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高分子電解質を含む親水性コーティング
説明

高分子電解質を含む親水性コーティング

【課題】生物医学的基材等にコーティングして、親水性かつ潤滑性の被膜を基材表面に形成するために適した親水性コーティング製剤を提供する。
【解決手段】硬化したとき、親水性コーティングを生じる親水性コーティング製剤であって、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含み、前記高分子電解質が、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)、またはポリ(メタクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)からなる群から選択される、親水性コーティング製剤。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、硬化したとき、親水性コーティングを生じる親水性コーティング製剤に関する。本発明はさらに、コーティング系、親水性コーティング、潤滑性コーティング、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーの、潤滑性コーティングへの使用、物品、医療機器または部品、ならびに親水性コーティングを基材上に形成する方法に関する。
【0002】
尿道および心血管カテーテル、注射器、ならびに膜など医療機器の多くは、体への挿入および体からの除去を容易にし、かつ/または体からの排液を容易にするために潤滑剤を外面および/または内面に塗布する必要がある。挿入または除去時の軟部組織損傷を最小限に抑えるためには、潤滑特性も必要である。特に、潤滑する目的で、このような医療機器は、潤滑性になり、濡れ、すなわち機器を患者の体に挿入する一定の時間前に、ぬれ流体を塗布したとき低摩擦特性を達成する、親水性表面コーティングまたは層を有することができる。濡れの後、潤滑性になる親水性表面コーティングまたは層は、以降、親水性コーティングと呼ばれる。濡れの後得られるコーティングは、以下、潤滑性コーティングと呼ばれる。
【0003】
潤滑性コーティングを使用するとき直面するよく認識された問題は、コーティングが、体に挿入される前に、または尿道カテーテルを尿道に挿入するときなど、例えば粘膜と接触するとき体内で、水分を失い乾燥してしまう可能性があることである。当然、これは潤滑性コーティングの潤滑性および低摩擦性に影響し、機器を体内に挿入し、体内から除去するとき、患者の疼痛および傷害を招く可能性がある。
【0004】
したがって、患者の体への挿入の前および後に長期間濡れ流体を塗布したとき潤滑性を保つ親水性コーティングを含む医療機器を有することは有利であろう。本明細書では、濡れ流体を塗布したとき親水性コーティングが潤滑性を保つ時間は、さらにドライアウト時間と呼ばれる。
【0005】
本発明の目的は、患者の体内に挿入する前および後に濡れ流体を塗布したとき長時間潤滑性を保つ親水性コーティングを提供することである。
【0006】
意外なことに、今回、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含む親水性コーティングから、濡れ流体を塗布することによって前記潤滑性コーティングが形成される場合、長期化し、それによって改善されたドライアウト時間を有する潤滑性コーティングが得られることがわかった。
【0007】
さらに、高分子電解質を非イオン親水性ポリマーと組み合わせて含む本発明のコーティングは、これらの成分を含まない同様なコーティングに比べて吸水速度が上昇していることもわかった。これは、乾燥コーティングを備えた物品を貯蔵し、そのコーティングを使用する前に湿潤させる場合特に有利である。したがって、コーティング、例えばカテーテルの良好な濡れは、浸水した後または相対湿度100%の空気に曝露した後数秒内で行うことができる。
【0008】
本発明の文脈では、「潤滑性」は滑り性表面を有すると定義される。カテーテルなどの医療機器の外面または内面のコーティングは、傷害を招くことなく、かつ/または許容できないレベルの対象者の不快感を引き起こすことなく、(湿潤させたとき)所期の体部位に挿入することができる場合に潤滑性であると考えられる。特に、コーティングは、摩擦が、Harland FTS5000 Friction Tester(HFT)を用いて、クランプ力300g、引張速度1cm/s、温度22℃、および相対湿度35%で測定して、20g以下、好ましくは15g以下である場合に潤滑性であると考えられる。プロトコルは実施例に記載されている通りである。
【0009】
用語「濡れた」は、一般に当技術分野で知られており、広義には「含水」を意味する。特に、本明細書では、潤滑性となるように十分な水を含有しているコーティングを説明するために、この用語を使用する。水濃度の点から、通常、濡れコーティングは、コーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも10重量%、好ましくはコーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも50重量%、より好ましくはコーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも100重量%の水を含有する。例えば、本発明の特定の実施形態では、水約300〜500重量%の吸水率が可能である。濡れ流体の例としては、処理水、無処理水、例えば塩、タンパク質、または多糖を含む例えば有機溶媒または水溶液を含む含水混合物である。特に、濡れ流体は体液とすることができる。
【0010】
このような潤滑性コーティングの重要な特性は、必要に応じて長期に潤滑性のままであることである。したがって、ドライアウト時間は、医療機器での適用を可能にするのに十分な長さとすべきである。実験の文脈では、ドライアウト時間は、貯蔵および/または湿潤されている潤滑性コーティングを含む機器を濡れ流体から取り出した後コーティングが潤滑性のままである期間である。ドライアウト時間は、HFTでカテーテルが空気に曝露されていた時間に応じた摩擦(グラム単位)を測定することによって決定することができる(上記を参照のこと)。ドライアウト時間は、摩擦が、温度22℃および相対湿度35%で測定して、20g以上、またはより厳密な試験で15g以上の値に到達するある時点である。
【0011】
本発明の文脈では、ポリマーという用語は、2つ以上の繰返し単位を含む分子に使用される。特に、同じでも異なってもよい2つ以上のモノマーから構成されている場合がある。本明細書では、この用語は、オリゴマーおよびプレポリマーを包含する。通常、ポリマーは、数平均重量(Mn)が約500g/モル以上、特に約1000g/モル以上であるが、ポリマーが相対的に小さいモノマー単位から構成される場合はMnがより低いことがある。ここでおよび以下で、Mnは、光散乱で決定されるMnと定義される。
【0012】
本発明の文脈において、高分子電解質は、構成単位を含む巨大分子から構成される高分子量の直鎖状、分枝状、または架橋ポリマーであり、高分子電解質が潤滑性コーティング中に存在する場合に構成単位の5〜100%はイオン化基を含むものと理解される。本明細書では、構成単位は、例えば繰返し単位、例えばモノマーであると理解される。本明細書の高分子電解質は、1タイプの巨大分子から構成される1タイプの高分子電解質を意味することがあるが、異なるタイプの巨大分子から構成される、2つ以上の異なるタイプの高分子電解質を意味することもある。
【0013】
適切な高分子電解質を選択するとき考慮すべきことは、水性媒体でのその溶解性および粘性、その分子量、その電荷密度、コーティングの支持網とのその親和性、およびその生体適合性である。本明細書では、生体適合性は、生体哺乳類の組織において毒性、傷害性、または免疫応答をしない生物学的適合性を意味する。
【0014】
移動性の低下には、高分子電解質は、光散乱、場合によってはサイズ排除クロマトグラフィーと組み合わせて決定して、重量平均分子量が少なくとも約1000g/モルであるポリマーであることが好ましい。ドライアウト時間を増大させ、かつ/またはコーティングからの泳動を低減するには、相対的に高分子量の高分子電解質が好ましい。高分子電解質の重量平均分子量は、好ましくは少なくとも20,000g/モル、より好ましくは少なくとも100,000g/モル、さらにより好ましくは少なくとも約150,000g/モル、特に約200,000g/モル以上である。コーティングの塗布を容易にするには、平均重量が1000,000g/モル以下、具体的には500,000g/モル以下、さらに具体的には300,000g/モル以下であることが好ましい。
【0015】
高分子電解質中に存在することができるイオン化基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、カルボン酸基、硫酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、リン酸基、およびホスホン酸基である。このような基は、水と結合するのに非常に有効である。本発明の一実施形態では、高分子電解質は金属イオンも含む。金属イオンは、水に溶解すると、水分子と錯体を形成して、アクアイオン[M(HO)n+(式中、xは配位数であり、nは金属イオンの電荷である)になり、したがって水と結合するのに特に有効である。高分子電解質中に存在することができる金属イオンは、例えばNa、Li、もしくはKなどのアルカリ金属イオン、またはCa2+やMg2+などのアルカリ土類金属イオンである。特に、高分子電解質が第四級アミン塩、例えば第四級アンモニウム基を含む場合、アニオンが存在することがある。このようなアニオンは、例えばCl、Br、I、およびFなどのハロゲニドとすることができ、さらにスルファート、ニトラート、カルボナート、およびホスファートとすることもできる。
【0016】
適切な高分子電解質は、例えばアクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、フマル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、スルホン酸基を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマーの塩、第四級アンモニウム塩を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの混合物および/または誘導体である。適切な高分子電解質の例は、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−コ−メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−コ−アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−コ−メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリル酸)塩、例えばポリ(アクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸)塩、例えばポリ(メタクリル酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)塩、例えばポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸−コ−マレイン酸)塩、例えばポリ(メタクリル酸−コ−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、例えばポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、例えばポリ(メタクリルアミド−コ−マレイン酸)ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)塩、ポリ(4−スチレンスルホン酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)、第四級化ポリ[ビス−(2−クロロエチル)エーテル−alt−1,3−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、ポリアリルアンモニウムホスファート、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(ナトリウムトリメチレンオキシエチレンスルホナート)、ポリ(ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチル)アンモニウムブロミド)、ポリ(2−N メチルピリジニウムエチレンヨード)、ポリビニルスルホン酸、ならびにポリ(ビニル)ピリジンの塩、ポリエチレンイミン、およびポリリシンである。
【0017】
本発明で使用するための特に適切な高分子電解質は、コポリマー高分子電解質であり、前記コポリマー高分子電解質は、少なくとも2つの異なるタイプの構成単位を含むコポリマーであり、少なくとも1つのタイプの構成単位は、イオン化可能な基またはイオン化基を含み、少なくとも1つのタイプの構成単位は、イオン化可能な基またはイオン化基を含まない。
【0018】
イオン化可能は、中性水溶液、すなわちpH6〜8の溶液中でイオン化可能であると理解される。
【0019】
前記コポリマー高分子電解質は、ランダムまたはブロックコポリマーとすることができる。一般に、構成単位の5〜99重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは70〜85重量%が、イオン化可能な基またはイオン化基を含む。潤滑性コーティング、すなわち親水性コーティングを湿潤した後のコーティングでは、前記イオン化基はイオン性でも非イオン性でもよい。通常は、コポリマー高分子電解質が潤滑性コーティング中に存在する場合、イオン化可能な基およびイオン化基の全量の1〜100重量%、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、特に60〜100重量%がイオン化している。
【0020】
イオン化可能な基を含む構成単位の例は、カルボン酸基、例えばアクリル酸基、メタクリル酸基、マレイン酸基、およびギ酸基;スルホン酸基;スルフィン酸基;およびホスホン酸基を含む構成単位である。イオン化基を含む構成単位の例は、上記のイオン化可能な基、すなわちカルボン酸基、スルホニウム基、スルフィン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、およびホスホニウム基の塩、ならびに第四級アンモニウム塩を含む構成単位である。
【0021】
イオン化可能な基を含まない構成単位の例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルアルコール、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、ビニルピロリドン、およびビニルカプロラクタムである。
【0022】
前記コポリマー高分子電解質の例は、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、およびポリ(アクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)である。ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、例えばナトリウム塩は、高い潤滑性およびドライアウト時間を得るのに特に適していることがわかった。
【0023】
イオン化可能な基またはイオン化基を含む構成単位とイオン化可能な基またはイオン化基を含まない構成単位との両方を含むコポリマー高分子電解質の使用は、いくつかの利点を有する。通常、このような高分子電解質は、特定の溶媒へのより高い溶解性、および硬化親水性コーティング中で使用される場合に結晶化する傾向があまりないことを特徴とする。
【0024】
非イオン親水性ポリマーは、構成単位を含む巨大分子から構成される高分子量の直鎖状、分枝状、または架橋ポリマーであり、高分子電解質が潤滑性コーティング中に存在する場合に構成単位の5%未満、好ましくは、2%未満はイオン化基を含むものであると理解される。非イオン親水性ポリマーは、親水性をコーティングに付与することができ、合成品または生物由来とすることができ、両方のブレンドまたはコポリマーとすることができる。非イオン親水性ポリマーとしては、ポリ(ラクタム)、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、マレイン酸無水物系コポリマー、ポリエステル、ビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリ(カルボン酸)、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、フィブリン、およびエラスチン、多糖、例えばキトサン、ヒアルロン酸、アルギナート、ゼラチン、およびキチン、ポリエステル、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、ならびにオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
プライマー層と物品の表面の接着、および/またはプライマー層と外層の接着は、官能性非イオン親水性ポリマーの分子量の増加によって改善されることが判明した。したがって、光散乱を、場合によってはサイズ排除クロマトグラフィーと組み合わせて決定することによって決定できるような、官能性非イオン親水性ポリマーの重量平均分子量は、通常は少なくとも20,000g/モル、特に少なくとも55,000g/モル、好ましくは少なくとも250,000g/モル、特に少なくとも360,000g/モル、より好ましくは少なくとも500,000g/モル、特に少なくとも750,000g/モルである。
【0026】
実施上の理由で(塗布を容易にし、かつ/または均一なコーティング厚の実現を容易にする)、重量平均分子量(Mw)は、通常は最高1000万、好ましくは最高500万g/モル、より好ましくは最高300万g/モル、最も好ましくは最高200万g/モル、特に最高150万g/モル、より具体的には最高130万g/モル、さらにより具体的には100万g/モルである。
【0027】
特に、少なくとも100000g/モルのMwを有するポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキシド(PEO)は、潤滑性に特定の好影響を及ぼし、コーティングから泳動する傾向が低い。
【0028】
特にポリビニルピロリドン(PVP)および同じクラスのポリマーの場合、少なくともK15、より具体的には特にK30、さらに具体的には特にK80に対応する分子量のポリマーが好ましい。特によい結果は、少なくともK90に対応する分子量を有するポリマーで実現される。上限については、K120以下、特にK100が好ましい。K値は、Method W1307,Revision 5/2001、Viscotek Y501自動粘度計で決定した値である。このマニュアルは、www.ispcorp.com/products/hairscin/index 3.htmlで見ることができる。
【0029】
本発明は、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含む親水性コーティング製剤であって、基材に塗布され、硬化すると、親水性コーティングを生じるコーティング製剤に関する。本明細書では、親水性コーティング製剤は、液体親水性コーティング製剤、例えば液体媒体を含む溶液または分散液を意味する。本明細書では、親水性コーティング製剤を表面に塗布することを可能にする液体媒体なら、いずれでも十分である。液体媒体の例は、メタノール、エタノール、プロパナール(propanal)、ブタノール、またはそれぞれの異性体およびそれらの水性混合物のようなアルコール、あるいはアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、およびそれらの水性混合物または乳濁液である。親水性コーティング製剤はさらに、硬化したとき、親水性コーティングに変換され、したがって硬化した後も親水性コーティング中に残留する成分を含む。本明細書では、硬化は、物理的もしくは化学的硬化、または任意の方法、例えば加熱、冷却、乾燥、結晶化による固化、または放射線硬化や熱硬化などの化学反応による硬化を意味すると理解される。硬化状態では、例えば、UVまたは電子ビーム放射線を使用することによって、成分の全部または一部分の間に共有結合を形成して、親水性コーティング製剤中の成分の全部また一部分を架橋する。しかし、硬化状態では、成分の全部また一部分は、イオン結合、双極子相互作用による結合、またはファンデルワールス力または水素結合による結合を形成することもできる。
【0030】
用語の「硬化すること」は、製剤を、硬く緻密なコーティングが形成されるように処理する任意の方式を包含する。特に、この用語は、親水性ポリマーがさらに重合し、グラフトが設けられて、グラフトポリマーを生成し、かつ/または架橋し、架橋ポリマーを生成する処理を包含する。
【0031】
本発明に係る親水性コーティング組成物は、通常はドライコーティングの全重量を基準にして1〜90重量%、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%、特に10〜20重量%の高分子電解質を含む。
【0032】
非イオン親水性ポリマーは、親水性コーティング製剤の1重量%を超えて使用されることがあり、例えばドライコーティングの全重量を基準にして10重量%を超えて、20重量%を超えて、または30重量%を超えて使用されることがある。非イオン親水性ポリマーは、親水性コーティング製剤中に、95重量%まで存在することができるが、非イオン親水性ポリマーは、ドライコーティングの全重量を基準にして50、60、70、または80重量%まで使用される場合がより多い。
【0033】
以下、塗布で記載されている成分の百分率はすべて、ドライコーティングの全重量、すなわち親水性コーティング組成物を硬化したとき形成される親水性コーティングを基準としている。
【0034】
本発明はまた、本発明に係る親水性コーティング製剤を基材に塗布し、硬化することによって得ることができる親水性コーティングにも関する。本発明はさらに、濡れ流体を前記親水性コーティングに塗布することによって得ることができる潤滑性コーティング、およびそのドライアウト時間を改善するための、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーの、潤滑性コーティングへの使用にも関する。さらに、本発明は、本発明に係る少なくとも1つの親水性コーティングを含む物品、特に医療機器または医療機器部品、および基材上に本発明に係る親水性コーティングを形成する方法に関する。
【0035】
本発明の一実施形態では、親水性コーティングは、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含む。前記親水性コーティングは、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含む親水性コーティング製剤を硬化させることによって形成される。好ましくは、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーは、互いに共有結合および/または物理的結合を形成し、かつ/または捕捉して、硬化した後ポリマー網を形成する。
【0036】
本発明の別の実施形態では、親水性コーティングは、高分子電解質、非イオン親水性ポリマー、および支持網を含み、支持網は、親水性支持網とすることができ、支持モノマーまたはポリマーから生成される。本明細書では、下記に説明する架橋反応を受けることができる複数の反応性部分を含まない支持モノマーまたはポリマーは、親水性官能基を含むこともできる。前記親水性コーティングは、高分子電解質、非イオン親水性ポリマー、および支持モノマーまたはポリマーを含む親水性コーティング製剤を硬化させることによって形成される。好ましくは、高分子電解質、および/または非イオン親水性ポリマー、および/または親水性支持網は、互いに共有結合および/または物理的結合を形成し、かつ/または捕捉して、硬化した後ポリマー網を形成する。
【0037】
高分子電解質、および/または非イオン親水性ポリマー、および/または支持モノマーまたはポリマーが互いに共有結合および/または物理的結合を親水性コーティング中でポリマー網の一部分として形成するこれらの実施形態は、特に好ましい。その理由は、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーは、例えば医療機器にコーティングされた場合親水性コーティングの環境に漏出しないという利点があるからである。これは、医療機器がヒトまたは動物の体の内部に存在する場合特に有用である。
【0038】
前記親水性コーティングを生成するために使用される親水性コーティング製剤では、非イオン親水性ポリマーと支持モノマーまたはポリマーの重量比は、例えば25:75〜75:25などまたは60:40〜40:60など、10:90〜90:10の間で変わり得る。
【0039】
支持網は、支持モノマーまたはポリマー、あるいは親水性コーティング製剤中に存在することができる、架橋反応を受けることができる複数の反応性部分を含む支持モノマーおよびポリマーの任意の組合せを硬化したとき形成することができる。支持モノマーまたはポリマーの反応性部分は、アルケン、アミノ、アミド、スルフヒドリル(SH)、不飽和エステル、エーテル、およびアミドなどのラジカル反応性基、ならびにアルキド/乾燥樹脂からなる群から選択することができる。支持モノマーまたはポリマーは、主鎖、および上記の反応性部分の少なくとも1つを有することができる。支持ポリマーの主鎖は、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリリック、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリオルトエステルのようなポリエステル、およびアルキドコポリマー、ポリペプチド、もしくはセルロースやデンプンなどの多糖、または上記の任意の組合せからなる群から選択することができる。特に、不飽和エステル、アミド、もしくはエーテル、チオール、またはメルカプタン基を有する支持モノマー、ポリマーを、本発明で適切に使用することができる。
【0040】
本明細書では、支持モノマーという用語は、約1000g/モル未満の分子量をもつ分子を意味し、支持ポリマーという用語は、約1000g/モル以上の分子量をもつ分子に使用される。
【0041】
一般に、支持モノマーまたはポリマーは、約500〜100,000g/モルの範囲の分子量を有し、好ましくは約1,000〜約10,000g/モルの範囲の分子量をもつポリマーである。特によい結果は、約1,000〜約6,000g/モルの範囲の支持ポリマーで得られた。支持モノマーまたはポリマーの1分子当たりの反応性基の数は、好ましくは約1.2〜約64の範囲、より好ましくは約1.2〜約16の範囲、最も好ましくは約1.2〜約8の範囲である。
【0042】
支持モノマーまたはポリマーは、ドライコーティングの全重量を基準にして0重量%を超えて、例えば10%を超えて、20重量%を超えて、30重量%を超えて、または40重量%を超えて使用することができる。支持モノマーまたはポリマーは、親水性コーティング製剤中に、90重量%まで存在することができるが、支持モノマーまたはポリマーは、ドライコーティングの全重量を基準にして50または60重量%まで使用される場合がより多い。
【0043】
本発明に係る親水性コーティング製剤は、例えば可視光またはUV光、電子ビーム、プラズマ、ガンマ線、またはIR線を使用して、場合によっては光開始剤または熱開始剤の存在下で硬化して、親水性コーティングを形成することができる。親水性コーティング中で使用することができる光開始剤の例は、ラジカル光開始剤であり、一般に開始ラジカルが生成されるプロセスに従って2つのクラスに分類される。照射時に単分子結合開裂を受ける化合物は、ノリッシュI型(Norrish Type I)または等方性光開始剤と呼ばれる。ノリッシュII型(Norrish Type II)光開始剤は、励起状態で、第2の分子、すなわちポリマーの低分子量化合物とすることができる協力剤と相互作用して、2分子反応でラジカルを生成する。一般に、ノリッシュII型光開始剤用の主要な2つの反応経路は、励起開始剤による水素引抜き、または光誘起電子移動である。適切なラジカル光開始剤の例は、国際公開第00/18696号パンフレットに開示されており、参照により本明細書に援用される。好ましい光開始剤は、水溶性であり、または水溶性となるように調整することができ、好ましい光開始剤は、ポリマー光開始剤または重合可能性光開始剤である。
【0044】
本発明の一実施形態では、高分子電解質は濡れ流体中に存在し、親水性コーティングを湿潤する場合に、親水性コーティングに導入される。これは、親水性コーティングを含む医療機器に特に有用である。医療機器は、流体中に詰め込まれ、または親水性コーティングは、高分子電解質を含有する別の濡れ流体で湿潤される。したがって、本発明はまた、潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系であって、非イオン親水性ポリマーを含むコーティング製剤、および高分子電解質を含む濡れ流体を含む前記コーティング系にも関する。さらに、本発明は、潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系であって、本発明に係るコーティング製剤、および高分子電解質を含む濡れ流体を含む前記コーティング系にも関する。
【0045】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティング製剤はさらに、コーティングの表面特性を改善することができる少なくとも1つの界面活性剤を含む。界面活性剤は、洗浄剤成分の最も重要な基を構成する。一般に、これらは、親水性または水溶性向上官能基に結合している疎水性部分、通常は長いアルキル鎖からなる水溶性界面活性剤である。界面活性剤は、(水溶液に溶解した後)分子の親水性部分中に存在する電荷に従って分類することができる:イオン性界面活性剤、例えばアニオン性またはカチオン性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤。イオン性界面活性剤としては例えば、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、コル酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ラウリルジメチルアミン−オキシド(LDAO)、N−ラウロイルザルコシンナトリウム塩、およびデオキシコール酸ナトリウム(DOC)が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては例えば、トリトン(TRITON)(商標)BG−10界面活性剤およびトリトンCG−110界面活性剤などのアルキルポリグルコシド、テルギトール(TERGITOL)(商標)TMNシリーズなどの分枝状第二級アルコールエトキシラート、テルギトールLシリーズ、およびテルギトールXD、XH、およびXJ界面活性剤などのエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、テルギトールNPシリーズなどのノニルフェノールエトキシラート、トリトンXシリーズなどのオクチルフェノールエトキシラート、テルギトール15−Sシリーズなどの第二級アルコールエトキシラート、ならびにトリトンCA界面活性剤、トリトン N−57界面活性剤、トリトンX−207界面活性剤、ツィーン(Tween)80、およびツィーン20などのスペシャルティアルコキシラートが挙げられる。
【0046】
通常は、ドライコーティングの全重量を基準にして0.001〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の界面活性剤が使用される。
【0047】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティング製剤は、さらにコーティングの柔軟性を向上させることができる少なくとも1つの可塑剤を含み、これは、被覆する/コーティングするべき物体が使用中に撓みやすい場合に好ましいことがある。前記可塑剤は、親水性コーティング製剤中に、ドライコーティングの全重量を基準にして約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約1重量%〜約5.0重量%の濃度で含まれることがある。適切な可塑剤は、高沸点化合物、好ましくは沸点が大気圧で>200℃であり、硬化した後コーティング中に均質に溶解および/または分散したままである傾向をもつ化合物である。適切な可塑剤の例は、モノおよびポリアルコール、ならびにポリエーテル、例えばデカノール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ならびに/またはプロピレングリコールおよび/または脂肪酸とのコポリマーなどがある。
【0048】
本発明はまた、初期潤滑性が、Harland FTS Friction Testerで測定して20g以下である潤滑性コーティングにも関する。
【0049】
本発明に係る親水性コーティングを物品にコーティングすることができる。親水性コーティングを、ある範囲の幾何形状および材料から選択することができる基材にコーティングすることができる。基材は、多孔質の、非多孔質の、平滑な、粗面の、凹凸のない、または凹凸のあるなどのテクスチャーを有することができる。基材は、その上にある親水性コーティングを支持する。親水性コーティングは、基材の全領域または選択された領域に存在することができる。親水性コーティングを、フィルム、シート、ロッド、チューブ、成形部品(整形または不整形)、繊維、布地、および粒子を含めて、様々な物理的形に塗布することができる。本発明で使用するための適切な基材は、多孔性、疎水性、親水性、着色性、強度、柔軟性、透過性、伸び、耐磨耗性、および引裂抵抗など、所望の特性を提供する表面である。適切な基材の例は、例えば金属、プラスチック、セラミック、ガラス、および/または複合体からなるかまたはそれらを含む表面である。親水性コーティングは、前記表面に直接塗布することができ、または前処理済みもしくはコーティング付き表面に塗布することができ、この前処理もしくはコーティングは、親水性コーティングの基材への接着を助けるためのものである。
【0050】
本発明の一実施形態では、本発明に係る親水性コーティングを生物医学的基材にコーティングする。生物医学的基材は、一部、医薬品、および生細胞および系の研究の分野を意味する。これらの分野としては、ヒト用の診断、治療、および試験医薬品、獣医学用医薬品、および農業が挙げられる。医療分野の例としては、眼科学、整形外科学、および補綴学、免疫学、皮膚科学、薬理学、および外科学が挙げられ、研究分野としては、細胞生物学、微生物学、および化学が挙げられるが、これらに限定されない。用語の「生物医学的」はまた、それらの源に関わらず、(i)生物学的応答をin vivoで媒介し、(ii)in vitroアッセイまたは他のモデル、例えば免疫学的もしくは薬理学的アッセイで活性であり、または(iii)細胞または生命体内に存在することができる、化学物質および化学物質の組成物にも関する。用語の「生物医学的」はまた、クロマトグラフィー、浸透、逆浸透、および濾過のプロセスが関与するものなどの分離科学も意味する。生物医学的物品としては例えば、研究用ツール、工業用および消費者用の応用例が挙げられる。生物医学的物品としては、分離物品、植込み型物品、および眼科用物品が挙げられる。眼科用物品としては、眼または周辺組織と接触するソフトおよびハードレンズ、眼内レンズ、および鉗子、開創器、または他の手術道具が挙げられる。好ましい生物医学的物品は、酸素に対して非常に透過性のあるケイ素含有ヒドロゲルポリマーで作製されたソフトコンタクトレンズが挙げられる。分離物品としては、フィルター、浸透膜、逆浸透膜、および透析膜、ならびに人工皮膚または他の膜などのバイオ表面が挙げられる。植込み型物品としては、カテーテル、および人工骨の断片、関節、または軟骨が挙げられる。物品は、1つのカテゴリーを超える場合があり、例えば人工皮膚は、多孔質の生物医学的物品である。細胞培養物品の例は、組織細胞培養または細胞培養プロセスで使用するガラスビーカー、プラスチックペトリ皿、および他の道具である。細胞培養物品の好ましい例は、性能を最適化するように、幾何形状、多孔性、および粒子マイクロキャリアの密度を制御することができる固定化細胞バイオリアクターで使用するバイオリアクターマイクロキャリア、シリコーンポリマーマトリックスである。理想的には、マイクロキャリアは、化学的または生物学的分解、高衝撃応力、機械的応力(撹拌)、および蒸気または化学的滅菌の反復に抵抗性がある。シリコーンポリマーに加えて、他の材料が適している場合もある。本発明は、親水性、濡れ性、またはウィッキング物品が望まれる、食物産業、新聞印刷産業、病院用品、おむつおよび他のライナー、ならびに他の領域でも適用することができる。
【0051】
医療機器は、植込み型機器または体外機器とすることができる。機器は、短期的一時使用または長期的永久埋込みとすることができる。いくつかの実施形態では、適切な機器は、通常は心拍リズム障害、心不全、弁疾患、血管疾患、糖尿病、神経性疾患および障害、整形外科、脳外科、腫瘍学、眼科学、およびENT手術において、医学療法および/または診断を提供するために使用されるものである。
【0052】
医療機器の適切な例としては、ステント、ステントグラフト、吻合部コネクタ、合成パッチ、リード、電極、針、ガイドワイヤー、カテーテル、センサー、手術器具、血管形成術用バルーン、創傷からの排液、シャント、チュービング、注入スリーブ、尿道インサート、ペレット、インプラント、血液酸素供給器、ポンプ、移植血管、導管投与口、心臓弁、弁形成リング、縫合材、外科用クリップ、外科用ステープル、ペースメーカー、植込み型除細動器、神経刺激装置、整形外科用機器、髄液シャント、植込み型薬物ポンプ、脊髄ケージ、人工椎間板、髄核置換機器、耳用チューブ、眼内レンズ、および低侵襲手術で使用される任意のチュービングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
特に本発明で使用するのに適している物品としては、カテーテル、例えば間欠的カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、注射器、金属およびプラスチックインプラント、コンタクトレンズ、および医療用チュービングなどの医療機器または部品が挙げられる。
【0054】
親水性コーティング製剤を、例えばディップコーティングによって基材に塗布することができる。他の塗布方法としては、スプレー、ウォッシュ、蒸着、ブラシ、ローラー、および当技術分野で知られている他の方法が挙げられる。
【0055】
親水性コーティング中のイオン性基またはイオン化可能な基の濃度、および本発明に係る親水性コーティングの厚さは、高分子電解質のタイプ、親水性コーティング製剤中の高分子電解質濃度、浸漬時間、引上げ速度、親水性コーティング製剤の粘度、およびコーティングのステップ数を変更することによって制御することができる。通常は、基材上の親水性コーティングの厚さは、0.1〜300μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜30μmである。
【0056】
本発明はさらに、水系液体で湿潤された場合低摩擦係数を有する親水性コーティングを基材上に形成する方法であって、前記親水性コーティングが高分子電解質を含む方法に関する。
【0057】
親水性コーティングを基材に塗布するには、親水性コーティングと基材間での結合形成をもたらすためにプライマーコーティングを使用することができる。プライマーコーティングは、一次コーティング、ベースコート、またはタイコートと呼ばれることが多い。前記プライマーコーティングは、例えば国際公開第02/10059号パンフレットに記載されているように、親水性コーティングの所与の基材への接着を容易にするコーティングである。プライマーコーティングと親水性コーティング間での結合形成は、共有結合またはイオン結合、水素結合、物理吸着、またはポリマー絡み合いのために起こることがある。これらのプライマーコーティングは、溶媒系、水系(ラテックスまたは乳濁液)または溶媒不含とすることができ、直鎖状、分枝状、および/または架橋成分を含むことができる。使用することができる典型的なプライマーコーティングは、例えばポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリエステル(例えば、米国特許第6,287,285号明細書に記載されているポリアクリラートが含まれる)、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、および上記ポリマーのコポリマーを含む。
【0058】
特に、プライマーコーティングは、支持ポリマー網を含み、支持網は、国際公開第06/056482 A1号パンフレットに記載されているように、場合によっては支持ポリマー網中で絡み合っている官能性親水性ポリマーを含む。プライマーコーティング製剤に関する情報は、参照により本明細書に援用される。
【0059】
上述するプライマー層は、ポリラクタムなどの親水性ポリマー、特にPVPおよび/または上記に特定する親水性ポリマーのもう1つを含むコーティングの、特にポリビニルクロリド(PVC)、シリコーン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・プロピレンゴム(例えば、EPDM)などのポリオレフィン、またはほぼ同じまたはより低い親水性を有する表面への接着を改善するのに特に有用である。
【0060】
実施形態では、物品の表面は、得られるはずのコーティングの接着を改善するために、酸化、光酸化、および/または偏光表面処理、例えばプラズマおよび/またはコロナ処理を受ける。適切な条件は、当技術分野で周知である。
【0061】
本発明の製剤の塗布はいかなる方式でも行うことができる。硬化条件は、光開始剤およびポリマーの周知の硬化条件に基づいて決定することができ、または通常通りに決定することができる。
【0062】
一般に、硬化は、物品の機械的諸特性または別の特性に、許容できない程度の悪影響を与えない限り、基材に応じて任意の適切な温度で実施することができる。
【0063】
電磁放射線の強度および波長は、選択された光開始剤に基づいて通常通りに選択することができる。特に、スペクトルのUV、可視、またはIR部分の適切な波長を使用することができる。下記の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0064】
[実施例]
下記の実施例では、本発明に係る親水性コーティング製剤、および比較コーティング製剤を、下記に示すようにPVCチュービングに塗布し、続いて硬化して、本発明に係る親水性コーティングを形成した。
【0065】
[PVC雄型カテーテル]
未コーティングPVCチュービングを、親水性コーティングでコーティングした。PVCチュービングは、長さ23cm、外径4.5mm(14 Fr)、および内径3mmであった。コーティング製剤が、浸漬中にチュービングの内部に到達するを防止するために、チュービングを片側で封止した。
【0066】
[PTGL1000(T−H)の合成]
乾燥不活性雰囲気中、トルエンジイソシアナート(TDIまたはT、アルドリッチ(Aldrich)、純度95%、87.1g、0.5モル)、イルガノックス(IRGANOX)1035(チバスペシャルティケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、0.58g、ヒドロキシエチルアクリラート(HEAまたはH)に対して1重量%)、および2−エチルヘキサン酸スズ(II)(シグマ(Sigma)、純度95%、0.2g、0.5モル)を1リットルのフラスコに加え、30分間撹拌した。氷浴を使用して、反応混合物を0℃に冷却した。HEA(アルドリッチ、純度96%、58.1g、0.5モル)を30分で滴下し、その後氷浴を外すと、混合物は室温にまで温まった。3時間後、反応は完了した。ポリ(2−メチル−1,4−ブタンジオール)−alt−ポリ(テトラメチレングリコール)(PTGL、保土ヶ谷(Hodogaya)、Mn=1000g/モル、250g、0.25 モル)を30分で滴下した。続いて、反応混合物を60℃に加熱し、18時間撹拌し、そのとき、反応は、GPC(HEAの完全な消費を示す)、IR(NCO関連の帯が示されていない)およびNCO滴定(NCO含有量、0.02重量%未満)によって示唆されているように、終了している。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
実施例7の製剤を硬化した後得られたコーティングは、潤滑性であり、良好なドライアウト時間を有し、ガンマ線滅菌後もPVCカテーテルに十分接着することがわかる。肉眼で見える亀裂は観察されない。
【0072】
[PEG4000DAの合成]
150g(75ミリモル OH)のポリエチレングリコール(PEG、フルカ(Fluka)のBiochemika Ultra、OH値28.02mg KOH/g、499.5mew/kg、Mn=4004g/モル)を、窒素雰囲気中、350mlの乾燥トルエンに45℃で溶解した。0.2g(0.15重量%)のイルガノックス 1035をラジカル安定剤として添加した。得られた溶液を、終夜共沸蒸留し(50℃、70mbar)、凝縮したトルエンを4Å モルシーブに導いた。PEGの各バッチについて、OH値を、OH滴定によって正確に決定した。これは、ヨーロッパ薬局方、第4版、パラグラフ2.5.3、ヒドロキシル値、105頁(4th edition of the European Pharmacopoeia,paragraph 2.5.3,Hydroxyl Value,page 105)に記載の方法従って実施した。これによって、アクリロイルクロリドの添加量を算出し、反応中のアクリル酸エステル化度を決定することが可能になる。9.1g(90ミリモル)のトリエチルアミンを反応混合物に添加し、続いて50mlのトルエンに溶解させた8.15g(90ミリモル)のアクリロイルクロリドを1時間で滴下した。トリエチルアミンおよびアクリロイルクロリドは無色の液体であった。反応混合物を、窒素雰囲気中45℃で2〜4時間撹拌した。反応中、温度を45℃に維持して、PEGの結晶化を防止した。変換率を決定するために、試料を反応混合物から取り出し、乾燥し、重水素化クロロホルムに溶解した。無水トリフルオロ酢酸(TFAA)を添加し、H−NMRスペクトルを記録した。TFAAは、残留しているヒドロキシル基と反応して、トリフルオロ酢酸エステルを生成する。これは、H−NMR分光法を使用して容易に検出することができる(トリフルオロ酢酸基のα位のメチレンプロトンの3重線(g、4.45ppm)は、アクリル酸エステルのα位のメチレン基の信号(d、4.3ppm)から明確に識別することができる)。アクリル酸エステル化度が98%であった場合、10ミリモルのアクリロイルクロリドおよびトリエチルアミンを反応混合物に追加して、1時間反応させた。アクリル酸エステル化度98%超で、温かい溶液を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩を除去した。約300mlのトルエンを真空除去した(50℃、20mbar)。得られた溶液を、加熱した滴下漏斗中で45℃に維持し、1リットルのジエチルエーテル(氷浴中で冷却)に滴下した。濾過してPEGジアクリラート生成物を得る前に、エーテル懸濁液を1時間冷却した。生成物を、空気を低減した雰囲気中(300mbar)、室温で終夜乾燥した。収率:80−90%、白色結晶。
【0073】
[実施例1〜7および比較実験A〜Dのコーティングおよび硬化プロセス]
Harland PCXコーター/175/24を使用して、表2のプライマーコーティングの浸漬プロトコルに従って、PVCチュービングをまず、プライマーコーティング製剤で浸漬コーティングし、硬化した。続いて、Harland PCXコーター/175/24を使用して、親水性コーティングの浸漬プロトコルに従って、親水性コーティング製剤を塗布し、硬化した。Harland PCXコーター/175/24には、Harland MedicalシステムUVM 400ランプを装備した。Harland PCXコーター/175/24のランプの強度は、International Light検出器SED005#989、Input Optic:W#11521、フィルター:wbs320#27794を装備したSolatell Sola Sensor 1を使用して測定され、平均60mW/cmであった。インターネット上の:www.intl−light.com.から入手可能なInternational LightのIL1400A取扱いマニュアルを使用した。UV線量は、プライマーコーティングの場合約1.8J/cm、親水性コーティングの場合21.6J/cmであった。適用したコーティングパラメータについては、表1を参照のこと。
【0074】
コーティングPVCチュービングの目視検査によって、親水性コーティングの濡れは良好であることがわかった。均一なコーティングが得られた。
【0075】
【表5】

【0076】
[試験方法]
[潤滑性試験]
Harland FTS5000 Friction Tester (HFT)を用いて、潤滑性試験を行った。プロトコルを選択した:表2のHFT 設定を参照のこと。次の摩擦試験機パッドを使用した。Harland Medical Systems,P/N 102692,FTS5000 Friction Tester Pad、0.1250.5**0.125,60 デュロメーター。
【0077】
続いて、所望の試験ディスクリプションを挿入し、「試験実行(run test)」を作動させた。ガイドワイヤーをカテーテルに挿入した後、カテーテルをホルダーに取り付けた。機器を所望の位置まで下方調整して、カテーテルを脱塩水に1分間浸漬した。水中でゼロゲージングした後、「スタート」を押して、プロトコルを作動させた。仕上げの後、データを保存した。ホルダーをフォースゲージから取り出し、続いてカテーテルをホルダーから取り外した。
【0078】
【表6】

【0079】
[ドライアウト時間]
本明細書では、ドライアウト時間は、貯蔵および/または湿潤されている機器を濡れ流体から取り出した後コーティングが潤滑性を保つ期間である。ドライアウト時間は、HFTでカテーテルが空気に曝露されていた時間に応じた摩擦(グラム単位)を測定することによって決定することができる(上記を参照のこと)。ドライアウト時間は、摩擦が、温度22℃および相対湿度35%で測定して、20g以上、またはより厳密な試験で15g以上の値に到達するある時点である。ガイドワイヤーをカテーテルに挿入した後、カテーテルをホルダーに取り付けた。カテーテルを脱塩水に1分間浸漬した。カテーテルが入っているホルダーをフォースゲージに置き、機器を所望の位置まで押し動かし、潤滑性試験の場合と同じ設定に従ってすぐに試験を開始した。測定は、1分、2分、5分、7.5分、10分、12.5分、および15分後に行った。各測定後に、摩擦試験機パッドを清浄し、乾燥した。仕上げの後、データを保存した。ホルダーをフォースゲージから取り出し、続いてカテーテルをホルダーから取り外した。
【0080】
表3に、実施例1〜5に従って調製された潤滑性コーティングの潤滑性を時間に応じて示し、比較実験AおよびBの結果も同様に示す。
【0081】
【表7】

【0082】
この表から、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)部分ナトリウム塩、ポリ(アクリル酸)ナトリウム塩、またはポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)ナトリウム塩を含む、本発明(実施例1〜5)に従う潤滑性コーティングは、高分子電解質を含まない比較実験AおよびBの潤滑性コーティングより、潤滑性が大幅に高い(すなわち、摩擦が低い)ことがわかる。ドライアウト試験で、本発明に係る潤滑性コーティングは、比較例のコーティングよりはるかに長い時間、潤滑性のままであった。
【0083】
表4に、実施例6に従って調製された潤滑性コーティングと比較実験CおよびDの潤滑性を時間に応じて示す。
【0084】
【表8】

【0085】
この表から、実施例6に従うコーティングは、非イオン親水性ポリマーを含むが、高分子電解質を含まないコーティング製剤が関与する比較実験Cに従うコーティング、または高分子電解質を含むが、非イオン性親水性ポリマーを含まないコーティング製剤が関与する実施例Dより、潤滑性が高い(すなわち、摩擦値が低い)ことがわかる。
【0086】
時間に応じた潤滑性測定(表3)および潤滑性測定の結果は、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーの組合せが、コーティングの高い潤滑性および高いドライアウト時間をもたらすことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したとき、親水性コーティングを生じる親水性コーティング製剤であって、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーを含む親水性コーティング製剤。
【請求項2】
前記高分子電解質が、アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、メタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、フマル酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、スルホン酸基を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマーの塩、第四級アンモニウム塩を含むモノマーのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの混合物および/または誘導体である、請求項1に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項3】
前記高分子電解質がコポリマー高分子電解質であり、前記コポリマー高分子電解質が、少なくとも2つの異なるタイプの構成単位を含むコポリマーであり、少なくとも1つのタイプの構成単位がイオン化可能な基またはイオン化基を含み、少なくとも1つのタイプの構成単位がイオン化可能な基またはイオン化基を含まない、請求項1または請求項2に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項4】
前記高分子電解質が、ポリ(アクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−アクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−メタクリル酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、ポリ(メタクリルアミド−コ−マレイン酸)塩、ポリ(アクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)、またはポリ(メタクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウムクロリド)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項5】
前記非イオン親水性ポリマーが、ポリ(ラクタム)、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、マレイン酸無水物系コポリマー、ポリエステル、ビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリ(カルボン酸)、ポリアミド、ポリ酸無水物、ポリホスファゼン、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース、ヘパリン、デキストラン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、フィブリン、およびエラスチン、多糖、例えばキトサン、ヒアルロン酸、アルギナート、ゼラチン、およびキチン、ポリエステル、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン、ポリペプチド、例えばコラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、ならびにオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項6】
架橋反応を受けることができる複数の反応性部分を含む支持モノマーおよび/またはポリマーをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項7】
前記支持モノマーおよび/またはポリマーが、親水性支持モノマーおよび/またはポリマーである、請求項6に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項8】
少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項9】
少なくとも1つの可塑剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤を硬化することによって得られる親水性コーティング。
【請求項11】
請求項10に記載の親水性コーティングに濡れ流体を塗布することによって得られる潤滑性コーティング。
【請求項12】
1サイクル後の初期潤滑性がHarland FTS Friction Testerで測定して20g以下である潤滑性コーティング。
【請求項13】
1サイクル後の初期潤滑性がHarland FTS Friction Testerで測定して20g以下である、請求項11に記載の潤滑性コーティング。
【請求項14】
潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系であって、非イオン親水性ポリマーを含むコーティング製剤、および高分子電解質を含む濡れ流体を含むコーティング系。
【請求項15】
潤滑性コーティングを調製するためのコーティング系であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコーティング製剤と、高分子電解質を含む濡れ流体とを含むコーティング系。
【請求項16】
潤滑性コーティングのドライアウト時間を改善するための、高分子電解質および非イオン親水性ポリマーの、潤滑性コーティングへの使用であって、ドライアウト時間は、貯蔵および/または湿潤されている潤滑性コーティングを含む機器を濡れ流体から取り出した後コーティングが潤滑性のままである期間と定義され、Harland FTS Friction Testerで時間に応じた摩擦(グラム単位)を測定することによって決定される使用。
【請求項17】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の親水性コーティングまたは潤滑性コーティングを少なくとも1つ含む物品。
【請求項18】
前記物品が医療機器または部品である、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
カテーテル、医療用チュービング、ガイドワイヤー、ステント、または膜を含む、請求項18に記載の医療機器または部品。
【請求項20】
基材上に親水性コーティングを形成する方法であって、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の親水性コーティング製剤を物品の少なくとも1つの表面に塗布するステップと、
前記製剤を電磁放射線に曝露し、それによって開始剤を活性化することによって前記コーティング製剤を硬化させるステップと
を含む方法。

【公開番号】特開2013−79382(P2013−79382A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−251376(P2012−251376)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2008−543747(P2008−543747)の分割
【原出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】