説明

高分子膜がホスホン酸ポリマーを含む、触媒層でコーティングされたプロトン伝導性高分子膜、膜/電極ユニットおよび燃料電池におけるその使用

本発明は、高分子膜がホスホン酸ポリマーを含む、触媒層でコーティングされている高分子膜に関する。該ポリマーは、ホスホン酸モノマーの重合により得られ得る。本発明は、該触媒層がホスホン酸アイオノマーを含むことを特徴とし、該アイオノマーは、ホスホン酸モノマーの重合により得られ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒層でコーティングされておりそしてホスホン酸基を含むポリマーを含む、プロトン伝導性高分子電解質膜、膜−電極ユニット、および燃料電池におけるその使用に関する。
【0002】
現代の高分子電解質(polymer-electrolyte)(PE)燃料電池において、主としてスルホン酸修飾されたポリマーが使用されている(例えば、DuPont製のNafion)。これらの膜の含水量−依存性伝導性メカニズムのために、それらを備える燃料電池は、80℃〜100℃の温度まででのみ作動され得る。より高い温度で、この膜は乾燥し、その結果、膜の抵抗性は非常に上昇し、そして燃料電池はもはや電気エネルギーを送達することができなくなる。
【0003】
更に、例えば、塩基性ポリマーと強酸のコンプレックスを含む高分子電解質膜が開発された。例えば、WO96/13872および対応US特許5,525,436は、プロトン伝導性高分子電解質膜の製造方法を記載しており、ここでは、ポリベンゾイミダゾールのような塩基性ポリマーが、リン酸、硫酸等の強酸で処理されている。
【0004】
J. Electrochem. Soc., volume 142, No. 7, 1995, p. L121-L123は、リン酸中におけるポリベンゾイミダゾールのドーピングを記載している。
【0005】
先行技術において公知の塩基性高分子膜の場合、要求されるプロトン伝導率を達成するために使用される鉱酸(通常、濃リン酸)は、典型的に、ポリアゾールフィルムの成形後に添加される。該ポリマーは、高濃縮リン酸からなる電解質についてのキャリアとして役立つ。該高分子膜は、更なる必須の機能を満たし、特に、それは、高い機械的安定性を有しかつ最初に述べた2つの燃料についてのセパレータとして役立たなければならない。
【0006】
このようなリン酸ドープされた膜の本質的利点は、このような高分子電解質膜が使用される燃料電池は、そうでなければ必要である燃料の湿潤化無しに、100℃を超える温度で作動され得るという事実である。これについての理由は、いわゆるGrotthusメカニズム(K.-D. Kreuer, Chem. Mater. 1996, 8, 610-641)によって、更なる水無しにプロトンを輸送することができるリン酸の特性である。
【0007】
100℃を超える温度での作動の可能性は、燃料電池システムについて更なる利点を生じさせる。第一に、ガス不純物(特に、CO)に対するPt触媒の感受性が、非常に減少される。COは、炭素含有化合物の水素リッチなガス(例えば、天然ガス、メタノールまたは石油)の改質における副産物として、あるいはメタノールの直接酸化における中間体として、形成される。典型的には、<100℃の温度での燃料のCO含有量は、100ppm未満でなければならない。しかし、150〜200°範囲の温度では、10000ppmのCOまたはそれ以上でさえも、許容され得る(N. J. Bjerrum et. al. Journal of Applied Electrochemistry, 2001,31, 773-779)。このことは、上流改質プロセスの実質的な簡素化、そして従って全体的な燃料電池システムのコスト削減へ導く。
【0008】
このような膜を用いて製造された膜−電極ユニットの性能は、WO 01/18894 A2において記載されている。測定は、純粋な水素について1atmの上昇された圧力および160ml/分のガス流量で、そして純粋な酸素について1atmの上昇された圧力および200ml/分のガス流量で、5cmセルにおいて、行われている。しかし、純粋な酸素、このような高い上昇された圧力およびこのような高い化学量論の使用は、技術的利益が無い。
【0009】
純粋な水素および純粋な酸素を使用してのこのようなリン酸ドープされたポリアゾール膜での性能は、Electrochimica Acta, volume 41, 1996, 193-197において同様に記載されている。アノードにおいて0.5mg/cmおよびカソードにおいて2mg/cmの白金ローディングで、湿潤化された燃料ガスを使用して、0.6Vの電圧で0.2A/cm未満の電流密度が、純粋な水素および純粋な酸素ならびに1atmの上昇された圧力で、各燃料ガスについて達成されている。酸素の代わりに空気が使用される場合、この値は、0.1A/cm未満に低下する。
【0010】
燃料電池の大きな利点は、電気化学反応において、燃料エネルギーが、電気エネルギーおよび熱に直接変換されるという事実である。カソードで形成される反応生成物は水である。電気化学反応において形成される副産物は、従って、熱である。電流のみが電気モーターを駆動するために使用される用途について、例えば自動車用途について、またはバッテリーシステムの様々な代替品として、該反応において形成される熱のいくらかは、該システムの過熱を防止するために除かれなければならない。冷却のために、更なるエネルギー消費ユニットが必要であり、これは、燃料電池システムの全体的な電気効率を更に低下させる。固定適用について、例えばパワーおよび熱の中央または分散発生について、熱は、現在の技術(例えば、熱交換器)によって効率的に使用され得る。効率を高めるために、高温が望ましい。作動温度が100℃を超えそして周囲温度と作動温度との温度差が大きい場合、膜湿潤化に起因して100℃未満で作動されなければならない燃料電池と比較して、燃料電池システムをより効率的に冷却することまたは小さい冷却表面を使用すること、および追加のユニットを省くことが可能である。
【0011】
しかし、このような燃料電池システムは、これらの利点に加えて、欠点も有する。例えば、リン酸ドープされた膜の寿命は、比較的限られている。寿命は、特に100℃未満(例えば、80℃)での燃料電池の作動によって、顕著に低下される。しかし、この文脈において、該電池は、該燃料電池がスタートアップされそしてシャットダウンされる温度で作動されなければならないことが強調されるべきである。
【0012】
更に、まずポリマーを形成しこれを引き続いて溶媒の助けを借りてフィルムへキャストすることが慣用であるので、リン酸ドープされた膜の製造は比較的高価である。フィルムの乾燥後、それは最終工程において酸でドープされる。従って、今日まで公知の高分子膜は、高含有量のジメチルアセトアミド(DMAc)を有し、これは公知の乾燥方法の手段によって完全には除去され得ない。
【0013】
その上、公知の膜の性能(例えば、伝導率)は、依然として改善される必要がある。
【0014】
更には、高伝導率を有する公知の高温膜の機械的安定性は、依然として改善される必要がある。
【0015】
加えて、膜−電極ユニットを得るためには、非常に多量の触媒活性物質が使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、上記に説明される課題を解決する新規の高分子電解質膜を提供することである。特に、発明の膜は、安価かつ簡易な様式で製造可能である。
【0017】
従って、本発明の更なる目的は、高性能、特に広い温度範囲に渡って高伝導率を示す、高分子電解質膜を提供することであった。この文脈において、該伝導率が、特に高温で、更なる湿潤化無しに達成される。この文脈において、該膜は、特に高出力密度(power densities)を送達し得る膜−電極ユニットへの更なるプロセッシングに好適である。更に、本発明膜によって得られ得る膜−電極ユニットは、特に高い耐久性、特に高出力密度で長寿命を有する。
【0018】
更に、本発明の更なる目的は、触媒活性物質(例えば、白金、ルテニウムまたはパラジウム)の非常に低い含有量であっても高性能を有する膜−電極ユニットへ変換され得る膜を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、膜−電極ユニットへ圧縮され得る膜を提供することであり、そして該燃料電池は、低いガス流量および/または低い上昇された圧力(low elevated pressure)において、低化学量論で高出力密度で作動され得る。
【0020】
更に、燃料電池の寿命を非常に大きく低下させること無しに、作動温度を<80℃から200℃までに広げることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
これらの目的は、触媒層でコーティングされそして請求項1の全ての特徴を有するポリアゾールを含むプロトン伝導性高分子膜によって達成される。
【0022】
本発明は、触媒層でコーティングされたプロトン伝導性高分子膜を提供し、該高分子膜は、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得るポリマーを含み、該触媒層が、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得るアイオノマーを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の膜は、広い温度範囲に渡って、更なる湿潤化が無くとも達成され得る、高伝導率を示す。
【0024】
更に、本発明の膜は、簡単かつ安価な様式で製造され得る。例えば、特に、多量の高価な溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド)を省くことが可能である。
【0025】
その上、これらの膜は、驚くべきほど長い寿命を示す。更に、本発明の膜を備える燃料電池は、燃料電池の寿命が結果として非常に大きく短縮されること無く、低温(例えば、80℃)であっても作動され得る。
【0026】
更には、該膜は、特に高電流を送達し得る膜−電極ユニットへと更に加工され得る。このようにして得られる膜−電極ユニットは、特に高い耐久性、特には高電流で長い寿命を有する。
【0027】
更に、本発明の膜は、非常に低い含有量の触媒活性物質(例えば、白金、ルテニウムまたはパラジウム)であっても高性能を有する膜−電極ユニットへ変換され得る。
【0028】
本発明の高分子膜は、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得るポリマーを有する。
【0029】
このような高分子膜は、とりわけ、以下の工程を包含する方法によって得られ得る:
A)ホスホン酸基を含むモノマーを含む組成物を調製する工程、
B)工程A)に従う組成物を使用して層を支持体(support)上に適用する工程、
C)工程B)に従って得られ得るフラット構造体(flat structure)に存在するホスホン酸基を含むモノマーを重合する工程、
D)工程B)および/または工程C)において形成された膜へ少なくとも1つの触媒層を適用する工程。
【0030】
ホスホン酸基を含むモノマーは、当該技術分野において公知である。それらは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つのホスホン酸基を有する化合物である。炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子は、好ましくは、低立体障害の二重結合へと導く基に対して少なくとも2つ(好ましくは3つ)の結合を有する。これらの基としては、水素原子およびハロゲン原子(特に、フッ素原子)が挙げられる。本発明の文脈において、ホスホン酸基を含むポリマーは、重合生成物から生じ、これは、ホスホン酸基を含むモノマーのみあるいは更なるモノマーおよび/または架橋剤との重合によって得られ得る。
【0031】
ホスホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。更に、ホスホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上のホスホン酸基を含み得る。
【0032】
一般的に、ホスホン酸基を含むモノマーは、2〜20、好ましくは2〜10の炭素原子を含む。
【0033】
ホスホン酸基を含みそして工程A)において使用されるモノマーは、好ましくは以下の式の化合物である:

【0034】
【化1】

【0035】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0036】
【化2】

【0037】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0038】
【化3】

【0039】
[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、OR、および/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]。
【0040】
ホスホン酸基を含む好ましいモノマーとしては、ホスホン酸基を有するアルケン(例えば、エテンホスホン酸、プロペンホスホン酸、ブテンホスホン酸)、ホスホン酸基を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸化合物(例えば、2−ホスホノメチルアクリル酸、2−ホスホノメチルメタクリル酸、2−ホスホノメチルアクリルアミドおよび2−ホスホノメチルメタクリルアミド)が挙げられる。
【0041】
特に好ましいのは、例えばAldrichまたはClariant GmbHから得られ得るような、市販のビニルホスホン酸(エテンホスホン酸)である。好ましいビニルホスホン酸は、70%超の純度、そして特には90%超より好ましくは97%超の純度を有する。
【0042】
ホスホン酸基を含むモノマーは、更にまた、引き続いて該酸へ変換され得る誘導体の形態で使用され得、この場合、該酸への変換はまた、重合された状態において行われ得る。これらの誘導体としては、特に、ホスホン酸基を含むモノマーの塩、エステル、アミドおよびハロゲン化物が挙げられる。
【0043】
工程A)において調製される組成物は、更に、該組成物の総重量に基づいて、好ましくは少なくとも20重量%、特には少なくとも30重量%そしてより好ましくは少なくとも50重量%のホスホン酸基を含むモノマーを含み得る。
【0044】
工程A)において調製される組成物は、更にまた、追加の有機および/または無機溶媒を含み得る。有機溶媒としては、特に、極性・非プロトン性溶媒[例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エステル類(例えば、酢酸エチル)]、ならびに極性・プロトン性溶媒[例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよび/またはブタノールのようなアルコール類]が挙げられる。無機溶媒としては、特に、水、リン酸およびポリリン酸が挙げられる。
【0045】
これらは、加工性(processability)に対してプラスに影響し得る。特に、有機溶媒の添加は、例えば工程B)において形成されるポリマーの溶解性を改善する。このような溶液中のホスホン酸基を含むモノマーの含有量は、一般的に、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは10〜97重量%である。
【0046】
本発明の特定の局面において、ホスホン酸基を含むポリマーおよび/またはホスホン酸基を含むアイオノマーは、スルホン酸基を含むモノマーを含む組成物を使用して製造され得る。
【0047】
スルホン酸基を含むモノマーは、当該技術分野において公知である。それらは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つのスルホン酸基を有する化合物である。炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子は、好ましくは、低立体障害の二重結合へと導く基に対して少なくとも2つ(好ましくは3つ)の結合を有する。これらの基としては、水素原子およびハロゲン原子(特に、フッ素原子)が挙げられる。本発明の文脈において、スルホン酸基を含むポリマーは、重合生成物から生じ、これは、スルホン酸基を含むモノマーのみあるいは更なるモノマーおよび/または架橋剤との重合によって得られる。
【0048】
スルホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。更に、スルホン酸基を含むモノマーは、1、2、3またはそれ以上のスルホン酸基を含み得る。
【0049】
一般的に、スルホン酸を含むモノマーは、2〜20、好ましくは2〜10の炭素原子を含む。
【0050】
スルホン酸基を含むモノマーは、好ましくは、以下の式の化合物を含む:

【0051】
【化4】

【0052】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0053】
【化5】

【0054】
[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【0055】
【化6】

【0056】
[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、OR、および/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]。
【0057】
スルホン酸基を含む好ましいモノマーとしては、スルホン酸基を有するアルケン(例えば、エテンスルホン酸、プロペンスルホン酸、ブテンスルホン酸);スルホン酸基を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸化合物(例えば、2−スルホノメチルアクリル酸、2−スルホノメチルメタクリル酸、2−スルホノメチルアクリルアミドおよび2−スルホノメチルメタクリルアミド)が挙げられる。
【0058】
特に好ましいのは、例えばAldrichまたはClariant GmbHから得られ得るような、市販のビニルスルホン酸(エテンスルホン酸)を使用することである。好ましいビニルスルホン酸は、70%超の純度、特には90%超そしてより好ましくは97%超の純度を有する。
【0059】
スルホン酸基を含むモノマーは、更にまた、引き続いて酸へ変換され得る誘導体の形態で使用され得、この場合、酸への変換はまた、重合状態において行われ得る。これらの誘導体としては、特に、スルホン酸基を含むモノマーの酸、エステル、アミドおよびハロゲン化物が挙げられる。
【0060】
本発明の特定の局面において、スルホン酸基を含むモノマーとホスホン酸基を含むモノマーとの重量比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10、そしてより好ましくは2:1〜1:2の範囲内であり得る。
【0061】
本発明の更なる実施形態において、架橋可能なモノマーが、高分子膜の製造において使用され得る。これらのモノマーは、工程A)に従う組成物へ添加され得る。更には、架橋可能なモノマーはまた、工程C)に従うフラット構造体へ適用され得る。
【0062】
架橋可能なモノマーは、特に、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。好ましいのは、ジエン、トリエン、テトラエン、ジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートである。
【0063】
特に好ましいのは、以下の式のジエン、トリエン、テトラエン:
【0064】
【化7】

【0065】
以下の式のジメチルアクリレート、トリメチルアクリレート、テトラメチルアクリレート:
【0066】
【化8】

【0067】
以下の式のジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート:
【0068】
【化9】

【0069】
であり、
式中、
Rは、C1−C15−アルキル基、C5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基、NR’、−SO、PR’、Si(R’)であり、ここで上記の基はそれ自体が置換され得、
R’は、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、C5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、そして
nは少なくとも2である。
【0070】
上述のR基の構成は、好ましくはハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシル、カルボキシルエステル、ニトリル、アミン、シリル、シロキサン基である。
【0071】
特に好ましい架橋剤は、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラ−およびポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレート、エポキシアクリレート、例えばEbacryl、N’,N−メチレンビスアクリルアミド、カルビノール、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ジビニルベンゼンおよび/またはビスフェノールAジメチルアクリレートである。これらの化合物は、例えばSartomer Company Exton,Pennsylvaniaから商品名CN−120、CN104およびCN−980で、市販されている。
【0072】
架橋剤の使用は任意であり、これらの化合物は、典型的に、ホスホン酸基を含むモノマーの重量に基づいて、0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%の範囲で使用され得る。
【0073】
本発明の高分子膜は、ホスホン酸基を含むポリマーに加えて、ホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得ない更なるポリマー(B)を含み得る。
【0074】
この目的のために、例えば、更なるポリマー(B)が、工程A)において得られる組成物へ添加され得る。このポリマー(B)は、とりわけ、溶解、分散または懸濁された形態で存在し得る。
【0075】
好ましいポリマー(B)としては、ポリオレフィン、例えばポリ(クロロプレン)、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリ(p−キシリレン)、ポリアリールメチレン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルエーテル、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルジフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンと、ペルフルオロプロピルビニルエーテルと、トリフルオロニトロソメタンと、カルボアルコキシペルフルオロアルコキシビニルエーテルとPTFEとのコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクロレイン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリシアノアクリレート、ポリメタクリルイミド、シクロオレフィン性コポリマー、特にノルボルネンのもの;
骨格にC−O結合を有するポリマー、例えば、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリエーテル、ポリプロピレンオキサイド、ポリエピクロロヒドリン、ポリテトラヒドロフラン、ポリフェニレンオキサイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエステル、特に、ポリヒドロキシ酢酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエート、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリプロピオン酸、ポリピバロラクトン(polypivalolactone)、ポリカプロラクトン、フラン樹脂、フェノール−アリール樹脂、ポリマロン酸、ポリカーボネート;
骨格にC−S結合を有するポリマー、例えば、ポリスルフィドエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリ(フェニルスルフィド−1,4−フェニレン);
骨格にC−N結合を有するポリマー、例えば、ポリイミン、ポリイソシアニド、ポリエーテルイミン、ポリエーテルイミド、ポリ(トリフルオロメチルビス(フタルイミド)フェニル)、ポリアニリン、ポリアラミド、ポリアミド、ポリヒドラジド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアゾール、ポリアゾールエーテルケトン、ポリウレタン、ポリアジン;
液晶性ポリマー(liquid-crystalline polymers)、特にVectra、ならびに
無機ポリマー、例えば、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリケイ酸、ポリシリケート、シリコーン、ポリホスファゼンおよびポリチアジルが挙げられる。
これらのポリマーは、個々に、あるいは2、3またはそれ以上のポリマーの混合物として使用され得る。
【0076】
特に好ましいのは、繰り返し単位において少なくとも1つの窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含有するポリマーである。特に好ましいのは、繰り返し単位当たり少なくとも1つの窒素、酸素および/または硫黄ヘテロ原子を有する少なくとも1つの芳香環を含有するポリマーである。このグループ内で、好ましいのは、特に、ポリアゾールに基づくポリマーである。これらの塩基性ポリアゾールポリマーは、繰り返し単位当たり少なくとも1つの窒素へテロ原子を有する少なくとも1つの芳香環を含有する。
【0077】
芳香環は、好ましくは、別の環(特に、別の芳香環)と融合され得る1〜3の窒素原子を有する5−または6−員環である。
【0078】
ポリアゾールに基づくポリマーは、一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII)
【0079】
【化10】

【0080】
【化11】

【0081】
【化12】

【0082】
【化13】

【0083】
[式中、
Arは、同一または異なり、そして各々、四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Arは、同一または異なり、そして各々、二価または三価または四価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Ar10は、同一または異なり、そして各々、二価または三価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Ar11は、同一または異なり、そして各々、二価の芳香族またはヘテロ芳香族基(これは、単または多環式であり得る)であり、
Xは、同一または異なり、そして各々、酸素、硫黄またはアミノ基{これは、更なる基として、水素原子、1〜20の炭素原子を有する基(好ましくは、分枝または非分枝のアルキルまたはアルコキシ基、あるいはアリール基)を保有する}であり、
Rは、同一または異なり、そして水素、アルキル基および芳香族基であり、同一または異なり、そして水素、アルキル基および芳香族基であり、但し、式XXにおけるRは二価の基であり、そして
n、mは、各々、10以上、好ましくは100以上の整数である]
の繰り返しアゾール単位を含む。
【0084】
好ましい芳香族またはヘテロ芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン(cinnoline)、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン(benzopyrazidine)、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンおよびフェナントレン(これらはまた、必要に応じて置換され得る)から誘導される。
【0085】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11の置換パターンは所望の通りであり;フェニレンの場合、例えば、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、オルト−、メタ−およびパラ−フェニレンであり得る。特に好ましい基は、ベンゼンおよびビフェニレン(これらはまた、必要に応じて置換され得る)から誘導される。
【0086】
好ましいアルキル基は、1〜4の炭素原子を有する短鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−もしくはi−プロピルおよびt−ブチル基である。
【0087】
好ましい芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基および芳香族基は置換され得る。
【0088】
好ましい置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素)、アミノ基、ヒドロキシ基または短鎖アルキル基(例えば、メチルまたはエチル基)である。
【0089】
好ましいのは、1繰り返し単位内でX基が同一である、式(I)の繰り返し単位を有するポリアゾールである。
【0090】
ポリアゾールはまた、例えばそれらのX基が異なる、異なる繰り返し単位を原理的には有し得る。しかし、それは、好ましくは、繰り返し単位内で同一のX基のみを有する。
【0091】
更なる好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダソール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)およびポリ(テトラアザピレン)である。
【0092】
本発明の更なる実施形態において、繰り返しアゾール単位を含有するポリマーは、互いに異なる式(I)〜(XXII)の少なくとも2つの単位を含有するコポリマーまたはブレンドである。ポリマーは、ブロックコポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダムコポリマー、ペリオディックコポリマー(periodic copolymers)および/または交互ポリマー(alternating polymers)の形態であり得る。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態において、繰り返しアゾール単位を含有するポリマーは、式(I)および/または(II)の単位のみを含有するポリアゾールである。
【0094】
該ポリマーにおける繰り返しアゾール単位の数は、好ましくは、10以上の整数である。特に好ましいポリマーは、少なくとも100の繰り返しアゾール単位を含む。
【0095】
本発明の文脈において、好ましいのは、繰り返しベンゾイミダゾール単位を含むポリマーである。繰り返しベンゾイミダゾール単位を含む非常に好適なポリマーのいくつかの例は、以下の式によって示される:
【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
式中、nおよびmは、各々、10以上、好ましくは100以上の整数である。
【0101】
更なる好ましいポリアゾールポリマーは、ポリイミダソール、ポリベンゾイミダゾールエーテルケトン、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリトリアゾール、ポリオキサジアゾール、ポリチアジアゾール、ポリピラゾール、ポリキノキサリン、ポリ(ピリジン)、ポリ(ピリミジン)およびポリ(テトラアザピレン)(poly(tetrazapyrenes))である。
【0102】
好ましいポリアゾールは、高分子量を特徴とする。これは、特に、ポリベンゾイミダゾールについて真実である。固有粘度として測定すると、これは、好ましくは、少なくとも0.2dl/g、好ましくは0.7〜10dl/g、特には0.8〜5dl/gである。
【0103】
特に好ましいのは、Celanese製のCelazoleである。高分子フィルム(film)および高分子膜(membrane)の特性は、ドイツ特許出願第10129458.1号に記載のように、出発ポリマーを篩い分けする(sieving)ことによって改善され得る。
【0104】
更に、使用されるポリマー(B)は、芳香族スルホン酸基を有するポリマーであり得る。芳香族スルホン酸基は、スルホン酸基(−SOH)が芳香族またはヘテロ芳香族基へ共有結合されている基である。該芳香族基は、ポリマー骨格の一部または側鎖の一部であり得、好ましいのは、骨格において芳香族基を有するポリマーである。スルホン酸基はまた、多くの場合において、塩の形態で使用され得る。更に、誘導体(例えば、スルホン酸のエステル、特にメチルまたはエチルエステル、あるいはハロゲン化物)を使用することも可能であり、これは、該膜の作動(operation)過程においてスルホン酸に変換される。
【0105】
スルホン酸基で修飾されたポリマーは、好ましくは、0.5〜3meq/g、好ましくは0.5〜2.5meq/gの範囲のスルホン酸基含有量を有する。この値は、いわゆるイオン交換容量(ion exchange capacity)(IEC)によって測定される。
【0106】
IECを測定するために、スルホン酸基は、遊離酸に変換される。この目的のために、該ポリマーは公知の様式で酸で処理され、過剰な酸は洗浄によって除去される。従って、スルホン化(sulfonated)ポリマーは、まず、沸騰水中で2時間処理される。引き続いて、過剰の水が取り除かれ(dabbed off)、そしてサンプルは、p<1mbarで、真空乾燥キャビネット中、160℃で15時間、乾燥される。次いで、膜の乾燥重量が測定される。このようにして乾燥されたポリマーは、次いで、1時間、80℃で、DMSO中に溶解される。引き続いて、該溶液は、0.1M NaOHで滴定される。次いで、当量点までの酸の消費量および乾燥重量から、イオン交換容量(IEC)が算出される。
【0107】
芳香族基へ共有結合されたスルホン酸基を有するポリマーは、当該技術分野において公知である。例えば、芳香族スルホン酸基を有するポリマーは、ポリマーをスルホン化することによって作製され得る。ポリマーをスルホン化するためのプロセスは、F. Kucera et. al. Polymer Engineering and Science 1988, Vol. 38, No 5, 783-792に記載されている。このプロセスにおいて、スルホン化条件は、低度のスルホン化が得られるように選択され得る(DE−A−19959289)。
【0108】
その芳香族基が側鎖の一部である芳香族スルホン酸基を有するポリマーに関して、特に、ポリスチレン誘導体が参照される。例えば、公報US−A−6110616は、ブタジエンとスチレンのコポリマーおよび燃料電池についての使用のためのそれらの引き続いてのスルホン化を記載している。
【0109】
更に、このようなポリマーはまた、酸基を含むモノマーのポリ反応(poly reaction)によって得られ得る。例えば、ペルフルオロ化(perfluorinated)ポリマーは、US−A−5422411に記載されるように、トリフルオロスチレンとスルホニル−修飾されたトリフルオロスチレンの共重合によって作製され得る。
【0110】
本発明の特定の局面において、芳香族基へ結合されたスルホン酸基を有する高温安定性熱可塑性物質が使用される。一般的に、このようなポリマーは、主鎖に芳香族基を有している。従って、好ましいのは、スルホン化ポリエーテルケトン(DE−A−4219077、WO96/01177)、スルホン化ポリスルホン(J. Membr. Sci. 83 (1993) p. 211)またはスルホン化ポリフェニレンスルフィド(DE−A−19527435)である。
【0111】
アロマティックス(aromatics)へ結合されたスルホン酸基を有しそして上記で詳述されたポリマーは、個々にまたは混合物として使用され得、この場合、好ましいのは、特に、骨格において芳香族を有するポリマーを有する混合物である。
【0112】
好ましいポリマーとしては、ポリスルホン、特に、骨格において芳香族を有するポリスルホンが挙げられる。本発明の特定の局面において、好ましいポリスルホンおよびポリエーテルスルホンは、ISO 1133に対して測定した場合、40cm/10分以下、特には30cm/10分以下、そしてより好ましくは20cm/10分以下のメルトボリュームフローレート(melt volume flow rate)MVR300/21.6を有する。
【0113】
本発明の特定の局面において、芳香族基へ共有結合されたスルホン酸基を有するポリマーとホスホン酸基を含むモノマーとの重量比は、0.1〜50、好ましくは0.2〜20、より好ましくは1〜10の範囲であり得る。
【0114】
本発明の特定の局面において、好ましいプロトン伝導性高分子膜は、以下の工程を包含する方法によって得られ得る:
I)ホスホン酸基を含むモノマーを含む液体で高分子フィルムを膨潤させる工程、
II)工程I)において高分子フィルム中へ導入されたホスホン酸基を含むモノマーの少なくとも一部を重合する工程、および
III)工程II)において形成された膜へ少なくとも1つの触媒層を適用する工程。
【0115】
膨潤(swelling)は、少なくとも3重量%のフィルム重量の増加を意味すると理解される。膨潤は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%である。
【0116】
膨潤Qの測定は、膨潤前のフィルムの質量、m、および工程B)における重合後のフィルムの質量、m、から重量測定的に測定される。
【0117】
Q=(m−m)/mx100
膨潤は、好ましくは0℃を超える温度で、特には室温(20℃)〜180℃で、ホスホン酸基を含むモノマーを好ましくは少なくとも5重量%含む液体中において、行われる。更に、膨潤はまた、上昇された圧力(elevated pressure)で行われ得る。この文脈において、限界値は、経済的考慮および技術的手段から生じる。
【0118】
膨潤のために使用される高分子フィルム(polymer film)は、一般的に、5〜3000μm、好ましくは10〜1500μm、そしてより好ましくは20〜500μmの範囲の厚みを有する。ポリマーからのこのようなフィルムの製造は、常識であり、そしてそれらのいくつかは市販されている。
【0119】
ホスホン酸基を含むモノマーを含む液体は、溶液であり得、この場合、該液体はまた、懸濁および/または分散された成分を含み得る。ホスホン酸基を含むモノマーを含む液体の粘度は広範囲に渡り得、そして該粘度を調節するために、溶媒が添加され得るか、あるいは温度が上昇され得る。動的粘度は、好ましくは0.1〜10000mPas、特には0.2〜2000mPasの範囲内であり、そしてこれらの値は、例えばDIN 53015に従って測定され得る。
【0120】
工程A)において調製される混合物または工程I)において使用される液体は、更にまた、更なる有機および/または無機溶媒を含み得る。有機溶媒としては、特に、極性・非プロトン性溶媒[例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エステル類(例えば、酢酸エチル)]、ならびに極性・プロトン性溶媒[例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよび/またはブタノールのようなアルコール類]が挙げられる。無機溶媒としては、特に、水、リン酸およびポリリン酸が挙げられる。これらは、加工性(processability)に対してプラスに影響し得る。例えば、溶液のレオロジーが改善され得、その結果、それは、より容易に押出し成形またはナイフ−コーティングされ得る。
【0121】
性能特性を更に改善するために、該膜へ充填剤(特に、プロトン伝導性充填剤)およびまた更なる酸を添加することが更に可能である。このような物質は、好ましくは、100℃で、少なくとも10−6S/cm、特には10−5S/cmの真性伝導率(intrinsic conductivity)を有する。添加は、例えば、工程A)および/または工程B)あるいは工程I)において行われ得る。更には、これらの添加剤はまた、それらが液体形態で存在する場合、工程C)または工程II)における重合後に添加され得る。
【0122】
プロトン伝導性充填剤の非限定的な例は、以下である:
スルフェート: 例えば、CsHSO、Fe(SO、(NHH(SO、LiHSO、NaHSO、KHSO、RbSO、LiNSO、NHHSO
ホスフェート: 例えば、Zr(PO、Zr(HPO、HZr(PO、UOPO・3HO、HUOPO、Ce(HPO、Ti(HPO、KHPO、NaHPO、LiHPO、NHPO、CsHPO、CaHPO、MgHPO、HSbP、HSb14、HSb20
ポリ酸: 例えば、HPW1240・nHO(n=21〜29)、HSiW1240・nHO(n=21〜29)、HWO、HSbWO、HPMo1240、HSb11、HTaWO、HNbO、HTiNbO、HTiTaO、HSbTeO、HTi、HSbO3、MoO
セレン化物(selenites)およびヒ化物: 例えば、(NHH(SeO、UOAsO、(NHH(SeO、KHAsO、CsH(SeO、RbH(SeO
リン化物 :例えば、ZrP、TiP、HfP;
酸化物: 例えば、Al、Sb、ThO、SnO、ZrO、MoO
シリケート: 例えば、ゼオライト、ゼオライト(NH)、シートシリケート(sheet silicates)、フレームワークシリケート(framework silicates)、H−ソーダ沸石、H−モルデン沸石、NH−方沸石(NH4-analcines)、NH−方ソーダ石、NH−ガレート(NH4-gallates)、H−モンモリロナイト;
酸: 例えば、HClO、SbF
充填剤: 例えば、炭化物、特にSiC、Si、繊維、特にガラス繊維、ガラス粉末および/またはポリマー繊維(好ましくは、ポリアゾールに基づくもの)。
【0123】
これらの添加剤は、プロトン伝導性高分子膜中に慣用的な量で存在し得るが、膜のポジティブな特性(例えば、高伝導率、長寿命および高機械安定性)が、過剰に多い量の添加剤の添加によってあまりにも大きく損なわれないべきである。一般的に、工程C)または工程II)における重合後の膜は、80重量%以下、好ましくは50重量%以下、そしてより好ましくは20重量%以下の添加剤を含む。
【0124】
更に、これらの膜は、更に、ペルフルオロ化スルホン酸添加剤(perfluorinated sulfonic acid additives)(好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、非常に特に好ましくは0.2〜10重量%)を含有し得る。これらの添加剤は、出力(power)の増加、カソード付近の酸素溶解性および酸素拡散性の増加、ならびに触媒表面における電解質の吸着の減少へと導く。(Electrolyte additives for phosphoric acid fuel cells. Gang, Xiao; Hjuler, H. A.; Olsen, C.; Berg, R. W.; Bjerrum, N. J.. Chem. Dep. A, Tech. Univ. Denmark, Lyngby, Den. J. Electrochem. Soc. (1993), 140(4), 896-902 および Perfluorosulfonimide as an additive in phosphoric acid fuel cell. Razaq, M.; Razaq, A.; Yeager, E.; DesMarteau, Darryl D.; Singh, S. Case Cent. Electrochem. Sci., Case West. Reserve Univ., Cleveland, OH, USA. J. Electrochem. Soc. (1989), 136(2), 385-90.)。
【0125】
ペルスルホン化添加剤(persulfonated additives)の非限定的な例は、以下である:
トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸アンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸セシウム、トリエチルアンモニウムペルフルオロヘキサンスルホネートおよびペルフルオロスルホンイミド。
【0126】
工程B)におけるフラット構造体(flat structure)の形成は、高分子フィルム製造についての先行技術からそれ自体公知の手段(キャスティング、スプレーイング、ナイフ−コーティング、押出し成形)によって行われる。好適な支持体(supports)は、該条件下で不活性といわれ得る全ての支持体である。これらの支持体としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、PTFEとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)およびポリプロピレン(PP)のフィルムが挙げられる。
【0127】
工程B)において得られるフラット構造体の厚みは、好ましくは10〜4000μm、好ましくは15〜3500μm、特には20〜3000μm、より好ましくは30〜1500μm、そして最も好ましくは50〜500μmである。
【0128】
工程C)または工程II)におけるホスホン酸基を含むモノマーの重合は、好ましくは、フリーラジカル手段によって行われる。フリーラジカル形成は、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に行われ得る。
【0129】
例えば、フリーラジカルを形成し得る少なくとも1つの物質を含む開始剤溶液(initiator solution)が、該組成物が工程A)において加熱された後に、該組成物へ添加され得る。更には、開始剤溶液は、工程B)後に得られるフラット構造体へ適用され得る。これは、先行技術からそれ自体公知の方法(例えば、スプレーイング、ディッピングなど)によって行われ得る。該膜が膨潤によって作製される場合、開始剤溶液は、該液体へ添加され得る。これはまた、膨潤後のフラット構造体へ適用され得る。
【0130】
好適なフリーラジカル形成剤(free-radical formers)としては、アゾ化合物、ペルオキシ化合物、ペルスルフェート化合物またはアゾアミジンが挙げられる。非限定的な例は、ジベンゾイルペルオキシド、ジクメンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過硫酸二カリウム、アンモニウムペルオキソジスルフェート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(イソブチロアミジン)ヒドロクロリド、ベンゾピナコール、ジベンジル誘導体、メチルエチレンケトンペルオキシド、1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、tert−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ならびにまた名称(登録商標)Vazo、例えば(登録商標)Vazo V50および(登録商標)Vazo WSでDuPontから得られ得るフリーラジカル形成剤が挙げられる。
【0131】
更に、照射時にフリーラジカルを形成するフリーラジカル形成剤を使用することもまた可能である。好ましい化合物としては、α,α−ジエトキシアセト−フェノン(DEAP,Upjohn Corp)、n−ブチルベンゾインエーテル(登録商標 Trigonal−14, AKZO)および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(登録商標 Irgacure 651)および1−ベンゾイル−シクロヘキサノール(登録商標 Irgacure 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(登録商標 Irgacure 819)および1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−フェニルプロパン−1−オン(登録商標 Irgacure 2959)が挙げられ、これらの各々は、Ciba Geigy Corp から市販されている。
【0132】
典型的には0.0001〜5重量%、特には0.01〜3重量%(ホスホン酸基を含むモノマーの重量に基づく)のフリーラジカル形成剤が添加される。フリーラジカル形成剤の量は、所望の重合度に依存して変化され得る。
【0133】
重合はまた、IRまたはNIRの作用によっても行われ得る(IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長または約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)。
【0134】
重合はまた、400nm未満の波長を有するUV光の作用によっても行われ得る。この重合方法は、それ自体公知であり、そして例えば、Hans Joerg Elias, Makromolekulare Chemie [Macromolecular Chemistry], 5th edition, volume 1, pp. 492-511;D.R. Arnold, N.C. Baird, J.R. Bolton, J.C.D. Brand, P.W.M. Jacobs, P. de Mayo, W.R. Ware, Photochemistry - An Introduction, Academic Press, New York およびM.K. Mishra, Radical Photopolymerization of Vinyl Monomers, J. Macromol. Sci.-Revs. Macromol. Chem. Phys. C22 (1982-1983) 409に記載されている。
【0135】
重合はまた、β線、γ線および/または電子ビームの作用によっても達成され得る。本発明の特定の実施形態において、膜は、1〜300kGy、好ましくは3〜250kGyそして最も好ましくは20〜200kGyの範囲の照射線量で照射される。
【0136】
工程Cにおけるホスホン酸基を含むモノマーの重合は、好ましくは室温(20℃)超〜200℃未満の温度、特には40℃〜150℃の温度、より好ましくは50℃〜120℃で行われる。重合は、好ましくは大気圧下で行われるが、圧力の作用下でも行われ得る。重合は、フラット構造体の強化へ導き、そしてこの強化は、微小硬度測定(microhardness measurement)によってモニターされ得る。重合から生じる硬度の増加は、工程B)において得られるフラット構造体の硬度に基づいて、好ましくは少なくとも20%である。
【0137】
本発明の特定の実施形態において、膜は、高い機械的安定性を有する。このパラメータは、膜の硬度から生じ、これは、DIN 50539に対する微小硬度測定によって測定される。この目的のために、膜は、20s以内、3mNの力まで徐々に、Vickersダイヤモンドでロードされ、そして侵入深度(penetration depth)が測定される。これによれば、室温での硬度は、少なくとも0.01N/mm、好ましくは少なくとも0.1N/mm、そして最も好ましくは少なくとも1N/mmであり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。引き続いて、力が、5sに渡って3mNで一定に維持され、そして侵入深度からのクリープが算出される。好ましい膜の場合、これらの条件下でのクリープCHU0.003/20/5は、20%未満、好ましくは10%未満、そして最も好ましくは5%未満である。微小硬度測定によって測定される係数YHUは、少なくとも0.5MPa、特には少なくとも5MPa、そして最も好ましくは少なくとも10MPaであり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。
【0138】
膜硬度は、触媒層を有さない表面および触媒層を有する面の両方に関連する。
【0139】
所望の重合度に依存して、重合により得られるフラット構造体は、自己支持性膜(self-supporting membrane)である。重合度は、好ましくは少なくとも2、特には少なくとも5、より好ましくは少なくとも30の繰り返し単位、特には少なくとも50の繰り返し単位、最も好ましくは少なくとも100の繰り返し単位である。この重合度は、GPC法によって測定され得る数平均分子量Mより測定される。該膜に存在するホスホン酸基を含むポリマーを分解無しに分離する問題に起因して、この値は、サンプルの助けで測定され、これは、ポリマーを添加せずに、ホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって行われる。この場合、ホスホン酸基を含むモノマーとフリーラジカル開始剤との重量割合は、膜製造の条件と比較して一定に維持される。比較重合において達成されるコンバージョン(conversion)は、使用されるホスホン酸基を含むモノマーに基づいて、好ましくは20%以上、特には40%以上、そしてより好ましくは75%以上である。
【0140】
膜に存在するホスホン酸基を含むポリマーは、好ましくは、ブロードな分子量分布を有する。従って、ホスホン酸基を含むポリマーは、1〜20、より好ましくは3〜10の範囲の多分散度M/Mを有し得る。
【0141】
プロトン伝導性膜の含水量は、好ましくは多くとも15重量%、より好ましくは多くとも10重量%、そして最も好ましくは多くとも5重量%である。
【0142】
この関係において、膜の伝導率は、Grotthusメカニズムに基づき得、その結果、該システムは更なる湿潤化を必要としないと推測され得る。従って、好ましい膜は、ホスホン酸基を含む低分子量ポリマーのフラクションを含む。依って、ホスホン酸基を含みそして2〜20の範囲の重合度を有するポリマーのフラクションは、ホスホン酸基を含むポリマーの重量に基づいて、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%であり得る。
【0143】
工程C)または工程II)における重合は、層厚みの減少へ導き得る。自己支持性膜の厚みは、好ましくは15〜1000μm、好ましくは20〜500μm、特には30〜250μmである。
【0144】
工程C)または工程II)において得られる膜は、好ましくは自己支持性(self-supporting)であり、即ち、それは、損傷無しに支持体から除去され得、そして引き続いて必要に応じて更に直接加工され得る。
【0145】
工程C)または工程II)における重合後、膜は、表面において、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に架橋され得る。この膜表面の硬化は、更に、膜の特性を改善する。
【0146】
特定の局面において、膜は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、そしてより好ましくは少なくとも250℃の温度へ加熱され得る。好ましいのは、酸素の存在下で熱的架橋を行うことである。このプロセス工程において、酸素濃度は、典型的に、5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%の範囲であり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。
【0147】
架橋はまた、IRもしくはNIR(IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長または約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)および/またはUV光の作用によって行われ得る。更なる方法は、β線、γ線および/または電子ビームでの照射である。この場合の照射線量は、好ましくは5〜250kGy、特には10〜200kGyである。照射は、空気または不活性ガス下で行われ得る。結果として、膜の使用特性、特にその寿命が、改善される。
【0148】
所望の架橋度に依存して、架橋反応の期間は、広範囲に渡り得る。一般的に、この反応時間は、1秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間の範囲であり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。
【0149】
本発明の特定の実施形態において、膜は、元素分析によれば、膜の総重量に基づいて、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、そしてより好ましくは少なくとも7重量%のリンを含む。リンの割合は、元素分析の手段によって測定され得る。この目的のために、膜は、減圧(1mbar)下、110℃で3時間乾燥される。
【0150】
ホスホン酸基を含むポリマーは、好ましくは、少なくとも5meq/g、より好ましくは少なくとも10meq/gのホスホン酸基の含有量を有する。この値は、いわゆるイオン交換容量(IEC)によって測定される。
【0151】
IECを測定するために、ホスホン酸基は遊離酸に変換され、測定はホスホン酸基を含むモノマーの重合前に行われる。引き続いて、サンプルは、0.1M NaOHで滴定される。当量点までの酸の消費量および乾燥重量から、次いで、イオン交換容量(IEC)が算出される。
【0152】
本発明の高分子膜は、今日まで公知のドープされた高分子膜と比較して改善された材料特性を有する。特に、公知のドープされた高分子膜と比較して、それらは、より良好な性能を示す。これについての理由は、特に、プロトン伝導率の改善である。120℃の温度で、これは、少なくとも1mS/cm、好ましくは少なくとも2mS/cm、特には少なくとも5mS/cmであり、好ましくは湿潤化無しに測定される。
【0153】
更に、該膜は、70℃の温度であってさえ高伝導率を有する。該伝導率は、膜のスルホン酸基含有量を含むファクターに依存する。この含有量が高くなるほど、低温での伝導率がより良好となる。この文脈において、本発明の膜は、低温で湿潤化され得る。この目的のために、例えば、エネルギー源として使用される化合物(例えば、水素)が、水のフラクションと共に提供され得る。しかし、多くの場合において、該反応によって形成される水でさえ、湿潤化を達成するに十分である。
【0154】
比伝導率を、定電位モードにおける4極配置でのインピーダンス分光法(impedance spectroscopy in a 4-pole arrangement in potentiostatic mode)の手段によって、そして白金電極(ワイヤ、直径0.25mm)を使用して、測定する。集電電極間(current-collecting electrodes)の距離は2cmである。得られるスペクトルを、オーム抵抗およびキャパシタの並列配置からなるシンプルなモデルで評価する。リン酸ドープされた膜のサンプル断面を、サンプル搭載の直前に測定する。温度依存性を測定するために、テストセルを、オーブン中において所望の温度までもっていき、そして該サンプルのすぐ隣に配置されたPt−100サーモエレメントによって制御する。温度が達成されると、該サンプルを、測定開始前の10分間、この温度で維持する。
【0155】
いわゆる液体ダイレクトメタノール型燃料電池(liquid direct methanol fuel cell)における90℃および0.5Mメタノール溶液での作動における交差電流密度(crossover current density)は、好ましくは100mA/cm未満、特には70mA/cm未満、より好ましくは50mA/cm未満、そして最も好ましくは10mA/cm未満である。いわゆるガス状ダイレクトメタノール型燃料電池(gaseous direct methanol fuel cell)における160℃および2Mメタノール溶液での作動における交差電流密度は、好ましくは100mA/cm未満、特には50mA/cm未満、最も好ましくは10mA/cm未満である。
【0156】
交差電流密度を測定するために、カソードで放出される二酸化炭素の量を、COセンサーによって測定する。このようにして得られるCO量の値から、P. Zelenay, S.C. Thomas, S. Gottesfeld in S. Gottesfeld, T.F. Fuller “Proton Conducting Membrane Fuel Cells II“ ECS Proc. Vol. 98-27 p. 300-308によって記載されるように、交差電流密度を算出する。
【0157】
更に、本発明の高分子膜は、電気化学的に活性である1または2の触媒層を有する。用語“電気化学的に活性”は、触媒層が、燃料(例えば、H、メタノール、エタノール)の酸化およびOの還元を触媒し得ることを示す。
【0158】
触媒層は、触媒活性物質を含む。これらとしては、白金族の貴金属、即ち、Pt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、または他の貴金属AuおよびAgが挙げられる。更に、上記金属の全ての合金(alloys)もまた使用され得る。更には、少なくとも1つの触媒層は、ベース金属(例えば、Fe、Co、Ni、Cr、Mn、Zr、Ti、Ga、Vなど)と白金族金属の合金を含み得る。更に、上記貴金属および/またはベース金属の酸化物を使用することも可能である。
【0159】
上記物質を含む触媒活性粒子は、貴金属ブラック(noble metal black)として公知の金属粉末の形態で使用され得る(特に、白金および/または白金合金)。このような粒子は、一般的に、5nm〜200nmの範囲、好ましくは7nm〜100nmの範囲のサイズを有する。
【0160】
更に、該金属はまた、支持体材料上において使用され得る。この支持体は、特にカーボンブラック、グラファイトまたはグラファイト化カーボンブラック(graphitized carbon black)の形態で使用され得る炭素を好ましくは含む。更には、支持体材料として、導電性金属酸化物(例えば、SnO、TiO)またはホスフェート(例えば、FePO、NbPO、Zr(PO)を使用することも可能である。この文脈において、指数x、yおよびzは、個々の化合物の酸素または金属含有量を示し、これは、公知の範囲内であり得、何故ならば、遷移金属は、種々の酸化状態を想定し得るからである。
【0161】
金属−支持体化合物(metal-support compound)の総重量に基づくこれらの支持された金属粒子の含有量は、一般的に、1〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、そしてより好ましくは10〜50重量%の範囲であり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。支持体の粒度、特に炭素粒子のサイズは、好ましくは、20〜100nm、特には30〜60nmの範囲である。その上に配置された金属粒子のサイズは、好ましくは1〜20nm、特には1〜10nm、そしてより好ましくは2〜6nmの範囲である。
【0162】
種々の粒子のサイズは平均値を構成し、そして透過型電子顕微鏡または粉末X線回折法によって測定され得る。
【0163】
上記で詳述される触媒活性粒子は、一般的に商業的に得られ得る。
【0164】
更に、この触媒層は、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得る、アイオノマーを含む。
【0165】
ホスホン酸基を含むモノマーは上記で詳述されているので、それを参照のこと。本発明に従って使用されるアイオノマーを調製するために、好ましいのは、エテンホスホン酸、プロペンホスホン酸、ブテンホスホン酸;ホスホン酸基を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸化合物(例えば、2−ホスホノメチルアクリル酸、2−ホスホノメチルメタクリル酸、2−ホスホノメチルアクリルアミドおよび2−ホスホノメチルメタクリルアミド)である。
【0166】
特に好ましいのは、例えばAldrichまたはClariant GmbHから得られ得るような、市販のビニルホスホン酸(エテンホスホン酸)を使用することである。好ましいビニルホスホン酸は、70%を超える純度、特には90%を超えるそしてより好ましくは97%を超える純度を有する。
【0167】
更に、該アイオノマーは、スルホン酸基を含むモノマーを使用して調製され得る。
【0168】
本発明の特定の局面において、該アイオノマーを製造する場合、ホスホン酸基を含むモノマーとスルホン酸基を含むモノマーとの混合物、ここで、ホスホン酸基を含むモノマーとスルホン酸基を含むモノマーとの重量比は、100:1〜1:100、好ましくは10:1〜1:10、そしてより好ましくは2:1〜1:2の範囲である。
【0169】
アイオノマーは、好ましくは、300〜100000g/モル、好ましくは500〜50000g/モルの範囲の分子量を有する。この値は、GPCによって測定され得る。
【0170】
本発明の特定の局面において、アイオノマーは、1〜20、より好ましくは3〜10の範囲の多分散度M/Mを有し得る。
【0171】
更に、アイオノマーとして市販のポリビニルホスホン酸を使用することもまた可能である。これらは、とりわけ、Polysciences Inc.から得られ得る。
【0172】
本発明の特定の実施形態において、アイオノマーは、触媒層において特に均一な分布を有し得る。この均一な分布は、特に、触媒層を高分子膜へ適用する前にアイオノマーを触媒活性物質と接触することによって、達成され得る。
【0173】
触媒層中のアイオノマーの均一な分布は、例えばEDXによって測定され得る。この場合、触媒層内での散乱(scattering)は、10%以下、好ましくは5%以下、そしてより好ましくは1%以下である。触媒層中のアイオノマーのフラクションは、好ましくは、1〜60重量%の範囲、より好ましくは10〜50%の範囲である。
【0174】
触媒層中の元素分析に従うリンのフラクションは、好ましくは少なくとも0.3重量%、特には少なくとも3重量%、そしてより好ましくは少なくとも7重量%である。本発明の特定の局面において、触媒層中のリンのフラクションは、3重量%〜15重量%の範囲である。
【0175】
少なくとも1つの触媒層を適用するために、種々の方法が使用され得る。例えば、工程C)において、工程C)において形成された層に触媒層を提供するために、触媒を含むコーティングが提供されている支持体を使用することが可能である。
【0176】
この場合、該膜は、1つの面または両方の面上に触媒層が提供され得る。該膜が1つの面においてのみ触媒層が提供される場合、該膜の反対の面は、触媒層を有する電極と共に圧縮される(compressed)必要がある。該膜の両面に触媒層が提供される場合、下記の方法がまた、最適な結果を達成するために、組み合わせて使用され得る。
【0177】
本発明によれば、触媒層は、触媒懸濁液が使用されるプロセスによって適用され得る。更には、触媒を含む粉末を使用することも可能である。
【0178】
触媒活性物質およびホスホン酸基を含むアイオノマーに加えて、触媒懸濁液は、慣用の添加剤を含み得る。これらとしては、フルオロポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、増粘剤(thickeners)、特に水溶性ポリマー、例えばセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、および界面活性物質(surface-active substances)が挙げられる。
【0179】
界面活性物質としては、特に、イオン性界面活性剤、例えば脂肪酸塩、特にラウリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム;およびアルキルスルホン酸、アルキルスルホネート塩、特にペルフルオロヘキサンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸リチウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸アンモニウム、ペルフルオロヘキサン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸カリウム、ならびにまた非イオン性界面活性剤、特にエトキシル化脂肪アルコール(ethoxylated fatty alcohols)およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0180】
更に、触媒懸濁液は、室温で液体の成分を含み得る。これらとしては、有機溶媒(極性または無極性であり得る)、リン酸、ポリリン酸および/または水が挙げられる。触媒懸濁液は、好ましくは1〜99重量%、特には10〜80重量%の液体成分を含む。
【0181】
極性有機溶媒としては、特に、アルコール、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールおよび/またはブタノールが挙げられる。
【0182】
有機無極性溶媒としては、公知の薄膜希釈剤(thin film diluents)、例えば、テレビン油を含むDuPont製の薄膜希釈剤8470が挙げられる。
【0183】
特に好ましい添加剤は、フルオロポリマー、特にテトラフルオロエチレンポリマーである。本発明の特定の実施形態において、触媒懸濁液は、触媒材料の重量に基づいて0〜60%のフルオロポリマー(好ましくは1〜50%)を含み得る。
【0184】
この文脈において、フルオロポリマーと少なくとも1つの貴金属および必要に応じて1以上の支持体材料を含む触媒材料との重量比は、0.1超であり得、この比率は、好ましくは0.2〜0.6の範囲内である。
【0185】
触媒懸濁液は、慣用のプロセスによって膜へ適用され得る。懸濁液(これはまたペースト形態で存在し得る)の粘度に依存して、懸濁液が適用され得る種々の方法が公知である。好適なプロセスは、フィルム、ファブリック、テキスタイルおよび/またはペーパーをコーティングするためのもの、特にスプレーイングプロセスおよび印刷プロセス、例えばステンシル印刷およびスクリーン印刷、インクジェット印刷、ロール塗布(roll application)、特にエングレイブド・ローラー(engraved rollers)、スロットダイ塗布(slot die application)およびナイフコーティングである。特定のプロセスおよび触媒懸濁液の粘度は、膜の硬度に依存する。
【0186】
粘度は、固体含有量(solids content)、特に、触媒活性粒子のフラクション、および添加剤のフラクションによって影響され得る。確立される粘度は、触媒懸濁液の適用方法に依存し、最適値およびそれらの測定は、当業者によく知られている。
【0187】
膜の硬度の依存して、触媒と膜との結合は、ヒーティングおよび/またはプレッシング(heating and/or pressing)によって改善され得る。更に、膜と触媒との結合は、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に行われ得る上述の表面架橋処理の結果として生じる。
【0188】
本発明の特定の局面において、触媒層は、パウダープロセス(powder process)で適用される。このプロセスにおいて、例として上記で詳述される更なる添加剤を含み得る触媒粉末が使用される。
【0189】
触媒粉末を適用するために、スプレープロセスおよびスクリーンプロセスを含むプロセスを使用することが可能である。スプレープロセスにおいて、粉末混合物は、ダイ(例えば、スロットダイ)を用いて膜上にスプレーされる。一般的に、触媒層を備えた膜は、引き続いて、触媒と膜との結合を改善するために、加熱される。加熱は、例えばホットローラーによって、行われ得る。粉末を適用するためのこのような方法および装置は、とりわけ、DE195 09 748、DE 195 09 749およびDE 197 57 492に記載されている。
【0190】
スクリーンプロセスにおいて、触媒粉末は、シェ−キングスクリーン(shaking screen)を用いて膜へ適用される。膜へ触媒粉末を提供するための装置は、WO 00/26982に記載されている。触媒粉末が適用された後、触媒と膜の結合は、加熱によって改善され得る。この場合、少なくとも1つの触媒層が提供された膜は、50〜200℃、特には100〜180℃の範囲の温度へ加熱され得る。
【0191】
更に、触媒層は、触媒を含むコーティングが支持体に適用され、そして引き続いて、触媒を含みそして支持体上に存在する該コーティングが膜へ移される(transferred)プロセスによって、適用され得る。このようなプロセスは、WO 92/15121における例によって記載される。
【0192】
触媒コーティングが提供された支持体は、例えば上記の触媒懸濁液を製造することによって、製造され得る。この触媒懸濁液は、引き続いて、支持体フィルム(例えば、ポリテトラフルオロエチレンのもの)へ適用される。懸濁液が適用された後、揮発性成分が除去される。
【0193】
触媒を含むコーティングは、とりわけ、ヒート−プレッシング(heat-pressing)によって移され得る。この目的のために、触媒層および膜さらに支持体フィルムを含むコンポジット(composite)は、50℃〜200℃の範囲の温度へ加熱され、そして0.1〜5MPaの圧力でプレスされる。一般的に、数秒で、触媒層と膜を結合させるに十分である。この時間は、好ましくは、1秒〜5分、特には5秒〜1分の範囲である。
【0194】
本発明の特定の実施形態において、触媒層は、1〜1000μm、特には5〜500、好ましくは10〜300μmの範囲の厚みを有する。この値は、走査型電子顕微鏡(SEM)で得られ得る画像の断面図における層厚を測定することによって測定され得る平均値である。
【0195】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1つの触媒層を備えた膜は、0.1〜10.0mg/cm、好ましくは0.2〜6.0mg/cmそしてより好ましくは0.2〜2mg/cmの触媒活性金属(例えば、Pt)を含む。これらの値は、フラットサンプルの元素分析によって測定され得る。膜が互いに反対側の2つの触媒層を備える場合、金属ベース重量の上記値は、1つの触媒層当たりで適用される。
【0196】
本発明の特定の局面において、膜の一方の面は、膜の反対側の面よりも高い金属含有量を有する。一方の面の金属含有量は、好ましくは、反対側の面の金属含有量の少なくとも2倍高い。
【0197】
工程C)および/または工程D)における処理後、膜はまた、熱の作用によって酸素の存在下で架橋され得る。膜のこの硬化は、更に、膜の特性を改善する。この目的のために、膜は、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも200℃、そしてより好ましくは少なくとも250℃の温度へ加熱され得る。このプロセス工程における酸素濃度は、典型的に、5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%の範囲であり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。
【0198】
架橋はまた、IRもしくはNIR(IR=赤外線、即ち、700nm超の波長を有する光;NIR=近IR、即ち、約700〜2000nmの範囲の波長および約0.6〜1.75eVの範囲のエネルギーを有する光)の作用によって行われ得る。更なる方法は、β線での照射である。ここでの照射線量は、5〜200kGyである。
【0199】
所望の架橋度に依存して、架橋反応の期間は、広範囲に渡り得る。一般的に、この反応時間は、1秒〜10時間、好ましくは1分〜1時間の範囲であり、これが制限を与えるべきであるという意図はない。
【0200】
本発明の高分子膜の使用の可能な分野としては、燃料電池、電気分解、キャパシタおよびバッテリーシステムにおける使用が挙げられる。
【0201】
本発明はまた、少なくとも1つの本発明の高分子膜を有する膜−電極ユニット(membrane-electrode unit)に関する。膜−電極ユニットに関する更なる情報については、技術文献、特に以下の特許を参照のこと:US−A−4,191,618、US−A−4,212,714およびUS−A−4,333,805。膜−電極ユニットの構成および作製、ならびにまた選択される電極、ガス拡散層および触媒に関する前記の参考文献[US−A−4,191,618、US−A−4,212,714およびUS−A−4,333,805]に存在する開示はまた、本明細書の一部を形成する。
【0202】
膜−電極ユニットを製造するために、本発明の膜は、ガス拡散層(gas diffusion layer)へ結合され得る。該膜が触媒層を両面上に備える場合、ガス拡散層は、プレス前に触媒を有する必要はない。しかし、触媒活性層を備えたガス拡散層を使用することも可能である。ガス拡散層は、一般的に、電子伝導性(electron conductivity)を有する。この目的のために、フラットな導電性および耐酸性構造体(flat, electrically conductive and acid-resistant structures)が典型的に使用される。これらとしては、例えば、カーボンファイバーペーパー、グラファイト化(graphitized)カーボンファイバーペーパー、カーボンファイバーファブリック、グラファイト化(graphitized)カーボンファイバーファブリックおよび/またはカーボンブラックを添加することによって伝導性にされたフラット構造体が挙げられる。
【0203】
ガス拡散層は、慣用条件下で個々のコンポーネントをプレスすることによって、少なくとも1つの触媒層を備える膜へ結合される。一般的に、積層(lamination)は、10〜300℃、特には20℃〜200℃の範囲の温度で、そして1〜1000bar、特には3〜300barの範囲の圧力を用いて行われる。
【0204】
更に、膜はまた、触媒層を備えたガス拡散層を使用することによって、触媒層へ結合され得る。この場合、膜−電極ユニットは、触媒層無しで、膜と触媒層を備えた2つのガス拡散層とから、形成され得る。
【0205】
本発明の膜−電極ユニットは、驚くほど高い出力密度(power density)を示す。特定の実施形態において、好ましい膜−電極ユニットは、少なくとも0.05A/cm、好ましくは0.1A/cm、より好ましくは0.2A/cmの電流密度を提供する。この電流密度は、標準圧力(1013mbar絶対、オープンセルアウトレットで(1013 mbar absolute, with open cell outlet))およびセル電圧0.6Vでの、アノードでの純粋な水素およびカソードでの空気(約20体積%の酸素、約80体積%の窒素)の作動において測定される。ここで、150〜200℃、好ましくは160〜180℃の範囲、特には170℃の特に高い温度を使用することが可能である。更に、本発明のMEUはまた、100℃未満、50〜90℃の温度範囲、特には80℃で使用され得る。これらの温度で、MEUは、上記の他の条件下0.6Vの電圧で測定した場合、少なくとも0.02A/cm、好ましくは少なくとも0.03A/cm、そしてより好ましくは0.05A/cmの電流密度を示す。
【0206】
上記出力密度はまた、より低い化学量論の燃料ガスで達成され得る。本発明の特定の局面において、該化学量論は、2以下、好ましくは1.5以下、最も好ましくは1.2以下である。酸素化学量論は、3以下、好ましくは2.5以下、そしてより好ましくは2以下である。
【実施例】
【0207】
実施例1:
実施例1は、ホスホン酸含有膜と2つの電極からなる膜−電極ユニットの分極曲線(polarization curve)を示す。この実施例は、実施例2および3の参考例として役立つ。個々のコンポーネントの作製を下記に記載する:
膜: DE 10052237.8に従うPBI−DMAc溶液からそしてDE10129458.1に従う好適なポリマー顆粒の選択によって作製された高分子量ポリベンゾイミダゾールのフィルムを、先ず、DE10110752.8に記載されるように45℃で30分間洗浄する。引き続いて、過剰の水を、このように前処理したPBIフィルムからペーパータオルで取り除く。このドープされていないPBIフィルムを、次いで、70℃で2時間、1重量部の水と10重量部のビニルホスホン酸(97%)(Clariant製)からなる溶液中へ配置する。次いで、厚み増加および表面積増加を、測定する。次いで、該膜を、電子照射および50〜80kGyの照射線量によって処理する。このようにして得られた膜中のビニルホスホン酸の含有量を、n(VPA)/n(PBI)として、滴定によって算出する。
【0208】
電極: 使用されるアノードおよびカソードは、各場合において1mg/cmのPt含有量を含む、市販のPTFE結合電極であり、炭素-支持されたPt触媒(Vulcan XC72において30%Pt)が触媒層において使用された。いずれの電極もアイオノマーを含まない。
【0209】
膜−電極ユニットの作製: 電極を、各々、膜の一方の面に配置し、そして100〜180℃の範囲の温度でプレスした。
【0210】
分極測定: 測定を、アノードガスとして水素(24.1 L/h)およびカソードガスとして空気(99.3 L/h)を用いて、160℃の温度で、シングル燃料電池(single fuel cell)(活性表面積50cm)において行う。反応ガスは湿潤化されない。非−アイオノマー含有の電極および触媒の関連する少ない使用に起因して、0.6Vで達成される電池出力(cell power)は、約12mW/cmだけである。
【0211】
実施例2:
実施例2は、ホスホン酸含有膜および2つの電極からなる膜−電極ユニットの3つの分極曲線を示す。個々のコンポーネントの作製を下記に示す:
膜: 実施例1における記載を参照のこと。
【0212】
電極: 使用されるアノードおよびカソードは、各場合において1mg/cmのPt含有量を含む、市販のPTFE結合電極であり、炭素−支持されたPt触媒(Vulcan XC72において30%Pt)が触媒層において使用された。エタノール中5%ビニルホスホン酸の溶液を、0.5mg/cmのビニルホスホン酸ローディングまで、電極の特定の触媒層上へ、150℃でスプレーする。引き続いて電極を100℃で乾燥する。
【0213】
膜−電極ユニットの作製: 電極を、各々、膜の一方の面に配置し、そして100〜180℃の範囲の温度でプレスした。
【0214】
分極測定: 測定を、アノードガスとして水素(24.1 L/h)およびカソードガスとして空気(99.3 L/h)を用いて、シングル燃料電池(活性表面積50cm)において行う。反応ガスは湿潤化されない。実施例2における曲線Aは、160℃での分極曲線を示す。引き続いて、燃料電池を80℃へ冷却し、そして曲線Bを24時間後に記録した。引き続いて、燃料電池を再度160℃へ加熱し、そして曲線Cを更に24時間後に記録した。実施例2は、実施例1と比較して顕著なライン改善(line improvement)を示し、即ち、130mW/cmの出力が、160℃および0.6Vで達成される。80℃および0.6Vで、36mW/cmの電池出力が達成される。触媒層におけるアイオノマーの良好な結合の結果として、実施例2は、この様式で製造された膜−電極ユニットは温度サイクル安定(temperature cycle-stable)であることを明確にしている。この特性は、曲線AおよびCの比較によって明らかである。
【0215】
実施例3:
実施例3は、ホスホン酸含有膜と2つの電極からなる膜−電極ユニットの3つの分極曲線を示す。個々のコンポーネントの作製を下記に示す:
膜: 実施例1における記載を参照のこと。
【0216】
電極: 使用されるアノードおよびカソードは、各場合において1mg/cmのPt含有量を含む、市販のPTFE結合電極であり、炭素−支持されたPt触媒(Vulcan XC72において30%Pt)が触媒層において使用された。ポリビニルホスホン酸、1−プロパノールおよび水(重量比1:4:2)の溶液を、電極の特定の触媒層へ、ブラシを用いて室温で塗布する。触媒層のポリビニルホスホン酸(PVPA)含有量は、各場合において、2.4mg/cmである。その後、電極を100℃で乾燥する。
【0217】
ポリビニルスルホン酸を、アゾ開始剤を使用するフリーラジカル重合によって調製する。この調製において、規定量のビニルホスホン酸モノマー[好ましくは製造業者Clariant(純度min.90%)]を、1重量%のアゾ開始剤[好ましくは、Aldrich製の2,2−アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロリド]の添加で、半開放系(semi-open system)において、加熱しながら反応させる。混合物を、先ず、60℃の温度へ30分間、そして次いで80℃の温度へ更に30分間加熱する。この後、反応は完了しているべきであり、これは、泡形成(bubble formation)の非存在によって示される。フリーラジカル重合によって調製されたPVPAの分子量を、商業規格、好ましくはPSS(Mainz, Germany)製のPVPA(ポリビニルスルホン酸、製造業者のデータに基づいてMw=20000g/モル)ならびにNaNOが添加された水およびアセトニトリルの溶出液を用いてのゲル浸透クロマトグラフィーによって、測定した。個々の溶出容積について測定された強度を、プルランに基づく検量線(calibration curve)を参照して評価する。使用したユニットは、Bischoff製のポンプ、PSS (Mainz)製のSuprema 100カラム(1e3〜3e3のポアサイズ(pore sizes))およびShrodex RI-71赤外線検出器からなる。測定を、1ml/分の流量でc=3.5mg/lのサンプル濃度(注入容積100μl)、T=35℃のカラム温度で行った。この様式において、市販のPVPAの分子量は、Mw=33100g/モル(Mn=22550g/モル)であると測定され、そしてフリーラジカル重合によって調製されたPVPAのそれは、Mw=26600g/モル(Mn=16800g/モル)であると測定された。
【0218】
膜−電極ユニットの作製: 電極を、各々、膜の一方の面に配置し、そして100〜2180℃の範囲の温度でプレスした。
【0219】
分極測定: 測定を、アノードガスとして水素(24.1 L/h)およびカソードガスとして空気(99.3 L/h)を用いて、シングル燃料電池(活性表面積50cm)において行う。反応ガスは湿潤化されない。実施例3における曲線Dは、160℃での分極曲線を示す。引き続いて、燃料電池を80℃へ冷却し、そして曲線Eを24時間後に記録した。引き続いて、燃料電池を再度160℃へ加熱し、そして曲線Fを更に24時間後に記録した。実施例3は、実施例1と比較して顕著なライン改善を示し、即ち、120mW/cmの出力が、160℃および0.6Vで達成される。80℃および0.6Vで、36mW/cmの電池出力が達成される。触媒層におけるアイオノマーの良好な結合の結果として、実施例3は、この様式で製造された膜−電極ユニットは温度サイクル安定であることを明確にしている。この特性は、曲線DおよびFの比較によって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0220】
【図1】実施例1は、ホスホン酸含有膜および2つの電極からなる膜−電極ユニットの分極曲線(polarization curve)を示す。
【図2】実施例2は、ホスホン酸含有膜および2つの電極からなる膜−電極ユニットの3つの分極曲線を示す。
【図3】実施例3は、ホスホン酸含有膜および2つの電極からなる膜−電極ユニットの3つの分極曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒層でコーティングされたプロトン伝導性高分子膜であって、該高分子膜は、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得るポリマーを含み、該触媒層が、ホスホン酸基を含みそしてホスホン酸基を含むモノマーを重合することによって得られ得るアイオノマーを含むことを特徴とする、高分子膜。
【請求項2】
前記膜が、ホスホン酸基を含むポリマーを少なくとも7重量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の高分子膜。
【請求項3】
少なくとも1つの触媒層が、少なくとも3重量%のリンを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の高分子膜。
【請求項4】
前記ホスホン酸基を含むポリマーおよび/またはホスホン酸基を含むアイオノマーが、式
【化1】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化2】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化3】

[式中、
Aは、式 COOR2、CN、CONR22、OR2、および/またはR2の基であり、ここで、R2は、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZ2によって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
のホスホン酸基を含むモノマーを使用して調製されることを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項5】
前記ホスホン酸基を含むポリマーおよび/またはホスホン酸基を含むアイオノマーが、式
【化4】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数であり、
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化5】

[式中、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
および/または式
【化6】

[式中、
Aは、式 COOR、CN、CONR、OR、および/またはRの基であり、ここで、Rは、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZ2によって置換され得、
Rは、結合、二価のC1−C15−アルキレン基、二価のC1−C15−アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基)、または二価のC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、COOZ、−CN、NZによって置換され得、
Zは、各々独立して、水素、C1−C15−アルキル基、C1−C15−アルコキシ基、エチレンオキシ基またはC5−C20−アリールもしくは−ヘテロアリール基であり、ここで、上記の基は、その部分でハロゲン、−OH、−CNによって置換され得、そして
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の整数である]
のスルホン酸基を含むモノマーを使用して調製されることを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項6】
前記アイオノマーが、300〜100000g/モルの範囲の分子量を有することを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項7】
前記アイオノマーが、3〜10の範囲の多分散度M/Mを有することを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項8】
前記膜が、前記ホスホン酸基を含むポリマーとは異なる少なくとも1つのポリマー(B)を含むことを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項9】
前記ホスホン酸基を含むポリマーが、熱的、光化学的、化学的および/または電気化学的に架橋されることを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項10】
前記ホスホン酸基を含むポリマーが、架橋性モノマーを使用して調製されることを特徴とする、請求項9に記載の高分子膜。
【請求項11】
前記高分子膜が、20〜4000μmの範囲の厚みを有することを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項12】
前記触媒層が、1〜1000μmの範囲の厚みを有することを特徴とする、請求項8に記載の高分子膜。
【請求項13】
前記触媒層が、その活性粒子が1〜200nmの範囲のサイズを有する触媒を含むことを特徴とする、請求項12に記載の高分子膜。
【請求項14】
前記高分子膜が、0.1〜10mg/cmの触媒活性物質を含むことを特徴とする、前記請求項の1つに記載の高分子膜。
【請求項15】
前記触媒活性物質が、白金、パラジウム、金、ロジウム、イリジウムおよび/またはルテニウムを含む粒子を含むことを特徴とする、請求項14に記載の高分子膜。
【請求項16】
前記触媒が、炭素を含む粒子を含むことを特徴とする、請求項15に記載の高分子膜。
【請求項17】
以下の工程:
A)ホスホン酸基を含むモノマーを含む組成物を調製する工程、
B)工程A)に従う組成物を使用して層を支持体上に適用する工程、
C)工程B)に従って得られ得るフラット構造体に存在するホスホン酸基を含むモノマーを重合する工程、
D)工程B)および/または工程C)において形成された膜へ少なくとも1つの触媒層を適用する工程、
を包含する、請求項1〜16の1つに記載の高分子膜の製造方法。
【請求項18】
以下の工程:
I)ホスホン酸基を含むモノマーを含む液体で高分子フィルムを膨潤させる工程、
II)工程I)において高分子フィルム中へ導入されたホスホン酸基を含むモノマーの少なくとも一部を重合する工程、および
III)工程II)において形成された膜へ少なくとも1つの触媒層を適用する工程、
を包含する、請求項1〜16の1つに記載の高分子膜の製造方法。
【請求項19】
前記触媒層がパウダープロセス(powder process)によって適用されることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒層が、触媒懸濁液が使用されるプロセスによって適用されることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒懸濁液が、少なくとも1つの有機・無極性溶媒を含むことを特徴とする、請求項20の1つに記載の方法。
【請求項22】
触媒を含むコーティングが支持体に適用され、そして引き続いて、触媒を含みそして支持体上に存在する該コーティングが前記膜へ移されるプロセスによって、前記触媒層が工程D)において適用されることを特徴とする、請求項19〜21の1つに記載の方法。
【請求項23】
前記触媒を含むコーティングが、ヒート−プレッシング(heat-pressing)によって移されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記膜へ適用された触媒層が、ガス拡散層へ結合されることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜16の1以上に記載の少なくとも1つの膜を備える、膜−電極ユニット。
【請求項26】
請求項25に記載の1以上の膜−電極ユニットを備える、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504333(P2007−504333A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525730(P2006−525730)
【出願日】平成16年9月4日(2004.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009899
【国際公開番号】WO2005/023914
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(505118475)ペミアス ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】