説明

高分子量鉄サッカリド複合体の合成

【課題】多種多様な鉄サッカリド複合体の製造に適合する単純であるが洗練された合成スキームの提供。
【解決手段】(1)水性の媒体中において、(i)糖、糖誘導体およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物を;(ii)インサイチューで第二鉄塩および塩基性反応物から製造された(OH)-イオンの存在下でFe(III)イオンを含む水性の溶液、水性コロイド、ヒドロゲルまたはそれらの混合物と接触させるステップ、(2)塩基を添加するステップ、(3)加熱還流するステップからなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学的使用のため、例えばそれを必要とするヒトまたは動物へ当該複合体を
含む組成物の非経口投与に適合する有効造血性化学種を含む鉄サッカリド複合体の合成に
向けられる。腎疾患、繰り返して行われた腎臓透析、および、ヘマトクリットレベルが低
いと鉄分補給剤と組み合わせてエリスロポエチン療法を必要とすることがある癌治療に結
び付いたものを含む、多数の状態または障害から、鉄欠乏症は発生する可能性がある。ヘ
ム合成を含む他の経路もまた同様に知られている。鉄欠乏症を治療する目的で非経口投与
に適合する状態で現在入手できる鉄分補給剤には、例えば、デキストランおよび非デキス
トラン含有組成物が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許および学術雑誌に開示された非デキストラン鉄含有複合体または化合物(鉄サッカ
リド複合体)は、典型的には、例えば約2500ダルトン以下までの相当に低分子量を有
する。これらの低分子量化合物の多くは、治療使用には非経口投与ではなく経口投与のた
めにしか適合しない(例えば、Montgomery et al.、米国特許第3,821,192号;Rao et al.,
「Fe(III)Complexes of D-Glucose and D-Fructose」,Biometals,vol.7,pp.25-29,1994;G
eetha et al.,「Transition-metal Saccharide Chemistry:Synthesis,Spectroscopy,Elec
trochemistry and Magnetic Susceptibility Studies of Iron(III)Complexes of Mono-
and Disaccharides」,Carbohydrate Research,vol.271,pp.163-175,1995;Rao et al.,「S
olution Stability of Iron-Saccharide Complexes」,Bioorganic and Medicinal Chemis
try Letters,vol.2,No.9,pp.997-1002,1992;Rao et al.,「Transition Metal Saccharide
Chemistry and Biology:Syntheses,Characterization,Solution Stability and Putativ
e Bio-relevant Studies of Iron-Saccharide Complexes」,Inorganica Chimica Acta,vo
l.297,pp.373-382,Jan.2000;Burger et al.,「A Novel Polynuclear Iron(III)Mixed Lig
and Complex for Use in Parenteral Iron Therapy」,Inorganica Chimica Acta,Vol.80,
pp.231-235,1983を参照されたい)。デンプン、セルロース、デキストランおよびデキスト
リンなどのポリマーサッカリドまたはポリサッカリドに基づく造血性生成物は、本発明に
おいては有用ではない。特に、デキストランおよびデキストリンポリサッカリドは、約4
0,000〜約75,000以上の分子量を有する可能性がある。
【0003】
非デキストラン鉄サッカリド複合体は、例えば商標名「Ferrlecit」(Watson Pharmaceu
ticals Inc.)を付けて、市販で入手できる;この生成物はスクロース中のグルコン酸第二
鉄ナトリウム複合体(SFGCS:sodium ferric gluconate complex in sucrose)であ
ると識別されている。この製造業者は、この生成物の構造式は[NaFe23(C611
7)(C1222115n(式中、nは約200である)であると考えられ、289,
000〜440,000ダルトンの見かけの分子量を有すると述べている;上記の構造式
に基づくと、式量は417,600である。この市販の造血性組成物はさらに、約20(
w/v)%(195mg/mL)のスクロース水溶液を含むアルカリ水溶液(pH7.7
〜9.7)中の第二鉄イオン炭水化物複合体のナトリウム塩であると記載されている。
【0004】
また別の市販で入手できる、商標名「Venofer」(American Regent Laboratories Inc.)
を付けて市販された非デキストラン造血剤は、その組成が水酸化第二鉄スクロース複合体
(FHSC:ferric hydroxide-sucrose complex)であると記載されている。この記述名
は、第二鉄の形態、すなわちFe(III)がスクロースとの複合体中に存在することを
示唆している。
【0005】
興味深いことに、ヒトを治療するために有用な非経口造血剤を含む、市販で入手できる
非経口造血剤を調製するための合成経路は、文献において知られていないと考えられ、そ
して結果として生じる造血剤の分子構造は明確には特性付けられていない。近年になって
初めて、正確な参照標準を入手するための方法が公表されている(例えば、Chromaceutica
l Advanced Technologies Inc.へ譲渡されたR.A.Beck and R.A.Mateer,Jr.の米国特許第6
,537,820号を参照されたい)。
【0006】
造血活性を備える鉄サッカリド複合体は、一般に造血のために必要であると考えられる
Fe(III)(すなわち、第二鉄原子価状態にある鉄)として鉄原子を含有する。さら
に、そのような複合体は、ヒトにおける非経口投与のために有用であるために必要な高分
子量構造の一部としてもFe(III)を含有するであろう。鉄サッカリド複合体は、例
えば投与後少なくとも1日間、そして好ましくは投与後数日間の期間のような長期間にわ
たる造血のために治療的に有用な鉄分を送達できなければならない。しかし、低分子量鉄
糖化合物もしくは複合体の状態にある高濃度の鉄の局所的投与は、緩徐な放出を生じさせ
ない、そして毒性を含む有害な副作用を生じさせる可能性がある。そのような作用は、注
射部位での局所的傷害、またはショック、アナフィラキシー、血管性低血圧、致死もしく
は薬物に対する他の不耐性の徴候の形態でのヒトもしくは動物における予測不能な全身性
反応として現れることがある。
【0007】
治療用非経口鉄分補給剤の分野においては、引き続いて最新の制御および分析方法を適
用できる明確に規定された合成方法、およびそれによって製造された組成物に対する需要
がある。そのような改良された方法は、強化された純度を有する生成物の製造を促進でき
る。本発明は、特に非経口造血性薬剤を含む組成物中で有用である、治療的に有効な鉄含
有化合物および組成物の調製または合成に関する。独特の鉄複合体についても記載する。
【発明の概要】
【0008】
鉄サッカリド複合体を調製するための方法であって、前記複合体が哺乳動物において可
能性のある投与に適合し、(1)反応混合物を形成するために(i)(OH)-イオンの
存在下でFe(III)イオンおよび(ii)少なくとも1つのサッカリドを含む水溶液
もしくは水性分散液を供するステップであって、前記反応混合物中の(i):(ii)の
モル比が約30:1〜約1:30であり;前記反応混合物の温度およびpHが複合体集合
点(complex assembly point)以上であるステップと;(2)約25,000ダルトン以上
の分子量を有する鉄サッカリド複合体を形成するために十分な期間にわたって温度および
pHを前記複合体集合点で、または好ましくは前記複合体集合点より上方で維持するステ
ップと、を含む方法。好ましくは、ステップ(1)における温度は、複合体集合点以上で
あるが、Fe(III)化合物もしくは組成物の望ましくない沈降を引き起こすであろう
レベルより下方、および最も好ましくは約75℃より下方である。任意選択的に、ステッ
プ(2)における温度はステップ(1)における温度より高温へ、少なくとも約80℃へ
増加させることができ、これは高分子量鉄サッカリド複合体を製造するための効率的な方
法である。この高分子量複合体は、沈降法、透析法および/またはカラム分別法を含む様
々な方法によって反応混合物から分離することができる。
【0009】
この方法は、様々な分子量および/または化学的組成を備える広範囲の鉄サッカリド複
合体、詳細にはグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体および水酸化第二鉄スクロース複合体
を制御された方法で適切に合成する。固形生成物が所望である場合は、鉄サッカリド複合
体は、様々な方法で乾燥させることができる、例えば凍結乾燥またはスプレー乾燥するこ
とができる。本発明の非デキストラン鉄サッカリド複合体は、SFGCS、FHSCおよ
びそれらの混合物、ならびに本明細書に開示したテクノロジーを用いて合成されている、
または合成できる他の鉄サッカリド複合体を含むことができる。さらに、本発明の鉄サッ
カリド複合体は、鉄分補給療法を必要とするヒトもしくは動物被験者を治療するために有
用な非経口鉄分医薬組成物を調製するために使用できる。
【0010】
本発明は、多種多様な鉄サッカリド複合体の製造に適合する単純であるが洗練された合
成スキームを提供する。結果として、そのような生成物は望ましくない副生成物をほとん
ど生じさせずに製造でき、改良された医薬上の品質に変換させることができる。
【0011】
本発明において、「造血剤」は、哺乳動物、特別にはヒトの血液中の赤血球数および/
またはヘモグロビン濃度を増加させる傾向を示す状態で鉄を含有する化合物または組成物
を意味する。結果として、本発明の鉄サッカリド複合体は、有効造血性化学種(active he
matinic species)もしくはAHSである、または有効造血性化学種もしくはAHSを含む
。これらの複合体は、さらにまたFe(III)およびサッカリドの状態、通常はアニオ
ンの状態で鉄を含有する。本発明のために、そのような鉄サッカリド複合体からは当分野
の鉄デキストランは除外される。本発明を用いて製造できる鉄サッカリド複合体の例には
、スクロース中のグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体(SFGCS)および水酸化第二鉄
スクロース複合体(FHSC)などの化学種が含まれる。
【0012】
本発明において、「イオン」としてのFe(III)および(OH)-との言及には、
個別のこれらの実体、ならびに例えばFe(OH)2+またはFeOH2+またはFe(OH
4-などの大きなイオン種中におけるそれらの存在が含まれる。
【0013】
用語「複合体」は、当分野における様々な状況においてまた別の意味を有する可能性が
ある。1つの意味では、用語「複合体」は、所与の条件下で単一の実体として存在または
作用する比較的に低分子量の非ポリマー組成物を形成するための2つ以上のイオン間の会
合を記載するために使用できる。このタイプの「複合体」は、「一次複合体」とも呼ばれ
てきた。あるいは、用語「複合体」は、相当に大きな高分子の特性を有する複数の一次複
合体の会合または凝集を説明するために使用されてきた。そのような複合体は、ときには
「二次複合体」と呼ばれることもある。本発明のためには、用語「複合体」はこれらの大
きな凝集体を意味する。それらの分子量を考えると、そのような複合体はときには高分子
量高分子であると特性付けられる。
【0014】
さらに、本明細書で使用する用語「複合体」は、一次複合体が形成されるかどうかにか
かわらず、特別にはFe(III)および所定のサッカリドの高分子量高分子または凝集
体を意味することは理解されるであろう。そこで、その最も広い意味では、本明細書で使
用する用語「複合体」は、約25,000ダルトンおよび好ましくはそれ以上(例えば1
00,000ダルトン以上)の絶対重量平均分子量(absolute weight average molecular
weight)を達成する反応生成物の状態にあるFe(III)および所定の糖の分子、凝集
体または会合を意味する。本発明のためには、下記の用語は、Hawley's Condensed Chemi
cal Dictionary,13th Ed.,Revised by R.J.Lewis,Sr.,(John Wiley & Sons,1997)から採
用した、指示された意味を有する。「懸濁液」は、その中で極めて小さな微粒子(本発明
においてはそのような微粒子はコロイド状サイズ、例えば約1〜約100nmである)が
多かれ少なかれ液体媒体、さらに本発明では典型的には水などの水性媒体中に均質に分散
している系である。コロイド懸濁液は、さらにまたコロイド溶液とも呼ばれ、文献中では
「溶液」と呼ばれることが多い。本発明では、用語「溶液」はコロイド溶液、コロイド懸
濁液、またはコロイド分散液と互換的に使用される。各々の場合において、コロイドサイ
ズの微粒子は、本発明の方法によって合成された複合体である。さらに、「分散液」は二
相系であり、1つの相が微細に粉砕された微粒子を含み、上記のように、本発明において
はそのような微粒子はコロイドサイズで、バルク物質(例えば水相)の全体に分散してお
り、微粒子が分散相もしくは内相であり、バルク物質が連続相もしくは外相である。上述
したように、液体中に固体を含むコロイド分散液もまた時々溶液と呼ばれている。
【0015】
本発明において、一般用語「賦形剤(excipient)」には、鉄サッカリド複合体などの治
療的に有効な鉄分含有化学種を備える混合物中に存在する、合成反応副生成物および未反
応出発物質、分解副生成物、希釈剤、緩衝剤、保存料、塩などを含む、例えば鉄欠乏症を
防止するために所望の造血性反応を示さない成分、化合物および複合体が含まれる。特に
望ましくない賦形剤は、一般にAHSを合成するための方法または合成後のAHSの分解
の結果として、例えば典型的には後合成処理の結果として、または貯蔵の結果として生じ
る賦形剤である。AHSを含む非経口組成物へ意図的に添加される賦形剤は、そのような
望ましくない賦形剤とは区別しなければならない。意図的に添加される賦形剤は、より正
確に特性付けられ、上述した望ましくない賦形剤もしくは単なる「賦形剤」からそれらを
区別するために「添加物」として識別される。
【0016】
物質、例えば薬剤、または本発明の場合には本発明の鉄サッカリド複合体の非経口投与
は、消化管以外を経由するいずれかの手段による導入を意味する。詳細には、それには、
皮内、静脈内、皮下、筋肉内、関節内、滑液内、髄腔内、クモ膜下、心臓内もしくは骨髄
内注射または約30分間以上の持続注射が含まれる。
【0017】
本発明の鉄サッカリド複合体中に存在する鉄は、Fe(III)もしくは第二鉄の状態
であって、第一鉄、Fe(II)の状態ではない。有用なサッカリドには、特に糖および
糖誘導体が含まれる。「糖」には、例えばグルコースなどのモノサッカリドアルドースが
含まれる。「糖誘導体」には、グルコン酸として知られるカルボキシル化グルコースなど
の糖の誘導体が含まれる。グルコン酸は、グルコース酸化生成物である。ソルビトールと
しても知られるグルシトールは、グルコース還元生成物であり、同様に糖誘導体である。
起源のモノサッカリド、例えばグルコースとその反応生成物とは、どちらも現在は酸化形
または還元形であっても、特徴的なサッカリド基の徴候を保持している。酸化サッカリド
基には、適切なpH条件下ではそのイオン化定数およびpKa値にしたがってイオン化で
きるカルボキシル基が含まれる。イオン化されると、酸化サッカリド基は「サッカラート
」と表示できる、またはイオン化可能なプロトンが酸化糖基とともに残っているサッカリ
ド酸と記述することができる。サッカリド基のイオン化カルボキシル基がナトリウムなど
のカチオンと結合すると、サッカリド酸塩が形成される。例えば、グルコースの酸化はグ
ルコン酸を生じさせ、このサッカリド酸のナトリウム塩はグルコン酸ナトリウムである。
その他の適切な糖誘導体には、すぐ上で言及した本発明の方法において糖または糖誘導体
と類似の方法で反応する糖誘導体が含まれる。有用な誘導体は、エリソルビン酸もしくは
D−アラボアスコルビン酸としても知られるイソアスコルビン酸である。本発明の方法に
おいて反応すると、イソアスコルビン酸は中間体2,3−ジケトグルコン酸を形成する。
後者は、糖が出発物質として使用される反応において生成される中間体であるとも考えら
れる。
【0018】
アルドースであるモノサッカリドは一般に、酸化されるとそれらのサッカリド酸同等物
を生じさせる、またはイオン化されると、モノサッカラート形は+1から+3の原子価状
態を有する選択されたカチオンと相互作用することができる。
【0019】
グリセルアルデヒドは、糖誘導体のまた別の形態であるアルド基などを示す極めて単純
な構造であるが、他方ジヒドロキシアセトンはケト基を含む糖誘導体の対応する例として
機能する。6個の炭素原子を用いたそのような構造の伸長は、2つの炭水化物の分類(1
つの形態はアルドースであり、もう1つの形態はケトースである)に対応する。
【0020】
本発明は、ヒトおよび動物の両方を含む哺乳動物への非経口投与に適合する高分子量の
非デキストラン含有鉄サッカリド複合体を調製または合成するための方法を提供する。
【0021】
本発明の方法において有用な反応物には、下記の成分が含まれる。下記に列挙した順序
は、方法における添加の順序を意味しない;以下ではそのような方法の詳細を記載する。
【0022】
少なくとも1つのサッカリド。上述したように、これは糖もしくは糖誘導体を含むこと
ができる。本発明のために、用語「糖」には、モノサッカリド、オリゴサッカリド(相互
に結合した約10個までの単純な糖を含有するサッカリド、そしてこのためジサッカリド
はオリゴサッカリドの定義の範囲内に含まれる)が含まれる。「糖誘導体」には、例えば
カルボニル基(アルジトール)の還元、1つ以上の末端基からカルボキシル基への酸化、
水素原子、アミノ基、チオール基もしくは類似のヘテロ原子基による1つ以上のヒドロキ
シ基の置換などによる、そのようなモノサッカリドおよびオリゴサッカリドに由来する化
合物が含まれる。これには、さらにまたこれらの化合物の誘導体も含まれる。一部の例で
は、本明細書では文献の中で見いだされる正式クラスの誘導体に対する略記として簡易表
現を使用しているが、例えば用語「アルコール誘導体」は、本明細書ではより正式な用語
「アルジトール」の同等物として使用されている。本発明において:
【0023】
一般用語「モノサッカリド」(オリゴサッカリドもしくはポリサッカリドとは対照的に
)、他のそのような単位とのグリコシド結合を伴わない単一単位を意味する。これには、
アルドース、ジアルドース、アルドケトース、ケトースおよびジケトース、ならびにデオ
キシ糖およびアミノ糖、そしてそれらの誘導体が含まれる。結果として、用語「モノサッ
カリド」には本発明において言及する糖および糖誘導体の両方が含まれる。
【0024】
アルドースおよびケトース:アルデヒド性カルボニル基を備えるモノサッカリドはアル
ドースと呼ばれる;ケトン性カルボニル基を備えるモノサッカリドはケトースと呼ばれる
。ケトアルドース(アルドケトース、アルドスロース)は、アルデヒド基およびケトン基
を含有するモノサッカリドである。
【0025】
デオキシ糖:アルコール性ヒドロキシル基が水素原子によって置換されているモノサッ
カリドはデオキシ糖と呼ばれる。
【0026】
アミノ糖:アルコール性ヒドロキシル基がアミノ基によって置換されているモノサッカ
リドはアミノ糖と呼ばれる;ヘミアセタール性ヒドロキシル基が置換されている場合は、
化合物はグリコシルアミンと呼ばれる。
【0027】
アルジトール:モノサッカリド内のカルボニル基のCHOH基との置換から外見上発生
する多価アルコールは、例えばグリセロールを含み、アルジトールと呼ばれる。
【0028】
アルドン酸:アルデヒド基のカルボキシ基による置換によってアルドースに外見上由来
するモノカルボン酸は、アルドン酸と呼ばれる。
【0029】
ケトアルドン酸:第二CHOH基のカルボニル基による置換によってアルドン酸に外見
上由来するオキソカルボン酸はケトアルドン酸と呼ばれる。
【0030】
ウロン酸:CH2OH基のカルボキシ基による置換によってアルドースに外見上由来す
るモノカルボン酸は、ウロン酸と呼ばれる。
【0031】
アルダル酸:両末端基(CHOおよびCH2OH)のカルボキシ基による置換によって
アルドースから形成されたジカルボン酸はアルダル酸と呼ばれる。
【0032】
グリコシド:グリコシドは、糖のヘミアセタール性もしくはヘミケタール性ヒドロキシ
基と第2化合物のヒドロキシ基との間の水の除去によって外見上発生した混合アセタール
である。2つの成分間の結合は、グリコシド結合と呼ばれる。
【0033】
オリゴサッカリド:オリゴサッカリドは、モノサッカリド単位がグリコシド結合によっ
て結合されている化合物である。単位数にしたがって、それらはジサッカリド、トリサッ
カリド、テトラサッカリド、ペンタサッカリドなどと呼ばれる。本発明において有用なオ
リゴサッカリドには、約2〜約10単位を有するオリゴサッカリドが含まれる。ポリサッ
カリドと対照区別して、用語「オリゴサッカリド」は一般に、特定されない長さのポリマ
ーもしくは同種混合物とは対照的に規定された構造と呼ぶために使用される。結合がその
他のタイプである場合は、これらの化合物はオリゴサッカリドアナログであると見なされ
ており、同様に有用な可能性がある。ジサッカリドは、特に本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
本発明において有用な糖には、単純糖ならびに複合糖と呼ばれる糖を含むモノサッカリ
ドおよびジサッカリドの両方が含まれる。典型的なモノサッカリドはC3〜C6化合物であ
り、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトロース、リボース、リブロース
、ソルボース、キシロース、およびアラビノース、ならびに例えばフルクトース(レブロ
ースとしても知られる)やグルコース(デキストロースとしても知られる)、さらにガラ
クトース、およびマンノースなどのより一般的な糖が含まれる。ジサッカリドには、制限
なく、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、メ
リビオース、プリメベロース、ルチノース、トレハロースおよびラクトースが含まれる。
【0035】
特に有用な糖、ならびに糖誘導体は、多かれ少なかれ、例えば周囲温度(例、約20℃
〜約25℃)または周囲温度よりいくらか高い温度(例、約25℃〜約50℃)で、さら
に特定の1つのサッカリドならびにその他の存在する反応物の濃度に依存して、実質的に
水溶性である。天然および合成の糖および糖誘導体はどちらも、それらが存在する場合は
、光活性回旋形、すなわち偏光の右もしくは左旋光性を示す形態を含めて;言い換えると
D(またはプラス、+)およびL(またはマイナス、−)両方のエナンチオマー形ならび
にラセミ体混合物を含めて、有用である。
【0036】
有用な糖には、還元糖ならびに非還元型と特徴付けられる糖が含まれる。グルコースお
よびマルトースは、還元糖の典型的な例であり、還元反応を特性付けるための根拠である
と見なされるアルデヒド基を含有する。スクロースは、非還元糖の例である。
【0037】
本発明において有用であるサッカリドのクラスとは対照的に、デンプン、セルロース、
デキストランおよびデキストリンなどのポリマーサッカリドまたはポリサッカリドは有用
ではない。そこで、本発明の鉄サッカリド複合体は、好ましくは僅かな量のポリサッカリ
ド以外の何も含有していない、例えば実質的にポリサッカリドを含有していない。詳細に
は、鉄サッカリド複合体はそのような鉄サッカリド複合体が非経口投与される患者におい
て有害な、詳細には重度のアレルギー反応を引き起こすであろう濃度のポリサッカリドを
含有していない。
【0038】
酸、塩、メチルエステル、酢酸エステル、アミン、および上記の糖のいずれかに基づく
アルコールを含む糖誘導体は、本発明において有用なサッカリドである。酸には、グルコ
ン酸;グルカル酸;フルクトースのヒドロキシ酸;α−メチルカプロン酸;アルドン酸;
アルダル酸;マンナル酸;ウロン酸;ガラクツロン酸;グルクロン酸;マンヌロン酸;キ
シラル酸;酒石酸;粘液酸;グリセリン酸;乳酸;酒石酸;アラビノース、グルコースお
よびマンノースのジカルボン酸;マルトビオン酸;およびラクトビオン酸が含まれる。糖
の塩誘導体には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチ
ウムおよびマグネシウムからなる群より選択される金属を含む、糖酸のアルカリ金属およ
びアルカリ土類金属が含まれる。特に有用な塩は、グルコン酸ナトリウムである。アミン
には、例えば、フコサミン(2−アミノ−2,6−ジデオキシガラクトースとしても知ら
れる)、ガラクトサミン(もしくは2−アミノ−2−デオキシガラクトース)、アコサミ
ン(もしくは3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−L−キシロ−ヘキソース)、バシ
ロサミン(もしくは2,4−ジアミノ−2,4,6−トリデオキシ−D−グルコース)、
グルコサミン(もしくはCH2OH(CH2O)3CHNH2CHO)などが含まれる。アル
コールには、例えば、マンニトール、ソルビトール(より正確には、グルシトール)、ア
ラビニトール、キシリトール、フシトール、ラムニトール、エリトリトール、リビトール
、ガラクチトール、グリセロールなどが含まれる。
【0039】
この方法は、(2)可溶性もしくは分散性第二鉄、すなわちFe(III)イオンの状
態にあるそのような鉄を含むFe(III)化合物、をさらに利用する。Fe(III)
の起源として有用な特定化合物には、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、水酸化第二鉄、硫酸第二
鉄、酢酸第二鉄、炭酸第二鉄、およびクエン酸第二鉄が含まれる;水酸化第二鉄は特別に
有用である。水酸化第二鉄の式は、Fe(OH)3もしくはFe23・3H2Oと表すこと
ができる。直前に挙げた塩などの第二鉄塩、ならびにこの方法において有用な可能性のあ
るいずれかの塩は、典型的には本発明においてインサイチューで水酸化第二鉄を発生させ
る手段として使用される。好ましくは、第二鉄塩は少なくとも一部には水溶性であり、本
方法の条件下で水酸化物へ転換することができる。
【0040】
特に有用であるのは、コロイド状に分散した状態にある水酸化第二鉄である。コロイド
は、真溶液(true solution)と懸濁液(suspension)との物理的状態中間体と見なされる。
本発明のためには、「真溶液」は、1種以上の他の物質、溶媒もしくは溶媒相中の1種以
上の物質、溶質もしくは溶質相の分子もしくはイオンレベルで一様に分散した混合液を意
味している。特に水酸化第二鉄のために有用なコロイド粒径には、約1〜約100ナノメ
ーターの粒径が含まれる。水性コロイドはときにヒドロゾルと呼ばれるので、水酸化第二
鉄ヒドロゾルは水中の水酸化第二鉄コロイドである。本発明のために、用語「溶液」には
「真」溶液ならびにそのような状態の分散液、コロイド、ヒドロゾルおよび混合物、例え
ば糖溶液および水酸化第二鉄ヒドロゾルを含む水性混合物が含まれると理解されるであろ
う。
【0041】
本発明の鉄サッカリド複合体を生成するために使用される反応は、好ましくは水性もし
くは実質的に水性の反応媒体中で実施される。「実質的に水性」とは、流体反応媒体が鉄
サッカリド複合体の合成を防止しないタイプおよび濃度で非水性成分を含むことができる
ことを意味している。しかし、少なくとも一部の水が存在しなければならない;好ましく
は存在する希釈剤の少なくとも大半は水である。本方法によって企図される反応は、所望
の量の生成物を生成するために必要な反応物の量にとって任意の適切なサイズの反応装置
中で実施できる。さらに、反応装置および関連装置は、例えば銅、ステンレススチールも
しくは他の合金などの様々な金属を含む、反応を実施するために適切な任意の十分に耐食
性の物質から構築することができる。詳細には、反応装置は、ガラスもしくは合成プラス
チックでライニングされた反応装置をさらに含む、使用したpHレベルで反応物による腐
食に対して抵抗性である金属もしくは合金から構築することができる。あるいは、ガラス
製反応装置を使用できる。好ましくは、反応装置は、微量金属汚染物質を含んでいない生
成物を生成できるようにガラスであるか、もしくはガラスでライニングされている。
【0042】
これらの反応物は、水性の溶液、懸濁液、分散液もしくはコロイド懸濁液として導入で
きる。少なくとも一部の反応物、例えば糖もしくは糖誘導体などの少なくとも1つのサッ
カリドは、微粒子固体として導入でき、反応を実施する前に水もしくは希釈剤中に溶解も
しくは分散させることができる。水酸化第二鉄溶液として提供されない場合は、第二鉄イ
オンの起源は、典型的には水溶液中の塩、例えば塩化第二鉄として導入される。好ましく
は、この塩はそれを水酸化第二鉄へ変換させるために塩基と、例えば炭酸ナトリウムと反
応させられるであろう、すなわち、その後は(OH)-イオンの存在下で反応混合物中に
第二鉄イオンが存在するであろう。インサイチューで形成された水酸化第二鉄は溶液中に
存在できるが、典型的には分散形またはコロイド形にある;コロイドが最も好ましい。一
般に、コロイドは機械的粉砕、超音波による照射、電気的分散ならびに化学的方法によっ
て調製できる;本発明においては化学的方法が特に有用である。磁気記録媒体において特
に有用である水酸化第二鉄コロイドを形成するための調製方法は、米国特許第6,440,545
号に記載されており、許容される程度まで参照して本明細書に組み込まれる。
【0043】
これらの方法には、アルカリ水酸化物もしくはアルカリ炭酸塩の水溶液を第二鉄塩、例
えば塩化第二鉄もしくは硫酸第二鉄の水溶液を添加するステップ、およびその後酸素含有
ガスを混合物中に気泡化することによって反応物を酸化するステップとが含まれる。また
別の方法は、第二鉄イオンに関して5℃以上の温度で沈降物を形成するために十分な濃度
でアルカリ水酸化物の水溶液を第二鉄塩の水溶液へ添加するステップと温度をより高い数
値へ上昇させるステップとを含む。
【0044】
水酸化第二鉄で過飽和した水性コロイド分散液の調製は、許容される程度まで参照して
本明細書に組み込まれる米国特許第6,271,269号における貯蔵安定性有機ゾルの調製にお
ける予備ステップとしても記載されている。この特許は、所望のコロイドを生成するため
に必要な反応物の濃度およびpH条件について記載している。例えば、有用な第二鉄塩に
は、第二鉄塩、特別には塩化第二鉄および硝酸第二鉄の任意の水溶液が含まれる。塩基性
媒体もしくは反応物は、例えば水酸化アンモニウム、ナトリウムもしくはカリウムの水溶
液である。好ましくは、鉄塩溶液は、含有している凝固しているアニオンが5%未満であ
るように選択される。水性鉄塩溶液および水性塩基溶液の濃度は、この特許の第5段に記
載した式によって説明および調整される。この反応混合物は、5分間から8時間にわたり
15℃〜80℃で熱処理される。コロイド粒径が100〜700Åの範囲にわたるコロイ
ド分散液が入手される。本発明では過飽和した水酸化第二鉄水溶液を必要としないが、こ
の参考文献は潜在的に有用な選択肢を提供する。
【0045】
本発明のために、第二鉄塩の加水分解による水酸化第二鉄の調製はさらにまた、例えば
塩化第二鉄、硝酸第二鉄、酢酸第二鉄、硫酸第二鉄、ならびに硫酸第二鉄アンモニウムや
硫酸第二鉄カリウム、およびそれらの混合物を含む二重塩などの塩を用いて実施すること
もできる。加水分解共反応物は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび炭酸ナ
トリウムを含むアルカリ金属水酸化物または炭酸塩であってよい。第一鉄化合物、例えば
塩もしくは水酸化物から出発して、第一鉄イオンを第二鉄イオンへ酸化することは可能で
はあるが、医薬上許容される複合体は第二鉄イオン、Fe(III)を必要とする。その
結果として、第一鉄化合物を使用する場合は、残留第一鉄含有未反応試薬または副生成物
を除去するために注意を払う必要がある。これらをまとめると、第二鉄イオンに基づく出
発物質を使用するのが好ましい。
【0046】
サッカリド、例えば糖および/または糖誘導体を第二鉄化合物、例えば水酸化第二鉄と
接触させるステップは、好ましくは温度およびpHの制御条件下で実施される。
【0047】
典型的には、第二鉄塩の水溶液が最初に調製されるが、水酸化第二鉄は本発明の方法に
使用するために個別に調製できる、または購入できる。第二鉄塩が使用される場合は、塩
の水溶液は使用される特定の塩に依存して変動する平衡もしくは初期pHを有するであろ
う。例えば、本発明の方法において有用な塩化第二鉄溶液のpHは、典型的には約1.7
である。塩基性添加物、例えば炭酸ナトリウム(Na2CO3)が典型的には溶液として導
入される;この混合物は、好ましくはこの作動中にしっかりと攪拌される。任意選択的に
、しかし好ましくは、本方法のこのステップ中には、混合物は、例えば、典型的には約2
0℃〜約75℃の温度へ;好ましくは約25℃〜約70℃へ;より好ましくは約40℃〜
約65℃へ;例えば、約25℃〜約50℃へ緩徐に加熱される。この段階での過剰な加熱
は望ましくない。例えば、約75℃より高い温度は、水酸化第二鉄を酸化および/または
凝固させて沈殿させる可能性を作り出すが、これらはいずれも有用ではない。混合物を混
合および加熱するステップは、例えばNa2CO3が使用される場合は、反応によって生成
したCO2の除去を促進できる。相違する塩基性物質が使用される場合は、そのような混
合および中等度の加熱するステップは反応の完了を促進することができる。任意で、二酸
化炭素の除去をさらに助長するために真空を適用することができる。
【0048】
実質的に全ての第二鉄塩を水酸化第二鉄へ変換させるために方法におけるこの段階で十
分な塩基が添加されている場合は、水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは典型的には約1.5
〜約2である。追加の塩基を添加できるが、鉄サッカリド複合体の形成を妨害するであろ
う程度まで水酸化第二鉄の沈降を生じさせる可能性がある過剰の塩基を回避するために注
意を払わなければならない。好ましくは、反応物は、成分間での接触および反応を促進す
るために方法のこの段階および後の段階中に混合または攪拌される。そのような混合を遂
行するためには、例えば連続式攪拌タンク型反応装置の使用を含む、任意でマントルヒー
タ、伝熱管などの加熱および/または冷却手段を含む、様々な従来型手段を使用できる。
【0049】
水酸化第二鉄が形成された後、少なくとも1つのサッカリド(糖および/または糖誘導
体)が添加される。例えば炭酸ナトリウムが反応物として使用された場合に追加のCO2
生成が存在しないことによって示されるように、大多数、実質的に全部、およびより特別
には全部の第二鉄塩が水酸化物に変換された後にサッカリドが添加されるのが特に好まし
い。サッカリドは固体として添加できる、またはそれを水酸化第二鉄成分に添加する前に
水中に溶解または分散させることができる。
【0050】
この混合物のpHは、好ましくは、典型的には塩基性物質の添加によって増加させられ
る。便宜上、方法のこの段階は滴定ステップと呼ぶことができる。好ましくは、しかし不
可欠ではないが、水酸化第二鉄を形成する際に使用された物質と同一の塩基性物質が使用
される。一例として、塩化第二鉄および炭酸ナトリウムが水酸化第二鉄ヒドロゾルを形成
するために水性系中で接触させられる;好ましくは、水性混合物はこのステップ中および
それ以後のステップ中にしっかりと攪拌される。このヒドロゾルのpHは典型的には約1
〜約2であり、塩化第二鉄から水酸化第二鉄への完全な、または実質的に完全な変換を特
徴付ける。鉄サッカリド複合体の形成のために十分な水酸化第二鉄が存在することを前提
にすると、反応装置に最初に添加された第二鉄塩の全部が水酸化第二鉄へ変換されること
は必須ではない。さらに、この方法の最後には、もし存在する場合は、未変換第二鉄塩お
よび/または未反応水酸化第二鉄が鉄サッカリド複合体から分離されることが好ましい。
グルコン酸ナトリウムが混合物に添加される。水酸化第二鉄ヒドロゾルを形成するために
、好ましくは最初に使用されたより濃縮された溶液の状態にある追加の炭酸ナトリウムが
、混合物のpHおよび/または外観および条件を監視しながら、所望の終点に到達するま
で漸増的に混合物へ添加される。
【0051】
その後の塩基性物質の添加の結果として、反応混合物中では変化を観察できる。pHの
上昇に加えて、反応塊中で色の変化を観察できる。塩化第二鉄などの第二鉄塩の水溶液は
、典型的には黄色を有する。塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムの添加
は、約1〜約3のpHで水酸化第二鉄および赤色もしくは赤褐色への色の変化を生じさせ
る。理論によって結び付けることを望まなくても、さらにより多くの塩基性物質の添加に
よって引き起こされるpHのそれ以上の上昇はいっそうの大きな色の変化として観察され
るのに十分な水酸化第二鉄のコロイド粒子のサイズまたは凝集の増加を引き起こす。特別
には、追加の塩基性物質が添加されるにつれて、塩基性物質が導入される混合物領域にお
いて乳濁状の褐色を観察できる;塩基の局所濃度は、添加された塩基が混合の結果として
分散するまでは混合物中のその時点では高濃度であると理解できる。これはその終点に近
付く滴定反応とほとんど変わらない。より高度の塩基性物質が添加されてpHがいっそう
上昇するにつれて、色の変化は最終的には反応混合物全体で持続する。温度が十分に高い
、例えば約20℃より高温であることを前提にすると、混合物中で色の変化が持続する時
点の近くでは、水酸化第二鉄がさらにまたグルコン酸ナトリウムと反応する場合もある。
しかし、この時点までに、特に塩基が添加される混合物中の中間体領域では、鉄サッカリ
ド複合体を形成する反応が既に始まっていると考えられる。さらにより多くの塩基性物質
が添加されるにつれて、混合物の色はより濃い赤褐色に変化し、次に乳濁状の外観が消失
し、混合物は透明化して濃い赤褐色が残留する。混合物はこの時点に透明であると思われ
るが、水酸化第二鉄および/または鉄サッカリド複合体は真溶液としてよりむしろコロイ
ド状で存在すると考えられる。いずれにせよ、鉄サッカリド複合体が存在すると考えられ
る。
【0052】
反応混合物の色および外観に基づいて鉄サッカリド複合体の形成についての詳細な証拠
は、グルコン酸ナトリウムの非存在下または存在下で塩化第二鉄へ炭酸ナトリウムを添加
するステップによって滴定が実施された比較実験に基づいて観察されている。塩基、例え
ば炭酸ナトリウムの添加がグルコン酸ナトリウムの非存在下で実施される場合は、反応混
合物は約3〜約6のpHで乳濁状の外観を有し、炭酸ナトリウムの持続的添加は全体的な
沈降物の形成を生じさせる;この混合物は透明にはならない。これとは対照的に、塩基の
添加がグルコン酸ナトリウムの存在下で実施される場合は、混合物は約3〜約3.5のp
Hで乳濁状の外観を呈し、約6のpHまでは乳濁状の外観を有し続ける。しかし、炭酸ナ
トリウムのさらにそれ以上の添加は、約9のpHで混合物が透明化して色が濃赤褐色へ変
化することを引き起こす。完全に透明化する前に、1滴もしくは少量の塩基水溶液を添加
する、液滴のすぐ近傍で混合物が透明かつ色が濃赤褐色になることを引き起こす。添加さ
れた塩基が反応混合物の本体内に攪拌または分散されるにつれて、全体的に濁った外観は
反応の「終点」に到達するまでに元に戻り、その時点で混合物は透明化して上述したよう
に濃色になる。これは、最初に存在する、水酸化第二鉄の全部でなければ大部分がより高
いpHでは鉄サッカリド複合体に変換されることを示唆するが、少なくとも一部は例えば
約6のようなもっと低いpHで形成されると考えられる。いずれにせよ、pHに関連して
上述した遷移点および終点は、さらに濃度、反応物相対比および反応が実施される温度に
依存する可能性があることを理解されたい。
【0053】
反応混合物中の色の外観および溶液によって達成される色は、プロセス制御ツールとし
て使用できる。さらに、混合温度が十分であることを前提に、最初の乳濁状褐色の外観は
可能性のあるサイズの変化および可能性のある複合体形成の発生を指示する。理論によっ
て結び付けることを望まなくても、(OH-)の存在下での第二鉄イオンおよびサッカリ
ドを含む反応混合物全体に、乳濁状の褐色が実質的に持続する時点が、完全に混合してい
る場合でさえ、反応条件(pH、温度および濃度の組み合わせを含む)が複合体形成を達
成するために十分であり、そのような複合体形成が持続的な、自続式反応を実施できるこ
とを指示していると考えられる。便宜的に、この条件を「複合体集合点」と呼ぶ。しかし
、複合体集合点に色の変化とは無関係に到達できることも考えられる。このため、色の変
化は有用なツールである可能性があるが、限定的変量であることは企図されていない。
【0054】
複合体集合点は、鉄サッカリド複合体を形成するための反応混合物内での数種の変量の
相互作用に左右される。結果として、単一値またはプロセス変量:第二鉄イオンの濃度;
pH;サッカリドのタイプ(混合物が使用される場合は複数のサッカリドのタイプ)およ
び濃度;ならびに温度の各々についての数値範囲ではなくむしろ複合体集合点と呼ぶのが
便宜的である。本発明の所定の系については、複合体集合点は約25,000ダルトン以
上、例えば約100,000ダルトン以上の絶対重量平均分子量を有する鉄サッカリド複
合体の形成を可能にするために必要である最小の条件セットである。例えば、成分の濃度
およびpHは十分であるが温度が低すぎる場合は、複合体集合点は確立されず、反応混合
物を例えば約5.5のpHおよび約20℃の温度で維持するステップは、時間を延長した
場合でさえ鉄サッカリド複合体を生成しないであろう、または実質的もしくは商業的に実
現可能ではない時間枠で生成する可能性がある。この例の条件下では、温度を例えば約6
0℃へ上昇させるステップは、鉄サッカリド複合体を詳細には有用な量で一晩で形成させ
るために十分なことがある。さらに、複合体集合点は最小の条件セットによって達成でき
る可能性があるが、1つ以上の制御変量、詳細にはpHおよび温度を上昇させるとより効
率的な反応を、そしてもしかすると鉄サッカリド複合体の分子量および/または分子量分
布のより良好な制御を生じさせることができることを理解されたい。
【0055】
色および色の変化を評価するために有用な器具は、Hunter Color Difference Meter(Hu
nter Associates Laboratory社、バージニア州アレクサンドリア)である。この器具は、
反射光線および透過光線を測定し、光線関数(白−黒軸)であるL;赤色(赤−緑軸)を
予測するa、および黄色(黄−青軸)を予測するbに関する結果を生み出す。計算方法は
当業者には周知であり、典型的には国際照明委員会(International Commission on Illum
ination)もしくはCIEの基準に基づいている。
【0056】
塩基の添加により望ましくない量の水酸化第二鉄沈降物が生じ、それによってサッカリ
ドを添加する前に反応混合物からFe(III)が除去されることがないことを前提に、
pHを約2から例えば約6へ上昇させた後にサッカリドを水酸化第二鉄ヒドロゾルへ添加
することが可能である。あるいは、複合体集合点のpHレベルより高いpHレベルを達成
した後に、水酸化第二鉄を形成または添加することができ、これにより、その後の塩基の
添加に対する必要が排除される。しかし、反応混合物中に存在する実質的に全部の第二鉄
塩を水酸化第二鉄へ変換させるために必要とされるより多量には過剰な塩基が使用されな
かったことを条件に、滴定ステップが使用され、複合体集合点に到達または超えた場合は
、混合物のpHが最初の水酸化第二鉄/糖混合物の出発時pHから大きく上昇したことが
観察されるであろう。例えば、水酸化第二鉄ヒドロゾルが形成される場合に混合物のpH
が最初は約2〜約3のレベルにある場合は、複合体集合点のpHは約5.0以上;あるい
は約5.3以上;例えば、約5.5以上;もしくは約5.7以上;または約6以上であっ
てよい。複合体集合点に達する、もしくは超えるために十分なpHレベルは、プロセス条
件、特別には温度および反応混合物中に存在する反応物、サッカリドもしくはサッカリド
混合物に依存するであろう。塩基性物質の添加は、反応混合物が透明化される時点(通常
はpHが約9以下である)の前に停止されるのが特に好ましい。しかし、スクロース、お
よびもしかすると他の非還元糖が使用される場合は、複合体集合点に到達するためには、
塩基性物質は好ましくは水酸化ナトリウムなどのより強度の塩基であり、pHをより強塩
基性条件へ、例えば約8.5〜約9.5のpHへ;例えば約9へ上昇させるために十分な
塩基性物質が添加される。
【0057】
驚くべきことに、本発明による少なくとも一部のプロセスについては、塩基性物質の添
加が複合体集合点もしくはそれをわずかに超えた時点に、しかし反応混合物中で乳濁状か
ら透明への転移状態が発生する(透明化は典型的には約7〜約10、例えばより典型的に
は約9のpHで発生する)時点の前に行われた場合は、そして混合物がさらに十分な温度
にあることを前提にすると、それ以上の塩基の添加は停止されてよいことが観察された。
これを言い換えると、複合体集合点に到達すると、鉄サッカリド複合体を形成する反応は
その後はpHのそれ以上の上昇に関して自続することができ、さらにもしかすると十分な
時間および温度の維持を前提に、実質的に完了するまで継続することができる。複合体集
合点もしくはそれを超えている反応混合物のpHは反応の完了時には複合体集合点に到達
した場合より高くなる可能性があることを観察できる;例えばpHが最初は約6であれば
、それは任意の中間時のpH調整を行わずに完了時には約9になる可能性がある。
【0058】
反応温度の作用もまた重要なことがある。例えば約60℃の中等度の温度および約6の
pHでは、高分子量鉄サッカリド複合体を生成するためには、約12〜約18時間、例え
ば約16時間を要する可能性がある。これとは対照的に、有意な熱を添加すると、例えば
滴定ステップ中もしくはそれ以降に温度を約95℃〜約100℃へ上昇させると、ほぼ同
一pHでは、約15分間で高分子量鉄サッカリド複合体を産生することができる。
【0059】
驚くべきことに、塩基性物質の添加が実質的に複合体集合点の前に中止されると、温度
がその後に有意に上昇させた場合でさえ、混合物のpH試験は塩基性物質の最終添加が行
われているレベルからのpHの低下を示す可能性がある。これは、反応混合物中の条件が
高分子量鉄サッカリド複合体の自続性形成のためには不十分であることを示していると考
えられる。例えば温度が少なくとも20℃を超えていることを条件に、塩基性物質の添加
によってpHを増加させるなどの、制御変量のうちの少なくとも1つにおける変化が不可
欠である。限定された実験を用いて、上述した反応混合物の色の状態は反応状態の便宜的
なインジケータとして使用できる。このため、本明細書に記載した教示に基づくと、規定
された制御可能な特性を有する鉄サッカリド複合体を生成するために例えば温度、pHの
組み合わせに基づいて明確に規定された限界内にプロセスを維持することができる。
【0060】
塩基性物質の添加が透明化が発生する時点の近くまで継続されると、複合体形成反応の
自続は生理学的に適切なレベルを超えた混合物のpHのいっそうの上昇を生じさせること
がある。例えば、高分子量鉄サッカリド複合体のpHは約10より高くてよい;例えば、
約10.5〜約11.5であってよい。しかし、反応混合物は任意選択的に、例えば少な
くとも1つの緩衝剤を含む当分野において周知の添加物を用いて、いっそう希釈する、も
しくは希釈剤のタイプを変化させることによって、鉄サッカリド複合体生成物のpHがそ
の後生理学的に適合するレベル、例えば約7.0〜約9.0のpHへ調整されることを前
提に、より高いpHレベルへ、透明化もしくはそれを超える時点にさえ持ち込むことがで
きる。
【0061】
水酸化第二鉄が第二鉄塩および塩基からインサイチューで生成される場合は、温度は好
ましくは約75℃未満で制御されるが、複合体集合点に達する、もしくはそれを超えるた
めに十分に高い。好ましくは、温度は約20℃より高い、例えば約25℃〜約70℃;よ
り好ましくは約40℃〜約65℃;あるいは、約45℃〜約70℃;例えば、約45℃〜
約65℃である。温度が低すぎる、例えば約20℃以下である場合は、複合体集合点には
到達しないことが多い。約25℃以上の温度が好ましい;その間に複合体が形成される約
25℃〜約50℃の温度では、結果として反応時間の延長および/または変換の減少が生
じることがある。これとは逆に、方法のこの段階での、例えば約85℃を超える、例えば
約75℃を超える高すぎる温度は許容されない。この段階で過剰の熱が適用されると、反
応混合物は、酸化および凝固し易くなり、結果として生成物が生成されない、または許容
されない生成物が生成する。複合体集合点が実質的に達成されると、中等度の温度でさえ
本発明の高分子量鉄サッカリド複合体を生成するために十分であることが観察されている
。例えば、約3,300,000の分子量を有するグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体の
有意な収率は、約20℃で約6のpHへ滴定し、その後に温度を約60℃へ上昇させて約
16時間の反応時間によって生成されている。
【0062】
少なくとも複合体集合点にあって反応物および/または生成物の実質的な酸化または沈
降を回避するために十分に低いことを前提に、絶対温度は重要ではないことに留意された
い。
【0063】
反応混合物は水性に基づく系である、すなわち水はこの反応混合物の成分である。好ま
しくは、少なくとも1つの有効反応物の水酸化第二鉄が好ましくはコロイド状で存在し、
鉄サッカリド複合体もまた好ましくはコロイドとして生成されるため、反応物は過度に高
濃度では接触させられない。過度に濃縮した反応混合物は、プロセス条件におけるわずか
な変動に起因して、過度に感受性である、例えば凝固しやすい反応混合物を生じさせる場
合がある。結果として、ガイドラインとして下記の濃度を用いて反応物が接触させられる
のが好ましい:約0.0046M〜約0.46M、好ましくは約0.02M〜約0.06
Mの糖および/または糖誘導体水溶液;約0.01M〜約3.00M、好ましくは約0.
02M〜約0.6Mの第二鉄塩水溶液;反応混合物のpHを達成するための約0.02M
〜約2.8M、好ましくは約0.04M〜約0.7Mの炭酸ナトリウムなどの塩基性物質
水溶液。水酸化第二鉄ヒドロゾルが個別に調製される場合は、ヒドロゾルが約0.06重
量%〜約16.8重量%、好ましくは約0.11重量%〜約3.34重量%のレベルで第
二鉄イオンを含有するのが好ましい。反応がスクロースなどの非還元糖およびアルカリ金
属水酸化物などの塩基性物質を用いて実施される場合は、適切な反応を実行するためによ
り塩基性の状態が必要とされることがあるので、例えば、後者はより高度に濃縮されてよ
い。例えば、アルカリ金属水酸化物の有用な濃度は、約0.5重量%〜約15重量%、好
ましくは約0.7重量%〜約10重量%である。
【0064】
有用な結果は、(1)糖および/または糖誘導体と、および(2)(OH)イオンの存
在下での第二鉄化合物、詳細にはFe(III)イオンと、のモル比が制御される場合に
入手される。一般に、(1):(2)のモル比は約30:1〜約1:30である;特別に
は、糖誘導体、例えばグルコン酸塩が使用される場合は、そのモル比は、グルコン酸塩ア
ニオンに基づいて約1:1〜約1:30、より好ましくは約1:2〜約1:25である。
非還元糖、例えばスクロースが使用される場合は、(1):(2)のモル比は、好ましく
は約30:1〜約1:1、より好ましくは約25:1〜約2:1である。驚くべきことに
、サッカリドが糖誘導体である場合は、グルコン酸塩などの過剰の糖誘導体の添加、また
は鉄サッカリド複合体を形成するために必要とされる過剰量の糖誘導体中への糖の組み込
みは、鉄サッカリド複合体の分子量を低減もしくは修飾する、例えば低下させることがで
きる。そのような作用は、過剰な糖が使用された場合は、一部には反応物の濃度および/
または存在する量に依存する可能性がある。一般に、そのような分子量の抑制は、非経口
投与のために有用な鉄サッカリド複合体にとって有用なレベルより下方のレベルへではな
い。例えば、糖の量が存在する第二鉄イオンのモル量にとって必要とされる量より過剰で
あるように、グルコン酸ナトリウムが反応させられるサッカリドである反応混合物へスク
ロースなどの糖が添加される場合に、分子量抑制作用が観察されている。結果として、過
剰な糖もしくは過剰な糖誘導体の使用は、所望レベルの生成物分子量を達成するために、
予想外の制御用ツール、または反応を低減するための方法を提供する。さらに、サッカリ
ド、例えば糖もしくは糖誘導体を用いて、本発明の方法によって生成された鉄サッカリド
複合体を加熱するステップは、同様に分子量の減少を引き起こすことができ、そして結果
として、さらに前記複合体の合成後の分子量を修飾する手段としても使用できる。一般に
、少なくとも約0.01〜約10,000%;あるいは、約0.1〜約1,000%;ま
たは約0.2〜約100%のモル過剰を制御目的のために使用できる。例えば、約5%〜
約25%過剰の糖もしくは糖誘導体は、そのような過剰の糖の不在下で生じたであろうそ
の分子量に比較して鉄サッカリド複合体の分子量を約50%〜約90%減少させることが
できる。
【0065】
水酸化第二鉄の形成、後者とサッカリドとの混合、および所望であればさらに塩基の添
加は、例えば室温または約20℃のような任意の便宜的温度で実施できる。反応は、混合
または反応混合物の温度が約20℃より高いことを前提に、サッカリドと水酸化第二鉄と
を混合する温度で実行し、そして塩基性物質を添加することができる。しかし、約25℃
〜約70℃の温度では、有意な収率で本発明の高分子量鉄サッカリド複合体を入手するた
めに、より長い反応時間を必要とすることがある。反応速度を増加させるために所望であ
れば、反応混合物の温度は、複合体集合点を達成した後に、少なくとも約80℃;好まし
くは少なくとも約95℃;例えば、約100℃〜約105℃へ上昇させられる。反応が周
囲圧力(ambient pressure)で実施される場合は、反応塊は沸騰に達することがあり、この
場合には加熱は還流条件下で実施できる。あるいは、水分および系の濃度の減少を生じさ
せるように、この系から水蒸気を除去することができる、または脱出させることができる
。反応が上昇した圧力下で実施される場合は沸騰を観察することはできないが、他方それ
が減圧下で実施される場合は、より低い温度で沸騰が発生することがある。
【0066】
望ましくは、高分子量鉄サッカリド複合体が数分後に有意な収率で形成される。これと
は逆に、温度の上昇が存在しない場合は、特に水酸化第二鉄の形成中の温度が相当に低い
、例えば約25℃〜約55℃である場合は、より長いた反応時間後に高分子量鉄サッカリ
ド複合体を測定可能な収率で入手できる。一部の量の鉄サッカリド複合体生成物はほとん
ど直後に、例えば数分間で形成される場合があるが、有意な量を生成するためには、各々
の場合に、特定温度およびその他の反応条件に依存して、例えば約168時間まで;また
は約72時間まで;または約24時間までのようにはるかに長時間を要する可能性がある
。あるいは、そして好ましくは、上昇した温度での加熱は、数分間、温度に依存して例え
ば約5分間から約2時間まで;好ましくは約8分間〜約1時間;より好ましくは約10分
間〜約30分間;例えば、約100℃で約15分間継続される。有用な時間/温度条件は
、反応混合物をサンプリングするステップと、鉄サッカリド複合体の収率および分子量の
両方を測定するステップとによって容易に決定できる。これらをまとめると、満足できる
収率での有用な生成物を数分間で、または約48時間という長時間で入手できる。反応の
終了時には、混合物のpHは好ましくは約8.5〜約9.5;例えば、約8.7〜約9.
3であるが、所望の生成物を生成するために、補助的加熱中、または複合体集合点を達成
した後に、pHを独立して制御する必要はない。
【0067】
本発明の教示に従うことによって、鉄サッカリド複合体はAHSを含み、絶対高分子量
、例えば、典型的には約25,000ダルトン超およびより特別には約30,000、5
0,000、75,000を超える、または100,000ダルトン以上を示す。一般に
、約100,000〜約50,000,000ダルトンの分子量を有する複合体を入手で
きる;例えば、約200,000〜約2,500,000;約250,000〜約1,0
00,000;または約275,000〜約850,000の分子量を容易に達成できる
。本発明において表示したように、分子量は重量平均分子量(Mw)を意味する;後者は
標準的な参考文献に規定されたとおりであり、そしてさらにこの用語は当業者に理解され
ているとおりである。例えば、Encyclopedia of Chemical Technology,4th Ed.Vol.l9,88
6-887(John Wiley & Sons,1996)を参照されたい。さらに、他に特別に説明しない限り、
本明細書に表示した分子量値は、下記に記述したように決定した「絶対」分子量であると
考えられる。鉄サッカリド複合体の最高に有用な分子量は、水などの担体液中でもはやコ
ロイド状では分散していない複合体によって限定される。これを言い換えると、鉄サッカ
リド複合体の分子量がもはや有用な非経口用生成物ではないほど高い場合は、その生成物
の絶対分子量を減少させるために1つ以上の温度、pHまたはその他の条件を調整する必
要がある。あるいは、上述したように、分子量を所望レベルへ低減する、例えば抑制する
ために、反応混合物または合成後の高分子量複合体へ分子量を制御する、または低減する
物質、例えば過度のグルコン酸塩もしくはスクロースを添加することができよう。上述し
た特定反応条件を調整することによって、様々な絶対分子量、例えば約125,000〜
約25,000,000ダルトン;150,000〜約10,000,000ダルトン;
175,000〜約2,500,000ダルトン;ならびに市販で入手できるグルコン酸
第二鉄ナトリウム複合体について報告されている約289,000〜約440,000ダ
ルトン、例えば417,600ダルトンなどの市販で入手できる生成物に類似もしくは同
等の分子量を有する生成物を含む、この範囲内の他の分子量を有する鉄サッカリド複合体
もしくはAHS組成物を目指すことができる。さらに、市販生成物の絶対重量平均分子量
が文献で報告されている絶対重量平均分子量とは相違する、または例えば約500,00
0〜約700,000ダルトンのように製造時点の絶対重量平均分子量より高いことが見
いだされれば、本発明の方法は、正確な所望の、もしくは適切な分子量を有する鉄サッカ
リド複合体の合成を許容するために十分に柔軟性である。特に有用な複合体は、約350
,000〜約750,000ダルトン;例えば、約500,000〜約700,000ダ
ルトンの絶対重量平均分子量(Mw)を有する。
【0068】
上述したように、現在市販されている生成物の実際分子量は一部で論争中である。例え
ば、Physician's Desk Reference(登録商標)of 2000ではゲル透過クロマトグラフィーに
よる分子量は、327,000〜373,000ダルトンの範囲を備える350,000
±23,000ダルトンであると報告された。どちらも同一化学構造式を参照している、
すぐ直前に言及した範囲とその範囲とを対比されたい。
【0069】
本発明の方法は、市販の生成物について言及した範囲のいずれかにおいて平均値で分子
量を有するグルコン酸第二鉄ナトリウムに基づいてAHSを生成することができる。さら
に、本発明の生成物は、合成時に(すなわち、下記に記載するように反応混合物からの限
定された分離を用いて);例えば米国特許第6,537,820号に教示されたように、合成およ
び実質的精製時に、スクロースなどの糖の存在下で合成して限定された、もしくは実質的
精製時に;またはそのような糖の非存在下で合成するが、合成後に糖を添加した場合に、
そのような分子量示す可能性がある。結果として、約25,000〜約288,000ダ
ルトンまたは約441,000ダルトン以上までの分子量を有するグルコン酸第二鉄ナト
リウム複合体AHSを生成できる。例えば、ダルトンでは、約25,000〜約285,
000もしくは約445,000以上;約25,000〜約275,000もしくは約4
50,000以上など。各々の場合に、「以上」との言及は、本発明の方法によって生成
できる生成物に関して上記に表示した分子量範囲の上端を意味すると理解されている。あ
るいは、本発明の教示および柔軟性を考慮すると、これらの様々な合成および精製の選択
肢は、すぐ直前に上述した範囲内の分子量へ、または本発明に関して上記に言及したいず
れかの分子量範囲、例えば約25,000〜約50,000,000ダルトンへグルコン
酸ナトリウム以外の少なくとも1つの上述した糖もしくは糖誘導体を用いて実施できる。
【0070】
同様に、スクロース中の水酸化第二鉄(III)に基づく市販生成物(水酸化第二鉄ス
クロース複合体もしくはFHSC)は、およそ34,000〜60,000ダルトンの分
子量および[Na2Fe58(OH)・3(H2O)]n・m(C122211)(式中、n
は鉄の重合度であり、そしてmは水酸化第二鉄(III)と結合したスクロース分子の数
である)としての提案された構造式を有すると当該製造業者によってPhysician's Desk R
eferenceの中に記載されている;nおよびmについての規定値はない。しかし、この生成
物のサンプルの絶対分子量の独立した測定は、570,000ダルトンの絶対重量平均分
子量を示している。上述したように、スクロース中の水酸化第二鉄(III)はさらにま
た、市販生成物の分子量に適合できるように本発明の方法によって合成することができる
。さらに、本発明によって提供される柔軟性および制御を考慮に入れると、この方法を使
用するとFHSC、ならびに上記に開示したいずれかの糖に基づく造血性複合体をいずれ
か所望の分子量へ合成できる。言い換えると、市販生成物に対応する生成物ならびにより
少ない、もしくはより多い分子量を有する生成物である。さらに、米国特許第6,537,820
号の開示によると、市販のFHSC造血性生成物は、低分子量賦形剤が除去される結果と
しての精製ステップを受けた。
【0071】
本発明の方法では、複合体集合点が達成された後に、反応混合物の温度を約99℃〜約
103℃へ上昇させるステップは、鉄サッカリド複合体、例えば約300,000〜約7
00,000ダルトンの絶対分子量を有するグルコン酸第二鉄複合体を生成できる;約1
10℃〜約115℃までの温度は、約28,000,000の絶対分子量を有する生成物
を生成できる。どちらの場合も、そのような生成物はそのような上昇した温度ではほんの
短時間後に、例えば約10〜約20分間;例えば、約15分間で生成される。本明細書に
同定した絶対分子量は、許容された程度に本明細書に組み込まれるBeck and Mateerによ
る米国特許第6,537,820号に記載された方法によって決定できる。詳細には、本発明の造
血性非デキストランFe(III)増血剤は、会合コロイドの特性に似ている非経口的に
許容される化学種である。会合コロイドは典型的には規定されており、そして本発明のた
めには化学結合力に起因する、典型的には共有結合より弱い可逆的化学化合であると考え
られており、このとき数百個までの分子もしくはイオンが凝集してコロイド構造を形成す
る。結果として、会合コロイドは、例えば約1〜約2000ナノメーター以上;一般には
約1〜約1000ナノメーター;より典型的には、約1〜約100ナノメーター;例えば
約2〜約50ナノメーター;または約3から約35ナノメーター(nm)のサイズを含む
コロイドに典型的なサイズであろう。「ナノ粒子」について普遍的に許容された定義はな
いが、一般には約1〜約100nm以上のサイズ範囲にあると考えられる。結果として、
それらのサイズを考えると、本発明の鉄サッカリド複合体はさらにまたナノ粒子と言うこ
ともできる。サッカリド化合物と相互作用する第二鉄イオンのそのようなコロイドは、レ
ーザー光散乱(LLS)によって同定できる光学活性に加えて電界における指向性移動を
示す。本明細書において重要なLLS特性は、コロイドを通過する入射光線ビーム(I0
)がそのオリジナル経路に対して90度で発生するティンダル(Tyndall)効果に関連する
。光散乱は、光線がデンプン、タンパク質もしくはその他のコロイド種などの高分子と相
互作用した場合にのみ、入射光線の波長が分子のサイズ寸法に近づく場所で発生する。光
散乱は、散乱した波長が相互作用して相互を相殺する場所で破壊的干渉として、または光
線の2つの波長が相互に増強する場所で建設的干渉によって発生する可能性がある。LL
Sデータの数学的評価は、様々なコロイド種のサイズおよび形状の評価を許容する。例え
ば、サイズは、単一分子についての分子量、または多分子もしくはイオン凝集体について
の式量によって推定できる。いずれの場合においても重量の表示は、そのような構造中に
存在する全原子の原子量の合計を表している。さらに、光散乱化合物のサイズは周知の計
算方法を用いて、ナノメーター(nm)によって表示される化合物、例えばコロイドもし
くは微粒子の二乗平均半径(RMS半径もしくはRz値)によっても決定することができ
る。ポリマーなどの大多数の凝集体もしくは分子の構造的多様性は、それらが典型的には
平均分子量分布(MWD)として表示される変動する重量の頻度分布として存在するよう
な多様性である。サイズとは別に、コロイドの形状は重要な意味を有する可能性がある。
例えば、その形状が細い棒状、無作為のコイル状構造もしくは球形である場合は、他の分
子もしくは構造との相互作用は変動する場合がある。1種以上の高圧(もしくは高性能)
液体クロマトグラフィー(HPLC)統合型検出器分析方法と組み合わせた複数角度レー
ザー光散乱(MALLS)もしくは低角度レーザー光散乱(LALLS)を含むLLSを
使用すると、鉄サッカリド複合体を評価することが使用できる。本発明のために、LLS
との言及は、後者が好ましいタイプの検出器であるMALLSを含むと理解されたい。本
明細書におけるLLS測定の使用は、適切に制御された合成の結果として生じる好ましい
AHSを表す鉄サッカリド複合体を特性付けるための優れた好ましい分析方法を提供する
。高分子構造および会合コロイドを特性付けるためのレーザー光散乱検出器および屈折率
検出器と併用したHPLCの基本的な数学的関係および作動については報告されている。
(例えば、P.Wyatt,Light scattering and absolute characterization of macromolecule
s,Analytica Chimica Acta.(1993)272:1-40を参照されたい;許容された程度まで参照して
組み込まれる)。本発明に記載した鉄サッカリド複合体などの鉄サッカリド複合体の場合
は、高圧液体クロマトグラフィーとMALLS検出測定との併用は、そのような複合体に
対する「dn/dc」値が知られている、または決定できる場合にのみ可能である。数値
dn/dcはその濃度(dc)における対応する変化で割った鉄サッカリド複合体の屈折
率(dn)における変化の比率である。dn/dc値を決定するためには、‘820特許
の方法によって教示されるように、鉄サッカリド複合体が最初に精製形で単離されなけれ
ばならない。これは、治療用鉄複合体に特徴的であるdn/dc値の決定を許容する。こ
の数値がそのような物質のクラスの1メンバーに対して決定されると、それをそのクラス
の他のメンバーに対して使用できる。これとは対照的に、‘820特許の方法を用いて精
製した鉄複合体のdn/dc値の計算もしくは決定が欠如すると、これらの生成物のMA
LLS特性付けおよび絶対分子量の決定を達成することはできない。
【0072】
本発明の鉄糖生成物は、一部には、上述したように測定されるそれらの分子量および分
子量分布によって特性付けられる。分子量の数値は、絶対重量平均分子量(Mw)として
報告される。多分散性とも呼ばれる分子量分布は、標準方法ではMw対Mnの比率として
報告されるが、後者は、同様にMwについて上述した方法と同一試験方法から同時に入手
される絶対数平均分子量である。本発明の方法を実施すると、様々な分子量分布を有する
有用な生成物を生成できる。本発明の方法は、相当に狭い多分散性を有する生成物を生成
することができる。一般に、約1.05〜約5.0;典型的には、約1.08〜約4.0
;好ましくは、約1.11〜約3.5;より好ましくは、約1.14〜約3.0;最も好
ましくは、約1.17〜約2.5;例えば、約1.20〜約2.0;あるいは、約1.2
0〜約1.75;もしくは、約1.15〜約1.60;もしくは、約1.25〜約1.6
5の範囲内の分子量分布を有する生成物を生成することができる。本発明の方法によって
生成されたより高いMw鉄糖生成物はより高い多分散性値を示す傾向があることが観察さ
れている。しかし、一部の例では、有意に高い分子量および極めて狭い分子量分布を有す
る例えば1,000,000を超えるMwおよび約1.1〜約1.3;例えば、約1.2
のMw/Mnを有する生成物を生成することができる。そのような生成物は、例えばイソ
アスコルビン酸などの糖誘導体のようなスクロースもしくはグルコース以外の出発物質を
用いて合成されてきた。さらに、本発明によって約350,000〜約750,000ダ
ルトン;特に約500,000〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量Mwお
よび約1.4〜約1.6の分子量分布Mw/Mnを有する特に望ましい鉄サッカリド複合
体を合成できる;グルコン酸ナトリウムを基剤とするこのタイプの生成物が合成されてい
る。
【0073】
本発明によって生成された生成物は、さらにまた例えば光散乱増強液体クロマトグラフ
ィー;紫外線分光法;可視光線分光法;紫外線可視光線併用分光法;光ダイオードアレイ
を用いる紫外線分光法、光ダイオードアレイを用いる可視光線分光法ならびに光ダイオー
ドアレイを用いる紫外線可視光線併用分光法;赤外線分光法、電子スピン共鳴法;パルス
ポーラログラフィー;エネルギー分散X線解析法;円偏光二色性および旋光分散法;蛍光
分光法;旋光分析法;熱分解質量分析法;核磁気共鳴分光法;示差走査熱量測定法;液体
クロマトグラフィー質量分析法;マトリックス支援レーザー脱離/電離質量分析法;キャ
ピラリー電気泳動法;誘電結合プラズマ分析法;原子吸光法;電気化学的分析;放射性鉄
を含有する放射性アイソトープを利用する分析;造血性物質に対する抗体;約0.02〜
約0.45ミクロンの範囲内の多孔性を有するメンブレンフィルタを通した濾過後に保持
された固体;光散乱と結び付けた高圧液体クロマトグラフィー;ならびに光散乱と結び付
けた質量高感受性検出器を含む高圧液体クロマトグラフィーを含む様々な分析方法によっ
て特性付けることができる。生成されて水を含む生成物、ならびにさらに精製されている
、例えば全部もしくは実質的に全部の未反応成分、反応副生成物および一般に反応賦形剤
と呼ばれる低分子量種が除去されているAHSもしくは鉄サッカリド複合体を分析できる
。さらに、例えば粉末形の固体を生成するために凍結乾燥される精製生成物は、さらにま
た生成時点ならびにその後の様々な時点に分析することもできる。
【0074】
上述した高分子量鉄サッカリド複合体もしくはAHSの合成後には、未反応試薬および
/または合成プロセスの副生成物からAHSを回収もしくは分離することができる。AH
Sの日常的分離は、AHSが合成された最終反応混合物を備える約9:1(容積/容積(
vol/vol))の比率の水混和性希釈剤を用いて反応混合物からの沈降によって遂行
できる。C1−C4直鎖状もしくは分枝状アルコールもしくはその混合物などの水混和性希
釈剤は、水の誘電定数より小さい誘電定数を有していなければならない。希釈剤は、微量
が存在する場合は、AHS生成物の非経口的安全性を維持するように選択される;好まし
い希釈剤はエタノールである。沈降後、AHSは、濾過するステップなどによってさらに
精製し、そして水などの担体中に再分散させることができる。AHSのそれ以上の沈降を
実行するとAHS生成物の浄化を促進することができ、そして合成された反応混合物中に
存在する低分子量物質の溶解特性に依存して、そのような沈降はそのような低分子量物質
の実質的な除去もしくは分離を生じさせることができる。あるいは、合成されて、反応混
合物中に含有されている、または合成後に反応混合物から部分的もしくは実質的に分離さ
れたAHSの分離は、透析、クロスフロー透析、動電学的移動、遠心分離ならびにAHS
もしくは鉄サッカリド複合体を含有する組成物を時々はクロマトグラフィーカラムと呼ば
れる少なくとも1つのカラムに通過させるステップおよびカラム溶出液を、少なくとも1
つの分画が所望の有効造血性化学種を含む複数の分画に分離させるステップを含むプロセ
スによって実施できる;そのような分離技術は、当業者には周知である。例えば濾過によ
る最終分離に続いて、AHSは適切な、好ましくは極性流体、より好ましくは水である流
体担体中に再懸濁させることができる。そのような適切な液体担体中のAHS生成物は、
時々はコロイド懸濁液もしくはコロイド溶液と呼ばれるコロイド粒子の状態にある。それ
は肉眼には透明に見える外観を有するが、それはこれらの粒子は典型的には極めて小さく
、例えば約1〜約50ナノメーター、例えば最大寸法が約10ナノメーターであるからで
ある。本組成物は、さらに典型的には濃赤褐色を有する。
【0075】
任意で、上述した方法によって生成されたAHSは、米国特許第6,537,820号(「‘8
20特許」)に開示された方法を用いてさらに精製できる。手短には、本発明の方法から
入手された、便宜的に粗生成物と呼ぶ生成物は、好ましくは少なくとも1回の沈降および
分離の前に、しかし任意で後に、未反応成分、反応副生成物および/または本発明の所望
の複合体に比較して低分子量、例えば約3,000ダルトン未満;もしくは約4,000
ダルトン未満の重量平均分子量を有する第二鉄炭水化物化合物およびさらに約5,000
ダルトンもしくは10,000ダルトン未満の重量平均分子量を有するそのような物質を
含む低分子量賦形剤を分離するために少なくとも1つのカラムを用いてカラム分別される
。あるいは、粗生成物はそのような賦形剤を分離するために透析によって精製できる。
【0076】
結果として生じる精製された生成物は少なくとも1つの乾燥するステップを用いて乾燥
することができ、これは特に典型的には粉末形にある固体AHSを入手するために‘82
0特許に教示された方法によって凍結乾燥もしくはフリーズドライするのに適している。
あるいは、精製された生成物は、スプレー乾燥、熱の適用、熱および真空の適用もしくは
上述した乾燥方法の組み合わせ、または当業者に知られている乾燥方法によって乾燥する
ことができる。‘820特許に記載されたように、粉末は例えば密封式ホイルパウチ内で
の長期保存のために特に有用な状態である。本発明のために、「密封式ホイルパウチ」は
、例えばアルミニウムなどの金属箔、ならびにプラスチックと金属複合体のラミネートを
含む構造を意味する。必要な場合は、粉末はその後適切な担体、例えば水およびその他の
、例えばビタミンB−12を含むビタミン類、オスモル濃度調節するための塩化ナトリウ
ム、カリウムなどを含む非経口投与のための任意もしくは所望の賦形剤添加物を添加する
ステップによって再構成できる。上述したように、凍結乾燥粉末は、製造時点に、そして
その後間隔をあけて貯蔵安定性および製品の品質を評価するために特性付けるために、赤
外線を含む様々な方法によって分析できる。有効造血性化学種(AHS)を含む鉄サッカ
リド複合体は、特に貯蔵条件が可変性および/または不適切である場合には、そしてその
ような複合体が希釈剤もしくは液体中、特に水性担体中に存在する場合は、それらの合成
後には、不安定化および分解にさらされる。これとは対照的に、乾燥したAHSは、好ま
しくは密閉容器を含む水分を含有しない環境において、長期間にわたって貯蔵できる。さ
らに、乾燥した安定性複合体は、便宜的に輸送して、必要とされる使用時点に再構成する
ことができるので、それによって使用直前までその安定性が延長される。例えば、乾燥し
たAHSは金属製ホイルパウチもしくはガラス製容器などの耐水性容器内に密封すること
ができ、そして周囲温度(約20℃〜約25℃)以下で長期間にわたって貯蔵できる。例
えば、乾燥した複合体は、製造〜約1週間後などの製造後短期間、ならびに約6カ月間の
中等度に長い貯蔵期間にわたり、そして製造後約5年間以上という長期間にわたり貯蔵で
きる;長期の保存は、約1年間〜約5年間、例えば約1年〜約3年間に及んでよい。
【0077】
乾燥した、好ましくは凍結乾燥したAHS生成物の保存は、それが分析または使用のた
めに再構成される前に真空中、または例えば窒素、アルゴンおよびヘリウムを含む何らか
の不活性ガス(ならびに凍結乾燥生成物と反応性ではない何らかのガス)下で維持できる
。同様に、凍結乾燥プロセス単独では鉄サッカリド複合体の構造を弱めないので、このプ
ロセスの使用は、凍結乾燥が実行される場合に所与の時点に存在する造血性化学種を文書
記録できるように様々な時間間隔でこれらの造血剤を維持するために価値がある。これは
、生成物の製造および品質についてアーカイバルストレッジおよび文書記録するための方
法を提供する。適切に調製かつ維持された凍結乾燥AHSは、生成物の重大な変性のリス
クをほとんど伴わずに必要になるまで安全に貯蔵することができる。さらに、そのような
状態の生成物は、便宜的にも地理的に遠隔の場所に輸送でき、さらに便宜的にも必要にな
るまで貯蔵され、その時点に非経口使用のための造血剤を再構成するステップが容易に実
施される。例えば、本発明によって調製された凍結乾燥生成物は、好ましくは実質的に水
分を含有しない不活性ガスが充填された、密閉されたガラス製もしくは適切に保護された
金属製容器内に貯蔵できる。あるいは、そのような生成物は単独非経口用量などとして再
構成するために適切な量で金属製ホイルパウチ内に密封することができる。
【0078】
本発明の鉄サッカリド複合体は、有用には鉄分をヒトに送達するための非経口造血性複
合体を生成できるように調製される。ヒトを治療するために有用な上に、本発明の組成物
は、ペット、外来動物、家畜など、特にそのような治療を必要とする哺乳動物の獣医学的
治療のために有用なことがある。より特別には、本発明の組成物は、ウマ、ブタ、イヌお
よびネコにおける造血性媒介性障害を治療するために有用である。これらの鉄複合体は、
一般に鉄が哺乳動物、特にそれを必要とする人間における多数の臨床状態を管理するため
に必要な造血性機序を増強するために経口的および有益に投与できるような状態で発生さ
せる。本明細書における用語「非経口投与」は、被験者の皮膚内へ、または皮膚を通して
の注射および/または注入を含み、皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨髄内、関節内、滑液
包内、脊髄内、クモ膜下および心臓内投与が含まれる。薬物の非経口注射または注入のた
めに有用な任意の知られている器具は、そのような投与を実行するために使用できる。
【0079】
有用な賦形剤、すなわち添加物は、医薬上有用な非経口組成物を調製するために本発明
の鉄サッカリド複合体へ意図的に添加できる。添加物は乾燥形であってよく、非経口投与
のために必要とされる添加物の、全部でなければ大部分を含む有用な製剤、例えば単位製
剤を後になって再構成するために乾燥したAHSとともに含めることができる。含めるべ
きではない添加物の選択は、例えば貯蔵安定性に関連する問題の考察に基づくべきである
。あるいは、添加物は、すぐに使用できる非経口組成物を生成するためにAHSの水性調
製物と混合することができる。そのような添加物は、当業者には周知である。
【0080】
本発明のまた別の実施形態は、本明細書に提供するように単位用量および無菌条件で提
供される、その中に封入された実質的に乾燥した、もしくは粉末状の組成物、またはAH
Sを含む液体組成物を有する密閉容器、パウチ、アンプルもしくはバイアル、好ましくは
ガラスバイアルを含む製品を含む。特定の実施形態では、上述した方法によって調製され
た製品が提供される。AHSが再構成を必要とする場合は、容器、例えばバイアルは、好
ましくはインサイチューでの組成物の再構成を可能にするために十分な能力を有する。一
般に、約1mL〜約10mL、好ましくは約2mL〜約5mLの用量が便宜的であること
が見いだされるであろう。本明細書における用語「バイアル」は、好ましくは無菌条件に
おいて、再構成可能な粉末、または非経口水性生成物の単位用量の包装に適合する、クロ
ージャーを有する任意の小さな容器を意味するために使用される。アンプル、ディスポー
ザブルシリンジおよびシリンジカートリッジなどの同等の包装形態は、本発明のこの実施
形態に含まれることが理解されるであろう。任意で、バイアルは、1つは再構成可能な粉
末を含有するため、そして1つはその粉末を溶解させるために十分な量で溶媒液を含有す
るための2つの区画を含んでいてよい。そのようなバイアルでは、2つの区画は、バイア
ルの使用準備が整うまで粉末と溶媒液との接触を防止するためにストッパーを係合させる
ことのできる開口部によって相互連結されている。使用時に、液体は何らかの適切な手段
、例えば圧力を発揮する、またはストッパに通して針を進ませるプランジャなどの器具に
よってストッパを解除する、または穿刺することによって粉末と接触させられる。そのよ
うな複数区画バイアルの例には、シリンジ用のデュアルチャンバ・カートリッジおよび登
録商標Act-O-Vial(Pharmacia Corporation製)の下で入手できるバイアルのようなデュア
ルチャンバ・バイアルが含まれる。
【0081】
いずれかの知られている非経口的に許容される溶媒液は、粉末組成物を再構成するため
、または本発明の鉄サッカリド複合体の希釈剤もしくは担体として機能させるために使用
できる。注射用水は適切であるが、一般には低張性溶液を提供するであろう。したがって
、一般にはデキストロースもしくは塩化ナトリウムなどの溶質を含有する水性液を使用す
るのが好ましい。実例としては、0.9%塩化ナトリウムUSP注射液、静菌性0.9%
塩化ナトリウムUSP注射液、5%デキストロースUSP注射液、および5%デキストロ
ースおよび0.45%塩化ナトリウムUSP注射液が適合する。乳酸加リンゲルUSP注
射液もまた、貯蔵中または使用期間中にAHSに有害な影響を及ぼさないいずれかの希釈
剤、溶媒もしくは担体組成物と同様に適合する可能性がある。再構成のための溶媒もしく
は希釈剤液の適切な量は、被験者の年齢および体重、治療薬の溶解度および用量ならびに
投与時点に専門技術者によって容易に決定される他の要素に左右される。以下では、現在
利用できる造血製剤に関して適切な投与量について説明する。
【0082】
本明細書で提供された粉末組成物を非経口的に許容される溶媒中、好ましくは水性溶媒
中で再構成することによって調製される注射液組成物は、本発明のまた別の実施形態であ
る。そのような溶液組成物中では、治療薬は限定された化学的安定性を有することがあり
、その場合には組成物を投与前の短時間以内に、例えば約1時間以内に再構成するのが好
ましい。他の場合に、治療薬は溶液中において相当に高度の化学的安定性を示すことがあ
るが、そのような場合には再構築後の短時間以内に投与することは重要ではない。本明細
書における「許容される化学的安定性」とは、組成物が、規定時間(例えば、約1時間、
約30日間、約6カ月間もしくは約2年間)後に、例えば規制官庁による承認を受けるた
めに必要とされるような、治療薬の化学的純度についての標準的試験を合格することを意
味する。そのような試験の例は「総計で5%、単独で1%の不純物ルール」であるが、こ
れによって候補薬の調製物は5%を超える全不純物、および1%を超えるいずれかの単独
不純物を含有していてはならない。
【0083】
緩衝剤は、典型的には、生理的に許容される量の非経口的に許容される溶媒液中で再構
成される、(a)非経口的に許容される、(b)溶媒液中の溶液中に存在する治療薬と一
致する、および(c)媒体を提供する、組成物のpHを提供するように選択されるが、こ
のときこの治療薬は少なくとも非経口投与のために必要とされる期間、例えば再構成後1
時間にわたり許容される化学的安定性を示す。適切な緩衝剤は、実例としては、リン酸ナ
トリウムおよびカリウム、クエン酸ナトリウムおよびカリウム、モノ−、ジ−およびトリ
エタノールアミン、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール
(トロメタミン)など、およびそれらの混合物から選択することができる。好ましい緩衝
剤は、第二リン酸ナトリウムおよびカリウムならびにトロメタミンである。特に好ましい
緩衝剤は、第二リン酸ナトリウム、例えば第二リン酸ナトリウム無水物、七水化物、十二
水化物などである。緩衝剤は、典型的には優勢な賦形剤成分である。本発明の1つの実施
形態では、実質的に乾燥した、再構成可能なAHS含有組成物は、本質的に治療薬および
緩衝剤からなる。任意で、1種以上の保存料を組成物中に重量で約0.5%まで含むこと
ができる。適切な実例的保存料には、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェノールお
よびベンジルアルコールが含まれる。
【0084】
上記で考察したように、本発明の方法は極めて広い分子量範囲にわたる高分子量鉄分組
成物を生成するために制御された方法で実施できる。さらに、高分子量生成物は、例えば
、鉄分組成物がグルコン酸ナトリウムなどの糖酸誘導体に基づく場合は、スクロースもし
くは他の糖を含む必要を伴わずに生成できる。結果として、そのような状況下で生成され
た生成物は、例えば糖尿病患者のように非経口組成物中の追加の糖の存在に対して高感受
性を備える患者を治療するために好ましいことがある。そのような生成物は、物理的健康
が既に非経口鉄分の必要を超えて侵害されている可能性がある患者において予測される有
害な副作用が相当に少なくなるという長所を有する。あるいは、治療される患者にとって
適合する任意の所望レベルでスクロースもしくは他の糖を本非経口組成物にアドバックす
ることもできる。そのような選択肢は、これまで先行技術の製品では利用できなかった。
【0085】
本発明の有効な造血性化学種を含む組成物の用量および投与は、有効化学種の化学的性
質および濃度、そしておそらく、その他の成分の存在に依存して変動する可能性がある。
非経口投与用の溶液中では、鉄はゲル形成および沈降、例えば生理的に適切なpHでの第
二鉄水化物の沈降を防止するために十分安定性の状態にある第二鉄イオンとして存在して
いなければならない。鉄は、好ましくは局所性もしくは全身性タイプのどちらであろうと
、注射製剤が適切で便宜的な用量の鉄を含有する場合に、毒性副反応が発生しない状態で
存在しなければならない。鉄の単純塩、例えば硫酸第二鉄の溶液は、相当に高い毒性を有
するために、非経口投与のために使用することはできない。同様に、第二鉄イオンは、有
害な副作用の結果として、非経口鉄組成物中に使用するためには適合しない。本発明の方
法によって調製され、適切な容器、例えばアンプルもしくはバイアルに入れて提供される
鉄サッカリド複合体を含む典型的な調製物は、一般に1mL当たり約5〜100、例えば
約7〜約50、典型的には約10〜約40mgの鉄を含有する。特定濃度は、その組成物
が例えば注射もしくは静脈内投与によって投与することが企図されているかどうかに依存
して調整されると期待できる。さらに、鉄サッカリド複合体を含む組成物は、典型的には
少なくとも1つの医薬上許容されるアジュバント、希釈剤および/または担体を含む。以
下の説明は人間の治療に基づいているが、動物のための適切な治療もまた知られている、
または獣医学の当業者が年齢などを含む特定の身体的条件、ならびに治療される動物種に
基づいて決定することができる。同様に、当業者であれば、特定のAHSを投与する前に
試験投与の必要性、またはその有用性を決定できる。
【0086】
グルコン酸第二鉄ナトリウムの状態にある非経口鉄サッカリド複合体は、現在入手でき
る市販製品の組成物と同等の組成物中、例えばスクロース中で生成できる。結果として、
本組成物は、現在推奨されている製剤と同等の製剤中で同等の投与スケジュールに基づい
て投与できる。用量は、典型的には鉄分として存在する鉄の含量(mg)によって表され
る。例えば、血液透析患者における鉄欠乏症を充足させるための推奨用量は、単回投与に
ついてはの125mgの鉄と同等である。62.5mg(12.5mg/mL)の鉄分を
含有し、さらにpH7.7〜9.7で水中に約20%(w/v)スクロース(195mg
/mL)を含有する静脈内注射のための5mLアンプルの状態で提供されると、この生成
物は10mL用量で投与できる;これは鉄分125mgと同等である。緩徐なIV投与(
未希釈)のためには、125mgを10分間にわたり導入できる;IV注入(0.9%の
NaCl中に希釈)のためには、100mL中の125mgを60分間にわたり導入でき
る。当分野における研修を積んだ医師は、患者の医学的および身体的状態ならびに必要と
される鉄の改善に基づいて患者が必要とする適切な総用量を決定できる。例えば、好都合
のヘモグロビンもしくはヘマトクリット反応を達成するために、上記のタイプの市販造血
剤については、8回のセッションにわたり、例えば連続8回の透析療法セッションで投与
される、鉄分1.0gの最小累積用量が現在推奨されている。
【0087】
スクロース中の水酸化第二鉄ナトリウムの状態にあるまた別の現在入手できる市販製剤
に基づいた非経口製剤の用量および投与もまた当分野において記載されている。この状態
の用量は、さらにまた典型的には鉄分含量によって表示される。典型的には、本組成物の
各5mLのバイアルは、20mg/mLに基づいて100mgの鉄分を含有する。血液透
析患者における鉄欠乏症の反復治療は、典型的には透析と同時に静脈内送達される鉄分1
00mgを含有する5mLである。患者は、典型的には適切なヘモグロビンもしくはヘマ
トクリット反応のために連続10回の透析セッションと結合して投与される鉄分を計1g
(1,000mg)必要とする。適切なレベルのヘモグロビン、ヘマトクリットおよびそ
の他の実験的基準の維持は、当業者によって適切に決定されてよい。
【0088】
本発明の生成物には、約25,000ダルトン以上、および特別には100,000ダ
ルトン以上の絶対重量平均分子量を有し、糖、糖誘導体およびそれらの混合物を含む上述
したサッカリドのいずれかに由来する第二鉄サッカリド複合体が含まれる。好ましいのは
、実質的にポリサッカリドを排除した糖である。さらに、本生成物は、本発明の生成物が
上記にFerrlecitおよびVenoferとして同定された市販製剤とも、米国特許第6,537,820号
に教示されたそれらの精製バージョンとも精密には一致しないことを前提に、未修飾形で
追加のサッカリドを含むことができる。さらに、本発明の生成物は、上記に教示した方法
によって生成される生成物である。これとは対照的に、現在入手できる市販製剤は不明確
な方法によって生成されている。その真の結果は、本発明の生成物が、特別に生成された
、市販物質とは相違する、改良された賦形剤プロフィールを有することにある。例えば、
本明細書の鉄糖生成物は、望ましくない微量金属が回避される、または現在入手できる市
販製剤より実質的に低いレベルで存在するような条件下で生成できる。さらに、ここに記
載した本発明の生成物は、添加された糖を全く含まない、例えば特に糖尿病を有する患者
などの血糖値レベルを制御する困難を有する患者に適合する状態で生成することができる
。これとは逆に、これらの生成物は上述したように、合成後の精製の結果として生じ、そ
して明確な組成仕様への有限レベルの糖もしくはまた別の賦形剤、例えば緩衝剤もしくは
塩の制御された添加を含む状態で生成することができる。総合すると、本発明の生成物は
、現在の市販製剤と医薬上同等である標準を含めて、それに合わせて作製できるが、向上
した純度および向上した製品品質を生じさせる望ましくない副生成物がより少なく、そし
てその結果として長期間保存中の潜在的に向上した安定性を備える。本発明の方法を使用
すると、より少ない反応副生成物を有する鉄サッカリド複合体を生成することができる。
合成に影響を及ぼすプロセス変量を制御するステップおよびそのような変量の制御につい
ての知識は当然ながら重要ではあるが、出発サッカリドの性質もまた結果として生じる複
合体生成物の品質に影響を及ぼすことも見いだされている。詳細には、グルコン酸の塩、
例えばグルコン酸ナトリウムが特に好ましく、イソアスコルビン酸、グルコース、フルク
トースおよびスクロースがこれに続く。さらに、合成中または合成後のいずれかでのスク
ロースなどの糖の添加は、それ自体が望ましくない反応副生成物の形成を生じさせる可能
性がある。上述したように、米国特許第6,537,820号(R.A.Beck and R.A.Mateer,Jr.)の工
学技術の適用は、望ましくない賦形剤を除去するために効果的に使用できるが、本発明の
包括的開示はまず最初にそのような副生成物を回避する際に有効である。結果として、本
発明の鉄サッカリド複合体においては現在の市販の造血性製剤におけるより望ましくない
副生成物が少ない。
【0089】
有効造血性化学種を含む高分子量鉄サッカリド複合体を合成するための方法は産業上有
用である。本複合体は、さらに精製する、化学的および/または物理的に修飾する、例え
ば凍結乾燥する、そして非経口形で貯蔵する、またはヒトまたは動物へ投与するために調
製できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
特定セットの特性、測定単位、条件、物理的状態またはパーセンテージを表す本明細書
、または本発明の様々な態様を記載している下記の段落で言及したいずれかの範囲の数は
、参照して本明細書に明示的に組み込むことが文字通りに企図されている、さもなければ
そのような範囲内に含まれる数はいずれかの範囲内のサブセットの数もしくは小範囲を含
めて同様に言及されている。さらに、変量に対する、または変量と同時に使用される場合
の用語「約」は、本明細書に開示した数値および範囲が柔軟であること、そして例えば上
記の範囲外である、または単一値とは相違する温度、濃度、圧力、量、含量、炭素数、例
えば粒径、表面積、溶解度、バルク密度などの特性を用いる当業者による本発明の実施が
、所望の結果、つまり、有効造血性化学種を含む高分子量鉄サッカリド複合体の合成を達
成するであろうことを意味する。本発明のために、特定の特性、特徴または変量に関して
他に特別に規定されていない限り、例えば特性、特徴または変量などのいずれかの基準に
適用される用語「実質的に」は、当業者が達成される利益または所望の状態もしくは特性
値が満たされていることを理解するようにそのような尺度において規定された基準を満た
すことを意味する。
【実施例】
【0091】
[実施例1]
水酸化第二鉄コロイドもしくはヒドロゾルを形成するために反応物を激しく攪拌しなが
ら、塩化第二鉄を約20℃で水酸化ナトリウムと反応させた、または水酸化ナトリウムを
用いて滴定した。コロイド状水酸化第二鉄が連続に攪拌されている間に、グルコン酸ナト
リウムおよびスクロースを添加した。温度を約65℃に上昇させ、追加の水酸化ナトリウ
ムを添加してpHを約6.0へ上昇させた。炭水化物対Fe(III)濃度のモル比は1
5:1であった。この混合物のpHを数値約10.5へさらに調整し、この反応混合物を
約100℃へ加熱した。スクロース中のグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体が生成した。
【0092】
[実施例2]
水0.2L中の塩化第二鉄六水化物(0.3699M)の溶液を調製した。塩化第二鉄
溶液の温度を約20℃で維持しながら、スクロースを添加して0.877Mの炭水化物濃
度を生じさせた。スクロースが完全に溶解した後、連続的に混合しながら反応物へ水酸化
ナトリウム(8.0M)を添加して約11.5のpHを生じさせた。次に混合物の温度を
約102℃へ上昇させ、その温度を(環流させて)120分間維持した。結果として生じ
た高分子量水酸化第二鉄スクロース複合体は1,570,000ダルトンのMwおよび1
.32に等しい、Mw/Mnによって測定した分子量分布もしくは多分散性を有していた

【0093】
[実施例3]
攪拌機およびマントルヒータを装備した500mLフラスコへ塩化第二鉄六水化物(0
.0555モル)の水溶液200mLを添加した;この溶液のpHは約1.7であった。
強力に攪拌しながら0.943モルの炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム含量計6.
0g)30mLを導入し、中等度の加熱を適用して約50℃の温度を達成した。この反応
はコロイド状水酸化第二鉄の形成を生じさせ、CO2生成が終了するまで持続させた;生
じた水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは約2であった。攪拌を継続している間にグルコン酸
ナトリウム0.5gを添加し、量を増加させながら3モルの炭酸ナトリウム水溶液を混合
物に添加すると、乳濁状の茶褐色の外観が生じた。炭酸ナトリウムの添加は、pHが約6
.0へ上昇するまで継続した。反応混合物の温度を約100℃へ上昇させて15分間継続
すると(上昇した温度までの総所要時間は120分間までであった)、その時点にpHは
約9へ上昇した。結果として生じたグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体は、エタノールを
用いた沈降によって反応混合物から分離することができた。このAHSを水に再分散させ
、HPLC/MALLSを用いて絶対分子量について試験したところ、約1,500,0
00の絶対分子量を有することが見いだされた。このAHSは、約5,000未満の分子
量を除去するために適切な膜を用いる透析によるさらなる精製に適合する。精製したAH
S組成物のサンプルは、AHSを含む粉末を生成するための水性組成物に適合する標準条
件を用いて凍結乾燥(フリーズドライ)およびスプレー乾燥することができる。
【0094】
[実施例4]
攪拌機およびマントルヒータを装備した500mLフラスコへ塩化第二鉄六水化物(0
.0555モル)の水溶液200mLを添加した。強力に攪拌しながら0.943モルの
炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム含量計6.0g)30mLを導入し、この混合物
を約20℃の温度で維持した。この反応はコロイド状水酸化第二鉄の形成を生じさせ、C
2生成が終了するまで持続させた;生じた水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは約2であっ
た。攪拌を持続しながらグルコン酸ナトリウム0.5gを添加し、量を増加させながら3
モルの炭酸ナトリウム水溶液を用いてこの混合物を滴定した。pHが約3.5〜約4.0
に達したときに、炭酸ナトリウムの漸増的添加は深紅色の外観を生じさせたが、これは攪
拌すると消散した。pHが約6.0になるまで炭酸ナトリウムをさらに添加すると混合物
全体を通して乳濁状の褐色が生じ、これは攪拌後にも維持された。この反応混合物の温度
を約20℃で維持し、約16時間にわたり混合を持続した。この時間の終了時には、混合
物のpHが上昇しておらず、高分子量鉄サッカリド複合体が全く形成されないことが見い
だされた。混合の非存在下では、微粒子相は水相から分離した。沸点さえへの混合物の加
熱は、酸化第二鉄であると思われる橙色がかった褐色のスラッジを生じさせた。
【0095】
[実施例5]
攪拌機およびマントルヒータを装備した500mLフラスコへ塩化第二鉄六水化物(0
.0555モル)の水溶液200mLを添加した。強力に攪拌しながら0.943モルの
炭酸ナトリウム水溶液(炭酸ナトリウム含量計6.0g)30mLを導入し、この混合物
を約20℃の温度で維持した。この反応はコロイド状水酸化第二鉄の形成を生じさせ、C
2生成が終了するまで持続させた;生じた水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは約2であっ
た。攪拌を持続しながらグルコン酸ナトリウム0.5gを添加し、量を増加させながら3
モルの炭酸ナトリウム水溶液を用いて最終pHが6.0となるまでこの混合物を滴定した
。添加中に、pHが約3.5に達したときに、混合物全体を通して乳濁状の褐色が現れ、
これは攪拌および持続的滴定後にも維持された。この反応混合物の温度を約52℃へ上昇
させ、約24時間にわたり加熱を持続した。24時間後にはpHが約5.5となるのが観
察され、混合物は乳濁状の外観を維持していたので、レーザー光散乱による分子量の測定
は不可能であった。この混合物へ追加の少量の炭酸ナトリウムを添加するとpHが約7へ
上昇し、この時点にこの混合物は分子量について試験するために透明な液体のサンプル採
取を許容するほど十分に透明になった。レーザー光散乱信号は、例えば約2,000,0
00ダルトンの高分子量生成物が存在することを示した。この実施例では、pHを約7へ
さらに上昇させると少量の高分子量複合体の形成が生じたように、反応条件(反応物のタ
イプおよび濃度、温度およびpHを含む)が初期滴定の結果として複合体集合点の近くに
あったと思われた。初期滴定後のpHにおける減少は、この観察所見と一致している。
【0096】
[実施例6]
攪拌機およびマントルヒータを装備した500mLフラスコへ塩化第二鉄六水化物(0
.0555モル)の水溶液200mLを添加した。強力に攪拌しながら0.943モルの
炭酸ナトリウム水溶液30mLを導入し、この混合物を約20℃の温度で維持した。この
反応はコロイド状水酸化第二鉄の形成を生じさせ、CO2生成が終了するまで持続させた
;生じた水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは約2であった。攪拌を持続しながらグルコン酸
ナトリウム0.5gを添加し、量を増加させながら3モルの炭酸ナトリウム水溶液を用い
てこの混合物を滴定した。pHが約3.5〜約4.0に達したときに、炭酸ナトリウムの
漸増的添加は乳濁状の褐色内の深紅色スポットの外観を生じさせたが、これは攪拌すると
消散した。pHが約6.0になるまでさらに炭酸ナトリウムを添加すると混合物全体が乳
濁状の褐色が生じ、これは攪拌後にも維持された。この反応混合物の温度を約63℃まで
上昇させ、加熱を約16時間持続すると、その時点にpHは約8.2へ上昇し、この反応
混合物は肉眼には透明に見え、濃紅色を有していた。約3,300,000ダルトンの絶
対分子量を有する、有意な収率のグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体が得られた。
【0097】
[実施例7]
攪拌機およびマントルヒータを装備した500mLフラスコへ塩化第二鉄六水化物(0
.0555モル)の水溶液200mLを添加した。強力に攪拌しながら0.943モルの
炭酸ナトリウム水溶液30mLを導入し、この混合物を約20℃の温度で維持した。この
反応はコロイド状水酸化第二鉄の形成を生じさせ、CO2生成が終了するまで持続させた
;生じた水酸化第二鉄ヒドロゾルのpHは約2であった。攪拌を持続しながらグルコン酸
ナトリウム約0.5gを添加し、量を増加させながら3モルの炭酸ナトリウム水溶液を用
いてこの混合物を滴定した。pH3.5で乳濁状の褐色が現れ、これは攪拌後にも維持さ
れた。炭酸ナトリウムをさらに漸増的に添加してpHを約9へ上昇させると、その時点で
混合物は透明化するように見え、色は濃紅色または赤みがかった褐色であった。この反応
混合物の温度を約55℃へ上昇させ、約16時間にわたり加熱を持続すると、その時点に
pHは約8.5であった。約3,400,000ダルトンの絶対分子量を有する、グルコ
ン酸第二鉄ナトリウム複合体が得られた。
【0098】
[実施例8]
水0.2L中の塩化第二鉄六水化物(0.0555M)を約20℃で0.0708Mの
炭酸ナトリウムと反応させて、強力に攪拌しながらpHを約6.0へ上昇させると、水酸
化第二鉄コロイドもしくはヒドロゾルが生成した。攪拌を継続しながら、0.0229M
のグルコン酸ナトリウムを水酸化第二鉄ヒドロゾルへ添加した。反応混合物の温度を約1
02℃へ上昇させ、その温度を(環流させて)120分間維持した。結果として生じたグ
ルコン酸第二鉄ナトリウム複合体は、3,120,000ダルトンのMwおよびMw/M
n=1.53を有していた。
【0099】
[実施例9]
水0.2L中の塩化第二鉄六水化物(0.111M)を約20℃で0.142Mの炭酸
ナトリウムと反応させて、強力に攪拌しながらpHを約6.0へ上昇させると、水酸化第
二鉄コロイドもしくはヒドロゾルが生成した。攪拌を継続しながら、0.092Mのグル
コン酸ナトリウムを水酸化第二鉄ヒドロゾルへ添加した。反応混合物の温度を約102℃
へ上昇させ、その温度を(環流させて)120分間維持した。結果として生じたグルコン
酸第二鉄ナトリウム複合体は、350,000ダルトンのMwおよびMw/Mn=1.2
1を有していた。
【0100】
[実施例10]
水0.2L中に含有された塩化第二鉄六水化物(0.111M)を約20℃で0.14
15Mの炭酸ナトリウムと反応させて、強力に攪拌しながらpHを約6.0へ上昇させる
と、水酸化第二鉄コロイドもしくはヒドロゾルが生成した。攪拌を継続しながら、0.0
229Mのグルコン酸ナトリウムおよび次に0.2924Mのスクロースを水酸化第二鉄
ヒドロゾルへ添加した。持続的に攪拌しながら反応混合物の温度を約102℃へ上昇させ
、その温度を(環流させて)120分間維持した。結果として生じたスクロース中のグル
コン酸第二鉄ナトリウム複合体は、587,000ダルトンのMwおよびMw/Mn=1
.40を有していた。
【0101】
[実施例11]
0.18Mの塩化第二鉄六水化物を水0.1Lに溶解させた。0.014M量の炭酸ナ
トリウムを塩化第二鉄溶液に添加し、CO2の放出が終了するまで攪拌した。この溶液に
0.0039Mのイソアスコルビン酸(エリソルビン酸)を添加し、次に、この反応混合
物を90分間にわたり環流させる間に4.44Mの水酸化ナトリウムを用いてpHを11
.0へ調整すると、結果として1,750,000ダルトン(Rz=35.3)の絶対重
量平均分子量およびMw/Mn=1.22の多分散性を有する鉄サッカリド複合体が生じ
た。
【0102】
[実施例12]
0.1Lの0.356M塩化第二鉄六水化物を用いて、A、B、C、DおよびEと識別
した5つの別個の合成反応液を調製した。反応混合物A、B、C、DおよびEへグルコー
スを添加すると、各々0.555、0.4127、0.3667、0.2778および0
.2222Mのモル濃度が得られた。各0.1Lの反応混合物への0.0625M水酸化
ナトリウムおよび0.029M炭酸ナトリウムの添加は、90分間の環流時間中に約10
.0のpHを生じさせた。表2は、生成した鉄複合体の絶対分子量およびそれらと炭水化
物の出発時モル濃度との関係を示している(便宜的に、塩化第二鉄六水化物は表中では塩
化第二鉄と表示した)。
【0103】
【表1】

【0104】
[実施例13]
水0.1Lを用いて0.18M塩化第二鉄六水化物反応物溶液を調製した。この塩化第
二鉄六水化物溶液に混合しながらグルコースを添加すると0.18Mの炭水化物濃度が得
られた。この後に水酸化ナトリウム(0.0625M)および炭酸ナトリウム(0.01
45M)の添加を続けた。反応混合物のpHは約102℃の90分間の環流時間中は約1
0.5を維持した。この反応混合物は、反応容量を0.1Lで一定に維持しながら実施例
12(C)の試薬濃度の約半分となるように設計した。実施例12(C)の生成物は59
7,000(Rz=9.7)の絶対分子量およびMw/Mn=1.48の多分散性によっ
て特徴付けられたが、本実験の対応する生成物は299,000(Rz=9.4)の絶対
分子量およびMw/Mn=1.21の多分散性を有していた。
【0105】
[実施例14]
0.5Lフラスコ中で0.2mLの水に溶解させた0.222Mの塩化第二鉄六水化物
を用いて、A、B、CおよびDと識別した4つの反応を実施した。この混合物を持続的に
攪拌し、各反応混合物に炭酸ナトリウムを添加すると0.283Mの濃度が得られた。各
反応混合物についての唯一の変量はグルコン酸ナトリウムのモル濃度であり、このとき「
A」は0.0573M;「B」は0.05157M;「C」は0.05038M;および
「D」は0.04584Mの濃度を有していた。3.0M炭酸ナトリウムを用いて個々の
反応混合物を滴定すると、102℃で90分間にわたり沸騰する前に6.2のpHが得ら
れた。インラインMALLS検出とともにHPLCを用いて反応生成物を特性解析すると
次の絶対分子量が生じた:A=303,000およびMw/Mn=1.41;B=597
,000およびMw/Mn=1.54;C=1,627,000およびMw/Mn=2.
00;ならびにD=2,104,000およびMw/Mn=2.03。この実験の結果は
、生成した有効造血性化学種(AHS)についての絶対分子量が一定反応量で塩化第二鉄
と反応したグルコン酸ナトリウムの量に関連していたことを示している。
【0106】
[実施例15]
マグネチックスターラおよびマントルヒータを装備した0.5Lフラスコ内の水0.1
5Lに0.0444M塩化第二鉄六水化物を添加して、2つの別個の反応を実施した。4
0mLの1.41M炭酸ナトリウムを添加して各反応混合物の容量を0.19Lにし、そ
の後で10mLの1.032Mグルコン酸ナトリウムを添加して各総反応液量を0.20
Lにした。各反応混合物は、持続的に混合しながら3.0M炭酸ナトリウムを用いてpH
約6.2へ滴定した。この温度を約20℃で維持した。1つの反応混合物を「A」、他方
を「B」と識別した。反応混合物「A」を沸騰させ、約102℃で90分間にわたり環流
させた。反応混合物「B」は、反応混合物へ重量で20%のスクロースを添加した後に同
様に環流させた。反応「A」からの生成物は597,000ダルトンの絶対分子量および
Mw/Mn=1.54を有していたが、反応「B」からの生成物は163,000ダルト
ンの絶対分子量およびMw/Mn=1.18を有していた。
【0107】
[実施例16]
一定モル比の鉄対炭酸塩および鉄対グルコン酸塩反応物を用いて鉄複合体合成を試験し
たが、このときそれらのモル質量は全て0.2Lの一定反応容量中で増加した。表2は、
A、BおよびCと表示した3つの実験についての試験マトリックスを規定している。マグ
ネチックスターラを用いて混合することによって0.2Lの量の水に塩化第二鉄六水化物
を溶解させ、その後に炭酸ナトリウムを添加した。この混合物は、グルコン酸ナトリウム
を添加する前20分間にわたり透明化するに任せた。3.0M炭酸ナトリウム溶液を滴下
法で添加すると6.2のpHが達成された。この反応混合物を次に90分間にわたり沸騰
させ、MALLS検出を備えるHPLCを用いて特性解析した。結果は表2に示した。
【0108】
【表2】

【0109】
[実施例17]
0.22Mの塩化第二鉄六水化物を水0.1Lに溶解させた。次に炭酸ナトリウムを添
加すると0.28Mの濃度が得られた。CO2の発生が終了した時点に、この試薬混合液
に0.0166Mグルコン酸ナトリウムを添加した。次に4.25M水酸化ナトリウムを
用いてこの反応混合物のpHを6.5へ調整した。この反応は約102℃での30分間の
環流時間中に約10.5のpHを発生させた。この生成物は72,000ダルトン(Rz
=28.8)の絶対重量平均分子量およびMw/Mn=1.42の多分散性を有していた

【0110】
本発明の原理、好ましい実施形態および動作様式を上記の明細書に記載してきた。しか
し本明細書によって保護されることが企図された本発明は、これらは限定的ではなくむし
ろ実例として見なすべきであるために、ここに開示した特定の形状に限定されると見なす
べきではない。当業者であれば、本発明の精神を逸脱せずに、変形および変更を加えるこ
とができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子量鉄サッカリド複合体を調製するための方法であって、前記複合体がヒト医学ま
たは獣医学における非経口投与に適合し、
(1)所定のpHを有する反応混合物を形成するために、実質的に水性の媒体中におい
て、
(i)糖、糖誘導体およびそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つ
の化合物を;
(ii)(OH)-イオンの存在下でFe(III)イオンを含む溶液または水性分
散液と
接触させるステップであって;
(a)(i):(ii)のモル比が約30:1〜約1:30であり;
(b)前記混合物の温度が約20℃〜約75℃である、ステップと;
(2)前記混合物のpHを複合体集合点へ上昇させるステップと;
(3)約25,000ダルトン以上の絶対重量平均分子量を有する前記鉄サッカリド複
合体を形成するために十分な時間にわたり前記混合物を維持するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(2)におけるpHが約5.0〜約12.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記pHが約5.5〜約11.0である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記pHが約6.0〜約10.0である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)における温度が約25℃〜約70℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が約40℃〜約65℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(3)における温度が約80℃〜約105℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)における温度が約90℃〜約100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(2)におけるpHが約6.0〜約12.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(3)における温度が少なくとも約50℃へ上昇させられる、請求項9に記載
の方法。
【請求項11】
周囲圧力を超える圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(3)における温度が、反応混合物の沸点近くへ上昇させられる、請求項11
に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの化合物(i)が糖酸の塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記塩がグルコン酸ナトリウムであり、前記グルコン酸塩アニオン対前記Fe(III
)イオンの前記モル比が約1:1〜約1:30である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モル比が約1:2〜約1:25である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの化合物(i)が糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記糖がスクロースであり、前記スクロース対前記Fe(III)イオンの前記モル比
が約30:1〜約1:1である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モル比が約25:1〜約2:1である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記鉄サッカリド複合体が、約100,000ダルトン〜約50,000,000ダル
トンの絶対重量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記分子量が、約125,000ダルトン〜約25,000,000ダルトンである、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記分子量が、約150,000ダルトン〜約10,000,000ダルトンである、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記分子量が、約175,000ダルトン〜約2,500,000ダルトンである、請
求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記鉄サッカリド複合体が、約25,000〜約5,000,000;約30,000
〜約4,000,000;約50,000〜約3,500,000;約75,000〜約
3,000,000;約100,000〜約4,000,000;約120,000〜約
3,750,000;約200,000〜約2,500,000;約250,000〜約
1,000,000;約275,000〜約850,000;約300,000〜約75
0,000;約350,000〜約750,000;および約500,000〜約700
,000からなる群より選択される絶対重量平均分子量(Mw)(ダルトン)を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの化合物(i)が、モノサッカリド、ジサッカリド、およびそれら
の混合物からなる群より選択される糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記モノサッカリドが、C3〜C6トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、
およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モノサッカリドが、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、エリトロース、
リボース、リブロース、ソルボース、キシロース、アラビノース、フルクトース、グルコ
ース、ガラクトース、マンノース、ならびにそれらの混合物、エナンチオマーおよびラセ
ミ化合物からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ジサッカリドが、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、イ
ソマルトース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、トレハロース、ラクトース
、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの化合物(i)が、酸、塩、メチルエステル、酢酸塩、アミン、ア
ルコール、およびそれらの混合物からなる群より選択される糖誘導体を含む、請求項1に
記載の方法。
【請求項29】
前記糖誘導体が、グルコン酸、グルカル酸、フルクトースのヒドロキシ酸、α−メチル
カプロン酸、アルドン酸、アルダル酸、マンナル酸、ウロン酸、グルクロン酸、マンヌロ
ン酸、キシラル酸、酒石酸、粘液酸、グリセリン酸、乳酸、酒石酸、ならびにアラビノー
ス、グルコースおよびマンノースのジカルボン酸、マルトビオン酸、ラクトビオン酸、な
らびにそれらの混合物からなる群より選択される酸誘導体を含む、請求項28に記載の方
法。
【請求項30】
前記糖誘導体が、フコサミン、グルコサミン、ガラクトサミン、アコサミン、バシロサ
ミン、およびそれらの混合物からなる群より選択されるアミン誘導体を含む、請求項28
に記載の方法。
【請求項31】
前記糖誘導体が、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、およびそれらの混合物
からなる群より選択されるアルコール誘導体を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記糖誘導体が、糖酸のアルカリ金属塩、糖酸のアルカリ土類金属塩、およびそれらの
混合物からなる群より選択される塩誘導体を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウ
ムおよびマグネシウムからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記塩がグルコン酸ナトリウムである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記可溶性または分散性第二鉄イオンが、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、水酸化第二鉄、硫
酸第二鉄、酢酸第二鉄、炭酸第二鉄、クエン酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、硫酸第
二鉄カリウム、およびそれらの混合物に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記第二鉄化合物が、コロイド状に分散した水酸化第二鉄である、請求項1に記載の方
法。
【請求項37】
ステップ(2)において塩基性物質を添加するステップを含む、請求項1に記載の方法

【請求項38】
前記塩基性物質が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属
炭酸塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記糖がグルコースまたはグルコース誘導体であり、前記塩基が炭酸ナトリウムである
、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記糖がスクロースまたはスクロース誘導体であり、前記塩基が水酸化ナトリウムであ
る、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記鉄サッカリド複合体の形成後に、前記反応混合物が少なくとも1つの賦形剤を含み
、そして、(4)前記反応混合物から前記高分子量鉄サッカリド複合体を実質的に分離す
るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
実質的に分離するステップが、(a)前記高分子量鉄サッカリド複合体の沈降を引き起
こすために少なくとも1つのC1〜C4アルコールを前記水性反応媒体へ添加するステップ
と;(b)透析と;(c)クロスフロー透析と;(d)動電学的移動と;(e)遠心分離
と;(f)少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムに前記反応混合物を通過させるス
テップと、カラム溶出液を複数の分画に分離するステップであって、前記分画の少なくと
も1つが前記高分子量鉄サッカリド複合体を含む、ステップとを含むプロセスと;(g)
それらの組み合わせとからなる群より選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記実質的に分離するステップが、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムに前記
反応混合物を通過させるステップと、カラム溶出液を複数の分画に分離するステップであ
って、前記分画の少なくとも1つが前記高分子量鉄サッカリド複合体を含む、ステップと
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記実質的に分離するステップが、前記高分子量鉄サッカリド複合体の沈降を引き起こ
すためにC1〜C4アルコールを前記水性反応媒体へ添加するステップを含み、そして、少
なくとも1つのクロマトグラフィーカラムに前記沈降物を含む組成物を通過させるステッ
プと、カラム溶出液を複数の分画に分離するステップであって、前記分画の少なくとも1
つが前記高分子量鉄サッカリド複合体を含む、ステップとを含むプロセスによって、前記
鉄サッカリド複合体がさらに精製される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記実質的に分離された鉄サッカリド複合体が、少なくとも1つの乾燥するステップに
かけられる、請求項42、43、および44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
乾燥するステップが、(a)フリーズドライするステップと;(b)スプレー乾燥する
ステップと;(c)熱の適用によって乾燥するステップと;(d)熱および真空の適用に
よって乾燥するステップと;(e)それらの組み合わせによって乾燥するステップとから
なる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記クロマトグラフィーカラムが、高圧液体クロマトグラフィーカラムおよびサイズ排
除クロマトグラフィーカラムであって、各カラムは固定相を含むカラムからなる群より選
択される、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
前記高分子量鉄サッカリド複合体を含む前記分画が、フリーズドライされる、請求項4
7に記載の方法。
【請求項49】
前記フリーズドライされた有効造血性化学種が、非経口投与に適合する水性媒体中で再
構成される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記接触させるステップが、混合するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記混合するステップが、高速および持続的である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1つのスターラ、超音波ミキサ、シングルまたはマルチスクリューエクスト
ルーダ−ミキサ、および静止型ミキサからなる群より選択される装置を用いる、請求項5
0に記載の方法。
【請求項53】
前記第二鉄化合物が塩化第二鉄であり、ステップ(1)が水酸化ナトリウムの添加を含
む、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの化合物が、グルコン酸ナトリウムおよびスクロースの混合物を含
み、前記第二鉄化合物が、コロイド状にある水酸化第二鉄水性組成物であり、そして、ス
テップ(2)において炭酸ナトリウムを添加するステップをさらに含む、請求項1に記載
の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1つの化合物がスクロースであり、前記第二鉄化合物がコロイド状にあ
る水酸化第二鉄水性組成物であり、そして、ステップ(2)において水酸化ナトリウムを
添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも1つの糖または糖誘導体の分子量低減添加物を添加するステップであって、
高分子量鉄サッカリド複合体の分子量を、添加量の非存在下での分子量より低くするため
に十分な量で添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記分子量低減添加物の量が、少なくとも約0.01%〜約10,000%のモル過剰
を表す、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ステップ(1)(i)の前記少なくとも1つの化合物がグルコン酸ナトリウムであり、
前記分子量低減添加物がスクロースである、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
ステップ(1)(i)の前記少なくとも1つの化合物がグルコン酸ナトリウムであり、
前記分子量低減添加物がグルコン酸ナトリウムである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(3)における温度が少なくとも約80℃へ上昇させられる、請求項56に記
載の方法。
【請求項61】
ヒト医学または獣医学における非経口投与に適合する高分子量鉄サッカリド複合体であ
って、前記複合体が請求項1に記載の方法によって作製された複合体。
【請求項62】
Fe(III)と複合体形成していない状態にある糖を実質的に含んでいない、請求項
61に記載の複合体。
【請求項63】
凍結乾燥状態にある、請求項61に記載の複合体。
【請求項64】
合成時に、約25,000ダルトン以上の絶対重量平均分子量を有し、望ましくない賦
形剤をほとんど有していない鉄サッカリド複合体。
【請求項65】
約100,000ダルトン以上の分子量を有し、グルコン酸またはイソアスコルビン酸
の塩に由来する、請求項64に記載の複合体。
【請求項66】
約500,000ダルトン〜約700,000ダルトンの分子量を有し、前記塩がグル
コン酸ナトリウムである、請求項65に記載の複合体。
【請求項67】
糖成分がスクロースまたはグルコース以外に由来し、約25,000ダルトン以上の絶
対重量平均分子量を有する鉄サッカリド複合体。
【請求項68】
前記糖成分がイソアスコルビン酸に由来する、請求項67に記載の複合体。
【請求項69】
約25,000ダルトン以上の絶対重量平均分子量を有する鉄サッカリド複合体であっ
て、前記複合体がFe(III)と複合体形成していない状態にある糖を実質的に含んで
いない鉄サッカリド複合体。
【請求項70】
前記糖がスクロースである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記糖がグルコースである、請求項69に記載の複合体。
【請求項72】
鉄サッカリド複合体を調製するための方法であって、前記複合体が哺乳動物における非
経口投与に適合し、
(1)反応混合物を形成するために(i)(OH)-イオンの存在下でのFe(III
)イオンおよび(ii)少なくとも1つのサッカリドを含む水溶液もしくは水性分散液を
供するステップであって、前記反応混合物中の(i):(ii)のモル比が約30:1〜
約1:30であり、前記反応混合物の温度およびpHが複合体集合点以上であるステップ
と;
(2)約25,000ダルトン以上の分子量を有する前記鉄サッカリド複合体を形成す
るために十分な時間にわたって前記温度およびpHを前記複合体集合点以上で維持するス
テップと
を含む方法。
【請求項73】
前記反応混合物の温度が約25℃〜約75℃である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記反応混合物のpHが約5.0〜約12.0である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記pHが約5.5〜約11.0である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記pHが約6.0〜約10.0である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記温度が約40℃〜約65℃である、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
ステップ(2)における前記温度が約80℃〜約105℃である、請求項72に記載の
方法。
【請求項79】
ステップ(2)における前記温度が約90℃〜約100℃である、請求項72に記載の
方法。
【請求項80】
ステップ(2)における前記温度が約80℃〜約105℃であり、前記pHが約5.0
〜約12.0である、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
前記糖誘導体がグルコン酸ナトリウムである、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
(OH)-イオンの存在下での前記Fe(III)イオンが水酸化第二鉄である、請求
項72に記載の方法。
【請求項83】
前記水酸化第二鉄が、Fe(III)塩と塩基との反応によって生成される、請求項8
2に記載の方法。
【請求項84】
前記塩が塩化第二鉄であり、前記塩基が炭酸ナトリウムである、請求項83に記載の方
法。
【請求項85】
前記サッカリドが糖である、請求項72に記載の方法。
【請求項86】
前記サッカリドが糖誘導体である、請求項72に記載の方法。
【請求項87】
前記誘導体がイソアスコルビン酸である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記糖がスクロースである、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記糖誘導体がグルコン酸ナトリウムである、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
請求項1または請求項72の方法によって生成された生成物。
【請求項91】
約1.05〜約5.0;約1.08〜約4.0;約1.11〜約3.5;約1.14〜
約3.0;約1.17〜約2.5;約1.20〜約2.0;約1.20〜約1.75;約
1.15〜約1.60;および約1.25〜約1.65からなる群より選択される、絶対
重量平均分子量(Mw)に対する絶対数平均分子量(Mn)の比として測定された分子量
分布を有する、請求項90に記載の生成物。
【請求項92】
約1.15〜約1.60のMw/Mnを有する、請求項91に記載の生成物。
【請求項93】
約500,000ダルトン〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量(Mw)
、および約1.4〜約1.6の、Mw/Mnによって測定された分子量分布(Mnは絶対
数平均分子量である)を有する鉄サッカリド複合体。
【請求項94】
約350,000ダルトン〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量(Mw)
、および約1.4〜約1.6の、Mw/Mnによって測定された分子量分布(Mnは絶対
数平均分子量である)を有するグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体。
【請求項95】
約500,000ダルトン〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量(Mw)
、および約1.4〜約1.6の、Mw/Mnによって測定された分子量分布(Mnは絶対
数平均分子量である)を有するグルコン酸第二鉄ナトリウム複合体。
【請求項96】
約350,000ダルトン〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量(Mw)
、および約1.4〜約1.6の、Mw/Mnによって測定された分子量分布(Mnは絶対
数平均分子量である)を有する水酸化第二鉄スクロース複合体。
【請求項97】
約500,000ダルトン〜約700,000ダルトンの絶対重量平均分子量(Mw)
、および約1.4〜約1.6の、Mw/Mnによって測定された分子量分布(Mnは絶対
数平均分子量である)を有する水酸化第二鉄スクロース複合体。
【請求項98】
(A)約25,000〜約5,000,000;約30,000〜約4,000,00
0;約50,000〜約3,500,000;約75,000〜約3,000,000;
約100,000〜約4,000,000;約120,000〜約3,750,000;
約200,000〜約2,500,000;約250,000〜約1,000,000;
約275,000〜約850,000;約300,000〜約750,000;約350
,000〜約750,000;および約500,000〜約700,000からなる群よ
り選択される絶対重量平均分子量(Mw)(ダルトン)と;(B)約1.05〜約5.0
;約1.08〜約4.0;約1.11〜約3.5;約1.14〜約3.0;約1.17〜
約2.5;約1.20〜約2.0;約1.20〜約1.75;約1.15〜約1.60;
および約1.25〜約1.65からなる群より選択される、絶対数平均分子量(Mn)に
対する絶対重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)として測定された分子量分布とを
有する鉄サッカリド複合体。
【請求項99】
約1.1〜約1.3のMw/Mnを有する、請求項68に記載の生成物。
【請求項100】
補充鉄分を必要とする哺乳動物を治療する際の非経口使用に適合する医薬組成物であっ
て、約5mg/mL〜約100mg/mLの単位用量の鉄を、請求項61、62、67、
69、70および71のいずれかに記載の鉄サッカリド複合体化合物の状態で含む、医薬
組成物。
【請求項101】
補充鉄分を必要とする哺乳動物を治療するための方法であって、請求項61、62、6
7、69、70および71のいずれかに記載の鉄サッカリド複合体化合物の治療有効量を
非経口投与するステップを含む方法。
【請求項102】
再構成および非経口使用に適合する実質的に乾燥した有効造血性化学種(AHS)を収
容している密閉容器を含む製品。
【請求項103】
前記密閉容器が防湿性である、請求項102に記載の製品。
【請求項104】
前記密閉容器が、アンプル、バイアルおよびパウチからなる群より選択される、請求項
102に記載の製品。
【請求項105】
前記容器が、金属、金属箔、ガラスおよびそれらの組み合わせからなる群より選択され
る物質から構成される、請求項104に記載の製品。
【請求項106】
単位用量の前記AHSを含む、請求項102に記載の製品。
【請求項107】
前記容器が真空下にある、請求項102に記載の製品。
【請求項108】
前記AHSが不活性ガス下で維持される、請求項102に記載の製品。
【請求項109】
前記不活性ガスが、窒素、アルゴンおよびヘリウムからなる群より選択される、請求項
108に記載の製品。
【請求項110】
再構成および非経口使用に適合する、単位用量の実質的に乾燥した有効造血性化学種(
AHS)を収容している密閉パウチまたは密閉バイアルを含む製品。
【請求項111】
前記AHSが、水酸化第二鉄スクロース複合体、グルコン酸第二鉄ナトリウム複合体お
よびサッカリン第二鉄複合体からなる群より選択される、請求項102に記載の製品。
【請求項112】
前記AHSが少なくとも約100,000ダルトンの絶対分子量を有する、請求項10
2に記載の製品。
【請求項113】
被験者における鉄欠乏症を治療する方法であって、請求項1に記載の方法によって製造
された、精製され、実質的に乾燥された有効造血性化学種(AHS)を含む組成物の単位
用量を再構成するステップと、前記再構成された組成物を前記被験者に非経口投与するス
テップとを含む方法。
【請求項114】
前記AHSが、水酸化第二鉄スクロース複合体、グルコン酸第二鉄ナトリウム複合体お
よびサッカリン第二鉄複合体からなる群より選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記AHSが少なくとも約100,000ダルトンの絶対分子量を有する、請求項11
4に記載の方法。

【公開番号】特開2012−82199(P2012−82199A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−244615(P2011−244615)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【分割の表示】特願2006−515004(P2006−515004)の分割
【原出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(505443458)クロマシューティカル・アドヴァンスト・テクノロジーズ,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】