説明

高分子組成物

【解決手段】 ポリ乳酸及び非イオン系帯電防止剤を含む高分子組成物。
【効果】 ポリ乳酸の優れた透明性、分解性、機械的性質、その他の物性に悪影響を及ぼすことなく、帯電防止性を発揮する。ポリ乳酸及び非イオン系帯電防止剤は、それぞれ、廃棄物として地中に埋設されたり、海や河川に投棄された場合であっても、紙や木等の天然物と同様に、自然環境下で、無害な水と炭酸ガスに分解する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、帯電防止性および透明性に優れた、分解性を有するポリ乳酸系高分子組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
[環境保全の技術的背景]一般に、合成高分子材料は表面固有抵抗が大きいため、摩擦や剥離によって容易に帯電しやすく、ゴミやホコリを吸引して外観を損ねる等、成形品、シート、フィルム、繊維などの製品分野で様々なトラブルを起こしている。従来より、このような帯電しやすい高分子材料(主として、熱可塑性高分子材料)に、帯電防止性を付与する検討がなされてきた。典型的な従来の技術の具体例としては、例えば、帯電防止剤(界面活性剤)として、ポリエチレンオキサイドのような親水性高分子やアルキルスルホン酸塩を、高分子材料に練り込む技術が挙げられる。帯電防止性の付与された通常の汎用高分子材料は、樹脂組成物やその成形物として、種々の産業用資材としての有効に利用されてきた。しかるに、帯電防止性の付与された通常の汎用高分子材料は、その使用の使命を終え、廃棄されると、自然環境下でほとんど分解されないために、埋設処理した場合には、半永久的に地中に残留し、焼却処分した場合には、廃棄ガスや廃棄熱エネルギーが問題となる場合がある。さらには、通常の汎用高分子材料は、自然環境下でほとんど分解されないために、景観を損ねたり、可塑剤等の添加剤の溶出により環境を汚染したり、海洋生物の生活環境を破壊したり、多くの環境保全上の問題を惹起している。
【0003】[ポリ乳酸の技術的背景]このような背景から、分解性及び/又は生分解性(本出願の明細書においては、自然環境下で微生物等の作用により分解する機能や生体内で酵素等の作用により分解する機能を包含する。)を有する熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸(本出願の明細書においては、狭義のポリ乳酸(ホモポリマー)及びコポリ乳酸(例えば、乳酸とヒドロキシカルボン酸の共重合体等のコポリマーを包含する。)が注目を集めてきた。ポリ乳酸は、動物の体内で数カ月から1年以内に100%生分解し、また、土壌や海水中等の湿潤状態に放置された場合、数週間程度で強度が著しく低下し、約1年から数年程度で原形を留めずに消滅し、さらに分解生成物は、人体に無害な乳酸と二酸化炭素と水になるという特性を有している点で特徴的である。ポリ乳酸の原料である乳酸は、発酵法や化学合成法により製造されている。最近では、特に、発酵法によるL−乳酸が大量に製造され、価格も安価となってきた。ポリ乳酸の物性の中では、優れた透明性と剛性が特筆すべきものである。このような特徴を活かした各種の用途開発が進められている。
【0004】[透明プラスチックフィルムの技術的背景]近年、透明プラスチックフィルムは、エレクトロニクス、メカトロニクス、オプトエレクトロニクス、レーザー(光通信、CD、CD−ROM、LD、DVD、光磁気記録等も含む。)、液晶、光学、オフィスオートメーション(OA)、ファクトリーオートメーション等の分野における技術開発の飛躍的進展に伴い、その用途も飛躍的に拡大しつつある。その用途の具体例としては、例えば、オーバーヘッドプロジェクター用フィルム、製版用フィルム、トレーシングフィルム、食品ラッピングフィルム、農業用フィルム等の用途が挙げられる。高機能な用途の具体例としては、例えば、透明導電性フィルム(例えば、コンピューター入力用画面タッチパネル等)、熱線反射フィルム、液晶ディスプレー用フィルム、液晶ディスプレー用偏光フィルム、PCB(プリント回路基盤)等が挙げられる。ガラス、アクリル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリカーボネート(PC)等の可撓性(フレキシビリティー)の低い硬質なフィルムが使用されていた従来の用途においては、可撓性、成形容易性等に優れた透明フィルムでの代替が必要とされる傾向にある。このような代替需要の一部には、ポリエチレンテレフターレート(PET)フィルムで応じることが可能である。しかしながら、例えば、分解性性が要求されるような用途には、PETでは問題となる場合がある。このような背景から、透明フィルムの技術分野における、最近における研究開発の動向は、分解性の向上に焦点が合わせられている。
【0005】[ポリ乳酸の従来技術における問題点]ポリ乳酸を、成形品、シート、フィルムなど製品分野において使用する場合には、上記したような一般的な汎用熱可塑性高分子材料と同様に、帯電防止性が要求される。しかしながら、帯電防止に関する従来技術によったのでは、ポリ乳酸の優れた特徴の一つである透明性を損ねることが問題であった。そして、ポリ乳酸の優れた透明性を損ねることなく、優れた帯電防止効果を発揮し得る帯電防止剤は、知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題を解決し、機械的性質やその他の物性に悪影響を及ぼすことのない、帯電防止性および透明性に優れた、生分解性を有するポリ乳酸系の高分子組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ乳酸と非イオン系帯電防止剤からなるポリ乳酸組成物により、上記「発明が解決しようとする課題」を解決できるとの知見を見い出し、本出願に係る発明を完成するに至った。本出願に係る発明は、以下の[1]〜[11]に記載の発明である。
【0008】[1] (A)ポリ乳酸、及び、(B)非イオン系帯電防止剤を含む高分子組成物。
[2] (A)ポリ乳酸、及び、(B)一般式(1)(化2)で示されるグリセリン脂肪酸エステルからなる非イオン系帯電防止剤を含む高分子組成物。
【0009】
【化2】


(一般式(1)において、Rは、炭素原子数5〜25のアルキル基である。)
[3] 帯電防止性、透明性及び分解性を併せ有する、請求項1又は2に記載の高分子組成物。
[4] (A)ポリ乳酸、及び、(B)非イオン系帯電防止剤の組成比が、それぞれ、100重量部、及び、0.2〜13重量部である、請求項1乃至3の何れかに記載の高分子組成物。
[5] 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、成形して得られた成形物。
[6] 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、フィルムに加工後、熱処理及び/又は延伸することにより得られたフィルム又はシート。
[7] 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、紡糸後、熱処理及び/又は延伸することにより得られたフィラメント。
[8] 請求項7記載のフィラメントを加工することにより得られた糸。
[9] 請求項7記載のフィラメント又は請求項8記載の糸を加工することにより得られたテキスタイル。
[10] 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、発泡することにより得られた発泡体。
[11] 60℃以上で熱処理された、請求項5乃至10の何れかに記載された、耐熱性の高い成形物、フィルム、シート、フィラメント、糸、テキスタイル又は発泡体。
【0010】
【発明の実施の形態】本出願明細書において、文献を引用した場合は、特に説明をしている場合を除き、それらの記載は全て、引用文献及び引用範囲を明示したことにより本出願明細書の開示の一部とし、明示した引用範囲を参照することにより、本出願明細書に記載した事項又は開示からみて、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項又は開示とする。
【0011】[「ポリ乳酸」なる語の概念等]本発明において用いる「ポリ乳酸」なる語の概念には、ポリ乳酸、乳酸−ヒドロキシカルボン酸共重合体等のコポリ乳酸、及び、ポリ乳酸及び乳酸−ヒドロキシカルボン酸共重合体の混合物等のポリマーブレンドやポリマーアロイを包含する。ポリ乳酸の原料としては、乳酸類及びヒドロキシカルボン酸類等が用いられる。乳酸類の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。また、乳酸類と併用できるヒドロキシカルボン酸類の具体例としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5ーヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、さらに、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。
【0012】[ポリ乳酸の製造方法]本発明において使用されるポリ乳酸の製造方法としては、例えば、■ 乳酸又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類の混合物を原料として、直接脱水重縮合する方法、■ 上記乳酸類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を用いて開環重合させる方法、等を挙げることができる。
【0013】[直接脱水重縮合法]直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類又は乳酸類とヒドロキシカルボン酸類を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量のポリ乳酸が得られる。
【0014】[ポリ乳酸の分子量]ポリ乳酸の重量平均分子量や分子量分布は、実質的に、成形加工が可能であれば特に制限されない。ポリ乳酸の重量平均分子量は、一般的には、成形性に好適な範囲の高分子量のものが好ましく、より具体的には、3万以上500万以下が好ましい。通常、重量平均分子量が3万未満のものでは成形品の強度が小さくなり実用に適さない場合が多く、また、分子量が500万以上のものは成形加工性に劣る場合が多い。
【0015】[非イオン系帯電防止剤]公知の帯電防止剤としては、■ アニオン系帯電防止剤:脂肪族アミン塩、アルキルホスフェート型、アルキルサルフェート型、アルキルアリルサルフェート型等、■ カチオン系帯電防止剤:アルキルアリルサルフェート型、第四級アンモニウム塩型、第四級アンモニウム樹脂型、ピリジニウム型、モノホリン誘導体等、■ 非イオン系帯電防止剤:ソルビタン型、エーテル型、アミンまたはアミド型、エタノールアミド型、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリエチレンイミン等、■ 両性帯電防止剤:ルキルベタイン形、アルキルイミダゾリン誘導体、N−アルキルβ−アラニン型等、が知られている。これらのうち、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤、及び、両性帯電防止剤を用いたのでは、ポリ乳酸の優れた特徴の一つである透明性を損ねてしまう。非イオン系帯電防止剤を用いた場合のみ、ポリ乳酸の優れた特徴の一つである透明性を損ねることを回避できるのである。本発明において使用できる非イオン系帯電防止剤の具体例としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル系のグリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート等がを挙げることができる。本発明において使用できる非イオン系帯電防止剤の他の具体例としては、例えば、一般式(1)(化3)で示されるグリセリン脂肪酸エステルからなる非イオン系帯電防止剤を挙げることができる。
【0016】
【化3】


(一般式(1)において、Rは、アルキル基であり、その炭素原子数は、好ましくは5〜25であり、より好ましくは8〜22である。)
特筆すべきことは、本出願に係る発明たる、「帯電防止性、透明性及び分解性を併せ有する高分子組成物」は、「(A)ポリ乳酸」が自然環境下で生分解した場合においても、溶出又は残留する「(B)非イオン系帯電防止剤」が、環境や動植物にやさしいということである。すなわち、グリセリン脂肪酸エステル等の「(B)非イオン系帯電防止剤」は、一般に、食品添加物として広く使用されているので、環境や動植物にやさしいという特徴をもっているのである。なお、その他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、各種安定剤、、紫外線吸収剤、難燃剤、内部離型剤、滑剤、可塑剤、無機フィラーなどをあわせて添加してもさしつかえない。
【0017】[配合]本発明の「帯電防止性、透明性及び分解性を併せ有する高分子組成物」において、一般的には、ポリ乳酸、非イオン系帯電防止剤は、以下の使用範囲で用いられる。
(A)ポリ乳酸100重量部に対し(B)非イオン系帯電防止剤0.2〜13重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは3〜8重量部が用いられる。一般的には、(B)成分が上記範囲に満たない場合は帯電防止効果が不十分であり、また同様に上記範囲を越える場合は、流動性が大幅に増加し成形加工が困難となり、あるいは機械的強度が低下し好ましくない場合が多い。また、一般的には、(B)成分に非イオン系帯電防止剤以外の帯電防止剤を大量に併用した場合には、十分な帯電防止効果が得られなかったり、ポリ乳酸の透明性が損なわれ、ポリ乳酸が成形加工時に劣化し流動性が大幅に増加するなどの問題が起こる場合がある。
【0018】[ポリ乳酸組成物の製造方法]本発明で使用するポリ乳酸組成物の製造方法については特に制限されず、通常、熱可塑性樹脂において用いられている公知の方法を採用することができる。すなわち、ポリ乳酸と非イオン系界面活性剤を高速撹拌機または低速攪拌機などを用いて均一混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で溶融混練する方法を採用することができる。また、目的に応じて各種安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、内部離型剤、滑剤、可塑剤、無機フィラーなどを添加することができる。
【0019】[語「高分子」の概念]本出願の明細書において用いる「高分子」なる語の概念は、「重合体」、「ポリマー」、「巨大分子」又は「マクロモレキュール」なる語と相互に等価であり、ホモポリマー及びコポリマーを包含する。本出願の明細書において用いる「コポリマー」なる語の概念は、「共重合体」なる語と相互に等価である。コポリマー(共重合体)の配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。高分子は、線状、大環状、分岐状、星形、三次元網目状等のいずれでもよい。
【0020】[語「高分子組成物」の概念]本出願の明細書において用いる「高分子組成物」なる語の概念は、1種類以上の高分子と1種類以上の低分子化合物を含む組成物を包含する。本出願の明細書において用いる「高分子組成物」なる語の概念は、2種類以上の高分子を含む組成物を包含する。本出願の明細書において用いる「高分子組成物」なる語の概念は、2種類以上の高分子と1種類以上の低分子化合物を含む組成物を包含する。本出願の明細書において用いる「高分子組成物」なる語の概念は、2種類以上の高分子を含む、高分子混合物、ポリマーアロイ、ポリマーブレンドを包含する。本出願の明細書において用いる「高分子組成物」なる語の概念は、2種類以上の高分子の相溶性を実現するために、相溶性剤を含んだものも包含する。
【0021】[語「分解性」の概念]本出願の明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、有機材料に関し、特定の目的に使用している期間は、目的に合致した材料特性を保持し、目的終了後又は廃棄後に、自然環境下又は生体内環境下において、脆弱化及び無害化するような機能をも包含する。本出願の明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・424頁右欄〜425頁左欄の「崩壊性高分子」の項に記載されている「崩壊性」の概念をも包含する。本出願の明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・369頁左欄の「光崩壊性」の項に記載されている「光崩壊性」の概念をも包含する。本出願の明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・539左欄〜540頁右欄の「生分解性ポリマー」の項に記載されている「生分解性」の概念をも包含する。本出願の明細書において用いる「分解性」なる語の概念には、「コンポスタブル(compostable、土壌回帰性)」の概念をも包含する。「分解性」の評価は、例えば、土壌中への埋め込み試験、培養微生物による分解試験、酵素標品による分解試験、血清中でのイン−ビトロ分解試験、生体内埋植によるイン−ビボ分解試験、光照射試験等によって評価することができ、より具体的には、例えば、ASTM D5209−91(生分解性試験)やASTMD 5338−92(コンポスタビリティー(土壌回帰性能)試験)によっても評価することができる。
【0022】[語「帯電防止」の概念]本出願の明細書において用いる高分子材料の「帯電防止性」なる語の概念には、高分子材料の「■ 成形品の表面抵抗」及び「■ 帯電圧半減期」について、それぞれ、1012Ω以下及び120秒以下である性質を包含する。高分子材料の「■ 成形品の表面抵抗」及び「■ 帯電圧半減期」について、以下に説明する。
■ 成形品の表面抵抗成形品(50mm角、厚み3mm平板)を温度23℃、相対湿度50%の条件下に7日間放置した後、同条件のもとで極超絶縁計SM−10E型(東亜電波工業)により、表面抵抗を測定した(印加電圧: 100V)。
■ 帯電圧半減期成形品(50mm角、厚み3mm平板)を温度23℃、相対湿度50%の条件下に7日間放置した後、同条件のもとでスタティックオネストメーターS−4104型(宍戸商会)により帯電圧半減期を測定した(印加電圧:8kV、印加時間:10秒、放電高さ: 1.5cm、受電高さ: 1.0cm、円盤回転数:1000rpm )。
【0023】[語「透明性」の概念]本出願の明細書において用いる高分子材料の「透明性」なる語の概念には、以下に示す「■ ヘイズ(透明性)」が、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である性質を包含する。本出願の明細書において用いる高分子材料の「透明性」なる語の概念には、以下に示す「■ 紫外可視光波長領域における透過率」について、所望の紫外可視光波長領域における透過率が、60%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0024】■ ヘイズ(透明性)
成形品(50mm角、厚み3mm)のヘイズをJIS K7105に準拠して測定した。
【0025】■ 紫外可視光波長領域における透過率成形品(50mm角、厚み3mm平板)を、走査型紫外可視光波長領域分光計で、220〜780nmで透過率を測定した。成形品(50mm角、厚み3mm平板)を、場合により、走査型可視光波長領域分光計で、380〜780nmで透過率を測定した。
【0026】[語「相溶化剤」の概念]本出願の明細書において用いる「相溶化剤」なる語の概念は、「相容化剤」又は「コンパティビライザー」なる語の概念と相互に等価であり、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・437頁左欄〜438頁右欄の「ポリマーブレンド」の項に記載されている「相溶化剤」又は「相容化剤」の概念を包含し、非相溶性又は低相溶性の高分子多相系に少量添加することにより、相溶性を改善し、著しい材料物性の向上を可能とする第三成分をも意味する。本出願の明細書において用いる「相溶化剤」なる語の概念には、例えば、「ポリマーアロイ−基礎と応用−(高分子学会編、東京化学同人、東京、1981年)」に記載されている「相溶化剤」、「相容化剤」又は「コンパティビライザー」の概念をも包含する。
【0027】[語「ポリマーブレンド」の概念]本出願の明細書において用いる「ポリマーブレンド」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・437頁左欄〜438頁右欄の「ポリマーブレンド」の項や、「ポリマーアロイ−基礎と応用−(高分子学会編、東京化学同人、東京、1981年)」に記載されているポリマーブレンドの概念をも包含し、種類の異なる高分子を混合してつくる高分子材料をも意味する。
【0028】[語「ポリマーアロイ」の概念]本出願の明細書において用いる「ポリマーアロイ」なる語の概念には、例えば、「新版高分子辞典(高分子学会編、朝倉書店、東京、1988年)」・435頁の「ポリマーアロイ」の項や、「ポリマーアロイ−基礎と応用−(高分子学会編、東京化学同人、東京、1981年)」に記載されているポリマーアロイの概念を包含し、ブロック共重合体、グラフト共重合体、物理的ポリマーブレンド(溶融ブレンド、溶媒キャストブレンド、ラテックスブレンド等)、ポリマーコンプレックス(イオノマー、ポリイオンコンプレックス等)、化学的ポリマーブレンド(溶液グラフト、IPN等)の高分子多成分系を包含する。
【0029】[熱処理]本発明に係る高分子組成物を含む成形品やフィルム、シート、フィラメント、糸、テキスタイル等の加工品を熱処理すると、高い透明性、可撓性及び耐熱性を併せ有する高性能加工製品を得ることができる。温度、時間、温度変化、雰囲気等の熱処理条件は、成形品や加工製品に要求される物性に応じて、適宜、選択される。熱処理は、連続操作でも回分操作でもよい。
【0030】[用途]本発明に係る高分子組成物は、本発明出願前に公知・公用であった医療用途、食料品包装用途や汎用に使用されている樹脂の代替物として好適に使用することができる。
【0031】[成形加工]本発明に係る高分子組成物は、射出成形、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、バルーン成形等の成形加工に好適な材料である。また、本発明に係る高分子組成物は、適当な成形加工法により、例えば、ボールペン・シャープペン・鉛筆等の筆記用具の部材、ステーショナリーの部材、ゴルフ用ティー、始球式用発煙ゴルフボール用部材、経口医薬品用カプセル、肛門・膣用座薬用担体、皮膚・粘膜用貼付剤用担体、農薬用カプセル、肥料用カプセル、種苗用カプセル、コンポスト、釣り糸用糸巻き、釣り用浮き、漁業用擬餌、ルアー、漁業用ブイ、狩猟用デコイ、狩猟用散弾カプセル、食器等のキャンプ用品、釘、杭、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材、ブロック等としても好適に使用することができる。本発明に係る高分子組成物は、適当な成形加工法により、例えば、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、箸、割り箸、フォーク、スプーン、串、つまようじ、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚・精肉・青果・豆腐・惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用のボトルや缶、炭酸飲料・清涼飲料等のソフトドリンク用のボトルや缶、ビール・ウィスキー等の酒類ドリンク用のボトルや缶、シャンプーや液状石鹸用のポンプ付き又はポンプなしのボトル、歯磨き粉用チューブ、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、植木鉢、浄水器カートリッジのケーシング、人工腎臓や人工肝臓等のケーシング、注射筒の部材、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、カメラ・眼鏡・顕微鏡・望遠鏡等の光学機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材としても好適に使用することができる。
【0032】[語「糸」の概念]本出願の明細書において用いる「糸」なる語の概念は、繊維便覧・加工編(繊維学会編、丸善、東京、1969年)・393〜421頁に記載されている「原糸」の概念をも包含し、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルファイバー(スフ)、トウ、ハイバルクスフ、ハイバルクトウ、紡績糸、混紡糸、加工糸、仮撚糸、異形断面糸、中空糸、コンジュゲート糸、POY(部分配向糸)、DTY(延伸加工糸)、POY−DTY、スライバー等をも包含する。
【0033】[語「テキスタイル」の概念]本出願の明細書において用いる「テキスタイル」なる語の概念には、織布、編物、不織布、紐や縄を含む組物、綿状ハイバルクスフ、スライバー、多孔質スポンジ、フェルト、紙、網等の繊維構造体と認識されるもの一般を包含する。
【0034】[製膜法]本発明に係る高分子組成物の成膜は、慣用の方法、例えば、流延法(キャスティング法)などにより行なうことができる。流延法では、本発明に係る高分子組成物の溶液を、支持体上に流延してフィルム化する。前記支持体の種類は特に制限されず、例えば、平坦面を有する回転ドラム、シート、支持板などであってもよい。また、コーティング等に用いることもできる。
【0035】[キャスティング法]キャスティング法を採用する場合には、本発明に係る高分子組成物の溶液を調製する必要がある。本発明に係る高分子組成物の前記溶液中の濃度は、実質的に成膜可能のものであれば、特に制限されない。前記濃度は、一般的には、5〜40重量%が好ましく、10〜25重量%がより好ましい。本発明に係る高分子組成物の溶液の乾燥は、乾燥不活性ガス(窒素、アルゴン等)気流下、減圧下、適当な温度下(室温から300℃程度)で行なうことができる。また、フィルムの表面平滑性に、ビデオテープやフロッピーディスクのベースフィルムと同程度かそれ以上の性能が求められる場合には、フライ・スペック(蠅糞)とよばれる、走査型電子顕微鏡レベルの異物が、フィルム表面に混入することを防止する必要がある。このような場合には、HEPAフィルターにより超清浄空気を層流で供給できるクリーン・ベンチやクリーン・ルームの中に、工程を設置することにより、超防塵状態で製品を製造、包装することもできる。本発明に係る高分子組成物の溶液を調製する際に用いる有機溶媒は、溶媒キャスティング法によりフィルムを形成するに際し、実質的に適用できるものであれば、特に限定されない。本発明に係る高分子組成物の溶液を調製する際に用いる有機溶媒の具体例としては、例えば、クロロホルム、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロベンゼン等のハロゲン系有機溶剤やジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶剤などを挙げることができ、これらは単独又は2種以上を混合物して使用することができる。
【0036】[フィルム膜厚]本発明に係る高分子組成物を含むフィルムの厚みは、所望の用途に好適に使用できるのであれば、特に限定されない。本発明に係る高分子組成物を含むフィルムの厚みは、一般的には、0.1〜500μmが好ましく、2〜100μmがより好ましく採用される。
【0037】[フィルムの添加剤]本発明に係る高分子組成物を含むフィルムには、所望する用途に適合した物性を損なわない程度であれば、適当な添加剤を添加することができる。添加剤の具体例としては、例えば、熱安定剤、結晶核化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、可塑剤、着色剤、染料、帯電防止剤等、を挙げられることができ、これらは単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】[フィルムの第三高分子成分]本発明に係る高分子組成物を含むフィルムは、第三成分として、本発明に係る高分子組成物以外の高分子成分や相溶化剤を加えることにより形成される、ポリマーブレンド又はポリマーアロイと認識される高分子多相系であってもよい。
【0039】[フィルムの用途]本発明に係るフィルムは、耐熱性、可撓性、機械的強度に優れ、さらには、透明性及び分解性に優れるので、エレクトロニクス、光学材料、輸送機器、航空宇宙分野、分離精製分野や各種包装材料などの広い分野で用いることができる。本発明に係るフィルムの用途の具体例としては、例えば、エレクトロニクス、メカトロニクス、オプトエレクトロニクス、レーザー(光通信、CD、CD−ROM、Recordable CD(CD−R)、LD、DVD、光磁気記録等も含む。)、液晶、光学、オフィスオートメーション(OA)、ファクトリーオートメーション(FA)等の分野における用途が挙げられる。本発明に係るフィルムの用途の他の具体例としては、例えば、オーバーヘッドプロジェクター用フィルム、製版用フィルム、トレーシングフィルム、食品ラッピングフィルム、農業用フィルム、透明導電性フィルム(例えば、ペンタッチパネル、指タッチパネル用等)、熱線反射フィルム、液晶ディスプレー(LCD)用フィルム、液晶ディスプレー(LCD)用液晶保護フィルム、LCD用偏光フィルム、LCD用透明導電膜、薄膜トランジスター(TFT)方式LCD用カラーフィルター、強誘電性LCD用フィルム、プラズマディスプレー用フィルム、PCB(プリント回路基盤)、シリコーン型太陽電池用フィルム、ソーラー方式給湯システム用フィルム、ディスプレー用無反射フィルム、CRT用放電フィルム、被覆材(電線、ケーブル、ワイヤ等用)、絶縁材料(トランス、コンデンサー、プリント配線基板等用)、反射シート、マーキングフィルム、CD・LD等の保護フィルム、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、分離膜材料、積層品、ショッピングバッグ、ゴミ袋、耐熱ラップフィルム等、が挙げられる。特に、本発明に係る高分子組成物を含むフィルムは、優れた帯電防止性、透明性及び分解性を有し、分解後は水溶性となるため、食品包装材料、農業分野で徐放性農薬用カプセル、徐放性肥料用カプセル、農業用フィルム等の用途に好適に用いられる。また、紙加工分野では、コーティング紙に好適に用いることができる。
【0040】[フィルムやシートの製造の方法論]
(1) 製造技術本発明に係るフィルムやシートは、本発明に係る高分子組成物を良溶媒に溶解した溶液から、公知・公用の、溶媒キャスティング法、乾式又は湿式の押出法又は共押出法、インフレーション法、バルーン法、テンター法等の技術により製造できる。ここで、乾式とは、ポリマーを良溶媒に溶解し、このポリマー溶液を賦形操作の過程で、良溶媒を乾燥雰囲気で揮発させることにより、ポリマーを目的とする形状に成形又は加工する様式をいう。ここで、湿式とは、ポリマーを良溶媒に溶解し、このポリマー溶液を賦形操作の過程で、大過剰量の貧溶媒と接触させることにより、ポリマーを目的とする形状に成形又は加工する様式をいう。本発明に係るフィルムやシートは、本発明に係る高分子組成物を、可塑状態(粉体や粒状体を加熱した状態、膨潤状態あるいは溶液状態、半溶融状態、溶融状態等)から、公知・公用の、押出法、共押出法、カレンダー法、ホットプレス法、溶媒キャスティング法、インフレーション法、バルーン法、テンター法、溶媒溜去法、乾式押し出し法、良溶媒と貧溶媒の組合せによる湿式押し出し法等の技術により、フィルムやシートに加工することができる。製造に供する本発明に係る高分子組成物の熱的特性、分子構造、結晶性等を考慮して設定する。
【0041】(2) 添加剤添加剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、滑剤、充填剤、付着防止剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、滑り防止剤、顔料等)、押出条件、延伸条件等を目的に応じて、適宜、選択することにより、所望の物性、ガスバリア性、光学特性、透過光波長スペクトル、遮光性、耐油性等の特性を有する、フィルムやシートを製造することができる。
【0042】(3) 工程設計製造工程においては、一軸延伸倍率、二軸延伸倍率、延伸段数、熱処理温度、熱処理温度の変化速度、ローラーの数、ローラーの配置形式、ローラーへの巻き付け形式、ローラー温度、ローラー表面の鏡面仕上度等の条件を目的に応じて、適宜、設定することができる。
【0043】(4) 品質管理の方法論製造工程において、放射線、電磁波、光、超音波等を用いた、公知・公用の計測工学的方法を採用することにより、製品の厚さのデータを検出し、該データを製造工程にフィードバックすることにより、製品の厚さのバラツキを、手動により又は自動制御により品質管理をすることができる。放射線を用いた計測工学的方法としては、例えば、透過型(吸収型)又は散乱型のアルファ線厚さ計、ベータ線厚さ計、ガンマ線厚さ計を用いる方法が包含され、線源としては、公知・公用の放射性同位元素が用いられる。
【0044】(5) 後処理工程及び仕上工程の方法論後処理工程又は仕上工程においては、ウェルディング、ヒートシール、ミシン目付与、プライマー塗布、粘着剤塗布、薬剤塗布、パーカライジング、蒸着、スパッタリング、CVD、コーティング、エッチング、噴き付け、染色、塗装、静電塗装、エアブラッシング、ラミネート、サンドイッチ、エンボス賦与、立体模様賦与、型押し、波付け、印刷、転写、サンディング、サンドプラスト、シャーリング、パンチング、打ち抜き、ハニカム構造化、段ボール構造化、積層体形成等の後処理や仕上の加工を行なうこともできる。後処理工程又は仕上工程には、目的に応じ、カレンダー法、押し出し法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版法、凹版法、ドクターブレード法、浸漬法、スプレー法、エアブラシ法、静電塗装法等の公知・公用の方法を採用することができる。本発明に係るフィルム又はシートは、紙や他のポリマー等の他の材質のシートと、ラミネートや貼り合わせ等により、多層構造の積層体とすることもできる。
【0045】(6) 押出法又は共押出法の方法論乾式又は湿式の押出法又は共押出法において、Tダイ、インフレーションダイ(円形ダイ)、フラットダイ、フィードブロック/シングルマニホールドダイやいくつかのフィードブロックを組み合わせたシングルマニホールドダイ等の公知・公用のダイを用いることができる。共押出法においては、性質の異なる複数の該ポリマー及び又は他種ポリマーを用いて、多層フィルムを製造することができる。インフレーション法又はバルーン法を採用すると、二軸同時延伸ができるために、低伸び率・高弾性率・高強靱性を有する丈夫な製品を、高い生産性で、相対的に安価に製造することができ、かつ、形状が袋状(シームレス状)であるため、スーパーマーケット用持ち帰りバッグ、冷凍食品や精肉等の低温の食品パックに結露する水が周囲を濡らすことを防ぐための袋、コンポストバッグ、等の袋やバッグの生産に好適である。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数種類の本発明に係るフィルムを用いて多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。インフレーション法又はバルーン法と共押出法と組み合わせることもできる。本発明に係るフィルム又はシートは、目的に応じて工程条件を設定することにより、ロール状、テープ状、カットシート状、板状、袋状(シームレス状)に製造することができる。
【0046】(7) 二次的加工本発明に係るフィルム又はシートは、さらに、延伸加工、ブロー加工、真空成形等の二次元的又は三次元的な形状を賦与する二次的な加工にも好適な材料である。
【0047】(8) 用途の具体例本発明に係るフィルム又はシートは、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、セメント袋、肥料袋、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、農業用・園芸用フィルム、温室用フィルム、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フロッピーディスク包装用フィルム、フェンス、海洋用・河川用・湖沼用オイルフェンス、粘着テープ、テープ、結束材、防水シート、かさ、テント、土嚢用袋、セメント袋、肥料用袋等として好適に使用することができる。
【0048】[シームレスパイプの製造]円形ダイによる押し出しにより、本発明に係る高分子組成物を含むシームレスパイプを製造することができる。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る高分子組成物及び又は他種ポリマーを用いて、多層シームレスパイプを製造することもできる。
【0049】[角材・丸材の製造]ダイによる押し出しにより、本発明に係る高分子組成物を含む角材や丸材を製造することができる。共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る高分子組成物及び又は他種ポリマーを用いて、多層構造断面を有する角材や丸材を製造することもできる。このような共押出法との組合せにより、例えば、金太郎飴、鳴門巻、伊達巻、バウム・クーヘンのような、特定の断面層構造と断面輪郭を有する角材や丸材を製造することもできる。
【0050】[発泡体]
(1) 「発泡体」なる語の概念既に述べたように、本出願の明細書において用いる「発泡体」なる語の概念には、樹脂の内部に多くの空隙(気泡、ボイド、マイクロボイド、キャビティーを含む)が存在する、見かけ密度の小さい、樹脂の連続相中に、空隙相(空隙は連続のものも、独立のものも含む)が混在した、二相構造又は多相構造を有する樹脂構造体を包含し、例えば、細胞構造を有する高分子、発泡高分子、膨張高分子、高分子発泡体、高分子フォーム等の構造体と認識されるもの一般をも包含し、軟質のものも硬質のものも包含する。
【0051】(2) 発泡体の製造本発明に係る高分子組成物を含む発泡体は、公知・公用の方法により製造することができる。例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・811〜815頁に記載されている発泡剤や発泡技術を好適に用いることができる。また、いわゆるオゾン層保護のためのフロン規制に関するモントリオール議定書の規制に従い、適宜、環境規制基準をクリアした新規の又は公知・公用の発泡剤や発泡技術を好適に用いることができる。発泡体の空隙(気泡、ボイド、マイクロボイド、キャビティー、チャンネルを含む)の、連続性、独立性、大きさ、形状、分布、大きさの均一性等の特性は、目的に応じ、適宜、発泡条件を設定することにより制御することができる。
【0052】(3) 発泡剤発泡剤には、不活性ガス、分解すると不活性ガスを発生する化学的発泡剤、炭素原子数3〜5である炭化水素又は塩素化炭化水素、フルオロカーボン類、フロン類、水、窒素、LPG、LNG、低沸点有機液体、炭酸ガス、不活性ガス、アンモニア等を包含する。
【0053】化学的発泡剤の具体例としては、炭酸水素ナトリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、スルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、5−フェニルテトラゾール、ジイソプロピルヒドラゾジカルボキシラーゼ、5−フェニル−3,6−ジヒロドロ−1,3,4−オキサジアジン−2−オン、水酸化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0054】物理的発泡剤の具体例としては、n−ペンタン、2,2−ジメチルプロパン、1−ペンテン等のペンタン類、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、シクロヘキサン等のヘキサン類、n−ヘプタン、2,2−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、1−ヘプテン等のヘプタン類、トルエン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロフルオロメタン、メタノール、2−プロパノール、イソプロピルエーテル、メチルエチルケトン等が挙げられる。フルオロカーボン類の具体例としては、CFC−11、CFC−12、CFC−113、CFC−114等のCFCシリーズのフロンが挙げられる。
【0055】(4) 汎用用途本発明に係る高分子組成物を含む発泡体は、例えば、弁当箱、食器、コンビニエンスストアで販売されるような弁当や惣菜の容器、カップラーメンのカップ、飲料の自動販売機で使用されるようなカップ、鮮魚・精肉・青果・豆腐・惣菜等の食料品用の容器やトレイ、鮮魚市場で使用されるようなトロバコ、牛乳・ヨーグルト・乳酸菌飲料等の乳製品用の容器、炭酸飲料・清涼飲料等の容器、ビール・ウィスキー等の酒類ドリンク用の容器、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、保冷箱、植木鉢、テープ、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、カメラ・眼鏡・顕微鏡・望遠鏡等の光学機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材、遮光材、断熱材、防音材等としても好適に使用することができる。
【0056】(5) 医療用途及び衛生用途本発明に係る高分子組成物を含む発泡体は、医療用又は衛生用に好適に用いることができる。例えば、包帯、皮膚・粘膜用貼付剤用担体、三角巾、絆創膏、タオル、使い捨てタオル、使い捨て濡れタオル、おしぼり、雑巾、ティッシュー、清浄用・消毒用ぬれティッシュー、あかちゃんのおしりふき用ぬれティッシュー、使い捨ておむつ、生理用・おりもの用ナプキン、生理用タンポン、手術用・出産用血液吸収用タンポン、衛生用カバーストック材、滅菌バッグ等に好適に用いることができる。これら医療用又は衛生用の製品は、加熱や蒸気による滅菌、エチレンオキサイドガスによる滅菌、過酸化水素水やオゾンによる滅菌、紫外線や電磁波の照射による滅菌、ガンマー線等の放射線の照射による滅菌、エタノールや塩化ベンザルコニウム等の殺菌剤等を用いた公知・公用の方法により滅菌、殺菌又は消毒のうえ、無菌包装をすることができる。また、HEPAフィルターにより超清浄空気を層流で供給できるクリーンベンチやクリーンルームの中に、工程を設置することにより、無菌状態及び又はエンドトキシン・フリーの状態で製品を製造、包装することもできる。
【0057】(6) 一般産業用途及びリクリェーション用途本発明に係る高分子組成物を含む発泡体は、農業、漁業、林業、工業、建設土木業、運輸交通業を包含する一般産業用途及びレジャー、スポーツを包含するリクリェーション用途に好適に用いることができる。例えば、農業用寒冷紗、オイル吸収材、軟弱地盤補強材、人工皮革、フロッピーディスクの裏地、土嚢用袋、断熱材、防音材、クッション材、ベッド・椅子等の家具用クッション材、床用クッション材、包装材、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材等として好適に用いることができる。
【0058】[紡糸]
(1) 「糸」なる語の概念既に述べたように、本出願の明細書において用いる「糸」なる語の概念は、繊維便覧・加工編(繊維学会編、丸善、東京、1969年)・393〜421頁に記載されている「原糸」の概念をも包含し、例えば、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープルファイバー(スフ)、トウ、ハイバルクスフ、ハイバルクトウ、紡績糸、混紡糸、加工糸、仮撚糸、異形断面糸、中空糸、コンジュゲート糸、POY(部分配向糸)、DTY(延伸加工糸)、POY−DTY、スライバー等をも包含する。
【0059】(2) 紡糸本発明に係る高分子組成物は、溶融紡糸及び乾式紡糸に好適な材料である。 本発明に係る高分子組成物は、公知の方法で紡糸することができる。例えば、押出機を用いて溶融紡糸する溶融紡糸法、樹脂を溶媒に溶解し、溶液とした後、該溶液をノズルから貧溶媒中に吐出させる湿式紡糸法、該溶媒をノズルから乾燥気体中に吐出させる乾式紡糸法等を採用することができる。溶融紡糸法における紡糸温度は、所望の特性・性状を有する糸を紡糸できれば、特に制限されない。溶融紡糸法における紡糸温度は、通常、分解性高分子の種類、熱的性質、分子量等を考慮して、適宜、設定する。溶融紡糸法における紡糸温度は、一般的には、100〜300℃が好ましく、130〜250℃がより好ましい。100℃未満では溶融粘度が高くなり紡糸しにくい傾向があり、250℃以上では分解が起こりやすい傾向がある。
【0060】(3) 延伸・熱処理本発明に係る高分子組成物は、紡糸後、さらに、延伸、熱固定することにより、より好ましい物性を付与することができる。仕込む高分子組成物に占めるポリ乳酸の比率が相対的に高い場合は、一般的には、比較的結晶化速度が遅く、紡糸直後の繊維は非晶性であり、そのままでは、経時的に、変形、癒着、硬化等が起こりやすい。そのため、通常、紡糸後、延伸・熱処理を行なう。延伸・熱処理条件(温度、温度変化・履歴、倍率、時間等)は、所望の特性・性状を有する糸とすることができれば、特に制限されない。延伸条件(温度、温度変化・履歴、倍率、時間等)は、通常、分解性高分子の種類、熱的性質、分子量等を考慮して、適宜、設定する。延伸温度は、通常、分解性高分子のガラス転移温度以上、融点以下の温度範囲内から選択される。仕込む高分子組成物に占めるポリ乳酸の比率が相対的に高い場合は、延伸温度は、一般的には、60〜160℃が好ましく、60〜100℃がより好ましい。延伸倍率は、一般的には、2〜20倍が好ましく、4〜15倍がより好ましい。熱固定条件は、分解性高分子の種類、熱的性質、分子量等を考慮して、適宜、選択されるが、通常、原料高分子のガラス転移温度以上、融点以下の温度で行われる。熱処理(熱固定)温度は、一般的には、延伸温度より高い温度が選択される。仕込む高分子組成物に占めるポリ乳酸の比率が相対的に高い場合は、熱固定温度は、80〜160℃が好ましく、120〜150℃がより好ましい。
【0061】(4) 加工本発明に係る高分子組成物は、製糸条件、紡績条件、編織条件、後処理条件、染色条件、加工条件を、目的に応じて、適宜設定することにより、所望の、太さ、断面形状、繊度(テックス、デニール、番手等)、より、引っ張り強さ及び伸び率、結束強さ、耐熱性、捲縮度、吸水性、吸油性、嵩高さ、腰の強さ、風合い等の物性や特性を有する糸やテキスタイルに加工することができる。
【0062】(5) 異形断面糸・多層構造糸・中空糸等の製造本発明に係る高分子組成物は、目的に応じて、適宜、紡糸口金を設計することにより、木綿の有するルーメン構造に類似した中空構造を有する繊維、羊毛の有するキューティクル/コルテックス/メデュラ同軸3層構造に類似したコア・シェル構造を有する繊維、羊毛の有するバイラテラル構造に類似したコンジュゲート構造を有する繊維、絹の有する3角形断面構造に代表されるような異形又は多角形の断面を有する繊維にも好適に紡糸することができる。多層の口金(ノズル、オリフィス)で紡糸することにより、性質の異なる複数の本発明に係る高分子組成物及び又は他種ポリマーを用いて、多層構造断面を有する糸を製造することもできる。このような共紡糸により、例えば、金太郎飴、鳴門巻、伊達巻、バウム・クーヘン等のような、特定の断面層構造と断面輪郭を有する糸を製造することもできる。中空の口金(ノズル、オリフィス)で紡糸することにより、本発明に係る高分子組成物を含む中空糸を製造することができる。共紡糸と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明に係る高分子組成物及び又は他種ポリマーを用いて、多層中空糸を製造することもできる。例えば、空隙に顔料を充填した中空糸を水に濡れても透けないテキスタイルに応用したり、空隙に液晶を充填した中空糸を温度により色調が変化するテキスタイルに応用したり、空隙にセラミックスやカーボンブラックを充填した中空糸を遠赤外線吸収性の吸熱テキスタイルに応用したり、空隙に鉛を充填した中空糸を水に沈む漁網に応用したりすることもできる。
【0063】(6) 工程設計製糸工程においては、紡糸口金の形状・様式、延伸倍率、延伸段数、熱処理温度、熱処理温度の変化速度、捲縮賦与、油剤処理等の条件を目的に応じて、適宜、設定することができる。
【0064】(7) 製品エクセーヌ(登録商標、東レ)を構成する繊維又はそれより細い繊維に匹敵するような極微細繊維から、ファスナー用工繊の太さに匹敵するような超太手繊維又はそれより太い繊維まで、所望の繊度を有する本発明に係る高分子組成物を含むフィラメントを好適に製造することができる。
【0065】[テキスタイルの製造]
(1) 「テキスタイル」なる語の概念既に述べたように、本出願の明細書において用いる「テキスタイル」なる語の概念には、織布、編物、不織布、紐や縄を含む組物、綿状ハイバルクスフ、スライバー、多孔質スポンジ、フェルト、紙、網等の繊維構造体と認識されるもの一般を包含する。
【0066】(2) 織物の製造公知・公用の織機やウォータジェットルームを用いることにより、フィラメント糸織物、紡績糸織物、ストレッチ織物、産業資材織物を製造することができる。
【0067】(3) 編物・組物・網物等の製造公知・公用の編機を用いて、メリヤス、横編、丸編、縦編、トリコット、丸編靴下、シームレス靴下、トリコット靴下、レース、組物、網物を製造することができる。
【0068】(4) スフ(ステープルファイバー)の製造本発明に係る高分子組成物を含むスフは、他の天然繊維、合成繊維及び又は半合成繊維のスフと任意の混合比、任意のステープルダイアグラムで混紡することもできる。本発明に係る高分子組成物を含むスフは、紙の原材料、複合材料用充填材、複合材料用ウイスカー(ねこひげ)、FRP充填用繊維としても好適に使用することができる。
【0069】(5) 不織布の製造本発明に係る高分子組成物を含む不織布は、公知・公用の方法により製造することができる。本発明に係る高分子組成物を含む不織布の製造には、例えば、「MARUZEN高分子大辞典−Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(Kroschwitz編、三田 達監訳、丸善、東京、1994年)」・906〜910頁に記載されている製造法を好適に採用することができる。本発明に係る高分子組成物を含む不織布の製造には、例えば、乾式−カード法、熱接着法、エアアレイ法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法、ミクロファイバー法、流水交絡法、ニードルパンチ法、積層法、ステッチボンド法、抄紙等を好適に採用することができる。本発明に係る高分子組成物を含む不織布は、シンサレート(登録商標、スリーエム)やアイザック(登録商標、帝人)のような上市されている不織布と同様に、ゴアテックス(登録商標、潤工社、延伸微多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))やエスポアール(登録商標、三井東圧化学)のような上市されている蒸気は透過するが水は透過させないような防水シートと組み合わせることにより、防寒・防水服(登山用、スキー用等)に応用することもができる。
【0070】(6) テキスタイルの用途本発明に係る高分子組成物を含むテキスタイルは、一般衣料用又は医療用衣料用の外衣、作業衣、手術着、ねまき、下着、肌着、裏地、帽子、マスク、包帯、三角巾、ソックス、婦人用ストッキング、婦人用ファウンデーション(ブラジャー、ショーツ等)、パンスト、タイツ、靴下、軍足、手袋、軍手、タオル、ガーゼ、手拭い、カーペット、マット、カーテン、壁紙、衣服芯材、自動車用内装材、マットレス、袋、風呂敷、寝具、布団綿、枕カバー、毛布、シーツ、防寒着用断熱材、レース、テープ、合成又は人工の人造皮革、合成又は人工の人造ファー、合成又は人工の人造スウェード、合成又は人工の人造レザー、網状パイプ等に好適に用いることができる。本発明に係る高分子組成物を含むテキスタイルは、医療用又は衛生用に好適に用いることができる。例えば、外科手術用縫合糸、包帯、三角巾、絆創膏、タオル、使い捨てタオル、使い捨て濡れタオル、営業用ロールタオル、おしぼり、雑巾、ティッシュー、清浄用・消毒用ぬれティッシュー、あかちゃんのおしりふき用ぬれティッシュー、使い捨ておむつ、消毒綿、生理用・おりもの用ナプキン、生理用タンポン、アンダーパッド、手術用・出産用血液吸収用タンポン、衛生用カバーストック材、滅菌バッグ、生ゴミ用ネット、ゴミ袋等に好適に用いることができる。これら医療用又は衛生用の製品は、上記発泡体の場合と同様の方法により、滅菌、殺菌又は消毒のうえ、無菌包装をすることができる。また、上記発泡体の場合と同様の方法により、無菌状態及び又はエンドトキシン・フリーの状態で製品を製造、包装することもできる。
【0071】本発明に係る高分子組成物を含むテキスタイルは、農業、漁業、林業、工業、建設土木業、運輸交通業を包含する一般産業用途及びレジャー、スポーツを包含するリクリェーション用途に好適に用いることができる。例えば、農業用寒冷紗、防虫防鳥網、ふるい、釣り糸、漁網、投網、延縄、オイル吸収材、網、ロープ、ザイル、セイル(帆布)、幌、ターポリン、タイコン、コンテナバッグ、産業用通い袋、セメント袋、肥料袋、濾過材、埋立工事用透水布、軟弱地盤補強用布、人工皮革、製紙用フェルト、フロッピーディスクの裏地、テント、土嚢用袋、植林用ネット、断熱材、防音材、遮光材、衝撃緩衝材、クッション材、結束材、ぬかるみ・雪道用滑り止め材、ネット状パイプ、土木建築用水抜きパイプ等として好適に用いることができる。
【0072】上記衝撃緩衝材には、例えば、テレビやステレオ等の家庭電化製品の輸送時に使用するための緩衝材、コンピューター・プリンター・時計等の精密機械の輸送時に使用するための緩衝材、カメラ・眼鏡・顕微鏡・望遠鏡等の光学機械の輸送時に使用するための緩衝材、ガラス・陶磁器等の窯業製品の輸送時に使用するための緩衝材をも包含する。以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本出願明細書において、実施例、製造例及び態様は、本出願に係る発明の内容の理解を支援するためのものであって、その記載によって、本出願に係る発明の内容がなんら限定される性質のものではない。なお、文中および表中、部とあるのはいずれも重量基準(重量部)である。
【0073】
【実施例】
[ポリマーの平均分子量(重量平均分子量)]ポリマーの平均分子量(重量平均分子量)はポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により以下の条件で測定した。
装置 :島津LC−10AD検出器:島津RID−6Aカラム:日立化成GL−S350DT−5、GL−S370DT−5溶媒 :クロロホルム濃度 :1%注入量:20μl流速 :1.0ml/min
【0074】[製造例1]L−ラクタイド100部及びオクタン酸第一スズ0.01部と、ラウリルアルコール0.03部を、攪拌機を備えた肉厚の円筒型ステンレス製重合容器へ封入し、真空で2時間脱気した後窒素ガスで置換した。この混合物を窒素雰囲気下で攪拌しつつ200℃で3時間加熱した。温度をそのまま保ちながら、排気管及びガラス製受器を介して真空ポンプにより徐々に脱気し反応容器内を3mmHgまで減圧にした。脱気開始から1時間後、モノマーや低分子量揮発分の留出がなくなったので、容器内を窒素置換し、容器下部からモノマーを紐状に抜き出してペレット化し、ポリ乳酸aを得た。このポリマーの重量平均分子量は約10万であった。
【0075】[製造例2]Dien−Starkトラップを設置下100リットル反応器に、90%L−乳酸10kgを150℃/50mmHgでさらに2時間攪拌しながら、水を留出させた後、錫末6.2gを加え、150℃/30mmHgでさらに2時間攪拌してオリゴマー化した。このオリゴマーに錫末28.8gとジフェニルエーテル21.1kgを加え、150℃/30mmHg共沸脱水反応を行い留出した水と溶媒を水分分離器で分離して溶媒のみ反応機に戻した。2時間後、反応機に戻す有機溶媒を4.6kgモノキュラシーブ3Aを充填したカラムに通してから反応機に戻るようにして、150℃/35mmHgで40時間反応を行い重量平均分子量11万のポリ乳酸溶液を得た。この溶液に脱水したジフェニルエーテル44kgを加え希釈した後40℃まで冷却して、析出した結晶を濾過し、10kgのnーヘキサンで3回洗浄して60℃/50mmHgで乾燥した。この粉末を0.5N−塩酸12kgとエタノール12kgを加え、35℃で1時間攪拌した後濾過し、60℃/50mmHgで乾燥して、平均粒径30μmのポリ乳酸粉末6.1kg(収率85%)L−乳酸ポリマーbを得た。このポリマーの重量平均分子量は11万であった。
【0076】[製造例3]L−乳酸100部とDL−乳酸100部に変え製造例2と同様にして、DL−乳酸ポリマーcを得た。このポリマーの重量平均分子量は約11万であった。
【0077】[製造例4]L−乳酸100部をL−乳酸90部とヒドロキシカルボン酸成分としてグリコール酸10部に変えた他は製造例2と同様にして、乳酸とヒドロキシカルボン酸共重合体dを得た。このポリマーの重量平均分子量は約10万であった。
【0078】[製造例5]L−乳酸100部をL−乳酸90部とヒドロキシカルボン酸成分として6ーヒドロキンカプロン酸10部に変えた他は製造例2と同様にして、乳酸とヒドロキシカルボン酸共重合体eを得た。このポリマーの重量平均分子量は約10万であった。
【0079】[実施例1〜3]製造例1で得たポリ乳酸(a)、非イオン系帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルであるグリセリンモノステアレート(イ)[三洋化成製、商品名 ケミスタット1100]を表1に示す割合でタンブラーミキサーを用いて十分に混合した後、スクリュー径37mmφ、L/D=32の2軸押出機にて溶融温度190℃、スクリュー回転数100rpmでペレット化した。このペレットを用いて射出成形により各種試験片を得、次の評価法により試験した。
【0080】[物性値の測定条件]主な物性値の測定条件は次のとおりである。
■ 成形品の表面抵抗成形品(50mm角、厚み3mm平板)を温度23℃、相対湿度50%の条件下に7日間放置した後、同条件のもとで極超絶縁計SM−10E型(東亜電波工業)により、表面抵抗を測定した(印加電圧: 100V)。本実施例においては、1012Ωを越える場合は不合格とした。
【0081】■ 帯電圧半減期成形品(50mm角、厚み3mm平板)を温度23℃、相対湿度50%の条件下に7日間放置した後、同条件のもとでスタティックオネストメーターS−4104型(宍戸商会)により帯電圧半減期を測定した(印加電圧:8kV、印加時間:10秒、放電高さ: 1.5cm、受電高さ: 1.0cm、円盤回転数:1000rpm )。本実施例においては、帯電圧半減期が 120秒を越えるものは不合格とした。
【0082】■ ヘイズ(透明性)
成形品(50mm角、厚み3mm)のヘイズをJIS K7105に準拠して測定した。本実施例においては、10%を越える場合は不合格とした。
【0083】[実施例4〜6]製造例2で得たポリ乳酸(b)、非イオン系帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルであるグリセリンモノパルミテート(ロ)[理研ビタミン製、商品名リケマールP−100]を用いた以外は実施例1〜3と同様とした。
【0084】[実施例7〜12]製造例3〜5で得たポリ乳酸(c〜e)を用いた以外は実施例1〜6と同様とした。
【0085】[比較例1〜3]実施例1〜12において、非イオン系帯電防止剤のかわりに、カチオン系帯電防止剤(ハ)[ミヨシ油脂製、商品名 ダスパー125B]を用いた以外は同様とした。これらは、粘度が大幅に低下して成形困難となり、後の評価はできなかった。
【0086】[比較例4〜6]実施例1〜12において、非イオン系帯電防止剤のかわりに、アニオン系帯電防止剤(ニ)[日本油脂製、商品名 ニューレックスペーストH]を用いた以外は同様とした。これらは、透明性が低下し好ましくない。
【0087】[比較例7〜9]実施例1〜12において、非イオン系帯電防止剤のかわりに、アニオン系帯電防止剤(ホ)[三洋化成製、商品名 ケミスタット3033]を用いた以外は同様とした。これらは、透明性が低下し好ましくない。
【0088】[比較例10〜12]非イオン系帯電防止剤の添加量が本発明と異なる以外は、実施例1〜12と同様とした。
【0089】
【表1】


【0090】
【表2】


【0091】
【発明の効果】本発明に係る高分子組成物は、透明性、帯電防止性及び分解性を併せ有する。また、廃棄物として地中に埋設されたり海や河川に投棄された場合、紙や木等の天然物と同じように自然環境下で比較的短い期間の内に無害な水と炭酸ガスに分解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)ポリ乳酸、及び、(B)非イオン系帯電防止剤を含む高分子組成物。
【請求項2】 (A)ポリ乳酸、及び、(B)一般式(1)(化1)で示されるグリセリン脂肪酸エステルからなる非イオン系帯電防止剤を含む高分子組成物。
【化1】


(一般式(1)において、Rは、炭素原子数5〜25のアルキル基である。)
【請求項3】 帯電防止性、透明性及び分解性を併せ有する、請求項1又は2に記載の高分子組成物。
【請求項4】 (A)ポリ乳酸、及び、(B)非イオン系帯電防止剤の組成比が、それぞれ、100重量部、及び、0.2〜13重量部である、請求項1乃至3の何れかに記載の高分子組成物。
【請求項5】 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、成形して得られた成形物。
【請求項6】 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、フィルムに加工後、熱処理及び/又は延伸することにより得られたフィルム又はシート。
【請求項7】 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、紡糸後、熱処理及び/又は延伸することにより得られたフィラメント。
【請求項8】 請求項7記載のフィラメントを加工することにより得られた糸。
【請求項9】 請求項7記載のフィラメント又は請求項8記載の糸を加工することにより得られたテキスタイル。
【請求項10】 請求項1乃至4の何れかに記載の高分子組成物を、発泡することにより得られた発泡体。
【請求項11】 60℃以上で熱処理された、請求項5乃至10の何れかに記載された、耐熱性の高い成形物、フィルム、シート、フィラメント、糸、テキスタイル又は発泡体。

【公開番号】特開平10−36650
【公開日】平成10年(1998)2月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−190488
【出願日】平成8年(1996)7月19日
【出願人】(000003126)三井東圧化学株式会社 (49)