説明

高分子安定化強誘電性液晶組成物及び液晶表示素子

【課題】 中間調の表示を可能とする高分子安定化強誘電性液晶表示素子において、TFT(薄膜トランジスター)駆動が可能レベルに駆動電圧を低減することが可能な高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供し、該高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いてTFT駆動による安定した表示を得ることが可能な高分子安定化強誘電性液晶表示素子を提供する。
【解決手段】 特定の重合性化合物及び一般式(II-a)
【化1】


で表される液晶性化合物を含有する高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供する。本願発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物を構成部材とする高分子安定化強誘電性液晶表示素子は駆動電圧が低く、TFT駆動による安定した表示を得ることができ、強誘電性液晶単体の表示素子では不可能な中間調の表示を可能にして、熱的及び力学的安定性に優れる特徴を有する。更には、プラスチック液晶セル等の構成部材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブ素子にて駆動可能な高分子安定化液晶表示素子に有用な高分子安定化強誘電性液晶組成物、及び当該組成物を用いた高分子安定化液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子を用いて液晶配向を安定化する技術としては、ねじれネマチック液晶に光硬化性モノマーを添加し光照射することで配向の高分子安定化を図る技術が開示されている(非特許文献1参照)。当該引用文献記載のネマチック液晶は、高分子安定化される前のねじれ構造を、光硬化後も維持しており、光硬化性モノマーとして、液晶骨格を有する液晶性モノマーを用いることで、表示用液晶材料の液晶性・配向性を失わないようにしている。
当該引用文献においては、光硬化性モノマーをねじれネマチック液晶ホスト中に数%の濃度で添加した後、電圧無印加の状態で光照射して作製した高分子安定型液晶素子の例を示している。さらに実施例において液晶性モノマーを2%、3%、4%、5%を変えた時の電圧−誘電率特性が示されている。この結果によると、液晶性モノマーの添加量が増加すると飽和する誘電率が下がり飽和させるためには更に高い電圧を印加させる必要があり駆動電圧が高くなり、これに応じて素子の駆動電圧も増加する。この点が高分子安定化液晶素子を実用化させる上で課題になっている。
また、液晶素子にスメクチック液晶を用いる場合、ネマチック相とは根本的に異なった挙動を示す。すなわち、スメクチック相を液晶表示素子として応用する場合、スメクチック相が層(レイヤー)構造を有し、液晶分子の長軸(分子の向き)が層構造ができている方向から傾く現象を利用する。液晶分子が層法線方向から傾く角度を、傾き角(チルト角)と呼び、スメクチック液晶を液晶素子として用いる場合に特徴的な物性となり、液晶素子として適したチルト角を得ることが望ましいが、前記引用文献には、このチルト角に与える影響についての開示はない。
【0003】
一方、高分子安定化ねじれネマチック液晶をTFT液晶表示素子に適用した例として、TFT液晶表示素子において光硬化性液晶性モノマーを少量添加して重合させることにより、形成された高分子の作用で配向を安定化する技術が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、当該引用文献においては、立下り時の液晶の応答速度の改善はされているものの、前述の駆動電圧の問題については解決されておらず、また、光硬化性液晶モノマーの添加が前述のチルト角に与える影響についての開示もない。
【0004】
高分子安定化液晶表示素子においてねじれネマチック液晶表示モード以外には、OCB(Optically compensated birefringence)モードへ応用した技術が提案されている(非特許文献2参照)。当該引用文献には、液晶分子を光反応性モノマー中に分散させ、外部電界印加により所望のベンド配列構造を得たのち、光照射により前記ベンド配列を固定化する技術が開示されている。OCBモードは表示装置を立ち上げる際に高い電圧を印加して初期状態で液晶分子がスプレイ配列しているが、これをベンド配列へ変える配向転移操作が必要になるで、予め、ベンド配向を高分子により固定化することにより、このベンド配列への配向転移操作が不要な表示立ち上げと同時にOCBモードによる表示が可能にしてOCBモードの欠点を解消している。
また、1枚の基板上に液晶分子を高分子液晶マトリックス中に固定化してハイブリッド配向を固定化させ、該基板上のホモジニアス配向部分が接するよう二枚の基板を張り合わせてOCBモードのベント配向を作り液晶表示素子に用いる技術が開示されている(特許文献2参照)。この場合は、電圧を印加せずベント配向を作ることが特徴である。
しかしながら、これらの引用文献開示の発明においても前述の駆動電圧の問題については解決されておらず、また、光硬化性液晶モノマーの添加が前述のチルト角に与える影響についての開示もない。
【0005】
高分子安定強誘電性液晶(高分子安定FLC)に関しては、FLC材料と共にモノマーを使用し、電界を印加し一方の方向に液晶分子を揃えながら紫外線を照射することにより高分子安定化を図る技術が提案されている(非特許文献3及び4参照)。
又、強誘電性液晶と単官能液晶性(メタ)アクリレートモノマーを含有する液晶組成物を液晶セル中に注入した後、該組成物が所定の液晶相を示す温度において紫外線を照射し、単官能液晶性(メタ)アクリレートモノマーを高分子化させることによって得られる高分子安定化強誘電性液晶表示素子が開示されている(特許文献3、4及び5参照)。液晶分子の配向を高分子安定化することにより新規の機能を付与することができ、上述のOCBモード、及び強誘電性液晶に単官能液晶性(メタ)アクリレートを用いた素子は、良好なベント配向を得たり、良好な中間調表示が可能であるという特徴を有するものの、単官能液晶性(メタ)アクリレートモノマーの重合により得られた高分子の耐熱性が良好でなく、結果として高温での信頼性が良好でないという問題があった。さらに、強誘電性液晶に単官能液晶性(メタ)アクリレートを用いた素子では駆動電圧が高いという問題点があった。また、スメクチックA相で紫外線露光して高分子安定化を行いスメクチックC相へ除冷して相転移させると印加電圧に比例した中間調表示が可能になりうることが開示されているが駆動電圧が高いという問題があった。(特許文献3参照)。このように、これらの引用文献開示の発明においても前述の駆動電圧の問題については解決されておらず、また、光硬化性液晶モノマーの添加が前述のチルト角に与える影響についての開示もなかった。また、液晶が60〜95重量%で残りが網目状の高分子であるため高分子分散型液晶に見られる光散乱が起こる。この散乱が偏光を用いた表示素子のコントラストを低くする原因になる。そのため、コントラスト向上に他の手段が必要となる欠点があった。
更に、単官能液晶性(メタ)アクリレートに比べて多官能液晶性(メタ)アクリレートは、メソゲン基の熱の揺らぎが抑えられて高分子安定化の信頼性は高くなるものの低分子液晶との相互作用が高くなり駆動電圧が高くなる問題も有していた。
【0006】
単官能液晶性(メタ)アクリレートモノマーより耐熱性に優れた高分子を与える多官能液晶性モノマーを用いた高分子安定化強誘電性液晶表示素子が示されている(特許文献6参照)。しかしながら、多官能液晶性モノマーは、液晶性を示す温度が80℃以上と高いものが多く、高分子安定化液晶素子作成の紫外線を照射する前段階において温度を高くする必要性が生じ、その結果、望ましくない熱重合が誘起され、液晶配向の均一性が劣化してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2005−10202号公報
【特許文献2】特開2003−248226号公報
【特許文献3】特開平9−211462号公報
【特許文献4】特開平9−211463号公報
【特許文献5】特開平11−21554号公報
【特許文献6】特開平6−194635号公報
【特許文献7】特許3771619号
【非特許文献1】日本学術振興会 情報科学用有機材料第142委員会 A部会(液晶材料)第91回研究会資料(28頁から30頁)
【非特許文献2】電子情報通信学会技術研究報告、Vol.95、(EID95−17)、pp.43−48、1995
【非特許文献3】フルエ(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn. J. Appl. Phys.),36,L1517 (1997)
【非特許文献4】フルエ(H.Furue),ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn. J. Appl. Phys.),37,3417 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、中間調の表示を可能とする高分子安定化強誘電性液晶表示素子において、TFT(薄膜トランジスター)駆動が可能レベルに駆動電圧を低減することが可能な高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供し、該高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いてTFT駆動による安定した表示が得られ、表示に適した大きさのチルト角を得ることが可能な高分子安定化強誘電性液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
高分子安定化強誘電性液晶組成物において、液晶分子に高分子安定化の効果を強く与えるためには、高分子前駆体としてメソゲン構造を有する液晶性アクリレートのような液晶性高分前駆体を用いればよい。これは、液晶性アクリレートがメソゲン構造を持つために、周囲の低分子液晶のメソゲン構造と強いアンカリング力を持つことができ、そのため、高分子安定化した状態の熱的、力学的な安定性が向上するわけである。しかしながら、一方で、アンカリング力が強くなるために駆動電圧が増大しアモルファスシリコン−TFTやポリシリコンTFTで駆動が困難となる問題があった。また、アンカリング力が強くなることにより、スメクチック層内で液晶分子が傾きにくくなり、チルト角が小さくなるという欠点があった。
高分子安定化状態の安定性を向上するためには、二官能液晶性アクリレート等を用いて架橋高分子を用いればよい。二官能液晶性アクリレートの使用により、メソゲン基が高分子主鎖に配置され該メソゲン基の両端が架橋により固定化されているため熱の揺らぎの影響が少なく低分子液晶の配向安定化の信頼性が向上する。しかし、その反面、熱の揺らぎが小さくなるため低分子液晶との相互作用が増大する、その結果低分子液晶の配向を固定化した際に起こる低分子液晶/高分子界面でのアンカリング力がさらに高くなり、益々駆動電圧が増大するという弊害が生じる。さらに、スメクチック層内で液晶分子が益々傾きにくくなり、チルト角が小さくなるという欠点があった。
高分子安定化の信頼性を上げるのには、高分子鎖の架橋密度を高くしてガラス転移温度等を高くする方法があるが、同時に低分子液晶と該高分子とのアンカーリング力が増加して駆動電圧増加、及び、チルト角の減少を引き起こす。また、網目状高分子鎖の体積割合を増加すると該高分子鎖の熱的、機械的安定性は向上するが該高分子鎖の屈折率が表示素子中に低分子液晶の屈折率分布へ影響を強く及ぼすようになり低分子液晶との屈折率差から光散乱を起こして表示のコントラストを低下させていた。
【0009】
このように液晶性高分子前駆体を用いると、高分子安定化状態は安定化するが、同時にアンカーリング力が増大し、好ましくない駆動電圧の増加や、チルト角の減少を引き起こす。しかしながら、本願発明者らは、種々の重合性液晶化合物と液晶化合物の組成を検討した結果、液晶性高分子前駆体と非液晶性高分子前駆体の両方を同時に使用することを検討することにより、駆動電圧の増加、チルト角の減少を防ぎ、更には、駆動電圧の温度依存性を抑制することを見出し、本願発明の完成に至った。
本願は、一般式(I−a)
【0010】
【化1】

(式(I−a)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
kは1から40を表し、
、B及びBは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は一般式(I−b)
【0011】
【化2】

(式(I−b)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB、B及びBのうち前記一般式(I−b)で表される基となるものの個数は0〜3個である。)
で表される重合性化合物であって、該重合性化合物の重合物のガラス転移温度が−100℃から25℃である重合性化合物(I)と、一般式(II)
【0012】
【化3】

(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基あるいはフッ素原子を示し、但し、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、さらに、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、X11〜X17は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基、あるいはOCF基を示し、L11、L12、L13、L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−であり、a、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を示し、但し、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0である。)
で表される液晶性化合物(II)と、一般式(III−a)
【0013】
【化4】

(式(III−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
一般式(III−b)
【0014】
【化5】

(式(III−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Cは1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びCはそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びZそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表すが、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2及び3を表す。)
及び一般式(III−c)
【0015】
【化6】

(式(III−c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、
6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【0016】
【化7】

のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、
は0又は1の整数を表し、
及びYはそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表し、
は単結合、−COO−、又は−OCO−を表し、
は炭素原子数1から18の炭化水素基を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(III)と、を含有することを特徴とする高分子安定化強誘電性液晶組成物を提供する。また、本願はこの高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物を構成部材とする高分子安定化強誘電性液晶表示素子は駆動電圧が低く、TFT駆動による安定した表示を得ることができ、強誘電性液晶単体の表示素子では不可能な中間調の表示を可能にして、熱的及び力学的安定性に優れる特徴を有する。更には、プラスチック液晶セル等の構成部材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の一例について説明する。本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、その中に含まれるラジカル重合性化合物が熱、又は紫外線等の活性エネルギー線により重合し、それに伴い液晶組成物と相分離、又は液晶組成物中に分散した状態を引き起こし、透明性高分子物質と液晶組成物からなる高分子安定化液晶表示素子を得るのに使用される。この素子は、一対の電極層を有する基板間に配向制御膜と液晶層とを有する液晶素子において、液晶層が少なくとも液晶性高分子前駆体(液晶性モノマー)と非液晶性高分子前駆体(非液晶性モノマー)を含有する光硬化性組成物の光硬化物及び強誘電性液晶材料を含有しており、且つ一対の電極層間に電圧を印加していない状態における液晶性モノマーのメソゲン基の配向方向と、又は、非液晶性モノマーの高分子主鎖の長軸方向と、強誘電性液晶材料の配向方向が配向制御膜の配向方向に揃い一軸配向になるように高分子安定化させた液晶表示素子であって、液晶層中に液晶性モノマーと非液晶性モノマーを含有する光硬化性組成物の光硬化物を分散させて含有させ、液晶性骨格を有する高分子鎖による強誘電性液晶材料の配向安定化効果により、電圧を印加していない状態では、液晶性モノマーの液晶骨格の長軸や非液晶性モノマーの長軸方向と強誘電性液晶材料の配向方向、あるいは強誘電性液晶分子の平均化された配向方向のなす方向が一様な方向の配向状態を実現させたものであり、電圧を印加すると強誘電性液晶の自発分極により強誘電性液晶材料の配向方向が液晶性高分子前駆体の液晶骨格の配向方向ではなくなり、電圧の変化によって 強誘電性液晶材料の配向方向、あるいは平均化された配向方向と液晶性モノマーの液晶骨格の配向方向のなす角度が連続的に変化する性質が付与されたものである。例えば、二枚の偏光板の間に該素子を配置して、印加する電圧を変化させることにより透過光量を連続的に制御することができ、強誘電性液晶単体の素子で行われる面積階調等の特別な手段を用いることなく印加電圧に比例した中間調の表示を可能にしたものである。上述の一軸配向は、一軸配向が得られるようにラビング配向処理したポリイミド等の高分子配向膜を用いる方法、無機配向膜を用いる方法、光配向膜による方法、電界や磁場等の外場により方法、配向膜と前記外場を併用した方法等によりメソゲン基や高分子主鎖の長軸を揃えて配向させた状態に紫外線を露光して高分子安定化させることにより得られる。
このようにして形成された高分子安定化液晶表示素子は、前記組成物に添加されたモノマーの含有量に比例して駆動電圧、及び光散乱が上昇する。該モノマーの含有量が微量である場合、駆動電圧の上昇度合いは低減されるが、熱的や機械的安定性に乏しい。信頼性を高くするためには、モノマーの含有量を増やす必要があるが、この時に駆動電圧の増加や液晶配向性の低下、及び散乱性の発現が問題になる。駆動電圧の増加は、例えば高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧に関する記述として、特開平6−222320号公報において次式の関係が示されている。高分子安定化液晶素子の駆動電圧に対する考え方は、高分子分散型液晶表示素子と同様で、次の通りになる。
【0019】
【数1】

【0020】
(Vthはしきい値電圧を表し、Kii及びKiiは弾性定数を表し、iは1、2又は3を表し、Δεは誘電率異方性を表し、<r>は透明性高分子物質界面の平均空隙間隔を表し、Aは液晶組成物に対する透明性高分子物質のアンカリングエネルギーを表し、dは透明性電極を有する基板間の距離を表わす。)
【0021】
これによると、高分子安定化液晶表示素子の駆動電圧は、透明性高分子物質界面の平均空隙間隔、基板間の距離、液晶組成物の弾性定数・誘電率異方性、及び液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーによって決定される。このうち、一般の液晶表示素子では駆動電圧はセル厚、該誘電率異方性、及び該弾性定数で決まるが、高分子分散液晶と同様に高分子安定化液晶表示素子において特有の要因がある。それは、液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーである。そのため、高分子安定化液晶表示素子においてもポリマーと液晶との界面の面積が増加するとともに系のアンカリングエネルギーが増して駆動電圧が上がる。言い換えると、本発明の組成物中に液晶性モノマーの含有量が増加すると駆動電圧が上がることを意味している。駆動電圧の上昇を低減し、低い駆動電圧を維持させるためには、高分子安定化液晶組成物を構成する高分子のアンカリングエネルギーを低くすれば良いことになる。例えば、液晶性モノマーの効果は、低分子液晶の一軸配向を高分子安定化させることにある。一方、非液晶性モノマーは、該非液晶性高分子が低分子液晶に対してアンカーリング力が弱いものを用いることにより液晶性高分子による駆動電圧増加を低減させる役割を果たす。前記組成物に用いる液晶性モノマーと非液晶性モノマーを併用して組成を調整することで高分子安定化の信頼性を維持したまま課題である駆動電圧を下げることができる。非液晶性モノマーの該エネルギーを低くするには、アルキル側鎖を有する二官能モノマーを用いれば良い。特に、アルキル側鎖の炭素原子数が5から15が良く、更に、該炭素原子数が8から13がより好ましい。アルキル側鎖が短い場合は、アンカリングエネルギーが高くなり、長すぎると、側鎖の影響が強くなりアンカリングエネルギーが高くなる。又、低分子液晶に類似したベンゼン環等を有するメソゲン基を側鎖にすると低分子液晶との親和性が高くなりアンカリングエネルギーが増加して好ましくない。更に、アルキル側鎖間の距離も重要で、炭素原子数の距離に換算して6〜18が良い。使用する液晶組成に依存するがアルキル側鎖間が狭いと低分子液晶が高分子界面で垂直配向してしまい好ましくない。
【0022】
アンカリングエネルギーは、側鎖が低分子液晶に及ぼす分子間相互作用と、主鎖が低分子液晶に及ぼす分子間相互作用とのバランスで決まり、両者の力が均等になるときにアンカリングエネルギーが最小になる。更に、高分子の架橋間距離は、高分子主鎖の熱運動性に影響を及ぼし、架橋間距離が短く熱運動性が低いと低分子液晶に対する分子相互作用が強く働きアンカリングエネルギーが高まる。架橋間距離が長くなると高分子主鎖の熱運動性が増して主鎖の熱による揺らぎが大きくなり分子間相互作用の力より揺らぎの力が大きくなると分子間相互作用を打ち消すように作用するためアンカリングエネルギーが小さくなる。しかし、架橋間距離が長くなるとモノマーの重合速度が遅くなり、液晶との相溶性が下がり好ましくなくなる。高分子主鎖の熱運動性を表す指標としては高分子ガラス転移温度が一般に用いられる。
【0023】
本発明では、アンカリングを低くする目的で該ガラス転移温度が室温以下になるモノマーを用いることが好ましく、更には、ガラス転移温度が0〜−100℃であることがより好ましい。他に、ガラス転移温度を低くする意味では、機械的安定性を向上させるためにガラス転移温度を低くすることが好ましい。ガラス転移温度が室温以上であると素子外部からの変形などにより高分子で液晶の配向を安定化させる高分子網目構造が変形したり破損したりして高分子配向安定化の作用が落ちてしまう。ガラス転移温度が低いと該網目構造が変形しても網目の弾力性で元の状態に戻り固定化された配向が保持される。即ち、本発明に使用する液晶組成とモノマーの主鎖長と側鎖長を調整して、かつガラス転移温度が室温以下であるモノマーを使用することで駆動電圧が低く、信頼性の高い高分子安定化液晶素子が得られる。しかし、高分子安定化液晶では液晶表示素子作製時の初期配向を安定化させることも重要な課題である。
【0024】
光散乱は、該平均空隙間隔が可視光の波長領域の範囲に入ると見られるようになり約500nm付近から1500nm付近で散乱が最も強くなる。高分子安定化液晶の場合は、網目状高分子の網目の大きさを上述の範囲から避けるように液晶中に形成させることが重要になる。500nm以下にするには、スピノーダル分解による相分離過程を利用する方法、UV重合速度を速くして作製する方法(UV重合プロセスによる方法や高分子前駆体組成の調整による方法)、低分子液晶と相溶した状態で相分離が殆ど起こらせないで重合させる方法等が挙げられ、これらの手法を有効に用いて光散乱が起こらない微細な網目状高分子を形成させることが好ましい。モノマーが、低分子液晶に相溶している場合は低分子液晶中に分散した状態で網目状高分子を形成させることが可能で分子レベルの微細な構造を得られることができより好ましい。しかしながら、本発明のモノマーを液晶相中で重合させると重合ミクロ相分離が極小的に起こる場合は、配向のオーダーは高くはないが液晶分子ダイレクターに沿うように網目状の高分子が形成されることが電子顕微鏡等で観察される。これは、モノマーが液晶に接すると液晶分子ダイレクター方向へ該モノマー分子長軸が揃う傾向があり、該モノマーの高分子化により液晶の配向が固定化される。しかし、該モノマーの濃度が高くなると重合ミクロ相分離で起こるスピノダル分解やバイノーダル分解による相分離構造が液晶の配向を無視して形成されるため目的の液晶の配向を固定化させることはできなくなる。上述の方法は低分子液晶の配向を乱す恐れがある場合があり、この場合は、所望の安定化させる配向が得られるように電界、配向膜の配向規制力、磁場外場などを活用して目的の高分子安定化液晶素子が得られるように前記外場を調整して作製することもできる。更には、液晶性モノマーと非液晶性モノマーによる共重合体でメソゲン基の自己組織化の性質や水素結合基等を基にした自己組織化を応用して規則性のある周期構造を形成させても良い。所望の特性を得るのに必要であれば微粒子状の高分子を低分子液晶中に分散させた構造であっても良い。
このように、液晶性モノマーと非液晶性モノマーで構成される高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いることで駆動電圧が低く、中間調表示が可能で、且つ高分子安定化の信頼性が高く、更に、光散乱が無く、チルト角が大きく高コントラストの液晶表示素子を得ることができる。液晶が配向膜等で配向させた状態を配向欠陥無く固定化させるためには、少なくとも、ネマチック相から除冷してスメチック相へ相転移させることが好ましく、用いる液晶セルの基板面が平坦であることがより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相等の液晶相中で該モノマーを網目状、又は分散した状態に重合させる必要がある。更に、該相分離構造形成を避けるためには、モノマーの含有量を少なくして、液晶が配向している状態で液晶分子間に網目状高分子が形成できるよう該高分子前駆体含有量や該前駆体の組成を調整することが好ましく、さらに、光重合の場合は、UV露光時間、UV露光強度、及び温度を調整して網目状の高分子を形成させて液晶配向欠陥が無いようにすることが好ましい。また、組成物中のモノマーを重合させる際に、所望の液晶配向を得るためには、垂直配向、パラレル配向やアンチパラレル配向のラビング配向処理や光配向処理を施した配向膜、あるいは無機物の形状効果を利用した配向膜を有する液晶セルを用いたり、上下基板が垂直配向膜、又は垂直配向膜と平行配向との組み合わせた液晶セル等を用いたりすることができる。さらには、光、熱、電圧、磁場等の外場を印加して得られる捩れ配向、ベント配向やスプレイ配向、平行配向等や、配向膜単独だけでは得ることが難しい液晶配向状態を作り、該モノマーの高分子化により、それらの配向状態を固定化させて目的の高分子安定化液晶表示素子を得ることができる。例えば、スメクチック相では外場によりダイレクターを一定方向へ揃えた配向状態を高分子安定化させたり、スイッチングさせて過度的な配向状態を高分子化により固定化させ所望の高分子安定化液晶表示素子を得ることもできる。
【0025】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、V字応答に基づく液晶表示素子、Half-V応答に基づく液晶表示素子、分極遮断効果に基づく液晶表示素子等に好適に用いることができる。
【0026】
本発明に用いるモノマーは、上述のようなモノマーとしてより改善効果が大きい化合物の探索を行った結果、到達したものである。
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、一般式(I−a)で表される非液晶性モノマー(I)
と、一般式(II)で表される液晶化合物(II)と、一般式(III−a)、(III−b)及び(III−c)からなる群より選ばれる少なくとも1種の液晶性モノマー(III)をそれぞれ少なくとも一種含有するものである。
【0027】
非液晶性モノマー(I)は、一般式(I−a)で表されるものの中で複数、主鎖長やアルキル側鎖長の異なるものを含有させても良い。更に、必要に応じて、重合性液晶化合物を併用しても良い。重合性液晶化合物を用いると低分子液晶の配向性を高めることができるが、低分子液晶との親和性が高く駆動電圧が増加し易くなるため5%以下が好ましい。液晶性モノマー(III)の併用により配向性を高めて、かつ一般式(I−a)で表される非液晶性モノマー(I)による低アンカリングエネルギーの作用と低ガラス転移温度の効果で駆動電圧が低くて機械的強度が高い高分子安定化液晶表示素子を得ることができる。
【0028】
液晶性化合物(II)は、一般式(II)で表される化合物の中で複数、アルキル鎖長、アルキル鎖の構造、結合部分の構造、環構造、環数が異なるものを含有させても良い。融点を低下させ広い温度範囲で強誘電性液晶相を示すためには、異なる化合物を2種以上混合することが好ましい。
【0029】
更に、強誘電性液晶組成物の成分として、必要に応じて一般式(II)で示される液晶性化合物以外の液晶性化合物を併用することができる。併用しうる化合物に特に限定はないが、強誘電性液晶相を安定化するためには、スメクチックC相、あるいはキラルスメクチックC相を示す液晶性化合物を用いることが好ましい。(本明細書中では、液晶相の名称を記載したときには特に断わりのない限り対応するキラルな液晶相も含むものとする。)また、強誘電性液晶相の相系列、あるいは各液晶相の温度範囲を調節するためには適宜液晶性化合物を選ぶのが良い。具体的には、ネマチック相を発現させたり、ネマチック相の温度範囲を広げたい場合には、ネマチック相を示す化合物を併用することが好ましく、また、スメクチックA相を発現させたり、スメクチックA相の温度範囲を広げたい場合には、スメクチックA相を示す化合物を併用することが好ましく、あるいは、Half-V用材料のように、スメクチックA相が不要な場合には、スメクチックA相を示さない化合物を併用することが好ましい。
【0030】
コントラストの良い表示素子を得るためには、表示方式にあわせて傾き角を調整する必要がある。傾き角を大きくするためには、スメクチックC相の上限温度を高くしたり、スメクチックA相の温度幅を狭くするように、化合物を選ぶことが好ましく、傾き角を小さくするためには、スメクチックC相の上限温度を低くしたり、スメクチックA相の温度範囲を広くするような化合物を使用することが好ましい。
【0031】
スメクチックの層構造を安定化するためには、一般式(II)の化合物に、フェニルベンゾエート誘導体を併用するのが好ましい。これらフェニルベンゾエート誘導体あるいはビフェニルベンゾエート誘導体は組成物の粘度を上昇させるので、層構造は安定化することができ、配向乱れの抑制のために好ましい。またフェニルベンゾエート誘導体との混合により融点が低下する効果も得られ好ましい。しかし、フェニルベンゾエート誘導体の使用により粘度が上昇し応答速度も遅くなるので、所望の応答速度が得られる範囲内で使用するのがよい。
【0032】
融点を低下し低温でも安定な強誘電性液晶相を得るためには、一般式(II)の化合物と、化合物の末端に環構造を有する化合物、あるいは、環構造としてピリジン環、ピラジン環又はピリダジン環を有する化合物、あるいはその両構造を有する化合物を併用することが好ましい。環構造としてピリジン環、ピラジン環又はピリダジン環をもつ化合物は融点の低下には好ましいが、その構造が持つ極性の性質のため、素子として使用した場合のスイッチング挙動に悪影響を及ぼさないような使用量を選ぶことが好ましい。これら化合物の中では融点の低下の効果としてはピリジン環を持つ化合物が特にこのましい。これら化合物の環構造にフッ素が導入された化合物を併用すると融点の低下には好ましい。また、これら化合物のアルキル鎖に分岐構造が導入された化合物を併用すると融点の低下には好ましい。しかし、同時に液晶相の上限温度も変化するので、所望のスメクチックC相の温度範囲となるようにその使用量を調整するのがよい。
【0033】
分子末端に環構造を有する化合物としては、特に一般式(IV−a)で示される化合物が好ましい。液晶性化合物(II)に一般式(IV−a)で表される化合物(IV−a)を1種併用しただけでも効果は見られるが、化合物(IV−a)の中で、アルキル鎖長、アルキル鎖の構造、結合部分の構造、環構造、環数が異なるものを複数含有させても良い。
【0034】
強誘電性液晶組成物の強誘電性を発現するためのキラル成分としては、公知慣用のキラル化合物を用いることができる。キラル化合物としては不整原子を持つ化合物、あるいは軸不整を持つ化合物を用いることが好ましく、さらに、不整炭素を持つ化合物、あるいは炭素−炭素結合を軸とした不整を持つ化合物を用いることが好ましい。不整炭素は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていても良い。不整炭素としては、炭素上にフッ素原子、メチル基、CF基が導入されているのもがさらに好ましく、また特に、一般式(V−a)で示されるキラル化合物(V−a)を用いることがなお好ましい。キラル化合物は(V−a)で示される構造の化合物を1種用いても、あるいは、キラル構造、アルキル鎖長、アルキル鎖の構造、結合部分の構造、環構造、環数が異なるものを複数用いても良い。キラルな効果に基づき発生する液晶相での螺旋構造を抑制するためには、発生させるねじれの向きが異なる複数のキラル化合物を組合わせて用いることが好ましい。このとき、自発分極の向きは揃うようにキラル化合物の組み合わせを選ぶか、あるいは、十分大きな自発分極を発生させる化合物とねじれ構造は誘起するが自発分極値の小さな化合物の組み合わせを選ぶと自発分極の値はキャンセルされないので好ましい。キラルな効果に基づき液晶相でおこる螺旋構造の発生を抑制するために発生させるねじれの向きが異なる複数のキラル構造を同一の化合物の中に導入することも好ましく行われる。このとき、自発分極の向きは揃うようにキラル構造の組み合わせを選ぶか、あるいは、十分大きな自発分極を発生させる構造とねじれ構造は誘起するが自発分極値の小さな構造の組み合わせを選ぶと自発分極の値はキャンセルされないので好ましい。
【0035】
液晶セルの2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0036】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法、又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属比抵抗素子等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0037】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られるセルの厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。セル厚は、1から10μmが更に好ましく、1から3μmがなお好ましい。偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0038】
2枚の基板間に高分子安定化強誘電性液晶組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子安定化強誘電性液晶組成物は、各種液晶化合物と本発明のモノマーが相溶していれば良く、均一なアイソトロピック状態か、又は(キラル)ネマチック相であることが好ましい。スメクチック相では、素子作製時の取り扱い方が難しくなる。
【0039】
ラジカル重合性化合物を重合させる方法としては、紫外線照射が好適である。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、高分子安定化強誘電性液晶組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましく、350nm以下の紫外線をカットして使用することがより好ましい。
【0040】
照射する紫外線の強度は、目的とする調光層を得るため適宜調整することができるが、使用するモノマーの反応性に依存するが10から10000mJ/cmが好ましく、50から5000mJ/cmがより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、5から600秒が好ましい。
【0041】
また、紫外線照射の時の温度は、所望の液晶初期配向を調光層の特性を決めて安定化させるのに重要な要素となる。等方相状態を固定化させる場合は、高分子安定化液晶表示素子用組成物のアイソトロピック−ネマチック転移点よりわずかに高い温度が好ましく、具体的には転移点+0.1から10℃が好ましく、転移点+0.1℃から3℃がより好ましい。また、ネマチック相やスメクチック相、コレステリック相を示す温度にして素子を作製することができる。
【0042】
高分子安定化させる液晶の配向状態としては、スメクチック相やネマチック相で見られるベンド配向、捩れ配向、及びスプレイ配向等やそれらを複数組み合わせたマルチドメイン、及び一軸配向を持つモノドメインを複数方向に配置したマルチドメイン等、必要な配向状態が挙げられる。これらの配向状態は、温度を変えたり、外部電場を印加して電圧を変化させたり、基板界面に存在するポリイミド配向膜や光配向膜等の配向処理方向を一方向や複数方向に処理して液晶を配向させて、液晶の配向を様々な方法で目的の配向状態を作り、紫外線露光して高分子安定化させることが好ましい。
【0043】
本発明の高分子安定化液晶表示素子は、本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物を重合させ、液晶相中に高分子鎖を形成させることにより低分子液晶の配向状態を安定化したものである。このような高分子安定化液晶表示素子は、高分子安定化強誘電性液晶組成物に外部電場を加え、又は重合性液晶の配向を配向膜により制御することで、所望の配向状態を維持させながら紫外線露光して重合させることによって得ることができる。
【0044】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物に使用する化合物の具体的な一例を以下に示す。
【0045】
<重合性化合物(I)>
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物に用いられる重合性化合物(I)は、一般式(I−a)
で表される重合性化合物を用いる。
【0046】
なお、本願発明において、「アルキレン基」とは、特に断りのない場合、脂肪族直鎖炭化水素の両端の炭素原子から水素原子各1個を除いた二価の基「−(CH−」(ただしnは1以上の整数)を意味するものとし、その水素原子からハロゲン原子もしくはアルキル基への置換、又はメチレン基から酸素原子、−CO−、−COO−もしくは−OCO−への置換がある場合は、その旨を特に断るものとする。また、「アルキレン鎖長」とは、「アルキレン基」の一般式「−(CH−」におけるnをいうものとする。
一般式(I−a)で表される重合性化合物(I)の好ましい構造として、下記一般式(I−c)
【0047】
【化8】

【0048】
(式(I−c)中、A11及びA19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
14及びA17はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)で表される化合物、一般式(I−d)
【0049】
【化9】

【0050】
(式(I−d)中、A21及びA22はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、aは、6〜22の整数を表す。)で表される化合物、一般式(I−e)
【0051】
【化10】

【0052】
(式(I−e)中、A31及びA32はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、b及びcはそれぞれ独立して1〜10の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、
eは0〜6の整数を表す。)で表される化合物、及び一般式(I−f)
【0053】
【化11】

【0054】
(式(I−f)中、A41及びA42はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、m、n、p及びqはそれぞれ独立して1〜10の整数を表す。)で表される化合物からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、式(I−c)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0055】
一般式(I−c)で表される重合性化合物の好ましい構造として、A11及びA19はいずれも水素原子であることが好ましい。これらの置換基A11、A19がメチル基である化合物においても本願発明の効果は発現するが、水素原子である化合物は重合速度がより速くなる点で有利である。
【0056】
12及びA18はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基であることが好ましい。二つの重合性官能基間距離は、A12及びA18とA15とで独立的にそれぞれ炭素数の長さを変えて調整することができる。一般式(I−c)で表される化合物の特徴は、重合性官能基間の距離(架橋点間の距離)が長いことであるが、この距離があまりに長いと重合速度が極端に遅くなって相分離に悪い影響が出てくるため、重合性官能基間距離には上限がある。一方、A13及びA16の二つの側鎖間距離も主鎖の運動性に影響がある。すなわちA13及びA16の間の距離が短いと側鎖A13及びA16がお互いに干渉するようになり、運動性の低下をきたす。従って、一般式(I−c)で表される化合物において重合性官能基間距離はA12、A18、及びA15の和で決まるが、このうちA12とA18を長くするよりはA15を長くした方が好ましい。
【0057】
一方、側鎖であるA13、A14、A16、A17においては、これらの側鎖の長さが次のような態様を有することが好ましい。
【0058】
一般式(I−c)において、A13とA14は主鎖の同じ炭素原子に結合しているが、これらの長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA13と呼ぶものとする(A13の長さとA14の長さが等しい場合は、いずれが一方をA13とする)。同様に、A16の長さとA17の長さが異なるとき、長いほうの側鎖をA16と呼ぶものとする(A16の長さとA17の長さが等しい場合は、いずれが一方をA16とする)。
【0059】
このようなA13及びA16は、本願においてはそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数2から18の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立して炭素原子数3から15の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0060】
側鎖は主鎖に比べて運動性が高いので、これが存在することは低温での高分子鎖の運動性向上に寄与するが、前述したように二つの側鎖間で空間的な干渉が起こる状況では逆に運動性が低下する。このような側鎖間での空間的な干渉を防ぐためには側鎖間距離を長くすること、及び、側鎖長を必要な範囲内で短くすることが有効である。
【0061】
さらにA14及びA17については、本願においてはそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)とされているが、
好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から7のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
より好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、
さらに好ましくは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1から3のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)である。
【0062】
このA14及びA17についても、その長さが長すぎることは側鎖間の空間的な干渉を誘起するため好ましくない。この一方でA14及びA17が短い長さを持ったアルキル鎖である場合、高い運動性を持った側鎖になり得ること、及び隣接する主鎖同士の接近を阻害する働きを有することが考えられ、高分子主鎖間の干渉を防ぐ作用がり主鎖の運動性を高めているものと考えられアンカリングエネルギーが低温で増加して行くことを抑制することができ高分子安定化液晶表示素子の低温域における表示特性を改善する上で有効である。
【0063】
二つの側鎖間に位置するA15は、側鎖間距離を変える意味からも、架橋点間距離を広げてガラス転移温度を下げる意味からも、長い方が好ましい。しかしながらA15が長すぎる場合は一般式(I−c)で表される化合物の分子量が大きくなりすぎ液晶組成物との相溶性が低下してくること、及び重合速度が遅くなりすぎて相分離に悪影響が出ること等の理由から自ずとその長さには上限が設定される。
【0064】
よって、本願発明においてA15は、炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であることが好ましい。
【0065】
すなわち、本願発明においてA15のアルキレン鎖長は炭素原子数9から16であることが好ましい。A15は構造上の特徴として、アルキレン基中の水素原子が炭素原子数1から10のアルキル基で置換された構造を有する。アルキル基の置換数は1個以上5個以下であるが、1個から3個が好ましく、2個又は3個置換されていることがより好ましい。置換するアルキル基の炭素原子数は、1個から5個が好ましく、1個から3個がより好ましい。
【0066】
一般式(I−a)で表される化合物は、Tetrahedron Letters,Vol.30,pp4985、Tetrahedron Letters,Vol.23,No6,pp681−684、及び、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry,Vol.34,pp217−225等の公知の方法で合成することができる。
【0067】
例えば、一般式(I−c)において、A14及びA17が水素である化合物は、エポキシ基を複数有する化合物と、エポキシ基と反応し得る活性水素を有するアクリル酸やメタクリル酸等の重合性化合物とを反応させ、水酸基を有する重合性化合物を合成し、次に、飽和脂肪酸と反応させることにより得ることができる。
更に、複数のエポキシ基を有する化合物と飽和脂肪酸とを反応させ、水酸基を有する化合物を合成し、次に水酸基と反応し得る基を有するアクリル酸塩化物等の重合性化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0068】
またラジカル重合性化合物が、例えば、一般式(I−c)のA14及びA17がアルキル基であり、A12及びA18が炭素原子数1であるメチレン基である場合は、オキセタン基を複数有する化合物と、オキセタン基と反応し得る脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法や、オキセタン基を一つ有する化合物と、オキセタン基と反応し得る多価の脂肪酸塩化物や脂肪酸とを反応させ、更に、アクリル酸などの活性水素を有する重合性化合物とを反応させる方法等により得ることができる。
【0069】
また、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数3であるアルキレン基(プロピレン基;−CHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにフラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。更に、一般式(I−c)のA12及びA18が炭素原子数4であるアルキレン基(ブチレン基;−CHCHCHCH−)の場合は、オキセタン基の代わりにピラン基を複数有する化合物を用いることにより得ることができる。
このようにして得られた一般式(I−c)の化合物のうち、特に下記の構造を持つものが好ましい。
【0070】
【化12】

(式(I−c−1)中、A11及びA19はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
12及びA18はそれぞれメチレン基を表し、
13及びA16はそれぞれ独立して炭素原子数2から20の直鎖アルキル基(該直鎖アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表し、
14及びA17はそれぞれ独立して炭素原子数1から10のアルキル基を表し、
15は炭素原子数9から16のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する少なくとも1個以上5個以下のメチレン基において、該メチレン基中の水素原子の一つはそれぞれ独立に炭素原子数1から10の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されている。該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)を表す。)(1−c−1)で表される化合物のうち、A15に含まれる−COO−又は−OCO−基の数が2以下で、かつ、A13及びA16に含まれる−COO−又は−OCO−基の数がそれぞれ1以下であるものが特に好ましく、具体的には、下記(I-1)から(I-9)の化合物が挙げられる。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
<強誘電性液晶成分>
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物において、液晶性化合物(II)は、一般式(II)
で表される化合物を用いる 一般式(II)で表される化合物のうち、強誘電性の発現に必要な傾いたスメクティック相を得るため、あるいは、分子の傾き角を大きくするため、もしくは融点を低下させるためには分子の環の部分に置換基として、少なくとも1つ以上のフッ素原子、CF基、あるいはOCF基が導入されることが好ましい。置換基としては形状の小さなフッ素を導入することが、液晶相を安定に保ち、また、高速応答性も保持する面で好ましい。置換基の数は1〜4が好ましく、1〜3が更に好ましい。
粘度が低く高速応答するため、環をつなぐ連結器としては、単結合、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、あるいは、−C≡C−であることが好ましく、特に、単結合あるいは−CHO−であることが好ましい。分子の局部的な分極を抑制することが良いスイッチングを得るために必要な場合には単結合が好ましい。一方、層構造の安定性を保つための材料としては粘度が高い方が好ましく、その場合には、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−が好ましく用いられ、特に、−CO−O−、−O−CO−、が好ましく用いられる。
一方、融点を低下させる効果を大きくするという点では、側鎖にアルキルカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルオキシカルボニルオキシ基を用いることが好ましい。
TFT駆動に適していて、安定な強誘電性液晶相を示し、かつ、粘度が低く高速応答に適した化合物としては、下記一般式(II−b)
【0074】
【化15】

(式中、R211及びR212は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、R211とR212が同時にフッ素原子となることはなく、さらに、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−CH=CH−、あるいは−C≡C−で置き換えられてもよく、X211〜X217は各々独立に水素原子、フッ素原子を示し、L211、L212、L213、L214は各々独立に単結合、、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−であり、a、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を示し、但し、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0である。)の化合物が好ましい。

その中でも、R211及びR212は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、R211とR212が同時にフッ素原子となることはなく、さらに、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−で置き換えられてもよく、X211〜X217は各々独立に水素原子、フッ素原子を示し、但し、X211〜X217の少なくともひとつはフッ素原子であり、L211、L212、L213、L214は各々独立に単結合、、−CHO−、−OCH−、a、b、c、dは各々独立に0又は1の整数を示し、但し、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0である化合物がさらに好ましい。
一般式(II−b)で表される化合物のうち、特に好ましく用いられる化合物を次に示す。
【0075】
【化16】

【0076】
【化17】

【0077】
【化18】

(式中、Y、Zは各々独立に直鎖あるいは分岐の炭素原子数1〜18のアルキル基、ただし、アルキル基中のひとつの−CH−基が−O−に置き換えられていてもよい、を示し、U、Wは炭素原子数1〜18のアルキル基を示す。)
【0078】

、Z、U、Wの炭素原子数は6〜12であることがさらに好ましく、スメクチックC相の安定性を保ち上限温度を高く保つため、あるいは、粘度を低く従って応答速度を早くするためにはアルキル部分は直鎖であることが好ましく、一方、融点を低下させるためにはアルキル部分に分岐構造があるのが好ましい。分岐構造としては液晶性を過度に低下させないため、エチル基あるいはメチル基分岐が好ましく、メチル分岐が特に好ましい。
また、透過率の高い表示素子を得るためには、セル厚に依存して複屈折率(Δn)を調節しなければならない。表示素子の製造の点、及び、セル内での分子運動が容易なため高速応答が得られる点ではセル厚が厚い方が好ましいが、その場合にはΔnが小さい液晶を使用する必要がある。Δnが小さい液晶の具体例として、一般式(II)の環構造として、シクロヘキシル構造を持つものを挙げることができる。シクロヘキシル構造は、一つの分子中に一つ、あるいは2つ存在することが好ましい。あるいは、一般式(II)で表される化合物ににシクロヘキシル、あるいは、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル構造を持つ化合物を混合することもΔnを小さくするためには好ましい。この場合、添加する化合物としてシクロヘキシル構造は、一つの分子中に一つ、あるいは2つ存在する化合物が好ましく、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイルは一つの分子中に一つ存在する化合物が好ましい。1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル構造を持つ化合物は極性が高いのでTFT駆動に悪影響を与えない程度の量を使用することが望ましい。
【0079】
液晶相の安定性の面では、これら化合物の中でも、環に導入されたフッ素の総数が0〜3個のものが好ましく、特に0〜2個のものが好ましい。光学特性を向上するために負の誘電率の異方性が必要な場合はひとつのベンゼン環に隣り合う2つのフッ素原子が導入されている環構造(ジフロロフェニル構造)が分子構造の中にあることが好ましい。また、スメクティックC相の上限温度を高く保ったまま融点を低下する必要がある場合にもジフロロフェニル構造を持つ化合物が好ましい。また、融点を低く、また、粘度を低く従って応答速度を早く保つためには2環の化合物を使用することが好ましく、2環化合物の割合が強誘電性液晶組成物全体の20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。一方、スメクチックC相の安定性を保ち上限温度を高く保つためには3環の化合物を用いることが好ましい。また、融点を低下させるためには異なる構造を持つ化合物を選んで混合するのが良い。
また、更なる温度範囲の拡大、特に、低温領域の拡大のため、一般式(II)の化合物に加えて一般式(IV−a)の化合物を含有することも好ましい。
【0080】
【化19】

(R41は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ又はそれ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、A、B及びCは各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、1つ又は2つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1つ又は2つの水素原子がシアノ基あるいはメチル基あるいはその両方で置き換えられてもよいトランス−1,4−シクロへキシレン基、又は、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3−ジチアン−2,5−ジイル基、1,3−チアゾール−2,4−ジイル基、1,3−チアゾール−2,5−ジイル基、チオフェン−2,4−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピペラジン−1,4−ジイル基、ピペラジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基を表し、L41、及びL42は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、a、b、及びcは0又は1を表し、a、b及びcの合計は2又は3を表し、Xは一般式(IV−b)
【0081】
【化20】

(式中、R42は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。)
又は、一般式(IV−c)
【0082】
【化21】

(ただし、R43は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられてもよく、R44、R45及びR46は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つの隣接していない−CH−基は−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置き換えられてもよい。)を表す。)
一般式(IV−a)で表される化合物としては、下記に示す化合物、
【0083】
【化22】

(式中、Y及びZのいずれか一方は炭素数1〜22の直鎖あるいは分岐のアルキル鎖であって、1個の−CH−基が、−O−、シクロプロピレン基、−CH=CH−、−COO−又は−Si(CH−で置き換えられていてもよく、他の一方は、
【0084】
【化23】

(ここで、R420は、単結合、−COO−、−OCO−、−OCO−C2t+1−又は−O−C2t+1−(tは1から10の整数)である)、又は、下記の化合物
【0085】
【化24】

(式中、S及びTのいずれか一方は炭素数1〜22の直鎖あるいは分岐のアルキル鎖であって、1個の−CH−基が、−O−、シクロプロピレン基、−CH=CH−、−COO−又は−Si(CH−で置き換えられていてもよく、他の一方は下記一般式(IV−c)、
【0086】
【化25】

(ただし、R43は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられてもよく、R44、R45及びR46は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つの隣接していない−CH−基は−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置き換えられてもよい。)を表す。)が好ましく用いられる。
より具体的には次の構造を持つ化合物が好ましい。
【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

(式中、nとmは、それぞれ独立に5〜11を示す)
これら化合物の中で環A、環B、環Cがフェニル基あるいはシクロヘキシル基である場合には、化合物の持つ分極性が低いため、その含有量を増やしてもTFT駆動には影響を与えない面で好ましい。液晶の温度範囲を広げ、融点を低下させるという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きいため、TFT駆動に悪影響を与えない含有量以下で使用することが好ましい。
強誘電性液晶組成物の強誘電性を発現するためのキラル成分としては、公知慣用のキラル化合物を用いることができる。キラル化合物としては不斉原子を持つ化合物、あるいは軸不斉を持つ化合物を用いることが好ましく、さらに、不斉炭素を持つ化合物、あるいは炭素−炭素結合を軸とした不斉を持つ化合物を用いることが好ましい。不斉炭素は鎖状構造の一部に導入されていても、環状構造の一部に導入されていても良い。不斉炭素としては、炭素上にフッ素原子、メチル基、CF3基が導入されているのもが好ましく、また特に、一般式(V−a)、あるいは、一般式(V−e)で表される化合物の環構造としては具体的には次の構造を持つことが好ましい。
【0089】
【化28】

【0090】
【化29】

【0091】
【化30】

【0092】
【化31】

【0093】
【化32】

【0094】
【化33】

【0095】
【化34】

【0096】
【化35】

【0097】
【化36】

一般式(V−e)の不斉構造として具体的には下記構造のものが好ましい。
【0098】
【化37】

【0099】
【化38】

(式中、sは1〜4の整数を表し、rは1〜10の整数を表し、Qは炭素数3〜8のアルキル基を表し、Qは炭素数2〜10のアルキル基を表し、Qは炭素数1〜10のアルキル基を表し、Qは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
一般式(V−a)の化合物としては下記構造のものが特に好ましく用いられる。
【0100】
【化39】

【0101】
【化40】

【0102】
【化41】

(式中、Raaは炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基又はアルコキシ基、Rbbは炭素数1〜18の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、Maaは炭素数1〜3のメチレン基、Mbbは炭素数1〜2のメチレン基を表す。)
【0103】
これら光学活性化合物の中で環A、環B、環C、環A、環B、環Cがフェニル基あるいはシクロヘキシル基である場合には、化合物の持つ分極性が低いため、その含有量を増やしてもTFT駆動には影響を与えない面で最も好ましい。液晶の温度範囲を広げ、融点を低下させるという面では、ピリジン環、ピリミジン環等の複素環を有する化合物を使うことが良いが、その場合には化合物の持つ分極性が比較的大きいため、TFT駆動に悪影響を与えない含有量以下で使用することが好ましい。
【0104】
大きな自発分極を得るためにはs=1〜3のものが好ましく、s=1のものが特に好ましい。また、結晶化を抑制するためには、環の数が2環の化合物を用いることが好ましく、強誘電性相の安定性(上限温度)を高めるためには、結晶化を抑制する効果を保つ範囲で環の数が3環の化合物を用いると良い。良い配向を得るためにはキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くする、特に、ネマティック相とスメクティック相の転移の際のキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くすることが重要である。そのため、(V−a)の添加量が増え、ネマティック相とスメクティック相の転移の際のキラルネマティック相の螺旋ピッチが配向を乱す程度まで短くなった場合には、(V−a)の化合物により誘起されるキラルネマティック相の螺旋の掌性(センス)と逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(V−a)に加えて用いてキラルネマティック相の螺旋ピッチを長くすることが好ましい。このときのキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(V−a)と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(V−a)と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。
【0105】
また、強誘電性相において、表面安定化効果を用いて配向を行う場合には、強誘電性相における螺旋ピッチが長いことが好ましく、この場合には、(V−a)の化合物により誘起される強誘電性相の螺旋の掌性(センス)と逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(V−a)に加えて用いて強誘電性相の螺旋ピッチを長くすることが好ましい。このときのキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(V−a)と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(V−a)と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。表面安定化効果を用いず、単に、高分子安定化効果を用いる場合には、特に、このように逆のセンスを誘起する効果のあるキラル化合物を(V−a)に加える必要はない。比較的厚セル厚(3μm以上)で使用する場合で、高分子安定化プロセス、あるいは、高分子安定化された後の状態で、液晶分子の運動性を高め、高分子安定化プロセスを容易に行わせたり、あるいは、高分子安定化後のグレースケールの発現を容易にするために、短い螺旋ピッチが必要な場合には、強誘電性相の螺旋ピッチが短いキラル化合物を添加することが好ましい。添加の際にもちいるキラル化合物の使用に特に制限はなく、公知慣用のキラル化合物を用いることができるが、使用した(V−a)と自発分極の極性が同一の化合物、あるいは自発分極の値が使用した(V−a)と比べて十分に小さい化合物が、自発分極のキャンセルによる減少を抑えることができるので好ましい。添加物としてはキラルネマティック液晶で誘起する螺旋ピッチが十分長いか、あるいは、(V−a)で誘起される螺旋ピッチをキャンセルできるキラル化合物を選ぶことがさらに好ましい。
【0106】
<重合性液晶化合物(III)>
本発明の高分子安定化液晶組成物に用いられる重合性液晶化合物(III)は、下記一般式(III−a)
【0107】
【化42】

【0108】
(式(III−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
【0109】
一般式(III−b)
【0110】
【化43】

(式(III−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Cは1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びCはそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びZそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表すが、、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2及び3を表す。)
及び一般式(III−c)
【0111】
【化44】

【0112】
(式(III−c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、
6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【0113】
【化45】

【0114】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、
は0又は1の整数を表し、
及びYはそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表し、
は単結合、−COO−、又は−OCO−を表し、
は炭素原子数1から18の炭化水素基を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(III)である。
より具体的には、一般式(III−d)及び(III−e)
【0115】
【化46】

【0116】
(式(III−d)及び(III−e)中、mは、0又は1を表し、
11及びY12はそれぞれ独立して単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、
13及びY14はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、
15及びY16はそれぞれ独立して−COO−又は−OCO−を表し、
r及びsはそれぞれ独立して2〜14の整数を表す。式中に存在する1,4−フェニレン基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)のいずれかで表される化合物を用いると、機械的強度や耐熱性に優れた光学異方体が得られるので好ましい。
【0117】
一般式(III−a)で表される化合物の具体例を以下の(III−1)から(III−11)に挙げることができる。
【0118】
【化47】

【0119】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
また、一般式(III−d)及び(III−e)のいずれかで表される化合物の具体例を以下の(III−12)から(III−21)に挙げることができる。
【0120】
【化48】

【0121】
(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
一般式(III−b)で表される化合物の具体例を以下の(III−30)、(III−31)に挙げることができる。
【0122】
【化49】

(式中、j及びkはそれぞれ独立的に2〜14の整数を表す。)
【0123】
<高分子安定化液晶組成物の重合方法>
本発明の高分子安定化液晶表示素子用組成物を重合させる場合の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
【0124】
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
【0125】
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
【0126】
<高分子安定化強誘電性液晶組成物の組成比>
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は、化合物(II)で表される液晶性化合物と、重合性化合物(I)及び重合性化合物(III)で表される重合性化合物で構成される。該液晶性化合物と、重合性化合物の構成比は、重合性化合物の構成割合が多すぎると高分子安定化強誘電性液晶組成物としての特性を損なうため最適な構成比が存在する。具体的には、重合性化合物が0.1%〜8%であることが好ましく、1%〜8%であることがより好ましく、2%〜6%含有であることが特に好ましい。
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物においては、重合性化合物(III)の含有率が0.05%から7%であって、重合性化合物(III)と前記重合性化合物(I)との組成比が(III):(I)=1:1から49:1であることが好ましい。
【0127】
液晶組成物としては、一般式(II)で表される化合物の含有率が5から90%が好ましく、さらには10%から85%が好ましく、特に20%から80%含むものが好ましい。
【0128】
これらの液晶組成物は不純物等を除去する、又は比抵抗値を更に高くする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。比抵抗値としては1012Ω・cm以上が好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。更に、目的に応じて液晶組成物中に、キラル化合物、染料、イオン補足剤等のドーパントを添加することもできる。
【0129】
その他、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、非反応性のオリゴマーや無機充填剤、有機充填剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤等を適宜添加しても良い。
【0130】
本発明の高分子安定化強誘電性液晶組成物は化合物(II)で表される液晶性化合物と、重合性化合物(I)及び重合性化合物(III)で表される重合性化合物で構成されるが、高分子安定化強誘電性液晶組成物を重合させる場合、重合開始剤を含有していることが好ましい。重合開始剤を含有させる場合の含有量は、重合開始剤以外の材料を98%〜99.9%含有し、重合開始剤を0.1%〜2%含有していることが好ましい。
【0131】
本発明においては、重合性液晶化合物(III)のほかに多官能液晶性モノマーを添加することもできる。この多官能液晶性モノマーとしては、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(ここでRは塩素、フッ素、又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表す)が挙げられるが、これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基が特に好ましく、アクリロイルオキシ基が最も好ましい。
【0132】
多官能液晶性モノマーの分子構造としては、2つ以上の環構造を有することを特徴とする液晶骨格、重合性官能基、さらに液晶骨格と重合性官能基を連結する柔軟性基を少なくとも2つ有するものが好ましく、3つの柔軟性基を有するものがさらに好ましい。柔軟性基としては、−(CH−(ここでnは整数を表す)で表されるようなアルキレンスペーサー基や−(Si(CH−O)−(ここでnは整数を表す)で表されるようなシロキサンスペーサー基を挙げることができ、この中ではアルキレンスペーサー基が好ましい。これらの柔軟性基と液晶骨格、もしくは重合性官能基との結合部分には、−O−、−COO−、−CO−のような結合が介在していても良い。
【0133】
液晶骨格は、通常この技術分野で液晶骨格(メソゲン)と認識されるものであれば、特に制限なく使用することができるが、少なくとも2つ以上の環構造を有するものが好ましい。環構造としては使用できる環は、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、テトラジン、ジヒドロオキサジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサノン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロチオピラン、ジチアン、オキサチアン、ジオキサボリナン、ナフタレン、ジオキサナフタレン、テトラヒドロナフタレン、キノリン、クマリン、キノキサリン、デカヒドロナフタレン、インダン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェナンスレン、ジヒドロフェナンスレン、パーヒドロフェナンスレン、ジオキサパーヒドロフェナンスレン、フルオレン、フルオレノン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンオン、コレステン、ビシクロ[2.2.2]オクタンやビシクロ[2.2.2]オクテン、1,5−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,5−ジチアスピロ(5.5)ウンデカン、トリフェニレン、トルクセン、ポルフィリン、フタロシアニンを挙げることができる。これらの中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、フェナントレン、ナフタレン、テトラヒドロネフタレン、デカヒドロネフタレンが好ましい。これらの環は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が望ましく、メチル基とエチル基が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルカノイル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子と塩素原子が特に好ましい。また、多官能液晶性モノマーに加えて、単官能液晶性モノマーを添加しても良い。
【0134】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、液晶中にナノ粒子状に分散して低分子液晶を固定化した高分子安定化液晶表示素子、又は液晶中に三次元網目状の高分子鎖を形成させた高分子安定化液晶表示素子であって、該高分子の低分子液晶分散構造が、上述の本発明に係る高分子安定化強誘電性液晶組成物に紫外線露光して低分子液晶の配向を高分子安定化させたものである。
【0135】
高分子安定化強誘電性液晶組成物に紫外線露光する際には、高分子安定化強誘電性液晶組成物に交流を印加しながら紫外線露光することが好ましい。
また、低分子液晶の液晶相がキラルスメクチックC相を示す温度で交流を印加しながら紫外線露光することが好ましい。印加する交流は、周波数500Hzから10kHzの交流が好ましく、より好ましくは、周波数1kHzから10kHzの矩形波である。
【0136】
さらに好ましくは、低分子液晶の液晶相がキラルスメクチックC相を示す温度で周波数1kHzから10kHzの矩形波を電圧±15V以下で印加しながら紫外線露光することが望ましい。
さらに好ましくは、高分子安定化強誘電性液晶組成物が示すスメクチックA相とキラルスメクチックC相との相転移温度をT(℃)とするとき、(T−40)℃以上(T+5)℃以下であってかつ35℃以上の温度にて該高分子安定化液晶組成物に交流を印加しながら紫外線露光することが望ましい。
紫外線露光においては、紫外線1000mJ/cm以上を露光することが望ましい。
【0137】
本発明の液晶表示素子は、薄膜トランジスター素子、メタルインシュレーターメタル素子、薄膜ダイオード素子等の能動素子により駆動する液晶表示素子に適用することができる。特に、能動素子と液晶画素電極との間に補助容量Csが並列接続されており、液晶画素電極をCflcとした場合、Cs/Cflsが0.1以上、3以下であることが好ましい。また、フィールドシーケンシャル方式で駆動する液晶表示素子が好ましい。
【実施例】
【0138】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、特に断りのない場合、「%」は「質量%」を意味する。
【0139】
(高分子安定化液晶表示素子の作製、及び評価法)
実施例中の高分子安定化液晶表示素子は以下の方法で作製した。
高分子安定化強誘電性液晶組成物のキラルネマチック相転移以上に加熱して真空注入方で注入した。セルは、液晶は一軸配向(ホモジニアス配向)が得られるように、セルギャップ2μmのポリイミド配向膜を塗布したITO付きパラレルラビングの配向セルを用いた。
【0140】
液晶組成物、ラジカル重合性組成物、光重合開始剤及び微量の重合禁止剤からなる調光層形成材料を真空注入法でガラスセル内に注入した。真空度は2パスカルとなるよう設定した。注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。クロスニコルスの偏光顕微鏡で一軸配向であることを確認した後、周波数2KHzで5Vの矩形波を印加してスイッチングさせながら、紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介して、石英ガラスの光ファイバーで顕微鏡ステージに設置してある液晶セルに紫外線を導いて露光した。セルサンプル表面の照射強度が5mW/cmとなるように調整されたメタルハライドランプを300秒間照射して、高分子安定化強誘電性液晶組成物の重合性化合物を重合させて高分子分安定化液晶表示素子を得た。
【0141】
先に印加した電圧を切り、紫外線露光後の配向状態を偏光顕微鏡で観察して電圧印加により得られたベント配向が高分子安定化により無電界で維持されているのか調べた。更に、液晶セルのラビング方向を光入射側の偏光方向に対して45度になるよう顕微鏡ステージに配置して高分子安定化したセルに8Vを印加して透過率を比較した。透過率は、二枚の偏光板を直行した時を0%、平行にした時を100%とした。
【0142】
(高分子安定化強誘電性液晶組成物の調整)
強誘電性液晶組成物と化合物群(I)及び(III)をそれぞれ少なくとも一種以上モノマー成分として配合した高分子安定化強誘電性液晶組成物を調整した。強誘電性液晶組成物(FLC−1)の各成分の構造と割合は下記のとおりである。
【0143】
【化50】

強誘電性液晶組成物(FLC−1)と化合物群(I)及び(III)をそれぞれ少なくとも一種以上モノマー成分として配合し、高分子安定化強誘電性液晶組成物を調整した(MFLC−1)。高分子安定化強誘電性液晶組成物(MFLC−1)の各成分の構造あるいは内容と割合は下記のとおりである。
【0144】
【化51】

ここで、化合物(I−A)は一般式(I)より選ばれた非液晶性モノマーであり、(III−A)、及び(III−B)は一般式(III)より選ばれた液晶性モノマーである。
(実施例1)
このようにして作製した高分子安定化強誘電性液晶組成物(MFLC−1)について、上述の高分子安定化液晶表示素子の作成方法によって高分子安定化強誘電性液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶表示素子を作製した。このようにして得られた表示素子は室温で安定なV型のスイッチング挙動を示し、透過率50%の時の印加電圧(Vr50)は40℃で3V,20℃で3V,0℃で3Vと低い値で、かつ温度依存性が少ない良好なものであった。また、20℃で直流電界を印加して測定したチルト角は20°と大きいものであった。
(比較例1)
モノマー組成物として一般式(I)で表される化合物を含まないこと以外は実施例と同様に強誘電性液晶組成物(FLC−1)、(III−A)、(III−B)及びイルガキュア651を下記の割合で混合し、比較用高分子安定化強誘電性液晶組成物(MFLC−C1)を作製した。
【0145】
【化52】

実施例1と同様にして高分子安定化強誘電性液晶組成物中のアクリレート化合物を重合させて液晶表示素子を作製し、Vr50を測定すると、40℃で6V,20℃で5V,0℃で4Vと、実施例1よりも電圧が高く、かつ、温度依存が大きく好ましくなかった。また、20℃で直流電界を印加して測定したチルト角は15°と実施例よりも小さくなり好ましくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I−a)
【化1】

(式(I−a)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から18のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から17のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
及びAはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1から10のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にハロゲン原子又は炭素原子数1から9のアルキル基で置換されていても良い。)を表し、
kは1から40を表し、
、B及びBは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個もしくは2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとしてそれぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い)、又は一般式(I−b)
【化2】

(式(I−b)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、
は単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)で表される基を表す。ただし、2k+1個あるB、B及びBのうち前記一般式(I−b)で表される基となるものの個数は0〜3個である。)
で表される重合性化合物であって、該重合性化合物の重合物のガラス転移温度が−100℃から25℃である重合性化合物(I)と、一般式(II)
【化3】

(式中、R11及びR12は各々独立に炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基あるいはフッ素原子を表すが、R11とR12が同時にフッ素原子となることはなく、さらに、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい、
11〜X17は各々独立に水素原子、フッ素原子、CF基又はOCF基を表し、
11、L12、L13、L14は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、
、b、c及びdは各々独立に0又は1の整数を表すが、a+b+c+dは1、2又は3であり、aが0の場合はdは0であり、aが1の場合はcは0である。)
で表される液晶性化合物(II)と、一般式(III−a)
【化4】

(式(III−a)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
及びCはそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
は、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表す。ただし、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良い。)、
一般式(III−b)
【化5】

(式(III−b)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、
は1,4−フェニレン基、1,4−シクロへキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、シクロヘキセン−1,4−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基又はインダン−2,5−ジイル基(これらの基のうち1,4−フェニレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基及びインダン−2,5−ジイル基は、非置換であるか又は置換基としてフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基若しくはトリフルオロメトキシ基を1個若しくは2個以上有することができる。)を表し、
及びCはそれぞれ独立してベンゼン−1,2,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,4−トリイル基、ベンゼン−1,3,5−トリイル基、シクロヘキサン−1,2,4−トリイル基、シクロヘキサン−1,3,4−トリイル基又はシクロヘキサン−1,3,5−トリイル基を表し、Z及びZはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基(該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立に酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立にフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていても良い。)を表し、
及びZそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CHCHO−、−OCHCH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CHCHOCO−、−COOCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−COO−又は−OCO−を表し、
は、0、1又は2を表すが、nが2を表す場合、複数あるC及びZは同じであっても異なっていても良く、n及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)
及び一般式(III−c)
【化6】

(式(III−c)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、
6員環T、T及びTはそれぞれ独立的に、
【化7】

のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、
は0又は1の整数を表し、
及びYはそれぞれ独立して単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CHCHCH−又は−CHCHCH=CH−を表し、
は単結合、−COO−、又は−OCO−を表し、
は炭素原子数1から18の炭化水素基を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性化合物(III)と、を含有することを特徴とする高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項2】
一般式(II)の化合物として、一般式(II)のbが0の場合はX13〜X16のすくなくとも1つはフッ素原子、CF基、あるいはOCF基であり、cが0の場合はX11、X12、X15、X16、X17の少なくとも1つはフッ素原子、CF基、あるいはOCF基であり、b=c=1の場合はa=d=0でかつX11〜X17の少なくとも1つはフッ素原子、CF基、あるいはOCF基である化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項3】
一般式(II)の化合物として、一般式(II)のbが0の場合はX13〜X16のすくなくとも1つはフッ素原子であり、cが0の場合はX11、X12、X15、X16、X17の少なくとも1つはフッ素原子であり、b=c=1の場合はa=d=0でかつX11〜X17の少なくとも1つはフッ素原子である化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項4】
一般式(IV−a)
【化8】

(R41は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の、1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、該アルキル基中の1つ又はそれ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、A、B及びCは各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、又はCN基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、1つ又は2つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1つ又は2つの水素原子がシアノ基あるいはメチル基あるいはその両方で置き換えられてもよいトランス−1,4−シクロへキシレン基、又は、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3−ジチアン−2,5−ジイル基、1,3−チアゾール−2,4−ジイル基、1,3−チアゾール−2,5−ジイル基、チオフェン−2,4−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピペラジン−1,4−ジイル基、ピペラジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基を表し、L41、及びL42は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、a、b、及びcは0又は1を表し、a、b及びcの合計は2又は3を表し、Xは一般式(IV−b)
【化9】

(式中、R42は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。)
又は、一般式(IV−c)
【化10】

(ただし、R43は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−又は−C≡C−で置き換えられてもよく、R44、R45及びR46は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つの隣接していない−CH−基は−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CH=CH−又は−C≡C−に置き換えられてもよい。)を表す。)から選ばれる液晶性化合物を少なくとも1種含有する請求項1〜3の何れかに記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項5】
一般式(V−a)
【化11】

(式中、R51は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、、該アルキレン基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、、該アルキレン基中のの1つ以上の水素原子がフッ素原子又はCN基で置き換えられていてもよく、R52は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、、該アルキル基中の1つ又は2つの隣接していない−CH−基は−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、、該アルキレン基中の1つ以上の水素原子はフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、A、B及びCは各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、CN基、CH基、又はOCH基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、1つ又は2つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいピラジン−2,5−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、1つ又は2つの水素原子がシアノ基あるいはメチル基あるいはその両方で置き換えられてもよいトランス−1,4−シクロへキシレン基、又は、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3−ジチアン−2,5−ジイル基、1,3−チアゾール−2,4−ジイル基、1,3−チアゾール−2,5−ジイル基、チオフェン−2,4−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、ピペラジン−1,4−ジイル基、ピペラジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基を表し、a,b,及びcは各々独立に0又は1を表し、*は不斉炭素を表し、L51及びL52は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−又は−C≡C−を表し、L53は、下記一般式(V−b)〜(V−c)
【化12】

【化13】

【化14】

(式中、d、e及びfは各々独立に0以上6以下の整数を表す。)の何れかを表す。)
及び、一般式(V−e)
【化15】

(式中、R61は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキル基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、R62は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、R63は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよく、あるいは下記一般式(V−f)
【化16】

(ただし、R64は単結合又は炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、但し、1つ又は2つの隣接していない−CH−基が−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CH=CH−、−C≡C−、シクロプロピレン基又は−Si(CH−で置き換えられてもよく、さらにアルキレン基の1つ又はそれ以上の水素原子がフッ素原子あるいはCN基で置き換えられていてもよい。また、R65は水素、炭素原子数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、フッ素で置き換えられてもよい。)であり、A、B、及びCは各々独立に1つ又は2つの水素原子がフッ素原子、CF基、OCF基、CN基、CH基、あるいはOCH基、あるいはこれらの複数の基で置き換えられてもよい1,4−フェニレン基、1つ又は2つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよいピラジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1つ又は2つの水素原子がシアノ基あるいはメチル基あるいはその両方で置き換えられてもよいトランス−1,4−シクロへキシレン、又は、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,3−ジチアン−2,5−ジイル、1,3−チアゾール−2,4−ジイル、1,3−チアゾール−2,5−ジイル、チオフェン−2,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピペラジン−1,4−ジイル、ピペラジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,5−ジイルであり、L61、L62は各々独立に単結合、−O−、−S−、−CO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−S−、−S−CO−、−O−CO−O−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−であり、a、b、及びcは0又は1の整数を示し、*は不斉炭素を表す。)からなる群より選ばれる少なくとも一種の光学活性な化合物を含有する請求項1〜4の何れかに記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項6】
前記重合性化合物(III)の含有率が0.05%から7%であって、前記重合性化合物(III)と前記重合性化合物(I)との組成比が(III):(I)=1:1から49:1である請求項1〜5のいずれかに記載の高分子安定化強誘電性液晶組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの高分子安定化強誘電性液晶組成物を用いた液晶表示素子。

【公開番号】特開2008−276197(P2008−276197A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77770(P2008−77770)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】