説明

高分子消臭成分が配合された、毛髪処理剤及び毛髪用消臭剤

【課題】 不快臭(例えば、含イオウ化合物由来の不快臭等)に対し極めて優れた消・脱臭能を有し、しかもパーマ剤等に配合してもパーマ剤等を変質させない毛髪用消臭剤を提供することを、目的とする。更に、毛髪用消臭剤が予め配合されており、その結果、施術作業中及び施術後において不快臭がせず且つ消臭効果が長時間、持続し、しかもウェーブ力等が損なわれないパーマ剤等を提供することを、目的とする。
【解決手段】 陽イオン性基及び陰イオン性基を有し、分子量5×10以上の直鎖状高分子を含有することを特徴とする、毛髪処理剤及び毛髪用消臭剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、毛髪処理剤(特に、パーマネントウェーブ剤、縮毛矯正剤、及びカーリング剤等)、並びに毛髪用消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にパーマ剤第1剤には、還元剤として含イオウ化合物(チオグリコール酸等)が配合されている。しかし、従来、このようなパーマ剤を用いた場合、パーマ施術作業中及び施術後の頭髪には、含イオウ化合物由来の強い不快臭(特に、メルカプト臭)がする、といった問題があった。
一方、頭髪用消臭剤としては、例えば食塩水等の電気分解により得られる酸性水(電解水)を消臭成分としたエアゾール製品等が知られている(特許文献1、〔0006〕)。
しかし、上記エアゾール製品は噴霧タイプであるため、パーマ剤第1剤による施術作業中における不快臭を除去することはできない、更には、噴霧により消臭成分が揮散等し消臭効果があまり持続しない、といった問題があった。
そこで、このような問題を解決すべく、電解水をパーマ剤自体に予め配合することで、臭いを元から断つことが考えられる。
しかし、電解水は一般に次亜塩素酸等を含有する(特許文献1、〔0007〕)ため、次亜塩素酸とパーマ剤の薬効成分(特に、還元剤等)とが化学反応を起こし、パーマ剤が変質してしまい、その結果、ウェーブ力等が損なわれる、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−165868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑み、本願発明は、不快臭(例えば、含イオウ化合物由来の不快臭等)に対し極めて優れた消・脱臭能を有し、しかもパーマ剤等に配合してもパーマ剤等を変質させない毛髪用消臭剤を提供することを、目的とする。更に、本願発明は、毛髪用消臭剤が予め配合されており、その結果、施術作業中及び施術後において不快臭がせず且つ消臭効果が長時間、持続し、しかもウェーブ力等が損なわれないパーマ剤等を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本願発明者が鋭意、検討した結果、下記本願発明を成すに至った。
【0006】
即ち、本願第1発明は、陽イオン性基及び陰イオン性基を有し、分子量5×10以上の直鎖状高分子を含有することを特徴とする毛髪処理剤、を提供する。
【0007】
本願第2発明は、直鎖状高分子が、更に非イオン性基を有することを特徴とする本願第1発明の毛髪処理剤、を提供する。
【0008】
本願第3発明は、直鎖状高分子の分子量が2×10〜3×10であることを特徴とする本願第1発明又は第2発明の毛髪処理剤、を提供する。
【0009】
本願第4発明は、発明直鎖状高分子が、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂であることを特徴とする本願第1発明〜第3発明の何れかの毛髪処理剤、を提供する。
【0010】
本願第5発明は、毛髪処理剤が、パーマネントウェーブ剤、縮毛矯正剤、又はカーリング剤であることを特徴とする本願第1発明〜第4発明の何れかの毛髪処理剤、を提供する。
【0011】
本願第6発明は、陽イオン性基及び陰イオン性基を有し、分子量5×10以上の直鎖状高分子を含有することを特徴とする毛髪用消臭剤、を提供する。
【0012】
本願第7発明は、直鎖状高分子が、更に非イオン性基を有することを特徴とする本願第6発明の毛髪用消臭剤、を提供する。
【0013】
本願第8発明は、直鎖状高分子の分子量が2×10〜3×10であることを特徴とする本願第6発明又は第7発明の毛髪用消臭剤、を提供する。
【0014】
本願第9発明は、直鎖状高分子が、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂であることを特徴とする本願第6発明〜第8発明の何れかの毛髪用消臭剤、を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本願発明により、不快臭(例えば、含イオウ化合物由来の不快臭等)に対し極めて優れた消・脱臭能を有し、しかもパーマ剤等に配合してもパーマ剤等を変質させない毛髪用消臭剤を提供することができる。更に、本願発明により、毛髪用消臭剤がパーマ剤等に予め配合され、施術作業中及び施術後において不快臭がせず且つ消臭効果が長時間、持続し、しかもウェーブ力等が損なわれないパーマ剤等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明を、最良の実施形態に基づき、詳述する。
本願発明に係る毛髪処理剤には、消・脱臭成分として、陽イオン性基及び陰イオン性基を有する高分子を、含有する。これらの基により、酸性臭気分子(硫化水素等)及びアルカリ性臭気分子(アンモニア等)が吸着・中和される。
【0017】
本願に係る高分子において陽イオン性基としては例えば、酸性物質と中和反応し得る基(電気的中性基及び陽イオン基を含む。)等が挙げられる。具体的には陽イオン性基としては、塩基性基(第1級〜第3級アミノ基、アンモニウム基等)が挙げられ、一種以上、有してよい。
【0018】
本願に係る高分子において陰イオン性基としては例えば、アルカリ性物質と中和反応し得る基(電気的中性基及び陰イオン基を含む。)等が挙げられる。具体的には陰イオン性基としては、酸性基[カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、及びこれらの(脱プロトン化)陰イオン基等]が挙げられ、一種以上、有してよい。
【0019】
本願に係る高分子は、陽イオン性基及び陰イオン性基に加え、更に非イオン性基を有してよい。非イオン性基としては、具体的にはアルキル基(メチル基、エチル基等)、アミド基等が挙げられ、一種以上、有してよい。
【0020】
本願に係る高分子の分子量は、5×10以上、通常1×10〜5×10、典型的には2×10〜3×10である。分子量が小さ過ぎると、十分な分子間力にて臭気分子を吸着できないことがある。
【0021】
本願に係る高分子は、実質的に直鎖状の樹脂構造を有する。この樹脂の分子形状は、通常、水中等においては糸が複雑に絡み合ったような所謂、「糸まり」状である。この分子形状にて多数の超微細孔が形成され、この孔に臭気分子が取り込まれ吸着される。本願に係る高分子は、通常、水溶性である。また、噴霧により空気中において、ゾル又はゲルを形成する。
【0022】
そのような本願に係る高分子としては、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂(ポリアクリルアミド系樹脂及び/又はポリメタクリルアミド系樹脂)、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂等が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂である。
【0023】
具体的には、本願に係る高分子としては、陽イオン性基、陰イオン性基及び非イオン性基を有するポリ(メタ)アクリルアミド樹脂、アクリルアミド・(メタ)アクリル酸共重合樹脂[アクリルアミド・(メタ)アクリル酸アンモニウム系コポリマー、アクリルアミド・(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル系コポリマー]、4級アンモニウム系モノマー・(メタ)アクリル酸共重合樹脂[ジメチルジアリルアンモニウム化合物・(メタ)アクリル酸系コポリマー、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム化合物・(メタ)アクリル酸系コポリマー、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム化合物・(メタ)アクリル酸系コポリマー]、アクリルアミド・(メタ)アクリルジメチルアミノエチル・アクリル酸コポリマー等が挙げられ、一種以上、含有される。
【0024】
このような高分子化合物としては、例えばカルモア社製、「マイクロゲルS−B1」、「マイクロゲルS−NE」、;ダイヤニトリックス社製、「KA804E」、「KA606A」等の市販品を用いることができる。
【0025】
上述のとおり、本願に係る高分子は、アルカリ性臭気、酸性臭気、及び中性臭気の何れも、効果的に消臭することができる。従って、本願発明は、消・脱臭が必要とされる、あらゆる毛髪処理剤に対し、幅広く適用し得る。
【0026】
例えば、特に好適な毛髪処理剤としては、含イオウ化合物が配合されたもの(パーマ剤、縮毛矯正剤、及びカーリング剤等)が挙げられる。含イオウ化合物としては、具体的にはチオグリコール酸、システアミン、チオ乳酸、システイン、亜硫酸、チオグリセロール、ラクトンチオール、及びこれらの塩等が挙げられ、一種以上、含有してよい。
毛髪処理剤が多剤型の場合、本願に係る高分子は、臭気源(含イオウ化合物等)が配合される剤(通常、第1剤)中に、含有されるのが好ましい。
【0027】
本願に係る毛髪処理剤の組成において、毛髪処理剤が単剤型の場合は毛髪処理剤100ml中、また毛髪処理剤が多剤型の場合は本願に係る高分子が配合された剤100ml中、本願に係る高分子が0.0003〜0.3(特に、0.0005〜0.1)g、含有されるのが好ましい。高分子の含有量が多過ぎると粘度が高くなり、その結果、毛髪の施術操作が困難となる、毛髪処理剤が毛髪に浸透しにくくなる、或いは高分子の毛髪への吸着量が多くなり毛髪に硬さが出て毛髪の風合いを損ねる、等といったことがある。
【0028】
本願発明に係る毛髪処理剤は、下記本願に係る毛髪用消臭剤を、必要に応じ希釈した上で、従来の毛髪処理剤に加えることにより、調製することができる。
本願に係る毛髪用消臭剤は、[好ましくは媒体(水等)中に]本願に係る高分子が含有される。
【0029】
本願に係る毛髪用消臭剤は、その他添加剤として、例えば防腐剤、静・防・除菌剤(含窒素系チオール系、チアゾール系、ジグアニジン系等のもの)、最適pH値(典型的には7.5〜9.5)に調整するための緩衝剤(リン酸塩、クエン酸塩等)、消泡剤、キレート剤、アルコール系溶剤(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール等)、非イオン性界面活性剤、アミン類(尿素)、酸類(アミノ酸、マロン酸等)、アクリル系樹脂(メタアクリル酸・メタアクリル酸エステルポリマーのアルカリ塩等)、の1種以上(全部を含む。)、配合するのが好ましい。
【0030】
本願に係る毛髪用消臭剤の組成において、本願に係る高分子の含有量は、通常0.002〜0.5(典型的には0.005〜0.05)重量%である。
【実施例】
【0031】
以下、本願発明を、実施例にて具体的に説明する。
<毛髪用消臭剤の調製>
【0032】
・実施例A、B−1及びB−2、並びに比較例A
分子量分布の異なる種々の高分子を用い、これに精製水を加え、表1の所定濃度の各高分子液を調製した。これらを、毛髪用消臭剤(各実施例A、B−1及びB−2、並びに比較例A)として用いた。
【0033】
・比較例B
0.005重量%HClO水溶液(電解水)を、毛髪用消臭剤(比較例B)として用いた。
【0034】
【表1】

1)分子量分布約2×10〜3×10、カルモア社製、「マイクロゲルS−B1」。
2)分子量分布約6×10〜9×10、ダイヤニトリックス社製、「KA804E」。
3)分子量分布約2×10〜4×10、ダイヤニトリックス社製、「KA003」。
【0035】
<パーマ剤の調製>
・実施例1〜30、比較例1〜6、及び対照1〜5
表2〜6に示す配合組成に従い、各配合成分を各所定重量(g)加え、精製水にて全量を100mLとし、各パーマ剤第1剤及び第2剤を調製(各実施例1〜30、比較例1〜6、及び対照1〜5)した。
【0036】
<メルカプト臭の官能評価試験>
上記パーマ剤第1剤自体のメルカプト臭、下記パーマ施術中におけるメルカプト臭、及びパーマ施術の翌日の毛髪シャンプー時におけるメルカプト臭(残臭)について、それぞれ官能評価した。
表中、「1」は対照のメルカプト臭と同程度、「2」は対照のメルカプト臭よりやや弱い、「3」は対照のメルカプト臭よりかなり弱い、「4」はメルカプト臭が殆どしない、をそれぞれ表す。
【0037】
パーマ施術方法
毛束にパーマ剤第1剤を塗布し、これをロットに巻き、再度、ロット上から第1剤を塗布した(第1段階)。次いで、このロットをラップに包んだまま10分間放置した後、ラップを外した(第2段階)。次いで、このロットを軽く水洗し、タオルで水気を吸い取った(第3段階)。次いで、ロット上からパーマ剤第2剤を塗布し、8分間放置した。次いで、再度、ロット上から第2剤を塗布し、8分間放置した(第4段階)。次いで、毛束をロットから外し、水洗(第5段階)、タオルドライ(第6段階)、ドライヤー乾燥した(第7段階)。
【0038】
メルカプト臭の官能評価は、各段階終了毎にその都度、官能チェックを行い、これらを総合評価した。
【0039】
<パーマ剤の毛髪への浸透性試験>
毛束(幅5cm、長さ20cm)をロットに巻き、薬液(パーマ剤)をアプリケーターで塗布した。この時の薬液の毛髪への浸透性を、目視及び手触りにより官能評価した。
【0040】
表中、「○」は薬液が毛髪内にスッと浸透していく、「△」は薬液が毛髪表面にやや溜まり、それから浸透していく、「×」は薬液が毛髪表面を滑り、浸透しない、をそれぞれ表す。
【0041】
<パーマ剤のウェーブ力試験>
毛束(幅5cm、長さ20cm)をロットにパーマ剤第1剤にて付け巻きした後、再度第1剤を塗布し、10分間、放置した。次いで、ロットの上から毛束を軽く水洗・タオルドライした。次いで、ロットの上から第2剤を塗布し、8分間、放置した後、再度第2剤を塗布し、8分間、放置した。その後、ロットを外し(第1段階)、毛束を濯ぎ、タオルドライ、更に自然乾燥した(第2段階)。
ウェーブのかかり具合を、各段階終了毎にその都度、目視にて官能評価し、これらを総合評価した。
【0042】
表中、「○」は対照よりウェーブがしっかり、かかっている、「×」は対照よりウェーブが緩い、をそれぞれ表す。
【0043】
【表2】

4)チオグリコール酸換算。
【0044】
【表3】

5)システアミン換算。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

6)チオ乳酸換算。
【0047】
【表6】

7)昭和電工社製、登録商標「スピエラ」。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン性基及び陰イオン性基を有し、分子量5×10以上の直鎖状高分子を含有することを特徴とする毛髪処理剤。
【請求項2】
直鎖状高分子が、更に非イオン性基を有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
直鎖状高分子の分子量が2×10〜3×10であることを特徴とする請求項1又は2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
直鎖状高分子が、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
毛髪処理剤が、パーマネントウェーブ剤、縮毛矯正剤、又はカーリング剤であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の毛髪処理剤。
【請求項6】
陽イオン性基及び陰イオン性基を有し、分子量5×10以上の直鎖状高分子を含有することを特徴とする毛髪用消臭剤。
【請求項7】
直鎖状高分子が、更に非イオン性基を有することを特徴とする請求項6に記載の毛髪用消臭剤。
【請求項8】
直鎖状高分子の分子量が2×10〜3×10であることを特徴とする請求項6又は7に記載の毛髪用消臭剤。
【請求項9】
直鎖状高分子が、ポリ(メタ)アクリルアミド系樹脂であることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の毛髪用消臭剤。

【公開番号】特開2012−12375(P2012−12375A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162252(P2010−162252)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(591028980)山栄化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】