説明

高分子樹脂組成物及びこれを用いて製造された絶縁フィルム並びにその製造方法

【課題】温度変化に応じた膨張及び収縮率の小さい高分子樹脂組成物及びこれを用いて製造された熱膨張係数を減少させた絶縁フィルム並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態による高分子樹脂組成物は、高分子樹脂110と、該高分子樹脂110のファンデルワールス力に比べて大きい引力で高分子樹脂をリンクさせるグラフェン120とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子樹脂組成物及びこれを用いて製造された絶縁フィルム並びにその製造方法に関し、特に、温度変化に応じた膨張及び収縮率の小さい高分子樹脂組成物及びこれを用いて製造されて熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)を減少させた絶縁フィルム並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所定の電子装置向けの多様な種類のパッケージ構造物は、印刷回路基板(Printed Circuit Board:PCB)を備えている。例えば、印刷回路基板に半導体集積回路チップ、多様な種類の受動及び能動素子及びその他のチップ部品を実装して、システムパッケージ構造物を具現する。
【0003】
最近の電子製品は、全世界的に普遍化して用いられているため、多様な環境で製品の信頼性を維持するために印刷回路基板の高い信頼性が要求される。例えば、印刷回路基板に対して高い熱特性が要求され、特に、低い熱膨張係数特性を有する印刷回路基板が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2010−0015630号公報
【特許文献2】韓国公開特許第10−2010−0031981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より具体的には、印刷回路基板は、複数の絶縁フィルムを積層してなされる積層体を圧着及び焼成することによって製造される。該過程において、該印刷回路基板に形成される貫通孔(through hole)にメッキされているメッキ膜と該絶縁フィルムとの間の熱膨張係数差によって、該メッキ膜にクラック(crack)が発生する現象が生じる。この場合、前記印刷回路基板内にショート(short)が発生するようになって印刷回路基板の製造効率が低下する。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、本実施形態の目的は、温度変化に応じた膨張及び収縮率を減少させた高分子樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
また、本実施形態の他の目的は、ビルドアップ多層回路基板の熱膨張係数を低くすることができる絶縁フィルムを提供することにある。
【0008】
また、本実施形態のさらに他の目的は、ビルドアップ多層回路基板の熱膨張係数を低くすることができる絶縁フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本実施形態による高分子樹脂組成物は、高分子樹脂と、該高分子樹脂のファンデルワールス(van der waals)力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェン(graphene)とを含む。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記グラフェンは、0.05〜40wt%に調節されることができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記グラフェンは、単層シート構造として前記高分子樹脂間に介在することができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記グラフェンと極性溶媒との反応性が増加するように、前記グラフェンの表面に形成された誘導体(derivative)をさらに含むことができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記高分子樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられる。
【0014】
本発明の実施形態によれば、硬化剤をさらに含み、該硬化剤には、アミン系、イミダゾール系、グアニン系、酸無水物系、ジシアンジアミド系及びポリアミン系のうちの少なくともいずれか一つの硬化剤が挙げられる。または、前記硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−フェニルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、トリアジン添加タイプイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態によれば、硬化促進剤をさらに含み、該硬化促進剤には、フェノール(phenol)、シアンエステル(cyanate ester)、アミン(amine)及びイミダゾール(imidazole)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0016】
本発明の実施形態によれば、充填剤をさらに含み、該充填剤は、バリウムスルホネート、バリウムチタネート、シリコンオキサイド粉末、無定形シリカ、タルク、粘土及びマイカ粉末のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、反応性希釈剤をさらに含み、該反応性希釈剤には、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、レゾール型ノボラックタイプフェノール樹脂及びイソシアネート化合物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、バインダをさらに含み、該バインダには、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリシアネート樹脂及びポリエステル樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0019】
本実施形態による回路基板製造用絶縁フィルムは、高分子樹脂と、該高分子樹脂のファンデルワールス(van der waals)力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェン(graphene)と、を有する高分子樹脂組成物によって製造される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記グラフェンは、前記高分子樹脂組成物内で0.05wt%〜40wt%に調節されることができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂を含むことができる。
【0022】
本実施形態による回路基板製造用絶縁フィルムの製造方法は、高分子樹脂と、該高分子樹脂のファンデルワールス力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェン(graphene)とを混合して混合物を準備するステップと、前記混合物を混合及び分散させて高分子ペーストを形成するステップと、前記高分子ペーストをキャスティング(casting)処理してフィルム化するステップとを含む。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記混合物を準備するステップは、前記高分子ペースト内の前記グラフェンが、0.05〜0.4wt%に調節されるように、該グラフェンの添加量を調節するステップを含むことができる。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記高分子樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態による高分子樹脂組成物は、高分子樹脂と、該高分子樹脂間のファンデルワールスカに比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェン(graphene)とを含むことができる。これにより、本実施形態による高分子樹脂組成物は、温度変化に応じた膨張及び収縮率が減少して低い熱膨張係数を有するビルドアップ多層回路基板の製造のための組成物として用いられることができる。
【0026】
本発明の実施形態による回路基板製造用絶縁フィルムは、高分子樹脂と、該高分子樹脂間のファンデルワールス力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェンとを含む高分子樹脂組成物として製造されることができる。これにより、本実施形態による絶縁フィルムは、温度変化に応じた膨張及び収縮率が減少して、熱膨張係数を減少させることができるビルドアップ多層回路基板の絶縁フィルムとして用いられる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、高分子樹脂と、該高分子樹脂間のファンデルワールス力に比べて大きい引力で該高分子樹脂とリンクされるグラフェンとを含む高分子樹脂組成物を用いて絶縁フィルムを製造することができる。これにより、本実施形態によれば、ビルドアップ多層回路基板の熱膨張係数を減少させることができる回路基板製造用絶縁フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態による高分子樹脂組成物を示す図面である。
【図2】本発明の実施形態による高分子樹脂組成物の特性を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施の形態は図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく他の形態では具体化されることができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることができる。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0030】
本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は文句で特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使われる「含む」とは、言及された構成要素、ステップと、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップと、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0031】
以下、本発明の実施形態による高分子樹脂組成物及びこれを用いて製造された絶縁フィルム並びにその製造方法について詳細に説明する。
【0032】
本発明の実施形態による高分子樹脂組成物は、高分子樹脂、硬化剤、硬化促進剤及びグラフェンを含むことができる。
【0033】
前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂(epoxy resin)を含むことができる。該エポキシ樹脂は、ビルドアップ多層回路基板の製造時に、該回路基板の層間絶縁材料として用いられる絶縁材料であってもよい。このために、該エポキシ樹脂は、耐熱性、耐薬品性及び電気的特性に優れたものが用いられることが望ましい。例えば、該エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びトリグリシジルイソシアネートのうちの少なくともいずれか一つの複素環式エポキシ樹脂を含むことができる。または、前記エポキシ樹脂は、ブロム置換エポキシ樹脂を含むことができる。
【0034】
前記硬化剤は、前述のようなエポキシ樹脂の種類によって多様な硬化剤が用いられる。例えば、該硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、グアニン系、酸無水物系、ジシアンジアミド系及びポリアミン系のうち少なくともいずれか1つを含むことができる。または、該硬化剤は、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−フェニルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、トリアジン添加タイプイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物及びべンゾフェノンテトラカルボン酸無水物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0035】
前記硬化促進剤は、フェノール(phenol)、シアンエステル(cyanate ester)、アミン(amine)及びイミダゾール(imidazole)のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0036】
前記グラフェンは、炭素ナノ材料であって、前記高分子樹脂組成物内で前記エポキシ樹脂間の架橋(bridge)の役割をする。例えば、該グラフェンは、豊富な電子雲密度(electron cloud density)を有し、これにより、前記エポキシ樹脂を強い引力でリンクせることができる。この時、前記グラフェンにより与えられる前記エポキシ樹脂への引力は、該エポキシ樹脂のファンデルワールス力に比べて非常に強くなる。そのため、該グラフェンにより、前記高分子樹脂組成物は、温度変化に応じて膨張及び収縮率が非常に低いという特性を有することになる。
【0037】
前記グラフェンは、前記高分子組成物内に略0.05〜40wt%に添加されることができる。該グラフェンの含量が0.05wt%に比べて小さい場合、該グラフェンの含量が相対的に非常に低く、前記エポキシ樹脂を強い引力でリンクさせる前記グラフェンの効果を期待するに難しくなる。これに対し、前記グラフェンの含量が40wt%超の場合、該グラフェンの過度な添加によって、前記高分子樹脂組成物の絶縁特性の低下及びその他材料の相対的な減量による材料特性の低下が生じることになる。
【0038】
前述のようなグラフェンの効果及びその原理を、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態による高分子樹脂組成物を示す図面である。同図のように、高分子樹脂組成物100はエポキシ樹脂110及びグラフェン120を含み、該グラフェン120は単層のシート構造(sheet structure)として、該エポキシ樹脂110間に介在することができる。この場合、前記グラフェン120はその両面に前記エポキシ樹脂110に対し強い引力10を与えて、前記エポキシ樹脂110間の引力10を最大化することができる。このようなシート構造の炭素ナノ材料のためには、普通、単層構造を有するグラフェン120が最も適する。もし、炭素ナノチューブのような略六角形ハニカム構造または多層構造を有する場合、前記グラフェン120のように両面に引力を与える効果は発揮されないため、エポキシ樹脂110に強い引力でリンクされなくなる。また、前記炭素ナノチューブはその材料自体がグラフェン120に比べて低い引力を有するため、前記グラフェン120のような高い架橋効果を期待するのが難しくなる。
【0039】
ここで、前記グラフェン120はそれ自体の極性(polarity)が非常に大きく、一般に強い極性の溶媒に十分に分散しないという特性がある。そのため、一般的なグラフェン120を高分子樹脂組成物に添加することが難しいため、本実施形態では、前記グラフェン120が溶媒に容易に溶けることが出来るように、前記グラフェン120の表面に誘導体(derivative)を化学的に付けて用いることが望ましい。例えば、前記グラフェン122bの表面にカルボキシル基、アルキル基、アミン基などの誘導体を形成し、該溶媒に対する前記グラフェン122bの溶解性を高めることができる。
【0040】
一方、前記高分子樹脂組成物は、所定の添加剤をさらに含むことができる。該添加剤は、前記高分子樹脂組成物を用いて絶縁フィルムを製造する場合、またさらに前記絶縁フィルムを用いて多層回路基板を製造する場合において、製造特性及び基板特性を向上させるために提供されてもよい。例えば、前記添加剤は充填剤(filler)、反応性希釈剤、バインダなどを含むことができる。
【0041】
前記充填剤としては、無機または有機充填剤が挙げられる。例えば、該充填剤は、バリウムスルホネート、バリウムチタネート、シリコンオキサイド粉末、無定形シリカ、タルク、粘土及びマイカ粉末のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。該充填剤の添加量は、前記高分子樹脂組成物の総重量を基準に略1〜30wt%に調節されることができる。前記充填剤の添加量が1wt%未満になると、該充填剤としての機能を果たすのが難しくなる。これに対し、該充填剤の添加量が30wt%超の場合、前記高分子樹脂組成物で製造された製品の誘電率などの電気的特性が低下することになる。
【0042】
前記反応性希釈剤は、前記高分子樹脂組成物の製造時に粘度を調節して製造作業性を円滑にするための材料であってもよい。前記反応性希釈剤は、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、レゾール型ノボラックタイプフェノール樹脂及びイソシアネート化合物のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0043】
前記バインダは、前記高分子樹脂組成物で製造された絶縁フィルムの可撓性を向上させ、また材料特性を向上させるために提供されることができる。前記バインダは、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリシアネート樹脂及びポリエステル樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0044】
前述のような反応性希釈剤及び前記バインダは、前記高分子樹脂組成物に30wt%以下で添加されることができる。もし、前記反応性希釈剤と前記バインダとの含量が前記高分子樹脂組成物において30wt%超の場合、前記高分子樹脂組成物の材料特性がむしろ低下し、これにより高分子樹脂組成物で製造される製品の電気的、機械的及び化学的特性が低くなる。
【0045】
また、前記高分子樹脂組成物は、前記添加剤として、所定のゴム(rubber)をさらに含むことができる。例えば、内層回路にラミネーションされる絶縁フィルムは、仮硬化(precure)後にメッキ層との接着強度を改善するために酸化剤を用いて湿式調和工程を行う。従って、該酸化剤に可溶性のゴムやエポキシ変性ゴム樹脂などが調和成分(ゴム)として絶縁フィルム組成物に用いられることができる。その用いられるゴムの例としては、これに限定するものではない。例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、アクリロニトリル変性、ウレタン変性ポリブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム分散型エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含むことができる。前記調和成分は、前記高分子樹脂組成物に略5〜30wt%に調節されることができる。前記調和成分が5wt%未満の場合、調和性が低下してしまう。これに対し、前記調和成分が30wt%超の場合は、前記高分子樹脂組成物で製造された製品の機械的強度が低下することになる。
【0046】
図2は、本発明の実施形態による回路基板製造用高分子樹脂組成物の特性を説明するためのグラフである。図2中で、横軸は温度を示し、縦軸は高分子樹脂組成物の温度変化に応じた寸法変化(dimension change)を示す。符号20は本発明の実施形態による高分子樹脂組成物30の熱特性検査結果を示すグラフであり、符号30は該高分子樹脂組成物30の比較例として用いられた高分子樹脂組成物の熱特性検査結果を示すグラフである。該比較例に用いられた高分子樹脂組成物は、他の材料は全て同一で、該高分子樹脂組成物30からグラフェンのみが選択的に添加されていない高分子樹脂組成物である。
【0047】
図2を参照して、前述した本発明の実施形態による高分子樹脂組成物30は、前記高分子樹脂組成物30からグラフェンのみを選択的に差し引いた高分子樹脂組成物20に比べて、熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE)が低くなるのが認められた。特に、本実施形態による高分子樹脂組成物30の場合、略170℃〜280℃の温度範囲で、比較例として用いられた高分子樹脂組成物20に比べて、顕著に低い熱膨張率を有するのが認められた。これにより、本発明の実施形態による高分子樹脂組成物30は、印刷回路基板の一般的な表面実装(Surface Mounted Technology:SMT)のための温度範囲(例えば、略250℃〜280℃)でも熱膨張がほぼ起こらないことが認められた。これにより、前記高分子樹脂組成物30で製造された印刷回路基板は、熱膨張係数を大きく低くすることができ、製造過程で回路パターンと絶縁フィルムとの間の熱膨張係数差によって発生する回路パターンの割れ(crack)を防止することができる。
【0048】
前述のような高分子樹脂組成物30のテスト結果を整理すると、下記の表1の通りである。
【0049】
【表1】

【0050】
上記表1において、α1はガラス転移温度(Tg)に比べて低い温度範囲を示し、α2はガラス転移温度(Tg)に比べて高い温度範囲を示す。表1に示すように、本発明の実施形態による高分子樹脂組成物の場合、グラフェンの添加されていない高分子樹脂組成物に比べて温度変化に応じた熱膨張係数が低いことが分かる。特に、本実施形態による高分子樹脂組成物は、α2の温度範囲での熱膨張係数値が大きく低くなるのが認められた。従って、本発明の実施形態による高分子樹脂組成物でビルドアップ多層印刷回路基板を製造する場合、ビルドアップ絶縁フィルムの熱膨張係数を大きく低くすることができ、メッキ膜と絶縁フィルムとの間の熱膨張係数差による該メッキ膜にクラックが発生するという問題を解決することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
100 高分子樹脂組成物
110 高分子樹脂
120 グラフェン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドアップ多層印刷回路基板製造に用いられる絶縁フィルムを製造するための高分子樹脂組成物であって、
高分子樹脂と、
前記高分子樹脂のファンデルワールス(van der waals)力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェン(graphene)と
を含む高分子樹脂組成物。
【請求項2】
前記グラフェンは、0.05〜40wt%に調節される請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項3】
前記グラフェンは、単層シート構造として、前記高分子樹脂間に介在する請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項4】
前記グラフェンと極性溶媒との反応性が増加するように、前記グラフェンの表面に形成される誘導体(derivative)をさらに含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項5】
前記高分子樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられる請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項6】
硬化剤をさらに含み、
前記硬化剤は、アミン系、イミダゾール系、グアニン系、酸無水物系、ジシアンジアミド系及びポリアミン系のうちの少なくともいずれか一つが用いられ、また前記硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−フェニルイミダゾール、ビス(2−エチル−4−メチルイミダゾール)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、トリアジン添加タイプイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項7】
硬化促進剤をさらに含み、
前記硬化促進剤は、フェノール(pheno1)、シアンエステル(cyanate ester)、アミン(amine)及びイミダゾール(imidazole)のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項8】
充填剤をさらに含み、
前記充填剤は、バリウムスルホネート、バリウムチタネート、シリコンオキサイド粉末、無定形シリカ、タルク、粘土及びマイカ粉末のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項9】
反応性希釈剤をさらに含み、
前記反応性希釈剤は、フェニルグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、レゾール型ノボラックタイプフェノール樹脂及びイソシアネート化合物のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項10】
バインダをさらに含み、
前記バインダは、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリシアネート樹脂及びポリエステル樹脂のうちの少なくともいずれか一つを含む請求項1に記載の高分子樹脂組成物。
【請求項11】
高分子樹指と、該高分子樹脂のファンデルワールス力に比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェンと、を有する高分子樹脂組成物で製造された印刷回路基板製造用絶縁フィルム。
【請求項12】
前記グラフェンは、前記高分子樹脂組成物内で0.05wt%〜40wt%に調節される請求項11に記載の印刷回路基板製造用絶縁フィルム。
【請求項13】
前記高分子樹脂は、エポキシ樹脂を含む請求項11に記載の印刷回路基板製造用絶縁フィルム。
【請求項14】
高分子樹脂と、該高分子樹脂のファンデルワールスカに比べて大きい引力で該高分子樹脂をリンクさせるグラフェンと、を混合して混合物を準備するステップと、
前記混合物を混合及び分散させて高分子ペーストを形成するステップと、
前記高分子ペーストをキャスティング(casting)処理してフィルム化するステップと、
を含む印刷回路基板製造用絶縁フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記混合物を準備するステップは、前記高分子ペースト内の前記グラフェンが、0.05〜0.4wt%に調節されるように、前記グラフェンの添加量を調節するステップを含む請求項14に記載の印刷回路基板製造用絶縁フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記高分子樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられる請求項14に記載の印刷回路基板製造用絶縁フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−72405(P2012−72405A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214472(P2011−214472)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】