説明

高分子量のヒアルロン酸を用いた内因性又は埋め込まれた又は移植された幹細胞の機能回復を促進するための方法

グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸(HA)は、幹細胞の運命を決定する幹細胞ニッチの構造に寄与する組織の細胞外マトリックスにとって不可欠な成分である。種々の病態を経験する対象や、病態を治療するために化学療法又は放射線療法などの種々の治療的介入を受ける対象において、HA濃度の低下が認められる。750,000ダルトンを超える分子量を有するHA(高分子量HA若しくはHMW HA)を使用することで、HAが部分的又は完全に消耗された組織の細胞外マトリックスが再構築されることについて述べる。より詳細には、本明細書では、局所組織に特異的な幹細胞の微小環境の回復における補助として対外の形態である高分子量ヒアルロン酸(HMW HA)を使用することで、幹細胞移植若しくは他の治療の後に幹細胞の回復又は移植ひいては組織回復及びリモデリングが促進されることについて述べる。造血幹細胞に対するHMW HAの効果は、本発明において示される。重度の骨髄形成不全、及び5−フルオロウラシルによる治療に起因する汎血球減少を呈するマウスは、HMW HAで治療された場合により早期に回復した。同様に、致死性の放射線療法後に造血幹細胞の移植を受けたマウスは、補助療法としてHMW HAで治療された際に、補助療法を施さない造血幹細胞の移植を受けた対照マウスと比較して末梢血細胞数の回復促進を示した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全能性、多能性及び多分化能幹細胞(SC)の移植又は埋め込みに関与する医学的治療プロトコルに関する。別の局面において、SCの組織の構造及び機能にとって必要で、かつ病態の進展又は治療の結果として損傷を受ける細胞外マトリックスを再構築するための治療プロトコルに関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類生物の組織及び器官は、種々の系統の成熟機能細胞によって構築される。成熟細胞は、常に特異的な機能に忠実な末期分化細胞である。これらの成熟細胞は寿命が限られているため、対応する組織特異的な幹細胞によって常に補充される必要がある。生物医学の知見における現段階によると、幹細胞には主に3種類が存在する。すなわち、全能性(胎座及び胚の両方を生成するSC)、多能性(すべての胚系統を生成するが胎座を生成しないSC)及び多分化能(特異的な器官及び組織に対して細胞を提供するSC)である。過去10年間、一部の組織及び器官に特異的な多分化能幹細胞は、単離され、かつ特徴づけられている。たとえば、造血幹細胞は、血球(赤血球、血小板、リンパ球、単球など)を担い、間葉系幹細胞は、結合組織(間質細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など)を生成し、そして神経幹細胞は、脳を構築する。他の多分化能を有する幹細胞として、成体幹細胞、膵幹細胞、上皮幹細胞、内皮幹細胞などが挙げられる。
【0003】
幹細胞研究から生じる最近の開発により、幹細胞の既に実証済みで理論的な応用に多大な関心が寄せられ、多岐にわたる病状の治療が行われている。たとえば、細胞毒性に対する外科的化学療法及び放射線療法と組み合わせて、造血幹細胞は既に種々の白血病及びリンパ腫の治療に用いられて奏功している。鼻孔組織由来の埋め込まれる神経幹細胞を用い、機能回復を目的に切断された脊髄の治療が行われており、切断という大事に至ることなく少なくとも部分的な機能回復という形で一定の成績を収めている。またパーキンソン病、脳卒中及びアルツハイマー病を治療するのに、神経幹細胞の埋め込みを用いることが提案されている。他の応用も同様で、たとえば死体における前脳の脳室下帯や歯状回の顆粒細胞下帯由来の細胞といった種々の供給源由来の神経幹細胞を用いることが提案されている。
【0004】
間葉系幹細胞が梗塞に起因し、かつ心臓手術後に損傷を受けた心臓組織に埋め込まれてしまうと、心臓機能が実質的に回復することが認められている。間葉系幹細胞のために提案された応用において、骨、軟骨及び腱の部分的回復又は再生を亢進させ、骨髄破壊的な治療後に造血幹細胞の移植を促進し、さらに骨形成不全症、骨粗鬆症、変形性関節症#骨関節炎、ひざ関節半月板切除術、及び筋ジストロフィーを治療するために、その使用を言及することが可能である。
【0005】
糖尿病のマウス株において膵幹細胞の移植に関与する室内実験によって、マウスの糖尿病の病状は緩和されている。このことにより、膵幹細胞移植はヒトにおける糖尿病の有効な治療でありうることが強く示唆される。
【0006】
治療効果を得るための幹細胞の移植又は埋め込みが奏功するか否かは多くの因子に左右され、補助療法を用いることでこれらの方法の成績が改善されることは知られている。たとえば、種々の可溶性因子、サイトカイン及びインターロイキンが造血幹細胞移植において用いられるが奏功の程度はさまざまであり、好ましくない副作用が付随することが多い。したがって、幹細胞の移植及び埋め込み方法を用いた追加的な補助療法に対する実質的需要が存在することで、該方法を用いて得られる結果が改善され、好ましくない副作用の発生率が低下する。
【0007】
SCは、哺乳類生物の極めて少ない集団(0.01%未満)を構成する。しかしながら、この細胞数は、数十億個の新たな成熟細胞を一生を通じて常に生成するのに十分である。体内において他のあらゆる前駆細胞からSCを識別するSCが有する主要な特徴は、1)自己再生能、及び2)多分化能である。自己再生は、分化を経ることもなく複数回の分裂を経ることで、幹細胞プールの維持能力を保持するというSCの能力として定義できる。多分化能は、種々の系統、たとえば種々の細胞種に分化するSCの能力である。分化時には、SCはその「幹細胞性」を失う。すなわちSCは、死すべき運命を有する成熟した末期分化細胞になったのである。一旦SCは分化経路を選択していると、再びSCになることは不可能であると考えられている。SCに関する挙動の選択(自己再生、増殖、又は分化)は、生理的かつ病態生理学的要求に応答してその微小環境ニッチよって提供される複数のシグナルによって調節される(Schofield R.Biomed Pharmacother(1983年)37:375〜380頁)。骨髄、脳、膵臓などの種々の器官に対するこれらの微小環境構造については記述されている。上記ニッチにおける細胞構成は極めて不均一であり、種々の起源を有する細胞からなる(Minguell JJら、Braz Jmed Biol Research(2000年)33:881〜887頁;Bianco P.Robey PG.J Clin Investig(2000年)105:1663〜1668頁において概説)。過去10年間で、微小環境ニッチの細胞によって提供される調節シグナルを媒介する分子機構の理解は、かなり進んでいる(Heckney JAら、PNAS(2002年)99:13061〜13066頁)。可溶性や細胞表面の関連因子及び細胞外マトリックス(ECM)分子は、ニッチを構成しニッチの高度に複雑な構造に寄与する細胞によって生成される(Gupta Pら、Blood(1998年);92:4641〜4651頁、またVerfaillie C.Blood(1998年);92:2609〜2612頁;Chabannon C及びTorok−Storb B.Curr Top Microbiol Immunol(1992年)177:123〜136頁;Klein G.Experientia(1995年)51:914〜926頁において概説)。ニッチの細胞構成が組織特異的である一方、細胞外マトリックス分子(ECM)はすべてのニッチに共通の特徴を示す。コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ヘモネクチン(hemonectin)などのECM成分は、組織の調節ネットワークに関与することが示される一方、HAを含む極めて多数の他のECM分子の役割はいまだ完全に理解されていない。
【0008】
任意の特定の理論に縛られたくない一方で、HAは組織恒常性に必須のECM成分であるというのが本発明者の考えである。重要なことには、HAに対する主要な受容体であるCD44は、造血幹細胞、神経幹細胞、及び間葉系幹細胞を含むがこれらに限定されない幹細胞の表面上に発現される。さらに、これらの幹細胞は、HAの結合能を実証する(Kbaldoyanidi、未発表の知見)。したがって、本発明者はHAが微小環境ニッチを構築するのに必要であり、SCが自己再生し、増殖し、そして分化する能力を最適に支持すると考えている。グリコサミノグリカン(GAG)ファミリーのメンバーであるHAは、二糖類のN−アセチル−D−グルコサミン(G1cNAc)及びD−グルクロン酸(GlcA)の複数コピーを含有する大きく負に帯電したポリマーである。HAは、哺乳類生物のすべての器官、組織及び体液に認められる。HAは塩と水に結合することにより、細胞外空間を膨張させ、維持すると当初は考えられた。後発研究では、HAは、アグレカン、バーシカン、ニューロカンなどの種々の細胞外分子と相互作用することによって局所的なECMの構築に関与することが実証された(FraserJら、J Intern Med.(1997年)242:27〜33頁)。HAに結合する受容体の同定により、HAは最終的に細胞の挙動に影響を与える特異的な受容体−リガンド相互作用に関与することが実証された。したがって、HAは細胞増殖(Brecht、M.ら、Biochem.J.(1986年)239:445〜450頁;Hamann、KJ.ら、J.Immunol.(1995年)154:4073〜4080頁)、遊走(Andreutti、D.ら、J.Submicrosc.Cytol.Pathol.(1999年)31:173〜177頁)、サイトカイン生成(Noble、P.W.ら、J.Clin.Invest.(1993年)91:2368〜2377頁;Hodge−Dufour、J.ら、IImmun.(1997年)159:2492〜2500頁;Khaldoyanidi、S.ら、Blood.(1999年)94:940〜949頁)、及び接着分子の発現(Oertli、B.ら、J.Immunol.(1998年)161:3431〜3437頁)を含む、複数の細胞機能の調節に関与することが明らかになった。
【0009】
正常細胞や腫瘍生物学におけるHAの関与が一般に認識されている一方、SCを支持する微小環境ニッチの構築に対するHAの寄与についてはほとんど知られていない。例として造血系を用いることで、HAは骨髄のECMの受動的構成因子ではないが、造血にとって必要かつ特異的なシグナルを誘導する分子であることを本発明者らは先に報告している(Khaldoyanidi S.ら、Blood(1999年)94:940〜949頁)。特に、骨髄培養のヒアルロニダーゼ(HA’ase)処理により、リンパ球生成及び骨髄造血が阻害されるどころか予防される一方、骨髄培養へのHAの添加によってリンパ球生成及び骨髄造血が亢進される。HAは、造血幹細胞の委任以前に決定的段階を調節し、SCの維持及び自己再生にとって必要であるようにみられる。他の組織及び器官については、脳内のニューロン周囲の微小環境中の中枢神経系(CNS)(Giarardら、Histochem J.1992年;24:21〜4頁)、及び成長する神経の髄鞘形成にとって必要とされる末梢神経系(Seckelら、J Neurosci Res 1995年;40:318〜24頁)においてHAが認められた。HAはまた、インスリン分泌を支持するのに膵臓ランゲルハンス島における微小環境にとって必須であることが示された(Veltenら、Biomaterials 1999年;20:2161〜7頁)。HAシンターゼ−2のノックアウトマウスは子宮内で胚として生存しないため、HAは多能性幹細胞にとって必要であるようにみられる(Camenischら、J Clin Invest.2000年;106:349〜60頁)。
【0010】
HAは、多数の細胞機能にとって必須であるが不安定な分子である。全身放射線療法によって、脾臓や骨髄内を含む組織内でのHA量は著しく低下する(Noordegraaf、E.M.ら、Exp.Hematol.(1981年)9:326〜331頁)。HAの分解又はその合成及び蓄積に関する変化は、UV放射線療法(Koshishi、I.ら、Biochim.Biophys.Acta.(1999年)1428:327〜333頁;Schmut、O.、Ansari、及びA.N.、Faulbom、J.Ophthalmic.Rer.(1994年)26:340〜343頁)、又は、5−フルオロウラシル(5−FU)(Young、A.V.ら、Histol.Histopathol.(1994年)9:515〜523頁;Matrosova V.ら、StemCells(2004年)近刊)、ヒドロコルチゾン又は他の化学物質(Yaron、M.ら、Arthritis.Rheum.(1977年)20:702〜708頁)の投与など、種々の他の因子によって誘導可能である。組織内の少量のHAは、上記治療の結果として減少することに加え、ホルモン不均衡(D’avisら、Biochem J 1997年;324:753〜60頁;Engelbrecht−Schnurら、Exp Eye Res1997年;64:539〜43頁)、硬化症(Bodoら、Cell Mol Biol.1995年:41:1039〜49頁)、老化(Lambergら、J.invest.Dermatol.1986年;86:659〜67頁;Matuokaら、Aging 1989年;1:47〜54頁;Schachtschabelら、Z Gerontol.1994年;27:177〜81頁)などの病理発生と関連する可能性がある。したがって、疾患及び治療に誘導される組織内HA量の変化によって微小環境の恒常性に不均衡が生じることから組織特異的な幹細胞の機能が影響を受け、病理発生が悪化する。
【0011】
HAは、SCの微小環境における特異的な受容体によって媒介される機能調節の提供に加え、塩と水に結合し、かつ成長因子を提示することによる三次元のニッチ構築にとって必須である。組織内HA量の低下を誘導する治療的介入により、ニッチの物理化学的構造が変化する可能性もあるようにみられる。たとえば、5−FU(化学療法で用いられる薬剤)に誘発される骨髄形成不全とその投与は、細胞表面に関連するHAの濃度低下と相関し(MatrosovaV.ら、StemCells、近刊)、骨髄の類洞外部において陰圧の血管外圧を招く(Narnyanら、Exp Hematol.1994年;22:142〜148頁)。
【0012】
種々の病態又は治療の結果、幹細胞、前駆細胞、成熟細胞、微小環境細胞などの細胞によってHA受容体が脱落する、又はその遺伝子発現が下方制御される可能性がある(Matrosovaら、Stem Cells、2004年、近刊)。これらの変化は、細胞表面に関連するHA濃度の低下を招き、また続発症の発症に寄与する可能性がある。したがって、選択される組織と器官において、幹細胞、前駆細胞、成熟細胞及び微小環境細胞の細胞表面に対する内因性又は体外からのHAの固着を促進する治療に改善がもたらされることは重要である。
【0013】
化学療法は、多種多様な悪性腫瘍の治療及び治癒を目的として、単独で又は放射線療法と併用させて用いられる。化学療法の最も望ましくない結果は、重度の骨髄無形成及び汎血球減少である。この主な理由は、化学療法薬が迅速に分化する癌細胞に限らず循環する造血前駆細胞のプールも除去することである。成熟血球は寿命が限られているため、次々にSCを起源にもつ委任されて活発に増殖する前駆細胞によって常に補充されなければならない。したがって、化学療法に続く成熟血球の回復は長期間を要し、一般に汎血球減少を伴う。明らかに、この長期間にわたる造血回復により、患者は感染症、出血及び低酸素状態という極めてリスクが高い状態並びに移植後の病院環境に付随する重篤で死亡を含む予後状態に置かれる。
【0014】
増殖におけるSCの関与は厳格に調節され、この複雑な過程はサイトカイン及びインターロイキンを含む多種の可溶性因子によって制御される。SCの増殖を媒介する可溶性因子は明らかな特徴を示し、2つのグループに分かれる。すなわち、SCの増殖の正の調節因子(G−CSF、GM−CSF、M−CSFなどのコロニー刺激因子(CSF)、エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン(Tpo)、インターロイキン(IL)、幹細胞因子(SCF)及びflt−3リガンド(FL))及び負の調節因子(TGF−β、TNFα、LIF、MIP−1α、インターフェロンなど)である。特に化学療法、放射線療法又は化学放射線療法に続く生理的な要求という条件下で、骨髄において幹細胞の消耗を予防し、増殖細胞と休止細胞との正しい比率を維持するために、正と負の調節因子間の正確な均衡を維持することは極めて重要である。
【0015】
組換え造血成長因子の使用により、サイトカイン療法の発展が促進されている。したがって、G−CSF及びGM−CSFを用いることで、癌患者において化学療法に続発する好中球減少の期間が短縮される。Epoは、適切な設定で使用される場合、化学療法に続発する貧血を改善し、同患者における赤血球輸血の必要性を低下させる。しかしながら、患者及びマウスでは、一部のサイトカイン、特にG−CSFによって、一貫して重度の血小板減少症が発症する(Momin、F.ら、Proceedings of ASCO.(1992年)11:294頁(Abstr.);Scheding、S.ら、Brit.J Haernatol.(1994年)88:699〜705頁)。したがって、G−CSFの「系統競合」効果により、高毒性や免疫原活性以外では、患者は出血リスクが増加した状態に置かれる。さらに、成長因子の利用に関する最も重要な懸念の1つは、特に化学療法サイクルの反復と相まって幹細胞が消耗する可能性がある点である。成長因子の投与により、委任前駆細胞分画が膨張するだけではなく、増殖状態に入る休止期の多分化能幹細胞数が増加するに至る。同サイクルにおける通常休止状態のSCが関与することによって、それらは増殖に依存する化学療法の治療単位の反復の際に大幅に減少するというリスクが亢進した状態に置かれる(Moore M、Blood.(1992年)80(1):3〜7頁で概説)。休止状態の幹細胞が増殖状態に入ることを妨げる分子機構を同定することは、特に増殖に依存する化学療法サイクル反復の利用の観点でいえば臨床応用にとって相当な可能性を秘めている。
【0016】
したがって、化学療法後に造血の回復を改善するのに新たな手法に対する要望が存在することが明確になっている。
【0017】
化学及び放射線療法の続発症を緩和するために病院で用いられるもう1つの手法は、幹細胞移植である。造血幹細胞の移植は、一般に高用量の化学療法及び全身放射線療法に続く造血の回復を促進するのに用いられる。幹細胞移植の効率は、移植後の末梢血液細胞の回復に関する力学によって影響を受ける。幹細胞移植の有効性は、静脈内に注入されたSCのホーミングする能力に依存している。本明細書で用いられるように、造血幹細胞のホーミングは、骨髄造血ニッチを見出し、その範囲内に沈積し、子孫を生成する造血幹細胞の能力として定義される(Tavasolli M、Hardy C.(1990年)Blood76(6):1059〜1070頁;Hardy C、Minguell J.(1993年)Scanning Microscopy7(l):333〜341頁;Hardy C、Megason G.(1996年)Hematol Oncol14:17〜27頁)。したがって、ホーミングは2つの主要な段階に分かれる。すなわち、血管外遊出とそれに続く骨髄の播種である。この定義によると、骨髄の類洞の内皮上に束縛されるSCは、いまだホーミングした細胞として考えられない。同様に、生理的な要求の条件下で適切な造血ニッチに到達しないで子孫を生成していない血管外遊出されるSCもまたホーミングした細胞として見なすこともできない。血管外遊出は、SCのホーミングにおける多段階を有する第1の段階であり、生理的流れの条件下で骨髄血管内皮とのSCの相互作用に関与し、細胞のつなぎとめ(たとえば回転)、内皮細胞の管腔表面への接着、内皮を貫通する漏出(たとえば移動)などを含む。「ホーミングプログラム」を完了させる播種段階では、血管外遊出されるSCは、それ自体の酵素活性を用いる又は周囲の細胞における該活性を誘導することにより、骨髄ECMを介して移動できなければならない。最後に、homed細胞は、(i)造血支持因子を生成する適切な微小環境を見出し、(ii)増殖及び自己再生によって応答しなければならない(Verfaillie、C.Blood.(1998年)92:2609〜2612頁;Turner、M.Stem Cells.(1994年)12:22〜29頁;Quesenberry、P.及びBecker、P.Proc.Nati.Acad Sci.USA.(1998年)95:15155〜15157頁;Hardy、C.、Megason、G.Hematol.Oncol.(1996年)14:17〜27頁;Tavassoli、M.、Hardy、C.Blood.(1990年)76:1059〜1070頁)。
【0018】
特に着目すべきことは、造血幹細胞のその微小環境すなわち骨髄内の接着の促進に関与する造血幹細胞のホーミング/移植、その増殖及び自己再生は、固着されたSCの分泌及び骨髄から末梢血系に至るその遊走刺激に関与するSCの可動化とは区別されるべきである。したがって、SCのホーミング/移植は、SCの可動化とは相反するものである。
【0019】
指示されるSCの遊走を媒介する分子機構についてほとんど未知である一方、SCのホーミングを理解するための基本は過去10年間で創出されている。ここでは、SDF−1などのケモカインと、P及びBセレクチン、VCAM−l、α4β1及びα4β7インテグリン、並びにCD44などの細胞表面分子とを含む種々の分子が関与している(Khaldoyanidiら、J.Leuk.Biol.1996年;60:579〜92頁;Frenetteら、Proc Natl Acad Sci USA 1998年;95:14423〜14428頁;Williamsら、Nature 1991年;352:438頁;Papayannopoulouら、Proc Natl Acad Sci USA 1995年;92:9647頁)。CD44は元来はリンパ球の高血管内皮細静脈に対する結合にとって必要なホーミング分子として示された(Jalkanenら、Science 1986年;233:556〜558頁)。CD44は、セレクチンに加え、活性化リンパ球の一次内皮細胞上での回転を媒介できることが判明している(DeGrendleleら、J Exp Med 1996年;183:1119〜1130頁)。またCD44は、骨髄ECMの重要成分であるHA及びフィブロネクチンに対するリンパ球及び造血前駆細胞のin vitroでの接着を媒介することが実証されている(Legrasら、Blood 1997年;89(6):1905〜1914頁;Verfaillieら、Blood 1994年;84(6):1802〜1811頁)。最後に、CD44の細胞質部分はアンキリンなどの細胞骨格タンパク質に特異的に結合し、CD44変異体アイソフォームは、活性型MMP−9に密接に関連している。このことは、CD44は細胞外空間においてSCの遊走に関与する場合があることを示唆している(Bourguignonら、J Cell Physiol1998年;76(1):206〜215頁)。
【0020】
本発明者らは、これらの所見を踏まえて、HAが結合するのを遮断するCD44に特異的な抗体によって骨髄細胞を前処理する結果、致死的に放射線を照射されたレシピエントの骨髄を再増殖する場合の造血幹細胞の能力が低下することを先に実証している。このことはCD44が造血幹細胞のホーミングと相互作用する可能性があることを示唆している。さらに、本発明者らは、CD44は初期造血幹細胞−間質細胞間の相互作用を調節することから、造血幹細胞の播種に関与する可能性があることを先に実証していた(Khaldoyanidi、S.ら、J Leukoc.Bioi.(1996年)60:579〜592頁)。したがって、CD44/HA経路は、幹細胞−間質細胞間及び幹細胞−内皮細胞間の相互作用の調節にとって重要であることから、SCのホーミング/移植の調節に寄与すると本発明者は考えている。
【0021】
全身放射線療法はHAの分解を招く。さらに、致死的に放射線を照射された骨髄の同系の骨髄細胞を用いた再構築は、再構築されないマウスと比較して、骨髄及び脾臓でのGAG濃度における二次的な再発を招く。再構築マウスにおいてHAの検出可能量が顕著に認められなかった一方、再構築されないマウスにおいてHAの遅々とした回復が認められた(Noordegraaf E.M.ら、Exp.Hematol.(1981年)9:326〜331頁)。さらに、放射線療法は、正常な造血に必須でありうるGAGの硫酸処理に対する硫酸非処理の比に影響を及ぼすことが判明した。したがって、細胞の放射線照射及び注入に起因するHA量の低下は、移植幹細胞のホーミング/移植と干渉する可能性がある。
【0022】
移植幹細胞は、末期分化した機能的活性のある成熟血球のプールを補充するため、放射線照射された骨髄を再増殖し、委任造血前駆細胞を生成する必要がある。したがって、造血幹細胞の移植後の成熟血球集団の回復は、長期間を要し、一般に汎血球減少を伴う。移植後患者において委任前駆細胞のプールの増殖及び膨張を促進するのに、特定のGM−CSFにおいて成長因子が用いられる。しかしながら、前駆細胞の増殖刺激に加え、GM−CSFは骨髄から末梢血にかけて造血幹細胞を可動化する。これらの細胞が可動化の際に成長因子に鋭敏になる結果として、GM−CSFのこの効果は、多分化能幹細胞による長期にわたる再構築に対して負の影響を与える。これら及び骨痛、筋肉痛、発熱、紅斑などのGM−CSFの他の副作用を考慮すると、GM−CSFの使用は望ましくない。GM−CSFと同様に、低分子量(LMW)のHA(分子量<750,000ダルトン)は、組織から末梢までの成熟及び前駆細胞の造血細胞を含むSCの可動化に対する能力を示す(カナダ出願特許2,199,756号)。したがって、LMW HA及び高分子量(HMW)HAは、関連受容体に対する種々の親和力の結果と同様に、種々の生物学的機能を有することが明らかになっている。LMW HAが可動化剤として作用する一方、HMW HAが組織に恒常性平衡をもたらすことを本発明者は認めた。したがって、HMW HAと比較した場合のLMW HAの非常に異なる機能により、化学療法後及び移植後の臨床環境においてLMW HAの使用は不適当になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、化学療法後及び移植後の組織回復を刺激するためのG−CSF、GM−CSF及びEpoの使用に対する代替案又は補完案を提供することである。
【0024】
したがって、本発明の目的は、化学療法及び放射線療法によって誘導される続発症に対する改善された治療を提供することである。
【0025】
本発明の目的は、SCを消耗する治療後におけるSCの移植に対して改善された方法を提供することである。
【0026】
発明の要旨
本発明は、対象に対する有効用量の高分子量HAの投与を含む、組織及び器官におけるHA濃度の低下に関連する病態を治療するための方法を提供する。
【0027】
高分子量ヒアルロン酸(HMW HA)
本発明の実施において用いられるHMW HAは、750,000ダルトンより大きい平均分子量を有し、天然資源からの精製又は合成化学物質又は組換え方法を利用した生成など、任意の適切な供給源から入手可能である。またHMW HAは、薬剤として許容できる塩の形態で投与される場合がある。たとえば、それは塩化ナトリウムとして投与できる。本発明者は、高分子量HA(>750.000ダルトン)の使用によって内因性幹細胞の回復又は移植される若しくは埋め込まれるSCの移植が促進されることから、幹細胞移植及び他の治療の後に組織が回復し、かつリモデリングが生じることを認めている。この結果の特に驚くべきことは、低分子量HA(750,000未満の平均分子量を有するHA)は細胞の移植に対して逆効果を有することが認められている点である。すなわち、それは成熟細胞及びSCの可動化を誘導する。本発明では50,000ダルトンより大きい分子量を有するHA又はその薬剤として許容できる塩も用いられる。たとえば、1,000,000ダルトン以上又は2,000,000ダルトン以上又は3,000,000ダルトン以上の平均分子量を有するHAが使用できる。
【0028】
高分子量HAは、好ましくは投与前に、通常の生理塩水又は他の任意の生理学的に許容できる水性の注入可能な希釈剤などの水性担体中に溶解される。他の賦形剤は、生理学的に許容できる限り、緩衝液、防腐剤などを含む場合がある。HA溶液の濃度は、周知の薬理学的原理に基づいて調節できるが、5〜500μg/mlであってもよい。
【0029】
特定の理論に束縛されることは望まないが、HMW HAを用いて得られる可能性がある薬効は1つ又は複数の以下の項目に起因するというのが本発明者の考えである。
−SCに支持的な可溶性因子を生成するための微小環境ニッチの細胞の刺激
−SCの自己再生並びに委任前駆細胞の増殖及び分化を支持する細胞表面因子を発現するためのSCの微小環境ニッチの細胞の刺激
−組織特異的なECM成分を生成するための幹細胞の微小環境ニッチの刺激
−抗アポトーシス因子を生成するためのSCの微小環境ニッチの刺激
−SCの増殖及び自己再生のためのSCへの直接シグナルの供給
−委任前駆細胞の増殖のための同細胞への直接シグナルの供給
−成長因子及びサイトカインの隔離と提示
−SCの消耗がない委任前駆細胞の増殖を刺激する内因性の生物学的活性の発現及び生成の誘導
−組織及び器官内でのSCの沈積のための条件の提供
−疾患又は治療に誘導されるHA受容体の発現低下という条件下における細胞外空間及び圧力を維持するためのHAの固着
−任意の起点における細胞遊走の指示
−SCのホーミング及び移植を媒介する酵素学的特性を伴う内因性の生物学的活性の発現及び生成の誘導
−移植幹細胞の血管外遊出の促進
−静脈内注入されたSCを含む骨髄の播種/移植の促進
−幹細胞−内皮細胞間及び幹細胞−微小環境細胞間の相互作用を媒介する接着分子発現の誘導
−化学療法及び放射線療法を含む(がこれらに限定されない)治療的介入後における細胞外部位の容量及び圧力の維持
【課題を解決するための手段】
【0030】
治療条件
本発明は、たとえば薬剤又は紫外線、X線などの種類の放射線の使用に関与する治療的介入によって損傷を受けた骨髄、脳、膵臓、肝臓、皮膚を含む(がこれらに限定されない)多種多様な組織及び器官におけるSCの微小環境を改善/治療するための方法を提供する。
【0031】
また本発明は、疾患又は病態の病理発生によって損傷を受けた骨髄、脳、膵臓、心臓、肝臓、皮膚などの組織や器官における内因性幹細胞及び移植幹細胞或いは埋め込まれる幹細胞の微小環境を改善する/治療するための方法を提供する。上記病理発生の例として、変性疾患、原発性又は続発性の内分泌障害、老化、HA合成の病変、心臓発作などが挙げられる。
【0032】
したがって、本発明の実施は、ある種の病態又は治療の結果として正常より低下した(>10%の低下)HA濃度を示す任意の患者の治療に幅広く適用可能である。
【0033】
また本発明は、病理学的に発現したCD44やRHAMM(遺伝子発現の脱落又は特異的な下方制御に起因する低下した細胞表面における発現)などのHA受容体によって損傷を受けた組織及び器官(骨髄、脳、膵臓、肝臓、皮膚など)におけるSCの微小環境を改善する/治療するための方法を提供する。
【0034】
それは治療によって誘導される骨髄無形成/形成不全に罹患する患者の治療において特に有用である。これは、たとえば骨髄の抑制若しくは除去に至ることが知られているプレドニゾン又は他の治療を用いた化学療法、放射線療法、ホルモン療法の後に引き起こされる場合がある。
【0035】
また本発明は、水性希釈剤中にHMW HA若しくは薬剤として許容できるその塩を含有する治療量の組成物を末梢血、器官内又は腹腔内に投与することを含む、体外からの移植幹細胞の移植を促進するための方法を含む。
【0036】
したがって、本発明は、たとえば造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC)、神経幹細胞(NSC)、上皮幹細胞(EpSC)、内皮幹細胞(EnSC)、肝幹細胞(HeSC)、膵幹細胞(PSC)、臍帯血幹細胞及び成体幹細胞(ASC)といった多分化能幹細胞、多能性幹細胞、並びに全能性幹細胞を含む、内因性幹細胞又は移植幹細胞の機能回復を促進するための高分子量HAの使用を含む。より詳細には、本発明はSCにおける自己再生及び多分化能といった「幹細胞性」特性、増殖及び分化に対する能力の回復を含む埋め込み/移植後の幹細胞移植を促進するためのHMW HAの使用に関する。一部の症例では、2種類以上の幹細胞は、同時に移植又は埋め込みできる。たとえば、MSCは、HSCの移植を支持するためにHSCとともに埋め込み可能である。
【0037】
埋め込み又は移植を目的に本発明において有用な幹細胞は、骨髄、末梢血、臍帯血、脳細胞、膵細胞、肝細胞若しくは皮膚細胞、粘膜組織由来など、任意の適切な供給源から当該技術で周知の単離方法によって入手できる。これらの細胞は、生体ドナー若しくは死体の組織から、又はin vitroで培養された幹細胞から入手できる。また有用な多分化能幹細胞は、全能性若しくは多能性の幹細胞の分化を誘導することにより、又は対応する幹細胞系から入手できる。さらに本発明に有用な幹細胞は、核移植法によって入手できる。この処理は、多能性の細胞の核を胚盤胞から除去してから幹細胞の埋め込み又は移植が意図されたレシピエントの成体細胞から核が抽出された除核細胞へ導入することに関与する。
【0038】
多能性幹細胞又は多分化能幹細胞の集団は、埋め込み若しくは移植に先立ち、又は当該技術で既知の培養方法を用いた他の目的のために、膨張し分化できる。上記処理では、線維芽細胞又は間質細胞を含有する支持細胞層を伴う幹細胞の共培養について言及できる。また多能性の幹細胞は、白血病抑制因子(LIF)の存在下で培養できる。本発明の1つの実施形態において、支持細胞層若しくはLIFを含有する多能性幹細胞の培養中に又はサイトカインと成長因子のカクテルを含有する多分化能幹細胞の培養中に高分子量ヒアルロン酸を含めることができる。
【0039】
本発明の有用性を実証するために、造血幹細胞及び造血系を用いた実験が実施されており、その結果は本明細書の実施例として述べられている。高分子量HAは、化学療法(5−FU注入)後の骨髄における造血の回復を促進し、骨髄形成不全の期間を短縮することが認められた。造血幹細胞及び前駆細胞の数の上昇が高分子量HAで治療されたマウスの骨髄において認められた。さらに、有糸分裂における細胞数の上昇が高い増殖率を示すことが認められた。高分子量HAによる骨髄造血に関する議論の末、対照動物と比較して、リンパ球、好中球、単球、血小板、巨核球や赤血球などの成熟した機能活性のある末期分化した末梢血液細胞の数がより増加するに至った。したがって、高分子量HAの投与が5−FUに誘導される骨髄形成不全や汎血球減少に対抗するのに有効であることが判明した。このことは高分子量HAが造血幹細胞にとって必須の骨髄における微小環境に実質的に寄与し、造血の回復が加速されることを示唆している。本発明者は、高分子量HAは、SCの増殖、分化及び自己再生に関する可溶性及び膜関連調節因子のバランスのとれた生成を誘導すると考えている。したがって、高分子量HAによって誘導される正確な因子の組成物は、バランスのよい成熟細胞の生成を維持し、系統競合を回避し、SCの減少/消耗を予防するのに役立つと考えられる。
【0040】
本発明は、高分子量HAが化学療法によってマウスにおける攪乱した造血を有意に改善することも実証することから、治療によって誘発される骨髄形成不全及び無形成に対する適切な治療法である。高分子量HAを使用する結果、化学療法を受ける患者の予後が改善され、その回復が早まることになる。
【0041】
全身放射線療法及び骨髄細胞移植のいずれもが骨髄中のHA量を著しく低下させることから(Noordegraafら、Exp Hematol.1981年;9:326〜331頁)、本発明者らは、致死性の放射線療法(0.85Gy/hの線量率における15.25Gyのγ線)後に骨髄移植を施した後における幹細胞移植に対する体外からの高分子量HAの効果について検討した。対照群における白血球(WBC)数が低値を維持した一方、13日目に高分子量HAのレシピエントにおいて白血球数の完全な回復が認められた。さらに、高分子量HAで治療されたマウスの末梢血における血小板(PLT)及び赤血球(RBC)の回復が監視された。骨髄における解析によってHA治療群において成熟細胞数及びその前駆細胞の増加が示されたことから、HA治療群における末梢血液細胞数の回復の亢進は移植幹細胞の移植が促進された結果である。
【0042】
これらの知見は、高分子量HAが骨髄において必須の微小環境の回復及び/又は維持に役立ち、SCのホーミング及び移植を促進することを実証する。
【0043】
全体的に見れば、本明細書で提示される結果は、化学療法及び全身放射線療法及び他の治療によって組織や器官の損傷が誘発された後に、骨髄の回復を改善することを意図した臨床血液学における高分子量HAの有用性について実証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
投与法
本発明の高分子量HA組成物は、水溶液として投与可能であり、又は特に任意の組織/器官に対して標的とされるリポソーム若しくは微粒子などの担体に混合され、かつこれら担体の懸濁液として投与される場合がある。上記標的の担体は本明細書に記載される。
【0045】
注入される高分子量HAのより組織特異的な送達を確実にするため、同HAはたとえば高分子量HAを指示するのに望ましい任意の種類のSC、間質細胞、内皮細胞又は他の細胞種といった特定の組織を標的にする担体とコンジュゲートできる。適切な組織特異的な担体は、たとえばHAと結合するタンパク質及び抗体(特にIgG)又は抗体フラグメントからなる標的組織に特異的な融合タンパク質でありうる。適切な抗体フラグメントとして、たとえばF(ab)’及びF(ab)2’フラグメントが挙げられる。HA受容体の欠損と関連する病態を治療する際、上記標的に特異的な担体の使用によって注入されるHAにおける固着が改善できることになる。
【0046】
高分子量HAの医薬品組成物は、腹腔内、静脈内、又は器官内に投与できる。
【0047】
高分子量HAの組成物は、対象においてHAが低濃度であることが認識された後にはいつでも投与できる。
【0048】
いくつかの応用では、たとえば、幹細胞を消耗しても除去しないという条件下で、5−FUなどの薬剤による化学療法を実施した後に、高分子量HA組成物の単独投与が可能である。また高分子量HAの組成物は、埋め込み又は移植に先立ち、SCの懸濁液、或いはさらに言えば任意の他の細胞種の懸濁液と結合できる。
【0049】
別の実施形態において、高分子量HAの組成物は、埋め込み又は移植に先立ち、たとえば幹細胞懸濁液といった細胞懸濁液によって予備培養できる。さらに他の実施形態では、高分子量HAは、G−CSF、GM−CSF、M−CSFなどのコロニー刺激因子、Epo及びTpo、インターロイキン、幹細胞因子、flt−3リガンド、又はTGF−β、TNF−α、LIF、MIP−1α、インターフェロンなどの幹細胞増殖の負の調節因子、並びに上記治療で用いられる他の薬剤の投与に関与する治療と連携して投与可能である。
【0050】
高分子量HA組成物は、高分子量HA治療又は低濃度のHAによる緩和が推測される症状を対象が呈し続けるかぎり、単回若しくは複数回投与も可能である。移植細胞又は埋め込み細胞と連携して用いられる場合、SCなどの細胞の懸濁液による治療の前後若しくは治療と同時に投与可能である。
【0051】
有効な薬用量に相当する特定用途に対する各用量を対象に投与する場合の高分子量HAの総量は、当該技術によって容易に決定できる。本発明の好ましい実施形態において、同用量は0.1〜100mg/kgにおける任意の用量、より好ましくは1〜10mg/kgにおける任意の用量の場合がある。「薬用量」という用語は、組成物が投与される対象においてHA濃度の観測可能な上昇に至るための必要量を示すことが意図されている。したがって、「薬用量」を示す精密な量は、投与後、及び治療的有効量の投与に至るまでの複数回投与におけるHA濃度の監視に基づいて容易に決定できる。
【実施例】
【0052】
図面の詳細な説明
(実施例1)
図1は、5−FU投与後での末梢血液細胞の回復に対するHMW HAの効果を例示する。マウスを対象に5−FUを150mg/kgで腹腔内に注入した。白血球(WBC)数、赤血球(RBC)数、血小板(PLT)数、ヘモグロビン(HGB)及びヘマトクリット(HCT)を、2週間にわたり毎日監視した。予想通り、5−FUによるマウスの治療によって、重度の骨髄形成不全及び汎血球減少が誘発された。WBC数及びPLT数は、5−FU投与前の8.4±1.5×10/ml及び678.4±82×10/mlから7日後の2.52±0.5×10/ml及び388±50×10/mlに各々低下した(図1A、B)。骨髄中単核球の総数は、5−FU投与前の15.3±2.2×10/大腿骨から投与7日後の5.00±0.65×10/大腿骨に低下した(図2A)。5−FU投与14日後には、すべてのパラメータが正常値に回復した。高分子量5−FUで攪乱した造血に対するHAの効果を測定するため、5−FUで治療される(0日目)マウスに、100μg/マウスのHMW HAを4日、6日、10日、及び13日目に投与した(Sigma−Aldrich由来、PBS中で0.05%溶液として平均分子量750,000〜2,000,000ダルトン)。動物の対照群に、200μl PBSの注入を伴う治療を行った。HA及びPBSで治療されるマウス由来の末梢血を毎日収集し、WBC数、RBC数、PLT数、HGB、及びHCTの測定を行った。HAで治療されるマウスにおけるWBC数は、対照のPBSによる治療群と比較して5日目から有意に高め(2〜2.5倍)であった(図1A)。WBC回復に対する高分子量HAの用量依存効果を実証するため、マウスに種々の用量(0〜1000μg/マウス)のHMW HAを投与し、7日目に末梢血試料において白血球数の評価を行った。高分子量HAの最も有効な濃度は、100μg/マウス(すなわち3mg/kg)であることが認められた。HAで治療されるマウスにおけるPLT数は5日目から増加し、8日目には1.7倍に上昇した(図1B)。2週目からHAによる治療群で認められるパラメータは、5−FUによる治療前の正常マウスにおけるそれに相当する。したがって、高分子量HAの投与により、マウスは5−FUによって誘発される白血球減少及び血小板減少から救済された。
【0053】
成熟血球は、造血前駆細胞の増殖及び分化の産物であることから、本発明者らは次に、5−FUによる治療マウスにおいて骨髄造血に対する高分子量HAの効果について検討した。5−FUによって治療されたマウス(0日)に、PBS又は100μg/マウスのHMW HA(PBS中で0.05%溶液として)を4日、6日、10日、及び13日目に投与した。骨髄細胞を7日、14日、21日、及び28日目に採取した。HAで治療されるマウスでは、7日目に全骨髄細胞数がPBSで治療されるマウスと比較して3.5倍多かった(図2A)。高分子HAの種々の造血系統に対する効果を評価するために、以下のように骨髄細胞の形態素解析を実施した。骨髄細胞試料をメタノール中でスライドグラス上に−20℃で20分間固定し、室温で乾燥させ、フィリプソン(Filipson)色素(96%エタノール中で25%のギムザ色素)とともにスライドを15分間インキュベートし、広範囲に蒸留水(pH7.0)で洗浄し、乾燥させ、そしてカバースリップで蓋をした。顕微鏡下でのスライドの測定により、5−FU投与後に高分子量HA治療を受けたマウスでは骨髄における成熟した脊髄及びリンパの因子数が増加したことを示した(表1)。
【表1】

【0054】
興味深いことに、高分子量HAで治療される動物は、対照(0.3/100)と比較して、有糸分裂(1.7/100)時にも骨髄細胞数の増加を示した。これらのデータは、HAで治療されるマウスの骨髄において増殖型前駆細胞数がより多いことを示唆している。この仮定を考察するため、骨髄細胞をメチルセルロース中で培養し、増殖系統の委任前駆細胞数を評価した。骨髄細胞を採取し、30%FCS、1%BSA、10M2−メルカプトエタノール、2mML−グルタミン(Stem Cell Technologies、バンクーバー、カナダ)を含有する半固体メチルセルロース中の24ウェルプレートに1×10細胞/mlの濃度で置いた。インターロイキン−3の供給源としてWEHI−3B由来の条件培地を添加した(15容量%)。培地を5%CO2の湿気のある空気中で37℃でインキュベートした。20個を上回る数の細胞を含有するコロニー(thenはthanのミス)を培養の7日後に倒立顕微鏡下でカウントした。赤血球のバースト形成単位(BFU−e)を培養するために、エリスロポエチン 10U/ml(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer−Mannheim)、ドイツ)を添加した。少なくとも500細胞を含有するコロニーを14日後にカウントした。対照と比較して、高分子量HAで治療されるマウスでは、脊髄前駆細胞数は2.9倍多く、初期の赤血球の前駆細胞数は21.5倍多かった(図2B)。HAで治療されるマウスの骨髄における巨核球数は3.7倍の増加を示した。次に本発明者は、高分子量HAの刺激が、長期培養開始細胞(LTC−IC)アッセイを用いて測定されるより初期の前駆細胞に対する損傷を犠牲にして委任前駆細胞のプールに利益をもたらすかどうかを検討した。高分子量HAによって治療されるマウスの骨髄におけるLTC−IC数を限界希釈アッセイを用いて評価した。本発明者らは、5FU/HAマウスに対する5FU/PBSマウスの骨髄において、LTC−IC数の増加における傾向を監視した。その差異は統計的に有意ではなかった(p>0.l)が、LTC−IC数が対照における14.8±9.6/大腿骨からHAによる治療動物における30.6±13.3/大腿骨に上昇した(図2C)。これらの知見は、HAで治療されるマウスの骨髄における成熟細胞数及び委任前駆細胞数の増加によってLTC−ICによる測定としてより初期の幹細胞プールが消耗に至らないことを示唆する。このように、HAは5−FUによって傷害されていた骨髄造血の活性を促進した。
【0055】
健常な個人における造血細胞に対するLMW HA(<750,000ダルトン)の可動化の効果は実証されているため(L.Pilarski、カナダ出願特許2,199,756号)、本発明者らはさらに、5−FUによる治療マウスにおける細胞の可動化に対するHMW HAの効果を試験した。マウスに150mg/kg 5FUを投与後、4日目にHMW HA(Sigma−Aldrichから、平均のモル、重量750,000〜2,000,000ダルトン、PBS中で0.05%溶液として)又はPBS注入(1群当たりマウス3匹)を施した。HAを注入してから12時間及び24時間後にマウスを殺害し、末梢血(PB)又は骨髄(BM)細胞を採取し、フローサイトメーターで解析した。各試料を10の総イベント率(100%)に対して測定した。大きさ(X−平均として)、粒度(Y−平均として)及び各細胞集団に対する全細胞の割合を評価し、平均±SDとして示した。FACS解析によると、12時間後(データは示さない)も24時間後(図3)も、末梢血又は骨髄における細胞集団の組成物は変化を受けなかったことが示された。したがって、5FUによる治療マウスにおいてHMW HAは、骨髄から末梢血への細胞の可動化を誘導しないという結論が得られた。本発明者らは、この観察に対するいくつかの可能性のある理由、すなわち、1.化学療法はHA受容体の発現に影響を与える結果、HA治療に対する可動化の応答が傷害される可能性がある点、2.化学療法は骨髄の形成不全を誘導し、したがって検出可能な可動化に対する細胞資源を除去する点、3.HMW HA及びLMW HAは種々のHA受容体/アイソフォームを標的にすることによって種々の生物学的機能を有する可能性がある点を推測する。
【表2】

【0056】
本発明者らは、高分子量HAは造血前駆細胞の増殖を直接に促進しないことを先に実証している(Khaldoyanidi、S.ら、Blood.(1999年)94:940〜949頁)。その後の研究によって、高分子量HAは骨髄造血微小環境の細胞によって造血を支持するサイトカインIL−1及びIL−6の生成を上方制御することが実証された。しかしながら、抗体を中和するIL−1及びIL−6による実験により、IL−1及びlL−6に加え、他の造血を支持する可溶性因子がHAに刺激される造血微小環境によって生成されることが示唆された。HAの効果を媒介する他の分子を同定するために、本発明者はAffymetrix社のチップ技術を用いて遺伝子発現のプロファイリングを実施した。マウスに1日目に150mg/kg 5FUを投与してから4日目に100μg HMW HAを注入した(Sigma−Aldrichから、平均のモル、重量750,000〜2,000,000ダルトン、PBS中で0.05%溶液として)。24時間後、動物を殺害し、骨髄を採取し、QiagenRNA単離キットを用いて全RNAを単離した。メーカの推奨(Affymetrix、アラメダ)に従ってプローブ調製及びチップ・ハイブリダイゼーションを実施した。分化して発現される遺伝子をAffymetrixデータマイニングツール・ソフトウェアによって解析した。このlogに変換されたグラフでは、10,000個を超える遺伝子に対するハイブリダイゼーションシグナルをプロットする。対照試料(5FU/PBS)(X軸)から得られるハイブリダイゼーションシグナルを高分子量HA(5FU/HA)(Y軸)で治療されたマウス由来の試料と比較する。試料において統計的に有意に検出された遺伝子をより強いハイブリダイゼーション強度にて黒点で示す(データトレンドの右上)。検出されない遺伝子を灰色の点で示す。プロットにおける主要なトレンドからずれる点は、2つの試料間で分化して発現される。本発明者らは、対照マウス(5FU/PBS)に対してHAで治療されるマウス(5FU/HA)の骨髄において高度に有意に分化して発現されるものとして称される、合計179個の遺伝子を同定した。別々に治療されるマウスからの複製により、ほぼ完全に一致するデータが得られた(図4)。分化して発現される遺伝子は、以下のようにグループ分けできると考えられる。すなわち、(1)転写調節、ホルモン受容体及びDNA複製因子(2)シグナル形質導入カスケード調節因子、(3)アポトーシス調節、(4)遊走を媒介する酵素(5)細胞表面関連分子、(6)可溶性因子である。全体として、本結果は、HAが微小環境の生物学的活性成分であり、遺伝子発現と幹細胞の挙動を媒介するその産物の調節に関与することを示唆する。
【0057】
(実施例2)
全身放射線療法は、脾臓及び骨髄においてHAを含むGAG量を著しく低下させる。さらに、骨髄細胞の移植を行うと、造血組織においてHA濃度の二次的な再発を招く。したがって、本発明者らは全身放射線療法を経てから骨髄移植を実施した後に、末梢血及び骨髄細胞の回復に対するHMW HAの効果を検討した。レシピエントマウスに致死的に(0.85Gy/hの線量率で15.25Gy)放射線を照射し、内因性の骨髄造血を排除した。5−FU(150mg/kg体重)で予め処理されたドナーマウスからHSPCを得て増殖する委任前駆細胞プールを除去し、放射線療法の24時間後にレシピエントマウスに移植した(10細胞/マウス)。レシピエントマウスに200μl/マウスPBS(対照群)又は高分子量HA(Sigma−Aldrichから、平均のモル、重量750,000〜2,000,000ダルトン、PBS中で0.05%溶液として)の100μl/マウスを移植の4日、6日、10日、及び13日後に投与した。毎日末梢におけるWBC数を測定した。対照と比較して、11日目(p<0.01)に高分子量HAで治療されたマウスの末梢血においてWBC数の有意な上昇を検出した。対照群におけるWBC数が低値を維持する一方で、13日目にHAによって治療されたレシピエントにおいて白血球数の完全な回復が認められた(図5A)。さらに、HAで治療されたマウスの末梢血におけるPLT及びRBCの回復促進について監視した。HAによる治療群においてPLT数及びRBC数がそれぞれ3倍及び2倍上昇した。パーセントの上昇としてPLT及びRBCのレベルが示される。この場合、PBSが投与される対照群からの数を100%とする(図5B及び5C)。RBC数の上昇は、対照マウスと比較して、高分子量HAが投与されたマウスにおいてHCT値及びHGB値がより大きいことと相関した。
【0058】
高分子量HAによって治療されるマウスにおける末梢血液細胞数の回復促進が移植されるHSPCの移植の促進の結果であることを実証するために、本発明者らはさらに骨髄における造血活性を評価した。HSPC移植の7日後、骨髄を採取し測定した。骨髄の形態素解析によって、高分子量HAによる治療群における芽細胞の総数がPBSで治療される対照群の場合と比べて10倍多い(図6A)ことが明らかになった。さらに、HAで治療されるマウスの骨髄では、対照(図6B)と比較し、赤芽球数では3倍の上昇(図6A)及び巨核球数では18.8倍の上昇が認められた。巨核球数の上昇は、HAで治療されるマウスの骨髄における血小板数の上昇と相関した。すなわち、これらのマウスの血小板数は20±1.5/フィールドであり、対照群においては4±0.2/フィールドを維持した。
【0059】
このように、本発明者らは、HAがSCの移植とその後の組織回復/リモデリングに対するより好ましい条件を提供することを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】化学療法後のマウスにおける骨髄の造血の回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。
【図2】化学療法後のマウスにおける骨髄の造血の回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。
【図3】化学療法後のマウスにおける骨髄の造血の回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。
【図4】化学療法後のマウスにおける骨髄の造血の回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。
【図5】致死性の放射線療法後における造血幹細胞の移植及び造血組織回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。
【図6】致死性の放射線療法後における造血幹細胞の移植及び造血組織回復に関するHMW HAの効果を実証するために設計された実験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織又は器官におけるヒアルロン酸濃度の低下と関連する対象の病態を治療する方法であって、前記対象に750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸又は薬剤として許容できるその塩の有効用量を投与すること含む方法。
【請求項2】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量が1〜10mg/kgである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記用量が腹腔内、静脈内又は器官内に投与される、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒアルロン酸を担体に混合する、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記担体がリポソーム又は微粒子である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒアルロン酸が組織特異的な担体とコンジュゲートされる、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記組織特異的な担体がHA結合タンパク質とF(ab)2又はF(ab)フラグメントとの融合タンパク質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
埋め込まれる又は移植される幹細胞の移植を改善するために対象を治療するための方法であって、前記対象に750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸又は薬剤として許容できるその塩の有効用量を投与することを含む方法。
【請求項10】
前記幹細胞が全能性幹細胞、多能性幹細胞及び多分化能幹細胞から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞が多分化能幹細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記多分化能幹細胞が全能性幹細胞又は多能性幹細胞の分化を引き起こすことによって得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多能性幹細胞が核移植法によって操作される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記多分化能幹細胞が造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、内皮幹細胞、膵幹細胞、肝幹細胞及び成体幹細胞から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞が骨髄、末梢血、臍帯血、脳、膵臓、肝臓、粘膜組織、又は皮膚由来である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞が、死体の生存組織ドナーから単離される一次幹細胞、又はin vitroの条件で培養される幹細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記対象に幹細胞を埋め込む又は移植することで病態を治療する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒアルロン酸が前記幹細胞の埋め込み又は移植の前、それと同時又は後に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が幹細胞の移植に先立って治療を受ける、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記療法が細胞毒性療法である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記療法が化学療法、放射線療法又はホルモン療法である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記療法が切除療法である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記幹細胞が造血幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記療法が細胞毒性療法である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記療法が化学療法、放射線療法又はホルモン療法である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記療法が切除療法である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項9、10、11、14、17、18又は19に記載の方法。
【請求項28】
前記用量が1〜10mg/kgである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記用量が静脈内、腹腔内又は器官内に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
間葉系幹細胞が造血幹細胞と同時投与される、請求項23又は26に記載の方法。
【請求項31】
ヒアルロン酸の前記投与が治療後の造血を促進するためである、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記用量が1〜10mg/kgである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記用量が静脈内、腹腔内又は器官内に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ヒアルロン酸が投与される前記対象が、汎血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血、リンパ球減少症又はそれらのいずれかの組合せ或いは準組合せからなる群から選択される状態を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記条件が治療又は疾患の結果である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療が細胞毒性療法である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療が化学療法、放射線療法又はホルモン療法である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記幹細胞が膵幹細胞であり、前記病態が糖尿病である、請求項17に記載の方法。
【請求項40】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記用量が1〜100mg/kgである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記用量が静脈内若しくは器官内に投与される、請求項39、40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項44】
前記病態が心臓障害である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記心臓障害は梗塞又は手術の結果である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記間葉系幹細胞が、骨/骨髄組織、軟骨組織、筋肉組織、腱組織又は脳組織から選択される組織に、直接又は静脈内に、或いは単独又は他の幹細胞と組み合わせて投与される、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項43、44、45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記用量が1〜10mg/kgである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
骨髄機能障害を生じさせる薬剤又は放射線によって対象を治療する方法における、750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸又は薬剤として許容できるその塩の有効量で骨髄機能障害を有する対象を治療することを含む改善。
【請求項50】
幹細胞集団又は幹細胞の適切な機能を消耗させる病態又は治療の結果として、幹細胞集団の消耗を有する対象における幹細胞数とその機能の回復を改善するための方法であって、前記患者に750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸又は薬剤として許容できるその塩の有効量を投与することを含む方法。
【請求項51】
前記幹細胞が多分化能幹細胞である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記多分化能幹細胞が、造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、内皮幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞及び成体幹細胞からなる群のメンバーである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記多分化能幹細胞が全能性幹細胞又は多能性幹細胞の分化を引き起こすことによって得られる、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記多能性幹細胞が核移植法によって操作される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記幹細胞が治療によって消耗する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記幹細胞集団が造血幹細胞である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記治療が細胞毒性療法である、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記治療が化学療法、放射線療法又はホルモン療法である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記用量が0.1〜100mg/kgである、請求項50、51又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記用量が1〜10mg/kgである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ヒアルロン酸が、幹細胞及び委任前駆細胞の増殖における正若しくは負の調節因子から選択される薬剤の有効量と共に投与される、請求項1、9、11、51又は52に記載の方法。
【請求項62】
前記ヒアルロン酸がケモカインの有効量で投与される、請求項1、9、11、51、又は52に記載の方法。
【請求項63】
前記ケモカインがSDF−lである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記ヒアルロン酸が、組織特異的な細胞表面抗原に向けられるF(ab)2若しくはF(ab)フラグメントに融合されたHA結合タンパク質からなる融合タンパク質である組織特異的な担体とコンジュゲートされた形態で用いられる、請求項1、9、11、51又は52に記載の方法。
【請求項65】
前記幹細胞が神経幹細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項66】
前記神経幹細胞が中枢神経系及び末梢神経系の疾患を治療するために埋め込まれる又は移植される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記幹細胞が肝臓疾患を治療するための肝幹細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項68】
前記病態が老化の結果である、請求項1、17及び64に記載の方法。
【請求項69】
多能性幹細胞又は多分化能幹細胞の培養のための方法において、培地内に750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸を含む改善。
【請求項70】
前記培養条件が線維芽細胞又は間質細胞の支持細胞層を用いる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記幹細胞が多能性幹細胞であり、前記培地がLIFを含有する、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記幹細胞が線維芽細胞又は間質細胞の支持細胞層を用いる培地内でin vitroで培養され、前記培地が750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項73】
前記幹細胞が、LIF及び750,000ダルトンを超える分子量を有するヒアルロン酸を含有する培地内でin vitroで培養される多能性幹細胞である、請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−535486(P2007−535486A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532847(P2006−532847)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/014260
【国際公開番号】WO2004/104166
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505410634)ラ ホーヤ インスティチュート フォー モレキュラー メディシン (1)
【Fターム(参考)】