説明

高分子粒子及びその製造方法

【課題】電子写真の現像材、印刷用インク、建築用塗料、化粧品等の構成材料としての用
途が見込まれる高分子粒子及びその製造方法の提供。
【解決手段】本発明の高分子粒子の製造方法は、超臨界流体乃至亜臨界流体中での不均一重合により高分子粒子を形成する高分子粒子の製造方法において、前記超臨界流体乃至前記亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、ラジカル重合開始剤(II)とを併用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体乃至亜臨界流体中での単量体の不均一重合によって形成される微小な高分子粒子及びその製造方法に関する。該粒子は電子写真の現像材、印刷用インク、建築用塗料、化粧品等の構成材料としての用途が見込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来から、超臨界二酸化炭素中での単量体の不均一重合によって微小な粒子を製造する方法はよく知られており、乳化重合や分散重合、懸濁重合などがある。超臨界二酸化炭素中の不均一重合は、水や有機溶媒中で行う従来の不均一重合と比較して、1)重合後の溶媒除去や乾燥工程を簡素化できる、2)廃溶剤処理が不要である、3)毒性の高い有機溶剤を使用しなくてよいなどの優位点を含んでいることから、種々の単量体から微小な粒子を製造する方法に利用され、その粒子は上述したような各種用途に用いられている。しかしながら、従来の超臨界二酸化炭素中の不均一重合で得られる粒子の多くは、造粒時に界面活性剤が必須であることから、単量体に応じた界面活性剤を事前に合成し、準備する必要があった。これらの方法では、多品種の単量体に対応した重合粒子の製造を行う場合、それぞれ界面活性剤を合成、準備しなければならず、複数設備が必要、製造のリードタイムが長い、工数が多い、製品の収率(歩留り)が影響するなど、製造コストは高いものとなり改善が求められていた。
つまり、第1の課題は、単量体に応じた各種の界面活性剤を別途、合成し、準備することなく、重合粒子を得ることである。
第2の課題は、得られる重合粒子は、粒子表面のほぼ全体が滑らかであり球状に近いものが多かったため、例えば、有機媒体と混合してフィルムや塗料などの用途で使用した場合には使用後に粒子が脱落しまう、また、樹脂や金属等を粒子表面に被覆させた場合には被覆物が剥がれやすいなどということが多々あり、有機媒体および樹脂や金属などと粒子との親和性の悪さが問題となっていた。
【0003】
これまで、第1の課題に対して、特許文献1では、ポリジメチルシロキサン骨格を有する重合開始剤(和光純薬社製、商品名:VPS−501)を用いて、アクリル系単量体の重合によるサブミクロンサイズの樹脂粒子を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、粒子同士が合着、凝集することから単独粒子を得ることは困難であった。特に、ミクロンサイズの樹脂粒子の場合は、合着、凝集が顕著になり易く困難であった。また、得られる重合粒子の分子量は、Mw100,000〜600,000、Mn50,000〜300,000であり、トナーや画像形成用粒子として使用される分子量3,000〜50,000程度の低分子量の重合粒子を得ることは、さらに困難であった。この理由は、低分子量の重合粒子の場合、超臨界二酸化炭素に対して可塑化により流動化しやすく、高分子量の重合粒子に比べてはるかに合着、凝集を起こしやすいためである。つまり、低分子量かつミクロンサイズの重合粒子を合着、凝集せずに得ることは非常に困難であった。
【0004】
また、第1の課題に対する別の検討としては、重合粒子が単量体に不溶という性質の材料(アクリロニトリル)を利用し、界面活性剤を使用せず高分子粒子を得る方法を山形大学の宍戸らが成書「超臨界流体とナノテクノロジー」の中(第152頁)で報告している。しかし、界面活性剤を使用しない場合、粒子合着が起こる不具合があるとともに、重合粒子が単量体に不溶という性質を利用することが必要であることから使用できる単量体がアクリルニトリル等に限られるなど大きな制限があり、ポリスチレンやメタクリル酸メチル(MMA)といった汎用ポリマーには使用できない。またOdellら(特許文献2)は、二酸化硫黄を含有させた超臨界二酸化炭素中で析出重合の検討を行っているが、二酸化硫黄はその毒性や装置に対する腐食性など安全性に問題がある。さらにWilkinsonら(特許文献3)は、シリコーン界面活性剤と重合性単量体を用いて、超臨界二酸化炭素中で樹脂粒子を重合し、それをコアとして、その表面に親水性シェル層を形成し、水分散性を高めた粒子の作製を試みているが、この方法では界面活性剤を事前に合成し準備する必要があることから、得たい高分子粒子(各モノマー種)に対して、個別対応した界面活性剤の合成と開発が、別途必要であり、前述した製造工程の改善が大きな課題となる。
【0005】
また、第2の課題に対しては、粒子の表面改質を図り化学的親和性を大きくする試みがなされてきたが、十分解消するまでには至っていない。一方、粒子表面のアンカー効果を得るための物理的方法として、粉砕により粒子を得ることも考えられるが、粉砕をすると粗大粒子から微細粒子まで種々生成してしまい分級操作が必須となるため生産性やコスト面などから考えても好ましくなく、形状にもばらつきがありすぎることとなる。
【0006】
また、粒子の表面を非平滑にすることによって粒子の比表面積を大きくし、アンカー効果を高める改善が水中での重縮合によってなされているが、単量体の種類が限られ、大量の廃水が排出されるなどの問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−179707号公報
【特許文献2】米国特許第5,552,502号明細書
【特許文献3】米国特許第5,688,870号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明で解決しようとする第1の課題は、超臨界流体乃至亜臨界流体中で高分子粒子を重合する場合に、単量体に応じた界面活性剤を別途、合成し準備することなく、1ポットで高分子界面活性剤を合成すると同時に高分子粒子の造粒を効率よく行う方法を提供するとともに、低分子量かつミクロンサイズの重合粒子を合着、凝集せずに得ることである。
本発明で解決しようとする第2の課題は、超臨界流体乃至亜臨界流体を溶媒に用いる不均一重合により微小な多面体粒子を製造する技術を提供することである。
【0009】
上記課題は粒子表面のアンカー効果を高めることにより、上記用途で使用した場合に粒子の脱落や剥離を防ぎ、被覆物との密着性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、超臨界流体乃至亜臨界流体中で単量体の不均一重合により形成される高分子粒子の製造方法において、単量体とともに、前記超臨界流体乃至前記亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、これとは構造の異なるラジカル重合開始剤(II)と、を併用することにより、単量体の種類に応じた界面活性剤をあらかじめ準備し、添加する必要のない製造方法を提供し、低分子量かつミクロンサイズの重合粒子を合着、凝集せずに得ることができることが判った。この理由について以下に説明する。本法によれば、まず初めにラジカル重合開始剤(I)を熱分解することで高分子ラジカルを発生させる。次に、このラジカルは単量体と反応することで単量体に対して機能する高分子界面活性剤が合成される。次いで、この高分子界面活性剤の存在により不均一重合による高分子粒子の造粒が進行する。つまり、本法では、単量体とともにラジカル重合開始剤(I)とラジカル重合開始剤(II)とを併用することで、単量体に対して機能する界面活性剤を合成しながら不均一重合が進行し、高分子粒子を得ることができる。
これによって、前述の課題であった界面活性剤を別途合成し、準備する必要が無くなるとともに、第2の課題である高分子多面体粒子をも得ることが可能となった。
【0011】
特に、ラジカル重合開始剤(I)として下記一般式(1)で示される高分子アゾ重合開始剤を用いた場合、微小な多面体粒子が最適に得られることを見出し、本発明を完成した。
【化2】

(前記一般式(1)中、R1〜R5、R7、及びR9〜R12は、炭素数1〜4の炭化水素基を表し、m及びnは、繰り返し単位を表す整数である。R6及びR8はシアノ基を表す。)
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 超臨界流体乃至亜臨界流体中における単量体の不均一重合により高分子粒子を形成する高分子粒子の製造方法において、前記超臨界流体乃至前記亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、ラジカル重合開始剤(II)とを併用し、前記ラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量が50,000を超えることを特徴とする高分子粒子の製造方法である。
<2> 超臨界流体乃至亜臨界流体が、超臨界二酸化炭素乃至亜臨界二酸化炭素である前記<1>に記載の高分子粒子の製造方法である。
<3> 超臨界流体乃至亜臨界流体に対して親和性を有する基が、オルガノポリシロキサン骨格を含有する基である前記<1>から<2>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<4> ラジカル発生能を有する基が、アゾ基である前記<1>から<3>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<5> ラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量が70,000〜90,000である前記<1>から<4>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<6> ラジカル重合開始剤(I)が、オルガノポリシロキサン骨格を含有する高分子アゾ重合開始剤である前記<1>から<5>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<7> 高分子アゾ重合開始剤が、アゾ基とオルガノポリシロキサン骨格を含有する基とが繰り返し結合した構造を有する前記<6>に記載の高分子粒子の製造方法である。
<8> 高分子アゾ重合開始剤が、下記一般式(1)で示される構造を有する高分子アゾ重合開始剤である前記<6>から<7>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
【化2】

(前記一般式(1)中、R1〜R5、R7、及びR9〜R12は、炭素数1〜4の炭化水素基を表し、m及びnは、繰り返し単位を表す整数である。R6及びR8はシアノ基を表す。)
<9> 一般式(1)中のmが50〜200、nが3〜15である前記<8>に記載の高分子粒子の製造方法である。
<10> ラジカル重合開始剤(II)が、アゾ開始剤である前記<1>から<9>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<11> 単量体が芳香族ビニル単量体乃至該芳香族ビニル単量体の誘導体を含有する前記<1>から<10>のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法である。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする高分子粒子である。
<13> 高分子多面体粒子である前記<12>に記載の高分子粒子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超臨界流体乃至亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、ラジカル重合開始剤(II)とを併用し、超臨界流体乃至亜臨界流体中で単量体を不均一重合することにより、粒径分布の揃った数マイクロメートルの高分子粒子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる高分子粒子及びその製造方法に関する詳細について具体的に説明
するが、本発明の範囲はこれらの説明に何ら拘束されることはなく、以下の事例以外につ
いても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜実施し得る。
【0015】
(高分子粒子の製造方法)
本発明の高分子粒子の製造方法では、超臨界流体乃至亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、ラジカル重合開始剤(II)とを併用する。
【0016】
<ラジカル重合開始剤(I)>
前記ラジカル重合開始剤(I)は、超臨界流体乃至亜臨界流体(例えば、超臨界二酸化炭素)に対して親和性を有する基と、ラジカル発生能を有する基とを少なくとも同一分子内に有する。
ここで、超臨界流体乃至亜臨界流体(例えば、超臨界二酸化炭素)に対して親和性を有する基としては、オルガノポリシロキサン骨格を含有する基が挙げられ、オルガノポリシロキサン骨格を含有する基としては、直鎖または分岐のポリジメチルシロキサン基(アルキル基やフェニル基など一部他の基で置換された変性ポリジメチルシロキサン基も含む)などが挙げられる。
さらに、超臨界流体乃至亜臨界流体(例えば、超臨界二酸化炭素)に対して親和性を有する基としては、直鎖または分岐のパーフルオロアルキル基(アルキル基やフェニル基など一部他の基で置換された変性パーフルオロアルキル基も含む)、ジアルキルエーテル基、フッ素や塩素など一部ハロゲン置換された炭素数1〜20のアルキル基、トリメチルシロキサン基、フロロメチル基、ジフロロメチル基、トリフロロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基などを挙げることができる。この中でも、ポリジメチルシロキサン基、パーフルオロアルキル基が好ましく、環境負荷が低く、低コストな材料が多い点で、ポリジメチルシロキサン基がより好ましい。
また、ラジカル発生能を有する基としては、例えば、アゾ基、パーオキサイド基、ハイドロパーオキサイド基などが挙げられる。
【0017】
前記ラジカル重合開始剤(I)(高分子界面活性剤前駆体)は、下記一般式(1)で示される高分子アゾ重合開始剤であることが好ましい。
【化3】

(前記一般式(1)中、R1〜R5、R7、及びR9〜R12は、炭素数1〜4の炭化水素基を表し、m及びnは、繰り返し単位を表す整数である。R6及びR8はシアノ基を表す。)
ここで、一般式(1)中、mは50乃至200の整数を表し、100以上であることが好ましく、135であることがより好ましい。また、nは、3乃至15の整数を表し、5以上であることが好ましく、7乃至9であることがより好ましい。
また、R1〜R5及びR7の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、置換もしくは無置換のフェニル基が挙げられる。R9〜R12の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
中でも、R1〜R5及びR7がメチル基であり、R6及びR8がシアノ基であり、R9〜R10がメチレン基であり、R11〜R12がプロピレン基である場合が好ましい。
【0018】
一般式(1)で示されるラジカル重合開始剤(I)としては、和光純薬工業(株)から販売されている高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、商品名:VPS−1001)が挙げられ、最も好ましい。この高分子アゾ重合開始剤は、一般式(1)式において、m=135であり、数平均分子量が70,000乃至90,000であり、ポリジメチルシロキサン部分の分子量は約10,000であり、VPS−1001の1g当たりのアゾ基のモル数は約0.09mmol/gである。
また、VPS−1001の類似化合物として、前記(1)式中、m=68であり、数平均分子量が30,000乃至50,000であり、ポリジメチルシロキサン部分の分子量が約5,000であるVPS−501(和光純薬社製)があるが、このVPS−501を用いた場合は、低分子量かつミクロンサイズの重合粒子を合着、凝集せずに得ることはできない。
この理由は、ポリジメチルシロキサン部分の分子鎖がVPS−1001と比べて短く、また、高分子アゾ重合開始剤自体の分子量も低いことから、分散重合時の界面活性能(分散樹脂としての分散能)が劣り、重合粒子が合着、凝集するためと考えられる。
よって、前記高分子アゾ重合開始剤は、ポリジメチルシロキサン鎖が長いVPS−1001を用いることが好ましく、VPS−501を使用した場合は、低分子量かつミクロンサイズの重合粒子を造粒することはできず、また高分子多面体粒子も得られない。
したがって、本発明におけるラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量は、50,000超であることが好ましく、その上限値は、少なくとも超臨界流体乃至亜臨界流体中における単量体の重合開始剤として機能し得る程度に、超(亜)臨界流体または単量体に対して溶解する分子量であればよく、特に限定されない。より好ましくは、ラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量が70,000〜90,000である。
【0019】
一般式(1)で示されるラジカル重合開始剤(I)は、超(亜)臨界流体を溶媒とする単量体の不均一重合中に、該ラジカル重合開始剤(I)の主鎖中のアゾ基部分が分解し、この位置で単量体の重合体と結合したブロック共重合体を形成する。該ブロック共重合体が単量体の不均一重合で形成される不溶な重合体を取り囲んで安定化することにより、多面体状の粒子が形成される。
【0020】
すなわち、該ブロック共重合体を構成するポリジメチルシロキサンセグメントに周囲を取り囲まれている重合体の粒子が、急激な圧力低下によって、ガラス転移点の低いポリジメチルシロキサンセグメントが互いに強く密着するために、表面が平滑な球状粒子にはならず、非平滑な多面体の高分子粒子が形成されると考えられる。
ここで、高分子多面体粒子とは、真球状粒子の球面に対して平面や凹面を複数持つ状態の粒子を表しており、具体的な例として、図4で例示したSEM写真のような状態の粒子のことをいう。
【0021】
<ラジカル重合開始剤(II)>
前記ラジカル重合開始剤(II)には、アゾ開始剤、過酸化物、遷移金属誘導体開始剤、遷移金属−有機ハロゲン化物開始剤、光開始剤などが含まれ、好ましくは40℃乃至100℃の範囲に10時間半減期温度をもつアゾ開始剤もしくは過酸化物を使用することが好ましい。
前記ラジカル重合開始剤(II)としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオクトエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキシカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、過硫酸カリウム等のような過酸化物あるいはこれにチオ硫酸ナトリウム、アミン等を併用した系、などが挙げられる。
【0022】
<単量体>
本発明の高分子粒子を製造するための単量体としては、多くのラジカル重合性単量体を使用することができる。
【0023】
単量体としては、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、カルボン酸ビニルエステル単量体、ハロゲン化ビニル単量体、などが挙げられる。中でも、芳香族ビニル単量体が好ましく、スチレン単量体とその誘導体がより好ましい。
【0024】
芳香族ビニル単量体としては、スチレンの他、ビニルベンジルクロリド、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、p−シアノスチレンなどが挙げられる。
【0025】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリルの他、メタクリロイルなどが挙げられる。
【0026】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、メタクリル酸メチルの他、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、α−シアノアクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチルなどが挙げられる。
【0027】
共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエンの他、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0028】
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体として、メタクリルアミドの他、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、マレイミドなどが挙げられる。
【0029】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体として、メタクリル酸の他、アクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
【0030】
カルボン酸ビニルエステル単量体としては酢酸ビニルが代表的であり、ハロゲン化ビニル単量体としては塩化ビニルが代表的である。これらの単量体は2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の高分子粒子の製造方法において、単量体総量1モルに対して、ラジカル重合開始剤(II)は0.005モル乃至0.05モルになるように使用することが好ましく、0.01モル乃至0.03モル使用することがより好ましい。
【0032】
また、本発明の高分子粒子の製造方法において、単量体総量100質量部に対して、一般式(1)のラジカル重合開始剤(I)は0.5質量部乃至10質量部になるように使用することが好ましく、2質量部乃至8質量部使用することがより好ましい。
【0033】
本発明の製造方法において単量体は、製造の反応容器として使用する高圧セルの容量100体積部に対して5体積部乃至50体積部になるように使用することが好ましく、10体積部乃至30体積部使用することがより好ましい。
【0034】
本発明の製造方法では、反応容器である高圧セルの温度は、40℃乃至80℃であり、55℃乃至70℃であることが好ましい。40℃より温度が低いと重合速度が遅くなり多大な重合時間を要するために好ましくなく、80℃より温度が高いと多大な圧力を要するため高圧セルに負担がかかり好ましくない。また、高圧セルの圧力は、20MPa乃至50MPaであり、30MPa乃至40MPaに保つことが好ましい。20MPaよりも圧力が低いと重合中に沈殿を生じて粒子が不定形になり、50MPaよりも圧力が高いと高圧セルに負担がかかり好ましくない。一方、重合の撹拌速度は、100rpm乃至900rpmであり、200rpmないし800rpmであることが好ましい。100rpmより遅いもしくは900rpmより速いと、粒子の合着が起こり好ましくない。
【0035】
本発明の製造方法で得られた重合体の数平均分子量(Mn)は、多くの場合、約5,000〜8,000であり、また分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜2.5である。
【0036】
本発明の製造方法で得られた高分子粒子(多面体粒子)の粒径は、1μm〜4μmの範囲で制御することができる。また、粒径の多分散度は1.2〜2.9であり、粒径の揃った高分子粒子(多面体粒子)を得ることができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
市販のスチレン単量体を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後、減圧蒸留することによってラジカル重合禁止剤を除去した。この精製したスチレン単量体に、撹拌子で撹拌しながら窒素ガスを15分間バブリングすることにより単量体中に含まれる酸素を除去した。この精製および脱酸素を行ったスチレン単量体の2.2mLを、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の100mgに加え、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)が完全に溶解するまで室温で撹拌子で撹拌した。内容量が10mLの高圧セルに窒素ガスを吹き込むことによって酸素を除去した後、この高圧セルに、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)の95mgと、前述の高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)のスチレン溶液を加え密栓した。その後、冷却器を取り付けたダブルプランジャーポンプにより液化させた二酸化炭素を35℃で約18MPaになるまで送入し、バルブを閉めた。高圧セルを65℃まで加熱後、40MPaになるまで再び液化二酸化炭素を送入し、65℃で24時間、撹拌速度300rpmで反応させた。反応終了後、高圧セルを室温まで冷却し、二酸化炭素を徐々に排出して常圧に戻すことによって白色粉末状の粒子を得た。この粒子の数平均分子量(Mn)は7,140であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.17であった。得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。この粒子の粒径(Dn)は1.02マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は1.20であった。
【0038】
<GPCによる分子量測定>
樹脂の分子量測定は、GPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0ml/分
・試料:濃度0.5%の試料を1mL注入
以上の条件で測定した樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してトナーの個数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwとして算出した。
【0039】
<分散度の測定>
粒径の分散度について、SEM写真から無作為に100個の粒子を抽出し、その直径を測定し、下記、分散度の計算式より導いた。
分散度の計算:Dw/Dn=ΣDi/ΣDi
D:粒子の直径
【0040】
(比較例1)
高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)を添加しないこと以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体の粒子は不定形であった(図2)。
【0041】
(比較例2)
アゾビスイソブチロニトリルを添加しないこと以外は、実施例1と同様に製造を行った。重合はほとんど進行せず、重合体は未反応のスチレン単量体に溶解した状態で得られたため、粒子の形状観察は困難であった。
【0042】
(比較例3)
高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の代わりに、ジメチルシロキサンのホモポリマー(数平均分子量(Mn)46,000、分子量分布(Mw/Mn)1.96)を用いたこと以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体の粒子は不定形であった。
【0043】
(実施例2)
粒子の生成に及ぼす撹拌速度の影響を調べるために、撹拌速度を700rpmおよび1,000rpmに設定し、それ以外の条件は実施例1と同様の方法で行った。撹拌速度700rpmで得られた粒子の数平均分子量(Mn)は7,990であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.04であった。この粒子の粒径(Dn)は1.65マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は1.99であった。一方、撹拌速度1,000rpmで得られた粒子の数平均分子量(Mn)は8,470であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.96であった。この粒子の粒径(Dn)は1.13マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は2.70であった。また、撹拌速度1,000rpmでは、粒子の凝集が観察された。粒子(撹拌速度700rpm)の走査型電子顕微鏡写真を図3Aに示し、粒子(撹拌速度1,000rpm)の走査型電子顕微鏡写真を図3Bに示す。
【0044】
(実施例3)
市販の4−クロロスチレン単量体を、5重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後、減圧蒸留することによってラジカル重合禁止剤を除去した。この精製した4−クロロスチレン単量体に、撹拌子で撹拌しながら窒素ガスを15分間バブリングすることにより単量体中に含まれる酸素を除去した。この精製および脱酸素を行った4−クロロスチレン単量体の2.2mLに高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)を4wt%添加し、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)が均一に分散するまで室温で撹拌子で撹拌した。内容量が10mLの高圧セルに窒素ガスを吹き込むことによって酸素を除去した後、この高圧セルに、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製)を0.263Mと、前述の高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の4−クロロスチレン溶液を加え密栓した。その後、冷却器を取り付けたダブルプランジャーポンプにより液化させた二酸化炭素を35°Cで約18MPaになるまで送入し、バルブを閉めた。高圧セルを65°Cまで加熱後、40MPaになるまで再び液化二酸化炭素を送入し、65°Cで24時間、撹拌速度300rpmで反応させた。反応終了後、高圧セルを室温まで冷却し、二酸化炭素を徐々に排出して常圧に戻すことによって白色粉末状の粒子を得た。この粒子の数平均分子量(Mn)は46,400であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.49であった。この粒子の粒径(Dn)は1.53マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は2.31であった。
【0045】
(実施例4)
反応温度を55℃に変えた以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体の粒子の数平均分子量(Mn)は16,300であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.71、粒径(Dn)は1.34マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は2.45であった。
【0046】
(実施例5〜7)
高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の添加量を下記表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体粒子の結果を表1に示す。
【表1】

【0047】
(比較例4)
高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の代わりに、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−501)を用いた以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体粒子の数平均分子量(Mn)は7,020であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.31、粒径(Dn)は0.805マイクロメートルであり、分散度(Dw/Dn)は1.20であった。しかし、粒子は凝集、合着を起こしており、単独粒子として取り出すことはできなかった。図5にSEM写真を示す。
【0048】
(比較例5)
スチレン単量体の代わりメタクリル酸メチル単量体を用い、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−1001)の代わりに、高分子アゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−501)を用いた以外は、実施例1と同様に製造を行った。得られた重合体粒子の数平均分子量(Mn)は21,800であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.09であった。粒子は凝集、合着を起こしており、単独粒子として取り出すことはできなかった。図6にSEM写真を示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、実施例1で得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】図2は、比較例1で得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3A】図3Aは、実施例2で得られた粒子(撹拌速度700rpm)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3B】図3Bは、実施例2で得られた粒子(撹拌速度1,000rpm)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、高分子多面体粒子(実施例1)の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】図5は、比較例4で得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】図6は、比較例5で得られた粒子の走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体乃至亜臨界流体中における単量体の不均一重合により高分子粒子を形成する高分子粒子の製造方法において、前記超臨界流体乃至前記亜臨界流体に対して親和性を有する基及びラジカル発生能を有する基を少なくとも同一分子内に有するラジカル重合開始剤(I)と、ラジカル重合開始剤(II)とを併用し、前記ラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量が50,000を超えることを特徴とする高分子粒子の製造方法。
【請求項2】
超臨界流体乃至亜臨界流体が、超臨界二酸化炭素乃至亜臨界二酸化炭素である請求項1に記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項3】
超臨界流体乃至亜臨界流体に対して親和性を有する基が、オルガノポリシロキサン骨格を含有する基である請求項1から2のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項4】
ラジカル発生能を有する基が、アゾ基である請求項1から3のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項5】
ラジカル重合開始剤(I)の数平均分子量が70,000〜90,000である請求項1から4のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項6】
ラジカル重合開始剤(I)が、オルガノポリシロキサン骨格を含有する高分子アゾ重合開始剤である請求項1から5のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項7】
高分子アゾ重合開始剤が、アゾ基とオルガノポリシロキサン骨格を含有する基とが繰り返し結合した構造を有する請求項6に記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項8】
高分子アゾ重合開始剤が、下記一般式(1)で示される構造を有する高分子アゾ重合開始剤である請求項6から7のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【化1】

(前記一般式(1)中、R1〜R5、R7、及びR9〜R12は、炭素数1〜4の炭化水素基を表し、m及びnは、繰り返し単位を表す整数である。R6及びR8はシアノ基を表す。)
【請求項9】
一般式(1)中のmが50〜200、nが3〜15である請求項8に記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項10】
ラジカル重合開始剤(II)が、アゾ開始剤である請求項1から9のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項11】
単量体が芳香族ビニル単量体乃至該芳香族ビニル単量体の誘導体を含有する請求項1から10のいずれかに記載の高分子粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする高分子粒子。
【請求項13】
高分子多面体粒子である請求項12に記載の高分子粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−132878(P2009−132878A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269500(P2008−269500)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】