説明

高分子電解質不含の水分散性のブロックコポリマー及び架橋剤を含有する被覆組成物、その硬化された皮膜及び該皮膜を含む積層系

硬化性の水性被覆組成物であって、大部分のエチレン系不飽和モノマー、及び1種のビニル芳香族性炭化水素モノマーの反応生成物を含み、その際、前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーが水分散性架橋剤と反応しうる少なくとも1つの官能基を含み、かつ前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーがコポリマーに水分散性を与えうる量で存在する第一のブロックと、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーの反応生成物を含み、その際、該モノマーの少なくとも一部が非官能性である第二のブロックとのラジカル重合生成物を含むコポリマー、並びに水分散性架橋剤の反応生成物を含み、その際、該コポリマーは塩構造を含まない被覆組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、同時係属出願中の米国特許出願:
I. US09/747,473号、出願日2000年12月22日、この出願は2000年6月16日に出願されたドイツ国出願番号DE10029803.6号に対して優先権主張している;
II. US09/930,615号、出願日2001年8月14日、この出願は以下の米国特許出願の一部係属出願である:
i. US09/747,473号、出願日2000年12月22日、この出願は2000年6月16日に出願されたドイツ国出願番号DE10029803.6号に対して優先権主張している;及び
ii. US09/747,475号、出願日2000年12月22日、現在の米国特許第6,403,709号、この出願は2000年6月16日に出願されたドイツ国出願番号DE10029803.6号に対して優先権主張している
の一部係属出願である。
【0002】
発明の背景
水性被覆組成物は、成分として水性コポリマーと架橋剤とを含む。水性コポリマーは、自動車塗装工業と工業用塗装工業での塗料系で使用するために望ましい。それというのもこれらのコポリマーは水性塗料系、例えばWBBC、WBCC及び水性プライマー系の形成を可能にするからである。当該技術分野では、水性塗料系が溶剤性塗料系と比較して理想的であることが知られている。それというのも水性塗料系は揮発性有機化合物(VOC類)の含有量がより少ないからである。
【0003】
従来技術の水性コポリマーは、水性被覆組成物中の成分として使用するには不適であることが判明している。先行技術の水性コポリマーが非効率的なのは、これらのコポリマーが二次分散液としては高粘度であり、そして一般的に一次分散液としては皮膜形成特性の範囲に乏しいからである。更に、先行技術のコポリマーと慣用の架橋剤、例えばアミノプラストとの間の架橋は、しばしば特に、チッピング性能が悪く、環境的な酸腐蝕を受けやすい。
【0004】
先行技術の水性コポリマーはまた不十分であり、これは該コポリマーがしばしば付加的な成分、例えば補助溶剤及び界面活性剤といった水性塗料系には望ましくない成分を取り込むからである。例えば、慣用の水性コポリマーは一般に補助溶剤を取り込み、コポリマーの水中への分散性を高め、そしてこれらの補助溶剤はVOC類の増大に貢献することとなる。また慣用の水性コポリマーは一般に、界面活性剤をそのコポリマー中に取り込み、そしてコポリマーの水中への混和性と取り込みを保持し、そして当業者によって理解されるように、その被覆組成物中への界面活性剤の取り込みはしばしば感水性、湿度、そして“へこみ”並びに該水性塗料系の外観を害する他の塗布欠陥に貢献する。
【0005】
また先行技術の水性コポリマーを製造するためのラジカル重合も不十分である。これらの慣用法は一般に高度に発熱性であり、そして従って予測と制御が困難である。これらの方法の不測性は、水性コポリマーの、そして最終的には成分としてそのコポリマーを含む水性被覆組成物の制御不能で不能な物理特性をもたらす。殊に、これらの方法の不測性はしばしば該コポリマーの不一致の分子量分布をもたらし、そしてモノマー成分は不完全に変換されてコポリマーとなる。更に、慣用の水性コポリマーの製造において、モノマー成分の分布はランダムであって、該コポリマーがWBBC、WBCC又は水性プライマー系で使用されるかどうかに応じて特定の要求を満たすことが可能な“仕立てられた”構成をもたらさない。当該技術分野では、不一致な分子量、モノマー成分の不完全な変換並びに更にモノマー成分のランダムな分布は、なによりもコポリマーの粘度の安定性に影響を及ぼし、更にコポリマー及び水性被覆組成物の“ゲル化”をもたらしうることが理解される。更に、WBBC、WBCC又は水性プライマー系の外観特性の悪さ、例えば光沢及び鮮映性(DOI)はレオロジーの悪さ、すなわち適用後の被覆組成物の流れから引き起こされるものであり、それは水性コポリマーの不一致性によるものである。
【0006】
要するに、上記で詳説した水性被覆組成物の成分である先行技術の水性コポリマーは1つ以上の欠点によって特徴付けられる。先行技術で特定される欠点により、WBBC、WBCC及び水性プライマー系で利用されるべき新規の水性コポリマー及び被覆組成物並びに該被覆組成物の新規の製造方法及び硬化された皮膜を提供することが望まれる。
【0007】
発明の要旨
本発明は、硬化性の水性被覆組成物であって、
A. 以下のiとii:
i. 以下のaとb:
a. 大部分のエチレン系不飽和モノマー、及び
b. 1種のビニル芳香族性炭化水素モノマー
の反応生成物を含み、その際、前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種が水分散性架橋剤と反応しうる少なくとも1つの官能基を含み、かつ前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種がコポリマーに水分散性を与えうる量で存在する第一のブロックと、
ii. 少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーの反応生成物を含み、その際、該モノマーの少なくとも一部が非官能性である第二のブロックと
のラジカル重合生成物を含むコポリマー、並びに
B. 水分散性架橋剤
の反応生成物を含み、その際、該コポリマーは塩構造を含まない被覆組成物に関する。
【0008】
発明の詳細な説明
全体を通して使用されるように、範囲は、その範囲内のそれぞれの値と全ての値を記載するための簡略として使用される。範囲内の如何なる値もその範囲の端点として選択できる。
【0009】
対象発明の硬化性の水性被覆組成物は水性塗料系で利用される。水性塗料系、例えば水性ベースコート(WBBC)系及び水性クリヤーコート(WBCC)系は、自動車塗装工業、工業用塗装工業及び他の塗装工業の全体を通して使用され、美観的及び機能的な目的のため、例えば着色及び環境耐性のそれぞれの目的のために種々の基体に被覆される。対象発明はWBBC系及びWBCC系に関するものであるが、対象発明はまた、他の水性塗料系、例えば制限されないが水性プライマー系において、かつ他の工業、例えば制限されないが接着剤工業及びシーラント工業においても利用できると解されるべきである。
【0010】
対象発明の水性被覆組成物は、例えば水分散性架橋剤と、該架橋剤との反応に適した官能基を含む水性コポリマーとの反応生成物である。更に以下にも説明するように、一例証において、コポリマーの官能基は架橋剤と反応して、イソシアネートを使用せずにウレタン(−NH−CO−O−)架橋が得られる。該水性被覆組成物はラジカル重合法によって製造される。一般に、該被覆組成物の製造方法は、官能基を含む第一のブロックを形成する工程、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーを含み、その少なくとも一部が非官能性である第二のブロックと第一のブロックとを重合させて、水性コポリマーを得る工程、及びその水性コポリマーと水分散性架橋剤とを合し、そうしてコポリマーの官能基と架橋剤とを反応させて、対象発明の水性被覆組成物を製造する工程を含む。これらの方法工程は以下により詳細に論じるつもりである。
【0011】
該水性コポリマーは第一のブロックと第二のブロックとの反応生成物である。最も好ましい実施態様では、第一のブロックは親水性ブロックであり、かつ第二のブロックは疎水性ブロックであり、そして対象発明はこれを念頭に置いて記載される。しかしながら、ブロックの数は制限を意図するものではないと解されるべきである。例えば、水性コポリマーは3つのブロック、つまり第一のブロック、第二のブロック、そして第三のブロックの反応生成物であってもよい。制限されないが、例としては、第一のブロックは親水性ブロックであり、第二のブロックは疎水性ブロックであり、かつ第三のブロックは親水性ブロックであってよい。また対象発明は、官能性と非官能性の点で理解することもできる。それとして、第一のブロックは官能性ブロックであり、第二のブロックは非官能性ブロックであり、かつ第三のブロックは官能性ブロックであってよい。最も有利な実施態様では、親水性である第一のブロックは官能性であり、かつ疎水性である第二のブロックは非官能性である。更に、上述のように架橋剤との架橋反応に関与する官能性ブロックは、事実上、基体又は既に基体上にある被膜に結合する水性組成物の成分であることが推測される。また、非官能性ブロックと官能性ブロックとは隔てられており、すなわち非官能性ブロックは官能性ブロックの外側で基体から離れて伸長して、クッション様効果が得られると推測される。この効果が得られるのは、以下に説明するように、非官能性ブロックが官能性ブロックに対して高い質量平均分子量を有するためであり、従ってチッピング及び接着欠陥に対してより抵抗性となりうる。全てのブロックが同一又は異なる官能性を有する状況を有することができ、特定の状況の要求を満たすことができる。
【0012】
第一のブロックは、被覆組成物の100質量部に対して5〜15質量部、有利には7〜10質量部の量で存在する。第一のブロックは、大部分のエチレン系不飽和モノマー、1種のビニル芳香族性炭化水素モノマー及びポリマーに水分散性を付与することができる1種のエチレン系不飽和モノマーの反応生成物である。第一のブロック中の大部分のモノマーの少なくとも1種のモノマーは、架橋剤との反応に適した官能基を含む。第一のブロックを形成するために、大部分のエチレン系不飽和モノマーとビニル芳香族性炭化水素モノマーを重合させる。この重合工程は、1〜8時間、有利には2〜7時間、最も有利には4〜6時間の時間にわたって、50℃〜100℃の温度で実施される。この“重合工程”を実施するのに必要な時間は、モノマー成分の添加に必要な時間と、モノマーの添加が生じ得ない任意の保持時間又は冷却時間とを含むと解されるべきである。また、一定のエチレン系不飽和モノマーと一定のビニル芳香族性炭化水素モノマーは、重合工程を圧力下に実施することが必要であると解されるべきである。所望であれば、かかる圧力は有利には1.5〜3000バール、より有利には10〜1000バールである。
【0013】
第一のブロックにおける大部分のエチレン系不飽和モノマーは、架橋剤との反応に適した官能基を導入でき、またその大部分のエチレン系不飽和モノマーの選択により、理想的な最低皮膜形成時間、つまりMFFTを水性コポリマーのために、最終的には、WBBC、WBCC又は水性プライマー系のいずれかに利用される水性被覆組成物の硬化された皮膜のために確立することができるので、硬化された皮膜は過度の亀裂、チッピングなどに抵抗性である。また大部分のエチレン系不飽和モノマーを選択して、被覆組成物及び該被覆組成物から形成される硬化された皮膜の感光性を最低化させることもできる。
【0014】
対象発明の一実施態様では、大部分のエチレン系不飽和モノマーは、第一の、第二の、そして第三のエチレン系不飽和モノマーを含む。しかしながら、大部分のエチレン系不飽和モノマーは、対象発明の範囲を変更することなく、3種より多いモノマーを含んでよいと解されるべきである。第一の、第二の、そして第三のエチレン系不飽和モノマーを選択して、上記に論じられた所望の物理特性が均衡される。すなわち、第一の、第二の、そして第三のエチレン系不飽和モノマーを選択して、コポリマーの水溶性並びに被覆組成物と硬化された皮膜のMFFT及び感光性が均衡される。更に、第二のエチレン系不飽和モノマーは、前記の架橋剤との反応に適した官能基を導入する。コポリマーの第一のブロックにおける全モノマー組成の点で、第一の、第二の、そして第三のエチレン系不飽和モノマーは、第一のブロックにおける全モノマー組成の100質量部に対して70〜99質量部、有利には92〜98質量部を形成する。第一の、第二の、そして第三のエチレン系不飽和モノマーの含量の他に、第一のブロックにおける全モノマー組成は、ビニル芳香族性炭化水素モノマーの含量も含む。以下により詳細に論じられるように、一定の実施態様において、ビニル芳香族性炭化水素モノマーは選択的に、前記の大部分とは異なる、すなわち大部分に含まれる一般式RC=CRのエチレン系不飽和モノマーとは異なる少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーとして定義される。かかる実施態様では、第一のブロックにおける全モノマー組成は、一般式RC=CRの少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーの含量を含むと定義される。有利な実施態様では、第一のブロックにおける第一のエチレン系不飽和モノマーと第二のエチレン系不飽和モノマーとの質量比は1:0.5〜1:5であり、かつ第一のブロックにおける第一のエチレン系不飽和モノマーと第三のエチレン系不飽和モノマーとの質量比は1:0.5〜1:5である。
【0015】
大部分の第一のエチレン系不飽和モノマーは実施態様に応じて変わる。殊に、第一のエチレン系不飽和モノマーにより大部分に導入される官能基は変化しうる。第一のエチレン系不飽和モノマーについて選択された1種又は複数種のモノマーは、架橋剤との反応に適した官能基に依存する。対象発明の有利な実施態様は、カーボネート官能基、カルバメート官能基、ヒドロキシル官能基及びそれらの混合物を含み、そして対象発明の更なる有利な実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーは、本来のカーボネート官能基から修飾されたカルバメート官能基を含んでよい。
【0016】
第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基がカーボネート官能基である場合に、第一のエチレン系不飽和モノマーは、脂環式アクリレート、脂環式メタクリレート及びその混合物からなる群から選択される。対象発明の文脈では、脂環式化合物、例えば脂環式アクリレート及び脂環式メタクリレートは非環式化合物を含むと意図される。脂環式アクリレートとメタクリレートの化合物それぞれはアルキル基を含み、そして対象発明の有利な実施態様では、これらの化合物のそれぞれはアルキル基中に20個までの炭素原子を含むと解されるべきである。この実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーは、より有利には、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。当業者によって理解されるように、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレートは脂環式アクリレートであり、かつカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートは脂環式メタクリレートである。これも当業者によって理解されるように、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレートは、化学式CH:CHCOOCHCHCHを有するグリシジルアクリレートとCOとを過圧下に高温条件下で反応させることによって形成される。同様に、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートは、化学式CH:C(CH)COOCHCHCHを有するグリシジルメタクリレートとCOとを過圧下に高温条件下で反応させることによって形成される。最も有利な実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基はカーボネート官能基であるが、第一のエチレン系不飽和モノマーはカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートである。説明を目的として、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートのための承認された略称化学名は2−プロペン酸,2−メチル−,(2−オキソ−1,3−ジオキサラン−4−イル)メチルエステルである。
【0017】
第一のブロックの第一のエチレン系不飽和モノマーは1つ以上のカーボネート官能基を導入できると解されるべきである。また、選択的なカーボネート修飾された化合物を、他の化学的化合物、例えばCOと反応されるエポキシ基含有化合物によって、かつ更にはペルオキシドとの公知の反応によりエポキシ基にまずは変換される不飽和結合を有する化学的化合物によっても導入することができる。
【0018】
対象発明の更なる一実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基はカルバメート官能基であってよい。前記のように、カーボネート官能基を修飾して、カルバメート官能基にする。任意のカーボネート基を修飾して、カルバメート官能基にすることができる。殊に、対象発明による水性被覆組成物は、更にアンモニア含有化合物の反応生成物を含む。該アンモニア含有化合物は、大部分のモノマーと反応性であって、カーボネート官能基はカルバメート官能基に修飾される。アンモニア含有化合物は、アンモニア、水酸化アンモニウム及びその混合物からなる群から選択される。該官能基は本来カーボネート官能基であるので、第一のエチレン系不飽和モノマーは前記と同じ基から選択される。つまり、第一のエチレン系不飽和モノマーは、脂環式アクリレート、脂環式メタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。脂環式アクリレートとメタクリレートのそれぞれはアルキル基を含み、そして対象発明の有利な実施態様では、これらの化合物のそれぞれはアルキル基中に20個までの炭素原子を含むと解されるべきである。この実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーは、より有利には、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も有利な実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基はカルバメート官能基であるが、第一のエチレン系不飽和モノマーはカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートである。
【0019】
第一のブロックにおけるカーボネート官能基は第一のブロックと第一のブロックとが重合された後に修飾される、すなわちカルバメート官能基に変換されることが好ましい。殊に、50℃〜100℃、より有利には50℃〜70℃の温度で、アンモニア含有、すなわちNH化合物とカーボネート官能基とを反応させて、カーボネート官能基をカルバメート官能基に変換させる。アンモニア含有化合物とカーボネート官能基との間の反応工程は1〜4時間の時間にわたって実施される。
【0020】
前記のように、アンモニア含有化合物は、アンモニア、水酸化アンモニウム及びその混合物からなる群から選択される。当業者によって理解されるように、アンモニア又は水酸化アンモニウムのいずれかを使用してカーボネート官能基を変換させることにより、一般式NHCOO−の第一級カルバメート官能基が生ずる。更に、第一級アミンを使用してカーボネート官能基を変換させてよい。第一級アミンの使用は、一般式NHRCOO−で示され、Rがアルキル基である第二級カルバメート官能基をもたらす。有利な実施態様では、カーボネート官能基は第二のブロックと第一のブロックとを重合させた後にカルバメート官能基に変換されるが、選択的に、カーボネート官能基を、第二のブロックと第一のブロックトを重合させる前にカルバメート官能基に変換できると解されるべきである。
【0021】
前記のように、有利な実施態様では、水酸化アンモニウムを使用して、カーボネート官能基をカルバメート官能基に変換させる。水酸化アンモニウムのアンモニア、つまりNH基は以下に図示する第一のヒドロキシル(−OH)基を有する第一級カルバメート官能基を形成しうる。
【0022】
【化1】

【0023】
選択的に、水酸化アンモニウムのアンモニア、つまりNH基は以下に図示する第二のヒドロキシル(−OH)基を有する第一級カルバメート官能基を形成しうる。
【0024】
【化2】

【0025】
第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基がヒドロキシル官能基である場合に、第一のエチレン系不飽和モノマーは、脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート及びその混合物からなる群から選択される。脂肪族アクリレートとメタクリレートのそれぞれはアルキル基を含み、そして対象発明の有利な実施態様では、これらの化合物のそれぞれはアルキル基中に20個までの炭素原子を含むと解されるべきである。この実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーは、より有利には、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択される。最も有利な実施態様では、第一のエチレン系不飽和モノマーの官能基はヒドロキシル官能基であり、第一のエチレン系不飽和モノマーはヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0026】
大部分に存在するのであれば、第二のエチレン系不飽和モノマーは有利にはメチルメタクリレートであり、これにより以下に記載の物理特性が最適化される。もちろん、所望の物理特性に応じて、第二のエチレン系不飽和モノマーは別のモノマー、例えばこれらに制限されないが、脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート、脂環式アクリレート又は脂環式メタクリレートであってよい。
【0027】
また、第一のブロックにおいて、大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーは、それが水性コポリマーに水分散性を与えることができる量で存在する。第一のブロックの反応生成物中に、水分散性架橋剤と反応しうる官能基が存在することで、コポリマーを水溶性にすることを可能にすることもできる。更に、水溶性は、他のヒドロキシ官能性材料、ヒドロキシカルバメート材料、ポリエーテル及びポリアミンを含ませることによって増大させることができる。コポリマーを水分散性にする官能基を有するモノマーが十分な量で存在する場合に、コポリマーは、中和剤で塩に変換して、コポリマーを水溶性にする必要がある構造を第一のブロックにおいて含ませることなく水溶性である。有利には、コポリマーを水分散性にする官能基を有するモノマーは第一のブロックにおいて、固体に対して少なくとも約30質量%の量で存在する。より有利には、コポリマーを水分散性にする官能基を有するモノマーは第一のブロックにおいて、固体に対して約40〜約80質量%、より有利には50〜70質量%の量で存在する。
【0028】
中和剤により形成されるコポリマー中の塩構造を排除することによって、被覆組成物から形成される皮膜の感湿性及び白亜化のような特性を改善することができる。また、塩がアンモニア塩である場合に、組成からアンモニアをなくすことで、より低いワキ、ピンホール及び像深度(DOI)がより低くなるのは、アンモニアが焼き付け条件の間に揮発しないからである。またクリヤーコートとベースコートとの相溶性が高まり、それによりクレーター、にじみ及びブリードが最低限に抑えられる。
【0029】
第一のブロックのビニル芳香族性炭化水素モノマーは、 −メチルスチレン、ジフェニルエチレン、ジナフタレンエチレン及びそれらの混合物からなる群から選択される。更に、他の アルキルスチレンは、ビニル芳香族性炭化水素モノマー並びに他の同等の化合物、例えばこれらに制限されないが、シス−スチルベンもしくはトランス−スチルベン、ビニリデンビス(4−N,N−ジメチルアミノベンゼン)、ビニリデンビス(4−アミノベンゼン)又はビニリデンビス(4−ニトロベンゼン)として選択されうると解されるべきである。1種より多いビニル芳香族性炭化水素モノマーが第一のブロックにおいて含まれてよいが、対象発明の有利な実施態様は、1種のみのビニル芳香族性炭化水素モノマー、最も有利にはジフェニルエチレンを含むに過ぎない。コポリマーの第一のブロックにおける全モノマー組成の点で、ビニル芳香族性炭化水素モノマーは、第一のブロックにおける全モノマー組成の100質量部に対して1〜20質量部、有利には3〜7質量部を形成する。
【0030】
一定の実施態様では、第一のブロックのビニル芳香族性炭化水素モノマーは、大部分に含まれる他のエチレン系不飽和モノマーとは異なる一般式
【0031】
【化3】

の少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーとして定義されうる。
【0032】
これらの実施態様では、基R、R、R及びRはそれぞれ互いに無関係に、水素原子又は置換又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、シクロアルキルアリール基、アリールアルキル基又はアリールシクロアルキル基であるが、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは置換又は非置換のアリール基、アリールアルキル基又はアリールシクロアルキル基、特に置換又は非置換のアリール基である。
【0033】
好適なアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル又は2−エチルヘキシルである。
【0034】
好適なシクロアルキル基の例は、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0035】
好適なアルキルシクロアルキル基の例は、メチレンシクロヘキサン、エチレンシクロヘキサン又はプロパン−1,3−ジイルシクロヘキサンである。
【0036】
好適なシクロアルキルアルキル基の例は、2−、3−又は4−メチル−、−エチル−、−プロピル−又は−ブチルシクロヘキシ−1−イルである。
【0037】
好適なアリール基の例は、フェニル、ナフチル又はビフェニリル、有利にはフェニル及びナフチル、特にフェニルである。
【0038】
好適なアルキルアリール基の例は、ベンジル又はエチレン−又はプロパン−1,3−ジイルベンゼンである。
【0039】
好適なシクロアルキルアリール基の例は2−、3−又は4−フェニルシクロヘキシ−1−イルである。
【0040】
好適なアリールアルキル基の例は、2−、3−又は4−メチル−、−エチル−、−プロピル−又は−ブチルフェン−1−イルである。
【0041】
好適なアリールシクロアルキル基の例は、2−、3−又は4−シクロヘキシルフェン−1−イルである。
【0042】
前記の基R、R、R及びRは置換されていてよい。使用される置換基は、電子吸引性又は電子供与性の原子又は有機基を含んでよい。好適な置換基の例は、ハロゲン原子、特に塩素及びフッ素、ニトリル基、ニトロ基、部分ハロゲン化もしくは完全ハロゲン化、特に塩素化及び/又はフッ素化されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、シクロアルキルアリール基、アリールアルキル基及びアリールシクロアルキル基、例えば前記に例示されたもの、特にt−ブチル基、アリールオキシ基、アルキルオキシ基及びシクロアルコキシ基、殊にフェノキシ基、ナフトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブチルオキシ基もしくはシクロヘキシルオキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基及びシクロアルキルチオ基、殊にフェニルチオ基、ナフチルチオ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基もしくはシクロヘキシルチオ基、ヒドロキシル基及び/又は第一級、第二級及び/又は第三級アミノ基、殊にアミノ基、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−フェニルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジシクロヘキシルアミノ基、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ基及びN−エチル−N−メチルアミノ基である。
【0043】
これらの実施態様において特に好ましく使用されるエチレン系不飽和モノマーの例は、ジフェニルエチレン、ジナフタレンエチレン、シス−もしくはトランス−スチルベン、ビニリデンビス(4−N,N−ジメチルアミノ−ベンゼン)、ビニリデンビス(4−アミノベンゼン)及びビニリデンビス(4−ニトロベンゼン)である。
【0044】
また、これらの実施態様によれば、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーは別々に又は少なくとも2種のモノマーの混合物として使用することができる。
【0045】
最後に、ビニル芳香族性炭化水素モノマーを含む有利な実施態様でのように、大部分に含まれる他のエチレン系不飽和モノマーとは異なる有利なエチレン系不飽和モノマーは、選択的な実施態様ではジフェニルエチレンである。
【0046】
開始剤、また公知の重合促進剤を大部分のエチレン系不飽和モノマーとビニル芳香族性炭化水素モノマーに添加して、水性コポリマーの第一のブロックを形成させる。開始剤はラジカル重合工程を開始させる。開始剤は水溶性であり、これらは無機過硫酸塩、ジアルキル過酸化物、ヒドロペルオキシド、過エステル及びそれらの混合物からなる群から選択される。対象発明の有利な実施態様では、開始剤は、過硫酸アンモニウム、つまり(NH、過硫酸カリウム、つまりK及び過硫酸ナトリウム、つまりNaからなる群から選択される無機過硫酸塩である。最も有利には、開始剤は過硫酸アンモニウムである。しかしながら、選択的な実施態様では、ラジカル重合開始剤は、ジアルキル過酸化物、例えばジ−t−ブチルペルオキシド又はジクミルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド又はt−ブチルヒドロペルオキシド又は過エステル、例えばt−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルピバレート、t−ブチルペル−3,4,5−トリメチルヘキサノエート又はt−ブチルペル−2−エチルヘキサノエートであってよい。
【0047】
開始剤とビニル芳香族性炭化水素モノマーとの質量比は、有利には1:3〜3:1である。比較的多量の開始剤を添加することが好ましいと解されるべきである。殊に、開始剤が、第一のブロックにおける全モノマー組成の100質量部に対して、0.5〜50質量部、より有利には1.0〜20質量部、更に有利には3〜10質量部の量で存在することが好ましい。第一のブロックの形成が完了した時点で、第一のブロックは20〜40質量%、有利には30〜35質量%の不揮発性物質含量を有する。更に、完成した第一のブロックは、質量平均分子量、つまりMw1000〜20000、有利には2000〜8000を有する。
【0048】
カーボネート官能基、修飾されてカルバメートになったカーボネート官能基及びヒドロキシル官能基の3種の有利な官能基の点では、大部分のエチレン系不飽和モノマーは、脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート、脂環式アクリレート、脂環式メタクリレート、アルキルアクリル酸及びこれらの混合物から選択され、前記化合物のそれぞれはアルキル基中に20個までの炭素原子を有する。
【0049】
殊に、脂肪族アクリレートは、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。アルキルアクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。ヒドロキシアルキルアクリレートの一般式はR−OC(O)C(H):CHであり、その式中、Rは1〜6個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基である。有利には、ヒドロキシアルキルアクリレートは、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。ヒドロキシアルキルアクリレートが選択されるのであれば、最も有利なヒドロキシアルキルアクリレートはヒドロキシエチルアクリレートである。
【0050】
殊に、脂肪族メタクリレートは、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。アルキルメタクリレートは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。ヒドロキシアルキルメタクリレートの一般式はR−OC(O)C(CH):CHであり、その式中、Rは1〜6個の炭素原子を有し、かつ少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基である。有利には、ヒドロキシアルキルメタクリレートは、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。ヒドロキシアルキルメタクリレートが選択されるのであれば、最も有利なヒドロキシアルキルメタクリレートはヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0051】
脂環式アクリレートは、シクロヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。脂環式メタクリレートは、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。もちろん、第一のブロックの官能基がカーボネート官能基又はカルバメート官能基のいずれかであれば、少なくとも1種のカーボネート修飾されたグリシジルアクリレート又はカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートは、必要な官能基が提供されるように選択されることが必要である。
【0052】
次いで、少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーを有する第二のブロックは、以下に詳細に記載されるが、これは第一のブロックと重合させて、水性コポリマーが得られる。第一のブロックと第二のブロックを構成する1種以上のモノマーの間の重合工程は、1〜8時間、有利には5〜6時間にわたり、50℃〜100℃、より有利には70℃〜90℃の温度で実施される。第一のブロックを形成するための重合工程でのように、この“重合工程”を実施するのに必要な時間は、モノマー成分の添加に必要な時間と、モノマーの添加が生じ得ない任意の保持時間又は冷却時間とを含むと解されるべきである。また、この重合工程のために、有利には追加的なラジカル開始剤は必要ない。その代わりに、この重合工程は、有利にはラジカルの自己形成によって開始される。また、この重合工程では、第一のブロックのビニル芳香族性炭化水素モノマー、有利な実施態様ではジフェニルエチレンが第二のブロックを構成する次に来る1種以上のモノマーの重合を調節する。これは、生長しているポリマー鎖からのジフェニルメチル基の切断と再結合によって制御される“リビング重合”の場合である。
【0053】
コポリマーの第二のブロックは以下に単一の非官能性のエチレン系不飽和モノマーの点で説明されているが、有利には、少なくとも一部が非官能性であり、有利な実施態様では更に以下に記載される物理特性を均衡する1種以上のエチレン性不飽和モノマーが存在する。いずれか個々に又は組み合わせて、その少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーは、被覆組成物の100質量部に対して20〜80質量部、30〜40質量部の量で存在する。更にその少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーは、アルキル基中に2〜20個の炭素原子を有し、かつ有利には架橋剤との反応に適した官能基を有さない化合物として定義される。対象発明の文脈では、架橋剤との反応に適した官能基を有さないという専門用語は、コポリマーの第二のブロックのために選択されるモノマーがカーボネート官能基、カルバメート官能基又はヒドロキシル官能基又は他の同等の官能基を含まないことを指すと意図される。かかる官能基が第二のブロックにおいて望ましい場合に、これらは、有利にはモノマーの全質量の20%未満に保たれる。
【0054】
有利な非官能性のエチレン系不飽和モノマーは、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。より有利には、非官能性のエチレン系不飽和モノマーは、スチレン、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。対象発明の最も有利な実施態様では、選択された3種の非官能性のエチレン系不飽和モノマー、特にスチレン、ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートが存在する。第二のブロックにおける非官能性のエチレン系不飽和モノマーとして適した他のモノマーは、例えばこれらに制限されないが、モノマーが架橋剤との反応に適した官能基を含まない(又は有利には20%未満に保たれる)限りは、前記の全てのモノマー、例えば脂肪族アクリレート及びメタクリレート(例えばメチルアクリレートなど)を含む。
【0055】
有利には、1種以上の非官能性のエチレン系不飽和モノマーは疎水性、すなわち水不溶性であり、かつコポリマーの第二のブロックの製造において、1種以上の非官能性のエチレン系不飽和モノマーを選択することで、被覆組成物と、WBBC、WBCC及び水性プライマー系で通常利用される他の成分との間の混和性が高まる。また1種以上の非官能性のエチレン系不飽和モノマーを選択すると、水性コポリマー、最終的にはWBBC、WBCC又は水性プライマー系のいずれかで利用される水性被覆組成物の硬化された皮膜についてMFFTに貢献される。
【0056】
前記のようにまた、水性被覆組成物は水分散性架橋剤の反応生成物である。水性のコポリマーは水分散性架橋剤と組み合わせて、水性被覆組成物が製造される。一般的に、水分散性架橋剤は、水分散性のアミノプラスト、アクリルアミド基を有する水分散性ポリマー、メチロール基もしくはアルコキシメチル基を有する水分散性ポリマー、アミノ基を有する水溶性のC〜C20−アルキル化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される。存在すべき上記に列記された架橋剤の混合物については、1つより多い特定型の官能基が第一のブロック中に存在する場合に理想的である。つまり1種より多い架橋剤も対象発明の範囲内であることを意図する。架橋剤は、被覆組成物の100質量部に対して0.1〜15質量部、有利には2〜6質量部の量で存在する。しかしながら、選択される特定の水分散性架橋剤は、有利には第一のブロック中に存在する1種以上の官能基型によって規定される。
【0057】
コポリマーの第一のブロックにおける官能基がカーボネート官能基である実施態様では、水分散性架橋剤は更に、カーボネート官能基と反応性のアミノ基、つまりNHを有する水溶性のC〜C20−アルキル化合物として定義される。水溶性とは、1種以上の架橋剤約25gがそれぞれ100mlの水に溶解できることを示すことを意図する。水性コポリマーを架橋剤と組み合わせて、対象発明の被覆組成物が形成される。カーボネート官能基が存在する場合に、架橋剤は有利には廉価な低分子量のジアミン、トリアミン又は他のポリアミンである。殊に、少なくとも1つのアミノ官能基を有する水溶性のC〜C20−アルキル化合物は、例えばこれらに制限されないが、ヘキサメチレンジアミン、トリアミノノナン及びそれらの混合物である。カーボネート官能基を有する最も有利な架橋剤は3つのアミノ官能基を有するトリアミノノナンである。説明の目的のために、トリアミノノナンは通常の化学名であり、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミンは承認された略称化学名である。
【0058】
架橋剤を添加してコポリマーにした後に、架橋剤のアミノ官能基はコポリマーの第一のブロックにおけるカーボネート官能基と反応する。有利な実施態様の点では、コポリマーの第一のブロックは、モノマー成分として、以下の化学的表現に開示されるカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートを含む。
【0059】
【化4】

【0060】
有利な実施態様のカーボネート修飾されたグリシジルメタクリレートの前記の化学的表現に図示されるように、トリアミノノナンのアミノ官能基、つまりNHは(1)又は(2)のいずれかと反応して開環し、第一級又は第二級のいずれかのウレタン(−NH−CO−O−)架橋をもたらす。対象の発明の被覆組成物に確立される得られた第一級及び第二級のウレタン架橋をぞれぞれ以下の化学的表現で示す。
【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
前記のいずれかのウレタン架橋を成立する得られたカーボネート−アミン架橋は環境的酸腐蝕に対する耐性について理想的である。
【0064】
コポリマーの第一のブロックにおける官能基がカルバメート官能基である実施態様では、水分散性架橋剤は更に、カルバメート官能基と反応性の水分散性アミノプラストとして定義される。アミノプラストは水分散性である。対象発明の全ての成分について、水分散性とは、成分を水中に混合して、成分と水の均質混合物を2成分の相分離なく生成することを示すと解されるべきである。架橋剤の関連では、架橋剤を水中に混合して、架橋剤と水との均質混合物を2成分の相分離なく生成することができる。水性コポリマーを架橋剤と組み合わせて、対象発明の被覆組成物が形成される。殊に、少量の、つまり全被覆組成物の100質量部に対して0.1〜5質量部のアニオン系界面活性剤をコポリマーと架橋剤と一緒に添加して、架橋剤の水分散性を保証することができる。有利にはスルホネート系界面活性剤がアニオン系界面活性剤として選択される。
【0065】
この実施態様では、コポリマーの第一のブロックにおける官能基はカルバメート官能基であるが、架橋剤は、水分散性アミノプラスト、アクリルアミド基を有する水分散性ポリマー及びメチロール基又はアルコキシメチル基を有する水分散性ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。水分散性アミノプラストは、例えば尿素樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂であると解されるべきである。有利な実施態様のメラミンホルムアルデヒド樹脂は、メチロール基、つまりCHOH基、アルコキシメチル基又はその両者のいずれかを含む。アルコキシメチル基は、一般式CHORで示され、その式中、Rが1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖である基である。当業者によって理解されるように、メチロール基及びアルコキシメチル基はカルバメート官能基と反応性である。
【0066】
可能な架橋剤は、例えば制限されないが、モノマー及びポリマーのメラミンホルムアルデヒド樹脂、例えば部分アルキル化及び完全アルキル化メラミンの両者、例えばメチル化メラミン、ブチル化メラミン及びメチル化/ブチル化メラミンである。尿素樹脂である他の架橋剤は、例えばメチロール尿素、例えば尿素ホルムアルデヒド樹脂、及びアルコキシ尿素、例えばブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂である。
【0067】
対象発明の有利な実施態様は、例えばヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)である。HMMMはMonsanto社からResimeneアミノ架橋剤樹脂として市販されている。HMMMを以下の化学的表現で示す。
【0068】
【化7】

【0069】
架橋剤を添加してコポリマーにした後に、HMMMのアルコキシメチル基、特にCHOCH基は、コポリマーの第一のブロックにおけるカルバメート官能基と反応して、イソシアネートを使用せずにウレタン(−NH−CO−O−)架橋が得られる。コポリマーと架橋剤との間のウレタン架橋はカルバメート−メラミン反応によるものであり、それは環境的酸腐蝕に対する耐性について理想的である。
【0070】
コポリマーの第一のブロックにおける官能基がヒドロキシル官能基である実施態様では、水分散性架橋剤は、官能基がカルバメート官能基である実施態様について上記されたように定義される。つまり、この実施態様では、水分散性架橋剤は更に、ヒドロキシル官能基と反応性の水分散性アミノプラストとして定義される。水性コポリマーを架橋剤と組み合わせて、対象発明の被覆組成物が形成される。殊に、少量の、つまり全被覆組成物の100質量部に対して0.1〜5質量部のアニオン系界面活性剤をコポリマーと架橋剤と一緒に添加して、架橋剤の水分散性を保証することができる。有利にはスルホネート系界面活性剤がアニオン系界面活性剤として選択される。
【0071】
この実施態様では、コポリマーの第一のブロックにおける官能基はヒドロキシル官能基であるが、架橋剤は、水分散性アミノプラスト、アクリルアミド基を有する水分散性ポリマー及びメチロール基又はアルコキシメチル基を有する水分散性ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。水分散性アミノプラストは、例えば尿素樹脂及びメラミンホルムアルデヒド樹脂であると解されるべきである。有利な実施態様のメラミンホルムアルデヒド樹脂は、メチロール基、つまりCHOH基、アルコキシメチル基又はその両者のいずれかを含む。アルコキシ基は、一般式−CHORで示され、その式中、Rが1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖である基である。当業者によって理解されるように、メチロール基及びアルコキシメチル基はヒドロキシル官能基と反応性である。
【0072】
可能な架橋剤は、例えば制限されないが、モノマー及びポリマーのメラミンホルムアルデヒド樹脂、例えば部分アルキル化及び完全アルキル化メラミンの両者、例えばメチル化メラミン、ブチル化メラミン及びメチル化/ブチル化メラミンである。尿素樹脂である他の架橋剤は、例えばメチロール尿素、例えば尿素ホルムアルデヒド樹脂、及びアルコキシ尿素、例えばブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂である。対象発明の有利な実施態様は、例えばヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM)である。
【0073】
架橋剤を添加してコポリマーにした後に、HMMMのアルコキシメチル基、特にCHOCH基の−OCHはコポリマーの第一のブロックにおけるヒドロキシル官能基の水素原子と反応して、それによりメタノールを形成する。その架橋はO−CH−Oエーテル架橋を形成する。架橋剤の量は、樹脂が既に非常に高分子量なので一般に少量である。架橋された樹脂が環境的腐蝕に対して高い耐性を示すことが望ましい。
【0074】
第三のブロックがコポリマーにおいて存在するのであれば、その第三のブロックは官能性ブロックであることが好ましい。官能性ブロックとしては、第三のブロックはまた、例えば官能基を導入するモノマー、例えばヒドロキシル官能基を導入するための2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。かかる一実施態様では、コポリマーの第三のブロックはまた架橋剤との反応に関与する。もちろん、第三のブロックはまた非官能性のブロックであってもよいが、対象発明の範囲を制限するものではない。
【0075】
全体的に、コポリマーは、質量平均分子量、つまりMw5000〜5000000を有する。更に、対象発明の被覆組成物は非揮発性物質含量20〜80質量%、有利には30〜60質量%を有し、かつ平均体積粒度は200nm以下である。
【0076】
前記のように、対象発明の水性被覆組成物を使用して、水性ベースコート系、水性クリヤーコート系及び水性プライマー系で硬化された皮膜を形成することができる。しかしながら、説明を目的としてだけで、対象とする発明は、水性プライマー系で硬化された皮膜の点で説明される。対象発明の水性被覆組成物の硬化された皮膜は、水性被覆組成物を基体に適用することによって製造される。基体は、既に適用された他の被覆、例えば電着被覆を有してもよい。水性被覆組成物を基体上に、エアスプレー塗装又はベル塗装及び他の同等の方法によって噴霧してよい。基体に適用したら、その被覆組成物を硬化させて、硬化された皮膜が形成される。架橋は硬化工程前に行われるが、第一のブロックの官能基と架橋剤とは硬化工程の間に完全に反応して、ウレタン架橋を含む水性被覆組成物の硬化された皮膜を形成する。有利には、第一のブロックの官能基と架橋剤との間の反応は、100℃〜175℃、より有利には110℃〜130℃の温度で20〜30分間行われる。以下に積層塗料系に関して説明するように、着色ベースコート組成物及びクリヤーコート組成物は、有利には水性プライマー系として機能する水性被覆組成物の硬化前に適用されて、硬化された皮膜が形成される。
【0077】
また対象発明は、水性被覆組成物を利用した積層塗料系を含む。積層塗料系は基体にウェット−オン−ウェット−オン−ウェット法で適用される。殊に、第一の層は基体上に適用される。第一の層は、水性被覆組成物に関して上述した、水分散性架橋剤と水性コポリマーとの反応生成物である。対象発明のこの実施態様では、第一の層は水性プライマー系としてはたらき、かつ有利には基体に適用された電着塗料を既に有する基体に適用される。
【0078】
第一の層と相溶性の着色ベースコート組成物を含む第二の層を次いで第一の層上に適用する。第一の層、すなわち対象発明の水性被覆組成物と相溶性の着色ベースコート組成物の例は、コードE55NW038、E172KE170及びE174YE245である。E55NW038は、Autumn Wood Metallic溶剤性ベースコートである。E172KE170はLow Gloss Black溶剤性ベースコートであり、かつE174YE245はCleveland Yellow水性ベースコートであり、これらは全てBASF Corporation社(ミシガン州サウスフィールド在)から市販されている。第二の層は、第一の層がウェットな状態で第一の層に適用される。つまり、第二の層は第一の層を硬化させずに第一の層に適用される。しかしながら、好適なフラッシュ期間、あるいは更に僅かに高められた温度での予備硬化を第二の層の適用前に導入してよいと解されるべきである。第一の層と相溶性の着色ベースコート組成物は、例えばこれらに制限されないが、水性ベースコート系及び溶剤性ベースコート系、例えばポリエステル系、アクリル系、エポキシ系及びポリウレタン系の溶剤性ベースコート系である。
【0079】
第二の層と相溶性のクリヤーコート組成物を含む第三の層を次いで第二の層上に適用する。第二の層、すなわち着色ベースコート組成物と相溶性のクリヤーコート組成物の例は、コードE126CD020、E04CE002、E176CD051である。E126CD020はStainguard6溶剤性クリヤーコートであり、E04CE002はHigh−Solids溶剤性クリヤーコートであり、かつE176CD051はTinted Low Bake溶剤性クリヤーコートであり、これらは全てBASF Corporation社(ミシガン州サウスフィールド在)から市販されている。第三の層は、第二の層がウェットな状態で第二の層に適用される。つまり、第三の層は第二の層を硬化させずに第二の層に適用される。しかしながら、好適なフラッシュ期間、あるいは更に僅かに高められた温度での予備硬化を第三の層の適用前に導入してよいと解されるべきである。第二の層と相溶性のクリヤーコート組成物は、例えばこれらに制限されないが、水性クリヤーコート系及び溶剤性クリヤーコート系、例えばポリエステル系、アクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系及びシラン系の溶剤性クリヤーコート系である。
【0080】
前記の化学的表現の全ては単に二次元的な化学的表現であって、これらの化学的表現の構造は指示されるものとは異なってよいと解されるべきである。
【0081】
本発明を以下の実施例により更に説明する。実施例は単に例証するものであって、記載し請求した本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
実施例1
350.4gの蒸留水を反応器に添加し、そして80℃に加熱した。第一の混合物を、175.4gのグリシジルメタクリレートカーボネート、122.6gのメチルメタクリレート及び10gのα,α−ジフェニルエチレンを混合することによって製造した。第二の混合物を、64.1gの水酸化アンモニウム(25%溶液)、35gの蒸留水及び15gの過硫酸アンモニウムから製造した。時間ゼロで、第一の混合物を反応器に添加することを開始した。5分後に、第二の混合物の添加を開始した。生じる気泡形成を70℃への冷却によって制御し、そして反応混合物を希釈した(約50gの水と20gの25%の水酸化アンモニウムにより)。第一の混合物と第二の混合物の添加が約6:30時間で完了した後に、200gの水を添加した。該反応生成物は不揮発性成分含量が29.5%であった。理論的固体率31%。IRにより、全てのカーボネート基がカルバメート基に変換されたことを確認した。
【0083】
前記の反応生成物90gと蒸留水500gを反応器に添加し、そして90℃に加熱した。混合物を、138.8gのブチルメタクリレート、79gのスチレン、80gのヒドロキシエチルメタクリレート及び175gのエチルヘキシルメタクリレートから製造した。該モノマー混合物を反応器中に6:20〜7時間で計量供給した。その添加後に、200gの蒸留水を反応器に添加し、そして98℃で3時間以上保持した。反応の完了は、ガスクロマトグラフィー(GC)によってモノマーの量を確認し、そして固体率を測定することによって測定した。3時間後に、GCにより、95%以上のモノマーが変換されているが、樹脂は皮張りに抵抗性であり、溶液中にはより低い固体率がもたらされたことが示された。約20mlの過硫酸アンモニウム溶液(1%)を添加して、残りのモノマーを変換させた。
【0084】
該反応生成物を濾過し、そしてガラス板上に延ばした。クリヤーな硬質皮膜が室温で6分後に形成された。該皮膜にASTM D5402によるメチルエチルケトンでの二重摩耗試験(double rubs)を行った。皮膜は5回の摩耗にわたり持続することができ、これはその皮膜が耐久性を有さないことを示している。
【0085】
14gの反応生成物、10gの水及び1gのメラミン架橋剤を混合した。該組成物は帯青色の白色を有した。該組成物をガラス板上に延ばし、そして室温で空気乾燥させた。次いで皮膜を110℃(230゜F)で30分間硬化させた。その皮膜にメチルエチルケトンで二重摩耗試験を行った。その皮膜は100回以上の二重摩耗にわたり持続することができた。
【0086】
実施例2
350.4gの蒸留水を反応器に添加し、そして80℃に加熱した。第一の混合物を、15gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、122.6gのメチルメタクリレート、144gのn−ブチルメタクリレート及び10gのα,α−ジフェニルエチレンを混合させることによって製造した。第二の混合物を、35gの蒸留水と15gの過硫酸アンモニウムから製造した。時間ゼロで、第一の混合物を反応器に添加することを開始した。5分後に、第二の混合物の添加を開始した。第一の混合物と第二の混合物の添加が約6:30時間で完了した後に、300gの水を添加した。該反応生成物は不揮発性成分含量が39.5%であった。理論的固体率39.6%。
【0087】
前記の反応生成物90gと蒸留水500gを反応器に添加し、そして90℃に加熱した。混合物を、138.8gのブチルメタクリレート、79gのスチレン、80gのヒドロキシエチルメタクリレート及び175gのエチルヘキシルメタクリレートから製造した。該モノマー混合物を反応器中に6:20〜7時間で計量供給した。その添加後に、200gの蒸留水を反応器に添加し、そして90℃で3時間以上保持した。反応の完了は、ガスクロマトグラフィー(GC)によってモノマーの量を確認し、そして固体率を測定することによって測定した。3時間後に、GCにより、95%以上のモノマーが変換されているが、樹脂は皮張りに抵抗性であり、溶液中にはより低い固体率がもたらされたことが示された。約20mlの過硫酸アンモニウム溶液(1%)を添加して、残りのモノマーを変換させた。
【0088】
該反応生成物を濾過し、そしてガラス板上に延ばした。クリヤーな硬質皮膜が室温で6分後に形成された。その皮膜にメチルエチルケトンで二重摩耗試験(ASTM D5402)を行った。皮膜は5回の摩耗にわたり持続することができ、これはその皮膜が耐久性を有さないことを示している。
【0089】
14gの反応生成物、10gの水及び1gのメラミン架橋剤を混合した。該組成物は帯青色の白色を有した。該組成物をガラス板上に延ばし、そして室温で空気乾燥させた。次いで皮膜を110℃(230゜F)で30分間硬化させた。その皮膜にメチルエチルケトンで二重摩耗試験を行った。その皮膜は150回以上の二重摩耗にわたり持続することができた。
【0090】
本発明を説明として記載するが、使用される専門用語は単語の制限をするものではなく、説明を意図するものであると解されるべきである。明らかに、前記の開示を踏まえて、本発明の多くの改変又は変更をすることができ、そして本発明は特に記載がない限り行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性の水性被覆組成物であって、
A. 以下のiとii:
i. 以下のaとb:
a. 大部分のエチレン系不飽和モノマー、及び
b. 1種のビニル芳香族性炭化水素モノマー
の反応生成物を含み、その際、前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーが水分散性架橋剤と反応しうる少なくとも1つの官能基を含み、かつ前記の大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーがコポリマーに水分散性を与えうる量で存在する第一のブロックと、
ii. 少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーの反応生成物を含み、その際、該モノマーの少なくとも一部が非官能性である第二のブロックと
のラジカル重合生成物を含むコポリマー、並びに
B. 水分散性架橋剤
の反応生成物を含み、その際、該コポリマーは塩構造を含まない被覆組成物。
【請求項2】
コポリマーを水分散性にする官能基を有するモノマーが第一のブロックにおいて、固体に対して少なくとも約30質量%の量で存在する、請求項1記載の被覆組成物。
【請求項3】
コポリマーを水分散性にする官能基を有するモノマーが第一のブロックにおいて、固体に対して約40〜約80質量%の量で存在する、請求項1又は2記載の被覆組成物。
【請求項4】
架橋剤と反応しうる官能基が、カーボネート官能基、ヒドロキシル官能基及びそれらの混合物から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項5】
架橋剤と反応しうる官能基がカーボネート官能基である、請求項4記載の被覆組成物。
【請求項6】
架橋剤と反応しうるカーボネート官能基が修飾されて、カルバメート官能基になっている、請求項5記載の被覆組成物。
【請求項7】
架橋剤と反応しうる官能基がヒドロキシル官能基である、請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項8】
架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマーが第一のブロックにおいて、固体に対して少なくとも約30質量%の量で存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項9】
架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマーが第一のブロックにおいて、固体に対して約40〜約80質量%の量で存在する、請求項1から8までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項10】
大部分のエチレン系不飽和モノマーが、脂肪族アクリレート、脂肪族メタクリレート、脂環式アクリレート、脂環式メタクリレート、アルキルアクリル酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、その際、これらの化合物のそれぞれはアルキル基中に20個までの炭素原子を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項11】
脂肪族アクリレートが、アルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、かつ脂肪族メタクリレートが、アルキルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10記載の被覆組成物。
【請求項12】
アルキルアクリレートが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、かつアルキルメタクリレートが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の被覆組成物。
【請求項13】
ヒドロキシアルキルアクリレートの一般式がR−OC(O)C(H):CHであり、その式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及び少なくとも1つのヒドロキシル基であり、かつヒドロキシアルキルメタクリレートの一般式がR−OC(O)C(CH):CHであり、その式中、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及び少なくとも1つのヒドロキシル基である、請求項11記載の被覆組成物。
【請求項14】
ヒドロキシアルキルアクリレートが、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、かつヒドロキシアルキルメタクリレートが、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10又は13記載の被覆組成物。
【請求項15】
脂環式アクリレートが、シクロヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、かつ脂環式メタクリレートが、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、カーボネート修飾されたグリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10記載の被覆組成物。
【請求項16】
アルキルアクリル酸が、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10記載の被覆組成物。
【請求項17】
第一のブロックが、被覆組成物の100質量部に対して5〜15質量部の量で存在する、請求項1から16までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項18】
第二のブロックが、被覆組成物の100質量部に対して20〜80質量部の量で存在する、請求項1から17までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項19】
少なくとも1種のビニル芳香族性炭化水素モノマーが、 −メチルスチレン及び一般式
【化1】

[式中、これらの基はそれぞれ互いに無関係に水素原子又は置換又は非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、シクロアルキルアリール基、アリールアルキル基又はアリールシクロアルキル基であるが、但し、置換基R、R、R及びRの少なくとも2つは少なくとも1つの非置換のアリール基、非置換のアリールアルキル基、非置換のアリールシクロアルキル基、置換のアリール基、置換のアリールアルキル基又は置換のアリールシクロアルキル基である]のビニル芳香族性炭化水素モノマー及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から19までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項20】
第二のブロックにおける少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーが非官能性であり、かつアルキル基中に2〜20個の炭素原子を有するアルキル化合物を有し、かつ架橋剤と反応しうる官能基を有さない、請求項1から19までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項21】
第二のブロックにおける少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーが非官能性であり、かつスチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19記載の被覆組成物。
【請求項22】
第一のブロックが質量平均分子量1000〜20000を有する、請求項1から21までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項23】
コポリマーが、質量平均分子量5000〜5000000を有する、請求項1から22までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項24】
水性コポリマーが更に、第三のブロックの反応生成物を有し、その際、第三のブロックが大部分のうち架橋剤と反応しうる官能基を含む少なくとも1種のモノマーを有する、請求項1から23までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項25】
水分散性架橋剤が、水分散性アミノプラスト、アクリルアミド基を有する水分散性ポリマー、メチロール基もしくはアルコキシメチル基を有する水分散性ポリマー、アミノ官能基を有する水溶性のC〜C20−アルキル化合物及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から24までのいずれか1項記載の被覆組成物。
【請求項26】
積層塗料系であって、
A. 基体上に適用された第一の層、その際、該第一の層は請求項1から25までのいずれか1項記載の被覆組成物から製造される被膜である;
B. 第一の層上に適用された第二の層、その際、該第二の層は、第一の層と相溶性の着色ベースコート組成物を含有する;及び
C. 第二の層上に適用された第三の層、その際、該第三の層は第二の層と相溶性のクリヤーコートを含有する
を含む積層塗料系。
【請求項27】
請求項1から25までのいずれか1項記載の硬化性の水性被覆組成物の製造方法において、
A. 以下のaとb:
a. 大部分のビニル芳香族性炭化水素モノマー、及び
b. 1種のビニル芳香族モノマー
を重合させることでコポリマーの第一のブロックを形成させる、
その際、大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーが架橋剤と反応しうる1つの官能基を有し、かつ大部分のエチレン系不飽和モノマーの少なくとも1種のモノマーが、コポリマーに水分散性を与えうる量で存在する;
B. 少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーを含み、その少なくとも一部が非官能性である第二のブロックと第一のブロックとを重合させて、水性コポリマーを得る;及び
C. 該水性コポリマーと水分散性架橋剤とを合して、水性被覆組成物を製造する;
を含み、その際、該組成物には該コポリマーを水溶性にする中和剤を添加しない方法。
【請求項28】
A. 請求項1から25までのいずれか1項記載の水性被覆組成物を基体に適用する、及び
B. 該水性被覆組成物を硬化させて、硬化された皮膜を形成させる
ことを含む方法。

【公表番号】特表2006−526665(P2006−526665A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500483(P2005−500483)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013985
【国際公開番号】WO2004/108843
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】