説明

高分子電解質用組成物および高分子電解質ならびに電気二重層キャパシタおよび非水電解質二次電池

下記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)とを含む高分子電解質用組成物を用いることで、イオン性液体の優れた特性を損なうことなく高分子化させることができ、安全性および導電性に優れ、しかも電位窓の広い電解質を得ることができる。


〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、高分子電解質用組成物および高分子電解質ならびにこの高分子電解質を用いた電気二重層キャパシタおよび非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
従来から、電気二重層キャパシタや非水電解質二次電池等の電気化学デバイスの電解質としては、固体の電解質塩を非水系溶媒に溶解させた電解質や、これをポリマーで固体化した固体電解質等が用いられてきている。
液体電解質は、非水電解液が揮発し易く引火性を有する上、漏液が発生する虞もあり、長期間の信頼性に欠けるという欠点を有している。一方、固体電解質は、このような液体電解質の有する欠点が改善され、製造工程の簡略化を図ることができるとともに、デバイス自身の薄型化、小型化および軽量化を図ることができるという利点を有するものの、この固体電解質とともに用いられる非水系溶媒に対する電解質塩の溶解性が十分であると言えず、その添加量には限界がある。その結果、電解質のイオン伝導度が低くなるとともに、電気二重層キャパシタや、非水電解質二次電池の容量も低くなるという問題がある。また電解質塩の溶解性が低いことから、低温時に電解質塩が析出しやすいため、電気二重層キャパシタ等の低温特性にも影響を与えるという問題がある。
この問題を解決すべく、電解質塩としてイオン性液体を用いた電解質が種々検討されている。常温で液体であるイオン性液体は、▲1▼蒸気圧がない、▲2▼耐熱性が高く液体温度範囲が広い、▲3▼不燃性である、▲4▼化学的に安定である、▲5▼イオン導電性が高い、▲6▼分解電圧が高い、▲7▼大気中での取り扱いが可能である、等の特徴を有し、近年その有用性が広く認識され始めている。
これらの特徴を生かし、触媒反応用溶媒等の有機合成用溶媒、物質の分離や回収を目指した、安定性が高く、かつ、揮発性のないリサイクル可能なグリーンソルベント、電気化学系デバイスに用いる新しい電解質等の種々の用途にイオン性液体を用いる試みがなされている。
これらの用途の中でも、特に、電気二重層キャパシタまたは非水電解質二次電池の電解質としてイオン性液体を使用する検討が、急速に進んでいる。
しかしながら、液体である以上、液体電解質が有する漏液等の問題が起こる可能性があり、より高い安全性への要望に応えるべく、最近では、イオン性液体を固体化した固体電解質も検討されてきている。
例えば、特許文献1(特開2002−3478号公報)では、ポリマーをイミダゾリウム塩からなるイオン性液体に溶解させて得られるイオン性ゲルが報告され、特許文献2(特開平7−118480号公報)では、アルキル四級アンモニウム塩構造を有するポリマーを含窒素複素環式四級アンモニウム塩からなるイオン性液体に溶解させて得られる固体高分子電解質が報告され、特許文献3(特開平10−83821号公報)では、イミダゾリウム誘導体とモノマー類とを反応させて溶融塩モノマーを作製し、これを重合して得た固体高分子電解質が報告されている。
しかしながら、従来公知の方法により、イオン性液体にポリマーもしくはモノマー化合物を溶解させようとしても、両者の相溶性が非常に悪いため、溶解しない、または溶解しにくいことがわかっており、上記特許文献1〜3で報告されている固体高分子電解質も、依然としてこの問題を抱えている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、イオン性液体の有する優れた特性を損なうことなく高分子化させることができ、安全性および導電性に優れ、しかも電位窓の広い電解質を与える高分子電解質用組成物、およびこの組成物から得られる高分子電解質、ならびにこの高分子電解質を備えた電気二重層キャパシタおよび非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、重合性基を有する所定のアルキル4級アンモニウム塩がイオン性液体の性状を有し、これを用いることで、イオン性液体の優れた特性をそのまま有する第1の高分子電解質が得られること、およびアルキル4級アンモニウム塩の構造単位および反応性不飽和結合を有する構造単位を併せ持つ4級アンモニウム塩を電解質用組成物に添加することで、イオン性液体、特に所定の4級アンモニウム塩からなるイオン性液体と、反応性二重結合を有する化合物のようなその他の組成物構成成分の相溶性が高まり、この場合にも、イオン性液体の優れた特性をそのまま有し、しかも安全性および導電性に優れた第2の高分子電解質が得られることを見いだすとともに、これらの電解質を用いることで、非水電解質二次電池および電気二重層キャパシタの安全性および安定性等を向上し得ることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)とを含むことを特徴とする高分子電解質用組成物、

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕
2.前記イオン性液体(B)が、下記一般式(2)で示される4級アンモニウム塩であることを特徴とする1の高分子電解質用組成物、

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR、R、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
3.前記4級アンモニウム塩(A)および/または前記イオン性液体(B)が、下記式(3)で示される部分構造を有することを特徴とする1または2の高分子電解質用組成物、

〔式中、mは1〜8の整数を示す。〕
4.下記一般式(1)で示され、イオン性液体の性状を有する4級アンモニウム塩(A′)を含むことを特徴とする高分子電解質用組成物、

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕
5.前記4級アンモニウム塩(A′)が、下記式(3)で示される部分構造を有することを特徴とする4の高分子電解質用組成物、

6.前記Xが、BF、PF、(CFSO、CFSO、およびCFCOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1〜5のいずれかの高分子電解質用組成物、
7.反応性二重結合を有する化合物(C)を含むことを特徴とする1〜6のいずれかの高分子電解質用組成物、
8.イオン導電性塩(D)を含むことを特徴とする1〜7のいずれかの高分子電解質用組成物、
9.直鎖または分岐の線状高分子化合物(E)を含むことを特徴とする1〜8のいずれかの高分子電解質用組成物、
10.1〜9のいずれかの高分子電解質用組成物を反応させて得られることを特徴とする高分子電解質、
11.一対の分極性電極と、これら電極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された電気二重層キャパシタであって、前記電解質が、10の高分子電解質であることを特徴とする電気二重層キャパシタ、
12.リチウム含有複合酸化物を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質材料または金属リチウムを含む負極と、これら正負極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された非水電解質二次電池であって、前記電解質が、10の高分子電解質であることを特徴とする非水電解質二次電池
を提供する。
本発明の第1の高分子電解質用組成物によれば、アルキル4級アンモニウム塩の構造単位および反応性不飽和結合を有する構造単位を併せ持つ4級アンモニウム塩(A)を含んでいるから、4級アンモニウム塩からなるイオン性液体(B)と組成物構成成分との相溶性を向上させることができる。また、本発明の第2の高分子電解質用組成物によれば、イオン性液体の性状を有する4級アンモニウム塩(A′)を含んでいるから、広い電位窓を有する等のイオン性液体の優れた特性をそのまま有し、しかも安全性および導電性に優れた高分子電解質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
[高分子電解質用組成物]
本発明に係る第1の高分子電解質用組成物は、下記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)とを含むものである。この場合、4級アンモニウム塩(A)は、それ自体が固体状を示すものでも、液体状(イオン性液体)を示すものでもよい。
また、本発明に係る第2の高分子電解質用組成物は、下記一般式(1)で示され、それ自身がイオン性液体の性状を示す4級アンモニウム塩(A′)を含むものである。

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕
上記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)および(A′)において、炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられるが、後述のイオン性液体と類似の構造を持たせて、相溶性を高めることを考慮すると、R〜Rの少なくとも1つはメチル基、エチル基またはプロピル基、特に、メチル基またはエチル基であることが好ましい、なお、これらのエチル基またはプロピル基がその他のアルキル基と環を形成していてもよい。
上記反応性不飽和結合を有する置換基としては、特に限定されるものではなく、反応性二重結合、反応性三重結合を有する種々の置換基を採用することができ、例えば、アクリル酸アルキル基,メタクリル酸アルキル基等のカルボニル基と共役可能な不飽和結合を有する基、ビニル基,アリル基,ホモアリル基等の二重結合を有するアルキル基、プロパルギル基、ホモプロパルギル基等の三重結合を有するアルキル基等を採用できる。
上記nは、1〜4の整数であるが、イオン性液体形成能を考慮すると、n=1または2が好ましく、さらにイオン性液体の物理的性状、電気化学的特性および原料の入手し易さを考慮すると、n=2がより好ましい。
上記mは、1〜8の整数であり、必要とする電解質組成物の性状により適宜選択することができる。例えば、4級アンモニウム塩をイオン性液体に成り易くするとともに、組成物の構成要素を減らしてその調製の簡便化を図る場合や、組成物およびこれから得られる高分子電解質に剛直性を付与する場合には、側鎖が短くなるようにm=1〜4、好ましくは1または2とすることが好適である。一方、組成物およびこれから得られる高分子電解質中においてイオンの移動を起こり易くして導電性を向上させる場合や、組成物およびこれから得られる高分子電解質に柔軟性を付与する場合には、側鎖が長くなるようにm=4〜8とすることが好適である。
また、R〜Rのいずれか2個の基が環を形成している化合物としては、アジリジン環,アゼチジン環,ピロリジン環,ピペリジン環等の脂環式化合物、ピリジン環,ピロール環,イミダゾール環,キノール環等の芳香族環状化合物などを有する4級アンモニウム塩等が挙げられる。
特に、後述するように下記部分構造を有するイオン性液体の物性が良好であり、このイオン性液体を使用した組成物において、相溶性を高めるという点から、上記反応性不飽和結合を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩(A)および(A′)として、下記式(3)の部分構造を有するものを用いることが好ましい。

〔式中、mは1〜8の整数を示す。〕
なお、イオン性液体の性状を示す4級アンモニウム塩(A′)は、50℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは15℃以下で液体の性状を示すものであることが望ましい。すなわち、非水電解質二次電池や電気二重層キャパシタは通常50℃から−10℃程度で使用されるため、この温度範囲で液体状態ではないイオン性液体を使用することに意味はない。また、より低い温度で液体状態であるほど非水電解質二次電池や電気二重層キャパシタの使用温度範囲が広がるので好ましい。
また、対アニオンであるXとしては、特に限定はなく、BF、PF、AsF、SbF、AlCl、HSO、ClO、CHSO、CFSO、CFCO、(CFSO、Cl、Br、I等のアニオンを用いることができるが、特に、BF、PF、ClO、CFSO、CFCO、(CSO、(CSO)(CFSO)N、および(CFSOから選ばれる少なくとも1種のアニオンを用いることが好ましい。4級アンモニウム塩(A′)の場合には、よりイオン性液体の性状になり易いという点から、(CSO、(CSO)(CFSO)N、(CFSOを用いることが好ましく、特に原料の入手し易さの面から、(CFSOを用いることが好ましい。
本発明において、好適に用いられる4級アンモニウム塩(A)の具体例としては、以下の化合物(4)〜(10)が挙げられる(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す)。なお、下記化合物(5)および化合物(7)〜(10)は、イオン性液体の性状を示す4級アンモニウム塩(A′)の具体例でもある。
本発明の4級アンモニウム塩(A)および(A′)の一般的な合成法は、例えば、次の通りである。まず、反応性不飽和結合を持つアルキル3級アンモニウム塩と、ハロゲン化アルキル等の必要なアニオン種を発生させる試薬とを反応させてアニオン交換反応を行い、アルキル4級アンモニウム塩の構造単位および反応性不飽和結合を有する構造単位を併せ持つ4級アンモニウム塩(A)または(A′)を得ることができる。

本発明におけるイオン性液体(B)としては、特に限定されるものではないが、より低い温度で液体状態を示し、かつ、広い電位窓を有しているという点から、下記一般式(2)で示される4級アンモニウム塩型のイオン性液体であることが好ましい。

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR、R、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
ここで、炭素数1〜5のアルキル基としては、上記4級アンモニウム塩(A)で挙げたものと、同様のものが挙げられるが、イオン性液体の物理的性状および電気化学的特性を考慮すると、R〜Rの少なくとも1つはメチル基、エチル基またはプロピル基、特に、メチル基またはエチル基であることが好ましい、なお、これらのエチル基またはプロピル基がその他のアルキル基と環を形成していてもよい。
また、R′−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシまたはエトキシメチル基、メトキシまたはエトキシエチル基、メトキシまたはエトキシプロピル基、メトキシまたはエトキシブチル基が挙げられる。上記nは1〜4の整数であるが、イオン性液体形成能を考慮するとnは1または2が好ましく、さらにイオン性液体の物理的性状および電気化学的特性を考慮すると、特に、n=2が好ましい。
なお、R〜Rのいずれか2個の基が環を形成している化合物としては、上記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)で挙げたものと、同様のものが挙げられる。
特に、置換基として、上記R′がメチル基であり、nが2のメトキシエチル基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩が好適である。
また、上記4級アンモニウム塩(A)と同様の部分構造(上記式(3)で示される部分構造)を有するものは、高導電性、低粘度、広い電位窓等の良好な物性を有することから、好適に用いることができ、特に、置換基として、メチル基、2つのエチル基、およびアルコキシエチル基を有する下記一般式(11)で示される4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。

〔式中、R′はメチル基またはエチル基を示し、Xは一価のアニオンを示す。また、Meはメチル基を、Etはエチル基を意味する。〕
上記一価のアニオンXとしては、特に限定されるものではなく、上記4級アンモニウム塩(A)で挙げたものと同様のものが挙げられるが、BF、PF、ClO、CFSO、CFCO、(CSO、(CSO)(CFSO)N、および(CFSOから選ばれる少なくとも1種のアニオンを用いることが好ましい。
本発明において、好適に用いられるイオン性液体(B)の具体例としては、以下の化合物(12)〜(24)が挙げられる(式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す)。

上記イオン性液体(B)も、先に説明したイオン性液体の性状を示す4級アンモニウム塩(A′)と同様の理由から、50℃以下で液体状態であり、好ましくは25℃以下、特に15℃以下で液体状態あることが好ましい。
なお、本発明の4級アンモニウム塩(A′)および上記4級アンモニウム塩構造を有するイオン性液体(B)は、従来からよく用いられているイミダゾリウムイオンを有するイオン性液体と比較してより低い温度で液体状態であるから、該イオン性液体を含む電解質を非水電解質二次電池や電気二重層キャパシタの電解質に用いることで、より低温特性に優れた二次電池および電気二重層キャパシタを得ることができる。
また、上記4級アンモニウム塩(A′)および4級アンモニウム塩構造を有するイオン性液体(B)は、従来公知のイミダゾリウムイオンを有するイオン性液体と比較して、広い電位窓を有しており、イオン性液体の充放電に伴う還元分解をより効果的に抑制することができるため、繰り返し充放電を行った際にも劣化しにくい電解質が得られ、その結果、安定性の高い二次電池および電気二重層キャパシタを得ることができる。
上記4級アンモニウム塩構造を有するイオン性液体(B)の一般的な合成法は、次の通りである。まず、3級アミン類と、アルキルハライドまたはジアルキル硫酸等とを混合し、必要に応じて加熱を行うことで4級アンモニウムハライド塩とする。なお、アルコキシエチルハライド、アルコキシメチルハライド等の反応性の低い化合物を用いる場合、オートクレーブ等を用いて加圧下で反応させることが好適である。
上述のようにして得られた4級アンモニウムハライド塩を、水等の水性媒体中に溶解し、ホウフッ化水素酸や、テトラフルオロリン酸等の必要とするアニオン種を発生させる試薬と反応させてアニオン交換反応を行い、4級アンモニウム塩を得ることができる。
具体例として、4級アンモニウムテトラフルオロボレートの合成法を挙げると、4級アンモニウムハライドを水に溶解させ、酸化銀を加えて塩交換を行い、4級アンモニウム水酸化物塩とした後、ホウフッ化水素酸と反応させて目的物を得ることができる。この方法は、4級アンモニウム水酸化物塩生成の際に、塩交換により生じるハロゲン化銀の除去が容易に行えるため、純度の高い4級アンモニウムテトラフルオロボレートを合成するのに有効である。
以上で説明した第1および第2の高分子電解質用組成物は、そのまま反応させて高分子化させて用いてもよく、これらにポリマーを加えて固体化させて用いてもよいが、さらに、これらの組成物に反応性二重結合を有する化合物(C)を添加してなる組成物を、反応、固体化させて高分子固体電解質として用いることが好ましい。
特に、上述した第1の高分子電解質用組成物に、ポリマーを加える等により固体化させる場合には、イオン性液体(B)のポリマーに対する溶解度が低く、溶解できない、または溶解できたとしてもその量が限られるといった問題が生じる可能性が高い。しかしながら、反応性二重結合を有する化合物(C)を加えた組成物を反応、高分子化させて固体化させる方法を用いることで、4級アンモニウム塩(A)およびイオン性液体(B)を、化合物(C)に充分溶解させた後で高分子化することができるため、イオン性液体(B)の特性を備えた高分子電解質を容易に得ることができる。
また、この場合に、4級アンモニウム塩(A)を添加しなければ、イオン性液体(B)と反応性二重結合を有する化合物(C)のようなモノマー類との相溶性が悪く、相分離を起こす、溶解しない、遊離する、および/またはゲルが不均一化するなどの問題が生じる可能性が高い。
このことから、4級アンモニウム塩(A)の構造としては、イオン性液体(B)と、反応性二重結合を有する化合物(C)との双方と類似の部分構造(置換基)、好ましくは同一の部分構造(置換基)を有していることが好ましい。このような4級アンモニウム塩(A)を用いることで、イオン性液体(B)と反応性二重結合を有する化合物(C)との相溶性がさらに高まり、イオン性液体(B)の優れた特性を有するとともに、透明なゲル状の高分子電解質を得ることができる。
また、反応性二重結合を有する化合物(C)を反応させて高分子化することで、得られる高分子電解質の形状保持性などの物理的強度を高めることができる。
特に、上記分子中に反応性二重結合を有する化合物中における反応性二重結合の数が2個以上であると、この化合物の反応により三次元網目構造が形成されるから、より一層得られる電解質の形状保持能力を高めることができ、好適である。
上記反応性二重結合を有する化合物(C)としては、特に限定されるものではなく、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(平均分子量200〜1200)等のアクリル酸またはメタクリル酸エステル、メタクリロイルイソシアネート、2−ヒドロキシメチルメタクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸等の分子中にアクリル酸基またはメタクリル酸基を1つ有する化合物が挙げられる。
反応性二重結合を2個以上有する化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール(平均分子量200〜1000)、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジメタクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジメタクリル酸ネオペンチルグリコール、ジメタクリル酸ポリプロピレングリコール(平均分子量400)、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス−[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(メタクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(メタクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジアクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ジアクリル酸ポリエチレングリコール(平均分子量200〜1000)、ジアクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ネオペンチルグリコール、ジアクリル酸ポリプロピレングリコール(平均分子量400)、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス−[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(アクリロキシエトキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス−[4−(アクリロキシエトキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、水溶性ウレタンジアクリレート、水溶性ウレタンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、水素添加ジシクロペンタジエンジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ポリエステルジメタクリレート等が好適に用いられる。
上記反応性二重結合を含有する化合物の中でも特に好ましい反応性モノマーとしては、下記一般式(25)で示されるポリオキシアルキレン成分を含有するジエステル化合物が挙げられ、これと下記一般式(26)で示されるポリオキシアルキレン成分を含有するモノエステル化合物、およびトリエステル化合物を組み合わせて用いることが推奨される。

(但し、式中、R〜R11は、水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基を示し、X≧1かつY≧0の条件を満足するものか、またはX≧0かつY≧1の条件を満足するものであり、好ましくはR〜R11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基である。)

(但し、式中、R12〜R14は、水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基を示し、A≧1かつB≧0の条件を満足するものか、またはA≧0かつB≧1の条件を満足するものであり、好ましくはR12〜R14は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基である。)
上記式(25)において、例えば、X=9、Y=0、R=R11=CHが好ましく用いられる。一方、上記式(26)において、例えばA=2または9、B=0、R12=R14=CHが好ましく用いられる。また、トリエステル化合物としては、トリメチロールプロパントリメタクリレートが好適である。
ここで、上記ポリオキシアルキレン成分を含有するジエステル化合物およびモノエステル化合物と、トリエステル化合物との組成比は、ポリオキシアルキレン成分の長さによって適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、モル比で、
〔ジエステル化合物/モノエステル化合物〕=0.1〜2、特に0.3〜1.5〔ジエステル化合物/トリエステル化合物〕=2〜15、特に3〜10
の範囲内が電解質の強度向上という点から見て好ましい。
上記ポリオキシアルキレン成分を含有するジエステル化合物およびポリオキシアルキレン成分を含有するモノエステル化合物は、上記4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)との混合物中で紫外線、電子線、X線、γ線、マイクロ波、高周波などを照射することにより、または混合物を加熱することにより、三次元架橋ネットワーク構造を形成する。
本発明の第1および第2の高分子電解質用組成物には、さらに、イオン導電性塩(D)を添加することもできる。
ここで、イオン導電性塩(D)としては、例えば、非水電解質二次電池等に用いられる公知の種々のリチウム塩を用いることができるが、汎用性、イオン性液体への溶解度および解離度等を考慮すると、特に、LiBF、LiPF、Li(CFSON、LiCFSOまたはLiCFCOを用いることが好ましい。
また、上記電解質組成物中におけるリチウム塩の含有量は、特に限定されるものではないが、通常、0.05〜3mol/L、好ましくは0.1〜2mol/Lである。リチウム塩の濃度が低すぎると、電池等のインピーダンスが高くなり、大電流での充放電ができなくなる虞があり、一方、高すぎると、液粘度が高くなり、電池等の製造が困難になる虞がある。
以上で説明した第1および第2の高分子電解質用組成物には、さらに直鎖または分岐の線状高分子化合物(E)を添加することもできる。
すなわち、上記反応性二重結合を有する化合物(C)として、上述した反応性二重結合を2個以上有するものを用い、これに加えて線状高分子化合物(E)を添加した場合には、反応性二重結合を2個以上有する化合物が架橋してなるポリマーの三次元網目構造に、この線状高分子化合物(E)の分子鎖が相互に絡みついた半相互侵入高分子網目(semi−Interpenetrating Polymer Network;(semi−IPN))構造を有する電解質が得られ、電解質の形状保持能力および強度を一層高めることができるとともに、接着性、イオン電導度をも高めることができる。
ここで、直鎖または分岐の線状高分子化合物(E)としては、線状高分子であれば特に限定されるものではないが、イオン性液体(B)との相溶性が高いものが好ましく、具体的には、ドナー型構造の高分子であるとともに、アモルファス領域を有し、ガラス転移点が低い極性高分子であることが好ましい。このような線状高分子化合物としては、例えば、(a)ヒドロキシアルキル多糖誘導体、(b)オキシアルキレン分岐型ポリビニルアルコール誘導体、(c)ポリグリシドール誘導体、(d)シアノ基置換一価炭化水素基含有ポリビニルアルコール誘導体、(e)熱可塑性ポリウレタン等を好適に用いることができる。
上記(a)ヒドロキシアルキル多糖類誘導体としては、▲1▼セルロース、デンプン、プルランなどの天然に産出される多糖類にエチレンオキシドを反応させることによって得られるヒドロキシエチル多糖類、▲2▼上記多糖類にプロピレンオキシドを反応させることによって得られるヒドロキシプロピル多糖類、▲3▼上記多糖類にグリシドールまたは3−クロロ−1,2−プロパンジオールを反応させることによって得られるジヒドロキシプロピル多糖類等が挙げられ、これらヒドロキシアルキル多糖類の水酸基の一部または全部がエステル結合もしくはエーテル結合を介した置換基で封鎖されたものであることが好ましい。
なお、上記ヒドロキシアルキル多糖類は、モル置換度が2〜30、好ましくは2〜20のものである。モル置換度が2より小さい場合、リチウム塩を溶解する能力が低すぎて使用に適さない可能性が高い。
上記(b)オキシアルキレン分岐型のポリビニルアルコール誘導体としては、分子中に下記一般式(27)で示されるポリビニルアルコール単位を有する平均重合度20以上の高分子化合物における上記ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全部が、平均モル置換度0.3以上のオキシアルキレン含有基で置換されてなる高分子化合物を好適に用いることができる。

(式中、nは20〜10,000であることが好ましい。)
この高分子化合物は、オキシアルキレン分率が高いために、多くの塩を溶解できる能力を有するとともに、分子中にイオンが移動するオキシアルキレン部分が多くなるので、イオンが移動し易くなる。その結果、高いイオン導電性を発現できる。また、上記高分子化合物は高い粘着性を備えているから、バインダー成分としての役割、正負極を強固に接着する機能を充分に発揮できる。
上記式(27)で示される高分子化合物としては、▲1▼ポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール等のオキシラン化合物とを反応させて得られる高分子化合物(ジヒドロキシプロピル化ポリエチレンビニルアルコール、プロピレンオキシド化ポリビニルアルコール等)、▲2▼ポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物と、水酸基との反応性を有する置換基を末端に有するポリオキシアルキレン化合物とを反応させて得られる高分子化合物等が挙げられる。
ここで、ポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物は、分子中にポリビニルアルコール単位を有する数平均重合度20以上、好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上の高分子化合物において、上記ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全部がオキシアルキレン含有基によって置換されたものである。この場合、数平均重合度の上限は、取り扱い性等を考慮すると、2,000以下、より好ましくは500以下、特に200以下であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物は、上記数平均重合度範囲を満たし、かつ、分子中のポリビニルアルコール単位の分率が98モル%以上のホモポリマーが最適であるが、これに限定されるものではなく、上記数平均重合度範囲を満たし、かつ、ポリビニルアルコール分率が好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上のポリビニルアルコール単位を有する高分子化合物、例えば、ポリビニルアルコールの水酸基の一部がホルマール化されたポリビニルホルマール、ポリビニルアルコールの水酸基の一部がアルキル化された変性ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンビニルアルコール)、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、その他の変性ポリビニルアルコール等を用いることができる。
この高分子化合物は、上記ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全部が平均モル置換度0.3以上のオキシアルキレン含有基(なお、このオキシアルキレン基は、その水素原子の一部が水酸基によって置換されていてもよい)で置換されているものであり、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上置換されているものである。
上記(c)ポリグリシドール誘導体は、下記式(28)で示される単位(以下、A単位という)と、下記式(29)で示される単位(以下、B単位という)とを有し、分子鎖の各末端が所定の置換基により封鎖されたものである。

ここで、上記ポリグリシドールは、グリシドールまたは3−クロロ−1,2−プロパンジオールを重合させることにより得ることができるが、一般的には、グリシドールを原料とし、塩基性触媒またはルイス酸触媒を用いて重合を行うことが好ましい。
上記ポリグリシドールは、分子中にA,B二つの単位を両者合わせて2個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは10個以上有するものである。この場合、上限は特に制限されないが、通常10,000個以下程度である。これら各単位の合計数は、必要とするポリグリシドールの流動性および粘性等を考慮して適宜設定すればよい。また、分子中のA単位とB単位との比率は、モル比でA:B=1/9〜9/1、好ましくは3/7〜7/3である。なお、A,B単位の出現には規則性はなく、任意の組み合わせが可能である。
さらに、上記ポリグリシドールにおけるゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)が好ましくは200〜730,000、より好ましくは200〜100,000、さらに好ましくは600〜20,000のものである。また、平均分子量比(Mw/Mn)が1.1〜20、より好ましくは1.1〜10である。
これら高分子化合物(a)〜(c)は、分子中の水酸基の一部または全部、好ましくは10モル%以上をハロゲン原子、炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基、R15CO−基(R15は炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基)、R15Si−基(R15は上記と同じ)、アミノ基、アルキルアミノ基およびリン原子を有する基から選ばれる1種または2種以上の一価の置換基により封鎖し、水酸基封鎖ポリマー誘導体とすることができる。
ここで、炭素数1〜10の非置換または置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、ビニル基等のアルケニル基、これらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基、水酸基、アミノ基等で置換したもの等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この場合、上記高分子化合物(a)〜(c)の水酸基を極性の高い置換基で封鎖すれば、高分子マトリックスの極性が高まる(誘電率が高まる)ため、低誘電率の高分子マトリックス中で起こり易い、解離したカチオンと対アニオンとの再結合による導電性の低下を防止することができ、また、難燃性、疎水性を有する置換基で封鎖すれば、上記高分子化合物に、疎水性、難燃性などの特性を付与することができる。
上記高分子化合物(a)〜(c)の誘電率を上げるためには、オキシアルキレン鎖を持つ高分子化合物(a)〜(c)と、水酸基反応性の化合物とを反応させることにより、この高分子化合物の水酸基を高極性の置換基で封鎖する。
このような高極性の置換基としては、特に制限されるものではないが、イオン性の置換基より中性の置換基の方が好ましく、例えば、炭素数1〜10の非置換または置換一価炭化水素基、R15CO−基(R15は上記と同じ)などが挙げられる。また、必要に応じてアミノ基、アルキルアミノ基などで封鎖することもできる。
一方、高分子化合物(a)〜(c)に疎水性、難燃性を付与する場合には、上記高分子化合物の水酸基をハロゲン原子、R15Si−基(R15は上記と同じ)、リン原子を有する基などで封鎖すればよい。
15Si−基としては、R15が炭素数1〜10(好ましくは1〜6)の上記と同様の非置換または置換一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはR15はアルキル基であり、トリアルキルシリル基、中でもトリメチルシリル基が好ましい。
また、上記置換基は、アミノ基、アルキルアミノ基、リン原子を有する基などであってもよい。
なお、上記置換基による末端封鎖率は10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であり、実質的に全ての末端を上記置換基にて封鎖する(封鎖率約100モル%)こともできる。
上記(d)シアノ基置換一価炭化水素基置換ポリビニルアルコール誘導体としては、上述の一般式(27)で示される分子中にポリビニルアルコール単位を有する平均重合度20以上の高分子化合物における上記ポリビニルアルコール単位中の水酸基の一部または全部が、シアノ基置換一価炭化水素基で置換されたものを好適に用いることができる。
この高分子化合物は、側鎖が比較的短いものであるため、電解質の粘度を低く抑えることができる。
このような高分子化合物としては、シアノエチル基、シアノベンジル基、シアノベンゾイル基等で水酸基の一部または全部が置換されたポリビニルアルコールが挙げられ、側鎖が短いという点を考慮すると、特にシアノエチルポリビニルアルコールが好適である。
なお、ポリビニルアルコールの水酸基をシアノ基置換一価炭化水素基で置換する手法としては、公知の種々の方法を採用できる。
上記(e)熱可塑性ポリウレタンとしては、▲1▼ポリオール化合物と、▲2▼ポリイソシアネート化合物と、必要に応じて▲3▼鎖伸長剤とを反応させてなる熱可塑性ポリウレタンを用いることが好ましい。
なお、熱可塑性ポリウレタンには、ウレタン結合を有するポリウレタン樹脂以外にも、ウレタン結合とウレア結合とを有するポリウレタンウレア樹脂も含まれる。
▲1▼ポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,ポリエステルポリエーテルポリオール,ポリエステルポリカーボネートポリオール,ポリカプロラクトンポリオール、またはこれらの混合物を用いることが好ましい。
このようなポリオール化合物の数平均分子量は1,000〜5,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜3,000である。ポリオール化合物の数平均分子量が小さすぎると、得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂フィルムの耐熱性、引張り伸び率などの物理特性が低下する場合がある。一方、大きすぎると、合成時の粘度が上昇し、得られる熱可塑性ポリウレタン系樹脂の製造安定性が低下する場合がある。なお、ここでいうポリオール化合物の数平均分子量は、いずれもJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量を意味する。
▲2▼ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート,4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート,p−フェニレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,水添化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネート類等が挙げられる。
▲3▼鎖伸長剤としては、イソシアネート基および反応性の活性水素原子を分子中に2個有し、かつ分子量が300以下である低分子量化合物を用いることが好ましい。
このような低分子量化合物としては、公知の種々の化合物を使用でき、例えば、エチレングリコール,プロピレングリコール,1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4−シクロヘキサンジオール,ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート等の芳香族ジオールまたは脂環式ジオール、ヒドラジン,エチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,キシリレンジアミン等のジアミン、アジピン酸ヒドラジド等のアミノアルコール等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組合わせて用いることができる。
なお、上記熱可塑性ポリウレタンにおいては、▲1▼ポリオール化合物100重量部に対して▲2▼ポリイソシアネート化合物を5〜200重量部、好ましくは20〜100重量部添加し、▲3▼鎖伸長剤を1〜200重量部、好ましくは5〜100重量部添加する。
本発明に係る高分子電解質は、上述した第1および第2の高分子電解質用組成物を重合反応等により高分子化または固体化(ゲル化)させて得られるものである。
すなわち、上記反応性不飽和結合を含有する置換基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩(A)およびイオン性液体(B)を含む組成物、または4級アンモニウム塩(A′)を含む組成物に紫外線、電子線、X線、γ線、マイクロ波、高周波などを照射することにより、または加熱することにより高分子化させてイオン性液体を含む高分子電解質を得ることができる。
また、反応性不飽和結合を含有する置換基を2つ以上有する4級アンモニウム塩(A)および(A′)を用いた場合、三次元網目構造を有する高分子電解質を得ることができ、このような三次元網目構造を形成させることで、形状保持性を高めた高分子電解質を得ることができる。
さらに、上記各成分に、分子中に反応性二重結合を有する化合物(C)を加え、上記と同様に紫外線等の照射または加熱を行うことで、三次元網目構造を有し、より物理的強度の高い高分子電解質を得ることができる。
この場合、反応性不飽和結合を含有する置換基を有する4級アンモニウム塩(A)または(A′)か、分子中に反応性二重結合を有する化合物(C)の少なくとも一方が、反応性不飽和(二重)結合を2個以上有する化合物を含んでいれば、三次元網目構造を有する高分子電解質を得ることができる。
さらに、このような4級アンモニウム塩(A)または(A′)、および化合物(C)の少なくとも一方が、反応性不飽和(二重)結合を2個以上有する化合物である場合、これを含む組成物に、さらに線状高分子化合物(E)を加え、上記と同様に紫外線等の照射または加熱等を行うことで、分子中に反応性不飽和(二重)結合を2個以上有する化合物を反応または重合させて生成した三次元網目構造と、線状高分子化合物の分子鎖とが相互に絡み合った三次元架橋ネットワーク(semi−IPN)構造を有する高分子電解質を得ることができ、このようなsemi−IPN構造を形成させることで、電解質の形状保持能力および強度を一層高めることができるとともに、接着性、イオン電導度をも一層高めることができる。
上記重合反応としては、ラジカル重合反応を行うことが好適であり、重合反応を行う場合は、通常、重合開始剤を添加する。
このような重合開始剤(触媒)としては、特に限定はなく、以下に示すような公知の種々の重合開始剤を用いることができる。
例えば、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルイソプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルケトン、ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等の光重合開始剤、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等の高温熱重合開始剤、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸塩、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等の熱重合開始剤、過酸化水素・第1鉄塩、過硫酸塩・酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド・第1鉄塩、過酸化ベンゾイル・ジメチルアニリン等の低温熱重合開始剤(レドックス開始剤)、過酸化物・有機金属アルキル、トリエチルホウ素、ジエチル亜鉛、酸素・有機金属アルキル等を用いることができる。
これらの重合開始剤は、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、その添加量は、上記高分子電解質用組成物100重量部に対して0.1〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲である。触媒の添加量が0.1重量部未満では重合速度が著しく低下する場合がある。一方、1重量部を超えると、反応開始点が多くなり、低分子の化合物が生成する可能性がある。
以上のように、本発明の第1の高分子電解質用組成物によれば、アルキル4級アンモニウム塩の構造単位および反応性不飽和結合を有する構造単位を併せ持つ4級アンモニウム塩(A)を含んでいるから、イオン性液体(B)と必要に応じて添加される反応性二重結合を有する化合物(C)等を含む組成物構成成分との相溶性を向上させることができる。また、本発明の第2の高分子電解質用組成物によれば、イオン性液体の性状を有する4級アンモニウム塩(A′)を含んでいる。したがって、これらを含む電解質用組成物を用いることで、広い電位窓を有する等のイオン性液体の優れた特性をそのまま有し、しかも安全性および導電性に優れた高分子電解質が得られ、その結果、非水電解質二次電池および電気二重層キャパシタの安全性および安定性等を向上できる。
[電気二重層キャパシタ]
本発明に係る電気二重層キャパシタは、一対の分極性電極と、これら分極性電極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された電気二重層キャパシタにおいて、電解質として、上述した高分子電解質を用いたものである。
ここで、分極性電極としては、炭素質材料とバインダーポリマーとを含んでなる分極性電極組成物を集電体上に塗布してなるものを用いることができる。
上記炭素質材料としては、特に限定されるものではなく、植物系の木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、化石燃料系の石炭、石油重質油、もしくはこれらを熱分解した石炭、または石油系ピッチ、タールピッチを紡糸した繊維、合成高分子、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、液晶高分子、プラスチック廃棄物、廃タイヤ等を原料とし、これらを炭化したもの、これらをさらに賦活化して製造した活性炭等が挙げられる。
なお、上記賦活処理の方法としては特に限定はなく、薬品賦活、水蒸気賦活法等の種々の方法を用いることができるが、KOHを用いた薬品賦活で得られる活性炭は、水蒸気賦活品と比べて容量が大きい傾向にあることから好ましい。
また、炭素質材料の形状としては、破砕、造粒、顆粒、繊維、フェルト、織物、シート状等各種の形状があるが、いずれも本発明に使用することができる。
さらに、上記炭素質材料には導電材を添加することもできる。導電材としては、炭素質材料に導電性を付与できるものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン,酸化ルテニウム,アルミニウム,ニッケル等の金属ファイバなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックの一種であるケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。
ここで、導電材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、10nm〜10μm、好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜40nmであり、特に、炭素質材料の平均粒径の1/5000〜1/2、特に1/1000〜1/10であることが好ましい。
また、その添加量も、特に限定されるものではないが、静電容量および導電性付与効果等を考慮すると、炭素質材料100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
次に、上記バインダーポリマーとしては、当該用途に使用できるポリマーであれば特に限定はないが、例えば、公知の種々のバインダーポリマーを使用することができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、フルオロオレフィン共重合体架橋ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリイミド、石油ピッチ、石炭ピッチ、フェノール樹脂等を用いることができる。
特に、バインダーポリマーとして、(I)下記式から求めた膨潤率が150〜800重量%の範囲である熱可塑性樹脂、(II)フッ素系高分子材料等を1種単独で、または(I),(II)の2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
また、上記(I)の熱可塑性樹脂は、下記式から求めた膨潤率が150〜800重量%の範囲であり、より好ましくは250〜500重量%、さらに好ましくは250〜400重量%である。

上記(I)のバインダーポリマーとしては、下記一般式(30)で表わされる単位を含む熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、上述した(e)熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。

(式中、rは3〜5、sは5以上の整数を示す。)
次に、上記(II)のバインダーポリマーであるフッ素系高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体〔P(VDF−HFP)〕、フッ化ビニリデンと塩化3フッ化エチレンとの共重合体〔P(VDF−CTFE)〕等が好ましく用いられる。これらの内でも、フッ化ビニリデンが50重量%以上、特に70重量%以上(上限値は97重量%程度である)であるものが好適である。
この場合、フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、特に限定はないが、500,000〜2,000,000が好ましく、より好ましくは500,000〜1,500,000である。重量平均分子量が小さすぎると物理的強度が著しく低下する場合がある。
これらのバインダーポリマーの添加量は、上記炭素質材料100重量部に対して、0.5〜20重量部、特に、1〜10重量部であることが好ましい。
なお、分極性電極組成物の調製法には、特に限定はなく、例えば、上記炭素質材料およびバインダーポリマーを溶液状に調製することもでき、またこの溶液に必要に応じて溶媒を添加して調製することもできる。
このようにして得られた分極性電極組成物を集電体上に塗布することにより、分極性電極が得られることになるが、塗布の方法は、特に限定されず、ドクターブレード、エアナイフ等の公知の塗布法を適宜採用すればよい。
この集電体を構成する正・負極としては、通常、電気二重層キャパシタに用いられるものを任意に選択して使用できるが、正極集電体としてアルミニウム箔または酸化アルミニウムを用いることが好ましく、一方、負極集電体として銅箔、ニッケル箔または表面が銅めっき膜もしくはニッケルめっき膜にて形成された金属箔を用いることが好ましい。
上記各集電体を構成する箔の形状としては、薄い箔状、平面に広がったシート状、孔が形成されたスタンパブルシート状等を採用できる。また、箔の厚さとしては、通常、1〜200μm程度であるが、電極全体に占める活性炭の密度および電極の強度等を考慮すると、8〜100μmが好ましく、特に8〜30μmがより好ましい。
なお、分極性電極は、分極性電極組成物を溶融混練した後、押出し、フィルム成形することにより形成することもできる。
さらに、上記活性炭には導電材を添加することもできる。導電材としては、活性炭に導電性を付与できるものであれば特に限定はなく、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケル等の金属ファイバなどが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カーボンブラックの一種であるケッチェンブラック、アセチレンブラックが好ましい。
ここで、導電材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、10nm〜10μm、好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜40nmであり、特に、上記活性炭の平均粒径の1/5000〜1/2、特に1/1000〜1/10であることが好ましい。
また、その添加量も、特に限定されるものではないが、静電容量および導電性付与効果等を考慮すると、上記活性炭100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
上記セパレータとしては、通常電気二重層キャパシタ用のセパレータとして用いられているものを使用することができる。例えば、ポリオレフィン不織布、PTFE多孔体フィルム、クラフト紙、レーヨン繊維・サイザル麻繊維混抄シート、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、セルロース系電解紙、レーヨン繊維からなる抄紙、セルロースとガラス繊維の混抄紙、またはこれらを組み合わせて複数層に構成したものなどを使用することができる。
本発明の電気二重層キャパシタは、上記のようにして得られる一対の分極性電極間にセパレータを介在させてなる電気二重層キャパシタ構造体を積層、折畳、または捲回させ、これを電池缶またはラミネートパック等の電池容器に収容した後、上記高分子電解質用組成物を充填し、電池缶であれば封缶することにより、一方、ラミネートパックであればヒートシールすることにより組み立て、さらに組成物を反応硬化させればよい。
このようにして得られる本発明の電気二重層キャパシタは、充放電効率、エネルギー密度、出力密度、寿命等の優れた特性を損なうことなく、高容量、高電流で作動でき、しかも、使用温度範囲が広く、漏液等のない安全性に優れたものである。
また、本発明の電気二重層キャパシタは、携帯電話、ノート型パソコンや携帯用端末等のメモリーバックアップ電源用途、携帯電話、携帯用音響機器等の電源、パソコン等の瞬時停電対策用電源、太陽光発電、風力発電等と組み合わせることによるロードレベリング電源等の種々の小電流用の蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、大電流で充放電可能な電気二重層キャパシタは、電気自動車、電動工具等の大電流を必要とする大電流蓄電デバイスとして好適に使用することができる。
[非水電解質二次電池]
本発明に係る二次電池は、リチウム含有複合酸化物を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質材料または金属リチウムを含む負極と、これらの正負極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された二次電池において、電解質として、上述した高分子電解質を用いたものである。
上記正極としては、正極集電体の表裏両面または片面に、バインダーポリマーと正極活物質とを主成分として含む正極用バインダー組成物を塗布してなるものを用いることができる。
なお、バインダーポリマーと正極活物質とを主成分として含む正極用バインダー組成物を溶融混練した後、押出し、フィルム成形することにより正極を形成することもできる。
上記バインダーポリマーとしては、当該用途に使用できるポリマーであれば特に限定はなく、例えば、上記電気二重層キャパシタで説明したバインダーポリマーを用いることができる。
上記正極集電体としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、タンタル、ニッケル等を用いることができる。これらの中でも、アルミニウム箔または酸化アルミニウム箔が性能と価格との両面から見て好ましい。この正極集電体は、箔状、エキスパンドメタル状、板状、発泡状、ウール状、ネット状等の三次元構造などの種々の形態のものを採用することができる。
本発明では、上記正極活物質として、リチウムイオン含有カルコゲン化合物(リチウム含有複合酸化物)が用いられる。
ここで、リチウムイオン含有カルコゲン化合物(リチウム含有複合酸化物)としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiMo、LiV、LiNiO、LiNi1−(但し、Mは、Co,Mn,Ti,Cr,V,Al,Sn,Pb,Znから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦x≦1.10、0.5≦y≦1.0)等が挙げられる。
なお、正極用バインダー組成物には、上述のバインダー樹脂および正極活物質以外にも、必要に応じて導電材を添加することができる。導電材としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
上記正極用バインダー組成物において、バインダーポリマー100重量部に対して正極活物質の添加量は1,000〜5,000重量部、好ましくは1,200〜3,500重量部であり、導電材の添加量は20〜500重量部、好ましくは50〜400重量部である。
一方、上記負極は、リチウム金属からなる負極、または負極集電体の表裏両面もしくは片面に、バインダーポリマーと負極活物質とを主成分として含む負極用バインダー組成物を塗布してなるものである。ここで、バインダーポリマーとしては、正極と同じものを用いることができる。
なお、バインダーポリマーと負極活物質とを主成分として含む負極用バインダー組成物を溶融混練した後、押出し、フィルム成形することにより負極を形成してもよい。
負極集電体としては、銅、ステンレス鋼、チタン、ニッケルなどが挙げられ、これらの中でも、銅箔または表面が銅メッキ膜にて被覆された金属箔が性能と価格との両面から見て好ましい。この集電体は、箔状、エキスパンドメタル状、板状、発泡状、ウール状、ネット状等の三次元構造などの種々の形態のものを採用することができる。
上記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素質材料を用いる。
この炭素質材料としては、難黒鉛化炭素系材料や黒鉛系材料等の炭素質材料を使用することができる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニートルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素質材料を使用することができる。
なお、負極用バインダー組成物にも、必要に応じて導電材を添加することができる。導電材としては、上述の正極用バインダーと同様のものが挙げられる。
上記負極用バインダー組成物において、バインダーポリマー100重量部に対して負極活物質の添加量は500〜1,700重量部、好ましくは700〜1,300重量部であり、導電材の添加量は0〜70重量部、好ましくは0〜40重量部である。
上記負極用バインダー組成物および正極用バインダー組成物は、通常、分散媒を加えてペースト状で用いられる。分散媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホアミド等の極性溶媒が挙げられる。この場合、分散媒の添加量は、正極用または負極用バインダー組成物100重量部に対して30〜300重量部程度である。
なお、正極および負極を薄膜化する方法としては、特に制限されないが、例えば、アプリケータロール等のローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード法、スピンコーティング、バーコーター等の手段を用いて、乾燥後における活物質層の厚さを10〜200μm、特に50〜150μmの均一な厚みに形成することが好ましい。
また、正負極間に介在されるセパレータとしては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、PTFE多孔体フィルム、クラフト紙、レーヨン繊維・サイザル麻繊維混抄シート、マニラ麻シート、ガラス繊維シート、セルロース系電解紙、レーヨン繊維からなる抄紙、セルロースとガラス繊維との混抄紙、またはこれらを組み合わせて複数層に構成したものなどを使用することができる。
本発明の二次電池は、上述した正極と負極との間にセパレータを介在させてなる電池構造体を、積層、折畳、または捲回させ、これを電池缶またはラミネートパック等の電池容器に収容した後、上記高分子電解質用組成物を充填し、電池缶であれば封缶することにより、一方、ラミネートパックであればヒートシールすることにより組み立て、さらに組成物を反応硬化させればよい。
このようにして得られる本発明の非水電解質二次電池は、充放電効率、エネルギー密度、出力密度、寿命等の優れた特性を損なうことなく、高容量、高電流で作動でき、しかも、使用温度範囲の広く、漏液等のない安全性に優れたものである。
また、本発明の非水電解質二次電池は、ビデオカメラ、ノート型パソコン、携帯電話、PHS等の携帯端末などの主電源、メモリのバックアップ電源用途をはじめとして、パソコン等の瞬時停電対策用電源、電気自動車またはハイブリッド自動車への応用、太陽電池と併用したソーラー発電エネルギー貯蔵システム等の様々な用途に好適に使用することができる。
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[合成例1] 化合物(6)の合成

メタクリル酸ジエチルアミノエチル(和光純薬工業(株)製)11.7gをテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)250mlに溶解し、氷冷しながらスターラーにて攪拌し、ヨウ化メチル(片山化学工業(株)製)4.71mlを少量ずつゆっくり添加した。30分後アイスバスを外し、室温にて一晩攪拌した。この反応溶液の溶媒を減圧留去し、得られた固形分をエタノール(和光純薬工業(株)製)−テトラヒドロフラン系で再結晶し、メタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルヨウ素塩18.17gを得た。
続いて、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)300mlにテトラフルオロホウ酸銀(東京化成工業(株)製)10.80gを氷冷下溶解し、スターラーで攪拌しながら、あらかじめクロロホルム50mlに溶解したメタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルヨウ素塩18.17gを少量ずつゆっくりと添加した。30分間攪拌後、反応溶液の溶媒を減圧濾過にて濾別し、得られた濾液をエバポレータと真空ポンプを使用して溶媒留去し、メタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルテトラフルオロボレート13.01gを得た。
[合成例2] 化合物(7)の合成

メタクリル酸ジエチルアミノエチル(和光純薬工業(株)製)11.7gをテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)250mlに溶解し、氷冷しながらスターラーにて攪拌し、ヨウ化メチル(片山化学工業(株)製)4.71mlを少量ずつゆっくり添加した。30分後アイスバスを外し、室温にて一晩攪拌した。この反応溶液の溶媒を減圧留去し、得られた固形分をエタノール(和光純薬工業(株)製)−テトラヒドロフラン系で再結晶し、メタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルヨウ素塩18.17gを得た。
続いて、メタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルヨウ素塩18.17gをアセトニトリル(関東化学(株)製)50mlに溶解した。これにトリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)15.93gを加え、これが完全に溶解した後、さらに30分間攪拌した。その後、アセトニトリルを減圧留去し、残留分にイオン交換水を適量加え、2層に分離した有機層を分液した。同様にイオン交換水で5回洗浄を行い、有機層中の不純物を取り除いた。洗浄後の有機層を、真空ポンプを使用して水分を除去し、メタクリル酸ジエチルメチルアミノエチルトリフルオロスルホン酸イミド20.71gを得た。
[合成例3] 化合物(10)の合成

79重量%水溶液に調整されたN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル((株)興人製)10.0gをイオン交換水50mlに溶解した。これにビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)を11.72g加え、60分間攪拌した。その後2層に分離した有機層を分液した。同様にイオン交換水を適量加え、有機層中の不純物を取り除いた。洗浄後の有機層を真空ポンプを使用して水分を除去し、アクリル酸トリメチルアミノエチルビストリフルオロスルホン酸イミド16.27gを得た。
[合成例4] 化合物(12)の合成

ジエチルアミン(関東化学(株)製)100mlと2−メトキシエチルクロライド(関東化学(株)製)85mlとを混合し、得られた混合溶液をオートクレーブ中に入れ、120℃で12時間反応させた。この時、内圧は、0.28MPa(2.9kgf/cm)であった。12時間後、析出した結晶と反応液との混合物に、水酸化ナトリウム(片山化学工業(株)製)40gを水200mlに溶解した水溶液200mlを加え、2層に分かれた有機層を分液ロートで分液した。さらに、テトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)250mlを加え抽出する操作を2回行った。分液した有機層をまとめ、飽和食塩水で洗浄した後、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製)を加えて乾燥し、減圧濾過した。得られた有機層の溶媒をロータリーエバポレーターを用いて留去し、残留分について常圧蒸留を行い、2−メトキシエチルジエチルアミンを21g得た。
得られた2−メトキシエチルジエチルアミン8.2gをテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)10mlに溶解し、氷冷下、ヨウ化メチル(和光純薬工業(株)製)4.0mlを加えた。30分後、アイスバスを外し、室温にて一晩撹拌した。この反応溶液の溶媒を減圧留去し、得られた固形分をエタノール(和光純薬工業(株)製)−テトラヒドロフラン系で再結晶し、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩を16g得た。
続いて、2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩15.0gと、テトラフルオロホウ酸銀(東京化成工業(株)製)10.7gを混合し、室温(25℃)で液体状の化合物(12)を11.5g得た。
[合成例5] 化合物(16)の合成

2−メトキシエチルジエチルメチルアンモニウムヨウ素塩10.0gをアセトニトリル(関東化学(株)製)50mLに溶解した。これにトリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)9.5gを加え、これが完全に溶解した後、さらに15分間撹拌した。
その後、アセトニトリルを減圧留去し、残留分に水を加え、2層に分離した有機層を分液し、水で5回洗浄し、有機層中の不純物を取り除いた。
洗浄後の有機層を真空ポンプにて減圧にし、水を充分に留去し、室温で液体状の化合物(16)を6.8g得た。
[合成例6] イミダゾリウム系イオン性液体の合成
トリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム(キシダ化学(株)製)5.74gを、クロロホルムとアセトニトリルとの1:1(体積比)混合溶媒30mlに添加して攪拌し、懸濁液を調製した後、この懸濁液に1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(東京化成工業(株)製)2.92gをクロロホルムとアセトニトリルとの1:1(体積比)混合溶媒30mlに溶解させた溶液を添加し、80分間攪拌した。生成した結晶を減圧濾過で除去し、濾液中の溶媒をエバポレータおよび真空ポンプで留去した。
得られた残留分4.85gをさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ワコーゲル C−200、和光純薬工業(株)製、溶出液:クロロホルムとメタノールとの1:1(体積比)混合溶媒)にて精製し、室温で液状のイミダゾリウム系イオン性液体3.06gを得た。
[合成例7] ポリビニルアルコール誘導体の合成
撹拌羽根を装着した反応容器にポリビニルアルコール(平均重合度500,ビニルアルコール分率=98%以上)3重量部と、1,4−ジオキサン20重量部と、アクリロニトリル14重量部とを仕込み、撹拌下で水酸化ナトリウム0.16重量部を水1重量部に溶解した水溶液を徐々に加え、25℃で10時間撹拌した。
次に、イオン交換樹脂(商品名;アンバーライト IRC−76,オルガノ(株)製)を用いて中和した。イオン交換樹脂を濾過した後、溶液に50重量部のアセトンを加えて不溶物を濾過した。アセトン溶液を透析膜チューブに入れ、流水で透析した。透析膜チューブ内に沈殿するポリマーを集めて、再びアセトンに溶解して濾過し、アセトンを蒸発させてシアノエチル化されたPVA誘導体を得た。
得られた誘導体は、赤外吸収スペクトルにおける水酸基の吸収は確認できず、水酸基が完全にシアノエチル基で封鎖されている(封鎖率100%)ことが確認できた。
[合成例8] 熱可塑性ポリウレタン樹脂(バインダーポリマー)の合成
攪拌機、温度計および冷却管を備えた反応器に、予め加熱脱水したポリエチレングリコール4000(PEG4000−S、三洋化成工業(株)製)60.20重量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート7.84重量部とを仕込み、窒素気流下、120℃で2時間攪拌、混合した後、1,4−ブタンジオール1.86重量部を加えて、同様に窒素気流下、120℃にて反応させた。反応が進行し、反応物がゴム状になった時点で反応を停止した。その後、反応物を反応器から取り出し、100℃で12時間加熱し、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収ピークが消滅したのを確認して加熱をやめ、固体状のポリウレタン樹脂を得た。
得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は1.05×10であった。このポリウレタン樹脂8重量部をN−メチル−2−ピロリドン92重量部に溶解することによって、ポリウレタン樹脂溶液を得た。
[1]高分子電解質用組成物および高分子電解質の作製
【実施例1】
合成例1で得られた4級アンモニウム塩(A)としての化合物(6)30重量部を、合成例4で得られたイオン性液体(B)としての化合物(12)70重量部に混合溶解した。そこにポリエチレングリコールジメタクリレート(オキシエチレンユニット数=9)100重量部と、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(オキシエチレンユニット数=2)70.15重量部と、トリメチロールプロパントリメタクリレート8.41重量部とを混合したメタクリレートモノマー混合物(反応性二重結合を有する化合物(C))を1重量部添加した。攪拌後、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルを0.5重量部添加して、高分子電解質用組成物を得た。得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの瓶に流し込み、55℃で4時間加熱して反応させ、高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例2】
4級アンモニウム塩(A)およびイオン性液体(B)として、それぞれ合成例2で得られた化合物(7)、および合成例5で得られた化合物(16)を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例3】
イオン性液体(B)として、合成例5で得られた化合物(16)を用いた以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例4】
イオン性液体として、合成例6で得られたイミダゾリウム系イオン性液体を用いた以外は、実施例1と同様にして高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例5】
メタクリレートモノマー混合物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例6】
合成例1で得られた化合物(6)30重量部を、合成例4で得られた化合物(12)70重量部に混合溶解した。そこに実施例1で用いたメタクリレートモノマー混合物を1重量部、合成例7で得られた線状高分子化合物(E)としてのポリビニルアルコール誘導体0.2重量部を添加した。攪拌溶解後、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルを0.5重量部添加して、高分子電解質用組成物を得て、実施例1と同様にして、高分子電解質を作製した。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例7】
合成例2で得られた4級アンモニウム塩(A′)としての化合物(7)80重量部に、NKオリゴUA−W2(新中村化学工業(株)製)20重量部と、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.5重量部とを添加して、高分子電解質用組成物を得た。
得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの瓶に流し込み55℃で0.5時間加熱して反応させ、高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例8】
合成例2で得られた4級アンモニウム塩(A′)としての化合物(7)100重量部に、2,2′−ジメトキシフェニルアセトンを0.5重量部添加して、高分子電解質用組成物を得た。
得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの石英板に厚さ0.42mmで塗工し、紫外光を6秒間照射して、高分子電解質フィルムを得た。この高分子電解質フィルムの硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例9】
合成例2で得られた4級アンモニウム塩(A′)としての化合物(7)80重量部に、NKオリゴUA−W2(新中村化学工業(株)製)20重量部と、2,2′−ジメトキシフェニルアセトン0.5重量部とを添加して、高分子電解質用組成物を得た。
得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの石英板に厚さ0.42mm塗工し、紫外光を6秒間照射して、高分子電解質フィルムを得た。この高分子電解質フィルムの硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例10】
合成例3で得られた化合物(10)80重量部に、水溶性ウレタンアクリルレートUA−W2(新中村化学工業(株)製)20重量部と、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.5重量部とを添加して、高分子固体電解質用組成物を得た。得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの瓶に流し込み、55℃で0.5時間加熱して反応させ、高分子固体電解質を得た。この高分子固体電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例11】
合成例3で得られた化合物(10)100重量部に、2,2′−ジメトキシフェニルアセトン0.5重量部を添加して、高分子固体電解質用組成物を得た。得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの石英板に厚さ0.42mmで塗工し、紫外光を6秒間照射して、高分子固体電解質フィルムを得た。この高分子固体電解質フィルムの硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
【実施例12】
合成例3で得られた化合物(10)80重量部に、水溶性ウレタンアクリルレートUA−W2(新中村化学工業(株)製)20重量部と、2,2′−ジメトキシフェニルアセトン0.5重量部とを添加して、高分子固体電解質用組成物を得た。得られた高分子電解質用組成物を、所定のサイズの石英板に厚さ0.42mm塗工し、紫外光を6秒間照射して、高分子固体電解質フィルムを得た。この高分子固体電解質フィルムの硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
[比較例1]
4級アンモニウム塩(A)を使用せず、イオン性液体(B)としての合成例4で得られた化合物(12)の使用量を100重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
[比較例2]
イオン性液体の代わりに、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(キシダ化学(株)製)をプロピレンカーボネート(キシダ化学(株)製)に1.0Mの濃度で溶解させた溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして高分子電解質用組成物および高分子電解質を得た。この高分子電解質の硬化状況と物性等を目視と触感で確認した。結果を表1に示す。
上記各実施例および比較例で得られた高分子電解質用組成物を用い、下記方法に従ってイオン伝導度の測定を行った。結果を表1に示す。なお、参考例として、合成例4で得られた化合物(12)のみを用いてイオン伝導度を測定した結果を併せて表1に示す。
〈イオン伝導度の測定〉
実施例1〜7および10においては、以下のようにして評価セルを作製した。セルロースセパレータTF40−35(厚さ0.035mm、ニッポン高度紙工業(株)製)を50×20mmに裁断したものを12枚重ね、アルミの端子リード線をつけたアルミシート(厚さ0.02mm、日本製箔(株)製)を50×20mmに裁断したもの2枚を介して群を作製した。これを袋状に接着したアルミラミネートパックに挿入し、高分子電解質用組成物(参考例の場合はイオン性液体)を注液し、60Torrで30分間減圧含浸させ、余剰な液を搾り出した後、真空シーラーで密封した。これを55℃で4時間加熱して固体化させ、評価セルを作製した。
実施例8,9,11および12においては以下のように評価セル作製した。調製した高分子電解質用組成物を、アルミ端子のリード線をつけたアルミシート上に厚さ0.42mmに塗工し、紫外線照射機にて指定時間紫外光を照射し、高分子電解質フィルムを得た。このアルミシートとアルミシート上の高分子電解質フィルムとを共に50×20mmに裁断し、さらに高分子電解質フィルム上に50×20mmに裁断したアルミ端子のリード線をつけたアルミシートを乗せ評価セルを作製した。
上記のようにして得られた各評価セルについて、交流インピーダンス法により、25℃でのイオン伝導度を測定した。なお、参考例の場合には、加熱工程を省略した。

[2]電気二重層キャパシタの作製
【実施例13】
〈分極性電極の作製〉
活性炭(MSP15,関西熱化学(株)製)85重量部と、アセチレンブラック10重量部と、ポリフッ化ビニリデン5重量部をN−メチル−2−ピロリドン45重量部に溶解した溶液50重量部と、N−メチル−2−ピロリドン165重量部とを撹拌・混合し、ペースト状の活性炭電極合剤を得た。この電極合剤を酸化アルミ箔上に乾燥膜厚200μmとなるようにドクターブレードにより塗布した後、80℃で2時間乾燥し、分極性電極を作製した。
〈電気二重層キャパシタの作製〉
上記にて作製した電極の集電体に、アルミニウムの端子リードを取り付けた。次に、この電極2枚をポリオレフィン不織布セパレータを挟んで対向させて積層し、積層電極体を作製した。次に端子を取り出してアルミラミネートケースへ収納し、実施例1で得られた高分子電解質用組成物を注液して封止し、55℃で4時間加熱して反応させ、ラミネート型電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例14】
実施例2で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例15】
実施例3で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例16】
実施例4で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例17】
実施例5で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例18】
実施例6で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例19】
実施例7で得られた高分子電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例20】
実施例10で得られた高分子固体電解質用組成物を用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作成した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こさないことがわかった。
[比較例3]
合成例4で得られた化合物(12)のみを電解質として用いた以外は、実施例13と同様にして電気二重層キャパシタを作製した。得られた電気二重層キャパシタは、液漏れを起こした。
上記実施例13〜20および比較例3で得られた電気二重層キャパシタについて、充放電装置を用いて下記条件にて充放電試験を行い、キャパシタの静電容量を求めた。結果を表2に示す。
〈静電容量〉
充電時の上限電圧を2.5V、放電時の終止電圧を0V、電流密度を1.5mA/cmとし、定電流充放電を行った。そして放電時における電気エネルギーの積算値から静電容量を算出した。

表2に示されるように、実施例13〜20で得られた高分子電解質を用いた電気二重層キャパシタは、比較例3の電気二重層キャパシタのように液漏れが無く、安全性に優れたキャパシタであることがわかる。また、4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)との構造が類似、さらに同一であるほど、より均一なゲルやフィルムが得られ、導電性も高く、キャパシタとしての特性も優れていることが、実施例13〜20の電気二重層キャパシタの静電容量との差異に示されていることがわかる。
[3]リチウムポリマー二次電池の作製
【実施例21】
〈正極の作製〉
正極活物質としてLiCoO90重量部と、導電材としてケッチェンブラック6重量部と、予めN−メチル−2−ピロリドン90重量部にポリフッ化ビニリデン(PVdF)10重量部を溶かしておいた樹脂溶液を40重量部と、N−メチル−2−ピロリドン20重量部とを撹拌、混合し、ペースト状の正極用バインダー組成物を得た。この正極用バインダー組成物をアルミニウム箔上に、乾燥膜厚が100μmとなるようにドクターブレードにより塗布した後、80℃で2時間乾燥して、正極を作製した。
〈負極の作製〉
負極活物質としてMCMB(MCMB6−28;大阪ガスケミカル(株)製)90重量部と、予めN−メチル−2−ピロリドン90重量部にポリフッ化ビニリデン(PVdF)10重量部を溶かしておいた樹脂溶液を100重量部と、N−メチル−2−ピロリドン20重量部とを撹拌、混合し、ペースト状の負極用バインダー組成物を得た。この負極用バインダー組成物を銅箔上に、乾燥膜厚が100μmとなるようにドクターブレードにより塗布した後、80℃で2時間撹拌して、負極を作製した。
〈二次電池の作製〉
得られた正極を塗工部が5cm×48cmの大きさになるように、負極を塗工部が5.2cm×28.2cmの大きさになるようにそれぞれカットし、これらのカットした正極および負極の間にセパレータ基材を介在させて、アルミラミネートケースへ収納し、電池構造体を作製した。この電極構造体に実施例1で得られた高分子電解質用組成物を注液し、ラミネートを封止後、反応硬化を目的として、55℃で4時間加熱し、ラミネート型リチウムポリマー二次電池を作製した。得られたリチウム二次電池は液漏れを起こさないことがわかった。
【実施例22〜28】
実施例2〜7および10で得られた高分子電解質用組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。得られたリチウム二次電池はいずれも液漏れを起こさないことがわかった。
[比較例4]
合成例4で得られた化合物(12)のみを電解質として用いた以外は、実施21と同様にしてリチウム二次電池を作製した。得られたリチウム二次電池は、液漏れを起こした。
実施例21〜28および比較例4で得られたリチウム電池について、充放電装置を用いて下記条件にて充放電試験を行い、リチウム二次電池の容量を求めた。結果を表3に示す。
〈充放電試験〉
充電時の上限電圧を4.2V、放電時の終止電圧を2.7V、電流密度を0.5mA/cmとして定電流充放電を行い、クーロン量(mAh)を測定した。

表3に示されるように、実施例21〜28で得られた高分子電解質を用いたリチウム二次電池は、比較例4のリチウム二次電池のように液漏れがなく、安全性に優れたリチウム二次電池であることがわかる。また、4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)との構造が類似、さらに同一であるほど、より均一なゲルやフィルムが得られ、導電性も高く、電池としての特性も優れていることが、実施例21〜28のリチウム二次電池のクーロン量の差異に示されていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される4級アンモニウム塩(A)と、イオン性液体(B)とを含むことを特徴とする高分子電解質用組成物。

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕
【請求項2】
前記イオン性液体(B)が、下記一般式(2)で示される4級アンモニウム塩であることを特徴とする請求の範囲第1項記載の高分子電解質用組成物。

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、またはR′−O−(CH−で表されるアルコキシアルキル基(R′はメチル基またはエチル基を示し、nは1〜4の整数である。)を示し、これらR、R、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記アルコキシアルキル基である。Xは一価のアニオンを示す。〕
【請求項3】
前記4級アンモニウム塩(A)および/または前記イオン性液体(B)が、下記式(3)で示される部分構造を有することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の高分子電解質用組成物。

〔式中、mは1〜8の整数を示す。〕
【請求項4】
下記一般式(1)で示され、イオン性液体の性状を有する4級アンモニウム塩(A′)を含むことを特徴とする高分子電解質用組成物。

〔式中、R〜Rは互いに同一もしくは異種の炭素数1〜5のアルキル基、または反応性不飽和結合を有する置換基を示し、これらR〜Rのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。Rは、メチル基、エチル基または反応性不飽和結合を有する置換基を示す。ただし、R〜Rの内少なくとも1つは前記反応性不飽和結合を有する置換基である。Xは一価のアニオンを示し、mは1〜8の整数を、nは1〜4の整数を示す。〕
【請求項5】
前記4級アンモニウム塩(A′)が、下記式(3)で示される部分構造を有することを特徴とする請求の範囲第4項記載の高分子電解質用組成物。

【請求項6】
前記Xが、BF、PF、(CFSO、CFSO、およびCFCOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求の範囲第1項から第5項のいずれか1項に記載の高分子電解質用組成物。
【請求項7】
反応性二重結合を有する化合物(C)を含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第6項のいずれか1項に記載の高分子電解質用組成物。
【請求項8】
イオン導電性塩(D)を含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第7項のいずれか1項に記載の高分子電解質用組成物。
【請求項9】
直鎖または分岐の線状高分子化合物(E)を含むことを特徴とする請求の範囲第1項から第8項のいずれか1項に記載の高分子電解質用組成物。
【請求項10】
請求の範囲第1項から第9項のいずれかに記載の高分子電解質用組成物を反応させて得られることを特徴とする高分子電解質。
【請求項11】
一対の分極性電極と、これら電極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された電気二重層キャパシタであって、
前記電解質が、請求の範囲第10項に記載の高分子電解質であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項12】
リチウム含有複合酸化物を含む正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出する炭素質材料または金属リチウムを含む負極と、これら正負極間に介在させたセパレータと、電解質とを備えて構成された非水電解質二次電池であって、
前記電解質が、請求の範囲第10項に記載の高分子電解質であることを特徴とする非水電解質二次電池。

【国際公開番号】WO2004/027789
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537998(P2004−537998)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011979
【国際出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】