説明

高分子材料の塗膜層を基板に設ける方法及びデバイス

高分子材料の塗膜層(13)を基板(10)に設ける方法は、a)微粉高分子材料(2)が流体(3)中に懸濁(1)されるステップと、b)前記流体(3)が加圧(5)されるステップと、c)前記加圧された懸濁液が前記基板(10)に噴出(16)されて前記塗膜層(13)を形成するステップと、d)ステップa)〜c)のいずれか1つの間、前記高分子材料が軟化温度より上の温度に加熱(4、6、11)されるステップと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に高分子材料の塗膜層を設けるための方法及びデバイスに関する。本発明は、特に、包装用積層品に高分子層を塗布するために開発されたが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
包装用積層品のようなウェブ状基板に高分子材料の層を塗布することは、商業的には、高分子層を基板に押し出すことによって、又は、基板に高分子材料の分散液若しくは溶液を塗布することによって行なわれる。高分子層は、ガス又は液体の浸透に対する障壁層、封止層、その他の機能を有することができる。
【0003】
たとえ、今日知られている押出し方法及び塗布方法が、良好に機能しているとしても、これらの技術には欠陥がある。全ての知られている欠陥のうちのほんの少数のものについて以下で言及する。そのような技術によって、例えば、基板の表面の一部に塗布すること、又は、不均一な表面若しくは異なる平面の表面に塗布することは困難である。さらに、公知技術では、その製造中に微粉状の形態となる高分子材料は、例えば造粒(granulation)して処理することが必要であり、このことは、高分子の元の特性が、多くの場合にマイナスの影響を受けることを意味する。公知技術では、非常に薄い塗膜層を塗布できることも困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基板に高分子材料の塗膜層を塗布する代替技術を提供することを目的とする。また、本発明は、公知技術の上述の欠陥を克服するか、又は少なくとも減らすそのような代替技術を提供することを目的とする。本発明は、包装用積層品、特に液体食品を包装するための包装用積層品の基板に高分子材料を塗布する技術を提供することを主に目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これら及び他の目的は、特許請求の範囲で規定される本発明によって実現される。
【0006】
したがって、本発明方法は、高分子材料の塗膜層を基板に設ける方法に関し、
a)微粉高分子材料を流体中に懸濁するステップと、
b)前記流体を加圧するステップと、
c)前記加圧された懸濁液を基板に噴出して、塗膜層を形成するステップと、
d)ステップa)〜c)のいずれか1つの間、前記高分子材料を高分子材料の軟化温度より上の温度に加熱するステップと、を含む。
【0007】
微粉高分子材料を軟化温度より上であるが好ましくは溶融温度より下の温度に加熱し、その後、大きな力で基板にぶつけることにより、基板の高分子材料の塗膜層が実現されるという概念に、本発明は基づいている。合わせて、微粉粒子の軟化された表面及び衝撃の大きな力が、基板に「焼結状」塗膜をもたらす。
【0008】
本発明の一つの効果は、使用される高分子材料の微粉粒子が、高分子材料の製造に関連して直接形成される微粉粒子、すなわち製造中に反応炉中で高分子材料が取った微粉形態であってもよいことである。通常、微粉高分子材料は、1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらにもっと好ましくは1〜25μmの平均粒径を有している。軟化されるのが微粉粒子の表面のみであれば、高分子材料の元の特性は、形成された塗膜層でほとんど損なわれていない、このことが主な効果である。
【0009】
本発明方法の他の効果は、本発明方法を容易に制御して、0.1〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、さらにもっと好ましくは0.1〜1μmの厚さを有する層のような非常に薄い塗膜層の形成を可能にすることである。さらに、有利なことに、本方法は基板に対して無接触であるために、本方法は、不均一な基板、又は異なる平面に配列された基板にもそのような塗膜層を形成することを可能にする。さらに、本方法は、基本的に、基板の一方の側の全表面に均質で連続した塗膜層を塗布すること、又は、塗膜層が基板の一方の側の表面の選ばれた部分に部分的にだけ塗られることを可能にする。後者の場合には、選ばれたパターンを有するように、及び/又は、例えば、互いに封止されるべき基板表面の部分のみに(塗膜層が封止層である場合)、塗膜層を形成することができる。塗膜層が封止層である以外に、塗膜層は、香気障壁層、ガス障壁層、光沢付与層、掴み改善用の層、スカベンジャ層、剥離層、接着剤層、又は液体障壁層であること、及び、これに伴って、高分子は、当業者によく知られている適切な1つ又は複数の高分子であること、が考えられるだろう。
【0010】
以下で、好ましい実施形態を参照し、且つ本発明に従ったデバイスを模式的に原理に基づいて示す同封の図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1の細部番号1は、微粉高分子材料2を流体3、図示の場合には液体又はより具体的には水、と混合するための混合装置を全体的に示す。他の考えられる液体は、表面張力のような高分子材料の表面特性に影響を及ぼす種類のものであってもよい。高分子材料は、基板、特に液体食品用の包装用積層品に塗膜層を形成するのに適し、且つ選ばれた流体に溶けないどんな種類の高分子材料であってもよい。好ましい高分子材料は、任意の適切なグレードのポリエチレンのようなポリオレフィンである。
【0012】
液体中の高分子粒子の懸濁は、混合装置1で形成される。混合装置は、また、懸濁液を加熱するための加熱システム4を備えることができ、高分子がポリオレフィンの場合には、例えば、50〜99℃に懸濁液を加熱する。図面は、撹拌機を象徴的に示すが、回転ドラムを備える混合装置のような他のどんな混合装置でも考えることができる。
【0013】
混合装置1から、懸濁液は、ポンプのような加圧装置5に導かれ、この加圧装置で、懸濁液は100バールの圧力まで加圧される。また、加圧とともに、懸濁液を加熱してもよく、加熱される場合には、間接熱伝達6によって加熱されることが好ましい。しかし、高分子粒子が液体懸濁の状態である限り、すなわち、少なくとも高分子粒子がノズル9から出るまでは(以下を参照されたい)、高分子粒子の表面の温度は、高分子の溶融温度を超えるようにすべきではない。
【0014】
流体温度、適切な場合では水温、の上昇は、例えばマイクロ波装置によって達成することができる。マイクロ波によって、水のエネルギー含有量、すなわち水の温度は、高分子造粒物(granulate)の温度よりも遥かに高くなる。
【0015】
さて、懸濁液は流量制御装置7に供給される。流量制御装置7は、また、出口/ノズル9を備え、そこを通って懸濁液は圧力のかかった状態で射出/噴霧される。図示の場合には、流量制御装置7は、出口で垂直方向にずらすことができる流量制御ニードル8を備えているが、例えば振動機を含んだ流量制御用の他の手段も考えることができる。
【0016】
基板の全表面に塗布すべきである場合には、ノズル9の開いた断面は、基板10の幅全体にわたって引き伸ばされる。場合によっては、いくつかの細長いノズルを連続して配列することができるので(図示しない)、塗膜の相次ぐ層が基板に形成される。基板の部分だけに塗布すべき場合には、ノズルは、代わりに円形か、又は、ことによると、細長いが基板10の幅の部分にだけ延びている。
【0017】
ノズルの後に、加熱ゾーン11があり、この加熱ゾーンで、加熱装置12が、ノズル9から射出された懸濁液噴出を、通常、高分子の軟化温度より上であるが溶融温度よりも下の温度に加熱する。しかし、本発明方法は、加熱ステップのどれかで懸濁液又は高分子が高分子の溶融温度より上の温度に加熱される場合にも機能することできることは、考慮に入れられるべきである。加熱時に、液体は懸濁液噴出16から蒸発し、そして高分子粒子は少なくとも粒子の表面で軟化する。したがって、高分子粒子噴出は、基板10にぶつかるときに、基本的に液体が無い。蒸発した液体ガスを除去するように排出管14が配列されている。その後、高分子粒子は、システムの加圧のために大きな力で基板10にぶつかるので、焼結状塗膜13が基板に形成され、それによって個々の高分子粒子は互いに結合される。場合によっては、塗膜が所望の特性を得るために、追加の加熱処理又は何か他の後処理が続いてもよい(図示しない)。
【0018】
好ましくは、加熱ゾーン11での加熱は、直接であるが無接触であり、そして照射、レーザ、マイクロ波、又は同様なもののような高パワー加熱処理装置12、又は何か他の高パワー技術/装置が利用される。
【0019】
好ましくは表面の活性化(表面エネルギーを高めること)による付着性向上のために、場合によっては、塗布位置の上流で且つこの塗布位置に直接関連して、矢印15で表わされた例えば火炎処理によって、基板10を前処理することができる。好ましくは、基板は、包装用積層品のための基板であり、好ましくは、繊維をベースにしたコア層、高分子コア層、ガス障壁層(アルミニウム又は高分子材料のようなガス障壁層)、接着剤層、液体障壁層及び封止層からなる群の1つ又は複数の層を備える。
【0020】
場合によっては、例えば懸濁液中の微粉粒子の凝集を妨げるために、好ましくは、微粉粒子を処理することによって、又は、界面活性剤のような表面に影響を及ぼす薬剤を懸濁液に追加することによって、高分子微粉粒子の表面に影響を及ぼすこと/前処理することができる。
【0021】
本発明は、示された実施形態に限定されず、特許請求の範囲の範囲内で変更することができる。例えば、微粉高分子を懸濁させる前に最初に液体を加熱し且つ/又は加圧することが考えられる。最初の加熱ステップで加熱が完成される前に液体を加圧する場合、高分子の選択に依存してそのように所望すれば液体の沸騰温度より上の温度に加熱することがもちろん可能である。流体が空気又は不活性ガスのようなガスである場合、蒸発ステップはもちろん除外されるが、加熱は、高分子粒子の表面の軟化を達成するという目的で残っている。高分子/流体の比は、流体の種類に無関係に、初期に10/90から50/50(%)までであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従ったデバイスを模式的に原理に基づいて示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料の塗膜層(13)を基板(10)に設ける方法であって、
a)微粉高分子材料(2)を流体(3)中に懸濁(1)するステップと、
b)前記流体(3)を加圧(5)するステップと、
c)前記加圧された懸濁液を前記基板(10)に噴出(16)して、前記塗膜層(13)を形成するステップと、
d)ステップa)〜c)のいずれか1つの間、前記高分子材料を、高分子材料の軟化温度より上の温度に加熱(4、6、11)するステップと、を特徴とする方法。
【請求項2】
ステップd)の前記加熱(11)が、ステップc)中に行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体(3)が、ガス流体、好ましくは空気又は不活性ガスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体(3)が、液体、好ましくは水溶液であり、その液体がステップc)中にステップd)の前記加熱(11)に関連して蒸発し、その結果、前記高分子材料には、前記基板(10)にぶつかるときに、基本的に前記流体が含まれていないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)中に前記高分子材料の前記加熱(11)が、前記高分子材料の溶融温度より下の温度まで行なわれることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)の前に、好ましくはステップa)及び/又はb)に関連して、前記懸濁液が加熱(4、6)されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)の前記微粉高分子材料が、1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらにもっと好ましくは1〜25μmの平均粒径を有し、前記微粉粒子が好ましくは前記高分子材料の製造で直接形成される微粉粒子で構成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
好ましくは前記微粉粒子を処理することによって、又は前記表面に影響を及ぼす薬剤を前記懸濁液に加えることによって、前記高分子微粉粒子の表面が、前記懸濁液中での前記微粉粒子の凝集を妨げるような影響を受けることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板(10)は、繊維をベースにしたコア層、高分子コア層、ガス障壁層、接着剤層、液体障壁層及び封止層からなる群の1つ又は複数の層を好ましくは備える包装用積層品のための基板であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子材料の付着性向上のために(15)、前記基板(10)が、好ましくはステップc)に直接関連して、前処理されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塗膜層(13)が、0.1〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、さらにもっと好ましくは0.1〜1μmの厚さで塗られることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記塗膜層(13)が、基本的に前記基板(10)の一方の側の全表面に塗られることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記塗膜層(13)が、前記基板(10)の一方の側の表面の選ばれた部分に部分的にだけ塗られることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
高分子材料の塗膜層(13)を基板(10)に設けるためのデバイスであって、
・流体(3)中に微粉高分子材料(2)を懸濁させるように配列された混合装置(1)と、
・前記流体を加圧するように配列された加圧装置(5)と、
・前記加圧装置(5)に動作可能に接続された少なくとも1つのノズル(9)であって、流体中の高分子材料の前記懸濁を前記基板(10)の方に向けて射出(16)するように配列された少なくとも1つのノズル(9)と、
・前記高分子材料を前記高分子材料の軟化温度よりも上の温度に加熱するように配列された加熱装置(4、6、11)と、
を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
加熱装置(4、6)が、前記加熱装置(11)の上流に、好ましくは前記混合装置(1)及び/又は前記加圧装置(5)に関連して配列され、且つ前記流体及び/又は流体中の高分子材料の前記懸濁を加熱するように配列されていることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
流量制御装置(7、8)が、前記ノズル(9)における前記懸濁液の流れ(16)を制御するように配列されていることを特徴とする、請求項14又は15に記載のデバイス。
【請求項17】
好ましくは前記基板の表面の活性化を含んだ、前記基板(10)を前処理するように配列された手段(15)を特徴とする、請求項14から16までのいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2007−516079(P2007−516079A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546889(P2006−546889)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001695
【国際公開番号】WO2005/061124
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】