説明

高分子過酸化物

【課題】溶解性が良く、重合開始剤及び顔料として有用な新規な高分子過酸化物、該高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤、該高分子過酸化物から得られる高分子ラジカルを顔料の表面にグラフト化させた顔料及び該顔料を含有する顔料組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で示される高分子過酸化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する高分子過酸化物、該高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤、該高分子過酸化物から得られる高分子ラジカルが表面にグラフト化された顔料及び該顔料を含有する顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
主鎖中にパーオキシド結合を持つ(高分子)過酸化物をカーボンブラックとともに加熱すると、(高分子)過酸化物の熱分解によって生成するラジカルがカーボンブラックの表面にグラフト化することが知られている。例えば、特許文献1には、パーオキシジカーボネート化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基が表面に結合したカーボンブラックが開示されており、特許文献2には、ケトンパーオキシド化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基が表面に結合したカーボンブラックが開示されており、特許文献3には、α―アルコキシヒドロ過酸化物が開示されており、特許文献4には、パーオキシエステル化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基が表面に結合したカーボンブラックが開示されており、特許文献5には、ジアルキルパーオキシド化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基が表面に結合したカーボンブラックが開示されており、非特許文献1及び特許文献6には、ジアシルパーオキシド化合物からなるラジカル発生剤の分解によって発生した官能基が表面に結合したカーボンブラックが開示されており、非特許文献2には、ポリアルキレンオキシド鎖を有するグラフト鎖が結合したグラフト化カーボンブラックが開示されている。
【0003】
また、特許文献7には、シランカップリング剤で表面処理されたコロイダルシリカを含有するハードコート用樹脂組成物が開示されているが、該樹脂組成物は、十分な分散性が得られていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−323179号公報
【特許文献2】特開平11−323180号公報
【特許文献3】特開平11−349559号公報
【特許文献4】特開平11−335586号公報
【特許文献5】特開平11−335587号公報
【特許文献6】特開平11−335601号公報
【特許文献7】特開2006−63244号公報
【非特許文献1】Journal of the Japan Society of Color-Material(SHIKIZAI),66(8),468-475(1993)
【非特許文献2】Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry、Vol.34、pp.1589-1595
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、溶解性が良く、重合開始剤及び顔料として有用な新規な高分子過酸化物、該高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤、該高分子過酸化物から得られる高分子ラジカルを顔料の表面にグラフト化させた顔料及び該顔料を含有する顔料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記一般式(I)で示される高分子過酸化物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
【化1】

(式中、A1は、高分子鎖であり、X1は、直接結合、−CO−又は−O−CO−であり、X2は、直接結合、−CO−又は−CO−O−であり、X3は、直接結合、−NH−、−O−CO−R6−、−S−CO−R6−又は−NH−CO−R6−を表し、X4は、直接結合、−NH−、−R7−CO−O−、−R7−CO−S−又は−R7−CO−NH−を表し、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキレン基、炭素原子数6〜30のアリーレン基、炭素原子数7〜30のアリーレンアルキレン基又は炭素原子数8〜30のアルキレンアリーレンアルキレン基を表し、R6及びR7のメチレン基は−O−又は−S−で中断されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、水酸基又はシアノ基で置換されていてもよく、Y1は、高分子鎖、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は下記一般式(II)で表わされる基である。)
【0008】
【化2】

(式中、A3は、高分子鎖又は炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜30の複素環基であり、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜30の複素環基であり、R1とR2は、結合して炭素原子数3〜6員の環を形成してもよい。)
【0009】
また、本発明は、上記高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明は、上記高分子過酸化物からなるラジカル発生剤の熱分解によって生成した高分子ラジカルを顔料の表面にグラフト化させたことを特徴とするグラフト化顔料を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
また、本発明は、上記グラフト化顔料、溶媒及びバインダー樹脂を含有する顔料組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高分子過酸化物は、高分子ポリマーからなるため、ラジカル重合により合成されうるポリマーと、これとは重合方法または重合条件の異なるポリマーとのブロック共重合体を得ることが可能となり、該高分子過酸化物から得られる高分子ラジカルが表面にグラフト化された顔料は分散性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の新規な高分子過酸化物、該高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤、該高分子過酸化物から得られる高分子ラジカルを顔料の表面にグラフト化させた顔料及び該顔料を含有する顔料組成物について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0014】
上記一般式(I)におけるA1及びY1、並びに上記一般式(II)におけるA3で表わされる高分子鎖としては、特に制限はないが、例えば、ポリオキシレン鎖、ポリメチレン鎖、ポリエステル鎖、ポリシロキサン鎖、ポリエーテル鎖や、ポリ(メタ)アクリレート鎖、ポリスチレン−酢酸ビニル鎖等のポリオレフィン鎖、ポリアミド鎖、ポリイミド鎖、ポリウレタン鎖及びこれらの組み合わせ等が挙げられ、X3は、直接結合、−NH−、−O−CO−R6−、−S−CO−R6−又は−NH−CO−R6−を表し、X4は、直接結合、−NH−、−R7−CO−O−、−R7−CO−S−又は−R7−CO−NH−を表し、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキレン基、炭素原子数6〜30のアリーレン基、炭素原子数7〜30のアリーレンアルキレン基又は炭素原子数8〜30のアルキレンアリーレンアルキレン基を表し、R6及びR7のメチレン基は−O−又は−S−で中断されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、水酸基又はシアノ基で置換されていてもよい。
【0015】
上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3で表わされる炭素原子数1〜24のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、テトライコシル等が挙げられ、上記一般式(II)におけるR1及びR2で表わされる炭素原子数1〜20のアルキル基としては、上記アルキル基のうち、規定の炭素原子数を満たす置換基が挙げられ、上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数6〜30のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられ、上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられ、上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数2〜30の複素環基としては、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。R1とR2が結合して形成する炭素原子数3〜6員の環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3で表される炭素原子数1〜24のアルキル基、上記一般式(I)におけるR1及びR2で表わされる炭素原子数1〜20のアルキル基、上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数6〜30のアリール基、上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数7〜30のアリールアルキル基及び上記一般式(I)におけるY1及び上記一般式(II)におけるA3、R1及びR2で表わされる炭素原子数2〜30の複素環基は、置換基を有してもよい。該置換基としては、以下のものが挙げられる。尚、R1、R2、Y1及びA3が、上記の炭素原子数1〜24のアルキル基等の炭素原子を含有する基であり、且つ、それらの基が、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めた全体の炭素原子数が、規定された範囲を満たすものとする。
例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、t−アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、t−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、t−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、s−ブチルチオ、t−ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、t−アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、t−ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、t−オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フェロセニル、ニッケロセニル、コバルトニル、フェロセンアルキル、フェロセンアルコキシ等のメタロセン基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、トリアルキルシリル基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、リン酸基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸性基は、無機塩基又は有機塩基と塩、錯体又は複合体を形成していてもよい。
【0017】
上記一般式(I)におけるR6及びR7で表わされる炭素原子数1〜18のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリメチレン、ブチレン、ブチリデン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、ヘキサデカメチレン、オクタデカメチレン等が挙げられ、上記一般式(I)におけるR6及びR7で表わされる炭素原子数6〜30のアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、フェナントレニレン等が挙げられ、上記一般式(I)におけるR6及びR7で表わされる炭素原子数7〜30のアリーレンアルキレン基としては、メチレンフェニル、エチレンフェニル等が挙げられ、上記一般式(I)におけるR6及びR7で表わされる炭素原子数8〜30のアルキレンアリーレンアルキレン基としては、1,4−ジメチレンフェニル、1,4−ジエチレンフェニル等が挙げられ、上記アルキレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレンアルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、水酸基又はシアノ基で置換されていてもよい。この場合、該当する炭素原子を有する置換基で置換された上記アルキレン基、アリーレンアルキレン基及びアルキレンアリーレンアルキレン基中のメチレン基は、炭素原子数が上記で規定された範囲を満たすものとする。
【0018】
上記一般式(I)で示される高分子過酸化物の中でも、A1がポリオキシレン鎖、ポリエステル鎖、ポリオレフィン鎖又はポリシロキサン鎖である化合物が、合成が容易で溶解性が高いため好ましく、下記一般式(III)で示される化合物が、これをグラフト化した顔料粒子の分散安定性がより向上するため、さらに好ましい。
【0019】
【化3】

(式中、R3は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、Y2は、R10−(O−R9t−(O−R8s−、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R10は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、R4、R5、R8及びR9のアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、s及びtは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、s+tの和は、2以上であり、m及びnは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、m+nの和は、2以上であり、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(I)と同じである。)
【0020】
また、上記一般式(III)で示される化合物において、−(O−R4n−、−(O−R5m−、−(O−R8s−及び−(O−R9t−で表されるユニットは、ランダム共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
【0021】
上記一般式(III)で示される化合物の中では、X1及びX2が−CO−であり、Y2がR10−(O−R9t−(O−R8s−である化合物が、分解温度が適当であるため好ましく、下記一般式(IV)で示される化合物が、原料の入手が容易で合成し易いためさらに好ましい。
【0022】
【化4】

(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R3、R4、R5、R8、R9、R10、m、n、s及びtは、上記一般式(III)と同じである。)
【0023】
上記一般式(III)中のR3及びY2、上記一般式(IV)中のR10で表される炭素原子数1〜24のアルキル基、上記一般式(III)中のY2で表される炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基としては、上記一般式(I)の説明で例示した基の中で、炭素原子数が所定の範囲を満たす基が挙げられる。
【0024】
上記一般式(III)及び上記一般式(IV)におけるR4、R5、R8、R9、R11及びR12で表わされる炭素原子数1〜4のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリメチレン、ブチレン、ブチリデン、テトラメチレン等が挙げられ、R4、R5、R8及びR9のアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、その置換基としては上記一般式(I)で例示された置換基が挙げられ、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよい。
【0025】
上記一般式(IV)で示される化合物の中では、R11及びR12がエチレン基である化合物が、原料の入手が容易であるため好ましい。
【0026】
上記一般式(I)で示される高分子過酸化物の中では、これをグラフト化した顔料粒子の分散性がより向上するという点から、下記一般式(V)で示される化合物を好ましく挙げることもできる。
【化5】

(式中、R13は、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR27−(O―R26b−(O−R25a−であり、R25及びR26は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R25及びR26におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R27は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、a及びbは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、a+bの和は、2以上であり、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、R14及びR15におけるアルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(I)と同じである。Y3は、下記一般式(VI)で表される置換基、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、j及びkは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、j+kの和は、2以上である。)
【0027】
【化6】

(式中、R16は、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR30−(O−R29d−(O−R28c−であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R28及びR29におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R30は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、c及びdは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、c+dの和は、2以上であり、R17及びR18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、R17及びR18におけるアルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じであり、p及びqは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、p+qの和は、2以上である。)
【0028】
上記一般式(V)で示される化合物の中では、X1及びX2が−CO−であり、Y3が上記一般式(VI)で表される置換基である化合物が、分解温度が適当であるため好ましく、下記一般式(VII)で示される化合物が、原料の入手が容易で合成し易いためさらに好ましい。
【化7】

(式中、R19及びR20は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R13、R14、R15、j及びkは、上記一般式(V)と同じであり、R16、R17、R18、p及びqは、上記一般式(VI)と同じである。)
【0029】
上記一般式(V)中のR13及びY3、上記一般式(VI)中のR16、R27及びR30で表される炭素原子数1〜24のアルキル基、上記一般式(V)中のR14及びR15、上記一般式(VI)中のR17及びR18で表わされる炭素原子数1〜17のアルキレン基、上記一般式(V)中のR25及びR26、上記一般式(VI)中のR28及びR29、上記一般式(VII)中のR19及びR20で表される炭素原子数1〜4のアルキレン基、上記一般式(V)中のY3で表される炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基、上記一般式(V)中のR01及びR02で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、上記一般式(V)中のR01及びR02で表される炭素原子数2〜10のアルケニル基としては、上記一般式(I)等の説明で例示した基の中で、炭素原子数が所定の範囲を満たす基が挙げられる。
【0030】
上記一般式(I)で示される高分子過酸化物の中では、これをグラフト化した顔料粒子の分散性がより向上するという点から、下記一般式(VIII)で示される高分子過酸化物を好ましく挙げることもできる。
【化8】

(式中、R31は、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR36−(O−R35g−(O−R34h−であり、R34及びR35は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R34及びR35におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R36は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、g及びhは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、g+fの和は、2以上であり、Y4は、下記一般式(IX)で表される置換基、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、fは、2〜100の数であり、R32は、環状カルボン酸無水物又はジカルボン酸の残基を表わし、R33は、環状エーテル又はジオール化合物の残基を表し、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(III)と同じである。上記アルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じである。)
【0031】
【化9】

(式中、R37は、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR42−(O−R41v−(O−R40r−であり、R40及びR41は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R40及びR41におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R42は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、r及びvは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、r+vの和は、2以上であり、eは、2〜100の数であり、R38は、環状カルボン酸無水物又はジカルボン酸の残基を表わし、R39は、環状エーテル又はジオール化合物の残基を表し、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じである。)
【0032】
上記一般式(I)で示される高分子過酸化物において、上記の好ましい形態以外の化合物としては、例えば、下記一般式(X)、又は(XII)で示される化合物を挙げることができる。
【化10】

(式中、R43は、炭素原子数1〜24のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、Y5は、下記一般式(XI)で表される置換基、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、iは、2〜100の数であり、R44は、環状エーテル又はジオール化合物の残基を表し、R45は、環状カルボン酸無水物又はジカルボン酸の残基を表わし、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(III)と同じである。)
【0033】
【化11】

(式中、R46は、炭素原子数1〜24のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、uは、2〜100の数であり、R47は、環状エーテル又はジオール化合物の残基を表し、R48は、環状カルボン酸無水物又はジカルボン酸の残基を表わす。)
【0034】
【化12】

(式中、R49は、炭素原子数1〜24のアルキル基であり、該アルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R50及びR51は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、R50及びR51におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、w及びxは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、w+xの和は、2以上であり、Y6は、下記一般式(XIII)で表される置換基、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(III)と同じである。上記アルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じである。)
【0035】
【化13】

(式中、R52は、炭素原子数1〜24のアルキル基であり、該アルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R53及びR54は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、y及びzは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、y+zの和は、2以上であり、上記アルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じである。)
【0036】
上記一般式(VIII)中のR31、上記一般式(VIII)中のR36、上記一般式(IX)中のR37及びR42、上記一般式(X)中のR43、上記一般式(XI)中のR46、上記一般式(XII)中のR49、上記一般式(XIII)中のR52で表される炭素原子数1〜24のアルキル基、上記一般式(VIII)中のR34及びR35、上記一般式(IX)中のR40及びR41で表される炭素原子数1〜4のアルキレン基、上記一般式(XII)中のR50及びR51、上記一般式(XIII)中のR53及びR54で表される炭素原子数1〜17のアルキレン基、上記一般式(VIII)中のY4、上記一般式(X)中のY5、上記一般式(XII)中のY6で表される炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基、上記式中のメチレン基中の水素原子を置換してもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、上記一般式(I)等の説明で例示した基の中で、炭素原子数が所定の範囲を満たす基が挙げられる。
【0037】
上記一般式(VIII)中のR32、上記一般式(IX)中のR38、上記一般式(X)中のR45及び上記一般式(XI)中のR48で表される残基を導入するための環状カルボン酸無水物としては、コハク酸無水物、フタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、リンゴ酸無水物、O−アセチル−リンゴ酸無水物、1,2−ナフタル酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、3−メチルフタル酸無水物、1,8−ナフタル酸無水物、4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、デシルコハク酸無水物、ジグリコール酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、ヘット酸無水物、イタコン酸無水物、N−メチルイサト酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5,6−ジヒドロ−1,4−ジチイン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、cis−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられ、上記一般式(VIII)中のR32、上記一般式(IX)中のR38、上記一般式(X)中のR45及び上記一般式(XI)中のR48で表される残基を導入するためのジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1H−イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、2,2‘−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,5−チオフェンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、アセトンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、アントラキノン−2,3−ジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ベンゾフェノン−2,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、1,8−アントラセンジカルボン酸、2−ブテン−1,4−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(VIII)中のR33、上記一般式(IX)中のR39、上記一般式(X)中のR44及び上記一般式(XI)中のR47で表される残基を導入するための環状エーテル類としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシドール、テトラヒドロフラン、2,3−エポキシブタン、イソブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(クロロメチル)−3−メチルオキセタン、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンメタノール、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4−エポキシシクロヘキサン、2−メチル−1,4−エポキシシクロヘキサン、2−オキサビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラヒドロピラン、2−フェノキシテトラヒドロピラン、2−ビニルオキシテトラヒドロピラン、オキセパン等が挙げられ、上記一般式(VIII)中のR33、上記一般式(IX)中のR39、上記一般式(X)中のR44及び上記一般式(XI)中のR47で表される残基を導入するためのジオール類としては、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,6−オクタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−ベンジルオキシ−1,2−プロパンジオール、1−フェニルエタン−1,2−ジオール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、4−ベンジルオキシ−1,2−ブタンジオール、1,1,2−トリフェニル−1,2−エタンジオール、3−t−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−シクロドデカンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2−ジオクチルー1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジイソアミルー1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2−(2,2−ジエトキシエチル)−1,3−プロパンジオール、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−フェニル−1,3−プロパンジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオール、3,7−ジチア−1,9−ノナンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メトキシ−1,2−プロパンジオール、3−モルホリノ−1,2−プロパンジオール、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0039】
以上説明した本発明の一般式(I)で示される高分子過酸化物としては、鎖状重合体の一方の末端に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基等の官能基を有する化合物と過酸化物とを反応させて得られる構造を有する高分子過酸化物、あるいは鎖状重合体の一方の末端に上記官能基を有する化合物を原料として得られる高分子過酸化物等の従来公知の方法により合成される高分子過酸化物が挙げられる。
【0040】
上記一方の末端に官能基を有する鎖状重合体(A)と、この官能基と反応し結合しうる官能基を有する過酸化物(B)とを結合させて得られる高分子過酸化物は、一方の末端に官能基を有する鎖状重合体(A)0.5〜2.5等量と過酸化物(B)1等量とを反応させることにより得られる。上記一方の末端に官能基を有する鎖状重合体(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、合計して上記の割合を満たすように選択される。
【0041】
上記一方の末端に官能基を有する鎖状重合体(A)としては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体とモノアルコールとの縮合物、一方の末端が水酸基であるポリエステル、一方の末端に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーの単量体又は共重合体、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂、末端に水酸基を有する熱硬化性樹脂等が挙げられ、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはポリプロピレングリコールの共重合体とモノアルコールとの縮合物;上記一方の末端が水酸基であるポリエステル、一方の末端に水酸基を有するエチレン性不飽和モノマーの単量体又は共重合体、末端に水酸基を有する熱可塑性樹脂、末端に水酸基を有する熱硬化性樹脂等の水酸基を酸化して得られる末端にカルボキシル基を有する化合物等が、顔料にグラフト化したときに良好な分散性を与えるので好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ビニルトルエンアクリレートポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体、スチレンアクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ブチロラクトン、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸共重合体等の合成高分子材料が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0042】
上記過酸化物(B)としては特に限定されず、公知の過酸化物を用いることができるが、例えば、ジアシルパーオキシド、ヒドロパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、パーオキシジカーボネート、ケトンパーオキシド、パーオキシエステル等を挙げることができる。
【0043】
本発明の高分子過酸化物を得る反応は常法に従って行なうことができるが、好ましくは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下、−30〜50℃で30分間〜10時間反応させる。
【0044】
本発明の高分子過酸化物を得る反応には、必要に応じて適宜溶媒を用いることができる。該溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールメチルアセテート等のエーテルエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。
【0045】
本発明の高分子過酸化物を得る反応には、必要に応じて縮合剤を加えてもよい。該縮合剤としては、特に限定されず従来エステル化反応に用いられているものを用いることができ、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類;2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等のアリールスルホニルクロリド類;2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルイミダゾリド、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルトリアゾリド等のアリールスルホンアミド類;アゾジカルボン酸エステル;ハロゲン化有機スルホニル;ジフェニルホスホリルアジド、ジエトキシホスホニルクロリド、ジエトキシホスホニルアジド、無水プロピルホスホン酸、ジフェニルホスホニルクロリド;マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−t−ブトキシド等の金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物;リチウムアミド等のアルカリ金属アミド;炭酸カリウム;塩化亜鉛、三塩化アルミニウム、オキシ塩化リン、テトラメチルアンモニウムクロリド、濃硫酸、五酸価ニリン、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリド、塩基性のイオン交換樹脂等が挙げられる。また、縮合助剤として、トリエチルアミン、ピリジン、ベンジルアミン、ベンジルメチルアミン、γ−ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、トリブチルアミン、4−ピペリジノピリジン等の有機塩基を用いることもできる。
【0046】
本発明の高分子過酸化物は、以下に説明する重合開始剤や架橋剤、表面修飾剤、顔料分散剤の原材料として好ましく用いられる他、過酸化物による公知の反応、例えば、ハロゲンイオンや硫黄化合物、酸素化合物、リン化合物、窒素化合物、不飽和化合物、芳香族化合物、グリニヤ試剤、塩基、カルボニル化合物、金属イオン等を用いた反応に用いることができる。
【0047】
本発明の重合開始剤は、本発明の高分子過酸化物を、通常1〜100質量%、好ましくは90〜100質量%含有してなり、例えば、エチレン性不飽和モノマーを重合或いは共重合させることができる。上記エチレン性不飽和モノマーとしては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等の不飽和脂肪族炭化水素;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸、フマル酸、ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アリル酢酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・マレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレートあるいは1個のカルボキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能(メタ)アクリレート等の不飽和多塩基酸;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、下記化合物No.1〜No.4、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸N−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の不飽和一塩基酸及び多価アルコール又は多価フェノールのエステル;(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウム等の不飽和多塩基酸の金属塩;マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、無水メチルハイミック酸等の不飽和多塩基酸の酸無水物;(メタ)アクリルアミド、メチレンビス−(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド等の不飽和一塩基酸及び多価アミンのアミド;アクロレイン等の不飽和アルデヒド;(メタ)アクリロニトリル、シアン化アリル等の不飽和ニトリル;スチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ビニル安息香酸、ビニルフェノール、ビニルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸等の不飽和芳香族化合物;メチルビニルケトン等の不飽和ケトン;ビニルアミン、アリルアミン、N−ビニルピロリドン、ビニルピペリジン等の不飽和アミン化合物;アリルアルコール、クロチルアルコール等のビニルアルコール;エチルビニルエーテル、N−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;ビニルチオエーテル、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾリン、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、水酸基含有ビニルモノマー及びポリイソシアネート化合物のビニルウレタン化合物、水酸基含有ビニルモノマー及びポリエポキシ化合物のビニルエポキシ化合物等が挙げられる。
【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
上記の高分子過酸化物を重合開始剤として用いてエチレン性不飽和モノマーを重合或いは共重合する方法としては、例えば溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。
【0053】
上記重合又は共重合は、不活性ガス雰囲気下、20〜150℃で30分間〜20時間で行なうのが好ましく、さらに必要に応じて触媒、重合禁止剤、連鎖移動剤、溶媒等を用いることができる。
【0054】
本発明の高分子過酸化物の使用量は、使用するエチレン性不飽和モノマーの種類によっても異なるが、エチレン性不飽和モノマー1モルに対して通常0.1〜100モル%、好ましくは1.0〜10モル%である。本発明の高分子過酸化物は、単独又は分解温度の近似する複数種を用いることができる。
【0055】
本発明の重合開始剤には、本発明の高分子過酸化物の効果を損なわない範囲で、水、可塑剤、有機溶剤、炭化水素、芳香族炭化水素、不活性固体、充填剤、シリコーンオイル等を添加してもよい。
【0056】
本発明のグラフト化顔料は、本発明の高分子過酸化物を顔料の表面にグラフト化させたものであり、その製造方法としては、顔料表面に存在する非局在化したπ電子を利用してラジカル発生剤を化学的に結合すればよく、具体的には、高分子過酸化物からなるラジカル発生剤の熱分解によって生成した高分子ラジカルを従来公知の顔料の表面に化学結合(グラフト化)させる方法が挙げられる。ここで、「グラフト化」とは、顔料のような基質に対する重合体の不可逆的な付加のことを言う。
【0057】
上記の高分子過酸化物からなるラジカル発生剤の熱分解によって生成した高分子ラジカルを従来公知の顔料の表面にグラフト化させる方法において、グラフト化反応は、不活性ガス雰囲気下、適当な溶媒中、40〜150℃で30分間〜48時間で行なうのが好ましい。
【0058】
上記グラフト化反応において、高分子過酸化物の使用量は、顔料100質量部に対し、1〜1000質量部であるのが好ましく、10〜100質量部であるのがより好ましい。
上記高分子過酸化物の使用量が1質量部未満であれば、重合反応の進行が遅く、1000質量部超であれば、重合度が充分に増加しない。
【0059】
上記公知の顔料としては、例えば、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、過酸化物、ジ過酸化物、キサンテン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、クマリン化合物、フタロシアニン化合物、イソインドリノン化合物、イソインドリン化合物、キナクリドン化合物、アンタンスロン化合物、ペリノン化合物、ペリレン化合物、ジケトピロロピロール化合物、チオインジゴ化合物、ジオキサジン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノフタロン化合物、ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法、サーマル法によって得られるカーボンブラック、あるいはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;前記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;疎水性樹脂;酸化クロム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、あるいは複数を混合して用いることができる。
【0060】
上記公知の顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロ−1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ−ン7、10、36;ピグメントブル−15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0061】
本発明のグラフト化顔料は、平均粒子径が30〜300nmであるのが、添加量が少量で済み、分散性が高いので好ましい。グラフト化顔料を分散または粉砕する方法としては、乳鉢、ビーズミル、プラストミル、ボールミル、振動ボールミル、ローラーミル、ロッドミル、チューブミル、コニカルミル、ハイスイングボールミル、ピン型ミル、ハンマーミル、ナイフハンマーミル、アトリションミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、スパイラルジェットミル、ジェットマイザー、マイクロナイザー、ナノマイザー、マジャックミル、マイクロアトマイザー、ミクロンミル、ロータリーカッター、衝撃粉砕型ミル、圧縮せん断型ミル、ヘンシェルミキサー等を用いる方法が挙げられる。
【0062】
本発明のグラフト化顔料は、カラーフィルター用レジストインキ、印刷インキ等のインキ、塗料、化粧品、接着剤、導電性付与剤、導電紙、樹脂の顔料、電子写真材料、充填剤、補強剤、コーティング材料、電池材料、電極材料、電子材料、静電気防止材料、電磁波シールド材料、ケーブル半導電体、面状発熱体、吸着剤、触媒、プラスチック又はゴムの改質剤、潤滑剤、非線形光学材料、繊維、カーボンナノチューブ、メッキ、各種記録媒体、封止剤等の広範な用途に使用することができる。
【0063】
本発明のグラフト化顔料は、本発明のグラフト化顔料及びバインダー樹脂を、溶媒に分散させて、顔料組成物として用いることができる。
本発明の顔料組成物において、上記グラフト化顔料の含有量は、顔料組成物に占める全固形分中、10〜100質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。
上記グラフト化顔料の含有量が10質量%未満であると、この顔料を含有する配合物を作製する際、配合物中の顔料濃度を増加することができない。
また、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、表面張力調整剤、増粘剤、チクソ性付与剤、レベリング剤、消泡剤、密着性付与剤、キレート剤、保湿剤、浸透剤、防黴剤、防錆剤、防腐剤、乾燥防止剤、速乾剤、定着剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、滑剤、加工助剤、アンチブロッキング剤、電解質、触媒、分散剤、グラフト化されていない公知の顔料等を併用することができる。
【0064】
上記溶媒としては、通常、前記の各成分を溶解または分散しえる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、上記高分子過酸化物を得る反応における溶媒として例示したものを用いることができ、これらの溶媒は1種又は2種以上の混合溶媒として使用することができる。本発明の顔料組成物において、上記溶媒の含有量は、顔料組成物に占める全固形分が0.1〜30質量%であるように調製するとよい。
【0065】
上記バインダー樹脂としては、特に制限されず、インキ、塗料、コーティング材料、ソルダーレジスト等に通常用いられるバインダーを用いることができるが、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、アルカリ可溶性樹脂、アクリル樹脂、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、石油樹脂、マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、スチレン共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル等を用いることができる。
本発明の顔料組成物において、上記バインダー樹脂の含有量は、顔料組成物に占める全固形分中、1〜70質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0066】
本発明の顔料組成物には、光重合開始剤を用いることができる。
【0067】
上記光重合開始剤としては、従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルシクロヘキサン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、1−ベンジル−1−ジメチルアミノ−1−(4’−モルホリノベンゾイル)プロパン、2−モルホリル−2−(4’−メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、チオキサントン、1−クロル−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチルアントラキノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、ベンゾインブチルエーテル、2−ヒドロキシ−2−ベンゾイルプロパン、2−ヒドロキシ−2−(4’−イソプロピル)ベンゾイルプロパン、4−ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4−フェノキシベンゾイルジクロロメタン、ベンゾイル蟻酸メチル、1,7−ビス(9’−アクリジニル)ヘプタン、9−n−ブチル−3,6−ビス(2’−モルホリノイソブチロイル)カルバゾール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ナフチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、並びに特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特開2005−97141号公報、特表2006−516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報に記載の化合物等が挙げられる。これらの中でも、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
【0068】
【化18】

(式中、X71は、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、X72は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又は下記一般式(B)で表される置換基を表し、R71、R72及びR73は、それぞれ独立に、R、OR、COR、SR、CONRR’又はCNを表し、R及びR’は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は複素環基を表し、これらはハロゲン原子及び/又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアリールアルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合又はエステル結合により中断されていてもよく、また、R及びR’は一緒になって環を形成していてもよく、gは0〜4の整数であり、gが2以上の時、複数のX71は異なる基でもよい。)
【0069】
【化19】

(式中、環Mはシクロアルカン環、芳香環又は複素環を表し、X73はハロゲン原子又はアルキル基を表し、Y71は酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、Z71は炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、hは0〜4の整数であり、hが2以上の時、複数のX73は異なる基でもよい。)
【0070】
本発明の顔料組成物には、さらにエチレン性不飽和モノマー、連鎖移動剤、界面活性剤等を併用することができる。
【0071】
上記エチレン性不飽和結合モノマーとしては、上記高分子過酸化物を重合開始剤として用いる重合又は共重合におけるエチレン性不飽和モノマーとして例示したものが挙げられる。
【0072】
上記連鎖移動剤としては、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4−メチルチオ)フェニルエーテル、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール、2−メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物が挙げられる。
【0073】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0074】
本発明の顔料組成物には、さらに熱可塑性有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該熱可塑性有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−メチルメタクリレート共重合体、ポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の顔料組成物には、必要に応じて、アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合抑制剤;触媒;滑剤;安定剤;難燃剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;分散剤;レベリング剤;シランカップリング剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0076】
本発明の顔料樹脂組成物は、スピンコーター、スリットコーター、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ガラス、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用される。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【実施例】
【0077】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、下記実施例等において、「%」は、質量%を意味する。
製造例1〜3は、表面修飾顔料1〜3の合成を示し、実施例1−1及び1−2は、高分子過酸化物1及び2の合成を示し、実施例2は、高分子過酸化物1を重合開始剤として用いたラジカル重合反応を示し、実施例3−1〜3−10は、グラフト化顔料1〜10の合成を示し、比較例3−1〜3−3は、比較グラフト化顔料11〜13の合成を示し、実施例4−1〜4−10は、顔料組成物No.1〜No.10の調製を示し、比較例4−1〜4−5は、比較顔料組成物No.11〜No.15の調製を示し、実施例5−1〜5−7は、実施例3−1、3−4及び3−6〜3−10で得られたグラフト化顔料1、4及び6〜11を含有するハードコート剤及びハードコートフィルムの製造を示し、実施例6−1〜6−7は、実施例3−1、3−4及び3−6〜3−10で得られたグラフト化顔料1、4及び6〜11を含有する水性塗料組成物の調製を示し、実施例7−1及び7−2は、実施例3−8及び3−9で得られたグラフト化顔料8及び9を含有するアルカリ現像性樹脂組成物及びアルカリ現像性感光性樹脂組成物の調製を示す。
【0078】
〔製造例1〕表面修飾顔料1の合成
イソプロパノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業社製;粒径20nm、固形分30%、水分0.5%)80g、ビニルトリメトキシシラン4.8gイソプロパノール40g及びイオン交換水5gを混合し、1%HCl水溶液3.6gを加え、50℃で8時間撹拌し、溶媒を留去して、表面にビニル基を有するシリカ微粒子として表面修飾顔料1を得た。
【0079】
〔製造例2〕表面修飾顔料2の合成
メタノール分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業社製;粒径20nm、固形分30%、水分0.5%)80g、γ―メタクリロキシプロプルトリメトキシシラン8g、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.8g、イソプロパノール40g及びイオン交換水5gを混合し、1%NaCl水溶液2gを加え、50℃で8時間撹拌し、溶媒を留去して、表面にメタクリル基を有するシリカ微粒子として表面修飾顔料2を得た。
【0080】
〔製造例3〕表面修飾顔料3の合成
P−25(日本エアロジル社製;一次平均粒子系10nm)24g及びt−ブチルアルコール140gをビーズミルで30分間分散した。さらにビニルトリメトキシシラン4.8g、イオン交換水5g及び1%HCl水溶液5gを加え、50℃で8時間撹拌し、溶媒を留去して、表面にビニル基を有するチタニア微粒子として表面修飾顔料3を得た。
【0081】
〔実施例1−1〕高分子過酸化物1(上記一般式(III)で示される化合物)の合成
<ステップ1>DMAP塩酸塩の合成
ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.88g(15.4mmol)を1,4−ジオキサン20.0gに溶解し、窒素雰囲気下、室温で塩化水素の1,4−ジオキサン溶液(0.14g/g)4.10gを室温に保ちながら滴下した。析出した白色固体をろ別し、1,4−ジオキサン及びテトラヒドロフランで洗浄後、乾燥を経て、目的物であるDMAP塩酸塩2.03gを得た(収率83%)。
【0082】
<ステップ2>高分子過酸化物1の合成
35℃に保持しながら、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルとポリプロピレングリコールモノメチルエーテルの7/3共重合体(分子量1764、水酸基価31.8mgKOH/g)18.0gを1,4−ジオキサン13.0gに溶解し、窒素雰囲気下でパーロイルSA(日本油脂社製ジアシルパーオキシド)1.25g及びDMAP0.0373gを加えて溶解させた。続いて、実施例1のステップ1で得られたDMAP塩酸塩0.0360gを加えた後、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.25g及び1,4−ジオキサン0.5gを35℃で滴下して、8時間撹拌を行なった。1,4−ジオキサン10mlを加え、析出した白色固体をろ別し、5℃に冷却したn−ヘキサン200gに滴下した。下層を取り出し、脱溶媒し、目的物である高分子過酸化物1の15.97g(収率84%)を得た。
【0083】
〔実施例1−2〕高分子過酸化物2(上記一般式(V)で示される化合物)の合成
公知の方法により合成した数平均分子量3000、重量平均分子量4200のポリ−ε−カプロラクトン17.8gを1,4−ジオキサン16.2gに溶解し、窒素雰囲気下でパーロイルSA(日本油脂製)1.25g及びDMAP0.0373gを加え溶解させた。続いて、実施例1のステップ1で得られたDMAP塩酸塩0.0360gを加えた後、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.25g及び1,4−ジオキサン0.5gを35℃以下で滴下し8時間撹拌を行なった。1,4−ジオキサン13mlを加え、析出した白色固体をろ別し、5℃に冷却したn−ヘキサン200gに滴下して再沈殿を行なった。固体をろ別し、乾燥を経て、目的物である高分子過酸化物2の16.6g(収率88%)を得た。
【0084】
得られた高分子過酸化物1〜2の同定結果を〔表1〕に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
〔実施例2〕高分子過酸化物を重合開始剤として用いたラジカル重合反応
実施例1で得られた高分子過酸化物1の19g及びメタクリル酸メチル40g(0.400mol)をトルエン80gに溶解し、窒素雰囲気下80℃で8時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液をn−ヘキサン400mlに滴下して再沈殿を行なった。ろ過、乾燥を経て、ブロックポリマー(Mn=13000)55gを得た。
【0087】
〔実施例3−1〜3−10(グラフト化顔料1〜10の合成)及び比較例3−1〜3−3(比較グラフト化顔料11〜13の合成)〕
〔表2〕記載の配合に従い、表面修飾顔料又は公知の顔料24.0g、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート90.0g及び高分子過酸化物を仕込み、窒素雰囲気下、74〜77℃で8時間撹拌し、目的物であるグラフト化顔料1〜10及び比較グラフト化顔料11〜13のプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート溶液をそれぞれ得た。
【0088】
【表2】

【0089】
【化20】

【0090】
〔実施例4−1〜4−10〕顔料組成物No.1〜No.10の調製
〔表3〕記載の配合に従い、バインダー樹脂としてエスレックP SE−0020(積水化学工業社製スチレン・アクリル共重合樹脂)の83.5g及び実施例3−1〜3−10で得られたグラフト化顔料1〜10のプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート溶液416.5gを混合し、得られたスラリーをビーズミルで分散することにより、顔料組成物No.1〜No.10をそれぞれ得た。
【0091】
〔比較例4−1〜4−5〕比較顔料組成物No.11〜No.15の調製
グラフト化顔料に替えて、〔表3〕記載の表面修飾顔料又は比較グラフト化顔料11〜13を用いた以外は実施例4−1〜4−10と同様にして、比較顔料組成物No.11〜No.15を調製した。
【0092】
上記実施例4−1〜4−10で調製した顔料組成物No.1〜No.10及び比較例4−1〜4−5で調製した比較顔料組成物No.11〜No.15の評価を、目視により分散性を観察することにより行なった。評価は、均一に分散しているものを○、凝集がおこっているものを×とした。結果を〔表3〕に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
〔実施例5−1〜5−7(実施例3−1、3−4及び3−6〜3−10で得られたグラフト化顔料1、4及び6〜10を含有するハードコート剤及びハードコートフィルムの製造)〕
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光重合開始剤)3.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル3.0gに溶解し、アロニックスM−400(東亞合成社製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)21g、ビスコート#230(大阪有機化学工業社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート)9.0g、グラフト化顔料7.0g及びプロピレングリコールメチルアセテート71gを加えて混合し、ハードコート剤をそれぞれ得た。得られたハードコート剤を、膜厚100μmのA−4300(東洋紡社製易接着処理ポリエステルフィルム)に、バーコーター#14により塗布した後、80℃で1分間乾燥させた。その後、空気雰囲気下で高圧水銀灯にて紫外線を300mJ照射し、硬化膜厚8μmのハードコートフィルムをそれぞれ得た。
【0095】
〔実施例6−1〜6−7(実施例3−1、3−4及び3−6〜3−10で得られたグラフト化顔料1、4及び6〜10を含有する水性塗料組成物の調製)〕
水道水25g、アデカネートB−940(ADEKA社製消泡剤)0.8g、アデカコールW−304(ADEKA社製分散剤)0.4g及びグラフト化顔料100gをボールミルで15時間混合し、顔料ペーストを得た。得られた顔料ペースト50g、スチレンーアクリルエステル系エマルジョン(昭和高分子社製)100g、アデカネートB−940(ADEKA社製消泡剤)2.0g及び窒素サイザーCS−12(チッソ社製造膜剤)2.0gをディスパーミキサーで混合し、水性塗料組成物をそれぞれ得た。
【0096】
〔実施例7−1及び7−2(実施例3−8及び3−9で得られたグラフト化顔料8及び9を含有するアルカリ現像性樹脂組成物及びアルカリ現像性感光性樹脂組成物の調製)〕
<ステップ1>バインダー樹脂組成物の調製
1,1−ビス(4’−エポキシプロピルオキシフェニル)−1−(1’’−ビフェニル)−1−シクロヘキシルメタン17.0g、アクリル酸4.43g、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.06g、テトラブチルアンモニウムアセテート0.11g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート14.3gを仕込み、120℃で16時間撹拌した。室温まで冷却し、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート7.18g及び無水コハク酸4.82g及びテトラブチルアンモニウムアセテート0.25gを加えて100℃で5時間撹拌した。更に、1,1−ビス(4’−エポキシプロピルオキシフェニル)−1−(1’’−ビフェニル)−1−シクロヘキシルメタン5.08g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート2.18gを加えて120℃で12時間、80℃で2時間、40℃で2時間撹拌後、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート13.1gを加えて、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート溶液として目的物であるバインダー樹脂組成物を得た(Mw=4200、Mn=2100、酸価(固形分)55mgKOH/g)。
【0097】
<ステップ2>アルカリ現像性樹脂組成物の調製
ステップ1で得られたバインダー樹脂組成物83.5g及び実施例3−8及び3−9で得られたグラフト化顔料8及び9のプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート溶液416.5gを混合し、得られたスラリーをビーズミルで分散することにより、アルカリ現像性樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0098】
<ステップ3>アルカリ現像性感光性樹脂組成物の調整
ステップ2で得られたアルカリ現像性樹脂剤組成物44gに対し、それぞれ、トリメチロールプロパントリアクリレート6.3g、ベンゾフェノン2.1g、グラフト化顔料0.6g及びプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート78gを加えてよく撹拌し、アルカリ現像性感光性樹脂組成物をそれぞれ得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される高分子過酸化物。
【化1】

(式中、A1は、高分子鎖であり、X1は、直接結合、−CO−又は−O−CO−であり、X2は、直接結合、−CO−又は−CO−O−であり、X3は、直接結合、−NH−、−O−CO−R6−、−S−CO−R6−又は−NH−CO−R6−を表し、X4は、直接結合、−NH−、−R7−CO−O−、−R7−CO−S−又は−R7−CO−NH−を表し、R6及びR7は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキレン基、炭素原子数6〜30のアリーレン基、炭素原子数7〜30のアリーレンアルキレン基又は炭素原子数8〜30のアルキレンアリーレンアルキレン基を表し、R6及びR7のメチレン基は−O−又は−S−で中断されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、水酸基又はシアノ基で置換されていてもよく、Y1は、高分子鎖、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は下記一般式(II)で表わされる基である。)
【化2】

(式中、A3は、高分子鎖又は炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜30の複素環基であり、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基又は炭素原子数2〜30の複素環基であり、R1とR2は、結合して炭素原子数3〜6員の環を形成してもよい。)
【請求項2】
上記一般式(I)中、A1がポリオキシレン鎖、ポリエステル鎖、ポリオレフィン鎖又はポリシロキサン鎖である請求項1記載の高分子過酸化物。
【請求項3】
上記一般式(I)で示される化合物が下記一般式(III)で示される化合物である請求項1又は2記載の高分子過酸化物。
【化3】

(式中、R3は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、Y2は、R10−(O−R9t−(O−R8s−、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R10は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、R4、R5、R8及びR9のアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、s及びtは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、s+tの和は、2以上であり、m及びnは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、m+nの和は、2以上であり、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(I)と同じである。)
【請求項4】
上記一般式(III)中、X1及びX2が−CO−であり、Y2がR10−(O−R9t−(O−R8s−である請求項3記載の高分子過酸化物。
【請求項5】
上記一般式(III)で示される化合物が下記一般式(IV)で示される化合物である請求項3又は4記載の高分子過酸化物。
【化4】

(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R3、R4、R5、R8、R9、R10、m、n、s及びtは、上記一般式(III)と同じである。)
【請求項6】
上記一般式(IV)中、R11及びR12がエチレン基である請求項5記載の高分子過酸化物。
【請求項7】
上記一般式(I)で示される化合物が下記一般式(V)で示される化合物である請求項1又は2記載の高分子過酸化物。
【化5】

(式中、R13は、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR27−(O―R26b−(O−R25a−であり、R25及びR26は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R25及びR26におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R27は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、a及びbは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、a+bの和は、2以上であり、R14及びR15は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、R14及びR15におけるアルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数2〜10のアルケニル基を表し、X1、X2、X3及びX4は、上記一般式(I)と同じである。Y3は、下記一般式(VI)で表される置換基、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数7〜30のアリールアルキル基、炭素原子数2〜30の複素環基又は上記一般式(II)で表わされる基であり、j及びkは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、j+kの和は、2以上である。)
【化6】

(式中、R16は、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基又はR30−(O−R29d−(O−R28c−であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R28及びR29におけるアルキレン基中のメチレン基の水素原子は炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又は炭素原子数7〜20のアリールアルキル基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は二重結合、−O−、−S−、−CO−O−及び−O−CO−で中断されていてもよく、R30は、水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基であり、c及びdは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、c+dの和は、2以上であり、R17及びR18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜17のアルキレン基を表し、R17及びR18におけるアルキレン基中のメチレン基は、−O−又は−S−で置換されていてもよく、又、該メチレン基中の水素原子は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、シアノ基、−NR0102、−OR01、−CO−R01、−O−CO−R01、−CO−OR01で置換されていてもよく、R01及びR02は、上記一般式(V)と同じであり、p及びqは、それぞれ独立に、0〜100の数であり、p+qの和は、2以上である。)
【請求項8】
上記一般式(V)中、X1及びX2が−CO−であり、Y3が上記一般式(VI)で表される置換基である請求項7記載の高分子過酸化物。
【請求項9】
上記一般式(V)で示される化合物が下記一般式(VII)で示される化合物である請求項7又は8記載の高分子過酸化物。
【化7】

(式中、R19及びR20は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキレン基を表し、R13、R14、R15、j及びkは、上記一般式(V)と同じであり、R16、R17、R18、p及びqは、上記一般式(VI)と同じである。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の高分子過酸化物を含有してなる重合開始剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の高分子過酸化物からなるラジカル発生剤の熱分解によって生成した高分子ラジカルを顔料の表面にグラフト化させたことを特徴とするグラフト化顔料。
【請求項12】
請求項11記載のグラフト化顔料、溶媒及びバインダー樹脂を含有する顔料組成物。

【公開番号】特開2009−161682(P2009−161682A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1977(P2008−1977)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】