説明

高分子組成物及び高分子組成物の製造方法

【課題】架橋点が移動可能な高分子を含有し、液体の加圧吸収性が高い、新規な高分子組成物及び製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】環状多糖(A)の環を重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する高分子組成物;環状多糖(A)の存在下で重合反応を行う高分子組成物の製造方法;重合体(B)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う高分子組成物の製造方法。
環状多糖(A):単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)を含有する環状多糖。
重合体(B):ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2−2)付加物である重合体(B2)、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合体(B3)並びにヒドロキシカルボン酸(b4)の重合体(B4)。
酵素(D):多糖を環化する反応を触媒する酵素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子組成物及び高分子組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている吸収性樹脂、例えば水を吸収する高吸水性樹脂は、高分子同士が化学的に架橋された網目構造を有しており、多量の水を吸収してゲル化し、その水を保持する機能を有する樹脂である。高吸水性樹脂中の化学架橋された網目構造は、架橋点から隣接したの架橋点までの距離が均一ではないため、ゲルに張力を加えた際、架橋点間の距離が短い箇所から不均一に破壊され、破断しやすいという問題がある。
また、寒天の主成分であるアガロースは、多糖間の絡まり(物理架橋)や水素結合による網目構造を有しており、水を吸収してゲル化するものである。しかしながら、アガロースのゲルは、高級水性樹脂と同様に、架橋点間の距離が短い箇所から不均一に破壊さるため破断しやすいという問題がある。また、圧力を加えた際に永久変形が生じやすい問題がある。さらに、水素結合による網目構造を有しているため、高温又は溶媒中では溶解しやすく、低温では結晶化するという問題もある。
そこで、吸収性樹脂をゲルとし、ゲルに張力を加えた際に、網目構造が破壊されにくく、破断しにくいものとするために、架橋点が移動可能な高分子を作成する方法が検討されている。例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコール等の直鎖分子1分子を複数個のシクロデキストリン等の環状分子に貫通させ、さらに、環状分子同士を化学結合することにより架橋した高分子を作成する方法が記載されている。しかしながら、作成に非常に手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第01/083566号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、架橋点が移動可能な高分子を含有し、液体の加圧吸収性が高い、新規な高分子組成物及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記環状多糖(A)の環を下記重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する高分子組成物;下記環状多糖(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の重合反応、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合反応又はヒドロキシカルボン酸(b4)の重合反応を行う高分子組成物の製造方法;下記重合体(B)の存在下で下記酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う高分子組成物の製造方法である。
環状多糖(A):単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)を含む環状多糖。
重合体(B):ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2−2)付加物である重合体(B2)、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合体(B3)並びにヒドロキシカルボン酸(b4)の重合体(B4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である重合体。
酵素(D):多糖を環化する反応を触媒する酵素であって、多糖を単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)にする反応を触媒する酵素。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子組成物は、液体の加圧吸収性が高い。
本発明の高分子の製造方法は、液体の加圧吸収性が高い高分子組成物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、単糖(a)とは、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース並びにアミノ糖及びその誘導体が含まれる。
トリオースは、炭素数3の単糖であり、具体的には、ジヒドロキシアセトン及びグリセリンアルデヒド等が挙げられる。
テトロースは、炭素数4の単糖であり、具体的には、エリトロース、トレオース及びエリトルロース等が挙げられる。
ペントースは、炭素数5の単糖であり、具体的には、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等が挙げられる。
ヘキソースは、炭素数6の単糖であり、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース、グルクロン酸、ガラクツロン酸及びマンヌロン酸等が挙げられる。
ヘプトースは、炭素数7の単糖であり、具体的には、セドヘプツロース等が挙げられる。
アミノ糖及びその誘導体としては、アミノ基を有する糖及びその誘導体が含まれる。アミノ基を有する糖として、具体的には、グルコサミン、マンノサミン、ガラクトサミン、ムラミン酸及びノイラミン酸等が挙げられる。また、誘導体として、具体的には、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルマンノサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルムラミン酸及びN−アセチルノイラミン酸等が挙げられる。
単糖(a)は、原料入手の容易さの観点から、グルコース、フラクトース、N−アセチルグルコサミン、グルクロン酸、ガラクトース及びアラビノースが好ましく、さらに好ましくはグルコース及びフラクトースである。
【0008】
本発明において、環状多糖(A1)は、上記単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖である。
【0009】
本発明の環状多糖(A1)には、単糖(a)1種類が環状結合したもの及び単糖(a)2種類以上が環状結合したものが含まれる。
単糖(a)2種類以上である場合、原料入手の容易さの観点から、N−アセチルグルコサミン及びグルクロン酸の組み合わせ、グルコース及びキシランの組み合わせが好ましい。
【0010】
環状多糖(A1)には、グルコースがα−1,4結合で環状に結合した環状多糖であるシクロアミロース及びクラスターデキストリンTM並びにフラクトースがβ−2,1結合で環状に結合した環状多糖であるシクロフラクタン等が含まれる。また、(A1)は、単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状構造を有していれば良く、分岐鎖があってもいい。
分岐を有する場合、分岐鎖中の単糖(a)の個数は、上記環状多糖(A)中の環状結合した単糖(a)の個数に含めない。
環状多糖(A1)として、作成の容易さの観点から、シクロアミロース及びシクロフラクタンが好ましい。
【0011】
環状多糖(A1)は、例えば、アミロマルターゼ等の酵素を用いてデンプンを処理する事により製造することができる。酵素としては、ポテト由来のD酵素、Pyrococcus属由来のアミロマルターゼ、サーマス属由来のアミロマルターゼ等が挙げられる。
【0012】
環状多糖(A)は、上記環状多糖(A1)を含む環状多糖であるが、環状多糖(A1)以外に、単糖(a)が5〜8個環状に結合した環状多糖(A2)を含んでもいい。
環状多糖(A2)として、具体的には、シクロデキストリン(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリン等)等が挙げられる。
環状多糖(A)中の環状多糖(A1)の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、(A)の重量を基準として、10〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%、最も好ましくは95〜100重量%である。
環状多糖(A)中の環状多糖(A2)の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、0〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜70重量%、特に好ましくは0〜30重量%、最も好ましくは0〜5重量%である。
【0013】
環状多糖(A)中の環状多糖(A1)及び(A2)の含有量(重量%)は、TLC法によって測定できる。具体的には、下記の測定方法で測定できる。
<環状多糖含有量の測定方法>
環状多糖5mgを20mMリン酸緩衝液1mLに溶解して環状多糖溶液を作成し、TLC(10cm×20cm、ナカライテスク製、「シリカゲル60」)に環状多糖溶液を5μLスポットして、温度25℃で展開溶液(1−ブタノール:エタノール:水、5:5:3)で展開する。その後、発色試薬(硫酸:メタノール、1:1)をスプレーして、130℃20分加熱した後、スポットの濃さから定量を行う。
【0014】
環状多糖(A)は、化学修飾されていてもいい。(A)が有する環を重合体(B)が貫通しやすくなる観点及び加圧吸収性の観点から、化学修飾することが好ましい。
化学修飾には、(i)(A)中のヒドロキシル基にカルボキシル基を有するハロゲン化物を反応させてカルボキシル基を導入する方法、(ii)スルホ基を有するハロゲン化物を反応させてスルホ基を導入する方法及び(iii)(A)中のヒドロキシル基を酸化する方法が含まれる。
【0015】
(i)において、カルボキシル基を有するハロゲン化物としては、炭素数2〜30のアルキルカルボン酸のハロゲン(塩素及び臭素等)化物等が挙げられ、具体的には、フルオロ酢酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、2−クロロプロピオン酸、3−クロロプロピオン酸、ω−クロロオクタデカン酸、ω−ブロモエイコサン酸、ω−クロロトリコサン酸及びこれらの塩(アルカリ金属塩)等が挙げられ、反応性及び加圧吸収性の観点から、クロロ酢酸が好ましい。
【0016】
(ii)において、スルホ基を有するハロゲン化合物としては、ハロゲンスルホン酸及び炭素数1〜30のアルキルスルホン酸のハロゲン(塩素及び臭素等)化物等が挙げられ、具体的には、クロロスルホン酸(ClSO3H)、クロロエタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ω−クロロオクタデカンスルホン酸、ω−クロロトリコサンスルホン酸及びこれらの塩(アルカリ金属塩)等が挙げられ、反応性及び加圧吸収性の観点から、クロロスルホン酸が好ましい。
【0017】
(iii)において、(A)中のヒドロキシル基の酸化には、(iii−1)(A)中の1級アルコールを酸化してカルボキシル基にする方法及び(iii−2)糖を酸化開裂する方法が含まれる。
(iii−1)としては、1級アルコールを酸化してカルボキシル基にする酸化反応として知られている公知の方法を用いることができ、具体的には、アルコールを酸化してカルボキシル基にする反応{TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)触媒を用いた酸化、過酸(過酸化水素等)を用いた酸化、過マンガン酸カリウムを用いた酸化及びジョーンズ酸化等}及びアルコールを酸化(PCC酸化、アルブライト・ゴールドマン酸化、フィッツナー・モフィート酸化、デスマーチン酸化及び向山酸化等)してアルデヒドにした後にさらに酸化(クロム酸化等)してカルボキシル基にする反応等が挙げられる。
(iii−2)としては、糖を酸化開裂する従来の方法が使用でき、具体的には、クリーギーグリコール酸化開裂反応及びマラブラードグリコール酸化開裂反応等が挙げられる。
【0018】
本発明において、重合体(B)は、ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2)付加物である重合体(B2)、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合体(B3)並びにヒドロキシカルボン酸(b4)の重合体(B4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0019】
本発明において、ビニルモノマー(b1)は、水溶性ビニルモノマー(b1−1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(b1−1)となるビニルモノマー(b1−2)を含む。
水溶性ビニルモノマー(b1−1)は、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。
水溶性ビニルモノマー(b1−1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(b1−1)となるビニルモノマー(b1−2)としては特に限定はないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体が挙げられる。これらのうち、加圧吸収性の観点から、水溶性ビニルモノマー(b1−1)が好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニルモノマー、特に好ましくは炭素数3〜30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)((メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等);不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、次に特に好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0020】
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム等)塩及びオニウム(第4級アンモニウム、第3級スルホニウム、第4級ホスホニウム及び第3級オキソニウム等)塩が含まれる。
【0021】
水溶性ビニルモノマー(b1−1)及びビニルモノマー(b1−2)は、それぞれ、単独で構成単量体としてもよく、2種以上を構成単量体としてもよい。
【0022】
水溶性ビニルモノマー(b1−1)及び/又はビニルモノマー(b1−2)のうち、加圧吸収性の観点から、(b1−1)が好ましく、さらに好ましくは(b1−1)を単独で構成単量体とすることである。
水溶性ビニルモノマー(b1−1)及びビニルモノマー(b1−2)の両方を構成単量体とする場合、これらのビニルモノマー単位のモル比{(b1−1)/(b1−2)}は、加圧吸収性の観点から、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜98/2、最も好ましくは90/10〜95/5である。
【0023】
ビニルモノマー(b1)中の(b1−1)及び(b1−2)の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、(b1)の重量に基づいて、55〜100が好ましく、さらに好ましくは67〜100、特に好ましくは78〜100、次に特に好ましくは88〜100、最も好ましくは93.5〜100である。
【0024】
ビニルモノマー(b1)中に水溶性ビニルモノマー(b1−1)としてアクリル酸塩を含んでいる場合、アクリル酸塩の含有量(モル%)は、加圧吸収性の観点から、(b1)のモル数に基づいて、50〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは60〜100モル%、次にさらに好ましくは70〜100モル%、最も好ましくは90〜100モル%である。
【0025】
本発明において、ビニルモノマー(b1)として、水溶性ビニルモノマー(b1−1)及び加水分解により水溶性ビニルモノマー(b1−1)となるビニルモノマー(b1−2)の他に、これらと共重合可能なその他のビニルモノマー(b1−3)を使用することができる。
【0026】
共重合可能なその他のビニルモノマー(b1−3)としては特に限定はなく公知{特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報及び特開2005−95759号公報等}の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、下記の(1)〜(3)のビニルモノマー等が使用できる。
(1)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等の芳香族エチレン性モノマー、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(2)炭素数2〜20の脂肪族エチレンモノマー
アルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等];並びにアルカジエン[ブタジエン及びイソプレン等]等。
【0027】
ビニルモノマー(b1)中にその他のビニルモノマー(b1−3)を含有する場合、その他のビニルモノマー(b1−3)の含有量(モル%)は、(b1)の合計モル数に基づいて、加圧吸収性の観点から、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、次に好ましくは0.08〜2、特に好ましくは0.1〜1.5である。なお、加圧吸収性の観点から、その他のビニルモノマー(b1−3)の含有量が0モル%であることが最も好ましい。
【0028】
さらに、ビニルモノマー(b1)には、架橋剤(b1−4)を含んでもいい。(b1−4)としては、特に限定はないが、特開2001−200006号公報又は特開2001−220415号公報に記載されている架橋剤等が挙げられる。(b1−4)は、加圧吸収性の観点から、エチレン性不飽和基を2〜10個有するビニルモノマーが好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、炭素数2〜10のポリアリルアミン及び炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルであり、最も好ましくはN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド及びペンタエリスリトールテトラアリルエーテルである。
【0029】
ビニルモノマー(b1)中の架橋剤(b1−4)の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、(b1)の重量に基づいて、0〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜20重量%、次に特に好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0〜5重量%である。
【0030】
重合体(B)が、ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)である場合、(B1)から(A)を抜け落ちにくくする観点から、(b1)中に架橋剤(b1−4)を少量含んでいることが好ましい。
【0031】
重合体(B1)の数平均分子量は、加圧吸収性の観点から、5,000〜10,000,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜10,000,000である。
数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)にて測定される。また、重合体(B1)は、架橋剤(b1−4)及び環状多糖(A)等の架橋剤となる成分を含まない以外は全く同じ条件で製造した重合体を用いて測定した値である。
【0032】
活性水素化合物(b2−1)としては、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物及びリン酸化合物等が挙げられる。
活性水素化合物(b2−1)としては、これら2種以上を併用してもよい。
【0033】
水酸基含有化合物としては、アルコールやアルカノールアミン等が挙げられる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール及びオクタノール等の1価のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及び2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール;グリセリン及びトリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α−メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース及びショ糖等の4〜8価のアルコール;フェノール及びクレゾール等のフェノール;ピロガロール、カテコール及びヒドロキノン等の多価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール;ポリブタジエンアルコール;ひまし油系アルコール;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの(共)重合体及びポリビニルアルコール等の多官能(2〜100)アルコール等が挙げられ、炭素数1〜20のものが好ましい。
なお、ポリブタジエンアルコールとしては、1,2−ビニル構造を有するもの、1,2−ビニル構造と1,4−トランス構造とを有するもの及び1,4−トランス構造を有するものが挙げられる。1,2−ビニル構造と1,4−トランス構造の割合は種々にかえることができ、例えばモル比で100:0〜0:100である。またポリブタジエンアルコールのうち、ポリブタジエングリコ―ルにはポリブタジエンホモポリマ―及びコポリマ―(スチレンブタジエンコポリマ―及びアクリロニトリルブタジエンコポリマ―等)並びにこれらの水素添加物(水素添加率:例えば20〜100%)が含まれる。
また、ひまし油系アルコールとしては、ひまし油及び変性ひまし油(トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等の多価アルコールで変性されたひまし油等)が挙げられる。
【0034】
アミノ基含有化合物としては、モノ又はポリアミン及びアミノアルコールが挙げられる。
モノ又はポリアミンとしては、具体的には、アンモニア、アルキルアミン(ブチルアミン等)及びアニリン等のモノアミン;エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びジエチレントリアミン等の脂肪族ポリアミン;ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン及びその他特公昭55−21044号公報記載の複素環式ポリアミン;ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルエ−テルジアミン及びポリフェニルメタンポリアミン等の芳香族ポリアミン;ポリアミドポリアミン[例えばジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン];ポリエーテルポリアミン[ポリエーテルアルコール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物];シアノエチル化ポリアミン[例えばアクリロニトリルとポリアミン(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との付加反応により得られるシアノエチル化ポリアミン。例えばビスシアノエチルジエチレントリアミン等];ヒドラジン類(ヒドラジン及びモノアルキルヒドラジン等)、ジヒドラジッド(コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジッド、イソフタル酸ジヒドラジッド及びテレフタル酸ジヒドラジッド等)、グアニジン類(ブチルグアニジン及び1−シアノグアニジン等);及びジシアンジアミド等;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられ、炭素数1〜20のものが好ましい。
アミノアルコールとしては、アルカノールアミン、例えばモノ−、ジ−及びトリ−アルカノールアミン(モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノブタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリプロパノールアミン等);これらのアルキル(炭素数1〜4)置換体〔N,N−ジアルキルモノアルカノールアミン(N,N−ジメチルエタノールアミン及びN,N−ジエチルエタノールアミン等)及びN−アルキルジアルカノールアミン(N−メチルジエタノールアミン及びN−ブチルジエタノールアミン等)〕;及びこれらのジメチル硫酸又はベンジルクロリド等の4級化剤による窒素原子4級化物が挙げられ、炭素数1〜20のものが好ましい。
【0035】
カルボキシル基含有化合物としては、炭素数1〜20のカルボン酸が挙げられ、具体的には、酢酸及びプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸等の芳香族モノカルボン酸;コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;アクリル酸の(共)重合物等のポリカルボン酸重合体(官能基数2〜100)等が挙げられる。
【0036】
チオール基含有化合物のポリチオール化合物としては、2〜8価の多価チオールが挙げられる。具体的にはエチレンジチオール、プロピレンジチオール、1,3−ブチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1、6−ヘキサンジチオール及び3−メチルペンタンジチオール等が挙げられる。
リン酸化合物としては燐酸、亜燐酸、ホスホン酸等が挙げられる。
【0037】
これら活性水素含有化合物(b2−1)のうち、水酸基含有化合物が好ましく、さらに好ましくは1価及び2価アルコール、特に好ましくは2価アルコールである。
【0038】
アルキレンオキサイド(b2−2)としては、炭素数2〜10のものが好ましく、エチレンオキサイド(以下、EOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記する)、ブチレンオキサイド並びにスチレンオキサイド等が挙げられる。これら2種を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、EO及び/又はPOであり、さらに好ましくはEOである。
【0039】
重合体(B2)において、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の付加モル数は、吸水性の観点から、活性水素1モルに対して、10〜1,000,000モルが好ましく、より好ましくは100〜100,000モル、特に好ましくは1,000〜100,000モルである。
重合体(B2)のGPC法による数平均分子量は、加圧吸収性の観点から、1,000〜1,000,000,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜100,000,000である。
【0040】
多価カルボン酸(無水物)(b3−1)には、非環式多価カルボン酸(無水物)、芳香族多価カルボン酸(無水物)及び脂環式多価カルボン酸(無水物)が含まれる。
なお、カルボン酸(無水物)とはカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物を意味する。
非環式多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数2〜20の2価又は3価以上のカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
芳香族多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数8〜20の2価又は3価以上カのカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
脂環式多価カルボン酸(無水物)としては、炭素数8〜20の2価又は3価以上のカルボン酸(無水物)が挙げられ、具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、メチルヘキサヒドロフタル酸及びこれらの無水物等が挙げられる。
これらのうち、加圧吸収性の観点から、非環式多価カルボン酸が好ましく、さらに好ましくはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物である。
多価カルボン酸(無水物)(b3−1)としては、2種以上を併用してもよい。
【0041】
多価アルコール(b3−2)には、非環式多価アルコール及び脂環式多価アルコールが含まれる。
非環式多価アルコールとしては、炭素数2〜20の2価又は3価以上のアルコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−、1,4−、1,5−又は2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−、1,5−、1,6−又は2,5−ヘキサンジオール、2−又は3−メチルペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−又は3−メチルヘキサンジオール、2−、3−又は4−メチルヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−、3−又は4−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリアルカノールアミン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール及びマンニトール等が挙げられる。
脂環式多価アルコールとしては、炭素数6〜20の2価又は3価以上のアルコールが挙げられ、具体的には、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、スピログリコール及びジヒドロキシメチルトリシクロデカン等が挙げられる。
これらのうち、加圧吸収性の観点から、非環式多価アルコールが好ましく、さらに好ましくは非環式2価アルコールである。
多価アルコール(b3−2)としては、2種以上を併用してもよい。
【0042】
重合体(B3)のGPC法による数平均分子量は、加圧吸収性の観点から、1,000〜1,000,000,000が好ましく、さらに好ましくは10,000〜100,000,000である。
【0043】
ヒドロキシカルボン酸(b4)としては、炭素数2〜30のカルボキシル基及びヒドロキシル基を有する化合物が挙げられ、具体的には乳酸、リンゴ酸及びクエン酸等が挙げられる。(b4)のうち、加圧吸収性の観点から、1〜3個のカルボキシル基及び1〜3個のヒドロキシル基を有する化合物が好ましく、さらに好ましくは乳酸、リンゴ酸及びクエン酸である。
【0044】
また、(B)として、鎖状多糖(B5)を用いてもいい。(B5)は、上記単糖(a)が鎖状に結合した鎖状多糖である。(B5)は分岐を有していてもいい。
(B5)には、デンプン、グリコーゲン及びアガロースが含まれる。また、(B5)は、単糖(a)1種類からなるものであってもよく、2種以上からなるものであってもいい。
(B5)中の単糖(a)の個数は、吸水性の観点から10〜1,000,000,000個が好ましく、さらに好ましくは100〜100,000,000個である。
【0045】
本発明において、上記環状多糖(A)の環に下記重合体(B)を貫通させる方法は、特に限定しないが、例えば、下記(I)〜(III)の方法が挙げられる。
(I)環状多糖(A)の存在下で重合体(B)を合成し、(A)が有する環に(B)を貫通させる方法。
(II)溶媒中で環状多糖(A)及び重合体(B)を混合し、0〜100℃で0.1〜100時間静置して、(A)の環に(B)を貫通させる方法。
(III)重合体(B)の存在下で環状多糖(A)を合成し、(A)の環に(B)を貫通させる方法。
【0046】
(I)の方法において、(A)の存在下で(B)を合成する方法は、(B)の種類により適宜選択され、(B)の重合中に(A)が存在すれば特に限定されない。
(I)の方法では、環状多糖(A)及び重合体(B)の単量体(上記(b1)〜(b4))のを混合し、必要に応じて反応溶媒、反応開始剤及び架橋剤等を混合し重合反応を行う。その結果、作成された高分子組成物は、重合体(B)が環状多糖(A)中を複数本貫通した構造を有する高分子(C)を形成すると推察される。この様な観点から、(I)の方法は、環状多糖(A)以外の環状化合物にも応用できる考えられる。
また、(I)の方法において、製造の容易さの観点から、(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応を行う方法が好ましい。
(A)の存在下で上記(b1)〜(b4)の重合反応を行う方法は、後述する本発明の高分子組成物の製造方法である。
【0047】
(II)の方法では、重合体(B)及び環状多糖(A)が疎水性相互作用等により会合(包接)体を形成することにより、(A)の環を(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を形成すると推察される。
(II)の方法で使用する溶媒としては、水及び疎水性溶媒等が含まれる。
疎水性溶媒としては、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエン及びキシレン等が挙げられる。
これらのうち、(A)の環に(B)を貫通させる観点から、水、シクロヘキサン及びノルマルヘキサンが好ましく、さらに好ましくは水及びシクロヘキサン、特に好ましくは水である。
溶媒を使用する場合、反応溶媒の量(重量%)は、(A)の環に(B)を貫通させる観点から、(A)及び(B)の合計重量に対して、100〜600が好ましく、さらに好ましくは150〜500、特に好ましくは200〜450である。
(II)で用いる(B)として、(A)の環への(B)の貫通の容易性の観点から、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2−2)付加物である重合体(B2)が好ましい。
【0048】
(III)の方法において、重合体(B)の存在下で環状多糖(A)を合成し、(A)が有する環に(B)を貫通させる方法は、(A)の種類によって適宜選択され、(B)存在下で(A)を合成できれば特に限定されない。
(III)の方法では、重合体(B)、環状多糖(A)の原料となる多糖、及び多糖に対応する酵素(D)を混合し、必要に応じて反応溶媒等を混合し反応を行う。その結果、作成された高分子組成物は、重合体(B)が環状多糖(A)中を複数本貫通した構造を有する高分子(C)を形成すると推察される。
(III)として、製造の容易さの観点から、(B)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う方法が好ましい。また、(B)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う方法は、後述する本発明の高分子組成物の製造方法である。
【0049】
本発明の高分子組成物は、上記環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する高分子組成物である。貫通する重合体(B)の数(分子数)は、環状多糖(A)1分子に対して2分子以上が好ましく、さらに好ましくは2分子である。重合体(B)2分子以上が(A)1分子中の環を貫通することにより、架橋点が移動可能な架橋を形成することができる。したがって、共有結合等の化学架橋を用いなくても、加圧吸収性及び高弾性を発揮することができる。
【0050】
本発明の高分子組成物は、環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する。環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が貫通した構造を有するかは、下記測定法により、高分子組成物の含水ゲルのゲル弾性率(K1)及びこの含水ゲル中の環状多糖を下記糖分解反応により分解した後のゲル弾性率(K2)を測定することにより推察することができる。具体的には、(K1)及び(K2)を下記式(1)に当てはめてゲル弾性低下率(%)を求め、ゲル弾性低下率が5%以上であることで、高分子(C)を含有していると推察することができる。
高分子組成物中に環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が貫通した構造を有することにより、架橋された構造を形成するが、高分子組成物の糖分解反応を行うと、架橋となっている環状多糖が分解され、糖分解反応後のゲル弾性率が低下する。したがって、高分子組成物は、環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する場合、ゲル弾性低下率が高くなる。
ゲル弾性低下率(%)={ゲル弾性(K1)−ゲル弾性(K2)}/ゲル弾性(K1)×100(1)
【0051】
<ゲル弾性率の測定法>
高分子組成物1gに人工尿(塩化カルシウム0.03%、硫酸マグネシウム0.08%、塩化ナトリウム0.8%、イオン交換水99.09%)39gを加え、40倍ゲルを作成した後、この40倍ゲルを密閉容器中で40℃で1時間保温し、その後、室温になるまで放冷する。放冷したゲルを0.1g秤取り、クリープメーター(山電社製、型式RE−3305)のテーブル上に平坦になるようにのせる。一定速度(10mm/分)で40倍ゲルに断面積2cm2のプローブで荷重をかけて(0.1kgf〜10kgf)、連続的に変化する応力を測定し、最大ピーク高さに対応する応力をF(g)として、次式よりゲル弾性率(K)を算出する。
ゲル弾性率(N/m2)=F×98/3.333
【0052】
<糖分解反応後のゲル弾性率の測定法>
上記「ゲル弾性の測定法」において、「アミラーゼ(ターマミル、Novozymes)を1重量%加えた人工尿」とする以外は同様にして40倍ゲルを作成し、上記と同様にゲル弾性を測定する。
【0053】
本発明において、高分子(C)を構成する環状多糖(A)及び重合体(B)の重量比((B)/(A))は、0.1〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは10〜100,000である。0.1以上であることで高分子組成物の加圧吸収性が良好となり、1,000,000以下であることで、液体を吸収したゲルが破断しにくく、高弾性である高分子組成物が得られる。
【0054】
高分子組成物中の高分子(C)の含有量は、90〜100が好ましく、さらに好ましくは90〜99.999、特に好ましくは95〜99.99、次に特に好ましくは99〜99.95、もっとも好ましくは99.5〜99.9である。
【0055】
高分子組成物には、上記高分子(C)以外に、必要に応じて添加剤(防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、疎水性物質(不定形シリコーン樹脂微粉末等)、消臭剤及び有機質繊維状物等)を含有させることができる。
添加剤を含有させる場合、添加剤の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、高分子組成物の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5、特に好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.5である。
【0056】
高分子組成物の形態は、従来の吸収性樹脂の形態と同じでよく、用途によって適宜選択され、特に制限はないが、例えば、シート状及び粒子状等が挙げられる。
粒子状である場合、高分子組成物の重量平均粒径(μm)は、100〜800が好ましく、さらに好ましくは200〜500、特に好ましくは300〜400である。この範囲であると、ハンドリング性(粒子の粉体流動性等)がさらに良好となる。
【0057】
なお、重量平均粒子径は、JIS Z8815−1994に準拠して測定され、内径150mm、深さ45mmの710μm、500μm、300μm、150μm及び106μmの目開きのふるいを、目開きの狭いふるいを下にして順に重ね、一番上の最も目開きの広い710μmのふるいの上に、測定試料50gを入れ、ふるい振動機にて10分間ふるい、各ふるいの上に残った測定試料の重量を測定し、最初の測定試料の重量に基づく各ふるいの上に残った測定試料の重量%を求めることによって測定される(試料の各粒度分布を、横軸が粒径、縦軸が重量基準の含有量として、対数確率紙にプロットし、全体の重量の50重量%を占める粒径を求める。)。
【0058】
微粒子の含有量は少ない方が加圧吸収性がよく、全粒子に占める106μm以下の微粒子の含有量が3重量%以下が好ましく、さらに好ましくは全粒子に占める150μm以下の微粒子の含有量が3重量%以下である。
微粒子の含有量は、上記の重量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。
【0059】
粉砕方法については、特に限定はなく、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機等の通常の装置が使用できる。得られる粉砕物は、必要により篩別して粒度調整される。
高分子組成物からなる粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0060】
本発明の高分子組成物は、液体の加圧吸収性に優れている。液体としては、水、有機溶媒及び血液等が挙げられる。
水としては、水道水及びイオン交換水等が挙げられる。また、水には食塩水等の塩を含む水も含まれる。
有機溶媒としては、炭素数1〜10のアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、炭素数1〜10のケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、炭素数6〜10のアルキル(シクロヘキサン、ノルマルヘキサン及びノルマルヘプタン等)及び炭素数6〜10の芳香族アルキル(ベンゼン、トルエン及びキシレン等)等が挙げられる。
液体は、加圧吸収性の観点から、水及び炭素数1〜10のアルコールが好ましい。
【0061】
なお、本発明の高分子組成物は、優れた加圧吸収性を有し、液体を吸収したゲルが破断しにくく、高弾性であるという特性を持つことから、従来の吸収性樹脂の用途である、衛生用品用途、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤及び青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の種々の用途だけでなく、コンタクトレンズ、人工関節、化粧品などに用いられる保湿剤、塗料等の用途にも有用である。
【0062】
以下、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、上記環状多糖(A)の存在下で、ビニルモノマー(b1)の重合反応、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の付加重合反応、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重縮合反応又はヒドロキシカルボン酸(b4)の重縮合反応を行う高分子組成物の製造方法である。
本発明の製造方法において使用する環状多糖(A)及び(b)[(b1)、(b2){(b2−1)及び(b2−2)の合計重量}、(b3){(b3−1)及び(b3−2)の合計重量}又は(b4)]の重量比((b)/(A))は0.1〜1,000,000が好ましく、さらに好ましくは10〜100,000である。0.1以上であることで高分子組成物の液体の加圧吸収性が良好となり、1,000,000以下であることで破断しにくく、高弾性である高分子組成物が得られる。
【0063】
本発明の製造方法は、上記環状多糖(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の付加重合反応、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重縮合反応又はヒドロキシカルボン酸(b4)の重縮合反応を行うことにより、(b1)〜(b4)の重合体2分子以上が(A)1分子中の環を貫通すると推察される。そのため、(b1)〜(b4)の重合体(B1)〜(B4)を(A)の環に貫通させるよりも容易である。さらに、(A)分子間を結合させて架橋する必要もなく、少ない工程で高分子組成物を得ることができる。
【0064】
本発明の製造方法では、ビニルモノマー(b1)の重合反応、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の付加重合反応、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重縮合反応又はヒドロキシカルボン酸(b4)の重縮合反応を行う際に環状多糖(A)が存在していれば特に制限なく製造できる。
【0065】
本発明の製造方法において、生産の容易性の観点から、環状多糖(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応を行う高分子組成物の製造方法が好ましい。環状多糖(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応を行う高分子組成物の製造方法として、具体的には、(A)、(b1)及び必要により反応溶媒を含有する重合液(E1)中で、(b1)の重合反応を行い、含溶媒ゲルを得て、乾燥・粉砕して高分子組成物を製造する方法等が挙げられる。
【0066】
反応溶媒としては、水及び疎水性溶媒等が含まれる。
疎水性溶媒としては、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエン及びキシレン等が挙げられる。
これらのうち、生産の容易性の観点から、水、シクロヘキサン及びノルマルヘキサンが好ましく、さらに好ましくは水及びシクロヘキサン、特に好ましくは水である。
反応溶媒を使用する場合、反応溶媒の量(重量%)は、加圧吸収性及び生産の容易性の観点から、ビニルモノマー(b1)の重量に対して、100〜600が好ましく、さらに好ましくは150〜500、特に好ましくは200〜450である。
【0067】
重合液(E1)には、さらに開始剤(d)、グラフト基材(e)、連鎖移動剤(f)及び内部架橋剤(g)を含むことができる。
【0068】
開始剤(d)及びグラフト基材(e)としては、特開2001−200006号公報又は特開2001−220415号公報等に記載のもの等が使用できる。
開始剤(d)を使用する場合、開始剤(d)の使用量(重量%)は、加圧吸収性及び生産の容易性の観点から、ビニルモノマー(b1)の重量に基づいて、0.005〜0.5が好ましく、さらに好ましくは0.007〜0.4、特に好ましくは0.009〜0.3である。
また、グラフト基材(e)を使用する場合、グラフト基材(e)の含有量(重量%)は、加圧吸収性及び生産の容易性の観点から、ビニルモノマー(b1)の重量に基づいて、0.1〜3が好ましく、さらに好ましくは0.3〜2.7、特に好ましくは0.5〜2である。
【0069】
連鎖移動剤(f)としては、ピロガロール、p−メトキシフェノール、没食子酸、没食子酸エステル、タンニン酸、フラボノイド類、チオ尿素及び次亜リン酸(塩)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。連鎖移動剤(f)を使用する場合、連鎖移動剤(f)の使用量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、ビニルモノマー(b1)の重量に基づいて、0.001〜30が好ましく、さらに好ましくは0.005〜20、特に好ましくは0.01〜10である。
【0070】
内部架橋剤(g)としては、架橋剤(b1−4)以外の架橋剤であって、多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート等が含まれる。
このような内部架橋剤(g)としては、特開昭58−180233号公報(対応USP4666983号公報)及び特開昭59−189103号公報に記載の多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート等が使用できる。
多価グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びポリエチレンイミン等が挙げられる。
多価アジリジン化合物としては、商品名:ケミタイトPZ−33{2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス(3−(1−アジリジニル)プロピネート)}、商品名:ケミタイトHZ−22{1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア}及び商品名:ケミタイトDZ−22{ジフェニルメタン−ビス−4、4’−N、N’−ジエチレンウレア}(これらは日本触媒化学工業社製の商品名である)等が挙げられる。
多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
内部架橋剤(g)を使用する場合、(g)の使用量(重量%)は、ビニルモノマー(b1)の重量に基づいて、吸収性(特に吸収量及び吸収速度)の観点から、0〜5が好ましく、さらに好ましくは0〜2である。
【0071】
重合工程の重合方法としては、例えば従来から知られている方法等が適用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法及び逆相懸濁重合法等のいずれでもよい。また、重合時の重合液(E1)の形状として、薄膜状及び噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法及び等温重合法等が適用できる。
重合方法として懸濁重合法又は逆相懸濁重合法を適用する場合、重合液(E)中に、必要に応じて従来公知の分散剤(ショ糖エステル、リン酸エステル及びソルビタンエステル等)及び保護コロイド(ポバール、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合体及び酸化ポリエチレン等)等を含有してもいい。
【0072】
本発明において、重合条件は特に限定されず、例えば、重合開始温度は使用する開始剤の種類等により適宜決定できるが、ポリマーの重合度を高くする観点から、0〜100℃が好ましく、さらに好ましくは5〜80℃である。
重合時間は、使用する開始剤の種類及び重合温度等により適宜決定できるが、0.5〜20時間が好ましく、さらに好ましくは1〜10時間、特に好ましくは2〜5時間である。
【0073】
吸収性樹脂の製造方法において、加圧吸収性の観点から、環状多糖(A)及び架橋剤(1b−4)を使用しない以外は全く同じ条件で重合体を製造した場合のポリマーの数平均分子量が、5,000〜10,000,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜10,000,000である。
上記数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)にて測定される。
【0074】
重合工程の終了により得られる含水ゲル及び含溶媒ゲルの形態は、重合方法によって異なり、溶液重合法では塊状のゲル、乳化重合法、懸濁重合法及び逆相懸濁重合法では粒子状の含水ゲル及び含溶媒ゲルが得られる。
【0075】
環状多糖(A)の存在下で活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の付加重合反応を行う高分子組成物の製造方法として、具体的には、(A)、(b2−1)、反応溶媒及び必要により触媒を含有する重合液(E2)を、室温で減圧と窒素等による不活性ガスでの置換を繰り返した後、減圧にして(b2−2)を滴下しながら重合し、含溶媒ゲルを得て、乾燥・粉砕して高分子組成物を製造する方法等が挙げられる。
【0076】
活性水素含有化合物(b2−1)及びアルキレンオキサイド(b2−2)のモル比は、吸水性の観点から、活性水素1モルに対して、10〜1,000,000モルが好ましく、より好ましくは100〜100,000モル、特に好ましくは1,000〜100,000モルである。
【0077】
環状多糖(A)中のヒドロキシル基は、付加重合反応の容易性の観点から、保護基で保護されていることが好ましい。
保護基としては、通常使用されるヒドロキシル基の保護基が使用できる。ヒドロキシル基の保護基として、具体的には、エーテル保護基(メチルエーテル基、トリチルエーテル基及びベンジルエーテル基等)及びアシル保護基(アセチル基、及びベンゾイル基等)等が挙げられる。
【0078】
反応溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリンなどの芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;t−ブタノールなどのアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0079】
付加重合反応における温度は、好ましくは60〜200℃であり、反応時間の観点からより好ましくは70℃〜140℃である。反応圧力は好ましくは−0.1〜0.5MPaである。反応時間は好ましくは5〜24時間である。反応は触媒存在下で行われる。
触媒は、通常用いられる公知の触媒でよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒、三フッ化ホウ素、四塩化錫等のルイス酸触媒などが挙げられる。
触媒の使用量は、(b2−1)及び(b2−2)の合計重量に基づいて、反応速度の観点から、0.01〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。
【0080】
環状多糖(A)の存在下で多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重縮合反応を行う高分子組成物の製造方法として、具体的には、(A)、(b3−1)、(b3−2)、反応溶媒及び必要により触媒を含む重合液(E3)中で、(b3−1)のカルボキシル基及び(b3−2)のヒドロキシル基をエステル化し、含溶媒ゲルを得て、乾燥・粉砕して高分子組成物を製造する方法等が挙げられる。
【0081】
環状多糖(A)中のヒドロキシル基は、重合反応の容易性の観点から、前述の保護基で保護されていることが好ましい。
【0082】
多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の反応比率は、ヒドロキシル基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
【0083】
重縮合反応は無触媒でも、エステル化触媒を使用してもいずれでもよいが、生産性の観点から好ましいのはエステル化触媒を使用した反応である。
エステル化触媒としては、プロトン酸(リン酸等)、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、IIB、IVA、IVBおよびVB族金属等)の、カルボン酸(C2〜4)塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、水酸化物、アルコキシド等が挙げられる。
これらのうち反応性の観点から好ましいのはIIB、IVA、IVBおよびVB族金属の、カルボン酸(C2〜4)塩、酸化物、アルコキシド、生成物の低着色性の観点からさらに好ましいのは三酸化アンチモン、モノブチル錫オキシド、テトラブチルチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラブチルジルコネート、酢酸ジルコニル、酢酸亜鉛である。
エステル化触媒の使用量は、所望の分子量が得られる量であれば特に制限はないが、(b3−1)及び(b3−2)の合計重量に基づいて、反応性の観点から、0.005〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。
【0084】
重縮合反応は、窒素等不活性ガス存在下、常圧または減圧下(例えば133Pa以下)で行われる。また、反応を促進するため、有機溶剤を加えて還流させる。
反応溶媒としては、活性水素を有しないものであれば特に制限はなく、例えば炭化水素(トルエン、キシレン等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)が挙げられる。
反応温度は通常120〜250℃、反応率および熱分解性抑制の観点から好ましくは150〜230℃である。反応時間は通常1〜40時間、反応率および生産性の観点から好ましくは3〜24時間である。
【0085】
環状多糖(A)の存在下でヒドロキシカルボン酸(b4)の重縮合反応を行う高分子組成物の製造方法として、具体的には、(A)、(b4)、反応溶媒及び必要により触媒を含む重合液(E4)中で、(b4)中のカルボキシル基及びヒドロキシル基をエステル化し、含溶媒ゲルを得て、乾燥・粉砕して高分子組成物を製造するする方法等が挙げられる。
触媒としては、上記エステル化触媒が挙げられる。また、反応溶媒、反応温度は、上記(b3−1)及び(b3−2)の重縮合反応の条件と同様である。
環状多糖(A)中のヒドロキシル基は、重合反応の容易性の観点から、前述の保護基で保護されていることが好ましい。
【0086】
含溶媒ゲルは、必要に応じて破砕することができる。破砕後の含溶媒ゲルの大きさ(最長径)は50μm〜10cmが好ましく、さらに好ましくは100μm〜2cm、特に好ましくは1mm〜1cmである。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。
破砕は、公知の方法で行うことができ、例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機及びロール式粉砕機等の通常の装置を使用して破砕できる。
【0087】
得られた含溶媒ゲルから溶媒(水を含む)を留去することにより、高分子組成物を得ることができる。
溶媒に有機溶媒を含む場合、留去後の有機溶媒の含有量(重量%)は、高分子組成物の重量に基づいて、10〜0.01が好ましく、さらに好ましくは5〜0.05、特に好ましくは3〜0.1、最も好ましくは1〜0.5である。この範囲であると、吸収性能(特に保水量)がさらに良好となる。
また、留去後の溶媒含有量(重量%)は、高分子組成物の重量に基づいて、0〜20が好ましく、さらに好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5、最も好ましくは0〜2である。この範囲であると、吸収性能(特に保水量)及び乾燥後のハンドリング性(粒子の粉体流動性等)がさらに良好となる。
なお、有機溶媒の含有量及び水分は、赤外水分測定器((株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W)により加熱したときの加熱前後の架橋重合体(A)の重量減量から求められる。
溶媒を留去する方法は、80〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等の通常の方法でよい。
【0088】
粉砕方法については、特に限定はなく、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機等の通常の装置が使用できる。
得られる粉砕物は、必要により篩別して粒度調整される。
高分子組成物からなる粒子の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0089】
高分子組成物が、環状多糖(A)の存在下でビニルモノマー(b1)の重合反応を行ったのち粉砕した高分子組成物である場合、必要に応じて表面架橋を行うことができる。表面架橋を行うための表面架橋剤としては、特に限定はないが、高分子組成物の加圧吸収性の観点から、水溶性ビニルモノマー(b1−1)及び/又は加水分解によって水溶性となるビニルモノマー(b1−2)と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する表面架橋剤{特開昭59−189103号公報等に記載の多価グリシジル、特開昭58−180233号公報又は特開昭61−16903号公報等に記載の多価アルコール、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネート、特開昭61−211305号公報又は特開昭61−252212号公報等に記載のシランカップリング剤、並びに特開昭51−136588号公報又は特開昭61−257235号公報等に記載の多価金属等}が好ましく、さらに好ましくは多価グリシジル、特に好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0090】
表面架橋する場合、表面架橋剤の使用量(重量%)は、高分子組成物(表面架橋剤を含む)の重量に基づいて、0.001〜7が好ましく、さらに好ましくは0.002〜5、特に好ましくは0.003〜4である。この範囲であると、さらに加圧吸収性能が良好となる。
表面架橋は表面架橋剤を含む水溶液を高分子組成物に噴霧又は含浸させた後、加熱処理(100〜200℃)する方法等により達成できる。
【0091】
高分子組成物には、必要に応じて、添加剤(防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、疎水性物質(不定形シリコーン樹脂微粉末等)、消臭剤及び有機質繊維状物等)を含有させることができる。添加剤の含有量は前述と同様である。
【0092】
本発明のもう一つの高分子組成物の製造方法は、上記重合体(B)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う高分子組成物の製造方法である。
【0093】
重合体(B)は上記重合体(B1)〜(B4)である。(B)として、生産の容易性の観点から、重合体(B1)が好ましい。
【0094】
酵素(D)は、多糖を環化する反応を触媒する酵素であって、多糖を単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)にする反応を触媒する酵素である。
酵素(D)として、具体的には、アミロマルターゼ、CGTase及びD酵素等が挙げられる。(D)として、反応効率及び生産される環状多糖の環の大きさの観点から、ポテト由来のD酵素、Pyrococcus属由来のアミロマルターゼ及びサーマス属由来のアミロマルターゼが好ましい。
【0095】
多糖には、上記環状多糖(A)及び鎖状多糖(B5)が含まれる。多糖として、生産効率の観点から、ハイアミロースコーンスターチが好ましい。
【0096】
本発明の製造方法は、重合体(B)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う高分子組成物の製造方法であり、下記工程(1)〜(4)により製造する方法が含まれる。
(1)所定量の重合体(B)、酵素(D)、多糖及び反応溶媒を混合して反応溶液(F)とし、所定の温度、所定のpHに調整して、糖転移反応を開始する。
(2)反応溶液(F)の温度を調整しながら、所定の時間、糖転移反応をする。本行程では、必要により攪拌してもいい。
(3)得られた含溶媒ゲルに含まれる反応溶媒を留去し、必要によりその他の添加剤を加え、高分子組成物を得る。
(4)必要により、粉砕する。
【0097】
上記工程(1)において、反応溶液(F)中の重合体(B)の含有量(重量%)は、(F)の重量を基準として、加圧吸収性の観点から、0.01〜99が好ましく、さらに好ましくは1〜50である。
反応溶液(F)中の酵素(D)の含有量(重量%)は、酵素の種類によって適宜選ばれるが、(F)の重量を基準として、反応速度の観点から、0.00000001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.000001〜1である。
反応溶液(F)中の多糖の含有量(重量%)は、(F)の重量を基準として、加圧吸収性及び破断のしにくさの観点から、0.00000001〜50が好ましく、さらに好ましくは0.000001〜10である。
反応溶液(F)中の反応溶媒の含有量(重量%)は、(F)の重量を基準として、反応効率の観点から、1〜99.99が好ましく、さらに好ましくは39〜98.9である。
【0098】
反応溶媒としては、水が挙げられる。水中には、pH調整の観点から、緩衝作用を有するバッファー等を含有していても良い。緩衝作用を有するバッファー等としては、従来のpH調整剤が使用でき、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー、硫酸、塩酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、蟻酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等が挙げられる。
【0099】
反応溶液(F)の温度は、酵素の種類によって適宜選ばれるが、酵素(D)の安定性及び反応速度の観点から0〜100℃が好ましく、さらに好ましくは5〜80℃である。
【0100】
反応溶液(F)のpHは、酵素の種類によって適宜選ばれるが、酵素(D)の安定性及び反応速度の観点から、pH3〜12が好ましい。
【0101】
工程(2)において、反応溶液(F)の温度は、酵素の種類によって適宜選ばれるが、酵素(D)の安定性及び反応速度の観点から、0〜100℃の間で調整することが好ましく、さらに好ましくは5〜80℃である。
工程(2)において、反応時間は、酵素(D)の活性、反応溶液(F)の温度、酵素(D)と多糖の量比等によって異なる。反応溶液(F)の温度を、酵素(D)の活性が高く、反応速度が速い温度に調整すれば、短くすることができる。また、反応溶液(F)中の多糖に対する酵素(D)の量が多いほど、反応は早くなり、反応時間は短くなる。
【0102】
工程(3)において、反応溶媒を留去する方法は、80〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等の通常の方法でよい。
【0103】
高分子組成物には、添加剤(防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、疎水性物質(不定形シリコーン樹脂微粉末等)、消臭剤及び有機質繊維状物等)を含有させることができる。
添加剤を含有させる場合、添加剤の含有量(重量%)は、加圧吸収性の観点から、高分子組成物の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5、特に好ましくは0.05〜1、最も好ましくは0.1〜0.5である。
【0104】
工程(4)において、粉砕方法、高分子組成物の粒子径等は前述の粉砕方法及び粒子径と同様である。
【実施例】
【0105】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、吸水特性{保水量、加圧吸収量}及び弾性特性{ゲル弾性率、ゲル弾性低下率}の性能評価は次の方法により行った。
【0106】
<保水量の測定>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後、測定試料ごとティーバックを15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグを遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し、次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
保水量(g/g)={(h1)−(h2)}/1.00
【0107】
<加圧吸収量の測定>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、測定試料{250μmフルイ及び500μmフルイでふるい分けしたもの}0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この試料の上に、分銅(重量:100g、外径:24.5mm、)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に試料及び分銅の入ったプラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、斜めに傾け、垂れた水滴を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から加圧下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25±2℃であった。
加圧吸収量(g/g)={(M2)−(M1)}/0.16
【0108】
<ゲル弾性率の測定>
測定試料1gに人工尿(塩化カルシウム0.03%、硫酸マグネシウム0.08%、塩化ナトリウム0.8%、イオン交換水99.09%)39gを加え、40倍ゲルを作成した後、この40倍ゲルを密閉容器中で40℃で1時間保温し、その後、室温になるまで放冷した。放冷したゲルを0.1g秤取り、クリープメーター(山電社製、型式RE−3305)のテーブル上に平坦になるようにのせた。一定速度(10mm/分)で40倍ゲルに断面積2cm2のプローブで荷重をかけて(0.1kgf〜10kgf)、連続的に変化する応力を測定し、最大ピーク高さに対応する応力をF(g)として、次式よりゲル弾性率(K1)を算出した。
ゲル弾性率(N/m2)=F×98/3.333
【0109】
<糖分解反応後のゲル弾性率の測定>
上記「ゲル弾性率の測定法」において、「アミラーゼ(ターマミル、Novozymes)1重量%加えた人工尿」とする以外は同様にして40倍ゲルを作成し、上記と同様に測定し、糖分解反応後のゲル弾性率(K2)を測定した。
【0110】
<ゲル弾性低下率の測定>
ゲル弾性率(K1)及び糖分解反応後のゲル弾性率(K2)を以下の式に当てはめて、ゲル弾性低下率を算出した。
ゲル弾性低下率(%)={(K1)−(K2)}/(K1)×100
【0111】
<環状多糖含有量の測定>
環状多糖{シクロアミロース、江崎グリコ株式会社製}5mgを20mMリン酸緩衝液1mLに溶解して環状多糖溶液を作成し、TLC(10cm×20cm、ナカライテスク製、「シリカゲル60」)に環状多糖溶液を5μLスポットして、温度25℃で展開溶液(1−ブタノール:エタノール:水、5:5:3)で展開した。その後、発色試薬(硫酸:メタノール、1:1)をスプレーして、130℃20分加熱した後、スポットの濃さから定量を行った。環状多糖中、環状多糖(A1)は98重量%以上、環状多糖(A2)は2重量%未満であった。
【0112】
<実施例1>
水溶性ビニルモノマー{アクリル酸、三菱化学株式会社製、純度100%}85部、架橋剤{ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ−株式会社製}0.0623部、環状多糖{シクロアミロース、江崎グリコ株式会社製}70部、及び脱イオン水340部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.62部、2%アスコルビン酸水溶液1.1625部及び2%の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]水溶液2.325部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1−1)を得た。
次にこの含水ゲル(1−1)502.27部をミンチ機(ROYAL社製12VR−400K)で細断しながら48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合し、引き続き疎水性物質{トスパール120(不定形シリコーン樹脂微粉末、体積平均粒径2μm)}1.9部を添加して混合し、細断ゲル(2−1)を得た。さらに細断ゲル(2−1)を通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。この乾燥体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、高分子組成物(S−1)を得た。
【0113】
<実施例2>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー105部」及び「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を50部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S−2)を得た。
【0114】
<実施例3>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー145部」及び「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を10部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S−3)を得た。
【0115】
<実施例4>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー154部」及び「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を1部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S−4)を得た。
【0116】
<実施例5>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー155部」及び「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を0.1部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S−5)を得た。
【0117】
<比較例1>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー155部」及び「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を用いなかった」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S’−1)を得たった。
【0118】
<比較例2>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー155部」、「環状多糖70部」に変えて「環状多糖を用いなかった」及び「架橋剤0.0623部」に変えて「架橋剤0.623部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S’−2)を得た。
【0119】
<比較例3>
実施例1において、「水溶性ビニルモノマー85部」に変えて「水溶性ビニルモノマー145部」及び「環状多糖70部」に変えて「鎖状多糖(デキストリン、和光純薬社)10部」とした事以外は、実施例1と同様に行い、高分子組成物(S’−3)を得た。
【0120】
<製造例1>
プライマー1(配列番号1)と2(配列番号2)を用いてPCR法によりE.coli由来のアミロマルターゼ遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、アミロマルターゼを発現する大腸菌(α)を作成した。
【0121】
<製造例2>
大腸菌(α)の終夜培養液10mlを作製し、250mL培養液(TB培養液(Difco社)、0.7重量%硫酸アンモニウム、0.05重量%クエン酸2アンモニウム、1mM硫酸マグネシウム)に植菌し、1L微生物培養装置(エイブル社)を用いてpH7.0、37℃で維持したまま培養を行った。培養開始3時間後に、1M IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を0.75mL加え、さらに、培養液中の濃度が1.0重量%になるようにヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボン2000」)を加えた。培養を48時間行った後、培養液15mLから遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて菌体を分離し、上清のみを回収した。得られた上清を、遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて沈殿除去を行った後、限外ろ過膜(Millipore社製「アミコンウルトラ−15」分画分子量10000)を用いて、5mL程度になるまで上清の濃縮を行い、リン酸緩衝液10mL加えて再び5mL程度になるまで濃縮を行い、再度リン酸緩衝液を加え5mL程度になるまで濃縮を行い、アミロマルターゼ溶液(D−1)を得た。
【0122】
<実施例6>
水溶性ビニルモノマー{アクリル酸、三菱化学株式会社製、純度100%}155部(2.15モル部)、架橋剤{ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ−株式会社製}0.0623部(0.00024モル部)、及び脱イオン水340部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.62部、2%アスコルビン酸水溶液1.1625部及び2%の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]水溶液2.325部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が90℃に達した後、90±2℃で約5時間重合することにより含水ゲル(1−2)を得た。
次にこの含水ゲル(1−2)502.27部をミンチ機(ROYAL社製12VR−400K)で細断しながら48.5%水酸化ナトリウム水溶液128.42部を添加して混合し、引き続き疎水性物質{トスパール120(不定形シリコーン樹脂微粉末、体積平均粒径2μm)}1.9部を添加して混合し、細断ゲル(2−2)を得た。さらに細断ゲル(2−2)を通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、重合体(B1−1)を得た。
ハイアミロールコーンスターチ(豊通ケミプラス社)10部と20mMリン酸緩衝液90部を混合し99℃で1時間保温後、酵素(ターマミル、Novozymes社製)0.01部を混合し、攪拌を行いながら90℃で30分反応を行った後121℃で15分保温して、多糖溶液を作成した。
重合体(B1−1)100部に対して、上記多糖溶液50部、アミロマルターゼ溶液(D−1)10部を混合して反応溶液(F)とし、37℃で6時間保温した。その後、反応溶液(F)を37℃の純水1000部に移し入れ、12時間放置後、ゲルを取り出し、通気型バンド乾燥機{150℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体(3−1)を得た。乾燥体(3−1)をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、目開き150及び710μmのふるいを用いて150〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子(4−1)を得た。この乾燥体粒子(4−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の5部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、高分子組成物(S−6)を得た。
【0123】
<比較例4>
実施例6において、「多糖溶液」に変えて「20mMリン酸緩衝液」とした事以外は実施例6と同様に行い、高分子組成物(S’−4)を得た。
【0124】
<比較例5>
実施例6において、「多糖溶液50部」に変えて「鎖状多糖(デキストリン、和光純薬社)5部及び20mMリン酸緩衝液45部混合溶液」及び「アミロマルターゼ溶液(D−1)10部」に変えて「アミロマルターゼ溶液(D−1)を用いない」とした以外は実施例6と同様に行い、高分子組成物(S’−5)を得た。
【0125】
<比較例6>
実施例6において、「多糖溶液50部」に変えて「環状多糖(シクロアミロース、江崎グリコ株式会社製)5部及び20mMリン酸緩衝液45部混合溶液」及び「アミロマルターゼ溶液(D−1)10部」に変えて「アミロマルターゼ溶液(D−1)を用いない」とした以外は実施例6と同様に行い、高分子組成物(S’−6)を得た。
【0126】
実施例1〜6で得た高分子組成物(S−1)〜(S−6)及び比較例1〜6で得た高分子組成物(S’−1)〜(S’−6)を測定試料として用いて、高分子組成物の性能評価を行った。性能評価結果を表1に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
表1の評価結果から、環状多糖の存在下でビニルモノマーの重合反応を行って作成した実施例1〜5の本発明の高分子組成物は、水の吸収性がいいことがわかる。また、重合体(B1)の存在下で酵素(D)による多糖の糖転移反応を行って作成した実施例6の本発明の高分子組成物も、水の吸収性がいいことがわかる。さらに、実施例1〜6の高分子組成物は、比較例1〜6の高分子組成物に比べて加圧吸収量が高く、加圧吸収性が高く、さらに、ゲル弾性率が高いことがわかる。
特に、同量の多糖の存在下でビニルモノマーの重合反応を行った実施例3(環状多糖)及び比較例3(鎖状多糖)を比較すると、環状多糖を使用した実施例3の高分子組成物は、比較例3よりも吸水量、加圧吸収量及びゲル弾性率が優れていることがわかる。
また、環状多糖(A)及び重合体(B)を混合しただけである比較例6の高分子組成物のゲル弾性低下率は0%であるのに対し、実施例1〜6の本発明の高分子組成物は、ゲル弾性低下率が59〜65%と高かった。これは、環状多糖(A)及び重合体(B)を混合しただけの比較例6の高分子組成物中には高分子(C)を有しておらず、環状多糖を分解しても、ゲル弾性率に変化がなかったためであると推察される。一方、実施例1〜6の高分子組成物中には、環状多糖(A)が有する環を重合体(B)が2分子以上貫通した構造を有する高分子(C)を含有しており、架橋された構造を形成するが、糖分解反応により架橋となっている環状多糖が分解され、ゲル弾性率が低下したためであると推察される。
また、比較例6が高分子(C)を有していなかったことは、比較例4及び比較例6の吸水量及び加圧吸収量が同等であり、吸収性が変化しなかったことからもわかる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の高分子組成物は、優れた加圧吸収性を有し、液体を吸収したゲルが破断しにくく、高弾性であるという特性を持つことから、従来の吸収性樹脂の用途である、衛生用品用途、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤及び青果物等の鮮度保持剤、肉類及び魚介類のドリップ吸収剤、保冷剤、使い捨てカイロ、電池用ゲル化剤、植物や土壌等の保水剤、結露防止剤、止水剤やパッキング剤、並びに人工雪等の種々の用途だけでなく、コンタクトレンズ、人工関節、化粧品などに用いられる保湿剤、塗料等の用途にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記環状多糖(A)の環を下記重合体(B)が貫通した構造を有する高分子(C)を含有する高分子組成物。
環状多糖(A):単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)を含む環状多糖。
重合体(B):ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2−2)付加物である重合体(B2)、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合体(B3)並びにヒドロキシカルボン酸(b4)の重合体(B4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である重合体。
【請求項2】
重合体(B)がビニルモノマー(b1)の重合体(B1)である請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
環状多糖(A)及び重合体(B)の重量比((B)/(A))が、0.1〜1,000,000である請求項1又は2に記載の高分子組成物。
【請求項4】
下記環状多糖(A)の存在下で、
ビニルモノマー(b1)の重合反応、活性水素含有化合物(b2−1)へのアルキレンオキサイド(b2−2)の重合反応、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合反応又はヒドロキシカルボン酸(b4)の重合反応を行う高分子組成物の製造方法。
環状多糖(A):単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)を含む環状多糖。
【請求項5】
下記重合体(B)の存在下で下記酵素(D)による多糖の糖転移反応を行う高分子組成物の製造方法。
重合体(B):ビニルモノマー(b1)の重合体(B1)、活性水素含有化合物(b2−1)のアルキレンオキサイド(b2−2)付加物である重合体(B2)、多価カルボン酸(無水物)(b3−1)及び多価アルコール(b3−2)の重合体(B3)並びにヒドロキシカルボン酸(b4)の重合体(B4)からなる群から選ばれる少なくとも1種である重合体。
酵素(D):多糖を環化する反応を触媒する酵素であって、多糖を単糖(a)が9〜200個環状に結合した環状多糖(A1)にする反応を触媒する酵素。

【公開番号】特開2012−214531(P2012−214531A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78836(P2011−78836)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】