説明

高分子紫外発光素子

【課題】紫外領域で動作し、白色光源へ応用可能な高分子紫外発光素子を提供する。
【解決手段】基材表面の陽極上に、発光層と陰極層が積層された構成を有する有機発光ダイオードで、発光層においては、高分子有機材料であるホスト材料中にドーパントがドープされており、ホスト材料とドーパントの少なくともいずれか一方は、波長400nm以下の紫外領域に発光ピーク波長を有する物質である。高分子有機材料としては、ポリ〔メチルメタクリレート‐コ‐(7‐(4‐トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)〕(PCA)が好ましく、ドーパントとしては、N,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン(TPD)が好ましく、PCAに対するTPDのドープ濃度は35〜45重量%が好ましい。尚、陽極と発光層との間に正孔輸送層が積層された構成であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域で動作し、白色光源へ応用可能な高分子紫外発光素子(有機発光ダイオード)に関する。
【背景技術】
【0002】
可視領域における有機発光ダイオードは、次世代ディスプレイや白色光源への応用に向けて目覚しい成果が報告されている(例えば、下記の非特許文献1及び2)。
しかし、有機発光ダイオードの紫外領域における研究例はほとんどない。これは、紫外発光する材料が広いバンドギャップを持つためキャリア注入が困難であるからと考えられる。紫外領域で動作する発光素子が実現すれば、例えば医療器具や上水道の殺菌、露光処理、ブルーレイDVDを上回る大容量メディア、紫外光を励起光源とする白色照明などへの応用展開が期待される。
【非特許文献1】C.W.Tang and S.A.VanSlyke, Appl.Phys.Lett. 51(1987) 913
【非特許文献2】Q.Xu, et al., Appl.Phys.Lett. 83(2003) 4695
【0003】
有機材料を電極で挟んで電圧を印加すると発光することが最初に見いだされたのは、アントラセン単結晶を用いて一重項励起子から青色発光を得た1960年代である。その後、1987年にコダックのTangらが共役系の発達した有機分子であるAlq3(アルミニウムキノリウム錯体)薄膜に電圧を印加して強いELが観測された。この場合、薄膜は蒸着により形成され、これが実用的有機発光ダイオードの本格的研究の始めである。一方、高分子を用いた有機発光ダイオードは、ケンブリッジ大学のFriend教授らが、導電性高分子と称されるPPV(ポリフェニレンビニレン)の1ミクロン以下の薄膜に電圧を印加して発光を観測したのが最初である。
【0004】
このような経緯を受けて、有機発光ダイオードの発光層となる材料は大きく分けて高分子系と低分子系の二つがある。両者の大きな差はプロセスの違いである。低分子系は蒸着によって成膜を行うため、容易に積層構造を導入する事ができる。一方、高分子系はスピンコートなどのウエットプロセスを利用してより容易に成膜を行える。しかし、積層の際にはすでに積まれた層を溶解しない溶剤を選択する必要が生じる。また、高分子と低分子を組み合わせた素子も多数報告されているが、蒸着工程を増やすほど安易に作製できるという高分子系のメリットが小さくなる。
有機発光ダイオードの発光層材料に関する先行技術文献としては、以下の非特許文献3〜9等が例示される。
【非特許文献3】D.Braun and A.J.Heeger, Appl.Phys.Lett. 58(1991) 1982
【非特許文献4】A.Fujii, et al., J.Appl.Phys. 35(1996) L3914
【非特許文献5】G.E.Johnson, et al., Pure & Appl.Chem. 67(1995) 175
【非特許文献6】F.Hide, et al., Acc.Chem.Res. 30(1997) 430
【非特許文献7】T.Uchida, et al., IEEJ Trans. EIS 126(2006) 1537
【非特許文献8】R.Friend, J.Burroughes, and T.Shimoda, Physics World June (1999) 35
【非特許文献9】Y.Shi, J.Liu, and Y.Yang, J.Appl.Phys. 87(2000) 4253
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、各種分野での応用が期待される、紫外領域で動作する発光素子(高分子紫外発光素子)を提供することを課題とする。
本発明者等は、紫外領域(400 nm以下)に発光スペクトルを持つ、ワイドバンドギャップ材料を用いた有機発光ダイオード(高分子紫外発光素子)を作製するために、まず最初にフォトルミネッセンススペクトル(PLスペクトル)測定による紫外発光材料の探索を行い、吸収波長のピークλmaxが339 nmであるPoly[methylmethacrylate-co-(7-(4-trifluoromethyl)coumarin acrylamide)] (PCA)のPLスペクトル測定を行ったところ、発光スペクトルのピークが395 nmであることを見い出し、この材料を発光層に用いて高分子紫外発光素子作製の実現を検討した。
【0006】
その結果、ITO陽極とAl陰極の間に、上記の紫外発光材料から成る発光層を挟んで電流を注入しても発光は観測されなかったが、不十分と考えられるキャリア注入を増加させるために、正孔注入層と電子注入電極の導入を行うと、サンプルからの弱いブロードな発光が観測されることが見い出され、更に、積層構造の導入やドーピングによる発光材料へのキャリア注入効率改善を検討した結果、特定のドーパントを特定量ドープすることによって、発光波長のピークが400 nmとなる高分子紫外発光素子が作製できることを見い出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決可能な本発明の高分子紫外発光素子は、基材表面に設けられた陽極の上に、発光層と陰極層が順次積層された構成を有する発光素子であって、前記発光層においては、高分子有機材料であるホスト材料中にドーパントがドープされており、前記ホスト材料と前記ドーパントの少なくともいずれか一方が、波長400nm以下の紫外領域に発光ピーク波長を有する物質であることを特徴とする。
【0008】
又、本発明は、上述の特徴を有した高分子紫外発光素子において、前記高分子有機材料がポリ〔メチルメタクリレート‐コ‐(7‐(4‐トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)〕(PCA)で、前記ドーパントがN,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン(TPD)であり、しかも、前記PCAに対する前記TPDのドープ濃度が35〜45重量%であることを特徴とするものでもある。
【0009】
更に、本発明は、上述の特徴を有した高分子紫外発光素子において、前記高分子有機材料がポリ(N‐ビニルカルバゾール)(PVK)で、前記ドーパントがポリ((1‐メトキシ‐4‐)O‐ディスパースレッド1)‐2,5‐フェニレンビニレン(MDR−PPV)であることを特徴とするものでもある。
【0010】
又、本発明は、上述の特徴を有した高分子紫外発光素子において、前記陽極と前記発光層との間に正孔輸送層が積層されており、前記正孔輸送層が、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ブロック‐ポリ(エチレングリコール)から成る層であることを特徴とするものでもある。
【0011】
又、本発明は、上述の特徴を有した高分子紫外発光素子において、前記のポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ブロック‐ポリ(エチレングリコール)から成る層と前記発光層との間に、第2の正孔輸送層として、ポリ(N‐ビニルカルバゾール)から成る層が積層されていることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子紫外発光素子は、紫外領域の400nm以下に発光ピーク波長を有しているので、紫外光を励起光源とする白色照明などへ応用することができ、例えば医療器具や上水道の殺菌、露光処理等にも利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の高分子紫外発光素子は、基材表面に設けられた陽極の上に、高分子有機材料から成る発光層と、陰極とが積層された層構成を有しており、陽極と陰極との間に存在する発光層が、波長400nm以下の紫外領域に発光ピーク波長を有する物質をホスト又はドーパントとして含むことによって、陽極‐陰極間に電圧をかけた際に、発光ピーク波長400nm以下の紫外光の発光が観察される。本発明では、発光層を形成する高分子有機材料として種々の材料が利用でき、例えばポリ〔メチルメタクリレート‐コ‐(7‐(4‐トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)〕(PCA)、ポリ(N‐ビニルカルバゾール)(PVK)等が挙げられる。
【0014】
上記の高分子有機材料から成る発光層は、広く知られているスピンコート法によって形成することができ、例えば、表面に透明電極(Indium-tin-oxide, ITO)が形成された基板(一般的にはガラス基板)を準備し、この基板の表面に、予め有機溶剤に溶解させた上記の高分子有機材料の溶液を滴下し、スピンコーターを用いて塗布し、乾燥させる。このようにして形成される発光層の膜厚及び表面状態は、高分子有機材料溶液の濃度や、当該溶液の滴下量、スピンコーターの回転数に影響され、複数回コーティングを行なって発光層を形成してもよい。
【0015】
本発明では、発光層へのキャリア注入を内側から改善するために、前述の高分子有機材料(ホスト材料)中にドーパントがドープされており、PCAにドープされるドーパントとしては、N,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン(TPD)が好ましい。この際、PCAに対するTPDのドープ濃度は35〜45重量%であることが好ましく、38〜42重量%が特に好ましい。TPDのドープ濃度が35重量%未満の場合、及び、TPDのドープ濃度が45重量%を超える場合には、発光ピーク波長が500nm付近となり、紫外領域での強い発光が得られず、発光強度も弱くなる。又、高分子有機材料がポリ(N‐ビニルカルバゾール)(PVK)である場合には、ドーパントとしてはポリ((1‐メトキシ‐4‐)O‐ディスパースレッド1)‐2,5‐フェニレンビニレン(MDR−PPV)が好ましく、好ましいドープ濃度は5〜10重量%である。上記物質のうち、PCA及びMDR−PPVは波長400nm以下の紫外領域に発光ピーク波長を有する。
【0016】
又、本発明においては、陽極(ITO陽極)から発光層への正孔注入障壁を緩和し、キャリア注入を増加させるために、陽極と発光層との間に正孔輸送層を積層した状態で設けてもよく、単層から成る正孔輸送層(正孔注入層)を構成する材料としては、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ブロック‐ポリ(エチレングリコール)(PEDOT & PEG)が好適である。このような正孔輸送層を形成させる際にも、前記発光層の場合と同様、スピンコート法を用いることができ、スピンコーターの回転数や、使用する溶液の濃度を適宜選択することで膜厚や表面状態が調整できる。
【0017】
又、本発明では、PEDOT & PEGから成る層と前記発光層との正孔注入障壁を緩和し、さらなる正孔注入改善を図るために、これらの層間に、第2の正孔輸送層としてポリ(N‐ビニルカルバゾール)(PVK)から成る層が積層されてもよく、PEDOT & PEGとPVKの二層の正孔輸送層を導入することによって、発光層の正孔注入効率を改善することができ、単層のものに比べて、発光強度の改善と発光波長のブルーシフトが達成できる。更に、上記の二層構造の正孔輸送層を導入したPCA素子の発光層に40重量%のTPDドーピングを行うと、発光開始電圧が低減でき、発光強度も改善できる。
【0018】
尚、本発明の高分子紫外発光素子における電極材料は、効率良く発光させるために十分な電子、正孔の注入が行われなければならず、そのため、有機分子、高分子のキャリアを受ける電子エネルギー準位(HOMO、LUMO)との間の障壁ができるだけ小さくなるよう、電子注入側の陰極には仕事関数の小さいもの、陽極には逆に仕事関数の大きなものが使用される。また、光を取り出すために、少なくとも一方の電極は透明である必要がある。以上を踏まえて、陽極材料としては、一般的な透明電極材料であるITOが用いられ、一方、陰極材料は、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの仕事関数の小さな金属を用いるのが有効である。陰極材料としては、例えば、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、リチウム-アルミニウム(Li-Al)などの合金や、アルミニウム(Al)そのものが挙げられ、陰極から発光層への電子注入を改善するために、カルシウムやフッ化リチウムを電子注入電極として用いることができる。
【実施例】
【0019】
〔実験方法〕
1.サンプル作製
1.1 有機材料の成膜
最初に、サンプルを成膜する基板の洗浄を行った。PL測定、段差、表面を評価する場合はガラス基板(面積10 mm×10 mm、厚さ1.0 mm )を用いた。そして、吸収スペクトルを評価する場合は合成石英ガラス(面積10 mm×10 mm、厚さ1.0 mm )を基板に用いた。またEL素子を作製する場合は、Indium-tin-oxide (ITO)が幅2mmのストライプ状にコーティングされたガラス基板(面積10 mm×10 mm、厚さ0.7 mm)を用いた。これらを有機層成膜前に、純水、アセトン、2-プロパノールの順で10分ずつ超音波洗浄にかけた。
そして、有機溶剤(PCAの場合はトルエンを使用、PVKの場合はクロロベンゼンを使用)に有機材料を撹拌して溶かした。この時の濃度が有機薄膜の膜厚や表面の状態に大きく影響する。また、低分子材料をドープする場合もこの時に行った。この溶液を基板の上に滴下し、スピンコーター(ASS-301型 エイブル社製)を用いて塗布し、最後に乾燥させた。この時の溶液の滴下量とスピンコーターの回転数も膜厚と表面状態に影響する。
【0020】
さらに高分子材料を積層する場合は、有機材料を溶剤に溶かすところから乾燥までの工程を繰り返した。陽極側から各層を形成させるため、構成に応じて、正孔輸送層は発光層より先に、電子輸送層は発光層の後に成膜する。ただし、積層構造を導入する場合は、先に成膜した有機層を溶解する溶剤が使えないことを考慮する必要がある。また、高分子発光層の上に低分子電子輸送層を積層するなど、ウエットプロセス後の蒸着プロセスは可能である。
【0021】
1.2 サンプル作製に用いた材料と成膜時の条件
a)発光層
λmaxが339 nmである高分子有機材料Poly[methyl methacrylate-co-(7 -(4-trifluoromethyl)coumarin acrylamide)] (PCA)を発光層に用いた。スピンコーターの回転数と回転時間の条件を1回目が500 rpmで5秒、2回目が1500 rpmで30秒に設定して発光層の成膜を行った。
また、λmaxが274 nmである高分子有機材料Poly((1-methoxy-4-)O -disperse red 1)-2,5-phenylenevinylene (MDR-PPV)を発光層に検討するためPL評価を行った。こちらは、スピンコーターの条件を1回目が500 rpmで5秒、2回目が2000 rpmで30秒に設定して成膜を行なった。
b)正孔注入層
ITO陽極から発光層への正孔注入障壁を緩和するために、Poly(3,4 -ethylenedioxythiophene)-block-poly(ethyleneglycol) (PEDOT&PEG)を導入した。スピンコーターの回転数と回転時間の条件は1回目の条件を用いず、2回目のみ3000 rpmで30秒として成膜を行なった。
また、PEDOT&PEGと発光層との正孔注入障壁を緩和し、さらなる正孔注入改善を意図して、Poly(N-vinyl carbazole) (PVK)を導入し、二層目の正孔注入層とした。PVKのスピンコーターの条件は1回目を400 rpmで10秒、2回目を3000 rpmで30秒として成膜した。
c)電子注入電極
陰極からへの電子注入を改善するために、カルシウムやフッ化リチウムを電子注入伝教として用いた。
d)ドーパント
発光層へのキャリア注入を内側から改善することを意図してドーピングを行なった。低分子系の正孔注入材料として用いられる N,N’-Bis(3 -methylphenyl)-N,N’-diphenyl benzidine (TPD)を有機溶剤に溶かして発光材料溶液へ加える。
また、MDR-PPVが濃度消光の顕著に見られる材料であるため、PVKをホスト材料、MDR-PPVをドーパントとした。これによってMDR-PPVがPVK中に分散し、濃度消光を回避してPL評価を行った。
【0022】
1.3 作製した有機発光ダイオードの構造
・積層構造を導入した素子
ITO/PCA/Alの単層素子では発光が観測されなかったので、積層によるキャリア注入改善を意図して、以下に示す様な層構成を有する5種類のサンプルを作製した。図1は、実験に用いた5種類のサンプルの構造(層構成)を示す図であり、各層構成の右側には、エネルギーダイアグラムを表示している。なお、電子注入電極としてはCaを用いた。そして、発光層成膜の際のPCA溶液の濃度は0.5 wt %とした。
A) ITO/PCA/Al
B) ITO/PEDOT&PEG/PCA/Al
C) ITO/PCA/Ca/Al
D) ITO/PEDOT&PEG/PCA/Ca/Al
E) ITO/PEDOT&PEG/PVK/PCA/Al
・積層構造とドーピングを組み合わせた素子
積層構造とドーピングを組み合わせる事で、発光層(Emissive layer : EML)に対して、外側と内側からのキャリア注入増加が期待され、これによって、I-V特性やELスペクトル等にどの様な改善が見られるか評価した。サンプル構造は以下に示す通り4種類検討し、EMLをTPDのドープ無し(PCA)とドープ有り(PCA:TPD)とする事で計8種類のサンプルを作製した。図2は、実験に用いた8種類のサンプルの層構成を示す図であり(ドープの有り無しは示されていない)、層構成の右側には、エネルギーダイアグラムを表示している。なお、今回は電子注入電極にLiFを用いた。これは、LiFがCaとほぼ同じ仕事関数を持ち、Caより酸化しにくいためである。そして、ドーピングはPCA溶液にTPDを混ぜ、有機材料の濃度が1wt %となる様に行った。また、TPDはPCAに対し10 wt %ドープした。
A) ITO/EML/Al
B) ITO/PEDOT&PEG/EML/LiF/Al
C) ITO/PEDOT&PEG/PVK/EML/Al
D) ITO/PEDOT&PEG/PVK/EML/LiF/Al
・TPDのドープ濃度を変化させた素子
ITO/PCA:TPD/Alの単層素子において、TPDのドープ濃度を変化させた時のI-V特性とELスペクトルの変化を評価した。この時も有機材料の濃度が1wt %となる様にPCA溶液にTPDをドーピングした。
【0023】
1.4 電極の形成
EL素子を作製する場合は、最後に陰極を形成した。有機層の上に任意のマスク(幅2mmのストライプ状の穴を空けた薄い銅板)を介して真空蒸着装置(GET-WB6型 エピテック製)でアルミニウムを蒸着した。電子注入電極であるフッ化リチウムや低分子電子輸送層を積層する場合は、アルミニウムの前に蒸着を行った。そして、有機溶剤(クロロホルム)を用いて、陰極金属の蒸着されていない部分の有機薄膜のエッチングを行い、ITO(陽極)を露出させた。
【0024】
〔測定方法〕
2.1 PLスペクトルの測定
まず、サンプルのPLスペクトルを測定して、紫外領域に発光波長強度のピークを持つ材料の探索を行った。図3に示すような測定系を組み、励起光源の窒素レーザ(HKC-200型 宇翔製)をサンプルに当て、サンプルから発せられる光を光ファイバに通してCCD分光器(USB2000型 Ocean Optics製)に入れ、サンプルのPL発光スペクトルを観測した。
【0025】
2.2 有機層の膜厚測定と表面評価
サンプルの任意の箇所の有機材料をエッチングして、露出した基板表面と有機層表面の段差を触針式段差表面形状測定装置(XP-1型 Ambios Technology製)によって測定した。加えて、同装置にてサンプル表面のラフネスも評価した。有機材料の溶液に対する濃度は0.5 wt %と1wt %の二つの条件において行い、スピンコーターの回転数を1500 rpm、3000 rpm、4500 rpmの三つの条件において測定した。評価する材料は、有機発光ダイオード作製に用いたPCA、PEDOT&PEG、PVKとした。
【0026】
2.3 吸収スペクトルの測定
分光光度計(UV2450型 島津製作所製)を用いて合成石英に成膜された有機材料の吸収スペクトルを測定した。素子の発光はITO陽極側から取り出すため、ITOガラス基板、正孔注入層であるPEDOT&PEGとPVK、ドーパントであるTPDが発光層の発光スペクトルに影響を及ぼすと考えられる。よって、これらの吸収スペクトルを測定し評価した。
【0027】
2.4 I-V特性の測定
半導体パラメータアナライザ(4155C型 Agilent Technologies製)を用いて、前記1.3で示したサンプルのI-V特性を測定した。エッチングにより露出したITO陽極と真空蒸着により形成したアルミニウム陰極にそれぞれ金属の針を当て、そこから電流注入を行った。この際、陰極に針を強く当て過ぎてアルミニウムを突き破らないように注意する必要がある。よって、これらの吸収スペクトルを測定し評価した。
【0028】
2.5 ELスペクトルの測定
I-V測定時のサンプルからの発光スペクトルをPL測定時と同様にCCD分光器によって観測した。発光させる時間が大変短いため、封止無しでは素子寿命の短いサンプルの測定が可能であった。
【0029】
〔結果と考察〕
3.1 PL測定結果
まず、λmaxが403 nmと491 nmの材料であるPoly[(m-phenylene)-alt-(2,5-dihexyloxy -p-phenylene vinylene)] (PPV)とPoly[2-methoxy-5-(3’,7’-dimethyloctyloxy)-1,4-phenylene vinylene] (MEH-PPV)のPLスペクトルが500 nmと590 nmにそれぞれピークを持つことが分かった。この結果を図4と図5に示す。よって、有機材料の発光波長のピークが、吸収波長のピークであるλmaxより数十〜百nm程度長波長にある事から、λmaxを目安として紫外領域にPLスペクトルのピークを持つ材料の探索を行った。
いくつかの蛍光材料を測定したところ、λmaxを339nmに持つPCAは、PL測定結果から発光ピークが約395 nmにある事が分かった。この結果を図6に示す。よって、この材料を電流注入により励起し、EL発光を観測することができれば、紫外領域で発光する有機発光ダイオードの作製が可能となる。なお、PCAの発光スペクトルには三つのピーク(波長395、510、650 nm)が存在する。これは、この高分子材料が主として三つの発光部分を分子構造内に有していることを意味する。そしてさらに、PCA発光素子を作製し、その上に赤、緑、青の有機発光材料薄膜を形成する事によって、紫外光を励起光源とした白色光源素子への応用が可能となると考えられる。
【0030】
次に、λmaxを274nmに持つ、MDR-PPVを紫外発光材料に検討した。有機溶剤に溶かした状態では、390 nmにPLピークが観測されたが、薄膜状態ではほとんど発光が観測されなかった。この結果を図7に示す。これは、MDR-PPVが濃度上昇に伴い発光強度が減少する“濃度消光”の起こりやすい材料である事を示唆している。しかし発光素子への応用を見据えると、薄膜状態でMDR-PPVの分散状態を実現する必要がある。そこで、MDR-PPVをPVKにドープし分散させる事で、濃度消光の回避を意図した薄膜を形成した。
MDR-PPVのドープ濃度を変えた時の発光スペクトルの変化を図8に示す。このグラフにはPVKのみ(0 wt %)とMDR-PPVを1wt %、5wt %ドープしたスペクトルが示されている。ドープ濃度が1wt %より低い状態ではPVK単体と同様の発光スペクトルを示し、およそ5〜10wt %においてMDR-PPVの発光ピークが強く観測された。また、ドープ濃度を変化させたときの発光強度の変化を測定したところ、MDR-PPVの濃度を高くする程、発光強度が減少することが分かった。以上の結果よりMDR-PPVの濃度が薄過ぎるとPVKの発光が支配的となり濃過ぎると消光するため、5wt %が最適な濃度であることが分かった。ホスト材料であるPVKへの効率の良いキャリア注入が実現されれば、そこにMDR-PPVをドープすることで紫外有機発光ダイオードが実現可能である。
【0031】
また前述の結果と比較するため、TPDと2-(4-tert-Butylphenyl)-5-(4 -biphenylyl)-1,3,4-oxadiazole (PBD)をそれぞれPVKにドープした薄膜、MEH-PPVにTPDをドープした薄膜のPL評価を行った。
まず、PVKにTPDをドープした薄膜のPLについて述べる。それぞれ単体の薄膜状態のPL結果を図9に示す。二つの材料のバンドの位置関係は、TPDのバンドはPVKのバンドに完全に内包される。この薄膜のPL測定結果は図10に示される様にTPDのみによる発光が観測された。これは、PVKからTPDへエネルギー移動が起こっている事を示している。またここで、TPDの濃度を低くする程、発光ピークが短波長化する現象が見られた。
【0032】
次に、PVKにPBDをドープした薄膜について述べる。それぞれ単体の薄膜のPLは図11の通りである。PBDはTPDと違いPVKより深い位置にHOMOの準位を持つ。ドープ薄膜のPL測定は、PBD濃度を上昇させると500 nm付近の発光強度に変化は見られないが、それより短波長側の発光強度の減少が観測された。この様子を図12に示す。これは、PVKからPBDのエネルギー移動が起こらない事を示している。また、濃度上昇に伴い短波長側の発光強度が減少するのは、PVKの発光がPBDによって吸収されているためと考えられる。
【0033】
最後に、MEH-PPVにTPDをドープした薄膜について述べる。この二つの材料は、TPDのLUMOもHOMOもMEH-PPVから完全にはみ出しており、ドープ薄膜のPL測定結果は図13に示す通り、ほとんどMEH-PPVの発光のみが観測された。濃度を増やしていくと、MEH-PPVの発光が減少し、非常に弱くTPDの発光と考えられるスペクトルが観察された。
以上の結果より、ホストからドーパントへのエネルギー移動が起こり、ゲストの発光を得るためには、エネルギーバンドの位置関係がPVKとTPDのようにゲストがホストに内包されている必要がある事が確認された。
【0034】
4.2 有機層の膜厚と表面のラフネスの測定結果
段差表面形状測定装置による段差とラフネスの測定結果について述べる。発光層に用いたPCAと、正孔注入層として用いたPEDOT&PEG、PVKの三種類において測定を行った。なお、PEDOT&PEGに関しては最初から溶剤に溶かされた状態であるため、スピンコートの回転数を変えた場合の膜厚測定のみを行った。
まず、PCA薄膜についての測定結果を以下の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の結果から、溶液に対するPCAの濃度が0.5 wt %の時、スピンコートの回転数を増やすと緩やかな膜厚の減少が観測された。そして濃度が1wt %の時は、回転数1500 rpmで100 nm以上の膜厚が得られた。回転数を3000 rpmにすると急激に膜厚が薄くなり、3000 rpmから4500 rpmにかけての膜厚減少は小さくなった。これは、PCA溶液の粘性が比較的低いので、濃度が低い時と回転数が高い時には溶液がほとんど基板の外へ放り出され、膜厚が薄く形成されると考えられる。ラフネスについては、3000 rpmの時に少し粗い傾向が観測されものの、平坦な膜質が得られた。
【0037】
PVKやPEDOT&PEGの薄膜の場合には、回転数を速くすると膜厚が緩やかに薄くなる傾向が見られた。この結果を以下の表2及び表3に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
上記表2及び表3の結果から、PVK薄膜は、濃度1 wt %の膜厚が0.5 wt %のときより約5倍の厚さになった。これにより、回転数よりも濃度の変化の方が膜厚に大きく影響する事が分かった。又、PEDOT&PEG薄膜のラフネスは、回転数が1500 rpmの時に粗い結果となったので、それよりも高い回転数が成膜に望ましい条件となる。また、PVK薄膜のラフネス測定結果より、濃度が低い時の方が平坦な膜質を得られる事が分かった。しかしながら厚い膜厚が望まれる場合は、濃度を高くする必要があるため、膜厚とラフネスの条件のバランスをとることが要求される。
【0041】
4.3 吸収スペクトルの測定結果
ITOガラス基板、PEDOT&PEG膜、PVK膜及び、TPD膜について、各吸収スペクトルの測定した。PCAを発光層とした場合、その下に正孔注入層としてPEDOT&PEGやPVKを積層しても、PCAの発光をほぼ吸収しない事が分かった。一方、ITOガラス基板は380 nm付近に少し吸収スペクトルを持ち、さらに、TPDは400 nmから短波長側に吸収波長を持っており、ドーパントとして用いた場合に390 nm付近の発光はほとんど吸収されると考えられる。
【0042】
4.4 積層構造を導入した素子のI-VとEL特性
ITO陽極の上にPCA発光層を成膜し、Al陰極を蒸着した有機ダイオードを作製したところ、電流は注入したが発光は観測されなかった。この理由は二つの状況が考えられる。一つは、電子と正孔の注入量に大きな差がある場合。発光層内のキャリアバランスが悪いと再結合確率が下がる。それに加えて、再結合せず余った多数キャリアが、発光層を伝導する際に励起子を解離する。もう一つは、電子と正孔の移動度に大きな差がある場合。仮に注入量が同じでも、移動度の低いキャリアの注入電極付近で再結合する事になる。この場合は、電極金属等の影響を受けて励起子が解離される。これらの状況を回避するため、積層構造の導入を検討した。作製したサンプルの構造とエネルギーダイアグラムは、図1に示した通りである。
【0043】
各サンプルを室温動作させた時のI-V特性を図14に示す。PCA単層素子であるサンプルAに、PEDOT&PEG層を導入したサンプルBにおいて電流値の増加が観測された。また、Ca電極を導入したサンプルCも電流値が増加した。これらはそれぞれ正孔、電子の注入増加を示している。しかしながら、これらのサンプルでは発光は観測されず、よってキャリア注入の改善が不十分である事が分かる。
そこで次に、PEDOT&PEGとCaの両方を導入したサンプルDを作製した。サンプルDの電流値は減少したが、6.5 V付近に閾値電圧が見られ、それとほぼ同時に弱いブロードな発光が観測された。なお、有機発光ダイオードは電子と正孔が注入し、再結合する事で大電流の注入が実現するため、閾値電圧が再結合、すなわち発光の開始とほぼ同じタイミングとなる。
最後に、さらなる正孔注入の改善を意図したPEDOT&PEGとPVKの二層を導入したサンプルEを作製した。サンプルEの測定結果では、電流値は減少したが8.5 V付近に閾値電圧が見られ、同時に510 nmに強いピークを持つ発光が観測された。サンプルDとEの発光スペクトルを図15に示す。
【0044】
先程示したEL発光スペクトルは、PL測定で観測されたバンドに起因するとして以下議論を進める。前記のPL測定結果で述べたように、PCAのPLは395、510、650 nm の三つにピークを持つ。まず、サンプルDのブロードな発光スペクトルは、PCAにおける650 nmの発光と510 nmの発光が少し得られた結果であると推察される。そして、サンプルEの発光からは、Dより510 nmの発光強度を強くしたスペクトルが観測された。これにより、正孔注入を改善する事で510 nmの発光が強く観測されたと考えられる。現時点ではキャリア注入が不十分なために、PCAの発光波長で最も短波長かつ強度の高い395 nmでの発光は観測されていない。しかし以上の結果から、キャリア注入を改善する事でPCAの発光波長をブルーシフトさせ、395 nmで発光する素子を作製できる可能性が示された。
【0045】
4.5 積層構造とドーピングを組み合わせた素子のI-VとEL特性
ITO/EML/Alの単層構造素子において、PCA発光層にTPDドープする事で発光が観測され、これにより明確に発光層へのキャリア注入の改善が示された。そこでPCA素子において、積層構造の導入とTPDのドーピングを組み合わせる事を検討し、I-V特性とELスペクトルにどの様な効果をもたらすのか評価した。作製したサンプルの構造とエネルギーダイアグラムは図2に示した通りである。素子構造は4種類で、発光層(EML)は2種類(TPDドープの有無)作製したのでサンプルは計8種類となる。
室温で動作させた8個のサンプルのI-V特性を図16〜図19に示す。単層素子のサンプルAでは、TPDドープによって注入電流の増加と閾値電圧が観測された。その他の積層構造を導入したサンプルでは、TPDをドープする事で閾値電圧の低下が観測された。よって、閾値電圧の低下からもTPDによってキャリア注入の改善が示された。また、積層構造とドーピングの組み合わせが効果を発揮する事も分かった。
【0046】
さて、次にTPDをドープした各サンプルのI-V特性を比較する。図2 B)に示された様に、サンプルBはAに正孔注入層(PEDOT&PEG)と電子注入電極(LiF)を導入したものである。この二つを比較すると、電流値の増加と閾値電圧の低下が明確に観測された。この結果は、電流値の増加はキャリアの注入の改善を示し、閾値電圧の低下は少数キャリアが増加してキャリアバランスが改善された事を示している。
サンプルBとDを比較すると、PVK層導入の効果が評価できる。PVK層は広いバンドギャップを持つため、導入すると素子にかかる電圧のうち発光層に実際かかる電圧はかなり低下すると考えられる。しかしながら、サンプルDはBよりも低い閾値電圧を持ち、さらには電流をより流す素子となった。この事から、PVK層導入によってPCA発光層への正孔注入が改善され、なおかつキャリアバランスも改善された事が分かる。
最後にサンプルCとDの比較を行う。この二つの違いはLiF層である。こちらも、サンプルDの方がCよりも高い電流値を示し、LiF層の導入によって電子注入は改善された事が分かる。ところが、閾値電圧に関してはほとんど変化のない値となった。極端に薄い膜厚(0.5 nm)のため、LiF層ではほぼ電圧降下がないと考えると、電子の注入増加はキャリアバランス改善にそれ程効果的ではないと推察される。これは、PCAが電子は注入されやすく、正孔はより注入されにくい事を示唆している。
【0047】
次に、ELスペクトルについて述べる。単層素子構造において、TPDをドープする事で明確に発光が観測された。この結果を図20に示す。これより、TPDドーピングがキャリア注入を改善し、それによって発光効率も改善された事が示された。そして、サンプルB、C、DのELスペクトルでは、TPDをドープする事で発光強度の改善が観測された。この結果をそれぞれ、図21〜図23に示す。以上より、TPDドーピングはPCAのEL特性を改善させる強力な手段である事が示された。
【0048】
4.6 TPDのドープ濃度を変化させた素子のI-VとEL特性
前述の通り、PCA単層素子においてTPDをドープする事で注入電流が改善され、発光が観測されるようになった。そこで、ドープ濃度を変化させる事でI-VとELスペクトルにどの様な変化を与えるかを測定し評価した。
ドープ濃度を20、30、40、50 wt %と変化させた時のI-V特性を図24に示す。ドープ濃度によって閾値電圧が変化し、20 wt %の時7.5 V、30 wt %の時6.7 V、40 wt %の時6.3 V、50 wt %の時8.5 Vとなった。これに、前記4.5節の結果から10 wt %ドープ時の閾値電圧が8.7 Vである事を踏まえて、ドープ濃度による閾値電圧の変化を図25に示す。TPDのドーピングは、PCA単層素子のキャリアの注入と移動度に影響を与えると考えられる。前記4.4節の結果でPEDOT&PEGに加えPVKを積層する事で正孔注入が改善された。これは、少なくともPCAのHOMOレベルがPEDOT&PEGよりも深い位置にある事を示している。よって、TPDがPCAへの正孔注入を増加すると考えられる。そして、TPDは正孔輸送性の材料であり、正孔移動度は非常に高く電子はほぼ輸送しない。この事から、正孔移動度の上昇および電子移動度の減少が起こると推察される。よって、閾値電圧の低下はキャリアの注入と移動度のバランスが良くなった事を示しており、40 wt %時付近がPCA単層素子にとって最も良いTPDドープ濃度であると言える。
【0049】
次に、ドープ濃度を変化させた時の発光スペクトルを図26〜図29に示す。ドープ濃度が20 wt %と50 wt %時において、印加電圧が3V付近で弱い発光が観測され、その後それぞれの閾値電圧において強度の強い発光が観測された。以降は閾値電圧で観測された発光スペクトルを比較し議論を行う。ドープ濃度を増やしていくと、素子の400 nmの発光強度が強くなり、ドープ濃度が40 wt %の時に最も発光強度の強い400 nmにピークを持つ素子となった。さらに濃度を上げて、50 wt %のドープを行った時には発光強度が低下したため、波長から見た最適なドープ濃度も40 wt %となった。また、発光強度が今までのサンプルの中で一番強い素子となった事からも40 wt %が最も発光効率の高いドープ濃度である事が示された。
このように、簡易なウエットプロセスを用いた単層構造の400 nm発光素子が室温動作で実現できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の高分子紫外発光素子は、容易なウェットプロセスを用いて作製可能で、PCAにTPDを特定量ドープすることによってキャリア注入が改善され、紫外領域である400 nm近傍に強いピークを有する。又、陽極と発光層との間の正孔輸送層を積層構造とすることによって発光強度が高まり、発光ピーク波長をブルーシフトさせることができ、本発明の高分子紫外発光素子は白色光源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実験に用いた5種類のサンプルの構造(層構成)を示す図であり、各層構成の右側には、エネルギーダイアグラムが表示されている。
【図2】実験に用いた8種類のサンプルの層構成を示す図であり(ドープの有り無しは示されていない)、層構成の右側には、エネルギーダイアグラムが表示されている。
【図3】実験に用いたフォトルミネッセンス測定装置の構成を示す図である。
【図4】PPVの標準化フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図5】MEH‐PPVの標準化フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図6】PCAの標準化フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図7】MDR‐PPV溶液と薄膜のフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図8】MDR‐PPVでドープされたPVKからのフォトルミネッセンススペクトルのドープ濃度依存性を示す図である。
【図9】PVKとTPDのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図10】TPDでドープされたPVKのフォトルミネッセンス強度のドープ濃度依存性を示す図である。
【図11】PVKとPBDの標準化フォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図12】PBDでドープされたPVKのフォトルミネッセンス強度のドープ濃度依存性を示す図である。
【図13】TPDでドープされたMEH‐PPVのフォトルミネッセンス強度のドープ濃度依存性を示す図である。
【図14】室温でのPCAを用いた有機発光ダイオードの電流‐電圧特性を示す図である。
【図15】室温でのPCAを用いた有機発光ダイオードのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図16】サンプルAの電流‐電圧特性を示す図である。
【図17】サンプルBの電流‐電圧特性を示す図である。
【図18】サンプルCの電流‐電圧特性を示す図である。
【図19】サンプルDの電流‐電圧特性を示す図である。
【図20】室温でのサンプルAのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図21】室温でのサンプルBのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図22】室温でのサンプルCのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図23】室温でのサンプルDのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図24】ITO/PCA:TPD/Alの電流‐電圧特性を示す図である。
【図25】閾値電圧のTPDドープ濃度依存性を示す図である。
【図26】20重量%TPDでドープされたPCAダイオードのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図27】30重量%TPDでドープされたPCAダイオードのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図28】40重量%TPDでドープされたPCAダイオードのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。
【図29】50重量%TPDでドープされたPCAダイオードのフォトルミネッセンススペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に設けられた陽極の上に、発光層と陰極層が順次積層された構成を有する発光素子であって、前記発光層においては、高分子有機材料であるホスト材料中にドーパントがドープされており、前記ホスト材料と前記ドーパントの少なくともいずれか一方が、波長400nm以下の紫外領域に発光ピーク波長を有する物質であることを特徴とする高分子紫外発光素子。
【請求項2】
前記高分子有機材料がポリ〔メチルメタクリレート‐コ‐(7‐(4‐トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)〕(PCA)で、前記ドーパントがN,N’‐ビス(3‐メチルフェニル)‐N,N’‐ジフェニルベンジジン(TPD)であり、しかも、前記PCAに対する前記TPDのドープ濃度が35〜45重量%であることを特徴とする請求項1に記載の高分子紫外発光素子。
【請求項3】
前記高分子有機材料がポリ(N‐ビニルカルバゾール)(PVK)で、前記ドーパントがポリ((1‐メトキシ‐4‐)O‐ディスパースレッド1)‐2,5‐フェニレンビニレン(MDR−PPV)であることを特徴とする請求項1に記載の高分子紫外発光素子。
【請求項4】
前記陽極と前記発光層との間に正孔輸送層が積層されており、前記正孔輸送層が、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ブロック‐ポリ(エチレングリコール)から成る層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子紫外発光素子。
【請求項5】
前記のポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)‐ブロック‐ポリ(エチレングリコール)から成る層と前記発光層との間に、第2の正孔輸送層として、ポリ(N‐ビニルカルバゾール)から成る層が積層されていることを特徴とする請求項4に記載の高分子紫外発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−27956(P2010−27956A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189524(P2008−189524)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月13日 2007年度同志社大学大学院 工学研究科 電気工学専攻 博士課程(前期課程)「修士論文審査会予稿集」に発表
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【Fターム(参考)】