説明

高分子粒子集合体

【課題】本発明は、マトリクス樹脂に対して優れたハンドリング性や耐熱衝撃性を付与する高分子粒子集合体に関する。
【解決手段】高分子粒子を集合させて得られる高分子粒子集合体の平均粒子径が、集合体を構成する高分子粒子(A)の体積平均粒子径の2〜1000倍である高分子粒子集合体。該高分子集合体が、たとえば液状樹脂中に存在している場合に当該液状樹脂が糸引き性を示さず、或いは硬化性樹脂中に存在する場合に当該硬化物の耐冷熱衝撃性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス樹脂に対して優れたハンドリング性や耐熱衝撃性を付与する高分子粒子集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高分子複合材料に関する技術進展は目覚しく、マトリクス樹脂に対してフィラーを加え複合材料とすることで、たとえば硬化性樹脂においてはその耐衝撃性が向上したりする等、マトリクス樹脂に対してさまざまな特性を付与することが可能となっている(たとえば特許文献1)。
【0003】
また、高分子複合材料においては、マトリクス樹脂となる高分子の化学構造のみならず、添加されるフィラーの分散状態が複合材料の特性に大きく影響を与えることもよく知られている。どのような分散状態が好ましいかは、複合材料に求められる特性によって異なり、フィラーが均一に分散している方が特性に優れる場合もあれば(たとえば先行技術文献1)、フィラーがマトリクス中で集合している方が好ましい場合もある(たとえば先行技術文献2)。
【0004】
特にフィラーが集合体を形成する方が好ましいような状況においては、フィラーの2次粒子径を制御することによって、複合材料の特性を制御可能である。たとえばシリカをフィラーとして用いた場合、大きな2次粒子径を有するシリカを粉砕・あるいは強いせん断をかけることにより2次粒子径を制御する方法がとられているが、もともと多くのフィラーが凝集したものを細かく分断する従来の方法では、集合体のサイズを正確に制御することは困難であった。
【0005】
一方で、マトリクス樹脂に対してフィラーを添加した場合、複合材料の特性を向上させようとして多くのフィラーを添加すると、例えば接着剤組成物では組成物の糸引きが発生し、これに由来するハンドリング性の低下が問題となっていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−50361公報
【特許文献2】特開2009−120826公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】松下電工技報、第53巻、第3号、77頁
【非特許文献2】日本ゴム協会誌、第82巻、第9号、394頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記現状に鑑みなされたもので、たとえば液状樹脂にフィラーとして分散させた場合に糸引きを起こさず、また硬化性樹脂に分散させた場合に硬化物の耐冷熱衝撃性を向上させるような高分子粒子集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、高分子粒子を集合させて得られる高分子集合体が、たとえば液状樹脂中に存在している場合に当該液状樹脂が糸引き性を示さず、或いは硬化性樹脂中に存在する場合に当該硬化物の耐冷熱衝撃性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
1) 高分子粒子集合体の平均粒子径が、集合体を構成する高分子粒子(A)の体積平均粒子径の2〜1000倍である高分子粒子集合体。
【0011】
2) 高分子粒子(A)と凝集助剤(B)を混合して得られることを特徴とする1)に記載の高分子粒子集合体。
【0012】
3) 高分子粒子(A)が、表面にヒドロキシ基を有する高分子粒子であることを特徴とする1)または2)に記載の高分子粒子集合体
4) 凝集助剤(B)が、シラノール基、シロキサン基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を一分子中に有するケイ素化合物であることを特徴とする2)または3)に記載の高分子粒子集合体。
【0013】
5) 凝集助剤(B)が、酸または塩基触媒であることを特徴とする2)または3)に記載の高分子粒子集合体。
【0014】
6) 高分子粒子(A)が、シリコーン系粒子であることを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体。
【0015】
7) 前記シリコーン系粒子が、コア粒子を合成した後、コア粒子の存在下でアルコキシシラン(C)を添加し、縮合させて得られる粒子(A−2)であることを特徴とする6)に記載の高分子粒子集合体。
【0016】
8) 前記シリコーン系粒子が、前記粒子(A−2)の存在下で、さらにアルコキシシラン(D)を添加し、縮合させて得られる粒子(A−3)であることを特徴とする7)に記載の高分子粒子集合体。
【0017】
9) 前記コア粒子が、少なくとも1種類の環状シロキサンを含む珪素化合物を重合して得られることを特徴とする7)または8)に記載の高分子粒子集合体。
【0018】
10) アルコキシシラン(D)が、少なくとも1種類の1官能性アルコキシシランを含むことを特徴とする8)または9)記載の高分子粒子集合体。
【0019】
11) シリコーン粒子(A−2)が、コア粒子50〜99重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを1〜50重量%重合して得られた粒子であることを特徴とする7)〜10)のいずれか一項に記載の高分子集合体。
【0020】
12) シリコーン粒子(A−3)が、コア粒子40〜98重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを1〜40重量%重合し、さらに(D)成分であるアルコキシシランを1〜30%重合し得られた粒子であることを特徴とする8)〜10)のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体。
【0021】
13) 1)〜12)のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体が、分散した液状樹脂組成物。
【0022】
14) 前記液状樹脂が、光硬化性液状樹脂であることを特徴とする13)に記載の液状樹脂組成物。
【0023】
15) 前記液状樹脂が、熱硬化性液状樹脂であることを特徴とする13)に記載の液状樹脂組成物。
【0024】
16) 前記液状樹脂が、硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする13)〜15)いずれか一項に記載の液状樹脂組成物。
【0025】
17) 前記硬化性シリコーン樹脂が、アルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)を含有することを特徴とする16)に記載の液状樹脂組成物。
【0026】
18) 前記硬化性シリコーン樹脂が、ヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)を含有することを特徴とする16)または17)に記載の液状樹脂組成物。
【0027】
19) (E)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする17)または18)に記載の液状樹脂組成物。
【0028】
20) (F)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(4)、(5)
b1b22SiO1/2(4)
b23SiO1/2(5)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(4)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする18)または19)に記載の液状樹脂組成物。
【0029】
21) 13)〜20)のいずれかに記載の液状樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、たとえば液状樹脂に分散させた場合に、糸引き性を呈することなく液状樹脂組成物の諸特性を向上させることのできる高分子粒子集合体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0032】
<(A)高分子粒子>
本発明における高分子粒子とは高分子を主成分とする粒子を示す。その重量平均分子量は粒子の形状保持の観点から好ましくは1000以上であり、10000以上であることがより好ましく、100000以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合、粒子の形状が保持できなくなる場合がある。重量平均分子量の測定は、たとえばGPC(東ソー製、HLC−8220GPC)を用いて行うことができる。
【0033】
また本発明における高分子粒子の重合方法は特に限定されないが、乳化重合や懸濁重合などが例示される。また本発明における高分子粒子の粒子径については特に限定はしないが、高分子粒子集合体を効率的に形成させる観点から、好ましくはその体積平均粒子径が0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2μmがより好ましく、0.05μm〜0.5μmがさらに好ましい。高分子粒子の体積平均粒子径が0.005μmを下回る場合、高分子粒子の集合が効率的でなくなる場合がある。
【0034】
高分子粒子の体積平均粒径の測定は、たとえばナノトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて行うことができる。また、高分子粒子集合体の平均粒子径は、高分子粒子集合体が存在するマトリクス樹脂を透過型電子顕微鏡により観察し、視野中に存在する高分子粒子集合体の大きさを測定し求めることができる。
【0035】
本発明の特徴を妨げない範囲で、(A)高分子粒子を表面処理することができる。表面処理を行うことにより、(A)成分が集合体を形成することを促進させることができる。この際に用いる表面処理剤としては、例えば、シリル化剤を用いることができる。ここで用いるシリル化剤としては、一般的にアルキルシラン、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチル(ジ)シラザンが挙げられる。これらシリル化剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
また表面処理の際に、マトリクス樹脂成分と結合能を有する官能基、例えばアルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基等を(A)成分の表面に導入することで、高分子粒子集合体のサイズを制御することができる。表面処理された(A)成分は、(A)成分が液状のマトリクス樹脂成分中で集合体を形成する場合に好ましい。このマトリクス液状樹脂成分との結合能を有する官能基を重合体表面に導入する際のシリル化剤としては、一般的にアルケニルシラン、例えばクロロジメチルビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、トリクロロビニルシランが挙げられる。これらシリル化剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
また本発明における高分子粒子には、たとえば液状樹脂中に本発明の高分子粒子集合体が存在した場合の組成物の耐熱性の観点から、シリコーン系粒子((A−1)成分)を用いることが望ましい。シリコーン系粒子(A−1)は、粒子中に少なくとも1個シロキサン基を有する粒子であれば特に限定はされず、またその形状に関しても特に限定はしないが、体積平均粒子径については0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2.0μmがより好ましく、0.05μm〜0.5μmが特に好ましい。体積平均粒径が小さい場合、シリコーン系粒子(A−1)を含有する組成物の粘度の増加が起きることがあり、また体積平均粒子径が大きい場合、硬化物の透明性が悪くなることがある。
【0038】
(A−1)成分の集合体サイズや形状を制御するために、シリコーン系粒子の表面あるいは内部に有機基を導入することも可能であり、導入に際してはたとえば共有結合の形成や、分子間力を利用した包接などの手段が挙げられる。また導入する有機基としては、たとえばビニル基、アクリル基、カルボキシル基、エステル基、エーテル基、チオール基、メルカプト基、シアノ基、アリール基などが挙げられる。
【0039】
(A−1)成分は、コア粒子の存在下アルコキシシラン(C)を添加してことによって得られる(A−2)成分であることが好ましい。この場合におけるコア粒子とは、後述するアルコキシシランの縮合反応を妨げないような粒子であれば特に限定されず、種々の有機高分子粒子および無機高分子粒子を用いることができ、有機高分子粒子の具体例としてポリエチレン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル酸ブチルゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、ブタジエン−スチレン粒子やブタジエン−アクリロニトリルゴム粒子、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体粒子やスチレン−アクリロニトリル共重合体粒子などが挙げられ、また無機高分子粒子の具体例として、シリコーン系粒子、炭酸カルシウム粒子、カーボンブラック粒子、カーボンナノチューブ粒子、酸化チタン粒子などが挙げられるが、高分子集合体の耐熱性の観点から無機高分子粒子を用いることが好ましく、さらに粒子径の制御のし易さの観点からシリコーン系粒子を用いることがより好ましい。
【0040】
前記コア粒子として好ましいシリコーン系粒子は、オルガノシロキサンの重合に得られる粒子が好ましく、そのオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状構造のいずれであってもよいが、入手の容易さやコストの観点から、環状構造を有するオルガノシロキサンを用いるのが好ましい。
【0041】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらオルガノシロキサンは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の一価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびそれらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などをあげることができる。
【0042】
また、コア粒子の製造方法には、特に限定はしないが、通常の乳化重合、分散重合、溶液重合などでも得ることが可能であり、粒径の分布の制御が可能である点や、操作の簡便性等の点を考慮すると、乳化重合で得ることが好ましい。コア粒子は、より粒子径の小さい粒子を得ることができ、さらにラテックス状態での粒子径が狭くできる利点などからもシード重合を利用することが好ましい。シード重合に用いるシードポリマーは特に限定はしないが、アクリル酸ブチルゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンやブタジエン−アクリロニトリルゴム等のゴム成分、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体やスチレン−アクリロニトリル共重合体等の重合体を用いることができる。
【0043】
シリコーン系粒子をコア粒子とする場合、コア粒子を酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応が速く進行するため有利である。たとえば前記のオルガノシロキサンを含んだ各種原料を、乳化剤および水とともにホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザーなどを用いてエマルジョンとし、次いで、系のpHを酸成分で5以下、好ましくは4以下に調整し、加熱して重合させる。この際に用いる酸成分としては、安定して乳化重合を進行させることができ、またそれ自身も乳化能を併せ持つものが好ましく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホコハク酸などが例示されうる。
【0044】
上記シリコーン系コア粒子の重合は、原料の全部を一括添加したのち、一定時間撹拌してからpHを任意の値に調整してもよく、また原料の一部を仕込んでpHを任意の値に調整したエマルジョンに残りの原料を逐次追加してもよい。逐次追加する場合、そのままの状態、または水および乳化剤と混合して乳化液とした状態のいずれで添加してもよいが、重合速度を速くすることができるので、乳化状態で追加する方法を用いることが好ましい。反応温度、時間は、反応制御の容易さから反応温度は0〜100℃が好ましく、50〜95℃がさらに好ましい。反応時間は、好ましくは1〜100時間であり、さらに好ましくは3〜50時間である。
【0045】
酸性条件下で重合を行う場合、通常、シリコーン系コア粒子の骨格を形成しているSi−O−Si結合は、切断と結合生成の平衡状態にある。この平衡は温度によって変化し、低温になるほど高分子量のコア粒子が生成しやすくなる。したがって、高分子量のコア粒子を得るためには、加熱により重合した後、重合温度以下に冷却して熟成を行うことが好ましい。具体的には、50℃以上で重合を行い重合転化率が75〜90%、さらに好ましくは82〜89%に達した時点で加熱を止め、重合温度より低い温度例えば、10〜50℃、好ましくは20〜45℃に冷却して5〜100時間程度熟成を行うことができる。なお、ここで言う重合転化率は原料中の低揮発分のオルガノシロキサンのコア粒子への転化率を意味する。
【0046】
また、乳化重合に用いる水の量についてはとくに制限は無く、各種原料を乳化分散させるために必要な量であれば良く、あえて例示するなら通常原料の合計量に対して1〜20倍の重量を用いれば良い。
【0047】
乳化重合に用いる乳化剤は、反応を行うpH領域において乳化能を失わないものであれば特に限定なく公知のものを使用することができる。かかる乳化剤の例としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、該乳化剤の使用量にはとくに限定がなく、目的とするコア粒子の粒子径などに応じて適宜調整すればよい。
【0048】
本発明に用いるコア粒子の合成の際に、必要によっては架橋剤、グラフト交叉剤と言われるものを使用することもできる。
【0049】
本発明のコア粒子の合成に用いることができる架橋剤としては、コア粒子がシリコーン系粒子である場合、例えばトリメトキシメチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの縮合反応に関与できる官能基を3個含むいわゆる3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、1,3ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−3−〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−4−〔2−ジメトキシメチルシリル〕エチル〕ベンゼンなどの縮合反応に関与できる官能基を4個含むいわゆる4官能性架橋剤、さらにはこれら架橋剤のアルコキシ基を縮合させた部分縮合物を挙げることができる。
【0050】
これら架橋剤は、必要に応じ、1種若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。この架橋剤の使用量は、コア粒子の内、0.1〜10重量%がこのましい。架橋剤の使用が多いと、コア粒子の柔軟性が損なわれるため、高分子集合体をマトリクスに配合した際に、耐衝撃性が低下することがあり、例えばマトリクスがオルガノポリシロキサン樹脂である場合、硬化樹脂の低温での耐冷熱衝撃性が低下する場合がある。また架橋剤の使用量を調節することで、架橋度を変化させることによりコア粒子の弾性を任意に調節することができる。コア粒子は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である重合体であることが好ましい。
【0051】
本発明に用いることができるグラフト交叉剤は、コア粒子がシリコーン系粒子である場合、例えばp−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0052】
本発明の高分子集合体を構成する高分子粒子は、コア・シェル構造を有することが、高分子集合体のモルフォルジーを制御し、マトリクスの特性を向上させる点において好ましい。
【0053】
高分子粒子がシリコーン系粒子である場合、前記シリコーン系コア粒子存在下、アルコキシシラン(C)成分を重合した高分子粒子(A−2)が好ましい粒子形態として例示できる。(C)成分として用いるアルコキシシランは、高分子粒子集合体の形状維持の観点から、下記一般式(6)で表される(a)成分である1官能性アルコキシシランを用いないことが好ましい。(a)成分である1官能性アルコキシシラン以外のアルコキシシランであれば、その構造は特に限定はしないが、あえて例示するなら以下の一般式(7)で表される(b)成分である2官能性アルコキシシラン、一般式(4)で表される(c)成分である3官能性アルコキシシラン、一般式(5)で表される4官能性アルコキシシラン、およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)等が挙げられる。これらアルコキシシランは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0054】
(a)成分:一般式(6)
【0055】
【化1】

【0056】
(一般式(6)において、R12はアルキル基を示し、R13、R14、R15は同一または異なる一価の有機基を示す。)
(b)成分:一般式(7)
【0057】
【化2】

【0058】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物。
【0059】
(c)成分:一般式(8)
【0060】
【化3】

【0061】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物。
【0062】
(d)成分:一般式(9)
【0063】
【化4】

【0064】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシランおよび/またはその部分縮合物。
【0065】
上記一般式(7)〜(9)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。また、有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等の炭化水素基があげられる。
【0066】
(A−2)成分はコア粒子40〜98重量%に対して(C)成分を1〜40重量%(ただし、コア粒子と(C)成分をあわせて100重量%)添加し重合して得られることが好ましく、さらにはコア粒子35〜96重量%に対して(C)成分を2〜37重量%添加し重合して得られることがより好ましい。コア粒子が少ない場合、粒子の柔軟性が損なわれるため、たとえば高分子粒子集合体を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物の耐冷熱衝撃性が損なわれる可能性がある。また(C)成分が少ない場合、コア粒子の形状維持ができず、たとえば高分子粒子集合体を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物の強度を低下させるなど物性の低下を招くことがある。
【0067】
また、(A−1)成分は、(C)成分の重合後、さらにアルコキシシラン(D)を添加し重合することによって得られる(A−3)成分であることがさらに好ましい。アルコキシシラン(D)により、たとえばコア粒子の表面に多数存在するシラノール基を減らすことができる。これにより、粒子表面のシラノール基に由来する様々な課題、たとえば高分子粒子集合体が液状樹脂に含有される場合、高分子粒子集合体とマトリクスとの相溶性や親和性が低下する点を回避できる。たとえばシリコーンゴムやシリコーン樹脂に本発明の高分子粒子集合体が含有される場合、当該組成物の粘度が高くなりすぎてしまう点や、配合物が経時変化して粘度が次第に上昇する点を解決することができる。
【0068】
アルコキシシラン(D)成分を添加して重合して得られた高分子粒子(A−3)は、粒子表面のシラノール基が少なく、例えば硬化性シリコーン組成物に含有される場合、冷熱試験の際に硬化物の吸湿による封止層のクラックの発生を低減する点において優れる。
【0069】
(D)成分のアルコキシシランとして、以下の一般式(6)で表される(a)成分である1官能性アルコキシシランおよびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)を必須成分とすることが好ましい。これらは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
【0070】
(a)成分:一般式(6)
【0071】
【化5】

【0072】
(一般式(6)において、R12はアルキル基を示し、R13、R14、R15は同一または異なる一価の有機基を示す。)
上記一般式(6)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。
【0073】
また、有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等の炭化水素基があげられる。
【0074】
さらに(D)成分は、前記(b)成分、前記(c)成分および前記(d)成分の少なくとも1種から選ばれることが好ましい。(a)成分と、(b)成分、(c)成分および(d)成分の少なくとも1種とを組み合わせることで、(a)成分の反応効率を高めることができる。
【0075】
ここで(a)〜(d)のうちいずれかでアルケニル基を含む成分を用いれば、粒子表面にアルケニル基を導入することができる。(A−3)成分へのアルケニル基の導入は、たとえばヒドロシリル化反応により硬化するアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)成分およびヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)成分からなる硬化性シリコーン樹脂中に高分子粒子集合体が存在する場合、当該硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0076】
(A−3)成分は、コア粒子40〜98重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを1〜40重量%添加し重合し、さらに(D)成分であるアルコキシシランを1〜30重量%(ただし、コア粒子と(C)成分と(D)成分を合わせて100重量%)を添加し重合して得られることが好ましい。さらにはコア粒子35〜96重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを2〜37重量%添加し重合し、(D)成分であるアルコキシシランを2〜28重量%添加し重合して得られることがより好ましい。また、(D)成分が上記範囲においてコア粒子表面のシラノール基が十分に減少し、高分子集合体を含有する硬化性組成物を硬化して得られる硬化物の強度等について良好な物性が得られる。
【0077】
(A−2)成分および(A−3)成分はコアシェル構造を有することが好ましい。なお、本発明におけるコアシェル構造とは、コア粒子の存在下、コア成分とはことなるモノマー成分を添加することによって得られる高分子構造であり、高分子集合体の形状保持の観点から、シェル成分をコア粒子に吸収させながらコア粒子の外側にシェル構造を形成したような構造であることが好ましく、さらにコア部からシェル部への傾斜構造を形成したような構造であることがより好ましい。また、コア粒子、シェル成分は、それぞれ多層構造を有してもよい。
【0078】
乳化重合によって得られた(A−1)成分であるシリコーン系粒子のラテックスから粒子を分離する方法としては、特に限定は無いが、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法などがあげられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
【0079】
ラテックスから粒子を分離する方法は、(A−1)成分をマトリクス樹脂中に均一に分散させることが可能であり、さらに透明な硬化物を得ることができる点から、マスターバッチ法を用いるのが好ましい。
【0080】
マスターバッチ法としては、水系ラテックス溶液に水に可溶あるいは部分可溶な有機溶剤、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)やケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル)等などを加えることで、粒子どうしを緩凝集させた後、遠心沈降や濾過などの方法で緩凝集体を回収し、この緩凝集体が分散可能な溶剤に再分散させてからマトリクス樹脂と混合し、溶媒を留去させる方法が例示される。
【0081】
<高分子粒子集合体>
本発明における高分子粒子集合体とは、高分子粒子(A)が2個以上集合することによって形成される集合体である。また、本発明における集合とは、高分子粒子(A)が化学的、あるいは物理的に結合されたことを示すものであり、その結合様式としてはたとえば共有結合や分子間力が挙げられる。高分子粒子の集合体は、高分子粒子(A)の重合途中、高分子粒子(A)の重合後、高分子粒子(A)をマトリクス樹脂との混合時あるいは混合後、などにおいて形成される。
【0082】
たとえば、有機溶剤中に高分子粒子(A)が分散した分散液に対して凝集助剤(B)を添加することや、液状樹脂に高分子粒子(A)を混合した後、凝集助剤(B)を添加することにより、高分子粒子集合体を形成することができる。
【0083】
また、本発明における高分子粒子集合体を構成する高分子粒子(A)の個数については特に限定はしないが、高分子粒子集合体の形状保持の観点から好ましくは10個以上であり、より好ましくは100個以上であり、さらに好ましくは1000個以上であることが好ましい。高分子粒子の数が10個を下回る場合、たとえば液状樹脂に高分子粒子集合体を配合した場合の糸引き性を抑制できなくなる場合がある。
【0084】
また、高分子粒子集合体の平均2次粒子径は、集合体を液状樹脂中に分散させたときの配合物の糸引き性の観点から、0.3μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、1.0μm〜15μmの範囲内にあることがより好ましく、3μm〜10μmの範囲内にあることがさらに好ましい。0.3μm未満である場合、配合物が糸引き性を呈する恐れがある。
【0085】
また、高分子粒子集合体の平均2次粒子径と集合体を形成する高分子粒子(A)の体積平均粒子径の比については、集合体を液状樹脂に分散させたときの配合物のハンドリング性の観点から、高分子粒子(A)の体積平均粒子径の2〜1000倍であることが好ましく、2〜500倍であることがより好ましく、2〜100倍であることがさらに好ましい。当該比が1000倍を超える場合、配合物の粘度が高くなり、ハンドリング性が悪くなる場合がある。
【0086】
高分子粒子集合体の平均2次粒子径の測定や高分子粒子集合体を構成する高分子粒子(A)の粒子個数は、たとえば硬化性樹脂に集合体を分散させ硬化した硬化物のTEM観察によって行なうことができる。
【0087】
<(B)凝集助剤>
本発明における凝集助剤(B)とは、高分子粒子(A)が高分子集合体を形成することを促進する働きを有する化合物を示す。ここでいう集合体形成の促進の様態としては、たとえば(B)成分が高分子粒子集合体の形成過程で(A)成分と物理的あるいは化学的に結合されることによって高分子粒子集合体に取り込まれることなどが挙げられるが、これらの様態に限定されるわけではない。
【0088】
また、(B)成分の(A)成分に対する重量比は特に限定はしないが、凝集を効率的に行う観点から、高分子粒子100重量部に対して20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。30重量部を超える(B)成分を用いた場合、かえって(A)成分の集合が妨げられ、集合体が得られない場合がある。
【0089】
この場合の凝集助剤(B)としては、例えば塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどの金属塩や、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0090】
また本発明における凝集助剤の好ましい例として、たとえば(A)成分が表面に反応性基を持つ場合に高分子粒子集合体の形成を促進する観点から、シラノール基、シロキサン基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を一分子中に有するケイ素化合物が挙げられ、また集合体形成の反応速度を上げる観点から酸または塩基触媒が上げられる。これらの凝集助剤は単独で使用しても2種類を併用しても構わないが、より高分子粒子集合体の形成を効率的に行う観点から、前記のシラノール基、シロキサン基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を一分子中に有するケイ素化合物と、酸または塩基触媒を併用することが好ましい。
【0091】
凝集剤(B)として好ましい本発明におけるシラノール基、シロキサン基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を一分子中に有するケイ素化合物とは、当該官能基を有し、かつケイ素原子を含む化合物であれば特に限定されないが、たとえば高分子粒子を有機溶剤中で形成させる場合における集合体の形成効率の観点から有機ケイ素化合物であることが好ましく、これにはヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロピオキシシラン、メチルブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロピオキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロピオキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロピオキシシラン、ブチルトリブトキシシランなどの直鎖状のものや、分岐状のオルガノシロキサン等を挙げることができる。これらオルガノシロキサンは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の一価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびそれらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などをあげることができる。
【0092】
本発明における酸または塩基触媒とは、高分子粒子(A)の凝集を促進させる効果を有する触媒であれば特に限定されず、種々の有機あるいは無機の酸・塩基触媒を用いることができる。有機酸触媒の具体例としては蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、リンゴ酸等が挙げられ、無機酸触媒の具体例としては塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等が挙げられ、有機塩基触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルジエチルアミン、硝酸アンモニウム、アンモニア等が挙げられ、無機塩基触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水素化ナトリウム等が挙げられるが、集合体の2次粒子径を制御する観点から、有機酸触媒を用いることが好ましく、蟻酸または酢酸を用いることがより好ましい。
【0093】
<高分子粒子集合体の製造方法>
本発明における高分子粒子集合体の製造方法は特に限定されないが、あえて例示するならば、有機溶剤中に高分子粒子(A)が分散した分散液に対して、凝集助剤(B)を加え、攪拌する方法が挙げられる。この場合に使用する有機溶剤としてはトルエン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシドが例として挙げられるが、触媒による溶媒自身の分解反応等の副反応を抑制する観点から、トルエン、キシレン、ヘキサンを使用することが好ましい。
【0094】
また高分子粒子分散液における(A)成分の固形分濃度は、集合を効率的に行う観点から、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。
【0095】
また(B)成分の量としては、(A)成分の分散液100重量部に対して20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることがさらに好ましい。(B)成分が多すぎる場合、返って集合体形成が妨げられる場合がある。
【0096】
<液状樹脂組成物>
本発明における液状樹脂組成物は、液状樹脂に高分子粒子集合体を分散させて得られる組成物であれば特に限定はしない。本発明において使用する液状樹脂は特に限定はされず、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂、あるいは室温で流動する樹脂や流動しない樹脂等を用いることができるが、組成物の耐熱性や耐光性の観点から硬化性樹脂を使用することが好ましく、硬化性シリコーン樹脂を使用することがより好ましい。
【0097】
また、本発明における液状樹脂の化学構造については特に限定はしないが、あえて例示するのであればエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0098】
また、本発明における液状樹脂組成物中に含まれる高分子粒子集合体を形成する高分子粒子集合体は、当該液状樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱衝撃性の観点から、液状樹脂100重量部に対して1〜80重量部以下であることが好ましく、5〜50重量部以下であることがより好ましく、5〜30重量部以下であることがさらに好ましい。1〜80重量部の範囲において、硬化物の熱衝撃性を向上させることができる。
【0099】
本発明の高分子集合体を含有することにより、液状樹脂組成物においては糸引き性を示さないハンドリング性に優れた液状樹脂組成物を得ることができ、さらに該液状樹脂組成物を硬化した硬化物においては耐熱衝撃性に優れた硬化物を得ることができる。
【0100】
<光硬化性液状樹脂>
本発明における光硬化性液状樹脂とは、光を照射することによって硬化する液状樹脂であれば特に制限されないが、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。また、場合によって光重合開始剤を添加してもよく、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。光重合開始剤の含有量は、液状樹脂100重量部に対して0.5重量部〜20重量が、好ましく1重量部〜10重量部がより好ましい。光重合開始剤の含有量が20重量部を超える場合は、液状樹脂組成物のハンドリング性の低下を招く場合があり、また0.5重量部未満であるばあいは、硬化反応が十分に進行しない場合がある。
【0101】
<熱硬化性液状樹脂>
本発明における熱硬化性樹脂とは、加熱によって硬化する液状樹脂であれば特に制限されないが、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂が挙げられる。
【0102】
本発明に用いる液状樹脂組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0103】
反応温度としては種々設定できるが、25℃〜300℃の温度範囲が好ましく、30℃〜280℃がより好ましく、35℃〜260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0104】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0105】
<硬化性シリコーン樹脂>
本発明における硬化性シリコーン樹脂とは、光あるいは熱によって硬化するシリコーン樹脂であれば特に限定されないが、硬化速度の観点から、付加型シリコーン樹脂であることが好ましい。付加型シリコーンの構造としては特に限定はしないが、操作性および入手性の観点から一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)あるいは一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)であることが好ましい。
【0106】
本発明における(E)成分は、後述の(F)成分である一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0107】
直鎖状の(E)成分の例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0108】
また環状の(E)成分の例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0109】
また三次元架橋構造を有する(E)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(10)
SiO4/2(10)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(11)、(12)
a1a22SiO1/2(11)
a23SiO1/2(12)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(11)で少なくとも2つ封鎖された構造を有するものが例示される。
上記一般式(10)、一般式(11)および一般式(12)で表される(A)成分の集合体を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、架橋密度が高いので、高硬度で高強度の硬化物が得られるので好ましい。
【0110】
前記アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が好ましく、入手性、また、耐熱性・耐光性の観点からビニル基がさらに好ましい。またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からメチル基がさらに好ましい。
【0111】
更に上記(E)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0112】
本発明における(F)成分は、(E)成分とヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0113】
直鎖状の(F)成分の例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0114】
また環状の(F)成分の例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0115】
また三次元架橋構造を有する(F)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(10)
SiO4/2(10)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(13)、(14)
b1b22SiO1/2(13)
b23SiO1/2(14)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(13)で少なくとも2つ封鎖された構造を有するものが好ましいものとして例示される。
【0116】
上記一般式(10)、一般式(13)および一般式(14)で表される(D)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、架橋密度が高いので、高硬度で高強度の硬化物が得られるので好ましい。
【0117】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からはメチル基がさらに好ましい。
【0118】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)の添加量は、前述の(E)成分のアルケニル基に対して(F)成分のヒドロシリル基が30〜500モル%、好ましくは40〜200モル%となる割合であることが望ましい。
【0119】
更に上記(F)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0120】
<接着付与剤>
本発明においては、液状樹脂に対して必要に応じて接着付与剤を添加することができる。
【0121】
本発明における接着性付与剤としては、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を好適に使用することが可能である。
【0122】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0123】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0124】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0125】
ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0126】
チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0127】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0128】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分および(B)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、たとえばマトリクス樹脂に硬化性液状樹脂を使用する場合において、硬化阻害の要因となる恐れがあり、注意しなければならない。
【0129】
本発明における硬化性シリコーン樹脂に対して、必要に応じて硬化触媒を使用することができる。硬化触媒の例として、たとえばヒドロシリル化触媒として白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒を添加することができる。前記白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類やビニルシロキサンとのコンプレックスなどが例示される。白金系触媒の添加量は、硬化性シリコーン樹脂中のアルケニル基1モルに対し、白金原子として10-1〜10-10モルの範囲で用いるのが好ましく、10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがより好ましい。白金触媒が多すぎると短波長の光を吸収するため、得られた硬化物の耐光性が低下するおそれがあり、また少なすぎるとマトリクスが硬化しない場合がある。
【0130】
本発明に用いる硬化性シリコーン樹脂の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0131】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。
【0132】
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。
【0133】
窒素含有化合物としては、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が挙げられる。
【0134】
スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0135】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜104モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜103モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0136】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0137】
<その他添加物>
本発明に用いる液状樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0138】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0139】
また、本発明記載の液状樹脂組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0140】
本発明に用いる液状樹脂組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0141】
本発明における高分子集合体は、種々の液状樹脂に分散させて液状樹脂組成物として用いることができ、その用途としては接着剤のベースポリマー、高減衰ゴム、LED等の光学デバイスの封止材などが例示されうるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0142】
以下の実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0143】
(糸引き試験)
得られた液状樹脂組成物をステンレス製のスパチュラで掬い取り、スパチュラから流れ落ちる液状樹脂組成物を目視で観察し、糸を引く場合は“有”糸を引かない場合は“無”と表記することによって液状樹脂組成物の糸引き性を判断した。
【0144】
(評価用硬化物の作成)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1)に、0.4mm×0.4mm×0.2mmの単結晶シリコンチップ1個を、株式会社ヘンケルジャパン製エポキシ系接着剤(品名:LOCTITE348)で貼り付け、150℃で30分オーブンに入れて固定した。ここに封止層を形成させる高分子粒子集合体が分散した液状樹脂組成物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させて試料を作成した。
【0145】
(硬化物の耐熱衝撃性評価)
上記の通り作成した評価用硬化物を、熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)によって、高温保持100℃、5分間、低温保持−40℃、5分間のサイクルを100サイクル行った後、試料を観察した。試験後、目視で変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離、あるいは着色が起きたりした場合は×とした。
【0146】
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに純水400重量部および10重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12重量部(固形分)を混合したのち窒素雰囲気下で50℃に昇温した。その後アクリル酸ブチル(BA)10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部(固形分)を加えた。30分後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.019重量部、硫酸第一鉄0.019重量部を添加し、1時間攪拌した。BA90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、および、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.18重量部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。さらに1時間の後重合を行い、シードポリマー(体積平均粒径0.020μm)を含むラテックスを得た。
【0147】
次に、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、上述のシードポリマーを2.0重量部(固形分)、10重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸1.5重量部(固形分)および純水300重量部(シードポリマーを含むラテックスからの持ち込み分を含む)を仕込んだ後、10分間攪拌してから、窒素雰囲気下で系を80℃に昇温させた。これとは別に純水150重量部、5重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン97重量部、トリメトキシメチルシラン3重量部からなる混合物をホモミキサーにて、8000rpmで5分間強制乳化した後に、この混合液を3.5時間かけて連続追加した。さらに2.5時間の後重合を行い、25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(A−1)成分であるシリコーン系粒子(体積平均粒径0.110μm)を含むラテックスを得た。
【0148】
(合成例2)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、合成例1で得られた(A−1)成分であるシリコーン系粒子90重量部(固形分)、およびドデシルベンゼンスルホン酸を10重量%水溶液で0.45重量部(固形分)を仕込み、窒素雰囲気下で40℃に昇温させた。
【0149】
これとは別に、純水40重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.1重量部(固形分)、ジメトキシジメチルシラン7.30重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)11.16重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、20分間かけて滴下して加えた。この溶液を40℃に保ったまま5時間攪拌することで(A−2)成分を形成した。
【0150】
次にこの溶液に、純水27重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.03重量部(固形分)、メトキシトリメチルシラン6.42重量部((CH33SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して5.0重量部に相当)、エトキシジメチルビニルシラン1.40重量部(Vi(CH32SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して1.0重量部に相当)、ジメトキシジメチルシラン0.81重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)1.24重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、10分間かけて滴下して加えた。
【0151】
この溶液を40℃に保ったまま4.5時間攪拌することで(A−3)成分を形成した。この系を25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(A)成分であるシリコーン系粒子(体積平均粒径0.112μm)を含むラテックスを得た。
【0152】
(実施例1)
合成例2で得られた(A)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対してメチルエチルケトン/メタノール=5/5 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をメチルエチルケトン/メタノール=2/8 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させ溶媒を留去することをさらに3回繰り返した。その後、得られた沈殿35重量部にトルエン315重量部を加えて、10wt%に調製した(A)成分のトルエン分散液を得た。
【0153】
得られた(A)成分のトルエン分散液100重量部に対して、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)10重量部、蟻酸(和光純薬工業社製)1重量部を加え、室温で30分間攪拌した後、室温で一晩静置することによって高分子粒子集合体のトルエン分散液を得た。
【0154】
こうして得られた高分子粒子集合体の固形分30重量部に対して、(E)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(F)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(F)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮してトルエンを留去した。
【0155】
その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.0062重量部を加えた後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状組成物を得た。
【0156】
得られた液状組成物をそのまま糸引き試験に使用し、また熱衝撃試験用に上述の手順に従って評価用硬化物を作成した。
【0157】
(実施例2)
合成例2で得られた(A)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対してメチルエチルケトン/メタノール=5/5 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をメチルエチルケトン/メタノール=2/8 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させ溶媒を留去することをさらに3回繰り返した。その後、得られた沈殿35重量部にトルエン315重量部を加えて、10wt%に調製した(A)成分のトルエン分散液を得た。
【0158】
得られた(A)成分のトルエン分散液100重量部に対して、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)10重量部、蟻酸(和光純薬工業社製)1重量部を加え、室温で30分間攪拌した後、室温で一晩静置することによって高分子粒子集合体のトルエン分散液を得た。こうして得られた高分子粒子集合体の固形分30重量部に対して、熱硬化性エポキシ樹脂(「エピコート828」油化シェルエポキシ社製)を100重量部、熱硬化性エポキシ用硬化触媒(「エピキュア113」油化シェルエポキシ社製)を30重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮してトルエンを留去した。
【0159】
遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状樹脂組成物を得た。
得られた液状組成物をそのまま糸引き試験に使用し、また熱衝撃試験用に上述の手順に従って評価用硬化物を作成した。
【0160】
(比較例1)
合成例2で得られた(A)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対してメチルエチルケトン/メタノール=5/5 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をメチルエチルケトン/メタノール=2/8 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させ溶媒を留去することをさらに3回繰り返した。その後、得られた沈殿35重量部にトルエン315重量部を加えて、10wt%に調製した(A)成分のトルエン分散液を得た。
【0161】
こうして得られた(A)成分の樹脂固形分30重量部に対して、(E)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(F)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(F)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを留去した。
【0162】
その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.0062重量部を加えた後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状樹脂組成物を得た。
【0163】
得られた液状組成物をそのまま糸引き試験に使用し、また熱衝撃試験用に上述の手順に従って評価用硬化物を作成した。
【0164】
(比較例2)
合成例2で得られた(A)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対してメチルエチルケトン/メタノール=5/5 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をメチルエチルケトン/メタノール=2/8 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させ溶媒を留去することをさらに3回繰り返した。その後、得られた沈殿35重量部にトルエン315重量部を加えて、10wt%に調製した(A)成分のトルエン分散液を得た。
【0165】
こうして得られた高分子粒子集合体の固形分30重量部に対して、熱硬化性エポキシ樹脂(「エピコート828」油化シェルエポキシ社製)を100重量部、熱硬化性エポキシ用硬化触媒(「エピキュア113」油化シェルエポキシ社製)エピキュア113を30重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮してトルエンを留去した。
【0166】
得られた液状組成物をそのまま糸引き試験に使用し、また熱衝撃試験用に上述の手順に従って評価用硬化物を作成した。
【0167】
各種試験結果を表1に示す。
【0168】
【表1】

【0169】
表1に示されるように、実施例1および2は耐熱衝撃性に優れると同時に、液状組成物は糸引きを示さず、ハンドリング性にも優れる。一方、比較例1では耐熱衝撃性は有するものの、液状組成物が糸引き性を示し、ハンドリング性が劣る。また、比較例2では硬化物の耐熱衝撃性が低い上に、液状組成物も糸引き性を示し、ハンドリング性が劣ることが分かる。以上のことから、本発明における高分子粒子集合体は、粒子が集合体を形成していることにより、これを含有する液状樹脂組成物のハンドリング性が向上し、さらにその硬化物は耐熱衝撃性に優れるということが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子粒子集合体の平均粒子径が、集合体を構成する高分子粒子(A)の体積平均粒子径の2〜1000倍である高分子粒子集合体。
【請求項2】
高分子粒子(A)と凝集助剤(B)を混合して得られることを特徴とする請求項1に記載の高分子粒子集合体。
【請求項3】
高分子粒子(A)が、表面にヒドロキシ基を有する高分子粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子粒子集合体
【請求項4】
凝集助剤(B)が、シラノール基、シロキサン基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基を一分子中に有するケイ素化合物であることを特徴とする請求項2または3に記載の高分子粒子集合体。
【請求項5】
凝集助剤(B)が、酸または塩基触媒であることを特徴とする請求項2または3に記載の高分子粒子集合体。
【請求項6】
高分子粒子(A)が、シリコーン系粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体。
【請求項7】
前記シリコーン系粒子が、コア粒子を合成した後、コア粒子の存在下でアルコキシシラン(C)を添加し、縮合させて得られる粒子(A−2)であることを特徴とする請求項6に記載の高分子粒子集合体。
【請求項8】
前記シリコーン系粒子が、前記粒子(A−2)の存在下で、さらにアルコキシシラン(D)を添加し、縮合させて得られる粒子(A−3)であることを特徴とする請求項7に記載の高分子粒子集合体。
【請求項9】
前記コア粒子が、少なくとも1種類の環状シロキサンを含む珪素化合物を重合して得られることを特徴とする請求項7または8に記載の高分子粒子集合体。
【請求項10】
アルコキシシラン(D)が、少なくとも1種類の1官能性アルコキシシランを含むことを特徴とする請求項8または9記載の高分子粒子集合体。
【請求項11】
シリコーン粒子(A−2)が、コア粒子50〜99重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを1〜50重量%重合して得られた粒子であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の高分子集合体。
【請求項12】
シリコーン粒子(A−3)が、コア粒子40〜98重量%に対して、(C)成分であるアルコキシシランを1〜40重量%重合し、さらに(D)成分であるアルコキシシランを1〜30%重合し得られた粒子であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子粒子集合体が、分散した液状樹脂組成物。
【請求項14】
前記液状樹脂が、光硬化性液状樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の液状樹脂組成物。
【請求項15】
前記液状樹脂が、熱硬化性液状樹脂であることを特徴とする請求項13に記載の液状樹脂組成物。
【請求項16】
前記液状樹脂が、硬化性シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項13〜15いずれか一項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項17】
前記硬化性シリコーン樹脂が、アルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン(E)を含有することを特徴とする請求項16に記載の液状樹脂組成物。
【請求項18】
前記硬化性シリコーン樹脂が、ヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)を含有することを特徴とする請求項16または17に記載の液状樹脂組成物。
【請求項19】
(E)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項17または18に記載の液状樹脂組成物。
【請求項20】
(F)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(4)、(5)
b1b22SiO1/2(4)
b23SiO1/2(5)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2はアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(4)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項18または19に記載の液状樹脂組成物。
【請求項21】
請求項13〜20のいずれか一項に記載の液状樹脂組成物を硬化させた硬化物。

【公開番号】特開2011−241258(P2011−241258A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112426(P2010−112426)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】