電解質は、3以上の分岐鎖をもつコア部と、前記式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマー、および電解質塩を含有することを特徴とする。
【0297】
本発明の多分岐ポリマーのうち、アーム部が、前記式(a1)で表される繰り返し単位を有するものは高分子固体電解質の製造原料として有用である。すなわち、本発明の多分岐ポリマーと電解質塩とを添加混合して高分子固体電解質用樹脂組成物を調製し、このものから高分子固体電解質を形成することができる。
【0298】
前記式(XI)中、Cは炭素原子を表し、X25及びX26はそれぞれ独立して、周期表第14族〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、Wは、式(VIII)
【0299】
【化85】

【0300】
(式中、T11は2価の電子吸引性基を表し、R210は、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、R211は、水素原子、C1〜C6アルキル基、C7〜C12アラルキル基、アリール基、エステル基若しくはアシル基を表し、Gはハロゲン原子を表す。)
【0301】
Qは、式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部を表す。
【0302】
【化86】

【0303】
前記式(a1)中、R100〜R300、R4a、R4b500は、それぞれ前記記載と同一のものが挙げられ、前記式(a1)で表される繰り返し単位の重合度は、sの値にもよるが、10以上が好ましく、20以上がより好ましい。
【0304】
また、前記Qは、前記繰り返し単位(a)のほかに、重合性不飽和結合により誘導される、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
このような他の繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体(前記繰り返し単位(a)が得られる化合物を除く)、スチレン、スチレン誘導体、ビニル基含有ヘテロアリール化合物、及びその他の重合性単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0305】
(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−ピリジル等のアクリル酸エステル化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−ピリジル等のメタクリル酸エステル化合物;
【0306】
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数は2〜100)(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アセチルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンゾイルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−ブチルジメチルシリルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールシクロヘキセン−1−カルボキシレート、メトキシポリエチレングリコール−シンナメート等が挙げられる。
【0307】
また、これらの(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン誘導体、他の重合性単量体としては、前記記載の化合物と同様なものが挙げられ、また、本発明の多分岐ポリマーにおいては、アーム部を形成する重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を形成する単量体と共重合可能な二重結合を有し、かつ、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、酸無水物基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を分子内に有する繰り返し単位を構成単位として含ませることができる。そのような繰り返し単位として前記記載のものと同様なものが挙げられる。
【0308】
前記記載のようにこれらの単量体は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0309】
これらの中でも、本発明の高分子固体電解質に用いる多分岐ポリマーとしては、前記Qが、前記繰り返し単位(a)と、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される繰り返し単位(b)とを有し、前記繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)とのモル比が、95/5〜70/30の範囲であるものが好ましい。
【0310】
これらの中でも、本発明の高分子固体電解質に用いる多分岐ポリマーとしては、前記式(II)又は式(III)で表されるものが好ましい。
前記式(II)中、Zは、(CH2又はp−フェニレン基を表す。
qは0〜3のいずれか整数を表し、0又は1が好ましく、0が特に好ましい。
10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシル基を表す。これらの具体例としては、前記Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
、n、n及びnは、それぞれ独立して0〜3のいずれかの整数を表す。
、X、X及びXは、それぞれ独立して、前記X、Xと同様の周期表第14〜16族の原子を含む連結基を表す。
〜p、Y〜Y、Q〜Qは、前記記載のものと同様のものが挙げられる。
【0311】
前記式(III)中、Cは炭素原子を表し、X及びXは、それぞれ独立して前記X、Xと同様の周期表第14〜16族の原子を含む連結基を表す。
は、活性ハロゲン原子を有することができる構造を有する官能基を表す。Yの具体例としては、前記Yの具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
14は、水素原子、C1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又はC1〜C6アルコキシル基を表す。これらの具体例としては、前記Rで例示したものと同様のものが挙げられる。
は、前記Qの重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位と同様の、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を表す。
【0312】
、nは、それぞれ独立して0又は1以上の整数を表し、
及びnがそれぞれ2以上のとき、X同士及びX同士はそれぞれ同一であっても、相異なっていてもよい。
は3又は4を表し、式:−(Xn7−Y−Qで表される基同士は、同一であっても相異なっていてもよい。
【0313】
これらの中でも、本発明の多分岐ポリマーのコア部としては、前記式(XXII)、(XXIII)が好ましく、前記デンドリマー型の高分子化合物(1、1、2、2−テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)または、商品名;Boltorn H30、Perstorp社製)の末端酸素原子に、式:−C(CH−C(=O)−*(*で酸素原子と結合する)で表される基が結合した構造を有するもの、のいずれかが特に好ましい。
【0314】
本発明に用いる多分岐ポリマーのアーム部を構成するポリマー鎖の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリスチレン標準で、5,000〜1,000,000の範囲であるのが好ましい。
【0315】
本発明に用いる多分岐ポリマーの数平均分子量(Mn)は、10,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,000,000の範囲であり、分子量が制御された多分岐のスターポリマーである。
本発明に用いる多分岐ポリマーは狭分散のポリマーであり、その分子量分布(Mw/Mn)は、通常0.5〜2.5、好ましくは1.0〜2.3である。
【0316】
本発明に用いる多分岐ポリマーは、3以上の多分岐鎖を有するコア部の該多分岐鎖の末端部を重合開始点として、式(a11)
【0317】
【化87】

で表される化合物とを、リビングラジカル重合条件下で重合させることにより製造することができる。より具体的には、前記式(VI)で表される化合物と、前記式(a11)で表される化合物とを、リビングラジカル重合条件下で重合させることにより製造することができる。多分岐ポリマーの製造は、前記の製造方法と同様にして行うことができる。
【0318】
前記式(a11)で表される化合物において、式(a11)、R1000、R2000及びR3000は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R1000とR3000は結合して環を形成してもよい。R1000、R2000及びR3000のC1〜10炭化水素基の具体例としては、前記R100、R200及びR300の、C1〜10炭化水素基の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
40a、R40bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す。
【0319】
5000は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、R5000の炭化水素基、アシル基又はシリル基の具体例としては、前記R500の炭化水素基、アシル基又はシリル基の具体例として列記したものと同様のものが挙げられる。
は2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R40b)−CH(R40a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。
【0320】
前記式(a11)で表される化合物の具体例としては、ブレンマーPMEシリーズにおいて、R1000=R2000=R40b=水素原子、R40a=メチル基、s=2〜90に相当する単量体(日本油脂社製))等が挙げられる。
【0321】
前記式(X)で表される化合物、前記式(a11)で表される化合物、及び所望により他の重合性不飽和結合を有する化合物をリビングラジカル重合条件下で重合させる方法としては、前記記載の方法が挙げられ、
(A)ハロゲン原子G、Gを分子内に複数個有する、前記式(X)で表される化合物を重合開始剤とし、遷移金属錯体を触媒として重合反応を行うリビングラジカル重合法や、(B)安定ラジカル系開始剤を用いるリビングラジカル重合法、等が挙げられる。なかでも、より効率よく目的とする多分岐ポリマーを得ることができる観点から、(A)のリビングラジカル重合法が好ましい。
【0322】
以上のようにして得られる多分岐ポリマーは、分子量が制御され、狭分散で、かつ多分岐のスターポリマーであり、ミクロ相分離構造を有するものであることが好ましい。特に、高分子固体電解質の製造原料として好適に用いることができる。このような高分子固体電解質は高いイオン伝導度を有する。
【0323】
用いる電解質塩としては、特に制約されず、電荷でキャリアーとしたいイオンを含んだ電解質を用いればよいが、硬化して得られる高分子固体電解質中での解離定数が大きいことが望ましく、アルカリ金属塩、(CH34NBF6等の4級アンモニウム塩、(CH34 PBF6等の4級ホスホニウム塩、AgClO4等の遷移金属塩あるいは塩酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩又は遷移金属塩の使用がより好ましく、アルカリ金属塩がさらに好ましい。
【0324】
アルカリ金属塩の具体例としては、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiC(CH3)(CF3SO22、LiCH(CF3SO22、LiCH2(CF3SO2)、LiC25SO3、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)、LiB(CF3SO22、LiPF6、LiSbF6、LiClO4、LiI、LiBF4、LiSCN、LiAsF6、NaCF3SO3、NaPF6、NaClO4 、NaI、NaBF4、NaAsF6、KCF3SO3、KPF6、KI、LiCF3CO3、NaClO3、NaSCN、KBF4、KPF6、Mg(ClO42、Mg(BF42等が挙げられ、これら電解質塩は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、リチウム塩が特に好ましい。
【0325】
電解質塩の添加量は、多分岐ポリマーのイオン導電性部位を有する繰り返し単位中のアルキレンオキサイドユニットに対して、0.005〜80モル%の範囲が好ましく、さらに0.01〜50モル%の範囲が好ましい。
【0326】
本発明の多分岐ポリマーと電解質塩とを添加混合する方法には特に制限なく、多分岐ポリマーと電解質塩とをテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、エタノール、ジメチルホルムアミド等の適当な溶媒に溶解させる方法、多分岐ポリマーと電解質塩とを常温又は加熱下に機械的に混合する方法等が挙げられる。
【0327】
用いる溶媒としては極性溶媒が好ましい。
極性溶媒としては、極性を有する溶媒であれば特に限定されないが、具体的には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、クロロホルム、N−メチルピロリドン、メタノール等を例示することができる。
【0328】
得られる溶液の固形分濃度は特に限定はされないが、具体的には、0.5〜30重量%の範囲を好ましく例示することができる。0.5重量%未満では、濃度が希薄すぎて少ない工程で成形体を得ることができず、30重量%より多い場合には、膜厚を制御することができなくなる。
【0329】
キャスト又は塗布後、溶媒を常圧又は減圧留去、加熱乾燥等の方法で除去するが、少なくとも溶媒を含んだ状態で加熱処理する工程を含むことを好ましい。該工程以外の前処理又は後処理工程として、減圧留去、加熱乾燥等の工程がさらに含まれていてもよい。
【0330】
ここで、溶媒を含んだ状態とは、溶媒が完全に除去される前の状態であり、キャスト、又は塗布した溶液中にしめる固形分に対して、10〜50重量%、さらに15〜30重量%の範囲で溶媒が残存しているのが好ましい。加熱する温度は特に制限されないが、ガラス転移点温度付近又はそれ以上が好ましい。
【0331】
高分子固体電解質は、シート状、膜状、フィルム状等の形状のものが好ましい。固体電解質シートを製造する場合には、高分子固体電解質用組成物をシート状、膜状、フィルム状等の形状に成形した後、架橋させてシート状架橋重合体(高分子固体電解質シート)とするのが好ましく、この場合、加工面の自由度が広がり、応用上の大きな利点となる。
【0332】
前記シート状の高分子固体電解質は、キャリアー上に高分子固体電解質用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱等にて硬化して製造することができる。
【0333】
用いるキャリアーとしては、高分子固体電解質シートを担持できるものであれば、材質、大きさ、形状等は特に制約されない。なかでも、ポリテトラフルオロエチレン製等の耐薬品性、耐熱性及び剥離性に優れるものが望ましい。
【0334】
高分子固体電解質用組成物の溶液をキャリアー上に塗布する方法は、特に制限されず、公知の塗布方法が採用できる。例えば、高分子固体電解質の溶液をキャリアー上に注ぐ方法、ロールコーター法、スクリーンコーティング法、ドクターブレード法、バーコーティング法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の各種コーティング手段が挙げられる。
【0335】
得られるシート状の高分子固体電解質は、正極、負極及び固体電解質層を有する固体電解質電池の固体電解質層として好適に用いることができる。すなわち正極と負極との間に、高分子固体電解質シートを挟むことで、高分子固体電解質電池を得ることができる。
【0336】
また、本発明の高分子固体電解質は、自立膜が形成できる程度の優れた機械強度を有し、30〜60℃の広い温度範囲にわたり優れたイオン伝導度を有する。本発明の高分子固体電解質の30℃〜60℃でのイオン伝導度は、通常、1.0×10−4(S/cm)〜1.0×10−6(S/cm)である。
【0337】
本発明の高分子固体電解質電池は、本発明の高分子固体電解質を備えることを特徴とする。
以上のようにして得られる高分子固体電解質電池は、例えば、高分子固体電解質を予めフィルム等の成形体として使用し電極間に組み込む方法;あるいは電極上に先に述べた多分岐ポリマーと電解質塩を含む組成物を、ロールコーター法、カーテンコーター法、スピンコート法、ディップ法、キャスト法等の各種コーティング手段により支持体上に前記高分子固体電解質を成膜し、さらに、もう一方の電極を配置する方法;等により製造することができる。
【0338】
本発明の高分子固体電解質電池は、実用レベルの熱的特性、物理的特性及びイオン伝導度を有する本発明の高分子固体電解質を備える。
【0339】
本発明の高分子固体電解質電池は、耐電圧が4.2V以上、好ましくは4.5V以上であり、室温又は高温において単に5V耐性を有するだけでなく、同時に高い導電性を示し、充放電試験において良好な特性が保持される実用性の高い5V級電池である。具体的には、導電率:10−5S/cm以上(23℃)、好ましくは導電率:10−4S/cm以上(23℃)の導電性を有する。耐電圧は、+5V安定性試験によって測定することができる。
【0340】
本発明の高分子固体電解質電池は、重量エネルギー密度が150Wh/kg以上、好ましくは170Wh/kg以上、又は体積容量エネルギー密度が350Wh/kg以上、好ましくは370Wh/kg以上のエネルギー密度を有し、該エネルギー密度を有する高分子固体電解質からなる、高エネルギー密度を有する高分子固体電解質電池である。
【0341】
得られる高分子固体電解質電池は、例えば、ノートパソコン、携帯電話、コードレスフォン機、電子手帳、電卓、液晶テレビ、電気シェーバー、電動工具、電子翻訳機、音声入力器、メモリーカード、バックアップ電源、ラジオ、ヘッドホンステレオ、ナビゲーションシステム等の機器用の電源や、冷蔵庫、エアコン、テレビ、温水器、オーブン電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、ゲーム機器、照明機器、玩具、医療機器、自動車、電動カート、電力貯蔵システム等の電力供給源として使用することができる。
【0342】
4)接着剤および結着剤
本発明の接着剤および結着剤は、3以上の分岐鎖を有するコア部と、前記式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有することを特徴とする。
具体的には、式(XI)で表される構造を有する多分岐ポリマーであることを特徴とする接着剤、電極先製用結着剤に関し、導電性、活物質に対する結着能を含有することを特徴とする。
本発明は、以下に記載の接着剤および結着剤の諸欠点を補って、より接着強度が高く、より実用的な電池用の接着剤、より結着力が高く、結着剤としてより優れた特性を有する結着剤を提供する。
また、式(a1)、式(XI)は、前記記載のものと同一のものが挙げられる。
【0343】
従来から、様々な接着剤が、様々な用途に合わせて開発されており、電池用の接着剤として、例えば、「溶剤中に、非導電性粉末と、該非導電性粉末を上記溶剤中に分散させるとともに、上記溶剤に溶解する分散剤と、接着性を有するとともに上記溶剤中に溶解する接着性樹脂とを含むことを特徴とするリチウム二次電池用接着剤」、これらのうち、リチウムイオン電池は、その主要な構成要素として正極、負極、これら正極と負極との間に挟まれたセパレータを有し、正極、負極及びセパレータには電解液が含浸されている。現在実用に供されているリチウムイオン電池においては、正極には、リチウムコバルト酸化物等の粉末からなる正極活物質を正極集電体に塗布して板状にしたものが用いられ、負極には、炭素系粉末からなる負極活物質を負極集電体に塗布して板状にしたものを用いることができる。また、電解液には、プロピレンカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。さらに、セパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質膜が用いられている。
【0344】
しかし、セパレータは熱により収縮するものが多いため、電池の過充電や内部短絡によって異常昇温した場合のような高温環境下では、セパレータの熱収縮が起き、場合によっては、セパレータが融解、破膜して、電極間のセパレータとしての機能を果たさなくなる結果、電解液及び正極の分解反応が進行し、電池から発火するか又は電池が破裂してしまう場合があった。そのような危険を防止するため、通常、セパレータと電極とは接着剤によって接着されている。
そのような接着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが通常用いられている。しかしながら、それらの接着剤の接着強度は十分ではなかった。
【0345】
また、リチウムイオン電池の正極は、活物質であるコバルト酸リチウムに金属粉やカーボンからなる導電性材料および結着剤を添加しN−メチル−2−ピロリドンの存在下で混練・調製したペーストをドクターブレードにより塗布し、乾燥することにより、結着剤によってコバルト酸リチウムと導電性材料を交互に結着し、さらに金属集電体に結着せしめてなるものである。一方、負極は活物質である炭素材料に結着剤を添加し水等の存在下、混練・調製したペーストをドクターブレードにより塗布し、乾燥することにより、結着剤によってカーボン材料を金属集電体に結着せしめてなるものである。ここで上記リチウムイオン電池の電解液には、プロピレンカーボネートのような非水溶媒が用いられ、通常、支持電解塩が添加される。
【0346】
従って、これらの電池の結着剤には、(1)集電体と活物質および導電性材料同士及び各材料間の結着性の高いポリマーであること、(2)電池内で電圧を受ける過酷な環境下で安定な物質であることのみならず、(3)電解液に対する耐食性に優れること、が要求される。
【0347】
これらの二次電池用結着剤として、通常、使用されるものとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの含フッ素ポリマーやスチレン−エチレン−ブテン−スチレン(SEBS)などの非水溶性ポリマーが用いられ、必要に応じて更にポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマーとの混合物が用いられている。
【0348】
しかしながら、上記各の結着剤だけでは、集電体への活物質への活物質の結着力は、未だ不十分であった。そのため、充放電サイクルの進行に伴う、電極の膨潤・収縮等によって、活物質が集電体から徐々に脱落し、電池性能が劣化していくという問題、すなわち、十分なサイクル特性が得られないという問題があった。
本発明の接着剤および結着剤は、これらの諸問題点を解決する剤を提供し、電池用等の材料として有用である。
【0349】
5)レジスト材料
本発明の多分岐ポリマーのうち、アーム部が、前記式(b1)で表される繰り返し単位を有するものはレジスト材料として有用である。
【0350】
本発明の多分岐ポリマーをレジスト材料として用いる場合において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0351】
本発明の多分岐ポリマーをレジスト材料として用いる場合には、本発明の多分岐ポリマーを、光酸発生剤(化学増幅型光酸発生剤、非化学増幅型光酸発生剤等)、及び必要に応じて更に酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、界面活性剤、光増感剤、有機塩基性化合物、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等とともに適当な有機溶剤に溶解させて、レジスト組成物とする。
【0352】
前記光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物であれば、特に制限されない。例えば、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビーム等により酸を発生する化合物、及びそれらの混合物等を用いることができる。
【0353】
これらの光酸発生剤の添加量は、組成物中の固形分を基準として、通常0.001〜30重量%の範囲であり、好ましくは0.3〜20重量%、更に好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。
【0354】
レジスト組成物の調製に用いる有機溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0355】
得られたレジスト組成物を、基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布後、所定のマスクを通して露光し、ベークを行い、現像液を使用して現像することにより良好なレジストパターンを得ることができる。
【0356】
ここで露光光として具体的には、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等が挙げられる。
【0357】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジン等の環状アミン類;等のアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、前記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【実施例】
【0358】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。なお、分子量分布の分析は、GPC−MALLS(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー多角度光散乱検出法)により行った。
【0359】
(実施例1)多分岐ポリマー1の合成
(1)重合開始剤の調製−1
1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(TEP)20.0g(50mmol)、トリエチルアミン25.3g(250mmol)、テトラヒドロフラン(THF)200mlをフラスコ内に入れ、全容を0℃に冷却した。そこへ、THF50mlで希釈した2−ブロモイソブチリルブロマイド50.58g(220mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後、室温で一晩熟成した。反応液をろ過することによりトリエチルアミン塩酸塩を除き、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた残留物にジクロロメタン及び水を加えて分液し、有機層を分取し、無水MgSOで乾燥した。溶媒を留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、得られた粗生成物の再結晶を行うことにより、目的とする多分岐ポリマーの白色結晶を23.2g得た(単離収率44%、以下「BiB−TEP」と略す)。
【0360】
H−NMR(CDCl,δppm):2.00(s,24H),4.73(s,2H),6.93,7.14(d,16H)
【0361】
(2)多分岐ポリマー1の合成
(1)で得たBiB−TEP0.25g(0.25mmol)、メチルメタアクリレート(以下、「MMA」と略す)10.0g(100mmol)、THF40.0gをフラスコ内に入れ、内部を脱気した。次に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.24g(0.25mmol)を加え、均一に混合した。さらに、ジ−n−ブチルアミン0.13g(1mmol)を加え、60℃に加温して重合反応を開始し、7.5時間重合させた後、反応液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィー分析から求めたMMAの反応率は、54%であった。
反応液を大量のメタノール中に注加して、析出したポリマーの結晶をろ取し、50℃で5時間減圧乾燥することにより、目的とする多分岐ポリマー1の微黄色結晶4.7gを得た(単離収率47%)。
得られた多分岐ポリマー1は、GPC−MALLS分析の結果、Mw=22,000、Mw/Mn=1.17の単分散ポリマーであった。
【0362】
(実施例2)多分岐ポリマー2の合成
実施例1の(1)で得たBiB−TEP0.1g(0.1mmol)、前記式(a11)で表される単量体(R1000=R2000=R40b=水素原子、R40a=メチル基)のホモポリマー(商品名:ブレンマーPME−400、日本油脂社製、以下、「PME400」と略記する)20.0g(40mmol)、THF80.0gをフラスコ内に入れ、内部を脱気した。次に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.24g(0.25mmol)を加え、均一に混合し、さらにジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.1g(0.1mmol)を加え、均一に混合した。次いで、ジ−n−ブチルアミン0.05g(0.4mmol)を加え、60℃に加温して重合反応を開始し、9時間重合させた後、反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。
【0363】
反応液から溶媒を留去後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、遷移金属錯体と未反応モノマーを除去した。得られた粘稠なオイルを60℃で5時間減圧乾燥して、目的とする多分岐ポリマー2の微紫色粘性物を7.1g得た(単離収率36%)。
得られた多分岐ポリマー2は、GPC−MALLS分析の結果、Mw=183,000、Mw/Mn=1.23の単分散ポリマーであった。
【0364】
(実施例3)多分岐ポリマー3の合成
実施例1の(1)で得たBiB−TEP0.50g(0.5mmol)、CuBr0.14g(1.0mmol)、CuBr0.0067g(0.05mmol)、アクリル酸メチル(MA)10.0g(116mmol)、及びアクリル酸t−ブチル(tBA)10.0g(78mmol)をフラスコ内に入れ、内部を脱気した。そこへ、脱気したN,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.17g(1.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。全容を60℃に加温して重合反応を開始し、2時間重合させた後、反応液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液から溶媒を留去後、残留物をTHFに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより遷移金属錯体を除去して、粗生成物を得た。このものをメタノール/水により再沈させて、目的とする多分岐ポリマー3の白色結晶を9.5g得た(単離収率48%)。
【0365】
得られた多分岐ポリマー3は、GPC−MALLS分析の結果、Mw=27,000、Mw/Mn=1.04の単分散ポリマーであった。
また、H−NMR分析より、MA/tBA=48/52(重量%)、42/58(モル%)であった。
【0366】
(実施例4)多分岐ポリマー4の合成
実施例1の(1)で得たBiB−TEP0.25g(0.25mmol)、スチレン(St)10.0g(96mmol)、トルエン40.0gをフラスコ内に入れ、内部を脱気した。そこへ、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.16g(0.2mmol)を加え、均一に混合した。さらに、ジ−n−ブチルアミン0.26g(2mmol)を加え、100℃に加温して重合反応を開始し、49時間重合させた後、反応液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィー分析から求めたStの反応率は69%であった。反応液を大量のメタノール中に注加して析出結晶をろ取した。これを計3回繰り返して、得られた多分岐ポリマー4の結晶を60℃で5時間減圧乾燥して、微橙色結晶を7.2g得た(単離収率66%)。
【0367】
(実施例5)多分岐ポリマー5の合成
実施例4で得た多分岐ポリマー4を1g、ナトリウムエトキシド0.08g、THF15mlを20mlのパイアルに採取し、室温下に一晩撹拌後、大量のメタノール中に滴下して析出結晶をろ取した。これを計3回繰り返して、Stポリマー(アーム部)を60℃で5時間減圧乾燥して、白色結晶0.5gを得た。
得られた多分岐ポリマー5は、GPC−MALLS分析の結果、アーム部の分子量の揃った、Mw=14,600、Mw/Mn=1.03の単分散ポリマーであった。
【0368】
(実施例6)多分岐ポリマー6の合成
(1)3分岐以上の構造を有する重合開始剤の調製
トリメチロールプロパンに2,2−ジメチロールプロピオン酸(Bis−MPA)を反応させ、得られた反応生成物の水酸基に、同様の2個以上の水酸基を有するヒドロキシカルボン酸(又は酸ハライド)を反応させることを、1〜200回繰り返し反応させることにより得られるデンドリマー型の高分子化合物(商品名;Boltorn H30、Boltorn社製)18.0g(0.16mol)、トリエチルアミン21.05g(0.21mol)、テトラヒドロフラン(THF)240mlをフラスコに採取し、0℃に冷却した。この混合溶液に2−ブロモイソブチリルブロミド44.14g(0.192mol)を5℃以下の温度で徐々に滴下した。滴下後、徐々に室温に戻し、一晩熟成した。生成した塩をろ過にて取り除いた後、濃縮し、ジクロロメタンに溶解した。このジクロロメタン溶液を炭酸水素ナトリウム(NaHCO)溶液で五回、飽和食塩水で三回洗浄した後、硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥した。溶媒をテトラヒドロフラン(THF)に置換してカラム精製を行ない、橙色粘性液体24.5g(単離収率60%)を得た(以下、「BiB−Bol」と略記する)。
【0369】
(2)多分岐ポリマー6の合成
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.49g(0.51mmol)、PME400 32.0g(64.4mmol)、上記(1)で得たBiB−Bol 1.28g(0.16mmol)、トルエン96.0gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、ジ−n−ブチルアミン0.27g(2.1mmol)を加え、80℃に加温した。5時間、重合反応を行なった。
【0370】
重合反応の開始5時間後に、反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行ない、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮して得られた粘稠な残渣を更に60℃で6時間減圧乾燥した。重合収率は、用いたモノマー総量に対して87%であった。
得られた多分岐ポリマー6をGPC−MALLS法にて分析した結果、Mw=407,600、Mw/Mn=2.20であった。(以下、「P−PME400」と略記する)
【0371】
(実施例7)多分岐ポリマー7の合成
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.26g(0.27mmol)、前記式(a11)で表される単量体(R1000=R2000=R40b=水素原子、R40a=メチル基)のホモポリマー(商品名:ブレンマーPME−1000、日本油脂社製、以下「PME1000」と略記する)100.2g(90mmol)、上記(1)で得たBiB−Bol 1.33g(0.17mmol)、トルエン300.6gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、ジ−n−ブチルアミン0.28g(2.1mmol)を加え、80℃に加温した。9時間、重合反応を行なった。
【0372】
重合反応の開始9時間後に、反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行ない、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮して得られた粘稠な残渣を更に60℃で6時間減圧乾燥した。重合収率は、用いたモノマー総量に対して65%であった。
得られた多分岐ポリマー7をGPC−MALLS法にて分析した結果、Mw=733,700、Mw/Mn=1.86であった。(以下、P−PME1000と略記する)
【0373】
(実施例8)多分岐ポリマー8の合成
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.26g(0.27mmol)、スチレン2.65g(25.4mmol)、トルエン70.6gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、ジ−n−ブチルアミン0.28g(2.1mmol)を加え、80℃に加温した。9時間、重合反応を行なった。
【0374】
重合反応の開始9時間後に、反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行ない、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮して得られた粘稠な残渣を更に60℃で6時間減圧乾燥して多分岐ポリマー8を得た。重合収率は、用いたモノマー総量に対して29%であった。
得られた多分岐ポリマー8をGPC−MALLS法にて分析した結果、Mw=190,000、Mw/Mn=1.61であった。(以下、「P−ST*」と略記する)
【0375】
(実施例9)多分岐ポリマー9の合成
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.19g(0.24mmol)、P−PME400 15.0g(0.037mmol)、スチレン(St)2.65g(25.4mmol)、トルエン70.6gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、ジ−n−ブチルアミン0.16g(1.2mmol)を加え、100℃に加温して、21時間、重合反応を行なった。
【0376】
反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。重合収率は、用いたスチレン総量に対して62%であった。反応液のカラム精製を行ない、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮して得られた粘稠な残渣を更に60℃で5時間減圧乾燥した。得られた多分岐ポリマー9は、P−PME400:St=90:10(重量%:重量%)、PEO含有量72%の粘土状固体であった。
【0377】
(実施例10)多分岐ポリマー10の合成
実施例9と同様にして、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.11g(0.13mmol)、先の実施例7にて合成したP−PME1000 20.0g(0.027mmol)、スチレン5.0g(48mmol)、トルエン100gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、ジ−n−ブチルアミン0.08g(0.64mmol)を加え100℃に加温した。23時間、重合反応を行なった。
【0378】
重合反応の開始から23時間後に、反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。重合収率は、用いたスチレン総量に対して51%であった。
反応液を冷ヘキサン中に滴下し、再沈殿を三回行った。得られたポリマーを室温で一晩減圧乾燥した。得られた多分岐ポリマー10は、P−PME1000:St=88:12(重量%:重量%)、PEO含有量80%の白色結晶であった。
得られた多分岐ポリマー10をアセトンに溶解して成膜したフィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、ミクロ相分離構造を有することがわかった。
【0379】
(実施例11)多分岐ポリマー11の合成
塩化第1銅5mg(0.05mmol)、先の実施例8にて合成した、P−ST* 1.0g(0.005mmol)、PME400 5.0g(10.7mmol)、トルエン24.0gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気した後、PMDETA8.7mg(0.05mmol)を加え、80℃に加温し、21時間重合反応を行なった。
【0380】
反応溶液を0℃に冷却して重合反応を停止させた。重合収率は、用いたスチレン総量に対して62%であった。反応液のカラム精製を行ない、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮して得られた粘稠な残渣を更に60℃で5時間減圧乾燥した。得られた多分岐ポリマー11は、P−PME400:St=72:28(重量%:重量%)、PEO含有量57%の白色固体であった。
【0381】
(実施例12)多分岐ポリマー12の合成
実施例11と同様にして、P−PME400:St=81:19(重量%:重量%)、PEO含有量65%の白色固体である多分岐ポリマー12を得た。
【0382】
(実施例13)高分子固体電解質の作製及び評価試験(1)
実施例9で製造した多分岐ポリマー9をアセトン/THF=1/1混合溶媒25mlに溶解させた。この溶液に、電解質塩としてLiClO0.09g([Li]/[EO]=0.05)を加えて均一に溶解させた後、アルミカップに移し、室温で24時間放置した後、60℃で24時間減圧乾燥して均一で膜物性の優れた固体電解質膜を得た(膜厚50μm)。
【0383】
アルゴン雰囲気下において、この膜を白金板に挟み、周波数5〜10MHzのインピーダンスアナライザー(Solartron−1260型)を用いる複素インピーダンス解析により、30℃、40℃、50℃及び60℃のイオン伝導度を測定した。その結果を第1表に示す。
また、得られた高分子固体電解質膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行った。その結果を図1に示す。図1より、膜構造はミクロ相分離構造であることがわかった。
【0384】
次に、実施例13で得られた高分子固体電解質膜のフィルムを短冊状(30mm×5mm)に切り取り、測定試料とした。この試料の膜強度を、卓上型材料試験機STA−1150(オリエンテック社製)を使用して測定した。
【0385】
<測定条件>
ロードセル定格:10N
試験速度:20.0mm/分
チャック間距離:20mm
環境温度:25℃
環境湿度:60%RH
【0386】
測定によって得られたS−Sカーブから最大点応力(MPa)を求め、高分子固体電解質膜の膜強度とした。
実施例13で得られた高分子固体電解質膜の膜強度は3.0MPaであり、優れた機械強度を有していた。
【0387】
次に、アルゴン雰囲気下に、銅箔上に圧着させたリチウム金属をこの高分子固体電解質膜上に張り付け、更に両側からPP板で挟み,クリップにて固定して試験用セルを作成し、得られた試験用セルを用いて、リチウムを対極と参照極として、高分子固体電解質電池を作製した。
【0388】
この電池を使用して、試験セルの自然電位(開回路電圧)の安定を確認後、自然電位から+5Vまでのリニアスイープボルタンメトリーを行い、20℃と60℃の電流−電位曲線(I−E曲線)を得た。
【0389】
上記電池を使用して、+5Vに達した時点で電位を保持して、保持時間に対する電流の変化を測定した。20℃と60℃の電流−時間曲線(I−t曲線)を得た。
以上の結果から、実施例1の高分子固体電解質電池は、20℃、60℃のいずれにおいても、高い導電性を有し、+5Vの耐電圧性能を有していることがわかった。
【0390】
+5V安定性試験における耐電圧試験の条件は以下のとおりである。
電圧範囲:自然電位〜5V、スイープ速度:1mV/sec
測定温度:20、60℃
【0391】
(実施例14)高分子固体電解質の作製及び評価試験(2)
多分岐ポリマー9を実施例10で得た多分岐ポリマー10に代え、電解質塩としてLiClO0.10gを用いる以外は、全て実施例13と同様にして、均一で膜物性の優れた高分子固体電解質膜を得た。
イオン伝導度を測定した結果を第1表に示す。
得られた高分子固体電解質膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行った。その結果を図2に示す。図2より、膜構造はミクロ相分離構造であることがわかった。
また、得られた高分子固体電解質膜の膜強度を、実施例13と同様にして測定したところ、2.0MPaであり、優れた機械強度を有していた。
【0392】
次に、アルゴン雰囲気下に、銅箔上に圧着させたリチウム金属をこの高分子固体電解質膜上に張り付け、更に両側からPP板で挟み,クリップにて固定して試験用セルを作成し、得られた試験用セルを用いて、リチウムを対極と参照極として、高分子固体電解質電池を作製した。
【0393】
この電池を使用して、実施例13と同様にして、自然電位から+5Vまでのリニアスイープボルタンメトリーを行い、20℃と60℃の電流−電位曲線(I−E曲線)を得た。
また、上記電池を使用して、実施例13と同様にして、+5Vに達した時点で電位を保持して、保持時間に対する電流の変化を測定した。20℃と60℃の電流−時間曲線(I−t曲線)を得た。
以上の結果から、実施例14の高分子固体電解質電池は、20℃、60℃のいずれにおいても、高い導電性を有し、+5Vの耐電圧性能を有していることがわかった。
【0394】
(実施例15、16)
多分岐ポリマー9を実施例11で得た多分岐ポリマー11、及び実施例12で得た多分岐ポリマー12に代え、電解質塩としてLiClOをそれぞれ0.09g、0.08gを用いる以外は、全て実施例13と同様にして、均一で膜物性の優れた高分子固体電解質膜を得た。
イオン伝導度を測定した結果を第1表に示す。
また、得られた高分子固体電解質膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察を行った。その結果を図3(実施例15)及び図4(実施例16)に示す。図3、4より、膜構造はミクロ相分離構造であることがわかった。
【0395】
また、得られた高分子固体電解質膜の膜強度を、実施例13と同様にして測定したところ、1.0MPaであり、優れた機械強度を有していた。
【0396】
次に、アルゴン雰囲気下に、銅箔上に圧着させたリチウム金属を、実施例15及び実施例16で得た高分子固体電解質膜上にそれぞれ貼り付け、更に両側からPP板で挟み,クリップにて固定して試験用セルを作成し、得られた試験用セルを用いて、リチウムを対極と参照極として、実施例15及び実施例16の高分子固体電解質電池をそれぞれ作製した。
【0397】
これらの電池を使用して、実施例13と同様にして、自然電位から+5Vまでのリニアスイープボルタンメトリーをそれぞれ行い、20℃と60℃の電流−電位曲線(I−E曲線)を得た。
また、上記電池を使用して、実施例13と同様にして、+5Vに達した時点で電位を保持して、保持時間に対する電流の変化をそれぞれ測定した。20℃と60℃の電流−時間曲線(I−t曲線)を得た。
以上の結果から、実施例15及び16の高分子固体電解質電池は、20℃、60℃のいずれにおいても、高い導電性を有し、+5Vの耐電圧性能を有していることがわかった。
【0398】
(比較例1)
高分子固体電解質に代えて電解液を用いる以外は実施例13と同様にして、リチウムを対極と参照極として電池を作製して、試験用セルの自然電位(開回路電圧)の安定を確認後、自然電位から+5Vまでのリニアスイープボルタンメトリーを行い、20℃と60℃の電流−電位曲線(I−E曲線)を得た。
【0399】
次に、+5Vに達した時点で電位を保持して、保持時間に対する電流の変化を測定し、20℃と60℃の電流−時間曲線(I−t曲線)を得た。
測定結果から、比較例1の高分子固体電解質電池は、30℃、40℃、50℃及び60℃のいずれにおいても高い導電性を有するものの、+5Vの耐電圧性能試験において、電流のリークが観測され、電解液が分解していることが示唆された。
【0400】
(比較例2)
実施例1で得た多分岐ポリマー1に代えて、ポリエチレンオキサイド(PEO、Mw=4,000,000)を用いる以外は、実施例13と同様にして高分子固体電解質電池を作製した。PEOのアセトン溶液を使用してPEOを成膜したフィルムを白金板に挟み、周波数5〜10MHzのインピーダンスアナライザー(Solartron−1260型)を用いて複素インピーダンス解析により、30℃、40℃、50℃及び60℃のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
【0401】
【表1】

【0402】
第1表の測定結果から、本発明の多分岐ポリマーを用いてなる高分子固体電解質膜(実施例13〜16)は、30〜60℃の幅広い温度範囲で高いイオン伝導度を有することがわかった。一方、比較例2の高分子固体電解質は、50℃及び60℃では優れたイオン伝導度を有しているものの、低い温度(30℃、40℃)ではイオン伝導度が実用的には不十分であった。
【0403】
(実施例17)ECHMA/NLMAリニアーポリマーの合成
エチルシクロヘキシルメタクリレート3.0g(15.3mmol)、5,3−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボラクトン−2−イルメタクリレート2.0g(9mmol)、CuCl 0.049g(0.5mmol)、THF20gをフラスコに採取し、脱気した。この反応溶液に、エチル 2−ブロモイソブチレート0.098g(0.5mmol)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.095g(0.55mmol)を加え、室温で20分撹拌した。この混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0404】
重合反応を開始して16時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。大量のメタノールで再沈精製を行い、得られたポリマーを60℃で5時間減圧乾燥して、白色ポリマー(ECHMA/NLMAリニアーポリマー)を1.75g得た。得られたポリマーのMwは5,500、Mw/Mnは1.09であった。
【0405】
(実施例18)2MAdMA/NLMAリニアーポリマーの合成
2−メチルアダマンチルメタクリレート2.5g(10.7mmol)、5,3−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボラクトン−2−イルメタクリレート 2.5g(11.3mmol)、CuCl 0.049g(0.5mmol)、THF20gをフラスコに採取し、脱気した。この反応溶液に、エチル 2−ブロモイソブチレート0.098g(0.5mmol)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.095g(0.55mmol)を加え、室温で20分撹拌した。この混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0406】
重合反応を開始して20時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。大量のメタノールで再沈精製を行い、得られたポリマーを60℃で5時間減圧乾燥して、白色ポリマー(2MAdMA/NLMAリニアーポリマー)を3.0g得た。得られたポリマーのMwは5,900、Mw/Mnは1.16であった。
【0407】
(実施例19)ECHMA/NLMAスターポリマーの合成
エチルシクロヘキシルメタクリレート4.8g(24.5mmol)、5,3−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボラクトン−2−イルメタクリレート 3.2g(14.4mmol)、CuCl 0.079g(0.8mmol)、Bol−16Br(Boltornをコアとした16分岐開始剤)0.4g(0.1mmol)、THF32gをフラスコに採取し、脱気した。この反応溶液に、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.305g(1.76mmol)を加え、室温で20分撹拌した。この混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0408】
重合反応を開始して2時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。大量のメタノールで再沈精製を行い、得られたポリマーを50℃で3時間減圧乾燥した。白色ポリマー(ECHMA/NLMAスターポリマー)を1.53g得た。得られたポリマーのMwは43,000、Mw/Mnは1.40であった。
【0409】
(実施例20)2MAdMA/NLMAスターポリマーの合成
2−メチルアダマンチルメタクリレート4.0g(17.1mmol)、5,3−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンカルボラクトン−2−イルメタクリレート 4.0g(18.0mmol)、CuCl 0.079g(0.8mmol)、Bol−32Br(Boltornをコアとした32分岐開始剤)0.4g(0.05mmol)、THF32gをフラスコに採取し、脱気した。この反応溶液にエチル 2−ブロモイソブチレート0.098g(0.5mmol)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン0.153g(0.88mmol)を加え、室温で20分撹拌した。この混合物を60℃に加温することにより重合反応を開始させた。
【0410】
重合反応を開始して3時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。大量のメタノールで再沈精製を行い、得られたポリマーを50℃で3時間減圧乾燥した。白色ポリマー(2MAdMA/NLMAスターポリマー)を2.8g得た。得られたポリマーのMwは87,700、Mw/Mnは1.35であった。
また、得られたポリマーの13C−NMRを測定した結果、2−MAdMA/NLMA=39/61mol%/mol%であった。
【0411】
<PGMEA溶解性試験>
実施例17〜20で得た、ECHMA/NLMAリニアーポリマー、2MAdMA/NLMAリニアーポリマー、ECHMA/NLMAスターポリマー、及び2MAdMA/NLMAスターポリマーのそれぞれのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略記する)に対する溶解性を調べた。その結果、ECHMA/NLMAリニアーポリマー及びECHMA/NLMAスターポリマーはPGMEAに可溶であったが、2−MAdMA/NLMAリニアーポリマー及び2−MAdMA/NLMAスターポリマーはPGMEAに不溶であった。
【0412】
<レジスト評価試験>
実施例19で得たECHMA/NLMAスターポリマーを樹脂固形分濃度15%になるようにPGMEAに溶解し、さらに、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネートを樹脂固形分に対して3.0重量%になるように添加し、レジスト溶液1を調製した。このレジスト溶液1をスピンコーターを用いてシリコンウェハー上に成膜し、ホットプレート上で110℃90秒間加熱して、膜厚約600nmの薄膜を得た。
【0413】
この薄膜を超高圧水銀灯の光(波長365nm、照度10mW)にて所定時間露光した後、ホットプレート上で100℃90秒間加熱した。露光した薄膜について、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて溶解速度を測定した。露光量(mJ/cm)と溶解速度(nm/sec)の関係を図5に示した。図5中、横軸は露光量(Exposure Dose)、縦軸は溶解速度(Dissolution Rate)を示す。
図5から、実施例19で得たECHMA/NLMAスターポリマーはレジスト樹脂として有用であることが示された。
【0414】
(実施例21)多分岐ポリマー13の合成
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.15g(0.16mmol)、ブレンマーPME−1000(日本油脂製) 54.0g(48.5mmol)、ヒドロキシメチルメタクリレート(以下、HEMAと略す) 6.0g(46.1mmol)、実施例6と同様に合成したBol−32BiB 0.8g(0.1mmol)、トルエン 180gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、ジ−n−ブチルアミン 0.17g(1.3mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して7時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮し得られた粘稠な残渣を、60℃で6時間減圧乾燥した。用いたモノマー総量に対する重合収率は68%であった。
得られたポリマーをGPC−MALLSで分析を行ったところ、Mw=1,340,000、Mw/Mn=2.77であった。
【0415】
クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.05g(0.06mmol)、P−(PME1000/HEMA) 20.0g(0.015mmol)、スチレン 20.0g(192mmol)、トルエン 160gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、ジ−n−ブチルアミン 0.04g(0.3mmol)を加え、100℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して41時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。スチレンの重合率は36%であった。反応液をカラムにかけ、金属錯体を除去した。溶媒を減圧濃縮し得られた粘稠な残渣を、冷ヘキサンで再沈し、室温で10時間減圧乾燥した。得られたポリマーはPME1000:HEMA:St=66:7:27(wt%:wt%:wt%)、PEO含有量60%の結晶であった。
【0416】
窒素置換した500mL四つ口フラスコに、脱水テトラヒドロフラン(以下、THFと略す) 17g、脱水トルエン 153gを加えて撹拌下反応系を−40℃に保持した。反応系にDPE−(m−OTBDMS)(ジフェニルエチレン−(m−OSit−Bu(CH) 2.4g(5.1mmol)、n−ブチルリチウム/ヘキサン1.6mol/L溶液(以下、NBLと略す) 1.82g(2.7mmol)を加え、−40℃で30分熟成した。その後、反応系にスチレン 30.4g(292mmol)を加えて重合を行った。滴下が終了して20分後にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと略す)により重合完結を確認した。
このポリマー溶液をGPCにより分析したところ、分子量Mn=9940、分散度Mw/Mn=1.088の単峰性ポリマーであった。
【0417】
この反応系内に脱水THF 5mlに溶解させた1,1,2,2−テトラキス−(4−エトキシカルボニルフェニル)エタン 0.33g(0.53mmol)を添加し、30分反応を継続した後、メタノールを用いて反応を停止させた。この重合溶液を大量のメタノール中に投じてポリマーを析出させ、ろ過・洗浄後、真空下50℃で5時間乾燥させることにより、白色粉末状のポリマー29.8g(収率98%)を得た。
分液により、過剰量のアームポリマーを除去することにより、白色粉末状スターポリマーを得た。このポリマーをGPC−MALLSで測定したところ、分子量Mw=75300、分散度Mw/Mn=1.008であった。
【0418】
(実施例22)多分岐ポリマー14の合成
窒素置換した300mLフラスコに、得られた実施例2で得られたスターポリマー 10.8g(0.14mmol)、脱水CHCl 160g、脱水アセトニトリル 40g、LiBr 0.62g(7.1mmol)、TMS−Cl 1.16g(10.7mmol)を加えて、40℃で48hr熟成した。大量のMeOHで再沈後、50℃で5時間減圧乾燥することにより、白色ポリマー 10.2gを得ることが出来た。このポリマーをGPC−MALLSで測定したところ、分子量Mw=73400、分散度Mw/Mn=1.022であった。
【0419】
ここで得られたスター型PSt開始剤 1.5g(0.02mmol)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム 0.06g(0.06mmol)、ブレンマーPME−1000(日本油脂製) 2.0g(1.8mmol)、ヒドロキシメチルメタクリレート(以下、HEMAと略す) 0.2g(1.7mmol)、トルエン 14.6gをフラスコに採取し、均一に混合した。この混合溶液を脱気後、ジ−n−ブチルアミン 0.03g(0.3mmol)を加え、80℃に加温することにより重合反応を開始させた。
重合反応を開始して24時間後に、反応溶液を0℃に冷却することにより、重合反応を停止させた。反応液をカラムにかけ、金属錯体と未反応モノマーを除去した。溶媒を減圧濃縮し得られた粘稠な残渣を、冷ヘキサンで再沈し、30℃で10時間減圧乾燥した。得られたポリマーはPME1000:HEMA:St=43:8:49(wt%:wt%:wt%)、PEO含有量39%の結晶であった。また、このポリマーをGPC−MALLSで測定したところ、分子量Mw=301,000、分散度Mw/Mn=1.91であった。
【0420】
(実施例23)直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体の合成
アルゴン雰囲気下において、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPME−1000、前記式(I)において、R=R=R4a=R4b=水素原子、R=R=メチル基、m=23、以下、「PME−1000」と略す)135.0g(121.3ミリモル)、HEMA 15.0g(115.3ミリモル)、トルエン450gをフラスコに取り、均一に混合後、脱気処理を行った。
【0421】
この混合溶液に、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.72g(0.75ミリモル)、ジ−n−ブチルアミン0.39g(3ミリモル)を加え、さらに2,2−ジクロロアセトフェノン0.28g(1.5ミリモル)を加え、攪拌下、80℃に加温して重合反応を開始させた。
【0422】
重合反応を開始して47時間経過後、反応系の温度を0℃に冷却して重合反応を停止させた。反応液のカラム精製を行って金属錯体と未反応モノマーを除去した。減圧下に揮発分を除去して得られた粘稠な残渣を60℃で5時間減圧乾燥した。用いたモノマー総量に対する重合収率は、76%であった。
【0423】
以上のようにして、PME−1000とHEMAとのランダム共重合体を得た。得られた高分子のGPC−MALLS分析を行ったところ、Mn=215,000、Mw/Mn=2.26であった。この高分子を「P−PME/HEMA−1」と略す。
【0424】
次いで、アルゴン雰囲気下において、P−PME/HEMA−1 50.0g(2.33ミリモル)、St 75.0g(720ミリモル)、トルエン300gをフラスコに取り、均一に混合後、脱気処理を行った。この混合溶液に、クロロペンタメチルシクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(以下、「CPS」と略す) 0.12g(0.15ミリモル)、ジ−n−ブチルアミン 0.07g(0.5ミリモル)を加え、100℃に加温して共重合反応を開始させた。
共重合反応を開始してから68時間後に反応系の温度を0℃に冷却して共重合反応を停止させた。スチレンの重合収率は、21%であった。大量のヘキサンで再沈して得られた粘稠な残渣を30℃で20時間減圧乾燥した。
【0425】
以上のようにして、ポリスチレン(PSt)からなるブロック鎖Bと、P−PME/HEMA−1からなるブロック鎖A1とが、B−A1−Bの順序で結合してなる共重合体を得た。
【0426】
得られた共重合体は、H−NMR分析の結果、ポリマー組成比がPME−1000/HEMA/St=68/8/24(wt%)であり、PEO(ポリエチレンオキシド)の含有量62%であった。以上のようにして得られた共重合体を、「R−1」と略す。
【0427】
(実施例24)電解質塩(リチウム塩)を含有する接着剤の調製
(1)リチウム塩含有ポリマーの製造
ポリマー13 1gを、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す)とアセトニトリルとの混合溶媒(THF:4g; アセトニトリル:5g)9g中に溶解させ、さらにLiPFを62mg加えて均一に溶解させて、接着剤(ポリマーALiPF)を調製した。なお、ポリマーA 1g中のエチレンオキサイド(以下、「EO」と略す)に対する、加えた電解質塩(LiPF)における金属(Li)の当量比([Li]/[EO])は、0.03であった。
【0428】
(2)架橋剤を含有する接着剤の調製
ポリマーA 1gを、THFとアセトニトリルとの混合溶媒(THF:4g; アセトニトリル:5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてトリレン−2,4−ジイソシアネート(以下、「TDI」と略す)を46mg加えて均一に溶解させて、接着剤(ポリマーA TDI(100%))を調製した。なお、この接着剤ポリマー中の架橋点のうち、TDIによる架橋の割合(TDIの架橋率)は100%であった。
【0429】
また、架橋剤(TDI)の量を減らして同様の操作を行い、接着剤(ポリマーA TDI(50%))を調製した。なお、この接着剤ポリマー中の架橋点のうち、TDIによる架橋の割合(TDIの架橋率)は50%であった。
【0430】
ポリマー13に代えてポリマー14を用いて同様の操作を行い、接着剤ポリマーB TDI(100%))、ポリマーB TDI(50%))を調製した。なお、この接着剤ポリマー中の架橋点のうち、TDIによる架橋の割合(TDIの架橋率)はそれぞれ100%、50%であった。
【0431】
(3)架橋剤及び電解質塩を含有する接着剤の調製
ポリマー13 1gを、THFとアセトニトリルとの混合溶媒(THF:4g; アセトニトリル:5g)9g中に溶解させ、架橋剤としてトリレン−2,4−ジイソシアネート(以下、「TDI」と略す)を46mg、さらにLiPFを62mg([Li]/[EO])=0.03)加えて均一に溶解させて、接着剤(ポリマーE TDI(100%)LiPF)を調製した。なお、この接着剤ポリマー中の架橋点のうち、TDIによる架橋の割合(TDIの架橋率)は100%であった。
【0432】
また、架橋剤(TDI)の量を減らして同様の操作を行い、接着剤(ポリマーA TDI(50%)LiPF6)を調製した。なお、この接着剤ポリマー中の架橋点のうち、TDIによる架橋の割合(TDIの架橋率)は50%であった。
【0433】
(比較例3)
直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体を用い、上記実施例と同じく、リチウム塩含有ポリマー(直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体 LiPF6)、架橋剤を含有する接着剤(直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体 TDI(100%)、及び直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体 TDI(50%))、そして、架橋剤及び電解質塩を含有する接着剤(直鎖型ポリマー B−A1−B共重合体 TDI(100%)LiPF6)を調製した。なお、ポリマー 1g中のEOに対する、加えた電解質塩(LiPF)における金属(Li)の当量比([Li]/[EO])は、0.03であった。
【0434】
(比較例4)
ポリフッ化ビニリデン(以下、「PVdF」と略す) 0.3gを、NMP溶媒4.7g中に溶解させ、さらにLiPFを21.4mg加えて均一に溶解させて、接着剤(PVdF LiPF)を調製した。
【0435】
(実施例25)接着試験1
(1)結着試験体の作製
アルミニウム板(100mm×25mm×1mm)を用意し、その一端の部分(12.5mm×25mm)に、表2に記載された接着剤を塗布した。それとは別にポリエチレン製多孔質フィルム(100mm×25mm×1mm)を用意し、その一端の部分(12.5mm×25mm)を、上記アルミニウム板の接着剤が塗布された部分に重ねて張り合わせた。次に、それを加熱真空乾燥(25℃で0.5時間、さらに60℃で4時間)して結着試験体を作製した。
【0436】
(2)接着強度の測定
得られた結着試験体の両端をオートグラフ(島津製作所社製)にセットし、25℃において引張り速度10mm/minで引張り試験を行った。引張り試験は、JISK 6850:1990に準拠して実施した。引張り試験の測定結果から、破断応力(MPa)を算出した。その結果を表2に示す。
【0437】
【表2】

【0438】
表2の結果から、ポリマー13及びポリマー14のいずれも、比較例4のポリフッ化ビニリデンの場合よりも接着強度は高いことがわかった。また、PEO含有量がほぼ等しいポリマー13とPVdFの比較を行うと、多分岐ポリマーであるポリマー13の方が、ポリマー単独だけでなく、架橋剤(TDI)を加えた場合も、さらに電解質塩(リチウム塩)を加えた場合についても、高い接着強度を示すことがわかった。
【0439】
(実施例26)接着剤の耐溶解性試験
グラファイト電極を用意し、その上に表2に記載された接着剤を塗布した。それとは別にポリエチレン製多孔質フィルム(20mm×20mm×0.02mm)を用意し、上記グラファイト電極の接着剤が塗布された部分に重ねて張り合わせた。次に、それを加熱真空乾燥(25℃で0.5時間、さらに60℃で4時間)して接着試験体を作製した。
リチウム塩(LiPF6)濃度が1Mであるエチレンカーボネ−ト/ジエチレンカーボネート=3/7(容量比)混合溶媒を調製し、上記接着試験体を該混合溶媒中20ml中に浸漬させ、接着剤ポリマーの耐溶解性を観察した。試験条件は室温放置×12h、60℃×2h、80℃×2h、100℃×2hである。
測定の結果、該混合溶媒中で接着剤ポリマーがポリエチレン製多孔質フィルムを良好に接着している場合を◎、一部はく離している場合を○、50%程度はく離した場合を△、完全にポリエチレン製多孔質フィルム場合をはく離した場合を×で評価した。
【0440】
【表3】

【0441】
表3の結果から、直鎖型ポリマーの場合は耐溶剤性が乏しいが、ポリマー13及びポリマー14のいずれも、当該混合溶媒中でもポリエチレン多孔フィルムをはがすことなく保持し、良好な耐溶剤性を示すことがわかった。
また、多分岐ポリマーであるポリマー13、ポリマー14においてはTDI架橋を行わなくても、ポリエチレン多孔フィルムをはがすことなく良好に接着・保持することがわかった。
【0442】
(実施例27)導電性試験
アルゴン雰囲気下において、接着剤(ポリマー13 LiPF6)、(ポリマー13 TDI(100%)LiPF6)、直鎖型ポリマー LiPF6)、(直鎖型ポリマー TDI(100%)LiPF6)、をポリテトラフルオロエチレン板上に塗布し、加熱真空乾燥(25℃で0.5時間、さらに65℃で4時間)して均一な導電率測定評価膜を得た(膜厚100μm)。得られた評価膜を白金板に挟み、周波数5〜10MHzのインピーダンスアナライザー(Solartron-1260型)を用いて複素インピーダンス解析によりイオン導電性を測定した。その結果を以下の図6に示す
【0443】
図6の結果から、ポリマー13は、直鎖型ポリマーと比較していずれの評価膜においても、良好なイオン導電性を示した。
【0444】
本発明の多分岐ポリマーは、狭分散で分子量が制御された多分岐のポリマーであり、熱的特性、機械的強度及びイオン導電性に優れた高分子固体電解質の製造原料、接着剤材料、電極の結着剤材料として有用である。また、本発明の多分岐ポリマーは、レジスト材料;電池、キャパシター、センサー、コンデンサー、EC素子、光電変換素子等の電気化学用材料;包接材料;電化製品、産業機器等の機能性材料;等として好適である。
【0445】
本発明の多分岐ポリマーの製造方法によれば、狭分散で、分子量が制御された多分岐のポリマーを簡便かつ効率よく製造することができる。本発明の製造方法は、本発明の多分岐ポリマーの製造方法として好適である。
【0446】
本発明の高分子固体電解質は、本発明の多分岐ポリマーと電解質塩を含有するものであり、実用レベルの高いイオン伝導度を有する。
本発明の高分子固体電解質電池は、本発明の高分子固体電解質電池を備えるものであり、実用レベルの熱的特性、物理的特性及びイオン伝導度を有する。
また、接着剤、電極の結着剤材の電池形成用材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【化1】

(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマー、および電解質塩を含有することを特徴とする高分子固体電解質。
【請求項2】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、請求項1記載の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有し、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【化2】

〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする高分子固体電解質。
【請求項3】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【化3】

(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4b
は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有することを特徴とする接着剤。
【請求項4】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、請求項3記載の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーを含有し、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【化4】

〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする接着剤。
【請求項5】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、式(a1)
【化5】

(式中、R100、R200及びR300は、それぞれ独立して、水素原子又はC1〜10炭化水素基を表し、R100とR300は結合して環を形成してもよく、R4a、R4bは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R500は、水素原子、炭化水素基、アシル基又はシリル基を表し、sは2〜100のいずれかの整数を表し、式:−CH(R4b)−CH(R4a)−O−で表される基同士は、同一でも相異なっていてもよい。)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーであることを特徴とする電極作製用結着剤。
【請求項6】
3以上の分岐鎖を有するコア部と、請求項5記載の式(a1)で表される繰り返し単位(a)を有するアーム部とを有する多分岐ポリマーであって、
前記多分岐ポリマーが、式(I)
【化6】

〔式中、Aは3以上の分岐鎖を有する有機基を表し、
は、周期表第14〜16族のいずれかの原子を含む連結基を表し、
Yは、活性ハロゲン原子を有することができる構造の官能基を表し、
は、1から前記Aの有する分岐鎖の数のいずれか3以上の整数を表し、
は前記Aの有する分岐鎖の数を表し、
は0又は1以上の整数を表す。
が2以上のとき、式:−(X)n−Y−Qで表される基同士は同一でも相異なっていてもよく、
が2以上のとき、X同士は同一でも相異なっていてもよく、
(m−m)が2以上のとき、R同士は同一でも相異なっていてもよい。
Qは、重合性不飽和結合により誘導される繰り返し単位を有するアーム部を表し、複数のQ同士は同一でも相異なっていてもよい。
は、重合反応に関与しない有機基を表す。〕
で表される構造を有することを特徴とする電極作製用結着剤。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−18652(P2011−18652A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181985(P2010−181985)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【分割の表示】特願2006−531747(P2006−531747)の分割
【原出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】