説明

高分子電解質および活性成分を基にした放出制御粒子および該粒子を含む製剤

本発明は、活性成分(AP)、特にタンパク質およびペプチド活性成分の輸送体である高分子電解質ポリマーを有する新規の粒子と、前記AP微粒子を有する新規の放出制御製剤とに関するものである。
これらAPを有する新規の粒子は、数日間、さらには数週間の長期間にわたってAPを放出する。
本発明は、第1態様において、
a)帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)であって、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成する第1高分子電解質ポリマー(PE1)と、
b)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性である第2高分子電解質ポリマー(PE2)であって、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する第2高分子電解質ポリマー(PE2)と、
c)第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有で会合した少なくとも一つの活性成分(AP)と、
を有する粒子に関し、前記粒子が、pHmと等しいpHで、活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合することで得られる。
本発明はまた、これらの粒子を調製する方法と、かかる粒子を有する製剤と、薬剤を調製する方法とに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分(AP)、とくにタンパク質およびペプチド活性成分の新規の輸送体と、前記APの輸送体を有する新規の放出制御製剤とに関連するものである。本願はまた、これらの製剤の用途、とくに治療用途にも関連するものである。これらの活性製剤は、ヒトの治療および動物の治療の両方に関連するものである。
【0002】
本明細書を通して用いる関連するAPは、少なくとも一つの活性成分を対象とする。
【背景技術】
【0003】
薬剤AP、とくに治療用ペプチド/タンパク質の持続放出の分野において、その目的は、多くが、患者に可能な限り健康体において観測される値に近い血漿ペプチドまたはタンパク質血漿濃度を再現することである。
【0004】
この目的は、血漿におけるタンパク質の短い寿命に抵触し、結果として、治療用タンパク質の反復投与を導く。そして、治療用タンパク質の血漿濃度は、高濃度ピークおよび最低濃度によって特徴づけられる「鋸歯」プロファイルを示す。濃度ピークは、健康体における基本濃度よりずっと高く、サイトカイン等の治療用タンパク質の高毒性のために非常に有害である。さらに、最低濃度は、治療効果を与えるのに必要な濃度より低く、その結果、患者に対して低い治療範囲および長期間の重篤な副作用をもたらす。
【0005】
したがって、患者の治療に対して理想的な値に近い治療用タンパク質の血漿濃度を患者において再現するため、検討中の製剤にとって、時間と共に血漿濃度の変動を制限するように、長時間にわたって治療用タンパク質を放出できるようにすることが重要である。
【0006】
さらに、この活性製剤は、好ましくは、当業者には既知である以下の要件を満たすべきである。
1.活性および非変性治療用プロテイン、例えば、ヒトタンパク質または合成タンパク質を持続放出し、血漿濃度を治療用の濃度に維持すること
2.容易に注入可能とするのに十分に低い注射での粘度
3.優れた毒性・耐性プロファイルを示す生体適合性および生分解性
【0007】
これらの目的を達成する試みにおいて、従来技術において提示された最良のアプローチの一つは、治療用タンパク質を有するナノ粒子の比較的非粘性の液体懸濁液から成る治療用タンパク質の持続放出形態を開発したものである。これらの懸濁液によって、天然の治療用タンパク質を簡単に投与することが可能になった。
【0008】
このようにして、フラメル・テクノロジーズは、治療用タンパク質が、疎水基および親水基を有するコポリアミノ酸のナノ粒子に会合する手段を提供してきた。
【0009】
米国特許出願公開第2006/0099264号明細書(特許文献1)は、アスパラギン酸残基および/またはグルタミン酸残基を有する両親媒性ポリアミノ酸を開示し、これらの残基の少なくとも一部は、例えば、少なくとも一つのα−トコフェロール残基を有するグラフトを持つ(合成もしくは天然由来のα−トコフェロールとグラフトしたポリグルタミン酸塩またはポリアスパラギン酸塩)。これらの「疎水的に改質された」ホモポリアミノ酸は、pH7.4の水性懸濁液において少なくとも一つの活性タンパク質(インスリン)と容易に結合することができるナノ粒子のコロイド懸濁液を水中で自発的に形成する。
【0010】
特許文献1に従う懸濁液によって「ベクトル化した」活性タンパク質(例えばインスリン)の生体内での放出時間は、長くなることによって効果が上がる。
【0011】
放出時間の増加は、とくに国際公開第05/051416号パンフレット(特許文献2)において開示されている製剤によって部分的に得られた。本明細書は、皮下注射後、内因性アルブミンに接触してその患者のインサイチューでゲルを形成するような濃度にて注射された、疎水的に改質されたポリ(グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)のコロイド懸濁液を開示する。タンパク質は、その後、1週間の標準的な期間をかけてゆっくりと放出される。しかし、投与される治療用タンパク質の濃度が比較的高い場合、例えばヒト成長ホルモンのような場合、放出時間は数日に限定される。
【0012】
これらの製剤の放出時間は、さらに長くなることで効果が上がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0099264号明細書
【特許文献2】国際公開A05/051416号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的の一つは、APを、数日、更には数週間という長時間にわたって放出する、APを有する新規の粒子を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、水溶液中で安定な懸濁液を形成する新規の粒子を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、凍結乾燥された形態で安定である、APを有する新規の粒子を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、凍結乾燥された形態で貯蔵することができる新規の粒子を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、凍結乾燥後に容易に再分散できる新規の粒子を提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、生物活性を保持するタンパク質を放出する新規の粒子を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、これらの微粒子を準備する新規の方法を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、APを持続放出するための固体製剤を、特に吸入および肺内投与のための乾燥粉末の形態で提供することである。
【0022】
これらの目的を達成するため、とりわけ、本発明者らが、長期にわたり忍耐を必要とする研究を行ったところ、全く驚くべきことで且つ予想外にも、二つの異極性の高分子電解質ポリマーであって、少なくとも一方が少なくとも一つのAPと会合した少なくとも一つの疎水器を有する該ポリマー(例えば、コポリアミノ酸)を特定の条件下で混合することで、長時間にわたって生体外または生体内でタンパク質またはペプチドを放出することが可能な、1〜100ミクロンの大きさを持つ粒子をもたらすということを見出した。
【0023】
これから判断すると、本発明は、まず、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子に関するものであり、該粒子は、
a)帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成する第1高分子電解質ポリマー(PE1)と、
b)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性である第2高分子電解質ポリマー(PE2)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成し、但し、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がポリアミノ酸である場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)はポリリシンもしくはポリエチレンイミンのいずれでもない、第2高分子電解質ポリマー(PE2)と、
c)第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有で会合する少なくとも一つの活性成分(AP)と、
を有し、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する上記粒子が、pHmと等しいpHで、活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合することで得られる。
【0024】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子を調製する方法に関するものであり、該粒子は、とくに上述されたものであり、該方法は、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分(AP)が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性の第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、前記pHの少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成し、但し、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がポリアミノ酸である場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)はポリリシンもしくはポリエチレンイミンのいずれでもない工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程とを備える。
【0025】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子に関するものであり、該粒子は、
a)帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成する第1高分子電解質ポリマー(PE1)と、
b)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性で且つ疎水側基(GH)を有する第2高分子電解質ポリマー(PE2)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する第2高分子電解質ポリマー(PE2)と、
c)第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有で会合する少なくとも一つの活性成分(AP)と、
を有し、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する前記粒子が、pHmと等しいpHで、活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合することで得られる。
【0026】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子を調製する方法に関するものであり、該粒子は、とくに上述されたものであり、該方法は、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分(AP)が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性で且つ疎水側基(GH)を有する第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)が、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程とを備える。
【0027】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する製剤に関するものであり、前記製剤は、上述した粒子を備える。
【0028】
また、本発明は、特に、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは大脳内投与用、または腫瘍への投与用、或いは経口、経鼻、肺、膣もしくは眼球経路による投与用の薬剤を調製する方法であって、該薬剤は、先に規定した製剤の少なくとも一つから本質的になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】例2(白丸)、例3.1(黒三角)、例3.2(黒ダイアモンド)、例3.3(黒四角)、例4(黒丸)および例5(直線)の粒子を有する製剤からのIFN−αの生体外での放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本明細書において、「溶液」という用語は、個々の鎖の形で溶媒とポリマーとの均一な混合物を意味すると理解される。
【0031】
本明細書において、「コロイド溶液」という用語は、T'テストで測定したときにその平均径が0.5μm未満か又はそれに等しい粒子の懸濁液を意味すると理解される。
【0032】
本明細書において、「半中和pH」という用語は、イオン性基の半分をイオン化するpHを意味すると理解される。
【0033】
本明細書において、「pHm」という用語は、活性成分(AP)と会合する第1高分子電解質ポリマー(PE1)の第2高分子電解質ポリマー(PE2)との混合を行う際のpHを意味すると理解される。
【0034】
本明細書において、生理学的pHは、例えば、7.2±0.4に等しいことと定義される。
【0035】
本明細書において、「高分子電解質」という用語は、水中でイオン化することが可能な基を有するポリマーであって、該ポリマー上で電荷を生成するポリマーを意味すると理解される。
【0036】
本明細書において、「両性高分子電解質」という用語は、少なくとも2種類の基を有し、それぞれがアニオン性基とカチオン性基を与えるように解離する高分子電解質を意味すると理解される。
【0037】
本明細書において、「を有する(to carry)」という表現は、有される基がペンダントであり、すなわち、前記基がポリマーの主鎖に対して側基であることを意味する。特に、ポリマーが「アミノ酸」残基を備えるポリアミノ酸である場合、前記ペンダント基は、「アミノ酸」残基に対して側基であり、該ペンダント基は、それを有する「アミノ酸」残基のγ位におけるカルボニル官能基の置換基である。
【0038】
本明細書において、「高分子電解質の極性」という用語は、pHのpHm値にてこの高分子電解質が持つ全体の電荷の極性を意味すると理解される。
【0039】
本明細書において、「かさ密度」という用語は、粒子1gが占める体積を意味すると理解される。かさ密度は、密度勾配法等の当業者に知られるいずれかの方法で測定される。
【0040】
本明細書において、「小分子」という用語は、分子量が1kDa未満の分子を意味すると理解される。
【0041】
Tテストは、第1高分子電解質ポリマー(PE1)の会合および第2高分子電解質ポリマー(PE2)の会合に起因する、本発明に従う粒子の大きさを測定するのに使用される。T'テストを用いて、第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子の大きさを評価するのが好ましい。
【0042】
Tテストの結果は、中位径D50であるので、サンプル内に存在する粒子の50%は、この値(D50)より低いか又はそれと等しい大きさを有する。
【0043】
T'テストの結果は、平均流体力学的直径である。
【0044】
レーザー回折による微粒子の大きさを測定するためのTテスト
D50に関するデータを得るが、該データは、分析される対象の50%がそれ以下であることを見出す直径である。本発明に従う粒子のこの直径は、以下に規定される手順に従って測定される。
【0045】
5mlの試験管中、分析されるサンプル400μlを脱塩水600μlで希釈し、その用意したものに10秒間(10±5)渦を発生させて、粒子の溶液を調製する。その次に、それらの溶液を不明瞭化が5〜20%の間になるまで滴下しながら測定セルに導入し、その後、466nmおよび632nmの二つの波長で動作するMalvern Mastersizer 2000型の装置を用いる光回折によって分析する。粒子のD50は、標準ISO 13320に説明されるように、
流体=1.33+i.0
ポリマー=1.59+i.0
という屈折率を用いたMie理論及びフランフォーファー近似から算出される。
【0046】
準弾性光散乱によってナノ粒子の大きさを測定するためのT'テスト
本発明に従うポリマーの粒子の平均流体力学的直径は、以下に規定する方法Mdに従って測定される。
【0047】
0.15MのNaCl媒体中、ポリマー溶液を1または2mg/mlの濃度で準備し、24時間攪拌して置いておく。その次に、これらの溶液を0.8〜0.2μmのフィルタに通して濾過した後、波長632.8nmの垂直に偏光したHe−Neレーザー光で動作するMalvern Compact Goniometer System型の装置を用いた動的光散乱において分析する。ポリマーナノ粒子の流体力学的直径は、「Surfactant Science Series」,第22巻,Surfactant Solutions,編集R.Zana,第3章,M.Dekker,1984の研究に説明されるように、キュムラント法による電界の自己相関関数から算出される。
【0048】
活性成分の放出を測定するためのLテスト
30mg/gのウシアルブミン画分V(Aldrich)、0.01Mのリン酸緩衝液、0.0027Mの塩化カリウム、0.137Mの塩化ナトリウム(AldrichのPBS)および0.015Mの酢酸アンモニウム(Aldric)を備えた流量2.83ml/hの水性媒体によって水浴したポリウレタン/ポリエーテル(PU−PE)発泡体からなる辺長1.5cmの立方体中に、50μlの製剤を注入する。サンプルは、連続相から定期的に回収され、そのタンパク質含有量をELISA(Immunotech,IM3193キット)によって分析する。
【0049】
次いで、回収した各サンプルで測定した値を加算することで、放出されたタンパク質の全重量をプロットし、それを合計の注入量と関連付けることができる。
【0050】
本発明の意義の範囲内で、「タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチドを意味し、ペプチドはオリゴペプチドであろうとポリペプチドであろうと問わない。このタンパク質またはこのペプチドは、例えば一つまたはそれ以上のポリオキシエチレン基をグラフトすることによって変性してもよいし、変性しなくてもよい。
【0051】
第1高分子電解質ポリマー(PE1)および第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、イオン化可能なアニオン性基および/またはカチオン性基、例えばアミン官能基またはカルボン酸官能基を有する生体適合性および生分解性の線状ポリマーである。好ましくは、ポリマー(PE1)または(PE2)は、所定の極性(アニオン性またはカチオン性)のイオン性基を有する。
【0052】
かかるポリマーは、例えば、ポリアミノ酸類の他、硫酸デキストラン、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ヒアルロン酸およびその誘導体等のアニオン性多糖類、ポリガラクツロン酸類またはポリグルクロン酸類、またはキトサン等のカチオン性多糖類、あるいはまたコラーゲンおよびゼラチン型のその誘導体である。
【0053】
所定の極性のイオン性基を有するポリマーが更に逆の極性のイオン性基を1〜30モル%の少数有する可能性は排除されない。イオン化可能なアニオン性またはカチオン性基および疎水基に加えて、第1または第2高分子電解質ポリマー(PE1)または(PE2)もまた、任意に、ヒドロキシエチルアミノ−ラジカル、アルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールから選択されるラジカル等の非イオン性基を有することもできる。
【0054】
ポリマーの正味電荷は、ポリマーの半中和pHに対するpH値に依存する。したがって、アニオン性のカルボン酸官能基を有する高分子電解質については、ポリマーの正味電荷が半中和pHより2単位下のpHでゼロの領域にある。実際、すべてのアニオン性官能基は、半中和pHより2単位上のpHでイオン化する。一方、カチオン性官能基を有するポリマーに対し、その正味電荷は、pHが半中和pHを約2単位超えるとゼロに低下する。
【0055】
本発明においては、pHのpHm値での混合条件下にて第1または第2高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)が持つ電荷数は、従来の酸/塩基滴定法によって得られる。
【0056】
0.15Mの塩化ナトリウムを備えた2mg/mlの高分子電解質濃縮溶液を、1Mの酢酸または1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpH3にする。その後、この溶液を、0.05Mの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHの変化を、加えた水酸化ナトリウムの量の関数として記録する。当量点(量およびpH)の検出は、例えば二重接線法によって行われるが、すべてのイオン性基がイオン化するpH、すなわちイオン化度が1に等しい場合のpHを検出することができる。次いで、この点から、いずれのpH値に対しても高分子電解質のイオン化度にまで戻すことができる。そして、半中和pH、すなわちイオン化度が0.5に等しいpHを規定することができる。また、pHのpHm値での高分子電解質のイオン化度を規定することもできる。当量点がpH3〜9の範囲外である特定の場合においては、すべてのイオン性基が、このpHの範囲にわたってイオン化するものと考えられ、すなわち、pH3〜9の値でのイオン化度は1に等しい。
【0057】
有利には、第1および第2高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)が、直鎖ポリ(α−アミノ酸)であり、PE1が直鎖ポリアミノ酸であれば、PE2はポリリシンでもポリエチレンイミンでもないことを忘れてはならない。
【0058】
本発明の意義の範囲内で且つこの説明を通して、「ポリアミノ酸」という用語は、天然ポリアミノ酸および合成ポリアミノ酸の両方に及び、また、20より多い「アミノ酸」残基を有するポリアミノ酸と同様に、2〜20の「アミノ酸」残基を有するオリゴアミノ酸にも及ぶ。
【0059】
好ましくは、本発明において用いるポリアミノ酸は、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸の繰り返し単位を備えるオリゴマーもしくはホモポリマー、またはこれら2種の「アミノ酸」残基の混合物を備えるコポリマーである。これらのポリマーにおける検討中の残基は、DもしくはLまたはD/L配置を有するアミノ酸であり、グルタミン酸塩もしくはグルタミン酸残基に関してはαまたはγ位を介して、またアスパラギン酸もしくはアスパラギン酸塩残基に関してはαまたはβ位を介して結合する。
【0060】
ポリアミノ酸の主鎖の好ましい「アミノ酸」残基は、L配置およびα型の結合を有するものである。
【0061】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、第1および第2高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)は、ポリアミノ酸、またはそれらの製剤可能な塩の一つとすることができ、その主鎖は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびそれら組み合わせから成る群から選択した残基の形をしており、これらの単位の少なくとも一部は、少なくとも第1高分子電解質ポリマー(PE1)に対して少なくとも一つの疎水基(GH)をグラフトすることによって変性される。
【0062】
また、上記ポリマー(PE2)も疎水側基を有することができる。
【0063】
第1の実施形態によれば、これらのポリアミノ酸は、PCT特許出願の国際公開WO−A−00/30618号に記載される種類であり、その疎水基(GH)は、互いに同一でも異なっていてもよく、
(i)直鎖または分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、さらに好ましくはC〜C18アルキル、アシルまたはアルケニル;
(ii)一つまたはそれ以上のヘテロ原子を有し、好ましくは酸素および/または硫黄を有し、より好ましくは下記式:
【化1】

(式中、
60ラジカルは、直鎖または分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、より好ましくはC〜C18アルキル、アシルまたはアルケニルラジカルであり、
61およびR62ラジカルは、互いに同一または異なり、水素または、直鎖もしくは分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、さらに好ましくはC〜C18アルキル、アシル、またはアルケニルラジカルと一致し、
q=1〜100である)の炭化水素基;
(iii)アリール、アラルキル、またはアルキルアリール、好ましくはアリール;
(iv)疎水性誘導体、好ましくはホスファチジルエタノールアミノ−ラジカル、または、オクチルオキシ−ラジカル、ドデシルオキシ−ラジカル、テトラデシルオキシ−ラジカル、ヘキサデシルオキシ−ラジカル、オクタデシルオキシ−ラジカル、9−オクタデセニルオキシ−ラジカル、トコフェリルオキシ−ラジカルもしくはコレステリルオキシ−ラジカルから選択されるラジカル;
からなる群から選択される。
【0064】
「炭化水素基」という用語は、本発明の意義の範囲内で、とくに水素原子および炭素原子を有する基を意味すると理解される。
【0065】
好ましくは、この実施形態において、疎水基が、メチル、エチル、プロピル、ドデシル、ヘキサデシルおよびオクタデシルのラジカルの群から選択される。
【0066】
とくに好ましくは、疎水基(GH)が、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子を備えることができる直鎖または分岐C〜C30アルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子を備えることができるC〜C30アルキルアリールまたはアリールアルキル、
・任意には少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子を備えることができるC〜C30(多)環式化合物、
から成る群から選択される。
【0067】
さらに具体的には、少なくとも一つの疎水基(GH)が、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロールおよびコレステロールから成る群から選択される前駆体から派生したグラフトによって得られる。
【0068】
本発明の実施形態によれば、高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の一つまたはそれらの製剤可能な塩の一つは、以下の式(I):
【化2】

(式(I)中、
・Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキル、ベンジル、−R−[GH]を示し、またはRは、NHと、末端アミノ酸残基を形成し;
・Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アシル基、ピログルタメート、または−R−[GH]を示し;
・Rは、直接結合または1〜4のアミノ酸残基を基にした「スペーサ」を示し;
・AおよびAは、独立して−CH−(アスパラギン酸残基)または−CH−CH−(グルタミン酸残基)を示し;
・n/(n+m)は、モルグラフト度として定義され、その値は、pH7で25℃の水中に溶解したポリマーがポリマー粒子のコロイド懸濁液を形成するのに十分に低く;
・n+mは10〜1000の範囲であり、好ましくは50から300の間であり;
・GHは、6〜30の炭素原子を有する疎水基を示すか、または上記項目(i)、(ii)、(iii)および(iv)において定義されたラジカルを含む群から選択される)に一致する。
【0069】
更に、式(I)のポリアミノ酸の調製および合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 02 07008及びFR 03 50190を有効に参照されたい。
【0070】
他の可能性によれば、高分子電解質ポリマーPE2またはその製剤可能な塩の一つは、以下の式(II)、(III)および(IV):
【化3】

(式中、
・GHは、6〜30個の炭素原子を有する疎水基を示し;
・R30は、直鎖C〜Cアルキル基であり;
・R50は、C〜Cジアミノ、ジアルコキシ、またはアルキル基であり;
・Rは、直接結合または1〜4のアミノ酸残基を基にした「スペーサ」を示し;
・AおよびAは、独立して−CH−(アスパラギン酸残基)または−CH−CH−(グルタミン酸残基)を示し;
・n'+m'またはn''は、重合度として定義され、10〜1000の範囲であり、好ましくは50〜300の間である)の一つと一致する。
【0071】
更に、式(II)、(III)及び(IV)のポリアミノ酸の調製および合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 03 50641を有効に参照されたい。
【0072】
他の可能性によれば、高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の一つまたはそれらの製剤可能な塩の一つは、以下の式(V):
【化4】

(式(V)中、
・Eは、独立して、
−NHR基(ここで、Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルを示す)、
次式:
【化5】

(式中:
は、OH、ORまたはNHR10であり、
、RおよびR10は、独立して、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルを示す)と一致する末端アミノ酸残基または末端アミノ酸誘導体、
を示し;
・Bは、直接結合、または二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは、−O−、−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基もしくは1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基から選択され;
・Dは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アシル基またはピログルタメートを示し;
・GHは、6〜30個の炭素原子を有する疎水基を示し;
・R70は、以下の基:
−NH−(CH−NH(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH−NH−C(=NH)−NH
−O−(CH−NH
−O−(CH−N(CH
【化6】

(式中、−R11は、−H、−COH、アルキルエステル(好ましくは−COOMeおよび−COOEt)、−CHOH、−C(=O)−NH、−C(=O)−NH−CHまたは−C(=O)−N(CHを示す);
次式:
【化7】

(式中、Xは、酸素または−NH−で、−R12は、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルで、−R13は、−(CH−NH、−(CH−NH−C(=NH)−NH、−(CHNHである)のアミノ酸残基またはアミノ酸誘導体;
から選択されるラジカルを示し、上記R70基の対アニオンが、塩化物、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩、好ましくは塩化物であり;
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、アルキレングリコール残基またはポリオキシアルキレン残基であり;
・p、q、rおよびsは、正の整数であり;
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜99モル%の範囲であり、好ましくは5〜50モル%の間であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも3個の疎水性グラフトを有しており;
・(q)/(p+q+r+s)は、カチオン性基のモルグラフト度として定義され、1〜99モル%の範囲であり;
・(p+q+r+s)は、10〜1000の範囲であり、好ましくは30〜500の間であり;
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜98モル%の範囲であり;
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜98モル%の範囲である)と一致する。
【0073】
リシン、オルニチンおよびアルギニン誘導体は、例えば、エチルおよびメチルエステル、アミドおよびメチル化アミドとすることができる。
【0074】
好ましくは、この代替案に従えば、疎水基GHおよびカチオン性基が、ペンダント基としてランダムに位置している。
【0075】
さらに、疎水性単位を持つポリグルタミン酸塩のモルグラフト度は、2〜99%の間であるのが好ましく、より好ましくは5〜50%の間であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも3個の疎水性グラフトを有する。
【0076】
ポリグルタミン酸塩の比(q)/(p+q+r+s)は、該ポリグルタミン酸塩がカチオン電荷を含む基を1〜約97モル%を備えることができることを意味する。
【0077】
ポリグルタミン酸塩の比(s)/(p+q+r+s)は、該ポリグルタミン酸塩が中性pHでアニオン性、中性またはカチオン性となることができることを意味する。
【0078】
更に、ヒスチジンに由来する式(V)のポリアミノ酸の調製および合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 05 53302を有効に参照されたい。
【0079】
ヒスチジンに由来するもの以外の式(V)のポリアミノ酸の調製および合成に関する詳細に関しては、特許出願FR 07 03185を有効に参照されたい。
【0080】
有利な実施形態によれば、前述の式中、RまたはB基が、直接結合を示す。
【0081】
他の可能性によれば、高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の一つは、ヒドロキシアルキル(好ましくはエチル)グルタミン残基および複数のペンダント疎水基(GH)を有し、該疎水基は互いに同一でも異なっていてもよい。また、ヒドロキシアルキルグルタミン単位は、ヒドロキシアルキルアミン基を有する。これらヒドロキシアルキルアミン基は、好ましくは、アミド結合を介してコポリマーに結合する。これらヒドロキシアルキルグルタミン残基のグルタミン酸残基を官能基化するのに使用できるヒドロキシアルキルアミン基は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、2−ヒドロキシエチルアミノ基、3−ヒドロキシプロピルアミノ基、2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ基、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ基および6−ヒドロキシへキシルアミノ基から選択される。
【0082】
有利には、本発明に用いる疎水基GHの少なくとも一つが、疎水基(GH)をコポリグルタミン酸塩鎖(例えば、コポリグルタミン酸塩骨格の主鎖)に結合できる少なくとも一つのスペーサー接続部(または単位)(スペーサー)を備える疎水性グラフト中に含まれる。この接続部は、例えば、少なくとも一つの直接的な共有結合および/または少なくとも一つのアミド結合および/または少なくとも一つのエステル結合を備えることができる。例えば、接続部は、特に、コポリグルタミン酸塩の構成単量体単位以外の「アミノ酸」残基、アミノアルコールの誘導体、ポリアミン(例えばジアミン)の誘導体、ポリオール(例えばジオール)の誘導体およびヒドロキシ酸の誘導体からなる群に属するタイプとすることができる。GHのコポリグルタミン酸塩またはポリアルキルグルタミン酸塩鎖へのグラフトは、コポリグルタミン酸塩鎖またはヒドロキシアルキルグルタミン酸残基へ結合できるGH前駆体の使用を必要とする場合がある。GHの前駆体は、実際には限定されず、アルコールおよびアミンから成る群から選択され、これらの化合物は当業者によって容易に官能基化できる。更に、これらのヒドロキシアルキル(好ましくはエチル)グルタミン残基に関する詳細に関しては、FR−A−2 881 140を有効に参照されたい。
【0083】
有利な実施態様によれば、特に先に対象とした様々な可能性のうち少なくとも一つによると、本発明において用いる疎水基(GH)の全部または一部は、独立して、
・6〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)および/または少なくとも一つの不飽和結合を有することができる直鎖または分岐アルコキシ、
・6〜30個の炭素原子を有し、一つまたはそれ以上の環の炭素環を有し、任意に少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有するアルコキシ、
・7〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有することができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル、
よりなるラジカルの群から選択される。
【0084】
他の有利な実施形態によれば、特に先に対象とした様々な可能性のうち少なくとも一つによると、疎水基(GH)は、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロールおよびコレステロールから成る群から選択したアルコール前駆体に由来し、また、Rは、直接結合を示す。
【0085】
他の有利な実施形態によれば、特に先に対象とした様々な可能性のうち少なくとも一つによると、疎水基(GH)は、それぞれが互いに独立して、下記式:
【化8】

(式中:
は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec−ブチル(イソロイシン)またはベンジル(フェニルアラニン)を示し;
は、6〜30個の炭素原子を有する疎水性ラジカルを示し;
lは、0〜6の範囲である)の一価のラジカルを示す。
【0086】
本発明の注目すべき特徴によれば、疎水基(GH)の疎水性ラジカルRの全部または一部が、独立して、
・6〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)および/または少なくとも一つの不飽和結合を有することができる直鎖または分岐アルコキシ、
・6〜30個の炭素原子を有し、一つまたはそれ以上の環の炭素環を有し、任意に少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有するアルコキシ、
・7〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有することができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル、
よりなるラジカルの群から選択される。
【0087】
実際には限定されず、上記疎水性ラジカルRが、オクタノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、オレイルアルコール、トコフェロールおよびコレステロールから成る群から選択したアルコール前駆体に由来する。
【0088】
有利には、本発明に用いる高分子電解質ポリアミノ酸(PE1,PE2)の主鎖は、α−L−グルタミン酸塩ホモポリマー、α−L−グルタミン酸ホモポリマー、α−L−アスパラギン酸塩ホモポリマー、α−L−アスパラギン酸ホモポリマー、α−L−アスパラギン酸塩/α−L−グルタミン酸塩コポリマーおよびα−L−アスパラギン酸/α−L−グルタミン酸コポリマーから成る群から選択される。
【0089】
注目すべき方法では、高分子電解質ポリマーPE1またはPE2のポリアミノ酸主鎖のアスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基は、形成されたポリマーがランダム、ブロックタイプまたはマルチブロックタイプのいずれかであるように分布する。
【0090】
他の規定方法によれば、高分子電解質ポリマーPE1またはPE2は、2000〜100000g/molの間、好ましくは5000〜40000g/molの間のモル質量を有する。
【0091】
第1および第2高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の重合度は、50〜500の間で、好ましくは70〜300の間である。
【0092】
主鎖中の疎水基で置換された結合部のモル分率は、1〜40モル%の間で、好ましくは3〜30モル%の間である。
【0093】
本発明に用いるポリマーは、それらがpHmと等しいpHにて全体としてカチオン性またはアニオン性となるように、上述の様々な群から選択される。
【0094】
疎水側基を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)の必須の特性は、水中で自発的にコロイド溶液を形成することができることである。
【0095】
理論に従うことを望むものではないが、疎水基の超分子会合により疎水性ドメインが形成される結果、ナノ粒子が形成されると仮定することができる。各ナノ粒子は、その疎水性ドメインの周囲で程度の差はあるが縮合したPE1ポリマーの一つまたはそれ以上の鎖からなる。本発明に用いるポリマーはイオン性官能基を備え、該イオン性官能基は、pHおよび組成に従って中性(例えば−COOH、−NH)であるかイオン化(例えば−COO、−NH)していることを理解すべきである。このため、水相での溶解度は、イオン化した官能基のレベルによって直接決まり、従って、pHによって直接決まる。水溶液では、カルボキシル官能基の場合、対イオンが、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウム等の金属カチオン、またはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンもしくはポリエチレンイミン等のポリアミン等の有機カチオンとすることができる。カチオン性基の対アニオンは、好ましくは、塩化物、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩から成る群から選択される。
【0096】
当業者は、半中和pHを知っているため、pHを調整してポリマーのイオン化度を十分に高くし、コロイド溶液の安定性を確保する。
【0097】
本発明に使用できるポリアミノ酸型の高分子電解質は、例えば、当業者に既知の方法で得られる。ランダムポリアミノ酸は、「スペーサー」によって予め官能基化した疎水性グラフトを通常のカップリング反応によってポリマーに直接グラフトすることから得られることができる。ブロックまたはマルチブロックポリアミノ酸の高分子電解質は、対応するN−カルボキシアミノ酸無水物(NCA)の逐次重合によって得られることができる。
【0098】
ポリアミノ酸、ホモポリグルタミン酸塩、ホモポリスパラギン酸塩またはブロック、マルチブロックもしくはランダムのグルタミン酸塩/アスパラギン酸塩コポリマーは、例えば、通常の方法に従って調製される。
【0099】
α型のポリアミノ酸を得るために最も広く用いられている技術は、例えば、論文「Biopolymers,1976,15,1869」およびH.R.Kricheldorfによる研究「alpha−Amino acid N−carboxy Anhydrides and related Heterocycles」,Springer Verlag(1987)に記載されるように、N−カルボキシアミノ酸無水物(NCA)の重合に基づいている。NCA誘導体は、好ましくは、NCA−O−Me、NCA−O−EtまたはNCA−O−Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチルおよびBz=ベンジル)である。その後、ポリマーは、酸の形でポリマーを得るための適切な条件下で加水分解される。これらの方法は、出願人の会社による特許FR−A−2 801 226にて与えられた説明によって引き出される。本発明に従って使用できるいくらかのポリマーは、例えば、様々な重量を有するポリ(α−L−アスパラギン酸)、ポリ(α−L−グルタミン酸)、ポリ(α−D−グルタミン酸)およびポリ(γ−L−グルタミン酸)のタイプであり、商業的に入手できる。α,β型のポリアスパラギン酸は、アスパラギン酸の縮合(ポリコハク酸イミドを得る)と、その後の塩基性加水分解によって得られる(Tomida et al.,Polymer,1997,38,4733−36参照)。
【0100】
疎水性グラフトGHのポリマーの酸性官能基とのカップリングは、カップリング剤としてのカルボジイミドおよび任意に4−ジメチルアミノピリジン等の触媒の存在下、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中でのポリアミノ酸の反応によって容易に行われる。カルボジイミドは、例えば、ジシクロへキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト度は、成分および反応物質の化学量論または反応時間によって化学的に制御される。「スペーサー」によって官能基化した疎水性グラフトは、通常のペプチドカップリングまたは酸性触媒による直接縮合によって得られる。
【0101】
カチオン性基および任意には中性基のポリマーの酸性官能基とのカップリングは、カップリング剤としてのクロロホルマートの存在下、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中、第二の段階において同時に行われる。
【0102】
カチオン性基が化学的に差異がない2個のアミン官能基を有する場合(例えば、直鎖ジアミン)、2個の官能基のうち1個を保護する形でそれを導入することができる。その後、保護基を開裂する最終段階を加える。
【0103】
重合化学および基をカップリングする反応は、従来続けられており、当業者によく知られている(例えば、上述の出願人による特許および特許出願参照)。
【0104】
予め合成された疎水性グラフトを持つNCA誘導体は、ブロックまたはマルチブロックコポリマーの合成に用いられる。例えば、NCA−疎水基の誘導体は、NCA−O−ベンジルと共重合し、次いでベンジル基を加水分解により選択的に除去する。
【0105】
本発明に従う高分子電解質ポリマー(PE1およびPE2)の特に好適な会合の例は、以下の例において説明される。
【0106】
本発明に用いるポリマーの必須の特性は、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がコロイド溶液の形態であり、第2高分子電解質ポリマー(PE2)がpH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で溶液またはコロイド溶液の形態であることである。
【0107】
この条件を満たすため、カチオン性ポリマーの半中和pHは、十分に高くすることであり、例えば5.5より大きく、好ましくは6より大きく、さらには8より大きい。また、アニオン性ポリマーの半中和pHは、十分に低くすることであり、例えば6.5より小さく、好ましくは、6.0より小さく、さらには5.5より小さい。
【0108】
特に、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がアニオン性であるという代替の態様においては、後者は、半中和pHが3〜6.5の間、好ましくは4.5〜6.5の間を示すように選択される。この代案の態様によれば、第1高分子電解質ポリマー(PE1)は、pH6〜8のpHm値に対してコロイド溶液を形成する。
【0109】
かかるポリマーPE1は、特に例1a)にて説明される。
【0110】
この場合、第1の可能性によると、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、カチオン性であり、8未満のpHでコロイド溶液を形成する。好ましくは、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、8より大きい半中和pHを示すように選択される。かかるポリマーPE2は、特に例1d)にて説明される。
【0111】
したがって、第1の可能性によれば、pH6〜8のpHm値に対して、第1高分子電解質ポリマー(PE1)はコロイド溶液を形成し、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は溶液またはコロイド溶液を形成する。
【0112】
この場合、本発明の重要な特徴によると、第1高分子電解質ポリマー(PE1)の重量の第2高分子電解質ポリマー(PE2)の重量に対する比は、電荷比Zのために選択され、イオン化したカチオン性基のモル数のイオン化したアニオン性基のモル数に対する比は、pHmで測定すると、0.25〜3の間であり、好ましくは0.25〜1.5の間である。
【0113】
第2の可能性によれば、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、カチオン性であり、6未満のpHでコロイド溶液を形成し、6.5より大きいpHでは沈殿物を形成する。好ましくは、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、半中和pHが5.5〜7の間を示すように選択される。かかるポリマー(PE2)は、特に例1c)にて説明される。この場合、本発明の重要な特徴によると、pH3〜6のpHm値に対して、第1高分子電解質ポリマー(PE1)はコロイド溶液を形成し、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は溶液またはコロイド溶液を形成する。第1高分子電解質ポリマー(PE1)の重量の第2高分子電解質ポリマー(PE2)の重量に対する比は、電荷比Zのために選択され、pHmで測定すると、3.5〜30の間であり、好ましくは5〜15の間であり、さらに好ましくは8〜12の間である。
【0114】
第1高分子電解質ポリマー(PE1)がカチオン性であるという他の代替の態様においては、後者は、5より大きい半中和pHを示すように選択される。この場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、アニオン性であり、半中和pHが3〜6.5の間、好ましくは4.5〜6.5の間を示すように選択される。
【0115】
本発明に従う粒子は、生理学的pHで、Tテストにて測定した大きさが1〜100ミクロンの間を示す。
【0116】
有利には、本発明に従う粒子は、化学的に架橋されない。
【0117】
本発明の具体的な実施において、粒子は、生理学的pHで、0.15〜1.1の間、好ましくは0.3〜1.0の間、さらに好ましくは0.5〜1.0の間の高いポリマーかさ密度を示す。高いポリマーかさ密度は、密な網状構造のポリマー鎖の粒子内での存在を示す。理論に従うことを望むものではないが、この密な網状構造は、本発明に従う粒子中に存在する活性成分(AP)の外部媒体への拡散を遅らせて、そのため、その放出を遅らせることに寄与する。本発明に従う密集した粒子の驚くべき態様は、該粒子を構成するポリマー鎖の網状構造によって、活性成分(AP)の放出を遅らせることができるが、該粒子の中心でこの同じ活性成分(AP)を補足しないことである。したがって、本発明に従う輸送体は、活性成分(AP)の持続的放出と良好な生物学的利用能の両方を得ることができる。
【0118】
一部の場合、特に本発明に従う微粒子と強い親和性を有するペプチドまたはタンパク質の場合においては、放出を加速しおよび/またはその生物学的利用能を改善するため、AP放出速度を調節することが有利な場合がある。多くの試験の後、所定の極性を有するPE1またはPE2ポリマーが異極性のイオン性基および/またはヒドロキシエチルアミノ−置換基等の非イオン性基をも有する場合、タンパク質またはペプチドの放出を促進できることを出願人によって実証された。
【0119】
したがって、本発明の具体的な実施では、2つのポリマーPE1またはPE2のうち一つは、同時に、
15〜50モル%のグルタミン酸塩モノマー;
20〜55モル%のヒドロキシエチルアミノ−置換基等の非イオン性モノマー;
10〜40モル%の半中和pHが8より大きいカチオン性基を有するモノマー;
3〜15モル%の疎水基によって置換された非イオン性モノマー;
を備える。
【0120】
本発明の他の具体的な実施では、PE1またはPE2ポリマーは、カチオン性であり、また、同時に、
0〜5モル%のグルタミン酸塩モノマー;
50〜85モル%のヒドロキシエチルアミノ−置換基等の非イオン性モノマー;
10〜40モル%の半中和pHが8より大きいカチオン性基を有するモノマー;
3〜15モル%の疎水基によって置換された非イオン性モノマー;
を備える。
【0121】
本発明の具体的な実施では、製剤中に存在するポリマー(PE1+PE2)の全濃度は、特に活性成分(AP)が治療用タンパク質である場合に4〜15mg/mlの間である。この濃度の範囲内では、小口径の針、例えばゲージ27、実際にはゲージ29、更にはゲージ31の針を介して、製剤を容易に注入することができる。例3および4は、かかる製剤を詳細に説明する。
【0122】
活性成分(AP)に関して、好ましくは、タンパク質、糖タンパク質、一つまたはそれ以上のポリアルキレングルコール鎖と結合したタンパク質[好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG):「PEG化タンパク質」]、ペプチド、多糖類、リポ糖類、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、およびそれらの混合物から成る群から選択され、より好ましくは、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダーベポエチン等のエリスロポエチン、ヘモグロビンラフィマー、それらの類似体もしくはそれらの誘導体;オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子(PDGF)、造血を刺激する因子およびそれらの混合物の他、アルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、第VII(a)因子または第VII因子等の血液因子;ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリンの他、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリンまたはナファレリン等の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)および類似体;LHRHアンタゴニスト、LHRH競合体、ヒト、ブタまたはウシの成長ホルモン(GHs)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキンまたはそれらの混合体(IL−2,IL−11,IL−12)の他、インターフェロンアルファ、アルファ−2b、ベータ、ベータ−1aまたはガンマ等のインターフェロン;ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンジオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)の他、ベクラペルミン、トラフェルミン、アンセスチムまたはケラチノサイト成長因子等の成長因子、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、VEG−F、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファ、シクロスポリンおよび合成類似体、並びに酵素、サイトカイン、抗体、抗原およびワクチンの製剤可能な修飾体および断片、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブおよびセツキシマブ等の抗体の部分群から選択される。
【0123】
他の活性成分は、多糖類(例えばヘパリン)およびオリゴ−またはポリヌクレオチド、DNA,RNA,iRNA,抗体および生細胞である。活性成分の他の分類は、中枢神経系で作用する医薬品物質、例えば、リスペリドン、ズクロペンチキソール、フルフェナジン、ペルフェナジン、フルペンチキソール、ハロペリドール、フルスピリレン、クエチアピン、クロザピン、アミスルプリド、スルピリド、ジプラシドン等を含む。
【0124】
実施態様によれば、活性成分は、アントラサイクリン、タキソイドもしくはカンプトテシンの群に属するタイプまたはロイプロリドもしくはシクロスポリン等のペプチドの群に属するタイプの疎水性、親水性または両親媒性の有機小分子、およびそれらの混合物である。
【0125】
本説明の意義の範囲内で、小分子は、特に非タンパク性小分子であり、例えばアミノ酸がない。
【0126】
他の実施態様によれば、活性成分は、有利には、以下に示す活性物質の群の内の少なくとも1種から選択される。アルコール依存症の治療薬、アルツハイマー病の治療薬、麻酔薬、末端肥大症の治療薬、鎮痛剤、抗ぜんそく薬、アレルギーの治療薬、抗癌剤、抗炎症薬、抗凝結剤および抗トロビン薬、抗けいれん剤、抗てんかん薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン剤、抗感染薬、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗パーキンソン薬、抗コリン作用薬、咳止め、炭酸脱水酵素阻害薬、心血管作動薬、脂質低下薬、抗不整脈剤、血管拡張剤、抗狭心症薬、降圧剤、血管保護剤、コリンエステラーゼ阻害剤、中枢神経系疾患の治療薬、中枢神経系の刺激剤、避妊薬、受精促進剤、子宮陣痛の誘導剤および阻害剤、嚢胞性線維症の治療薬、ドーパミン受容体作用薬、子宮内膜症の治療薬、勃起障害の治療薬、不妊治療の薬、消化器疾患の治療薬、免疫刺激剤および免疫抑制剤、記憶障害の治療薬、抗片頭痛薬、筋弛緩剤、ヌクレオシド類似体、骨粗鬆症の治療薬、副交感神経興奮薬、プロスタグランジン、精神刺激薬、鎮静剤、睡眠薬および精神安定剤、神経安定剤、抗不安薬、精神刺激薬、抗うつ剤、皮膚治療薬、ステロイドおよびホルモン、アンフェタミン、食欲抑制剤、ノンアナルジージクペインキラー(nonanalgesic painkiller)、バルビツール酸系催眠薬、ベンゾジアゼピン、下剤、向精神薬、およびこれらの製品の組み合わせである。
【0127】
他の態様によれば、本発明の対象は、少なくとも一つの活性成分を持続放出するための粒子を調製する方法であり、これらの粒子は、特に上述したものであり、該方法は、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性の第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成し、但し、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がポリアミノ酸である場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)はポリリシンもしくはポリエチレンイミンのいずれでもない工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程と、
を備える。
【0128】
本発明の他の対象は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための粒子を調製する方法であり、これらの粒子は、特に上述したものの一部と一致しており、該方法は、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性で且つ疎水側基(GH)を有する第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)が、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程と、
を備える。
【0129】
本発明に従う方法の必須の特徴は、活性成分(AP)を積んだ第1高分子電解質ポリマー(PE1)の粒子のコロイド溶液をpHmにて異極性の第2高分子電解質ポリマー(PE2)の溶液またはコロイド溶液と単純に混合することによって自発的に粒子を形成することである。
【0130】
タンパク質、ペプチドまたは小分子等の活性成分は、ポリアミノ酸型の第1ポリマー(PE1)と共に自発的に結合することができる。活性成分(AP)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のナノ粒子の帯電は、活性成分(AP)の溶液を第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液と単純に混合することによって行われる。この会合は、純粋に物理的であり、活性成分(AP)とポリマー(PE1)間の共有結合の形成を必要としない。理論に従うものではないが、この非特異的な会合は、ポリマー(PE1)と活性成分(AP)間の疎水的および/または静電気的な相互作用によって起こると考えられる。APをPE1ナノ粒子に、ペプチドの性質を持つ特定の受容体または抗原/抗体もしくは酵素/基質型の特定の受容体を介して結合する必要がなく、多くの場合、望ましくないことさえあることに注意すべきである。
【0131】
本発明に従う方法の好ましい実施形態においては、得られた粒子の化学的な架橋の段階が与えられない。したがって、本発明に従う粒子は、化学的に架橋されないが、それでも長期間にわたって活性成分(AP)を放出する。この化学的な架橋がないことは、本発明に従う粒子の決定的な利点である。これは、化学的な架橋がないことによって、活性成分(AP)を有する粒子を架橋する間、活性成分(AP)の化学分解を避けることができるからである。これは、かかる化学的な架橋が一般に重合可能なものの活性化によって行われ、UV放射物またはグルタルアルデヒド等の変性剤を元来含むからである。
【0132】
有利には、本発明に従う方法は、乾燥粉末の形態で粒子を得るために、(例えば凍結乾燥または微粒化によって)得られた粒子の懸濁液を脱水する工程を備える。
【0133】
他の態様によれば、本発明の対象は、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出するための製剤であり、該製剤は、上述の粒子の水性懸濁液または上述の方法により得た粒子の水性懸濁液を備える。
【0134】
また、本発明は、少なくとも一つの活性成分(AP)を長時間放出するための固体の製剤に関するものであり、該製剤は、
・少なくとも1つの活性成分(AP)を有する粒子に基づいた乾燥粉末の形態を備え、該粒子が、上述の粒子もしくは上述の方法によって得られた粒子であり、
・または、上述の水性懸濁液を備える製剤から得られた乾燥粉末の形態を備える。
【0135】
有利には、かかる固体製剤は、吸入投与および肺内投与に使用される。
【0136】
他の態様によれば、本発明の対象は、薬剤を調製する方法であり、特に、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは大脳内投与、または腫瘍への投与用、或いは経口、経鼻、肺、膣もしくは眼球経路による投与用の薬剤を調製する方法であり、前記方法は、上述の製剤の少なくとも一つを用いることから本質的になる。
【実施例】
【0137】
1)合成
a)疎水基を有するアニオン性高分子電解ポリマーPE1−Aの合成(合成起源のα−トコフェロールでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
ポリ(α−L−グルタミン酸)15g(ポリオキシエチレン基準に対して約16900Daに相当する重量であり、特許出願FR−A−2 801 226に記載されるように、NCA−GluOMeの重合と、その後の加水分解とによって得られる)を80℃で加熱しながらジメチルホルムアミド(DMF)288ml中に溶解させ、ポリマーを溶解させた。その溶液を15℃に冷却し、あらかじめ8mlのDMF中に溶解させた2.5gのD,L-α−トコフェロール(>98%、FLuka(登録商標)から得られる)と、あらかじめ1mlのDMF中に溶解させた280mgの4−ジメチルアミノピリジンと、あらかじめ6mlのDMF中に溶解させた1.6gのジイソプロピルカルボジイミドとを続けて加える。3時間攪拌した後、反応媒体を、15%の塩化ナトリウムと塩酸を含む水1200ml(pH2)に注入する。その後、沈澱したポリマーを濾過によって回収し、0.1Nの塩酸、水、およびジイソプロピルエーテルで洗浄する。その後、ポリマーを真空下40℃のオーブン中で乾燥させる。およそ90%の収率を得る。モル質量を立体排除クロマトグラフィーによって測定したところ、ポリオキシエチレン基準に対して15500である。グラフトしたトコフェロールのレベルをプロトンNMR分光法によって評価したところ、5.1モル%である。
【0138】
b)アニオン性高分子電解ポリマーPE1−Bの合成(ポリグルタミン酸ナトリウム)
特許出願FR−A−2 801 226に記載のポリ(α−L−ポリグルタミン酸)の合成を適用する。
【0139】
モル質量を立体排除クロマトグラフィーによって測定したところ、ポリオキシエチレン基準に対して16900Daである。
【0140】
c)カチオン性高分子電解ポリマーPE2−Aの合成(合成起源のα−トコフェロールとヒスチジンアミドとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化9】

指数および基:m=11、p=209、q=0、T=D,L−α−トコフェリル(T)
【0141】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)3gをNMP38ml中に80℃で加熱することにより溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、2.74gのクロロギ酸イソブチルと、次いで2.2mlのN−メチルモルホリンを加える。0℃の温度を維持しながら反応媒体を10分間攪拌する。同時に、8.65gのヒスチジンアミド・二塩酸塩を108mlのNMP中に懸濁させる。その次に、10.6mlのトリエチルアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの溶液をヒスチジンアミド懸濁液に加える。反応媒体を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その後、0.62mlの35%HClと、次いで83mlの水を加える。その後、得られた溶液をpH3〜4の500mlの水に注ぎ込む。その後、その溶液を8分量の食塩水(0.9%のNaCl)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過する。その後、ポリマー溶液を300mlの体積に濃縮する(ポリマー濃度は18mg/gである)。グラフトしたヒスチジンアミドの割合は、DOにてHNMRにより測定したところ、95%である。
【0142】
d)カチオン性高分子電解ポリマーPE2−Bの合成(合成起源のα−トコフェロールとアルギニンとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化10】

指数および基:T=D,L−α−トコフェリル、p=s=11、q=198、r=0
【0143】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、8.7mlのクロロギ酸イソブチルと、次いで7.35mlのN−メチルモルホリンを加える。この反応混合物を0℃で15分間攪拌する。同時に、24.67gのアルギニンアミド・二塩酸塩を308mlのNMP中に懸濁させ、14.7mlのトリエチルアミンを加える。得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの乳濁液をこの懸濁液に加え、反応混合物を0℃で2時間攪拌した後、20℃で一晩攪拌する。その次に、2.1mlの35%HCl溶液と、次いで100mlの水とを加えた後、反応混合物を1.6lの水に滴下する。その後、得られた溶液を8分量の食塩水(0.9%)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過し、約250mlの体積に濃縮する。グラフトしたアルギニンアミドの割合は、DOにてプロトンNMRにより測定したところ、90%である。
【0144】
e)カチオン性高分子電解ポリマーPE2−Cの合成(合成起源のα−トコフェロールと、アルギニンと、エタノールアミンとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化11】

指数および基:T=D,L−α−トコフェリル、p=11、q=88、r=99、s=22
【0145】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、9.1mlのクロロギ酸イソブチルと、次いで7.71mlのN−メチルモルホリンを加える。この反応混合物を0℃で15分間攪拌する。同時に、8.2gのアルギニンアミド・二塩酸塩を103mlのNMP中に懸濁させ、9.31mlのトリエチルアミンを加える。更に、1.6mlのエタノールアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの乳濁液をこの懸濁液に加え、反応混合物を0℃で2時間攪拌する。1.2mlのエタノールアミンを加えた後、反応混合物を20℃で一晩攪拌する。2.1mlの35%HCl溶液と、次いで200mlの水とを加えた後、反応混合物を700mlの水に滴下し、pHを7.4に調整する。得られた溶液を8分量の食塩水(0.9%)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過し、約250mlの体積に濃縮する。グラフトしたアルギニンアミドとグラフトしたエタノールアミンの割合は、DOにてプロトンNMRにより測定したところ、それぞれ40%と45%である。
【0146】
f)カチオン性高分子電解ポリマーPE2−Dの合成(合成起源のα−トコフェロールと、アルギニンと、エタノールアミンとでグラフトしたポリグルタミン酸塩)
【化12】

指数および基:T=D,L−α−トコフェロール、p=11、q=48、r=150、s=11
【0147】
5%ラセミ体のα−トコフェロールでランダムにグラフトしたDPが220のポリ(グルタミン酸)10gをNMP125ml中に80℃で溶解させる。この溶液を0℃に冷却し、8.7mlのクロロギ酸イソブチルと、次いで7.3mlのN−メチルモルホリンを加える。この反応混合物を0℃で15分間攪拌する。同時に、4.61gのアルギニンアミド・二塩酸塩を58mlのNMP中に懸濁させ、2.9mlのトリエチルアミンを加える。更に、2.8mlのエタノールアミンを加え、得られた懸濁液を20℃で数分間攪拌した後、0℃に冷却する。次いで、活性化したポリマーの乳濁液をこの懸濁液に加え、反応混合物を0℃で4時間攪拌する。1.2mlのエタノールアミンを加えた後、反応混合物を20℃で一晩攪拌する。2.1mlの35%HCl溶液を加えた後、反応混合物を730mlの水に滴下し、pHを7.4に調整する。得られた溶液を8分量の食塩水(0.9%)と4分量の水に対してダイアフィルターで濾過し、約300mlの体積に濃縮する。グラフトしたアルギニンアミドとグラフトしたエタノールアミンの割合は、DOにてプロトンNMRにより測定したところ、それぞれ22%と68%である。
【0148】
2)例1(比較):疎水基を示さない高分子電解質の粒子の調製
(1)ポリマーPE1−Bのコロイド溶液の調製
上述の合成b)に従って得られたポリマーPE1−Bを用いる。このポリマーは5.985に等しい半中和pHを有する。
ポリマーPE1−Bのコロイド溶液を水中に溶解させることで得、NaOH溶液を加えることでpHを7.63に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を100mOsmに調整する。ポリマーPE1−Bの濃度を8.38mg/gに調整する。
【0149】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Bとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−α(PC GEN)を、先のポリマーPE1−Bのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表1】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。
【0150】
(3)ポリL−アルギニン(Aldrich P7637)のコロイド溶液の調製
このポリマーは、9より大きい半中和pHを有する。
まず、HCl溶液でpHを0.92に調整してポリ−L−アルギニンを水中に溶解し、次にNaOH溶液でpHを6.91にまで戻し、45℃で15分間溶液を加熱することによって、ポリL−アルギニンのコロイド溶液を得る。ポリL−アルギニンのポリマー濃度を5.13mg/gに調整する。
【0151】
(4)粒子を得るための混合
1.37gのポリL−アルギニン溶液を1.06gのIFN−α/PE1−B溶液へ45℃で攪拌しながら滴下して加える。攪拌を45℃で15分間行う。次いで、攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表Iに示す。
電荷比Zは、6.95に等しいpHmで測定した、イオン化したカチオン性基のモル数のイオン化したアニオン性基のモル数に対する比である。
粒径をTテストに従って測定する。
【表2】

【0152】
(5)タンパク質のカプセル化の定量化
懸濁液を8000rpmで15分間遠心分離し、浮遊物中のIFN−αをヨーロッパ薬局方に記載の方法によって分析する(UV吸光度による比色分析)。
【表3】

実質的には、導入したタンパク質の3分の1が形成した微粒子中でカプセル化していない。この割合は、制御された放出をもたらすことができない。
【0153】
3)例2:疎水基を示す単一の高分子電解質(PE1)の粒子の調製
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。このポリマーは5.445に等しい半中和pHを有する。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.53に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を101mOsmに調整する。ポリマーPE1−Bの濃度を8.41mg/gに調整する。
【0154】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表4】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。
【0155】
(3)ポリL−アルギニン(Aldrich P7637)のコロイド溶液の調製
例1において説明した方法と同様にして、溶液を調製する。
【0156】
(4)粒子を得るための混合
1.24gのポリL−アルギニン溶液を1.07gのIFN−α/PE1−A溶液へ45℃で攪拌しながら滴下して加える。攪拌を45℃で15分間行う。次いで、攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表IIに示す。
電荷比Zを6.88に等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
【表5】

【0157】
(5)タンパク質のカプセル化の定量化
懸濁液を8000rpmで15分間遠心分離し、浮遊物中のIFN−αをヨーロッパ薬局方に記載の方法によって分析する(UV吸光度による比色分析)。
【表6】

導入したタンパク質の全部が形成した微粒子中でカプセル化する。
【0158】
4)例3:IFN−αを有する、PE1−AとPE2−Aとを基にした粒子の調製
4.1)例3.1:10mg/gにほぼ等しいポリマーの最終濃度、約1に等しいZ
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。このポリマーは5.445に等しい半中和pHを有する。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.45に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPE1の濃度を23.88mg/gに調整する。
【0159】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表7】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その次に、会合をpH5.07に調整する。
【0160】
(3)ポリマーPE2−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成c)に従って得られたポリマーPE2−Aを用いる。このポリマーは6.05に等しい半中和pHを有する。
ポリマーPE2−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE2−Aのコロイド溶液を得、pHを5.17に調整する。溶液のオスモル濃度を289mOsmに調整し、ポリマーPE2−Aの濃度を5.70mg/gに調整する。
【0161】
(4)粒子を得るための混合
4.98gのPE2−A溶液を4.61gのIFN−α/PE1−A溶液へ攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表IIIに示す。
電荷比Zを5.17に等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
【表8】

【0162】
4.2)例3.2:5mg/gに等しいポリマーの最終濃度、約10に等しいZ
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1を水中に溶解することで、ポリマーPE1のコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPE1の濃度を20.21mg/gに調整する。
【0163】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表9】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その後、会合をpH4.88に調整する。
【0164】
(3)ポリマーPE2−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成c)に従って得られたポリマーPE2−Aを用いる。
ポリマーPE2−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE2−Aのコロイド溶液を得、pHを5.07に調整する。溶液のオスモル濃度を287mOsmに調整し、ポリマーPE2−Aの濃度を8.11mg/gに調整する。
【0165】
(4)粒子を得るための混合
5.19gのPE2−A溶液を5.02gのIFN−α/PE1−A溶液へ攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表IVに示す。
電荷比Zを4.81に等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
【表10】

【0166】
4.3)例3.3:10mg/gに等しいポリマーの最終濃度、約10に等しいZ
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調整する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPE1−Aの濃度を20.21mg/gに調整する。
【0167】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表11】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その後、会合をpH5.07に調整する。
【0168】
(3)ポリマーPE2−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成c)に従って得られたポリマーPE2−Aを用いる。
ポリマーPE2−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE2−Aのコロイド溶液を得、pHを5.08に調整する。溶液のオスモル濃度を288mOsmに調整し、ポリマーPE2−Aの濃度を16.37mg/gに調整する。
【0169】
(4)粒子を得るための混合
5.25gのPE2−A溶液を5.19gのIFN−α/PE1−A溶液へ攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表Vに示す。
電荷比Zを4.95に等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
【表12】

【0170】
5)例4:IFN−αを有する、PE1−AとPE2−Bとを基にした粒子の調製、5mg/gに等しいポリマーの最終濃度、Z=1
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解することで、ポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調製する。必要量のNaCl水溶液を導入することによって、溶液のオスモル濃度を108mOsmに調整する。ポリマーPE1−Aの濃度を20.21mg/gに調整する。
【0171】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表13】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その後、会合をpH6.89に調整する。
【0172】
(3)ポリマーPE2−Bのコロイド溶液の調製
上述の合成d)に従って得られたポリマーPE2−Bを用いる。このポリマーは9より大きい半中和pHを有する。
ポリマーPE2−Bを水中に溶解することで、ポリマーPE2−Bのコロイド溶液を得、pHを6.98に調整する。溶液のオスモル濃度を288mOsmに調整し、ポリマーPE2−Bの濃度を6.33mg/gに調整する。
【0173】
(4)粒子を得るための混合
4.06gのPE2−B溶液を4.59gのIFN−α/PE1−A溶液へ攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
以下、得られた粒子の特性を表VIに示す。
電荷比Zを6.85に等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
【表14】

【0174】
6)例5(比較):IFN−αを有し、PE1−Aのみを基にした粒子の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解させることでポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.52に調整する。溶液のオスモル濃度を必要量のNaCl溶液を導入することで108mOsmに調整する。ポリマーPE1−Aの濃度を29.05mg/gに調整する。
濃縮された2.4mg/gのタンパク質IFN−αを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。25℃で一晩攪拌して会合を形成する。
以下、得られた粒子の特性を表VIIに示す。
粒径をT’テストに従って測定する。
【表15】

【0175】
7)例2、3、4および5の生体外での結果
このために、本発明に従う粒子からの活性成分の放出をLテストによって測定する。
Lテストにおける放出を時間と共に放出されるタンパク質の割合の形式で示す。
比較の例2の製剤は、ポリマーのうち一つのみが疎水基を有しており、23時間後に放出されたタンパク質が1.6%という非常に弱い放出プロファイルを示す。
比較の例5の製剤は、PE1の粒子を23mg/gで含んでおり、例3.1の粒子(PE1/PE2−A、Z=1〜10mg/g)と類似のプロファイルを示す(それぞれ10時間で93%、48時間で72%である)。
例3.2の粒子(PE1/PE2−A、Z=10mg/gおよび5mg/g)と例3.3の粒子(PE1/PE2−A、Z=10mg/gおよび10mg/g)の場合、実験の終わりでゼロにならない一定の放出流量の形成が観察され、それぞれ48時間で注入したタンパク質の65%および19%を放出する。
例4の粒子(PE1/PE2−B、Z=1mg/gおよび5mg/g)の場合、実験の終わりでゼロにならない一定の放出流量の形成が観察され、48時間で注入したタンパク質の7%を放出する。
【0176】
8)例3、4および5の生体内での結果
44匹のラットを8または12匹の5グループに分け、並行して即時放出IR製剤もしくは比較の例5に対応する持続放出製剤または本発明の例3および4の製剤の一つを300μg/kgの投与量で受けた。
以下、薬物動態の結果を表VIIIに示す。
【表16】

【0177】
maxは、すべての動物に対するタンパク質の平均最大血漿中濃度を示す。
maxは、血漿中濃度が最大となる時間の中央値を示す。
AUCは、時間の関数として血漿中濃度の曲線下平均面積を示す。
T50%AUCは、曲線下面積が合計値の50%に到する平均時間を示す。
RBAは、検討中の製剤の曲線下面積のIFN IR製剤の曲線下面積に対する比を示す。
【0178】
すべての製剤は、IRに対してCmaxの低下を伴う持続放出プロファイルを示す。
例3.1の製剤(PE1/PE2−A、Z=1〜10mg/g)を除いて、その放出プロファイルは、比較の例5の製剤に近く、終わりの傾きがより小さく、長期間にわたって残留する吸収を示す。
例3.3の製剤(PE1/PE2−A、Z=10mg/gおよび10mg/g)に関しては、一週間を超えるまでの放出に注目するべきである。
【0179】
9)例6:IFN−αを有する、PE1−AおよびPE2‐Cを基にした粒子の調製、5mg/gのポリマー最終濃度、Z=1
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解することでポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.15に調整する。溶液のオスモル濃度を必要量のNaCl水溶液を導入することで145mOsmに調整する。ポリマーPE1−Aの濃度を3.10mg/gに調整する。
【0180】
(2)治療用タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.7mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表17】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その後、会合をpH7.0に調整する。
【0181】
(3)ポリマーPE2−Cのコロイド溶液の調製
上述の合成e)に従って得られたポリマーPE2−Cを用いる。このポリマーは9より大きい半中和pHを有する。
ポリマーPE2−Cを水中で溶解させることでポリマーPE2−Cのコロイド溶液を得、pHを7.04に調整し、288mOsmに調整し、PBS 140mOsm中で7.96mg/gに調整する。
【0182】
(4)粒子を得るための混合
15.147gのPE2−C溶液を16.374gのIFN−α/PE1−A溶液へ攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
電荷比Zを7と等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
以下、得られた粒子の特性を表に示す。
【表18】

【0183】
10)例7:IFN−αを有する、PE1−AおよびPE2‐Dを基にした粒子の調製、5mg/gのポリマー最終濃度、Z=1
(1)ポリマーPE1−Aのコロイド溶液の調製
上述の合成a)に従って得られたポリマーPE1−Aを用いる。
ポリマーPE1−Aを水中に溶解させることでポリマーPE1−Aのコロイド溶液を得、NaOH溶液を加えることでpHを7.02に調整する。溶液のオスモル濃度を必要量のNaCl水溶液を導入することで101mOsmに調整する。ポリマーPE1−Aの濃度を2.0mg/gに調整する。
【0184】
(2)タンパク質のポリマーPE1−Aとの会合
濃縮された2.7mg/gのタンパク質IFN−αおよび89mOsmのNaClを先のポリマーPE1−Aのコロイド溶液に加える。以下の特徴を有する会合が得られる。
【表19】

25℃で一晩攪拌して会合を形成する。その後、会合をpH7.0に調整する。
【0185】
(3)ポリマーPE2−Dのコロイド溶液の調製
上述の合成f)に従って得られたポリマーPE2−Dを用いる。このポリマーは9より大きい半中和pHを有する。
ポリマーPE2−Dを水中に溶解させることでポリマーPE2−Dのコロイド溶液を得、0.1NのHClまたは0.1NのNaOHによってpHを7.0に調整する。PE2−Dのポリマー濃度を8.82mg/gに調整する。
【0186】
(4)粒子を得るための混合
1.2gのPE2−C溶液を1.2gのIFN−α/PE1−A溶液に攪拌しながら滴下して加える。攪拌を4℃で一晩行う。
電荷比Zを7と等しいpHmで測定する。
粒径をTテストに従って測定する。
以下、得られた粒子の特性を表に示す。
【表20】

【0187】
11)例8:(比較)IFN−αを有する、PE1−A/PE2−Dと、PE1−A/PE2−Cとを基にした粒子の放出速度
上述の例6および7に記載の調製によって得た粒子を上述の連続フローセル放出のLテストにおいて比較する。以下の表は、得られた結果を示す。
【表21】

【0188】
結論として、この例は、程度の差はあれ特に中性基および/またはアニオン性基を有するカチオン性ポリマーを選択すれば、AP放出速度を調節できることを示す。したがって、12時間後、放出は、PE2−Cから得られた微粒子に関しては9.5%で、PE2−Dから得られた微粒子に関しては31%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子であって、該粒子は、
a)帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成する第1高分子電解質ポリマー(PE1)と、
b)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性である第2高分子電解質ポリマー(PE2)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する第2高分子電解質ポリマー(PE2)と、
c)第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有で会合する少なくとも一つの活性成分(AP)と、
を有し、但し、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がポリアミノ酸である場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)はポリリシンもしくはポリエチレンイミンのいずれでもなく、
pHmと等しいpHで、活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合することで得られる、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子。
【請求項2】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子であって、該粒子は、
a)帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成する第1高分子電解質ポリマー(PE1)と、
b)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性で且つ疎水側基(GH)を有する第2高分子電解質ポリマー(PE2)であって、好ましくは直鎖α−ポリアミノ酸であり、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する第2高分子電解質ポリマー(PE2)と、
c)第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有で会合する少なくとも一つの活性成分(AP)とを有し、
pHmと等しいpHで、活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合することで得られる、少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子。
【請求項3】
第1および第2高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)が、ポリアミノ酸またはそれらの製剤可能な塩の一つであり、その主鎖は、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびそれら組み合わせから成る群から選択される残基から形成され、該残基の少なくとも一部が、少なくとも第1高分子電解質ポリマー(PE1)に対して少なくとも一つの疎水基(GH)をグラフトすることによって修飾されている、請求項1または2に記載の粒子。
【請求項4】
高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の一つ、またはそれらの製剤可能な塩の一つが、以下の式(I):
【化1】

(式(I)中、
・Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキル、ベンジル、−R−[GH]を示し、またはRは、NHと末端アミノ酸残基を形成し、
・Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アシル基、ピログルタメート、または−R−[GH]を示し、
・Rは、直接結合または1〜4のアミノ酸残基を基にした「スペーサ」を示し、
・AおよびAは、独立して−CH−または−CH−CH−を示し、
・n/(n+m)は、モルグラフト度として定義され、その値は、pH7で25℃の水中に溶解したポリマーがポリマー粒子のコロイド懸濁液を形成するのに十分に低く、
・n+mは10〜1000の範囲であり、好ましくは50から300の間であり、
・GHは、6〜30の炭素原子を有する疎水基を示し、または、
(i)直鎖または分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、さらに好ましくはC〜C18アルキル、アシルまたはアルケニル、
(ii)一つまたはそれ以上のヘテロ原子を有し、好ましくは酸素および/または硫黄を有し、より好ましくは下記式:
【化2】

(式中、
60ラジカルは、直鎖または分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、より好ましくはC〜C18アルキル、アシルまたはアルケニルラジカルであり、
61およびR62ラジカルは、互いに同一または異なり、水素または、直鎖もしくは分岐の、好ましくは直鎖C〜C20、さらに好ましくはC〜C18アルキル、アシル、またはアルケニルラジカルと一致し、
q=1〜100である)の炭化水素基、
(iii)アリール、アラルキル、またはアルキルアリール、好ましくはアリール、
(iv)疎水性誘導体、好ましくはホスファチジルエタノールアミノ−ラジカル、または、オクチルオキシ−ラジカル、ドデシルオキシ−ラジカル、テトラデシルオキシ−ラジカル、ヘキサデシルオキシ−ラジカル、オクタデシルオキシ−ラジカル、9−オクタデセニルオキシ−ラジカル、トコフェリルオキシ−ラジカルもしくはコレステリルオキシ−ラジカルから選択されるラジカル、
からなるラジカルの群から選択される)と一致する、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
高分子電解質ポリマー(PE2)またはその製剤可能な塩の一つは、以下の式(II)、(III)及び(IV):
【化3】

(式中、
・GHは、6〜30個の炭素原子を有する疎水基を示し、
・R30は、直鎖C〜Cアルキル基であり、
・R50は、C〜Cジアミノ、ジアルコキシ、またはアルキル基であり、
・Rは、直接結合または1〜4のアミノ酸残基を基にした「スペーサ」を示し、
・AおよびAは、独立して−CH−または−CH−CH−を示し、
・n'+m'またはn''は、重合度として定義され、10〜1000の範囲であり、好ましくは50〜300の間である)の一つと一致する、請求項3に記載の粒子。
【請求項6】
高分子電解質ポリマー(PE1,PE2)の一つまたはそれらの製剤可能な塩の一つは、以下の式(V):
【化4】

(式(V)中、
・Eは、独立して、
−NHR基(ここで、Rは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルを示す)、
次式:
【化5】

(式中:
は、OH、ORまたはNHR10であり、
、RおよびR10は、独立して、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルを示す)と一致する末端アミノ酸残基または末端アミノ酸誘導体、
を示し、
・Bは、直接結合、または二価、三価もしくは四価の結合基であり、好ましくは、−O−、−NH−、−N(C〜Cアルキル)−、アミノ酸(好ましくは天然アミノ酸)残基、ジオール残基、トリオール残基、ジアミン残基、トリアミン残基、アミノアルコール残基または1〜6の炭素原子を有するヒドロキシ酸残基から選択され、
・Dは、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アシル基またはピログルタメートを示し、
・GHは、6〜30個の炭素原子を有する疎水基を示し、
・R70は、以下の基:
−NH−(CH−NH(ここで、wは2〜6の間であり、好ましくはwが4である)、
−NH−(CH−NH−C(=NH)−NH
−O−(CH−NH
−O−(CH−N(CH
【化6】

(式中、−R11は、−H、−COH、アルキルエステル(好ましくは−COOMeおよび−COOEt)、−CHOH、−C(=O)−NH、−C(=O)−NH−CHまたは−C(=O)−N(CHを示す)、
次式:
【化7】

(式中、Xは、酸素または−NH−で、−R12は、H、直鎖C〜C10もしくは分岐C〜C10アルキルまたはベンジルで、−R13は、−(CH−NH、−(CH−NH−C(=NH)−NH、−(CHNHである)のアミノ酸残基またはアミノ酸誘導体、
から選択されるラジカルを示し、
前記R70基の対アニオンが、塩化物、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩、好ましくは塩化物であり、
・R90は、ヒドロキシエチルアミノ−、アルキレングリコール残基またはポリオキシアルキレン残基であり、
・p,q,rおよびsは、正の整数であり、
・(p)/(p+q+r+s)は、疎水基GHのモルグラフト度として定義され、2〜99モル%の範囲であり、好ましくは5〜50モル%の間であり、但し、各コポリマー鎖は、平均して、少なくとも3個の疎水性グラフトを有しており、
・(q)/(p+q+r+s)は、カチオン性基のモルグラフト度として定義され、1〜99モル%の範囲であり、
・(p+q+r+s)は、10〜1000の範囲であり、好ましくは30〜500の間でり、
・(r)/(p+q+r+s)は、0〜98モル%の範囲であり、
・(s)/(p+q+r+s)は、0〜98モル%の範囲である)と一致する、請求項3に記載の粒子。
【請求項7】
前記RまたはB基が、直接結合を示す、請求項4〜6のいずれかに記載の粒子。
【請求項8】
疎水基(GH)の全部または一部が、独立して、
・6〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)および/または少なくとも一つの不飽和結合を有することができる直鎖または分岐アルコキシ、
・6〜30個の炭素原子を有し、一つまたはそれ以上の環の炭素環を有し、任意に少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有するアルコキシ、
・7〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有することができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル、
よりなるラジカルの群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の粒子。
【請求項9】
疎水基(GH)は、それぞれが互いに独立して、下記式:
【化8】

(式中:
は、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、イソブチル(ロイシン)、sec−ブチル(イソロイシン)またはベンジル(フェニルアラニン)を示し、
は、6〜30個の炭素原子を有する疎水性ラジカルを示し、
lは、0〜6の範囲である)の一価のラジカルを示す、請求項4〜8のいずれかに記載の粒子。
【請求項10】
疎水基(GH)の疎水性ラジカルRの全部または一部が、独立して、
・6〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)および/または少なくとも一つの不飽和結合を有することができる直鎖または分岐アルコキシ、
・6〜30個の炭素原子を有し、一つまたはそれ以上の環の炭素環を有し、任意に少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有するアルコキシ、
・7〜30個の炭素原子を有し、少なくとも一つの不飽和結合および/または少なくとも一つのヘテロ原子(好ましくはOおよび/またはNおよび/またはS)を有することができるアルコキシアリールまたはアリールオキシアルキル、
よりなるラジカルの群から選択される、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
二つのポリマーPE1またはPE2のうち一つは、同時に、
15〜50モル%のグルタミン酸塩モノマー、
20〜55モル%のヒドロキシエチルアミノ−置換基等の非イオン性モノマー、
10〜40モル%の半中和pHが8より大きいカチオン性基を有するモノマー、
3〜15モル%の疎水基によって置換された非イオン性モノマー、
を備える、請求項1〜10のいずれかに記載の粒子。
【請求項12】
二つのポリマーPE1またはPE2のうち一つが、カチオン性であり、また、同時に、
0〜5モル%のグルタミン酸塩モノマー、
50〜85モル%のヒドロキシエチルアミノ−置換基等の非イオン性モノマー、
10〜40モル%の半中和pHが8より大きいカチオン性基を有するモノマー、
3〜15モル%の疎水基によって置換された非イオン性モノマー、
を備える、請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
生理学的pHで、Tテストにおいて測定した粒径が1〜100ミクロンの間であることを示す、請求項1〜12のいずれかに記載の粒子。
【請求項14】
生理学的pHで、0.15〜1.1のかさ密度を示す、請求項1〜13のいずれかに記載の粒子。
【請求項15】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子を調製する方法であって、
前記粒子は、特に請求項1および3〜14のいずれかに記載されたものであり、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性の第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)は、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成し、但し、第1高分子電解質ポリマー(PE1)がポリアミノ酸である場合、第2高分子電解質ポリマー(PE2)はポリリシンもしくはポリエチレンイミンのいずれでもない工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程と、
を備える方法。
【請求項16】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する粒子を調製する方法であって、
前記粒子は、特に請求項2〜12のいずれかに記載されたものであり、
1)pH3〜8のpHm値で、帯電状態で疎水側基(GH)を有する第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド水溶液を準備する工程であって、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)が、pH3〜8のうち少なくとも一つのpHm値で粒子のコロイド溶液を水中で自発的に形成することができる工程と、
2)少なくとも一つの活性成分(AP)を、工程1)において得た第1高分子電解質ポリマー(PE1)に加える工程であって、前記活性成分が、前記第1高分子電解質ポリマー(PE1)のコロイド溶液の粒子と非共有結合している工程と、
3)第1高分子電解質ポリマー(PE1)と異極性で且つ疎水側基(GH)を有する第2高分子電解質ポリマー(PE2)を準備する工程であって、前記第2高分子電解質ポリマー(PE2)が、前記pHのうち少なくとも一つの前記pHm値で溶液またはコロイド溶液を水中で形成する工程と、
4)pHmと等しいpHで、工程2)において得られた活性成分(AP)と会合した粒子のコロイド溶液の形の第1高分子電解質ポリマー(PE1)を、工程3)において得られた溶液またはコロイド溶液の形の第2高分子電解質ポリマー(PE2)と混合する工程と、
を備える方法。
【請求項17】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する製剤であって、請求項1〜14のいずれかに記載の粒子、または、請求項15〜16のいずれかに記載の方法によって得られた粒子の水性懸濁液を有する製剤。
【請求項18】
少なくとも一つの活性成分(AP)を持続放出する固体の製剤であって、
・少なくとも一つの活性成分(AP)を有する粒子に基づいた乾燥粉末の形態を備え、前記粒子が、請求項1〜14のいずれかに記載の粒子、または請求項15〜16のいずれかに記載の方法によって得られた粒子であり、
・または、請求項17に記載の製剤から得られた乾燥粉末の形態を備える固体の製剤。
【請求項19】
特に、非経口、粘膜、皮下、筋内、皮内、経皮、腹腔内もしくは大脳内投与用、または腫瘍への投与用、或いは経口、経鼻、肺、膣もしくは眼球経路による投与用の薬剤を調製する方法であって、前記薬剤が請求項17または18に記載の製剤の少なくとも一つを用いることから本質的になる、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−526040(P2010−526040A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504755(P2010−504755)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055505
【国際公開番号】WO2008/135561
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(505437321)フラメル・テクノロジーズ (14)
【Fターム(参考)】