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高分子試料分析装置
説明

高分子試料分析装置

【課題】高分子材料の光劣化に関する化学的知見を極く短時間で得られる高分子試料分析装置を提供する。
【解決手段】複数の気相成分を生成する気相成分生成手段2と、キャリヤガスを気相成分生成手段2に導入するキャリヤガス導入手段15と、該気相成分を個々の成分に分離する分離手段4と、分離された成分を検出する検出手段5とを備える。高分子試料に紫外線を照射する紫外線照射手段11と、雰囲気ガスを気相成分生成手段2に導入する雰囲気ガス導入手段16と、分離手段4に導入されるガスを、キャリヤガスと雰囲気ガスとに切替るガス切替手段17とを備える。雰囲気ガス導入手段16から導入されるガス雰囲気下、紫外線照射手段11により紫外線を照射して、該高分子試料を劣化分解させる。劣化分解後、ガス切替手段17により分離手段4に導入されるガスをキャリヤガスに切り替え、気相成分をキャリヤガスにより分離手段4に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック等の高分子材料について分析する高分子試料分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム、プラスチック等の高分子材料は、鉄鋼等の金属材料と並んで、現代社会で重要な役割を担っている。前記高分子材料は、例えば、各種フィルム、繊維、容器等の材料として生活に欠かせないものとなっている。
【0003】
ところで、前記高分子材料は、長期間に亘って使用すると、外的要因により、その物理・化学的特性が次第に劣化することが知られている。前記劣化の原因は、主として熱、光、機械的ストレス等であり、さらに生物や化学反応によるものである。このうち、前記光による劣化は、光のエネルギーによって高分子構造が開裂し、該開裂に伴って生じるラジカルが酸化連鎖反応を起こすことによるものと考えられている(例えば非特許文献1〜3参照)。
【0004】
従来、光による劣化の試験は、高分子材料を野外で実際の太陽光に曝したり、ウェザーメーターを用い、アーク灯により太陽光に近い光線を照射したりすることにより行われている。また、ウェザーメーターを用いる場合には、前記アーク灯の光線の照射と同時に、加湿する場合もある。
【0005】
しかしながら、高分子材料を野外に曝す場合には結果を得るまでに数ヶ月から数年を要し、ウェザーメーターの場合には大掛かりな装置と多大な費用とを必要とする上、結果を得るまでに数週間から数ヶ月を要するという不都合がある。また、前記試験により得られる結果は、試料表面の劣化状態を目視または顕微鏡下で観察するもの、或いは劣化後の引っ張り強度等の機械的特性に関するものであり、該高分子材料を構成する高分子自体または該高分子材料に含まれる酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の劣化の進行機構に関する化学的知見を得ることができないとの不都合がある。
【特許文献1】特開2000−35422号公報
【非特許文献1】ウルフラン・シュナーベル(Wolfram Schnable)著、相馬純吉訳、「高分子の劣化−原理とその応用−」、裳華房、1993年
【非特許文献2】井出文雄著、「特性別にわかる実用高分子材料」、工業調査会、2002年
【非特許文献3】N.Grassie編、"Developments in Polymer Degradation-7"、Elsevier Applied Science、1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、高分子材料の光による劣化に関する化学的知見を極く短時間で得ることができる高分子試料分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明は、複数の気相成分を生成する気相成分生成手段と、キャリヤガスを該気相成分生成手段に導入するキャリヤガス導入手段と、該気相成分を試料導入部を介して導入し、個々の成分に分離する分離手段と、該分離手段により分離された成分を検出する検出手段とを備える高分子試料分析装置において、該気相成分生成手段内で該高分子試料に紫外線を照射する紫外線照射手段と、所定の雰囲気ガスを該気相成分生成手段に導入する雰囲気ガス導入手段と、該分離手段に導入されるガスを、該キャリヤガスと該雰囲気ガスとに切り替えるガス切替手段とを備え、該雰囲気ガス導入手段から導入される所定のガス雰囲気下、該紫外線照射手段により紫外線を照射して該高分子試料を劣化分解させて複数の気相成分を生成すると共に、該高分子試料の劣化分解後に該ガス切替手段により該分離手段に導入されるガスを該雰囲気ガスから該キャリヤガスに切り替え、該気相成分を該キャリヤガスにより該分離手段に導入することを特徴とする。
【0008】
本発明の高分子試料分析装置では、まず、前記気相成分生成手段にプラスチック等の高分子材料からなる高分子試料を導入し、前記雰囲気ガス導入手段から導入される所定のガス雰囲気下、前記紫外線照射手段により紫外線を照射する。このようにすると、前記高分子試料が前記紫外線により劣化分解され、複数の気相成分を得ることができる。
【0009】
前記紫外線の照射は、室温で行ってもよいが、前記気相成分生成手段に加熱手段を設け、該加熱手段により加熱しながら行うことが好ましい。このようにするときには、前記加熱手段により加熱されることにより、前記高分子材料の表面が反応しやすくなり、前記劣化分解を促進することができる。
【0010】
前記雰囲気ガス導入手段から導入されるガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、酸素、空気等を用いることができ、加湿するようにしてもよい。前記雰囲気ガス導入手段から導入されるガスが加湿空気であるときには、前記紫外線の照射による劣化生成物に、空気に紫外線を照射して生成するオゾンや該空気中の水分が関与して生成した成分を含む複数の気相成分を得ることができる。
【0011】
本発明の高分子試料分析装置では、前記高分子試料の劣化分解が完了したならば、次に、前記ガス切替手段により前記分離手段に導入されるガスを前記雰囲気ガスからキャリヤガスに切り替える。前記分離手段に導入されるガスを前記雰囲気ガスからキャリヤガスに切り替えるには、前記高分子試料分析装置内の全てをキャリヤガスに切り替えてもよく、前記分離手段内のみをキャリヤガスに切り替えてもよい。そして、前記気相成分を前記キャリヤガスにより前記分離手段に導入する。前記分離手段は、例えばキャピラリーカラム等の分離カラムを備えており、前記複数の気相成分は該分離手段により個々の成分に分離される。
【0012】
次に、前記分離手段により分離された個々の成分は、前記検出手段により検出される。前記検出手段としては、例えば、質量分析計等を用いることができる。
【0013】
この結果、本発明の高分子試料分析装置によれば、数分から数時間という極めて短い時間で、前記高分子材料を構成する高分子自体または該高分子材料に含まれる酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を光により劣化させたときに、どのような成分が生成するかという化学的知見を得ることができ、該知見から劣化の進行機構等を推定することができる。
【0014】
本発明の高分子試料分析装置は、前記試料導入部から前記気相成分の一部を排出して、前記分離手段に導入される該気相成分の流量を調整する流量調整手段を備えることが好ましい。本発明の高分子試料分析装置は、前記流量調整手段により前記気相成分の流量を調整することにより、分析の必要感度に応じて適切な量の該気相成分を前記分離手段に導入することができる。
【0015】
また、本発明の高分子試料分析装置は、前記分離手段の前記試料導入部側で前記気相成分を濃縮する気相成分濃縮部と、該気相成分濃縮部で該気相成分を冷却する気相成分冷却手段とを備えることが好ましい。前記気相成分冷却手段によれば、前記気相成分生成手段で生成した複数の気相成分を前記試料導入部を介して前記分離手段に導入する際に、該分離手段の該試料導入部側で該気相成分を冷却して前記気相濃縮部に該気相成分を捕捉し、濃縮することができる。従って、前記気相成分に含まれる低沸点化合物が前記分離手段から溶出することを防止して、前記検出手段により該低沸点化合物を確実に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の高分子試料分析装置の構成を示す説明的断面図であり、図2乃至図4は加湿空気雰囲気下に紫外線を照射しつつ高分子試料を熱分解したときに生成した複数の気相成分のガスクロマトグラムであり、図5は図4に示すガスクロマトグラムの主なピークのマススペクトルであり、図6は紫外線の照射時間に対する気相成分の生成量の変化を示すグラフである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の高分子試料分析装置1は、プラスチック等の高分子材料からなる試料(以下、高分子試料と略記する)から複数の気相成分を生成する気相成分生成手段2と、キャリヤガスまたは所定の雰囲気ガスを気相成分生成手段2に導入するガス導入手段3と、該気相成分を導入して個々の成分に分離する分離手段4と、分離手段4により分離された成分を検出する検出手段5とを備えている。ガス導入手段3は、試料導入部6を介して分離手段4に接続されている。
【0018】
気相成分生成手段2は、ハウジング7内に配設された石英管8と、石英管8の外周側に配設された加熱用ヒーター9とを備えている。石英管8は、上端部から試料容器10が挿入可能とされており、下端部は試料導入部6に接続されている。このような気相成分生成手段2として、例えば、フロンティア・ラボ株式会社製縦型マイクロ電気炉型パイロライザー(商品名:PY−2020iD)を用いることができる。
【0019】
本実施形態の気相成分生成手段2は、さらに紫外線照射手段11を備えている。紫外線照射手段11は、重水素ランプ等の光源12と、光源12から放射される光のうち波長400nm以下の紫外線のみを選択的に透過させる光学フィルター13と、光学フィルター13に接続された光ファイバー14とを備えている。そして、紫外線照射手段11は、光ファイバー14の先端部14aが石英管8の上端部から挿入されて、試料容器10内の高分子試料に紫外線を照射するようになっている。光ファイバー14は外周面に設けられた樹脂被覆層(図示せず)により保護されているが、石英管8内に挿入される先端部14aは該樹脂被覆層が剥離されていて該樹脂被覆層に代えて石英ガラス等からなるガラス管等のガラス部材からなる被覆層(図示せず)を備えている。
【0020】
ガス導入手段3は、ヘリウム等のキャリヤガス源15と、ヘリウム、窒素、酸素、空気、加湿空気等の雰囲気ガス源16とを備えている。キャリヤガス源15と雰囲気ガス源16とは、それぞれキャリヤガス導管15aと、雰囲気ガス導管16bとを介してガス切替装置17に接続されており、ガス切替装置17は、ガス導管18を介して気相成分生成手段2に接続されている。ガス導管18は、気相成分生成手段2のハウジング7内で、石英管8の上方に開口している。
【0021】
分離手段4は、温度調整可能なオーブン19と、オーブン19内に配設されたキャピラリーカラム等の分離カラム20とを備えている。また、検出手段5は、四重極質量分析計等の検出器21を備えている。前記分離手段4と検出手段5とを備える装置として、例えば、ヒューレットパッカード社製GC/MSシステム(商品名:モデル5972GC/MSシステム)を用いることができる。
【0022】
試料導入部6は、上端部に石英管8の下端部が接続され、下端部に分離カラム20が接続される一方、上下両端部の間にスプリットベント管22を備えている。スプリットベント管22は、開閉弁22aを開弁して大気開放することにより石英管8から導入される気相成分の一部を排出して、分析の必要感度に応じて適切な量の前記気相成分を分離カラム20に導入する流量調整手段として作用する。
【0023】
分離カラム20の試料導入部6側には、外周側に気相成分濃縮部23が設けられており、分離カラム20が気相成分濃縮部23に挿通されている。気相成分濃縮部23には、冷媒として例えば液体窒素を噴射する冷媒噴射ノズル24が、挿通されている分離カラム20に直交する方向に取り付けられている。冷媒噴射ノズル24は、液体窒素導管25を介して液体窒素源26に接続されている。
【0024】
冷媒噴射ノズル24は、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分に液体窒素を噴射することにより、分離カラム20に導入された前記気相成分を該部分で冷却する気相成分冷却手段として作用する。前記気相成分は、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分で冷媒噴射ノズル24により冷却されることにより、該部分に捕捉され、濃縮される。前記気相成分濃縮部23、冷媒噴射ノズル24を備える装置として、例えば、フロンティア・ラボ株式会社製冷却トラップ装置(商品名:マイクロジェット・クライオトラップ装置)を用いることができる。
【0025】
尚、図1に示す高分子試料分析装置1では、雰囲気ガス源15を1つだけ示しているが、雰囲気ガス源15は、ヘリウム、窒素、酸素、空気等の雰囲気ガスのそれぞれに対応して複数設けられていてもよい。この場合、ガス切替装置17は、キャリアガスと、前記複数の雰囲気ガスとを切り替え、あるいは1つの雰囲気ガスと、他の雰囲気ガスとを切り替える。
【0026】
次に、ポリスチレンを前記高分子試料とした場合を例に、本実施形態の高分子試料分析装置1の作動について説明する。
【0027】
前記高分子試料は、例えば、カップ状の試料容器10の底部に、60μgのポリスチレンにより厚さ0.1mm以下の薄膜を形成することにより調製される。試料容器10としては、不活性化処理済みのステンレスからなるものを用いることができる。
【0028】
高分子試料分析装置1では、まず、ガス切替装置17により、気相成分生成手段2に導入されるガスを切り替え、雰囲気ガス源16から雰囲気ガス導管16a、ガス導管18を介して、気相成分生成手段2に雰囲気ガスとして、例えば加湿空気を導入する。そして、前記加湿空気雰囲気下に、前記ポリスチレンの薄膜が形成された試料容器10を、気相成分生成手段2に配設された石英管8の上端部から内部の所定位置に挿入する。
【0029】
次に、光ファイバー14の先端部14aを石英管8の上端部から内部に挿入し、試料容器10内の前記ポリスチレンに紫外線を照射しつつ、加熱用ヒーター9により該ポリスチレンを加熱する。前記加熱用ヒーター9は、室温から徐々に昇温して、例えば100℃程度の温度で前記ポリスチレンの加熱を行う。
【0030】
前記ポリスチレンは、前記紫外線を照射することにより劣化分解し、複数の気相成分が生成する。このとき、加熱用ヒーター9により前記のように加熱することにより、前記ポリスチレンの表面の活性エネルギーが大きくなり、劣化を促進することが可能になる。
【0031】
次に、前記気相成分は、試料導入部6を介して分離カラム20に導入される。このとき、高分子試料分析装置1では、スプリットベント管22の開閉弁22aを開弁する。開閉弁22aを開弁すると、スプリットベント管22が大気に開放される一方、分離カラム20は内径が小さいので流体抵抗となり、分離カラム20に導入される前記気相成分の流量を調整して、分析の必要感度に応じて適切な量とすることができる。尚、気相成分生成手段2で生成する気相成分の量それ自体が、分析の必要感度に応じて適切な量となっているときには、スプリットベント管22による流量調整は行わなくてもよい。
【0032】
また、高分子試料分析装置1では、前記気相成分が分離カラム20に導入される際に、冷媒噴射ノズル24から液体窒素を噴射することにより、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分で、該気相成分を冷却し、該部分に捕捉する。この結果、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分に、前記気相成分が捕集され、濃縮される。
【0033】
高分子試料分析装置1では、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分に、前記気相成分を捕捉することにより、該気相成分中に含まれている低沸点化合物が分離カラム5から溶出することを防止することができる。また、前記ポリスチレン等の高分子試料を加熱用ヒーター9により100℃程度の温度で加熱するときには、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分に、一旦全ての劣化分解生成物を捕集することができ、分離カラム20による分離精度を向上させることができる。
【0034】
尚、高分子試料分析装置1では、気相成分生成手段2における劣化分解生成物が高沸点化合物の場合には、冷媒噴射ノズル24から液体窒素を噴射することによる前記気相成分の捕捉を行わなくてもよい。
【0035】
次に、ガス切替装置17により、気相成分生成手段2に導入されるガスを切り替え、キャリヤガス源15からキャリヤガス導管16a、ガス導管18を介して、気相成分生成手段2にキャリヤガスとしてヘリウムを導入する。このとき、雰囲気ガス源16から供給される前記加湿空気が分離カラム20に流入すると、分離カラム20が劣化する虞があるので、該加湿空気をヘリウムで十分に置換する。
【0036】
次に、前記加湿空気がヘリウムにより十分に置換されたならば、紫外線の照射と、冷媒噴射ノズル24からの液体窒素の噴射を停止し、オーブン19の温度を上昇させる。この結果、分離カラム20の気相成分濃縮部23に挿通されている部分に濃縮された前記気相成分が該部分から脱着し、分離カラム20により個々の成分に分離される。そして、前記個々の成分が検出手段5で検出される。検出手段5における検出結果は、クロマトグラムまたはマススペクトルとして出力される。
【0037】
次に、前記ポリスチレンを、気相成分生成手段2で、加湿空気雰囲気下、100℃で紫外線を所定時間照射して劣化分解させた。前記紫外線の照射時間を15分としたときのクロマトグラムを図2に、紫外線の照射時間を30分としたときのクロマトグラムを図3に、紫外線の照射時間を18時間としたときのクロマトグラムを図4にそれぞれ示す。
【0038】
図2乃至図4から、紫外線の照射時間が長くなるに従って、多くの成分が生成し、しかも各成分のピークが明確になることが明らかである。例えば、図2のピークa,bは、図3ではさらに明確になり、また図3,4では図2で不明確であったピークcも明確になって来る。前記クロマトグラムにおける各ピークに対応する化合物は、各ピークのマススペクトルを標準物質のマススペクトルと比較する方法により同定することができる(例えば特許文献1参照)。
【0039】
次に、図4のピークa,b,cのマススペクトルを図5(a)、図5(b)、図5(c)に示す。図5(a)、図5(b)、図5(c)のマススペクトルを標準物質のマススペクトルと比較することにより、ピークaはベンズアルデヒド、ピークbはフェニルエタノール、ピークcはアセトフェノンと同定された。
【0040】
次に、図6に、紫外線の照射時間に対する前記ベンズアルデヒド、フェニルエタノール、アセトフェノンの生成量の変化を、気相成分生成手段2で生成した全気相成分に対する濃度(ppm)として示す。図6(a)から、ベンズアルデヒドの生成量は紫外線の照射開始から1時間で飽和に達し、アセトフェノンの生成量は紫外線の照射開始から2時間で飽和に達することが明らかである。また、図6(b)から、フェニルエタノールの生成量は紫外線の照射開始から3時間で飽和に達することが明らかである。
【0041】
従って、ポリスチレンの光による劣化試験は、前記ベンズアルデヒド、フェニルエタノール、アセトフェノンについては約3時間という非常に短い時間で結果を得ることができることが明らかである。
【0042】
前記ベンズアルデヒド、アセトフェノン、フェニルエタノールは、空気に紫外線を照射することにより生成したオゾンまたは空気中の水がポリスチレンの劣化分解生成物であるスチレンモノマー、スチレンダイマー等と同時にあるいは2次反応して生成したものと考えられる。次に前記反応を示す。
【0043】
【化1】



【0044】



【0045】



【0046】
上述のように、高分子試料を加湿空気雰囲気下に紫外線を照射して劣化分解させると、自然環境下での光劣化に近い反応が起きるので、自然環境下での光劣化について、多くの有用な化学的知見を得ることができる。
【0047】
尚、本実施形態では、ガス導入手段3にキャリヤガス源15とガス切替装置17とを設け、前記高分子試料の劣化分解の完了後、前記気相成分生成手段2に導入されるガスを前記雰囲気ガスから前記キャリアガスに切り替えて、高分子試料分析装置1内が全て該キャリアガスで置換されるようにしている。しかし、ガス切替装置17を、試料導入部6と分離カラム20との間に設け、分離カラム20内のみが前記キャリアガスで置換されるようにしてもよい。この場合、ガス切替装置17は、例えば3方弁により構成し、雰囲気ガス源16から気相成分生成手段2に導入される雰囲気ガスが分離カラム20内に導入されることを阻止する一方、ガス切替装置17に接続されたキャリアガス源15から供給されるキャリアガスが分離カラム20内に導入されるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の高分子試料分析装置の一構成例を示す説明的断面図。
【図2】図1の装置で加湿空気雰囲気下に紫外線を15分間照射しつつ高分子試料を劣化分解させたときに生成した複数の気相成分のガスクロマトグラム。
【図3】図1の装置で加湿空気雰囲気下に紫外線を30分間照射しつつ高分子試料を劣化分解させたときに生成した複数の気相成分のガスクロマトグラム。
【図4】図1の装置で加湿空気雰囲気下に紫外線を18時間照射しつつ高分子試料を劣化分解させたときに生成した複数の気相成分のガスクロマトグラム。
【図5】図4に示すガスクロマトグラムの主なピークのマススペクトル。
【図6】紫外線の照射時間に対する気相成分の生成量の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0049】
1…高分子試料分析装置、 2…気相成分生成手段、 4…分離手段、 5…検出手段、 6…試料導入部、 11…紫外線照射手段、 12…光源、 13…光学フィルター、 14…光ファイバー、 14a…光ファイバー先端部、 15…キャリヤガス導入手段、 16…雰囲気ガス導入手段、 17…ガス切替手段、 22…流量調整手段、 23…気相成分濃縮部、 24…気相成分冷却手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気相成分を生成する気相成分生成手段と、キャリヤガスを該気相成分生成手段に導入するキャリヤガス導入手段と、該気相成分を試料導入部を介して導入し、個々の成分に分離する分離手段と、該分離手段により分離された成分を検出する検出手段とを備える高分子試料分析装置において、
該気相成分生成手段内で該高分子試料に紫外線を照射する紫外線照射手段と、所定の雰囲気ガスを該気相成分生成手段に導入する雰囲気ガス導入手段と、該分離手段に導入されるガスを、該キャリヤガスと該雰囲気ガスとに切り替えるガス切替手段とを備え、
該雰囲気ガス導入手段から導入される所定のガス雰囲気下、該紫外線照射手段により紫外線を照射して該高分子試料を劣化分解させて複数の気相成分を生成すると共に、該高分子試料の劣化分解後に該ガス切替手段により該分離手段に導入されるガスを該雰囲気ガスから該キャリヤガスに切り替え、該気相成分を該キャリヤガスにより該分離手段に導入することを特徴とする高分子試料分析装置。
【請求項2】
前記試料導入部から前記気相成分の一部を排出して、前記分離手段に導入される該気相成分の流量を調整する流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1記載の高分子試料分析装置。
【請求項3】
前記分離手段の前記試料導入部側で前記気相成分を濃縮する気相成分濃縮部と、該気相成分濃縮部で該気相成分を冷却する気相成分冷却手段とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高分子試料分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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